JP2006054129A - プラズマイグナイタ及びこれを搭載した装置 - Google Patents

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明 小島
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俊彦 佐藤
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寿一 嶋田
Hiromichi Odajima
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Abstract

【課題】気体電離を促進する高いエネルギーを持つ電子を気体中に照射し、放電装置の放電開始電圧を低下させるとともに、空間的に均一な放電を発生させるプラズマイグナイタ及びこれを搭載した装置の提供。
【解決手段】プラズマイグナイタ3は、ホットエレクトロン、準弾道電子、又は弾道電子を生成する半導体もしくは導電性基板4上に形成された電子ドリフト層5と、電子ドリフト層5上に形成された表面電極6とからなり、大気圧プラズマ処理装置に搭載する。
【選択図】図1

Description

この発明は、気体電離を促進する高いエネルギーを持つ電子を気体中に照射し、放電装置の放電開始電圧を低下させるとともに、空間的に均一な放電を発生させるためのプラズマ点弧子(イグナイタ)に関するものである。
工業的に利用されている放電装置として、プラズマプロセス装置、プラズマディスプレイ、レーザーおよび放電ランプがある。ここで放電装置とは、複数の電極を有し、電極間に気体放電を生ずる装置をさす。
これらの放電装置は、放電開始時に、絶縁物である気体を電離させるための瞬間的に高電圧を発生させる回路をもつ。また、気体電離を促進するために、電子線や、紫外光またはレーザー光などの電磁波照射による予備電離が用いられている。
例えば、特許文献1の大気圧プラズマ表面処理装置では、誘電体被覆を貼付した平行板電極間に電圧を印加することでグロー放電を生じさせている。大気圧グロープラズマを維持するためには十分な量の自由電子が放電空間内に存在する必要があるが、特許文献1では電極に貼付された誘電体の表面を電子の供給源として用いている。電極に貼付された誘電体表面粗さによって局所的に強電界が生じ電子を放出させることができる、としている。この電極が負極となる。
ここで、平行板電極間に電圧が印加され、自由電子が気体原子に衝突し電離すると、気体原子は陽イオンとなって電子を放出し電子が増倍して電子なだれを生ずる。電子なだれが正極となる対向電極に到達すると気体中に陽イオンが取り残される。陽イオンは正極に近い領域で密度が大きいため、電界がその領域で強くなり新たな電子なだれを生ずる。陽イオンはさらに増大し、より負極に近い部分に強い電界の領域ができる。この過程が繰り返され、陽イオンは負極にむかって進行し、負極と衝突すると多量の電子が負極から放出され火花放電を生じる。火花放電は全路破壊に移行するまでの短期間の過渡現象であり、持続したグロー放電に移行する。ここで、電子なだれから火花放電、グロー放電を含む持続した放電において発生する電子とイオンを生ずる空間領域を「放電空間」としている。以下、その領域を放電空間とする。
また、特許文献2では均質な薄膜を、高速でかつ大きな面積で形成することができる高速成膜方法及び高速成膜装置を得るために、円筒状の回転電極を回転させCVD(
Chemical Vapor Deposition)処理を行う基板の表面近傍を電極表面が移動しながら通過させる構造を提案している。ここで、反応ガスを基板表面と回転電極の間に供給し、回転電極に高周波電力を印加することにより、基板表面と回転電極の間にプラズマを発生させ、プラズマ中に供給された反応ガスの化学反応により均一な薄膜を形成するとしている。
予備電離技術の例としては、特許文献3の放電型平面表示装置におけるXeとNeの混合気体の放電開始に先立ち、混合気体の放電室の背面に設置した電界放出型アレイから電子線を照射する方法を用いている。これにより、表示画像の明るさが均一で寿命の長い放電型表示装置を提供できるとしている。
また、特許文献4には、高頻度パルスレーザーにおいて複数の開口部を有する多孔性主電極で発生させた紫外線を主放電領域に拡散させることで予備電離を行い、放電空間を均一に電離できる、としている。
