本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、表面が帯電した前記静電潜像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着する定着手段と、前記可視像を記録媒体に転写した後の静電潜像担持体を清浄にするクリーニング手段と、前記静電潜像担持体表面に気流を噴射する気流発生手段とを備えており、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を備えていてもよい。更に、この画像形成装置は、気流発生手段により静電潜像担持体表面への気流の噴射や噴射量を制御する気流噴射制御手段、気流の噴射を制御するための静電潜像担持体の作動状況を検知する作動状況検知手段、気流の噴射を制御するための静電潜像担持体の表面電位を検出するための表面電位検出手段を備えることが好ましい。
また、本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電工程と、表面が帯電した前記静電潜像担持体に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程と、前記可視像を記録媒体に転写した後の静電潜像担持体を清浄にするクリーニング工程と、前記静電潜像担持体の表面に気流を噴射する気流発生工程とを有しており、必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、リサイクル工程、制御工程等を有していてもよい。更に、この画像形成装置における気流発生工程は、静電潜像担持体が作動中、通常は回転中に気流を噴射するする工程を含み、静電潜像担持体が連続して所定時間作動したときに気流を噴射するする工程を含み、静電潜像担持体の表面電位が所定の値になったときに気流を噴射するする工程を含み、画像形成装置に電源を投入した後、1枚目の画像形成を開始する前に静電潜像担持体が作動するとともに、気流を噴射する工程を含むことが好ましい。このような本発明の画像形成方法は、上述の本発明の画像形成装置により実現できる。
(帯電工程及び帯電手段)
本発明における帯電工程は、静電潜像担持体表面を均一に帯電させる工程で静電潜像形成工程の前工程である。静電潜像担持体(感光体ともいう。)としては、その形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状で回転式のものが好適に用いられる。なお、静電潜像担持体については追って詳述する。帯電工程は、静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができ、帯電手段により実施される。帯電手段としては、例えば帯電器が挙げられ、帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。また、2以上の複数の帯電器を並べて設けることが望ましく、複数の帯電器を用いると高速の画像形成においても安定した帯電をすることができる。
(静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段)
本発明における静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。静電潜像の形成は、例えば、帯電工程で静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、露光器等の静電潜像形成手段を用いて像様に露光することにより行うことができ、により行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
像露光は、画像形成装置を複写機やプリンタとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザビームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
(現像工程及び現像手段)
現像工程は、静電潜像をトナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程であり、現像手段により行うことができる。現像手段は、例えば、トナー乃至現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像にトナー乃至現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。通常、現像器は、乾式現像方式が用いられる。また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、トナー乃至現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像がトナーにより現像されて該静電潜像担持体の表面にトナーによる可視像が形成される。
前記現像器に収容させる現像剤は、トナーを含む現像剤であるが、該現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。該トナーとしては、普通に用いられるものを使用することができる。
(転写工程及び転写手段)
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体(記録媒体、記録紙とも言う。)上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写工程は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段を含む。)は、前記静電潜像担持体上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
(定着工程及び定着手段)
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、などが挙げられる。加熱加圧手段における加熱は、通常、80〜200℃が好ましい。なお、定着手段としては、目的に応じて、上記定着装置と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
(クリーニング工程及びクリーニング手段)
クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上をクリーニング手段を用いてクリーニングするクリーニング工程である。前記クリーニング手段としては、例えば、クリーニングブレード、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ、等が挙げられる。本発明においては、公知のクリーニング条件、ブレード材料を使用できる。ブレードクリーニング方式に用いられるゴムブレードの材質としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレインゴム、ブタジエンゴム、等が挙げられ、これらの中でも、ウレタンゴムが特に好ましい。
(気流発生工程及び気流発生手段)
気流発生工程は、静電潜像担持体近辺の雰囲気温度以下の温度の気流を静電潜像担持体表面に噴射する工程であり、静電潜像担持体上にトナー像が付着している現像工程からトナー像が転写される転写工程の間以外の工程で実施することができるが、帯電工程又は静電潜像形成工程の直前に実施することが最も有効な効果が得られ望ましい。ここで雰囲気温度以下とは静電潜像担持体近辺の雰囲気温度から雰囲気温度より10℃低い温度までの範囲を表し、より好ましくは雰囲気温度から雰囲気温度より7℃低い温度範囲を示す。雰囲気温度より高い温度、あるいは雰囲気温度より10℃より低い温度の気流の吹きつけは、静電潜像担持体の特性の変化を引き起こすことから、望ましくない。なお、静電潜像担持体近辺の雰囲気温度とは、通常は室温と変わらないが、画像形成装置内は、発熱部があり、静電潜像担持体近辺の雰囲気温度が多少高くなっている場合があり、そのときは静電潜像担持体近辺の雰囲気温度でもよい。噴射する気流の温度は、室温以下とすることが好ましい。これは、静電潜像担持体表面の有機感光層の温度が上がりすぎて帯電性能が劣化しないためである。
気流発生手段としては、ファンにより送風を行う方法が一般的であるが、気流を噴射する(気流を吹き付ける)ことが可能であれば、その他の手段を用いることも可能である。また、冷媒を用いたヒートポンプや熱電冷却素子等を取り付けることでより冷却効率を高めることができるため、望ましい。吹き付ける方法としては、例えば静電潜像担持体ドラムの軸線方向に気流を吹き付ける方法や静電潜像担持体ドラムの中心方向に気流を吹き付ける方法が挙げられ、静電潜像担持体が回転している状態の場合に、静電潜像担持体全面に室温以下の気流を吹き付けることが可能であれば、いずれの方法も良好に用いることができる。気流を吹き付ける目的は、静電潜像担持体表面付近の窒素酸化物NOxやオゾンO3などの有機感光層に悪影響があるとされる微量ガスを除去したり、静電潜像担持体表面に付着してしまったこれらの物質やその反応物を除去するためである。また、静電潜像担持体表面が高温にならないようにする効果もある。
気流発生手段は、気流の噴射や噴射量を制御する気流噴射制御手段を備えていることが好ましい。本発明における静電潜像担持体は、常に気流の噴射している必要はなく、必要に応じ所定量の気流を噴射してやればよい。また、気流発生手段は、画像形成装置に回転動作時間情報に関する検出装置を備えることで、回転動作又は回転動作時間に応じて気流の噴射や噴射量を制御することを可能にする。本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体においては、発生するオゾンや窒素酸化物(NOx)に対し、不可逆化学反応や強い吸着を発生することが少ないことから、短時間での使用の際には、静電潜像担持体に対する電気的な特性変動を容易に引き起こすことはない。従って、例えば静電潜像担持体の連続回転動作が所定時間続いた場合のみ気流を発生させることや、一定時間内における回転動作時間が所定の比率を超えた場合等にのみ気流を発生させることや、静電潜像担持体表面の温度を測定しておき、所定の温度を超えた場合にのみ気流を発生させることで、画像形成装置の消費電力の低減化を図ることが可能となる。
また、夜間に画像形成装置を停止している場合においても、帯電器内に残っているオゾンや窒素酸化物(NOx)が静電潜像担持体に付着し、異常画像を引き起こす恐れがあり、電源投入した後、1枚目の画像形成を開始する前に静電潜像担持体が回転動作を行い、気流を静電潜像担持体に直接吹き付けることによって、オゾンや窒素酸化物(NOx)を取り除き、異常画像の発生を抑制することが可能になる。
気流発生工程は画像形成装置に静電潜像担持体の表面電位情報に関する検出装置を備えることで、表面電位に応じて作用することを可能にし、良好に用いられる。前述のように、本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体においては、発生するオゾンや窒素酸化物(NOx)に対し、不可逆化学反応や強い吸着を発生することが少ないことから、長時間の使用等に伴い静電潜像担持体の表面電位が変動した際にのみ、気流を発生させることで、画像形成装置の消費電力の低減化を図ることが可能となる。
