JP2006022732A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高圧燃料供給系から発生する騒音を極力低減するとともに、機関運転状態が低負荷から高負荷へ移行する際に、高圧燃料供給系の燃料供給圧不足に起因する悪影響の発生を抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置は、要求噴射量の低い低負荷時には、高圧燃料供給系の燃料供給圧を下げるように調圧する。そして、機関運転状態が低負荷から再び高負荷へと移行した場合には、燃料供給圧を再び昇圧させる。この際、現在の燃料供給圧が目標燃料供給圧よりも所定圧C以上低いと判断した場合には(S103:YES)、筒内噴射弁の噴射量比率を低く設定して、筒内噴射弁の要求噴射量を減量する(S104)。
【選択図】 図2

Description

本発明は、燃料を燃焼室に直接噴射する筒内噴射弁及び吸気通路に噴射する筒外噴射弁を備える内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
一般に、内燃機関の燃料噴射制御では機関運転状態に応じて燃料噴射量の要求値が決定され、この要求値に応じた噴射量(即ち、全要求噴射量)の燃料が燃料噴射弁から噴射される。こうした燃料噴射弁としては、吸気ポート等の吸気通路に燃料を噴射する噴射弁(筒外噴射弁)の他、内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する筒内噴射弁がある。この筒内噴射弁では、噴射燃料が吸入空気と混合され十分に気化するための期間が確保され難いため、その噴射燃料の微粒化を促進する必要がある。このため、筒内噴射弁では、筒外噴射弁と比較してその燃料供給圧を高めてより高い圧力をもって燃料を噴射するようにしている。
従来、こうした筒内及び筒外噴射弁の双方を備え、始動時における全要求噴射量に対する各噴射弁の噴射量比率を高圧燃料供給系の燃料供給圧、換言すれば筒内噴射弁の燃料供給圧に基づいて可変設定するようにした燃料噴射制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
特開2001−336439(請求項1、図3)
このように筒内及び筒外噴射弁の双方を備えた燃料噴射制御装置にあっては、一般に、内燃機関が登坂時や加速時等の高負荷状態にあるときに、筒内噴射弁の噴射量比率(要求噴射量=要求燃料噴射量)を高め、燃焼室に直接噴射された燃料の気化熱によって燃焼室温度を低下させることにより、吸気効率、ひいては機関出力の向上が図られる。そして、その要求噴射量の燃料噴射を好適に行うべく高圧燃料供給系の燃料供給圧が高められる。
ところで、高圧燃料供給系は、例えば、高圧用のポンプと同ポンプの燃料吐出量を調節する調量弁とを備えている。このため、高圧燃料供給系においては、これらポンプの燃料加圧や調量弁の開閉駆動に伴って騒音が発生する。特に、こうした高圧燃料供給系から発生する騒音は、他の騒音(例えば機関燃焼音や駆動機構から発生する騒音)が小さくなる機関低負荷時、換言すれば筒内噴射弁の要求噴射量が少ないときほど顕著になる傾向がある。
そこで、このように筒内噴射弁の要求噴射量が少ない機関低負荷時には、高圧燃料供給系の燃料供給圧を下げる、或いはその燃料供給を完全に停止することも考えられる。こうした場合、少なくとも低負荷時には、不必要な高圧燃料供給系における燃料供給圧の昇圧作用に伴う騒音や、ポンプの作動音を低減することはできる。
しかし、低負荷時に一旦、高圧用のポンプの燃料供給圧を下げ、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力を低くしてしまうと、その後、高負荷への移行時に燃料供給圧が十分に昇圧されないまま筒内噴射弁による燃料噴射が実行されてしまうこととなる。即ち、筒内噴射弁に供給される燃料供給圧は、図5に二点鎖線で示すように、低負荷時の低値の燃料供給圧から、増大した要求噴射量に対応する高値の目標供給圧P0まで直ちに移行するわけではないため、運転状態が高負荷となる時点t1と燃料供給圧が目標供給圧P0となる時点t2との間にタイムラグtが生じることとなる。そして、こうした昇圧不足の状況下では、筒内噴射弁から要求噴射量と等しい量の燃料を噴射させるためには、燃料供給圧が低い分だけ噴射期間を長くせざるを得ない。
