JP2006045019A - 低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造する方法を提供する。
【解決手段】ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法などによって提供される。
【選択図】なし
【解決手段】ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法などによって提供される。
【選択図】なし
Description
本発明は、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法に関し、さらに詳しくは、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造する方法に関する。
低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液は、ニッケル塩類、特に硫酸ニッケルの製造原料として使用されている。ニッケル塩類は、一般電解めっきの他、ハードディスク用の無電解めっき等のめっき原料、触媒、電池材料などとして使用されているが、近年、より高純度なニッケル塩類が市場から求められるようになっている。したがって、ニッケル塩類として、最も広く使用される硫酸ニッケルの製造においては、ニッケルを含む原料を溶解して得られる粗硫酸ニッケル水溶液からの不純物元素の除去が、非常に重要になっている。この中で、特に不純物元素として、鉄、銅、亜鉛等の金属カチオンと塩素等のアニオンが含有されていない高純度なニッケル塩類が望まれている。
従来、硫酸ニッケルの製造においては、例えば、以下の方法で不純物元素の除去が行われる。まず、ニッケルを含む原料を硫酸に溶解して、得られる粗硫酸ニッケル水溶液中の鉄、銅、コバルトなどの不純物元素を除去する。次に、不純物元素を除去した水溶液を加熱蒸発させることにより濃縮し、続いて冷却して硫酸ニッケルの結晶を析出させる。高純度な硫酸ニッケルを製造するためには、晶析前の硫酸ニッケル水溶液中の不純物元素を低下させることが重要である。通常、硫酸ニッケルの製造の原料には、ニッケルの他に鉄、銅、亜鉛などの金属不純物元素が含まれており、さらにニッケルの浸出工程又は精製分離工程での酸化剤等による塩素等が含まれる。これら不純物元素は、原料を溶解するときにニッケルとともに溶解液に浸出されるので、金属カチオンとともに、塩素イオン等のア二オンも完全に除去されなければ高純度の硫酸ニッケル水溶液は得られない。
金属カチオンの除去方法としては、沈殿法、溶媒抽出法、イオン交換法など種々の方法が提案されており、粗硫酸ニッケル水溶液からは比較的容易に除去することができる。
一方、塩素イオン等のアニオンは、一般に除去が困難である。例えば、電解酸化により液中の塩素イオンを除去する方法が試みられているが、電流効率及びニッケル収率の問題があり実用的でない。したがって、塩素の効率的な除去手段が求められていた。
一方、塩素イオン等のアニオンは、一般に除去が困難である。例えば、電解酸化により液中の塩素イオンを除去する方法が試みられているが、電流効率及びニッケル収率の問題があり実用的でない。したがって、塩素の効率的な除去手段が求められていた。
ところで、硫酸ニッケルの製造の原料としては、粗硫酸ニッケル、ニッケルマット、ニッケル金属等の比較的コバルト濃度が低い原料のほかに、コスト的に優位な原料としてニッケルとコバルトの混合水酸化物のようなコバルト濃度が高い原料が用いられている。近年、ニッケル精錬の原料として、従来から用いられていたニッケルマットのほか、コバルト含有率の高いニッケル酸化鉱が注目されている。したがって、今後、硫酸ニッケルの製造の原料として、ニッケル精錬のコバルト除去工程から得られる混合水酸化物の使用割合が増加することが予想される。
前記ニッケル精錬では、その主製品は金属ニッケルであり、ニッケル精錬方法としては、例えば、硫化物原料を塩素浸出し、得られた浸出生成液からコバルトを除去してニッケル精製液を得て、その後電解採取法等でニッケルを回収する方法が用いられる。この際、コバルトをニッケル水溶液から分離回収する方法として、塩素ガスを用いてコバルトイオンと鉄イオンを酸化して3価とし、その後中和して水酸化物として分離する酸化中和法が広く実施されている。
この方法によれば、コバルトおよび鉄は水酸化第二コバルトおよび鉄として沈殿している。また、水溶液中のコバルト及び鉄を十分に分離除去する条件で行うと、ニッケルの一部が酸化され、水酸化第二ニッケルとして共沈殿する。このとき、酸化剤として塩素を使用することから、一部のコバルト及び鉄は塩素を含む化合物として沈殿し、また、澱物には塩素イオンを含む母液の付着もあるので、得られる混合水酸化物は高濃度で塩素を含有する。通常、上記の方法によって得られる混合澱物の塩素品位は、1〜10重量%と高い。そこで、前記混合澱物を溶解前に澱物を水で洗浄することで付着した塩素を水溶液から除去しても、なお0.5〜5重量%の塩素が含まれている。
