JP2006009874A - 変速機の同期装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カップリングスプライン歯とクラッチギヤスプライン歯とが噛み合う際、シンクロハブとクラッチギヤとの相対回転を原因とする2段入り荷重の発生を防止することができる変速機の同期装置を提供すること。
【解決手段】 シンクロハブ2に軸方向移動可能にスプライン嵌合されたカップリングスリーブ3のストロークに伴って第1ボークリング6を押し、第1ボークリングコーン面6bと第1クラッチギヤコーン面7bとの間で発生する摩擦トルクにより同期が開始され、同期が終了すると、カップリングスプライン歯3aは、第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aと噛み合うことでシフトを完了する変速機の同期装置において、前記カップリングスプライン歯3aが、前記第1ボークリングスプライン歯6aと噛み合った状態から第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aと噛み合う状態へ切り換わる間、前記シンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との間の相対回転を抑制する相対回転抑制手段を設けた。
【選択図】 図2

Description

本発明は、手動またはアクチュエータにより同期側のシンクロハブに結合されたカップリングスリーブをストロークさせる変速時、被同期側に結合されたクラッチギヤとの回転同期作用により円滑な変速を達成する変速機の同期装置に関する。
従来、手動式歯車変速機の同期装置は、シンクロハブとカップリングスリーブとインサートキーとボークリングとクラッチギヤとを有する。そして、シンクロハブに軸方向ストローク可能にスプライン嵌合されたカップリングスリーブのストロークに伴ってインサートキーを介してボークリングを押すことにより、カップリングスプライン歯とボークリングスプライン歯のチャンファ同士が接触し、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間での摩擦トルクの発生により回転同期が開始され、回転同期が終了すると、カップリングスプライン歯は、ボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合うことで変速を行う(例えば、特許文献1参照)。
特開平6−33952号公報
しかしながら、従来の手動式歯車変速機の同期装置にあっては、同期終了後、カップリングスプライン歯が、ボークリングスプライン歯と噛み合った状態からボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合う状態へ切り換わる間、ボークリングに対するクラッチギヤ方向の押付力が無くなり、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間での摩擦トルクが無くなるため、シンクロハブとクラッチギヤとの間に相対回転が発生し、ギヤの2段入りが生じる、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、カップリングスプライン歯とクラッチギヤスプライン歯とが噛み合う際、シンクロハブとクラッチギヤとの相対回転を原因とする2段入り荷重の発生を防止することができる変速機の同期装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、シンクロハブに軸方向移動可能にスプライン嵌合されたカップリングスリーブのストロークに伴ってボークリングを押し、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間で発生する摩擦トルクにより同期が開始され、同期が終了すると、カップリングスプライン歯は、第1ボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合うことでシフトを完了する変速機の同期装置において、
前記カップリングスプライン歯が、前記ボークリングスプライン歯と噛み合った状態からボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合う状態へ切り換わる間、前記シンクロハブとクラッチギヤとの間の相対回転を抑制する相対回転抑制手段を設けた。
よって、本発明の変速機の同期装置にあっては、相対回転抑制手段において、カップリングスプライン歯が、ボークリングスプライン歯と噛み合った状態からボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合う状態へ切り換わる間、シンクロハブとクラッチギヤとの間の相対回転が抑制される。この結果、カップリングスプライン歯とクラッチギヤスプライン歯とが噛み合う際、シンクロハブとクラッチギヤとの相対回転を原因とする2段入り荷重の発生を防止することができる。