しかしながら、実際の筒内噴射弁の燃料供給圧が目標供給圧に対して大きく低下している場合には、その噴射期間が噴射可能な期間よりも長くなり、噴射燃料が不足して機関出力の低下を招くこととなる。また、燃料噴射圧(燃料供給圧と同値)の低いために噴射燃料の微粒化が促進されず、それに起因する燃焼の悪化も避けきれないものとなる。
なお、特許文献1では、高圧燃料系の燃料供給圧に基づいて筒内噴射弁の噴射量比率を低く変更して確実に要求噴射量に相当する燃料噴射を行うための制御が開示されている。しかし、これはあくまで始動時における燃料供給圧の昇圧不足に起因する噴射量不足に対処したにすぎない。即ち、例えば機関運転状態が高負荷から低負荷に移行したときに意図的に高圧燃料供給系の燃料供給圧を下げるようにした構成において生じる不都合に対処し得るものではない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧燃料供給系から発生する騒音を極力低減するとともに、機関運転状態が低負荷から高負荷へ移行する際に、高圧燃料供給系の燃料供給圧不足に起因する悪影響の発生を抑制することのできる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、高圧燃料供給系から供給される燃料を燃焼室に直接噴射供給する筒内噴射弁及び吸気通路に噴射供給する筒外噴射弁と、内燃機関が高負荷状態にあるときほど前記筒内噴射弁の噴射量比率を高めるようにこれを設定する設定手段とを備える内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記高圧燃料供給系は機関負荷に応じて前記筒内噴射弁に供給する燃料供給圧を調圧する調圧手段と、機関負荷が低負荷から高負荷に移行するに際して前記筒内噴射弁の噴射量比率が低くなるようにこれを制限する制限手段とを備えることを特徴とする。
同構成によれば、高圧燃料供給系の燃料供給圧が機関負荷に応じて調圧されるため、これを一定にした場合と比較して不必要な昇圧動作に伴って生じる騒音の発生を極力抑制することができる。また、高圧燃料供給系の燃料供給圧が機関負荷に応じて低下した状況下で機関負荷が増大する場合であっても、筒内噴射弁の噴射量比率が低く設定される一方、筒外噴射弁の噴射量比率が高められるため、筒内噴射弁の燃料噴射量が少なくなる。その結果、筒内噴射弁の燃料噴射可能な期間が確保され易くなるともに、同筒内噴射弁の燃料噴射圧(燃料供給圧)低下に起因する噴射燃料の不十分な微粒化、ひいてはこれに伴う燃焼悪化についてもこれを抑制することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制限手段は前記高圧燃料供給系から供給される燃料供給圧が前記筒内噴射弁の目標燃料供給圧よりも所定圧以上低いことを条件に前記噴射量比率の制限を実行することを特徴とする。
同構成によれば、筒内噴射弁の燃料供給圧低下に伴う悪影響、即ち燃料噴射期間の過度な長期化や微粒化の低下等が生じ易い状況において、こうした悪影響の発生をより確実に回避することができる。またその一方、筒内噴射弁の燃料供給圧が十分に高いときには、その噴射量比率を不必要に低下させてしまうことがなく、機関運転状態に即した適切な燃料噴射を行うことができるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制限手段は前記噴射量比率の制限に際して前記筒内噴射弁の要求燃料噴射量が所定量を上回るときにこれを同所定量と等しく設定することを特徴とする。
