JP2006026076A - 磁気共鳴イメージング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】体動アーチファクトを効果的に低減し、且つ体動モニターのためのナビゲーターエコー計測を少ない頻度で行い、本計測において実質的に長いデータ計測時間を確保する。
【解決手段】 MRI装置の撮像手段を制御する制御手段は、被検体の周期的体動を体動近似関数として記憶し、被検体を撮像する本計測に先立って取得したナビゲーターエコーから体動位置を検出し、検出された位置と体動近似関数とから本計測時の体動位置を予測し、予測された体動位置に基づき本計測における撮像スライス位置及び位相エンコード量を予め決定する。本計測は決定されたスライス位置及び位相エンコード量で実行される。
【選択図】図4

Description

本発明は、核磁気共鳴を利用して被検体を撮影する磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に関し、特に被検体の呼吸動等の周期的体動によるアーチファクトの軽減を図ったMRI装置に関する。
MRI装置は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場パルスを印加することによって被検体を構成する原子の原子核(通常、プロトン)から発生する核磁気共鳴信号を計測し、プロトン密度の空間分布や励起状態の緩和現象の空間分布を画像化する。核磁気共鳴信号は傾斜磁場によって異なる位相エンコードが与えられ、それをフーリエ変換することにより1枚の画像を再構成することができる。
この1枚のMR画像を作成する間に被検体が動くと、画像に大きなアーチファクトが生じ、画質を劣化させる。このような体動によるアーチファクト(体動アーチファクト)は、所定の計測点に所定の位相エンコード量が与えられるべきところが、被検体の動きによって他の計測点にその位相エンコード量が印加された状態でフーリエ変換したために生じる。体動アーチファクトの原因として、重要なものが呼吸による体動アーチファクトである。
呼吸動による体動アーチファクトを除去する方法として、1)計測時の被検体の位置をモニターし、検出された被検体位置が所定の体動範囲内のときに計測したエコー信号のみを用いて画像再構成する方法(呼吸ゲーティング法)、2)計測時の被検体の位置をモニターし、検出された位置の基準位置からのずれに応じて撮影スライス位置をシフトさせる方法(スライストラッキング法)などが提案されている(特許文献1)。被検体の位置をモニターする手法としては、被検体の腹壁や胸壁に取り付けた呼吸センサーを用いる方法もあるが、位相エンコードを用いない付加的なエコーをナビゲーターエコーとして計測し、その投影データから位置を検出する方法が普及している。
上記従来の体動アーチファクト除去方法のうち、呼吸ゲーティング法については、画像再構成に用いない信号が多くなるため計測時間が長くなるという問題があり、これに対して画像再構成に用いる信号を多くするとともに信号計測時の被検体位置に応じてk空間への配置、即ち位相エンコードの与え方を制御することも提案されている(特許文献2)。但し、この場合でもすべての位相エンコードの信号を取得するには依然として相当の時間を要する。
また1)及び2)に共通する問題として、被検体画像を得るための計測(ナビゲーターエコーの計測と区別して本計測という)の前段で必ずナビゲーターエコーの計測を行わなければならず、これにより計測時間が延長する。またスライストラッキング法では、ナビゲーターエコーを用いて被検体位置を算出した後、さらに算出した被検体位置から撮影断面を決定するという処理を行う必要があり、これら計算のためのデッドタイム(計測ができない時間)により本計測におけるデータ取得時間が短縮されたり、取得のタイミングがずれたりする可能性がある。
さらに被検体の呼吸動に伴い、その近傍の臓器には変形を生じることになるが、従来のスライストラッキング法ではこれら変形については考慮されていないため、変形を伴う臓器が撮影対象である場合、良好な画像が得られないという問題もある。
一方、別の体動アーチファクト抑制方法として、計測時の被検体の位置をモニターし、体動のヒストグラムと位相エンコードの対応表に基づき、位相エンコードの付与の仕方を制御する方法もある(ROPE法、非特許文献1)。この方法では被検体が頻度の高い位置にあるときに計測される信号をk空間の低周波域となるように位相エンコード制御しているので、視野全体としての体動アーチファクト抑制にはなるが、例えば基準形状からの変形が大きい位置で計測された信号に低位相エンコード量を割り当てる可能性もあり、必ずしも変形の問題を解決できない。またROPE法では、スライス位置は固定しているので、目的とする部位が視野から外れて撮影できない可能性もある。
