JP2006002805A - 可変伝達比ユニット、これを利用したギア比可変パワーステアリング装置及び、ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法 - Google Patents

可変伝達比ユニット、これを利用したギア比可変パワーステアリング装置及び、ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】小型、低コストの可変伝達比ユニット、この可変伝達比ユニットを備えたギア比可変パワーステアリング装置及び、小型、低コストの可変伝達比ユニットを採用するために有効なギア比可変パワーステアリング装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】ギア比可変パワーステアリング装置は、第1のステアリングシャフト321と第2のステアリングシャフト322との間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニット7を備えたものである。可変伝達比ユニット7は、第1のステアリングシャフト321と一体回転する第1のサーキュラスプライン791a及び第2のステアリングシャフト322と一体回転する第2のサーキュラスプライン791bを含む減速機79を有している。第1のサーキュラスプライン791aと第2のサーキュラスプライン791bとの間には、その相対回転を許容又は規制可能なように構成されたロック機構8を介設してある。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転伝達比を変更する可変伝達比ユニット、この可変伝達比ユニットを利用したギア比可変パワーステアリング装置、特に、可変伝達比ユニットの耐久性を高めたギア比可変パワーステアリング装置及び、可変伝達比ユニットの耐久性を向上するためのギア比パワーステアリング装置の制御方法に関する。
従来より、操舵ハンドルとステアリングボックスとの間に可変伝達比ユニットを配置し、この可変伝達比ユニットの作用により、ステアリングギア比を変更し得るように構成されたギア比可変パワーステアリング装置がある。上記可変伝達比ユニットとしては、例えば、波動歯車減速機などの減速機と、この減速機に連結されたモータとを有してなり、モータから波動歯車減速機に入力する回転数に応じてステアリングギア比が変動するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、上記従来のギア比可変パワーステアリング装置では、次のような問題がある。すなわち、上記可変伝達比ユニットでは、上記操舵ハンドルから上記ステアリングボックスに至る回転伝達経路に作用する軸トルクに耐え得るよう、上記減速機等の内部機構の強度を高く確保する必要があった。一方、転舵輪が縁石等に当たった場合や、転舵輪が路面の穴等に落ちた場合などには、通常のハンドル操作時に回転伝達経路に作用する軸トルクを大きく上回る過大な軸トルクが発生することがある。そこで、上記従来のギア比可変パワーステアリング装置では、上記の過大な軸トルクに耐え得るように、上記減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構の強度を確保する必要があった。それ故、上記可変伝達比ユニットの大型化や、コストアップが招来されていた。
特開平10−324263号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、小型、低コストの可変伝達比ユニット、この可変伝達比ユニットを備えたギア比可変パワーステアリング装置及び、小型、低コストの可変伝達比ユニットを採用した際に有効となるギア比可変パワーステアリング装置の制御方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、第1の回転シャフトと一体回転する第1の回転要素及び第2の回転シャフトと一体回転する第2の回転要素を含む減速機と、モータ出力シャフトを上記減速機に連結したモータとを有してなり、上記第1の回転シャフトと上記第2の回転シャフトとの間の回転伝達比を変更可能に構成した可変伝達比ユニットにおいて、
上記第1の回転シャフトから上記第1の回転要素までの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第1回転体と、上記第2の回転シャフトから上記第2の回転要素までの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第2回転体との間には、その相対回転を許容又は規制可能なように構成されたロック機構を介設してあることを特徴とする可変伝達比ユニットにある(請求項1)。
上記第1の発明の可変伝達比ユニットでは、上記第1の回転シャフトから上記第1の回転要素までの回転伝達経路を構成する上記第1回転体と、上記第2の回転シャフトから上記第2の回転要素までの回転伝達経路を構成する上記第2回転体との間には、その相対回転を許容又は規制可能なように構成されたロック機構を介設してある。
そのため、上記可変伝達比ユニットでは、上記ロック機構を用いて上記第1回転体と上記第2回転体との相対回転を規制することにより、上記減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構に外部から作用するトルクを遮断することができる。それ故、例えば、上記各回転シャフトに過大な軸トルクが発生した際に、上記減速機等へのトルク伝達を遮断するように上記ロック機構を制御できれば、相対的に、上記減速機等に要求される機械的強度を低減できる。そして、これにより、減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構を小型化、低コストでき、可変伝達比ユニット全体の小型化、軽量化、低コスト化を実現できる。
以上のように、上記第1の発明の可変伝達比ユニットは、各回転シャフトに発生し得る過大な軸トルクから減速機等の内部機構を保護する上記ロック機構を備えてなり、これにより、小型化、低コスト化を実現した優れた品質を有するものである。
