JP2006059870A - 半導体レーザ素子およびこれを用いた半導体レーザアレイ、並びに半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 レーザ光をストライプ領域に有効に閉じ込めることにより良好なNFPプロファイルを得ることができ、かつ横方向の放射角を小さくすることのできる半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】 放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnAを、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくする。屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBを大きくして、活性層14で発生した光をストライプ領域14Aに有効に閉じ込め、トップハット型の良好なNFPプロファイルを形成する。主出射側端面10F近傍では、放射角緩和領域Aにおける活性層14のストライプ領域14Aとそれ以外のストライプ外部14Bとの間の実効屈折率差ΔnAを、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくし、急激な実効屈折率差の低下により横方向の放射角を小さくする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に高出力を必要とする用途に好適な半導体レーザ素子およびこれを用いた半導体レーザアレイ、並びに半導体レーザ素子の製造方法に関する。
近年、ワットクラスの超高出力半導体レーザは溶接、加工等に利用され、特に固体レーザ励起用途においては横多モードレーザ光を発振するブロードストライプ型の高出力半導体レーザが期待されている。ブロードストライプ型の高出力半導体レーザは、直接のレーザ光を利用した物質の変質や加工等への応用が始められており、また、可視波長帯の超高出力半導体レーザにおいてはプロジェクタ等のディスプレイ光源にも使われはじめている。これらの分野では、良好な光閉じ込めが行われ、ストライプ領域(発光領域)内で光出力が均一な、いわゆるトップハット型のNFP(Near Field Pattern;近視野像)プロファイルが得られる半導体レーザが求められている。
更に、用途によっては、より高い光出力を得るために、半導体レーザ素子を複数並べたバー状の半導体レーザアレイも実用化されはじめている。これらは仕様によってはマイクロレンズで集光することが必要であり、その場合、光利用効率を高めるため、トップハット型のNFPプロファイルを示すビーム品質の高い半導体レーザ素子が求められる。
高出力型のブロードストライプ半導体レーザでは、通常ナローストライプと言われるストライプ幅を約1μmないし3μmとして横モードをシングルモードに制御した半導体レーザとは異なり、ストライプ幅は約10μmないし300μm、あるいはそれ以上に広い。そのため横モードは多モードで発振し、ストライプ領域内で光出力を均一化してトップハット型のNFPプロファイルを得ることは困難であった。
図28は、従来のブロードストライプ型半導体レーザ素子の断面構成を表したものである。この従来の半導体レーザ素子は、いわゆるイオンインプランテーション型の横多モードレーザ光を発振するものであり、例えば、基板111上に、n型クラッド層113、活性層114、p型クラッド層115が基板111側からこの順に積層されている。p型クラッド層115の一部は、例えばホウ素イオン(B+ )が注入されることにより電流非注入領域132となっており、電流非注入領域132,132の間の領域が、紙面に対して直交する方向に延びるストライプ状の電流注入領域131となっている。また、p型クラッド層115上にはp側電極141が形成され、基板111の裏面にはn側電極142が形成されている。
しかしながら、このようなゲインガイド構造の半導体レーザでは、ストライプ状に形成された電流注入領域131と、その外側の電流非注入領域132とでは屈折率差が設けられていないため、電流注入領域131の直下のストライプ領域114Aだけでなくその外側方向にも光が広がり、発光強度の変化が見られる。すなわち、ストライプ領域114A内で均一な光出力を持つトップハット型のNFPプロファイルを得ることは困難であった。
ストライプ領域114A内で均一な光出力を持つNFPプロファイルを得るため、例えば図29に示したような埋め込みリッジ型のインデックスガイド構造を有するブロードストライプ型の半導体レーザ素子が開発されている。この半導体レーザ素子は、埋め込みリッジ型の横多モードレーザ光を発振するものであり、p型クラッド層115の一部が、紙面に対して直交する方向に伸びる突条部151とされており、この突条部151の内部は電流注入領域161、突条部151の外部は電流非注入領域162となっている。なお、突条部151の外部には、例えばガリウムヒ素(GaAs)よりなる電流阻止層152が埋め込まれている。
図29に示した構造では、電流注入領域161と電流非注入領域162とにより電流狭窄がなされ、注入キャリアをストライプ領域114Aに有効に閉じ込めることができる。同時に突条部151の内部と外部とで光吸収損失差によって屈折率差が生じることからインデックスガイド構造を有し、活性層114から発生した光はストライプ領域114A内に効率よく閉じ込められる。よって、光出力の安定化を図りトップハット型NFPプロファイルを得ることができる。
このように高出力型のブロードストライプ半導体レーザでは、突条部151によるインデックスガイド機構を造りつけることによって電流狭窄と屈折率導波を同時に可能とし、活性層114から発生した光をストライプ領域114A内に効率よく閉じ込め、光出力の安定化を図りトップハット型NFPプロファイルを得ることができる。この効果はインデックスガイド性が高いほど顕著に表れ、突条部151の内部と外部との屈折率差を大きくとるほど、NFPは安定したトップハット型プロファイルを示すことが分かっている。
すなわち、半導体レーザ素子のインデックスガイド機構の強さは、突条部151の内部がその外部よりも高い実効屈折率をもっており、突条部151の内部と外部との屈折率差が大きいかどうかでほぼ決まる。屈折率差が大きいほどインデックスガイド機構は強く、NFPは安定したトップハット型プロファイルを示す。
特開2002−368335号公報
しかしながら、より安定したトップハット型NFPプロファイルを得ようとするとインデックスガイド機構を強く、つまり突条部151の内部と外部との屈折率差を大きくしなければならない。それはNFPのトップハット化と同時に横方向への放射角が大きくなることを意味している。インデックスガイド機構を強めることによりトップハット型NFPが得られたとしても、横方向への放射角が大きくなってしまっては、集光の際にレンズ系によって光が蹴られ、光利用効率が悪くなってしまうといった問題が生じる。
更に、例えば半導体レーザ素子をアレイ状にする場合、各半導体レーザ素子ではトップハット型NFPプロファイルが得られたとしても、各素子の横方向の放射角が大きいと、それらを集光するマイクロレンズアレイの設計が厳しく、また実装も困難になってしまい、最終的に必要なレーザ出力が集光効率が悪いために低くなってしまうといった問題が生じる。
このように従来の高出力型のブロードストライプ半導体レーザでは、トップハット型NFPプロファイルを得ることと横方向への光広がり角とはトレードオフの関係にあり、それらを同時に実現することは困難であった。