以下、本発明の変速機の同期装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例3に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の変速機の同期装置を示す図2のA−A線断面図である。
実施例1の変速機の同期装置は、図1に示すように、メインシャフト1と、シンクロハブ2と、カップリングスリーブ3と、インサートキー4と、摩擦力発生機構5(相対回転抑制手段)と、第1ボークリング6と、第1クラッチギヤ7と、第1ギヤ8と、第1ベアリング9と、第2ボークリング10と、第2クラッチギヤ11と、第2ギヤ12と、第2ベアリング13と、ギヤブッシュ14と、を備えている。
前記メインシャフト1は、例えば、エンジンからの回転駆動力が入力される軸部材であり、このメインシャフト1には、同期側のシンクロハブ2がスプライン結合されている。また、前記シンクロハブ2の両側位置には、被同期側の第1ギヤ8と第2ギヤ12がメインシャフト1に対し回転可能に支持されている。なお、前記第1ギヤ8とメインシャフト1との間には第1ベアリング9が介装され、前記第2ギヤ12とメインシャフト1との間にはギヤブッシュ14と第2ベアリング13とが介装されている。
前記カップリングスリーブ3は、前記シンクロハブ2のシンクロハブスプライン歯2aとスプライン結合された変速操作荷重の入力部材であり、スリーブ内面には、両端部にチャンファを有するカップリングスプライン歯3aが形成され、スリーブ外面には、図外のシフトフォークが嵌着するフォーク溝3bが形成される。
前記インサートキー4は、変速時に第1ボークリング6または第2ボークリング10を押して同期摩擦トルクを発生させる摩擦トルク発生部材であり、外周中央部に台形突起4aを有し、前記カップリングスリーブ3のスリーブ内面の数ヶ所位置に形成された台形溝3cに対し、摩擦力発生機構5による外径方向の付勢力を受けながら嵌合されている。このインサートキー4は、前記カップリングスプライン歯3aに沿って両側に延び、インサートキー4の両端部は、前記第1ボークリング6と第2ボークリング10とにそれぞれ形成されたキー溝6c,10cの位置に配置されている。
前記摩擦力発生機構5は、カップリングスプライン歯3aが、ボークリングスプライン歯6a(または10a)と噛み合った状態からボークリングスプライン歯6a(または10a)をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯7a(または11a)と噛み合う状態へ切り換わる間、シンクロハブ2とクラッチギヤ7(または11)との間に摩擦力を発生させることで、シンクロハブ2とクラッチギヤ7(または11)との間の相対回転を抑制する相対回転抑制手段である。そして、摩擦力発生機構5は、摩擦プレート51(第1の板状部材)と、カップリングスリーブ突起52(第1の係合部材)と、円環スプリング53と、摩擦材54と、倒れ防止突起55と、第1スプリング受けスペーサ56と、第2スプリング受けスペーサ57と、を有して構成される。なお、詳しい説明は後述する。
前記第1ボークリング6は、前記カップリングスリーブ3と第1クラッチギヤ7との間に配置された同期部材であり、外周位置に前記カップリングスプライン歯3aのチャンファと対向するチャンファを有する第1ボークリングスプライン歯6aを有し、内周位置に凹凸面による第1ボークリングコーン面6bを有し、前記インサートキー4に対応する位置に第1キー溝6cを有する。
前記第1クラッチギヤ7は、前記第1ギヤ8に対し圧入等により一体的に設けられた同期部材であり、外周位置に前記カップリングスプライン歯3aのチャンファと対向するチャンファを有する第1クラッチギヤスプライン歯7aを有し、前記第1ボークリング6の支持位置に第1クラッチギヤコーン面7bを有する。
前記第2ボークリング10は、前記カップリングスリーブ3と第2クラッチギヤ11との間に配置された同期部材であり、外周位置に前記カップリングスプライン歯3aのチャンファと対向するチャンファを有する第2ボークリングスプライン歯10aを有し、内周位置に凹凸面による第2ボークリングコーン面10bを有し、前記インサートキー4に対応する位置に第2キー溝10cを有する。
前記第2クラッチギヤ11は、前記第2ギヤ12に対し圧入等により一体的に設けられた同期部材であり、外周位置に前記カップリングスプライン歯3aのチャンファと対向するチャンファを有する第2クラッチギヤスプライン歯11aを有し、前記第2ボークリング10の支持位置に第2クラッチギヤコーン面11bを有する。
図2は実施例1の同期装置における摩擦力発生機構を示す縦断正面図、図3は実施例1の同期装置における摩擦力発生機構の摩擦プレートを示す図、図4は実施例1の同期装置における摩擦力発生機構のカップリングスリーブ突起を示す図である。