第2の発明は、ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットとを備えたギア比可変パワーステアリング装置において、
上記可変伝達比ユニットは、請求項1〜5のいずれか1項に記載されたものであり、
請求項1〜5のいずれか1項においける第1の回転シャフト及び第2の回転シャフトが、それぞれ、上記第1のステアリングシャフト、上記第2のステアリングシャフトであることを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置にある(請求項6)。
上記第2の発明のギア比可変パワーステアリング装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の上記ロック機構を備えた可変伝達比ユニットを利用して構成したものである。この可変伝達比ユニットは、小型、低コストであって、さらに、耐久性が高いものである。そのため、この可変伝達比ユニットを利用した上記ギア比可変パワーステアリング装置は、小型、低コストであると共に、長期間の使用に渡って安定した特性を発揮し得る優れた品質を有するものとなる。
第3の発明は、ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットと、上記各ステアリングシャフトに作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段とを備えたギア比可変パワーステアリング装置の制御方法において、
上記ギア比可変パワーステアリング装置は、請求項6記載のものであり、
上記トルク計測手段を用いて計測した軸トルクと、予め設定されたしきい値との比較により、過大な上記軸トルクが入力されたことを検知する過大入力検知ステップと、
ロック機構を用いて、上記第1のステアリングシャフトと上記第2のステアリングシャフトとの相対回転を規制するトルク遮断ステップとを実施することを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法にある(請求項7)。
上記第3の発明のギア比可変パワーステアリング装置の制御方法は、請求項6に記載されたギア比可変パワーステアリング装置に適用するものである。そして、この制御方法では、上記過大入力検知ステップにより上記過大軸トルクが入力されたか否かを検知し、上記トルク遮断ステップでは、上記ロック機構により上記第1のステアリングシャフトと上記第2のステアリングシャフトとの相対回転を規制することにより、上記減速機等、上記可変伝達比ユニットの内部機構への過大な軸トルクのトルク伝達を遮断する。
そのため、上記第3の発明のギア比可変パワーステアリング装置の制御方法によれば、上記のような過大な軸トルクが作用したとき、上記ロック機構を動作させることで、上記減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構を、確実性高く保護することができる。
したがって、上記ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法によれば、相対的に、減速機等の可変伝達比ユニットの内部機構に要求される機械的強度を抑制でき、減速機等の内部機構及び可変伝達比ユニット全体を小型化、軽量化、低コスト化することができる。
第4の発明は、ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットと、上記各ステアリングシャフトに作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段とを備えたギア比可変パワーステアリング装置の制御方法において、
上記可変伝達比ユニットは、第1のステアリングシャフトと一体回転する第1の回転要素及び第2のステアリングシャフトと一体回転する第2の回転要素を含む減速機と、モータ出力シャフトが上記減速機に連結されたモータとを有してなり、
上記トルク計測手段を用いて計測した軸トルク値と、予め設定されたしきい値である制御開始軸トルク値Taとの比較により、過大な上記軸トルクが入力されたことを検知する過大入力検知ステップと、
該過大入力検知ステップで検知された上記軸トルクの作用方向に対して逆回転方向に、上記第2のステアリングシャフトを回転させるよう、上記モータを回転制御することにより、上記軸トルクの大きさを抑制するトルク制御ステップとを実施することを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法にある(請求項8)。
上記第4の発明のギア比可変パワーステアリング装置の制御方法では、トルク計測手段を用いて計測した軸トルクに基づいて、過大な軸トルクの入力を検知する過大入力検知ステップと、該過大入力検知ステップで検知した過大軸トルクの作用方向に対して逆回転方向に、第2のステアリングシャフトを回転させるようにモータを回転制御することで、上記軸トルクの大きさを抑制するトルク制御ステップとを実施する。
そのため、上記第4の発明のギア比可変パワーステアリング装置の制御方法によれば、過大な軸トルクが入力されたときに上記トルク制御ステップに移行し、その軸トルクの大きさを抑制するように上記モータを回転制御する。これにより、上記軸トルクの大きさを抑制でき、過大な軸トルクから、可変伝達比ユニットや各ステアリングシャフトや上記ステアリングボックス等を保護することができる。
したがって、上記ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法によれば、相対的に、減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構に要求される機械的強度を抑制でき、減速機等の内部機構及び可変伝達比ユニット全体を小型化、低コスト化することができる。さらに、上記の制御方法によれば、軸トルクの大きさを抑制することで、操舵ハンドルに過大な回転トルクが作用するおそれを抑制して、車両走行時の安全性を向上させることができる。