予備電離に使用することができる電子源として、特許文献5の表面から電子を放射するナノシリコン面電子源がある。ナノシリコン面電子源は導電性基板の上にナノシリコン層と上部電極とを順次形成することによって作成される。ナノシリコン電子源は他の電子源と比較し、低真空度での動作が可能である特徴を有し、予備電離用の電子源として使用することができる。
特開2004-165145号公報 特開平9-104985号公報 特開平11-311975号公報 特開平5-121812号公報 特開2000-100316号公報
上述の方法による放電技術および予備電離技術は、いずれも、放電の種火となる電子のエネルギーが低く、電極間に電圧を印加することで気体を電離し、気体中で電子を加速しなければならない。このとき印加される電圧は放電装置の電極材料を物理的・化学的に劣化させるため、結果として放電が不安定で断続的になり、短寿命の原因となる。
特許文献1に記載の大気圧プラズマ表面処理装置では誘電体被覆を貼付した電極間に電圧を印加することでグロー放電を生じさせている。大気圧グロープラズマを維持するためには十分な量の自由電子が放電空間内に存在する必要があるが、特許文献1では誘電体表面粗さによって局所的に発生する強電界によって放電開始時に必要な電子を放出させている。この方法では誘電体表面の局所的な突起に強電界を生じさせるために誘電体表面の電気的障壁の実効的な厚みを減らし、誘電体を貼付している電極から電子をトンネルさせるのに十分な電圧が電極と誘電体表面間に印加されることを必要とする。
これに加えて、気体中に放出された直後の電子は0.1eV以下の運動エネルギーしか有しないため、気体を電離するにはさらに高い電圧を電極間に与えて、電子を気体中で約10 eVまで加速しなければならない。気体中での電子の加速は、気体原子によって電子が散乱されてエネルギー損失を伴うので、そのエネルギー損失を上回る電子の加速が必要である。このため、放電を開始するためには誘電体を貼付している電極から電子をトンネルさせるのに必要な電圧を加算した電圧が必要となる。結果として、電極に貼付された誘電体に絶縁破壊を生じたり、誘電体の局所的突起が物理的、化学的に変化する。これは経時的に放電開始最小電圧を増大させると同時に放電の不安定性を導く。
特許文献2では、均質な薄膜を、高速でかつ大きな面積で形成することができる高速成膜方法及び高速成膜装置を得るために、円筒状の回転電極を回転させCVD処理を行う基板の表面近傍を電極表面が移動しながら通過させる構造において、反応ガスを基板表面と回転電極の間に供給し、回転電極に高周波電力を印加する。これにより、常圧において基板表面と回転電極の間にプラズマを発生させ、プラズマ中に供給された反応ガスの化学反応により薄膜を形成することができる。しかしながら、この場合、放電電力の増大に伴い、回転電極の放熱が十分でなくなることによって局所的な放電路が生じ、形成される薄膜の厚みが不均一になる。
特許文献3の放電型平面表示装置では予備電離技術として電界放出型電子源を用いているが、特許文献1と同様に、放出時の電子が0.1eV以下の運動エネルギーしか有しないため、気体を電離するのに十分な電圧を電極間に与え、電子を気体中で約10 eVまで加速する必要がある。この方法は気体放電を開始するタイミングを制御できるが、放電開始電圧の低下にはほとんど寄与しないので、放電装置の電極材料の劣化防止に役立たない。また、電界放出型電子源は電子源の突起部分に生ずる強電界で電極から気体中に電子を引き出す原理なので特許文献1と同様、突起部分が物理的、化学的に変化することで予備電離の効果が経時的に不安定化する。
また、特許文献4の高頻度パルスレーザーでは複数の開口部を有する多孔性主電極で発生させた紫外線を主放電領域に拡散させることで予備電離を行い、放電空間を均一に電離しようとするものであり、電子を気体中に放出するために強電界を必要とせず、放電空間中に均一に電子を与えることができるが、気体原子を電離するのに十分な運動エネルギーを付与するまで電子を加速しなければならないことについては上記の特許文献2と同様で、放電開始電圧の低下はできない。これは紫外線以外の電磁波を用いる予備電離法についても共通の問題である。
予備電離に使用することができる電子源として、特許文献5の表面から電子を放射するナノシリコン面電子源がある。ナノシリコン電子源は他の電子源と比較し、低真空度での動作が可能である特徴を有し、予備電離用の電子源として使用することができる。しかしながら、上部電極の平坦性が制御されていないため、局所的に放電が集中する部分が発生し、空間的に均一なグロー放電が、不均一なアーク放電に移行しやすくなるという問題があった。
