JP2006019227A - ポリフェニレンスルフィド(pps)樹脂組成物、燃料電池用セパレーター、燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド(pps)樹脂組成物、燃料電池用セパレーター、燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池に必要とされる諸特性を満足する高品質な燃料電池用セパレーターを効率よく得ることができるPPS樹脂組成物、燃料電池用セパレーター、燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法を提供すること。
【解決手段】PAS樹脂、導電性フィラー(黒鉛及び炭素繊維)、ポリオレフィン系ワックスを含有し、導電性フィラーの含有率が樹脂組成物全体の75〜85質量%であり、炭素繊維の含有率が樹脂組成物全体の1.0〜5.0質量%、ポリオレフィン系ワックス/(PAS樹脂+ポリオレフィン系ワックス)が0.05〜0.3であり、PAS樹脂の溶融粘度が20Pa・sec以下であり、黒鉛の平均粒子径が50〜150μm、嵩密度が0.6〜1.0g/cmであるPPS樹脂組成物、燃料電池用セパレーター54、燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cells)用セパレーターとして使用することができるポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる燃料電池用セパレーター、当該セパレーターを備えた燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法に関する。
近年、環境問題やエネルギー問題の観点から、水素を含有する燃料ガスと、酸素を含有する空気を利用して電気分解反応により発電させ、水以外の排出物がなくクリーンな発電装置として燃料電池が注目されており、家庭用途や自動車用途等を対象とした開発が活発に行われている。このような燃料電池は、低公害で高い発電効率を有する一方、単位セル(1つの電池)から取り出すことができる電圧が低いため、各単位セルを数10〜数100個直列に積層して使用されている。また、この燃料電池の中でも、いわゆる固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cells)は、電解質膜として固体高分子膜を使用した燃料電池であり、動作温度が低く効率が高いことから、自動車用や家庭用のコージェネレーションシステム用として大いに注目されている。
ここで、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、一般に、電解質膜をパーフルオロスルフォン酸系のポリマーとして、その両側に燃料極と酸化極(アノードとカソードにもなる)が接合されて膜/電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assemblies)を形成している。この固体高分子型燃料電池(PEFC)のアノードやカソードとしては、通常、白金(Pt)系の貴金属を担持させたカーボンブラックを炭素繊維紙に塗布したものが用いられており、そして、膜/電極接合体の一方に酸素、もう一方に水素を接触させることにより電流を発生させるのが固体高分子型燃料電池(PEFC)の発電原理である。
一方、前記の構成からなる燃料電池の各単位セルを積層する場合にあっては、各単位セルに電気伝導性を持たせ、単位セルに対して燃料ガス及び空気を連続的に供給し、また流路基板としての機能を果たすものがセパレーター(障壁板)である。このセパレーターは、製品面として、電極からの集電機能を備えるため、高い導電性(電気伝導性)が必要とされ、また、その表面に対して燃料ガス等が通過する流路を形成する等により、ガス不透過性、熱伝導性、圧縮強度、機械的強度、電解質(リン酸、硫酸等)、イオンに対する耐腐食性等の諸特性が要求されるとともに、形状そのものについても高い寸法精度が要求されていた。
このような燃料電池用セパレーターは、従来、フェノール樹脂などの樹脂材料と炭素粉末の混合組成物を平板状に成形した後、不活性ガス雰囲気等で焼成させて炭化ないしは黒鉛化処理することにより導電性の平板を形成させ、この導電性の平板を切削加工することにより表面に所定の溝を形成させるようにしている。しかし、この方法により得られるセパレーターは、高い導電性を得るための焼成工程が不可欠であるとともに、焼成後の切削加工が必要なことから、コスト高となるほか、生産性に劣り、大量生産には適さなかった。
一方、このような問題を解消する技術として、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選択された非炭素質樹脂と、球状の黒鉛等からなる導電剤とを含む樹脂組成物を射出成形または圧縮成形して、厚み方向の体積抵抗が0.15Ω・cm以下で、曲げ強度が3〜20kgf/mmである燃料用セパレーターが開示されている(例えば、特許文献1)。この技術は、フェノール樹脂と黒鉛粉末との混合樹脂組成物を金型に入れて加熱加圧により圧縮成形するものである。また、他の技術としては、黒鉛粒子と非炭素質熱可塑性樹脂とで構成され、平均粒子径(D50%)が40〜120μmの黒鉛粗粒子とを特定の配合比で含有する熱可塑性樹脂組成物からなる燃料電池用セパレーターに関する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
国際公開第99/49530号パンフレット 特開2001−126744号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術による燃料電池用セパレーターは、樹脂組成物中の樹脂含有量が少ないため、導電剤の分散が不均一となりやすく、セパレーターに求められる諸特性を安定的に発現させることは困難であった。加えて、かかる技術は生産性ないし量産性の面からも問題があった。
また、特許文献2に開示される技術も、多量に含有される黒鉛粒子と他の樹脂成分等とのバランスが悪いため黒鉛成分を良好に分散させることが難しく、また、粘度が高く流動性も悪く、ペレット形状の樹脂組成物を製造することが極めて困難であり、生産性が悪く量産することができなかった。加えて、当該樹脂組成物を射出成形等でセパレーターを成形するに際しても、樹脂組成物の熱伝導率が非常に高くなるため金型内部での冷却固化が急速に行われるとともに、流速が低下するとチキソトロピック性のため更に粘度が上昇して流動性が悪くなってしまっていた。そして、成形されたセパレーターも、厚み方向の肉厚変化が大きく、更にはヒケも生じてしまい、実用性について大きな問題があった。
前記の課題に鑑み、本発明の目的は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池(PEFC)に必要とされる諸特性を満足する高品質の燃料電池用セパレーターを効率よく得ることができるポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる燃料電池用セパレーター、当該セパレーターを備えた燃料電池、及び燃料電池用セパレーターの製造方法を提供することにある。
前記の課題を解決すべく、本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂と、(B)導電性フィラーとして(b1)黒鉛及び(b2)炭素繊維と、(C)ポリオレフィン系ワックスを含有するポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物であって、(B)導電性フィラーの含有率が樹脂組成物全体の75〜85質量%であり、(b2)炭素繊維の含有率が樹脂組成物全体の1.0〜5.0質量%であり、(C)ポリオレフィン系ワックス/((A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂+(C)ポリオレフィン系ワックス)が0.05〜0.3であり、(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の溶融粘度が、樹脂温度300℃、せん断速度2000sec−1において20Pa・sec以下であり、(b1)黒鉛の平均粒子径(D50%)が50〜150μmであり、嵩密度が0.6〜1.0g/cmであることを特徴とする。
