図1は、本実施例に係る指紋検出装置の構成を説明する説明図である。同図に示すように、この指紋検出装置1は、指紋画像を検出する指紋検出部10と、信号処理をおこなう信号処理部20と、指紋検出部10の配線に電圧を印加する駆動部21とを有する。
ここで、この指紋検出装置1は、熱伝導式による指紋検出装置である。具体的には、指紋検出部10の内部にマトリックス状に、複数のヒータと、複数の温度センサと、複数の逆電流防止用整流素子とを形成し、ヒータをラインごとに順次加熱して、整流素子により他のラインのヒータ誤作動を防止しつつ、加熱直後の温度上昇を複数の温度センサで検出することにより指紋画像を得るようにしたものである。
すなわち、指紋の凸部が温度センサ上に存在する場合、ヒータによって与えられた熱が凸部に大きく流出する。一方、指紋の凹部が温度センサ上に存在する場合には、熱伝導性の低い空気層を介しているため、ヒータによって与えられた熱が指に流出しにくくなる。これらの流出熱の大小に基づいた温度差を温度センサが検出することにより指の凹凸である指紋を検出することになる。
ところで、本実施例に係る指紋検出部10は、アモルファス半導体および/またはマイクロクリスタル半導体を材料とする膜を積層させたpinダイオード、あるいは、アモルファス半導体および/またはマイクロクリスタル半導体を材料とする膜と金属を材料とする膜とを積層させたショットキーダイオードにより、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を兼ねた検出素子を構成した点に特徴がある。この検出素子は、指紋検出部10の表面への投影面積が小さいため、かかる検出素子を高密度に配設することにより指紋検出精度を向上させることができる。また、かかる検出素子の製造方法は簡便であるため指紋検出装置1の製造コストを抑えることができる。
ここで、アモルファス半導体は、非結晶半導体とも呼ばれる半導体であり、アモルファスシリコン(以下「a−Si」と言う)が一般的である。なお、a−Si以外のアモルファス半導体としては、アモルファスシリコンカーボン(a−SiC)等がある。また、マイクロクリスタル半導体は、マイクロクリスタルシリコン(以下「μc−Si」と言う)等の微結晶半導体を指す。このμc−Siは、60〜100Åの島状結晶領域とa−Siとの混合層である。以下では、アモルファス半導体としてa−Siを用い、マイクロクリスタル半導体としてμc−Siを用いた場合について説明することとする。
次に、図1に示した指紋検出装置1の構造についてさらに具体的に説明する。図2は、図1に示した指紋検出部10の正面および断面構造と、検出素子111の断面構造とを説明する説明図である。この正面図では、断面図に示している基板100、絶縁膜113および保護膜114は簡略化のため示していない。ここでは、指紋検出部10を薄膜のパターンニングプロセスにより形成する場合について説明する。
同図に示すように、この指紋検出部10は、基板100、検出素子111、配線112a、配線112b、絶縁膜113および保護膜114を有する。そして、かかる指紋検出部10は、基板100上に、配線112a、検出素子111、絶縁膜113、配線112b、保護膜114を次々と積層させることにより形成される。
かかる指紋検出部10は、a−Siおよび/またはμc−Siを材料とする膜を積層させたpinダイオード、あるいは、a−Siおよび/またはμc−Siと金属とを材料とする膜を積層させたショットキーダイオードにより検出素子111を構成した点に特徴がある。このように、本実施例に係る指紋検出部10は、半導体膜などの薄膜を積層させることによりヒータ、温度センサおよび整流素子の機能を併せ持つ検出素子111を構成するので、各素子の基板100に対する投影面積を小さくすることができる。すなわち、単位面積あたりの素子数を多くすることができるため、センサ画素の高密度化により高精度な指紋データを取得することが可能となる。
pinダイオードあるいはショットキーダイオードは、所定の電圧を印加して順電流を流すと発熱するため、ヒータとしての役割を担うとともに、温度の上昇に伴い電流量が増加する負の抵抗温度特性を有するため温度センサとしての役割をも担う。さらに、pinダイオードあるいはショットキーダイオードは、ダイオードの特性上、当然に整流作用を有するため整流素子としての役割をも担う。このように、かかる検出素子111単体で、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を兼ねることができる。
なお、a−Siあるいはμc−Siは、光電特性に優れていることから光エネルギーを電気エネルギーに変える太陽電池や、TFT(Thin Film Transistor)液晶などの材料として用いられている。このように、a−Siあるいはμc−Siは、光照射により電流を取り出したり、微弱電流を通電するデバイスの材料として用いられたりすることは通常であったが、発熱を目的としたヒータの材料として用いられることは一般的ではなかった。
検出素子111の拡大図(図2右側)に示したように、検出素子111は、下部配線112aおよび上部配線112bに挟まれており、通電により発熱する。上述したように、この検出素子111は、a−Siおよび/またはμc−Siを材料とする膜を積層させたpinダイオード、あるいは、a−Siおよび/またはμc−Siと金属とを材料とする膜を積層させたショットキーダイオードにより構成される。ここで、図3〜図5を用いて、かかる検出素子111のバリエーションについて説明しておく。
