JP2006042795A - 細胞培養用基材、その製造方法及び細胞培養方法 - Google Patents

細胞培養用基材、その製造方法及び細胞培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造コストが低廉で、かつ、品質制御が容易で、かつ、培養細胞についてウィルス感染のおそれがないという合成高分子の利点を活かしつつ、ポリアクリル酸からなる網目構造を有するゲルを用いた場合より、培養細胞が短時間で伸展し、かつ、単位面積あたりに吸着する培養細胞の数が多い合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材を提供すること。
【解決手段】 パラスチレンスルホン酸ナトリウム塩(NaSS)又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(NaAMPS)等のスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子を含有するゲルを細胞培養用基材として使用する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、合成高分子を含む網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材、その製造方法及びそれを用いた細胞培養方法に関する。
従来、細胞培養用基材には、ポリスチレン等のプラスチックにコラーゲンをコーティングしたものが広く用いられている。コラーゲンは、多細胞生物における結合組織を構成する繊維状タンパク質であり、自然界に広く存在する生体高分子であるが、生体細胞又は生体組織から単離して精製するまでに要するコストが高く、また生体細胞又は生体組織由来であるため、由来する細胞や組織が異なると品質も異なる、ウィルス感染のおそれがある、等の問題がある。
そこで、本発明者らは、製造コストが低廉で、かつ、品質を制御でき、かつ、培養細胞についてウィルス感染のおそれのない合成高分子をコラーゲンの代替品として使用することを発案し、複数の合成高分子の中でも特にポリアクリル酸(PAA:Poly-Acryl Acid)からなる網目構造を有するゲルであれば、そのゲルの表面に牛の内皮細胞が吸着し伸展することを見出し、このゲルを細胞培養用基材として使用する技術を開発した(例えば非特許文献1参照)。この非特許文献1に記載された技術によれば、細胞の増殖を促進する因子で表面修飾されていないPAAを有するゲル上で内皮細胞等をコンフルエント又はサブコンフルエントにまで培養することができる。
陳 咏梅、外7名,「ポリアクリル酸ゲルの構造制御による内皮細胞培養」,社団法人 高分子学会,第52回 高分子討論会 予稿集,平成15年9月
しかし、非特許文献1に記載された技術では、コラーゲンを用いて内皮細胞を培養する場合と比較して、内皮細胞の伸展速度が遅く、かつ、内皮細胞がコンフルエント又はサブコンフルエントに達するまでの培養時間が長い、という問題がある。
また、非特許文献1に記載された技術では、PAAの架橋度を少なくとも4mol%未満という限られた範囲内に収めなければ、PAAを有するゲル上で内皮細胞等をコンフルエント又はサブコンフルエントにまで培養することができない、という問題もある。
さらに、非特許文献1に記載された技術では、細胞培養用基材として必要な強度をゲルに付与する場合に、前述のとおりPAAの架橋度を高めることができないため、例えばPAAからなる網目構造に他の高分子からなる網目構造を絡み付けたりしなければならず、ゲルの製造工程が複雑になる、という問題もある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、製造コストが低廉で、かつ、品質制御が容易で、かつ、培養細胞についてウィルス感染のおそれがないという合成高分子の利点を活かしつつ、ポリアクリル酸からなる網目構造を有するゲルを用いた場合より、培養細胞が短時間で伸展し、かつ、単位面積あたりに吸着する培養細胞の数が多い合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材を提供することを目的とする。
本発明に係る細胞培養用基材は、スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有する構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記スルホン酸基を有する単量体が、芳香族化合物である構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記スルホン酸基を有する単量体が、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩である構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記合成高分子において、構造単位としてのパラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