JP2006061831A - 圧力変動吸着式ガス分離方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2種以上の成分を含む原料ガスを、1成分に易吸着性で、他成分に難吸着性の吸着剤を充填した下部筒10Bと上部筒10Uとに流し、易吸着分を吸着し、難吸着分を回収する工程、易吸着成分貯留槽2のガスを下部筒10Bに導入し、これの空隙に残る難吸着分を上部筒10Uに導出し、筒10Uにおいて易吸着分を吸着し、筒10Uより難吸着分を回収する工程、下部筒10Bを減圧し、易吸着分を易吸着成分貯留槽2に回収する工程、上部筒10Uを減圧し、吸着ガスを脱着して下部筒10Bに導入し、筒10Bの流出ガスを原料ガス貯留槽1に回収する工程、先に回収した難吸着分を減圧し、パージガスとして上部筒10U、下部筒10Bに導入し、易吸着分を脱着して下部筒10Bの流出ガスを回収する工程をシーケンスに従って行う。
【選択図】 図1
Description
このWernerらのPSA法にあっては、原料ガス中の易吸着成分と難吸着成分を同時に製品として回収するものであり、例えば原料ガスが空気であれば、易吸着成分の窒素と難吸着成分の酸素の両方を製品として回収できる。即ち、先ず高圧で空気を吸着筒下部に供給し、易吸着成分である窒素を吸着し、難吸着成分である酸素を吸着筒上部より導出する。空気の供給は、空気の吸着帯が吸着筒上部に達する前に停止し、次いで高濃度窒素ガスを並流パージガスとして吸着筒下部より供給する。並流パージガスの供給は、高濃度窒素ガスの吸着帯が空気の吸着帯前後に達するまで続けられる。この間、吸着筒上部より酸素の導出は引き続き行われる。この並流パージガスの供給により、吸着筒内は易吸着成分である窒素で吸着飽和となる。吸着筒上部より導出した酸素は、一部が製品として回収され、残りのガスは向流パージガスとして使用される。次いで、吸着剤に吸着した窒素を、向流減圧するとともに向流パージガスとして酸素を吸着筒内に導入して脱着させ、窒素貯留タンクに回収する。窒素製品タンクに回収された窒素の一部を製品として回収し、残りのガスは並流パージガスとして使用される。そして、該米国特許では、製品窒素を濃度99.8%以上、酸素濃度90〜93.6%で回収できることが示されている。
これらの方法では、易吸着成分である窒素濃度、回収率を高められるが、難吸着成分である酸素は易吸着成分の窒素ほど高濃度で回収することができない。
このDuplex PSA法は、原料ガスを吸着筒中間に供給し、吸着筒の上部で典型的なPSA法(難吸着成分を濃縮するPSA法)を行い、また吸着筒の下部でWilsonの米国特許第4,359,328号明細書にある逆PSA法(易吸着成分を濃縮するPSA法)を行うようにとするところに特長がある。
また原料ガスは、吸着筒の中間部に導入され、製品ガスは、吸着筒上部の還流ガスの一部を難吸着成分の製品として回収し、吸着筒下部の還流ガスの一部を易吸着成分の製品として回収する。このDuplex PSA法によって、易吸着成分、難吸着成分を共に高濃度、高回収率で回収することができる。
しかし原料ガス中に水素、ヘリウムが含まれる場合、水素、ヘリウムは吸着剤にほとんど吸着されない最強の難吸着成分であるため、Duplex PSA法では易吸着成分の製品中に水素、ヘリウムが混入してしまう不都合がある。
この圧力変動吸着ガス分離方法は、典型的なPSA法(難吸着成分を濃縮)を二つ組み合わせることによって、2つの成分を製品として回収することができる。例えば、クリプトンと窒素の混合ガスを原料ガスとした場合、クリプトンを易吸着成分、窒素を難吸着成分とする平衡分離型PSAによって、難吸着成分である窒素を回収する。また、クリプトンを難吸着成分、窒素を易吸着成分とする速度分離型PSAによって、難吸着成分であるクリプトンを回収する。
しかし、難吸着成分である水素、ヘリウムが原料ガスに含まれた場合には、難吸着成分を回収するPSA法を用いてクリプトンを回収するため、クリプトン側に水素、ヘリウムが混入することを防ぐことができない。
しかし、排ガス中に含まれるヘリウム、水素、酸素、窒素、アルゴンなど他の成分より、クリプトン、キセノンを易吸着性とする平衡分離型の吸着剤を容易に選択することができる。また、水素、ヘリウムなど分子径が小さい成分が含まれない場合には、クリプトン、キセノンが、酸素、窒素、アルゴンなどよりも分子径が大きいことから、細孔径が0.4nm前後の吸着剤、例えば、Na−A型ゼオライト、CMSなどを用いることで、クリプトン、キセノンに対して難吸着性であり、窒素、酸素、アルゴンに対して易吸着性である速度分離型の吸着剤を選択することができる。
請求項1に係わる発明として、少なくとも2種類の主要成分を含有する混合ガスを原料ガスとして用い、前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対する易吸着性と、前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対する難吸着性とを有する吸着剤を用い、前記吸着剤を充填した下部筒、上部筒と、前記下部筒へ導入する原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記吸着剤に対し易吸着性を示す主要成分を貯留する易吸着成分貯留槽を使用し、前記吸着剤に対し易吸着性を示す易吸着成分と、前記吸着剤に対し難吸着性を示す難吸着成分とを回収する圧力変動吸着式ガス分離方法であって、
(a)原料ガス貯留槽のガスを加圧して下部筒に導入して、前記原料ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少した混合ガスを上部筒に導入し、