なお、特許文献1には、共振器端面部に、光導波層の厚みを次第に薄くしたスポットサイズ変換領域を設けることにより、垂直放射角を狭めて真円に近い放射パターンを得るようにした構成が開示されている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、レーザ光をストライプ領域に有効に閉じ込めることにより良好なNFPプロファイルを得ることができ、かつ横方向の放射角を小さくすることのできる半導体レーザ素子およびこれを用いた半導体レーザアレイ、並びに半導体レーザ素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明による半導体レーザ素子は、基板上に活性層を含む半導体層を備え、半導体層の一部に活性層のストライプ領域を制限するための突条部を有すると共に半導体層の側面に突条部の延長方向に対向する主出射側端面および後方端面を備えたものであって、半導体層は、主出射側端面から突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、第1領域以外の第2領域とを有し、第1領域における活性層のストライプ領域とストライプ領域以外のストライプ外部領域との間の実効屈折率差は、第2領域における実効屈折率差よりも小さいものである。
本発明による半導体レーザアレイは、上記本発明による複数の半導体レーザ素子を並列配置したものである。
本発明による半導体レーザ素子の製造方法は、基板上に活性層を含む半導体層を形成する工程と、半導体層の一部に活性層のストライプ領域を制限するための突条部を形成する工程と、半導体層の側面に突条部の延長方向に対向する主出射側端面および後方端面を形成する工程とを含むものであって、半導体層を、主出射側端面から突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、第1領域以外の第2領域とに分けて、第1領域における活性層のストライプ領域とストライプ領域以外のストライプ外部領域との間の実効屈折率差を、第2領域における実効屈折率差よりも小さくするようにしたものである。
本発明による半導体レーザ素子、または本発明による半導体レーザ素子の製造方法によれば、活性層を含む半導体層を、主出射側端面またはその形成予定位置から突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、それ以外の第2領域とに分けて、第1領域における活性層のストライプ領域とストライプ外部領域との間の実効屈折率差を、第2領域における実効屈折率差よりも小さくするようにしたので、横方向の放射角を小さくすることができる。また、NFPプロファイルは第2領域における実効屈折率差でほぼ決定されるので、第2領域における実効屈折率差を大きくとることにより活性層で発生した光をストライプ領域に有効に閉じ込め、トップハット型の良好なNFPプロファイルを得ることができる。よって、トップハット型のNFPプロファイルを維持しながら横方向の放射角の広がりを緩和し、ストライプ領域内における光出力の均一性と光利用効率との両方を高めることができる。
本発明による半導体レーザアレイによれば、上記本発明による半導体レーザ素子を備えたので、各半導体レーザ素子のNFPプロファイルをトップハット型にすると共に放射角の広がりを抑えることができる。よって、マイクロレンズ等による集光効率を高め、高出力化を可能とすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は本発明の第1の実施の形態に係る半導体レーザ素子の全体構成を概略的に表したものであり、図2は図1に示した半導体レーザ素子のII−II線に沿った断面構造、図3は図1のIII−III線に沿った断面構造をそれぞれ表したものである。この半導体レーザ素子は、プロジェクター用光源などに用いられるブロードストライプ型の600nm帯半導体レーザ素子であり、例えば、基板11上に、バッファ層12、n型クラッド層13、活性層14、p型第3クラッド層15、第2エッチングストップ層16、p型第2クラッド層17、第1エッチングストップ層18、p型第1クラッド層19、中間層20およびキャップ層21が順に積層された構成を有している。これらの半導体層の一部は、活性層14のストライプ領域14Aを制限するための突条部(リッジ)51とされている。また、基板11ないしキャップ層21の側面には、突条部51の延長方向に対向する主出射側(フロント側)端面10Fおよび後方(リア側)端面10Rが形成されている。なお、この半導体レーザ素子の幅は例えば300μm、ストライプ領域14Aの幅は例えば60μm、共振器長Lすなわち主出射側端面10Fと後方端面10Rとの間の距離は例えば700μmである。
基板11は、例えば、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaAsにより構成されている。バッファ層12は、例えば、厚みが30nmであり、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaInP混晶により構成されている。n型クラッド層13は、例えば、厚みが2.0μmであり、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型AlInP混晶により構成されている。
活性層14は、少なくとも一つの量子井戸構造を有しており、不純物を添加しないSCH(Separate Confinement Heterostructure;分離閉じ込め型ヘテロ構造)超格子活性層であり、例えば、厚みが12nmのGaInPよりなる歪み活性層を、厚みが120nmのAl0.6 GaInP混晶よりなる光ガイド層で挟み込んだ構成を有している。
p型第3クラッド層15は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型AlInP混晶により構成されている。第2エッチングストップ層16は、例えば、厚みが15nmであり、GaInP混晶により構成されている。p型第2クラッド層17は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型AlInP混晶により構成されている。第1エッチングストップ層18は、例えば、厚みが15nmであり、GaInPにより構成されている。p型第1クラッド層19は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型AlInP混晶により構成されている。中間層20は、例えば、厚みが30nmであり、GaInPにより構成されている。キャップ層21は、例えば、厚みが0.26μmであり、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型GaAsにより構成されている。
p型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17およびp型第3クラッド層15は、各々の厚みが0.01μm以上2μm以下であり、かつ合計厚みが3μm以下であることが好ましい。ここで、p側およびn側それぞれのクラッド層の厚みをdn、dpとすると、本実施の形態では、dnはn型クラッド層13の厚みに相当し、dn=2.0μmである。また、dpは第2エッチングストップ層16および第1エッチングストップ層18の厚みを無視すればp型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17およびp型第3クラッド層15の合計厚みに相当し、dp=d1+d2+d3=2.0μmとなっている。なお、d1はp型第1クラッド層19の厚み(例えば1.5μm)、d2はp型第2クラッド層17の厚み(例えば0.25μm)、d3はp型第3クラッド層15の厚み(例えば0.25μm)を表している。
突条部51は、主出射側端面10Fから突条部51の延長方向における一部を含む放射角緩和領域(第1領域)Aではキャップ層21、中間層20およびp型第1クラッド層19を含んでいるのに対して、放射角緩和領域A以外の屈折率導波領域(第2領域)Bではキャップ層21、中間層20、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17を含んでいる。すなわち、突条部51は、放射角緩和領域(第1領域)Aにおける高さが、放射角緩和領域A以外の屈折率導波領域(第2領域)Bにおける高さよりも小さくなっている。突条部51の放射角緩和領域Aと屈折率導波領域Bとにおける高さの差は、例えば0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
