JP2006015478A - ワイヤ放電加工機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ワイヤ放電加工機において、加工開始点での加工安定を図ること、また、加工制御による加工効率の低下を減少させること。
【解決手段】 連続した短絡を回避するために、加工開始点から加工がスタートした後、放電が確認された位置から加工が不安定である範囲までの間に一度短絡が検出された時点で設定送り速度を小さくして加工量に応じた制御を行い、加工位置が加工が不安定となる範囲を越えてから遅くした設定送り速度を通常の設定送り速度に戻す。ワイヤ放電加工機の制御装置は、加工量制御を行う構成に加えて、放電パルス数によって放電の開始位置を検出する放電開始位置検出手段と、放電開始位置からの加工移動距離を算出する加工移動距離演算手段と、加工移動距離と所定距離を比較する比較手段と、ワイヤとワーク間の短絡を検出する短絡検出手段と、設定送り速度を切り換える設定送り速度切換手段とを備える。
【選択図】 図3

Description

本発明はワイヤ放電加工機の制御に係わり、特に加工効率を向上させる制御装置及び制御方法に関する。
ワイヤ放電加工において、被加工物のコーナ部などの断線しやすい加工形状では、予め送り速度や加工電流を落とすなどのコーナ制御処理等を追加しなければならない。そのため、放電加工量を検出して、その変化に応じて加工速度、加工エネルギー、加工液量を制御することによって、ワイヤ断線の回避や、コーナ部の加工精度向上を図るワイヤ放電加工機の制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
上記の制御装置によれば、被加工物の端面や加工開始穴からの切込み時にも安定した加工を実現することができる。
また、加工開始時での加工を安定させるために、加工開始時から一定距離まで加工が進む間、通常の加工条件と異なる加工条件に切り換える技術も提案されている(特許文献2〜6参照)。
上記各技術の内、特許文献2には、加工開始時に通常加工条件から設定送り速度を70%に減じると共に通常加工条件での休止時間を180%に延長し、加工開始時から一定の距離まで加工が進むまでは段階的に加工条件を徐々に戻して行く制御が開示されている。特許文献3には、加工開始点から弱い加工条件に切り換え、加工液の圧力や流量を観測しこれらが適正値になった時点で通常の加工条件を戻し、また、これら圧力や流量が適正値にならなくとも、加工が一定の距離進んだ時点で加工条件を戻す制御が開示されている。特許文献4には、電圧変化を検出することによって開始点を含む被加工物端面を検出し、そこから一定距離の間オン時間、オフ時間を制御すると共に、加工液を切換える制御が開示されている。特許文献5には、加工開始点から一定距離の間、加工条件を切換えて弱い条件で加工を行う制御が開示されている。特許文献6には、加工開始時には通常よりも弱い条件にし、加工の進行に伴って連続的にその加工条件を戻す制御が開示されている。
なお、特許文献7には、加工途中において短絡が繰返されることにより、加工電源内の素子の異常温度上昇を招き、素子の破壊や火災といった危険性を回避するために、短絡検出後に通常よりも弱い条件にし、加工が安定したことを確認した後で再び通常の条件に戻すことによって、加工を継続させ、電源の焼き付きを防ぐことが開示されている。
特開2002−254250号公報 特許第2689472号公報 特許第2722146号公報 特開平7−266139号公報 特開平4−201120号公報 特開平5−111822号公報 特許第2932888号公報
ノズルが加工開始穴に密着状態にあり、加工開始穴がノズル径よりも小さい場合には、加工開始穴の近傍で短絡が繰返し発生し、加工が不安定となるケースがあることが確認された。この現象は、ノズルが加工開始穴を完全に覆い隠してしまうためにノズルから噴射された加工液の排出が妨げられ、加工屑や気泡の排出不良が発生することや、加工液の乱流によりワイヤの振動がより増幅されるような状況になることが原因になっていると考えられる。この現象は、ノズルが開始穴から外れて加工液の排出が十分行われるようになるまで連続する。
この加工開始穴の近傍において、短絡が繰返して発生する現象を回避する手段として、上記特許文献2〜6で示されるような、加工開始時から一定距離まで加工が進む間、通常の加工条件と異なる加工条件に切り換える技術を適用した場合、加工時間が長くなり加工効率が低下するという問題がある。
例えば、特許文献2では、速度の初期レベル、休止時間の初期レベル、制御距離の3つの要素の組合せで性能が決まるため、様々な加工に対して効率の良い加工を行うためには、これらの各要素を個々に細かく設定しておく必要があるため、かなりの手間がかかるという問題がある。この設定に要する手間を省くために安全マージンを大きくして各要素を設定すると加工効率が落ちることになる。また、加工の状態による制御の要不要に係わらず、必ず弱い条件で加工するため加工効率が低下するという問題がある。
また、特許文献3においても、様々な加工に対する切込み条件を用意するために手間がかかり、この手間を省くために大きな安全マージンを設定すると、加工効率が落ちるという問題がある。また、加工液の圧力や流量を観測することによって加工効率を高めているが、これらは加工の安定性を直接示すものではなく、制御の要不要に係わらず必ず弱い条件で加工を始めることに変わりはなく、前記と同様の問題点がある。
また、特許文献4では、加工開始点とは関係なく、加工の途中で電圧変化が検出されれば動作するため、加工途中で溝幅が変わってしまうなどの不都合が生じる可能性がある。
また、電圧変化を検出してから動作させるということは、それを検出するまでは通常状態の強い条件で加工することを意味しており、加工開始点や被加工物端面での現象を考えた場合、放電した直後に、すなわち電圧変化による異常放電を検出する前に、断線してしまうという危険性がある。このため、加工開始点や被加工物端面では、予め安定して加工できる条件を設定して、断線を回避する必要がある。
また、前記したと同様に、安定して加工できる条件を用意するには手間がかかるという問題がある。プログラム指令または画面設定でこの機能の有効/無効を切換えることが開示されているが、オペレータの手間が必要となる。また、このような制御の要不要を的確に判断するのは困難である。
また、特許文献5においても、様々な加工に対する切込み条件を用意するには手間がかかり、手間を省くために安全マージンを大きく設定すると加工効率が落ちるという問題がある。また、制御の要不要に係わらず必ず弱い条件で加工するため、加工効率がよくないという問題がある。
また、特許文献6においても、様々な加工に対する切り込み条件を用意するには手間がかかり、手間を省くために安全マージンを大きく設定すると加工効率が落ちるという問題がある。
また、特許文献7は、加工を継続させて、短絡の繰り返しによる電源の焼き付きを防ぐことを目的とするものであって、加工開始点とは関係なく、加工の途中で短絡が検出されれば動作するため、加工途中で溝幅が変わってしまうなどの不都合が生じる可能性がある。したがって、加工開始点で発生する短絡の繰り返しを防ぐという問題点を解決する技術に関するものではない。
特許文献7に開示する技術を加工開始点に適用した場合、被加工物端面や開始点近傍の場合、一定の距離の間は加工が不安定になる環境にあるため、一度加工が安定したからと言って条件を戻してしまうと再び不安定となる。そのため、本願が所望する効果を期待することはできない。また、様々な加工に対する安定条件を用意するには手間がかかるという問題もある。
また、特許文献7では、特許文献4と同様に、短絡を検出してから動作させるということは、それを検出するまでは通常状態の強い条件で加工することを意味しており、加工開始点や被加工物端面での現象を考えた場合、放電した直後に、すなわち短絡による異常放電を検出する前に、断線してしまうという危険性がある。このため、加工開始点や被加工物端面では、予め安定して加工できる条件を設定して、断線を回避する必要がある。