(付加的工程及び付加的手段)
除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
(画像形成装置)
図1に基づいて本発明の画像形成装置について具体的形態例に説明する。この画像形成装置は、静電画像担持体(像担持体と略称する。)を用い、像担持体に、帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる(又は手段を有する)画像形成装置である。
図1は、画像形成装置の一例を示す概略図である。画像形成装置を作動させて画像形成を始めると、像担持体(1)は半時計回りに回転をはじめ、帯電手段により帯電される。像担持体(1)表面を平均的に帯電させる好適な帯電手段として、2つの帯電チャージャ(3)を用いている。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。また、複数の帯電チャージャを並べて設けることによって、高速機においても安定した帯電を得ることができる。
均一に帯電された像担持体(1)表面上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
必要に応じて像担持体の表面電位を測定するため、電位センサー(4)が用いられる。電位センサーを設けることで、前述のように、長時間の使用に伴い像担持体の表面電位が変動した際にのみ、像担持体上に室温以下の気流を吹き付けることが可能となる。
像担持体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
像担持体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ以外にも、転写ローラ、転写ベルト等が利用可能である。
転写体(9)を像担持体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
転写後像担持体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
像担持体上に付着したオゾンや窒素酸化物(NOx)を除去するために冷却ファン(16)が用いられる。気流は前述のように、像担持体の回転時に常時発生する方法や、気流噴射制御装置を用いて必要に応じて発生させる方法を用いることができる。
必要に応じて像担持体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、像担持体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
(プロセスカートリッジ)
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3に示す。
本発明の画像形成装置用のプロセスカートリッジの具体的形態例として図3に示した例は、像担持体(101)及び気流発生装置を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)を備えている画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。なお、この実施形態のプロセスカートリッジでは、帯電手段(102)と気流発生装置が一体なっている。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、ドラム状の像担持体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、除電手段(図示せず)により除電されて、さらに帯電手段(102)と一体になっている気流発生手段により像担持体表面に気流が吹き付けられながら再び帯電以降の操作を繰り返すことが出来る。
以上の説明から明らかなように、本発明の本発明に係る画像形成装置は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザビームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ及びレーザ製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
(静電潜像担持体)
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体は、有機材料の感光層を有し、特に表面層は、耐傷性、耐摩耗性の優れた特別の材料からなっているので、詳しく説明する。本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体は、支持体と、支持体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に積層してなる感光層とを有してなり、架橋型電荷輸送層が電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(B)との反応物を含有する。この静電潜像担持体は、気流発生工程で説明したような気流を吹き付けによる有害物質の除去効果もあり、耐傷性、耐摩耗性の高い、高湿環境下において表面抵抗が低下せず、また高速プロセス等で見られる高温環境下においても長期間にわたり高耐久及び高画質な画像を形成することが出来る。
静電潜像担持体(電子写真感光体)は、帯電手段、現像手段、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段などの一連のプロセスが繰り返される環境で使用され、この過程で感光体が摩耗したり、傷が発生したりすることにより、画像劣化を引き起こし寿命となる。この摩耗、傷をもたらす要因としては、(1)帯電、除電時の放電による感光体表面組成物の分解及び酸化性ガスによる化学的劣化、(2)現像時におけるキャリア付着、(3)転写時における紙との摩擦、(4)クリーニング時におけるクリーニングブラシ、クリーニングブレード及び介在するトナーや付着キャリアとの摩擦などが挙げられる。これらのハザードに強い感光体を設計するためには、表面層を高硬度、高弾性でかつ均一にすることが重要であり、膜構造からは緻密でかつ均質な三次元網目構造を形成する方法が有望である。
静電潜像担持体の表面にあたる架橋型電荷輸送層は、3官能以上のラジカル重合性化合物(A)を硬化した架橋構造有するため三次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度、かつ高弾性表面層が得られ、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。このように感光体表面の架橋密度、即ち単位体積あたりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、硬化反応において瞬時に多数の結合を形成させるため体積収縮による内部応力が発生する。この内部応力は架橋層の厚みが厚くなるほど増加するため電荷輸送層全層を硬化させると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。この現象は初期的に現れなくても、電子写真プロセス上で繰り返し使用され帯電、現像、転写、クリーニングのハザード及び熱変動の影響を受けることにより、経時で発生しやすくなることもある。かかる問題点を解決する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性化合物を多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層を柔らかくする方向性が挙げられるが、いずれも架橋層の架橋密度が希薄となり、飛躍的な耐摩耗性が達成されない。
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体(感光体)は、電荷輸送層上に三次元の網目構造が発達した架橋密度の高い架橋型電荷輸送層を1〜15μmの厚みで設けることが好ましく、上記のクラックや膜剥がれが発生せず、かつ非常に高い耐摩耗性が向上する。本発明の感光体がクラックや膜剥がれを抑制できる理由としては、架橋型電荷輸送層を薄膜化できるため内部応力が大きくならないこと、下層に電荷輸送層を有するため表面の架橋型電荷輸送層の内部応力を緩和できることなどによる。このため架橋型電荷輸送層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、この時生ずる、高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性化合物や電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との不相溶が原因の傷やトナーフィルミングも起こりにくい。更に、電荷輸送層全層にわたる厚膜を光エネルギー照射により硬化する場合、電荷輸送性構造による吸収から内部への光透過が制限され、硬化反応が十分に進行しない現象が起こることがある。本発明の架橋型電荷輸送層においては、表面から15μm以下の内部まで均一に硬化反応が進行し、表面と同様に内部でも高い耐摩耗性が維持される。
また、本発明の最表面層の形成においては、3官能性ラジカル重合性化合物(A)に加え、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性化合物(A)硬化時に架橋構造中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂構造の歪みが非常に大きくなり、架橋型電荷輸送層の内部応力が高まる原因となると考えられる。
更に、本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体は、良好な電気的特性を有し、このため、長期間にわたり高画質化が実現される。これは架橋型電荷輸送層の構成材料として1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。上記のように官能基を有しない電荷輸送物質は析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における電気的特性の劣化が著しい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れる。更に、本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体においては、下層の電荷輸送層として従来感光体の電荷トラップの少ない高移動度な設計が適応可能で、架橋型電荷輸送層の電気的副作用を最小限に抑えることができる。