また、放射角緩和領域Aにおける突条部51の外側での第1エッチングストップ層18の上面から活性層14までの距離dpAは、屈折率導波領域Bにおける距離dpBよりも大きくなっている。すなわち、この半導体レーザ素子は、活性層14内に図4に示したような実効屈折率の分布が形成されており、放射角緩和領域Aにおける活性層14のストライプ領域14Aとそれ以外のストライプ外部領域14Bとの間の実効屈折率差ΔnAが、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくなっている。これにより、この半導体レーザ素子では、横方向の放射角を小さくすると共に、活性層14で発生した光をストライプ領域14Aに有効に閉じ込めてトップハット型の良好なNFPプロファイルを得ることができるようになっている。
すなわち、突条部51による屈折率導波型の半導体レーザ素子では、ストライプ領域14Aとストライプ外部領域14Bとの実効屈折率差は、ストライプ外部領域14Bの実効屈折率に依存する。それは突条部51をエッチングにより形成した際にストップした表面から活性層30までの距離dpによって決定され、この距離dpは、p型第1クラッド層19の厚みd1、p型第2クラッド層17の厚みd2およびp型第3クラッド層15の厚みd3の設計によって制御することができる。したがって、放射角緩和領域Aでは距離dpAを大きくすることにより実効屈折率差ΔnAを小さくし、ビームの横方向の放射角を小さくすることができる。一方、NFPプロファイルは屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBでほぼ決定されることから、屈折率導波領域ではdpBを小さくすることにより実効屈折率差ΔnBを大きくし、トップハット型の良好なNFPプロファイルを得ることができる。放射角緩和領域Aにおける距離dpAと屈折率導波領域Bにおける距離dpBとの差は、例えば0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
例えば、本実施の形態では、ストライプ領域14Aの実効屈折率n1=3.2424516、放射角緩和領域Aにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率n2=3.2424017、屈折率導波領域Bにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率n3=3.2414110となり、放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnA=n1−n2=0.00005、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnB=n1−n3=0.001となる。このような構造を採用することにより屈折率導波領域Bでは大きな実効屈折率差ΔnBをつけることで強いインデックスガイド機構を造りつけることができ、放射角緩和領域Aでは屈折率差ΔnAを小さくしてインデックスガイド効果を弱くすることができる。
更に、放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnAと屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBとは、数1を満たすことが好ましい。ΔnBは、例えば、最大値0.01、最小値0.00001と見積もることができ、ΔnAに関してはΔnBと少しでも差があればよいので、ほぼΔnB−ΔnA≒0と考えることができるからである。
(数1)
0.00001≦ΔnB−ΔnA≦0.01
ΔnA=n1−n2
ΔnB=n1−n3
(数1において、n1はストライプ領域14Aの実効屈折率、n2は放射角緩和領域Aにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率、n3は屈折率導波領域Bにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率をそれぞれ表す)
放射角緩和領域Aの主出射側端面10Fからの突条部50の延長方向における寸法LAは、層構造及びリッジ構造により決定される各領域の実効屈折率n1、n2、n3および実効屈折率差ΔnA、ΔnBに加えて、飛点距離も考慮して最適な値をとることが好ましく、例えば3μm以上500μm以下であることが好ましい。放射角緩和領域Aの寸法LAが500μmより大きいと横方向の放射角を小さくすることはできるがトップハット型のNFPプロファイルが崩れてしまうおそれがあり、また、3μmより小さいとトップハット型のNFPプロファイルは変形させずに保つことができるが、横方向の放射角を小さくすることができないからである。例えば、放射角緩和領域Aの寸法LAを飛点距離よりも短くして放射角緩和領域Aを飛点距離よりも主出射側端面10F側に形成した場合、放射角は緩和されずに横方向の放射角が大きいまま発振してしまう。本実施の形態では、例えば放射角緩和領域Aの寸法LAは20μm、屈折率導波領域Bの寸法LBは680μmとされている。
また、この半導体レーザ素子では、キャップ層21上にp側電極41が設けられ、基板11の裏側にp側電極42が設けられている。p側電極41は、突条部51の上面および側面並びに突条部51の外側の第1エッチングストップ層18の上面を直接被覆している。突条部51の側面下方および外側では、不純物濃度が極端に低くなっており、また、後述する突条部51の形成工程においてp型第2クラッド層17ないしキャップ層21が大気中または水中に暴露されることにより表面に酸化層(図示せず)が形成されているため、ショットキー接合となっている。p側電極41は、例えばTi/Pt/Auにより構成されている。また、n側電極42は、例えばAuGe/Ni/Au/Ti/Pt/Auにより構成されている。
この半導体レーザ素子は、例えば、以下のようにして製造することができる。
図5ないし図14は、この半導体レーザ素子の製造方法を工程順に表したものである。まず、図5に示したように、上述した厚みおよび材料よりなる基板11上に、例えばMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy ;有機金属気相エピタキシー)法またはMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属化学気相成長)法により、それぞれ上述した厚みおよび材料よりなるバッファ層12、n型クラッド層13、活性層14、p型第3クラッド層15、第2エッチングストップ層16、p型第2クラッド層17、第1エッチングストップ層18、p型第1クラッド層19、中間層20およびキャップ層21を順に積層する。このとき、n型不純物としては例えばケイ素(Si)またはセレン(Se)、p型不純物としては例えば亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)を用いる。これにより、基板11上に、図1に示した半導体レーザ素子の縦構造を有する半導体層の積層体が形成される。
次いで、図6に示したように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法等により、キャップ層21上に二酸化ケイ素(SiO2 )膜71を形成する。
続いて、図7に示したように、例えば写真触刻により、SiO2 膜71上に、紙面に対して直交する方向に延びるストライプ状のレジストマスク72を形成する。