特開2000-157508号公報 特表平9-508050号公報 J. Computer Assisted Tomography 9(4):835-838,1985
本発明は、体動アーチファクトを効果的に低減することができ、しかも体動モニターのためのナビゲーターエコー計測を少ない頻度で行い、本計測において実質的に長いデータ計測時間を確保でき、画像に用いるデータ数を増加させることを目的とする。また本発明は、体動に伴う目的部位の変形による影響を最小限にすることができ良好な画像を得ることができるMRI装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のMRI装置は、被検体に所定のパルスシーケンスに従い高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスを印加し、被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測し、被検体の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記被検体の周期的体動を体動関数又は体動曲線として記憶する手段、及び被検体を撮像する本計測に先立って取得したナビゲーターエコーから体動位置を検出し、検出された位置と前記体動関数又は体動曲線から本計測時の体動位置を予測し、予測された体動位置に基づき本計測における撮影パラメータを決定する手段、を備えたことを特徴とする。
上記撮影パラメータは、具体的には、撮像スライス位置、位相エンコード量、或いは撮像スライス位置及び位相エンコード量である。
本発明のMRI装置において好適には、制御手段は、データ取得時間以外の時間にナビゲーターエコーを取得し、当該ナビゲーターエコーによって新たに検出された体動情報に基づき現在の体動関数又は体動曲線を更新する。
また本発明のMRI装置において、制御手段は、複数の方向の周期的体動を表す体動関数又は体動曲線を備え、本計測時における複数の方向の体動位置を予測するものとすることができる。
さらに本発明のMRI装置は、被検体に所定のパルスシーケンスに従い高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスを印加し、被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測し、被検体の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記被検体の周期的体動の変位量とスライス位置のシフト量との関係を表すテーブルを記憶する手段、及び被検体を撮像する本計測の直前に取得したナビゲーターエコーから体動の変位量を検出し、検出された変位量に対応するスライス位置のシフト量を前記テーブルから求め、続いて実行される本計測に求めたシフト量を適用する手段、を備えたことを特徴とする。
本発明のMRI装置によれば、予め求めた体動情報に基づき、本計測時の被検体の位置を予測し、その位置に応じた撮影パラメータを算出し決定しておくことにより、体動モニターのためのナビゲーターエコーを取得するためのシーケンス(ナビゲーターシーケンス)の頻度を少なくすることができるとともに、本計測を連続して行なう場合、その都度、撮影パラメータを算出する必要がないので、デッドタイムを生じることなく本計測を行なうことができる。
撮影パラメータとしてスライス位置を決定することにより、体動による被検体位置のシフトに合わせてスライス位置をシフトすることができ、体動の影響を排除できる。また位相エンコード量を制御することにより、撮影対象に体動に伴う変形があった場合でも、変形を多く生じた位置でのデータをk空間の高周波領域に配置し、変形の影響を最小限にすることができる。
また心電同期撮影などにおいて本計測に使用しない時間を利用してナビゲーターシーケンスを実行し、それによって得た位置情報を用いて体動関数を更新することにより、体動関数と現実の体動とのずれや、体動周期の変化にリアルタイムで対応することができ、精度よく体動アーチファクトを抑制できる。
複数方向、例えば三次元方向の体動について実施することにより、より精度よく体動アーチファクトを抑制できる。
また予め体動変位量とスライス位置のシフト量との関係を表すテーブルを格納しておくことにより演算に伴う本計測時間のずれをなくすことができる。
以下、本発明のMRI装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明が適用されるMRI装置の全体概要を示すブロック図である。
このMRI装置は、被検体101が挿入される空間に静磁場を発生する磁石102と、この空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル103と、被検体の撮像領域に高周波磁場を発生するRFコイル104と、被検体101が発生する核磁気共鳴(MR)信号を検出するRFプローブ105と、静磁場空間に被検体101を挿入するためのベッド112を備えている。