架橋型電荷輸送層は電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を硬化することにより形成され、架橋型電荷輸送層全体としては三次元の網目構造が発達し高い架橋密度を有するが、上記成分以外の含有物(例えば、1又は2官能モノマー、高分子バインダー、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤などの添加剤及び下層からの溶解混入成分)や硬化条件により、局部的に架橋密度が希薄になったり、高密度に架橋した微小な硬化物の集合体として形成されることがある。このような架橋型電荷輸送層は、硬化物間の結合力は弱く有機溶剤に対し溶解性を示し、かつ電子写真プロセス中で繰り返し使用されるなかで、局部的な摩耗や微小な硬化物単位での脱離が発生しやすくなる。本発明のように架橋型電荷輸送層を有機溶剤に対し不溶性にせしめることにより、本来の三次元の網目構造が発達し高い架橋度を有することに加え、連鎖反応が広い範囲で進行し硬化物が高分子量化するため、飛躍的な耐摩耗性が達成される。
(静電潜像担持体の層構成)
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体は、支持体と、電荷発生層、電荷輸送層、及び架橋型電荷輸送層をこの順に積層してなる感光層とを有している。図2は、本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体(感光体ともいう。)の一例を示す概略断面図である。この静電潜像担持体は、導電性支持体(31)上に、接着機能を強化する下引き層(33)、電荷発生機能を有する電荷発生層(35)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(37)と、架橋型電荷輸送層(39)がこの順に積層されてなる積層構造の感光体である。
(支持体)
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものであることが好ましく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属;酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも支持体として用いることができる。
その他にも、支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の支持体として用いることができる。導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
(感光層)
感光層は、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層と、架橋型電荷輸送層がこの順に積層されてなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分として含み、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料をいずれも好適に用いることができる。
前記無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス−セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物、アモルファス−シリコン等が挙げられる。該アモルファス−シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの中でも、下記のオキシチタニウムフタロシアニンが好ましいものの一つである。
但し、X
1、X
2、X
3、及びX
4は、Cl又はBrを表す。h、i、j、及びkは、0〜4の整数を表す。
オキシチタニウムフタロシアニンの結晶形については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、CuKαの特性X線回折におけるブラック角(2θ±0.2°)の回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、該7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないオキシチタニウムフタロシアニンは、感度特性と結晶安定性の点からより好ましい。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
具体的には、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
バインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。具体的には、特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体、などが挙げられる。
電荷発生層には、低分子電荷輸送物質を含有させることができる。低分子電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とのいずれも好適である。
電子輸送物質としては、電子受容性物質が好適であり、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が好適に挙げられ、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、真空薄膜作製法、溶液分散系からのキャスティング法、などが挙げられる。
真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法、等が好適であり、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
キャスティング法によって電荷発生層を設ける方法としては、例えば、前記無機系又は有機電荷発生物質を、必要に応じてバインダー樹脂と共に、溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。該溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、等が挙げられる。なお、前記分散液には、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。前記塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
電荷発生層の厚みは、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成させる。
電荷輸送物質としては、電荷発生層の説明で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。上述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、架橋型電荷輸送層を塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
更に、本発明においては、特に電荷輸送物質として、下記構造式(3)からなる電荷輸送物質を静電潜像担持体に含有することによって、架橋表面保護層を設けた際に長期に渡ってより優れた電気的安定性を得ることが可能となる。
[但し、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ同一であっても異なってもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子又は置換しても良いアリール基を示し、p
1およびp
2は0又は1を示す。Zは水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアリール基又は次の一般式(Za)、(Zb)、(Zc)で表される基を示す。
(但し、R
10、R
11、R
12、R
13及びp
1、p
2は上記構造式(3)における符号と同じ意味を表し、R
14及びR
15はそれぞれ同一であっても異なってもよく、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基,フェノキシ基、ハロゲン原子又は置換しても良いアリール基を示し、p
3は0又は1を示す。)]
構造式(3)で示される電荷輸送性化合物のR
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12及びR
13、R
14、R
15及びp
1、p
2、p
3の組み合わせとしては、具体的には下表1〜3に示される組み合わせが挙げられるが、これらの組み合わせの構造の化合物に限定されるものではない。
結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電荷輸送物質の添加量は、前記結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部が好ましく、40〜150質量部がより好ましい。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては、前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、電荷輸送層の下層部分の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。
電荷輸送層には、必要に応じて、可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般に用いられる樹脂の可塑剤として使用されているものを用いることができる。該可塑剤の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対し0〜30質量部程度が適当である。レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用される。該レベリング剤の使用量は、前記結着樹脂100質量部に対し0〜1質量部程度が好ましい。
電荷輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
(架橋型電荷輸送層)
電荷輸送層上に、後述する架橋型電荷輸送層塗工液を塗布し、必要に応じて乾燥後、熱や光照射の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋型電荷輸送層が形成される。架橋型電荷輸送層は、電荷輸送機能を有し架橋構造の重合物を有する層であり、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷輸送層上に塗布、乾燥し硬化させることにより形成させる。
電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)としては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記構造式で表される官能基が好適に挙げられる。
構造式 : CH2=CH−X1−
[但し、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(但し、R10は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、又は−S−基を表す。]
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基、等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記構造式で表される官能基が好適に挙げられる。