そののち、図8に示したように、レジストマスク72を用いたエッチングにより、SiO2 膜71を選択的に除去し、SiO2 マスク73を形成する。SiO2 マスク73を形成したのち、同じく図8に示したように、レジストマスク72を除去する。
SiO2 マスク73を形成したのち、図9に示したように、SiO2 マスク73を用いたエッチングにより、キャップ層21を選択的に除去して突条形状とする。エッチングする際にはこれを選択的に除去できるエッチャント、例えばりん酸系エッチャントを用いることが好ましい。また、このとき、中間層20が設けられていることでエッチングを停止させることができると共に、p型第1クラッド層19が大気中に暴露されないので酸化されることはない。
キャップ層21をエッチングしたのち、図10に示したように、中間層20およびp型第1クラッド層19のエッチングを行い、突条部51を形成する。エッチングは第1エッチングストップ層18があるため、これが表出した時点で停止する。エッチャントには例えば酢酸:塩酸系エッチャントを用いて行うことが好ましい。また、この際、あまり長い時間エッチングを行うと第1エッチングストップ層18をも貫通してしまうので、任意の時間の制御が必要となる。エッチャントの組成としては、例えば、体積比で、酢酸(99%):過酸化水素水(32%):塩酸(96%)=100:1:10とし、10℃で3分間エッチングを行うことが好ましい。
中間層20およびp型第1クラッド層19のエッチングを行ったのち、図11に示したように、放射角緩和領域Aの形成予定領域のみに、SiO2 マスク73上に、例えばレジストよりなるエッチング保護マスク74を形成する。一方、屈折率導波領域Bにおいては、図10と同様にSiO2 マスク73のみを残し、エッチング保護マスク74は形成しない。このとき、エッチング保護マスク74の突条部51の延長方向における寸法を制御することにより、放射角緩和領域Aの主出射側端面10Fからの突条部51の延長方向における寸法LAが3μm以上500μm以下となるようにすることが好ましい。
放射角緩和領域Aにエッチング保護マスク74を形成したのち、図12に示したように、屈折率導波領域Bにおいてのみ、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17のエッチングを行う。このとき、放射角緩和領域Aではエッチング保護マスク74が設けられているためエッチングされない。よって、放射角緩和領域Aにおける突条部51の外側での第1エッチングストップ層18の上面から活性層14までの距離dpAを、屈折率導波領域Bにおける距離dpBよりも大きくして、放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnAを、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくすることができる。
第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17のエッチングは、中間層20およびp型第1クラッド層19のエッチングと同様にして行うことができる。すなわち、エッチングは第2エッチングストップ層16があるため、これが表出した時点で停止する。エッチャントも同様に、例えば酢酸:塩酸系エッチャントを用いて行うことが好ましい。また、この際、あまり長い時間エッチングを行うと第2エッチングストップ層16をも貫通してしまうので、任意の時間の制御が必要となる。この場合のエッチャントの組成としては、例えば、体積比で、酢酸(99%):過酸化水素水(32%):塩酸(96%)=100:1:10とし、10℃で20秒間エッチングを行う。
屈折率導波領域Bにおいて第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17のエッチングを行ったのち、図13に示したように、SiO2 マスク73および放射角緩和領域Aのエッチング保護マスク74を除去する。
SiO2 マスク73および放射角緩和領域Aのエッチング保護マスク74を除去したのち、図14に示したように、p側電極41により、突条部51の上面および側面並びに突条部51の外側の第1エッチングストップ層18の上面を直接被覆する。また、基板11の裏側にn側電極42を形成する。そののち、例えばヘキ開により基板11を所定の大きさに整え、主出射側端面10Fおよび後方端面10Rを形成する。以上により、図1に示した半導体レーザ素子が完成する。
この半導体レーザ素子では、キャップ層21に注入された電流は、突条部51で狭窄され、活性層14のストライプ領域14Aに至り電子−正孔再結合により発光が起こる。この光は、活性層14内部を共振器方向(突条部51の延長方向)に導波されてレーザ発振を生じ、レーザビームとして主出射側端面10Fから外部に射出される。ここでは、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBが大きいので、活性層14で発生した光がストライプ領域14Aに有効に閉じ込められ、トップハット型の良好なNFPプロファイルが形成される。また、主出射側端面10F近傍では、放射角緩和領域Aにおける活性層14のストライプ領域14Aとそれ以外のストライプ外部領域14Bとの間の実効屈折率差ΔnAが、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくされているので、急激な実効屈折率差の低下により横方向の放射角が小さくなる。
このように本実施の形態では、放射角緩和領域Aにおける活性層14のストライプ領域14Aとストライプ外部領域14Bとの間の実効屈折率差ΔnAを、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくするようにしたので、横方向の放射角を小さくすることができる。また、NFPプロファイルは屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBでほぼ決定されるので、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBを大きくとることにより活性層14で発生した光をストライプ領域14Aに有効に閉じ込め、トップハット型の良好なNFPプロファイルを得ることができる。よって、トップハット型のNFPプロファイルを維持しながら横方向の放射角の広がりを緩和し、ストライプ領域14A内における光出力の均一性と光利用効率との両方を高めることができる。
〔第2の実施の形態〕
図15および図16は、この半導体レーザ素子の放射角緩和領域Aおよび屈折率導波領域Bの断面構造をそれぞれ表したものである。この半導体レーザ素子は、プロジェクター用固体励起レーザ光源などに用いられるブロードストライプ型の800nm帯半導体レーザ素子であり、各層の材料が異なること、中間層20が設けられていないこと、および、突条部51の両側に埋め込み層52が形成されていることを除いては、第1の実施の形態で説明した半導体レーザ素子と同一の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
この半導体レーザ素子の幅は例えば300μm、ストライプ領域14Aの幅は例えば100μm、共振器長Lすなわち主出射側端面10Fと後方端面10Rとの間の距離は例えば700μmである。また、放射角緩和領域Aの寸法LAは例えば50μm、屈折率導波領域Bの寸法LBは例えば650μmとされている。
基板11は、例えば、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaAsにより構成されている。バッファ層12は、例えば、厚みが0.5μmであり、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaAsにより構成されている。n型クラッド層13は、例えば、厚みが2.0μmであり、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型Al0.47GaAs混晶により構成されている。