前記混合ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒に充填した吸着剤を用いて吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を回収する工程と、
(b)易吸着成分貯留槽のガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒に充填した吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒に充填した吸着剤を用いて吸着して、上部筒から流出してくる難吸着成分を回収する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒に充填した吸着剤に吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒に充填した吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)、(b)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程、
を有し
(f)上記工程(a)−(e)をあらかじめ定められたシーケンスに基づいて、順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の易吸着成分および難吸着成分を同時に高濃度、高回収率で回収することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
(g)(a)の工程を終了した上部筒と、(e)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(a)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、かつ(a)の工程を終了した下部筒のガスを、(a)の工程を終了した上部筒へ導入するとともに、易吸着成分貯留槽のガスを前記下部筒に導入する工程、を含み、
前記(e)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(h)(e)の工程を終了した上部筒と、(b)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、(e)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した下部筒へ導入する工程、
を含むことを特徴とする請求項1記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
(i) (b)の工程を終了した上部筒と、(e)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程の終了した上部筒へ導入し、かつ(b)の工程を終了した下部筒のガスを、(b)の工程を終了した上部筒へ導入するとともに、易吸着成分貯留槽のガスを前記下部筒に導入する工程、を含み、
前記(e)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(j) (e)の工程を終了した上部筒と、(b)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程の終了した上部筒へ導入し、(e)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した下部筒へ導入する工程、を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
請求項5に係わる発明として、前記平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤が、活性炭、Na−X型ゼオライト、Ca−X型ゼオライト、Ca−A型ゼオライト、Li−X型ゼオライトの群より選択される何れかであることを特徴とする請求項4に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
請求項6に係わる発明として、易吸着成分がキセノンあるいはクリプトンであって、難吸着成分が、酸素、窒素、アルゴン、水素、ヘリウムの何れかを含むガスであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
請求項8に係わる発明として、吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤吸着剤の細孔径が、0.4nm程度であることを特徴とする請求項7に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
請求項9に係わる発明として、難吸着成分がキセノンあるいはクリプトンであって、易吸着成分が、酸素、窒素、アルゴンの何れかを含むガスであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法としたものである。