同構成を例えば請求項2に記載の発明に適用すれば、制限手段によって筒内噴射弁の噴射量比率を制限するに際して、筒内噴射弁の要求燃料噴射量が所定量を上回るときにこれを同所定量と等しく設定する、といった態様をもってこれを行うことができる。所定量以上の噴射を予め行わないようにしておけば実際の噴射量が不足することもなく、噴射量が不足する事態が発生しやすい状況下において、さらに確実に燃焼悪化を抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制限手段は前記噴射量比率の制限に際して機関回転速度が高いときほど前記所定量を少なく設定することを特徴とする。
機関回転速度が低い場合には、吸気行程等、燃料を噴射可能な時間が長く確保でき、筒内噴射弁からより多くの燃料を噴射することができる。請求項4記載の構成によれば、こうした機関回転速度による噴射可能な時間の変化に即して上記所定量をより適切に設定することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記制限手段は機関負荷が所定値以上であることを条件に前記噴射量比率の制限を実行することを特徴とする。
機関負荷が所定値を下回っている場合には、各噴射弁の噴射量比率がどのように設定される場合であっても、筒内噴射弁についてその燃料噴射の期間が噴射可能期間を超えることがなく、これを正常に実行することができる。請求項5記載の構成によれば、筒内噴射弁の噴射量比率が不必要に制限されるのを回避し、機関運転状態に即した適切な燃料噴射を行うことができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記高圧燃料供給系は燃料を高圧に昇圧する加圧ポンプと同ポンプにより加圧されて筒内燃料噴射弁に供給される燃料の量を調節する調量弁とを含むことを特徴とする。
同構成によれば、燃料の加圧に伴って生じる加圧ポンプの作動音や、燃料供給圧を調整するのに伴って生じる調量弁の作動音等々、高圧燃料供給系から発生する騒音についてこれを前記調圧手段の調圧作用を通じて好適に抑制することができるようになる。
以下、本発明を内燃機関の燃料噴射制御装置に具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。
図1は本実施形態に係る燃料噴射制御装置1の概略構成を示すブロック図である。図1に示されるように、燃料噴射制御装置1が適用される内燃機関11は、気筒12内にピストン13を備え、ピストン13は内燃機関11の出力軸であるクランクシャフト14にコンロッド15を介して連結されている。
気筒12内において、ピストン13の上方には、燃焼室16が区画形成されている。気筒12には、筒内噴射弁17が取り付けられている。筒内噴射弁17は、デリバリパイプ18を介して、カムによって駆動される高圧用ポンプ19に接続されており、同ポンプ19から所定圧の燃料が供給されている。そして、筒内噴射弁17の開弁駆動により、燃料が燃焼室16に直接噴射される。また、燃焼室16には、混合気の点火を行う点火プラグ20が取り付けられている。
燃焼室16には、吸気通路22および排気通路23が接続されている。そして、燃焼室16と吸気通路22との連通部分である吸気ポート22aには、吸気ポート22a内に燃料を噴射する筒外噴射弁としての筒外噴射弁24が取り付けられている。筒外噴射弁24は、デリバリパイプ25を介して低圧用ポンプ26に接続されており、前述の筒内噴射弁17に供給される高圧の燃料よりも低圧の燃料が供給されている。そして、筒外噴射弁24の開弁駆動により、低圧の燃料が吸気ポート22a内に噴射供給されるようになっている。また、低圧用ポンプ26は燃料タンク27に接続されており、燃料タンク27内の燃料を吸引及び吐出してこれを高圧用ポンプ19に圧送する。さらに、高圧用ポンプ19は、燃料昇圧時に閉弁する調量弁21を備えており、この閉弁時期の変更を通じて筒内噴射弁17への燃料供給圧(燃料供給量)を調整する。
