JP2006066277A - 平面接続型固体高分子形燃料電池および燃料電池電源システム - Google Patents

平面接続型固体高分子形燃料電池および燃料電池電源システム Download PDF

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治 廣井
Mitsugi Takahashi
貢 高橋
Shigeru Aihara
茂 相原
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佳秀 言上
Hisatoshi Fukumoto
久敏 福本
Hidetaka Yabe
秀毅 矢部
Tsukasa Matsuura
司 松浦
Tatsuya Fukami
達也 深見
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Abstract

【課題】配線部の抵抗要素に起因するエネルギー損失が小さくなるように総電極面積(総触媒面積)の分割数を設定し、エネルギー効率のよい平面接続型固体高分子形燃料電池およびそれを用いた燃料電池電源システムを得る。
【解決手段】カソード電極3が固体高分子電解質膜2一面上に2行m列の行列状に形成され、アノード電極が固体高分子電解質膜2の他面上にカソード電極3と相対するように2行m列の行列状に形成されている。これにより、単セル1が同一平面上に2行m列の行列状に配列、形成されている。そして、2m個の単セル1が配線部5により直列に接続されている。
【選択図】図1

Description

この発明は、小型固体高分子形燃料電池に関し、特に平面状に配列された複数の膜電極接合体を配線により接続してなる平面接続型固体高分子形燃料電池およびそれを用いた燃料電池電源システムに関するものである。
固体高分子形燃料電池は、高い総合エネルギー効率が得られる発電手段として、現在研究開発が進められている。この固体高分子形燃料電池においては、アノードおよびカソードの両電極、ガス流路を形成するセパレータ板、両電極を隔てる固体高分子電解質膜を、主要な構成要素としている。そして、電極は、固体高分子電解質膜に接合された反応の場となる触媒層と、ガスを触媒層に均一に供給すると共に集電する役割をもつ拡散層と、から構成されている。
近年、固体高分子形燃料電池を携帯情報機器などの電源用途に適用する試みがなされている。そして、燃料電池を電源に用いることによって、機器の駆動時間が飛躍的に延びることが期待されている。こうした用途においては、燃料電池の小型軽量化および簡素化が強く要求されている。
一方、携帯情報機器の電源には、3.7V級のリチウムイオン電池が一般的に用いられており、機器の要求電圧も、一般に3.0V以上となっている。これに対し、燃料電池の単セルの電圧は、1.0V未満である。従って、燃料電池を携帯情報機器の電源に適用するには、複数の燃料電池を直列接続して所望の電圧以上の出力電圧を得る必要がある。また、自動車用や定置用などの大出力の燃料電池では、薄板状の単セルを多数積層するスタック構造にすることで直列接続とし、必要な電圧を得るようにしている。しかしながら、携帯情報機器用の燃料電池では、小型化と構造の簡素化の要求から、スタック構造を採ることが困難であり、同一平面内に多数の単セルを行列状に配列させ、配線を用いて多数の単セルを直列接続する平面接続構造とすることが有利であると考えられている。
従来の平面接続型固体高分子形燃料電池は、一連の単セルを同一平面に形成し、シリコン基板を一連の単セルを両側から挟み込むように配置して、シリコン基板上で単セルを互いに接続するように構成されている。そして、一連の単セルは、極性を交互に反転するように同一平面に配置される場合と、極性を揃えて同一平面に配置される場合とがある(例えば、非特許文献1参照)。
Kyong-Bok Min et al.,「MEMS-Based Micro-Polymer Electrolyte Fuel Cell」,PROCEEDINGS OF THE 19TH SENSOR SYMPOSIUM, 2002, pp.491〜494
この種の平面接続型固体高分子形燃料電池においては、総触媒面積が機器の要求電力に応じて設定されるが、電圧については、総触媒面積をいくつの単セルに分割して直列に接続するかに依存する。そして、単セルは配線部を用いて直列に接続されており、配線部の抵抗要素に起因するエネルギー損失を生じることになる。
しかしながら、従来の平面接続型固体高分子形燃料電池においては、総触媒面積を複数の単セルに分割する際に、配線部の抵抗要素に起因するエネルギー損失について何等考慮されていなかったので、配線部でのエネルギー損失が大きくなってしまうという課題があった。
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、配線部の抵抗要素に起因するエネルギー損失が小さくなるように総電極面積(総触媒面積)の分割数を設定し、エネルギー効率のよい平面接続型固体高分子形燃料電池およびそれを用いた燃料電池電源システムを得ることを目的とする。
