JP2006046478A - 高強度デファレンシャルケース - Google Patents

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尚美 三浦
Takao Hayashi
孝雄 林
Katsunori Takada
勝典 高田
Yutaka Kurebayashi
豊 紅林
Shinichiro Kato
進一郎 加藤
Tomoyuki Nakajima
智之 中島
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】鋳造品に比べ部品の軽量・コンパクト化が可能で、鋳造・調質品に比べ調質処理が省略可能な、高強度デファレンシャルケースを提供すること。
【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo及びVを所定量含有し、炭素当量Ceqが一定範囲を満足する非調質鋼を鍛造して成る高強度デファレンシャルケースである。非調質鋼が更にNb及びTiを所定量含有する。更にCa及びOを所定量含有する。更にPbやBiを所定量含有する。フランジ部の10回疲労強度がFCD700鋳造品対比1.5倍以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高強度デファレンシャルケースに係り、更に詳細には、所定の非調質鋼を鍛造して得られる高強度デファレンシャルケースに関する。
従来から、図1に示すような自動車用デファレンシャルケースは、FCD700などの鋳鉄を鋳造して製造されていた。しかし、鋳造品の場合、該当部品の重要な必要特性である疲労強度が低いため、厚肉にせざるを得ず、そのため部品当たり重量が嵩んでいた。
一方、自動車の燃費改善を図る対策の1つとして、部品の軽量・コンパクト化を図ることがあるが、このためFCD800などのFCD700に比べて高強度の得られる鋳鉄を使用しても、鋳造品の場合はピンホールなどの内部欠陥及び粗い鋳造組織などの影響で、疲労強度の改善はさほど望めない。
また、デファレンシャルケースの薄肉化を図るために、JIS SCM420を鍛造・機械加工・調質によって製造する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この場合は調質処理による熱処理歪みの発生、製造費アップなどの問題が発生する。
特開2000‐266162号公報
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋳造品に比べ部品の軽量・コンパクト化が可能で、鍛造・調質品に比べ調質処理が省略可能な、高強度デファレンシャルケースを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、所定成分を含む非調質鋼を鍛造したことにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の高強度デファレンシャルケースは、C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo及びVを所定量含有し、更にC、Si、Mn、P、Cu、Ni、Cr及びVの含有量で構成されるCeq(炭素当量)が所定範囲にある非調質鋼を鍛造して得ることにより、FCD700鋳造品対比1.5倍以上のフランジ部での10回疲労強度が得られる。
以下、本発明の高強度デファレンシャルケースについて詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「%」は特記しない限り質量百分率を示す。
本発明の高強度デファレンシャルケースは、高強度を有する所定の非調質鋼を鍛造することで得られる。
具体的には、上記非調質鋼は、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)を所定量含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る。このとき、V量を高めに添加する一方で、C量を低めとし、P量を積極添加し、炭素当量Ceqが以下の式(1)及び式(2)
Ceq=C+0.07Si+0.16Mn+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V …(1)
0.90≦Ceq≦1.10 …(2)
を満足するようにする。これより、高強度化が図られた鋼が得られる。
本発明では、かかる非調質鋼を鍛造して成形することにより、鋳造のような欠陥や粗い組織が無く、鋼の強度に見合う時間強度を有するデファレンシャルケースが得られる。
以下に上記非調質鋼に含有する各成分の限定理由を示す。
・C:0.20〜0.30%
Cは、強度を確保するために必要な元素である。但し、C量が多くなると耐力比の増加が飽和するため、上限を0.30%とする。
・Si:0.50〜1.70%
Siは、鋼溶製時に脱酸作用を発揮するとともに、フェライト中に固溶してフェライトを強化して耐力や疲労強度を向上させる。このような効果を顕著に得るためには、0.50%以上含有させることが必要である。但し、多量に添加すると鍛造時の金型寿命を劣化させるので1.70%以下とする。
・Mn:0.60〜1.20%
・Cr:0.10〜0.50%
・Mo:0〜0.10%
Mn、Cr及びMoは、強度を向上させる元素であるが、多量に添加するとベイナイトが多量に生成し、被削性を劣化させるため、それぞれの範囲は上記範囲とする。
・P:0.05〜0.13%
Pは、耐力向上に有効な元素であり、その効果を発揮するには、0.05%以上が必要であるが多量に添加すると熱間加工性が劣化するので上記を0.13%とする。
・S:0.03〜0.10%
Sは、一般にMnSを生成し、被削性を改善するために添加されるが、低すぎるとデファレンシャルケースのような重切削の場合には、顕著な効果が認められない。また、その含有量が多すぎると熱間加工性が劣化するため、上記を0.10%とする。
・Cu:0〜0.50%
・Ni:0〜0.50%
Cu及びNiは、Mn、Crの場合と同様に強度を向上させる元素であるが、多量に添加すると経済的に不利であるため、その上限を0.50%とする。
・V:0.20〜0.40%
Vは、CやNと微細な炭窒化物を生成し、鍛造後の強度を高める元素であり、特に耐力、疲労強度の向上には有効である。このような効果をデファレンシャルケースで得るためには、0.20%以上の添加が必要であるが、多量に添加してもその効果が飽和し、更に被削性が劣化するので、上限を0.40%とする。
・Ceq=C+0.07Si+0.16Mn+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V …(1)
・0.90≦Ceq≦1.10 …(2)
上記Ceqの範囲は、デファレンシャルケースとして適切な強度を得るために必要な炭素当量(Ceq)を規定するものである。Ceqが0.90未満であると十分な強度が得られず、1.10を超えると硬さが37HRCを超え、被削性が低下するため、デファレンシャルケースの加工に多大な費用を要する。
また、上記非調質鋼には他の含有成分として、結晶粒微細化作用のあるニオブ(Nb)及びチタン(Ti)を添加できる。このときは、鍛造温度が高温の場合に、成形品の組織が粗くなり所望の時間強度が得られないのを抑制できる。
Nb及びTiは、炭窒化物を生成し鍛造後の結晶粒を微細化させて強度を向上させ得るが、多量に添加してもその効果が飽和するので、それぞれNb:0〜0.040%、Ti:0〜0.030%とすることがよい。
更に、上記非調質鋼には他の含有成分として、カルシウム(Ca)、酸素(O)などの介在物形態制御元素を添加できる。このときは被削性の劣化を抑制できる。
Ca及びOは、MnS介在物の形態を制御し、工具摩耗を抑制し、被削性改善効果も発揮させるためには、Ca:0.0001以上、O:0.0010以上とすることが好適であるが、多量に添加すると熱間加工性が劣化するので、それぞれの上限を0.01%とすることがよい。
更にまた、上記非調質鋼には他の含有成分として、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)のいずれか一方又は双方を添加できる。但し、PbやBiは、切り屑破砕性を向上させ、工具の長寿命化に効果があるが、多量に添加すると熱間加工性が劣化するため、それぞれの上限を0.3%とすることがよい。
また、本発明の高強度デファレンシャルケースは、上述した非調質鋼を鍛造して得られるため、フランジ部の10回疲労強度がFCD700の1.5倍以上となり得る。これは、現行の鋳造デファレンシャルケース材の一つであるFCD700を鍛造品で置き換える場合、デファレンシャルケースの最重要要求特性である10回疲労強度が、1.5倍以上得られなければ経済効果が小さいためである。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表1に示す成分の鋼を溶解し、鍛造し(φ80)、外削(φ75)して、鍛造素材を製造した。
その後、この素材を用いてデファレンシャルケースに鍛造し、そのフランジ部硬さ(ロックウェルCスケール)を測定するとともに、デファレンシャルケース単体でフランジ部での片振り繰返し曲げ疲労試験を実施した。本片振り繰返し曲げ疲労試験は、図2に示すように、デフケースの両ボス部を固定した状態でフランジ部の中央部に10Hz(ヘルツ)にて荷重を負荷する試験である。
Figure 2006046478
表1の実施例1〜11より、本発明の好適実施形態であるデファレンシャルケースは、高強度となるため、フランジ部での十分な強度が得られ、加工性も良好となることがわかる。
一方、比較例1〜7のデファレンシャルケースは、本発明の範囲より外れるため、Ceqが0.90未満ではデファレンシャルとして強度不足となり、また、1.10超では硬さが高くなるため加工が困難となることがわかる。
一般的なデファレンシャルケースの一例を示す概略図である。 片振り繰返し曲げ疲労試験の概要を示す概略図である。