前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対して易吸着性を有し、前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対して難吸着性を有する吸着剤を用い、少なくとも1種類の前記吸着剤を充填した下部筒、上部筒と、前記原料ガスを導入する原料ガス貯留槽と、前記吸着剤に対し易吸着性を示す主要成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、前記原料ガス貯留槽および前記易吸着成分貯留槽のガスを圧縮する圧縮機と、前記下部筒から排出されるガスを前記易吸着成分貯留槽に返送する機構と、前記下部筒から排出されるガスを原料ガス貯留槽に返送する機構を有することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離装置としたものである。
請求項12に係わる発明として、上記原料ガス貯留槽あるいは難吸着成分貯留槽は、外部から難吸着成分を補充する機構を有してなることを特徴とする請求項10に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置としたものである。
請求項14に係わる発明として、平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤が、活性炭、Na−X型ゼオライト、Ca−X型ゼオライト、Ca−A型ゼオライト、Li−X型ゼオライトの群より選択される何れかであることを特徴とする請求項13に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置としたものである。
請求項16に係わる発明として、吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤の細孔径が0.4nm程度であることを特徴とする請求項15に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置としたものである。
この圧力変動吸着式ガス分離装置は、目的成分と、少なくとも1種類のその他の成分とを含む混合ガスを原料ガスとして貯留する原料ガス貯留槽1と、易吸着成分を貯留する易吸着成分貯留槽2と、難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽3と、原料ガス貯留槽1あるいは易吸着成分貯留槽2のガスを圧縮する圧縮機4と、易吸着成分貯留槽2のガスを圧縮する圧縮機5と、下部筒10B、11B、上部筒10U、11Uの4つの吸着筒を備えている。
符号L2は、原料ガス貯留槽1のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
符号L3は、易吸着成分貯留槽2のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
符号L4、L5は、圧縮機4からのガスを下部筒10B、11Bに導入する経路である。 符号L6は、上部筒10U、11Uからのガスを難吸着成分貯留槽3に導入、あるいは難吸着成分貯留槽3のガスを上部筒10U、11Uへ導出する経路である。
符号L7は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を装置系外に供給する経路である。
符号L8は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を向流パージガスとして上部筒10U、11Uに導入する経路である。
符号L11は、下部筒10B、11Bからのガスを、原料ガス貯留槽1に返送する経路である。
符号L12は、下部筒10B、11Bからのガスを、易吸着成分貯留槽2に返送する経路である。
符号L13は、易吸着成分貯留槽2からの易吸着成分を装置系外に供給する経路である。
符号L14は、上部筒10Uと11Uの間で均圧を行う均圧ラインである。
また、下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uに充填される吸着剤としては、平衡分離型吸着剤である活性炭を使用する場合を示す。活性炭は、平衡吸着量としてキセノンの吸着量が多く(易吸着性)、窒素の吸着量が少ない(難吸着性)という性質を持つ。
原料ガス貯留槽1からの混合ガスを圧縮機4で圧縮し、経路L2、L4を介して、下部筒10Bに供給する。同時に、難吸着成分貯留槽3に貯められた窒素を、経路L6を介して上部筒10Uに導入する(バルブV7を閉止し、原料ガス貯留槽1からの混合ガスのみの供給によって加圧することもできる)。
下部筒10Bと上部筒10Uとの間は、バルブV5を開放することで流通されているため、下部筒10Bと上部筒10Uは、ほぼ同様に圧力上昇する。なお、原料ガス貯留槽1の混合ガスは、経路L1から導入された原料ガスと後述する上部筒減圧工程、パージ再生工程で下部筒10Bもしくは11Bから排出されたガスとの混合ガスである。
バルブV1を閉止、バルブV2を開放することで、下部筒10Bに導入するガスを易吸着成分貯留槽2のキセノンに変更する。易吸着成分貯留槽2からのキセノンを下部筒10Bに導入することによって、下部筒10Bの吸着剤充填層に共吸着された窒素と、吸着剤空隙に存在する窒素を上部筒10Uへ押し出し、下部筒10B内をキセノンで吸着飽和とする。この間、上部筒10Uから難吸着成分貯留槽3への窒素の導出は継続して行われる。難吸着成分貯留槽3の窒素は、(1)の<吸着工程>と同様に、一部を装置系外に排出し、残りのガスは向流パージガスに使用される。
バルブV6、V10を閉止し、バルブV11,V13を開放する。これにより、前記(1)〜(2)の工程間に下部筒11Bに吸着されたキセノンは、下部筒11Bと易吸着成分貯留槽2の差圧によって、経路L10、L12を介して、易吸着成分貯留槽2へ回収される。易吸着成分貯留槽2に回収されたキセノンは、原料ガス中に含まれるキセノンに応じた流量が、圧縮機5によって加圧され、経路L13から製品として採取される。残りのキセノンは並流パージガスとして(2)の<リンス工程>で使用される。この間、上部筒11Uは、バルブV6、V8が閉止されていることにより休止状態となる。