この発明は、単一の固体高分子電解質膜と、それぞれ電極を上記固体高分子電解質膜の両面に相対するように形成して構成された複数個の単セルと、を備え、上記複数個の単セルが配線部により直列に接続されている平面接続型固体高分子形燃料電池において、上記単セルの個数を20以上、80以下としたものである。
この発明によれば、総電極面積が20以上に分割されているので、単セル間に流れる電流が小さくでき、配線部で消費されるエネルギーが低減され、効率の高い平面接続型固体高分子形燃料電池を実現できる。また、総電極面積が80以下に分割されているので、配線部の形成が容易となり、歩留まりが向上される。
実施の形態.
図1はこの発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池の構成を模式的に説明する平面図、図2はこの発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池の構成を模式的に説明する側面図、図3はこの発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池における単セルの構成を模式的に説明する断面図である。
図1乃至図3において、平面接続型固体高分子形燃料電池は、プロトン導電性を有する固体高分子電解質膜(以下、電解質膜という)2と、それぞれ所定面積を有し、電解質膜2の一面上に2行m列の行列状に形成されたカソード電極3と、それぞれカソード電極3と同一の面積を有し、電解質膜2の他面上にカソード電極3と相対するように2行m列の行列状に形成されたアノード電極4、カソード電極3とアノード電極4とを電気的に接続する配線部5と、を備えている。カソード電極3は、電解質膜2の一面上に形成された触媒層3aと、導電性を有するガス拡散層3bと、から構成されている。また、アノード電極4は、電解質膜2の他面上に形成された触媒層4aと、導電性を有するガス拡散層4bと、から構成されている。そして、単セル1は、電解質膜2をカソード電極3とアノード電極4とにより挟持して構成されている。また、配線部5は、電解質膜2の一面側に配設された配線部支持体8aの反電解質膜側の表面上に形成された配線層6aと、電解質膜2の他面側に配設された配線部支持体8bの反電解質膜側の表面上に形成された配線層6bと、配線層6a、6b間に架設されて両者を接続する連結部7とから構成されている。これにより、2m個の単セル1が配線部5により直列に接続されている。
ここで、配線部支持体8aは、カソード電極3を露出するように電解質膜2の一面に接合され、配線層6aがカソード電極3と電気的に接続されるように配線支持部6a上に形成されている。同様に、配線部支持体8bは、アノード電極4を露出するように電解質膜2の他面に接合され、配線層6bがアノード電極4と電気的に接続されるように配線支持部6b上に形成されている。そして、一対の配線層6a、6bが、直列に接続された2m個の単セル1の出力端子9a,9bを構成している。
電解質膜2は、燃料電池内の環境においても安定で、プロトン導電性が高く、電子導電性のない膜であり、一般にはパーフルオロ系主鎖とスルホン酸基とからなる固体高分子電解質膜が用いられる。
触媒層3a,4aは、それぞれ、主に触媒粒子と、触媒とイオンのやり取りをする高分子電解質と、からなり、必要に応じて、無機質粒子やポリマー粒子、カーボン粒子などの添加物が混入される。この添加物は、触媒層3a,4aの親水性や撥水性を制御したり、空孔率を向上させる目的で、適宜用いられるものである。触媒粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子表面に白金などの触媒活性を有する金属微粒子を担持したものが用いられる。
ガス拡散層3b,4bには、それぞれカーボンペーパやカーボンクロスなどの多孔質体が用いられる。
なお、自動車用や定置用の大出力の燃料電池では、スタック構造をとるために、集電とガス供給を目的とした拡散層やセパレータ板が用いられる。しかし、この平面接続型固体高分子形燃料電池においては、大出力燃料電池で必要であった集電とガス供給を目的とした拡散層やセパレータ板などの部材は必ずしも必要ではない。但し、単セル1同士を電気的に接続する配線部5は必要となる。
このように構成された平面接続型固体高分子形燃料電池では、単セル1がカソード電極3を電解質膜2の一面上に形成し、アノード電極4を電解質膜2の他面上に形成して、2行m列の行列状に配列され、2m個の単セル1が配線部5により直列に接続されて構成されている。そして、図示していないが、アノード側は水素やメタノールなどの燃料がアノード電極4bを介して触媒層4aに供給されるように配管されており、カソード側は大気に開放されて、酸素が自然拡散によって空気中からカソード電極3bを介して触媒層3aに供給されるようになっている。そして、カソード反応による生成水は自然拡散によって大気中に放出される。