一方、筒内噴射弁17に連通するデリバリパイプ18には、筒内噴射弁17の燃料供給圧を検出する燃料圧力センサ31が設けられている。さらに、この燃料噴射制御装置1には、機関運転状況を検出するためのセンサとして、クランクシャフト14の回転位相(クランク角)および機関回転速度を検出するためのクランクセンサ32、アクセルペダル(図示略)の踏み込み量を検出するためのアクセルセンサ33、吸入空気量を検出するためのエアフローメータ34等が設けられている。
こうした構成を有する内燃機関11は、本発明において設定手段、調圧手段、制限手段として機能する電子制御装置30により制御される。電子制御装置30は、デジタルコンピュータからなり、双方向バス35によって相互に接続されたCPU(中央処理装置)36、ROM37、RAM38、入力ポート39および出力ポート40を備えている。
この電子制御装置30には、上記燃料圧力センサ31等の各種センサからの検出信号が入力ポート39を介して入力される。そして、電子制御装置30では、こうした各種センサの検出信号に基づき、筒内噴射弁17及び筒外噴射弁24等、内燃機関11における各箇所を機関運転状態に応じて制御する。例えば、燃料噴射制御に関して、本実施形態では、機関運転状態、具体的には内燃機関11の回転速度及び機関負荷に基づいて噴射すべき全要求噴射量が電子制御装置30により設定される。そして、筒内噴射弁17と筒外噴射弁24とが、全要求噴射量に相当する噴射量を好適に分担するようにその噴射量比率が電子制御装置30により設定される。なお、「内燃機関11の負荷」とは、例えば内燃機関11の1回転あたりの吸入空気量によって定義される量である。
さらに、本実施形態では、燃料噴射手段を構成する筒内噴射弁17と筒外噴射弁24とが以下のように構成されている。筒内噴射弁17の場合は、噴射燃料が吸入空気と混合され十分に気化するための期間が確保され難いため、その噴射燃料の微粒化を促進する必要がある。このため、高圧用ポンプ19により予め昇圧された高圧燃料を噴射する高圧仕様の燃料噴射弁とされている。一方、筒外噴射弁である筒外噴射弁24の場合は、燃焼室16に空気を供給する吸気ポート22aに燃料噴射するものであって、燃焼室へ吸気される間に吸入空気と十分に混合し気化する時間が確保されやすい。このため、筒内噴射弁17が噴射する高圧の燃料よりも低圧の燃料を噴射する低圧仕様の燃料噴射弁とされている。
次に、以上のように構成される燃料噴射制御装置1における制御について詳述する。まず、電子制御装置30は、所定周期でクランクセンサ32等の各種センサからの検出信号入力に基づき機関運転状態に応じて噴射されるべき全要求噴射量を設定する。機関運転状態に応じて全要求噴射量が設定されると、その全要求噴射量の燃料噴射が筒内噴射弁17及び筒外噴射弁24のうち少なくとも一方を使用して行われる。そして、筒内噴射弁17及び筒外噴射弁24の双方が併用される場合、各噴射弁は、それぞれの噴射量比率に相当する燃料を各々噴射し、機関全体として全要求噴射量を噴射する。このときの噴射量比率は、例えば図3に示すマップによって設定される。図3に示すように、機関運転状態が高負荷状態にあるときほど、筒内噴射の噴射量比率(=要求噴射量、以下「要求噴射量」というときは、筒内噴射弁17の噴射する燃料量を示すものとする。)を高め、その噴射燃料の気化熱を利用して吸気効率、ひいては機関出力の向上を図るようにしている。
さらに、この要求噴射量に相当する燃料噴射を好適に行うべく高圧燃料供給系の燃料供給圧(以下、「燃料供給圧」というときは、高圧用ポンプ19による筒内噴射弁17への燃料供給圧を示すものとする。)を高めるようにしている。具体的には、機関負荷が高いときほど高圧用ポンプ19からの燃料供給圧が高く(即ち燃料供給量が多く)なるように、電子制御装置30は調量弁21の燃料調量動作を制御している。
ところで、高圧燃料供給系は、高圧用ポンプ19の加圧に伴って生じる作動音や、燃料供給圧を調整するのに伴って生じる調量弁21の作動音等々、高圧燃料供給系から発生する騒音について問題となるところである。そこで、本実施形態では、要求噴射量の低い低負荷時には、高圧燃料供給系の燃料供給圧を下げるように調圧する。ここでは、例えば、最高圧から低圧用ポンプ26のフィード圧に調圧する程度の大幅な減圧(より具体的には、13MPaから0.4MPa程度の減圧)を意味する。そして、機関の運転状態が低負荷から再び高負荷へと移行した場合には、高負荷におけるトルク増大に対応した全要求噴射量を得るために、低負荷時に下げられた燃料供給圧を再び昇圧させる。
