JP2006011047A - 電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】 高耐久化と高画質化、さらには画質安定化の両立を実現する電子写真感光体、画像形成装置及び電子写真用プロセスカートリッジを提供する
【解決手段】 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面の下式で定義される弾性変位率τeが40%以上であり、かつ該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていることを特徴とする電子写真感光体。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
【選択図】 図9






Description

本発明は、電子写真感光体の耐摩耗性を高めたことにより発生しやすくなる異物付着による画像流れを抑制し、高耐久性と高画質化、さらに画質安定化を実現した電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましく、特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。急速に普及しているこれらのレーザープリンターやデジタル複写機は、今後高画質化と同時にさらなる高速化あるいは小型化が要求されている。さらに、最近ではフルカラープリントが可能なフルカラーレーザープリンタやフルカラーデジタル複写機の需要も急激に高くなっている。フルカラープリントを行う場合には少なくとも4色のトナー画像を重ね合わせる必要があることから、特に装置の小型化がより一層重要な課題とされている。
装置の小型化を実現するためには、それらに用いられる電子写真感光体の小径化が必要となる。特に、フルカラー化と高速化を両立させる上で有効なタンデム方式の場合には、少なくとも4本の感光体が装置に内包されるため、感光体の小径化の要求度は非常に高い。しかし、感光体の小径化は感光体の寿命を大幅に低減させるため、感光体の耐摩耗性を高めることが必要不可欠となる。
これら電子写真方式のレーザープリンターやデジタル複写機等に使用される電子写真感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から一般に広く応用されているが、無機系の感光体に比べると耐摩耗性において不利な状況にあった。感光体の耐摩耗性が低いと感光体を繰り返し使用した場合に、地汚れの発生が顕著に見られたり、感度や帯電性の安定性が低下し、画質の安定性が大幅に低下することになる。しかし、近年では、有機系の感光体においても表面を硬化させたり、フィラーを含有させた保護層を積層することによって、感光体の耐摩耗性が飛躍的に向上されている。
ところが、これらの方法によって感光体の耐摩耗性を向上させることが可能となっても新たな異常画像の発生が促され、感光体の十分な長寿命化が達成できていないのが実情である。それは、感光体が摩耗しにくくなったことによって表面に付着した異物が除去されにくくなり、それによって異常画像が発生しやすくなるものであり、電子写真感光体並びにそれを用いた画像形成装置の高画質化及び高耐久化を阻害する最も大きな原因の一つとなっている。
これらの異常画像の一つに画像流れが挙げられる。これは、帯電によって生成される放電生成物が感光体表面に付着することによって感光体表面の抵抗が低下し、電荷が横方向に拡散しやすくなることに起因し、特に高温高湿環境下においてその影響が顕著に発生する。耐摩耗性に乏しい感光体は、これらの放電生成物が感光体に付着しても感光体表面が摩耗されることによって容易に除去されたため、画像流れは発生しにくかった。しかし、感光体の耐摩耗性の向上に伴って、感光体表面に付着した放電生成物の除去が困難となり、繰り返し使用によってさらにそれらが蓄積され、それによる画像流れの発生が感光体の高耐久化を大幅に妨げる最大の要因となっていた。
これらの放電生成物の付着による画像流れを抑制する従来技術としては、感光体を加熱する方法[特許文献1(特開平1−191883号公報)、特許文献2(特開平1−206386号公報)、特許文献3(特開平1−233474号公報等)]や感光層に酸化防止剤を含有させる方法[特許文献4(特開昭59−136744号公報)、特許文献5(特開平2−64549号公報)、特許文献6(特開平2−64550号公報)、特許文献7(特開平8−292585号公報等)]が開示されている。特に、感光体を加熱して除湿させる方法は画像流れの抑制に対して非常に有効である。
しかし、感光体を加熱するためには、加熱ヒーターを感光体もしくは画像形成装置内に内包させる必要があることから装置の大型化が避けられず、特に少なくとも4本の感光体が内包されるタンデム方式の画像形成装置には適用するのは難しかった。また、絶えず感光体を加熱する必要があることから消費電力の著しい増加を引き起こす不具合も有していた。さらに、近年主流となっている小径感光体の場合には、より高い耐久性が要求されるにも関わらず、ヒーターを内包させることが難しく、効果が得られていないのが実情であった。一方、感光体の表面に酸化防止剤を含有させる方法は、帯電により発生するオゾンやNOxガスによる感光体の静電特性劣化を抑制させる上で有効ではあるが、感光体の表面に付着する放電生成物に対しては効果が得られていないのが実情であった。このように、感光体表面に付着する放電生成物の画像流れに与える影響は、感光体の耐摩耗性の向上に伴って顕著に増加し、従来技術では副作用も多い上に十分な抑制効果が得られておらず、高解像度化と高耐久化の両立が実現されていなかった。
また、異常画像を引き起こす他の原因としては、トナーの外添剤や紙粉の付着が挙げられる。これは、感光体表面に付着したそれらの異物が繰り返し使用する度に蓄積されることにより、やがて無数の斑点が画像に現れたり、それらが水分を取り込むことによって画像流れを引き起こしたりする場合がある。従来技術では、感光体表面の摩擦係数や表面エネルギーを低減させることによって、感光体表面の離型性を高める試みがなされている。例えば、フッ素変成シリコーンオイル[特許文献8(特開平07−295248号公報)、特許文献9(特開平07−301936号公報)、特許文献10(特開平08−082940号公報)]やシリコーン樹脂微粒子[特許文献11(特開平07−128872号公報)、特許文献12(特開平10−254160号公報)]、フッ素含有樹脂微粒子[特許文献13(特開昭63−65449号)等が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、初期時の摩擦係数や表面エネルギーを大幅に低減させることは可能となっても、繰り返し使用によってそれらが急激に上昇し、効果の持続性が極めて乏しかった。このように、繰り返し使用によって摩擦係数や表面エネルギーが急激に上昇するのは、帯電によって発生する放電生成物の付着がその要因の一つとして挙げられる。感光体表面に放電生成物が付着すると、感光体表面への放電生成物の蓄積速度は増加し、感光体とトナーや紙粉との付着力が高まることになるため、クリーニング不良やフィルミング、画像流れの影響が著しく増加することになる。このように、放電生成物は感光体の高画質化に対し非常に大きな悪影響を与えるものであり、この影響を軽減させない限り、感光体の高耐久化は非常に難しく、未だ実現されていないのが実情である。
一方、感光体表面を荒らすことによって離型性を高める方法についても試みられている。例えば、感光体表面に感光体の軸方向と角度を有する方向に山と谷が規則的に連続した形状を持たせる方法[特許文献14(特開2001−66814号公報)]が開示されている。しかし、この方法は離型性を高める効果は認められるものの、放電生成物による画像流れに対しては言及されていない。本発明においては、単に表面に凹凸を有しても効果は不十分であり、凹み形状を有する線状傷が少なくとも2方向より交差されていないと効果を得ることは難しく、本発明とは目的、構成並びに効果がまったく異なるものである。
また、感光層を粗面化する方法についてはほかにも数多く試みられている。例えば、表面が無数の互いに交差する線状傷により粗面化されている光導電性感光層の上に真空薄膜が形成された感光体[特許文献15(特許第2987922号)]が開示されている。粗面化の方法に関しては本発明と一致しているが、線状傷を有する光導電性感光層上に真空薄膜を形成し、それらの接着強度を向上させることを主目的としており、交差する線状傷を感光体の最表面に形成し画像流れを抑制させることを主目的とした本発明とは、目的、構成並びに効果がまったく異なるものである。
このように、近年、有機系の感光体の耐摩耗性は飛躍的に向上されてきたが、耐摩耗性の向上が実現されると同時に顕在化されてきた放電生成物や異物付着による画像流れ等の異常画像は、感光体の耐摩耗性を高めようとすると感光体表面に異物が残存しやすくなり、感光体表面のそれらの異物を除去しようとすると感光体の耐摩耗性が犠牲となるため、耐摩耗性の向上と異常画像の抑制を両立することは非常に難しかった。感光体の耐摩耗性が高くても異常画像が早期に発生するのでは、感光体並びにそれを用いた画像形成装置の高耐久化が実現されたことにはならない。感光体の耐摩耗性を維持しつつ感光体表面への放電生成物の付着による画像流れを抑制し、感光体の耐摩耗性と高画質化、さらには画質安定化を両立することが、感光体並びにそれらを用いた画像形成装置の高耐久化を実現する上で最大の課題であった。
特開平1−191883号公報 特開平1−206386号公報 特開平1−233474号公報 特開昭59−136744号公報 特開平2−64549号公報 特開平2−64550号公報 特開平8−292585号公報 特開平07−295248号公報 特開平07−301936号公報 特開平08−082940号公報 特開平07−128872号公報 特開平10−254160号公報 特開昭63−65449号公報 特開2001−66814 特許第2987922号
感光体の耐摩耗性の向上によって顕在化されてきた画像流れ等の異常画像は、画像形成装置の高耐久化を妨げる最大の課題となっている。感光体の耐摩耗性と感光体表面の異物付着による異常画像の発生はトレードオフの関係にあり、感光体の耐摩耗性に大きな影響を与えずに、感光体表面に付着した放電生成物による画像流れを抑制できる手段が強く求められていた。本発明の目的は、感光体の耐摩耗性を高めると同時に、放電生成物等の異物付着による画像流れを抑制できる方法を見いだし、それによって高耐久化と高画質化、さらには画質安定化の両立を実現する電子写真感光体、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
電子写真感光体の高耐久化を実現するためには、前述のとおり耐摩耗性の向上と同時に、感光体表面に付着する放電生成物による画像流れの影響を抑制することが必要であり、それらのどちらかが欠けると高耐久化を実現したことにはならない。従来は、感光体の耐摩耗性を向上させるに従い、感光体表面に放電生成物が残存しやすくなり、それらの放電生成物を除去しようとすると感光体の耐摩耗性が犠牲となり、感光体の耐摩耗性の向上と放電生成物の除去による画質安定化はトレードオフの関係にあって両立は非常に困難であった。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、感光体表面に付着した放電生成物による画像流れは、感光体表面の形状によって影響されており、以下の構成要件を満足することにより、感光体の耐摩耗性を高めつつ、放電生成物の付着による画像流れを抑制できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面の下式で定義される弾性変位率τeが40%以上であり、かつ該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていることを特徴とする電子写真感光体。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
(2)前記電子写真感光体の表面に保護層を形成させたことを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記線状傷の幅の平均値が10μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記線状傷の交差角度の80%以上が、135度以下にあることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(5)前記電子写真感光体の表面移動方向に直交する方向を基準線とし、該基準線と線状傷の交差点からそれと隣接する線状傷と基準線との交差点までの距離と定義される前記線状傷の間隔が、平均値として100μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6)前記線状傷の深さの平均値が、0.5μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(7)前記電子写真感光体の表面のダイナミック硬度(DH)が、115°三角すい圧子(ベルコビッチ115圧子)を用いた測定において、22以上であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(8)前記保護層が、加熱または光エネルギー照射によって硬化されており、有機溶媒に対し不溶性であることを特徴とする前記(2)乃至(7)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(9)前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した層からなることを特徴とする前記(2)乃至(8)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(10)前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーが3官能以上であり、前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が1官能であることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真感光体。
(11)前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする前記(9)乃至(10)に記載の電子写真感光体。
(12)前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーの官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記(9)乃至(11)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(13)前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記(9)乃至(12)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(14)前記電子写真感光体の表面に、シリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも1種が含有されていることを特徴とする前記(1)乃至(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(15)前記保護層にシリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物に官能基を有し、加熱または光エネルギー照射によって硬化することを特徴とする前記(8)乃至(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(16)電子写真感光体に、少なくとも帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの工程が順次繰り返されることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(1)乃至(15)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
(17)前記画像形成装置において、色の異なる複数のトナーを保持する現像部に対応した複数の電子写真感光体を具備することによって、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各工程が並列に処理されるタンデム方式の画像形成装置であることを特徴とする前記(16)に記載の画像形成装置。
(18)前記画像形成装置において、前記帯電時に帯電ローラーを用いて電子写真感光体に帯電を行うことを特徴とする前記(16)乃至(17)に記載の画像形成装置。
(19)前記画像形成装置において、前記現像時に球形もしくは略球形のトナーを用いることを特徴とする前記(16)乃至(18)のいずれかに記載の画像形成装置。
(20)前記画像形成装置において、前記転写時に中間転写体もしくは中間転写ベルトを介して紙に転写することを特徴とする前記(16)乃至(19)のいずれかに記載の画像形成装置。