このように、特許文献7は電源の焼き付けを防ぐことを目的としているため、加工開始点に適用することには無理がある。
さらに、様々な加工に対する安定条件を用意するには手間がかかるという問題もある。
上記した特許文献2〜6のように、加工開始点での安定加工を目的とするものは、いずれも通常の加工条件で開始した場合に加工が安定するかしないかに拘わらず、初期状態で必ず動作させるようになっている。一般に、高速加工などのように、エネルギーや加工液を強い条件で加工する場合には、これらの加工開始点から行う動作により効果が期待できるが、精密仕上加工時の1次加工などのようにエネルギーや加工液が元来それほど強くない場合には、これらのような制御をしなくとも安定した加工が実行されることが少なくない。そのような場合にはこれらの制御が逆に仇となり、加工時間が余計にかかるために加工効率が落ちることになる。
図9(a),(b)は、加工開始点から所定距離進むまでの間に短絡が発生しない場合の加工の進行状態を説明するための図である。ここで、所定距離は加工開始時において加工が不安定となる範囲を表している。図9(a),(b)では、設定送り速度を通常の設定送り速度v1としたとき、所定距離に達するまでの時間は例えばT10で表される。
一方、図10(a),(b)は加工開始点から所定距離進むまでの間に短絡が発生した場合の加工の進行状態を説明するための図である。通常、ワイヤ電極とワークとの間で短絡が発生すると、電源をオフとした後に放電を再開させる処理を行う。そのため、設定送り速度が通常の設定送り速度v1において短絡が繰り返して発生すると、その短絡毎に加工の進行が停止するため所定距離に達するまでに要する時間T11はT10よりも長くなる。
また、図11(a),(b)は、加工開始から所定距離進んだ位置で、設定送り速度を切り換える加工を説明するための図である。ここでは、上記した文献に示すように、加工開始点から所定距離進むまでの間の設定送り速度を通常の設定送り速度v1よりも低速の設定送り速度v2に設定することで、短絡の発生を抑制している。設定送り速度v2は通常の設定送り速度v1よりも低速であるため、所定距離に達するまでに要する時間T12は図9(a)の時間T10よりも長くかかることになる。
また、様々な加工の中でこのような制御の要不要を判断するのは非常に難しい上、必要となる場合の適切な加工開始条件を用意することはかなりの手間がかかる。手間を省くとすれば、種々の加工に対応できるように安全のマージンを大きく設定する必要があり、加工効率がより低下することになる。
そこで、本発明は、ワイヤ放電加工機において、加工開始点での加工安定を図ることを目的とし、また、加工制御による加工効率の低下を減少させることを目的とする。
本発明は、この連続した短絡を回避するために、加工開始点から加工がスタートした後、放電が確認された位置から加工が不安定である範囲までの間に一度短絡が検出された時点で設定送り速度を小さくして加工量に応じた制御を行い、加工位置が加工が不安定となる範囲を越えてから遅くした設定送り速度を通常の設定送り速度に戻す。
放電加工量を検出して、その変化に応じて加工速度、加工エネルギー、加工液量等の制御を行う加工量制御においては、加工開始直後の加工量が少ない状態では、加工エネルギーや加工液量が通常の加工状態よりも低く抑えられており、加工が不安定になってもワイヤが断線する心配がないので、短絡を確実に検出することが可能となる。そして、設定送り速度を小さくすることによって加工速度を遅くすることができるようになり、検出される加工量がさらに減少するため、加工エネルギーや加工液量もさらに低く抑えられ、加工が安定して進行するようになる。
なお、加工が不安定となる範囲において短絡が発生しなかった場合には、設定送り速度を小さくすることなく、通常の送り制御で加工される。
したがって、設定送り速度が小さく設定されるのは、加工が不安定となる範囲において短絡が発生した後のみであって、短絡が発生しない場合や加工が安定する範囲では設定送り速度の切り換えは行わないため、設定送り速度の切り換えによる加工効率の低下を抑え、効率よく加工を進めることができる。
なお、加工が不安定となる範囲は、例えば、放電が確認された位置からおよそノズルの半径分の距離とすることができる。加工が放電開始位置からノズルが半径分進んだところで、設定送り速度を元の状態に戻し、その後は通常加工に移行する。また、放電が確認された位置からノズルの半径分進む間に短絡が発生しなかった場合には、通常の送り速度で加工を行う。
本発明のワイヤ放電加工機の制御装置は、ワイヤ状電極と被加工物とを相対移動させながら、前記ワイヤ状電極と被加工物との間に放電パルス電流を投入して放電加工を行うワイヤ放電加工機の制御装置であって、前記したように、放電加工量を検出して、その変化に応じて加工速度、加工エネルギー、加工液量等の制御を行う加工量制御を行う。
この加工量制御は、投入した放電パルス数の計数値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第一の態様、あるいは、投入した放電パルス電流の積分値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第二の態様とすることができる。
投入した放電パルス数の計数値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第一の態様では、ワイヤ放電加工機の制御装置は、加工量制御を行う構成として、投入した放電パルス数を所定時間ごとに計数する放電パルス数計数手段と、移動指令に基づいて前記ワイヤ状電極と被加工物を加工経路に沿って相対移動させる移動手段と、単位時間当たりの基準放電パルス数を記憶する基準放電パルス数記憶手段と、放電パルス数計数手段が得た数値と前記基準放電パルス数記憶手段に記憶した数値とを比較して比率を求める放電パルス数比較手段とを備える。
本発明のワイヤ放電加工機の制御装置は、上記の加工量制御を行う構成に加えて、加工位置が放電の確認位置から所定距離の間に短絡が検出された時点で設定送り速度を小さくし、加工位置が所定距離の範囲を越えてから通常の設定送り速度に戻すという設定送り速度を切り換る構成として、放電の発生を検出することによって放電の開始位置を検出する放電開始位置検出手段と、放電開始位置からの加工移動距離を算出する加工移動距離演算手段と、前記加工移動距離と所定距離を比較する比較手段と、ワイヤ電極と被加工物間の短絡を検出する短絡検出手段と、設定送り速度を切り換える設定送り速度切換手段とを備える。
ここで、設定送り速度切換手段は、比較手段の比較結果及び短絡検出手段の検出出力に基づいて、加工移動距離が所定距離内で短絡を検出したときに低い設定送り速度に切り換え、加工移動距離が所定距離を越えたときに通常の設定送り速度に切り換える。
次に、投入した放電パルス電流の積分値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第二の態様では、ワイヤ放電加工機の制御装置は、加工量制御を行う構成として、投入した放電パルス電流を所定時間ごとに積分演算する放電パルス電流積分演算手段と、移動指令に基づいて前記ワイヤ状電極と被加工物を加工経路に沿って相対移動させる移動手段と、基準となる放電パルス電流の時間積分値を記憶する基準放電パルス電流積分値記憶手段と、前記放電パルス電流積分値演算手段が得た数値と前記基準放電パルス電流積分値記憶手段に記憶した数値とを比較して比率を求める放電パルス電流積算値比較判断手段と、設定送り速度と所定時間とで求まるワイヤ状電極と被加工物の相対移動距離に、前記比率を乗じて求めた距離を移動指令として前記所定時間毎に前記移動手段に出力する送りパルス演算手段とを備える。