前記摩擦力発生機構5は、シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11とが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブ2に対し傾転可能に支持された摩擦プレート51と、前記カップリングスリーブ3に設けられ、カップリングスリーブ3がクラッチギヤ7,11方向にストロークするときに前記摩擦プレート51との係合により摩擦プレート51を傾転させ、前記シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11との間に摩擦力を発生させるカップリングスリーブ突起52と、を有する。
前記摩擦力発生機構5は、互いに軸方向に対向する前記摩擦プレート51の板面に摩擦材54を設定している。なお、この摩擦材54は、互いに軸方向に対向する前記摩擦プレート51の板面と前記クラッチギヤ7,11のギヤ端面7c,11cのうち、少なくとも一方の面に設定すればよい。
前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、シンクロハブ2方向への倒れを防止する倒れ防止突起55を有する。つまり、摩擦プレート51は、図1に示すように、クラッチギヤ7,11側の板面に摩擦材54を設定し、反対面であるシンクロハブ2側の板面に倒れ防止突起55を設定している。
前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、図2に示すように、前記カップリングスリーブ3の内側に配置されるインサートキー4に接触すると共に、該インサートキー4を外径方向に付勢する円環スプリング53に対し傾動可能に支持されている。
前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、図3(c)に示すように、前記シンクロハブ2とスプリング受けスペーサ56,57により形成される環状溝に配置される円環スプリング53の周面に対し、両角を面取り(面取り部51a)した半円弧支持部51bを嵌合させることにより傾転可能に支持している。
前記スプリング受けスペーサ56は、図3(a),(b)に示すように、円環スプリング53の両端部を固定するために周方向に等間隔で3箇所位置に設定された固定部56a,56b,56cを有し、一体の円環スプリング53による付勢力を、3つの摩擦プレート51,51,51のそれぞれに付与するようにしている。ここで、3箇所の固定部56a,56b,56cを有するのは、組み付け性を考えてどの固定部に入れてもいいようにするためである。前記各摩擦プレート51は、面取り部51aを有する半円弧支持部51bにより円環スプリング53に対し傾転可能に支持されると共に、インサートキー4と嵌合するインサートキー溝部51cにより周方向のストロークが規制されている。前記各摩擦プレート51のインサートキー溝部51cを挟む両上端部には、図4に示すように、カップリングスリーブ3に設けられた各摩擦プレート51毎に一対設けられたカップリングスリーブ突起52,52との滑らかな係合を確保するために、図3(d)に示すように、斜面51dが形成されている。
次に、作用を説明する。
[変速同期作用]
実施例1の変速機の同期装置による同期作用について、図1及び図5〜図9を用いて説明する。ここでは、カップリングスリーブ3を図1の右方向にストロークさせ、メインシャフト1と第1ギヤ8の回転を同期させ、メインシャフト1と第1ギヤ8とを一体に回転させる変速例について説明する。
(a)ニュートラル時(図1)
図1は同期前のニュートラル状態を示していて、例えば、同期側(カップリングスリーブ3)はエンジン回転速度で回転し、被同期側(第1クラッチギヤ7)は車両側回転速度で回転している。第1ボークリング6は、同期側と等速で回転しており、第1ボークリングコーン面6bは第1クラッチギヤコーン面7bとは接触していない。
(b)シフト開始&インデックス時(図5)
上記同期前のニュートラル状態からシフトレバー操作またはアクチュエータ動作によりシフトフォークを介してカップリングスリーブ3を図1の右方向にストロークさせてシフトを開始する。シフトを開始すると、図5に示すように、摩擦プレート51は円環スプリング53によるFKgの力でインサートキー4を外径方向に押し付け、インサートキー4はカップリングスリーブ3に連動して右方向にストロークする。このインサートキー4により第1ボークリング6を押し、第1ボークリング6のストロークにより第1ボークリングコーン面6bと第1クラッチギヤコーン面7bとが接触しインデックスに必要な摩擦トルクが発生すると、第1ボークリング6が第1クラッチギヤ7に引きずられるように回転するため、シンクロハブ2と第1ボークリング6とが割り出し量の分だけ周方向に相対回転し、カップリングスプライン歯3aのチャンファ面と第1ボークリングスプライン歯6aのチャンファ面とが相対する位置となる。この状態を「インデックス状態」という。
このシフト開始からインデックス状態までのシフト段階においては、図5の下半分に示すように、摩擦力発生機構5の摩擦プレート51とカップリングスリーブ突起52とは離れた位置にあり、シンクロハブ2と第1ボークリング6との間での摩擦力の発生は無い。