さらに、上記軸トルクの大きさを抑制すれば、可変伝達比ユニットだけでなく、各ステアリングシャフトやステアリングボックス等、上記ギア比可変パワーステアリング装置を構成する機械部品に要求される機械的強度を低減させることができ、各機械部品を小型化、軽量化、低コスト化させることができる。そして、これにより、ギア比可変パワーステアリング装置の小型化、軽量化、低コスト化を実現することができる。
上記第1の発明においては、上記減速機は、上記モータ出力シャフトが連結されたウェーブジェネレータと、該ウェーブジェネレータに外挿されたフレクスプラインと、上記各回転要素として、該フレクスプラインの外周側に回転軸方向に隣り合って配置された一対のサーキュラスプラインとを含む波動歯車減速機よりなり、
上記第1回転体は、上記第1の回転要素である第1のサーキュラスプラインであり、上記第2回転体は、上記第2の回転要素である第2のサーキュラスプラインであることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記第1回転体としての第1のサーキュラスプラインと、上記第2回転体としての第2のサーキュラスプラインとの間に配設したロック機構を適宜制御することで、第1回転体と第2回転体との相対回転を許容あるいは規制することができる。そして、第1回転体と第2回転体との相対回転を許容したときには、可変伝達比ユニットを用いた回転伝達比の変更が可能となり、上記相対回転を規制したときには、上記減速機等、可変伝達比ユニットの内部機構への伝達トルクを遮断することができる。
また、上記減速機は、上記モータ出力シャフトが連結されたウェーブジェネレータと、該ウェーブジェネレータに外挿されたフレクスプラインと、上記各回転要素として、該フレクスプラインの外周側に回転軸方向に隣り合って配置された一対のサーキュラスプラインとを含む波動歯車減速機よりなり、
上記第1の回転シャフトと上記第1の回転要素とは、上記波動歯車減速機を収容するハウジングを介して連結されており、
上記第1回転体は、上記ハウジングであり、上記第2回転体は、上記第2の回転要素として、上記ハウジングの内周側に収容された一方の上記サーキュラスプラインであることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記第1回転体としてのハウジングと、上記第2回転体としての上記一方のサーキュラスプラインとの間に配置した上記ロック機構を適宜、制御することにより、第1回転体と第2回転体との相対回転を許容あるいは規制可能となる。
また、上記ロック機構は、ボールクラッチ機構であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、隣り合わせて配置された上記第1回転体と第2回転体との間に、上記ボールクラッチ機構を効率良く配置でき、上記ロック機構を追加したことによる上記可変伝達比ユニットの大型化や、コストアップを抑えることができる。
また、上記モータ出力シャフトの回転を許容又は規制可能なように構成されたモータロック機構を有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記第1回転体と上記第2回転体との相対回転を規制する上記ロック機構に加えて、上記モータの回転を規制するモータロック機構を可変伝達比ユニットに装備させることで、該可変伝達比ユニットを用いたシステムに何らかの異常が発生した場合の第1の回転シャフトと第2の回転シャフトとの結合における信頼性が向上するという効果が得られる。
上記第4の発明においては、上記ギア比可変パワーステアリング装置は、上記第1のステアリングシャフトの回転位置を計測する回転位置センサと、転舵輪の転舵角を計測する転舵角計測手段とを有してなり、
上記ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法においては、上記トルク制御ステップの後に、転舵輪を転舵する転舵角復帰ステップを行い、
該転舵角復帰ステップでは、上記トルク制御ステップの開始時に上記回転位置センサを用いて計測した第1の回転位置と、上記トルク制御ステップの終了時に上記回転位置センサを用いて計測した第2の回転位置との差分であるハンドル操作量に対応する操作転舵角を算出し、上記トルク制御ステップの開始時に上記転舵角計測手段を用いて計測した転舵角に、上記操作転舵角を加算した目標転舵角を設定し、該目標転舵角に従って上記転舵輪を転舵させることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記トルク制御ステップの後に、上記転舵角復帰ステップを実施することで、上記転舵輪の転舵角を元に戻すことができる。特に、上記トルク制御ステップの制御期間中に上記操舵ハンドルに入力された上記ハンドル操作量に対応する上記操作転舵角を重畳して上記目標転舵角を設定すれば、運転者が感じるステアリング操作感を向上することができる。
また、上記トルク制御ステップでは、可変伝達比ユニットについて許容される最高許容軸トルク値Tbよりも上記制御開始軸トルク値Taを低く設定してあり、上記過大軸トルクの大きさが該制御開始軸トルク値Ta以上となったとき、上記過大軸トルクの大きさが上記最高許容軸トルク値Tbを超えないように上記モータを回転制御することが好ましい(請求項10)。
この場合には、最高許容軸トルク値Tbよりも低い上記制御開始軸トルク値Taとを設定し、上記軸トルクが制御開始軸トルク値Ta以上となった時点で上記モータを回転制御すれば、上記軸トルクの立ち上がりに迅速に対応して、この軸トルクが到達する最大トルク値の大きさを、確実性高く最高許容軸トルク値Tb以下に抑制することができる。
また、上記最高許容軸トルク値Tb及び上記制御開始軸トルク値Taは、車速に応じて設定してあることが好ましい(請求項11)。
この場合には、車速に応じて、上記最高許容軸トルク値Tb及び上記制御開始軸トルク値Taとを変更することで、例えば、上記車速に応じて各トルク値が低くなるように設定すれば、高速走行時に生じた過大トルクによって発生するおそれがあるステアリング操作の不安定な状態を未然に回避し得るという作用効果がある。
(実施例1)
本例は、保護機構としてのロック機構8を備えた可変伝達比ユニット7を利用したギア比可変パワーステアリング装置1に関する例である。この内容について、図1〜図9を用いて説明する。