本発明のワイヤ放電加工機の制御装置は、上記の加工量制御を行う構成に加えて、加工位置が放電の確認位置から所定距離の間に短絡が検出された時点で設定送り速度を小さくし、加工位置が所定距離の範囲を越えてから通常の設定送り速度に戻すという設定送り速度を切り換る構成として、放電の発生を検出することによって放電の開始位置を検出する放電開始位置検出手段と、放電開始位置からの加工移動距離を算出する加工移動距離演算手段と、前記加工移動距離と所定距離を比較する比較手段と、ワイヤ電極と被加工物間の短絡を検出する短絡検出手段と、前記設定送り速度を切り換える設定送り速度切換手段とを備える。
設定送り速度切換手段は、比較手段の比較結果及び短絡検出手段の検出出力に基づいて、加工移動距離が所定距離内で短絡を検出したときに低い設定送り速度に切り換え、加工移動距離が所定距離を越えたときに通常の設定送り速度に切り換える。
上記した投入した放電パルス数の計数値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第一の態様において、加工量制御は放電休止時間や冷却液量を制御対象とすることができる。
第一の態様において、放電休止時間を制御対象とする構成として放電休止時間制御手段を備える。放電休止時間制御手段は、放電パルス数比較判断手段の比較結果に応じて、放電パルス数計数手段が所定時間ごとに得た数値が基準放電パルス数記憶手段に記憶した数値と一致するように放電休止時間を制御する。または、放電休止時間制御手段は、放電パルス数比較手段の比較結果に応じて、エネルギーの余剰投入を抑えるよう放電休止時間を制御する。また、冷却液量の制御は、放電パルス数比較手段の比率に応じて行うことができる。
また、上記した投入した放電電流積算値によって放電加工量を検出して加工量制御を行う第二の態様においても、加工量制御は放電休止時間や冷却液量を制御対象とすることができる。
第二の態様において、放電休止時間を制御対象とする構成として放電休止時間制御手段を備える。放電休止時間制御手段は、放電パルス電流積分値比較手段の比較結果に応じて、エネルギーの余剰投入を抑えるよう放電休止時間を制御する。また、冷却液量の制御は、放電パルス電流積分値比較判断手段の比率に応じて行うことができる。
本発明によれば、ワイヤ放電加工機において、加工開始点での加工安定を図ることができる。また、加工制御による加工効率の低下を減少させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、本発明のワイヤ放電加工機の制御で行う加工量制御について説明する。
ワイヤ放電加工における投入加工エネルギーと加工量の関係は、以下の式で表わされる。以下の式でtを被加工物の板厚とし、Ps及びPxをそれぞれの単位時間Tに発生する放電パルス数とし、wを放電パルス1発当たりの加工量とし、△sを放電パルス数Ps(すなわち、単位時間Tで)で移動できる距離とし、△xを放電パルス数Pxで移動できる距離とし、gを加工溝幅とする。
Ps*w=△s*t*g
Px*w=△x*t*g (1)
すなわち、
Ps/△s=Px/△x=t*g/w (2)
となる。なお、放電パルス1発当たりの加工量wが一定であれば、単位時間Tに発生する放電パルス数Ps及びPxは単位時間Tに発生する加工量に比例する値を示している。
板厚tに変化がないことを条件として加工溝幅gを一定とすれば次式を得る。
Ps/Px=△s/△x (3)
すなわち、式(3)は、単位時間T当たりの放電パルス数の変化(Ps/Px)と、それによる送り移動量の変化(△s/△x)をそれぞれ等しくなるように送ることができれば、加工溝幅gは一定になることを意味している。
単位時間T当たりの基準移動量△sは設定入力される基準設定送り速度SPDから次式により得る。
△s=SPD*T (4)
式(3)と式(4)から移動量△xは次式より得る。
△x=SPD*T*(Px/Ps) (5)
なお、上記式(5)は、設定送り速度SPDから、SPD*(Px/Ps)に変更されたことを意味する。
単位時間T当たりの基準放電パルス数Psと基準送り速度SPDとの関係を予め設定すると、加工中の時々刻々変化する単位時間T当たりの放電パルス数Pxを計数することによって移動量△xを算出することができる。この移動量△xは、式(1)式から、
△x=(Px*w)/(t*g)
と表わすことができる。この式のPx*wは、放電パルスがPxだけ発生した時の加工量である。移動量△xはこの加工量(Px*w)を被加工物の板厚tと加工溝幅gとの積(t*g)で除したものであるから、移動量△xだけワイヤ電極を移動させるということは、Pxの放電パルスによって加工された量だけワイヤ電極を移動させることとなる。
すなわち、式(5)は、単位時間T当たりの基準放電パルス数Psと放電パルス数計数値Pxとから、放電パルスによる加工量に対応するワイヤ電極の移動量△xが算出される。
一般的に、移動量△と単位時間当たりの放電パルス数Pとの関係は、被加工物の材質、被加工物の板厚t、加工溝幅gなどによって変化する。例えば、被加工物の板厚tと加工溝幅gを一定とした場合、移動量△と放電パルス数Pは比例関係を示す。この比例係数は、式(2)の(t*g/w)に相当するが、tとgが一定とすると、比例係数は式(2)の(1/w)に依存する。例えば、超硬WCの比例係数はダイス鋼の比例係数よりも大きく、これは、超硬WCの方がダイス鋼よりも放電パルス1発当たりの加工量wが小さいことを意味している。これは、超硬WCの方がダイス鋼よりも放電加工がしにくいことと一致している。
また、加工溝幅gを一定とし、同じ材質の被加工物で板厚tを変化させた場合、移動量△と放電加工パルス数Pは比例関係を示す。この場合、式(2)におけるgとwが一定なので、比例係数は被加工物の板厚tをに依存する。
さらに、加工溝幅gを一定とし、放電パルス数Pと移動量△との比(P/△)と、被加工物の板厚tとの関係を示す式(2)式から、
t=(w/g)*(P/△)
なので、(P/△)とtとの比例係数は(w/g)となる。ここで、加工溝幅gを一定としているので、比例係数は放電パルス1発当たりの加工量wに依存する。例えば、アルミの比例係数が大きく、超硬WCの比例係数が小さいということは、放電パルス1発当たりの加工量wが、アルミは大きく、超硬WCでは小さいことを意味している。これは、一般に、アルミは放電加工がしやすく、超硬WCは放電加工がしにくいことと一致する。
上記したように、移動量△と放電パルス数Pとの関係は、被加工物の材質、被加工物の板厚t、加工溝幅gなどによって変化するため、式(5)に基づいてワイヤ電極の移動量△xを制御するに当たっては、単位時間当たりの基準放電パルス数Psと基準設定送り速度SPD(=△s/T)との関係を予め求めておく。すなわち、種々の材質の被加工物について、被加工物の板厚とワイヤ電極の径(加工溝幅)を種々変化させて、単位時間T当たりの放電パルス数P/T(=Ps)と単位時間T当たりの移動量△/T(=△s)との関係を求め、放電パルス数Pと移動量△との比、
κ=P/△ (6)
を求めておく。なお、求めておいた比κに設定送り速度SPDを乗じれば、単位時間当たりの基準放電パルス数Ps(=κ*SPD)を求めることができる。
放電加工を始めるに当たり、加工条件として設定された被加工物の材質・被加工物の板厚・ワイヤ電極の径に基づいて比κを読み出し、読み出した比κに設定送り速度SPDを乗じて単位時間当たりの基準放電パルス数Ps(κ*SPD)を求める。そして、放電加工を行っている際は、単位時間当たりの放電パルス数Pxを検出しながら式(5)に基づいて被加工物に対する単位時間当たりのワイヤ電極の移動量(相対移動量)を制御する。
なお、加工条件として設定された板厚のデータが予め用意されているとは限らない。そのような場合は、比例配分や近似曲線などの方法によって、設定板厚に対応する比κを求めることができる。
また、実際に放電加工しようとする被加工物の材質のデータが用意されていない場合も、以下のような考え方で比κを設定することができる。式(6)に示すように、比κが大きいことは同じ距離を加工するに必要な放電パルス数が多いということ、すなわち、放電パルス1発当たりの加工量wが小さいということを意味する。
逆に、比κが小さいということは同じ距離を加工するに必要な放電パルス数が少ないということ、すなわち、放電パルス1発当たりの加工量wが大きいということを意味する。このことから、放電加工が容易だとされる材質では比κが小さくなり、放電加工が難しいとされる材質では比κが大きくなる。