このため、このような混合水酸化物を硫酸ニッケルの製造原料として有利に使用するためには、該混合水酸化物の溶解工程において塩素を除去することが求められる。この解決策として、塩素を気化除去するとともに混合水酸化物を溶解する方法が提案されている。例えば、水酸化第二ニッケルと、水酸化第二コバルトとを含む混合水酸化物をスラリー化し、該スラリーに硫酸を添加して温度60℃以上で溶液pHが2.0以下となるように制御しながら溶解させ、塩素分を除去する方法(例えば、特許文献1参照)がある。この提案において、低塩素濃度のニッケル及びコバルトの混合硫酸水溶液が得られること、さらに使用する硫酸の濃度は70重量%以上の高濃度が好ましいことが開示されている。
しかしながら、前記混合水酸化物の使用割合が増加すると、硫酸ニッケルの製造系内へ持込まれる塩素量が従来に比べて大幅に増加することになるため、混合水酸化物の溶解工程においてより効率的に塩素を除去することが望ましい。
以上の状況から、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造する方法が求められている。
以上の状況から、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造する方法が求められている。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法について、鋭意研究を重ねた結果、前記澱物スラリーを特定の条件に調整して、ガスを吹込んだところ、塩素を高効率で除去することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、
前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法が提供される。
前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記硫酸の濃度が50〜70重量%であることを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記ガスの吹込み速度は、スラリー1m3当り0.10〜4.4Nm3/minであることを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、前記スラリー濃度は、300〜600g/Lであることを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法が提供される。
本発明の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法は、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を高い脱塩素効率で製造することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法を詳細に説明する。
本発明の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法は、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする。
本発明の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法は、ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする。
本発明の方法において、所定の濃度の硫酸を用いることと、スラリー中にガスを吹きこむことが重要である。これによって、前記澱物に含まれる塩素を高効率で除去することができる。
本発明において原料として用いる澱物は、特に限定されるものではなく、ニッケル、コバルト、鉄等が3価で含有される水酸化物が用いられるが、例えば、ニッケル精錬法において副生するニッケルとコバルトの混合澱物が好ましい。前記混合澱物は、不純物元素としてコバルト、鉄等を含む水溶液にpH調整剤及び塩素ガス等の酸化剤を添加して、pHおよび酸化還元電位を調整することで生成される、水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトが主成分であり、水酸化第二鉄の他、1〜10重量%の塩素を含む澱物である。なお、通常コバルトに対して0.5〜3倍のニッケルが含有される。
上記方法では、下記の式1〜3の反応式にしたがって、水酸化第二ニッケル、水酸化第二コバルト及び水酸化第二鉄が溶解するとともに、塩素ガスが生成し気化除去される。
式1:2Ni(OH)3+6H++2Cl− → 2Ni2++6H2O+Cl2↑
式2:2Co(OH)3+6H++2Cl− → 2Co2++6H2O+Cl2↑
式3:2Fe(OH)3+6H++2Cl− → 2Fe2++6H2O+Cl2↑
式2:2Co(OH)3+6H++2Cl− → 2Co2++6H2O+Cl2↑
式3:2Fe(OH)3+6H++2Cl− → 2Fe2++6H2O+Cl2↑
前記反応は、酸を添加して澱物を溶解する際に、3価の水酸化物の還元反応と塩素イオンの酸化反応とが並行して起こることを利用している。したがって、上記澱物を水あるいは酸性水溶液でスラリー化して、これに硫酸を添加してpHを下げる(液中プロトン濃度が上昇させる)ことによって、ニッケル、コバルト及び鉄を2価イオンとして溶解するとともに、塩素の除去が行える。
