確かに、上記構成から成る半導体装置150は、フォーミング工程でフォーミング金型171の押圧により、アウターリード部156の封止樹脂体155近傍の根元部および外端部が曲げ加工される。
しかしながら、フォーミング工程では、図21(b)に示すように、フォーミング金型171の押圧によりアウターリード部156の曲げ加工部分のフォーミング部159が曲げられる。その際、封止樹脂体155近傍のアウターリード部156の曲げ方向と逆のフレーム面側の曲げ加工部分であるb側フォーミング部159bには、その長手方向に引張応力が作用する。また、その曲げ方向のフレーム面側の曲げ加工部分であるa側フォーミング部159aには、その長手方向に圧縮応力が作用する。また、フォーミング金型171による押圧が大きすぎると、これらの応力も大きくなりアウターリード部156が所定の形状に加工できなかったり、アウターリード部156の根元部の封止樹脂体155に及ぶ力も大きくなり封止樹脂体部分158にクラック161が発生したりする問題があった。
また、従来では、上記のような問題が発生した場合、フォーミング部159の応力やアウターリード部156の根元部近傍の封止樹脂体155に及ぶ力を軽減するために、フォーミング金型171の下降速度を遅くする、フォーミング金型171の形状を変更する、リードフレーム160の材質を柔らかいものにする、あるいはリードフレーム160の厚さを薄くする等の対策が行われてきた。
しかし、フォーミング金型171の下降速度を遅くするという対策では、フォーミング金型171の下降速度を遅くした分だけフォーミング工程に時間が掛かってしまい、効率が悪くなってしまう。また、フォーミング金型171の形状を変更するという対策では、適正なフォーミング金型171を選択する際に、フォーミング金型171を何種類も設計・製作することになり、経済性が悪く、試作に多くの時間を費やしてしまい、結果的にコストが高く成ってしまう。また、リードフレーム160の材質を柔らかい材質に変更するという対策では、リードフレーム160自身の強度が低下してしまうため、半導体装置150の信頼性をそこねてしまう可能性がある。また、リードフレーム160の厚さを薄くするという対策では、半導体装置150の試作段階で、多くの他工程においてもリードフレーム160の厚さの変更に対応した設定や条件の適性化を行わなければならす、その適性化に膨大な時間と労力を要してしまう。また、これらの対策を実施したとしても、アウターリード部156が所定の形状にならなかったり、封止樹脂体155にクラック161が入ったりする等の問題が必ず全て解決するわけではなかった。
なお、半導体装置をプリント基板にはんだ付け実装した後、プリント基板の反りによるリード端子のアウターリード部とプリント基板とのはんだ付け部分のはんだクラック対策やアウターリード部のプラスチック樹脂付け根部分のクラック対策を目的として、アウターリード部に大きく湾曲した部分を設け、これらの部分に応力がかからにようにした半導体装置が開示・提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、半導体装置のプリント基板への自動機による実装時における機械的衝撃をやわらげ、アウターリード部の根元部の封止樹脂体にクラックが生じるのを防ぐことを目的として、アウターリード部に凸出部が形成された半導体装置が開示・提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
本発明は、上記の問題点に鑑み、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時において封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に加工することが可能なリードフレームおよび半導体装置ならびに半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るリードフレームは、半導体素子を搭載するための載置片と、該載置片に向けて配置されたリード端子と、を有して成り、前記リード端子は、少なくとも一方の面にその長手方向と交差する方向に溝部を有する構成とされている。このような構成とすることにより、本発明のリードフレームを用いて製作された半導体装置におけるリード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、アウターリード部が塑性変形しやすくなり、アウターリード部の根元部近傍の封止体部分に及ぶ力を軽減することが可能となるため、封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に加工することが可能となる。
なお、上記構成から成るリードフレームのリード端子は、前記溝部を複数有する構成とするとよい。このような構成とすることにより、本発明のリードフレームを用いて製作された半導体装置におけるリード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、溝部が1つの場合よりもアウターリード部が塑性変形しやすくなるため、封止体にクラックが発生することなく、更にアウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。