従って、実際に放電加工しようとする被加工物の材質のデータが予め用意されていない場合でも、過去の経験等から、その材質の加工難易度がわかる場合は、その材質の加工難易度と同じ位の加工難易度の材質を探して、被加工物の材質として設定すればよい。あるいは、実際に放電加工しようとする被加工物の加工難易度が、比κの値が用意された2つの材質の加工難易度の中間位であるということが分かる場合は、2つの材質の比κの中間の値を手動で設定してもよい。
次に、休止時間の制御について説明する。
被加工物とワイヤ状電極間における加工電圧、電流の関係は以下の式で表わされる。以下の式で、Px及びPx+1を△x及び△x+1の位置での単位時間T当たりの放電パルス数とし、Vx,Vx+1をそれぞれの平均加工電圧とし、Vpを無負荷電圧とし、Tonを電流パルス幅とし、Toffを休止時間とし、Tw(x)及びTw(x+1)をそれぞれ単位時間T当たりの平均無負荷時間とする。また、Ps,Vs,Tw(s)を単位時間T当たりの基準放電パルス数,基準平均加工電圧,基準平均無負荷時間とする。
Px=T/(Tw(x)+Ton+Toff)
Px+1=T/(Tw(x+1)+Ton+Toff)
Ps=T/(Tw(s)+Ton+Toff)
Vx=Vp*Tw(x)/(Tw(x)+Ton+Toff)
Vx+1=Vp*Tw(x+1)/(Tw(x+1)+Ton+Toff)
Vs=Vp*Tw(s)/(Tw(s)+Ton+Toff)
さらに、Ton<<Tw+Toffとして、それぞれのTw+Ton+Toffを実質の休止時間τに置き換えて上式を整理する。
Tw(x)+Toff=τx (7)
Tw(x+1)+Toff=τx+1 (8)
Tw(s)+Toff=τs (9)
Px=T/τx (10)
Px+1=T/τx+1 (11)
Ps=T/τs (12)
Vx=Vp*(τx−Toff)/τx=Vp*(1−Toff/τx) (13)
Vx+1=Vp*(τx+1−Toff)/τx+1
=Vp*(1−Toff/τx+1) (14)
Vs=Vp*(τs−Toff)/τs
=Vp*(1−Toff/τs) (15)
また、それぞれの単位時間T当たりの平均加工電流Im(s),Im(x),Im(x+1)、及び平均加工電流密度Id(s),Id(x),Id(x+1)は次式により得られる。なお、tは板厚、gは加工溝幅である。
Im(s)=Ip*Ton*Ps (16)
Id(s)=Im(s)/(t*g) (17)
Im(x)=Ip*Ton*Px (18)
Id(x)=Im(x)/(t*g) (19)
Im(x+1)=Ip*Ton*Px+1 (20)
Id(x+1)=Im(x+1)/(t*g)(21)
前記式(5)と上式により次式を得る。
△s/△x=Ps/Px=Id(s)/Id(x) (22)
△s/△x+1=Ps/Px+1=Id(s)/Id(x+1) (23)
すなわち、この式(22)、式(23)は、前記式(5)に基づいて加工送りすると、単位時間T当たりの平均加工電流密度も増減することを意味している。
この点を、放電加工時の放電間隙内のスラッジ濃度Scと平均加工電圧Vmの推移により説明する。スラッジ濃度Scが高くなり始めるとスラッジを介した微小導電路が放電のきっかけとして数多く検出されて平均加工電圧Vmは曲線を辿ると考えられる。
放電加工時の時々刻々変化するスラッジ濃度Scと単位時間当たりの放電パルス数P及び実質休止時間τの推移について見ると、スラッジ濃度Scが高くなり始めるとスラッジを介した微小導電路が放電のきっかけとして数多く検出されて放電パルスの投入が増加し、実質休止時間τが最小になるような曲線を辿る。その結果、無負荷時間Twも短くなり、前述した放電生成の特殊性から集中放電に移行して、ワイヤ断線や面荒さの悪化及び溝幅の不均一の原因となる。
加工量制御では、かかる問題に対し放電パルス数が限度を越えて増加しないよう自動的に休止時間(Toff)を変えることで解決する。
前記(5)式に基づいて加工すると、単位時間T当たりの放電パルス数Pと実質休止時間τは加工量とスラッジ濃度Scに応じて式(11),式(12)式に従って変化する。いま最適な放電パルス密度が得られる単位時間当たりの基準放電パルス数Psとその時の実質休止時間τsを線上に設定して、単位時間当たりの基準放電パルス数Psを越える放電パルス数Px+1が発生する時の休止時間制御について見ると、Px+1>Psなる点の放電パルス数Px+1を単位時間当たりの基準放電パルス数Psに近づけるようにするためには、実質休止時間τx+1とτsの差だけ、すなわち、無負荷休止時間Twが短くなった分だけ、設定基準休止時間Toff(s)を延長すればよい。
制御する休止時間をToff(x+1)とすれば次式を得る。
τs−τx+1=Toff(x+1)−Toff(s) (24)
Toff(x+1)=τs−τx+1+Toff(s) (25)
式(11),式(12)式より次式を得る。
Toff(x+1)=(1/Ps−1/Px+1)*T+Toff(s) (26)
すなわち、最適な放電パルス密度を得る点に一致させるよう休止時間を制御するには、その最適点の基準放電パルス数Psの逆数と、Px+1>Psなる点における放電パルス数Px+1の逆数との差分を単位時間Tごとに求め、その差分だけ基準休止時間Toff(s)から延長することにより達成される。
次に、単位時間当たりの基準放電パルス数Psを下回る点、すなわち放電パルス数Pxが発生する時の休止時間制御について説明する。前記した例と同様に、実質の休止時間τ及び放電パルス数P及び平均加工電圧Vmは、式(10),式(12)、及び式(13),式(15)式に基づいて変化する。通常、上記の基準放電パルス数Psを下回る点は加工量が少ないために、長い無負荷時間Tw(x)をもつ実質休止時間の長い放電パルスが発生する。
しかし、前述の放電生成の特殊性からスラッジを介する無負荷時間Tw(x)の短い放電パルスの連続する可能性も内包してワイヤ断線の原因となっている。すなわち、平均加工電圧は瞬時に電圧が低下し、無負荷時間Tw(x)の短い放電パルスが間隙に投入される現象をよく観察する。
したがって、この短い放電パルスが間隙に投入されないようにするには、平均加工電圧が加工中に実質休止時間τsに相当する平均加工電圧の点を越えて低下しても実質休止時間τxがτsを越えてそれ以下にならないように、予め休止時間を延長しておけばよい。
すなわち、実質休止時間τxでの平均加工電圧と実質休止時間τsでの平均加工電圧とを等しくすることから、制御する休止時間をToff(x)とすれば式(13),式(15)式より次式を得る。
Vp*(τx−Toff(x))/τx=Vp*(τs−Toff(s))/τs (27) Toff(x)=Toff(s)*τx/τs (28)
式(10),式(12)式より整理して次式を得る。
Toff(x)=Toff(s)*(Ps/Px) (29)
すなわち、基準休止時間Toff(s)に単位時間当たりの基準放電パルス数Psと放電パルス数Pxの比率の逆数を乗じた値に休止時間Toff(x)を変更することにより達成される。このように式(26),式(29)に基づく評価関数に基づいて、予めエネルギーの余剰投入を抑えるように放電休止時間を制御する。
なお、式(26),式(29)に基づいて放電休止時間を制御するに当たっては、上述したのと同様に、種々の材質、板厚、ワイヤ電極の径について予め求めておいた比κを用いることができる。この場合、求めた比κに設定送り速度SPDを乗じて単位時間当たりの基準放電パルス数Ps(=κ*SPD)を求め、この基準放電パルス数Psを用いて、式(26),式(29)の演算を行う。
加工開始時やコーナ部での空送りが生じる時は、ワイヤ状電極と被加工物間に電圧を印加しても放電が発生しにくく(無負荷休止時間Twが大きい)、放電パルス数Pxは基準放電パルス数Psよりも小さい。そのため、式(29)で求められる休止時間Toff(x)は、基準の休止時間Toff(s)よりも大きなものとなる。しかし、その間、被加工物に対してワイヤ電極は相対的に移動してそのギャップは小さくなることから、無負荷休止時間Twが小さくなり放電が早く生じ、単位時間T当たりの放電パルス数Pxは増加することになる。放電パルス数Pxが増加すれば、式(29)で求められる休止時間Toff(x)は短くなり、基準の休止時間Toff(s)に近づいてくる。