上記方法におけるpHは、0〜2に調整されるが、0.5〜1.0がより好ましい。すなわち、上記反応式より、低pH領域において反応が進行しやすいので、硫酸添加量を増加させることでpHを低下させ、脱塩素量が上昇することができる。ここで、pHが0未満では、硫酸使用量が増加し、後続の混合硫酸水溶液の精製工程での中和剤使用量の増加を招く。一方、pHが2を超えると、得られる混合硫酸水溶液の塩素濃度を十分に、例えば0.50g/L以下に低下することができない。
上記方法で用いる硫酸の濃度としては、50〜98重量%が用いられるが、50〜70重量%が好ましい。すなわち、硫酸濃度が50重量%未満では、得られるニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の液量が増加しニッケルとコバルト濃度が低下するので後続の混合硫酸水溶液の精製工程での効率を低下させることになる。例えば、後続の硫酸ニッケル水溶液の晶析工程における蒸気使用量増加を招き、あまり経済的ではない。硫酸濃度が50〜98重量%の範囲において、得られる混合硫酸水溶液の塩素濃度を0.50g/L以下に低下することができる。
以下に、硫酸濃度の影響について具体例(ガスの吹込みのない場合)で説明する。
まず、平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%の実操業で得られた水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を容量6m3の密閉容器に装入し、これに希釈液を添加してスラリー濃度300g/Lに調整し、3.2m3のスラリーを得た。次に、スラリーを70℃にまで昇温後、濃度が50、70、98重量%の硫酸を、各々1140、700、450L添加した場合の反応終了後の終液中塩素濃度を検証した。表1に、各硫酸濃度における反応始液と終液の塩素濃度及び脱塩素効率を、また、図1に、硫酸濃度と反応終液の塩素濃度との関係の一例を表す。
まず、平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%の実操業で得られた水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を容量6m3の密閉容器に装入し、これに希釈液を添加してスラリー濃度300g/Lに調整し、3.2m3のスラリーを得た。次に、スラリーを70℃にまで昇温後、濃度が50、70、98重量%の硫酸を、各々1140、700、450L添加した場合の反応終了後の終液中塩素濃度を検証した。表1に、各硫酸濃度における反応始液と終液の塩素濃度及び脱塩素効率を、また、図1に、硫酸濃度と反応終液の塩素濃度との関係の一例を表す。
表1、図1より、硫酸濃度が50〜70重量%の濃度範囲では反応終液の塩素濃度が0.30g/L以下であり、脱塩素効率が良好であることが分る。すなわち、70重量%を超えても、それ以上の脱塩素効率への効果はみられず、例えば、濃硫酸では、それ自体がほとんど水和されていないためプロトン解離が起こりにくいので脱塩素効率は反って低下するものと推量される。
上記方法で用いるガスの吹込みは、液中の塩素イオン濃度の低下に非常に有効である。すなわち、一般に、脱塩素反応は、反応溶液中の塩素イオンと気相中の塩素ガスの化学ポテンシャルが等しくなった時点で化学平衡が成り立ち、終了する。ここで、工程液を汚染しないようなガスを吹き込むことによって、反応系の気相中の塩素分圧を低下させ、上記反応が促進される方向に化学平衡を移動することができる。ここで、ガス吹き込み量の増加に伴い、反応終液中の塩素濃度を低下させることができる。
上記方法で用いるガスの種類は、特に限定されるものではなく、得られる混合水溶液を汚染しないものがもちいられるが、特に、コスト面で、広く工業的に用いられている圧縮空気が好ましく用いられる。
上記方法で用いるガスの種類は、特に限定されるものではなく、得られる混合水溶液を汚染しないものがもちいられるが、特に、コスト面で、広く工業的に用いられている圧縮空気が好ましく用いられる。
上記方法で用いるガスの吹込み量は、特に限定されるものではないが、スラリー1m3当り0.10〜4.4Nm3/minが好ましい。すなわち、4.4Nm3/min以上を超えるような極端に多量のガス吹き込みを行った場合には、気相中の塩素ガス濃度が非常に希薄になり、上記の反応を促進させる効果が低下してしまうこと、また、排ガス量の増加によりガス処理設備の規模を大きくする必要があること等により得策とは言えない。一方、0.10Nm3/min未満では、吹込み効果が不十分である。
上記方法におけるスラリー濃度は、特に限定されるものではなく、高濃度のほうが生産効率が高く望ましいがスラリーの分散性と反応性から、300〜600g/Lが好ましく、400〜600g/Lgがより好ましい。すなわち、前述したように液相と気相中の塩素濃度の差が上記反応を進行させる促進力となるが、この濃度差がゼロとなった時点で定常状態となり上記反応は終了する。このとき、初期の液相の塩素濃度を高めた場合においても、反応終点での塩素濃度は常に一定となる。つまり、澱物スラリー濃度を高めることにより反応系への持込塩素イオンを増加させても、反応終了時の到達塩素濃度が一定であるために、脱塩素量を更に増加させることができる。600g/Lを超えると。スラリーの送液不良を招く。