しかしここで、図5に示すように、一旦燃料供給圧を下げてしまうと、その後に高圧の目標供給圧P0まで昇圧させるには、ある程度の時間tを要することとなり、速やかな昇圧が困難となる。そして、燃料供給圧が目標供給圧P0に達するまでの間は、機関運転状態に応じて定まる噴射可能期間内で、要求噴射量に相当する噴射量を噴射しきれないという事態も生じうることとなる。
そこで、本実施形態では、一旦燃料供給圧を下げた後に、クランクセンサ32等からの検出信号入力に基づき機関運転状態が低負荷から高負荷へ移行したと判断した場合であって、筒内噴射弁17が要求噴射量を噴射できず燃料不足をきたす虞がある場合に、筒内噴射弁17の要求噴射量を減量する。そして、その減量分に相当する燃料量を筒外噴射弁24の筒外噴射量に増量する制御を行う。以下、この制御にかかる具体的な処理手順について図2に示すフローチャートを参照して詳述する。
この一連の処理では、まず、燃料圧力センサ31から検出された筒内噴射弁17の現在の燃料供給圧が予め設定された条件供給圧Aより低いか否かが判断される(ステップ101、以下「ステップ」を「S」と略す。)。即ち、筒内噴射弁17の昇圧不足により燃料噴射不足になる虞があるか否かが判断される。なお、本実施形態では、条件供給圧Aが、要求噴射量に対応した目標供給圧と同値に設定されている。
そして、燃料供給圧が条件供給圧Aより低いと判断された場合には(S101:YES)、内燃機関11の運転状態の負荷が予め定めた閾値負荷Bを超えているか否かが判断される(S102)。すなわち、ここでは内燃機関11の運転状態の変化がより多くの要求噴射量を設定する必要のある高負荷への移行であるか否かが判断される。
そして、機関負荷が閾値負荷Bを超えていると判断された場合には(S102:YES)、目標供給圧と現在の燃料供給圧との差圧(=P0−P)が、所定圧Cを超えているか否かが判断される(S103)。即ち、目標供給圧と現在の燃料供給圧との差圧が筒内噴射弁17の昇圧不足により燃料噴射不足を招く程度の大きさであるか否かが判断される。
なお、所定圧Cは、燃料供給圧を検出したその時点の運転状態に応じて定まる噴射可能期間内に筒内噴射弁17が要求噴射量の噴射を可能とする上限値である。また、ここで、筒内噴射弁17の要求噴射量が大きければそれだけの噴射量を噴射できるように燃料噴射圧(燃料供給圧)の高い燃料噴射が望まれるために目標供給圧は高くなる。一方、その逆に、要求噴射量が小さければ目標供給圧は低くなる。
そして、目標供給圧から現在の燃料供給圧を引いた差圧が所定圧Cを超えていると判断された場合には(S103:YES)、内燃機関11の回転速度に基づくガード噴射量Q(NE)のマップで現在の燃料供給圧に対応した例えば図4に示すマップが読み出される。そして、筒内噴射弁17の要求噴射量が要求噴射量よりも少量設定のガード噴射量Q(NE)を上回るときには、要求噴射量が同ガード噴射量Q(NE)に設定される(S104)。
ガード噴射量Q(NE)は、内燃機関11の運転状態に応じて定まる噴射可能期間内において筒内噴射弁17が噴射可能な上限噴射量とされている。図4に示すように、ガード噴射量Q(NE)は機関回転速度が高いときほど少なくなるように設定されている。これは、回転速度が低い場合には、要求噴射量に相当する燃料噴射を行えないという事態が生じにくく、筒内噴射量のガード噴射量Q(NE)をそれほど低くする必要がないことによる。燃料不足が生じにくいのは、回転速度が低く要求されるトルクが小さい低負荷の場合には、吸気行程等、燃料を噴射可能な時間が長く確保でき、筒内噴射弁17からより多くの燃料を噴射することができるからである。