率が6mol%以上である構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記合成高分子において、構造単位としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率が30mol%以上である構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記合成高分子は、架橋度が0.1mol%以上10mol%以下である構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記合成高分子からなる網目構造が、前記ゲルの最表面層に存在する構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、架橋構造を有する高分子からなる網目構造に、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造が侵入した相互侵入網目構造、或いは前記合成高分子が線状高分子であり、線状の前記合成高分子が侵入したセミ相互侵入網目構造を有するゲルを含有する、構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材は、前記発明において、前記架橋構造を有する高分子からなる網目構造が、バクテリアセルロースである構成を採る。
本発明に係る細胞培養用基材の製造方法は、スルホン酸基を有する単量体が共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを生成する際に、前記スルホン酸基を有する単量体に対する共重合に係る他の単量体の存在比率を調節することにより、前記ゲルの表面電位を調節するようにした。
本発明に係る細胞培養方法は、前記発明に係る細胞培養用基材を用いるようにした。
本発明によれば、スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有するため、製造コストが低廉で、かつ、単位面積あたりの収量(培養された細胞数)の多い細胞培養用基材を提供することができる。
また、本発明によれば、例えばパラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩を重合又は共重合することにより、合成高分子からなる網目構造が形成されるため、その合成高分子における架橋度の許容範囲を拡げることができる。
また、本発明によれば、前記ゲルを用いて細胞培養するため、品質が均一で、ウィルス感染のおそれのない培養細胞を短時間で大量に得ることができる。
本発明の骨子は、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩例えばパラスチレンスルホン酸ナトリウム塩(NaSS:p-styrene sulfonic acid sodium salt)又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩(NaAMPS:2-acrylamide-2-methylpropane sulfonic acid sodium salt)等のスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子を含有するゲルを細胞培養用基材として使用することである。
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る細胞培養用基材は、NaSS又はNaAMPS等のスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含んで構成される。また、図1に、NaSS及びNaAMPSの構造式と、参考としてジメチルアクリルアミド(DMAAm:Dimethyl Acryl Amide)の構造式と、を併せて示す。
NaSS又はNaAMPS等のスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルの表面では、後述の実施例で実証されるとおり、アクリル酸(AA)やDMAAmを重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルの表面より、培養細胞が速やかに伸展し、コンフルエント又はサブコンフルエントにまで短時間で達する。
このような現象が生じる具体的な機構は明らかでないが、本発明者らは、細胞培養にはゲル表面の電荷密度が重要であり、スルホン酸基を有する単量体を用いることにより、この単量体を重合又は共重合した合成高分子の表面電位が細胞培養に適した範囲となるからである、と推測している。細胞は接着タンパク質を介して他の細胞に接着し増殖することが一般に知られており、このような接着タンパク質としてはフィブロネクチン、ラミニン又はビトロネクチン等が公知である。ここで、ラミニンに着目して行った本発明者らの実験により、細胞接着率又は細胞増殖率の高いゲルほど、その表面に多くのラミニンを吸着することが確認されている。この実験結果に基づいて、本発明者らは、ゲルの表面がマイナスに帯電している場合には、細胞培養の際に使用する血清中に存在していた接着タンパク質がゲルの表面に吸着され、この吸着により、細胞場接着が促進され、さらに細胞培養に好適な環境が形成されるものと推定している。