活性層14は、少なくとも一つの量子井戸構造を有しており、不純物を添加しないSCH超格子活性層であり、例えば、厚みが10nmのAl0.1 GaAs混晶よりなる歪み活性層を、厚みが50nmのAl0.3 GaAs混晶よりなる光ガイド層で挟み込んだ構成を有している。
p型第3クラッド層15は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型Al0.47GaAs混晶により構成されている。第2エッチングストップ層16は、例えば、厚みが10nmであり、Al0.6 GaAs混晶により構成されている。p型第2クラッド層17は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型Al0.47GaAs混晶により構成されている。第1エッチングストップ層18は、例えば、厚みが10nmであり、Al0.6 GaAs混晶により構成されている。p型第1クラッド層19は、例えば、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型Al0.47GaAs混晶により構成されている。キャップ層21は、例えば、厚みが0.5μmであり、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)などのp型不純物を添加したp型GaAsにより構成されている。
p型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17およびp型第3クラッド層15は、第1の実施の形態と同様に、各々の厚みが0.01μm以上2μm以下であり、かつ合計厚みが3μm以下であることが好ましい。ここで、p側およびn側それぞれのクラッド層の厚みをdn、dpとすると、本実施の形態では、dnはn型クラッド層13の厚みに相当し、dn=2.0μmである。また、dpは第2エッチングストップ層16および第1エッチングストップ層18の厚みを無視すればp型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17およびp型第3クラッド層15の合計厚みに相当し、dp=d1+d2+d3=2.0μmとなっている。なお、d1はp型第1クラッド層19の厚み(例えば1.5μm)、d2はp型第2クラッド層17の厚み(例えば0.25μm)、d3はp型第3クラッド層15の厚み(例えば0.25μm)を表している。
突条部51は、放射角緩和領域Aではキャップ層21およびp型第1クラッド層19を含んでいるのに対して、屈折率導波領域Bではキャップ層21、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17を含んでいる。
電流阻止層52は、ケイ素(Si)またはセレン(Se)などのn型不純物を添加したn型GaAsにより構成され、放射角緩和領域Aおよび屈折率導波領域Bの両方にわたって、突条部51の側面および突条部51の外側の第1エッチングストップ層18または第2エッチングストップ層16の上面に形成されている。また、キャップ層21および電流阻止層52上にはp側電極41が設けられ、基板11の裏側にはp側電極42が設けられている。なお、電流阻止層52は、絶縁性材料により構成されていてもよい。
また、この半導体レーザ素子は、第1の実施の形態と同様に、活性層14内に図4に示したような実効屈折率の分布が形成されており、放射角緩和領域Aにおける活性層14のストライプ領域14Aとそれ以外のストライプ外部領域14Bとの間の実効屈折率差ΔnAが、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくなっている。これにより、この半導体レーザ素子では、横方向の放射角を小さくすると共に、活性層14で発生した光をストライプ領域14Aに有効に閉じ込めてトップハット型の良好なNFPプロファイルを得ることができるようになっている。
例えば、本実施の形態では、ストライプ領域14Aの実効屈折率n1=3.3256868、放射角緩和領域Aにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率n2=3.3246637、屈折率導波領域Bにおけるストライプ外部領域14Bの実効屈折率n3=3.3189155となり、放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnA=n1−n2=0.0010231、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnB=n1−n3=0.0067713となる。このような構造を採用することにより屈折率導波領域Bでは大きな実効屈折率差ΔnBをつけることで強いインデックスガイド機構を造りつけることができ、放射角緩和領域Aでは屈折率差ΔnAを小さくしてインデックスガイド効果を弱くすることができる。
この半導体レーザ素子は、例えば、以下のようにして製造することができる。
図17ないし図25は、この半導体レーザ素子の製造方法を工程順に表したものである。まず、図17に示したように、上述した厚みおよび材料よりなる基板11上に、例えばMOVPE法またはMOCVD法により、それぞれ上述した厚みおよび材料よりなるバッファ層12、n型クラッド層13、活性層14、p型第3クラッド層15、第2エッチングストップ層16、p型第2クラッド層17、第1エッチングストップ層18、p型第1クラッド層19およびキャップ層21を順に積層する。このとき、n型不純物としては例えばケイ素(Si)またはセレン(Se)、p型不純物としては例えば亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)またはベリリウム(Be)を用いる。これにより、基板11上に、図15および図16に示した半導体レーザ素子の縦構造を有する半導体層の積層体が形成される。
次いで、図18に示したように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法等により、キャップ層21上に二酸化ケイ素(SiO2 )膜71を形成する。
続いて、図19に示したように、例えば写真触刻により、SiO2 膜71上に、紙面に対して直交する方向に延びるストライプ状のレジストマスク72を形成する。
そののち、図20に示したように、レジストマスク72を用いたエッチングにより、SiO2 膜71を選択的に除去し、SiO2 マスク73を形成する。SiO2 マスク73を形成したのち、同じく図20に示したように、レジストマスク72を除去する。
SiO2 マスク73を形成したのち、図21に示したように、SiO2 マスク73を用いたエッチングにより、キャップ層21およびp型第1クラッド層19を選択的に除去し、突条部51を形成する。エッチングは、第1エッチングストップ層18があるため、これが表出した時点で停止する。エッチャントとしては、例えばAl0.6 GaAs混晶とAl0.47GaAs混晶とのアルミニウム組成の相違によりエッチング選択性を取れる有機酸系エッチャントを用いることが好ましい。
キャップ層21およびp型第1クラッド層19をエッチングしたのち、図22に示したように、放射角緩和領域Aの形成予定領域のみに、SiO2 マスク73上に、例えばレジストよりなるエッチング保護マスク74を形成する。一方、屈折率導波領域Bにおいては、図21と同様にSiO2 マスク73のみを残し、エッチング保護マスク74は形成しない。このとき、エッチング保護マスク74の突条部51の延長方向における寸法を制御することにより、放射角緩和領域Aの主出射側端面10Fからの突条部51の延長方向における寸法LAが3μm以上500μm以下となるようにすることが好ましい。
