JP2006044091A - ポリプロピレン系不織布成型体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メタロセン触媒によって重合され、MFRが10〜100g/10分、Q値が2〜4、Tmが110〜140℃、o−ジクロロベンゼン可溶分量が10重量%となるときの温度(T10)が50℃以上、α−オレフィン含有量(α)が1〜18モル%、引張弾性率(YM)とα−オレフィン含有量(α)とが式(a)を満たす、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維からなる不織布と被着体とを超音波融着してなるポリプロピレン系不織布成型体。
YM≦−52.3×α+1100 …式(a)
【選択図】なし
Description
通常、ポリプロピレン製の不織布には一般に柔軟性が要求されるため、プロピレンに少量のα−オレフィンを共重合させたランダム共重合体が使用されている。例えば、軟化点が132℃以下であって、所定量のエチレンを含有したエチレン−プロピレンランダム共重合体よりなる熱ロール加工適性に優れたエチレン−プロピレン共重合体からなる繊維が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この繊維を用いた不織布は柔軟性に乏しいもので、実用に適する強力と柔軟性を持った不織布に加工できる温度幅が極めて狭いといった欠点がある。さらに、例えば、エチレン単位0.01〜15mol%およびプロピレン単位99.99〜85molからなるプロピレン−エチレン共重合体であって、特定の核磁気共鳴スペクトルによる連鎖構造を持ち、重量平均分子量(Mw)が50,000〜1,500,000であり、かつ、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.2〜3.8であるプロピレン−エチレン共重合体を少なくとも一つの原料として用いて成形された繊維および、それを用いた繊維成形体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
二次加工の新たな手法として、超音波融着法が注目されている。超音波融着の原理は、不織布に超音波を印加させ、振動摩擦熱で融着させるものであり成形時間の短縮、コスト低減が期待される。しかし、上記プロピレン−エチレンランダム共重合体を含む従来のプロピレン−エチレンランダム共重合体では充分な接着強度が得られていない。プロピレン−エチレンランダム共重合体の融点を高めると接着強度は若干は向上するが、不織布の加工性が低下し又不織布自体の柔軟性が損なわれてしまう。以上のように、不織布の加工性又は柔軟性と接着強度は相反する関係にたち、柔軟かつ接着が良好な超音波融着成形体は得られていないのが実情である。
特性(1):MFRが10〜100g/10分
特性(2):Q値が2〜4
特性(3):Tmが110〜140℃
特性(4):o−ジクロロベンゼン可溶分量が10重量%となるときの温度(T10)が50℃以上
特性(5):α−オレフィン含有量(α)が1〜18モル%
特性(6):引張弾性率(YM)とα−オレフィン含有量(α)とが式(a)を満たす
YM≦−52.3×α+1100 …式(a)
特性(7):Tmとα−オレフィン含有量(α)とが式(b)を満たす
Tm≦−4.07×α+153.3 …式(b)
WM≦12.4×PS+50 …式(c)
本発明のポリプロピレン系不織布で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン触媒を使用して重合したプロピレンとα−オレフィンの共重合体である。メタロセン触媒は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の周期律表第4〜6族遷移金属と、シクロペンタジエニル基あるいはシクロペンタジエニル誘導体の基との錯体を使用した触媒である。
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のJIS−K6921−2付属書による230℃、21.18Nでのメルトフローレート(MFR)は、10〜100g/10分であり、好ましくは12〜90g/10分であり、より好ましくは15〜80g/10分である。MFRが10g/10分未満であると紡糸圧力が高くなりすぎ、高倍率での延伸が困難となり、繊維径の不均一などの弊害が生じる。一方、100g/10分を超えると溶融粘度が低いことから紡糸時に糸揺れが顕著となり、隣接する糸同士が融着し糸切れが多発するといった弊害が生じる。ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量などを適宜調節する方法、あるいは重合終了後に過酸化物の添加により調整する方法がある。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のQ値は、GPCにより測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)であって、2〜4であり、好ましくは2.2〜3.7であり、より好ましくは2.3〜3.5である。Q値が4を超えると、高分子量の存在により紡糸延伸性が損なわれるといった弊害が生じる。逆に、2未満であると、高分子量成分が少なすぎることにより、紡糸ノズル直下での溶融繊維の粘性が低くなり、これに伴う糸揺れが顕著となり、紡糸安定性が損なわれ好ましくない。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のQ値を調整する方法は、2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合する、または重合時に2段以上の多段重合を行うことによりQ値を広く制御することができる。逆にQ値を狭く調整するためには、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。