ここで、細胞培養にはゲル表面の電荷密度が重要であるという点に鑑みれば、本発明を次のような側面から特定することができる。即ち、本発明は、「スルホン酸基を有する単量体が共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを生成する際に、スルホン酸基を有する単量体に対する共重合に係る他の単量体の存在比率を調節することにより、ゲルの表面電位を調節する」という側面から特定することができる。なお、前述の「スルホン酸基を有する単量体に対する共重合に係る他の単量体」とは、例えばDMAAmである。また同様に、本発明を次のような側面から特定することができる。即ち、本発明は、「スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルにおいて、その合成高分子からなる網目構造が最表面層に存在する」という側面から特定することができる。
また、この合成高分子において、構造単位としてのパラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩(モノマー)の存在比率は6mol%以上であることが好ましく、また構造単位としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩(モノマー)の存在比率は30mol%以上であることが好ましい。スルホン酸基は、強電解質であるため、その存在比率が6mol%又は30mol%と比較的低くても、合成高分子の表面特性に支配的な影響を与えて、その表面を細胞の吸着及び伸展に適した電荷密度にすることができる。ここで、合成高分子におけるパラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率の好適範囲の下限が2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率の好適範囲の下限よりも低いのは、後述の実施例の実験結果からの帰結であるが、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩がスルホン酸基の結合した芳香族化合物であることが主な要因であると考えられる。つまり、NaSSのようなスルホン酸基の結合した芳香族化合物では、ベンゼン環とスルホン酸基との相互作用による電子の非局在化が生じるため、アルカリ金属イオンが電離し易くなるとともに接着タンパク質の吸着する足場が増えることから、ベンゼン環を含まない2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩よりも少量で細胞の吸着及び伸展に適した合成高分子の表面状態が形成されると考えられる。従って、この実験結果からの推論に基づけば、この合成高分子におけるスルホン酸基を有する単量体は、芳香族化合物であることが好ましいと言える。
また、NaSS又はNaAMPSを重合又は共重合した合成高分子における架橋度は0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましい。この架橋度が0.1mol%未満の場合は、固体としてのゲル状態を維持するために必要な網目構造が形成され難く、また仮にこのような網目構造が形成されたとしても、その網目構造を有するゲルでは、弾性率が低いため、細胞が接着、変形及び移動する際に必要となる抵抗力を提供できない。一方で10mol%を超える場合には、この合成高分子からなる網目構造を有するゲルが非常に硬くなって変形に対して極めて弱くなるため、ゲルの力学強度が不足することから、その取り扱いが困難になる。
また、NaSS又はNaAMPSを共重合して合成高分子を生成する際に使用する架橋剤としては、その種類を特に限定されるものではないが、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)やエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。図2に、参考として、MBAAの構造式を示す。なお、MBAA等の架橋剤を使用する場合には、ラジカル重合によって合成高分子からなる網目構造が形成されることになるが、この合成高分子からなる網目構造の形成方法としては、その他に、高濃度の高分子溶液に二官能性又は複数の官能基を持つ架橋剤を添加して、この高分子同士を分子間架橋する方法、或いはガンマ線照射によってゲルを合成する方法等が例示される。