この本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂と、導電性フィラーとして黒鉛及び炭素繊維と、ポリオレフィン系ワックスを含有し、導電性フィラー及び炭素繊維の樹脂組成物全体に対する含有率を特定の範囲とし、また、同様に、ポリオレフィン系ワックスの樹脂成分(ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂とポリオレフィン系ワックス)に対する割合を特定の範囲とし、更に、ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の溶融粘度、並びに黒鉛の平均粒子径(D50)及び嵩密度を特定範囲とする構成を採用している。
よって、黒鉛や炭素繊維といった導電性フィラーを高い含有率(樹脂組成物全体の75〜85質量%)で含有するため、導電性に優れた樹脂組成物となるとともに、溶融混練時の流動性も良好で、かつ、黒鉛等の分散性もよく、所望の形状に寸法精度よく成形することができる樹脂組成物を提供可能とする。また、かかる構成の樹脂組成物は、樹脂成分に対して導電性フィラーを高い含有率でバランスよく分散させた燃料電池用セパレーター(特に、固体高分子型燃料電池用セパレーター)用の成形材料として広く利用することができる。
そして、本発明の樹脂組成物は、各成分がバランスよく分散されているため、簡便に製造することができ、生産性の高い低コストな成形材料となる。
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、前記した(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂が、ポリ(パラ)フェニレンスルフィドであることが好ましい。
この本発明によれば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を構成する(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂をポリ(パラ)フェニレンスルフィドとしているので、樹脂組成物の流動性及び黒鉛等の導電性フィラーの分散性が更に良好となり、前記の効果をより一層好適に享受することができる。
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、前記した(b2)炭素繊維が、繊維径が10μm以下のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及び/または繊維径が0.05〜0.5μmの気相法炭素繊維(VGCF)であることが好ましい。
この本発明によれば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を構成する(b2)炭素繊維として特定形状のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維や気相法炭素繊維(VGCF:Vapor Grown Carbon Fibers)を採用しているので、樹脂組成物ないしは当該樹脂組成物を用いて成形された成形品における機械的強度の補強効果が向上されるとともに、樹脂組成物等の導電性やこれら樹脂組成物における炭素繊維の分散性も良好となる。
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、前記した(C)ポリオレフィン系ワックスが酸化ポリエチレン系ワックスであることが好ましい。
この本発明によれば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を構成する(C)ポリオレフィン系ワックスとして酸化ポリエチレン系ワックスを採用しているので、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物の流動性や、当該樹脂組成物中における黒鉛の分散性が更に優れたものとなり、また樹脂組成物の耐熱性も向上することとなる。
本発明の燃料電池用セパレーターは、前記した本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物からなることを特徴とする。
かかる本発明の燃料電池用セパレーターは、前記したポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物からなるので、かかるポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物の奏する効果を好適に享受する燃料電池用セパレーターとなる。
すなわち、本発明の燃料電池用セパレーターは、黒鉛や炭素繊維といった導電性フィラーを高含有率で、樹脂成分に対して効率よく分散した樹脂組成物からなるので、導電性(電気伝導性)、ガス不透過性、熱伝導性、圧縮強度、機械的強度、耐腐食性といった諸特性を備えることができ、例えば、導電性(電気伝導性)として、体積抵抗率が20mΩ・cm以下(好ましくは10mΩ・cm以下)、機械的強度として、曲げ弾性率が50MPa以上(好ましくは70MPa以上)といった諸特性を好適に具備することができる。
また、本発明の燃料電池用セパレーターは、成形性に優れた本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を使用しているので、生産性に優れ、量産性が良好な燃料電池用セパレーターを低コストで提供可能とする。
本発明の燃料電池用セパレーターは、金型温度が150〜250℃とされた金型の合わせ面により形成され、間隔を0.5〜5.0mmとしたキャビティ空間に対して前記した本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を射出充填して、充填完了後、前記キャビティ空間を閉じて、当該空間に充填されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、圧縮速度を1.0〜20mm/秒、圧縮圧力を10MPa以上として圧縮賦形することにより得られることが好ましい。
かかる本発明の燃料電池用セパレーターは、本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、特定の手段による射出充填及び圧縮賦形して得られるものであるので、
成形過程中の当該樹脂組成物の流動性が非常に良好となる。従って、得られる燃料電池用セパレーターも、導電性フィラーを高含有率で充填することとなり、前記した効果をより一層好適に奏することができるものとなる。
本発明の燃料電池は、前記した本発明の燃料電池用セパレーターを備えることを特徴とする。
この本発明の燃料電池は、前記した本発明の燃料電池用セパレーターを備えているので、当該セパレーターの奏する作用・効果を好適に享受する燃料電池となる。
特に、本発明の燃料電池は、固体高分子型燃料電池(PEFC)として適用することにより、その効果を最大限に発揮することができる。
本発明の燃料電池用セパレーターの製造方法は、金型温度が150〜250℃とされた金型の合わせ面により形成され、間隔を0.5〜5.0mmとしたキャビティ空間に対して前記した本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を射出充填する射出・充填工程と、充填完了後、前記キャビティ空間を閉じて、当該空間に充填されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、圧縮速度を1.0〜20mm/秒、圧縮圧力を10MPa以上として圧縮賦形する圧縮・賦形工程からなることを特徴とする。
この本発明の製造方法によれば、燃料電池用セパレーターを製造するにあたり、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物の射出圧縮成形が、所定の射出・充填工程及び圧縮・賦形工程により行われるので、成形過程中の当該樹脂組成物の流動性が非常に良好となるため、導電性フィラーを高含有率で充填し、必要とされる諸特性を具備した燃料電池用セパレーターを、優れた生産性により効率よく成形することができる製造方法を提供可能とする。