図3は、図2に示した検出素子111をpinダイオードで構成した場合の断面構造を説明するための説明図である。同図に示すように、検出素子111aは、下部配線112aの上部に、p型領域層、i型領域層およびn型領域層を次々と積層させることにより形成される。各領域層の材料は、a−Siあるいはμc−Siのどちらを用いることとしてもよく、たとえば、p型領域層にのみa−Siを用い、他の領域層にはμc−Siを用いることとしてもよい。なお、各領域層の積層の順序を逆にすれば、検出素子111bを形成することができる。
図4は、図2に示した検出素子111をショットキーダイオードで構成した場合の断面構造を説明するための説明図である。同図に示すように、ショットキーダイオードは、p型領域層などの半導体膜と、Metal膜(金属膜)とをショットキー接触させることにより形成される。なお、各領域層の材料として、a−Siあるいはμc−Siのどちらを用いてもよい点は、上述したpinダイオードの場合と同様である。
検出素子111cは、下部配線112aの上部に、p型領域層およびi型領域層を積層させ、このi型領域層に金属膜をショットキー接触するよう積層させることにより形成される。なお、下部配線112aとp型領域層との接触、i型領域層と上部配線112bとの接触は、いずれもオーミック接触である。なお、以下の説明において、「ショットキー接触」と明記していない半導体膜と金属膜との接触は、オーミック接触であるものとする。
検出素子111dは、下部配線112aの上部に、金属膜を積層させ、この金属膜にi型領域層をショットキー接触するよう積層させ、さらに、p型領域層を積層させることにより形成したものである。また、検出素子111eおよび検出素子111fは、検出素子111cおよび検出素子111dのi型領域層を省いたものであり、p型領域層と金属膜との接触はショットキー接触である。
また、検出素子111g、検出素子111h、検出素子111iおよび検出素子111jは、それぞれ、検出素子111c、検出素子111d、検出素子111eおよび検出素子111fのp型領域層をn型領域層に置き換えたものである。
図5は、図4に示した検出素子を金属膜なしの構成とした場合の断面構造を説明するための説明図である。図4に示した検出素子111c〜検出素子111jは、検出素子内部の各領域層とショットキー接触する金属膜をそれぞれ含んでいた。しかしながら、金属膜を含まない検出素子と、下部配線112aあるいは上部配線112bとをショットキー接触させることとすれば、かかる金属膜を省略することができる。
たとえば、検出素子111kは、下部配線112aの上部にp型領域層およびi型領域層を次々と積層させたものである。この検出素子111kの上部に、上部配線112bをショットキー接触するよう積層させると、図4に示した検出素子111cと同様のショットキーダイオードを形成することができる。同様に、図5に示した検出素子111l〜111rと、下部配線112aあるいは上部配線112bとをショットキー接触させるよう積層させると、図4に示した検出素子111d〜検出素子111jと同様のショットキーダイオードを形成することができる。
このように、本実施例に係る指紋検出部10は、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を兼ねた検出素子111を上下の配線(配線112aおよび112b)で挟みこんだシンプルな構成をとる。
この指紋検出部10の各構成部を形成する場合には、以下のような材料を用いる。まず、基板100には、石英、ガラス、ポリイミド、アルミナ、セラミックス、サファイアなどの低熱伝導性材料が用いられる。
また、検出素子111の材料には、a−Si、μc−Siおよび各種金属が用いられる。具体的には、検出素子111をpinダイオードで構成する場合には、a−Siやμc−Siが用いられ、ショットキーダイオードで構成する場合には、a−Siやμc−Siと各種金属とが用いられる。なお、p型領域層とショットキーダイオードを形成する金属材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、銅などがあり、n型領域層とショットキーダイオードを形成する金属材料としては、金、プラチナ、パラジウム、スズなどがある。
配線112aおよび配線112bを形成する材料は、それらが発する熱による指紋検出精度の低下を防ぐため、検出素子111の抵抗値よりも二桁以上小さい配線抵抗値となるものが望ましい。具体的には、配線112aおよび配線112bには、銀、銅、アルミニウム、クロム、酸化スズ、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)などの導電性材料が用いられる。なお、金属膜を省いた検出素子111(図5に示した111k〜111r)とショットキーダイオードを形成する場合には、検出素子111をショットキーダイオードで構成した場合と同様の金属材料が用いられる。
絶縁膜113および保護膜114には、酸化珪素、窒化珪素、ダイヤモンド、非導電性ダイヤモンドライクカーボン、酸化タンタル、酸化アルミニウムなどの絶縁性材料が用いられる。
