JP2006057717A - シンクロナイザクラッチ機構 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】伝動歯車4のコーン面4cに支持されたシンクロナイザリング8と、クラッチハブ3のスプラインに嵌合し、軸方向にシフト移動してシンクロナイザリング8の歯部とクラッチ歯とに係合可能なスリーブ10と、シンクロナイザリングに取り付けられたばね要素11とを備え、スリーブ10が中立位置から係合位置へシフトする時にばね要素11の作用によりシンクロナイザリング8とコーン面4cとの間に摩擦力を発生させる。ばね要素11にはU字形に折り返されたばね部11bと、このばね部の先端に外周方向に突出する突起部11cとが設けられる。中立位置で突起部11cはスリーブ10の内周溝10cに係合し、シンクロナイザリング8の軸方向位置が保持されて引きずりが防止される。
【選択図】 図2
Description
イナーシャロック型のシンクロナイザクラッチ機構の場合、軸に一体回転可能に取り付けられたクラッチハブと、軸上に回転自在に支持され、クラッチハブ側にクラッチ歯を持つ伝動歯車と、上記伝動歯車のコーン面に支持されたシンクロナイザリングと、クラッチハブに設けられたスプラインに嵌合し、軸方向にシフト移動可能なスリーブと、クラッチハブの欠歯部に嵌め込まれたシンクロナイザキーと、シンクロナイザキーを外周方向へ押しつけるスプリングとを備えている。上記スリーブが中立位置にある時、スリーブの内周溝とシンクロナイザキーの凸部とが嵌合して中立位置を保持し、上記スリーブが中立位置から係合位置へシフトする時、上記シンクロナイザキーがシンクロナイザリングの側面を押して伝動歯車のコーン面に押し付け、同期させるようになっている。
ばね要素は、その一端部がシンクロナイザリングの内側面に固定され、他端部がシンクロナイザリングの外周面にそって軸方向に延びている。軸方向に延びる他端部の途中には山形の突起部が設けられ、スリーブがシフトされた時、スリーブの歯の端部に形成された傾斜面がこの突起部に乗り上げてばね要素を変形させることで、シンクロナイザリングとコーン面との間に摩擦力を発生させる。
しかし、スリーブが中立位置にある時、ばね要素が変形しないため、スリーブに対してシンクロナイザリングを安定した位置に保持することが困難になるという問題がある。そのため、シンクロナイザリングとコーン面との接触による引きずりが発生する懸念があった。
スリーブを係合位置へシフトしようとすると、突起部と内周溝との弾性係合によってシンクロナイザリングも一体的にシフトされ、コーン面に押しつけられる。やがて、突起部が内周溝から外れ、スリーブのスプライン歯がシンクロナイザリングの歯部とクラッチ歯とに係合してシフトが完了する。
本発明のばね要素は、U字形に折り返したばね部を有するので、特許文献1に記載のようなばね要素に比べてばね弾性を自由に確保することができる。そのため、繰り返し使用を行ってもばね弾性が劣化せず、安定した保持機能を維持できるとともに、シフト時にばね要素がスリーブの動きを阻害せず、円滑なシフト作動を実現できる。
本発明のシンクロナイザクラッチ機構の場合、イナーシャロック型のようなシンクロナイザキーを必要とせず、軸方向寸法を短縮できるとともに、ばね要素がシンクロナイザリングに固定されているので、部品数を少なくでき、自動組立が可能になるという利点がある。
ばね要素のばね部はU字形に折り返されているため、シンクロナイザリングの外周部に突出することになる。そのため、シンクロナイザリングの歯部をさらに高くする必要があり、外径寸法が大きくなる欠点がある。これに対し、請求項2のように溝部を設け、この溝部にばね要素のばね部を嵌合させれば、シンクロナイザリングの歯部を高くする必要がなく、外径寸法が大きくなる欠点を解消できる。
ばね要素のばね部の先端に設けられる突起部の突出高さが高過ぎると、突起部と内周溝との係合力が強過ぎてシフト時に突起部が内周溝を乗り越えにくくなる可能性がある。これに対し、請求項3のように係止部によって引掛部を係止すれば、突起部の突出高さを規制できるので、安定した係合力を得ることができる。