(c)同期及び同期終了時(図6)
さらに、カップリングスリーブ3が進んで行くと、カップリングスプライン歯3aのチャンファ面と第1ボークリングスプライン歯6aのチャンファ面が互いに接触し、同期を開始する。この状態を「ボーク状態」という。
そして、上記第1ボークリングコーン面6bと第1クラッチギヤコーン面7bとの間で発生する同期摩擦トルクにより、第1ボークリング6と第1クラッチギヤ7との回転数差を減少させてゆき、接触しているカップリングスプライン歯3aのチャンファ面と第1ボークリングスプライン歯6aのチャンファ面との間で、第1ボークリング6をカップリングスリーブ3の進行方向と同方向に押す力と、第1ボークリング6を回転させる力(押し分け力)が生じる。
そして、カップリングスプライン歯3aのチャンファ面が、第1ボークリングスプライン歯6aのチャンファ面に対する仕事量により、第1ボークリング6と第1クラッチギヤ7との回転数差が無くなり、第1ボークリング6と第1クラッチギヤ7との回転速度が一致すると同期が終了し、カップリングスプライン歯3aが第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aへ向かうストロークを開始する。
そして、すり抜け開始点であるw点の位置までカップリングスプライン歯3aがストロークすると、図6の下半分に示すように、摩擦力発生機構5の摩擦プレート51の斜面51dとカップリングスリーブ突起52とが接触する。なお、図6のTSはカップリングスプライン歯3aが第1クラッチギヤスプライン歯7aに当たるまでの移動量(以下、「トラベル量」という。)である。
(c)トラベル量分をストロークしている状態(図7)
同期が終了し、カップリングスプライン歯3aが、すり抜け開始点であるw点の位置から第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aへ到達するまでトラベル量TS分をストロークしている状態では、摩擦力発生機構5の摩擦プレート51の斜面51dをカップリングスリーブ突起52により押すことで、摩擦プレート51は円環スプリング53を中心として傾動する。
したがって、図7に示すように、摩擦プレート51の板面に設定している摩擦材54が、軸方向に対向する第1クラッチギヤ7のギヤ端面7cに圧接し、両者54,7cの圧接面にて大きな摩擦力が発生し、シンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との相対回転を抑制する。
(d)トラベル量分をストロークした状態(図8)
そして、カップリングスプライン歯3aが、第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けてトラベル量TS分をストロークし、カップリングスプライン歯3aのチャンファ面と第1クラッチギヤスプライン歯7aのチャンファ面とが接触する位置まで達すると、図8に示すように、摩擦力発生機構5の摩擦プレート51の斜面51dをカップリングスリーブ突起52により押す力が弱まる。そして、さらにカップリングスプライン歯3aがストロークし、カップリングスプライン歯3aと第1クラッチギヤスプライン歯7aとの噛み合いを開始すると、摩擦プレート51の斜面51dをカップリングスリーブ突起52により押す力が無くなる。
すなわち、トラベル量TSをストロークする間、言い換えると、摩擦プレート51の先端平面がカップリングスリーブ突起52の先端平面により引き摺られている間、摩擦材54とギヤ端面7cとの間で摩擦力が発生しているため、シンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との同期崩れは発生しない。つまり、カップリングスリーブ突起52の軸方向長さLは、図8に示すように、トラベル量TS以上の長さに設定される。
(e)シフト完了状態(図9)
カップリングスプライン歯3aが、トラベル量TS分をストロークした後、第1クラッチギヤスプライン歯7aをすり抜け、図9に示すように、カップリングスプライン歯3aと第1クラッチギヤスプライン歯7aとが完全に噛み合った状態になると、シフトを完了する。
このカップリングスプライン歯3aが第1クラッチギヤスプライン歯7aをすり抜ける段階では、図9の下半分に示すように、摩擦力発生機構5の摩擦プレート51とカップリングスリーブ突起52とは離れた位置にある。なお、摩擦プレート51に設けられた倒れ防止突起55は、シフト完了後、図9の下半分の矢印に示すように、シフトポジションを抜く時に、摩擦プレート51が抜く方向(シンクロハブ2の方向)に倒れないようにする役目を果たす。
[2段入り荷重防止作用]