特に、この指紋検出装置1を携帯電話などの情報機器のディスプレイ上に配設する場合には、指紋検出部10全体を透明化するために、以下のような材料を用いる。まず、基板100には、石英、ガラス、サファイアなどの透明性材料が用いられる。
検出素子111に用いられる、約1μm程度の薄膜のa−Siやμc−Siは褐色透明材料である。しかしながら、かかる検出素子111を微小・細線パターンとしてマトリックス状に配置することにより、指紋検出部10の透明性を確保することができる。
配線112aおよび配線112bには、酸化スズ、ITOなどの透明性の導電性材料が用いられる。また、絶縁膜113および保護膜114には、透明性の非導電性材料である酸化珪素、窒化珪素、ダイヤモンド、非導電性ダイヤモンドライクカーボンなどが用いられる。
図6は、図2に示した指紋検出部10の配線パターンの変更例1を説明する説明図である。同図に示すように、検出素子111の下部に設けられた配線112aの形状は幅広化されている。このような形状とすることで、配線112aを流れる電流の電圧降下を防止することができる。すなわち、この配線112aが電流供給用配線である場合には供給電圧を各検出素子111間において均一化することができ、また、電流検出用配線である場合にも同様に検出電圧を均一化することができる。
また、同図に示すように、上部に設けられた配線112bの形状は、主配線部分と検出素子111に接続される部分の中間部分が絞りこまれたものとなっている。このような形状とすることで、検出素子111から発せられた熱をかかる主配線部に逃がしにくくするので検出精度を向上させることができる。
図7は、図2に示した指紋検出部10の配線パターンの変更例2を説明する説明図である。同図に示すように、上述した検出素子111の下部に設けられた配線112aの幅広化に加え、上部に設けられた配線112bも幅広化されている。このような形状とすることで、配線112bを流れる電流の電圧降下を防止することができる。すなわち、この配線112bが電流供給用配線である場合には供給電圧を各検出素子111間において均一化することができ、また、電流検出用配線である場合にも同様に検出電圧を均一化することができる。
このように、検出素子111としてa−Siなどを材料とする膜を積層させたpinダイオードあるいはショットキーダイオードを使用したことにより、検出素子111の上部には電流供給用配線または電流検出用配線のいずれか一方のみが設けられることになり、これらの配線の干渉による配線形状の制限がないため配線形状の自由度を高めることができる。
次に、検出素子111の形状の変更パターンについて説明する。図2、図6および図7に示した検出素子111の形状は正方形の島型であった。かかる島型はフォトリソグラフィー法などにより形成するため、正方形に限らず丸形などにすることも可能である。しかしながら、a−Siなどを材料とする膜を積層させたpinダイオードあるいはショットキーダイオードの特性を利用することにより、かかる検出素子111の形状をベタ膜状にすることもできる。
図8は、図7に示した検出素子111の形状の変更例を説明する説明図である。同図に示すように、指紋検出部10は、基板100上に、配線112a、検出素子111、絶縁膜113、配線112b、保護膜114の順で積層させることにより形成される点については、図2、図6および図7と同様である。ただし、検出素子111の形状は、ベタ膜状となっている点で図2、図6および図7とは異なっている。
この異なる点について詳細に説明すると、a−Siなどを材料とする膜を積層させたpinダイオードあるいはショットキーダイオードからなる検出素子111は、上部電極および下部電極により挟まれた領域のみがダイオードとして機能する特性を有する。このため、検出素子111をベタ膜状の連続体として形成したとしても、かかるベタ膜状の検出素子111上に絶縁膜113を積層させ、この絶縁膜113にマトリックス状の複数のコンタクトホールを形成することにより、複数の検出素子111をマトリックス状に配置した場合と同様の効果を得ることができる。
具体的には、図8の正面図に示したように、検出素子として機能させたい部分の絶縁膜113に、コンタクトホールを形成する。かかる正面図では、二本の配線112bと二本の配線112aが交わった四箇所の部分に正方形の破線で示したコンタクトホールが形成されている。そして、A−A´断面図に示したように、絶縁膜113の上部に積層された配線112bは、かかるコンタクトホール部分で検出素子111と接続されている。かかる接続の様子は、B−B´断面図においても示されている。
このように、検出素子111は、a−Siなどを材料としたpinダイオードあるいはショットキーダイオードにより構成したので、電極に挟まれた領域のみがダイオードとして機能する特性を利用することにより、かかる検出素子111の形状をベタ膜状とすることができる。なお、検出素子111をベタ膜状とした場合には、検出素子111自体が透明ではないために指紋検出部10を透明化するニーズに最適であるとはいえない。指紋検出部10を透明化したい場合には、図2、図6および図7に示したように検出素子111を島状に形成することが望ましい。
次に、上述した本実施例に係る検出素子111を用いた指紋検出部10の構成と比較するために、従来技術に係るp−Si検出素子211を用いた指紋検出部の構成について簡単に説明する。図18は、従来技術に係る指紋検出部の正面および断面構造を説明する説明図である。