本例の可変伝達比ユニット7は、図1に示すごとく、第1の回転シャフト321と一体回転する第1の回転要素791a及び第2の回転シャフト322と一体回転する第2の回転要素791bを含む減速機79と、モータ出力シャフト705を減速機79に連結したモータ70とを有してなり、上記第1の回転シャフト321と上記第2の回転シャフト322との間の回転伝達比を変更可能に構成したものである。
この可変伝達比ユニット7では、第1の回転シャフト321から第1の回転要素791aまでの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第1回転体(本例では、第1の回転要素である第1のサーキュラスプライン。以下、第1のサーキュラスプライン791aと記載する。)と、第2の回転シャフト322から第2の回転要素791bまでの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第2回転体(本例では、第2の回転要素である第2のサーキュラスプライン。以下、第2のサーキュラスプライン791bと記載する。)との間には、その相対回転を許容又は規制可能なように構成されたロック機構8を介設してある。
そして、本例のギア比可変パワーステアリング装置1は、図2に示すごとく、ピニオンシャフト33とラックシャフト(図示略)とが係合したステアリングボックス35と、上記可変伝達比ユニット7とを有している。このギア比可変パワーステアリング装置1は、上記第1の回転シャフト321として操舵ハンドル31に連結された第1のステアリングシャフト(以下、第1のステアリングシャフト321と記載する。)を有し、上記第2の回転シャフト322としてピニオンシャフト33に連結された第2のステアリングシャフト(以下、第2のステアリングシャフト322と記載する。)を有している。
以下に、この内容について詳しく説明する。
上記可変伝達比ユニット7は、図1に示すごとく、操舵ハンドル31(図2)に連結された第1のステアリングシャフト321と、ピニオンシャフト33(図2)に連結された第2のステアリングシャフト322との間の回転伝達比を、上記減速機79としての波動歯車減速機(以下、波動歯車減速機79と記載する。)の作用により変更するように構成してある。
可変伝達比ユニット7は、図1に示すごとく、モータ70の回転を波動歯車減速機79に入力することにより、第1のステアリングシャフト321から第2のステアリングシャフト322へ回転動作を伝達する際の回転伝達比を変更可能なように構成してある。ここで、波動歯車減速機79は,図3に示すごとく,歯数が異なる一対のサーキュラスプライン791a、791bと、各サーキュラススプライン791a、791bの内周側に噛合するフレクスプライン793と,該フレクスプライン793の内周側に嵌合するウェーブジェネレータ792とを有するものである。
本例の可変伝達比ユニット7では,図1及び図3に示すごとく,第1のステアリングシャフト321は、ハウジング765を介してサーキュラスプライン791aと一体回転するように構成される。また、第2のステアリングシャフト322は、連結フランジ766を介してサーキュラスプライン791bと一体回転するように構成される。さらに、ハウジング765内部に固定されたモータ70のモータ出力シャフト705は,打ち込みキー795を介設してウェーブジェネレータ792を構成するカム796に圧入されている。
可変伝達比ユニット7は、図3に示すごとく、モータ70(図1)を駆動してウェーブジェネレータ792を回転することで、その回転を減速してサーキュラスプライン791bに伝達するように構成されている。なお、本例では、伝達比制御コントローラ60(図2参照。)を用いて、モータ70を制御し、可変伝達比ユニット7の回転伝達比を調節している。
さらに、可変伝達比ユニット7は、図1に示すごとく、その内部に、モータ70と隣り合って、ロータ701の回転角、すなわちモータ回転角を計測するためのレゾルバ78を有している。このレゾルバ78は、ロータ701と一体回転する回転子781と、該回転子781の外周側に位置するよう、ハウジング765の内周に固定したコイル782とを含む。そして、レゾルバ78は、回転子781の回転に応じて変化するコイル782の誘起電流を、伝達比制御コントローラ60(図2)に向けて出力するように構成してある。
特に、本例の可変伝達比ユニット7は、図1、図3及び図4に示すごとく、上記第1回転体としての第1のサーキュラスプライン791aと、上記第2回転体としての第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転を規制するロック機構8を備えている。本例では、このロック機構8として、第1のサーキュラスプライン791aの外表面のうち、第2のサーキュラスプライン791bに面する側面に形成した複数箇所のボール溝84と、2枚一対のボールガイド82a、82bと、これらボールガイド82a、82bに保持された状態でボール溝84に収容されたクラッチボール85を含むボールクラッチ機構(以下、ボールクラッチ機構8と記載する。)を構成してある。
ボール溝84(図1、図4)は、可変伝達比ユニット7の回転軸を中心とした円弧状に複数、形成してあり、その両端部には、次第に溝深さが浅くなるカム面841を有してなる。各ボールガイド82a、82bは、一対のサーキュラスプライン791a、791bが相互に対面する端面に沿う平板リング状の部材であり、周方向の1箇所に、径方向外方に向けて突出するアーム部825a、825bをそれぞれ有している。さらに、ボールガイド82a、82bは、周方向に隣り合う丸孔820a、820bと長孔821a、821bとの組み合わせを、上記各ボール溝84に対応して周方向に複数有している。
一対のボールガイド82a、82bは、可変伝達比ユニット7に組み付けられたとき、一方のボールガイド82aの丸孔820aが他方の長孔821bに連通し、一方の長孔821aが他方の丸孔820bに連通し、かつ、それぞれのアーム部825a、825bがロッド811を挟持した状態で周方向に隣り合うように構成されている。このとき、丸孔820aと長孔821bとの連通箇所及び、長孔821aと丸孔820bとの連通箇所の組み合わせにより、ボール保持部840が形成されている。そして、相互に連通する丸孔820a(b)と長孔821b(a)との連通箇所には、1個ずつクラッチボール85が保持される。
