JP2006009836A - ボールねじ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ねじ軸またはナットを高速で回転させた場合でも良好な音響性能を得ることのできるボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボール16の直径をDw、ナット13に形成されたボール戻り用貫通路17の直径をD1としたとき、ボール戻り用貫通路17は、(D1−Dw)≦0.1Dwが成立するようにナット13に形成されている。また、ボール16の直径をDw、ボール転向部材18に形成されたボール転向路19の直径をD2としたとき、ボール転向路19は、(D2−Dw)≦0.1Dwが成立するようにボール転向部材18に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転運動を直線運動に変換するボールねじ装置の改良に関する。
工作機械の送り機構などで使用されるボールねじ装置は、ねじ軸と、このねじ軸の外周面に形成されたボールねじ溝と対向するボールねじ溝を内周面に有するナットと、このナットとねじ軸のボールねじ溝間に形成されたボール負荷転動路をねじ軸またはナットの回転運動に伴って転動する多数のボールとを備えて構成されている。
このようなボールねじ装置のナットは例えばねじ軸の回転によりボールがボール負荷転動路を転動するとねじ軸の軸方向に相対直線運動するが、ナットの相対的直線運動を継続させるためには、ボール負荷転動路を転動したボールを循環させてボール負荷転動路を繰り返し転動させる必要がある。しかし、ボールを循環させる部品として、ボール循環チューブを使用したボールねじ装置では、ボールの公転速度が大きくなるにつれて騒音や振動などが発生し易くなるなどの問題がある。
そこで、ボールを循環させるためのボール戻り用貫通路をねじ軸の軸方向に沿ってナットに形成するとともに、ボール負荷転動路とボール戻り用貫通路の双方に連通するボール転向路を有するボール転向部材をナットの両端部に設けたものが提案されている(特許文献1参照)。
実用新案登録第3034052号明細書
このようなボールねじ装置では、ボール循環チューブを使用したものと比較して騒音や振動等の発生を抑制することができるが、ボール戻り用貫通路の直径がボールの直径に対して大き過ぎるとボール戻り用貫通路でのボールの遊び(ボール戻り用貫通路とボールとの隙間量)が大きくなる。このため、ボール戻り用貫通路内でボールの配列が千鳥状になり易くなり、ねじ軸またはナットを高速で回転させるとボール戻り用貫通路内のボールがボール戻り用貫通路の内面に衝突しながら進行するため、音響性能が低下するという問題があった。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ねじ軸またはナットを高速で回転させた場合でも良好な音響性能を得ることのできるボールねじ装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ねじ軸と、このねじ軸の外周面に形成されたボールねじ溝と対向するボールねじ溝を内周面に有するナットと、前記ねじ軸と前記ナットのボールねじ溝間に形成されたボール負荷転動路を前記ねじ軸または前記ナットの回転運動に伴って転動する多数のボールとを備えてなり、かつ前記ボールを循環させるためのボール戻り用貫通路を前記ねじ軸の軸方向に沿って前記ナットに形成するとともに、前記ボール負荷転動路と前記ボール戻り用貫通路の双方に連通するボール転向路を有するボール転向部材を前記ナットの両端部に設けたボールねじ装置において、前記ボールの直径をDw、前記ボール戻り用貫通路の直径をD1としたとき、D1−DwをDwの3%以上10%以下としたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載のボールねじ装置において、前記ボールの直径をDw、前記ボール転向路の直径をD2としたとき、D2−DwをDwの10%以下としたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のボールねじ装置において、前記ボールより軟質の材料からなるスペーサを隣り合うボール間に配置したことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3記載のボールねじ装置において、前記スペーサが前記ボールより小さい直径で円板状に形成されていることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項3記載のボールねじ装置において、前記スペーサが前記ボールより小さい直径で球状に形成されていることを特徴とする。
本発明に係るボールねじ装置によれば、ボールの直径をDw、ボール戻り用貫通路の直径をD1としたとき、D1−DwをDwの3%以上10%以下としたことにより、ボール戻り用貫通路内でボールの配列が千鳥状になることが大幅に低減されるため、ねじ軸またはナットを高速で回転させた場合でも良好な音響性能を得ることができる。また、ボール戻り用貫通路内でボールの競合いが発生することを抑制できるので、ボールねじ装置の作動性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。同図において、符号11は本発明の第1の実施形態に係るボールねじ装置のねじ軸であって、このねじ軸11の外周面にはボールねじ溝12が形成されている。また、符号13はねじ軸11のボールねじ溝12と対向するボールねじ溝14を内周面に有するナットであって、このナット13のボールねじ溝14とねじ軸11のボールねじ溝12との間には、ボールねじ溝12,14間に形成された螺旋状のボール負荷転動路15をねじ軸11又はナット13の回転運動に伴って転動する多数のボール16が設けられている。
ナット13には、ボール負荷転動路15を転動したボール16を循環させるためのボール戻り用貫通路17がねじ軸11の軸方向に沿って形成されているとともに、ボール転向部材18がナット13の両端部に組み込まれている。このボール転向部材18は合成樹脂から形成されており、各ボール転向部材18には、ボール負荷転動路15およびボール戻り用貫通路17の双方に連通するボール転向路19(図2参照)が形成されている。