また、上記構成から成るリードフレームにおける前記溝部の断面形状は、V字形、U字形またはコ字形であるとよい。このような構成とすることにより、本発明のリードフレームを用いて製作された半導体装置におけるリード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、溝部の形状がV字形のであれば、V字形以外の溝部より一層アウターリード部が塑性変形しやすくなるため、封止体にクラックの発生が発生することなく、更にアウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。また、溝部の形状がU字形あるいはコ字形であれば、アウターリード部の曲げ加工時において、溝部が無い場合よりもアウターリード部は塑性変形しやすく、かつV字形の溝部より曲げ加工後におけるアウターリード部の強度を増すことことが可能となる。
また、上記構成から成るリードフレームの前記溝部が、前記リード端子の長手方向と交差する方向につき端から端まで形成されているとよい。このような構成とすることにより、本発明のリードフレームを用いて製作された半導体装置におけるリード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、前記溝部が一部に形成されている場合よりも、アウターリード部が塑性変形しやすくなり、より一層封止体のクラックの発生を抑制することが可能となるとともに、アウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。
また、上記構成から成るリードフレームの前記溝部が、前記リード端子の長手方向と交差する方向につき少なくとも一方の端から所定の長さ離れた位置まで形成されるとよい。このような構成とすることにより、本発明のリードフレームを用いて製作された半導体装置におけるリード端子のアウターリード部の曲げ加工時には、封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となるとともに、同時に前記リード端子の長手方向と交差する方向への強度を向上させることが可能となる。
また、本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子を封止する封止体と、前記半導体素子の電極と電気的に一端が接続されたリード端子と、を有して成り、前記リード端子が前記封止体から外部に引き出されたアウターリード部は、少なくとも一方の面にその長手方向と交差する方向に溝部を有する構成とされている。このような構成とすることにより、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、アウターリード部が塑性変形しやすくなり、アウターリード部の根元部近傍の封止体部分に及ぶ力を軽減することが可能となるため、封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に加工することが可能となる。
また、上記構成から成る半導体装置の前記アウターリード部は、前記溝部を複数有して成る構成とするとよい。このような構成とすることにより、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、溝部が1つの場合よりもアウターリード部が塑性変形しやすくなるため、封止体にクラックが発生することなく、更にアウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。
また、上記構成から成る半導体装置の前記溝部の断面形状は、V字形、U字形またはコ字形であるとよい。このような構成とすることにより、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、V字形の溝部であれば、更にアウターリード部が塑性変形しやすくなるため、封止体のクラックの発生を防ぐことが可能となるとともに、より一層アウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。また、溝部の形状がU字形あるいはコ字形であれば、アウターリード部の曲げ加工時において、溝部が無い場合よりもアウターリード部は塑性変形しやすく、かつV字形の溝部より曲げ加工後におけるアウターリード部の強度を増すことことが可能となるため、封止体にクラックが発生することなく、更にアウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。
また、上記構成から成る半導体装置の前記溝部が、前記リード端子の長手方向と交差する方向につき端から端まで形成されるとよい。このような構成とすることにより、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時において、前記溝部が一部に形成されている場合よりも、更にアウターリード部が塑性変形しやすくなるため、より一層封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となる。