傾斜磁場コイル103は、互いに直交する3方向(X,Y,Z)の傾斜磁場コイルで構成され、傾斜磁場電源109からの信号に応じてそれぞれ傾斜磁場を発生する。これら傾斜磁場の印加の仕方によって、被検体の撮像断面を決定し、またMR信号に位置情報を付与することができる。
RFコイル104はRF送信部110の信号に応じて高周波磁場を発生する。RFプローブ105の信号は、信号検出部106で検出され、信号処理部107で信号処理され、また計算により画像信号に変換される。画像は表示部108で表示される。
傾斜磁場電源109、RF送信部110、信号検出部106は制御部111で制御される。制御のタイムチャートは一般にパルスシーケンスと呼ばれ、撮像方法によって決まる種々のパルスシーケンス(撮像シーケンス)が予めプログラムとして図示しない記憶部に格納されている。制御部111には、このような記憶部のほか、撮像シーケンスの選択や撮像パラメータ等の入力のための入力装置(ユーザーインターフェイス:UI)が備えられている。
本発明のMRI装置では、体動モニターとしてのナビゲーターエコーを発生、取得するためのシーケンス(ナビゲーターシーケンス)を、撮像シーケンスとは独立して或いは選択された撮像シーケンスと組み合わせて実行することができる。ナビゲーターシーケンスとは、モニターしたい着目部位(例えば横隔膜など)を高周波磁場及び選択傾斜磁場を用いて局所的に励起し、この局所的の励起領域から位相エンコード傾斜磁場を付加しないエコー(ナビゲーターエコー)を取得するシーケンスである。ナビゲーターシーケンスは、例えば、撮像シーケンスの選択に合わせて、ユーザーが適宜実行することも可能であるが、撮像シーケンスと組み合わせた所定のシーケンスとして制御部111の制御のもとで実行される。
信号処理部107(制御部111)は、上述した画像再構成等の演算のほか、一定時間ナビゲーターシーケンスを実行することにより離散的に取得した一連のナビゲーターエコーをもとに被検体の体動を表す体動関数又は体動曲線を作成して記憶部に記憶させるとともに、その後の計測においてモニターされた被検体位置と体動曲線とから計測時における体動位置を予測し、その予測結果に基づき予め撮像シーケンスのスライス位置及び/又は位相エンコード量を決定し、計測に際し決定されたスライス位置及び/又は位相エンコード量で計測を行う。
以下、本発明の第1の態様として、上記構成のMRI装置を用いた呼吸動アーチファクト抑制の実施形態を説明する。本発明の第1の態様では、MRI装置(信号処理部)は体動関数をもとに本計測時の体動位置を予測し、予測された体動位置を用いてスライス位置を決定する。
図2に、その一実施形態を示す。本実施形態では、まず本計測に先立って被検体の呼吸動を表す関数(以下、体動近似関数或いは近似関数という)を求める(ステップ21)。このため、呼吸動の一周期以上の時間、連続的にナビゲーターエコーを計測するシーケンス(ナビゲーターシーケンス)を実行し、一連のナビゲーターエコーを計測する(ステップ211)。ナビゲーターシーケンスは、呼吸動を最も反映する部位、例えば横隔膜を含む断面を選択して励起し、位相エンコードを付与することなくエコー信号を計測する。例えば1呼吸周期が約4秒で、ナビゲーターシーケンスを200ms毎に実行すると20個のナビゲーターエコーを計測することができる。この様子を図3に示す。図3において横軸は時間、縦軸はモニターしている横隔膜の変位量を表し、体動の一周期302で20回のナビゲーターシーケンス301を実行することを示している。
得られたエコー信号を周波数エンコード方向に1次元フーリエ変換することにより投影像が作成され、この投影像の信号強度プロファイルからエッジを検出するなどの手法を用いることによりモニターする横隔膜の位置303、304・・・が求められる(ステップ212)。位置の情報は、画像上の座標として求めてもよいし、所定の基準位置に対するシフト量として求めてもよい。次いで求めた検出位置とその位置を得た時間とを用いて、呼吸周期を近似する体動近似関数305を算出する(ステップ213)。近似関数を求める手法としては、最小二乗法などの公知の手法を用いることができ、関数として例えばsin、cosなどの周期関数を含む多項式で、ドリフト成分を反映した1次項を含むことが好ましい。本実施形態では、体動近似関数として、数1の関数を用いる。
Figure 2006026076
ここで時間tは、例えば1回目のナビゲーターシーケンス実行時を0とし、ナビゲーターシーケンスを実行する間隔が200msであれば200ms毎に増加する。或いは、ナビゲーターシーケンスの開始を心電のR波に同期して開始し、R波検知時刻を0として、1回目のナビゲーターシーケンス実行時をS(所定のディレイタイム)、2回目以降をS+n×200[ms](nは2、3,4・・・)としてもよい。こうして求めた体動近似関数は、制御部111の記憶部に記憶される。