バルブV11を閉止し、バルブV6、V10を開放する。すると、(3)の<下部筒減圧工程>において休止していた上部筒11Uと減圧を行った下部筒11Bの間に圧力差が生じることから、上部筒11U内のガスは下部筒11Bに流入する。下部筒11Bに導入されたガスは、下部筒11B内をパージしながら、経路L10、L11を介して、原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、経路L1から導入される原料ガスと再混合されて、(1)の<吸着工程>時に再び下部筒に供給される。
バルブV15を開放する。難吸着成分貯留槽3に貯留した窒素は、向流パージガスとして、経路L8を介して、上部筒11Uに導入される。上部筒11Uに導入された窒素は、吸着筒下部に進むにつれて、吸着していたキセノンを置換脱着させる。脱着された比較的キセノンを多く含んだガスは、下部筒11B、経路L10、L11を介して、原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、(4)<上部筒減圧工程>と同様に、経路L1から導入される原料ガスと混合されて、(1)<吸着工程>時に再び下部筒に供給される。
ここで、向流パージガスに使用される窒素は、(1)<吸着工程>、あるいは(2)<リンス工程>において上部筒10Uから導出された窒素を、難吸着成分貯留槽3を介さず、直接(5)<パージ再生工程>を行っている上部筒に導入しても良い。
なお、経路L1からの原料ガスの導入、経路L7からの窒素の排出、経路L13からのキセノンの導出は、工程に依らず連続的に行われる。ただし、本圧力変動吸着式ガス分離方法を適用する半導体製品、もしくは表示装置の製造設備では、キセノンを使用する必要がない状況、すなわち原料ガスとなる該製造設備からの排ガスが流入してこない状況が頻繁に起こり得る。このような場合、本圧力変動吸着式ガス分離装置では、経路L7から導出される窒素、および経路L13から導出されるキセノンを、原料ガス貯留槽1に返送することで(図示せず)、常に製品ガスを供給できる状態を維持しながら供給停止状態とすることができる。
バルブV7を閉止、バルブV9を開放する。上部筒10Uのガスは、上部筒10Uと11Uの圧力差によって、経路L14を介して上部筒11Uに導入される(均圧減圧操作)。これにより、上部筒10Uの圧力が低下するため、下部筒10B内のガスは、上部筒10Uへ導出される。この操作によって、下部筒10Bの吸着筒上部にわずかに残存する窒素は、減圧によって脱着してくるキセノンによって押し流され、上部筒10Uへ導入される。この間、易吸着成分貯留槽2からのキセノン供給は継続される。
バルブV13、V15を閉止し、バルブV9を開放する。これによって、上部筒10U内のガスは、上部筒11Uに導入される(均圧加圧操作)。上部筒11Uに導入されるガスは窒素濃度が高いため、上部筒11U内のキセノンを上部筒下部および下部筒11Bへ押し下げることができる。
図5は、(3)<下部筒減圧工程>〜(5)<パージ再生工程>に、(7)<均圧加圧工程>を加えた、他方の半サイクルの工程を示したものである。
なお、下部筒10Bと上部筒10Uが図4に示した先の3工程を行っている間、下部筒11Bと上部筒11Uでは図5に示した4工程が行われる。そして、この図4もしくは図5の各工程におけるバルブの開閉状態は、表3もしくは表4に表示する態様で操作される。
易吸着成分を除去し難吸着成分を製品として回収する典型的なPSA法、難吸着成分を除去し易吸着成分を製品として回収する逆PSA法、これらを組み合わせたPSA法であるDuplex PSA法等、何れの方法にしても、易吸着成分を吸着させ難吸着成分を脱着させる工程(以下、易吸着成分を吸着させる工程を「吸着工程」と称す)を加圧下で行い、難吸着成分を吸着させ易吸着成分を脱着させる工程(以下、易吸着成分を脱着させる工程を「再生工程」と称す)を減圧下で行うことに違いはない。
しかし、吸着帯を吸着筒外部へ流出させる操作は、難吸着成分の濃度を低下させる、あるいは難吸着成分、易吸着成分を共に多く含んだ混合ガスを排気することに繋がり、いずれにしても易吸着成分の回収率の低下が避けられない。
他方、逆に易吸着成分の回収率を高くすることは、吸着帯を吸着筒外部へ流出させないことで容易に実現できるが、この場合、易吸着成分のガス濃度低下が避けられない。従って、並流パージプロセスでも、易吸着成分と難吸着成分を同時に高濃度で回収することは難しかった。
<吸着工程>は、原料ガス貯留槽1のガス濃度で形成される第1の吸着帯が、下部筒から上部筒に移動するまで行われる(図6の「吸着工程終了時における吸着剤充填層のキセノン濃度分布を示す模式図」参照)。次いで、圧縮機4から供給するガスを、易吸着成分を貯留する易吸着成分貯留槽2内のガスに切り替え、易吸着成分を下部筒に供給する<リンス工程>を行う。
これは、活性炭が酸素、アルゴンに対して窒素とほぼ同じ吸着量を有することから、酸素とアルゴンが窒素と同様に濃縮されるためである。また、キセノン、窒素に加えて水素、ヘリウムが含まれる場合には、水素、ヘリウムが活性炭に吸着されないため、酸素、アルゴンに比べてさらに容易に分離できる。従って、易吸着成分貯留槽2にはキセノン、難吸着成分貯留槽3には、難吸着成分である窒素、水素、ヘリウムの混合ガスを回収することができる。