構造式 : CH2=C(Y)−X2−
[但し、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(但し、R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、又はCONR12R13(但し、R12及びR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、X2は前記1−置換エチレン官能基の例示構造式中のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y,X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)なお、X2、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、などが挙げられる。]。
これらの置換基の具体例としては、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基。等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。ラジカル重合性化合物(A)の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以下、EO変性という)トリアクリレート、トリメチロールプロパプロピレンオキシ変性(以下、EO変性という)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以下、ECH変性という)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)としては、下記構造式(1)で表される化合物が好適に挙げられる。電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)としては、異なる構造を有する複数種のラジカル重合性化合物を含み、該ラジカル重合性化合物(A)の少なくとも1種が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
[但し、R
71、R
72、R
73、R
74、R
75、及びR
76は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、又は下記構造式(2)で表される基を表す。なお、R
71〜R
76は、同時に2つ以上が水素原子であることはない。
(但し、R
77は、単結合、アルキレン基、アルキレンエーテル基、又はアルキレンオキシカルボニル基を表す。R
78は、水素原子、又はメチル基を示す。アルキレン基、アルキレンエーテル基、及びアルキレンオキシカルボニル基としては、後述する構造式(4)及び(5)のZと同様なものが挙げられる。)]。
構造式(1)で表されるラジカル重合性化合物を用いると、3官能や4官能のみの化合物を用いた場合に比較して、更に3次元の網目構造が発達し、架橋度が非常に高い高硬度架橋表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。また、本発明の電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物との相溶性も良好であり、これらが同時に短時間で硬化され、硬化速度の向上により平滑な表面層の形成が実現可能となり、本発明の効果を更に向上させることができる。
更に、反応性官能基が多く、硬化速度の速い、構造式(1)で表わされる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(B)を硬化することで架橋層中に歪みの少ない均一な架橋膜を形成することが可能となり、この結果、架橋表面層中において電荷輸送物質の未反応部分が減少し、架橋膜内部の均質性が大きく改善される。これにより、耐摩耗性の向上と同時に安定した静電特性の両立も実現される。
構造式(1)で表される化合物としては、5個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に5個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、5個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を5個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
構造式(1)で表わされる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物としては3個のアクリロイルオキシ基及び3個の水素基を有する化合物、4個のアクリロイルオキシ基及び2個の水素基を有する化合物、5個のアクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物、6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物、3個のメタクリロイルオキシ基及び3個の水素基を有する化合物、4個のメタクリロイルオキシ基及び2個の水素基を有する化合物、5個のメタクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物、6個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物などが例示でき、更に詳しくは、下記構造式で表される化合物が例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
これらのモノマーは収率が優れる、製造コストが低い及び生産性が高いなどの理由から多価アルコールのエステル化により製造されることが例示でき、これらのモノマーを2種以上、更に詳しくは2種、3種又は4種を併用する場合であって、6個のラジカル重合性官能基を有するモノマーを用いるときには、収率が優れるという点で、エステル化により6個のラジカル重合性官能基を有するモノマー、及びエステル化されずに水素基が残存した5個以下のラジカル重合性官能基を有するモノマーとの混合物を用いることが好ましい。また、その配合率は、同様に収率が優れるという点で該モノマーを20〜99質量%含有することが好ましく、30〜97質量%がより好ましく、40〜95質量%が更に好ましい。
(1)同様の理由により、5個のラジカル重合性官能基を有するモノマーを用いるときには、このモノマーを20〜99質量%含有することが好ましく、30〜97質量%がより好ましく、40〜95質量%が更に好ましい。
(2)同様の理由により、4個のラジカル重合性官能基を有するモノマーを用いるときには、このモノマーを0.01〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、3〜5質量%が更に好ましい。
(3)同様の理由により、3個のラジカル重合性官能基を有するモノマーを用いるときには、このモノマーを0.01〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、3〜5質量%が更に好ましい。
更に詳しくは、同様の理由により5個のアクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。また、6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物70〜30質量%、好ましくは60〜40質量%を含有する混合物、5個のアクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物30〜65質量%、好ましくは40〜55質量%、6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物65〜30質量%、好ましくは55〜40質量%、並びに、以下に列挙する化合物(a)〜(d)の中から選択される1種、2種、3種又は4種が0.01〜5質量%、好ましくは1〜3質量%を含有する混合物が挙げられる。
(a)1個のアクリロイルオキシ基及び5個の水素基を有する化合物
(b)2個のアクリロイルオキシ基及び4個の水素基を有する化合物
(c)3個のアクリロイルオキシ基及び3個の水素基を有する化合物
(d)4個のアクリロイルオキシ基及び2個の水素基を有する化合物。
また、5個のメタクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%並びに6個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物70〜30質量%、好ましくは60〜40質量%を含有する混合物、5個のメタクリロイルオキシ基及び1個の水素基を有する化合物30〜65質量%、好ましくは40〜55質量%、6個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物65〜30質量%、好ましくは55〜40質量%、並びに、以下に列挙する化合物(a)〜(d)の中から選択される1種、2種、3種又は4種が0.01〜5質量%、好ましくは1〜3質量%を含有する混合物が例示できる。
(a)1個のメタクリロイルオキシ基及び5個の水素基を有する化合物
(b)2個のメタクリロイルオキシ基及び4個の水素基を有する化合物
(c)3個のメタクリロイルオキシ基及び3個の水素基を有する化合物
(d)4個のメタクリロイルオキシ基及び2個の水素基を有する化合物。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)としては、架橋型電荷輸送層中に緻密な架橋結合を形成するため、ラジカル重合性化合物(モノマー)中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が好ましい。モノマー中の官能基数に対する分子量の割合が250を超えると、架橋型電荷輸送層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
架橋型電荷輸送層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)の含有量は、架橋型電荷輸送層全量に対し20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。前記含有量が20質量%未満であると、架橋型電荷輸送層の三次元架橋密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されないことがあり、80質量%を超えると、電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の架橋型電荷輸送層の厚みも異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