本発明では、複数のばね要素をシンクロナイザリングに個別に取り付けることも可能であるが、個々に組み付ける必要があるため手間がかかるとともに、各ばね要素の位置がばらつく可能性がある。これに対し、リング状のベース部からばね部を一体に形成すれば、一部品をシンクロナイザリングに固定するだけで組付が完了し、作業性が向上するとともに、各ばね部の位置が安定する。
伝動軸1の中間部に設けられたスプライン部1aには、クラッチハブ3が一体回転可能にスプライン結合されている。伝動軸1の上には、伝動歯4a,5aとチャンファを持つクラッチ歯4b,5bとが形成された伝動歯車4,5がニードルベアリング6,7を介して回転自在に支持されている。伝動歯車4,5のクラッチハブ側の端部には、コーン面4c,5cが形成されている。伝動歯車4,5のコーン面4c,5cにはそれぞれシンクロナイザリング8,9が支持されている。なお、コーン面4c,5cとシンクロナイザリング8,9との間に、摩擦材料を配置してもよい。クラッチハブ3の外周部に設けられたスプライン(図示せず)には、スリーブ10のスプライン歯10aが軸方向に移動可能に嵌合しており、このスリーブ10を軸方向にシフトさせて、スプライン歯10aをシンクロナイザリング8,9の歯部8a,9aおよびクラッチ歯4b,5bに係合させることにより、クラッチハブ3といずれか一方の伝動歯車4,5とを連結できる。スリーブ10の外周部に設けられた外周溝10bには、図示しないシフトフォークが係合可能である。
上記説明では、一方のシンクロナイザリング8と一方のばね要素11との取り付け構造について説明したが、他方のシンクロナイザリング9と他方のばね要素12との取り付け構造も全く同様であるため、説明を省略する。
なお、クラッチハブ3の外周部には、スプライン歯を持たない欠歯部3aがシンクロナイザリング8,9の縦壁部8bと同一位相で設けられ、この欠歯部3aに縦壁部8bが所定の周方向隙間をもって挿入されている。
この実施例の内周溝10c,10dはV溝で構成されているが、中立位置においてばね要素11,12の突起部11c,12cが安定して係合しうる形状であれば、円弧状断面の溝であってもよいし、矩形状断面の溝であってもよい。
中立位置においては、図2に示すように、ばね要素11,12の突起部11c,12cがスリーブ10の内周溝10c,10dに弾性的に係合している。この係合によって、シンクロナイザリング8,9は軸方向の一定位置に保持され、シンクロナイザリング8,9の内周面が伝動歯車4,5のコーン面4c,5cに接触するのが防止される。そのため、伝動軸1と伝動歯車4,5との間に相対回転があっても、伝動歯車4,5に引きずりトルクが発生しない。
次に、変速を行うためにスリーブ10を図2の左方向にシフトすると、ばね要素11,12の突起部11c,12cと内周溝10c,10dとの係合によって、シンクロナイザリング8,9も一体に軸方向に移動しようとし、左側のシンクロナイザリング8の内周面は伝動歯車4のコーン面4cに押しつけられる。やがて、スリーブ10のスプライン歯10aがシンクロナイザリング8の歯部8aにチャンファで接触し、スリーブ10の動きを止めて回転の同期作用が行われる(図4参照)。
同期作用の途中で、スリーブ10の内周溝10c,10dとばね要素11,12の突起部11c,12cとの係合が外れ、突起部11c,12cはスリーブ10のスプライン歯10aの歯先面に乗り上げる。ばね要素11,12のばね部11b,12bは十分なばね弾性を持つので、突起部11c,12cがスプライン歯10aに過大な力で圧接せず、スリーブ10のシフト移動を阻害することがない。
同期作用が完了すると、回転差がなくなるので、シンクロナイザリング8がスリーブ10の動きを妨害する力がなくなり、スリーブ10は伝動歯車4のクラッチ歯4bに噛み合い、シフト作動が完了する(図5参照)。
この実施例では、ばね要素20を複数の個別部品で構成したものである。なお、シンクロナイザリング8は第1実施例と同様である。