ハウジング765は、図1に示すごとく、その外周側における周方向の1箇所に、アーム部825a、825b及び、これらアーム部825a、825bを駆動するソレノイド81用のソレノイド収容部812を設けてなる。ソレノイド81は、先端に向かって次第に縮径する先端円錐形状を呈するロッド811を、電磁駆動により、その軸方向に進退させるように構成してある。なお、本例では、ロッド811の進退方向が、可変伝達比ユニット7の回転軸と略平行となるよう、ソレノイド81をソレノイド収容部812に配置してある。
また、図3に示すごとく、ソレノイド収容部812には、各ボールガイド82a、82bのアーム部825a、825bに対応して、一対のアーム部825a、825bのなす角が狭くなるように付勢するスプリング88を収容してある。したがって、本例のボールクラッチ機構8では、先端円錐形状のロッド811が突出すると、スプリング88の付勢力に対抗して一対のアーム部825a、825bのなす角が広くなるように各ボールガイド82a、82bが回転し、一方、ロッド811が後退すると、スプリング88の付勢力により押圧されて一対のアーム部825a、825bのなす角が狭くなるように各ボールガイド82a、82bが回転する。
次に、本例のボールクラッチ機構8の作用について説明する。このボールクラッチ機構8は、ロッド811が後退(図3の状態。)しているとき、図4(A)に示すごとく、上記第1のサーキュラスプライン791aに形成されたボール溝84の周方向距離に対して、ボール保持部840に保持した2個のクラッチボール85の周方向の間隔が十分に狭くなるように構成してある。そのため、ロッド811が後退しているときには、各クラッチボール85は、自由に回転、回動でき、それ故、第1回転体である第1のサーキュラスプライン791aに対して第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bが自由に相対回転することができる。
一方、ロッド811が突出(図5の状態。)すると、図4(B)に示すごとく、ボール溝84の両端のカム面841に対して、2個のクラッチボール85がそれぞれ押圧され、これにより、カム面841と第2のサーキュラスプライン791bの端面との間隙で、各クラッチボール85が挟圧される。そして、各クラッチボール85は、一対のサーキュラスプライン791a、791bの間隙で、その回転、回動を拘束される。そして、これにより、第1回転体である第1のサーキュラスプライン791aと、第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転が規制され、回転ロックされる。
次に、本例のギア比可変パワーステアリング装置1は、図6に示すごとく、制御に用いるセンサとして、車両の速度を計測する車速センサ510と、操舵ハンドル31(図2)の回転位置を計測する回転位置センサ310と、車両に作用するヨーレートを計測するヨーレートセンサ520と、第2のステアリングシャフト322に作用する軸トルクを計測する上記トルク計測手段としてのトルクセンサ320とを有している。
さらに、ギア比可変パワーステアリング装置1は、可変伝達比ユニット7を制御する伝達比制御コントローラ60と、流量制御弁40を制御するバルブ制御コントローラ50とを有している。伝達比制御コントローラ60及びバルブ制御コントローラ50は、図6に示すごとく、車速センサ510、回転位置センサ310、ヨーレートセンサ520及び、トルクセンサ320と共に、車両内のCAN(Control Area Network)網500に接続してある。
バルブ制御コントローラ50は、ギア比可変パワーステアリング装置1(図2参照。)の作動負荷に応じて、油圧ポンプ10からサーボバルブ30に向けて吐出する流量を増減するように構成してある。
伝達比制御コントローラ60は、車速、操舵ハンドル31(図2)の回転位置及びヨーレートを取り込むと共に、ハンドル操舵角を時間微分してハンドル角速度を計算するように構成してある。そして、車速、ハンドル操舵角、ハンドル角速度及び計測ヨーレートに基づいて、モータ70の回転を制御し、第1のステアリングシャフト321と第2のステアリングシャフト322間の回転伝達比を調整するように構成してある。
本例の伝達比制御コントローラ60は、図6に示すごとく、ROM,RAM及びCANインタフェースを含む1チップマイコン61と、モータ70を駆動する駆動回路62とを有してなる。そして、モータ70の回転を制御することで、第1のステアリングシャフト321と第2のステアリングシャフト322との間で、所望の回転伝達比を実現する。
また、伝達比制御コントローラ60は、各ステアリングシャフト321、322に過大な軸トルクが作用した場合に、上記ボールクラッチ機構8を動作させることにより、第1回転体である第1のサーキュラスプライン791aと、第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転を規制するように構成してある。
伝達比制御コントローラ60は、図7に示すごとく、フローチャートに沿ってボールクラッチ機構8を動作させるように構成してある。すなわち、ステップS101とステップS102とよりなる過大入力検知ステップでは、トルクセンサ320が計測した軸トルクを取り込み(ステップS101)、その後、この軸トルクと、予め設定されたしきい値T1とを比較して、過大軸トルクが入力されたか否かを判断(ステップS102)する。
そして、過大軸トルクが入力されたと判断された場合には、ステップS103のトルク遮断ステップに移行する。そして、このトルク遮断ステップでは、ボールクラッチ機構8を動作させて、図4(B)、図5に示すごとく、第1回転体である第1のサーキュラスプライン791aと第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転を規制する。