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物(以下、単に「PPS樹脂組成物」とする場合もある)は、ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂、(B)導電性フィラーである(b1)黒鉛及び(b2)炭素繊維、並びに(C)ポリオレフィン系ワックスを基本構成として含有してなるものであり、かかるPPS樹脂組成物からなる成形品は、例えば、燃料電池用セパレーター、特に固体高分子型燃料電池(PEFC)用セパレーター等の構成材料(成形材料)として広く適用することができる。
(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂:
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を構成する(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂(以下、単に「PAS樹脂」とすることもある)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質が優れるエンジニアリングプラスチックであり、成形材料として電気、電子部品及び自動車部品など各種の用途に用いられている。本発明のPPS樹脂組成物に使用される当該樹脂としては、式(I)で示される構造((パラ)フェニレンスルフィドのユニット構造)の繰り返し単位が樹脂全体の70モル%以上、好ましくは90モル%以上含有するものを使用することが好ましい。式(I)で示される構造の繰り返し単位が樹脂全体の70モル%未満であると、得られるPPS樹脂組成物の耐熱性が著しく悪くなる場合がある。
( (パラ)フェニレンスルフィド )
Figure 2006019227
また、他の繰り返し単位としては、例えば下記式(II)〜式(IV)に示される化合物の中から選択される少なくとも一種を含有していてもよいが、本発明のPPS樹脂組成物としては、前記した式(I)で表される(パラ)フェニレンスルフィドを主として、当該式(II)〜式(IV)で示される単位を実質的に含まない重合体であって、通常、ポリ(パラ)フェニレンスルフィドと呼ばれているポリアリーレンスルフィド(PAS)であることが好ましい。
( (メタ)フェニレンスルフィド )
Figure 2006019227
( (オルト)フェニレンスルフィド )
Figure 2006019227
( ビフェニレンスルフィド )
Figure 2006019227
また、(A)PAS樹脂の溶融粘度としては、樹脂温度300℃、せん断速度2000sec−1における溶融粘度が20Pa・sec以下であり、10Pa・sec以下であることが好ましい。(A)PAS樹脂の溶融粘度を10Pa・sec以下とすることにより、PPS樹脂組成物の流動性を良好な状態に維持することができ、PPS樹脂組成物の製造性及び当該樹脂組成物からなる燃料電池用セパレーター等の成形品の成形性ないし量産性を優れたものとすることができる。
また、ポリ(パラ)フェニレンスルフィドは、まず、比較的低分子量の重合体を得た後、この重合体を酸素雰囲気下で加熱・架橋処理して溶融粘度を調整する手段(手段1)や、実質的に直鎖状の重合体を重合方法のみで得る手段(手段2)等の種々の手段を用いることにより得ることができるが、手段1で得られたポリ(パラ)フェニレンフルフィドは、金属不純物を多く含んでしまう場合があり、この結果、架橋処理において一部が酸化されてガスが発生する場合があるため、本発明のPPS樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(PAS)であるポリ(パラ)フェニレンスルフィドとしては、これらの手段のうち、手段2により得られたものを使用することが好ましい。
また、この手段2では、原料として硫化ナトリウムや水硫化ナトリウムが使用されることがあるが、ナトリウムを含まない硫化物を原料として得られたポリ(パラ)フェニレンフルフィド(PAS樹脂となる)を使用することが好ましい。ナトリウムを含む硫化物を原料とする系では、副生成物である塩が比較的多く存在してしまい、吸水性が増加するとともに、吸水して生成した金属イオンが悪影響を与える場合があるため好ましくない。
ここで、本発明のPPS樹脂組成物における残留ナトリウムの含有量は、500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下がより好ましい。PPS樹脂組成物における残留ナトリウムの含有量をかかる範囲にすることにより、副生成物である塩の生成を抑制し、PPS樹脂組成物に悪影響を与える金属イオンの生成を効果的に防止することができる。
(B)導電性フィラー:
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を構成する(B)導電性フィラーとしては、(b1)黒鉛及び(b2)炭素繊維を使用する。
(b1)黒鉛:
(B)導電性フィラーを構成する(b1)黒鉛としては、従来公知の各種黒鉛を使用することができ、例えば、グラファイト構造を有する結晶質の炭素粒子であり、天然鉱物として発掘され精製した天然黒鉛や、石油ピッチ等を例えば2000℃以上の温度で焼成、結晶化させた後、粉砕、分級して得られる人造黒鉛等を使用することができる。また、この他、黒鉛材料を強酸及び酸化剤で処理した黒鉛層間化合物を熱処理した膨脹黒鉛を使用してもよい。
ここで、黒鉛の形状は、鱗片状、不定形粒子状、球状などの各種形状とすることができ、球状に近い形状とすることが好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物にあって、この(b1)黒鉛は含有量が比較的多く、そのため当該樹脂組成物内で凝集してチキソトロピック性が大きくなり、その形態(平均粒子径(D50%)や嵩密度)によっては、流動性が悪く、樹脂組成物を混練調製することが困難となってしまう。
従って、(b1)黒鉛の粒子形態としては、平均粒子径(D50%)が50〜150μmであり、かつ嵩密度が0.6〜1.0g/cmであればよく、平均粒子径が80〜120μm、かつ嵩密度が0.8〜1.0g/cmであることが好ましい。黒鉛の平均粒子径(D50%)や嵩密度をかかる範囲とすることにより、樹脂組成物の混練調製における流動性の低下を抑制することができる。
なお、(b1)黒鉛は、2つの粒度分布をもつ黒鉛粒子をブレンドしたものであってもよく、流動性向上のためには、平均粒子径(D50%)が5倍以上異なる2つの単分散黒鉛粒子をブレンドして用いるようにしてもよい。
なお、平均粒子径(D50%)とは、粒子の細かいものから重量を換算して、全体の50%の重量分となる粒子径に相当する平均粒子径であり、このような粉体の粒度分布は、重量沈降法、遠心沈降法などの公知の方法で容易に測定することができる。また、(b1)黒鉛の嵩密度は、例えば、JIS K6891に準拠して測定した値を用いることができる。
(b2)炭素繊維:
導電性フィラーを構成する(b2)炭素繊維としては、特に制限はなく、例えば、石炭系または石油系のピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN:Poly Acrylo Nitrileの略)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等の従来公知の炭素繊維を使用することができ、繊維の製造形態としては、いわゆるチョップド炭素繊維やミルド炭素繊維等による炭素繊維を使用してもよい。
また、近年開発されている、気相法で製造される結晶質の炭素繊維である気相法炭素繊維(VGCF:Vapor Grown Carbon Fibers)や、カーボンナノファイバーを使用してもよい。この気相法炭素繊維(VGCF)は導電性の点からは前記した一般の炭素繊維よりも好ましいが、補強効果が小さいためこれら一般の炭素繊維と併用して使用することが好ましい。
炭素繊維の繊維径は、一般に、10μm以下のものを使用することができる。炭素繊維は本発明のPPS樹脂組成物においては補強材の役割を果たすとともに、当該樹脂組成物に導電性を付与する役割を果たすものであり、繊維径が比較的細い炭素繊維を使用することが好ましい。