上記のように、摩擦力発生機構5は、カップリングスプライン歯3aが、ボークリングスプライン歯6aと噛み合った状態からボークリングスプライン歯6aをすり抜けてクラッチギヤスプライン歯7aと噛み合う状態へ切り換わる間、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との間に摩擦力を発生させる。言い換えると、同期のための摩擦トルクが抜けてしまう間、摩擦トルクの抜けを補完するように摩擦力を発生する作用を示す。このため、トラベル量分のストローク域にてシンクロハブ2とクラッチギヤ7との間の相対回転が抑制されることになり、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との相対回転を原因とする衝撃的な噛み合いが解消され、従来の同期装置において課題となっていた2段入り荷重の発生を防止することができる。
そして、摩擦力発生機構5は、シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11とが軸方向に対向する隙間位置に配置された摩擦プレート51と、前記カップリングスリーブ3に設けられたカップリングスリーブ突起52と、を基本構成とし、カップリングスリーブ3のクラッチギヤ方向へのストロークを利用して摩擦プレート51を傾転させる機構である。このため、構成部品点数を少なくし、かつ、装置の軸方向寸法を拡大することなく、摩擦プレート51とカップリングスリーブ突起52との設定により、摩擦プレート51を傾転させるカップリングスリーブ3のストローク域を管理するだけで、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との間の相対回転を確実に抑制することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の変速機の同期装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) シンクロハブ2に軸方向移動可能にスプライン嵌合されたカップリングスリーブ3のストロークに伴って第1ボークリング6を押し、第1ボークリングコーン面6bと第1クラッチギヤコーン面7bとの間で発生する摩擦トルクにより同期が開始され、同期が終了すると、カップリングスプライン歯3aは、第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aと噛み合うことでシフトを完了する変速機の同期装置において、前記カップリングスプライン歯3aが、前記第1ボークリングスプライン歯6aと噛み合った状態から第1ボークリングスプライン歯6aをすり抜けて第1クラッチギヤスプライン歯7aと噛み合う状態へ切り換わる間、前記シンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との間の相対回転を抑制する相対回転抑制手段を設けたため、カップリングスプライン歯3aと第1クラッチギヤスプライン歯7aとが噛み合う際、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との相対回転を原因とする2段入り荷重の発生を防止することができる。
(2) 前記相対回転抑制手段は、前記シンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との間に摩擦力を発生させる摩擦力発生機構5であるため、構成部品の増加数を少なくしながら、摩擦制動作用によりシンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との相対回転を抑制することができる。
(3) 前記摩擦力発生機構5は、シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11とが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブ2に対し傾転可能に支持された摩擦プレート51と、前記カップリングスリーブ3に設けられ、カップリングスリーブ3がクラッチギヤ7,11方向にストロークするときに前記摩擦プレート51との係合により摩擦プレート51を傾転させ、前記シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11との間に摩擦力を発生させるカップリングスリーブ突起52と、を有するため、装置の軸方向寸法を拡大することなく、摩擦プレート51とカップリングスリーブ突起52との設定により、摩擦プレート51を傾転させるカップリングスリーブ3のストローク域を管理するだけで、同期終了したすり抜け開始点wからトラベル量TSをストロークする間、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との間の相対回転を確実に抑制することができる。
(4) 前記摩擦力発生機構5は、互いに軸方向に対向する前記摩擦プレート51の板面に摩擦材54を設定しているため、より強力な摩擦力を発生させることができると共に、耐摩耗性を有する摩擦材54を使用することで、摩擦力発生機構5の寿命を向上させることができる。
(5) 前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、シンクロハブ2方向への倒れを防止する倒れ防止突起55を有するため、摩擦プレート51の中立位置を維持して、摩擦プレート51の役割を常に発揮させることができる。