次に本計測を開始する(ステップ22)。本計測は被検体の目的とする部位の画像を得るための計測であり、目的とする組織や画像に応じて任意の撮像シーケンスを選択する。心電波形(R波)に同期して本計測を行なう場合の実施形態を図4に示す。
本実施形態では、本計測402に先立って本計測時における被検体の体動位置を予測するために、まずナビゲーターシーケンス401を実行する(ステップ221)。ナビゲーターシーケンス401は、呼吸動を表す関数305を求めるために実行したナビゲーターシーケンス(図3、301)と同様であり、モニターすべき部位を含む断面から位相エンコードを付与することなくエコー信号を計測する。
得られたエコーからステップ212と同様に当該エコー計測時の位置を求め、検出された位置を体動近似関数305に当てはめる(フィッティングする)。すなわち体動近似関数305の一体動周期内で、ナビゲーターシーケンス401から検出した位置403に対応する時間を求める。この場合、1点の検出位置403に対応する体動近似関数305上の点は2点403’、403”存在するので、2回以上のナビゲーターシーケンスを実行し、検出位置を体動近似関数305に当てはめる。実際には呼吸振幅はすべて同一にはならないので図4に示すように複数回目のナビゲーターシーケンスで検出された位置406を用いて体動近似関数305に当てはめる。図4に示す例で、4回のナビゲーターシーケンス401の実行によって検出された位置403〜406から体動近似関数上の点403’〜406’に一致することが判定されたならば、検出された位置406の計測時Tと点406’の時間tとの対応付けを行い、本計測402における位置(変位量)を予測する(ステップ222)。即ち第一R波からの時間Tを体動近似関数305に代入し、第一R波と本計測開始のゲート信号となるR波との間隔Ta(Tb)及びR波から本計測を開始するまでのディレイ時間Δtを用いて、本計測402開始時の変位量を算出することができる。なお、対応付けするための基準と成る時間は第一R波の時間以外にも明確な時間であればよい。
本計測402における被検体の体動変位量が予測できたならば、この変位量に合わせて撮影断面(スライス位置)をシフトさせる(ステップ223)。スライス位置のシフトは、具体的には本計測のパルスシーケンスにおいて、励起パルス(RFパルス)の周波数にスライス位置のシフト量に応じたオフセット値を与える。また予測された体動変位量に応じて、位相エンコード傾斜磁場にもオフセット量を与える。本計測は、この更新されたパルスシーケンスで実行される(ステップ224)。これにより目的とする部位を確実に含み、しかも体動の影響を大幅に低減した画像を得ることができる。しかも本計測に先立って実行されるナビエコー計測後、本計測が開始されるまでに、位置の予測とそれに基づく撮影断面位置の算出が終了しているので、演算のためのデッドタイムを不要とし、任意のタイミングで変位量に対応した本計測を行なうことができる。なお一心周期内で複数時相の画像データを取得する場合には、時相ごとに体動変位量を予測してスライス位置を算出しておき、連続してスライス位置をシフトすることも可能である。
次に本発明の別の実施形態を図5を参照して説明する。この実施形態のMRI装置は、体動近似関数305から予測した変位量と現実の計測時の変位量とのずれを補正する機能を備えている。それ以外は上述の実施形態と同様である。比較的長時間に亘る計測では、時間の経過に伴い呼吸周期が変化する可能性も有り、現実の変位量が、体動近似関数305から予測した変位量からずれることになる。本実施形態では、このようなずれを検出するために、データ取得時間以外の時間を利用してナビゲーターシーケンスを実行しリアルタイムの変位量を検出すると共に、現在使用している体動近似関数305とリアルタイムで検出した変位量を表示部に表示させる。
本実施形態においても、一呼吸周期以上のナビゲーターシーケンスを実行して呼吸動を近似する体動近似関数を求め(ステップ501)、本計測の開始にあたり、ナビゲーターエコーから検出した位置を体動近似関数に当てはめ、本計測時の変位量を予測すると共にその際の撮影断面を決定する(ステップ502、503)ことは、図2の実施形態と同様であり、これらステップ501〜504は図2のステップ21(211〜213)及びステップ22(221〜224)に相当する。本計測時の変位量の予測に使用された体動近似関数は、曲線としてモニターに表示される。その後、本計測シーケンスが繰り返される際に、そのデータ取得時間以外の時間を利用してナビゲーターシーケンスを実行する(ステップ505)。例えば、図6に示す例では、1つの本計測シーケンスと次の本計測シーケンスとの間の待ち時間を利用して複数回のナビゲーターシーケンス601が実行される。