(21)前記画像形成装置において、前記クリーニング時にクリーニングブレードを用いてクリーニングを行うことを特徴とする前記(16)乃至(20)のいずれかに記載の画像形成装置。
(22)前記画像形成装置において、該電子写真感光体の表面にシリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも一種を付着させる手段を有することを特徴とする前記(16)乃至(21)のいずれかに記載の画像形成装置。
(23)前記画像形成装置において、該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷を形成する手段を含んでいることを特徴とする前記(16)乃至(22)のいずれかに記載の画像形成装置。
(24)少なくとも前記電子写真感光体が、画像形成装置本体に対し着脱自在の構造を有する画像形成装置用プロセスカートリッジに具備されてなり、かつ該電子写真感光体が前記(1)〜(15)に記載されたいずれかの電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
に関する。
本発明によれば、弾性変位率τeが40%以上を有し、かつその表面に交差する線状傷を形成することによって、感光体の耐摩耗性の向上と同時に、放電生成物が感光体の表面に付着しても画像流れを抑制することが可能となった。従来、感光体の耐摩耗性を向上させると、表面の放電生成物が除去しにくくなるために、画像流れが発生しやすくなる傾向にあったが、本発明によってそれらを両立することが可能となり、感光体並びにそれを用いた画像形成装置の長寿命化を実現することが可能となった。また、感光体表面に互いに交差する線状傷が形成されていることにより、略球形状トナーを用いた場合でもクリーニング性が向上し、高画質化に対し更なる効果を得ることが可能となった。
前記放電生成物は、帯電によって発生するイオン種と大気中の水分とによって生成されるものと考えられており、これらが感光体表面に付着し、さらに大気中の水分を引き込むことによって、感光体表面の抵抗が低下し、画像流れが発生すると考えられている。従って、クリーニングによって感光体表面に付着した放電生成物が除去されれば画像流れの抑制が実現できることになる。しかし、感光体表面の耐摩耗性が高くなるに従い放電生成物を除去することは非常に難しくなる。本発明は、放電生成物が感光体表面に付着しても画像流れを発生しにくくするものである。
放電生成物が感光体表面に付着することにより高温高湿下において画像流れが発生するのは、放電生成物が付着した部分の抵抗が急激に低下することにより、電荷発生層から移動してきた電荷が表面に到達したとき電荷が横方向に拡散してしまい、静電潜像がぼやけることによって生ずると考えられている。つまり、放電生成物の付着領域が大きいほど電荷の拡散領域も広がり、画像流れの度合いも増加するものと考えられる。従って、画像流れを抑制するためには、放電生成物の付着量を低減させることが好ましいが、感光体の耐摩耗性を高めた場合にそれは非常に難しい。本発明においては、放電生成物が感光体表面に付着してもその付着領域を細かく区切り、電荷の拡散を画像に影響を与えないほどの小さな領域に留めることによって画像流れを抑制するものである。
以下に、本発明の請求項に関する説明を記述する。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面の下式で定義される弾性変位率τeが40%以上であり、かつ該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていることを特徴とする電子写真感光体。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
上式で定義される弾性変位率τeが40%以上とすることによって、感光体表面への応力が緩和されるために、著しい耐摩耗性の向上が実現できる。しかし、この方法だけでは放電生成物の除去が困難となり画像流れが早期に発生してしまう。
本発明においては、感光体表面にさらに交差する無数の線状傷を形成させた。これによって、感光体表面に付着した放電生成物は、クリーニングの際に線状傷の凹み部分に閉じ込められ、線状傷のない部分の放電生成物は除去され易くなる。
このように、感光体表面の線状傷に放電生成物が閉じ込められると、電荷の拡散は主に線状傷の中だけに限定されることになり、それによって画像流れの影響を大幅に軽減させることが可能となる。また、感光体の表面に線状傷を有する場合、傷のない平滑な表面の場合に比べてクリーニングブレードとの接触面積が減少するため、放電生成物のクリーニング性を高める効果も得ることができる。特に、上式で定義される弾性変位率τeが40%以上を有する感光体表面においては耐摩耗性が向上する反面、クリーニングブレードがめくれ易く、クリーニング不良が発生してしまう場合が多いが、本発明においてクリーニングブレードと感光体との接触面積が低減されたことによってブレードめくれが抑制され、クリーニングの高安定化に対しても効果が得られる。また、感光体表面の上式で定義される弾性変位率τeが40%以上であることにより、応力を緩和できるようになるため、線状傷部分の欠けを軽減することができ、それによる傷の拡大や摩耗の促進を防ぐ効果も得られる。
ただ、この線状傷が本発明のように互いに交差する形状のものではなく、一方向だけの形状の場合、線状傷の方向に対して平行な書き込みラインは横方向への電荷の拡散が抑制されているため、画像流れを抑制することが可能となるが、線状傷の方向に対して垂直な書き込みラインに対しては、傷に沿って電荷の拡散を助長させることになるため文字が太り、解像度の低下が認められるようになる。このように線状傷が一方向の場合では、画像流れに線状傷の方向依存性が生じるため画像流れを抑制させるに十分ではない。少なくとも2方向以上から線状傷を交差させることにより、あらゆる方向の書き込みラインに対しても電荷の拡散を抑制することが可能となり、画像流れを抑制させることが可能となる。
(2)前記電子写真感光体の表面に保護層を形成させたことを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
保護層は感光層に比べて膜厚を薄くすることが可能であるため、上式で定義される弾性変位率τeが40%以上の表面を有する感光体が得られやすい。また、膜厚を薄くできるために残留電位等に大きな影響を与えることなく、耐摩耗性を飛躍的に向上させる上でも優れており、本発明において特に有効かつ有用である。
(3)前記線状傷の幅の平均値が10μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(2)に記載の電子写真感光体。
形成した線状傷の幅が大きいほど、電荷の拡散領域が広くなり、画像流れの影響が増加する傾向にある。また、線状傷の幅が必要以上に大きいと、スジ状の画像欠陥が発生したり、異物の蓄積による画像欠陥が発生し、本発明の効果が低下する恐れがある。形成する線状傷の幅を10μm以下にすることにより、それらの影響を抑制することが可能となり、十分な画像流れ抑制効果を得、また異常画像の抑制に大きな効果を得ることが可能となる。
(4)前記線状傷の交差角度の80%以上が、135度以下であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の電子写真感光体。
少なくとも2方向から交差させた線状傷の交差角度が小さくなるに従い、(1)で述べた画像流れの線状傷方向依存性が増加することになり、画像流れ抑制効果は低減する。線状傷の交差角度の80%以上が、135度以下になるように形成することによって、あらゆる方向のラインやドットに対しても画像流れを抑制させることが可能となる。
(5)前記電子写真感光体の表面移動方向に直交する方向を基準線とし、該基準線と線状傷の交差点からそれと隣接する線状傷と基準線との交差点までの距離と定義される前記線状傷の間隔が、平均値として100μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
線状傷の間隔が広くなるに従い、画像流れ抑制効果が低減することになるため、線状傷は感光体表面全体に均一に形成する必要がある。本発明においては、前記線状傷の間隔を、感光体の表面移動方向に直交する方向を基準線とし、該基準線と線状傷の交差点からそれと隣接する線状傷と基準線との交差点までの距離と定義し、その平均値として100μm以下にすることで、線状傷の均一形成が可能となり、画像流れ抑制効果が十分に発揮され有効となる。
(6)前記線状傷の深さの平均値が、0.5μm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の電子写真感光体。
線状傷の深さが深くなると、傷の凹み部分に異物が入り込み易く、また除去しにくくなり、それがフィルミングや異物付着による画像欠陥を引き起こす恐れがある。線状傷の深さの平均値が、0.5μm以下であることにより、それらの影響による副作用なしに、画像流れ抑制効果を十分に得ることが可能となる。
(7)前記電子写真感光体の表面のダイナミック硬度(DH)が、115°三角すい圧子(ベルコビッチ115圧子)を用いた測定において、22以上であることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の電子写真感光体。
感光体表面のダイナミック硬度(DH)が22以上であることによって、感光体の耐摩耗性がさらに向上するだけでなく、形成された線状傷が繰り返し使用によっても安定に維持されるために、本発明による効果を長期に渡って安定に得ることが可能となる。
(8)前記保護層が、加熱または光エネルギー照射によって硬化されており、有機溶媒に対し不溶性であることを特徴とする前記(2)乃至(7)のいずれかに記載の電子写真感光体。
感光体表面の上式で定義される弾性変位率τeが40%以上であっても、加熱または光エネルギー照射によって硬化した方が耐摩耗性の向上に有利である。また、本発明においては硬化前に線状傷を形成し、その後硬化する手段を選択することができ、生産性並びに効果の安定性においても大きなメリットを有する。
(9)前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した層からなることを特徴とする前記(2)乃至(8)のいずれかに記載の電子写真感光体。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化させることによって、耐摩耗性の向上と残留電位や感度の安定化の両立を一層確実にすることができる。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー単独で硬化させた場合には、電荷を表面まで移動させることが困難となり、著しい残留電位上昇が起こり、画像濃度が不安定となる。この場合において、電荷輸送物質として低分子の電荷輸送物質を添加することでこの不具合を改善することができるが、硬化後に低分子電荷輸送物質が表面に析出することがあり、異常画像を発生させる恐れがある。
(10)前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーが3官能以上であり、前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が1官能であることを特徴とする前記(9)に記載の電子写真感光体。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーが3官能以上であることにより、緻密で均質な3次元網目構造を有する保護層を形成することが可能となり、架橋密度が高い高弾性変位率でかつ高硬度な膜形成を実現できるため耐摩耗性の向上に有利となる。一方、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が1官能であることにより、残留電位上昇や感度劣化の影響が少なく、また膜表面の凹凸が少なく、画質安定性や生産安定性の向上に有利である。
(11)前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする前記(9)乃至(10)に記載の電子写真感光体。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が250以下とすることにより、架橋密度が高くなり、弾性変位率のより高い保護層を得ることが可能となる。また、同時に硬度を高める上でも有効であり、これにより高い耐摩耗性を維持することが可能となる。
(12)前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーの官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記(9)乃至(11)のいずれかに記載の電子写真感光体。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーの官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることにより、耐摩耗性の向上と同時に、残留電位の低減及び経時安定性の向上、膜質の向上、オゾンやNOxによる画像ボケの抑制等において有利となる。
(13)前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする前記(9)乃至(12)のいずれかに記載の電子写真感光体。
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることにより、耐摩耗性の向上と同時に、残留電位の低減及び経時安定性の向上、膜質の向上、オゾンやNOxによる画像ボケの抑制等において有利となる。
(14)前記電子写真感光体の表面に、シリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも1種が含有されていることを特徴とする前記(1)乃至(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
シリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも1種が含有されていることにより、感光体表面の摩擦係数が低減し離型性が向上するため、異物付着の抑制及び異物クリーニング性の向上に有効となる。さらに、表面に線状傷を有することによって粗面化されているために、摩擦係数低減効果の持続性が向上する。特に、放電生成物の付着は、感光体表面の摩擦係数を上昇させる原因の一つであるため、それらの線状傷に閉じ込めることによって、摩擦係数低減効果の持続性が高まり、それによって異物による画質への影響を大幅に低減することが可能となる。
(15)前記保護層にシリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物に官能基を有し、加熱または光エネルギー照射によって硬化することを特徴とする前記(8)乃至(13)のいずれかに記載の電子写真感光体。
シリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物に官能基を有し、加熱または光エネルギー照射によって硬化されていることにより、それらが感光体の表面にしみ出すことが少なく、(14)で記述した離型効果の安定性が著しく向上し、また一緒に硬化されるため架橋阻害により耐摩耗性を低下させることもなく、画質安定性を向上する上でさらなる効果を得ることが可能となる。
(16)電子写真感光体に、少なくとも帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの工程が順次繰り返されることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体が前記(1)乃至(15)のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
本発明の感光体を用いることによって、高い耐摩耗性を有し、かつ高温高湿環境下においても画像流れが発生せず、耐久性と画質安定性の両立を実現した画像形成装置を提供することが可能となる。
(17)前記画像形成装置において、色の異なる複数のトナーを保持する現像部に対応した複数の電子写真感光体を具備することによって、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各工程が並列に処理されるタンデム方式の画像形成装置であることを特徴とする前記(16)に記載の画像形成装置。
本発明の感光体を用いることによって、高画質化と高耐久化を両立でき、これにより感光体の小径化が可能となる。したがって、感光体を複数内包させる必要があり、小型化が難しかったタンデム方式の画像形成装置の小型化に大いに貢献する。また、これによりフルカラープリントの高速化も実現され、高画質化、高安定化、高耐久化、高速化を同時に実現する画像形成装置を得ることができる。
(18)前記画像形成装置において、前記帯電時に帯電ローラーを用いて電子写真感光体に帯電を行うことを特徴とする前記(16)乃至(17)に記載の画像形成装置。