また、上記構成から成る半導体装置の前記溝部が、前記リード端子の長手方向と交差する方向につき少なくとも一方の端から所定の長さ離れた位置まで形成されるとよい。このような構成とすることにより、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時には、封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に容易に加工することが可能となるとともに、同時に前記リード端子の長手方向と交差する方向への曲がりに対する強度を向上させることが可能となる。
また、上記構成から成る半導体装置が電子機器に搭載されるとよい。このような構成とすることにより、本発明の半導体装置は封止体のクラックの発生なく、リード端子のアウターリード部が所定の形状に加工されているため、本発明の半導体装置が搭載された電子機器は、半導体装置が原因となる故障が低減し、安定稼動をすることが可能となる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、リードフレームを作製するリードフレーム製造工程と、該リードフレームの載置片に半導体素子を載置する工程であるダイボンド工程と、半導体素子の電極とリード端子とに金属線を接続するワイヤボンド工程と、前記載置片、前記半導体素子、前記金属線および前記リード端子を封止する封止工程と、リードフレームを所定の大きさに分離するダイバーカット工程と、を有して成り、前記リードフレーム工程には、リードフレームのリード端子に溝部を形成する工程が含まれる構成とするとよい。このような構成とすることにより、リードフレーム製造工程において、リード端子に溝部が形成されたリードフレームが製造されるため、従来の半導体装置の製造方法から工程数の増加を伴うことなく、新たにリードフレームの設計およびリードフレーム金型製作費が発生するのみで、本発明の半導体装置を製造することができる。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、リードフレームを作製するリードフレーム製造工程と、リードフレームの載置片に半導体素子を載置する工程であるダイボンド工程と、半導体素子の電極とリード端子とに金属線を接続するワイヤボンド工程と、前記載置片、前記半導体素子、前記金属線および前記リード端子を封止する封止工程と、リードフレームを所定の大きさに分離するダイバーカット工程と、を有して成り、前記封止工程後にリードフレームのリード端子に溝部を形成する工程を設ける構成とするとよい。このような構成とすることにより、リードフレーム製造工程で用いられるリードフレーム金型を変更する必要がなく、本発明の半導体装置を製造することができる。
本発明に係るリードフレームおよび半導体装置ならびに半導体装置の製造方法であれば、リード端子のアウターリード部の曲げ加工時に、封止体にクラックが発生することなく、アウターリード部を所定の形状に加工することが可能となる。
本発明のリードフレームおよび半導体装置ならびにその半導体装置の製造方法の実施形態の一例について図を参照して以下に説明する。
図1は、本発明に係るリードフレームの構成を示す上面図である。リードフレーム10は、半導体素子1を搭載するための載置片2と、載置片2を支持し、外部接続用端子の溝部11を有したリード端子6と、外部接続用端子の溝部11を有したリード端子3、4、5、7と、これらを支持する枠体8から構成されている。
また、その溝部11は、後に半導体素子1の電極とリード端子3、4、5、6、7が、導電性ワイヤのボンディングワイヤ14により電気的に接続され、リード端子3、4、5、6、7の載置片2側が封止樹脂体9により樹脂封止された後、封止樹脂体9から引き出されているリード端子3、4、5、6、7のアウターリード部が曲げ加工される際の、その曲げ加工部分となるフォーミング部に形成されている。なお、溝部11は、後述で詳細に説明するが、半導体素子1等が封止樹脂体9により封止された後に、リードフレームに形成されていてもよい。また、本発明のリードフレーム10の特徴である溝部11の形態や効果について後述で詳細な説明を行う。
また、載置片2と、リード端子3、4、5、6、7は、本実施形態の半導体装置が形成される際の最小の構成単位であり、この最小の構成単位がリードフレーム10に連なって形成されている。
次に、図2(a)は、本発明に係る半導体装置の上面図である。また、図2(b)は、本発明に係る半導体装置の側面図である。本発明の半導体装置20は、以下のような構成である。図2(a)および図2(b)に示すように、リード端子6に支持並びに電気的に接続された載置片2の所定の位置に半導体素子1が固着され、半導体素子1の各電極とリード端子3、4、5、7および載置片2がそれぞれ導電性のボンディングワイヤ14にて結線が施されて回路が形成されている。また、ボンディングワイヤ14を含めて半導体素子1やリード端子3、4、5、6、7の載置片2側等が、トランスファーモールド法等により封止樹脂体9にて樹脂封止されている。また、封止樹脂体9から引き出されている各リード端子3、4、5、6、7のアウターリード部12には、封止樹脂体9側の曲げ加工部分となるフォーミング部131の曲げ方向のフレーム面のa側フォーミング部131aに、V字形の溝部11がリード端子3、4、5、6、7の長手方向と交差する方向に端から端まで形成されている。