各ナビゲーターシーケンス601で計測したナビゲーターエコーから実行時の被検体(モニターする部位)の変位量を検出し、モニターに表示された体動近似関数の上に重ねて表示する(ステップ506)。この様子を図7に示す。図中、曲線701は体動近似関数を表し、点はナビゲーターエコーによって検出された位置を示している。ユーザーはモニターの表示から変位量の予測に用いた体動近似関数と実際の変位量との間にずれが生じていることを確認することができるので、これによって再度フィッティングするか、体動近似関数701自身を更新するかを選択する(ステップ507)。
ずれが許容範囲を超えていると判断した場合には、さらにこのずれが単なる横軸方向或いは縦軸方向への一定量のずれ(一次ずれ量)であるか周期自体が変化しているかを判断する(ステップ508)。周期自体に変化がないと判断した場合には、例えば再設定ボタン702を押下する。これにより、ステップ506で新たに求めた変位量を現在の体動近似関数に当てはめなおし、それ以降の本計測における変位量の予測とスライス位置決定を行なう(ステップ509)。即ち、一次ずれ量に対応する時間をずらして体動近似関数を当てはめる。一方、周期自体が短縮或いは延長していると判断した場合には、現在の体動近似関数を使用して変位量を予測することはできないので、更新ボタンを押下する。これによりステップ501に戻り、新たな近似関数を求め、これをそれ以降の本計測における体動近似関数とする。
以上の説明では、ずれが単なる一定量のずれか、周期自体の変化によるものかを区別し、それによって異なる処理を行なうものとしたが、ずれの種類に拘わらず、ずれていると判断した場合には、体動近似関数を更新するようにしてもよい。
また以上の説明では、体動近似関数の再設定或いは更新を、ユーザーの判断によりマニュアルで行なう場合を示したが、制御部が判断し自動的に行なうことも可能である。この場合にも、ずれが一次的なずれか周期自体の変化かを判断してもよいし、ずれが生じた場合には一律に体動近似関数を更新することとしてもよい。具体的には、ナビゲーターシーケンスを実行し、そのときに得られた検出位置と、ナビゲーターシーケンスを実行した時間を体動近似関数に代入することにより求めた位置(対応位置)との差を求め、この差が所定の閾値を超えたときには、そのナビゲーターシーケンスの直前に計測したデータは破棄し、体動近似関数を再設定し、破棄したデータを再計測する。またナビゲーターシーケンスで検出した位置と体動近似関数から求めた位置との差が閾値を超える場合が設定した回数以上続く場合には、データの取得を中止し、体動近似関数の更新を行なう。
このように本実施形態によれば、本計測時間が比較的長い場合にも、時間の経過に伴う体動近似関数と現実の体動とのずれを修正し、スライス位置を決定するので精度よく体動を抑制した画像を得ることができる。またずれの修正のための演算は、ずれが閾値以上になったときのみに実行されるので、スライス位置を算出するための時間を最小とすることができる。
次に更に別の実施形態として、三次元の体動検出を行なう実施形態を説明する。前述したように呼吸動を最も反映する部位として横隔膜があり、図2の実施形態では横隔膜の、体軸に平行な方向の移動量のみをモニターすることとしたが、その近傍の組織(例えば心臓)を撮影する場合、現実には体軸に平行な方向だけでなく、それと垂直な方向にも呼吸動に伴う変位を生じる。そこで本実施形態では、図8に示すように、動きを検出したい部位801について互いに直交する三方向A,B,Cからナビゲーターエコーを取得し、三方向の体動近似関数を作成する。
体動近似関数を作成するステップは、図2の実施形態と同様であり、A,B,Cの三方向についてそれぞれ体動の一周期以上の間、図3に示すようなナビゲーターシーケンスを実行し、得られた検出位置を所定の関数にフィットさせる。本計測に際しては、図9に示すように、A方向のナビゲーターシーケンス901、904、907、B方向のナビゲーターシーケンス902、905、908及びC方向のナビゲーターシーケンス903、906、909を例えばサイクリックに実行し、それぞれで得られたナビゲーションエコーから各方向の位置(A方向は910、913、916、B方向は911、914、917、C方向は912、915、918)を検出する。検出された各方向の位置をそれぞれ同じ方向の体動近似関数921、922、923に当てはめ、本計測時における目的部位の位置を算出する。
位置の算出(予測)は図2の実施形態と同様であり、基準と成る時点例えば第一R波検出時からの時間Tを体動近似関数に代入し、第一R波と本計測開始のゲート信号となるR波との間隔Ta及びR波から本計測を開始するまでのディレイ時間Δtを用いて、本計測920開始時の変位量を算出することができる。その後に実行される本計測についても、間隔Taの代わりにTbを用いて同様に計測時の変位量を算出する。