ボール16は例えば鉄鋼材料で形成されており、各ボール16の間には、ボール16より軟質の材料(例えば合成樹脂等)からなるスペーサ20が設けられている。このスペーサ20はボール16より小さい直径で円板状に形成されており、各スペーサ20の両端には、凹球面部21(図3参照)がボール16の直径より大きい曲率で形成されている。なお、凹球面部21の中央部には貫通孔22が設けられている。
ボール戻り用貫通路17は、ボール16の直径をDw、ボール戻り用貫通路17の直径をD1とすると、次式(1)が成り立つようにナット13に形成されている。
(D1−Dw)≦0.1Dw ‥‥(1)
また、ボール転向路19は、ボール16の直径をDw、ボール転向路19の直径をD2とすると、次式(2)が成り立つようにボール転向部材18に形成されている。
(D2−Dw)≦0.1Dw ‥‥(2)
上述のように、ボール16の直径をDw、ボール戻り用貫通路17の直径をD1としたとき、D1−DwをDwの10%以下としたことにより、ボール戻り用貫通路17内でのボール16の遊びが小さくなる。これにより、ボール16の配列がボール戻り用貫通路17内で千鳥状になることが大幅に低減されるため、ねじ軸11またはナット13を高速で回転させた場合でも良好な音響性能を得ることができる。また、ボール戻り用貫通路17内でボール16の競合いが発生することを抑制できるので、ボールねじ装置の作動性を向上させることができる。
また、上述した実施形態ではボール16の直径をDw、ボール転向路19の直径をD2としたとき、D2−DwをDwの10%以下としたことにより、ボール転向路19内でのボール16の遊びが小さくなり、ボール16の配列がボール転向路19内で千鳥状になることが大幅に低減されるため、ねじ軸11またはナット13を高速で回転させた場合でも良好な音響性能を得ることができる。また、ボール転向路19内でボール16の競合いが発生することを抑制できるので、ボールねじ装置の作動性を向上させることができる。
さらに、上述した実施形態ではボール16より軟質の材料からなるスペーサ20を隣り合うボール16,16間に配置したことで、後続のボールが先行のボールに衝突することを防止できるので、ボール同士の衝突による騒音や振動等の発生を抑制することができる。
上述した効果を確認するために、本発明者は、ねじ軸の軸芯から400mmの高さ位置にマイクロフォンを設置し、使用試験機名:NSK製ボールねじ音響測定試験機、予圧荷重:1800N、試験荷重(加速度荷重):1800N、最高回転数:3000min-1、ストローク800mm、潤滑:VG♯68(出光興産)の試験条件でボールねじ装置の音響測定試験を行った。その試験結果を図4に示す。なお、試験用ボールねじ装置としては、NSK製ボールねじ(呼び番:40×12×1000−C5)を使用した。
図4において、横軸はボール戻り用貫通路17とボール16及びボール転向路19とボール16との隙間量S(=D1−Dw、D2−Dw)を示し、縦軸は従来のボールねじ装置を作動させたときの音圧を1とした場合の音響比率を示している。また、TP1,TP2,TP3は上述した仕様のボールねじ装置を使用して音響測定試験を実施した結果を示している。
図4に示されるように、隙間量SがDw/8を超えると音響比率が大きく低下するが、隙間量SがDw/8以下、好ましくはDw/10以下の場合には音響比率の低下が小さいことがわかる。したがって、ボール戻り用貫通路17とボール16及びボール転向路19とボール16との隙間量SをDw/8以下、好ましくはDw/10以下にすることで、騒音や振動をさらに低く抑えることができる。
また、隙間量SがDwの3%未満であるとボール転向部材18とナット13との取付け誤差によってボール16の引っ掛かりが生じてくるので、隙間量SをDwの3%以上10%以下とすることが好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、上述した第1の実施形態ではスペーサ20をボール16より小さい直径で円板状に形成したが、図5に示す第2の実施形態のように、スペーサ20をボール16より小さい直径で球状に形成してもよい。
本発明の第1の実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。 図1に示すボール転向部材の斜視図である。 図1に示すスペーサの断面図である。 ボールとボール戻り用貫通路との隙間量とボールねじの音響レベルとの関係を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係るボールねじ装置の断面図である。
符号の説明
11 ねじ軸
12,14 ボールねじ溝
13 ナット
15 ボール負荷転動路
16 ボール
17 ボール戻り用貫通路
18 ボール転向部材
19 ボール転向路
20 スペーサ

Claims (5)

  1. ねじ軸と、このねじ軸の外周面に形成されたボールねじ溝と対向するボールねじ溝を内周面に有するナットと、前記ねじ軸と前記ナットのボールねじ溝間に形成されたボール負荷転動路を前記ねじ軸または前記ナットの回転運動に伴って転動する多数のボールとを備えてなり、かつ前記ボールを循環させるためのボール戻り用貫通路を前記ねじ軸の軸方向に沿って前記ナットに形成するとともに、前記ボール負荷転動路と前記ボール戻り用貫通路の双方に連通するボール転向路を有するボール転向部材を前記ナットの両端部に設けたボールねじ装置において、
    前記ボールの直径をDw、前記ボール戻り用貫通路の直径をD1としたとき、D1−DwをDwの3%以上10%以下としたことを特徴とするボールねじ装置。
  2. 前記ボールの直径をDw、前記ボール転向路の直径をD2としたとき、D2−DwをDwの10%以下としたことを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
  3. 前記ボールより軟質の材料からなるスペーサを隣り合うボール間に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のボールねじ装置。
  4. 前記スペーサは、前記ボールより小さい直径で円板状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のボールねじ装置。
  5. 前記スペーサは、前記ボールより小さい直径で球状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のボールねじ装置。
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