Claims (5)

  1. 非調質鋼を鍛造して製造された高強度デファレンシャルケースであって、
    該非調質鋼は、
    C :0.20〜0.30%
    Si:0.50〜1.70%
    Mn:0.60〜1.20%
    P :0.05〜0.13%
    S :0.03〜0.10%
    Cu:0 〜0.50%
    Ni:0 〜0.50%
    Cr:0.10〜0.50%
    Mo:0 〜0.10%
    V :0.20〜0.40%
    を含有成分とし、炭素当量Ceqが以下の式(1)及び(2)
    Ceq=C+0.07Si+0.16Mn+0.61P+0.19Cu+0.17Ni+0.2Cr+V …(1)
    0.90≦Ceq≦1.10 …(2)
    を満足し、残部Fe及び不可避不純物から成ることを特徴とする高強度デファレンシャルケース。
  2. 上記非調質鋼が更にNb及びTiを含有し、
    Nb:0〜0.040%
    Ti:0〜0.030%
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高強度デファレンシャルケース。
  3. 上記非調質鋼が更にCa及びOを含有し、
    Ca:0.0001〜0.0100%
    O :0.0010〜0.0100%
    を満たすことを特徴とする高強度デファレンシャルケース。
  4. 上記非調質鋼が更にPb及び/又はBiを含有し、
    Pb:0.3%以下
    Bi:0.3%以下
    を満たすことを特徴とする高強度デファレンシャルケース。
  5. FCD700鋳造品対比1.5倍以上のフランジ部での10回疲労強度が得られることを特徴とする高強度デファレンシャルケース。
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