上記の課題を解決するため、本発明は、放電開始電圧を低下させるための予備電離用のプラズマ点弧子(イグナイタ)装置を提供することを目的としている。具体的には、プラズイグナイタから、気体電離促進に十分なエネルギーをもつ電子を気体中に放出し、気体を電離させようとするものである。これにより、放電開始電圧を低下させ、放電を促進するとともに、空間的に均一で安定した放電を発生させることが可能なプラズマイグナイタを提供することを目的としている。さらに、このプラズマイグナイタを搭載したCVD装置、エッチング装置、又は表面改質装置等プラズマを用いたプロセス装置を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明の第1様態では、ホットエレクトロン、準弾道電子、又は弾道電子を生成する電子ドリフト層と、該電子ドリフト層上に形成された表面電極と
を有するプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第2様態では、本発明の第1様態に加えて、前記表面電極と離間対向して補助電極が配置されているプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第3様態では、本発明の第2様態に加えて、前記補助電極は、薄膜状、格子状、網状、孔開き平板状のいずれかの形状を有するプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第4様態では、本発明の第1乃至第3のいずれか一つの様態に加えて、気体原子が前記表面電極に付着するのを防止するためのバッファ層が前記表面電極上に形成されているプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第5様態では、本発明の第4様態に加えて、前記バッファ層は、薄膜状、多孔質状のいずれかの形状を有するプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第6様態では、本発明の第1乃至第5のいずれか一つの様態に加えて、前記電子源に隣接する位置、前記表面電極上、または前記バッファ層上に音圧素子が形成されているプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第7様態では、本発明の第1乃至6のいずれか一つの様態に加えて、前記電子ドリフト層は、ナノシリコン層で構成されることを特徴とするプラズマイグナイタ。
本発明の第8様態では、本発明の第1乃至7のいずれか一つの様態に加えて、略大気圧で放電開始電圧を低下させるプラズマイグナイタであることを特徴とする。
本発明の第9様態では、本発明の第8様態に記載のプラズマイグナイタを搭載した略大気圧略でプラズマを使用するCVD装置であることを特徴とする。
本発明の第10様態では、本発明の第8様態に記載のプラズマイグナイタを搭載した略大気圧でプラズマを使用するエッチング装置であることを特徴とする。
本発明の第11様態では、本発明の第8様態に記載のプラズマイグナイタを搭載した略大気圧でプラズマを使用する表面改質装置であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、プラズマイグナイタから、気体電離促進に十分なエネルギーをもつ電子を気体中に放出し、放電開始電圧を低下させることができる。また、プラズマイグナイタの表面電極の表面粗さが100 nm以下に平坦化されていることにより、表面電極上に局所的な電界集中が発生することが防止されているため、均一なグロー放電を保持することが可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項2又は3に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、表面電極と放電空間の間に補助電極を配置し帯電もしくは帯磁させるので、放電気体中のイオンの運動方向を変化させるため、放電気体中のイオンが表面電極に不可逆的な物理的ダメージを与えるエネルギーで衝突することを防ぐことが可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項4又は5に記載の発明によれば、請求項1乃至3いずれか一つの効果に加えて、表面電極に、不可逆的な物理的ダメージを与えるエネルギーが直接衝突することを防ぐことが可能なプラズマイグナイタを提供できる。