同図に示すように、この指紋検出部は、基板200、p−Si検出素子211、配線212a、配線212b、絶縁膜213a、絶縁膜213bおよび保護膜214を有する。そして、かかる指紋検出部は、基板200上に、p−Si検出素子211、絶縁膜213a、配線212a、絶縁膜213b、配線212bおよび保護膜214を、次々と積層させることにより形成される。
配線(配線212aおよび配線212b)、絶縁膜(絶縁膜213aおよび絶縁膜213b)および保護膜214を有する点は図2と同様である。しかしながら、図18に示したように、p−Si検出素子212を有する点が、図2と大きく異なる。具体的には、図2に示した本実施例に係る検出素子111は、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割をpinダイオードあるいはショットキーダイオード単体で兼ねることは上述したとおりである。一方、かかる役割をp−Siを材料とする検出素子で実現するためには、p−Si膜上に、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を担う部分を形成する必要がある。
かかるp−Si検出素子211は、図18に示したようにL字型の形状に形成されており、ヒータとしての役割を担うn型抵抗領域211aと、ヒータ部までのリード部となるn型低抵抗領域211bと、リード部を配線212aに接続するためのn型高濃度不純物領域211cと、n型抵抗領域211aとの間にpn接合部を形成するp型低抵抗領域211dと、このp型低抵抗領域211dを配線212bに接続するためのp型高濃度不純物領域211eを有する。なお、かかる形状はL字型以外であっても構わない。
同図の正面図に示したように、ヒータとしての役割を担うn型抵抗領域211aは、必要な熱を発生するために所定の面積を確保する必要がある。そして、指紋検出面に発生した熱を効率良く伝導させるために、かかるヒータ部の上部には配線を設けないことが望ましい。なお、このn型抵抗領域211aは、温度変化により電流量が変化するため、温度センサとしての役割も兼ねることができる。そして、かかるn型抵抗領域211aとp型低抵抗領域211dとは、pn接合部(ダイオード)を形成するので、逆電流防止の整流素子の役割を担う。
p−Si検出素子211は、ヒータとしての役割を担うn型抵抗領域211a以外の部分(211b、211c、211dおよび211e)の抵抗値が、n型抵抗領域211aの抵抗値よりも小さくなるように形成され、さらに、配線212aおよび212bとの接続部分(211cおよび211e)には、高濃度の不純物領域が形成される。
このように、従来技術に係るp−Si検出素子211の構成は、本実施例に係る検出素子111の構成と比較して複雑である。また、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を担う部分が同一平面(同一膜)上に形成されるため、検出素子の面積は、本実施例に係る検出素子111と比較して大きなものとなる。
上述してきたように、本実施例に係る検出素子111を有する指紋検出装置1は、かかる検出素子111単体で、ヒータ、温度センサおよび整流素子の役割を兼ねるpinダイオードあるいはショットキーダイオードを用いて構成したので、従来技術に係るp−Si検出素子211と比較して、基板100に対する投影面積が小さい。すなわち、単位面積あたりの素子数を多くすることができるため、センサ画素の高密度化により高精度な指紋データを取得することが可能となる。
また、本実施例に係る検出素子111の製造方法は、従来技術に係るp−Si検出素子211の製造方法と比較して簡便であり、これにより指紋検出装置1の製造コストを抑えることが可能である。以下では、本実施例に係る指紋検出装置1の製造方法について説明するが、最初に、検出素子111を島状とした場合の製造方法について説明し、その次に、検出素子111をベタ膜状とした場合の製造方法について説明することとする。
最初に、検出素子111を島状とした場合の製造方法について、図9〜図13および図14−1〜6を用いて説明する。図9は検出素子111を島状とした場合における指紋検出部10の製造工程を示すフローチャートであり、図10〜図13は図6に示した検出素子構成膜成膜工程の詳細を示すフローチャートであり、図14−1は製造する指紋検出部10の正面図であり、図14−2〜6は図9に示した各製造工程に対応した図14−1のA−A´断面における側面図である。これらの図に示すように、指紋検出部10は、各種の膜を成膜・パターンニングする工程を複数回繰り返し、複数の膜を積層させることにより製造される。
図14−1は、配線112aおよび配線112bが交差する部分に島状の検出素子111を形成した指紋検出部10の正面図である。同図に示した電極パッド115は、配線112aおよび配線112bに外部の配線を接続する部分、すなわち、これらの配線の上部に他の膜が積層されていない部分である。なお、同図においては、図14−2〜6に示している絶縁膜113および保護膜114は簡略化のため示していない。
図9に示したように、まず、下部配線112aが基板100上に成膜・パターンニングされる(ステップS101)。この工程が完了した状態では、図14−2に示したように、かかる下部配線112aが基板100上に形成される。