帯電ローラーは、コロナ帯電に比べオゾンやNOxの発生量が極めて少なく、オゾンやNOxガスによる画像ボケの影響を軽減することが可能となるが、放電生成物の付着量は逆に増加することになる。本発明の感光体を用い、帯電手段として帯電ローラーを用いることによって、放電生成物の付着による画像への影響を抑制することが可能となるため、放電生成物による画像流れとオゾンやNOxガスによる画像ボケの影響を同時に軽減することが可能となり、画質安定性において非常に優れている。
(19)前記画像形成装置において、前記現像時に球形もしくは略球形のトナーを用いることを特徴とする前記(16)乃至(18)のいずれかに記載の画像形成装置。
球形もしくは略球形トナーを用いることによって、転写効率が向上し高画質化に対して非常に有効となるが、球形であることによりトナーのクリーニング性が大幅に低下するため、使用に際し不具合が生じている。本発明において、感光体表面に交差する線状傷が形成されたことによって、クリーニング時における球形トナーの転がりを抑制することが可能となるため、トナーのクリーニング性を大幅に改善させる効果が得られる。感光体表面の線状傷が一方向のみの場合ではトナーの転がりを十分に抑制することができず、満足するクリーニング性は得られないが、少なくとも2方向から交差する線状傷を形成することにより、トナーの動きを完全に抑え、さらに離型性をより高めることが可能となるため、トナーのクリーニング性が顕著に高まり、球形トナーを使いこなすことが可能となり、それによって高画質化及び画質安定化に対し顕著な効果を得ることが可能となる。
(20)前記画像形成装置において、前記転写時に中間転写体もしくは中間転写ベルトを介して紙に転写することを特徴とする前記(16)乃至(19)のいずれかに記載の画像形成装置。
転写時に中間転写体もしくは中間転写ベルトを介して紙に転写することによって、感光体に直接紙が接しないために紙粉の影響を抑えることができる。また、感光体から中間転写体もしくは中間転写ベルトへトナーを転写させる工程において、感光体からトナーが転写されずに残ってしまい、中抜け等の画像欠陥が発生しやすくなる不具合がある。本発明において、感光体表面に交差する線状傷が形成されているために、離型効果が得られ、感光体とトナーの過剰な付着力を低減することが可能となり、それによって中間転写体もしくは中間転写ベルトへの転写性を高めることが可能となる。それによって、中抜け等の画像欠陥を抑制することが可能となり、高画質化が実現される。また、転写効率が向上できたことにより、クリーニングに与える負荷を低減させ、クリーニング効率の向上にも寄与できる。
(21)前記画像形成装置において、前記クリーニング時にクリーニングブレードを用いてクリーニングを行うことを特徴とする前記(16)乃至(20)のいずれかに記載の画像形成装置。
本発明におけるクリーニング工程は、トナー粒子だけをクリーニングするのではなく、感光体に付着した放電生成物をも除去し、線状傷内に閉じ込める効果が要求される。この場合、クリーニングブラシよりも感光体の表面に常に接触しているクリーニングブレードが有効である。クリーニングブレードを用いることによって、感光体表面に付着した放電生成物のクリーニングにも効果が得られる上に、形成した線状傷に放電生成物を閉じ込める上でも好適かつ有効となり、本発明の効果を得る上で有利である。
(22)前記画像形成装置において、該電子写真感光体の表面にシリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも一種を付着させる手段を有することを特徴とする前記(16)乃至(21)のいずれかに記載の画像形成装置。
感光体表面にこれらの滑性成分を含む化合物を付着させることによって感光体表面の摩擦係数を低減し、それによって離型性を高めたり、異物付着を軽減したり、摩耗量を低減させるなど、多くの効果を得ることができるが、それが過剰に付着すると解像度の低下等の画像欠陥を引き起こす副作用を有する。本発明においては感光体表面に少なくとも2方向から交差する線状傷を形成したことによって、それらの滑性成分を含む化合物が過剰に付着したとしても、それらは線状傷に入り込むため、解像度低下等の画像欠陥の副作用を抑制することが可能となる。更に、摩擦係数低減効果の持続性を高めることが可能となる。
(23)前記画像形成装置において、該電子写真感光体の最表面に互いに交差する無数の線状傷を形成する手段を含んでいることを特徴とする前記(16)乃至(22)のいずれかに記載の画像形成装置。
感光体の耐摩耗性を向上させても摩耗量を完全にゼロにすることは難しい。従って、経時で摩耗すれば、いずれは形成した線状傷は摩耗によって消えることになり、それによって画像流れ抑制効果の持続性が低下することになる。そこで、画像形成装置において経時で感光体表面に線状傷を形成させることにより、画像流れ抑制効果を半永久的に持続させることが可能となり、感光体の画質安定化をさらに高めることが可能となる。また、使用経時で線状傷を形成させる工程が加わることにより、感光体表面にリフェイス効果、すなわち感光体表面に付着したフィルミング物を除去する効果が得られ、高画質化に対しさらなる効果が得られる。なお、本発明においては感光体のくり返し使用によって、現像剤や紙、クリーニングブレード等との接触によって感光体表面に形成される傷も線状であって、本発明の線状傷として扱うことができる。但し、この場合、現像剤や紙、クリーニングブレード等の接触によって形成される線状傷は一方向であって、それだけでは画像流れ防止効果としては十分ではない。場合によっては、一方向に画像流れが強調されてしまうため、解像度の顕著な低下を引き起こす恐れがある。本発明においては、線状傷が互いに交差していることによって、あらゆる方向の書き込みに対しても画像流れを抑制できるものであるため、この場合現像剤や紙、クリーニングブレード等で形成される線状傷とは異なる角度を有する別の線状傷を形成することによって達成される。
(24)前記画像形成装置において、少なくとも前記電子写真感光体が、画像形成装置本体に対し着脱自在の構造を有する画像形成装置用プロセスカートリッジに具備されてなり、かつ該電子写真感光体が前記(1)〜(15)のいずれかに記載されたいずれかの電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
本発明の感光体は、耐摩耗性と画質安定性を両立したことにより、飛躍的に耐久性を向上させることが可能となった。しかし、このように長寿命化を実現すれば感光体周辺のメンテナンスや消耗品の交換は必要であり、また感光体表面に線状傷を形成させたり、線状傷を形成させるための部材を交換する必要も生じる。この場合に画像形成装置本体に対し着脱自在の構造を有するプロセスカートリッジに感光体を具備することにより、それらのメンテナンスや交換が容易となる。それによって、さらなる長期に渡る繰り返し使用が可能となる。
以上のように、感光体の耐摩耗性を高めた感光体は、これまで感光体表面に付着する放電生成物によって高温高湿環境下激しい画像流れが発生し、感光体の耐摩耗性の向上と画質安定化の両立が実現されていなかった。本発明において、感光体表面に放電生成物が付着してもそれによる低抵抗化領域を狭めることによって画像流れとして顕在化させず、それによって感光体の耐摩耗性の向上と画質安定化の両立を実現させることができた。さらに、本発明は転写効率やクリーニング性を同時に高める効果も得られ、高画質化に対して非常に有効である。本発明により、感光体の耐摩耗性を維持しつつ、画像流れ等の異常画像の発生を抑制することが可能となり、さらに転写効率やクリーニング性を同時に高めることが可能となったことにより、高耐久化と高画質化、さらに画質安定化をすべて実現する電子写真感光体並びにそれを用いた画像形成装置を提供することが可能となった。
以下に、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる電子写真感光体を図面に沿って詳細に説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の層構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33が順次設けられている。
図2は、本発明の電子写真感光体の層構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37が順次設けられている。
図3は、本発明の電子写真感光体の層構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層33及び保護層39が順次設けられている。
図4は、本発明の電子写真感光体の層構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37及び保護層39が順次設けられている。
図5は、本発明の電子写真感光体の層構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37と、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35及び保護層39が順次設けられている。
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
次に感光層について説明する。感光層は単層であっても複数の層を積層した構成であってもよい。まず、電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される積層構成の場合について説明する。電荷発生層及び電荷輸送層は各々一層であっても複数層を有していてもよい。また、電荷発生層の上に電荷輸送層を形成しても、あるいはその逆の構成であってもよい。
始めに、電荷発生層35について説明する。電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じて結着樹脂を併用することができる。
電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)等のアゾ系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、また下記式で表される金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料等が挙げられる。
Figure 2006011047
式中、M(中心金属)は、金属及び無金属(水素)の元素を表す。ここであげられるM(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしく酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等は感光体特性上特に好ましい。またこれらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことが知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、Y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより種々の特性も変化する。これらの種々の結晶系を有するフタロシアニン系顔料を用いた感光体の特性もそれに伴って変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))。このことから、フタロシアニンの結晶系の選択は感光体特性上非常に重要であり、中でもY型オキソチタニウムフタロシアニンは特に高感度化に対し有効かつ有用である。なお、これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカ−ボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらの結着樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層の結着樹脂として前述の結着樹脂の他に、後述の高分子電荷輸送物質(例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平6−234838号公報、特開平6−234839号公報、特開平6−295077号公報、特開平7−56374号公報、特開平7−325409号公報、特開平9−80772号公報、特開平9−80783号公報、特開平9−80784号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−265201号公報、特開平9−297419号公報、特開平9−304956号公報記載)を用いることができる。電荷発生層35で用いられる結着樹脂の量は電荷発生物質100重量部に対し、0〜500重量部、好ましくは0〜200重量部が適当である。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤や増感剤、分散剤等の各種添加剤を添加することができる。
電荷発生層35を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、前述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、前述の無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法など従来公知の方法を用いて行うことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
電荷輸送層37は、少なくとも電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを例えば電荷発生層35の上に塗布、乾燥することにより形成できる。
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂等が挙げられ、単独でも2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
また、電荷輸送層37には、結着樹脂としての機能と電荷輸送物質としての機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これらの高分子電荷輸送物質を電荷輸送層に含有させた場合、その上に保護層を積層させる際に電荷輸送層内の低分子電荷輸送物質が保護層へ溶け出すことがないために、保護層の架橋阻害の影響を軽減することが可能となり、耐摩耗性の向上に対して有効となる。本発明においては、これらの高分子電荷輸送物質に前述の結着樹脂や低分子電荷輸送物質を混合して用いることも可能である。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料がすべて使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記の(I)〜(X)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
Figure 2006011047
[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換及び/または無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換及び/または無置換のアルキル基、R5、R6は置換及び/または無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成(モル分率)を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9の数を表し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。]
Figure 2006011047
(式中、R101、R102は各々独立して置換及び/または無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状及び/または環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(Zは脂肪族の2価基を表す)または、
Figure 2006011047
(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す)を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。]
Figure 2006011047
