JP2006044523A - サスペンションの制御装置 - Google Patents

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正樹 伊澤
Takashi Kato
貴史 加藤
Yoshio Onoe
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司 福里
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Abstract

【課題】 アクチュエータでダンパの減衰力を変更して乗心地制御および姿勢制御を行う際に、制御の切換時に発生する違和感を解消する。
【解決手段】 姿勢制御部M2,M3がロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出し、スカイフック乗心地制御部M1が路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出すると、ハイセレクト手段26が前記二つのパラメータのうちの何れか大きい方をアクチュエータ5に出力してサスペンションのダンパの減衰力を制御するので、姿勢制御および乗心地制御の切換時にダンパの減衰力が急変するのを防止してドライバーの違和感を解消することができる。前記ハイセレクト手段26に代えて、前記二つのパラメータを加算して出力する加算手段を採用しても、同様の作用効果を達成することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、サスペンションのダンパにその減衰力を変更するアクチュエータを備えたサスペンションの制御装置に関する。
路面からサスペンションを介して車体に伝達される振動を抑制すべくダンパの減衰力を制御する乗心地制御と、車両の旋回に伴うロール角の変化や車両の加減速に伴うピッチ角の変化を抑制して走行安定性を高めるべくダンパの減衰力を制御する姿勢制御とを、例えば舵角信号を監視することで切り換えるものが、下記特許文献1により公知である。
特開2000−148208号公報
しかしながら上記特許文献1に記載されたものは、車両の乗心地を高めるための乗心地制御と車両の走行安定性を高めるための姿勢制御とを、車両の運転状態に応じて切り換えるため、その制御の切換時にダンパの減衰力が急激に変化してドライバーに違和感を与える可能性があった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、アクチュエータでダンパの減衰力を変更して乗心地制御および姿勢制御を行う際に、制御の切換時に発生する違和感を解消することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車輪を車体に懸架するサスペンションのダンパの減衰力を変更するアクチュエータと、ロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出する姿勢制御手段と、路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出する乗心地制御手段と、姿勢制御手段が算出したパラメータおよび乗心地制御手段が算出したパラメータのうちの何れか大きい方を出力してダンパの減衰力を制御するハイセレクト手段とを備えたことを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、車輪を車体に懸架するサスペンションのダンパの減衰力を変更するアクチュエータと、ロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出する姿勢制御手段と、路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出する乗心地制御手段と、姿勢制御手段が算出したパラメータおよび乗心地制御手段が算出したパラメータを加算してダンパの減衰力を制御する加算手段とを備えたことを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記姿勢制御手段は、少なくとも横加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するロール姿勢制御部であり、前記乗心地制御手段は、少なくともバネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部であることを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記姿勢制御手段は、少なくとも前後加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するピッチ姿勢制御部であり、前記乗心地制御手段は、少なくともバネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部であることを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記加算手段は、前記二つのパラメータを車速に応じて重み付けして加算することを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