装置 :Waters社製HLC/GPC 150C
カラム温度:135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
流量 :1.0ml/min
カラム :東ソー株式会社製 GMHHR−H(S)HT 60cm×1
注入量 :0.15ml(濾過処理無し)
溶液濃度 :5mg/3.4ml
試料調整 :o−ジクロロベンゼンを用い、5mg/3.4mlの溶液に調整し140℃で1〜3時間溶解させる。
検量線 :ポリスチレン標準サンプルを使用した。
検量線次数:1次
PP分子量:PS×0.639
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTmは、示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解曲線のピーク温度を表し、110〜140℃であり、好ましくは115〜135℃、より好ましくは120〜130℃である。Tmが140℃を超えると、不織布加工時、エネルギーコストの観点から好ましくない。また、110℃未満であると、ティーバッグなどで使用した場合、沸騰水中で部分融解する可能性があり、好ましくない。
Tmを調整するには重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調整することができる。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のo−ジクロロベンゼン可溶分量が10重量%となるときの温度(T10)は、50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。T10の上限は特に規定されるものではないが、融点(Tm)とのバランスを考慮すると、80℃程度になる。T10が50℃未満であると低融点成分が増加するため、構成繊維のべたつき、不織布とした時の表面べたつきの原因となり、超音波融着特性を悪くする。また、紡糸性能の低下等の弊害も生じる。ポリマーのT10が50℃以上であることは、ポリマーの分子量分布がより均一であることを意味している。これはメタロセン触媒を使用して重合したことに起因しており、チーグラーナッタ触媒ではこのようなポリマーを製造することは困難である。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のT10を調整する方法は、2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより、T10を大きく調整することができる。
また、担体にメタロセン触媒成分を担持する際、担持が不均一である触媒を使用して重合した場合、低分子量成分が増え、これに伴いT10が大きくなってしまう。したがってメタロセン触媒成分を担体に均一に担持する技術が重要である。
ここで、T10の測定については後述する。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体中のα−オレフィン(コモノマー)含有量は、1〜18モル%であり、好ましくは2.5〜10モル%であり、より好ましくは3〜8モル%である。特にコモノマーがエチレンの場合は、1〜12モル%が好ましい。コモノマー含有量が上記範囲よりも少量であると融点が高く、ヒートシール特性が改善されず好ましくない。一方、多すぎると紡糸時の固化が遅く、生産性が損なわれる、また不織布強度や剛性が大きく低下してしまうといった弊害が生じる。ポリマー中のα−オレフィン含有量は重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調節することができる。なお、本発明において、α−オレフィン含有量は、フーリエ変換赤外分光光度計により定量されるものである。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィン含有量(α)と引張弾性率(YM)の関係が式(a)、好ましくは式(a’)を満たす必要がある。
YM≦−52.3×α+1100 …式(a)
YM≦−52.3×α+1050 …式(a’)
式(a)は、数多くの実験結果に基づき導き出された式であって、共重合体中のα−オレフィン量が効果的に引張弾性率を下げることを示している。式(a)を満たさない場合、α−オレフィンは、低分子のべたつき成分として存在するため、超音波融着部の剥離強度が低下するため好ましくない。YMの下限には特に定めはないが、製造プラントでの安定生産といった観点では、500MPa程度である。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体において、式(a)を調整する方法は、重合時のα−オレフィンのフィード量を制御することにより調整でき、さらに、必要に応じてべたつき成分を溶媒等で除去することにより調整することができる。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィン含有量(α)とTmの関係が式(b)、好ましくは(b’)を満たすことが好ましい。
Tm≦−4.07×α+153.3 …式(b)
Tm≦−4.07×α+150.3 …式(b’)