放射角緩和領域Aにエッチング保護マスク74を形成したのち、図23に示したように、屈折率導波領域Bにおいてのみ、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17のエッチングを行う。このとき、放射角緩和領域Aではエッチング保護マスク74が設けられているためエッチングされない。よって、放射角緩和領域Aにおける突条部51の外側での第1エッチングストップ層18の上面から活性層14までの距離dpAを、屈折率導波領域Bにおける距離dpBよりも大きくして、放射角緩和領域Aにおける実効屈折率差ΔnAを、屈折率導波領域Bにおける実効屈折率差ΔnBよりも小さくすることができる。
このエッチング工程では、まず、第1エッチングストップ層18を硫酸系エッチャントで除去したのち、p型第2クラッド層17のエッチングを行う。エッチングは第2エッチングストップ層16があるため、これが表出した時点で停止する。エッチャントとしては、キャップ層21およびp型第1クラッド層19の場合と同様に、例えばAl0.6 GaAs混晶とAl0.47GaAs混晶とのアルミニウム組成の相違によりエッチング選択性を取れる有機酸系エッチャントを用いることが好ましい。
屈折率導波領域Bにおいて第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17のエッチングを行ったのち、図24に示したように、放射角緩和領域Aのエッチング保護マスク74を除去し、SiO2 マスク73を用いたエピタキシャル成長により、上述した材料よりなる電流阻止層52を形成する。このとき、電流阻止層52は、突条部51の側面および突条部51の外側の第1エッチングストップ層18または第2エッチングストップ層16の上面に形成され、SiO2 マスク73上には形成されない。
電流阻止層52を形成したのち、図25に示したように、SiO2 マスク73を除去し、キャップ層21および電流阻止層52上にp側電極41を形成する。また、基板11の裏側にn側電極42を形成する。そののち、例えばヘキ開により基板11を所定の大きさに整え、主出射側端面10Fおよび後方端面10Rを形成する。以上により、図15および図16に示した半導体レーザ素子が完成する。
この半導体レーザ素子の作用は第1の実施の形態と同様であり、また、第1の実施の形態と同様の優れた効果が得られる。
〔変形例〕
図26は、本発明の変形例に係る半導体レーザ素子の構成を表すものである。この半導体レーザ素子は、キャップ層21が主出射側端面10Fから突条部51の延長方向における一部を回避して形成されることにより、放射角緩和領域Aが電流非注入構造Cとされていることを除いては、第1の実施の形態の半導体レーザ素子と同一の構成を有するものである。このような本変形例の半導体レーザ素子では、電流非注入構造Cには電流を注入させないようにして光を発生させず、屈折率導波領域Bからの光が導波するだけとすることができる。よって、主出射側端面10Fにおける端面光密度を下げて、本発明の効果をより高めることができる。
更に、キャップ層21だけでなくp側電極42も電流非注入構造Cを回避して形成されていれば、より好ましい。電流非注入構造Cにおける電流注入を確実に阻止することができ、更に高い効果を得ることができるからである。
本変形例の半導体レーザ素子は、キャップ層21のうち主出射側端面10Fから突条部51の延長方向における一部をエッチングにより除去して放射角緩和領域Aを電流非注入構造Cとすることを除いては、第1の実施の形態の半導体レーザ素子と同様にして製造することができる。
なお、電流非注入構造Cは、上述したように放射角緩和領域Aのみに形成されていてもよいし、あるいは、放射角緩和領域Aのみでなく屈折率導波領域Bの一部まで延在していてもよい。
また、電流非注入構造Cは、上述したようにキャップ層21のみを除去することにより形成してもよいし、p型第1クラッド層19に至るエッチングにより形成するようにしてもよい。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、本発明を半導体レーザ素子に適用した場合について説明したが、本発明は、例えば図27に示したような、複数の半導体レーザ素子を並列配置したバー状の半導体レーザアレイにも適用可能である。半導体レーザアレイを製造する場合には、基板11を所定の大きさに整える際に任意の長さになるようにへき開してレーザバーとすればよい。
また、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、p型第1クラッド層19の厚みd1、p型第2クラッド層17の厚みd2、p型第3クラッド層15の厚みd3は、求められる実効屈折率差ΔnA、ΔnBに応じて自由に設計することが可能である。その際、得られるNFPプロファイルと放射角の関係を考慮して、放射角緩和領域の寸法LAを最適な値とすることが望ましい。
更に、例えば、半導体レーザ素子の構成材料は、上記実施の形態で説明した例に限られない。例えば、上記実施の形態で説明したAlInP混晶のかわりにAlGaInP混晶を用い、Al組成の異なるAlGaInP混晶層を組み合わせた積層構造としてもよい。例えば、基板11はGaAs、n型クラッド層13、p型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17およびp型第3クラッド層15はAlGaInP、第1エッチングストップ層18および第2エッチングストップ層16はGaInP、キャップ層21はGaAsにより構成されていてもよい。
加えて、例えば、第2の実施の形態において、n型クラッド層13、p型第1クラッド層19、p型第2クラッド層17、p型第3クラッド層15、第1エッチングストップ層18および第2エッチングストップ層16は、5B族元素としてヒ素(As)と、リン(P)および窒素(N)の少なくとも一方とを含んでいてもよい。
更にまた、上記実施の形態においては、n型の基板11上に、n型半導体層、活性層およびp型半導体層を順に積層した構成を有する半導体レーザ素子について説明したが、p型の基板を用い、p型の基板上に、p型半導体層、活性層およびn型半導体層を積層した逆導電型の構造としてもよい。
加えてまた、例えば、上記実施の形態では、バッファ層12ないしキャップ層21をMOVPE法またはMOCVD法等の有機金属気相成長法により形成する場合について説明したが、これに制限されることなく、例えばMBE(Molecular Beam Epitaxy;分子線エピタキシー)法等で行ってもよい。
更にまた、上記実施の形態では、突条部51をウェットエッチングにより形成する場合について説明したが、違うエッチャントを用いてもよい。また、これに限らずドライエッチング法等で行ってもよい。
加えてまた、例えば、上記実施の形態では、半導体レーザ素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また他の層を更に備えていてもよい。
更にまた、例えば、上記実施の形態では、活性層14の構成を具体的に挙げて説明したが、活性層14は、光閉じ込め係数を考慮し、放射角等の仕様上自由に設計してもよい。その場合、光閉じ込め係数に応じて、n側およびp側のそれぞれのクラッド層の厚みdn、dpは損失係数αを考慮し、最適な値とすることが望ましい。
加えてまた、上記第1の実施の形態では、p側電極41により、突条部51の上面および側面並びに突条部51の外部の第1エッチングストップ層18等の上面を直接被覆する場合について説明したが、突条部51の側面および突条部51の外部をn型半導体層または絶縁膜で埋め込んだ構造としてもよい。あるいは、上記第2の実施の形態では、キャップ層21および電流阻止層52上にp側電極41を形成した場合について説明したが、p側電極41により、突条部51の上面および側面並びに突条部51の外部の第1エッチングストップ層18等の上面を直接被覆するようにしてもよい。