放電パルス数Pxが基準放電パルス数Psを越えると、式(26)式の演算によって、休止時間Toff(x+1)が求められる。この休止時間Toff(x+1)は、基準の休止時間Toff(s)より長くなる。休止時間Toff(x+1)が長くなればなるほど放電パルス数Px+1は小さくなる方向に作用する(無負荷休止時間Twが一定であるとすると、休止時間Toff(x+1)が長くなれば放電パルス数Px+1は小さくなる)。このようにして、放電パルス数Pxが基準放電パルス数Psに一致するように休止時間Toff(x)が制御されることになる。
一方、放電パルス数が変動すれば、その放電によって加工される加工量、及び温度上昇が変動することになる。そこで、単位時間T当たりの放電パルス数の増減に伴う間隙の温度上昇を制御し、加工によって生じるスラッジを排出するための冷却液(加工液)の液量(流量)を制御する。すなわち、単位時間T当たりの放電パルス数が増大し加工量が多い時には間隙の温度上昇を抑えるために冷却液量を増大し、スムーズにスラッジを排除する。また加工量が小さく単位時間T当たりの放電パルス数が少ない時は冷却液量を少なくして過冷却を防ぎ、ワイヤの振動を抑制して放電を安定させる。
加工状態と冷却液量の関係において、wを放電パルス1発当たりのスラッジ量とし、Qs,Qxを単位時間当たりの放電パルス数Ps,Pxで除去されるスラッジ量とし、FRs,FRxはそれぞれの冷却液量として、次の関係を得る。
Ps∝Qs/w (30)
Px∝Qx/w (31)
Qx/FRx∝Qs/FRs (32)
上記式(30),(31),(32)より次式(33)を得る。
FRx∝FRs*(Px/Ps) (33)
すなわち、スラッジの量に応じて液量を制御するには基準冷却液量FRsに単位時間当たりの基準放電パルス数Psと変化時の放電パルス数Pxの比率を乗じた値になるような評価関数を作成して液量FRを変更することにより達成される。
式(33)に基づいて冷却液量FRを変更するに当たっては、上述したのと同様に、種々の材質、板厚、ワイヤ電極の径について予め求めておいた比κを用いることができる。すなわち、求めた比κに設定送り速度SPDを乗じて単位時間当たりの基準放電パルス数Ps(=κ*SPD)を求め、この基準放電パルス数Psを用いて式(33)の演算を行う。
上記した加工量制御において、本発明による制御は、加工開始点において発生する連続した短絡を回避するために、加工開始点から加工がスタートした後、放電が確認された位置から加工が不安定である範囲までの間に短絡が検出された時点で設定送り速度を小さくして加工量に応じた制御を行い、加工位置が、加工が不安定となる範囲を越えてから通常の設定送り速度に戻す制御を行う。この加工が不安定となる範囲内で、短絡が発生した時に加工速度を遅くすることによって、短絡の発生を抑え、その後の短絡発生を抑制する。したがって、この加工の不安定である範囲では、短絡が発生したとしても一回のみに抑えることができ、連続して短絡は発生しない。
また、この制御の間においても前記した加工量制御が行われる。加工量制御では、加工速度を遅くすることによって加工量を減少させるため、加工エネルギーや加工液量も低く抑えられ、加工が安定して進行するようになる。
図1は、本発明によるワイヤ放電加工機の制御装置を用いて、加工開始点において短絡の連続発生を抑制する制御を説明するための図である。図2は、放電後の加工距離と加工速度との関係を示すグラフである。以下、この加工開始点において短絡の連続発生を抑制する制御を「切り込み制御」という。
図1(a)は加工開始の時点の状態を示している。図1(a)中において、小径の破線で示すワイヤ電極及び大径の破線で示すノズルはそれぞれ加工開始時における被加工物に対する位置を示し、小径の実線で表すワイヤ電極及び大径の実線で表すノズルは、それぞれ放電開始時点の被加工物に対する位置を示している。
図1(a)に示す「G92」は被加工物座標系を設定するGコードであり、これでもって被加工物上の加工開始位置が設定される。なお、このGコードはNC装置のプログラムに記述しておくことができる。放電加工は、このG92により設定された被加工物上の位置を加工開始位置とし、プログラムに定められた経路に従って行われる。
加工開始位置から加工が始まった後に、放電は開始する。図1(a)は、加工開始位置と、加工開始後の移動中に開始する放電の開始位置(放電開始位置)との関係を示している。なお、加工開始位置と放電開始位置との間の距離は、放電条件や被加工物条件等によって放電毎に異なる。
本発明の切り込み制御は、(5)式における基準送り速度を通常制御に定める設定送り速度より小さな設定送り速度とすることによって、加工の安定を図るものである。そして、本発明は、切り込み制御を加工開始時において常に行うのではなく、放電開始位置から所定距離の間に短絡が発生したときのみに行うものであり、これによって、加工速度を低下させることによる加工効率の低下を防ぐことを特徴とする。
本発明は、切り込み制御を行うか否かの判定を行う判定区間を、放電開始位置を始点とする所定距離内としている。この所定距離はノズルと加工開始穴との相対的な位置関係により定めることができ、例えば、ノズルの半径の長さで定めることができる。なお、所定距離としてノズルの半径を用いるのは一例であり、ノズルの径に対して他の比率で定めたり、あるいは、ノズルと加工開始穴の径の比率により定めてもよい。また、実験値から定めるようにしてもよい。
図2において、SPDは通常制御における設定送り速度であり、SPD/2は切り込み制御で用いる設定送り速度である。ここでは、切り込み制御での設定送り速度を通常の設定送り速度SPDの1/2の大きさとしているが、切り込み制御での設定送り速度は必ずしも1/2であることに限らず、他の1以下の比率とすることができる。
図1(b)は、所定距離を2mmとして例を示している。この2mmの寸法は、例えばノズル半径2mmから定められる。基準送り速度を通常の設定送り速度SPDとするか、あるいは切り込み制御での設定送り速度とするかの判定は、この加工開始位置から所定距離(ここでは2mm)の間で行い、ワイヤ電極と被加工物との距離がこの所定距離の間にあるときに短絡が発生した場合には、切り込み制御によって加工速度を通常制御よりも小さな速度に低下させる。
図2において、縦軸は加工速度を示し、横軸は放電開始の位置(0mm)からの距離を示している。加工速度は、放電開始後は設定送り速度SPDで制御される。この放電開始時における位置を基準位置(0mm)として、所定距離(ここでは2mm)の間に短絡あるいは電圧低下が発生すると、通常制御から切り込み制御に切り換えて、加工速度は基準送り速度を通常の設定送り速度SPDから切り込み制御での設定送り速度SPD/2に切り換えて制御される。切り込み制御は所定距離を越えるまで行われる。図2では、切り込み制御の区間を破線の矩形で示している。
この切り込み制御は、ワイヤ電極と被加工物との距離がこの所定距離を越えた時点で解除し、その後は通常制御として元の設定送り速度に戻して加工を継続する。
図1(c)は、ワイヤ電極と被加工物との距離が加工開始位置から所定距離(ここでは2mm)を越えた状態を示しており、この状態では通常の設定送り速度による通常制御を行う。図2では、設定送り速度をSPD/2とする切り込み制御から設定送り速度をSPDとする通常制御に切り換わる。この基準送り速度の切り換えは、単に移動距離が所定距離を越えたことによって自動で制御することができ、オペレータ等による何らかの設定を要するものではない。
また、図1(b)の間において、所定距離内において短絡が発生しない場合には、基準送り速度は通常の設定送り速度を維持する。
以下本発明の実施形態を説明する。図3は本発明の一実施形態のワイヤ放電加工機の制御装置の要部を示すブロック図である。