また、このゲルは、脱イオン水中における膨潤度についてはどのような値であってもよいが、バッファ溶液(例えば、N-[2-Hydroxyethyl] piperazine -N’-[2-ethanesulfonic acid]:C18S溶液)中における膨潤度については10〜45であることが好ましい。バッファ溶液中における膨潤度が10〜45であるゲルは、適度な弾力と柔軟性を備えており、カッターナイフ等で形状加工を行ったり、ピンセット等で持ち運んだりする際にも壊れない程度の丈夫さを有するため、その取り扱いが容易である。なお、このバッファ溶液は、細胞培養に用いる血清とほぼ同等のイオン強度であることが好ましい。このような緩衝液であれば、細胞培養直前にゲルに血清を加える際にも、そのゲルの膨潤度の変化を最小限に抑えられるからである。
また、このゲルは、架橋構造を有する高分子からなる網目構造に、NaSS又はNaAMPS等のスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造が侵入した相互侵入網目構造、或いはこの合成高分子が線状高分子であり、この線状の合成高分子が侵入したセミ相互侵入網目構造を有することが好ましい。相互侵入網目構造又はセミ相互侵入網目構造を有するゲルであれば、力学強度が極めて高いため、その取り扱いが容易になる(例えば国際公開第03/093337号参照)。また、相互侵入網目構造又はセミ相互侵入網目構造を有するゲルであれば、繰り返し利用が可能となる等その耐久性が向上する他に、振動を加えたり加圧したりする環境下でも細胞培養を行うことができるようになり、さらにその形状加工が容易になる。なお、「相互侵入網目構造」とは、ベースとなる網目構造に他の網目構造が絡み付いた網目構造を指し、また「セミ相互侵入網目構造」とは、ベースとなる網目構造に線状高分子が絡み付いた網目構造を指す。
このように、相互侵入網目構造やセミ相互侵入網目構造を有するゲルは、「ベースとなる網目構造」に「他の網目構造又は線状高分子」が絡み付いたものであるため、その最表面層は前記「他の網目構造又は線状高分子」でほぼ覆われることになる。従って、このようなゲルの最表面層の特性は、前記「他の網目構造又は線状高分子」の特性が支配的となる。そこで、このようなゲルにおいて、前記「他の網目構造又は線状高分子」としてスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子を用いれば、そのゲルの最表面層を細胞の吸着及び伸展に適した状態にすることができる。さらには、前記「他の網目構造又は線状高分子」を生成するためにスルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合させる際に、例えば紫外線照射によってラジカル重合を生じさせる場合には、その紫外線照射を行う範囲や形状を予め設定しておけば、このようなゲルの最表面層において、所望の範囲及び所望の形状で細胞を培養することができる。
一方で、相互侵入網目構造やセミ相互侵入網目構造を有するゲルにおいて、前記「ベースとなる網目構造」は、細胞の吸着及び伸展に関して直接的な影響を及ぼさないため、スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子である必要はなく、例えばDMAAmからなる中性の合成高分子であってもよい。また、前記「ベースとなる網目構造」は、このようなゲルの強度を高める機能を有することが好ましく、この機能を有する網目構造として、例えばバクテリアセルロース(BC)が挙げられる。ここで、BCは、特定の酢酸菌によって生成されるハイドロゲルであり、DMAAm等の通常の合成高分子からなる網目構造と比べると、網目間隔が広く、かつ、網目構造を構成する繊維が太く、かつ、絡み合いや水素結合等の物理架橋を有する、という特徴を有する。また、静置培養で培養したBCは、その内部で極細繊維が層構造を形成するため、力学強度に異方性があり、その層と平行方向に高い引っ張り強度を示す。具体的には、本発明者らがBCとゼラチンとを組み合わせたゲルを創製したところ、このゲルは、最大で圧縮応力について初期弾性率4MPa及び破断応力5MPa、引張り応力について初期弾性率21MPa及び破断応力4MPa、という高い力学物性値を示した。
また、NaSS又はNaAMPSを重合又は共重合させる際には、NaSS又はNaAMPSにおけるスルホン酸基の対イオンをナトリウム以外のものに置換し、合成高分子を生成した後に、イオン交換等によって前記対イオンをナトリウムに再置換するようにしてもよい。
また、本発明に係る細胞培養用基材は、上述のゲルを含有するものであれば、その形態を特に限定されるものではなく、例えばシャーレ内にこのゲルが配置されているだけでもよい。また、上述のゲルを微粒子状又は多孔質状に加工することも可能であり、このように加工したゲルを用いて細胞培養用基材を構成すれば、ゲルの表面を細胞培養の足場として三次元的に利用できるようになるため、細胞培養の効率を格段に向上させることができる。このような三次元的な細胞培養方法は、特に、高密度での培養に適した細胞に用いることが好ましい。