更にまた、上記第1の実施の形態では、突条部51が、放射角緩和領域Aではキャップ層21、中間層20およびp型第1クラッド層19を含み、屈折率導波領域Bではキャップ層21、中間層20、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17を含む場合について説明したが、突条部51の層構成はこれに限定されない。例えば、突条部51は、放射角緩和領域Aではキャップ層21、中間層20、p型第1クラッド層19および第1エッチングストップ層18を含み、屈折率導波領域Bではキャップ層21、中間層20、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18、p型第2クラッド層17および第2エッチングストップ層16を含んでいてもよい。
加えてまた、上記第2の実施の形態では、突条部51が、放射角緩和領域Aではキャップ層21およびp型第1クラッド層19を含み、屈折率導波領域Bではキャップ層21、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18およびp型第2クラッド層17を含む場合について説明したが、突条部51の層構成はこれに限定されない。例えば、突条部51は、放射角緩和領域Aではキャップ層21、p型第1クラッド層19および第1エッチングストップ層18を含み、屈折率導波領域Bではキャップ層21、p型第1クラッド層19、第1エッチングストップ層18、p型第2クラッド層17および第2エッチングストップ層16を含んでいてもよい。
本発明の第1の実施の形態に係る半導体レーザ素子の全体構成を表す斜視図である。 図1に示した半導体レーザ素子のII−II線に沿った構造(放射角緩和領域)を表す断面図である。 図1に示した半導体レーザ素子のIII−III線に沿った構造(屈折率導波領域)を表す断面図である。 図1に示した半導体レーザ素子における活性層の実効屈折率の分布を表す平面図である。 図1に示した半導体レーザ素子の製造方法を工程順に表す断面図である。 図5に続く工程を表す断面図である。 図6に続く工程を表す断面図である。 図7に続く工程を表す断面図である。 図8に続く工程を表す断面図である。 図9に続く工程を表す断面図である。 図10に続く工程を表す断面図である。 図11に続く工程を表す断面図である。 図12に続く工程を表す断面図である。 図13に続く工程を表す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザ素子の放射角緩和領域の構造を表す断面図である。 図15に示した半導体レーザ素子の屈折率導波領域の構造を表す断面図である。 図15および図16に示した半導体レーザ素子の製造方法を工程順に表す断面図である。 図17に続く工程を表す断面図である。 図18に続く工程を表す断面図である。 図19に続く工程を表す断面図である。 図20に続く工程を表す断面図である。 図21に続く工程を表す断面図である。 図22に続く工程を表す断面図である。 図23に続く工程を表す断面図である。 図24に続く工程を表す断面図である。 本発明の変形例に係る半導体レーザ素子の構成を表す斜視図である。 本発明に係る半導体レーザアレイの一例を表す斜視図である。 従来の半導体レーザ素子の一構成例を表す断面図である。 従来の半導体レーザ素子の他の構成例を表す断面図である。
符号の説明
11…基板、12…バッファ層、13…n型クラッド層、14…活性層、15…p型第3クラッド層、16…第2エッチングストップ層、17…p型第2クラッド層、18…第1エッチングストップ層、19…p型第1クラッド層、20…中間層、21…キャップ層、31…p側電極、32…n側電極、51…突条部、61…電流注入領域、62…電流非注入領域、71…SiO2 膜、72…レジストマスク、73…SiO2 マスク、74…エッチング保護マスク、A…放射角緩和領域、B…屈折率導波領域、C…電流非注入構造

Claims (25)

  1. 基板上に活性層を含む半導体層を備え、前記半導体層の一部に前記活性層のストライプ領域を制限するための突条部を有すると共に前記半導体層の側面に前記突条部の延長方向に対向する主出射側端面および後方端面を備えた半導体レーザ素子であって、
    前記半導体層は、前記主出射側端面から前記突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記活性層のストライプ領域と前記ストライプ領域以外のストライプ外部領域との間の実効屈折率差は、前記第2領域における実効屈折率差よりも小さい
    ことを特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 前記第1領域の前記主出射側端面からの前記突条部の延長方向における寸法は、3μm以上500μm以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  3. 前記第1領域における前記突条部の高さは、前記第2領域における前記突条部の高さよりも小さい
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  4. 前記第1領域における前記突条部の外側での前記半導体層の上面から前記活性層までの距離は、前記第2領域よりも大きい
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  5. 前記ストライプ領域の実効屈折率は、前記第1領域と前記第2領域とで同じである
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  6. 前記第1領域における実効屈折率差ΔnAと前記第2領域における実効屈折率差ΔnBとは、数1を満たす
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
    (数1)
    0.00001≦ΔnB−ΔnA≦0.01
    ΔnA=n1−n2
    ΔnB=n1−n3
    (数1において、n1は前記ストライプ領域の実効屈折率、n2は前記第1領域におけるストライプ外部領域の実効屈折率、n3は前記第2領域におけるストライプ外部領域の実効屈折率をそれぞれ表す)
  7. 前記半導体層は、前記基板側から順に、前記基板と同導電型を有する第1導電型クラッド層、前記活性層、前記基板と逆導電型を有する第2導電型第3クラッド層、第2エッチングストップ層、第2導電型第2クラッド層、第1エッチングストップ層、第2導電型第1クラッド層およびキャップ層を含み、
    前記突条部は、前記第1領域においては前記キャップ層および前記第2導電型第1クラッド層を含み、前記第2領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第1エッチングストップ層および前記第2導電型第2クラッド層を含む
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  8. 前記第2導電型第1クラッド層、前記第2導電型第2クラッド層および前記第2導電型第3クラッド層は、各々の厚みが0.01μm以上2μm以下であり、かつ合計厚みが3μm以下である
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  9. 前記突条部は、前記第1領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層および前記第1エッチングストップ層を含み、前記第2領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第1エッチングストップ層、前記第2導電型第2クラッド層および第2エッチングストップ層を含む
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  10. 前記基板はGaAs、前記第1導電型クラッド層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第2導電型第2クラッド層および前記第2導電型第3クラッド層はAlInP、前記第1エッチングストップ層および前記第2エッチングストップ層はGaInP、前記キャップ層はGaAsにより構成されている