式(b)は、数多くの実験結果に基づき導き出された式であって、共重合体中のα−オレフィン量が効果的に融点を下げることを示している。式(b)を満たさない場合、α−オレフィンは、低分子のべたつき成分として存在するため、超音波融着部の剥離強度が低下するおそれがある。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体において、式(b)を調整する方法は、式(a)の場合と同様の方法で調整することができる。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fraction)によって得られる積分溶出曲線において、80重量%が溶出する温度(T80)と20重量%が溶出する温度(T20)の差、T80−T20は、10℃以下が好ましく、より好ましくは2〜9℃であり、特に好ましくは2〜8℃である。T80−T20が10℃を超えると、低融点成分が増加するため、構成繊維のべたつき、不織布とした時の表面べたつきの原因となり、超音波融着特性を悪くする場合がある。また、紡糸性能の低下等の弊害も生じやすくなる。ポリマーのT80−T20が上記のように特定の狭い範囲にあることは、ポリマーの分子量分布がより均一であることを意味している。これはメタロセン触媒を使用して重合したことに起因しており、チーグラーナッタ触媒ではこのようなポリマーを製造することは困難である。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のT80−T20を調整する方法は、2種以上のメタロセン触媒成分の併用した触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより、T80−T20を大きく調整することができる。
また、担体にメタロセン触媒成分を担持する際、担持が不均一である触媒を使用して重合した場合、低分子量成分が増え、これに伴いT80−T20が大きくなってしまう。したがってメタロセン触媒成分を担体に均一に担持する技術が重要である。
測定装置はダイヤインスツルメンツ製CFC T−102Lを使用した。
まず、測定すべきサンプルを溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用い、3mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は設定条件にしたがって自動的に行われる。サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入される。次に該サンプルを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却させる。TREFカラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工製AD806MS 3本)へ注入される。SECで分子サイズの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(10℃)に昇温され、その温度に約30分保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度は0℃から40℃まで10℃毎に、40℃から90℃まで5℃毎に、90℃から140℃までは4℃毎に階段的に昇温される。該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は装置付属の赤外線分光光度計で検出され、各溶出温度区分におけるクロマトグラフが得られる。なお、赤外線分光光度計での検出は検出波数3.42μmにおける吸光度を使用して行われ、溶液中のポリマー成分量と吸光度とが比例するものとして以下のデータ処理が行われる。各溶出温度区分におけるクロマトグラムは内蔵のデータ処理ソフトにより処理され、各クロマトグラムの面積を基に、積算が100%となるように規格化された各溶出温度区分の溶出量が計算される。更に、得られた各溶出温度区分の溶出量から、積分溶出曲線が作成される。0℃可溶分量とは0℃で溶出したポリマー成分の量(%)を示すものであり、T10とは積算溶出量が10%となる温度を、T20とは積算溶出量が20%となる温度を、T80とは積算溶出量が80%となる温度を示すものである。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTREF測定時の0℃可溶分量は、3重量%以下が好ましく、より好ましくは2.8重量%以下であり、特に好ましくは2.5重量%以下である。TREF測定時の0℃可溶分量は、低分子量成分がそのほとんどを占めており、不織布のべたつきの原因となり、超音波融着特性を悪くする。上記範囲より大きい場合は、不織布べたつきが顕著となり、結果として超音波融着特性が悪くなり好ましくない。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のTREF0℃可溶分の量は、担体にメタロセン触媒成分を担持する際、担持が不均一である触媒を使用して重合した場合、低分子量が増え、これに伴いTREF0℃可溶分の量が増加してしまう。したがってメタロセン触媒成分を担体に均一に担持する触媒を使用して重合することによりTREF0℃可溶分の量を3重量%以下に調整することができる。
本発明で用いるポリプロピレン系不織布は、上述のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分として用いた繊維不織布成形材料をスパンボンド法、メルトブローン法等で直接製造するか、一旦繊維化して、水流交絡法、カード法などの成形法により製造される。該不織布の目付量は、5〜200g/m2であるのが好ましい。また、不織布は単層での使用だけでなく、例えば、スパンボンド法で得られた不織布とメルトブローン法で得られた不織布の積層体、あるいは不織布とフィルムや吸水紙との積層体としても好適に使用できる。
ここで、少なくとも1成分とする繊維とは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と他の樹脂成分との組成物からなる繊維や、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と他の樹脂成分との複合繊維をも含む意味である。