また請求項6に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記加算手段は、前記二つのパラメータを均等に重み付けして加算することを特徴とするサスペンションの制御装置が提案される。
請求項1の構成によれば、姿勢制御手段がロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出し、乗心地制御手段が路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出すると、ハイセレクト手段が前記二つのパラメータのうちの何れか大きい方を出力してサスペンションのダンパの減衰力を制御するので、姿勢制御および乗心地制御の切換時にダンパの減衰力が急変するのを防止してドライバーの違和感を解消することができる。
請求項2の構成によれば、姿勢制御手段がロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出し、乗心地制御手段が路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出すると、加算手段が前記二つのパラメータを加算してサスペンションのダンパの減衰力を制御するので、姿勢制御および乗心地制御の切換に伴うダンパの減衰力の急変をなくしてドライバーの違和感を解消することができる。
請求項3の構成によれば、横加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するロール姿勢制御部で姿勢制御手段を構成し、バネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部で乗心地制御手段を構成したので、車両の姿勢制御と乗心地とを両立させることができる。
請求項4の構成によれば、前後加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するピッチ姿勢制御部で姿勢制御手段を構成し、バネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部で乗心地制御手段を構成したので、車両の姿勢制御と乗心地とを両立させることができる。
請求項5の構成によれば、姿勢制御手段が算出したパラメータおよび乗心地制御手段が算出したパラメータを加算する際に、それらパラメータを車速に応じて重み付けして加算するので、車両の姿勢制御および車両の乗心地制御の優先度を車速に応じて任意に変化させることができる。
請求項6の構成によれば、姿勢制御手段が算出したパラメータおよび乗心地制御手段が算出したパラメータを加算する際に、それらパラメータを同一の重み付けで加算するので、加算手段の演算負荷を軽減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図9は本発明の第1実施例を示すもので、図1は車両のサスペンション装置の正面図、図2はダンパの減衰力を変更するアクチュエータの制御系のブロック図、図3はサスペンションのモデルを示す図、図4はスカイフック制御の説明図、図5はロール姿勢制御の作用を示すフローチャート、図6はアクチュエータの目標電流を検索するマップを示す図、図7はレーンチェンジを行う際の横加速度および横加速度微分値を示すグラフ、図8はレーンチェンジを行う際の車両挙動を示す図、図9はスカイフック制御における振動伝達率を示すグラフである。
図1に示すように、四輪の自動車の車輪Wを懸架するサスペンションSは、車体1にナックル2を上下動自在に支持するサスペンションアーム3と、サスペンションアーム3および車体1を接続するように直列に配置されたダンパ4、アクチュエータ5およびダンパマウントラバー6と、サスペンションアーム3および車体1を接続するコイルバネ7とを備える。ダンパ4は、サスペンションアーム3に下端を支持したシリンダ8と、シリンダ8に摺動自在に嵌合するピストン9と、ピストン9から上方に延びるピストンロッド10とから構成され、またアクチュエータ5は、ピストンロッド10の上端およびダンパマウントラバー6の下端を接続するコア11と、コア11の外周を囲むように配置されたコイル12とから構成される。ダンパ4は周知の油圧式のもので、オイルを満たしたシリンダ8の内部をピストン9が移動する際に、その移動速度に応じた荷重(減衰力)を発生する。
アクチュエータ5の作動を制御する電子制御ユニットUには、バネ上加速度を検出するバネ上加速度センサ13からの信号と、ダンパ4の変位(ストローク)を検出するダンパ変位センサ14と、車両の横加速度を検出する横加速度センサ15からの信号と、車両の前後加速度を検出する前後加速度センサ16からの信号とが入力され、これらの信号に基づいて電子制御ユニットUはダンパ4に供給する電流を制御して減衰力を任意に変更することができる。