このように三方向について体動変位量を算出したならば、これら変位量に基づき本計測のスライス位置を決定する。例えばスライス位置のシフト量に応じたオフセット値をRFパルスの周波数に与え、体動変位量に応じたオフセット量を位相エンコード傾斜磁場に与える。
本実施形態によれば、三方向についてそれぞれ体動近似関数を求め、これら近似関数と三方向について検出した位置とから本計測のスライス位置を決定しているので、各方向の検出頻度は1/3に減少するが、スライス位置の補正精度は向上する。また三次元空間のシフト、傾きの計算は煩雑であるが事前に計算できるので、計算に伴う本計測の遅れを生じることはない。
以上、本発明の第1の態様として、体動近似関数をもとに本計測時の変位量を予測し、本計測におけるスライス位置を補正する機能を備えたMRI装置を説明した。ここでは、被検体の周期的体動を関数として記憶する場合を説明したが、体動曲線(変位−時間曲線)として記憶しておき、この曲線と検出した位置から本計測時における変位量を予測することも可能である。
さらに本計測に先立ってナビゲーターシーケンスを実行した後に、体動関数或いは体動曲線を求めるだけでなく、変位とスライス位置との関係を予めテーブル化しておいてもよい。すなわち図10に示すように、体動関数1003から体動関数の振幅(+s〜−s)を画素単位の変化量として算出し、この変化量に対応するスライス位置のシフト量をテーブル1005として記憶しておく。本計測に際しては直前にナビゲーターエコーを取得して変位量を検出し、テーブルを参照して検出位置に対応するスライス位置(シフト量)を決定する。これにより直前のナビゲーターシーケンス1000の実行により決定されたスライス位置で遅れを生じることなく本計測シーケンス1001を実行することができる。
また体動情報としては、ナビゲーターシーケンスの実行によって体動関数或いは体動曲線を求めることが好ましいが、本発明においては、それ以外の手法(例えば体動センサ)により体動情報を得ることも可能である。図10に示すように予め体動の変化量がわかっていればよい場合には、体動関数から求めるのではなく、体動の振幅をユーザーが入力するようにしてもよい。計測中に被検体自身が動いて位置が変わることないが場合には、最も簡便に体動補正を行なうことが可能である。
次に本発明の第2の態様として、予め計測した体動情報から本計測時の変位量を予測し、その変位量に基づき位相エンコード量を決定する機能を備えたMRI装置について説明する。ここでも装置の構成は図1と同じであるが、パルスシーケンスを制御する制御部111の機能として、本計測時の位置(変位量)に応じてその際計測するエコー信号の位相エンコード量、即ちデータ空間におけるデータ配置を制御する機能を備えていることが特徴である。
図11及び図12に、心電同期撮影に適用した一実施形態を示す。本実施形態では、まず本計測に先立って被検体の呼吸動を表す体動近似関数を求める。このステップは、図2のステップ21(212〜213)と同様であり、呼吸動の一周期以上の時間、連続的にナビゲーターシーケンスを実行し(ステップ1101)、一連のナビゲーターエコーを計測し、各ナビゲーターシーケンス実行時のモニター部位(例えば横隔膜)の変位量を求める。これにより時間軸に対し変位量をプロットした曲線1202が得られるので、これを所定の関数にフィッティングし、体動近似関数として記憶しておく(ステップ1102)。これと同時に体動の基準位置1201を設定する。体動の基準位置は、例えば体動周期のなかで最も動きの少ない(曲線の傾斜がフラットである位置、例えば呼気終期)や頻度の大きい位置が選択される。
次に心電波形(R波)1203に同期して本計測を開始する(ステップ1103)。図12に示す実施形態では3回の本計測シーケンス1204、1214、1224を実行して、1枚の画像再構成用データ(k空間データ1230)を取得する場合を例示しており、これら本計測シーケンス1204、1214、1224をR波から所定のディレイ時間Td後に開始することとする。そして最初のディレイ時間を利用してナビゲーターシーケンス1205を実行し(ステップ1104)、得られたナビゲーションエコーからそのときの体動変位1206を検出する(ステップ1105)。この際、少なくとも2のナビゲーションエコーを取得し、検出した複数の体動位置1206を予め記憶された体動関数1202にフィティングし、本計測1204、1214、1224の実行時における体動位置1207、1217、1227を予測する(ステップ1106)。次に予測した体動位置1207、1217、1227と、予め設定した基準位置1201とを比較し、その差が最も小さい体動位置のときに実行される本計測シーケンス(図示する例では1224)では、そのとき取得するデータ1228がk空間の低周波域に配置されるように位相エンコード量を決定する(ステップ1107)。予測した体動位置と基準位置との差が最も大きい体動位置のときに実行される本計測シーケンス(図示する例では1214)では、そのとき取得するデータ1118がk空間の高周波域に配置されるように位相エンコード量を決定する。