続いて、基板100および下部配線112a上に、検出素子111として機能するpinダイオードまたはショットキーダイオードの成膜がおこなわれる(ステップS102)。これらのダイオードは、a−Siまたはμc−Siを材料とする薄膜を含むが、かかる半導体膜の成膜方法としては、蒸着法、スパッタ法および各種CVD(Chemical Vapor Deposition)が知られている。ここでは、最も一般的に使用されているプラズマCVD法を用いてa−Si膜またはμc−Si膜を成膜する方法について説明することとする。
このプラズマCVD法は、プラズマ反応によりa−Si膜やμc−Si膜といった半導体膜を成膜する方法である。具体的には、10〜103程度の真空に保たれた反応室に、水素ガス(H2)とともにモノシラン(SiH4)などの原料ガスを導入し、グロー放電により原料ガスを分解することにより基板上に半導体膜を成膜する。
なお、μc−Si膜を成膜する場合には、a−Si膜を成膜する場合よりも、電力の投入量やH2ガスの流量を多くする必要がある。具体的には、電力密度は0.1W/cm2以上、H2ガス流量はSiH4流量の10倍以上とする。
また、プラズマCVD法では、原料ガスの切り替えにより異なる性質を有した半導体膜を成膜し積層させることができる。たとえば、原料ガスとしてモノシラン(SiH4)を導入するとi型半導体膜が、モノシラン(SiH4)にジボラン(B2H6)を混入するとp型半導体膜が、モノシラン(SiH4)にフォスフィン(PH3)を混入するとn型半導体膜がそれぞれ成膜される。
ここで、ステップS102により成膜される各ダイオードの成膜工程について図10〜13を用いて説明する。図10および図11は、図3に示した検出素子(pinダイオード)111aを、それぞれ、a−Si膜のみ、μc−Si膜のみの成膜により構成した場合の成膜工程である。また、図12および図13は、図4に示した検出素子(ショットキーダイオード)111fおよび検出素子(ショットキーダイオード)111jを、それぞれ、金属膜とa−Si膜、金属膜とμc−Si膜により構成した場合の成膜工程である。
なお、各ダイオードの半導体膜は、a−Si膜のみ、μc−Si膜のみから構成する必要はなく、たとえば、p型半導体膜はa−Si膜とし、その他の半導体膜はμc−Si膜とするなど、a−Si膜とμc−Si膜とを混在させることもできる。また、ショットキーダイオードを構成する金属膜は、配線(112aおよび112b)の成膜と同様の方法により成膜することができる。
図10は、図2に示した検出素子111をa−Si膜のみから構成される検出素子(pinダイオード)111aとした場合の、検出素子構成膜成膜工程を示すフローチャートである。同図に示すように、下部配線成膜・パターンニング工程(ステップS101)を終え、下部配線112aが成膜・パターンニングされた基板100を反応室に入れ、モノシラン(SiH4)にジボラン(B2H6)を混入させたガスを反応室に導入すると、p型a−Si膜が成膜される(ステップS201)。
続いて、モノシラン(SiH4)ガスを反応室に導入すると、i型a−Si膜が成膜される(ステップS202)。そして、モノシラン(SiH4)にフォスフィン(PH3)を混入させたガスを反応室に導入すると、n型a−Si膜が成膜される(ステップS203)。
図11は、図2に示した検出素子111をμc−Si膜のみから構成される検出素子(pinダイオード)111aとした場合の、検出素子構成膜成膜工程を示すフローチャートである。この場合、プラズマCVD法における電力密度は0.1W/cm2以上、H2ガス流量はSiH4流量の10倍以上とする。
かかる電力密度およびH2ガス流量の条件のもとで、下部配線112aが成膜・パターンニングされた基板100を反応室に入れ、モノシラン(SiH4)にジボラン(B2H6)を混入させたガスを反応室に導入すると、p型μc−Si膜が成膜される(ステップS301)。
続いて、モノシラン(SiH4)ガスを反応室に導入すると、i型μc−Si膜が成膜される(ステップS302)。そして、モノシラン(SiH4)にフォスフィン(PH3)を混入させたガスを反応室に導入すると、n型μc−Si膜が成膜される(ステップS303)。
上述した方法により、図3に示した検出素子(pinダイオード)111aの構成膜を成膜することができるが、反応室に導入するガスの順序を逆にすることで、図3に示した検出素子(pinダイオード)111bの構成膜を成膜することもできる。また、各検出素子(111aおよび111b)の構成膜は、a−Si膜とμc−Si膜とを混在させたものとすることもできる。
図12は、図2に示した検出素子111をa−Si膜および金属膜から構成される検出素子(ショットキーダイオード)111fとした場合の、検出素子構成膜成膜工程を示すフローチャートである。同図に示すように、下部配線成膜・パターンニング工程(ステップS101)を終え、下部配線112aが成膜・パターンニングされた基板100に、Metal膜(金属膜)を成膜する(ステップS401)。
この場合、かかる金属膜と後に成膜されるp型のa−Si膜とをショットキー接触させる必要があるため、金属膜の材料は、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、銅などを選択する。
