JP7487165B2 - 圧力変動吸着式ガス分離方法及び圧力変動吸着式ガス分離装置 - Google Patents
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Description
キセノンやクリプトンを分離する装置としては、キセノン又はクリプトンと、不純物である他成分を含む原料ガスを、キセノンやクリプトンに対して易吸着性で、不純物である他成分に対して難吸着性の吸着剤を充填した吸着筒に流し、易吸着成分であるキセノン又はクリプトンを吸着剤に吸着させ、難吸着成分である不純物をキセノンやクリプトンと分離するとともに、吸着剤に吸着したキセノン又はクリプトンを吸着剤より脱離させて高濃度で回収する方法がある。
前記吸着剤を充填した下部筒及び上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの前記易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記易吸着成分を高圧にて貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽又は前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記上部筒からの前記難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、を備える圧力変動吸着式ガス分離装置を使用し、前記原料ガス中の前記易吸着成分と前記難吸着成分とを分離し、前記易吸着成分及び前記難吸着成分のそれぞれを回収する圧力変動吸着式ガス分離方法であって、
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程と、
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程と、
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
を有し、
前記工程(a)~工程(d)を予め定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の前記易吸着成分及び前記難吸着成分を同時に回収し、
前記工程(b)の後に前記工程(c)を行う、圧力変動吸着式ガス分離方法。
[2] さらに、
(e)前記上部筒を減圧して、前記上部筒の前記吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してきたガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)前記工程(a)において回収した前記難吸着成分を向流パージガスとして前記上部筒に導入し、前記上部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を置換脱着し、前記上部筒から流出してくるガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してくるガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(g)前記工程(b)において導出した前記難吸着成分を導入することで前記下部筒及び前記上部筒を加圧する工程と、
を有し、
前記工程(a)~工程(g)の各工程を予め定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の前記易吸着成分及び前記難吸着成分を同時に回収する、[1]に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
[3] 前記工程(c)は前記易吸着成分高圧貯留槽が所定の圧力に到達したら終了する、[1]又は[2]に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
[4] 前記圧縮機を通気するガス中の前記易吸着成分の濃度が前記工程(c)の開始前において予め定められた濃度に達していなければ、前記工程(c)をスキップし、前記工程(b)完了後に前記工程(d)を行う、[1]~[3]のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
[5] 前記易吸着成分低圧貯留槽は吸着剤が充填された容器である、[1]~[4]のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
[6] 吸着剤と、前記吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分及び前記吸着剤に対して難吸着性である難吸着成分を含む原料ガスと、を用い、
前記吸着剤を充填した下部筒及び上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの前記易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記易吸着成分を高圧にて貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽又は前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記上部筒からの前記難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、制御部と、を備え、前記原料ガス中の前記易吸着成分と前記難吸着成分とを分離し、前記易吸着成分及び前記難吸着成分のそれぞれを回収する圧力変動吸着式ガス分離装置であって、