ばね要素20は、一端側に矩形状のベース部21を持ち、他端部にU字形に折り返されたばね部22を持つものであり、ベース21がシンクロナイザリング8の内側面に設けられた段部8eに溶接、カシメ、ネジ止めなどの手段によって固定され、ばね部22は溝部8cに収容される。ばね部22の先端には第1実施例と同様に突起部23が形成され、突起部23の先端に引掛部24が形成されている。引掛部24はシンクロナイザリング8の係止部8dに係止され、突起部23の浮き上がりが規制される。
この場合は、ばね要素20を小型化できる利点がある。
この実施例では、ばね要素30を複数の個別部品で構成するとともに、シンクロナイザリング0を第1実施例と比べて多少変更している。
ばね要素30は、一端側に矩形状のベース部31を持ち、他端部にU字形に折り返されたばね部32を持ち、ばね部32の先端には突起部33が形成されている。なお、突起部33の先端の引掛部は形成されていない。
シンクロナイザリング8Aの外周面に形成された溝部8c,8fは、内側面に設けられた段部8e側まで延びており、この溝部8cにばね部32が嵌合され、溝部8fにベース31部が嵌合される。ベース部31は溝部8fの底面に溶接、カシメ、ネジ止め等によって固定される。この場合は、ベース部31が溝部8fに嵌合されて固定されるので、ばね要素30が安定して固定される。
上記実施例では、伝動歯車4,5にクラッチ歯4b,5bが一体に形成されたものを示したが、別体のクラッチ歯を伝動歯車4,5に溶接、カシメ等によって固定してもよい。
また、クラッチハブ3を間にしてその両側に伝動歯車4,5を設けたシンクロナイザクラッチ機構について説明したが、片側のみに伝動歯車を設けたものでもよい。この場合には、シンクロナイザリングおよびばね要素も片側のみに設ければよい。
3 クラッチハブ
4,5 伝動歯車
4b,5b クラッチ歯
4c,5c コーン面
8,9 シンクロナイザリング
8b 縦壁部
8c 溝部
8d 係止部
10 スリーブ
10a スプライン歯
10c,10d 内周溝
11,12 ばね要素
11a ベース部
11b ばね部
11c 突起部
11d 引掛部
Claims (4)
- 軸に一体回転可能に取り付けられたクラッチハブと、軸上に回転自在に支持され、クラッチ歯を持つ伝動歯車と、上記伝動歯車のコーン面に支持されたシンクロナイザリングと、クラッチハブに設けられたスプラインに嵌合し、軸方向にシフト移動して上記シンクロナイザリングの歯部とクラッチ歯とに係合可能なスリーブと、上記シンクロナイザリングに取り付けられたばね要素とを備え、
上記スリーブが中立位置から係合位置へシフトする時に上記ばね要素の作用により上記シンクロナイザリングと上記伝動歯車のコーン面との間に摩擦力を発生させるシンクロナイザクラッチ機構において、
上記ばね要素にはシンクロナイザリングとスリーブとの半径方向隙間に沿って伝動歯車側へ延びた後、クラッチハブ側にU字形に折り返されたばね部が形成され、このばね部の先端に外周方向に突出する突起部が設けられており、
上記スリーブの内周面に、中立位置で上記突起部と弾性的に係合してシンクロナイザリングを保持する内周溝が設けられていることを特徴とするシンクロナイザクラッチ機構。 - 上記シンクロナイザリングの外周面に歯底面より内径側へ凹んだ溝部が軸方向に連続して設けられ、
上記ばね要素のばね部は上記溝部に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のシンクロナイザクラッチ機構。 - 上記ばね要素の突起部より先端側に、突起部より内径側に折り曲げられた引掛部が設けられ、
上記シンクロナイザリングのクラッチハブ側の端部に、上記ばね要素の引掛部を係止して突起部の浮き上がりを規制する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシンクロナイザクラッチ機構。 - 上記ばね要素には上記シンクロナイザリングの内側面に固定されるリング状のベース部が設けられ、このベース部の外周に複数の上記ばね部が一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシンクロナイザクラッチ機構。
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