(式中、R7、R8は置換及び/または無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R9、R10は置換及び/または無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R11、R12は置換及び/または無置換のアリール基、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基を表し、pは1〜5の整数を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R13、R14は置換及び/または無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換及び/または無置換のエチレン基、又は置換及び/または無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R15、R16、R17、R18は置換及び/または無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換及び/または無置換のアルキレン基、置換及び/または無置換のシクロアルキレン基、置換及び/または無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R19、R20は水素原子、置換及び/または無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R21は置換及び/または無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R22、R23、R24、R25は置換及び/または無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
Figure 2006011047
(式中、R26、R27は置換及び/または無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(I)の場合と同じである。)
以下、これらトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートの具体例の幾つかを以下に示すが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
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Figure 2006011047
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Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
これら主鎖もしくは側鎖にトリアリールアミン構造を有している高分子電荷輸送物質は、単重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体の形態で重合される。そして、これら高分子電荷輸送物質は結着樹脂としての役割をもつことから被膜形成能を有していることが必要である。そのため、分子量は、GPCによる測定において、ポリスチレン換算分子量Mwとして1万〜50万が適当で、好ましくは5万〜40万である。
これら高分子電荷輸送物質は、特開平8−269183号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号公報、特開平9−272735号公報、特開平11−29634号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開2000−26590号公報に開示されている。
電荷輸送物質の含有量は、結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は単独でも、他の結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層37の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層35と同様なものが使用できる。一例として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を挙げることができるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
電荷輸送層37には必要に応じて、レベリング剤や酸化防止剤、可塑剤等を添加することが可能である。併用できるレベリング剤としてはジメチルシリコ−ンオイル、メチルフェニルシリコ−ンオイル等のシリコーンオイル類や側鎖にパ−フルオロアルキル基を有するポリマ−あるいはオリゴマ−が使用され、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
併用できる酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、ヒンダードフェノール系化合物類、ヒンダードアミン系化合物類、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機リン化合物類、ベンゾフェノン類、サルシレート類、ベンゾトリアゾール類、クエンチャー(金属錯塩系)等、従来公知の酸化防止剤をすべて使用することが可能である。また、2種以上の酸化防止剤を混合して添加することにより効果が顕著に高まることがあり、有効である。使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜5重量%程度が適当である。また、併用できる可塑剤としてはジブチルフタレ−ト、ジオクチルフタレ−ト等の一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
塗工は電荷発生層35と同様に浸漬塗工法やスプレ−コ−ト、ビ−ドコ−ト、リングコート法など公知の方法を用いて行うことができるが、浸漬塗工法が最も好ましく用いられる。電荷輸送層37の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、解像度、地肌汚れ等の画像特性及び帯電電位、感度等の電気特性上、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
次に感光層が単層構成33の場合について述べる。感光層33は、前述の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを導電性支持体上に塗工及び乾燥することによって形成される。電荷発生物質及び電荷輸送物質は、前述の電荷発生層35及び電荷輸送層37で挙げた材料を使用することが可能である。また、結着樹脂としては、前述の電荷輸送層37で挙げた樹脂の他に、電荷発生層35で挙げた樹脂を混合して用いてもよい。また、結着樹脂として前述の高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は、5〜40重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部であり、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等の溶剤に溶解ないし分散し、これを浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。また、必要により前記の可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤、滑剤等の各種添加剤を添加することもできる。感光層33の膜厚は5〜25μm程度が適当である。
本発明においては、前記の電荷輸送層、電荷発生層もしくは感光層の上に最表面層として保護層を形成しても良く、本発明においてはより有効である。
本発明は、感光体表面の弾性変位率τeが40%以上であれば如何なる感光体であっても使用することができる。これにより、感光体当接物の機械的摺擦による応力を緩和できることなどにより、耐摩耗性の向上と同時に、線状傷の効果の持続性が向上し有効かつ有用である。
弾性変位率τeは、より高い方が耐摩耗性を高める上で有効であるが、用いる材料によってその値は大きく異なる。本発明における弾性変位率τeとしては、40〜90%が好ましい。また、本発明のアクリル系硬化膜の場合には、40〜60%が好ましい。弾性変位率τeが、これに満たない場合には、耐摩耗性の低下、偏摩耗の増加等により耐久性の大幅な低下を引き起こし、線状傷を形成したメリットを生かせないばかりか、摩耗を促進させる恐れがある。一方、弾性変位率τeが必要以上に増加すると、クリーニング不良やフィルミングの影響が増大する恐れがある。
本発明の弾性変位率τeは、例えばビッカース圧子を用いた微小表面硬度計の負荷−除荷試験により測定される。図6に示すように、圧子がサンプルに接触した点(a)から一定負荷速度で圧子を押し込み(負荷過程)、設定荷重に達したときの最大変位(b)で一定時間静止し、更に一定除荷速度で圧子を引き上げ(除荷過程)、最終的に圧子に荷重がかからなくなった点を塑性変位(c)とする。このとき、得られる押し込み深さと荷重の曲線が図7のように記録され、最大変位(b)と塑性変位(c)から弾性変位率τeは以下の式で算出される。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
かかる弾性変位率測定は、一定湿度下で行われ、本発明で弾性変位率とは、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。
本発明においては、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所)もしくは、Fisherscope H100(フィッシャーインストルメンツ)を用い、圧子としてはベルコビッチ圧子(115゜)あるいはビッカース圧子を用いて測定しているが、これと同等の性能を有するいかなる装置で測定された値でもよい。測定においては、アルミニウムシリンダー上に少なくとも感光層並びに保護層を積層して作製した感光体を適宜切断して用いた。弾性変位率τeは基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としてはアルミニウムシリンダーのほか剛直な金属版、スライドガラスなどが適当である。更に、保護層の下層(例えば、電荷輸送層、電荷発生層など)の硬度や弾性の要素も影響するため、これらの影響を減らすように最大変位が表面層膜厚の1/10になるように規定加重を調整した。保護層のみを単独で基板上に作製すると、下層成分の混入、下層との接着性が変わり、必ずしも感光体の表面層を正確に再現できないため、好ましくない。
本発明の保護層は、ダイナミック硬度(DH)が、115°三角すい圧子(ベルコビッチ115圧子)を用いた測定において22以上を示すものであればさらに有効かつ有用である。
ダイナミック硬度とは、ビッカース硬度やヌープ硬度の方式ではなく、圧子がサンプルにどれだけ侵入したかを測定する方法である。一般にダイナミック硬度(DH)は下式により定義される。
DH=α×P/D2
P:試験荷重(mN)
D:圧子のサンプルへの侵入量(押し込み深さ)(μm)
α:圧子形状による定数
α=3.8584 115°三角すい圧子、ビッカース圧子
15.018 100°三角すい圧子
このダイナミック硬度は、圧子を押し込んでいく過程の荷重と押し込み深さから得られる硬さで、サンプルの塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料強度特性を得ることができ、本発明に適している。本発明において、感光体表面のダイナミック硬度は、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下でダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)を用いて測定を行った。これに用いられる圧子には、三角すい圧子(115°)(ベルコビッチ圧子)、三角すい圧子(100°)、ビッカース圧子、ヌープ圧子等があり、測定目的により使い分けられるが、本発明においては標準の三角すい圧子(115°)を用いた。
これらの特性を満足させるためには、保護層に硬化性樹脂を用いることが最も適しており、本発明においても有効に用いることができる。硬化性樹脂としては、特に熱硬化樹脂、光硬化樹脂、電子線硬化樹脂等が挙げられ、中でも紫外線硬化樹脂は硬度が高く、本発明においては最も有効に用いられる。例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が好ましく用いられ、特にアクリル系樹脂が感光体の耐摩耗性、静電特性、塗膜品質、画像品質上最も好ましい。
しかし、感光体の静電特性を満足させるためには、保護層に電荷輸送機能を付与する必要がある。電荷輸送機能を持たせないと残留電位上昇や感度劣化を引き起こし、感光体の画質安定性を大きく低下させてしまう。保護層に電荷輸送機能を付与するためには、電荷輸送物質を含有させることによって可能となるが、特に上記のような硬化性樹脂を用いた場合には、電荷輸送物質との相溶性が低いため、電荷輸送物質が析出したり、白濁するなど膜の品質が低下し、また架橋阻害を引き起こす場合もあり耐摩耗性が著しく低下する。
本発明においては、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化させることによって、膜品質、残留電位や感度等の電気的特性、感光体の耐摩耗性等を飛躍的に向上させることが可能となり好適である。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーは、3官能以上であることが好ましく、これにより3次元の網目構造が発達し、架橋密度が向上することによって硬度並びに弾性変位率が高くなる傾向を示し、耐摩耗性の向上に対しさらなる効果を得ることができる。一方、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、2官能以上のものを用いることも感光体表面の平滑性、静電特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。しかし、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有すると、架橋結合密度を高められるため弾性変位率τeは比較的大きな値を示すが、嵩高い正孔輸送性化合物が多数の結合で絡み合うため、表面層に歪みが生じ硬化反応が不均一となる。このため外部応力に対する回復力が局部的に低下し、弾性変位率τeの標準偏差が大きくなる。これにより局部的に凹凸が生じることによって本発明の効果が低減する恐れがある。従って、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物よりも、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用いた方が好ましい。
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=CH−X1− ・・・・式10
(ただし、式中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表す。)
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=C(Y)−X2− ・・・・式11
(ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は上記式10のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変成トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変成(以後EO変成)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変成(以後PO変成)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変成トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変成)トリアクリレート、グリセロールEO変成トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変成トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。これにより、表面層の弾性変位率や硬度が向上し、感光体表面の耐摩耗性が高まる傾向が見られている。また、この割合が250より大きい場合、保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、保護層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、保護層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が効果が高く、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 2006011047
[式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。)
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)
Figure 2006011047
(式中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
Figure 2006011047