このように予測した体動位置に応じて位相エンコード量を付与した結果を図12のデータ空間1230に示している。ここでは、k空間1230の低周波域Aに本計測シーケンス1224で取得したデータ1228が配置され、中間周波域Bに本計測シーケンス1204で取得したデータ1208が配置され、高周波域Cに本計測シーケンス1214で取得したデータ1218が配置される。
こうして位相エンコード量が決定されたならば、その後は公知のスライストラッキング手法に従い、スライス位置を変更しながら計測を続ける(ステップ1108)。即ち、体動近似関数1202及び直前のナビゲーターシーケンスによる検出位置1206によって予測された本計測時の位置1207と、基準位置1209との差分だけスライス位置をシフトさせて本計測シーケンス1204を実行する。次のR波検出後にも同様にナビゲーターシーケンス1215を実行し(ステップ1104)、その際検出された位置1216から、本計測シーケンス1214の実行時の位置1217’を予測し、本計測シーケンス1214では、この位置1217’と基準位置1201との差分だけスライス位置をシフトさせる。本計測シーケンス1224についても同様に直前に実行したナビゲーターシーケンス1225に検出位置に基づいてスライスをシフトさせて実行する(ステップ1106)。
このように本実施形態によれば、計測時におけるスライス位置の基準位置との差に基づき位相エンコード量を制御し、画像のコントラストを決めるk空間の低周波域データが基準位置との差が小さいデータとなるようにしたので、スライス位置の変化に伴って組織(臓器)が変形を生じている場合にも、変形の影響を受けにくく、より体動アーチファクトを低減した画像を得ることができる。
上記実施形態では、スライス位置については、本計測シーケンスと組み合わせて実行されるナビゲーターシーケンスで検出した体動位置1217’、1227’に基づき制御する場合を説明したが、最初に予測した体動位置1207、1217、1227を用いて各本計測シーケンス実行の際のスライス位置を予め決定することも可能である。即ち第1の態様とを組み合わせて実行してもよい。そのような実施形態を図13に示す。
図13において、図12と同じ要素は同じ符号で示している。本実施形態が図12の実施形態と異なる点は、本計測シーケンス1204の直前に実行したナビゲーターシーケンス1205によって検出した位置と体動近似関数1202とから予測した本計測時の位置1207、1217、1227を用いて位相エンコード量の決定を行なうとともにスライス位置を決定することである。この実施形態では、本計測シーケンスの前にナビゲーターシーケンス1215、1225を実行する必要がないので、R波直後の心時相から本計測を行なうことが可能となり、ディレイタイムを調整することにより任意の心時相でデータ取得することができる。
また例えば心臓撮影などにおいて心時相毎の画像を得る場合には、その時相数を多くすることができる。そのような実施形態を図14に示す。図14においても図12及び図13と同じ要素は同じ符号で示している。本実施形態では、一心周期(R−R間)に複数(図では3)の心時相の計測を行なうこととし、本計測に先立って実行したナビゲーターシーケンス1206で検出した位置1206と体動近似関数1202から、各心周期の計測141〜149における位置151〜159を予測する。予測した位置と体動における基準位置1201との差を算出し、各時相の計測毎に基準位置との差に応じた位相エンコード量を決定する。すなわち図14のデータ空間181〜183に示すように、時相1(データ空間181)では基準位置との差が最も小さい計測147の取得データ167をk空間の低周波領域Aに配置し、基準位置との差が最も大きい計測144の取得データ164を高周波領域Cに配置するように位相エンコード量を決定する。同様にして時相2、時相3についても位相エンコード量を決定する。
次に各心周期の計測141〜149を順次実行し、その際、その計測における予測位置151〜159と基準位置1201との差分に相当する量だけスライス位置をシフトさせて実行する。これにより呼吸を止めることなく複数時相の心臓撮影を行なった場合に、高精度でスライス位置補正を行ないつつ、心臓の呼吸動による変形の影響も抑制された画像を取得することができる。
以上、本発明の第2の態様について説明し、ここでも被検体の周期的体動を関数として記憶する場合を説明したが、体動曲線(変位−時間曲線)として記憶しておき、この曲線と検出した位置から本計測時における変位量を予測することも可能である。