また、本発明に係る細胞培養用基材は、様々な種類の細胞の培養用培地として利用することができる。本発明者らは、本発明に係る細胞培養用基材を用いて、ウシ胎児大動脈血管内皮細胞(Bovin fetal aorta endothelial cell;BFAEC)、ヒトさい帯静脈血管内皮細胞(HUVEC:Human Umbilical Vein Endothelial Cell)及びウサギ滑膜の線維芽細胞を実際に培養した。その結果、本発明に係る細胞培養用基材を用いれば、確実にコンフルエントにまでこれら3種の細胞を伸展させられることが確認された。
また、本発明に係る細胞培養方法では、細胞の増殖に適した液性因子をゲル内部に含有させて細胞培養に利用することが好ましい。このようにして細胞を培養すれば、細胞培養における伸展速度をさらに速めることができる。この場合、適切な液性因子を選ぶことで、内皮細胞に限定されることなく、様々な細胞培養に適した培養方法を提供することができる。
なお、NaSS又はNaAMPSを重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルには、培養細胞の吸着を促進するための特別な加工処理は本質的に不要であるが、本発明はこのような特別な加工処理を排除するものではなく、例えばNaSS又はNaAMPSを重合又は共重合した合成高分子にアルギニン・グリシン・アスパラギン酸の順で結合したRGDペプチドを反応させて、ゲルに対する培養細胞の吸着を促進させてもよい。
また、本発明では、スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルについて説明したが、上述のように、ゲルの表面がマイナスに帯電している場合には細胞培養に好適な環境が形成されると推定されることから、本発明は、「硫酸基」若しくは「リン酸基」を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材という発明に応用することができる。
以下、実施例により、本発明に係る細胞培養用基材及び細胞培養方法について具体的に説明する。
(実施例1)
1mol/LのNaSS(Mw=206.20、東京化成工業社製)溶液をメタノール再結晶により精製した。精製したNaSSを4つ取り分け、それぞれのNaSSに対して架橋剤MBAA(和光純薬社製)が4、6、8及び10mol%となるように混合した。続いて、これらのNaSS及びMBAAの混合物と、開始剤Potassium peroxodisulfate(K)(Mw=270.32、関東化学社製)と、を規定の濃度となるように純水に溶かし十分撹拌した後、窒素(N)バブリングを30分間行った。続いて、これらの溶液をそれぞれガラス板に流し込み、水が入らないようにジップロックに入れてウォーターバス中で12時間熱重合させることにより、架橋度が4、6、8又は10mol%であるNaSSとMBAAとの共重合体である合成高分子からなる網目構造を有するゲルをそれぞれ生成した。そして、これらの生成したゲルを大量の純水中で約一週間膨潤させて、平衡膨潤状態にした。
さらに、これらのゲルをpH7.4のバッファ溶液中(NaCl 117mM+HEPES(N-[2-Hydroxyethyl] piperazine-N’-[2-ethanesulfonic acid])(C18S、Mw=238.3)) 5mM+NaHCO 15mM)に浸漬して溶媒交換した。続いて、必要量のゲルをシャーレに移して、オートクレーブ滅菌(121℃、20分)した。続いて、滅菌済みのシャーレをクリーンベンチに移し、溶媒を吸引し、無血清培地を加えて37℃インキュベータで1日以上ねかせた。また、別途37℃恒温槽で血清培地、PBS(Phosphate Buffered Saline:リン酸緩衝食塩水)及びトリプシン溶液を保温した。
前述のシャーレそれぞれのゲル上に、継代培養したウシ胎児大動脈血管内皮細胞(Bovin fetal aorta endothelial cell;BFAEC)を播いた。続いて、T75フラスコから培地をパスツールピペットで吸引してこれを前記シャーレにそれぞれ添加し、さらにPBS6mlを10ml駒込ピペットで前記シャーレにそれぞれ添加して前記内皮細胞を洗浄した後に、これらのシャーレからPBSを吸引して取り除いた。続いて、トリプシン溶液3mlを10ml駒込ピペットでこれらのシャーレに添加し、数十秒ほど静置した後に、これらのシャーレからトリプシンをパスツールピペットで吸引して取り除いた。続いて、これらのシャーレに血清培地10mlを加え、十分にピペッティングした。
そして、この時点における前記内皮細胞の濃度(X×10コ/ml)を血球計算盤を用いて測定した。また、シャーレ内のゲル上に前記内皮細胞を播いてから6時間後に、それぞれのシャーレにおける内皮細胞の培養の様子を位相差顕微鏡(オリンパス社製 IX71)で観察すると伴に、デジタルカメラ(オリンパス社製 DP12−B)で写真撮影した。この撮影写真に基づいて、培養された内皮細胞が紡錘状又は星状に偽足を出した状態であれば、その内皮細胞を伸展細胞として計上し、一方で丸い状態であれば、吸着細胞として計上することにより、すべての撮影写真について[伸展細胞数]と[吸着細胞数]とを測定した。さらに、前記位相差顕微鏡と前記デジタルカメラとを用いて、凡そ24時間毎に内皮細胞の培養の様子を観察し続けた。