本発明の不織布成型体は、上記で得られた不織布と被着体とを超音波融着して得られる。被着体としては、素材、形状とも特に制限はないが、素材としてはアルミ等の金属およびそれらの合金、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂、天然ゴム、紙、ガラス、鉱物、セラミックス、天然繊維などが例示でき、形状としては箔状、筒状、膜状、布状などが例示できる。本発明の不織布が被着体であってもよい。被着体が異種素材の場合には充分な接着強度が得られない場合があるので、ポリプロピレンであることが好ましく、さらには本発明に用いるプロピレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
超音波融着の方法は、特に制限はなく、公知の超音波融着装置を用いて行うことができる。特に、発振周波数が25〜35kHz、加圧力が20〜800N、加圧時間が0.1〜20秒が安定した接着強度が得られるので好ましい。
WM≦12.4×PS+50 …式(c)
式(c)は、数多くの実験結果に基づき導き出された式であって、不織布成型体が式(c)を満足しないと、剥離強度のみが高くても、不織布弾性率が高すぎると、衛生材料や紙おむつ、マスクティーバッグなどに加工した際に、ごわごわとした手触りとなり製品として好ましくなくなる。
ここで、不織布の剥離強度(PS)の測定法は、15mm×100mmの不織布を超音波融着した後、引張速度:10mm/分の条件で測定するものである。
また、不織布の弾性率は(WM)は、JIS K7127に準拠して測定する値である。
(1)MFR:JIS−K6921−2附属書に準拠し測定した。(条件:温度230℃、荷重21.18N)
(2)エチレン含量:赤外分光光度計により測定した。
(3)Q値:前述の測定方法に従って測定した。
なお、検量線は、表1のポリスチレン標準サンプルを使用した。
(5)T10、温度上昇溶離分別(TREF)によるT80−T20、0℃可溶分量:測定装置はダイヤインスツルメンツ製CFC T−102Lを使用し、前述の測定条件に従って測定した。
(6)樹脂引張弾性率(YM):JIS K7113に準拠して測定した。
(7)不織布弾性率(WM):東洋精機製ストログラフを用い、縦10cm×横5cmの試験片を引張速度1mm/分、チャック間50mm、チャートスピード:50mm/分の条件で測定し、下記式より求めた。
不織布弾性率[MPa]=1%伸長時荷重/不織布断面積/伸び率(0.01)
(ここで、不織布断面積は、試験片重量/密度(0.9g/cm3)/試験片面積(50cm2)とした。)
(8)剥離強度(PS):東洋精機製テンシロンを用い、180度剥離を行い、引張速度10mm/分の速度で剥離するときの試料単位幅あたりの荷重を剥離強度とした(単位N/15mm)。
実施例、比較例で用いたプロピレン・α−オレフィン共重合体は、下記の重合例1〜7で得られた重合体I〜VIIを用いた。重合体の物性を表2に示す。重合体I〜IVは、特性(1)〜(9)を有する本発明のプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、重合体V〜VIIは本発明外の共重合体である。
(1)触媒の調整
3つ口フラスコ(容積1L)中に硫酸で逐次的に処理されたスメクタイト族ケイ酸塩(水沢化学社製ベンクレイSL)20g、ヘプタン200mLを仕込み、トリノルマルオクチルアルミニウム50mmolと接触後ヘプタンで洗浄し、スラリー1とした。また別のフラスコ(容積200mL)中に、ヘプタン90mL、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕0.3mmol、トリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込みスラリー2とした。スラリー2を、上記スラリー1に加えて、室温で60分攪拌した。その後ヘプタンを210mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし4時間40℃を保ちつつ予備重合を行い、予備重合触媒83gを得た。
(2)プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の製造
内容積270Lの反応器に液状プロピレン、エチレン、水素、およびトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のヘキサン希釈溶液を連続的に供給し、内温を62℃に保持した。プロピレンの供給量は、38kg/hrであり、エチレンの供給量は1.1kg/hrであり、水素の供給量は0.24g/hrであり、TIBAの供給量は18g/hrであった。前記予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状とし、1.2g/hrでフィードした。その結果、14.5kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体I)を得た。得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体Iは、MFR=22g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.1℃、Q値=2.7であった。