図2に示すように、電子制御ユニットUは、スカイフック乗心地制御部M1と、ロール姿勢制御部M2と、ピッチ姿勢制御部M3と、目標電流算出部M4と、バネ下制御部M5とを備える。バネ上加速度センサ13が出力するバネ上加速度は積分手段21で積分されてバネ上上下速度となり、スカイフック乗心地制御部M1に入力される。ダンパ変位センサ14が出力するダンパ変位はバネ下制御部M5に直接入力されるとともに、微分手段22で微分されてダンパ速度となり、スカイフック乗心地制御部M1およびバネ下制御部M5に入力される。横加速度センサ15が出力する横加速度は微分手段23で微分されて横加速度微分値となり、ロール姿勢制御部M2に入力される。前後加速度センサ16が出力する前後加速度は微分手段24で微分されて前後加速度微分値となり、ピッチ姿勢制御部M3に入力される。
微分手段22で算出したダンパ速度と、ロール姿勢制御部M2が出力するロール制御目標荷重(ロール制御を行うためにダンパ4に発生させるべき目標減衰力)と、ピッチ姿勢制御部M3が出力するピッチ制御目標荷重(ピッチ制御を行うためにダンパ4に発生させるべき目標減衰力)とが入力された目標電流算出部M4は、ダンパ4のアクチュエータ5に供給するロール制御電流およびピッチ制御電流を出力し、それらのロール制御電流およびピッチ制御電流は加算手段25で加算されてロール/ピッチ制御電流となり、ハイセレクト手段26に入力される。ロール/ピッチ制御電流に加えて、スカイフック乗心地制御部M1からのスカイフック制御電流(スカイフック制御を行うための目標電流)が入力されたハイセレクト手段26は、ロール/ピッチ制御電流およびスカイフック制御電流のうちの何れか大きい方を出力する。そしてハイセレクト手段26が出力するハイセレクト値と、バネ下制御部M5が出力するバネ下制御電流(バネ下制御を行うための目標電流)とが加算手段27で加算され、その加算値に基づいてダンパ4のアクチュエータ5の作動が制御される。
次に、図3および図4に基づいて、スカイフック乗心地制御部M1の機能について説明する。
図3に示すサスペンションのモデルから明らかなように、路面にタイヤの仮想的なバネ17を介してバネ下質量18が接続され、バネ下質量18にダンパ4、アクチュエータ5およびコイルバネ7を介してバネ上質量19が接続される。ダンパ4の減衰力はアクチュエータ5により可変である。バネ上質量19の変位X2の変化率dX2/dtは、図2の積分手段21が出力するバネ上上下速度に相当する。またバネ上質量19の変位X2およびバネ下質量18の変位X1の差の変化率d(X2−X1)/dtは、図2の微分手段22が出力するダンパ速度に相当する。
dX2/dt×d(X2−X1)/dt>0
のとき、つまりバネ上上下速度とダンパ速度とが同方向(同符号)であるとき、ダンパ4のアクチュエータ5は減衰力を増加させる方向に制御される。一方、
dX2/dt×d(X2−X1)/dt≦0
のとき、つまりバネ上上下速度とダンパ速度とが逆方向(逆符号)であるとき、ダンパ4のアクチュエータ5は減衰力を減少させる方向に制御される。
従って、図4に示すように車輪Wが路面の突起を乗り越す場合を考えると、(1)に示すように車輪Wが突起の前半に沿って上昇する間は、車体1が上向きに移動してバネ上上下速度(dX2/dt)が正値になり、ダンパ4が圧縮されてダンパ速度d(X2−X1)/dtが負値になるため、両者が逆符号となってダンパ4のアクチュエータ5は圧縮方向の減衰力を減少させるように制御される。
また(2)に示すように車輪Wが突起の頂点を乗り越した直後は、車体1が慣性で依然として上向きに移動してバネ上上下速度(dX2/dt)が正値になり、車体1の上昇によりダンパ4が伸長されてダンパ速度d(X2−X1)/dtが正値になるため、両者が同符号となってダンパ4のアクチュエータ5は伸長方向の減衰力を増加させるように制御される。
また(3)に示すように車輪Wが突起の後半に沿って下降する間は、車体1が下向きに移動してバネ上上下速度(dX2/dt)が負値になり、車輪Wが車体1よりも速く下降することによりダンパ4が伸長されてダンパ速度d(X2−X1)/dtが正値になるため、両者が逆符号となってダンパ4のアクチュエータ5は伸長方向の減衰力を減少させるように制御される。
また(4)に示すように車輪Wが突起を完全に乗り越した直後は、車体1が慣性で依然として下向きに移動してバネ上上下速度(dX2/dt)が負値になり、車輪Wが下降を停止することによりダンパ4が圧縮されてダンパ速度d(X2−X1)/dtが負値になるため、両者が同符号となってダンパ4のアクチュエータ5は圧縮方向の減衰力を増加させるように制御される。
このようなスカイフック制御を行って車両の乗心地を高める際に、図4の(2)および(4)に示すダンパ4のアクチュエータ5の減衰力を増加させる領域で、その減衰力、つまりスカイフック制御電流を(比例定数)×(バネ上上下速度)により算出することで、切替音の低減と違和感の低減とを実現することができる。
次に、ロール姿勢制御部M2および目標電流算出部M4の作用を図5〜図8に基づいて説明する。
図5のフローチャートのステップS1で、横加速度センサ15により横加速度を検出し、ステップS2で横加速度を微分手段23により微分して横加速度変化率を算出し、更にステップS3でロール姿勢制御部M2において(比例定数)×(横加速度微分値)によりロール制御目標荷重を算出する。続くステップS4でダンパ変位センサ14によりダンパ変位を検出し、ステップS5でダンパ変位を微分手段22により微分してダンパ速度を算出する。続くステップS6で、ロール制御目標荷重およびダンパ速度が入力される目標電流算出部M4が、図6に示すマップからロール制御電流を検索し、ステップS7で前記ロール制御電流を加算手段25に出力する。