同時に気体原子が表面電極に吸着して表面電極の仕事関数が変動することによる電子放出量の変化を防止可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5いずれか一つの効果に加えて、放電気体中のイオンに音圧を加えることで、表面電極上に局所的にイオンが集中することを防止し、均一なグロー放電を保持することが可能なプラズマイグナイタを提供できる。また、同時に気体原子が表面電極に付着して表面電極の仕事関数が変動することによる電子放出量の変化を防止可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6いずれか一つの効果に加えて、表面電極から電子が均一に放出されることで気体が一様に電離され、空間的に均一な放電を得ることが可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7いずれか一つの効果に加えて、プラズマイグナイタから、気体電離促進に十分なエネルギーをもつ電子を気体中に放出し、放電開始電圧を低下させる。これにより、放電が局所的で、部分的に放電が生じていない領域がある場合、その領域にプラズマイグナイタから、気体電離促進に十分なエネルギーをもつ電子を均一に照射することで気体を電離させ、空間的に均一な放電を得ることが可能なプラズマイグナイタを提供できる。
請求項9に記載の発明によれば、膜厚が均一な薄膜を作製可能なCVD装置を提供できる。
請求項10に記載の発明によれば、厚みが均一となる表面処理が可能なエッチング装置を提供できる。
請求項11に記載の発明によれば、厚みが均一となる表面改質可能な表面改質装置を提供できる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施例1に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。
プラズマイグナイタ3は、半導体基板又は絶縁性基板上に形成された電子ドリフト層5と、この電子ドリフト層5上に形成された表面電極とからなる素子構成をとる。実施例1では、基板として、半導体基板を用い、導電性基板4を例に示してある。
電子ドリフト層5としては、ホットエレクトロン、準弾道電子、又は弾道電子を放出するものであればよい。
放電空間1は、この放電空間1内外の各気体を隔離するものであっても隔離するものでなくてもよく、放電路がその中で生ずる空間領域を示すものである。
放電空間1内に存在する電極2およびプラズマイグナイタ3の表面電極6の間に気体放電が生ずるように設計されている。
プラズマイグナイタ3から放電空間内の気体中に放出された10 eVを超えるエネルギーを有する電子は、放電空間内の気体原子を電離し、気体のインピーダンスを低下させることができる。これにより、電極2と表面電極6の間の最小放電開始電圧が低減する。
導電性基板4として単結晶n形シリコン基板(〜0.01Ωcm)を用い、導電性基板4の上に電子ドリフト層5を形成する。この電子ドリフト層5として、特に、ナノシリコン層を用いてもよい。
以下、ナノシリコン層の形成方法について説明する。まず、ナノシリコン層の原料となる厚み1.6μmのポリシリコン層を、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法を用いて堆積する。次に陽極酸化法を用いて、電子ドリフト層5をポリシリコン層内に形成する。HFとC2H5OHの混合溶液中で1W/cmの白色光を照射しながら、電流密度を2.5mA/cm2 で2秒間、25mA/cm2で4秒間の陽極酸化を3回繰り返しておこなうことにより表面から深さ700 nmまで電子ドリフト層5が形成される。陽極酸化後、急速熱酸化法(900℃ 30 分)で 酸化処理を行う。
次いで、形成された電子ドリフト層5の上部に表面電極6をスパッタ法により堆積する。堆積時に同時に200℃以上の熱処理を加えることで表面電極6の垂直方向の表面粗さを100 nm以下に平坦化することができる。こうして、電子ドリフト層5の上部に金属薄膜を堆積することで表面電極6が形成され、プラズマイグナイタ3が作製できる。
実施例1では、ナノシリコン層の原料としてポリシリコンに不純物を注入していないものを使用しているが、不純物注入したものを使用することもできる。
また、実施例1では、酸化法としては、急速熱酸化法を用いているが、電気化学的酸化処理法や酸素プラズマ処理法を用いることができる。