本発明の圧力変動吸着式ガス分離方法は、易吸着成分と同時に難吸着成分も高濃度、高回収率で採取することができるため、目的成分を難吸着成分、除去すべき成分を易吸着成分とし、目的成分である難吸着成分を高濃度、高回収率で回収することもできる。
例えば、吸着剤としてNa−A型ゼオライトを用いた場合、Na−A型ゼオライトは、クリプトン、キセノンに対して難吸着性を有し、窒素、酸素、アルゴンに対しては易吸着性を示す。この場合、難吸着成分貯留槽3には目的成分であるクリプトン、キセノン、易吸着成分貯留槽2には排ガスである窒素、酸素、アルゴンを回収することができる。
下部筒10B、11B、及び上部筒10U、11Uとして、内径108.3mm、充填高さ500mmの円筒状の容器に活性炭2.0kg充填したものを使用した。圧縮機4と圧縮機5は、それぞれ40L/min.、20L/min.(流量[L/min.]は0℃、1気圧換算値、以下同じ。)の容量のものを使用した。装置はサイクルタイム500秒で運転され、各工程の時間は表5に示したタイムシーケンスで行った。
以上により、難吸着成分である窒素と、易吸着成分であるキセノンが共に、高濃度、高回収率で採取できることが確認できた。
原料ガス貯留槽1に導入される原料ガスの流量は2.1L/min.であり、ガス濃度は、キセノン23.8容量%、窒素23.8容量%、アルゴン23.8容量%、水素4.8容量%、残部酸素である。
又、易吸着成分貯留槽2より回収されるキセノン流量は0.5L/min.、難吸着成分貯留槽3より回収される混合ガス流量は1.6L/min.とした。
従って、回収したキセノンの濃度は約99.98%であり、回収率は99.7%となる。
以上の実験の結果より、難吸着成分が複数存在する場合においても、目的成分のキセノンが高濃度、高回収率で回収できることが確認できた。
4、5…圧縮機、 10B、11B…下部筒、 10U、11U…上部筒、
Claims (16)
- 少なくとも2種類の主要成分を含有する混合ガスを原料ガスとして用い、
前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対する易吸着性と、前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対する難吸着性とを有する吸着剤を用い、
前記吸着剤を充填した下部筒、上部筒と、前記下部筒へ導入する原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記吸着剤に対し易吸着性を示す主要成分を貯留する易吸着成分貯留槽を使用し、
前記吸着剤に対し易吸着性を示す易吸着成分と、前記吸着剤に対し難吸着性を示す難吸着成分とを回収する圧力変動吸着式ガス分離方法であって、
(a)原料ガス貯留槽のガスを加圧して下部筒に導入して、前記原料ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、下部筒からの前記易吸着成分が減少した混合ガスを上部筒に導入し、
前記混合ガス中に含まれる易吸着成分を上部筒に充填した吸着剤を用いて吸着して、上部筒から流出してくる前記難吸着成分を回収する工程と、
(b)易吸着成分貯留槽のガスを加圧して前記下部筒に導入して、下部筒に充填した吸着剤に共吸着された難吸着成分と前記吸着剤の空隙に残存する難吸着成分を上部筒に導出し、下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を上部筒に充填した吸着剤を用いて吸着して、上部筒から流出してくる難吸着成分を回収する工程と、
(c)下部筒を減圧して、下部筒に充填した吸着剤に吸着した易吸着成分を脱着させ、脱着してきた易吸着成分を易吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(d)上部筒を減圧して、上部筒に充填した吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを下部筒に導入し、下部筒から流出してきたガスを原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(e)上記工程(a)、(b)において回収した難吸着成分を向流パージガスとして上部筒に導入し、上部筒の吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、上部筒から流出してくるガスを下部筒に導入し、下部筒に導入したガスによって下部筒の吸着剤に吸着した易吸着成分を置換脱着し、下部筒から流出してくるガスを原料ガス貯留槽に回収する工程、
を有し、
(f)上記工程(a)−(e)をあらかじめ定められたシーケンスに基づいて、順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の易吸着成分および難吸着成分を同時に高濃度、高回収率で回収することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離方法。 - 前記(b)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(i)(b)の工程を終了した上部筒と、(e)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、かつ(b)の工程を終了した下部筒のガスを、(b)の工程を終了した上部筒へ導入するとともに、易吸着成分貯留槽のガスを前記下部筒に導入する工程、を含み、