(6) 前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、カップリングスリーブ3の内側に配置されるインサートキー4に接触すると共に、該インサートキー4を外径方向に付勢する円環スプリング53に対し傾動可能に支持されているため、摩擦プレート51がインサートキー4を付勢するスプリング機能を併せ持ち、通常の同期装置に使用しているスプレッドスプリングを廃止することができる。
(7) 前記摩擦力発生機構5の摩擦プレート51は、シンクロハブ2とスプリング受けスペーサ56,57により形成される環状溝に配置される円環スプリング53の周面に対し、両角を面取りした半円弧支持部51bを嵌合させることにより傾転可能に支持しているため、摩擦プレート51の周辺部品であるシンクロハブ2やスプリング受けスペーサ56,57との干渉を防止することができ、さらに、摩擦プレート51が周辺部品との干渉による傾動不良も防止することができる。
実施例2は、相対回転抑制手段として、実施例1の摩擦力発生機構に代え、ボークリングに対してクラッチギヤ方向に押付力を発生する押付力発生機構を用いた例である。
すなわち、図10に示すように、実施例2の相対回転抑制手段は、前記ボークリング6,10に対しクラッチギヤ7,11方向に押付力を発生させる押付力発生機構5’である。前記押付力発生機構5’は、シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11とが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブ2に対し傾転可能に支持された押付プレート51’(第2の板状部材)と、前記カップリングスリーブ3に設けられ、カップリングスリーブ3がクラッチギヤ7,11方向にストロークするときに前記押付プレート51’との係合により押付プレート51’を傾転させ、前記ボークリング6,10に対しクラッチギヤ7,11方向に押付力を発生させるカップリングスリーブ突起52’(第2の係合部材)と、を有する。なお、他の構成は実施例1と同様であるので、同一構成には図面に同一符号を付して説明を省略する。
作用を説明すると、実施例2の同期装置では、押付力発生機構5’は、カップリングスプライン歯3aが、ボークリングスプライン歯6aと噛み合った状態(図11)からボークリングスプライン歯6aをすり抜けてクラッチギヤスプライン歯7aと噛み合う状態へ切り換わる間、第1ボークリング6に対し第1クラッチギヤ7方向に押付力を発生させる。言い換えると、同期中は第1ボークリングコーン面6bと第1クラッチギヤコーン面7bとの間で発生していた摩擦トルクが、同期終了のタイミングで抜けてしまうのに対し、押付力発生機構5’により第1ボークリング6を押すという追加同期作用により、同期終了時点から両コーン面6b,7b間で摩擦トルクが抜けるのを補完する。このため、同期終了したすり抜け開始点wからトラベル量TS分のストローク域にてシンクロハブ2とクラッチギヤ7との間の相対回転が抑制されることになり、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との相対回転を原因とする衝撃的な噛み合いが解消され、従来の同期装置において課題となっていた2段入り荷重の発生を防止することができる。なお、他の作用については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例2の変速機の同期装置にあっては、実施例1の(1),(4),(5),(6),(7)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(8) 前記相対回転抑制手段は、前記ボークリング6,10に対しクラッチギヤ7,11方向に押付力を発生させる押付力発生機構5’であるため、構成部品の増加数を少なくしながら、インサートキー4に代わって第1ボークリング6を押す追加同期作用によりシンクロハブ2と第1クラッチギヤ7との相対回転を抑制することができる。
(9) 前記押付力発生機構5’は、シンクロハブ2とクラッチギヤ7,11とが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブ2に対し傾転可能に支持された押付プレート51’と、前記カップリングスリーブ3に設けられ、カップリングスリーブ3がクラッチギヤ7,11方向にストロークするときに前記押付プレート51’との係合により押付プレート51’を傾転させ、前記ボークリング6,10に対しクラッチギヤ7,11方向に押付力を発生させるカップリングスリーブ突起52’と、を有するため、装置の軸方向寸法を拡大することなく、押付プレート51’とカップリングスリーブ突起52’との設定により、押付プレート51’を傾転させるカップリングスリーブ3のストローク域を管理するだけで、同期終了したすり抜け開始点wからトラベル量TSをストロークする間、シンクロハブ2とクラッチギヤ7との間の相対回転を確実に抑制することができる。