このため、炭素繊維としては、繊維径が10μm以下、好ましくは8μm以下のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維や、繊維径が0.05〜0.5μm、好ましくは0.07〜0.2μmの気相法炭素繊維(VGCF)を使用することが望ましい。これらの炭素繊維を使用することにより、PPS樹脂組成物や当該樹脂組成物を用いて成形された成形品における機械的強度の補強効果が更に向上される。また、樹脂組成物等の導電性やこれらにおける炭素繊維の分散性も良好となる。
なお、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を使用する場合にあっては、メッキ等により表面にニッケル等の金属を被覆したものを使用すれば、導電性を更に向上させることができる。
炭素繊維の繊維長は、特に制限はないが、一般に、0.05〜1.0mm程度とすることが好ましく、0.1〜0.5mm程度とすることが特に好ましい。
(C)ポリオレフィン系ワックス:
本発明のPPS樹脂組成物を構成する(C)ポリオレフィン系ワックスは、前記した(A)PAS樹脂に対する添加剤としてPPS樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、前記した(b1)黒鉛の分散性の向上させるものである。また、(C)ポリオレフィン系ワックスの添加により、PPS樹脂組成物の耐熱性を良好なものとする。
このポリオレフィン系ワックスとは、重合により製造された人工ワックスであり、例えば、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、酢酸ビニル−エチレン共重合体ワックス等を使用することができる。また、酸化ポリエチレン系ワックス、酸化ポリプロピレン系ワックス、MAH共重合ポリプロピレンワックス、酸化酢酸ビニル−エチレン共重合体ワックス等の酸化ポリオレフィン系ワックスも使用することができる。
本発明のPPS樹脂組成物を構成する(C)ポリオレフィン系ワックスとしては、この中でも、酸化ポリオレフィン系ワックスを使用することが好ましく、ポリエチレンポリマーを酸化処理してワックスとした酸化ポリエチレン系ワックスを使用することが特に好ましい。これにより、PPS樹脂組成物の流動性や当該樹脂組成物中における(b1)黒鉛の分散性が更に優れたものとなり、またPPS樹脂組成物の耐熱性も向上する。特に、酸化ポリエチレン系ワックスは、本発明のPPS樹脂組成物を加工する場合の標準的な温度(320〜340℃)でも耐熱性に優れ、かつ相分離による白化も起こりにくいため、(A)PAS樹脂に対して特に優れた添加剤となる。
また、酸化ポリエチレン系ワックス等の酸化ポリオレフィン系ワックスは、一般に、平均分子量が大きくなるほど耐熱性が高くなり、酸化度が高くなるほど極性が高くなって(A)PAS樹脂や(B)導電性フィラーとの相溶性が向上する。
酸化ポリオレフィン系ワックスの平均分子量としては、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定される重量平均分子量(M)が4000以上であることが好ましく、10000以上であることが特に好ましい。
また、酸化度は、10以上であることが好ましく、15以上であることが特に好ましい。なお、本発明における「酸化度」とは、ポリオレフィン系ワックス1gを中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数を示すものである。
なお、前記(A)〜(C)の必須成分から構成される樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、従来公知のカップリング剤、離型剤、可塑剤、耐電防止剤等の添加剤や、エラストマー(ゴム)等の衝撃改良用樹脂、及び無機フィラー等を適宜添加するようにしてもよい。
本発明のPPS樹脂組成物における(B)導電性フィラーの含有率は、樹脂組成物全体の75〜85質量%であり、80〜84質量%であることが好ましい。PPS樹脂組成物全体に対する(B)導電性フィラーの含有率が75質量%より小さいと、PPS樹脂組成物を用いて燃料電池用セパレーターを製造した場合における当該セパレーターに必要とされる導電性(例えば、体積抵抗率が100mΩ・cm以下)を満足することが困難となる。一方、(B)導電性フィラーの含有率が85質量%を超えると、PPS樹脂組成物全体に対する(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の割合が小さくなり、(C)ポリオレフィン系ワックスを添加しても流動性が向上されず、溶融混練等によりPPS樹脂組成物を得ることが困難となり、樹脂組成物の製造性が大きく劣ることになる。
また、本発明のPPS樹脂組成物における(b2)炭素繊維の含有率は、PPS樹脂組成物全体の1.0〜5.0質量%であり、2.0〜5.0質量%であることが好ましい。PPS樹脂組成物全体に対する(b2)炭素繊維の含有率が1.0質量%より小さいと、当該樹脂組成物の導電性及び機械的強度の補強効果が期待できない。一方、(b2)炭素繊維の含有率が5.0質量%を超えると、PPS樹脂組成物の流動性が悪化することに加えて、PPS樹脂組成物を用いて燃料電池用セパレーターを製造した場合における当該セパレーターに反りが発生する場合がある。また、炭素繊維は高価な材料であるため、原料コストが上昇してしまい、セパレーターの構成材料としてのコストパフォーマンスに劣ることとなり、得られる燃料電池用セパレーターの汎用性がなくなるため好ましくない。
そして、樹脂成分((B)導電性フィラー以外の成分)における(C)ポリオレフィン系ワックスの割合として、(C)ポリオレフィン系ワックス/((A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂+(C)ポリオレフィン系ワックス)が0.05〜0.3であり、0.1〜0.25であることが好ましい。樹脂成分中のポリオレフィン系ワックスの割合がかかる範囲内であれば、(A)PAS樹脂の溶融粘度を低下させるとともに、(B)導電性フィラーの分散性とPPS樹脂組成物の生産性を向上させることができる。その一方、樹脂成分に対する(C)ポリオレフィン系ワックスの割合が0.05より小さいと、これらの効果が期待できないこととなり、また、樹脂成分に対する(C)ポリオレフィン系ワックスの割合が0.3を超えると、当該ワックスからのガス発生が増えてしまい、溶融混練時のベントアップや、得られる燃料電池用セパレーターの外観不良が多くなる。
本発明のPPS樹脂組成物を得る手段としては特に制限はなく、公知の方法が使用される。すなわち、前記した(A)〜(C)の必須成分を含む原料成分をあらかじめヘンシェルミキサーなどの攪拌機でドライブレンドした後、十分な混練能力のある単軸あるいは多軸の押出機、混合ロール、ニーダーなどで溶融ないし混練する方法などで簡便に製造することができる。
また、PPS樹脂組成物を得るに際して押出機を用いる場合には、原料成分の一部を押出機の途中からフィード(サイドフィード)して配合することもできる。例えば、炭素繊維以外の成分をあらかじめドライブレンドしておき、二軸押出混練機に連続計量フィードし、炭素繊維を押出機の中間程度の位置にサイドフィードして連続的に混練し、その後十分に減圧脱気して製造する方法が挙げられる。
なお、このPPS樹脂組成物を用いて燃料電池用セパレーターを製造する場合にあっては、PPS樹脂組成物はその後いったん公知の方法でペレットに成形されて成形材料として使用されてもよいし、または引き続きロールプレス等の成形工程にそのまま使用されていてもよい。
このようにして得られた本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、
黒鉛や炭素繊維といった導電性フィラーを高い含有率(樹脂組成物全体の75〜85質量%)で含有するため、導電性に優れた樹脂組成物となるとともに、溶融混練時の流動性も良好で、かつ、黒鉛等の分散性もよく、所望の形状に成形することができるため、例えば、樹脂成分に対して導電性フィラーを高い含有率でバランスよく分散させた燃料電池用セパレーター(特に、固体高分子型燃料電池用セパレーター)等として広く利用することができる。
また、かかる構成の本発明のPPS樹脂組成物は、(A)〜(C)の各成分がバランスよく分散されているため、簡便に製造することができ、生産性が高くコストを低減することができる成形材料となる。