図6はロール制御目標荷重およびダンパ速度からロール制御電流を検索するマップを示している。基本的に縦軸のロール制御目標荷重に対してロール制御電流は比例関係にあるが、そのロール制御電流はダンパ速度により補正される。例えば、ロール制御目標荷重がFtであるとき、ダンパ速度がVptであれば、ロール制御電流はItとなる。そしてダンパ速度がVptからVpt1に増加すると、ロール制御電流はItからIt1に減少し、逆にダンパ速度がVptからVpt2に減少すると、ロール制御電流はItからIt2に増加する。
図7は車両が左車線から右車線にレーンチェンジした際の横加速度と、それを微分した横加速度微分値とを示すもので、その時間軸上の(1)〜(5)は、図8に示すレーンチェンジする車両の挙動の(1)〜(5)に対応している。
横加速度がゼロである(1)、(3)、(5)では車体1はロールしておらず、右旋回中の(2)では車体1が遠心力で左側にロールし、左旋回中の(4)では車体1が遠心力で右側にロールするが、このときダンパ4にロール制御目標荷重Ftを発生させることで、旋回方向外側への車体1のロールを抑制して車両の姿勢を安定させることができる。
その際に、車体1のロール角を制御すべくダンパ4のロール制御目標荷重Ftを横加速度に基づいて決定すると、横加速度はロール角とほぼじ位相で変化するため、ダンパ4の減衰力の制御に遅れが生じる可能性がある。図7のグラフに注目すると、(2)において左向きの横加速度が最大となるタイミングに先立つa点で横加速度微分値の絶対値が最大になり、(4)において右向きの横加速度が最大となるタイミングに先立つb点で横加速度微分値の絶対値が最大になっている。このように、横加速度が変化する位相に対して、横加速度微分値が変化する位相が先行していることに着目し、この横加速度微分値に比例したダンパ4のロール制御目標荷重Ftを設定することで、ダンパ4の減衰力を時間遅れなく制御して車両の姿勢を更に安定させ、的確な姿勢制御と乗心地とを両立させることができる。
しかも目標電流算出部M4がロール制御目標荷重からロール制御電流をマップ検索する際にダンパ速度による補正を行うので、路面の凹凸からの大きな入力があった場合でも、適切なロール制御目標荷重を設定して乗心地の悪化を回避することができる。
上述したロール制御電流の算出と同様にして、車両の急加速時におけるノーズアップや急制動時におけるノーズダウンを抑制するために、ピッチ姿勢制御部M3は、前後加速度センサ16で検出した前後加速度を微分手段24で微分して得た前後加速度微分値からピッチ制御目標荷重を算出し、目標電流算出手部M4はピッチ制御目標荷重からピッチ制御電流をマップ検索する際に、ダンパ速度に基づいてピッチ制御電流を補正する。
しかして、目標電流算出手部M4が出力するロール制御電流およびピッチ制御電流は加算手段25で加算され、その加算値であるロール/ピッチ制御電流はハイセレクト手段26に入力され、そこでスカイフック制御電流と比較された結果、いずれか大きい方の電流が加算手段27に出力される。そして加算手段27において、バネ下制御部M5が出力するバネ下制御電流と加算され、その加算値に基づいてダンパ4のアクチュエータ5の減衰力が制御される。
このように、ロール/ピッチ制御電流およびスカイフック制御電流のうちの何れか大きい方がハイセレクト手段26により選択されてアクチュエータ5に出力されるので、ハイセレクト手段26がロール/ピッチ制御電流を選択している間にスカイフック制御電流が増加してロール/ピッチ制御電流を超えた瞬間に、ロール/ピッチ制御電流からスカイフック制御電流に切り換わり、逆にハイセレクト手段26がスカイフック制御電流を選択している間にロール/ピッチ制御電流が増加してスカイフック制御電流を超えた瞬間に、スカイフック制御電流からロール/ピッチ制御電流からに切り換わることになる。何れの場合にも、その切換時にハイセレクト手段26が出力するハイセレクト電流が不連続に急変することがないため、ダンパ4のアクチュエータ5の作動がドライバーに違和感を与えることが回避される。
ところで、図9に示すように、上述したスカイフック制御では、制御ゲインを変更してもバネ上共振周波数である1Hz近傍の振動伝達率が変化するだけであり、バネ下共振周波数である10Hz近傍の振動伝達率を制御できないという問題がある。
バネ下制御部M5はこの問題を解消するために設けられたもので、バネ下共振領域での振動を把握して制御する指標としてダンパ速度とダンパ変位との積に着目し、(比例定数)×(ダンパ速度)×(ダンパ変位)によりバネ下制御電流を算出し、このバネ下制御電流は加算手段27においてハイセレクト手段26が出力するハイセレクト電流に加算される。その結果、特にダンパ速度およびダンパ変位が大きい場合に、スカイフック制御とは独立して、10Hz近傍のバネ下共振領域の振動を抑制することが可能になる。
次に、図10に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