実施例3は、実施例2の押付力発生機構をベースとし、押付プレートに押付突起を追加設定した例である。
すなわち、図12に示すように、実施例3の押付力発生機構5"は、押付プレート51’のボークリング側対向面に押付突起58を設定した。ここで、実施例3では、押付プレート51’に押付突起58を設定する例を示したが、ボークリング側に押付突起を設定するようにしても良いし、また、押付プレートとボークリングの両者に押付突起を設定する例としても良い。なお、他の構成は実施例2と同様であるので、同一構成には図面に同一符号を付して説明を省略する。
作用を説明すると、実施例3の同期装置では、押付力発生機構5’は、カップリングスプライン歯3aが、ボークリングスプライン歯6aと噛み合った状態(図13)からボークリングスプライン歯6aをすり抜けてクラッチギヤスプライン歯7aと噛み合う状態へ切り換わる間、第1ボークリング6に対し第1クラッチギヤ7方向に押付力を発生させるため、実施例2と同様に、2段入り荷重の発生を防止することができる。加えて、押付プレート51’に押付突起58を有することで、ボークリング6,10やクラッチギヤ7,11の軸方向寸法が変更されても確実にボークリング6,10を押し付けることができ、この結果、設計の自由度が向上する。なお、他の作用については、実施例2と同様であるので説明を省略する。
次に、効果を説明する。
実施例3の変速機の同期装置にあっては、実施例2の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
(10) 前記相対回転抑制手段は、押付プレート51’のボークリング側対向面に押付突起58を設定した押付力発生機構5"としたため、ボークリング6,10やクラッチギヤ7,11の軸方向寸法が変更されても確実にボークリング6,10を押し付けることができ、この結果、設計の自由度向上を達成することができる。
以上、本発明の変速機の同期装置を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、相対回転抑制手段として、実施例1では摩擦力発生機構51を示し、実施例2では押付力発生機構51’を示し、実施例3では押付力発生機構51"を示したが、要するに、カップリングスプライン歯が、ボークリングスプライン歯と噛み合った状態からボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合う状態へ切り換わる間、シンクロハブとクラッチギヤとの間の相対回転を抑制する手段であれば、その具体的な構成は、実施例1〜3の構成に限られるものではなく、様々な変更や追加を行っても良い。
本発明の変速機の同期装置は、シフトレバーをドライバーによる手動操作により変速する手動変速機の同期装置として適用できるし、また、エンジンとの間に制御型クラッチを有し、変速時、制御型クラッチを切り離している間にアクチュエータにより変速するいわゆる自動MTと呼ばれる変速機の同期装置としても適用できる。
実施例1の変速機の同期装置を示す全体断面図である。 実施例1の同期装置における摩擦力発生機構を示す縦断正面図である。 実施例1の同期装置における摩擦力発生機構の摩擦プレートを示す図である。 実施例1の同期装置における摩擦力発生機構のカップリングスリーブ突起を示す図である。 実施例1の同期装置におけるシフト開始&インデックス時の変速同期作用説明図である。 実施例1の同期装置における同期及び同期終了時の変速同期作用説明図である。 実施例1の同期装置におけるカップリングスリーブがトラベル量をストロークしている状態時の変速同期作用説明図である。 実施例1の同期装置におけるカップリングスリーブがトラベル量をストロークした状態の変速同期作用説明図である。 実施例1の同期装置におけるシフト完了状態の変速同期作用説明図である。 実施例2の変速機の同期装置を示す全体断面図である。 実施例2の同期装置における変速同期作用説明図である。 実施例3の変速機の同期装置を示す全体断面図である。 実施例3の同期装置における変速同期作用説明図である。
符号の説明
1 メインシャフト
2 シンクロハブ
21 ハブ凹部
3 カップリングスリーブ
3a カップリングスプライン歯
4 インサートキー
5 摩擦力発生機構(相対回転抑制手段)
5’,5" 押付力発生機構(相対回転抑制手段)
51 摩擦プレート(第1の板状部材)
51’ 押付プレート(第2の板状部材)
52 カップリングスリーブ突起(第1の係合部材)
52’ カップリングスリーブ突起(第2の係合部材)
53 円環スプリング
54 摩擦材
55 倒れ防止突起
56 第1スプリング受けスペーサ
57 第2スプリング受けスペーサ
58 押付突起
6 第1ボークリング
6a 第1ボークリングスプライン歯
6b 第1ボークリングコーン面
7 第1クラッチギヤ
7a 第1クラッチギヤスプライン歯
7b 第1クラッチギヤコーン面
8 第1ギヤ
9 第1ベアリング
10 第2ボークリング
11 第2クラッチギヤ