図3において符号1は放電パルス電流を生成するトランジスタなどの能動素子からなる回路、コンデンサの充放電回路、直流電源等から構成する放電パルス発生装置であり、出力の一方は上下にある通電ブラシ3に接続され、他方は被加工物5に接続され、走行するワイヤ状電極4と被加工物5の間に放電パルス電流を供給する。
符号2は間隙の状況を検出するための検出電圧を生成するトランジスタなどの能動素子と抵抗、コンデンサ等からなる回路、直流電源等から構成する検出電圧発生装置である。出力の一方は被加工物5に接続され、他方は上下にある通電ブラシ3に接続されている。被加工物5を搭載したテーブル(図示せず)は、移動手段を構成するX軸モータ駆動装置10,Y軸モータ駆動装置11、及び送りパルス分配装置12によって駆動制御される。
符号6は検出電圧によって間隙が放電可能か否かを判別する放電間隙検出装置であり、入力の一方は被加工物5に接続され、他方は上下にある通電ブラシ3に接続されている。放電間隙検出装置6は、放電可能と判断したとき放電パルス投入信号を放電パルス発生装置1に出力する。同時に放電パルス数計数装置7にも出力する。
また、この放電間隙検出装置6は、加工中のワイヤと被加工物間の電圧を加工条件中の設定電圧と比較する等の方法によって、短絡を検出する手段を備える。
放電パルス数計数装置7は、演算クロック14から出力される単位時間(所定周期)T毎の信号に基づいて、該周期間の放電パルス投入信号を計数するし、実質的にワイヤ状電極4と被加工物5間に生じる放電パルスを計数する。
符号8は予め入力する単位時間当たりの基準放電パルス数Psを記憶しておく基準放電パルス数記憶装置である。
放電パルス数比較装置9は、放電パルス数計数装置7で単位時間(所定周期)T毎計数し記憶した放電パルス数Pxと基準放電パルス数記憶装置8から入力される予め記憶している単位時間当たりの基準放電パルス数Psとを前記単位時間(所定周期)T毎に比較し、放電パルス数Pxと基準放電パルス数Psとの比率(Px/Ps)を算出して、送りパルス演算装置13、放電休止時間制御装置16及び液量制御装置17に出力する。
送りパルス演算装置13は、演算クロック14からの所定周期Tの信号ごとに、送り速度設定手段15から送られてくる基準送り速度SPDと所定周期Tとによって求められる距離(SPD*T)に、放電パルス数比較判断装置9から送られてくる放電パルス数Pxと基準放電パルス数Psとの比率(Px/Ps)を乗じて移動量(距離)△xを求める。すなわち前記(5)式の演算を行って移動量△xを求める。求めた移動量△xに基づくパルス列を送りパルス分配装置12に出力する。送りパルス分配装置12は、このパルス列より加エプログラムに従ってX軸、Y軸の駆動パルスをX軸モータ駆動装置10,Y軸モータ駆動装置11に分配し、被加工物を搭載したテーブルを駆動するX軸モータ、Y軸モータをそれぞれ駆動する。
放電休止時間制御装置16は放電パルス数比較装置9から出力される比率(Px/Ps)に応じて、Px≦Psの場合には、(29)式の演算を行い、Px>Psの場合には、(26)式の演算を行って休止時間Toffを求め、検出電圧発生装置2に出力する。
検出電圧発生装置2は、この休止時間Toffだけ休止した後に、ワイヤ状電極4と被加工物5間に電圧を印加する。このようにして、予めエネルギーの余剰投入を抑えるように設定した評価関数に基づき放電休止時間を制御する。
また、液量制御装置17は放電パルス数比較装置9から出力される放電パルス数Pxと基準放電パルス数Psとの比率(Px/Ps)を用いて、(33)式で示されるような評価関数に基づいて液量を制御する。
以上のようにして、所定時間毎に、放電パルス数Pxと基準放電パルス数Psとの比率(Px/Ps)等に基づいて、移動距離、休止時間、冷却液量が制御され、エネルギーの過剰投入を抑え、加工速度を向上させると共に加工精度をも向上させることができる。
ワイヤ放電加工機は、切り込み制御を行う構成として、加工位置検出装置21,放電開始位置検出装置22,放電開始位置記憶装置23,加工移動距離演算装置24,所定距離記憶装置25,比較手段26,設定送り速度切換装置27を備える。
加工位置検出装置21は、送りパルス演算装置13で算出した移動量(距離)を入力して加工位置を求める。放電開始位置検出装置22は、放電が開始した時点における加工位置検出装置21の加工位置を求めることによって放電開始位置を取得する。ここで、放電開始の時点は、放電パルス数計数装置7から放電パルス数Pxの検出により行うことができる。
放電開始位置検出装置22で検出した放電開始位置は放電開始位置記憶装置23に記憶する。この放電開始位置記憶装置23に記憶される放電開始位置は、切り込み制御を行うか否かの判定を行う所定距離の基準位置となる。
加工移動距離演算装置24は、加工位置検出装置21で検出する加工位置を入力し、この加工位置と放電開始位置記憶装置23に記憶される放電開始位置とから、放電開始位置を始点とする加工移動距離を演算する。
比較手段26は、加工移動距離演算装置24で求めた加工移動距離と所定距離とを比較し、加工移動距離が所定距離内であるか否かを判定する。
比較手段26は、加工移動距離が所定距離以内である場合には、放電開始位置から所定距離以内という条件を満たしていることを設定送り速度切換装置27に報告する。本発明は、加工移動距離が所定距離以内であるという条件と短絡発生という条件の両方が成立した場合に、送り速度の切換えを行うことを特徴としている。
そこで、設定送り速度切換装置27は、比較手段26からの比較結果に基づいて加工移動距離が所定距離以内であるという条件が満たされ、且つ、短絡検出手段である放電間隙検出装置6からの検出出力に基づいて短絡が発生したという条件が満たされた場合に、送り速度設定手段15から送りパルス演算装置13に送られる設定送り速度を切り換える。その送り速度設定手段15は切り換えられた設定送り速度(例えば、SPD/2)を送りパルス演算装置13に送る。
送りパルス演算装置13は、送られた設定送り速度(例えば、SPD/2)に基づいて送りパルス数を演算する。演算される送りパルス数は、基準となる設定送り速度が切り換えられることによって減速される。
また、本発明は、前記したように所定距離の中で短絡が発生し、設定送り速度が切り換えられていた場合にのみ、所定距離を超えた時点で設定送り速度を通常の送り速度に戻すという速度制御を行うことをもう一つの特徴としている。
そこで、短絡が発生して設定送り速度の切り換えが行われている場合において、加工が進み、加工移動距離が所定距離を越えた場合には、比較手段26は放電開始位置から所定距離の範囲を越えたと判断して、設定送り速度切換装置27に信号を送る。設定送り速度切換装置27は比較手段26からの信号を受け、短絡発生によって設定送り速度の切り換えを行っていた場合には、設定送り速度を元の設定送り速度(例えば、SPD)に切り換えて、送りパルス演算装置13に送る。送りパルス演算装置13は、送られた設定送り速度(例えば、SPD)に基づいて送りパルス数を演算する。演算される送りパルス数は、基準送り速度が元に戻されることによって通常制御における送りパルス数となる。
図4は、切り込み制御を説明するためのフローチャートである。この切り込み制御は前記した加工量制御において行う制御の一態様として行われる。
加工量制御である場合(ステップS1)、加工プログラム中で加工開始位置が確定されていることを確認する。この開始位置の確定は、例えば、「G92」等の位置設定のコードの実行によって確認することができる。なお、加工開始穴への位置移動は、上記「G92」等のコードに限らず他の指令によって判断してもよい(ステップS2)。
加工開始位置が確定された場合には、通常その後に加工開始の制御が行われる。本発明は、この加工開始制御において短絡の繰り返しを防ぐために切り込み制御を行う。この切り込み制御を行うか否かの判定は、加工位置が切り込み制御設定区間内にあるときのみに行うため、切り込み制御設定区間を設定する判定用のフラグAを設け、この切り込み制御設定区間判定用のフラグAに“1”を設定する(ステップS3)。