図2に示す第1実施例ではスカイフック乗心地制御部M1が出力するスカイフック制御電流と、目標電流算出部M4が出力するロール/ピッチ制御電流とをハイセレクト手段26に入力し、その何れか大きい方を選択して出力していたが、第2実施例では前記ハイセレクト手段26に代わる加算手段28を設け、この加算手段28でスカイフック制御電流およびロール/ピッチ制御電流を加算し、更にバネ下制御電流を加算している。
この第2実施例によっても、スカイフック制御電流およびロール/ピッチ制御電流を常時加算することにより、スカイフック制御およびロール/ピッチ制御の切り換えに伴ってダンパ4の減衰力が急変するのを防止し、ドライバーが違和感を覚えないようにして乗心地を高めることができる。
特に、スカイフック乗心地制御部M1が出力するスカイフック制御電流と目標電流算出部M4が出力するロール/ピッチ制御電流とにそれぞれ重み付け係数を乗算し、その乗算値を加算手段28で加算すれば、車両の乗心地制御および車両の姿勢制御の優先度を車速に応じて任意に変化させることができる。またスカイフック乗心地制御部M1が出力するスカイフック制御電流と目標電流算出部M4が出力するロール/ピッチ制御電流とを重み付けせずにそのまま加算すれば、加算手段28の演算負荷を軽減することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施例ではロール姿勢制御部M2およびピッチ姿勢制御部M3を備えてロールおよびピッチの両方の姿勢制御を行っているが、その一方だけを行っても良い。
車両のサスペンション装置の正面図 ダンパの減衰力を変更するアクチュエータの制御系のブロック図 サスペンションのモデルを示す図 スカイフック制御の説明図 ロール姿勢制御の作用を示すフローチャート アクチュエータの目標電流を検索するマップを示す図 レーンチェンジを行う際の横加速度および横加速度微分値を示すグラフ レーンチェンジを行う際の車両挙動を示す図 スカイフック制御における振動伝達率を示すグラフ 第2実施例に係るダンパの減衰力を変更するアクチュエータの制御系のブロック図
符号の説明
1 車体
4 ダンパ
5 アクチュエータ
26 ハイセレクト手段
28 加算手段
M1 スカイフック乗心地制御部(乗心地制御手段)
M2 ロール姿勢制御部(姿勢制御手段)
M3 ピッチ姿勢制御部(姿勢制御手段)
S サスペンション
W 車輪

Claims (6)

  1. 車輪(W)を車体(1)に懸架するサスペンション(S)のダンパ(4)の減衰力を変更するアクチュエータ(5)と、
    ロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出する姿勢制御手段(M2,M3)と、
    路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出する乗心地制御手段(M1)と、
    姿勢制御手段(M2,M3)が算出したパラメータおよび乗心地制御手段(M1)が算出したパラメータのうちの何れか大きい方を出力してダンパ(4)の減衰力を制御するハイセレクト手段(26)と、
    を備えたことを特徴とするサスペンションの制御装置。
  2. 車輪(W)を車体(1)に懸架するサスペンション(S)のダンパ(4)の減衰力を変更するアクチュエータ(5)と、
    ロールあるいはピッチを含む車両の姿勢を制御するパラメータを算出する姿勢制御手段(M2,M3)と、
    路面からの振動伝達を抑制して車両の乗心地を制御するパラメータを算出する乗心地制御手段(M1)と、
    姿勢制御手段(M2,M3)が算出したパラメータおよび乗心地制御手段(M1)が算出したパラメータを加算してダンパ(4)の減衰力を制御する加算手段(28)と、
    を備えたことを特徴とするサスペンションの制御装置。
  3. 前記姿勢制御手段は、少なくとも横加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するロール姿勢制御部(M2)であり、前記乗心地制御手段は、少なくともバネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部(M1)であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のサスペンションの制御装置。
  4. 前記姿勢制御手段は、少なくとも前後加速度微分値に基づいて車両の姿勢を制御するパラメータを算出するピッチ姿勢制御部(M3)であり、前記乗心地制御手段は、少なくともバネ上上下速度に基づいて車両の乗心地を制御するパラメータを算出するスカイフック乗心地制御部(M1)であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のサスペンションの制御装置。
  5. 前記加算手段(28)は、前記二つのパラメータを車速に応じて重み付けして加算することを特徴とする、請求項2に記載のサスペンションの制御装置。
  6. 前記加算手段(28)は、前記二つのパラメータを均等に重み付けして加算することを特徴とする、請求項2に記載のサスペンションの制御装置。
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