架橋型電荷輸送層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、かつ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性化合物で示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、前記電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が効果が高く、中でも、下記構造式(4)又は(5)で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
但し、構造式(4)又は(5)において、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(但し、R7は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す。)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR8R9(ただし、R8及びR9は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表す。Ar1、Ar2は、置換もしくは未置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は、置換もしくは未置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。
構造式(4)又は(5)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
置換もしくは未置換のAr3、Ar4はアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、等が挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、例えば、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば、下記(1)〜(8)に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基、等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は前記(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、等が挙げられる。
(6)下記構造式(6)で表される基が挙げられる。
構造式(6)中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、又はアリール基を表す。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい。具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表し、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基としては、下記構造式で表される基が好ましい。
前記構造式中、R5は、水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表されるアリール基と同じ)であり、aは1又は2、bは1〜3の整数を表す。Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(B)として更に好ましくは、下記構造式(7)で表される化合物が挙げられる。
構造式(7)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表し、R
b、R
cは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Z
aは単結合、メチレン基、エチレン基、又は下記構造式で表される基を表す。
上記構造式中、置換基R
b、R
cとして、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
構造式(4)、(5)及び(7)、特に、構造式(7)で表される1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性化合物(A)との重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある。)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)の具体例を以下の表4〜15に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、架橋型電荷輸送層の電荷輸送性能を付与するために重要である。1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)の添加量は、架橋型電荷輸送層に対し20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。添加量が20質量%未満であると、架橋型電荷輸送層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れることがあり、80質量%を超えると、電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されないことがある。なお、使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い感光体の架橋型電荷輸送層の厚みも異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体の表面層は、好ましくは構造式(1)で表わされる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物(A)と電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物(B)を硬化させた架橋表面層であるが、この場合、表面層の塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面自由エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1〜4官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。この併用により、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物(A)又は表面層用塗工液の低粘度化により塗膜の平滑性が向上し、ひいては架橋表面層の平滑化、歪み低減が図られる。これにより実使用上において、クリーニング性向上やクラック抑制に繋がる。この理由により、3官能のラジカル重合性モノマーの併用が好ましい。
これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用でき、これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーの割合は、架橋表面層全量に対し1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。また、これらのラジカル重合性モノマーの粘度としては1000mPa・s(25℃)以下が好ましく、800mPa・s(25℃)以下がより好ましい。
架橋型電荷輸送層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、などが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、などが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、などが挙げられる。
1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。含有量が50質量部を超えると、架橋型電荷輸送層の三次元架橋密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。
なお、前記架橋型電荷輸送層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を硬化したものであるが、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるため、架橋型電荷輸送層塗布液中に重合開始剤を含有させてもよい。該重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、などが挙げられる。これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパ
ーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン等の過酸化物系開始剤;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、などが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、などが挙げられる。
なお、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
架橋型電荷輸送層塗工液は、必要に応じて応力緩和や接着性向上の目的とした各種可塑剤、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能である。可塑剤の使用量は、前記架橋型電荷輸送層塗工液の総固形分に対し20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用できる。レベリング剤の使用量は、前記架橋型電荷輸送層塗工液の総固形分に対し3質量%以下が好ましい。
本発明の架橋型電荷輸送層は、少なくとも上記の電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)と1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)を含有する塗工液を後に記載の電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする厚みにより変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
本発明においては、前記架橋型電荷輸送層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋型電荷輸送層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。
加熱温度は100〜170℃が好ましい。加熱温度が100℃未満であると、反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しないことがあり、170℃を超えると、高温になりすぎて硬化反応が不均一に進行し架橋型電荷輸送層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生することがある。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