で表わされ、R5は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、本発明の1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
Figure 2006011047
(式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
Figure 2006011047
を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
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Figure 2006011047
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Figure 2006011047
Figure 2006011047
Figure 2006011047
また、本発明に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は保護層に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、保護層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
また、本発明の保護層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるために保護層塗布液中に重合開始剤を含有させても良い。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
更に、本発明の保護層塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、酸化防止剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。これらの添加量が必要以上に多くなると、架橋密度の低下を引き起こし硬化を阻害したり、表面に析出したり、塗膜が白濁化したり、相分離が生じ有機溶剤に対し可溶性となることがあり、感光体の耐摩耗性に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、必要最小量に留める必要がある。
本発明の保護層は、少なくとも上記の電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を後に記載の電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。
塗工液の希釈溶媒については、下層(感光層、電荷輸送層あるいは電荷発生層)を容易に溶解する溶媒を多量に用いると下層の樹脂バインダーや低分子電荷輸送物質などの組成物が表面層に混入し、硬化反応の妨げになるばかりでなく、塗工液中に予め非硬化材料を多量に含有させた場合と同様な状態となり、架橋表面の不均一硬化が発生する。逆に、下層を全く溶解しない溶媒を使用した場合、表面層と下層の接着性が低下し、硬化反応時の体積収縮から表面層にクレーター状のはじきが現れ、感光体の表面粗さが増大したり、低い弾性変位率の下層が部分的に露出する。これらの対策としては、混合溶媒を使用し下層の溶解性をコントロールする、液組成や塗工法により塗工表面層に含有される溶媒量を低減する、下層に高分子電荷輸送物質などを用い下層成分の混入を抑える、下層と架橋表面層の間に溶解性の低い中間層や良好な接着性の中間層を設ける、などが挙げられる。
また、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合も、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす。このため有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。その点においては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける。具体的には、10〜50重量%の範囲で用いることが望ましい。保護層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。
本発明においては、かかる保護層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、保護層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しない。170℃より高温では硬化反応が不均一に進行し保護層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、保護層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
本発明の保護層においては、静電特性を維持するため嵩高い電荷輸送性構造を含有させ、且つ高強度化のため架橋結合密度を高める必要がある。この様な保護層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し弾性変位率τeのばらつきが大きくなり、本発明の有効性が低下する恐れがある。このため加温条件、光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な熱や光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば加熱手段として送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。硬化終了後は、さらに残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
本発明は更に電荷発生層、電荷輸送層、保護層を順次積層した構成において、最表面の保護層が有機溶剤に対し不溶性である場合、飛躍的な耐摩耗性が達成されることを特徴としている。この有機溶剤に対する溶解性を試験する方法としては、感光体表面層上に高分子物質に対する溶解性の高い有機溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を1滴滴下し、自然乾燥後に感光体表面形状の変化を実体顕微鏡で観察することで判定できる。溶解性の感光体は液滴の中心部分が凹状になり周囲が逆に盛り上がる現象、電荷輸送物質が析出し結晶化による白濁やくもり生ずる現象、表面が膨潤しその後収縮することで皺が発生する現象などの変化がみられる。それに対し、不溶性の感光体は上記のような現象がみられず、滴下前と全く変化が現れない。
本発明の構成において、保護層を有機溶剤に対し不溶性にするには、(1)保護層塗工液の組成物、それらの含有割合の調整、(2)保護層塗工液の希釈溶媒、固形分濃度の調整、(3)保護層の塗工方法の選択、(4)保護層の硬化条件の制御、(5)下層の電荷輸送層の難溶解性化など、これらをコントロールすることが重要であるが、一つの因子で達成される訳ではない。
本発明の構成において保護層を有機溶剤に対し不溶性にする手法について例示すると、例えば、塗工液として、3つのアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一つのアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3から3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20重量%添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。例えば、保護層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、自然乾燥又は比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、このときドラム温度は50℃を越えないように制御する。
本発明においては、感光体の最表面に形成される上記保護層の表面に交差する無数の線状傷が均一に形成される。図8、図9、図10には本発明の感光体表面を表す一例を、図11及び図12には本発明とは異なる感光体表面を表す一例を示した。また、図13には本発明の感光体表面を表す別な例を、図14には本発明における線状傷の幅、交差角度、間隔について示した。また、図15、図16には形成した線状傷の断面図の一例を示した。但し、これらはあくまで本発明の一例を示したものであり、これに限定されるものではない。
本発明においては、電子写真感光体の表面の下式で定義される弾性変位率τeが40%以上であり、かつ該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていればいかなる感光体も含まれる。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
このように、少なくとも2方向の無数の線状傷が交差することによって、いかなる方向に対する画像流れをも抑制することが可能となる。
本発明における線状傷とは、線状でかつ凹み形状を有する傷を示す。打痕傷では効果はなく、あくまで線状の傷であることが必要である。感光体表面に形成される線状傷はどのような形状でもよく、形成される線状傷の方向については特に限定されるものではない。線状傷が規則正しく配置されていても、方向が揃っておらずランダムなパターンであってもよい。また、線状傷は必ずしも直線である必要はなく、ある方向性を有していれば線状傷が曲線を描いていたり、波線を描いていたりしてもよい。本発明においては、線状傷は少なくとも2方向から交差することが画像流れを抑制する上で必要であるが、それ以上、例えば3方向あるいは4方向とより多く交差させることにより、電荷の拡散領域が限定されやすくなるため、画像流れの抑制に対しさらに有効となる。逆に、一方向の線状傷しか形成されていない場合には、前述のとおり、あらゆる方向の書き込みに対して、画像流れ抑制効果を得ることができず、場合によって特定の一方向にのみ画像流れが強調されてしまう恐れがあるため好ましくない。
本発明においては、上記の通り、互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていれば有効となるが、次の線状傷形成条件を満たせば、より一層高い効果を得ることができ、特に有効である。線状傷形成条件の一つは、線状傷の幅である。線状傷の幅は、平均値として10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。線状傷の幅の平均値がそれ以上になると、傷自体がスジ状の画像欠陥となったり、傷内に異物が入り込み、フィルミングを誘発する恐れがある。一方、幅が縮小される分には不具合はないが、画像ボケ抑制効果が低減する傾向にあるため、線状傷の幅の平均値として0.5μm以上で効果が十分に発揮される。
二つ目としては、線状傷の交差角度が挙げられる。本発明においては、線状傷の交差角度の80%以上が、135度以下であることが好ましく、90度以下であることがより好ましい。交差角度が135度よりも大きい領域が全体の20%を越えると、線状傷が交差していても特定の方向に偏りが見られ、前述の画像流れの書き込み方向依存性が出やすくなり、抑制効果が低減する恐れがある。交差角度が小さいほど画像流れ抑制効果は向上するが、交差角度が著しく小さい領域が多くなると、感光体の表面粗さが増加し、解像度低下を引き起こす恐れがあるため、交差角度の50%以上が15度以上であることが好ましい。なお、交差角度は、感光体表面の任意の数箇所をレーザー顕微鏡等を用いて拡大観察し、135度以下の交差角度の単位面積あたりの比率として求める方法が適している。
三つ目としては、線状傷の間隔が挙げられる。線状傷間の間隔が広くなると画像流れの領域が増加するため、解像度が低下したり、画像の一部で画像流れが発生したりする恐れがある。したがって、感光体の表面全体に均一に線状傷が形成されることが好ましい。本発明においては、線状傷の間隔を、感光体の表面移動方向に直交する方向を基準線とし、該基準線と線状傷の交差点からそれと隣接する線状傷と基準線との交差点までの距離と定義し、これが平均値として100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。線状傷の間隔がこれ以上の場合には、前述のとおり画像流れ抑制効果が低減する恐れがある。線状傷の間隔は狭いほど画像流れの抑制には有利となるが、狭すぎると表面粗さが著しく増大し、解像度が低下する恐れもあるため、5μm以上が好ましい。
四つめとして、線状傷の深さも影響する。本発明においては、線状傷の深さは、平均値として0.5μm以下が好ましい。線状傷の深さがそれより大きくなると、画像流れ抑制の上では好ましいが、異物が入り込み易く、また除去しにくくなり、異常画像の発生を引き起こす恐れがある。また、傷の深さの平均値が0.1μm未満になると画像流れ抑制効果が十分に発揮されなくなる恐れがあるため、0.1μm以上が好ましい。
また、線状傷は、上記の通り感光体表面に均一に細かな間隔で形成されることにより、高い効果を得ることが可能となる。この場合、線状傷は短くても線状であって均一に形成されていれば有効である。一つの線状傷の長さとしては、少なくとも5mm以上あれば、効果を得ることは可能である。線状傷が感光体表面に均一に、かつ上記線状傷の間隔を満たすとなれば無数に形成されることになるが、特に線状傷の数を限定するものではない。本発明においては、上記の通り、感光体表面に均一に形成されていれば有効であり、特に上記線状傷の間隔を満たしていれば効果はさらに高くなる。
感光体表面に交差する線状傷を形成させる手段としては、特に限定されるものではなく、従来公知の粗面化方法を応用することができる。作製された感光体の保護層に線状傷を形成したり、保護層を積層している段階で線状傷を形成することも可能であり、例えば作製された感光体の保護層表面に直接研磨物を当接して擦る方法、感光体の保護層表面に凹凸を有する金型を押し当てる方法、感光体の保護層を塗工している段階で線状傷を形成する方法等、いかなる方法を応用することが可能である。例えば、図17、図18及び図19に示したように、感光体を回転させながら、線状傷を形成させるための当接物を接触させ、さらに当接物自体も回転、あるいは往復運動させることにより、様々な方向に線状傷を形成させることが可能となる。また、図20に示したように、感光体表面に線状傷形成用の金型を押し当てる方法も可能である。線状傷の形成は、感光体作製後に上記方法等により線状傷が形成されるが、感光体表面に硬化した保護層を形成した場合には、硬化前に上記方法にて線状傷を形成し、その後硬化させる方法も可能であり有効である。また、必ずしも感光体の作製直後に線状傷を形成する必要はなく、感光体を画像形成装置内で使用中に上記方法等によって線状傷を形成させることも可能であり、効果の持続性の上では非常に有効である。感光体の保護層表面に当接させる研磨物としては、天然繊維(例えば獣毛、綿、麻等)、化学繊維(レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル、テフロン(登録商標)等)、ガラス繊維あるいはステンレススチール繊維、フェルト、布等の繊維類、サンドペーパー類、フィルム類、ブラシ類、研磨石など、感光体の保護層表面に線状傷を形成させるものであればいかなる形状及び材質のものであっても使用できる。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層、中間層等の少なくとも1層ないし各層に、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することが出来る。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロ−ル類など。
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
各層に添加できる潤滑性物質としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
(f)金属石鹸
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
(g)天然ワックス
カルナウバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾールなど。
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
次に、図面を用いて本発明の画像形成装置全体を詳しく説明する。なお、以下に示す図や説明は本発明を説明するための一例であり、これに限定されるものではない。
図21は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図である。感光体1は本発明の感光体が用いられている。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電部材は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)等による非接触帯電や帯電ローラーあるいは帯電ブラシによる接触帯電のいずれも使用することが可能である。さらに、帯電ローラーを用いる場合、図22に示されるように感光体あるいは帯電ローラーにギャップを設けて、感光体と帯電ローラーとが画像形成領域において非接触となるように近接配置させることも可能であり有効である。特に、感光体表面に潤滑性物質を付着させた場合に、それらが帯電ローラーに付着することによって、帯電ローラーの汚染を促進させる場合がある。