前記制御部は、以下の工程(a)~工程(d)の各工程を予め定められたシーケンスによって制御し、
前記工程(b)の後に前記工程(c)を行う、圧力変動吸着式ガス分離装置。
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程。
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程。
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程。
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程。
[7] 前記制御部は、以下の工程(a)~工程(g)の各工程を予め定められたシーケンスによって制御する、[6]に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程。
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程。
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程。
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程。
(e)前記上部筒を減圧して、前記上部筒の前記吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してきたガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程。
(f)前記工程(a)において回収した前記難吸着成分を向流パージガスとして前記上部筒に導入し、前記上部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を置換脱着し、前記上部筒から流出してくるガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してくるガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程。
(g)前記工程(b)において導出した前記難吸着成分を導入することで前記下部筒及び前記上部筒を加圧する工程。
[8] 前記圧縮機と前記下部筒が接続する流路に、一端が前記易吸着成分高圧貯留槽に接続する流路と接続する分岐バルブを有し、
前記分岐バルブに切替用三方ボールバルブ、ロータリーバルブ、三方分流型ベローズバルブ及び三方分流型ダイアフラムバルブから選択されるいずれか1つを使用する、[6]又は[7]に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
[9] 前記圧縮機の吸気側流路及び吐出側流路のいずれか一方の流路に、前記流路を流れるガス中の前記易吸着成分の濃度を測定する易吸着成分濃度計を有し、
前記制御部が前記易吸着成分濃度計の値に基づいて前記工程(c)を実施しないように制御する、[6]~[8]のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
[10] 前記易吸着成分低圧貯留槽は吸着剤が充填された容器である、[6]~[9]のいずれかに記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
図1に概略構成を示す圧力変動吸着式ガス分離装置100は、吸着剤と、前記吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分及び前記吸着剤に対して難吸着性である難吸着成分を含む原料ガスと、を用い、前記原料ガス中の前記易吸着成分と前記難吸着成分とを分離し、前記易吸着成分及び前記難吸着成分のそれぞれを回収する圧力変動吸着式ガス分離装置である。
吸着剤の被吸着ガスの選択性には、平衡吸着量の相違によるものと、吸着速度の相違によるものとがある。
平衡吸着量の相違による選択性を有する吸着剤(平衡分離型吸着剤)の一例である活性炭では、キセノンを窒素やアルゴンよりも10倍以上多く吸着する(298K、100kPa(abs))。
吸着速度の相違による選択性を有する吸着剤(速度分離型吸着剤)の一例であるモレキュラーシーブスカーボン(MSC)では、酸素と窒素の吸着速度比は15前後である。
MSCの場合、易吸着成分は、例えば、酸素であり、難吸着成分は、例えば、窒素である。
経路L1は、原料ガスを原料ガス貯留槽1に導入する経路である。
経路L2は、原料ガス貯留槽1のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
経路L3は、易吸着成分低圧貯留槽2のガスを圧縮機4へ導出する経路である。
経路L4、経路L5は、それぞれ、圧縮機4からのガスを下部筒10B、下部筒11Bに導入する経路である。
経路L6は、上部筒10U、上部筒11Uからのガスを難吸着成分貯留槽3に導入する経路である。
経路L7は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を装置系外に供給する経路である。
経路L8は、難吸着成分貯留槽3からの難吸着成分を向流パージガスとして上部筒10U、上部筒11Uに導入する経路である。
経路L9、経路L10は、それぞれ、下部筒10B、下部筒11Bからのガスを、原料ガス貯留槽1又は易吸着成分低圧貯留槽2に返送する経路である。
経路L11は、下部筒10B、下部筒11Bからのガスを、原料ガス貯留槽1に返送する流路である。