図1は、本発明の射出圧縮成形方法により得られる成形品によりなる燃料電池用セパレーターを使用した燃料電池50の基本的な構成例を示した概略図である。
図1に示す燃料電池50は、燃料極51、電解質膜(電解質板)52、酸化極板53(これらで膜/電極接合体(MEA)を形成する)、及び燃料電池用セパレーター54(以下、単に「セパレーター54」とすることもある)からなり、このセパレーター54の表裏両面に対して、それぞれ複数の溝55が形成されている。
このようなセパレーター54は、導電性(電気伝導性)、ガス不透過性、熱伝導性、圧縮強度、機械的強度、電解質(リン酸、硫酸等)、イオンに対する耐腐食性といった諸特性を備えることが必要とされ、導電性(電気伝導性)としては、例えば、体積抵抗率が20mΩ・cm以下であることが好ましく、10mΩ・cm以下であることがより好ましい。また、機械的強度としては、例えば、曲げ弾性率が50MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることがより好ましい。一方、本発明のPPS樹脂組成物によりなる燃料電池用セパレーター54は、黒鉛や炭素繊維といった導電性フィラーを高含有率で、樹脂成分に対して効率よく分散しているため、これらの諸特性を効率的に具備することができるものである。
また、本発明のPPS樹脂組成物を用いてかかる形状の燃料電池用セパレーター54を得るには、例えば、計量射出ができる一般的な射出成形方法、または圧縮成形方法などが使用できるが、性能の高いセパレーター54を得るためには、原料となる樹脂組成物の溶融粘度が高くなる場合が多いため、樹脂組成物の流動性により使用される成形法が選択されることとなる。一般的な射出成形方法は、樹脂組成物の溶融粘度が比較的低い場合、または必要とされる流動長の割には肉厚が大きい場合に使用される。なお、かかる射出成形方法は、寸法精度の高い成形品を効率的に生産できるという点では好適な製造方法であるが、流動性が不足する場合には、後記する超臨界不活性ガス発泡射出成形方法や射出圧縮成形方法等を使用することが好ましい。
射出成形方法では、前記により得られた本発明のPPS樹脂組成物を、好ましくはあらかじめ混練されたペレット状とした後溶融混練し、適当な成形条件により、所定の形状をもつ金型のキャビティ内に射出成形することにより、平板状の溝付きセパレーター54を製造することができる。
ここで、成形条件の具体的な一例を示すと、成形機の設定温度(樹脂温度)を300〜400℃(好ましくは320〜380℃)、金型温度は120℃〜200℃(好ましくは130〜170℃)、射出圧力は50〜300MPa(好ましくは100〜250MPa)程度の条件で、サイドゲートまたはピンゲートをもつ金型に対して本発明のPPS樹脂組成物を高速(例えば、射出速度を300〜1500cc/秒程度として)射出・充填することにより製造することが好ましい。
また、圧縮成形方法では、例えばトランスファー成形法や、PPS樹脂組成物をあらかじめシート状の成形品として、これを用いたスタンピング成形法などが使用できる。この中でもスタンピング成形法は、PPS樹脂組成物の溶融粘度が高い場合に有効な成形法である。具体的には、従来公知のシート成形法、例えば、樹脂組成物を溶融混練して連続的にシート状に押し出す押出シート成形法、熱ロールで圧延した後冷却してシートを製造するカレンダー成形法、ロールプレス法などを用いてあらかじめPPS樹脂組成物をシート状成形品として、このシート状成形品を所定寸法に切断し、一旦加熱してPPS樹脂組成物を溶融させた後、所定の固化温度に設定した金型を用いて冷却圧縮成形することにより製造される。
圧縮成形方法における成形条件の具体的な一例を示すと、樹脂組成物の溶融温度を300〜400℃(好ましくは320〜380℃)、金型温度を120℃〜200℃(好ましくは130〜170℃)、圧縮圧力を30〜200MPa(好ましくは50〜150MPa)程度として圧縮成形を実施すればよい。
更には、超臨界不活性ガス発泡射出成形方法としては、例えば、特開平10−230528号公報に開示されている成形方法を好適に使用することができる。
なお、本発明のPPS樹脂組成物を、かかる超臨界不活性ガス発泡射出成形方法により燃料電池用セパレーター54を成形する理由は、かかる成形方法により比較的高粘度のPPS樹脂組成物を高流動化して大型で薄肉の成形品を得るとともに、成形品の肉厚変化が大きいことに起因するヒケや反りを防止するためであるが、その一方、前記公報に開示された方法をそのまま使用した場合、発泡体積の総量が大きくなりすぎ、成形品の導電性が低下することが懸念される。
従って、本発明のPPS樹脂組成物を、超臨界不活性ガス発泡射出成形方法を用いて燃料電池用セパレーターを製造するにあっては、発泡度は流動性が確保できる範囲でできるだけ低発泡とさせることが好ましい。ここで、発泡度は、発泡させない場合の成形品の密度と、発泡体の密度の比を用いて定義される。発泡体の密度をd、発泡させない場合の成形品の密度(真密度)dとした場合にあっては、発泡度は(d/d)で表され、かかる発泡度の範囲は、0.95〜0.7であることが好ましく、0.90〜0.80であることがより好ましい。
そして、本発明のPPS樹脂組成物を燃料電池用セパレーター54は、射出圧縮成形方法により製造することもでき、前記した種々の成形方法と比較すれば、かかる射出圧縮成形方法により燃料電池用セパレーターを得るようにすることが好ましい。
この射出圧縮成形方法は、前記した射出成形方法の一種であり、射出充填工程の完了直前または直後に、金型のキャビティを構成している可動側/固定側の面の一部または全部を、キャビティ容積が減少する方向に移動させ、圧縮して成形する工程を含む射出成形方法である。
ここで、射出圧縮成形方法の基本原理としては、まず、スライド機構が付いた金型を用いて、あらかじめ金型をわずかに開いた状態にしておき、通常の射出成形ユニットを用いて樹脂組成物を規定の量だけ射出する。次に、射出工程の完了の直前または直後に、圧縮ユニットによりキャビティの一部(圧縮コア)圧力をかけ一定の速度で移動させる。移動方法はキャビティ容量が減少する方向で、これにより樹脂に高い圧力をかけ、冷却固化させて既定の形状に賦形するようにする。
このような射出圧縮成形方法の利点としては、射出工程ではキャビティ肉厚は大きく、流動抵抗が低いため、薄肉で大面積の成形品を成形できることや、型締めにより圧縮・賦形できるので、均一な成形圧力がかかり、成形品の反り、変形が小さいことなどが挙げられる。従って、この射出圧縮成形方法は、肉厚が不均一で大面積である、図1に示すような構成の固体高分子型燃料電池50における溝付きの燃料電池用セパレーター54を製造する上で特に有効に利用できる。
なお、射出圧縮成形方法の改良としては、表皮一体成形法が挙げられる。これはキャビティ内部にあらかじめ別の部材を保持させておき、金型内部で該部材と樹脂を一体成形する方法である。従って、燃料電池用セパレーター54の表面の改質や組み立て工程の簡略化のため、表皮一体成形により燃料電池用セパレーター54を製造するようにしてもよい。具体的な一例としては、セパレーター54表面の導電性の改良として、カーボンペーパーはフェルトを表皮一体成形で表面に貼り合わせる場合などが挙げられる。
また、本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を用いて、射出圧縮成形方法により燃料電池用セパレーター54を製造する方法の一例を、図2及び図3を用いて説明する。
図2は本発明の燃料電池用セパレーターの製造方法(以下、単に、「本発明の製造方法」とする場合もある)を実施する射出圧縮成形ユニット1を示した図であって、金型11,12を開いて、本発明のPPS樹脂組成物15を射出・充填している状態を示した模式図であり、また、図3は、図1の射出圧縮成形ユニット1において金型11,12を閉じて、当該樹脂組成物15を圧縮・賦形している状態を示した模式図である。
ここで、本発明の製造方法を実施するにあっては、図2に示すように、まず、圧縮ユニット10を後退させた状態として、金型11,12の合わせ面を開いた状態としてキャビティ空間13(以下、単に「空間13」とすることもある)を形成し、当該空間13に対して、射出ユニット20内から、PPS樹脂組成物15を射出充填する((1)射出・充填工程)。