光のエネルギーとしては、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。前記照射光量は50〜1000mW/cm2が好ましい。前記照射光量が50mW/cm2未満であると、硬化反応に時間を要することがあり、1000mW/cm2を超えると、反応の進行が不均一となり、架橋型電荷輸送層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずることがある。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。前記放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
架橋型電荷輸送層の厚みは、1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。前記厚みが15μmを超えると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなることがあり、10μm以下ではその余裕度が更に向上するため架橋密度を高くすることが可能で、更に耐摩耗性を高める材料選択や硬化条件の設定が可能となる。一方、ラジカル重合反応は酸素阻害を受けやすく、即ち、大気に接した表面では酸素によるラジカルトラップの影響で架橋が進まなかったり、不均一になりやすい。この影響が顕著に現れるのは表層1μm以下であり、この厚み以下の架橋型電荷輸送層は耐摩耗性の低下や不均一な摩耗が起こりやすい。また、架橋型電荷輸送層の塗工時において下層の電荷輸送層成分の混入が生ずる。架橋型電荷輸送層の塗布厚みが薄いと層全体に混入物が拡がり、硬化反応の阻害や架橋密度の低下をもたらす。これらの理由から、本発明の架橋型電荷輸送層は1μm以上の厚みで良好な耐摩耗性、耐傷性を有するが、繰り返しの使用において局部的に下層の電荷輸送層まで削れた部分できるとその部分の摩耗が増加し、帯電性や感度変動から中間調画像の濃度むらが発生しやすい。従って、より長寿命、高画質化のためには架橋型電荷輸送層の厚みを2μm以上にすることが望ましい。
更に、厚み1〜15μmの架橋型電荷輸送層を設けた場合、長期の画像形成に関わる耐久性試験において、特に高温高湿時の耐久性試験において感光体表面にピンホールが発生しにくいことが判明した。その理由、メカニズムについては未だ分からないが、本発明の架橋型電荷輸送層が高い強度を有するとともに、適度な弾性を同時に有し、かつ適切な厚みであることに関係するためと考えられる。従来の感光体で画像形成時に発生するピンホールは、トナーに添加されるシリカ等の微粉末による感光体表面に生じるミクロの傷と温度及び湿度が関係しているものと推察される。ただ硬いだけの表面層は、削れない点で有利であるが却って傷が発生した場合、成長してしまうと考えられ、長期耐久性試験においてピンホールができやすいものと考えられる。
架橋型電荷輸送層塗工液には、前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物(A)及び1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)以外にも、その他の成分としてラジカル重合性官能基を有しないバインダー樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を含むことができる。これらの添加剤を多量に含有させると、架橋密度の低下、反応により生じた硬化物と上記添加物との相分離が生じ、有機溶剤に対し可溶性となる。具体的には、塗工液の総固形分に対し上記総含有量を20質量%以下に抑えることが重要である。また、架橋密度を希薄にさせないために、1官能又は2官能のラジカル重合性モノマー、反応性オリゴマー、反応性ポリマーにおいても、総含有量を3官能ラジカル重合性モノマーに対し20質量%以下とすることが望ましい。更に、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を多量に含有させると、嵩高い構造体が複数の結合により架橋構造中に固定されるため歪みを生じやすく、微小な硬化物の集合体となりやすい。このことが原因で有機溶剤に対し可溶性となることがある。化合物構造によって異なるが、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物に対し10質量%以下にすることが好ましい。更に電荷発生層、電荷輸送層、架橋型電荷輸送層を順次積層した構成において、最表面の架橋型電荷輸送層が有機溶剤に対し不溶性であることが、耐摩耗性、耐傷性が達成させることに好ましい。
本発明において、架橋型電荷輸送層を有機溶剤に対し不溶性にするには、(1)架橋型電荷輸送層塗工液の組成、それらの含有割合の調整、(2)架橋型電荷輸送層塗工液の希釈溶媒、固形分濃度の調整、(3)架橋型電荷輸送層の塗工方法の選択、(4)架橋型電荷輸送層の硬化条件の制御、及び(5)下層の電荷輸送層の難溶解性化など、をコントロールすることが重要であるが、必ずしも一つの因子で達成されるとはかぎらない。
架橋型電荷輸送層塗工液の希釈溶媒としては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす。このため、有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に厚み、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける場合があり、具体的には、10〜50質量%の範囲で用いることが望ましい。
架橋型電荷輸送層の塗工方法としては、塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的には、スプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が特に好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、架橋型電荷輸送層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
架橋型電荷輸送層の硬化条件としては、加熱又は光照射のエネルギーが低いと硬化が完全に終了せず、有機溶剤に対し溶解性があがる。逆に非常に高いエネルギーにより硬化させた場合、硬化反応が不均一となり未架橋部やラジカル停止部の増加や微小な硬化物の集合体となりやすい。このため有機溶剤に対し溶解性となることがある。有機溶剤に対し不溶性化するには、熱硬化の条件としては100〜170℃、10分〜3時間が好ましく、UV光照射による硬化条件としては50〜1000mW/cm2、5秒〜5分であり、かつ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
架橋型電荷輸送層を有機溶剤に対し不溶性にする手法としては、例えば、塗工液として、3つのアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一つのアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3〜3:7が好ましい。また、前記重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20質量%添加し、更に溶媒を加えて塗工液を調製することが好ましい。例えば、架橋型電荷輸送層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましい。その使用割合は、前記アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、自然乾燥又は比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、例えば200mW/cm2のUV光を照射する場合、例えば硬化に際し、複数のランプからドラム周方向を均一30秒程度照射すればよい。このときドラム温度は50℃を超えないように制御する。熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば、加熱手段として送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。硬化終了後は、更に残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体が得られる。
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体の電荷輸送層のイオン化ポテンシャルが架橋型電荷輸送層のイオン化ポテンシャルよりも小さいことで、電荷輸送層から架橋型電荷輸送層への電荷移動が容易になるため、特に長期での繰返し使用の際に、残像などの異常画像の発生に対して、より好ましい。イオン化ポテンシャルは、分子の基底状態から1個の電子を無限遠に引き離すエネルギーを表し、高分子の低エネルギー側の電子レベルを光電子放出により求めたその閾値であり、理研計測器製表面分析装置AC−1を用いて計測することが可能である(参照:電子写真学会誌28、No.4、p364、1989)。
(中間層)
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体においては、電荷輸送層と架橋型電荷輸送層の間に、架橋型電荷輸送層への電荷輸送層成分混入を抑える又は両層間の接着性を改善する目的で中間層を設けることが可能である。このための中間層としては、架橋型電荷輸送層塗工液に対し不溶性又は難溶性であるものが適しており、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成方法としては、前記塗工法が採用される。なお、前記中間層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.05〜2μmが好適である。
(下引き層)
本発明の画像形成装置に用いられる静電潜像担持体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。該樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、前記下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等を図るため、例えば、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を添加することができる。