ここで、フォーミング部について以下に説明する。図3は、フォーミング部を説明するための図である。説明を簡単にするため溝部11は記述していないが、図3に示すように、フォーミング工程で、半導体装置20が成形装置30の台31上に固定される。そして、半導体装置20の封止樹脂体9から引き出されている各リード端子のアウターリード部12が、成形装置30のフォーミング金型32の押圧により曲げ加工された際に、アウターリード部12の直線部121ではなく、アウターリード部12の曲げ加工部分(斜線部)を、フォーミング部13と呼ぶ。また、封止樹脂体9側のフォーミング部131において、アウターリード部12の曲げ方向のフォーミング部131のフレーム面をa側フォーミング部131aと呼び、その曲げ方向と逆のフォーミング部131のフレーム面をb側フォーミング部131bと呼ぶ。また、アウターリード部12の外端部側のフォーミング部132において、アウターリード部12の曲げ方向のフレーム面のフォーミング部132をa側フォーミング部132aと呼び、アウターリード部12の曲げ方向と逆のフレーム面のフォーミング部132をb側フォーミング部132bと呼ぶこととする。
なお、本発明の半導体装置20は、リード端子3、4、5、6、7のアウターリード部12におけるフォーミング部13に溝部11が形成されていることに特徴を有している。そこで、以下では、本実施形態の半導体装置20おけるアウターリード部12のフォーミング部13に形成された溝部11の効果並びに形態について詳細な説明を行う。
次に、上記で説明した本発明の半導体装置20は、最終的にプリント基板にはんだ付け実装されて電子機器に搭載されるため、後述のようにフォーミング工程で、フォーミング金型32によってアウターリード部12の曲げ加工が行われる。フォーミング工程での半導体装置20のアウターリード部の曲げ加工について以下に説明する。図4(a)から(c)は、図2に示す半導体装置20のアウターリード部12の曲げ加工について説明するための図である。フォーミング工程で、図4(a)に示すように、成形装置30の台31上にa側フォーミング部131aにV字形の溝部11がその長手方向と交差する方向に端から端まで形成された半導体装置20が所定の位置に固定される。そして、図4(b)に示すように、フォーミング金型32が、アウターリード部12の所定の位置に当接して、所定の速度で降ろされる。そして、フォーミング金型32の押圧によりアウターリード部12は徐々に曲げられ、それに伴って溝部11の幅は徐々に狭くなりながら、アウターリード部12の曲げ加工が行われる。そして、図4(c)に示すように、各フォーミング部131、132が所定の角度に曲げられ、アウターリード部12が所定の形状に曲げ加工される。その際、アウターリード部12のa側フォーミング部131aに溝部11が形成されているために、フォーミング部131が塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力を軽減させることができる。よって、図4(c)に示すように、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。
なお、溝部11の形態は、上記のようにa側フォーミング部131aに形成された溝部11と同様な効果を得ることが可能であればよく、その溝部11の形態の例を以下に説明する。
次に、2つのV字形の溝部11がa側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向に端から端まで形成された半導体装置20について以下に説明する。図5(a)から(c)は、2つのV字形の溝部がa側フォーミング部131aに形成された半導体装置20のアウターリード部12の曲げ加工を説明するための図である。図5(a)に示すように、アウターリード部12のa側フォーミング部131aに、その長手方向と交差する方向に端から端まで2つのV字形の溝部11が形成されている。
また、溝部11は、図2や図5(b)に示すように、曲げ加工が行われた際のアウターリード部12の直線部121とa側フォーミング部131aの境界点と成る2つの位置に形成されるのが好ましい。なお、a側フォーミング部131aの中心位置、およびアウターリード部12の直線部121とa側フォーミング部131aの境界点と成る位置の一方に形成されてもよい。
前述と同様に、フォーミング工程で、半導体装置20は、図5(a)に示すように、成形装置30の台31上に所定の位置に固定される。そして、図5(b)に示すように、フォーミング金型32が、アウターリード部12の所定の位置に当接して所定の速度で降ろされる。その押圧によりアウターリード部12は、徐々に曲げられ、それに伴って溝部11の幅は徐々に狭くなりながら、アウターリード部12の曲げ加工が行われる。そして、図5(c)に示すように、フォーミング部131、132が所定の角度に曲げられ、アウターリード部12が所定の形状に曲げ加工される。その際、2つの溝部11が形成されているため、前述の溝部11が1つの場合よりも、更にフォーミング部131が塑性変形しやすなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減させることができる。よって、図5(c)に示すように、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。なお、本発明と同様な効果を得られる範囲であれば溝部11は2つ以上設けられてもよい。