この平面接続型固体高分子形燃料電池では、全てのカソード電極3が電解質膜2の一方の面に配列され、全てのアノード電極4が電解質膜2の他方の面に配列されているので、ガス配管構造が簡素化できる。しかし、配線部5は、燃料電池の外表面に沿って(或いは燃料電池を貫通して)、一方の面のカソード電極3と他方の面のアノード電極4とを接続するように形成する必要があり、複雑でかつ距離の長い配線構造となってしまう。
また、スタック構造をとる大出力の燃料電池では、単セル間は面全体で導通するので、単セル間でのIR損失が小さい。しかし、この平面接続型固体高分子形燃料電池では、配線距離が長くなり、配線断面積を大きくとれないことから、配線部5でのエネルギー損失が大きくなってしまう。
また、燃料電池の出力電力は、総触媒面積(総電極面積)に依存し、燃料電池の出力電圧は、総触媒面積をいくつの単セルに分割して直列に接続するかに依存する。なお、総触媒面積とは、電解質膜2上に形成された例えばカソード側の触媒層3aの総面積(カソード電極3の総面積)である。そして、触媒層3aの総面積はアノード側の触媒層4aの総面積に等しい。
さらに、燃料電池の出力電圧は、温度や電流値によって変動するので、燃料電池システムでは、燃料電池の電圧を要求電圧より高めに設定しておき、DC−DCコンバータなどの機器を用いて要求電圧に降圧することが望ましい。
そこで、本発明の平面接続型固体高分子形燃料電池では、総出力1W当たり0.1A以下の電流値となるように総触媒面積を分割して単セル1を作製し、各単セル1を直列に接続している。この総出力1W当たり0.1Aの電流値となる分割数は20に相当する。
このように構成された平面接続型固体高分子形燃料電池においては、総触媒面積を20以上に分割し、20以上の単セル1を構成しているので、平面接続型固体高分子形燃料電池は高い出力電圧が得られ、DC−DCコンバータにより要求電圧に降圧して機器に供給することができる。そこで、温度や電流値の影響を受けることなく、要求電圧を機器に安定して供給することができる。
また、総触媒面積を20以上に分割しているので、単セル1間を流れる電流が小さくなる。そこで、配線部5における電流値の2乗に比例するエネルギー損失(IR)を低減できるので、エネルギー効率のよい平面接続型固体高分子形燃料電池が得られる。
また、本発明では、単セル1間に流れる電流ができる限り小さくなるように構成しているので、単セル1間の配線部5の形状や配線材料、さらにはその形成プロセスの自由度が大きい。例えば、カーボン系導電ペーストは、腐蝕しがたく、安価な印刷手法を用いて容易に配線パターンを形成することができるが、その体積抵抗率が金属系材料に比べて著しく大きい。しかし、単セル1間に流れる電流をできる限り小さくなるように構成しているので、カーボン系導電ペーストなどの体積抵抗率の大きな配線材料を用いても、配線部5におけるエネルギー損失を抑制することができる。
また、本願は、単セル1間に流れる電流ができる限り小さくなるように構成しているので、各電極間のスペースが狭く、配線部5の導電断面積を大きくできない場合でも、配線部5におけるエネルギー損失を抑制することができる。即ち、本願の平面接続型固体高分子形燃料電池は、小型化にも対応することができる。
また、スタック構造をとる大出力の燃料電池では、単セル数が多くなるほど製造コストが大幅に増大してしまう。しかし、この平面接続型固体高分子形燃料電池では、単セル1を平面上に行列状に配設するように構成しているので、シリコンウエハー上に多数の半導体を作り込む製造プロセルと同様に、多数の単セル1を同時に処理する製造プロセルが中心となり、単セル数が多くなっても、製造コストが大幅に増大することはない。
ここで、総触媒面積の分割数が多くなるほど、単セル1間に流れる電流値が小さくなり、本発明の効果が大きくなるが、電極製造プロセスの精度や、配線材料やその形成プロセスの精度によって分割数は制限される。そこで、現実的な製造方法や配線材料を考慮すると、分割数は80以下とすることが望ましい。これにより、配線部5を容易に形成でき、歩留まりを向上させることができる。なお、分割数80は、総出力1W当たり0.025Aの電流値に相当する。
以下、セル分割数を変えて平面接続型固体高分子形燃料電池を作製し、配線部5におけるエネルギー損失を算出し、本発明の効果について説明する。
実施例1.
この実施例1では、総触媒面積を20cmとし、単セル数(セル分割数)を80とし、各単セルを銀系導電ペーストにより直列に接続して平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺5mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行40列の行列状に配列されている。各単セルを電極部での電流密度100mA/cmに相当する電流、即ち25mAで運転することを想定している。