本発明によれば、予め得た体動情報に基づき本計測における体動位置を予測し、それに応じて本計測時のスライス位置や位相エンコードを決定するようにしたことにより、スライス位置演算のための時間を低減し、デッドタイムなく本計測を実行できる。またスライス位置のシフトと合わせて位相エンコード量の制御を行なうことにより体動に伴う変形の影響を極力少なくすることができ、より体動アーチファクトの抑制された画像を得ることができる。
本発明が適用されるMRI装置の全体概要を示す図 本発明の第1の態様によるMRI装置の動作の一実施形態を示す図 図2の実施形態におけるナビゲーターシーケンスと体動近似関数を示す図 図2の実施形態における本計測を示す図 本発明の第1の態様によるMRI装置の動作の他の実施形態を示す図 図5の実施形態における本計測を示す図 図5の実施形態における表示部の表示例を示す図 三次元の体動検出を説明する図 さらに別の実施形態における本計測を示す図 さらに別の実施形態を示す図 本発明の第2の態様によるMRI装置の動作の一実施形態を示す図 図11の実施形態における本計測を示す図 別の実施形態における本計測を示す図 さらに別の実施形態における本計測を示す図
符号の説明
101・・・被検体、102・・・静磁場磁石、103・・・傾斜磁場コイル、104・・・高周波コイル、105・・・高周波プローブ、107・・・信号処理部、108・・・表示部、110・・・制御部。

Claims (5)

  1. 被検体に所定のパルスシーケンスに従い高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスを印加し、被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測し、被検体の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
    前記制御手段は、前記被検体の周期的体動を体動関数又は体動曲線として記憶する手段、及び
    被検体を撮像する本計測に先立って取得したナビゲーターエコーから体動位置を検出し、検出された位置と前記体動関数又は体動曲線から本計測時の体動位置を予測し、予測された体動位置に基づき本計測における撮影パラメータを決定する手段、
    を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  2. 被検体に所定のパルスシーケンスに従い高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスを印加し、被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測し、被検体の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
    前記制御手段は、前記被検体の周期的体動を体動関数又は体動曲線として記憶する手段、及び
    被検体を撮像する本計測に先立って取得したナビゲーターエコーから体動位置を検出し、検出された位置と前記体動関数又は体動曲線から本計測時の体動位置を予測し、予測された体動位置に基づき本計測における撮像スライス位置及び/又は位相エンコード量を決定する手段、
    を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  3. 前記制御手段は、データ取得時間以外の時間にナビゲーターエコーを取得し、当該ナビゲーターエコーによって新たに検出された体動情報に基づき現在の体動関数又は体動曲線を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  4. 前記制御手段は、複数の方向の周期的体動を表す体動関数又は体動曲線を備え、
    本計測時における複数の方向の体動位置を予測することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置。
  5. 被検体に所定のパルスシーケンスに従い高周波磁場パルス及び傾斜磁場パルスを印加し、被検体が発生する核磁気共鳴信号を計測し、被検体の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
    前記制御手段は、前記被検体の周期的体動の変位量とスライス位置のシフト量との関係を表すテーブルを記憶する手段、及び
    被検体を撮像する本計測の直前に取得したナビゲーターエコーから体動の変位量を検出し、検出された変位量に対応するスライス位置のシフト量を前記テーブルから求め、続いて実行される本計測に求めたシフト量を適用する手段、
    を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
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