次に、所定量の当該樹脂組成物15の射出充填が完了したら、図2に示すように、圧縮ユニット10を進行させた状態として(図2の矢印方向に動かして)、金型11,12を閉じて型締め力をかけて、充填されたPPS樹脂組成物15を圧縮、賦形するようにして、所定形状の燃料電池用セパレーター54を得るようにする((2)圧縮・賦形工程)。
本発明の製造方法にあっては、まず、前記の(1)射出充填工程における金型の合わせ面11a,12aにより形成されるキャビティ空間13の間隔を、0.5〜5.0mmとして、3.0〜5.0mmとすることが好ましい。当該間隔をかかる範囲とすることにより、溶融状態のPPS樹脂組成物15を好適に射出充填することができるほか、後工程である(2)圧縮・賦形工程における圧縮しろとしても適当となり、圧縮・賦形処理が良好に行われることになる。
また、(1)射出・充填工程における金型11,12の加熱方式としては、特に制限はなく、従来公知のヒーターを用いて、PPS樹脂組成物15の充填前に金型11,12を加熱状態とすればよい。
また、例えば、金型11,12の表面に通電加熱体を配設して、樹脂充填前に当該通電加熱体に通電し、金型11,12を所定の温度に加熱するようにしてもよい。この通電加熱体の種類としては、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、酸化ジルコニア等が挙げられる。
なお、金型温度は、PPS樹脂組成物15の種類に応じて決定すればよいが、150〜250℃程度とすればよい。本発明の製造方法にあっては、従来の射出圧縮成形方法のように、金型温度を高温状態(例えば、270〜300℃)とする必要もないため、成形品の冷却もスムースに行われ、射出圧縮成形を簡便に行うことができる。
このようにして、(1)射出・充填工程において可塑化された溶融状態のPPS樹脂組成物15は、金型11,12の合わせ面11a,12aとの間に形成された空間13に対して、射出・充填されることとなる。
そして、所定量の当該樹脂組成物15の射出充填が完了したら、圧縮ユニット10を進行させ、金型11,12を閉じて充填されたPPS樹脂組成物15を圧縮、賦形させる(2)圧縮・賦形工程を実施する。
なお、(2)圧縮・賦形工程の開始は、PPS樹脂組成物15の充填完了時であるが、これは、充填が完全に完了した場合のほか、充填が完了する直前ないし直後(例えば、充填完了の0.1〜0.5秒前や完了の0.1〜0.5秒後)であってもよい。
本発明の製造方法を実施するにあたり、この(2)圧縮・賦形工程における圧縮速度は、1.0〜20mm/秒とし、5.0〜20mm/秒とすることが好ましい。圧縮速度をかかる範囲にすることにより、射出充填されたPPS樹脂組成物15の圧縮、賦形を好適に行うことができる一方、圧縮速度が1mm/秒より小さいと、得られる成形品の肉厚分布が悪くなったり(例えば、ゲート側が厚く、流動末端が薄くなる)、ショートショットが多くなる等、連続成形性に悪影響を与える場合がある。また、20mm/秒より大きいと、成形品であるセパレーター54の品質が安定化される一方、成形機や金型に対しての負荷が大きく、当該成形機等の消耗が激しくなる等の問題が生じる場合がある。
更には、(2)圧縮・賦形工程における圧縮圧力は、10MPa以上とし、50MPaとすることが好ましい。また、その際の型締圧力は60トン程度として、300トン程度とすることが好ましい。圧縮圧力が10MPa以上であれば、圧縮、賦形が十分に行われ、良好な外観のセパレーター54を得ることができる一方、圧縮圧力が10MPaより小さいと、圧力が十分でなく、セパレーター54の外観にヒケや反りが発生し、外観不良となる場合があるため好ましくない。
このようにして圧縮ユニット10を進行させて、金型11,12を閉じて型締め力をかけて、充填されたPPS樹脂組成物15を圧縮、賦形したら、金型11,12を冷却して、金型11,12内部のPPS樹脂組成物15を冷却固化させる。冷却条件としては、特に制限はないが、冷却温度を160〜250℃(好ましくは180〜230℃)として、また、冷却時間を30〜90秒(好ましくは50〜70秒)程度とすればよい。そして、当該樹脂組成物15が冷却固化されたら、金型11,12を開いて成形品を取り出すことにより、導電性フィラーが均一に分散されたセパレーター54を得ることができる。
このような本発明の製造方法は、燃料電池用セパレーター54を射出圧縮成形方法で製造するにあたり、金型温度が150〜250℃とされた金型11,12の合わせ面11a,12aにより形成され、間隔を0.5〜5.0mmとしたキャビティ空間13に対して本発明のPPS樹脂組成物15を射出充填する射出・充填工程と、充填完了後、キャビティ空間13を閉じて、当該空間13に充填されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物15を、圧縮速度を1.0〜20mm/秒、圧縮圧力を10MPa以上として圧縮賦形する圧縮・賦形工程からなるようにしているので、成形過程中の当該樹脂組成物15の流動性が非常に良好となり、導電性フィラーを高含有率で充填し、必要とされる諸特性を具備した燃料電池用セパレーター54を、生産性を良好にして効率よく成形することができる製造方法を提供可能とする。
そして、この製造方法により得られた、例えば図1に示す構成の燃料電池用セパレーター54も、黒鉛や炭素繊維といった導電性フィラーを高含有率で樹脂成分に対してバランスよく分散しているため、導電性が高く、例えば体積抵抗率が20mΩ・cm以下(好ましくは10mΩ・cm以下)といった燃料電池用セパレーター54に必要とされる優れた導電性を備えた燃料電池用セパレーターとなり、また、機械的強度としても、例えば曲げ弾性率が50MPa以上(好ましくは70MPa以上)といった燃料電池用セパレーターに必要とされる機械的強度を具備する優れた燃料電池用セパレーター54となる。
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としてもよい。
例えば、前記した実施形態では、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、構成成分として、(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂と、(B)導電性フィラーである(b1)黒鉛及び(b2)炭素繊維と、(C)ポリオレフィン系ワックスを含有するものであったが、PPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の充填材を添加することができる。
この充填材の具体例としては、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの繊維系充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどのケイ酸塩、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、シリカなどの非繊維系充填材などが挙げられ、これらは中空体であってもよい。また、これらは一種類を単独で使用してもよく、また、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。更には、より優れた機械的強度を得るためには、これらの繊維状充填材、非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ系化合物等のカップリング剤により前処理して使用するようにしてもよい。
また、本発明のPPS樹脂組成物に対しては、本発明の効果を妨げない範囲において、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルなどの結晶核剤、次亜リン酸などの着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、紫外線防止剤、染料や顔料などの着色剤、熱安定剤、滑剤等の添加剤を適宜添加することができる。