また、アウターリード部12にフォーミング部13が複数箇所ある場合においても、上記と同様に、それぞれのフォーミング部13の曲げ方向のフレーム面に長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝部を少なくとも1つ形成するとよい。これにより、各フォーミング部13は、塑性変形しやすくなり、さらにアウターリード部12を所定の形状に加工することがより容易になり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減することができる。
次に、1つのV字形の溝部がb側フォーミング部131bに形成された半導体装置20について以下に説明する。図6(a)から(c)は、b側フォーミング部131bにV字形溝部11が形成された半導体装置20のアウターリード部12の曲げ加工を説明するための図である。図6(a)に示すように、アウターリード部12の曲げ加工を行う際の曲げ方向と逆のフレーム面のb側フォーミング部131bに、その長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝部11が1つ形成されている。
前述と同様に、フォーミング工程で、半導体装置20は、図6(a)に示すように、成形装置30の台31上に所定の位置に固定される。続いて、フォーミング金型32の押圧によりアウターリード部12は、図6(b)に示すように、徐々に曲げられ、それに伴って溝部11の幅は徐々に広がりながら、アウターリード部12の曲げ加工が行われる。そして、図6(c)に示すように、各フォーミング部131、132が所定の角度に曲げられ、アウターリード部12が所定の形状に曲げ加工される。その際、溝部11が形成されているために、フォーミング部131が塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減することができる。よって、図6(c)に示すように、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。
次に、2つのV字形の溝部がb側フォーミング部131bに形成された半導体装置20の一例について以下に説明する。図7(a)から(c)は、b側フォーミング部131bに2つのV字形溝部が形成された半導体装置20におけるアウターリード部12の曲げ加工を説明するための図である。図7(a)に示すように、アウターリード部12の曲げ加工を行う際の曲げ方向と逆のフレーム面のb側フォーミング部131bに、その長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝部が2つ形成されている。
また、溝部11は、詳細には、図2や図7(b)に示すように、曲げ加工が行われた際のアウターリード部12の直線部121とb側フォーミング部131bの境界点と成る2つの位置にそれぞれ形成されるのが好ましい。なお、b側フォーミング部131bの中心位置、およびアウターリード部12の直線部121とb側フォーミング部131bの境界点と成る位置の一方に形成されてもよい。
前述と同様に、フォーミング工程で、半導体装置20は、図7(a)に示すように、成形装置30の台31上に所定の位置に固定される。続いて、図7(b)に示すように、フォーミング金型32の押圧によりアウターリード部12は、徐々に曲げられ、それに伴って溝部11の幅は徐々に広がりながら、アウターリード部12の曲げ加工が行われる。そして、図7(c)に示すように、各フォーミング部131、132が所定の角度に曲げられ、アウターリード部12が所定の形状に曲げ加工される。その際、2つの溝部11が形成されているため、前述のように溝部が1つの場合よりも、更にフォーミング部131が塑性変形しやすなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減することができる。よって、図7(c)に示すように、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。なお、本発明と同様な効果を得られる範囲であれば溝部は2つ以上設けられてもよい。
また、アウターリード部12におけるフォーミング部13が複数箇所ある場合においても、上記と同様に、各フォーミング部13の曲げ方向の逆のフレーム面に長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝を少なくとも1つ形成するとよい。これにより、各フォーミング部13は、塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減することができる。
次に、V字形の溝部11が、a側フォーミング部131aおよびb側フォーミング部131bに形成された半導体装置20の一例について以下に説明する。図8(a)から(c)は、フォーミング部131のフレーム面の両面にV字形の溝部11が形成された半導体装置20のアウターリード部12の曲げ加工を説明するための図である。図8(a)に示すように、アウターリード部12のフォーミング部131におけるフレーム面の両面のa側フォーミング部131aおよびb側フォーミング部131bにその長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝部11が形成されている。