経路L12は、下部筒10B、下部筒11Bからのガスを、易吸着成分低圧貯留槽2に返送する流路である。
経路L13は、易吸着成分高圧貯留槽5からの易吸着成分を製品ガスとして供給する経路である。
経路L14は、上部筒10Uと上部筒11Uとの間で均圧を行う均圧ラインである。
経路L15は、圧縮機4で圧縮した易吸着成分低圧貯留槽2のガスを易吸着成分高圧貯留槽5に供給する流路である。
経路L16は、原料ガス貯留槽1、易吸着成分低圧貯留槽2からのガスを、圧縮機4に導入する経路である。
経路L17、経路L18は、それぞれ、圧縮機4で圧縮したガスを下部筒10B、下部筒11Bに供給する流路である。
前記分岐バルブV18としては、例えば、切替用三方ボールバルブ、ロータリーバルブ、三方分流型ベローズバルブ及び三方分流型ダイアフラムバルブから選択されるいずれか1つを使用することが好ましい。
ガスの流路のデッドボリュームに残留する難吸着成分は、回収される易吸着成分を汚染するため、デッドボリュームをより少なくすることが望ましい。そのため、分岐バルブV18として、デッドボリュームが少ない、切替用三方ボールバルブ、ロータリーバルブ、三方分流型ベローズバルブ、三方分流型ダイアフラムバルブ等を使用することが好ましい。
下部筒10B、上部筒10Uは、(1)吸着工程、(2)均圧減圧工程、(3)回収工程、(4)下部筒減圧工程、(5)上部筒減圧工程、(6)パージ再生工程、(7)均圧加圧工程、(8)回収工程が実施される。
下部筒10B、上部筒10Uが上述した(1)吸着工程~(8)回収工程の各工程を行っている間、下部筒11B、上部筒11Uは、(4)下部筒減圧工程、(5)上部筒減圧工程、(6)パージ再生工程、(7)均圧加圧工程、(8)回収工程、(1)吸着工程、(2)均圧減圧工程、(3)回収工程が実施される。
原料ガス貯留槽1からの混合ガスを圧縮機4で圧縮し、経路L2、L16、経路L18(L17)、経路L4(L5)を介して下部筒10B(11B)に供給する。下部筒10B(11B)と上部筒10U(11U)との間は、バルブV5(V6)を開放することで流通されているため、下部筒10B(11B)と上部筒10U(11U)との間は、ほぼ同様に圧力上昇する。
原料ガス貯留槽1の混合ガスは、経路L1から導入された原料ガスと後述する上部筒減圧工程、パージ再生工程で下部筒10B、下部筒11Bから排出されたガスとの混合ガスである。
下部筒10B(11B)に供給された混合ガスは、下部筒10B(11B)上部に進むにつれて、キセノンが優先的に吸着され、気相中に窒素が濃縮される(気相中のキセノン濃度が低下する)。濃縮された窒素は、下部筒10B(11B)から上部筒10U(11U)に導入され、上部筒10U(11U)において、窒素中に含まれる微量のキセノンがさらに吸着される。
上部筒10U(11U)の圧力が難吸着成分貯留槽3の圧力より高くなった後、上部筒10U(11U)においてさらに濃縮された窒素は、経路L6を介して、難吸着成分貯留槽3へ導出される。難吸着成分貯留槽3の窒素は、原料ガス中に含まれる窒素の流量に応じた流量が、経路L7から装置系外に排出され、残りのガスはパージ再生工程における向流パージガスとして利用される。
バルブV1を閉止、バルブV2を開放することで、下部筒10B(11B)に導入するガスを易吸着成分低圧貯留槽2のキセノンに変更する。易吸着成分低圧貯留槽2からのキセノンを下部筒10B(11B)に導入することによって、下部筒10B(11B)の吸着剤充填層に共吸着された窒素と、吸着剤空隙に存在する窒素を上部筒10U(11U)へ押し出し、下部筒10B(11B)内をキセノンで吸着飽和とする。
この間、上部筒10U(11U)から経路L14(均圧ライン)を介して、もう一方の上部筒11U(10U)に窒素を導出することで下部筒10B(11B)、上部筒10U(11U)を減圧し、パージ再生工程を終了した下部筒11B(10B)、上部筒11U(10U)を均圧する。この時、上部筒10U(11U)から流出させる均圧ガスの流量は、均圧減圧工程が終了時点で均圧が完了するように流量調整バルブ、オリフィスなどを用いて調整する。
このような問題点に対して、圧縮機4の流入側流路及び/又は吐出側流路に易吸着成分濃度計6を配置して易吸着成分の濃度を測定し、基準値以上であれば易吸着成分高圧貯留槽5に回収し、基準値未満であれば回収しないように制御することで、易吸着成分高圧貯留槽5への難吸着成分の混入を防止することができる。
(3)回収工程を実施しなくても、易吸着成分高圧貯留槽5に貯留された易吸着成分を経路L13を通じて製品ガスとして供給先の装置に供給すればよく、供給先の装置のプロセスを急に止める必要はない。また、次のサイクルで易吸着成分濃度計6によって測定される易吸着成分の濃度が基準を満たしていれば、(3)回収工程を実施して、易吸着成分高圧貯留槽5に易吸着成分を回収する。この場合、(3)回収工程は、易吸着成分高圧貯留槽5が所定の圧力に到達したら終了することにしていれば、前のサイクルで回収しなかった易吸着成分を後のサイクルで回収したこととなる。
易吸着成分濃度計6としては、例えば、超音波式濃度計又は特許第3655569号公報に記載された装置を使用することが好ましい。
バルブV3(V4)を閉止、バルブV18を開放することで、圧縮機4で圧縮する易吸着成分低圧貯留槽2のキセノンを、易吸着成分高圧貯留槽5に送付する。なお、バルブV3を閉止することで、下部筒10B(11B)及び上部筒10U(11U)にガスの流れがなくなり休止状態となる。(3)回収工程の時間は予め定められた時間で完了してもよいが、易吸着成分高圧貯留槽5の圧力が予め定められた値に達した時点で完了としてもよい。易吸着成分高圧貯留槽5が予め定められた圧力に到達した時点で完了とすることで、易吸着成分高圧貯留槽5の回収ガス量が都度増減しないようにできる。