重合例1で調整した固体触媒を用い、水素の供給量を0.36g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を0.87g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、11.6kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体II)を得た。重合体IIは、MFR=39g/10分、エチレン含量=5.0mol%、Tm=125.3℃、Q値=2.8であった。
重合例1で調整した固体触媒を用い、エチレンの供給量を0.85kg/hr、水素の供給量を0.42g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を1.95g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、12.0kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体III)を得た。得られた重合体IIIは、MFR=40g/10分、エチレン含量=4.1mol%、Tm=130.1℃、Q値=2.7であった。
重合例1で調整した固体触媒を用い、エチレンの供給量を1.6kg/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして重合を行った。その結果、12.5kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体IV)を得た。得られた重合体IVは、MFR=22g/10分、エチレン含量=6.0mol%、Tm=120.2℃、Q値=2.8であった。
重合例1で調製した固体触媒を用い、水素の供給量を0.03g/hr、予備重合触媒を流動パラフィンによりスラリー状としたフィード量を1.5g/hrに変更した以外は、重合例1と同様にして、重合を行った。その結果、12.5kg/hrのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体V)を得た。得られた重合体Vは、MFR=6g/10分、エチレン含量5.0mol%、Tm=125.4℃、Q値=2.7であった。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブをプロピレンで十分に置換した後、脱水・脱酸素処理したn−ヘプタン60Lを導入し、ジエチルアルミニウムクロリド16g、三塩化チタン触媒(エム・アンド・エム社製)4.1gを50℃でプロピレン雰囲気下で導入した。更に気相水素濃度を6.0容量%に保ちながら、50℃の温度で、プロピレン5.7kg/時及びエチレン0.28kg/時の速度で4時間フィードした後、更に1時間重合を継続した。その結果、12kgのプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体VI)を得た。得られた重合体VIは、MFR=6.4g/10分、エチレン含量=5.9mol%、Tm=140.0℃、Q値=4.4であった。
エチレンの供給量を0.35kg/hrとした以外は重合例6と同様にして重合を行い、その結果、11kgのプロピレン・エチレンランダム共重合体VII(重合体VII)を得た。得られた重合体VIIは、MFR=6g/10分、エチレン含量=6.5mol%、Tm=130.0℃、Q値=4.5であった。
表2に示す重合体I〜IVのパウダー100重量部に対して、酸化防止剤として1、3、5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−キシリル)メチル]−1、3、5−トリアジン−2、4、6(1H、3H、5H)−トリオン(サイテック製、商品名サイアノックス1790)を0.04重量部、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、商品名イルガホス168)を0.05重量部、及び中和剤としてステアリン酸カルシウム(日東化成工業製、商品名Ca−St)を0.05重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で、溶融、混練、冷却、カットしてペレット状のプロピレン共重合体組成物を調製した。
次に、得られた組成物をホール数24個の単一紡糸口金を用いて溶融紡糸を行った。溶融紡糸は、紡糸温度230℃、吐出量0.8g/分・孔で行い、その後エアサッカーにて延伸し、繊度2デニールの単一繊維を得た。この繊維をエアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、所定の温度に設定したエンボスロールにより繊維同士を融着させ、目付量40g/m2の不織布を得た。
なお、エンボスロール温度は、実施例1〜2:114℃、実施例3:119℃、実施例4:109℃とした。
得られた不織布の15mm幅×100mm長試験片を重ね合わせ、精電舎電子工業製SONOPET ΣG−620を用い、発振周波数:28.7kHz、加圧力:200N、加圧時間:1秒で超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
実施例1で調製したプロピレン・エチレンランダム共重合体(重合体I)組成物を、第1成分(鞘材)原料として使用し、第2成分(芯材)原料としてホモポリプロピレン(SA04C:日本ポリプロ社製)を使用し、芯鞘比1/1(重量比)になるようにし、ホール数24個の芯鞘型紡糸口金を用いて溶融紡糸を行った。
溶融紡糸は、紡糸温度230℃、吐出量0.8/分・孔で行い、その後エアサッカーにて延伸し、繊度2デニールの芯鞘型複合繊維を得た。この複合繊維をエアサッカー下方にあるコンベアーに集積させた後、114℃に設定したエンボスロールにより繊維同士を融着させ、目付量40g/m2の不織布を得た。得られた不織布を超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