図3に、これらの架橋度が異なるゲル上において、測定時間に伴って前記内皮細胞の伸展細胞数が変化する様子を示す。図3の凡例において、NaSS4は架橋度が4mol%のゲルを、同様にNaSS6は架橋度が6mol%のゲルを、NaSS8は架橋度が8mol%のゲルを、NaSS10は架橋度が10mol%のゲルをそれぞれ示す。また、図5に、NaSS10についての伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す(図5中の■)。
(実施例2)
前記実施例1において、NaSSの代わりにNaAMPS(東京化成工業社製)を用いて、またそれぞれのNaAMPSに対して架橋剤MBAAが1、2、3、4、5及び6mol%となるように混合した以外は同様にして、ゲルを作製し、内皮細胞についての伸展細胞数を測定した。図4に、それぞれのゲルについて測定した結果を示す。また、図5に、NaAMPS6についての伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す(図5中の◆、点線)。
(比較例1)
前記実施例1において、NaSSの代わりにAA(Mw=72.01、d=1.05g/ml、東京化成工業社製)を用いて、またAAに対して架橋剤MBAAが2mol%となるように混合した以外は同様にして、ゲルを作製し、内皮細胞についての伸展細胞数を測定した。図5に、架橋度が2mol%であるAAとMBAAとの共重合体である合成高分子(図5ではPAA2、▲)からなる網目構造を有するゲルについて、そのゲル上における伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す。
(比較例2)
前記実施例1において、NaSSの代わりにDMAAmを用いて、またDMAAmに対して架橋剤MBAAが4mol%となるように混合した以外は同様にして、ゲルを作製し、内皮細胞についての伸展細胞数を測定した。図5に、架橋度が4mol%であるDMAAmとMBAAとの共重合体である合成高分子(図5ではDMPAAm4、▼)からなる網目構造を有するゲルについて、そのゲル上における伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す。
(比較例3)
前記実施例1において、NaSSの代わりにビニルアルコール(和光純薬社製)を用いて、またビニルアルコールに対して架橋剤MBAAが6mol%となるように混合した以外は同様にして、ゲルを作製し、内皮細胞についての伸展細胞数を測定した。図5に、架橋度が6mol%であるビニルアルコールとMBAAとの共重合体である合成高分子(図5ではPVA6、◆、一点鎖線)からなる網目構造を有するゲルについて、そのゲル上における伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す。
(参考例)
図5に、シャーレの表面に斑なくコラーゲンを塗布した場合について、そのシャーレの表面における伸展細胞数が時間経過と伴に変化する様子を示す。
図5において、NaSS10又はNaAMPS6についての伸展細胞数とPAA2についての伸展細胞数とを比較すると、本発明に係るNaSS又はNaAMPSとMBAAとの共重合体である合成高分子からなる網目構造を有するゲルであれば、従来のAAとMBAAとの共重合体である合成高分子PAA2からなる網目構造を有するゲルよりも、内皮細胞の伸展速度が2倍程度速く、かつ、単位面積あたりに吸着する内皮細胞の数が2倍程度となることが判る。
(実施例3)
この実施例3では、NaAMPSとDMAAmとを共重合させたゲルを、NaAMPSとDMAAmとの合計に対するNaAMPSの存在比率FNaAMPSが、0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1.0となるように調節して作製する。なお、本実施例では、ゲルの架橋度即ちNaAMPSとDMAAmの合計に対する架橋剤MBAAが全て4mol%となるように調節し、その他の特に明示しない点については前記実施例1と同様にしてゲルを作製し、その作製したゲルを用いて、内皮細胞についての伸展細胞数等を測定した。
図6Aに、本実施例で作製したFNaAMPSがそれぞれ異なるゲルについて、内皮細胞を6時間培養した時点における伸展率(「伸展した細胞数/播いた細胞数」の%:図6A中の●)と、120時間培養した時点における伸展細胞数(単位はX×10コ/cm:図6A中の○)と、の測定結果を示す。また、図6Bに、このFNaAMPSがそれぞれ異なるゲルについて、FNaAMPSをゼータ電位に換算してプロットし直した結果を示す。
ここで、図6Aを観察すると、FNaAMPSが0〜0.3の範囲では、6時間培養した時点において伸展率30〜40%で内皮細胞が伸展しているが、120時間培養した時点においては、その伸展していた内皮細胞が殆ど死滅していることが判る。一方で、FNaAMPSが0.3〜1.0の範囲では、120時間培養しても、内皮細胞は死滅しないことが判る。従って、図6Aに示す測定結果に基づけば、FNaAMPS=0.3付近に内皮細胞をコンフルエントにまで培養できるか否かの臨界値があると推測されることから、NaAMPSとDMAAmとを共重合させたゲルを用いてウシ胎児大動脈血管内皮細胞を培養する場合には、このゲルにおけるNaAMPSの存在比率は30mol%以上であることが好ましいと言える。なお、FNaAMPS=0.3は、図6Bから明らかなように、ゼータ電位−16mVに相当する。