以上のように、本例のギア比可変パワーステアリング装置1における可変伝達比ユニット7は、第1回転体である第1のサーキュラスプライン791aと、第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転を規制するボールクラッチ機構8を有している。そして、伝達比制御コントローラ60は、トルクセンサ320が計測した軸トルクがしきい値T1を超える場合に、ボールクラッチ機構8を動作させ、波動歯車減速機79等、可変伝達比ユニット7の内部機構へのトルク伝達を遮断する。
そのため、本例のギア比可変パワーステアリング装置1では、各ステアリングシャフト321、322に過大な軸トルクが作用しても可変伝達比ユニット7の内部機構に過大なトルクが伝達されない。更に、サーキュラスプライン791a、791b同士を直接、回転規制するので、波動歯車減速機79を構成する歯車の歯面に負荷が作用しない。それ故、相対的に、可変伝達比ユニット7の内部機構である波動歯車減速機79や、モータ70等に要求される機械的強度を抑制することができる。例えば、波動歯車減速機79では、要求されるトルク容量を低減でき、小型化、軽量化や、歯車材料の選定等の設計自由度の向上等を実現できる。例えば、波動歯車減速機79の歯車材料として、成形容易であって、低コストな樹脂歯車を採用することも可能になる。
なお、本例では、上記ボールクラッチ機構8を備えた可変伝達比ユニット7を含む油圧式のギア比可変パワーステアリング装置1の例を示したが、油圧式のものに代えて、電気式パワーステアリング装置に本例の可変伝達比ユニット7を適用することもできる。さらになお、波動歯車機構79を採用した本例の可変伝達比ユニット7に代えて、遊星歯車機構を利用して可変伝達比ユニットを構成することもできる。
さらになお、本例の可変伝達比ユニット7に、図8及び図9に示すごとく、モータ出力シャフト705の回転を許容又は規制するモータロック機構75を追加することもできる。
このモータロック機構75は、図9に示すごとく、モータ70(図8参照。)のステータ702側に、ピン軸725を中心にして回転するロックレバー72と、プランジャ710を吸引するロックソレノイド71とを配設したものである。また、ロータ701側には、該ロータ701と一体回転するようロックプレート74を配設してある。ロックレバー72は、ピン軸725を挟み、その両端に、上記プランジャ710の先端部に係合する作用部721と、上記ロックプレート74の外周に係合する係合部722とを有している。また、ロックプレート74は、その外周部に、上記係合部722が係合する凹部742を形成してなる。
上記のモータロック機構75では、図示しないスプリングによる付勢力が、ロックレバー72を時計方向に回転させるように作用している。そのため、ロックソレノイド710の非通電時には、ロックレバー72の係合部722がロックプレート74の凹部742に係合し、ロータ701とステータ702との相対回転がロックされる。
一方、ロックソレノイド71に通電してプランジャ710が吸引されると、ロックレバー72がピン軸725を中心にして反時計回りに回転し、係合部722がロックプレート74の外周部から離れる。そのため、本例のモータロック機構75では、ロックソレノイド710の通電時には、ロータ701とステータ702との相対回転が可能になる。
(実施例2)
本例は、実施例1の可変伝達比ユニットを基にして、ボールクラッチ機構の構成を変更したものである。この内容について、図10〜図12を用いて説明する。
本例の可変伝達比ユニット7は、図10に示すごとく、ボールクラッチ機構8の構成を除いて、実施例1の可変伝達比ユニットと同一仕様のものである。
本例の可変伝達比ユニット7では、第1のステアリングシャフト321に連結されたハウジング765を第1回転体としてあり、第2回転体は、実施例1と同様、第2のサーキュラスプライン791bである。そして、本例では、ハウジング765と、第2のサーキュラスプライン791bとの間に、ボールクラッチ機構8を配設してある。このボールクラッチ機構8では、図11に示すごとく、クラッチボール85が収容されるボール溝84を、ハウジング765の内周面に形成してある。そして、一対のボールガイド82a、82bは、図12に示すごとく、略同芯2重円筒状を呈するように形成してある。一対のボールガイド82a、82bとして2重円筒状に組み合わせたとき、丸孔820a(b)と長孔821b(a)とが連通するように構成されている。このとき、相互に連通する丸孔820aと長穴821b及び、長穴821aと丸孔820bにより、ボール保持部840を形成してある。
さらに、各ボールガイド82a(b)は、その端面の周方向の1箇所に、径方向外方に向けて突出するアーム部825a(b)を設けてなる。そして、一対のボールガイド82a、82bとして2重円筒状に組み合わせたとき、一対のアーム部825a、825bが周方向に所定の間隙を空けて隣り合うように構成してある。そして、この間隙には、ソレノイド81の先端略円錐形状を呈するロッド811が挿入されている。
次に、本例のボールクラッチ機構8の作用について説明する。このボールクラッチ機構8は、図11(A)に示すごとく、ロッド811が後退しているとき、ハウジング765の内周面に形成されたボール溝84の周方向距離に対して、ボール保持部840に保持した2個のクラッチボール85の周方向の間隔が十分に狭くなるように構成してある。そのため、ロッド811が後退しているときには、各クラッチボール85は、自由に回転、回動でき、それ故、第1回転体であるハウジング765に対して第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bが自由に相対回転することができる。
一方、図11(B)に示すごとく、ロッド811が突出すると、ボール溝84の両端のカム面841に対して、2個のクラッチボール85がそれぞれ押圧され、これにより、カム面841と第2のサーキュラスプライン791bの端面との間隙で、各クラッチボール85が挟圧される。そして、各クラッチボール85は、ハウジング765と第2のサーキュラスプライン791bの間隙で、その回転、回動を拘束される。そして、これにより、第1回転体であるハウジング765と、第2回転体である第2のサーキュラスプライン791bとの相対回転が規制され、回転ロックされる。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