さらに、実施例1では、表面電極6として腐食が起こりにくい金を用いているが、放電するガス種に応じて、白金、チタン、タンタル、タングステンなどの金属薄膜、グラファイト、又はグラファイトカーボンなどの炭素薄膜を採用してもよい。また、これらの薄膜を堆積する方法としてスパッタ法、蒸着法、CVD法などが可能である。
次にプラズマイグナイタ3の特性について説明する。図2は、実施例1に係わる電流(IPS)-電圧(VPS)特性および放出電流(Ie)−電圧(VPS)特性を示す図である。放電空間(1)内で放電する前のアルゴンの圧力を10-5Torr, 10-1 Torr, 10 Torrの場合を示している。
図2に示すように、プラズマイグナイタ3は、アルゴンの圧力にほとんど影響をうけることなく電子放出が可能であることが明らかである。
気体圧力にほとんど影響されずに電子放出が可能である理由は、プラズマイグナイタ3から放出される電子が気体中に放出される時点ですでに高いエネルギーを有しているからであり、放出後は加速を行わないか、もしくは低電圧による加速で気体電離に十分なエネルギーを電子に付与できるからである。
ここでは、放電用の気体としてアルゴンを用いているが、他の希ガス、金属蒸気、水素、窒素、酸素、炭酸ガス、酸化窒素、水蒸気及びこれらの混合気体を用いても図2に示すのと同様の特性が得られている。
図3は、実施例1に係わる電子のエネルギー分布図である。横軸は電子のエネルギーを、縦軸は電子密度(任意尺)を表す。同図において、プラズマイグナイタ3に加える電圧を変化さて、プラズマイグナイタ3から放出された直後の電子のエネルギー分布を示している。
図3に示すように、プラズマイグナイタ3の印加電圧を14 Vとしたとき、室温において約7eV、100 Kにおいて約8eVをピークとするエネルギーの電子を放出していることがわかる。また、分布は最大で9eVに達しており、表面電極の仕事関数の5 eVを考慮すると全く散乱損失をうけずに加速されている弾道電子が存在することを示している。この結果は、印加電圧を調整することでそれぞれの気体の電離に必要なエネルギーを有する電子を、気体中で全く加速することなく放出できることを示している。
電子は上記のように放出時にすでに数eVまで加速されているため、気体原子に衝突しても、運動エネルギーを全て損失せず、運動を続けることができるため、真空から7.6×105Torrの圧力範囲での気体中への電子放出が可能である。
図4は、実施例1に係わる放電電流−電圧特性図である。図4において、放電空間1内のアルゴンの圧力を10 Torrに保ち、電極2と表面電極6の間に電圧をかけている。
図4に示すように、プラズマイグナイタ3を使用しない場合、グロー放電開始の最小電圧は445 Vである(図中点線で示されている)。一旦放電を停止し、導電性基板4と表面電極6の間に、表面電極6が正になるように、プラズマイグナイタ3に11 Vを印加するとプラズマイグナイタ3から5×10-7A/cm2の電流密度で電子が放出される。この状態での電極2と表面電極6の間の放電開始最小電圧を測定すると420 Vとなった。さらにプラズマイグナイタ3に印加する電圧を14 Vに変化させると放出電子による電流密度は6×10-6A/cm2まで増大する。このとき同様に、放電開始最小電圧を測定すると、さらに370 Vまで低下し、放電開始最小電圧はプラズマイグナイタ3を用いない場合と比較して20%近く低減されていることを確認した。
図2に示したように、プラズマイグナイタ3に加える電圧を数V上昇させることで放出電子の量は1桁、電子エネルギーは数eV増加する。これにより、気体原子が電離する割合は指数的に増大し、放電空間1内に放電路を形成しやすくなっていることを示している。プラズマイグナイタ3の印加電圧を調整することで、放電が持続する電極間電圧(この例の場合220 V)まで放電開始電圧が低下している。ここで、表面電極の表面粗さが100 nm以下に平坦化されていることにより、表面電極上に局所的な電界集中が発生することが防止されているため、均一なグロー放電を保持することができる。
さらに放電空間1内のアルゴンの圧力を10-1 Torrまで低下させた場合について、プラズマイグナイタ3の効果を調べるため、同様に放電開始電圧の測定をおこなった。プラズマイグナイタ3を使用しない場合、グロー放電開始の最小電圧は239 Vである(図5中点線で示されている)。プラズマイグナイタ3に11 Vを印加するとプラズマイグナイタ3から7×10-7A/cm2の電流密度で電子が放出される。この状態での電極2と表面電極6の間の放電開始最小電圧を測定すると202 Vとなった。プラズマイグナイタ3に印加する電圧を14 Vに変化させるとプラズマイグナイタ3からの放出電子による電流密度は8×10-6A/cm2まで増大するが、ここでの放電開始の最小電圧は202 Vと変化がなかった。10-1 Torrのアルゴンの圧力中、2 mmのギャップで放電が持続する電極2と表面電極6の間の電圧は、190 Vであり、プラズマイグナイタ3を用いた場合の放電開始電圧に近い値となっている。アルゴンの圧力が10 Torrの場合と比較すると、イグナイタから放出された電子は、放電空間内をアルゴン原子に散乱されずに運動できるため、アルゴンを電離しやすくなっているためプラズマイグナイタ3の放出電子の量が少ない場合でも放電停止状態から持続放電状態への移行が可能である。