続いて、かかる金属膜が成膜された基板100を反応室に入れ、モノシラン(SiH4)にジボラン(B2H6)を混入させたガスを反応室に導入すると、p型a−Si膜が成膜される(ステップS402)。このようにして、検出素子(ショットキーダイオード)111fのMetal膜(金属膜)とp型領域層(p型a−Si膜)とはショットキー接触するので、ショットキーダイオードとして機能するようになる。
図13は、図2に示した検出素子111をμc−Si膜および金属膜から構成される検出素子(ショットキーダイオード)111jとした場合の、検出素子構成膜成膜工程を示すフローチャートである。同図に示すように、下部配線成膜・パターンニング工程(ステップS101)を終え、下部配線112aが成膜・パターンニングされた基板100に、Metal膜(金属膜)を成膜する(ステップS501)。
この場合、かかる金属膜と後に成膜されるn型のμc−Si膜とをショットキー接触させる必要があるため、金属膜の材料として、金、プラチナ、パラジウム、スズなどを選択する。
そして、かかる金属膜が成膜された基板100を反応室に入れ、電力密度を0.1W/cm2以上、H2ガス流量をSiH4流量の10倍以上とし、モノシラン(SiH4)にフォスフィン(PH3)を混入させたガスを反応室に導入すると、n型μc−Si膜が成膜される(ステップS502)。このようにして、検出素子(ショットキーダイオード)111jのMetal膜(金属膜)とn型領域層(n型μc−Si膜)とはショットキー接触するので、ショットキーダイオードとして機能するようになる。
上述した方法により、図2に示した検出素子111をショットキーダイオードにより構成することができる(図4の111c〜111j)。なお、Metal膜(金属膜)を省略した検出素子(図5の111k〜111r)を製造する場合には、Metal層の役割を兼ねる配線(112aおよび112b)の材料を、上述したMetal膜(金属膜)の材料とし、各検出素子(111k〜111r)とショットキー接触させる必要がある。
図9の説明に戻ると、検出素子構成膜成膜工程(ステップS102)に続いて、成膜された検出素子構成膜のパターンニングがおこなわれる(ステップS103)。図14−3に示したように、かかる検出素子構成膜パターンニング工程により、下部配線112a上に検出素子111が形成される。
続いて、下部配線112aおよび検出素子111が積層された基板100上に、層間の絶縁膜113を成膜・パターンニングする(ステップS104)。なお、この工程の中には、絶縁膜113にコンタクトホールを形成する工程を含む。このコンタクトホールにより、後に積層される上部の配線112bと検出素子111とを接続することができる。絶縁膜の成膜・パターンニング工程を終えると、図14−4に示したように、下部配線112aおよび検出素子111が積層された基板100は、絶縁膜113で覆われ検出素子111の上部のみにコンタクトホールが形成される。
そして、かかる絶縁膜113の成膜・パターンニング工程(ステップS104)に続き、上部配線成膜・パターンニング工程(ステップS105)がおこなわれ、上部の配線112bが形成される。この配線112bは、ステップS104において形成されたコンタクトホールにより、検出素子111に接続される。図14−5に示したように、上部の配線112bは、絶縁膜113により下部配線112aと絶縁されているが、コンタクトホールにより検出素子111とは接続されている。
最後に、かかる上部配線成膜・パターンニング工程(ステップS105)に続き、保護膜成膜・パターンニング工程(ステップS106)がおこなわれ、指紋検出部10の製造工程が終了する。図14−6に示したように、上部の配線112bおよび絶縁膜113は、保護膜114により覆われている。なお、上部の配線112bの電極パッド115部分は外部配線接続のため、保護膜114には覆われていない。また、同図には示していないが、下部配線112aの電極パッド115部分は、絶縁膜113および保護膜114に覆われていないため、外部配線接続が可能である。
次に、検出素子111の構成膜をベタ膜状とした指紋検出部10の製造方法について、図15および図16−1〜6を用いて説明する。図15は、検出素子111の構成膜をベタ膜状とした場合における指紋検出部10の製造工程を示すフローチャートであり、図16−1は製造する指紋検出部10の正面図であり、図16−2〜6は図15に示した各製造工程に対応した図16−1のA−A´断面における側面図である。なお、上述した検出素子111を島状とした場合の製造方法と説明が重複する部分については、簡単な説明にとどめることにする。
図16−1は、下部配線112a上にベタ膜状の検出素子111を形成した指紋検出部10の正面図である。各配線上に電極パッド115が形成される点については上述したとおりである。なお、同図においては、図16−3〜6に示している検出素子111、絶縁膜113および保護膜114は簡略化のため示していない。
図15に示したように、まず、下部配線112aが基板100上に成膜・パターンニングされる(ステップS101)。この工程が完了した状態では、図16−2に示したように、かかる下部配線112aが基板100上にパターンニングされる。
続いて、基板100および下部配線112a上に、検出素子構成膜が成膜される(ステップS102)。かかる検出素子構成膜成膜工程については上述したとおりである。また、上述した島状の検出素子111を複数形成する場合と異なり、検出素子111をベタ膜状の連続体として生成する本製造方法においては、図9に示した検出素子構成膜パターンニング工程(ステップS103)が不要である。かかるパターンニング工程が不要であるため、本製造方法によれば、より簡易に指紋検出部10を製造することができる。図16−3に示したように、かかる検出素子構成膜成膜工程により、下部配線112a上に、後に検出素子111の機能をはたすこととなる検出素子構成膜が成膜される。