バルブV3(V4)、バルブV5(V6)を閉止し、バルブV11、バルブV12(V13)を開放する。これにより、(1)吸着工程~(2)均圧減圧工程間に下部筒10B(11B)に吸着されたキセノンは、易吸着成分低圧貯留槽2の差圧によって脱着し、経路L9(L10)、経路L12を介して、易吸着成分低圧貯留槽2に回収される。易吸着成分低圧貯留槽2に回収されたキセノンは並流パージガスとして上述した均圧減圧工程で使用される。この間、上部筒10U(11U)は、バルブV5(V6)、バルブV7(V8)、バルブV9が閉止されていることにより休止状態となる。
バルブV11を閉止し、バルブV5(V6)、バルブV10を開放する。すると、(4)下部筒減圧工程において休止していた上部筒10U(11U)と減圧を行った下部筒10B(11B)の間に圧力差が生じることから、上部筒10U(11U)内のガスは下部筒10B(11B)に流入する。下部筒10B(11B)に導入されたガスは、下部筒10B(11B)をパージしながら、経路L9(L10)、経路L11を介して原料ガス貯留槽1に回収される。原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、経路L1から導入される原料ガスと再混合されて、(1)吸着工程時に再び下部筒10B(11B)に供給される。
バルブV14(V15)を開放する。難吸着成分貯留槽3に貯留した窒素は、向流パージガスとして、経路L8を介して、上部筒10U(11U)に導入される。上部筒10U(11U)に導入された窒素は、上部筒10U(11U)下部に進むにつれて、吸着していたキセノンを置換脱着させる。脱着された比較的キセノンを多く含んだガスは、下部筒10B(11B)、経路L9(L10)、経路L11を介して原料ガス貯留槽1に回収される。
原料ガス貯留槽1に回収されたガスは、(5)上部筒減圧工程と同様に、経路L1から導入される原料ガスと混合されて、(1)吸着工程時に再び下部筒10B(11B)に供給される。
ここで、向流パージガスに使用される窒素は、(1)吸着工程において上部筒10U(11U)から導出された窒素を、難吸着成分貯留槽3を介さず、直接(5)パージ再生工程を行っている上部筒11U(10U)に導入してもよい。
バルブV12(V13)、バルブV14(V15)を閉止し、バルブV9を開放する。これによって、上部筒11U(10U)内のガスは、上部筒10U(11U)に導入される(均圧加圧操作)。上部筒10U(11U)に導入されるガスは窒素濃度が高いため、上部筒10U(11U)内のキセノンを上部筒10U(11U)下部及び下部筒10B(11B)へ押し下げることができる。
バルブV9を閉止することで、下部筒11B(10B)及び上部筒11U(10U)にガスの流れがなくなり休止状態となる。なお、ここでバルブV6(V5)は開放状態となっているが、閉止してもよい。
また、一方で下部筒10Bと上部筒10Uで(4)下部筒減圧工程~(8)回収工程の工程を行っている間、下部筒11Bと上部筒11Uでは(1)吸着工程~(3)回収工程の工程が行われる。
また、経路L1からの原料ガスの導入、経路L7からの窒素の排出、経路L13からのキセノンの導出は、工程によらず連続的に行われる。
<実験方法>
図1に概略を示す圧力変動吸着式ガス分離装置100を使用して、次の運転条件にて24時間の連続運転を行った。
なお、ガス体積は0℃、1気圧下の条件とする。
(1)原料ガス
キセノンと窒素の混合ガス 3.0L/min
原料ガスの内訳:キセノン(易吸着成分;10体積%) 0.3L/min
窒素(難吸着成分;90体積%) 2.7L/min
(2)下部筒(10B,11B)及び上部筒(10U,11U)
ステンレス鋼管80A(外径89.1mm、厚さ3.0mm、内径83.1mm)
充填剤充填高さ 500mm(吸着剤として活性炭1.5kg充填)
(3)圧縮機4
ダイアフラム式圧縮機 25L/min(吐出圧力 800kPa(abs))
(4)易吸着成分高圧貯留槽
容積 2.5L
(5)バルブの開閉状態
圧力変動吸着式ガス分離装置100のバルブの開閉状態を、上記した表1に示すとおりとした。
1サイクルタイムを300秒として各工程の工程時間を、上記した表2に示すとおりとした。
経路L7から導出された窒素濃度、経路L13から導出されたキセノン濃度がほぼ一定に落ち着き、ほぼ循環定常状態に達した。この時の結果は次のとおりであった。
・キセノン中の窒素濃度 1000ppm・・・製品キセノン純度 99.9%
・窒素中のキセノン濃度 110ppm・・・キセノン回収率 99.9%
・易吸着成分高圧貯留槽5の圧力 700~750kPa(abs)
以上のとおり、易吸着成分高圧貯留槽5の圧力は700~750kPa(abs)であり、製品キセノンの供給圧力を700kPa(abs)以上で維持することが確認できた。また、製品キセノン純度99.9%、キセノン回収率99.9%と高く、いずれも優れていた。
<実験方法>
特許文献1(特開2007-130611号公報)の実施例1と同様にして分離実験を行った。すなわち、図10に概要を示す圧力変動吸着式ガス分離装置101を使用して、0℃、1気圧下、次の運転条件にて24時間の連続運転を行った。
(1)原料ガス
キセノンと窒素の混合ガス 3.0L/min
原料ガスの内訳:キセノン(易吸着成分;10体積%) 0.3L/min
窒素(難吸着成分;90体積%) 2.7L/min
(2)下部筒(10B,11B)及び上部筒(10U,11U)