一方、筒外噴射弁24の噴射量(筒外噴射量)は、ガード噴射量Q(NE)と全要求噴射量との差に相当する噴射量に増量設定される(S105)。本実施形態では、以上のようにして、要求噴射量を所定のガード噴射量Q(NE)に減量設定し、その減量設定により不足する燃料量を筒外噴射量への増量設定にて補うようにしている。この処理を行った後、本処理ルーチンは終了する。このように、本制御では、機関負荷が低負荷から高負荷に移行するに際して結果的に筒内噴射弁17の噴射量比率をガード噴射量Q(NE)まで低くなるように制限している。こうした制御を行うことにより、機関全体として全要求噴射量に相当する噴射量の燃料噴射を確実に行い、燃焼室内で燃料が不足することを抑制できる。
なお、図2において、現在の燃料供給圧が予め設定された条件供給圧Aよりも低くないと判断された場合には(S101:NO)、本処理は一旦終了される。現在の燃料供給圧が条件供給圧Aよりも低くない場合は、現在の燃料供給圧と目標供給圧との差圧がそれほどなく、また、たとえ差圧があったとしてもすぐに目標供給圧まで昇圧できると考えられるため、こうした場合は以下の処理(S102以下)は行われない。
また、内燃機関11の運転状態の負荷が閾値負荷Bを超えていないと判断された場合にも(S102:NO)、本処理は一旦終了される。つまり、筒内噴射弁17についてその燃料噴射の期間が噴射可能期間を超えてしまい、要求噴射量に相当する燃料噴射を行うことができずに噴射量が不足するという問題が生じる程度の高負荷となっている場合に筒内噴射量の減量設定を実行する。従って、機関運転状態が閾値負荷Bを超えていなければ、敢えてそれ以下の処理(S103以下)は行われない。
さらに、目標供給圧から現在の燃料供給圧を引いた差圧が所定圧Cを超えていないと判断された場合にも(S103:NO)、本処理は一旦終了される。燃料供給圧が低くても、目標供給圧との差圧が所定圧Cを超えていなければ、噴射可能期間内で要求噴射量を噴射することができるため、敢えてそれ以下の処理(S104以下)は行われない。
なお、現在の燃料供給圧が予め設定された条件供給圧Aより低いか否かの判断(S101)、内燃機関11の運転状態の負荷が閾値負荷Bを超えているか否かの判断(S102)、目標供給圧から現在の燃料供給圧を引いた差圧が所定圧Cを超えているか否かの判断(S103)、については、その各判断のステップの順序は変更しても良く、本実施形態において順序を限定するものではない。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)要求噴射量の低い低負荷時には、高圧燃料供給系の燃料供給圧を下げるように調圧する。このため、燃料供給圧を一定にした場合と比較して、高圧用ポンプ19の加圧に伴って生じる作動音や、燃料供給圧を調整するのに伴って生じる調量弁21の作動音等々、高圧燃料供給系から発生する騒音の発生を極力抑制できる。
(2)また、高圧燃料供給系の燃料供給圧が機関負荷に応じて低下した状況下で機関負荷が増大する場合であっても、筒内噴射弁17の噴射量比率が低く設定される一方、筒外噴射弁24の噴射量比率が高められるため(図2、S104、S105)、筒内噴射弁17の燃料噴射量が少なくなる。その結果、筒内噴射弁17の燃料噴射可能な期間が確保されやすくなるともに、筒内噴射弁17の燃料噴射圧(燃料供給圧)低下に起因する噴射燃料の不十分な微粒化、ひいてはこれに伴う燃焼悪化についてもこれを抑制することができる。
(3)目標供給圧と現在の燃料供給圧との差圧が所定圧Cを超えていると判断された場合に(図2、S103:YES)、筒内噴射弁17の筒内噴射量が減量設定される。従って、差圧が大きいために燃料噴射量不足になりやすい状況下において、燃料噴射量不足による出力低下等の悪影響の発生をより確実に回避することができる。また、差圧が所定圧Cを超えていなければ、上記減量設定はなされないため、高圧仕様の筒内噴射弁17による燃焼室16内への直接燃料噴射を不必要に抑制することがないようにできる。
(4)筒内噴射弁17の要求噴射量がガード噴射量Q(NE)を上回るときに、要求噴射量をガード噴射量Q(NE)と等しくなるように減量設定する(図2、S104)。従って、要求噴射量がガード噴射量Q(NE)を上回って筒内噴射弁17の実際の噴射量が不足する事態が発生しやすい状況下において、さらに確実に燃料悪化を抑制することができる。