前述と同様に、フォーミング工程で、半導体装置20は、図8(a)に示すように、成形装置30の台31上に所定の位置に固定される。続いて、図8(b)に示すように、フォーミング金型32の押圧によりアウターリード部12は、徐々に曲げられ、それに伴ってb側フォーミング部131bの溝部11の幅は徐々に広がり、もう一方のa側フォーミング部131aの溝部11の幅は徐々に狭くなりながら、アウターリード部12の曲げ加工が行われる。そして、図8(c)に示すように、各フォーミング部131、132が所定の角度に曲げられ、アウターリード部12が所定の形状に曲げ加工される。その際、溝部11が両面に形成されているために、フォーミング部131の片側のみに溝部11が形成されている場合よりも、より一層フォーミング部131が塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力もより軽減することができる。なお、さらにアウターリード部12を塑性変形しやすくするために、a側フォーミング部131aおよびb側フォーミング部131bに複数の溝部11が形成された構成でもよい。
よって、上記で説明した形態のV字形の溝部11であれば、溝部11がa側フォーミング部131aに形成された場合には、溝部11の幅が狭くなり、また、溝部11がb側フォーミング部131bに形成された場合には、溝部11の幅が広くなるため、フォーミング部131は、溝部11が無い場合に比べて、塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90に及ぶ力も軽減することができる。よって、アウターリード部12の曲げ加工の際に、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となるとともに、封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することができる。また、溝部11の形状は、V字形に限らず、フォーミング部13が塑性変形しやすくなる形状であればよい。
例えば、溝部11の形状は、U字形やコ字形でもよい。図9は、a側フォーミング部131aにU字形の溝部11が形成された半導体装置20の側面図であり、図10は、a側フォーミング部131aにコ字形の溝部11が形成された半導体装置20の側面図である。図9および図10に示すように、半導体装置20において、それぞれU字形およびコ字形の溝部11が、そのa側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向に端から端まで形成されている。U字形あるいはコ字形の溝部11が、フォーミング部13に形成されていれば、フォーミング工程において、V字形の溝部11と同様に、フォーミング部13に溝部11が形成されていない場合よりも、フォーミング部13が塑性変形しやすくなり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分に及ぶ力もより軽減することができる。さらに、V字形の溝部11が形成された場合よりもフォーミング部13は塑性変形しにくいが、アウターリード部12の曲げ加工後のフォーミング部13の強度を向上させることが可能となる。よって、V字形の溝部11と同様に、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となり、アウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。
次に、V字形の溝部11が、アウターリード部12の長手方向と交差する方向に両端から所定の長さ離れた位置まで形成された半導体装置20について以下に説明する。図11(a)は、V字形の溝部11がa側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向にその両端から所定の長さ離れた位置まで形成された半導体装置20の上面図である。図11(b)は、図11(a)に示した半導体装置の側面図である。例えば、図11(a)と図11(b)に示すように、V字形の溝部11が、半導体装置20における各リード端子3、4、5、6、7のアウターリード部12のa側フォーミング131aにその長手方向と交差する方向にアウターリード部13の両端から所定の長さ離れた位置まで形成されている。