また、燃料電池用セパレーター54に形成された複数の溝55は、本発明の製造方法により、一度に形成するようにしてもよく、これにより、切削などの機械加工も必要なく、セパレーター54を低コストで得ることが可能となる。また、セパレーター54の形状によっては、金型を用いた1回の射出圧縮成形だけでは所定の形状が得られない場合もあり、その場合には、追加的な処理として、得られた成形品に対して、切削、穴明け、ねじ切り等の機械加工を施すようにしてもよい。
更には、図1において挙げた固体高分子型燃料電池(PEFC)50及びセパレーター54の形状は、あくまでも一例であり、固体高分子型燃料電池(PEFC)50の構成及びセパレーター54の形状等はかかる内容に限定されず、任意の構成及び形状とすることができる。また、本発明のPPS樹脂組成物は、固体高分子型燃料電池(PEFC)以外の燃料電池用セパレーターの構成材料としても、何ら問題はない。
そして、本発明の燃料電池用セパレーターの製造方法を実施するに際して、成形品の寸法等は、本発明のPPS樹脂組成物のヒケ等をあらかじめ予測して金型設計をしておくことが好ましく、これにより、基本的に金型形状がそのままセパレーターの形状に反映され、特に厚み方向の寸法精度の向上を図ることができる。
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら制約されるものではない。
[実施例1〜3及び比較例1〜5]
( ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物の製造 )
下記(1)〜(6)に示す成分を、表1に示す割合で配合し、スーパーフローターミキサー(振動・攪拌混合機)((株)カワタ製)を用いて均一にドライブレンドした後、二軸混練押出機(TEM35B:東芝機械(株)製)を用い、溶融温度を300〜330℃で溶融混練してペレット状に押し出して、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を製造した。
なお、
(1)ポリ(パラ)フェニレンスルフィド樹脂−1(PPS−1)
グレード : LR01G(ディーアイシー・イーピー(株)製)
溶融粘度 : 10Pa・sec(樹脂温度300℃、
せん断速度2000sec−1における値)
(2)ポリ(パラ)フェニレンスルフィド樹脂−2(PPS−2)
グレード : T−1(ディーアイシー・イーピー(株)製)
溶融粘度 : 30Pa・sec(樹脂温度300℃、
せん断速度2000sec−1における値)
(3)黒鉛−1
グレード : 天然黒鉛 CGC−100H(日本黒鉛工業(株)製)
平均粒子径(D50%) : 100μm
嵩密度 : 0.7g/cm(JIS K6891に準拠して測定)
(4)黒鉛−2
グレード : 天然黒鉛 ACP−1000(日本黒鉛工業(株)製)
平均粒子径(D50%) : 15μm
嵩密度 : 0.2g/cm(JIS K6891に準拠して測定)
(5)炭素繊維
グレード : PAN系ミルドカーボンファイバー HTA−CMF−0160E
(東邦ナテックス(株)製)
繊維径 : 7μm
繊維長 : 160μm
(6)酸化ポリエチレンワックス
グレード : リコワックスPED191(高密度ポリエチレン(HDPE)酸化タ
イプ、クラリアントジャパン(株)製)
(重量平均分子量) : 12000
酸化度 : 17mgKOH/g
また、PPS樹脂組成物製造時における樹脂温度、混練機のモーター電流値、組成物のガス発生状況、及びベントアップの有無を確認した。結果を併せて表1に示した。
なお、樹脂組成物の溶融粘度が異常に大きかったり、分散不良が発生した場合には、混練機のスクリュートルクが大きくなり、混練機のモーター電流値が大きくなりすぎてトリップやベントアップが生じたり、または樹脂温度が高くなりすぎる。
一方、得られる樹脂組成物の品質上、樹脂温度は360℃以下であることが好ましく、360℃を超えると添加剤であるポリオレフィン系ワックスだけでなくポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の分解による発泡が起こる場合があり好ましくない。また、混練機の安全から、モーター電流値は60A以下であることが好ましく、60Aを超えると、高トルクの特殊な混練機を使用する必要があり汎用性に劣ることとなる。
そして、これらの内容を総合評価して、下記の判定基準により、実施例1〜3及び比較例1〜5の樹脂組成物の製造性を評価した。結果を表1に示した。また、溶融混練時の樹脂組成物の流動性としてSFL流動性も併せて示した(なお、◎、○及び△を合格としている)。
( 判定基準 )
判 定 内 容
◎ : 全く問題なく安定して製造することができる。
○ : 安定して製造することができる。
△ : 成形機や製造条件に多少工夫をすれば製造できる。
× : 得られる樹脂組成物の品質の悪化や、混練機のダメージが予想さ
れ、製造が困難である。
( 成形品の評価 )
また、燃料電池用セパレーターとして求められる特性である導電性(電気伝導性)及び機械的強度を評価すべく、実施例1〜3及び比較例1,3,5により得られたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を下記のようにして射出成形して成形品を得た後、得られた成形品の体積抵抗率及び曲げ弾性率を比較・評価した。樹脂組成物の結果と併せて表1に示す。
なお、燃料電池用セパレーターとして要求される導電性としては、一般的には、本評価のサンプル形状からいえば、体積抵抗率が100mΩ・cm以下であり、この値を超えるセパレーターは一般的な燃料電池用セパレーターとしては不適と判断される。
また、燃料電池用セパレーターとしては、一定以上の機械的強度(力学的強度)も要求され、これは薄肉の成形品を二次工程(組立)で取り扱う場合に必要とされ、一般的には曲げ強度として50MPa以上が必要とされる。
( 体積抵抗率の測定 )
体積抵抗率の測定は、射出成形機(J50EP:(株)日本製鋼所製)を用いて樹脂温度340℃、金型温度150℃の成形条件にて平板(サイズ 60mm×60mm×2mm厚)を射出成形し、その中心部をJIS K7194に規定される四深針法に準拠して測定した。
( 曲げ弾性率の測定 )
前記した体積抵抗率の測定のところで示した平板の射出成形方法に準拠した条件で試験片を成形し、得られた試験片をASTM D790に準拠して測定した。
( 原料構成及び結果 )
Figure 2006019227
表1の結果より、実施例1〜3により得られた本発明のPPS樹脂組成物は、いずれも成形品の要求特性(体積抵抗率:100mΩ・cm以下、曲げ弾性率、50MPa以上)
を満足するものであり、燃料電池用セパレーターの構成材料として問題ないことが確認できた。また、成形品としては、導電性フィラーを多く(85.0質量%)含有する実施例3のPPS樹脂組成物からなる成形品の導電性が優れている一方、実施例3の樹脂組成物は流動性がやや悪く、樹脂組成物自体の製造性としては実施例1,2の方が良好であり、特に実施例2の樹脂組成物の製造性が優れていた。
一方、実施例2に対して酸化ポリオレフィンワックスを含有しない比較例1は、導電性フィラーの含有率が75質量%と比較的低いのであるが、樹脂組成物の製造は困難であった(表1から、粘度が高く、樹脂温度上昇が大きくガス発生は多く、かつ、モーター電流も限界であった)。従って、低粘度のポリフェニレンスルフィドを樹脂成分に用いる場合であっても、本発明の樹脂組成物の如く、酸化ポリエチレンワックスを添加することが好ましく、また、前記したように、それによる流動性向上効果は明確である。
更には、比較例1により得られた樹脂組成物からなる成形品は、体積抵抗率及び曲げ弾性率とも、要求特性を具備することはできなかった。
比較例2は、実施例3に対して、導電性フィラーの添加量を本発明の範囲以上として(87.5質量%)、かつ、樹脂組成物製造時の流動性を向上させるために過剰に酸化ポリエチレンワックスを添加した構成を示している。この比較例2は、導電性フィラーが85質量%を超えると酸化ポリエチレンワックスを過剰に添加しても混練機のトルク上限を超えてしまうため、モーターがトリップ(停止)するだけでなく、ガス発生とベントアップが多すぎて樹脂組成物の製造が極めて困難であった。
比較例3は、樹脂成分であるポリフェニレンスルフィドの溶融粘度が本発明の範囲から外れる樹脂(30Pa・sec)を使用した構成を示している。比較例3は、樹脂温度とモーター電流値の観点からは何とか混練は可能であったが、ベントアップが激しく、樹脂組成物の製造性(量産性)には問題があると判断された。