前記(e)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(j)(e)の工程を終了した上部筒と、(b)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、(e)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した下部筒へ導入する工程、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。 - 前記(b)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(g)(a)の工程を終了した上部筒と、(e)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(a)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、かつ(a)の工程を終了した下部筒のガスを、(a)の工程を終了した上部筒へ導入するとともに、易吸着成分貯留槽内のガスを前記下部筒に導入する工程、を含み、
前記(e)の工程は、少なくとも2つ以上の下部筒と上部筒を用い、
(h)(e)の工程を終了した上部筒と、(b)の工程を終了した他の上部筒の間を連通させ、(b)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した上部筒へ導入し、(e)の工程を終了した上部筒のガスを、(e)の工程を終了した下部筒へ導入する工程、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。 - 上記吸着剤が平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤が、活性炭、Na−X型ゼオライト、Ca−X型ゼオライト、Ca−A型ゼオライト、Li−X型ゼオライトの群より選択される何れかであることを特徴とする請求項4に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 易吸着成分がキセノンあるいはクリプトンであって、難吸着成分が、酸素、窒素、アルゴン、水素、ヘリウムの何れかを含むガスであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 上記吸着剤が吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤吸着剤の細孔径が、0.4nm程度であることを特徴とする請求項7に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 難吸着成分がキセノンあるいはクリプトンであって、易吸着成分が、酸素、窒素、アルゴンの何れかを含むガスであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 少なくとも2種類の主要成分を含有する混合ガスでなる原料ガスから圧力変動吸着式ガス分離方法を用いて主要成分を分離する装置であって、
前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対して易吸着性を有し、前記原料ガスの少なくとも1種類の主要成分に対して難吸着性を有する吸着剤を用い、少なくとも1種類の前記吸着剤を充填した下部筒、上部筒と、前記原料ガスを導入する原料ガス貯留槽と、前記吸着剤に対し易吸着性を示す主要成分を貯留する易吸着成分貯留槽と、前記原料ガス貯留槽および前記易吸着成分貯留槽のガスを圧縮する圧縮機と、前記下部筒から排出されるガスを前記易吸着成分貯留槽に返送する機構と、前記下部筒から排出されるガスを原料ガス貯留槽に返送する機構を有することを特徴とする圧力変動吸着式ガス分離装置。 - 上記原料ガス貯留槽あるいは易吸着成分貯留槽は、外部から易吸着成分を補充する機構を有していることを特徴とする請求項10に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
- 上記原料ガス貯留槽あるいは難吸着成分貯留槽は、外部から難吸着成分を補充する機構を有していることを特徴とする請求項10に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
- 上記吸着剤が平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤であることを特徴とする請求項10に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
- 平衡吸着量差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤が、活性炭、Na−X型ゼオライト、Ca−X型ゼオライト、Ca−A型ゼオライト、Li−X型ゼオライトの群より選択される何れかであることを特徴とする請求項13に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
- 上記吸着剤が吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤であることを特徴とする請求項10に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
- 吸着速度差に基づいて易吸着成分と難吸着成分に分離する吸着剤の細孔径が、0.4nm程度であることを特徴とする請求項15に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
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