そして、V字形の溝部11が、図11(a)と図11(b)に示すように、a側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向にその両端から所定の長さ離れた位置まで形成された場合には、アウターリード部12の曲げ加工において、アウターリード部13の長手方向と交差する方向へのフォーミング部131の強度は、a側フォーミング131aにV字形の溝部11がアウターリード部13の長手方向と交差する方向に端から端まで形成されている場合よりも、溝部11が一部形成されていない部分があるために、強くなる。よって、a側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向にその両端から所定の長さ離れた位置まで形成された場合には、溝部11が形成されていない場合より、フォーミング部131が塑性変形しやすく、またアウターリード部13の長手方向と交差する方向へのフォーミング部131の強度を増すことが可能となるとともに、封止樹脂体9のクラックの発生なく、アウターリード部12を所定の形状に加工することができる。また、このように、アウターリード部12の各フォーミング部13のフレーム面にその長手方向と交差する方向にその両端から所定の長さ離れた位置まで所定の形状の溝部が形成されてもよい。
なお、本発明のリードフレーム10および半導体装置20に形成されている溝部11は、全リード端子に形成されている必要はなく、本発明を逸脱しない範囲で所定のリード端子のアウターリード部におけるフォーミング部に形成されればよい。
上記で説明したように、本発明のリードフレーム10およびそれを用いた半導体装置20は、各リード端子のうち少なくとも1つのリード端子のアウターリード部12におけるフォーミング部13の少なくとも1つの面に、所定の溝部11が形成された構成であるため、フォーミング工程でのアウターリード部12の曲げ加工の際に、アウターリード部12を所定の形状に加工することやアウターリード部12の根元部近傍の封止樹脂体部分90におけるクラックの発生を防止することなどが可能となる。さらに、アウターリード部12の曲げ加工において、溝部11がアウターリード部12の長手方向と交差する方向に両端から所定の長さ離れた位置まで形成されている場合には、溝部11が長手方向と交差する方向に端から端まで形成されている場合より、アウターリード部12の長手方向と交差する方向への強度が増すとともに、封止樹脂体9のクラックの発生無く、アウターリード部12を所定の形状に加工することが可能となる。
次に、上記で説明した本発明の半導体装置の製造方法の第1実施形態について図を参照しながら以下に説明する。
まず、図12は、本発明の半導体装置20の製造方法における第1実施形態の工程フローを示すフロー図である。図13は、半導体装置20の製造方法の第1実施形態を説明するためのリードフレーム10の上面図である。図14は、図13のリードフレーム10のXX'位置に相当するリードフレーム金型50の断面を示す断面図である。図14に示すように、リードフレーム金型50は、リードフレーム金型上型51と、溝部11形成用のV字形突起構造53を有したリードフレーム金型下型52から成る。例えば、リードフレーム金型下型52には、前述したアウターリード部12のa側フォーミング部131aに相当する位置に各リード端子3、4、5、6、7の長手方向と交差する方向に端から端までV字形の溝部形成用のV字形突起構造53が形成されている。図12から図14に示すように、リードフレーム製造工程41にて、リードフレーム金型上型51とリードフレーム金型下型52の間にリードフレーム材料である銅等から成る基板が配置され、リードフレーム金型50によりプレスされて打ち抜かれる。そして、リードフレーム10のバリ取りやメッキ処理が行われる。このようにして、図1および図13に示すように、半導体装置20が形成される際の最小の構成単位であるリード端子3、4、5、6、7および載置片2が、枠体8によって連なった形で本発明のリードフレーム10が完成する。
続いて、ダイボンド工程42で、図13に示すように、銀ペースト樹脂等の接着剤を利用して半導体素子1がリードフレーム10の載置片2に固着される。そして、ワイヤボンド工程43にて、載置片2上の半導体素子1の電極とリード端子3、4、5、7および載置片2が金等から成るボンディングワイヤ14により接続され、回路が形成される。そして、封止工程44に進む。
次に、封止工程44について以下に説明する。図15は、図13のXX'に相当する位置でのダイボンド工程42を経たリードフレーム10が配置されたモールド金型の断面図である。例えば、図15に示すように、ダイボンド工程42を経たリードフレーム10がモールド金型60のモールド金型上型61とモールド金型下型62に挟まれて配置される。そして、温度が上げられ液状化した樹脂が、モールド金型上型61とモールド金型下型62間の空間の樹脂封止体形成部63に圧送して流し込まれ、ボンディングワイヤ12や半導体素子1を含めて、載置片2およびリード端子3、4、5、6、7の載置片2側が封止成型される。そして、図13に示すように、封止成型されたリードフレーム10は、モールド金型60から取り出され、リードフレームの余分な樹脂やバリが取られた後に、封止樹脂体9から外部に引き出された各リード端子3、4、5、6、7がメッキ処理される。
続いて、ダイバーカット工程45にて、リードフレーム10の枠体8から1個1個の半導体装置20が分離され、図2に示すように、前述の本発明の半導体体装置20が完成する。そして、フォーミング工程46にて、後にプリント基板にはんだ付け実装するため、前述したようにリード端子3、4、5、6、7のアウターリード部12がフォーミング金型にて所定の形状に曲げ加工される。最終的には、プリント基板にフォーミング工程46を経た半導体装置20がはんだ付け実装され、そのプリント基板が電子機器に搭載される。