ステンレス鋼管80A(外径89.1mm、厚さ3.0mm、内径83.1mm)
充填剤充填高さ 500mm(吸着剤として活性炭1.5kg充填)
(3)圧縮機4
ダイアフラム式圧縮機 25L/min(吐出圧力 800kPa(abs))
(4)易吸着成分高圧貯留槽
容積 2.5L
(5)バルブの開閉状態
以下の表3に圧力変動吸着式ガス分離装置101のバルブの開閉状態を示す。
1サイクルタイムを300秒として各工程の工程時間を以下の表4に示すとおりとした。
経路L7から導出された窒素濃度、経路L13から導出されたキセノン濃度がほぼ一定に落ち着き、ほぼ循環定常状態に達した。この時の結果は次のとおりであった。
キセノン中の窒素濃度 1000ppm・・・製品キセノン純度 99.9%
窒素中のキセノン濃度 110ppm・・・キセノン回収率 99.9%
易吸着成分高圧貯留槽5の圧力 380~435kPa(abs)
以上のとおり、高回収率でキセノン回収できることが確認できた。しかし、製品キセノンの供給圧力は最大350kPa(abs)程度と低かった。
<実験方法>
バルブV18をダイアフラム式二方弁(メタルダイアフラムバルブ FPR-ND-71-9.52、フジキン社製)からダイアフラム式三方分流弁(メタルダイアフラムバルブ FPR-NDTB-71-9.52、フジキン社製)に変更して、実施例1と同じ条件で運転した。
経路L7から導出された窒素濃度、経路L13から導出されたキセノン濃度がほぼ一定に落ち着き、ほぼ循環定常状態に達した。
・キセノン中の窒素濃度 800ppm・・・製品キセノン純度 99.92%
・窒素中のキセノン濃度 110ppm・・・キセノン回収率 99.9%
易吸着成分高圧貯留槽5の圧力 700~755kPa(abs)
以上のとおり、極めて高回収率でキセノン回収できることが確認できた。さらに、製品キセノンの供給圧力も700kPa(abs)以上で維持することが確認できた。
バルブV18としてダイアフラム式三方分流弁を使用したことにより、易吸着成分高圧貯留槽に混入する難吸着成分が減少し、製品キセノンをより高純度にすることができた。
Claims (10)
- 吸着剤と、前記吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分及び前記吸着剤に対して難吸着性である難吸着成分を含む原料ガスと、を用い、
前記吸着剤を充填した下部筒及び上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの前記易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記易吸着成分を高圧にて貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽又は前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記上部筒からの前記難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、を備える圧力変動吸着式ガス分離装置を使用し、前記原料ガス中の前記易吸着成分と前記難吸着成分とを分離し、前記易吸着成分及び前記難吸着成分のそれぞれを回収する圧力変動吸着式ガス分離方法であって、
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程と、
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程と、
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程と、
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程と、
を有し、
前記工程(a)~工程(d)を予め定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の前記易吸着成分及び前記難吸着成分を同時に回収し、
前記工程(b)の後に前記工程(c)を行う、圧力変動吸着式ガス分離方法。 - さらに、
(e)前記上部筒を減圧して、前記上部筒の前記吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してきたガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(f)前記工程(a)において回収した前記難吸着成分を向流パージガスとして前記上部筒に導入し、前記上部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を置換脱着し、前記上部筒から流出してくるガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してくるガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程と、
(g)前記工程(b)において導出した前記難吸着成分を導入することで前記下部筒及び前記上部筒を加圧する工程と、
を有し、