帯電ローラーの汚染は帯電ムラを引き起こしたり、感光体の汚染を促進させたりする恐れがある。従って、帯電ローラーと感光体とが近接配置されていることによって、それらを抑制させる効果が得られる場合があるため有効である。感光体に対し帯電部材が近接配置させる方法としては、感光体の非画像形成領域にギャップを設ける必要があるが、それは例えば、ギャップ材を帯電部材に設けたり、感光体側に設けたり、あるいは感光体の両端にセットされるフランジ部に設けることによって形成することが可能であり、本発明においては感光体と帯電部材とが近接配置されていれば如何なる方法でも可能である。
このようにギャップ材を使用する場合、ギャップ材は絶縁性である必要があり、耐摩耗性の高い材料が有効に用いられる。ギャップ材はテープ状、シール状もしくはチューブ状等、如何なる形態のものでも使用できる。ギャップの厚さは、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、さらに好ましくは40〜80μmである。ギャップがこれよりも小さい場合には、帯電部材と感光体の接触が多くなり、近接配置させたメリットが得られず画質劣化の影響が増加し、ギャップがこれよりも大きい場合には帯電の安定性が低下し帯電ムラが発生する場合がある。また、帯電部材には直流成分に交流成分を重畳して感光体に帯電を付与することが可能である。交流成分を重畳することによって、帯電ムラを低減することが可能となり、それによって画像濃度ムラやコントラストの低下を抑制することが可能となり有用である。
コロトロンやスコロトロンによるコロナ帯電方式は、感光体表面への放電生成物の付着量は比較的少ない傾向にあるものの、オゾン発生量は非常に多くなる傾向にある。一方、帯電ローラーを用いた場合にはオゾン発生量は軽減できるものの、放電生成物の付着量が増加する傾向にある。オゾンも放電生成物も画像流れ等に大きな影響を及ぼす因子であるが、本発明は放電生成物の付着による画像流れに対する抑制手段であるため、帯電手段に帯電ローラーを用いた場合にその効果がより発揮されることになる。
次に、均一に帯電された感光体上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法等がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
フルカラー用画像形成装置における現像ユニットは、少なくともイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応したユニットを有しており、1つの感光体に4色の現像ユニットが近接された方式や、1つの現像ユニットに4色のトナーが分別されて充填され、ユニット自体が4段階に回転することによって4色の現像を順次行う、リボルバー方式や、4色のトナーが充填された各々4つのユニットに対し4つの感光体が配置されたタンデム方式等が挙げられる。
トナーの作製は、粉砕あるいは重合による方法が一般的となっているが、近年重合による方法が用いられるようになってきている。重合によって球形の形状のトナーが得られやすいことが知られているが、トナーが球形あるいは略球形の形状を有することによって離型性が向上するため、転写時に感光体に残存するトナーが少なく、転写効率の向上及び中抜け等の異常画像の抑制が実現できる。しかし、球形あるいは略球形トナーはクリーニング性を著しく低下させるため、従来は球形あるいは略球形の形状を避けて作らざるを得ず、それによって十分な転写効率が得られていないのが実情であった。本発明は感光体に交差する線状傷を形成したことにより、転写効率に対しては離型性向上によってさらなる効果を与えると共に、クリーニング性を大幅に向上させることが可能である。感光体表面に形成される線状傷が一方向の場合で、特にそれが感光体の周方向に形成されていた場合には、球形あるいは略球形トナーは転がりやすくクリーニング性を大幅に低下させることになるが、本発明では線状傷が交差して形成されていることから、トナーの動きを抑えることが可能となり、またクリーニングブレードと感光体との接触面積が減少したことにより、クリーニングブレードの過剰な摩擦を低減できたことによりクリーニング性の向上が可能となった。
次に、感光体上で可視化されたトナー像は紙上、もしくは中間転写体に転写される。図23は、本発明における感光体に中間転写ベルトが接触し、感光体と紙とが直接接触しない構成を有する画像形成装置を説明するための概略図である。なお、中間転写体はドラム状であっても、シート状あるいはエンドレスベルト状であってもよい。中間転写体もしくは中間転写ベルト上に形成されたトナー像は、直ちに紙に転写される。これらの転写手段としても、転写チャージャー、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式等、従来の方式が利用可能である。
感光体からトナーが転写されるとき、感光体の離型性が低いと、トナーが感光体に残存してしまい、中抜けの原因となったり、転写効率の低下による画質劣化の原因となる。本発明においては、感光体表面の離型性を向上させる効果も得られたことから、転写効率の向上並びに中抜けの抑制をも同時に改善することが可能となった。また、感光体に中間転写ベルトが接触し、感光体と紙とが直接接触しない構成を有することによって、感光体表面の紙粉付着を抑制する効果が得られるため、本発明においてはより好ましい。感光体表面への放電生成物やトナー外添剤の付着は、紙粉を引き寄せるため、フィルミングが促進される場合があるが、中間転写ベルトを用いて感光体と紙とが直接接触していないことによって、その影響を大幅に抑制することが可能となる。
また、図24にはタンデム方式でかつ中間転写ベルトが具備された画像形成装置の概略図を示す。上記タンデム方式の画像形成装置において、各感光体上に形成されたトナー像を中間転写体もしくは中間転写ベルト等に一次転写を行い、その後転写体(紙)に二次転写を行うことによって、各感光体と紙とが直接接触しない構成とすることは前記のとおり高耐久化、高画質化に対し非常に有効である。特に、タンデム方式の画像形成装置のおいては、感光体間における経時劣化変動を可能な限り少なくする必要があり、感光体表面の摩耗量はもちろん、感光体表面への汚染の影響に感光体間で大きな差が生じてくると、4本の感光体により一つの画像を形成する機構上、色再現性や解像度低下等、画像劣化を引き起こすことになる。
特に、中抜けが起こると色再現性が低下することにもなり、カラー画像の場合その画質劣化の影響は非常に大きくなる。また、タンデム方式の場合には、感光体表面の汚染物質である放電生成物、トナー外添剤、紙粉の中でも紙粉による影響の度合いが大きい傾向にある。それは、少なくとも4色の転写が終わるまで各感光体は紙と接触している必要があることや、印刷する色の種類によって各色のトナー使用量に差が生じてくるのに対し、トナー使用量に関わらず感光体は絶えず紙と接触している必要があることによる。例えば、ブラックのみの印刷を行う場合には、ブラック以外の3つの感光体は紙に接触しないようにする機構などが考えられてはいるものの、実際には単色のみによる印刷需要は少なく、紙粉による影響が大きくなるのが一般的となっている。これらのことから、タンデム方式の画像形成装置において、感光体上のトナー像を中間転写体もしくは中間転写ベルトに一次転写させることによって、感光体と紙とが直接接触しない構成とした場合、本発明の感光体を用いることにより、感光体の高耐久化だけでなく、画像ボケやフィルミングの抑制、色再現性や解像度の向上等に特に有効となる。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするために、ファーブラシやクリーニングブレードあるいはそれらを併用して用いられるが、本発明においては、感光体表面に残存したトナーだけをクリーニングするのではなく、感光体に付着した放電生成物をも除去する必要があるため、特にクリーニング手段にはクリーニングブレードが好適に用いられる。感光体表面に交差する線状傷を形成したことによって、感光体とクリーニングブレードとの接触面積を減少させ、それによって過剰な摩擦を抑え、クリーニング性を向上させることが可能となる。また、線状傷に放電生成物が入り込み、放電生成物の残存する箇所を区別できたことにより、画像流れの影響を抑制できたと同時に、感光体表面に付着した放電生成物のクリーニング性が向上し、これにより画質の向上並びにその安定性を高めることが可能となる。
滑り性を付与するために、感光体表面に滑性成分を含む化合物を付着させることも可能である。それによって、感光体の離型性を高めたり、耐摩耗性を高めたり、異物付着を抑制したりする上で非常に有効である。特に、放電生成物のクリーニングに対しても有効であり、本発明の感光体と組み合わせることにより相乗効果を得ることが可能となる。保護層に含有される滑り性を付与する化合物としては、添加することによって滑り性が付与されれば、いかなる材料を用いてもよいが、特にシリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物が有効に用いられる。シリコーン系化合物とは、分子構造にSiを含有するものであればいかなるものでも含まれ、例えばシリコーン樹脂並びに樹脂微粒子などが挙げられる。フッ素系化合物とは、分子構造にFを含んでいるものであればいかなるものでも含まれ、PTFE ・PFA・PVDF 等の各種フッ素樹脂微粒子等が挙げられる。
また、長鎖アルキル基含有化合物としては、長鎖アルキル基を含有する材料であればいかなるものでも含まれ、特にステアリン酸亜鉛は有効に用いられる。その他、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、黒鉛、二硫化モリブデン等が挙げられる。感光体表面にこれらの滑り性を付与する化合物を付着させることによって、感光体に離型性を与える効果の持続性が著しく向上されたものの、その付着量を制御することが難しく、過剰に付着するとフィルミングを助長したり、異常画像や編摩耗を引き起こす原因となっていた。本発明においては、感光体表面に交差する線状傷を形成したことにより、これらの滑性成分を含む化合物がその傷に入り込むことによって、感光体表面に付与される滑り性の効果の持続性が高まるだけでなく、感光体表面への過剰な付着が抑制され、結果として滑剤付着量の制御が可能となった。それによって感光体表面の汚染を抑制することが可能となり、異常画像の発生や編摩耗を抑制することが可能となる。
これらの滑性成分を含む化合物を感光体表面に付着させる手段としては、いかなる方法でも使用することができるが、具体的には感光体表面にこれら化合物の固形物を直接接触させる方法や感光体にブラシを接触させ、ブラシを介して付着させる方法あるいは現像剤にこれらの化合物を混合して付着させる方法などが挙げられる。
本発明における感光体表面に形成される線状傷は、感光体未使用時に形成されていてもよいが、感光体の使用経時で摩耗の影響が生じるため、使用経時でも線状傷を形成させることがより効果的であり、それによって耐摩耗性と画質安定化の両立が可能となり、感光体の寿命を大きく向上させることが実現できる。そのため、画像形成装置内に感光体表面に線状傷を形成する手段を含むことが好ましい。
本発明の感光体表面に交差する線状傷を形成させる手段を含む画像形成装置については、いかなる手段を用いることも可能であるが、画像形成装置の使用経時で感光体に研磨物を押し当て擦る手段が特に有効である。一例として図17、図18及び図19に示したように、研磨物を感光体に接触させて、感光体の軸方向に往復運動させたり、感光体を回転させたり、あるいはそれらを同時に動かすことによって、いかなる方向に対しても線状傷を形成することができる。また、感光体の使用経時で主に現像剤とクリーニングブレードとによって形成される感光体の傷についても、本発明の線状傷に含まれる。
但し、感光体に形成される傷はそのほとんどが感光体の周方向への一方向の傷であるため、その傷とは交差する方向に新たな線状傷を形成させる必要がある。それによって、あらゆる方向のラインに対しても画像流れを抑制することが可能となる。また、上記研磨物を感光体に押し当て擦ることによって線状傷が形成されるが、それと同時に感光体表面に付着したフィルミング物等を除去できる効果も発揮され、画質安定化に対しさらなる効果を得ることができる。研磨物を押し当て擦ることにより、感光体は摩耗するが、この動作は常時行う必要はないため感光体の耐摩耗性に与える影響は小さい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ、除電チャージャーが用いられ、それぞれ上記露光光源、帯電手段を利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは従来公知のものが全て使用できる。
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。
これらの画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれらの装置内に組み込まれ、着脱自在の構成としたものであってもよい。図25は、画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。図25中、101は感光体ドラム、102は帯電装置、103は露光、104は現像装置、105は転写体、106は転写装置、107はクリーニングブレードを示す。本発明における画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体及びクリーニング手段を内蔵し、他に帯電手段、現像手段、転写手段、除電手段の少なくとも一つを一体化し、画像形成装置本体に対して着脱可能とした部品である。本発明には、前記感光体が画像形成装置本体に対して着脱自在の構成を有するプロセスカートリッジに内蔵され、かつ前記プロセスカートリッジがタンデム方式の画像形成装置に内蔵された画像形成装置や、プロセスカートリッジに内蔵された前記感光体が転写工程において直接紙と接触しない構成を有する画像形成装置、及びそれらを組み合わせた画像形成装置、並びにそれらのプロセスカートリッジがすべて含まれる。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
<実施例1>
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を浸積塗工により順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、19μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の保護層用塗工液をスプレー塗工し、5.0μmの保護層を積層した後30分自然乾燥した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(I)のビスアゾ顔料顔料 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
Figure 2006011047
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 7部
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
Figure 2006011047
〔保護層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
その後、ラッピングフィルムシート(粒度15μm、3M製)を用いて、図8に示すような交差する線状傷を形成した。線状傷は、図17に示すように感光体を回転させ、ラッピングフィルムを巻き付けた治具を感光体に当接させ、回転させながら一定速度で往復運動させることによって形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行い塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体1を作製した。線状傷の幅は平均3.5μm、線状傷間の間隔は平均約50μm、線状傷の交差角度はその80%以上が120度以下、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例2>
実施例1の保護層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに換え、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を例示化合物No.138、10部に換え、保護層の膜厚を5.2μmにした以外は実施例1と同様に電子写真感光体2を作製した。なお、線状傷の幅は平均2.5μm、線状傷間の間隔は平均約30μm、線状傷の交差角度はその80%以上が110度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