(実施例3)
本例は、ギア比可変パワーステアリング装置1の制御方法であって、ステアリングシャフト321、322等に発生する軸トルクの大きさを低減するためのものである。この内容について、図2、図3、図6、図9、及び図13〜図17を用いて説明する。
本例のギア比可変パワーステアリング装置1の制御方法は、図2に示すごとく、ピニオンシャフト33とラックシャフト(図示略)とが係合したステアリングボックス35と、操舵ハンドル31に連結された第1のステアリングシャフト321とピニオンシャフト33に連結された第2のステアリングシャフト322との間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニット7と、各ステアリングシャフト321、322に作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段320(本例では、第2のステアリングシャフトに配設したトルクセンサ。以下、トルクセンサ320と記載する。)とを備えたギア比可変パワーステアリング装置に適用するものである。
上記可変伝達比ユニット7は、図2及び図10に示すごとく、第1のステアリングシャフト321と一体回転する第1の回転要素791a(以下、第1のサーキュラスプライン791aと記載する。)及び第2のステアリングシャフト322と一体回転する第2の回転要素791b(以下、第2のサーキュラスプライン791bと記載する。)を含む減速機79と、モータ出力シャフト705が減速機79に連結されたモータ70とを有してなる。
本例のギア比可変パワーステアリング装置1の制御方法では、トルクセンサ320を用いて計測した軸トルクと、予め設定されたしきい値である制御開始軸トルク値Taとの比較により、過大な軸トルクが入力されたことを検知する過大入力検知ステップと、過大入力検知ステップで検知された軸トルクの作用方向に対して逆回転方向に、第2のステアリングシャフト322を回転させるよう、モータ70を回転制御することにより、上記軸トルクの大きさを抑制するトルク制御ステップとを実施する。
以下に、この内容について詳しく説明する。
上記可変伝達比ユニット7は、図13に示すごとく、操舵ハンドル31(図2)に連結された第1のステアリングシャフト321と、ピニオンシャフト33(図2)に連結された第2のステアリングシャフト322との間の回転伝達比を、上記減速機79としての波動歯車減速機(以下、波動歯車減速機79と記載する。)の作用により変更するように構成してある。なお、減速機としては、本例の波動歯車減速機に代えて、遊星歯車減速機等を適用することもできる。
可変伝達比ユニット7は、図13に示すごとく、モータ70の回転を波動歯車減速機79に入力することにより、第1のステアリングシャフト321から第2のステアリングシャフト322へ回転動作を伝達する際の回転伝達比を変更可能なように構成してある。ここで、波動歯車減速機79は,図14に示すごとく,歯数が異なる一対のサーキュラスプライン791a、791bと、各サーキュラススプライン791a、791bの内周側に噛合するフレクスプライン793と,該フレクスプライン793の内周側に嵌合するウェーブジェネレータ792とを有するものである。
本例の可変伝達比ユニット7では,図13及び図14に示すごとく,第1のステアリングシャフト321は、ハウジング765を介してサーキュラスプライン791aと一体回転するように構成される。また、第2のステアリングシャフト322は、連結フランジ766を介してサーキュラスプライン791bと一体回転するように構成される。さらに、ハウジング765内部に固定されたモータ70のモータ出力シャフト705は,打ち込みキー795を介設してウェーブジェネレータ792を構成するカム796に圧入されている。
上記可変伝達比ユニット7は、図13及び図14に示すごとく、モータ70を駆動してウェーブジェネレータ792を回転することで、その回転を減速してサーキュラスプライン791bに伝達するように構成されている。なお、本例では、伝達比制御コントローラ60(図2参照。)を用いて、モータ70を制御し、可変伝達比ユニット7の回転伝達比を調節している。
可変伝達比ユニット7は、図13に示すごとく、その内部に、モータ70と隣り合って、ロータ701の回転角、すなわちモータ回転角を計測するためのレゾルバ78を有している。このレゾルバ78は、ロータ701と一体回転する回転子781と、該回転子781の外周側に位置するよう、ハウジング765の内周に固定したコイル782とを含む。そして、レゾルバ78は、回転子781の回転に応じて変化するコイル782の誘起電流を、伝達比制御コントローラ60に向けて出力するように構成してある。
さらに、本例の可変伝達比ユニット7に、図8及び図9に示すごとく、モータ出力シャフト705の回転を許容又は規制するモータロック機構75を有する。このモータロック機構75は、図9に示すごとく、モータ70(図13参照。)のステータ702側に、ピン軸725を中心にして回転するロックレバー72と、プランジャ710を吸引するロックソレノイド71とを配設したものである。また、ロータ701側には、該ロータ701と一体回転するようロックプレート74を配設してある。ロックレバー72は、ピン軸725を挟み、その両端に、上記プランジャ710の先端部に係合する作用部721と、上記ロックプレート74の外周に係合する係合部722とを有している。また、ロックプレート74は、その外周部に、上記係合部722が係合する凹部742を形成してなる。
上記のモータロック機構75では、図示しないスプリングによる付勢力が、ロックレバー72を時計方向に回転させるように作用している。そのため、ロックソレノイド710の非通電時には、ロックレバー72の係合部722がロックプレート74の凹部742に係合し、ロータ701とステータ702との相対回転がロックされる。
一方、ロックソレノイド71に通電してプランジャ710が吸引されると、ロックレバー72がピン軸725を中心にして反時計回りに回転し、係合部722がロックプレート74の外周部から離れる。そのため、本例のモータロック機構75では、ロックソレノイド710の通電時には、ロータ701とステータ702との相対回転が可能になる。