電解質膜として、厚さ50μmのaciplex膜(旭化成(株)の登録商標)を用いた。また、カソード触媒粒子およびアノード触媒粒子は、共に、白金をカーボンブラック粒子上に50wt%担持したものを用いた。
以下、実施例1による平面接続型固体高分子形燃料電池の作製手順について説明する。
まず、カソード触媒粒子1重量部に、水1重量部およびパーフルオロ系高分子電解質溶液(旭硝子製フレミオン9%溶液)3重量部を添加し、撹拌混合して均一な状態のカソード触媒ペーストを作製した。そして、カソード触媒ペーストを25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にスクリーン印刷し、減圧乾燥して、カソード触媒層が全面に形成されたカソード触媒層転写フィルムを作製した。
同様に、アノード触媒粒子1重量部に、水1重量部およびパーフルオロ系高分子電解質溶液(旭硝子製フレミオン9%溶液)6重量部を添加し、撹拌混合して均一な状態のアノード触媒ペーストを作製した。そして、アノード触媒ペーストを25μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にスクリーン印刷し、減圧乾燥して、アノード触媒層が全面に形成されたアノード触媒層転写フィルムを作製した。
ついで、カソード触媒層およびアノード触媒層を電解質膜側に向けて、アノード触媒層転写フィルムとカソード触媒層転写フィルムとで電解質膜を挟み、さらにその外側から一対の金属板(金型)で挟んで、全体をホットプレスした。ポットプレスの条件は面圧5Kg/cm、160℃、2分間とした。そして、一方の金属板は凹凸のない平面のホットプレス面としたものを用い、他方の金属板は1辺を5mmとする正方形の平坦凸面が2mmの隙間をあけて2行40列の行列状に配列されたホットプレス面としたものを用いた。これにより、他方の金属板の平坦凸面の部分にのみ圧力がかかり、カソード触媒層およびアノード触媒層が、両転写フィルムから電解質膜側に転写され、電解質膜の両面にそれぞれ2行40列の行列状に形成された。
ついで、1辺を5mmとする正方形に切断したカーボンペーパ(ガス拡散層3b,4bに相当)をカソード触媒層およびアノード触媒層上に重ね、全体をホットプレスして、カーボンペーパとカソード触媒層およびアノード触媒層とを接合した。ここで、カーボンペーパがカソード触媒層に接合されてカソード電極を構成し、カーボンペーパがアノード触媒層に接合されてアノード電極を構成する。
ついで、配線支持体としてのポリイミドフィルム(50μm厚)を電解質膜の両面に配置し、ホットプレスで融着した。このポリイミドフィルムは、ガス供給のために、カソード電極およびアノード電極相当部分に穴があけられている。そして、カソード電極およびアノード電極が、それぞれポリイミドフィルムにあけられた穴内に配置されている。
ついで、銀系導電ペーストをポリイミドフィルム上にスクリーン印刷し、配線パターン(配線層6a,6bに相当)を形成した。ここで、硬化後の導電ペーストの配線厚みは30μmであった。
ついで、配線パターンとカソード電極およびアノード電極との間に銀系導電ペーストを塗布し、さらに銅箔(連結部7に相当)を電解質膜とポリイミドフィルムとの積層体の側面に沿うように配置し、銅箔の両端を両面の配線パターンに沿わせて、その接続部に銀系導電ペーストを塗布し、銀系導電ペーストを硬化させ、平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。
このように作製した平面接続型固体高分子形燃料電池をガス流路が形成された測定用セル(図示せず)に組み込み、直列接続した配線の末端(出力端子9a,9bに相当)に外部負荷を接続し、アノード面には純水素を供給し、カソード面は大気開放にして運転を行った。また、水素ガス供給路は燃料電池末端で閉じた構造とし、消費された量だけが新たに供給されるようにした。
そして、セルを電流密度100mA/cmで運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約39.5Vであった。また、端子間抵抗とセル部分の抵抗を測定し、配線部での抵抗を見積もると、約18Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.011Wであった。これは、燃料電池出力の約1.1%に相当する。この結果を図4に示す。
実施例2.
この実施例2では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を60とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約5.8mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行30列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約30.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約13.5Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.015Wであった。これは、燃料電池出力の約1.5%に相当する。この結果を図4に示す。
実施例3.
この実施例3では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を40とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約7.1mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行20列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約20.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約8.9Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.021Wであった。これは、燃料電池出力の約2.1%に相当する。この結果を図4に示す。
実施例4.
この実施例4では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を28とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約8.5mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行14列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約14.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約6.3Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.032Wであった。これは、燃料電池出力の約3.2%に相当する。この結果を図4に示す。
実施例5.
この実施例5では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を20とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺10mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行10列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約10.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約4.5Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.045Wであった。これは、燃料電池出力の約4.5%に相当する。この結果を図4に示す。
比較例1.
この比較例1では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を16とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約11mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行8列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約8.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約3.6Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.053Wであった。これは、燃料電池出力の約5.3%に相当する。この結果を図4に示す。
比較例2.
この比較例2では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を10とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約14.1mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行5列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約5.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約2.3Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.092Wであった。これは、燃料電池出力の約9.2%に相当する。この結果を図4に示す。
比較例3.