前記工程(a)~工程(g)の各工程を予め定められたシーケンスに基づいて順次繰り返し行うことによって前記原料ガス中の前記易吸着成分及び前記難吸着成分を同時に回収する、請求項1に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。 - 前記工程(c)は前記易吸着成分高圧貯留槽が所定の圧力に到達したら終了する、請求項1又は2に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 前記圧縮機を通気するガス中の前記易吸着成分の濃度が前記工程(c)の開始前において予め定められた濃度に達していなければ、前記工程(c)をスキップし、前記工程(b)完了後に前記工程(d)を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 前記易吸着成分低圧貯留槽は吸着剤が充填された容器である、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧力変動吸着式ガス分離方法。
- 吸着剤と、前記吸着剤に対して易吸着性である易吸着成分及び前記吸着剤に対して難吸着性である難吸着成分を含む原料ガスと、を用い、
前記吸着剤を充填した下部筒及び上部筒と、少なくとも前記原料ガスを貯留する原料ガス貯留槽と、前記下部筒からの前記易吸着成分を貯留する易吸着成分低圧貯留槽と、前記易吸着成分を高圧にて貯留する易吸着成分高圧貯留槽と、前記原料ガス貯留槽又は前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に送る圧縮機と、前記上部筒からの前記難吸着成分を貯留する難吸着成分貯留槽と、制御部と、を備え、前記原料ガス中の前記易吸着成分と前記難吸着成分とを分離し、前記易吸着成分及び前記難吸着成分のそれぞれを回収する圧力変動吸着式ガス分離装置であって、
前記制御部は、以下の工程(a)~工程(d)の各工程を予め定められたシーケンスによって制御し、
前記工程(b)の後に前記工程(c)を行う、圧力変動吸着式ガス分離装置。
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程。
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程。
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程。
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程。 - 前記制御部は、以下の工程(a)~工程(g)の各工程を予め定められたシーケンスによって制御する、請求項6に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
(a)前記原料ガス貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記ガス中の前記易吸着成分を前記吸着剤に吸着し、前記下部筒からの前記易吸着成分が減少したガスを前記上部筒に導入し、前記易吸着成分が減少したガス中に含まれる前記易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着して、前記上部筒から流出してくる前記難吸着成分を前記難吸着成分貯留槽に回収する工程。
(b)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記下部筒に導入して、前記下部筒の前記吸着剤に共吸着された前記難吸着成分及び前記吸着剤の空隙に存在する前記難吸着成分を前記上部筒に導出し、前記下部筒から流入してきたガス中に含まれる易吸着成分を前記上部筒の前記吸着剤に吸着させて、前記上部筒から前記難吸着成分を導出させる工程。
(c)前記易吸着成分低圧貯留槽からのガスを加圧して前記易吸着成分高圧貯留槽に回収する工程。
(d)前記下部筒を減圧して、前記下部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を脱着させ、脱着してきた前記易吸着成分を前記易吸着成分低圧貯留槽に回収する工程。
(e)前記上部筒を減圧して、前記上部筒の前記吸着剤に吸着したガスを脱着させ、脱着してきたガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してきたガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程。
(f)前記工程(a)において回収した前記難吸着成分を向流パージガスとして前記上部筒に導入し、前記上部筒の前記吸着剤に吸着した前記易吸着成分を置換脱着し、前記上部筒から流出してくるガスを前記下部筒に導入し、前記下部筒から流出してくるガスを前記原料ガス貯留槽に回収する工程。
(g)前記工程(b)において導出した前記難吸着成分を導入することで前記下部筒及び前記上部筒を加圧する工程。 - 前記圧縮機と前記下部筒が接続する流路に、一端が前記易吸着成分高圧貯留槽に接続する流路と接続する分岐バルブを有し、
前記分岐バルブに切替用三方ボールバルブ、ロータリーバルブ、三方分流型ベローズバルブ及び三方分流型ダイアフラムバルブから選択されるいずれか1つを使用する、請求項6又は7に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。 - 前記圧縮機の吸気側流路及び吐出側流路のいずれか一方の流路に、前記流路を流れるガス中の前記易吸着成分の濃度を測定する易吸着成分濃度計を有し、
前記制御部が前記易吸着成分濃度計の値に基づいて前記工程(c)を実施しないように制御する、請求項6~8のいずれか1項に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。 - 前記易吸着成分低圧貯留槽は吸着剤が充填された容器である、請求項6~9のいずれか1項に記載の圧力変動吸着式ガス分離装置。
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