以下に、上記方法における澱物のスラリー濃度の影響について具体例でより詳しく説明する。まず、平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%の実操業で得られた水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を容量6m3の密閉容器に装入し、これに希釈液を添加してスラリー濃度を200〜600g/Lに調整し、3.2m3のスラリーを得た。次に、スラリーを70℃にまで昇温後、圧縮空気(空気圧0.45MPa、空気温度20℃)を吹込み速度1.3m3/minで吹込み、かつ濃度70重量%の硫酸を700L添加した場合の脱塩素効率を検証した。結果を図2に示す。図2は、澱物のスラリー濃度と脱塩素効率の関係を表す。
図2より、スラリー濃度の上昇に伴い脱塩素効率が上昇し、スラリー濃度は300〜600g/Lが好ましいことが分る。
また、以下に、上記方法における反応始液の塩素濃度の影響について具体例でより詳しく説明する。まず、平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%の実操業で得られた水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を容量6m3の密閉容器に装入し、これに希釈液を添加してスラリー濃度を300〜600g/Lの範囲で調整して、反応始液の塩素濃度を変化させた。次に、各スラリー濃度に調整されたスラリー3.2m3を70℃にまで昇温後、圧縮空気(空気圧0.45MPa、空気温度20℃)を吹込み速度1.3m3/minで吹込み、かつ濃度70重量%の硫酸を700L添加した場合の反応終液の塩素濃度を検証した。結果を図3に示す。図3は、反応始液の塩素濃度と反応終液の塩素濃度の関係を表す。
図3より、スラリー濃度を高めることによって反応始液の塩素濃度を高め、塩素負荷を増加させた場合においても、反応終液の塩素濃度はほぼ一定になること分る。
上記方法における温度は、特に限定されるものではないが、60〜100℃が好ましい。すなわち、硫酸水溶液中への塩素の溶解度は温度の上昇に伴ない低下するので、より高温度が好ましい。60℃未満では、得られる混合硫酸水溶液の塩素濃度を十分に低下することができない。一方、100℃を超えると、加圧容器が必要になる。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた塩素の分析方法は、電位差滴定法で行った。
(実施例1〜15)
平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%である実操業産出の水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を用いて、空気吹込み速度を変えて操業した。なお、操業水準は反応始液の塩素濃度及び空気吹込み速度の変動による15水準(実施例1〜15)である。
(実施例1〜15)
平均組成がNi品位28重量%、Co品位18重量%及びCl品位1.5重量%である実操業産出の水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトを含む混合澱物を用いて、空気吹込み速度を変えて操業した。なお、操業水準は反応始液の塩素濃度及び空気吹込み速度の変動による15水準(実施例1〜15)である。
まず、前記混合澱物を容量6m3の密閉容器に装入し、これに希釈液を添加してスラリー濃度300g/Lに調整し、3.2m3のスラリーを得た。次に、スラリーを70℃にまで昇温後、pHが0.5〜1.0になるように濃度70重量%の硫酸を添加しながら、実吹込み速度を0.12〜1.3m3/minの所定値に制御した圧縮空気(空気圧0.45MPa、空気温度20℃)を吹込み、さらに排ガスをファンで吸引した。なお、硫酸は10〜45L/minの添加速度で合計量で700Lを添加した。
その後、反応始液と反応終液中の塩素濃度から、脱塩素効率((反応始液塩素濃度−反応終液塩素濃度)/反応始液塩素濃度)を求めた。結果を表2、図4に示す。図4は、実空気吹込み速度と反応終液の塩素濃度の関係をプロットしたものである。なお、実空気吹込み量のスラリー1m3あたりのNm3への換算は、下記の式(1)に基づいて行った。
式(1) スラリー1m3あたりの空気吹込み量(Nm3/min)=(実吹込み量÷3.2m3)×(273/273+20)×{(0.1+0.45)MPa/0.1MPa}
式(1) スラリー1m3あたりの空気吹込み量(Nm3/min)=(実吹込み量÷3.2m3)×(273/273+20)×{(0.1+0.45)MPa/0.1MPa}
表2、図4より、実施例1〜15は本発明の条件で行われたので、得られた反応終液の塩素濃度が0.25g/L以下に低下すること、及び空気吹込み速度と反応終液の塩素濃度には逆相関関係があり、空気吹込みにより脱塩素が促進されることが分る。
(実施例16〜18)
Ni品位28重量%及びCo品位18重量%である水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトの混合澱物を用いて、澱物中の塩素品位を変えてその影響を検証した。