実施例1では、プラズマイグナイタ3に加える電圧を直流電圧としているが、交流電圧やパルス電圧など任意の電圧波形とすることが可能である。
図6は、実施例2に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。プラズマイグナイタ3は、補助電極7が、プラズマイグナイタ3の表面電極6と放電空間1の間に離間対向して配置されている。プラズマイグナイタ3の他の構成は、図1のそれと同様である。
気体放電が生じているとき、表面電極6に気体電離の結果発生した陽イオンが衝突するが、補助電極7を導電性物質で構成し、正電位に帯電しておけば陽イオンと補助電極間に作用する斥力により表面電極6へ入射する陽イオンのエネルギーを100 eV以下に制限することが可能である。また、補助電極を磁性体で構成し、帯磁させることで表面電極6に入射する陽イオンのエネルギーを100 eV以下に制限することが可能である。陽イオンの運動エネルギーを100 eV以下に制限することにより、表面電極への陽イオン衝突による物理的ダメージを回避できる。
これらの補助電極に加える電位、もしくは磁界を調整することで、表面電極6に衝突するイオンの数も変化させることができるので、表面電極6上の局所的な領域でイオン衝突量と電子放出量の増大が起きるのを防ぐことができる。これにより、アーク放電への移行を回避し、均一なグロー放電を維持する効果も持っている。
補助電極7は、導電性物質であればよく、薄膜状、格子状、網状、孔開き平板状のいずれかの形状を有していれば良い。補助電極7の大きさは、プラズマイグナイタと概ね同じような大きさで、表面電極を覆うことができれば良い。
図7は、実施例3に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。プラズマイグナイタ3の構成要素として、バッファ層8が、表面電極6上に形成されている。プラズマイグナイタ3の他の構成は、図1のそれと同様である。
バッファ層8は、薄膜状に形成され、特に2〜3 nmの厚さのアモルファスカーボンを好適に用いる事ができる。この厚みのアモルファスカーボン層は10 eVの電子を透過させることができるとともに、電子より大きな気体原子を透過させない半透膜の役割をする。
バッファ層8の材料としてアモルファスカーボンを用いているが、金属薄膜や半導体、絶縁体薄膜、多孔質材料を使用することができる。これらにより表面電極6へ直接的に陽イオンが衝突することによる物理的ダメージを回避できる。
図8は、実施例4に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。プラズマイグナイタ3の構成要素として、線状もしくは格子状の音圧発生素子9が、プラズマイグナイタ3の表面電極6上の一部か表面電極6と気体が接する界面に音圧を与えることができるように表面電極6に隣接して形成されている。プラズマイグナイタ3の他の構成は、図1のそれと同様である。
電子は表面電極6上に音圧素子が形成されていない部分から気体中に放出される。実施例4ではプラズマイグナイタを構成する音圧発生素子として熱誘起超音波発生装置を用いているが、音圧発生素子としては放電が起きる電極間の距離より短い波長の音波を放出できるものであればよい。気体放電が生じているとき、放電気体に音圧を加えることで、表面電極上に局所的にイオンが集中することを防止し、均一なグロー放電を保持することができる。また、同時に気体原子が表面電極に吸着して表面電極の仕事関数が変動することによる電子放出量の変化を防止できる。
実施例1〜4では、電極2と表面電極6との間に放電を生ずるような配置を例にして説明しているが、表面電極6のかわりに別の電極を放電空間1内に導入し、この電極との間に放電が生ずるようにすることができる。また、電極2と表面電極6が対向する向きに図示されているが、いずれも向きを限定するものではない。