下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。また、下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。なお、下引き層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0〜5μmが好ましい。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋型電荷輸送層、電荷輸送層、電荷発生層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類、などが挙げられる。
パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン、などが挙げられる。
ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−
クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン、などが挙げられる。
有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネート、などが挙げられる。
有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、などが挙げられる。
なお、これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。酸化防止剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、添加する層の総質量に対し0.01〜10質量%が好ましい。
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例において「部」は「質量部」を表す。
(1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)の合成)
本発明における1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(B)は、例えば、特許第3164426号公報に記載の方法にて合成できる。以下に、この一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式(9))の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式(8))113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間かけて滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加えて室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式(9)の白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は64.0〜66.0℃であり、元素分析値(%)は表16に示した。
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表7の例示化合物No.54)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式(9))82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃にて3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は117.5〜119.0℃であり、元素分析値(%)は表17に示した。
(2官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成)
本発明における2官能の電荷輸送性構造を有する化合物ジヒドロキメチルトリフェニルアミンは、下記反応式(A)、(B)に従って以下の方法にて製造した。まず、温度計、冷却管、攪拌装置、及び滴下ロートの付いたフラスコに、下記反応式で表される化合物(1)49g、及びオキシ塩化リン184gを入れ、加熱溶解した。滴下ロートよりジメチルホルムアミド117gを徐々に滴下し、その後反応液温を85〜95℃に保ち、約15時間攪拌を行った。次に反応液を大過剰の温水に徐々に注いだ後、攪拌しながらゆっくり冷却した。次いで、析出した結晶を濾過及び乾燥した後、シリカゲル等により不純物吸着及びアセトニトリルでの再結晶により精製を行って化合物(2)を得た。収量は30gであった。得られた化合物(2)30gとエタノール100mlをフラスコに投入し攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム1.9gを徐々に添加した後、液温を40〜60℃に保ち、約2時間攪拌を行った。次に、反応液を約300mlの水に徐々にあけ、攪拌して結晶を析出させた。濾過後、充分に水洗して、乾燥し化合物(3)を得た。収量は30gであった。
(製造例1)
<静電潜像担持体1の作製>
モアレ防止のための切削加工を施したアルミニウムパイプ(直径100mm×長さ380mm)上に、下記組成の下引き層用塗工液を浸漬法で塗工し、厚さ3.0μmの下引き層を設けた。
<下引き層用塗工液>
・アルキッド樹脂・・・6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業株式会社製)
・メラミン樹脂・・・4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業株式会社製)
・酸化チタン・・・40部
・メチルエチルケトン・・・50部。
次に、下引き層上に、下記組成の電荷発生層用塗工液を浸漬塗布し、乾燥させて厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
<電荷発生層用塗工液>
・チタニルフタロシアニン顔料:1.5部
・ポリビニルアセタール:(BM−S、積水化学社製)0.5部
・メチルエチルケトン:70部。
次に、下記組成の電荷輸送層用塗工液を浸漬塗布し、乾燥させて厚み22μmの電荷輸送層を形成した。
<電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送物質(下記構造式)・・・25部
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート(重量平均分子量(Mw)=150000)・・・30部
・テトラヒドロフラン・・・300部
次に、得られた電荷輸送層上に下記組成の架橋型電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、20分間自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行って塗布膜を硬化させた。更に130℃にて20分間乾燥して、厚み8μmの架橋型電荷輸送層用を設けた。以上により、静電潜像担持体1を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー・・・10部
(トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA、日本化薬株式会社製、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)・・・10部
・光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)・・・1部
・テトラヒドロフラン・・・100部。
(実施例1)
得られた静電潜像担持体1を、2つの帯電チャージャーを備える画像形成装置(imgio MP1350、株式会社リコー製)に取り付けて、さらに静電潜像担持体に直接気流を吹き付けることが可能になるように、画像形成装置内に送風ファンを取り付け、本発明の画像形成装置とした。この画像形成装置を以下のようにして評価した。評価を行う室内は23℃、50%RHとして、続いて、装置を連続稼働させた状態での静電潜像担持体の表面温度を非接触型の放射温度計にて測定し、静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した。その後、A4サイズの普通紙にて、印字比率6%の画像を30,000枚連続で複写した後、ハーフトーン画像と16階調のグレースケール画像を出力した(グレースケールは階調数が多い程、良好な画像であることを表す。)。
(実施例2)
実施例1において、画像形成装置内にペルチェ素子と温度コントローラ、及び送風ファンを取り付け、静電潜像担持体の表面温度が18℃で一定に保持されるように調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例3)
実施例1において、A4サイズの普通紙にて、印字比率6%の画像を30,000枚連続で複写の実施を始めてから1時間経過した後に、送風ファンを起動させ、静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例4)
画像形成装置に内蔵されている表面電位計の出力を外部でモニター可能なように、リード線とレコーダを取り付けた。続いて、静電潜像担持体の露光部電位を測定するため、複写は実施せず、静電潜像上で全黒画像の書き込みを行った際の表面電位計の出力値をモニターした。その後、送風ファンを起動しない以外は実施例1と同様に、A4サイズの普通紙にて、印字比率6%の画像を30,000枚連続で複写の実施を開始した。その際、静電潜像担持体の表面電位を適宜モニターするため、1000枚の連続複写毎に複写を1時的に中断し、前記と同様に静電潜像上で全黒画像の書き込みを行った際の表面電位計の出力値をモニターし、連続複写開始時の露光部電位に対し20(V)変動した後に、送風ファンを起動させ、静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風量を調整し、実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例5)
画像形成装置に内蔵されている2つの帯電チャージャのうち、クリーニング装置により近いところに位置する1つのみを取り外し、1つの帯電チャージャにした以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(比較例1)
実施例1において、静電潜像担持体に送風を実施しなかった以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(比較例2)
実施例1において、静電潜像担持体に直接熱風を吹き付けることが可能になるように、ヒーターを追加し、静電潜像担持体の表面温度が50℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(比較例3)
実施例1において、A4サイズの普通紙にて、印字比率6%の画像を30,000枚連続で複写を実施中は送風ファンを起動せず、1000枚の連続複写毎に静電潜像担持体を1時的に停止させた後に、静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるまで送風を実施した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
実施例1〜5、比較例1〜3の評価結果を表18に示す。