続いて、下部配線112aおよび検出素子111が積層された基板100上に、層間の絶縁膜113を成膜・パターンニングする(ステップS104)。なお、この工程の中には、絶縁膜113にコンタクトホールを形成する工程を含むことも上述したとおりであるが、検出素子111の構成膜がベタ膜状であるため、検出素子として機能させたい部分にコンタクトホールを形成する点が異なる。絶縁膜の成膜・パターンニング工程を終えると、図16−4に示したように、下部配線112aおよび検出素子111が積層された基板100は、絶縁膜113で覆われ、検出素子として機能する部分の上部のみにコンタクトホールが形成される。
そして、かかる絶縁膜113の成膜・パターンニング工程(ステップS104)に続き、上部配線成膜・パターンニング工程(ステップS105)がおこなわれ、上部の配線112bが形成される。この配線112bは、ステップS104において形成されたコンタクトホールにより、検出素子111に接続される。図16−5に示したように、上部の配線112bは、絶縁膜113により下部配線112aと絶縁されているが、コンタクトホールにより検出素子111とは接続されている。
最後に、かかる上部配線成膜・パターンニング工程(ステップS105)に続き、保護膜成膜・パターンニング工程(ステップS106)がおこなわれ、指紋検出部10の製造工程が終了する。図16−6に示したように、上部の配線112bおよび絶縁膜113は、保護膜114により覆われている。なお、電極パッド115部分の説明については上述したとおりである。
次に、上述した本実施例に係る検出素子111を用いた指紋検出部10の製造方法と比較するために、従来技術に係るp−Si検出素子211を用いた指紋検出部の製造方法について簡単に説明する。図19は、図18に示した指紋検出部の製造工程を示すフローチャートである。なお、図19の破線で示した工程(ステップS602〜609)は、任意の形状に形成したp−Si膜にイオンを注入し、ヒータ、温度センサおよび整流素子の各役割を担う部分を形成する工程である。
最初に、p−Si膜の成膜・パターンニングが行なわれる(ステップS601)。かかる工程により、最終的にp−Si検出素子211となるp−Si形成膜は、任意の形状をマトリックス状に配置した形状に形成される。この工程により形成されたp−Si形成膜は、未だ電気的特性が均質であるが、後のイオン注入工程によりヒータ、温度センサおよび整流素子の各役割を担う部分などが形成される。
次に、かかるp−Si膜にイオンを注入しp−Si検出素子211の各部を形成する。図18に示したように、かかるp−Si検出素子211は、ヒータとしての役割を担うn型抵抗領域211aと、ヒータ部までのリード部となるn型低抵抗領域211bと、リード部を配線212aに接続するためのn型高濃度不純物領域211cと、n型抵抗領域211aとの間にpn接合部を形成するp型低抵抗領域211dと、このp型低抵抗領域211dを配線212bに接続するためのp型高濃度不純物領域211eを有するため、これらの各部分をそれぞれ形成する必要がある。
まず、n型抵抗領域形成工程(ステップS602)により、211a、211bおよび211c部分にN+イオンを注入し、n型抵抗領域を形成する。続いて、211bおよび211c部分にN+イオンを注入し、n型低抵抗領域を形成する(ステップS603)。さらに、211dおよび211e部分にP+イオンを注入し、p型低抵抗領域を形成する(ステップS604)。そして、活性化アニール工程(ステップS605)がおこなわれる。
続いて、配線212aおよび配線212bとの接続部となる211cおよび211e以外の部分に第一層間絶縁膜213aを形成する(ステップS606)。続いて、N+イオンを注入し、高濃度n型不純物領域211cを形成するとともに(ステップS607)、P+イオンを注入し、高濃度p型不純物領域211eを形成する(ステップS608)。そして、活性化アニール工程(ステップS609)が行なわれ、p−Si検出素子211が完成する。
そして、第一配線212aの成膜・パターンニング工程(ステップS610)、第二層間絶縁膜213bの成膜・パターンニング工程(ステップS611)、活性化アニール工程(ステップS612)、第二配線212bの成膜・パターンニング工程(ステップS613)、保護膜214の成膜・パターンニング工程(ステップS614)および活性化アニール工程(ステップS615)を経て、p−Si検出素子211を用いた指紋検出部が作成される。
このように、従来技術に係るp−Si検出素子211を用いた指紋検出部の製造には、多くの工程が必要となる。特に、p−Si検出素子211に、ヒータ、温度センサおよび整流素子の各役割を担う部分を形成するためには、イオン注入工程(ステップS602、S603、S604、S607およびS608)を設ける必要がある。各イオン注入工程においては、フォトリソグラフィー工程におけるレジスト形成、各種イオン注入およびレジスト除去をおこなうので、フォトリソグラフィーをおこなう各工程につき一枚のフォトマスクが必要となり、その結果製造コストが高くなってしまう。