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  11. 前記基板はGaAs、前記第1導電型クラッド層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第2導電型第2クラッド層および前記第2導電型第3クラッド層はAlGaInP、前記第1エッチングストップ層および前記第2エッチングストップ層はGaInP、前記キャップ層はGaAsにより構成されている
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  12. 前記基板はGaAs、前記第1導電型クラッド層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第2導電型第2クラッド層および前記第2導電型第3クラッド層はAlGaAs、前記第1エッチングストップ層および前記第2エッチングストップ層はAlGaAs、前記キャップ層はGaAsにより構成されている
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  13. 前記第1導電型クラッド層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第2導電型第2クラッド層、前記第2導電型第3クラッド層、前記第1エッチングストップ層および前記第2エッチングストップ層は、5B族元素としてヒ素(As)と、リン(P)および窒素(N)の少なくとも一方とを含む
    ことを特徴とする請求項12記載の半導体レーザ素子。
  14. 前記半導体層の上面に電極を有し、前記電極は、前記突条部の上面および側面並びに前記突条部の外側の前記半導体層の上面を直接被覆している
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  15. 前記突条部の側面および前記突条部の外側の前記半導体層の上面に、前記基板と同導電型の半導体材料または絶縁性材料よりなる埋め込み層が設けられている
    ことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
  16. 前記キャップ層が前記主出射側端面から前記突条部の延長方向における一部を回避して形成されることにより、前記第1領域および前記第2領域のうち少なくとも前記第1領域が電流非注入構造とされている。
    ことを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
  17. 複数の半導体レーザ素子を並列配置した半導体レーザアレイであって、
    前記半導体レーザ素子は、
    基板上に活性層を含む半導体層を備え、前記半導体層の一部に前記活性層のストライプ領域を制限するための突条部を有すると共に前記半導体層の側面に前記突条部の延長方向に対向する主出射側端面および後方端面を備えており、
    前記半導体層は、前記主出射側端面から前記突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記活性層のストライプ領域と前記ストライプ領域以外のストライプ外部領域との間の実効屈折率差は、前記第2領域における実効屈折率差よりも小さい
    ことを特徴とする半導体レーザアレイ。
  18. 基板上に活性層を含む半導体層を形成する工程と、前記半導体層の一部に前記活性層のストライプ領域を制限するための突条部を形成する工程と、前記半導体層の側面に前記突条部の延長方向に対向する主出射側端面および後方端面を形成する工程とを含む半導体レーザ素子の製造方法であって、
    前記半導体層を、前記主出射側端面から前記突条部の延長方向における一部を含む第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とに分けて、前記第1領域における前記活性層のストライプ領域と前記ストライプ領域以外のストライプ外部領域との間の実効屈折率差を、前記第2領域における実効屈折率差よりも小さくする
    ことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  19. 前記第1領域の前記主出射側端面からの前記突条部の延長方向における寸法を、3μm以上500μm以下とする
    ことを特徴とする請求項18記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  20. 前記半導体層を形成する工程において、少なくとも、前記基板側から順に、前記基板と同導電型を有する第1導電型クラッド層、前記活性層、前記基板と逆導電型を有する第2導電型第3クラッド層、第2エッチングストップ層、第2導電型第2クラッド層、第1エッチングストップ層、第2導電型第1クラッド層およびキャップ層を形成し、
    前記突条部を形成する工程において、前記第1領域においては前記キャップ層および前記第2導電型第1クラッド層を選択的に除去し、前記第2領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第1エッチングストップ層および前記第2導電型第2クラッド層を選択的に除去する
    ことを特徴とする請求項18記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  21. 前記突条部を形成する工程において、前記第1領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層および前記第1エッチングストップ層を選択的に除去し、前記第2領域においては前記キャップ層、前記第2導電型第1クラッド層、前記第1エッチングストップ層、前記第2導電型第2クラッド層および第2エッチングストップ層を選択的に除去する
    ことを特徴とする請求項20記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  22. 前記突条部を形成する工程は、
    前記第1エッチングストップ層を用いて前記キャップ層および前記第2導電型第1クラッド層を選択的に除去する工程と、
    前記第1領域の形成予定領域にエッチング保護マスクを形成する工程と、
    前記エッチング保護マスクおよび前記第2エッチングストップ層を用いて、前記第2領域の形成予定領域の前記第1エッチングストップ層および前記第2導電型第2クラッド層を選択的に除去する工程と
    を含むことを特徴とする請求項20記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  23. 前記キャップ層のうち前記主出射側端面から前記突条部の延長方向における一部を除去することにより、前記第1領域および前記第2領域のうち少なくとも前記第1領域を電流非注入構造とする。
    ことを特徴とする請求項20記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  24. 前記半導体層の上面に電極を形成すると共に、前記電極により、前記突条部の上面および側面並びに前記突条部の外側の前記半導体層の上面を直接被覆する
    ことを特徴とする請求項18記載の半導体レーザ素子の製造方法。
  25. 前記突条部の側面および前記突条部の外側の前記半導体層の上面に、前記基板と同導電型の半導体材料または絶縁性材料よりなる埋め込み層を設ける
    ことを特徴とする請求項18記載の半導体レーザ素子の製造方法。
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