ステップS2において、加工開始位置が確定されていない場合や、切り込み制御設定区間判定用のフラグAに“1”が設定されていない場合には、切り込み制御を行わないと判断して(ステップS4)、通常の加工量制御を行う(ステップS9)。この通常の加工量制御では、設定送り速度は予め定められた通常の設定送り速度SPDが採用される。
前記ステップS4において、切り込み制御設定区間判定用のフラグAに“1”が設定されている場合には、切り込み制御を行うと判断し、放電の有無を判定する。
放電が検出された場合には(ステップS5)、その放電が開始された位置を基準位置とし、この基準位置からの移動距離を所定距離と比較する。これは、例えば図3において、放電開始位置を放電開始位置記憶装置23に取り込み、この位置からの移動距離を加工移動距離演算装置24で演算し、比較手段26によって所定距離と比較することで行う。前記所定距離は、切り込み制御を行う切り込み制御設定区間に相当する距離である。移動距離がこの所定距離を越えている場合には(ステップS6)、切り込み制御設定区間を外れているため、切り込み制御設定区間判定用のフラグAに“0”を設定すると共に、短絡判定用フラグBに“0”を設定する(ステップS7)。
一方、移動距離が所定距離内である場合には(ステップS6)、切り込み制御設定区間内であるため、短絡判定用フラグBに“1”を設定する。なお、このとき、切り込み制御設定区間判定用のフラグAは既に“1”に設定されている(ステップS8)。
ステップS7で切り込み制御設定区間判定用のフラグA、及び短絡判定用フラグBに “0”が設定された状態、及びステップS8で切り込み制御設定区間判定用のフラグA、及び短絡判定用フラグBに“1”が設定された状態において、加工量制御が行われる。
なお、ステップS5において放電が発生しない場合には、ステップS7と同様に、切り込み制御設定区間判定用のフラグA、及び短絡判定用フラグBに“0”が設定された状態で(ステップS5)、加工量制御が行われる。
また、ステップS1において、加工量制御を行わない場合には、各フラグA,Bに“0”を設定すると共に、短絡検出フラグCに“0”を設定して、非加工量制御を行う(ステップS11)。
上記フローチャートの動作は、オペレータによる設定や専用プログラム指令等のための設定動作を要さず、それぞれソフトウエアによって判断し自動処理を行うことができる。
次に、前記ステップS9の加工量制御について図5のフローチャートを用いて説明する。
この加工量制御では、図4のフローチャートで示した切り込み制御において設定したフラグBに従って加工速度の切り換えを行い、加工開始時において短絡が繰り返して行われることを防ぐ。
短絡判定用フラグBに“1”が設定されているかを判定する(ステップS21)。短絡判定用フラグBに“1”が設定されている場合において、短絡が検出された場合には(ステップS22)、短絡検出フラグCに“1”を設定する(ステップS23)。
また、短絡判定用フラグBに“0”が設定されている場合において、短絡検出フラグCに“0”を設定する(ステップS24)。
ここで、短絡検出フラグCの設定状態を判定して(ステップS25)、その設定状態に基づいて送り速度の設定を切り換える。
ステップS25において、短絡検出フラグCに“1”が設定されている場合には、短絡が発生しているため、基準送り速度を通常の設定送り速度よりも小さな速度に設定する。例えば、通常の設定送り速度SPDの1/2のSPD/2を送り速度SPD´として設定する(ステップS26)。
一方、ステップS25において、短絡検出フラグCに“0”が設定されている場合には、短絡が発生していないため、送り速度SPD´を通常の設定送り速度に設定する(ステップS27)。
前記ステップS26,27で設定した送り速度SPD´によって加工量制御を行う(ステップS28)。
上記のように、移動距離が所定距離範囲内にある間において短絡を検出したときのみに基準送り速度を切り換えることによって、短絡の有無を判断し、通常の加工量制御の動作範囲を超えたときに限って減速を行うことができる。
また、減速の作用により放電パルス数が減少するため、エネルギーの制御効果及び加工液の制御による効果が増し、加工条件の面においても自動的に安定する方向に向かわせることができる。
つまり、加工量制御を行った場合、加工量が減少すると、それに連動して自動的にエネルギーや液量といった加工条件が低く抑えられるようになり、加工が安定するようになる。したがって、ワイヤの断線は自動的に回避され、先行技術のように弱い加工条件を前もって用意しておく必要がないという効果を奏することができる。
以下、図6(a)〜(c),図7(a)〜(c)によって、本発明による制御装置を用いて行う動作例について説明する。なお、図6(a)及び7(a)は加工開始からの経過時間を示し、図6(b)及び7(b)は設定送り速度を示し、図6(c)及び7(c)は制御態様を示している。
図6(a)〜(c)は、放電開始位置から所定距離内で短絡が発生したために、送り速度を低下させる動作を本発明による制御装置を用いて行うことを説明するための図である。図6(a)において、加工開始後に放電が開始されてから所定距離の計測が始められる。加工開始時には、通常制御により(図6(c))設定送り速度は通常の設定送り速度v1に設定される(図6(b))。
この所定距離の区間内において短絡が検出されると、この短絡が検出された時点で、切り込み制御に切り換えられ(図6(c))、設定送り速度は通常の設定の送り速度v1から低速の設定送り速度v2に切り換えられる(図6(b))。所定距離に達した後は、切り込み制御から通常制御に戻し、設定送り速度も通常の設定送り速度v1に戻される。
ここで、加工処理に要する時間を、放電開始から所定距離に達するまでの時間によって比較すると、図6(a)〜(c)に示すように短絡が発生するまでは通常の設定送り速度v1で移動し、短絡が発生した後所定距離に達するまでの間を低速の設定送り速度v2で移動することによって、所定距離を移動するに要する時間はT1となり、短絡を繰り返す場合に要する時間T11(図10(a))や、所定距離の全区間を低速の設定送り速度で移動する場合に要する時間T12(図11(a))と比較して短時間とすることができる。
また、図7(a)〜(c)は、本発明による動作状態において、所定距離内において短絡が発生しない場合の状態を示している。図7(a)において、加工開始後に放電が開始されてから所定距離の計測が始められる。加工開始時には、通常制御により(図7(c))設定送り速度は通常の設定送り速度v1に設定される(図7(b))。
この所定距離の区間内において短絡が検出されない場合には、切り込み制御への切り換えは行われず(図7(c))、設定送り速度は通常の設定送り速度v1のままである(図7(b))。したがって、所定距離内外に係わらず通常制御が行われ、設定送り速度も通常の設定送り速度v1のままである。
ここで、加工処理に要する時間を、放電開始から所定距離に達するまでの時間によって比較すると、図7(a)〜(c)に示すように短絡が発生しないため、全ての所定距離区間において通常の設定送り速度v1で移動し、所定距離を移動するに要する時間はT2となり、短絡を繰り返す場合に要する時間T11(図10(a))や、所定距離の全区間を低速の設定送り速度で移動する場合に要する時間T12(図11(a))と比較して短時間とすることができ、さらに、図6(a)の短絡が発生した場合の時間T1よりも短時間となる。
加工開始の処理を複数回行う場合には、各加工の開始時において必ずしも短絡が発生するとは限らず、図7(a)〜(c)に示すように短絡が発生しない場合もあるが、短絡の有無にかかわらず何れの場合であっても、所定距離を移動するのに要する時間は、本発明の切り込み制御を行わない場合と比較して短時間となる。
図8は本発明によるワイヤ放電加工機の制御装置の第二の実施形態の要部を示すブロック図である。以下、図3に示す第一の実施形態と異なる部分のみを説明する。