まず、塩素品位が0.5、1.0、1.5重量%(実施例16〜18)の3水準の澱物を調製し、これらに希釈液を添加しスラリー濃度を450g/Lに調整した。次に、このスラリー1Lを70℃まで昇温し、濃度70重量%の硫酸170mLを添加しながら、圧縮空気(空気圧0.45MPa、空気温度20℃)を吹込み速度1.3m3/minで吹込み、得られた反応終液と溶解残渣の塩素濃度、及び脱塩素効率を求めた。結果を表3、図5に示す。図5は、用いた澱物(元澱物)中の塩素品位と脱塩素効率との関係をプロットしたものである。
Ni品位28重量%及びCo品位18重量%である水酸化第二ニッケルと水酸化第二コバルトの混合澱物を用いて、澱物中の塩素品位を変えてその影響を検証した。
まず、塩素品位が0.5、1.0、1.5重量%(実施例16〜18)の3水準の澱物を調製し、これらに希釈液を添加しスラリー濃度を450g/Lに調整した。次に、このスラリー1Lを70℃まで昇温し、濃度70重量%の硫酸170mLを添加しながら、圧縮空気(空気圧0.45MPa、空気温度20℃)を吹込み速度1.3m3/minで吹込み、得られた反応終液と溶解残渣の塩素濃度、及び脱塩素効率を求めた。結果を表3、図5に示す。図5は、用いた澱物(元澱物)中の塩素品位と脱塩素効率との関係をプロットしたものである。
表3、図5より、実施例16〜18は本発明の条件で行われたので、澱物中の塩素品位にかかわらず、高脱塩素効率が得られることが分る。また、持込み塩素量の増加に比例して脱塩素効率が上昇していることから、終液塩素濃度は一定の到達濃度で規定されることが推定できる。
以上より明らかなように、本発明の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法は、ニッケル精錬分野のニッケルとコバルトを含む混合澱物からニッケルとコバルトを回収する際に低塩素濃度の混合硫酸水溶液を得るために利用される。
Claims (4)
- ニッケル、コバルトその他の3価の金属水酸化物からなりかつ塩素を含む澱物から、低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液を製造する方法であって、
前記澱物をスラリー化した後、該スラリーに、濃度50重量%以上の硫酸を添加してpHを0〜2の範囲に調整し、かつガスを吹込むことを特徴とする低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法。 - 前記硫酸の濃度が50〜70重量%であることを特徴とする請求項1に記載の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法。
- 前記ガスの吹込み速度は、スラリー1m3当り0.10〜4.4Nm3/minであることを特徴とする請求項1に記載の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法。
- 前記スラリー濃度は、300〜600g/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法。
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JP2004230421A Pending JP2006045019A (ja) | 2004-08-06 | 2004-08-06 | 低塩素濃度のニッケルとコバルトの混合硫酸水溶液の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006045019A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012001414A (ja) * | 2010-06-21 | 2012-01-05 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 低塩素硫酸ニッケル/コバルト溶液の製造方法 |
JP2015137200A (ja) * | 2014-01-22 | 2015-07-30 | 住友金属鉱山株式会社 | 低塩素硫酸ニッケル/コバルト溶液の製造方法 |
JP2017226559A (ja) * | 2016-06-20 | 2017-12-28 | 住友金属鉱山株式会社 | 硫酸ニッケルと硫酸コバルトの低塩素濃度混合水溶液の製造方法 |
-
2004
- 2004-08-06 JP JP2004230421A patent/JP2006045019A/ja active Pending
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JP2012001414A (ja) * | 2010-06-21 | 2012-01-05 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 低塩素硫酸ニッケル/コバルト溶液の製造方法 |
JP2015137200A (ja) * | 2014-01-22 | 2015-07-30 | 住友金属鉱山株式会社 | 低塩素硫酸ニッケル/コバルト溶液の製造方法 |
JP2017226559A (ja) * | 2016-06-20 | 2017-12-28 | 住友金属鉱山株式会社 | 硫酸ニッケルと硫酸コバルトの低塩素濃度混合水溶液の製造方法 |
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