(実施例4)
この実施例4では、NaSSとDMAAmとを共重合させたゲルを、NaSSとDMAAmとの合計に対するNaSSの存在比率FNaSSが、0、0.05、0.06、0.075、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0となるように調節して作製する。なお、本実施例では、ゲルの架橋度即ちNaSSとDMAAmの合計に対する架橋剤MBAAが全て4mol%となるように調節し、その他の特に明示しない点については前記実施例1と同様にしてゲルを作製し、その作製したゲルを用いて、内皮細胞についての伸展細胞数等を測定した。
図7に、本実施例で作製したFNaSSがそれぞれ異なるゲルについて、内皮細胞を6時間培養した時点における伸展率(「伸展した細胞数/播いた細胞数」の%:●)と、120時間培養した時点における伸展細胞数(単位はX×10コ/cm:○)と、の測定結果を示す。
ここで、図7を観察すると、FNaSSが0.1〜1.0の範囲では、120時間培養した時点において、内皮細胞はほぼコンフルエントにまで伸展していることが判る。一方で、FNaSS=0では、120時間培養しても、内皮細胞は全く伸展しないことが判る。従って、図7に示す測定結果に基づけば、FNaSSが0〜0.1の範囲に、内皮細胞をコンフルエントにまで培養できるか否かの臨界値があると推測される。そこで、以下の実施例5では、FNaSSが0〜0.1の範囲において、内皮細胞の培養に具体的にどのような差異が生じるか検証する。
(実施例5)
この実施例5では、前記実施例4で作製したNaSSとDMAAmとの合計に対するNaSSの存在比率FNaSSが、0、0.05、0.06、0.075、0.1のゲルを用いて、内皮細胞を培養し、培養開始から6、24、48、72、96、120時間後にそれぞれ伸展細胞数を測定した。
図8に、本実施例におけるFNaSSがそれぞれ異なるゲルについて、FNaSSが0(▲)、0.05(●)、0.06(○)、0.075(■)、0.1(+)の場合の伸展細胞数(X×10コ/cm)の測定結果を示す。
ここで、図8を観察すると、FNaSSが0〜0.05の範囲では、120時間培養しても、内皮細胞が伸展も死滅もしないことが判る。一方で、FNaSSが0.06〜0.075の範囲では、FNaSS=0.1の場合に比べて内皮細胞の伸展速度は遅いものの、確実にコンフルエントに向けて伸展し続けていることが判る。従って、図8に示す測定結果に基づけば、FNaSS=0.06付近に内皮細胞をコンフルエントにまで培養できるか否かの臨界値があると推測されることから、NaSSとDMAAmとを共重合させたゲルを用いてウシ胎児大動脈血管内皮細胞を培養する場合には、このゲルにおけるNaSSの存在比率は6mol%以上であることが好ましいと言える。
(実施例6)
この実施例6では、相互侵入網目構造又はセミ相互侵入網目構造を有する2種類のゲルを作製し、作製したゲルを用いて内皮細胞を培養し、6時間培養した時点において、それらのゲルの表面を観察して、内皮細胞の吸着率(「吸着した細胞数/播いた細胞数」の%)と伸展率(「伸展した細胞数/播いた細胞数」の%)とを測定した。この2種類のゲルは、以下のようにして作製した。なお、本実施例において、特に明示しない点については、前記実施例1と同様にしてゲルを作製し、内皮細胞を培養し、内皮細胞の吸着率及び伸展率を測定した。
<ゲル1の作製>
前記実施例2において、架橋度が4mol%となるようにNaAMPSと架橋剤MBAAとの混合溶液を作製し、この混合溶液を加熱することにより、NaAMPSとMBAAとからなる網目構造を有する第一段階のゲルを作製した。この第一段階のゲルを3mol/LのDMAAmのモノマー溶液中に浸漬して平衡膨潤状態にした後、このDMAAmを含浸した第一段階のゲルを加熱してDMAAmを熱重合させることにより、第二段階のゲルを作製した。さらに、この第二段階のゲルを前記第一段階のゲルを作製する際に使用した混合溶液中に浸漬し、平衡膨潤状態にした後、この混合溶液を含浸した第二段階のゲルを加熱してNaAMPSと架橋剤MBAAとを熱重合させることにより、第三段階のゲル即ちゲル1を作製した。
<ゲル2の作製>
本実施例におけるゲル1の作製において、第二段階のゲルを、架橋剤MBAAが含まれない1mol/LのNaAMPSのモノマー溶液中に浸漬し、平衡膨潤状態にした後、このNaAMPSのモノマー溶液を含浸した第二段階のゲルを加熱してNaAMPSを熱重合させることにより、第三段階のゲル即ちゲル2を作製した。従って、本実施例におけるゲル1とゲル2との相違点は、ゲル1ではゲルの最表面層を形成するNaAMPSの網目構造(図9の下段に「PNaAMPS」と表記する)が架橋度4mol%となるようにMBAAで架橋されているのに対して、ゲル2ではゲルの最表面層を形成するNaAMPSがMBAAで架橋されていない点である。