(5)さらに、現在の燃料供給圧が条件供給圧A(=目標供給圧)より低いと判断された場合において(図2、S101:YES)、内燃機関11の運転状態の変化が閾値負荷Bを超えた高負荷への移行であると判断された場合に(図2、S102:YES)、筒内噴射弁17の筒内噴射量が減量設定される。従って、機関運転状態が低負荷から高負荷となった場合において、高圧仕様の筒内噴射弁17による燃焼室16内への直接燃料噴射を不必要に抑制することがないようにでき、内燃機関11の安定性を向上することができる。
(6)上記実施形態では、ガード噴射量Q(NE)が、内燃機関11の運転状態に応じて定まる噴射可能期間内において要求噴射量の噴射が可能な上限噴射量に設定されている。従って、燃料噴射量不足を回避するために要求噴射量をガード噴射量Q(NE)に減量設定した場合には、その減量設定された後の要求噴射量に相当する噴射量が確実に燃焼室内へ直接噴射供給されることになる。よって、筒内噴射弁17の燃料供給圧が条件供給圧A(目標供給圧)よりも低い場合において燃料噴射量不足により燃焼悪化を招くという虞を好適に抑制できる。
(7)上記実施形態では、内燃機関11の機関回転速度に基づくマップから、ガード噴射量Q(NE)を読み出すようにしている。そして、そのマップによれば、ガード噴射量Q(NE)は、機関回転速度が高いときほど少なく設定されている。従って、機関回転速度による噴射可能な機関の変化に即してガード噴射量Q(NE)をより適切に設定することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ガード噴射量Q(NE)は、内燃機関11の運転状態に応じて定まる噴射可能期間内において要求噴射量の噴射が可能な上限噴射量に設定したが、上限噴射量以下の値に設定してもよい。
・また、ガード噴射量Q(NE)の変化は機関回転速度の変化に対応して変化するものとしたが、例えば、燃料温度や噴射雰囲気の温度で代表される温度状態等その他の内燃機関11の運転状態に基づき対応変化するものとしてもよい。
・さらに、ガード噴射量Q(NE)は、機関回転速度が高いときほど少なく設定したが(図4参照)、必ずしもそうでなくてもよい。筒内噴射弁17が噴射可能期間内において噴射しきることができる範囲内に設定されたガード噴射量Q(NE)であれば、噴射量不足を招来することはない。
・現在の燃料供給圧が予め設定された条件供給圧Aより低いか否かの判断ステップ(S101)を省略しても上述した(1)〜(4)、(6)、(7)の効果については得ることができる。
・内燃機関11の運転状態の負荷が閾値負荷Bを超えているか否かの判断ステップ(S102)を省略しても上述した(1)〜(4)、(6)、(7)の効果については得ることができる。
・目標供給圧から現在の燃料供給圧を引いた差圧が所定圧Cを超えているか否かの判断ステップ(S103)を省略しても上述した(1)、(2)、(4)〜(7)の効果については得ることができる。
・上記実施形態では、要求噴射量を所定のガード噴射量Q(NE)に減量設定し、その減量設定により不足する燃料量を筒外噴射量への増量設定にて補うようにしている。しかし、筒内噴射弁17と筒外噴射弁24とでは、燃料処理力及び出力性能において相違するため、それらを考慮して必ずしも筒内噴射弁17の減量量に相当する燃料を筒外噴射弁24の増量量として設定する必要はない。
・上記実施形態では、条件供給圧Aを目標供給圧と同値に設定したが、目標供給圧より低圧に設定してもよい。
・筒内噴射弁17の燃料供給圧は、燃料圧力センサ31を用いることなく、内燃機関11の機関回転速度や全要求噴射量等の内燃機関11の運転状態から予測するようにしてもよい。
・上記実施形態では、筒外噴射弁を吸気ポート22aに燃料を噴射する筒外噴射弁24として具体化したが、吸気ポート22a以外の吸気通路において燃料を噴射する噴射弁を採用するようにしてもよい。