12 第2ギヤ
13 第2ベアリング
14 ギヤブッシュ

Claims (10)

  1. シンクロハブに軸方向移動可能にスプライン嵌合されたカップリングスリーブのストロークに伴ってボークリングを押し、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間で発生する摩擦トルクにより同期が開始され、同期が終了すると、カップリングスプライン歯は、第1ボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合うことでシフトを完了する変速機の同期装置において、
    前記カップリングスプライン歯が、前記ボークリングスプライン歯と噛み合った状態からボークリングスプライン歯をすり抜けてクラッチギヤスプライン歯と噛み合う状態へ切り換わる間、前記シンクロハブとクラッチギヤとの間の相対回転を抑制する相対回転抑制手段を設けたことを特徴とする変速機の同期装置。
  2. 請求項1に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、前記シンクロハブとクラッチギヤとの間に摩擦力を発生させる手段であることを特徴とする変速機の同期装置。
  3. 請求項2に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、シンクロハブとクラッチギヤとが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブに対し傾転可能に支持された第1の板状部材と、前記カップリングスリーブに設けられ、カップリングスリーブがクラッチギヤ方向にストロークするときに前記第1の板状部材との係合により第1の板状部材を傾転させ、前記シンクロハブとクラッチギヤとの間に摩擦力を発生させる第1の係合部材と、を有することを特徴とする変速機の同期装置。
  4. 請求項3に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、互いに軸方向に対向する前記第1の板状部材の板面と前記クラッチギヤのギヤ端面のうち、少なくとも一方の面に摩擦材を設定したことを特徴とする変速機の同期装置。
  5. 請求項1に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、前記ボークリングに対してクラッチギヤ方向に押付力を発生させる手段であることを特徴とする変速機の同期装置。
  6. 請求項5に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、シンクロハブとボークリングとが軸方向に対向する隙間位置に配置され、前記シンクロハブに対し傾転可能に支持された第2の板状部材と、前記カップリングスリーブに設けられ、カップリングスリーブがクラッチギヤ方向にストロークするときに前記第2の板状部材との係合により第2の板状部材を傾転させ、前記ボークリングに対してクラッチギヤ方向に押付力を発生させる第2の係合部材と、を有することを特徴とする変速機の同期装置。
  7. 請求項6に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段は、互いに軸方向に対向する前記第2の板状部材の板面と前記ボークリングのリング端面のうち、少なくとも一方の面に押付突起を設定したことを特徴とする変速機の同期装置。
  8. 請求項3,4,6,7の何れか1項に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段の板状部材は、シンクロハブ方向への倒れを防止する倒れ防止突起を有することを特徴とする変速機の同期装置。
  9. 請求項3,4,6,7,8の何れか1項に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段の板状部材は、前記カップリングスリーブの内側に配置されるインサートキーに接触すると共に、該インサートキーを外径方向に付勢する円環スプリングに対し傾動可能に支持されていることを特徴とする変速機の同期装置。
  10. 請求項9に記載された変速機の同期装置において、
    前記相対回転抑制手段の板状部材は、前記シンクロハブとスプリング受けスペーサにより形成される環状溝に配置される円環スプリングの周面に対し、両角を面取りした半円弧支持部を嵌合させることにより傾転可能に支持したことを特徴とする変速機の同期装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111941379A (zh) * 2020-08-26 2020-11-17 江西昌河航空工业有限公司 一种用于异形空心型材划线的装置
CN112049902A (zh) * 2020-09-07 2020-12-08 中国航发贵阳发动机设计研究所 一种可分离式的手传动装置

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