比較例4は、黒鉛の平均粒子径(D50%)が本発明の範囲から外れるもの(7μm)を使用した構成を示している。黒鉛の平均粒子径が小さくなると、実施例2との比較において酸化ポリエチレンワックスの添加量を増加させても、樹脂組成物の粘度が非常に高くなってしまうため、モーターがトリップ(停止)してしまい、製造性(量産性)が悪くなってしまった。
比較例5は、導電性フィラーである炭素繊維を配合しない構成を示している。製造性は良好であるが、実施例1と比較して導電性が悪く、また、曲げ強度も要求特性を具備することができないことが確認できた。
[固体高分子型燃料電池(PEFC)用セパレーターの製造]
ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物として、実施例1により得られたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、図2及び図3の射出圧縮成形ユニットを備えた射出圧縮成形機(AZ−7000:日精樹脂工業(株)製、型締力 350トン(3430kN)を用いて、下記の(1)射出・充填工程、及び(2)圧縮・賦形工程に従って、図1に示した構成の固体高分子型燃料電池(PEFC)用セパレーター54を得た。
なお、使用した金型は、いわゆるホットランナー金型であり、ホットランナーの出口径はφ2.0mmである。また、ゲートは、幅が20mm、厚みが2.0mmの4点ファンゲートであり、ゲートは板状成形品の縦側(200mm側)に形成するようにした。
そして、金型温度は、ヒーターにより230℃に制御した。
(1)射出・充填工程:
図2に示す射出圧縮ユニットにおいて、金型の合わせ面同士の間隔を2.0mmとして、溶融状態のPPS樹脂組成物を、成形品の肉厚が1.5mmとなるように金型のキャビティ空間内に射出充填した。なお、射出充填においては、せん断速度が35000/秒程度となるように、適宜射出量を調整した。
(2)圧縮・賦形工程:
前記した(1)射出・充填工程により溶融状態のPPS樹脂組成物が金型内に充填されたら、図3に示すように、圧縮ユニットを進行させて型締めして金型を閉じて、圧縮速度を5.0mm/秒、圧縮圧力を50MPaとして、金型のキャビティ空間内のPPS樹脂組成物を圧縮賦形するようにした。
そして、(2)圧縮・賦形工程の後、金型を180℃で50秒程度冷却して、金型内のPPS樹脂組成物を冷却固化させ、当該組成物が固化したら、金型から取り出して、本発明の固体高分子型燃料電池用セパレーターを得た。
そして、得られた固体高分子型燃料電池(PEFC)用セパレーターは、実用的な強度を具備するとともに、反り変形量も小さく、実際のスペックに十分対応可能なレベルであった。また、このセパレーターの一部を切り出して前記の方法で体積抵抗率を測定した結果、前記のテストピース(平板)測定値とほぼ同じ15〜20mΩ・cmとなり、燃料電池用セパレーターに必要な諸特性を基本的に満足するものであった。
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cells)のセパレーターの構成材料として有利に使用することができる。
本発明の燃料電池用セパレーターを使用した固体高分子型燃料電池(PEFC)の一形態を示した概略図である。 本発明の燃料電池用セパレーターの製造方法を実施する射出圧縮ユニットの一形態を示した図であって、金型を開いた状態(射出充填を行っている状態)を示した概略図である。 図2において、金型を閉じた状態(圧縮賦形を行っている状態)を示した概略図である。
符号の説明
1… 射出圧縮成形ユニット
11,12… 金型
11a,12a…合わせ面
13… キャビティ空間
15… PPS樹脂組成物
20… 射出ユニット
30… ゲート
50… 固体高分子型燃料電池(PEFC)
51… 燃料極
52… 電解質膜
53… 酸化極板
54… 燃料電池用セパレーター
55… 溝

Claims (8)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂と、(B)導電性フィラーとして(b1)黒鉛及び(b2)炭素繊維と、(C)ポリオレフィン系ワックスと、を含有するポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物であって、
    (B)導電性フィラーの含有率が樹脂組成物全体の75〜85質量%であり、
    (b2)炭素繊維の含有率が樹脂組成物全体の1.0〜5.0質量%であり、
    (C)ポリオレフィン系ワックス/((A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂+(C)ポリオレフィン系ワックス)が0.05〜0.3であり、
    (A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂の溶融粘度が、樹脂温度300℃、せん断速度2000sec−1において20Pa・sec以下であり、
    (b1)黒鉛の平均粒子径(D50%)が50〜150μmであり、嵩密度が0.6〜1.0g/cmである、
    ことを特徴とするポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物において、
    前記(A)ポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂が、ポリ(パラ)フェニレンスルフィドであることを特徴とするポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物において、
    前記(b2)炭素繊維が、繊維径が10μm以下のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及び/または繊維径が0.05〜0.5μmの気相法炭素繊維(VGCF)であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れかに記載のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物において、
    前記(C)ポリオレフィン系ワックスが酸化ポリエチレン系ワックスであることを特徴とするポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4の何れかに記載のポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物からなることを特徴とする燃料電池用セパレーター。
  6. 請求項5に記載の燃料電池用セパレーターにおいて、
    金型温度が150〜250℃とされた金型の合わせ面により形成され、間隔を0.5〜5.0mmとしたキャビティ空間に対して請求項1ないし請求項4の何れかに記載されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を射出充填して、
    充填完了後、前記キャビティ空間を閉じて、当該空間に充填されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、圧縮速度を1.0〜20mm/秒、圧縮圧力を10MPa以上として圧縮賦形することにより得られることを特徴とする燃料電池用セパレーター。
  7. 請求項5または請求項6に記載の燃料電池用セパレーターを備えることを特徴とする燃料電池。
  8. 金型温度が150〜250℃とされた金型の合わせ面により形成され、間隔を0.5〜5.0mmとしたキャビティ空間に対して請求項1ないし請求項4の何れかに記載されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を射出充填する射出・充填工程と、
    充填完了後、前記キャビティ空間を閉じて、当該空間に充填されたポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂組成物を、圧縮速度を1.0〜20mm/秒、圧縮圧力を10MPa以上として圧縮賦形する圧縮・賦形工程からなることを特徴とする燃料電池用セパレーターの製造方法。
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