実施例5で第2成分(芯材)をメタロセンポリエチレン(KS560:日本ポリエチレン製)、エンボスロール温度を109℃とした以外は、同様にして目付量40g/m2の不織布を得た。得られた不織布を超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
実施例1で、原料をホモポリプロピレン(SA04C:日本ポリプロ社製)を使用し、エンボスロール温度を145℃とした以外は同様にして、目付量40g/m2の不織布を得た。得られた不織布を超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
重合体VI、VIIに過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂社製)を0.03重量部加え、それぞれ最終MFRが25g/10分になるように調製した重合体を鞘材として用いる以外は、実施例5と同様にして不織布を得た。ただし、比較例2ではエンボスロール温度を131℃、比較例3では120℃とした。得られた不織布を超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
実施例5で、第1成分(鞘材)を高密度ポリエチレン(HE490:日本ポリエチレン社製)、第2成分(芯材)をホモポリプロピレン(SA04C:日本ポリプロ社製)とし、エンボスロール温度を130℃とした以外は同様にして目付量40g/m2の不織布を得た。得られた不織布を超音波融着させ、その剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。
重合体Vのパウダーを使用し、実施例1と同様に調製した重合体V組成物を第1成分(鞘材)原料として使用し、第2成分(芯材)原料としてホモポリプロピレン(SA04C:日本ポリプロ(株)製)を使用し、芯鞘型紡糸口金を用いて溶融紡糸を行ったが、エアサッカーでの延伸追随性が非常に悪く、延伸切れを多発したため、不織布を得ることができなかった。
重合体Vに過酸化物(パーヘキサ25B:日本油脂(株)製)を0.05重量部加えた以外は実施例1と同様に調製し、MFR=60g/10分、Q値=1.8の重合体V*を得た。当該組成物を第1成分(鞘材)として使用し、第2成分(芯材)原料としてホモポリプロピレン(SA04C:日本ポリプロ(株)製)を使用し、芯鞘型紡糸口金を用いて溶融紡糸を行ったが、紡糸口金直下での溶融繊維の糸揺れに伴う融着が顕著に起こり、不織布を得ることができなかった。
Claims (10)
- メタロセン触媒によって重合され、下記特性(1)〜(6)を有するプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維からなる不織布と被着体とを超音波融着してなるポリプロピレン系不織布成型体。
特性(1):MFRが10〜100g/10分
特性(2):Q値が2〜4
特性(3):Tmが110〜140℃
特性(4):o−ジクロロベンゼン可溶分量が10重量%となるときの温度(T10)が50℃以上
特性(5):α−オレフィン含有量(α)が1〜18モル%
特性(6):引張弾性率(YM)とα−オレフィン含有量(α)とが式(a)を満たす
YM≦−52.3×α+1100 …式(a) - プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、さらに下記特性(7)を有することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系不織布成型体。
特性(7):Tmとα−オレフィン含有量(α)とが式(b)を満たす
Tm≦−4.07×α+153.3 …式(b) - プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のα−オレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系不織布成型体。
- プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維が単一繊維、芯鞘型複合繊維、あるいはサイドバイサイド複合型繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体。
- プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を少なくとも1成分とする繊維からなる不織布が、スパンボンド法、メルトブロー法、水流交絡法又はカード法のいずれかの方法により製造されたシート状不織布であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体。
- 目付40g/m2の不織布において、超音波融着による剥離強度(PS)が15N/15mm幅以上、かつ剥離強度(PS)と不織布弾性率(WM)とが式(c)を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体。
WM≦12.4×PS+50 …式(c) - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体を用いた衛生材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体を用いた紙おむつ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体を用いたマスク。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリプロピレン系不織布成型体を用いたティーバッグ。
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