本実施形態に係る燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図。 本実施形態における燃料噴射制御処理ルーチンのフローチャート。 機関回転速度と機関負荷に応じて筒内噴射弁の噴射量比率を設定したマップを示す図。 筒内噴射弁による燃料噴射量のガード噴射量を求めるためのマップを示す図。 機関負荷の変化に伴う筒内噴射弁の燃料供給圧の変化を説明するための図。
符号の説明
A…条件供給圧、B…閾値負荷(所定値)、C…所定圧、P…現在の燃料供給圧、P0…目標供給圧、Q(NE)…ガード噴射量(所定量)、1…燃料噴射制御装置、11…筒内噴射式内燃機関(内燃機関)、12…気筒、13…ピストン、14…クランクシャフト、15…コンロッド、16…燃焼室、17…筒内噴射弁、18…デリバリパイプ、19…高圧用ポンプ(ポンプ)、20…点火プラグ、21…調量弁、22…吸気通路、22a…吸気ポート、23…排気通路、24…筒外噴射弁、25…デリバリパイプ、26…低圧用ポンプ、27…燃料タンク、30…電子制御装置、31…燃料圧力センサ、32…クランクセンサ、33…アクセルセンサ、34…エアフローメータ、35…双方向バス、36…CPU(設定手段、調圧手段、制限手段)、37…ROM、38…RAM、39…入力ポート、40…出力ポート。

Claims (6)

  1. 高圧燃料供給系から供給される燃料を燃焼室に直接噴射供給する筒内噴射弁及び吸気通路に噴射供給する筒外噴射弁と、内燃機関が高負荷状態にあるときほど前記筒内噴射弁の噴射量比率を高めるようにこれを設定する設定手段とを備える内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記高圧燃料供給系は機関負荷に応じて前記筒内噴射弁に供給する燃料供給圧を調圧する調圧手段と、
    機関負荷が低負荷から高負荷に移行するに際して前記筒内噴射弁の噴射量比率が低くなるようにこれを制限する制限手段とを備える
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記制限手段は前記高圧燃料供給系から供給される燃料供給圧が前記筒内噴射弁の目標燃料供給圧よりも所定圧以上低いことを条件に前記噴射量比率の制限を実行する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 請求項1又は2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記制限手段は前記噴射量比率の制限に際して前記筒内噴射弁の要求燃料噴射量が所定量を上回るときにこれを同所定量と等しく設定する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 請求項3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記制限手段は前記噴射量比率の制限に際して機関回転速度が高いときほど前記所定量を少なく設定する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 請求項1〜4記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記制限手段は機関負荷が所定値以上であることを条件に前記噴射量比率の制限を実行する
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 請求項1〜5記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、
    前記高圧燃料供給系は燃料を高圧に昇圧する加圧ポンプと同ポンプにより加圧されて筒内燃料噴射弁に供給される燃料の量を調節する調量弁とを含む
    ことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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