この第二の実施形態では、放電パルス数を計数記憶する代わりに放電パルス電流の積分値を電流検出回路18と放電パルス電流積分値演算記憶装置37とから求め、基準放電パルス数の代わりに基準放電パルス電流積分値記憶装置38を設け、そして比較する放電パルス電流積分値比較装置39によって送りパルス、放電休止時間、液量制御のための比率を演算出力する。
すなわち、図3に示す第一の実施形態において用いた単位時間当たりの基準となる放電パルス数Psの代わりに、基準放電パルス電流積分値を設定し、加工中の時々刻々変化する単位時間T当たりの放電パルス数Pxを計数する代わりに、加工中の放電パルス電流積分値を演算する。また、比κを求めたのと同様に、種々の材質、板厚、ワイヤ状電極の径について基準値を求めておき、これを利用することもできる。
この第二の実施形態では、放電パルス数の代わりに、放電パルス電流積分値を用いる点で相違するものであり、他は第一の実施形態と同一であり、動作作用、効果も同一である。
また、切り込み制御においても同様とすることができる。
本発明によるワイヤ放電加工機の制御装置を用いて、加工開始点において短絡の連続発生を抑制する制御を説明するための図である。 本発明において、放電後の加工距離と加工速度の関係を示すグラフである。 本発明によるワイヤ放電加工機の制御装置の第一の実施形態の要部を示すブロック図である。 本発明による制御装置を用いて行う切り込み制御のフローチャートである。 本発明による制御装置を用いて行う加工量制御のフローチャートである。 放電開始位置から所定距離内で短絡が発生したために送り速度を低下させる動作を、本発明による制御装置を用いて行うことを説明するための図である。 放電開始位置から所定距離内に短絡が発生しない場合の動作を説明するための図である。 本発明によるワイヤ放電加工機の制御装置の第二の実施形態の要部を示すブロック図である。 加工開始点から所定距離に達するまでの間で、短絡が発生しない場合の加工の進行状態を説明するための図である。 加工開始点から所定距離に達するまでの間に短絡が発生した場合の加工の進行状態を説明するための図である。 加工開始点から所定距離進んだ位置で、設定送り速度を切り換える加工を説明するための図である。
符号の説明
1 放電パルス発生装置
2 検出電圧発生装置
3 通電ブラシ
4 ワイヤ状電極
5 被加工物
6 放電間隙検出装置
7 放電パルス数計数装置
8 基準放電パルス数記憶装置
9 放電パルス数比較装置
10 X軸モータ駆動装置
11 Y軸モータ駆動装置
12 送りパルス分配装置
13 送りパルス演算装置
14 演算クロック
15 送り速度設定手段
16 放電休止時間制御装置
17 液量制御装置
18 電流検出回路
21 加工位置検出装置
22 放電開始位置検出装置
23 放電開始位置記憶装置
24 加工移動距離演算装置
25 所定距離記憶装置
26 比較手段
27 設定送り速度切換装置
37 放電パルス電流積分値演算記憶装置
38 基準放電パルス電流積分値記憶装置
39 放電パルス電流積分値比較装置

Claims (9)

  1. ワイヤ状電極と被加工物とを相対移動させながら、前記ワイヤ状電極と被加工物との間に放電パルス電流を投入して放電加工を行うワイヤ放電加工機の制御装置において、
    投入した放電パルス数を所定時間ごとに計数する放電パルス数計数手段と、
    移動指令に基づいて前記ワイヤ状電極と被加工物を加工経路に沿って相対移動させる移動手段と、
    基準となる放電パルス数を記憶する基準放電パルス数記憶手段と、
    前記放電パルス数計数手段が得た数値と前記基準放電パルス数記憶手段に記憶した数値とを比較して比率を求める放電パルス数比較手段と、
    設定送り速度と前記所定時間とで求まる前記ワイヤ状電極と被加工物の相対移動距離に前記比率を乗じて求めた距離を移動指令として前記所定時間毎に前記移動手段に出力する送りパルス演算手段と、
    放電の発生を検出することによって放電の開始位置を検出する放電開始位置検出手段と、放電開始位置からの加工移動距離を算出する加工移動距離演算手段と、
    前記加工移動距離と所定距離を比較する比較手段と、
    ワイヤと被加工物間の短絡を検出する短絡検出手段と、
    前記設定送り速度を切り換える設定送り速度切換手段とを備え、
    前記設定送り速度切換手段は、前記比較手段の比較結果及び前記短絡検出手段の検出出力に基づいて、加工移動距離が所定距離内で短絡を検出したときに低い設定送り速度に切り換え、加工移動距離が所定距離を越えたときに通常の設定送り速度に切り換えることを特徴とするワイヤ放電加工機の制御装置。
  2. 前記放電開始位置検出手段は放電パルス数によって放電の開始位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  3. ワイヤ状電極と被加工物とを相対移動させながら、前記ワイヤ状電極と被加工物との間に放電パルス電流を投入して放電加工を行うワイヤ放電加工機の制御装置において、
    投入した放電パルス電流を所定時間ごとに積分演算する放電パルス電流積分演算手段と、移動指令に基づいて前記ワイヤ状電極と被加工物を加工経路に沿って相対移動させる移動手段と、
    基準となる放電パルス電流の時間積分値を記憶する基準放電パルス電流積分値記憶手段と、
    前記放電パルス電流積分値演算手段が得た数値と前記基準放電パルス電流積分値記憶手段に記憶した数値とを比較して比率を求める放電パルス電流積分値比較手段と、
    設定送り速度と前記所定時間とで求まる前記ワイヤ状電極と被加工物の相対移動距離に前記比率を乗じて求めた距離を移動指令として前記所定時間毎に前記移動手段に出力する送りパルス演算手段と、
    放電の発生を検出することによって放電の開始位置を検出する放電開始位置検出手段と、
    放電開始位置からの加工移動距離を算出する加工移動距離演算手段と、
    前記加工移動距離と所定距離を比較する比較手段と、
    ワイヤとワーク間の短絡を検出する短絡検出手段と、
    前記設定送り速度を切り換える設定送り速度切換手段とを備え、
    前記設定送り速度切換手段は、前記比較手段の比較結果及び前記短絡検出手段の検出出力に基づいて、加工移動距離が所定距離内で短絡を検出したときに低い設定送り速度に切り換え、加工移動距離が所定距離を越えたときに通常の設定送り速度に切り換えることを特徴とするワイヤ放電加工機の制御装置。
  4. 前記放電開始位置検出手段は放電パルス電流積分値によって放電の開始位置を検出する請求項3に記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  5. 前記放電パルス数比較手段の比較結果に応じて、前記放電パルス数計数手段が所定時間ごとに得た数値が前記基準放電パルス数記憶手段に記憶した数値と一致するように、放電休止時間を制御する放電休止時間制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  6. 前記放電パルス数比較手段の比較結果に応じて、エネルギーの余剰投入を抑えるよう放電休止時間を制御する放電休止時間制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  7. 前記放電パルス電流積算値比較手段の比較結果に応じて、エネルギーの余剰投入を抑えるよう放電休止時間を制御する放電休止時間制御手段を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  8. 前記放電パルス数比較手段の比率に応じて、冷却液量を制御することを特徴とする請求項1,2,5,6の何れかに記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
  9. 前記放電パルス電流積算値比較手段の比率に応じて、冷却液量を制御することを特徴とする請求項3,4,7の何れかに記載のワイヤ放電加工機の制御装置。
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