この比較例3では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を8とし、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この平面接続型固体高分子形燃料電池は、各電極が1辺約15.8mmの正方形に形成され、2mmの間隔をあけて2行4列の行列状に配列されている。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約4.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約1.7Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.110Wであった。これは、燃料電池出力の約11.0%に相当する。この結果を図4に示す。
ここで、実施例1〜5および比較例1〜3の結果に基づいて、セル分割数と配線部で消費されるエネルギー(IR)との関係を図5に示す。
図5から、セル分割数が20未満の領域では、セル分割数が増加すると配線部で消費されるエネルギーが急激に減少することがわかる。そして、セル分割数が20以上の領域では、配線部での消費されるエネルギーは、セル分割数20から徐々に減少し、セル分割数40以上では、ほぼ一定の値となることを示している。これは、セル分割数が増えると、単セル間を流れる電流が小さくなること起因するものと推考される。
このことから、体積抵抗率の高い銀系導電ペーストを用いて配線部を構成する平面接続型固体高分子形燃料電池においては、セル分割数を20以上とすることにより、配線部でのエネルギー損失を小さく抑えることができる。さらに、セル分割数を40以上とすることにより、配線部でのエネルギー損失をより小さく抑えることができる。従って、セル分圧数を20以上とすることにより、配線材料に体積抵抗率の高い銀系導電ペーストを用いることができるようになり、印刷などにより配線パターンの形成が容易となり、低コスト化が図られる。
なお、セル分割数20は、総出力1W当たり100mAの電流値となるように分割した場合に相当し、セル分割数40は、総出力1W当たり50mAの電流値となるように分割した場合に相当し、セル分割数80は、総出力1W当たり25mAの電流値となるように分割した場合に相当する。
実施例6.
この実施例6では、銀系導電ペーストに代えて銅のプリント配線を用いて配線部を構成している点を除いて、上記実施例1と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。この銅のプリント配線は、電極相当部分に穴があけられた50μm厚のポリイミドフィルム(配線支持体)に35μmの銅層が接合されたものを、エッチングにより配線パターンを形成した。そして、ポリイミドフィルムを電解質膜に融着し、ポリイミドフィルムにあけられた穴から露出するカソード電極およびアノード電極とプリント配線とを銀系導電ペーストを用いて接続し、さらに両面のプリント配線同士を銅箔を用いて接続した。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例1と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約40.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約0.18Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.0001Wであった。これは、燃料電池出力の約0.01%に相当する。この結果を図4に示す。
比較例4.
この比較例4では、総触媒面積を20cmとし、単セル数を8とし、上記実施例6と同様にして平面接続型固体高分子形燃料電池を作製した。
そして、この平面接続型固体高分子形燃料電池を上記実施例6と同一の条件で運転し、始動から24時間経過時点での末端出力電圧を測定したところ、約4.0Vであった。また、配線部での抵抗を見積もると、約0.018Ωであった。この時の配線部での抵抗で消費されるエネルギーを見積もると、約0.0011Wであった。これは、燃料電池出力の約0.1%に相当する。この結果を図4に示す。
このように、体積抵抗率の小さい銅プリント配線を用いて配線部を構成する平面接続型固体高分子形燃料電池においても、セル分割数を80とする実施例6は、セル分割数を8とする比較例4に比べて、配線部でのエネルギー損失が低減できた。
また、体積抵抗率の小さい銅プリント配線を用いているので、配線部で消費されるエネルギーを著しく低減できた。また、セル分割数を8から80と増やした場合、低減できるエネルギー量は0.001Wと小さいが、エネルギーの低減率としては約10分の1となった。つまり、エネルギーの低減率の観点から見ると、銀系導電ペーストを用いた場合において、セル分割数を8(比較例3)から80(実施例1)に増やした場合と同等の効果が得られることがわかった。
なお、銅のプリント配線を用いて配線部を構成する平面接続型固体高分子形燃料電池において、セル分割数と配線部で消費されるエネルギー(IR)との関係を測定したところ、図5と同様に、セル分割数が20未満の領域では、セル分割数が増加すると配線部で消費されるエネルギーが急激に減少し、セル分割数が20から徐々に減少し、セル分割数40以上では、ほぼ一定の値となることが確認された。
ここで、上記実施例1〜6および比較例1〜4から、配線材料の体積抵抗率の大小に拘わらず、同一の配線材料を用いた平面接続型固体高分子形燃料電池において、セル分割数を大きくすることは、配線部でのエネルギー損失を低減できる効果が得られることが分かる。
従って、配線材料は特に限定されるものではなく、例えばワイヤボンダリングのような金属ワイヤで接続する方法でも、同様の効果が得られる。
また、配線材料として銀系導電ペーストに代えてカーボン導電ペーストを用いても同様の効果が得られる。この場合、カーボン導電ペーストが腐蝕し難いことから、平面接続型固体高分子形燃料電池を安定して長期間動作させることができるという効果が得られる。
実施例7.