(SR−355、化薬サートマー製)
分子量:466、官能基数:4官能、分子量/官能基数=117
<実施例3>
実施例1の保護層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに換え、光重合開始剤を下記の化合物1部に換えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体3を作製した。なお、線状傷の幅は平均6.0μm、線状傷間の間隔は平均約50μm、線状傷の交差角度はその80%以上が100度以下、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−60、日本化薬製)
分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211
<実施例4>
実施例1の保護層用塗工液に含有される1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を例示化合物No.127、10部に換えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体4を作製した。なお、線状傷の幅は平均1.5μm、線状傷間の間隔は平均約10μm、線状傷の交差角度はその80%以上が130度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例5>
実施例1の保護層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記の2種混合モノマーに、光重合開始剤を下記化合物に換えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体5を作製した。なお、線状傷の幅は平均8.0μm、線状傷間の間隔は平均約70μm、線状傷の交差角度はその80%以上が90度以下、線状傷の深さは約0.4μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 6部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート
(SR−295、化薬サートマー製)
分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基数=88
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 4部
アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(KAYARAD D−330、日本化薬製)
分子量:584、官能基数:3官能、分子量/官能基数=195
光重合開始剤 1部
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
(イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
<実施例6>
実施例1において、電荷輸送層用塗工液に下記組成の高分子電荷輸送物質(PD−1)を含有した液を用い、電荷発生層上に塗布、乾燥して19μmの電荷輸送層を形成した。その後、保護層用塗工液に下記組成の液を用い、電荷輸送層上に塗布した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体6を作製した。なお、線状傷の幅は平均4.0μm、線状傷間の間隔は平均約40μm、線状傷の交差角度はその80%以上が100度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式の高分子電荷輸送物質(PD−1) 15部
Figure 2006011047
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.3部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
〔保護層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 6部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPHA、日本化薬製)
分子量:536、官能基数:5.5官能、分子量/官能基数=97
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 4部
アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(KAYARAD D−330、日本化薬製)
分子量:584、官能基数:3官能、分子量/官能基数=195
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
<実施例7>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、サンドペーパー(#1000)を用いて、図9に示すような交差する線状傷を形成した。線状傷の形成は、図18に示すように、サンドペーパーを巻き付けた治具を感光体に当接させ、往復させたり、感光体を回転させたりすることによって行った。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体7を作製した。なお、線状傷の幅は平均8.0μm、線状傷間の間隔は平均約60μm、線状傷の交差角度はその80%以上が90度以下、線状傷の深さは約0.5μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例8>
実施例1において、保護層を塗工した後、直ちに図20に示すような微細な凸形状を有する金型に接触させ、感光体表面に図10に示される形状を有する線状傷を交差させて形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行い塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体8を作製した。なお、線状傷の幅は平均10μm、線状傷間の間隔は平均約100μm、線状傷の交差角度はその80%以上が60度以下、線状傷の深さは約0.5μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例9>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、図19に示すような方法で回転ブラシに接触させて、図10に示すような交差する線状傷を形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行い塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体9を作製した。なお、線状傷の幅は平均2.5μm、線状傷間の間隔は平均約20μm、線状傷の交差角度はその80%以上が60度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例10>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、図18に示すように固定ブラシを接触させ、図9に示すような交差する線状傷を形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行い塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体10を作製した。なお、線状傷の幅は平均3.0μm、線状傷間の間隔は平均約50μm、線状傷の交差角度はその80%以上が90度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例11>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、研磨用砥石を用いて、図9に示すような交差する線状傷を形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体11を作製した。なお、線状傷の幅は平均10μm、線状傷間の間隔は平均約110μm、線状傷の交差角度はその80%以上が90度以下、線状傷の深さは約0.5μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例12>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、研磨用砥石を用いて、図9に示すような交差する線状傷を形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体12を作製した。なお、線状傷の幅は平均10μm、線状傷間の間隔は平均約250μm、線状傷の交差角度はその80%以上が90度以下、線状傷の深さは約0.5μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例13>
実施例1において、保護層を塗工し乾燥後、研磨用砥石を用いて、図8に示すような交差する線状傷を形成した。次に、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体13を作製した。なお、線状傷の幅は平均20μm、線状傷間の間隔は平均約100μm、線状傷の交差角度はその80%以上が135度以下、線状傷の深さは約0.8μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<実施例14>
実施例1の電荷輸送層を設けず、その代わりに下記保護層塗工液を電荷発生層上に同様に塗布、硬化し、15.0μmの保護層を設け、乾燥後サンドペーパー(#1000)を用いて、図8に示すような交差する線状傷を形成した。その後メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させ、更に130℃で20分乾燥を加え、本発明の電子写真感光体14を作製した。なお、線状傷の幅は平均5.0μm、線状傷間の間隔は平均約100μm、線状傷の交差角度はその50%以上が135度以上、線状傷の深さは約0.4μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
〔保護層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 6部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−60、日本化薬製)
分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 4部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート
(SR−295、化薬サートマー製)
分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基数=88
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 60部
シクロヘキサノン 20部
<比較例1>
実施例1の保護層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のモノマーに換えた以外は実施例1と同様に電子写真感光体15を作製した。なお、線状傷の幅は平均4.0μm、線状傷間の間隔は平均約60μm、線状傷の交差角度はその80%以上が110度以下、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製)
分子量:1947、官能基数:6官能、分子量/官能基数=325
<比較例2>
実施例2の保護層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー量を6部、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物量を14部に換えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体16を作製した。なお、線状傷の幅は平均3.0μm、線状傷間の間隔は平均約70μm、線状傷の交差角度はその80%以上が100度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例3>
実施例1の保護層用塗工液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体17を作製した。なお、線状傷の幅は平均5.0μm、線状傷間の間隔は平均約40μm、線状傷の交差角度はその80%以上が100度以下、線状傷の深さは約0.5μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
〔保護層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 8部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
高分子材料 2部
ビスフェノールZポリカーボネート
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
<比較例4>
実施例1において、保護層塗工液の組成物である電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを含有させず、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物量を20部に換えた以外はすべて実施例1と同様にして電子写真感光体18を作製した。なお、線状傷の幅は平均6.5μm、線状傷間の間隔は平均約50μm、線状傷の交差角度はその80%以上が95度以下、線状傷の深さは約0.2μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例5>
実施例1の保護層における硬化条件を、実施例1と同様な光源を用い照射強度40mW/cm2、照射時間:5分の条件に換え、5.1μmの保護層を設けた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体19を作製した。なお、線状傷の幅は平均2.0μm、線状傷間の間隔は平均約40μm、線状傷の交差角度はその80%以上が120度以下、線状傷の深さは約0.4μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例6>
実施例1の保護層を設けず、電荷輸送層の厚みを24μmとした以外は実施例1と同様に電子写真感光体20を作製した。なお、線状傷の幅は平均7.0μm、線状傷間の間隔は平均約90μm、線状傷の交差角度はその80%以上が60度以下、線状傷の深さは約0.4μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例7>
実施例1において、保護層塗工液を下記の組成に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体21を作製した。なお、線状傷の幅は平均2.5μm、線状傷間の間隔は平均約20μm、線状傷の交差角度はその80%以上が80度以下、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
アルミナ(平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業製): 3.5部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー(酸価180mgKOH/g、不揮発分50%
「BYK−P104」BYKケミー製): 0.06部
ビスフェノールZポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成製):
10部
上記構造式(II)の電荷輸送物質 : 7部
テトラヒドロフラン : 500部
シクロヘキサノン : 220部
<比較例8>
実施例1において、線状傷を交差させずに図11に示すように一方向からなる線状傷を形成した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体22を作製した。なお、線状傷の幅は平均5.0μm、線状傷間の間隔は平均約30μm、線状傷は交差なし、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例9>
実施例1において、線状傷を交差させずに図12に示すように一方向からなる線状傷を形成した以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体23を作製した。なお、線状傷の幅は平均5.0μm、線状傷間の間隔は平均約30μm、線状傷は交差なし、線状傷の深さは約0.3μmであることをレーザー顕微鏡観察によって確認した。
<比較例10>
実施例1において、線状傷を形成しなかった以外は、すべて実施例1と同様にして電子写真感光体24を作製した。