従って、上記で説明したように、本発明の半導体装置の製造方法であれば、予め、リードフレーム製造工程41において、リード端子3、4、5、6、7のアウターリード部12のフォーミング部13と成る位置に溝部11を形成する構造を備えたリードフレーム金型50によって、そのフォーミング部13に溝部11が形成されたリードフレーム10が製造されるため、従来の半導体装置の製造方法から工程数の増加を伴うことなく、新たにリードフレームの設計およびリードフレーム金型製作費が発生するのみで、本発明の半導体装置20を製造することができる。
なお、上記では、予め溝部11がリードフレーム製造工程で形成されたリードフレームを用いた半導体装置20の製造方法について詳細な説明をしたが、封止工程後に溝部11がリードフレームに形成されてもよい。以下、封止工程後に溝部11が形成される場合の半導体装置20の製造方法について以下に説明する。
本発明の半導体装置20の製造方法の第2実施形態について図を参照にして以下に説明する。図16は、半導体装置20の製造方法における第2実施形態の工程フローを示すフロー図である。図17は、半導体装置20の製造方法の第2実施形態を説明するためのリードフレームの上面図である。
まず、図16および図17に示すように、リードフレーム製造工程71にて、リードフレーム80の材料である銅等から成る基板が溝部形成用の構造を有していないリードフレーム金型に配置され、リードフレーム金型によりリードフレーム80が打ち抜かれる。そして、リードフレーム80のバリ取りやメッキ処理等がされ、溝部11が形成されていないリードフレーム80が完成する。なお、リードフレーム80は、エッチング法等の公知の方法により製造されてもよい。
続いて、ダイボンド工程72で、前述のダイボンド工程42と同様に、銀ペースト樹脂等の接着剤を利用して半導体素子1がリードフレーム80の載置片2に固着される。そして、ワイヤボンド工程73にて、前述のワイヤボンド工程43と同様に、載置片2上の半導体素子1の電極とリード端子3、4、5、6、7および載置片2が金等から成るボンディングワイヤ14により電気的に接続され、回路が形成される。
続いて、封止工程74にて、前述の封止工程44と同様に、例えば、リードフレーム80がモールド金型に配置され、温度が上げられ液状化した樹脂が圧送して流し込まれ、ボンディングワイヤ14や半導体素子1を含めて、載置片2およびリード端子3、4、5、6、7の一部が封止成型される。そして、リードフレーム80の余分な樹脂やバリが取られた後に、封止樹脂体9から外部に引き出されたリード端子3、4、5、6、7のアウターリード部がメッキされる。
続いて、溝部形成工程75にて、リードフレーム80のリード端子3、4、5、6、7に溝部11が溝部形成装置により形成される。図18(a)から(c)は、アウターリード部のフォーミング部と成る位置に溝部を形成する方法を説明するための図である。図18には、リードフレーム80のうち、後に半導体装置20と成る1つの構成単位に相当する部分が図示されている。また、溝部11を押圧して形成する溝部形成金型上型101の溝部形成構造部101aは、例えば、リード端子の長手方向と交差する方向のフレーム面に、その端から端までV字形の溝部11が形成できるようにV字形の形状となっている。図18(a)に示すように、溝部成形装置100の台102上に配置された溝部形成金型下型102が配置されている。封止工程74を経たリードフレーム80が、溝部形成金型下型102の所定の位置に、溝部11の形成が行われるリード端子のアウターリード部12のフレーム面を溝部形成金型上型101に向けて配置される。そして、溝部形成金型上型101は、図18(b)に示すように、後にそれぞれの各リード端子のアウターリード部12におけるフォーミング部と成る所定の位置に所定の速度でアウターリード部12に押し付けられる。その後、図18(c)に示すように、溝部形成金型上型101がアウターリード部12から引き離なされ、リード端子のアウターリード部12に溝部11が形成される。
続いて、ダイバーカット工程76にて、前述のダイバーカット工程45と同様に、リードフレーム80の枠体8から1個1個の半導体装置が分離され、図2に示すように、前述の本発明の半導体装置20が完成する。そして、フォーミング工程77にて、プリント基板にはんだ付け実装するために、前述したようにリード端子のアウターリード部12がフォーミング金型32にて所定の形状に曲げ加工される。最終的に、プリント基板にフォーミング工程77を経た半導体装置20がはんだ付け実装され、そのプリント基板が電子機器に搭載される。
上記では、溝部形成工程72おいて、V字形の溝部11がa側フォーミング部131aにアウターリード部12の長手方向と交差する方向に端から端まで形成される場合について説明したが、その他の形態の溝部11をアウターリード部12の所定の位置に形成する場合には、溝部11の形態に合った溝部形成金型上型および溝部形成金型下型を用いるとよい。
従って、上記で説明したように、本発明の半導体装置20の製造方法であれば、従来のリードフレーム構造を変更することなく、リード端子のアウターリード部12におけるフォーミング部13に溝部11を有した半導体装置20を製造することが可能となる。