図9に、本実施例で作製したゲル1とゲル2の表面に内皮細胞を播いて6時間培養した時点における内皮細胞の吸着率と伸展率との測定結果を、ゲル1とゲル2とについてそれぞれ示す。
図9から明らかなように、ゲル1では内皮細胞が26%の伸展率を示すまで伸展しているのに対して、ゲル2では内皮細胞が全く伸展していない。このことから、内皮細胞を伸展させるには、ゲルの最表面層を構成する網目構造の特性が重要であり、その網目構造には、ある程度の架橋度が必要であることが判る。
本発明に係る細胞培養用基材は、例えば軟骨細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、内皮細胞又は上皮細胞等の培地等として有用である。また、本発明に係る細胞培養用基材は、粒子状に加工され又は多孔質化されることにより、ゲルの表面を三次元的に利用できるようになるため、細胞を高密度で培養できるようになることから、高密度での培養時にタンパク質や多糖等の有用な物質を特異的に産生する細胞の培養に有用である。また、本発明に係る細胞培養用基材は、培養細胞を表面に付着させた状態で人工血管等の人工臓器として利用することが可能であるため、医療機器用の複合材料としても有用である。
パラスチレンスルホン酸ナトリウム塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩の構造式を示す図 N,N’−メチレンビスアクリルアミドの構造式を示す図 パラスチレンスルホン酸ナトリウム塩を共重合させて生成したゲルについて時間経過に伴って内皮細胞の伸展細胞数が変化する様子をその架橋度毎に示す図 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩を共重合させて生成したゲルについて時間経過に伴って内皮細胞の伸展細胞数が変化する様子をその架橋度毎に示す図 各実施例及び各比較例におけるゲル上において時間経過に伴って内皮細胞の伸展細胞数が変化する様子を示す図 実施例3におけるFNaAMPSが異なる各ゲルについて、6時間培養時と120時間培養時とにおける内皮細胞の伸展状況を示す図 実施例4におけるFNaSSが異なる各ゲルについて、6時間培養時と120時間培養時とにおける内皮細胞の伸展状況を示す図 実施例5におけるFNaSSが異なる各ゲルについて、培養時間経過時毎の内皮細胞の伸展状況を示す図 実施例6におけるゲル1とゲル2について、6時間培養時における内皮細胞の吸着率と伸展率とを示す図

Claims (11)

  1. スルホン酸基を有する単量体を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材。
  2. 前記スルホン酸基を有する単量体が、芳香族化合物である請求項1記載の細胞培養用基材。
  3. 前記スルホン酸基を有する単量体が、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩である請求項1記載の細胞培養用基材。
  4. 前記合成高分子において、構造単位としてのパラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率が6mol%以上である請求項1記載の細胞培養用基材。
  5. 前記合成高分子において、構造単位としての2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩の存在比率が30mol%以上である請求項1記載の細胞培養用基材。
  6. 前記合成高分子は、架橋度が0.1mol%以上10mol%以下である請求項3記載の細胞培養用基材。
  7. 前記合成高分子からなる網目構造が、前記ゲルの最表面層に存在する請求項1記載の細胞培養用基材。
  8. 架橋構造を有する高分子からなる網目構造に、パラスチレンスルホン酸アルカリ金属塩又は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸アルカリ金属塩を重合又は共重合した合成高分子からなる網目構造が侵入した相互侵入網目構造、或いは前記合成高分子が線状高分子であり、線状の前記合成高分子が侵入したセミ相互侵入網目構造を有するゲルを含有する細胞培養用基材。
  9. 前記架橋構造を有する高分子からなる網目構造が、バクテリアセルロースである請求項8記載の細胞培養用基材。
  10. スルホン酸基を有する単量体が共重合した合成高分子からなる網目構造を有するゲルを生成する際に、前記スルホン酸基を有する単量体に対する共重合に係る他の単量体の存在比率を調節することにより、前記ゲルの表面電位を調節する細胞培養用基材の製造方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれかに記載の細胞培養用基材を用いる細胞培養方法。
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