<比較例11>
比較例7において、線状傷を形成しなかった以外は、すべて比較例7と同様にして電子写真感光体25を作製した。
以上のように作製した実施例1〜14、比較例1〜11の電子写真感光体1〜25を適当な大きさに切り出し、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)、三角すい圧子(115°)を用いて負荷−静止−除荷サイクルで変位−加重曲線を測定した。このとき、最大変位を架橋表面層の1/10になるように設定加重を決定し、負荷、除荷速度を0.0145gf/sec、最大変位の静止時間を5秒とした。測定された最大変位と塑性変位から下記式により弾性変位率τeを算出した。また、弾性変位率τeはサンプル上の任意の10箇所について測定を行い、この平均をその値とし、弾性変位率の標準偏差はこの10個の弾性変化率より算出した。その結果を表4に示す。
弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
このダイナミック微小硬度測定は、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で測定した。また、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)、三角すい圧子(115゜)を用い、ダイナミック硬度DHの測定を行った。それらの結果も併せて表4に示す。
以上のように作製した実施例1〜14、比較例1〜11の電子写真感光体1〜25を、画像形成装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源の波長が655nmの半導体レーザーを用い、帯電ローラー及びクリーニングブレードを装着した(株)リコー製デジタル複写機改造機にて、初期画像出力を行った。その後、30℃90%RHの環境下で2万枚の連続通紙ランを行い、ラン終了後にそのまま画像出力を行った。最後に、通紙ラン前後の膜厚差から摩耗量を求めた。画像ランクは以下の記号によって区別した。
◎:画像流れが認められず良好な画像
○:画像流れは若干認められるが、品質上問題ないと判断できるレベル
△:画像流れが明らかに認められ文字が読みにくく、ドットの散りも目立つレベル
×:画像流れによってドットが完全に散っており、文字も判読できないレベル
Figure 2006011047
表1の結果より、弾性変位率τeが40%以上を有し、かつ表面に互いに交差する線状傷を形成した本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性が非常に高いにも関わらず、高温高湿環境下におけるランニング試験においても良好な画像を維持できることが明らかとなった。一方、弾性変位率τeが40%未満の電子写真感光体は、耐摩耗性が低下した。摩耗されることによって放電生成物は除去されるため画像流れは発生しなかったが、摩耗によって寿命が低減し、それに伴い地汚れの発生が認められた。また、電子写真感光体表面にフィラーを含有させた場合には、耐摩耗性の向上が実現されたが、弾性変位率τeが40%未満であり、異物付着による画像欠陥が認められた。さらに、線状傷を形成させなかった場合には、異物付着以外に画像流れが認められ、画質はさらに悪化した。
また、線状傷を交差させずに縦方向のみ形成させた場合は縦方向のみ解像度が低下した。同様に横方向のみ形成させた場合には、横方向のみ解像度が低下した。さらに、弾性変位率τeが40%以上を有していても、表面に線状傷を形成しなかった場合には、解像度の低下が認められた。
次に、それらの電子写真感光体1〜25の表面を、エタノールを含ませた不織布で拭き取り、さらに水を含ませた不織布で拭き取り、それを数回繰り返した後乾拭きを行って、感光体表面に付着した放電生成物を除去した。それらを再度、画像露光光源の波長が655nmの半導体レーザーを用い、帯電ローラー及びクリーニングブレードを装着した(株)リコー製デジタル複写機改造機にて画像出力を行った。
続いて、それらの電子写真感光体を、現像部及びクリーニング部を外したプロセスカートリッジに移し、転写部も外して、帯電と除電のみでのフリーランを30℃90%RHの環境下で30分実施した。それをそのまま現像部やクリーニング部を含む通常の画像形成用プロセスカートリッジに戻し画像出力を行った。画像ランクは以下の記号によって区別した。
◎:画像流れが認められず良好な画像
○:画像流れは認められるが、品質上問題ないレベル
△:画像流れが明らかにわかり文字が読みにくく、ドットの散りも目立つレベル
×:画像流れによってドットが完全に散っており、文字も判読できないレベル
Figure 2006011047
表2の結果では、電子写真感光体の表面に強制的に放電生成物を付着させ、加速劣化させた場合の、画像流れ抑制効果を比較した。弾性変位率τeが40%以上を有し、かつ表面に互いに交差する線状傷を形成した本発明の電子写真感光体は、強制的に放電生成物を付着させても高温高湿下良好な画像品質を維持していることが明らかとなった。これにより、高い耐摩耗性を有し、かつ放電生成物の付着による画像流れの抑制が実現された。一方、弾性変位率τeが40%未満である電子写真感光体では、偏摩耗の影響が大きく、互いに交差する線状傷を形成してもクリーニング不良が発生し、放電生成物が除去しきれずに画像流れの発生が認められた。また、表面にフィラーを含有させた電子写真感光体は、耐摩耗性は向上されたものの、弾性変位率τeが40%未満であり、線状傷を形成しても偏摩耗の影響からクリーニング不良を引き起こし、画像流れの発生が認められた。この場合、線状傷を形成させないと、画像流れの影響がさらに増大し、フリーラン後に印刷を繰り返しても放電生成物が除去しきれず、画像流れの回復性は認められなかった。弾性変位率τeが40%以上であっても互いに交差する線状傷を形成しなかった場合には、偏摩耗は認められなかったものの、クリーニングブレードと放電生成物が付着した感光体表面との接着力が増加し、ブレードがめくれてしまい、クリーニングができなかった。また、互いに交差させず縦方向にのみ、あるいは横方向のみに線状傷を形成した場合には、線状傷をまったく形成しなかった場合よりも解像度は向上したが、画像流れを十分に抑制することはできなかった。
次に、新品の実施例1〜14及び比較例1〜11の電子写真感光体1〜25に、ステアリン酸亜鉛を均一に塗布した。塗布方法は、回転するブラシにステアリン酸亜鉛の固形物と感光体とを接触させ、感光体を回転させることにより、ブラシを介して感光体に塗布する方法で行った。これらの感光体を画像形成装置用プロセスカートリッジに装着し、画像露光光源の波長が655nmの半導体レーザーを用い、図21に示す帯電方式及びクリーニングブレードを装着したリコー製タンデム方式のフルカラープリンタ改造機にて画像出力を行い、初期の画像評価を行った。なお、トナーは粒径が約6μmの略球形状トナーを使用した。その後、30℃90%RHの環境下で1万枚の連続通紙ランを行い、終了後そのまま画像出力を行った。画像ランクは以下の記号によって区別した。
◎:画像欠陥が一切なく良好な画像
○:画像品質上問題ないレベル
△:画像欠陥が確認されるが、判読可能なレベル
×:画像欠陥が多発し、判読不可能なレベル
Figure 2006011047
表3の結果より、弾性変位率τeが40%以上を有し、かつ互いに交差する線状傷を形成した本発明の電子写真感光体は、略球形状トナーを用いてもクリーニング性が良好であり、さらにステアリン酸亜鉛の塗布効果の持続性が高いことにより、良好な画像品質が得られた。一方、弾性変位率τeが40%未満の場合には、ステアリン酸亜鉛の塗布効果により初期は良好であったが、摩耗の影響が大きいため、ステアリン酸亜鉛の効果が早くに消失し、地汚れが発生した。フィラーを含有した感光体は、表面のフィラーによってブレードが欠け、それによるクリーニング不良から地汚れが発生した。また、一部異物付着も認められた。また、線状傷を形成しない場合には、ステアリン酸亜鉛の塗布効果が早くに消失してしまい、略球形状のトナーがクリーニングブレードをすり抜けることによってクリーニング不良が多発し地汚れが発生した。
本発明における感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明における感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明における感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明における感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明における感光体の層構成の一例を示す概略図である。 弾性変位率τeを求める際の負荷−除荷試験の説明図である。 弾性変位率τeの説明図である。 本発明の感光体表面の一例を示す概略図である。 本発明の感光体表面の一例を示す概略図である。 本発明の感光体表面の一例を示す概略図である。 本発明とは異なる感光体表面の一例を示す概略図である。 本発明とは異なる感光体表面の一例を示す概略図である。 本発明の感光体表面の別な例を示す概略図である。 本発明における線状傷の交差角度、幅及び間隔を示す概略図である。 本発明の感光体表面に形成した線状傷の断面形状の一例を示す概略図である。 本発明の感光体表面に形成した線状傷の断面形状の一例を示す概略図である。 感光体表面に線状傷を形成する方法の一例を示した図である。 感光体表面に線状傷を形成する別な方法の一例を示した図である。 感光体表面に線状傷を形成する別な方法の一例を示した図である。 感光体表面に線状傷を形成する別な方法の一例を示した図である。 本発明による電子写真プロセスの一例を示した図である。 本発明の帯電方法の一例を示した概略図である。 本発明による電子写真プロセスの別の一例を示した図である。 本発明による電子写真プロセスの一例を示した図である。 本発明におけるプロセスカートリッジを示した一般的な図である。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電ローラー
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニングチャージャ
14 クリーニングブラシベルト
15 クリーニングブレード
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
108 クリーニングブラシベルト

Claims (24)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面の下式で定義される弾性変位率τeが40%以上であり、かつ該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷が均一に形成されていることを特徴とする電子写真感光体。
    弾性変位率τe(%)=[(最大変位)−(塑性変位)]/(最大変位)×100
  2. 前記電子写真感光体の表面に保護層を形成させたことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記線状傷の幅の平均値が10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記線状傷の交差角度の80%以上が、135度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記電子写真感光体の表面移動方向に直交する方向を基準線とし、該基準線と線状傷の交差点からそれと隣接する線状傷と基準線との交差点までの距離と定義される前記線状傷の間隔が、平均値として100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記線状傷の深さの平均値が、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 前記電子写真感光体の表面のダイナミック硬度(DH)が、115°三角すい圧子(ベルコビッチ115圧子)を用いた測定において、22以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
  8. 前記保護層が、加熱または光エネルギー照射によって硬化されており、有機溶媒に対し不溶性であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体。
  9. 前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した層からなることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーが3官能以上であり、前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が1官能であることを特徴とする請求項9に記載の電子写真感光体。
  11. 前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーにおける官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が、250以下であることを特徴とする請求項9乃至10に記載の電子写真感光体。
  12. 前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーの官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の電子写真感光体。
  13. 前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の官能基が、アクリロイルオキシ基及び/またはメタクリロイルオキシ基であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の電子写真感光体。
  14. 前記電子写真感光体の表面に、シリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも1種が含有されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電子写真感光体。
  15. 前記保護層にシリコーン系化合物、フッ素系化合物及び長鎖アルキル基含有化合物に官能基を有し、加熱または光エネルギー照射によって硬化することを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の電子写真感光体。
  16. 電子写真感光体に、少なくとも帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの工程が順次繰り返されることによって画像形成を行う画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至15のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  17. 前記画像形成装置において、色の異なる複数のトナーを保持する現像部に対応した複数の電子写真感光体を具備することによって、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各工程が並列に処理されるタンデム方式の画像形成装置であることを特徴とする請求項16に記載の画像形成装置。
  18. 前記画像形成装置において、前記帯電時に帯電ローラーを用いて電子写真感光体に帯電を行うことを特徴とする請求項16乃至17に記載の画像形成装置。
  19. 前記画像形成装置において、前記現像時に球形もしくは略球形のトナーを用いることを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載の画像形成装置。
  20. 前記画像形成装置において、前記転写時に中間転写体もしくは中間転写ベルトを介して紙に転写することを特徴とする請求項16乃至19のいずれかに記載の画像形成装置。
  21. 前記画像形成装置において、前記クリーニング時にクリーニングブレードを用いてクリーニングを行うことを特徴とする請求項16乃至20のいずれかに記載の画像形成装置。
  22. 前記画像形成装置において、該電子写真感光体の表面にシリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキル基含有化合物の少なくとも一種を付着させる手段を有することを特徴とする請求項16乃至21のいずれかに記載の画像形成装置。
  23. 前記画像形成装置において、該電子写真感光体の表面に互いに交差する無数の線状傷を形成する手段を含んでいることを特徴とする請求項16乃至22のいずれかに記載の画像形成装置。
  24. 少なくとも前記電子写真感光体が、画像形成装置本体に対し着脱自在の構造を有する画像形成装置用プロセスカートリッジに具備されてなり、かつ該電子写真感光体が請求項1乃至15のいずれかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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