一方、図9および図15に示したように、本実施例に係る検出素子111を用いた指紋検出部の製造には、かかるイオン注入工程が不要である。なぜならば、検出素子構成膜成膜工程(ステップS102)において、a−Si膜あるいはμc−Si膜を積層させることにより、ヒータ、温度センサおよび整流素子の各役割を兼ねた検出素子構成膜を成膜することができるからである。したがって、上述したn型およびp型不純物領域を形成する際のフォトマスクが不要となり、工程数も格段に減少し、その結果製造コストを抑えることができる。
さらに、図15に示したように、検出素子111の構成膜をベタ膜状に形成する場合には、成膜した検出素子構成膜をパターンニングする必要がないので、検出素子構成膜パターンニング工程(ステップS103)も不要となる。したがって、この工程に係るフォトマスクも不要となり、その結果製造コストをさらに抑えることができる。
なお、図19に示した従来技術に係る指紋検出部の製造には、フォトマスクが11枚必要である(ステップS601、S602、S603、S604、S606、S607、S608、S610、S611、S613およびS614)のに対し、図9(島状の検出素子構成膜の場合)に示した本実施例に係る指紋検出部10の製造に必要なフォトマスクは5枚(S101、S103、S104、S105およびS106)となる。さらに、図15(ベタ膜状の検出素子構成膜の場合)に示した本実施例に係る指紋検出部10の製造に必要なフォトマスクは4枚(S101、S104、S105およびS106)となる。
次に、図1に示した信号処理部20内に設けられる検出回路の構成について説明する。図17は、図1に示した信号処理部20内に設けられる検出回路の回路構成の一例を説明する説明図である。
図17において、検出回路22は、指紋検出部10内に設けられた温度センサの役割を担う各検出素子111から温度に関するデータを受け取って温度を検出する回路である。具体的には、各検出素子111をつなぐ垂直方向(列方向)に延びた256本の配線112bと、水平方向(行方向)に延びた256本の配線112aとを介して温度に関するデータを受け取る。なお、図17に示したIVアンプおよび差動アンプなどの回路は、温度信号を変換、増幅、ラッチする回路である。なお、同図においては、列方向および行方向にそれぞれ256本の配線を設けることとしたが、かかる本数は各検出素子111を配置する密度設定により増減することができる。
加熱および温度検出は、信号処理部20によっていずれかの行を選択し、駆動部21によってこの選択した行の検出素子111に所定電圧を印加することでおこなう。また、この選択する行を順次切り替えて走査していくことで、すべての検出素子111について同様の加熱、温度検出をおこなうことができる。
なお、加熱、温度検出を一行ずつおこなっているのは、温度信号をラッチする検出回路22を各列ごとにしか設けていないからである。このラッチする回路部を各行各列ごとに設ければ、すべての検出素子111について一斉に加熱し、温度検出することができる。信号処理部20は、検出回路22以外に指紋のパターンを検出して指紋画像を生成する処理部を有する。
ここで、指紋検出装置1を用いた指紋の検出概念について説明する。まず、認証者が指紋検出部10に指を載置して所定の検出開始操作をおこなうと、駆動部21は、配線112aおよび配線112bを介して検出素子111のそれぞれに所定電圧を印加し、各検出素子111をそれぞれ発熱させる。これによって、指紋検出部10には指紋の形状(パターン)に対応した温度分布が生じる。
この場合、指紋の谷部では、皮膚と指紋検出部10との間に断熱体である空気が介在しており、両者が直接接触することはないので、検出素子111によって発生した熱が指紋検出部10から皮膚へと逃げにくく、検出素子111近傍の温度が高くなる。
これに対して、指紋の山部では、皮膚が指紋検出部10と直接接触するため、指紋検出部10から皮膚へと熱が逃げやすいので、検出素子111近傍の温度が低下する。このようにして、指紋検出部10に温度分布が生じると、信号処理部20は、この温度分布を計測する。具体的には、駆動部21が配線112aおよび配線112bを介して各検出素子111に所定電圧を印加した際に流れる電流値を、信号処理部20が計測することによって温度を検出する。さらに、このようにして得た温度分布をもとに指紋画像を生成する。
上述してきたように、本実施例にかかる指紋検出装置および指紋検出装置の製造方法は、指紋検出部の検出素子として、アモルファス半導体および/またはマイクロクリスタル半導体を材料とする膜を積層させたpinダイオード、あるいは、アモルファス半導体および/またはマイクロクリスタル半導体と金属を材料とする膜を積層させたショットキーダイオードを用いたので、検出素子を基板上に高密度に配設することにより高精度な指紋データを取得することができ、検出素子自体の形状を任意の形状とすることはもちろん、ベタ膜状とすることもできるため検出素子形状の自由度を高めることができる。また、検出素子を上下の配線で挟みこむ構成となるため配線形状の自由度を高めることができる。さらに、かかる検出素子の製造方法が簡便であるため製造コストを抑えることができる。また、指紋検出部の各構成部材を透明性材料で形成することにより、携帯電話などの情報機器のディスプレイ上に搭載することができる透明な指紋検出部を得ることができる。