実施例1〜4で例示したプラズマイグナイタ3を略大気圧でプラズマを使用する常圧CVD装置、エッチング装置、又は表面改質装置等プラズマプロセス装置に搭載して提供できる。さらに、このプラズマイグナイタ3を搭載したプラズマディスプレイ、レーザー、又は放電ランプに搭載することが可能であることはいうまでもない。
特に、回転電極を用いる常圧CVD装置において、回転する円筒状の電極とCVD処理を行うべき基板表面の間隙に反応ガスを供給するとともに、回転電極と基板表面の間隙にプラズマイグナイタから反応ガスの電離に十分なエネルギーをもつ電子を照射し、反応ガスを電離させる形態とすることができる。これにより、プラズマイグナイタ3を使用しないときに比べ、低い印加電圧によって、基板表面と回転電極の間に放電を発生させることができる。また、プラズマイグナイタ3による反応ガスの一様な電離により、反応ガスは局所的な強電界によって放電することがなくなるため、均一な放電を得ることができる。
ここで、反応ガスをプラズマイグナイタ3により電離する位置は基板表面と回転電極の間隙としているが、他の場所で反応ガスをプラズマイグナイタ3により電離し、電離したガスを基板表面と回転電極の間に供給することで、プラズマイグナイタ3を使用しないときと比較して、低い電圧印加により基板表面と回転電極の間にプラズマを発生させることができる。一様に電離した反応ガスにおいて放電するため、均一な放電を得ることができる。
実施例1に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。 実施例1に係わる電流(IPS)-電圧(VPS)特性および放出電流(Ie)−電圧(VPS)特性を示す図である。 実施例1に係わる電子のエネルギー分布図である。 実施例1に係わる放電電流−電圧特性図である。 実施例1に係わる放電電流−電圧特性図である。 実施例2に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。 実施例3に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。 実施例4に係わるプラズマイグナイタの概略構成図である。
符号の説明
1 放電空間
2 電極
3 プラズマイグナイタ
4 導電性基板
5 電子ドリフト層
6 表面電極
7 補助電極
8 バッファ層
9 音圧発生素子

Claims (11)

  1. ホットエレクトロン、準弾道電子、又は弾道電子を生成する電子ドリフト層と、
    該電子ドリフト層上に形成された表面電極と
    を有することを特徴とするプラズマイグナイタ。
  2. 前記表面電極と離間対向して補助電極が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマイグナイタ。
  3. 前記補助電極は、薄膜状、格子状、網状、孔開き平板状のいずれかの形状を有することを特徴とする請求項2に記載のプラズマイグナイタ。
  4. 気体原子が前記表面電極に付着するのを防止するためのバッファ層が前記表面電極上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のプラズマイグナイタ。
  5. 前記バッファ層は、薄膜状、多孔質状のいずれかの形状を有することを特徴とする請求項4に記載のプラズマイグナイタ。
  6. 前記電子源に隣接する位置、前記表面電極上、又は前記バッファ層上に音圧素子が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のプラズマイグナイタ。
  7. 前記電子ドリフト層は、ナノシリコン層で構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載のプラズマイグナイタ。
  8. 略大気圧で放電開始電圧を低下させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のプラズマイグナイタ。
  9. 請求項8に記載のプラズマイグナイタを搭載したことを特徴とする、略大気圧でプラズマを使用する常圧CVD装置。
  10. 請求項8に記載のプラズマイグナイタを搭載したことを特徴とする、略大気圧でプラズマを使用するエッチング装置。
  11. 請求項8に記載のプラズマイグナイタを搭載したことを特徴とする、略大気圧でプラズマを使用する表面改質装置。
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