(実施例6)
実施例1において、評価を行う室内は18℃、湿度35%RHとし、また静電潜像担持体の表面温度が18℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例7)
実施例1において、評価を行う室内は18℃、湿度35%RHとし、また静電潜像担持体の表面温度が13℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例8)
実施例1において、評価を行う室内は28℃、湿度70%RHとし、また静電潜像担持体の表面温度が28℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(実施例9)
実施例1において、評価を行う室内は28℃、湿度70%RHとし、また静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(比較例4)
実施例1において、評価を行う室内は18℃、湿度35%RHとし、また静電潜像担持体に送風を実施しなかった以外は実施例1と同様に評価を実施した。
(比較例4)
実施例1において、評価を行う室内は28℃、湿度70%RHとし、また静電潜像担持体に送風を実施しなかった以外は実施例1と同様に評価を実施した。
実施例6〜9、比較例4〜5の結果を表19に示す。
(実施例10)
実施例1を実施した後、実施例1で用いた潜像担持体を画像形成装置内で一晩放置した。その後、23℃、湿度50%RHの環境下で画像形成装置の電源を投入し、画像形成を行う前に、静電潜像担持体を60秒間回転させている間に、実施例1と同様に静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風を行った後、ハーフトーン画像と16階調のグレースケール画像を出力した。
(実施例11)
実施例2を実施した後、実施例2で用いた潜像担持体を画像形成装置内で一晩放置した。その後、23℃、50%RHの環境下で画像形成装置の電源を投入した後、静電潜像担持体に送風を行わず、ハーフトーン画像と16階調のグレースケール画像を出力した。
実施例10、11の評価結果を表20に示す。
(製造例2)
−静電潜像担持体2の作製−
製造例1において、架橋型電荷輸送層用塗工液を下記組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、静電潜像担持体2を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー・・・10部
(ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR−295,化薬サートマー製、分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基数=88)
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.138)・・・10部
・光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・1部
・テトラヒドロフラン・・・100部。
(製造例3)
−静電潜像担持体3の作製−
製造例1において、架橋型電荷輸送層用塗工液を下記組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、静電潜像担持体3を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・下記構造式で表される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー・・・10部
(ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−60、日本化薬株式会社製、分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211)
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(例示化合物No.54)・・・10部
・光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)・・・1部
・テトラヒドロフラン・・・100部
(製造例4)
−静電潜像担持体4の作製−
製造例1において、架橋型電荷輸送層用塗工液を下記組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、静電潜像担持体4を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・下記構造式で表される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー・・・95部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ヘキサアクリレートとペンタアクリレートの質量比1:1混合物、KAYARAD DPHA、日本化薬社製)
(a=5、b=1の化合物と、a=6、b=0の化合物の質量比1:1混合物)
・1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物・・・95部
(例示化合物No.54)
・光重合開始剤・・・10部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・テトラヒドロフラン・・・1200部
(製造例5)
−静電潜像担持体5の作製−
製造例4において、架橋型電荷輸送層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーを下記のものに変更した以外は、製造例4と同様にして、静電潜像担持体5を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー
(下記(1)及び(2)を質量比1:1で用いた2種混合モノマー)・・・95部
(1)下記構造式で表されるカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
(2)下記構造式で表されるトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、東京化成社製)
(製造例6)
−静電潜像担持体6の作製−
製造例4において、架橋型電荷輸送層用塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマーを下記のものに変更した以外は、製造例4と同様にして、静電潜像担持体6を作製した。
<架橋型電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー
(下記(1)及び(2)を質量比1:1で用いた2種混合モノマー)・・・95部
(1)下記構造式で表されるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(ヘキサアクリレートとペンタアクリレートとの質量比1:1混合物;KAYARAD DPHA、日本化薬社製)
(a=5、b=1の化合物と、a=6、b=0の化合物とを質量比1:1混合物)。
(2)下記構造式で表されるトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、東京化成社製)
(製造例7)
−静電潜像担持体7の作製−
製造例1において電荷発生層塗工液を、下記のように変更した以外は全て製造例1と同様にして、静電潜像担持体7を作成した。
<電荷発生層用塗工液>
・ガリウムフタロシアニン顔料: 1.5部
・ポリビニルアセタール:(BM−S、積水化学社製) 0.5部
・メチルエチルケトン: 70部。
(製造例8)
−静電潜像担持体8の作製−
製造例1において電荷輸送層塗工液を、下記のように変更した以外は全て製造例1と同様にして、静電潜像担持体8を作成した。
<電荷輸送層用塗工液>
・電荷輸送物質(下記構造式(A))・・・25部
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート(重量平均分子量(Mw)=150000)・・・30部
・テトラヒドロフラン・・・300部
(比較製造例1)
−静電潜像担持体9の作製−
製造例1において、架橋型電荷輸送層を設けず、電荷輸送層の厚みを27μmとした以外は、製造例1と同様にして、静電潜像担持体9を作製した。
(比較製造例2)
−静電潜像担持体10の作製−
製造例1と同様にして電荷輸送層までを作製した。この電荷輸送層上に、下記組成の接着層用塗布液を塗布し、100℃にて30分間の加熱処理を行い、厚み0.3μmの接着層を形成した。
<接着層用塗工液>
・シリルアクリレート(PC−7A、信越化学工業株式会社製)・・・6部
・2−ブタノン・・・200部。
次に、メチルシロキサン単位80モル%、メチル−フェニルシロキサン単位20モル%からなるポリシロキサンのメタノール溶液にモレキュラーシーブ4Aを添加し、15時間静置し、脱水処理した。この溶液10部をトルエン10部に溶解し、これにメチルトリメトキシシラン1部、ジブチル錫アセテート0.2部を加え均一な保護層用塗布液を調製した。得られた保護層用塗布液を前記接着層上に塗布し、120℃、1時間の加熱硬化し、乾燥厚みが3μmの保護層を形成した。以上により、静電潜像担持体10を作製した。
(比較製造例3)
−静電潜像担持体11の作製−
製造例1において、架橋型電荷輸送層を設けず、電荷輸送層の結着樹脂をビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂から下記構造式(B)のポリアリレート樹脂(重量平均分子量(Mw)=80000、Mw/Mn=2.8)に変え、厚みを27μmとした以外は、製造例1と同様にして、静電潜像担持体11を作製した。
(比較製造例4)
−静電潜像担持体12の作製−
比較製造例3において、ポリアリレート樹脂(重量平均分子量(Mw)=80000、Mw/Mn=2.8)をポリアリレート樹脂(重量平均分子量(Mw)=200000、Mw/Mn=2.8)に変えた以外は、比較製造例3と同様にして、静電潜像担持体12を作製した。
(実施例12〜19及び比較例6〜9)
得られた各静電潜像担持体1〜12を用いた以外実施例1と同様にして、画像形成装置を作製した。実施例1と同様に、評価を行う室内は23℃、相対湿度50%RHとした。この画像形成装置を連続稼働させた状態での静電潜像担持体の表面温度を非接触型の放射温度計にて測定し、静電潜像担持体の表面温度が23℃で一定に保持されるように送風ファンの送風量を調整した。その後、A4サイズの普通紙にて、印字比率6%の画像を1,000,000枚連続で複写した後、ハーフトーン画像と16階調のグレースケール画像を出力した。更に、連続複写前後における静電潜像担持体の摩耗量を渦電流式厚み計(フィッシャースコープ社製MMS)にて測定した。評価結果を表21に示す。
表18〜表21の結果から、本発明の画像形成装置においては、耐傷性、及び耐摩耗性が高く、長期間に亘って高耐久であり、かつ高画質な画像が得られることがわかる。