上記実施例1の平面接続型固体高分子形燃料電池の出力を、DC−DCコンバータに接続し、3.3Vを供給する電源を作製した。この電源装置をイオンリチウム電池で駆動する携帯情報機器に接続したところ、携帯情報機器を安定して駆動できることが可能であった。
このように、駆動機器の要求電圧よりも大幅に高い電圧を出力するように設定されたセル分割数の平面接続型固体高分子形燃料電池を作製し、該平面接続型固体高分子形燃料電池の出力電圧をDC−DCコンバータにより要求電圧に降圧させて駆動機器に供給するように構成することで、温度や電流値による出力電圧の変動の影響を抑え、かつ、配線部でのエネルギー損失を低くして、安定かつ高効率の燃料電池電源システムを実現できた。
なお、上記実施の形態では、単セルを平面上に2行m列の行列状に配列するものとして説明しているが、単セルの行数は2行に限定されるものではなく、1行でも、3行以上でもよい。つまり、単セルを配列する行数および列数は、セル分割数に応じて適宜設定されるものである。
また、上記実施の形態では、単セルが極性を揃えて同一平面状に配列されているものとしているが、単セルが極性を交互に反転するように同一平面に配列されている平面接続型固体高分子形燃料電池においても、同様の効果が得られることはいうまでもないことである。
また、上記実施の形態では、基準発電量を電流密度100mA/cmで約0.05W/cmとする燃料電池について説明しているが、他の基準発電量の燃料電池に適用しても同様の効果が得られる。
この発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池の構成を模式的に説明する平面図である。 この発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池の構成を模式的に説明する側面図である。 この発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池における単セルの構成を模式的に説明する断面図である。 この発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池における各実施例の測定結果を示す図である。 この発明の実施の形態に係る平面接続型固体高分子形燃料電池におけるセル分割数と配線部で消費されるエネルギー(IR)との関係を示す図である。
符号の説明
1 単セル、2 固体高分子電解質膜、3 カソード電極、4 アノード電極、5 配線部、6a、6b 配線層。

Claims (7)

  1. 単一の固体高分子電解質膜と、それぞれ電極を上記固体高分子電解質膜の両面に相対するように形成して構成された複数個の単セルと、を備え、上記複数個の単セルが配線部により直列に接続されている平面接続型固体高分子形燃料電池において、
    上記単セルの個数が20以上、80以下であることを特徴とする平面接続型固体高分子形燃料電池。
  2. 上記単セルの個数が40以上、80以下であることを特徴とする請求項1記載の平面接続型固体高分子形燃料電池。
  3. 単一の固体高分子電解質膜と、それぞれ電極を上記固体高分子電解質膜の両面に相対するように形成して構成された複数個の単セルと、を備え、上記複数個の単セルが配線部により直列に接続されている平面接続型固体高分子形燃料電池において、
    上記単セルの個数および電極面積が、総出力1W当たり25mA以上、100mA以下の電流値になるように設定されていることを特徴とする平面接続型固体高分子形燃料電池。
  4. 上記単セルの個数および電極面積が、総出力1W当たり25mA以上、50mA以下の電流値になるように設定されていることを特徴とする請求項3記載の平面接続型固体高分子形燃料電池。
  5. 上記配線部が導電ペーストで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平面接続型固体高分子形燃料電池。
  6. 上記配線部が金属のプリント配線で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平面接続型固体高分子形燃料電池。
  7. 上記請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の平面接続型固体高分子形燃料電池を備え、該平面接続型固体高分子形燃料電池の出力電圧がDC−DCコンバータにより降圧されて出力されるように構成されていることを特徴とする燃料電池電源システム。
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