次に、本例のギア比可変パワーステアリング装置1は、図6に示すごとく、制御に用いるセンサとして、車両の速度を計測する車速センサ510と、操舵ハンドル31(図2)の回転位置を計測する回転位置センサ310と、車両に作用するヨーレートを計測するヨーレートセンサ520と、第2のステアリングシャフト322に作用する軸トルクを計測する上記トルク計測手段としてのトルクセンサ320とを有している。
さらに、ギア比可変パワーステアリング装置1は、可変伝達比ユニット7を制御する伝達比制御コントローラ60と、流量制御弁40を制御するバルブ制御コントローラ50とを有している。伝達比制御コントローラ60及びバルブ制御コントローラ50は、図6に示すごとく、車速センサ510、回転位置センサ310、ヨーレートセンサ520及び、トルクセンサ320と共に、車両内のCAN(Control Area Network)網500に接続してある。
バルブ制御コントローラ50は、ギア比可変パワーステアリング装置1(図2参照。)の作動負荷に応じて、油圧ポンプ10からサーボバルブ30に向けて吐出する流量を増減するように構成してある。
伝達比制御コントローラ60は、車速、操舵ハンドル31(図2)の回転位置及びヨーレートを取り込むと共に、ハンドル操舵角を時間微分してハンドル角速度を計算するように構成してある。そして、車速、ハンドル操舵角、ハンドル角速度及び計測ヨーレートに基づいて、モータ70の回転を制御し、第1のステアリングシャフト321と第2のステアリングシャフト322間の回転伝達比を調整するように構成してある。
本例の伝達比制御コントローラ60は、図6に示すごとく、ROM,RAM及びCANインタフェースを含む1チップマイコン61と、モータ70を駆動する駆動回路62とを有してなる。そして、モータ70の回転を制御することで、第1のステアリングシャフト321と第2のステアリングシャフト322との間で、所望の回転伝達比を実現する。
また、伝達比制御コントローラ60は、図15に示すごとく、フローチャートに沿って可変伝達比ユニット7のモータ70を回転制御し、各ステアリングシャフト321、322に過大な軸トルクを発生させないように構成されている。すなわち、ステップS201とステップS202とよりなる過大入力検知ステップでは、トルクセンサ320が計測した軸トルクを取り込み(ステップS201)、その後、この軸トルクの大きさと、予め設定された制御開始軸トルク値Taとを比較して、過大な軸トルクが入力されたか否かを判断(ステップS202)する。そして、過大な軸トルクが作用したと判断された場合には、ステップS205の軸トルク制御ステップを実施する。
この軸トルク制御ステップでは、ステップS201で取り込まれ、ステップS202で過大であると判断された軸トルクの作用方向に対して逆回転方向に、第2のステアリングシャフト322を回転させるようにモータ70を回転制御する。本例の制御方法では、このようにモータ70を回転制御することにより、各ステアリングシャフト321、322に作用する軸トルクの大きさを抑制している。
ここで、ステップS205のトルク制御ステップの詳しい内容について説明する。本例のトルク制御ステップでは、可変伝達比ユニット7について許容する最高許容軸トルク値Tbと、上記ステップ202のしきい値としての制御開始軸トルク値Taとを、Tb>Taを満たすように設定してある。そして、図16の実線aで示すごとく、ステップS201で取り込んだ軸トルクの大きさが、制御開始軸トルクTaを上回る領域で、上記のようなモータ70の回転制御を実施する。
同図に示すごとく、モータ70の制御量は、取り込まれた軸トルクの大きさが制御開始軸トルクTaに略一致したときにゼロ%とし、取り込まれた軸トルクの大きさが最高許容軸トルク値Tbに略一致したときに100%、すなわちモータ70の最大定格としてある。そして、制御開始軸トルクTaと最高許容軸トルクTbとの中間範囲では、軸トルクの大きさに対してモータ70の制御量が直線的に増加するように設定してある。なお、制御開始軸トルクTaと最高許容軸トルクTbとの中間範囲におけるモータ70の制御量の増加のさせ方としては、実線aのほか、同図中の一点鎖線b、破線cあるいは2点鎖線dのように設定することもできる。
次に、ステップS206では、トルクセンサ320で計測された軸トルクを再び、取り込み、この軸トルクの大きさが制御開始軸トルク値Taを下回るまで(ステップS207)ステップS205を繰り返し実施する。そしてその後、軸トルクが制御開始軸トルク値Ta以下となったとき(ステップS207)に、制御を終了する。
以上のように、本例のギア比可変パワーステアリング装置の制御方法では、過大な軸トルクが第2のステアリングシャフト322に作用しそうになったときに、可変伝達比ユニット7を用いて、その軸トルクの大きさを抑制する。さらに、本例では、軸トルクの大きさに応じて、モータ70の制御量を変更する。ここでは、軸トルクの大きさが、制御開始軸トルク値Taを超える範囲でモータ70の制御量を徐々に大きくしていき、最高許容軸トルク値Tbと略一致したときに制御量を100%、すなわち、モータ70の最大定格値としている。
そのため、本例のギア比可変パワーステアリング装置1では、設定された最大許容軸トルクTbを超えるような過大な軸トルクが発生するおそれが少ない。それ故、相対的に、可変伝達比ユニット7の内部機構である波動歯車減速機79や、モータ70や、モータロック機構75等に要求される機械的強度を抑制することができる。例えば、波動歯車減速機79では、そのトルク容量を低容量化でき、小型化、軽量化や、歯車材料の設計自由度の向上等を実現することができる。第2のステアリングシャフト322に作用する軸トルクを抑制すれば、波動歯車減速機79を構成する歯車要素として、例えば、成形容易であって、低コストな樹脂歯車を採用することが可能になる。
さらに、各ステアリングシャフト321、322に作用する軸トルクの大きさを抑制すれば、可変伝達比ユニット7ばかりでなく、各ステアリングシャフト321、322自体や、ステアリングボックス35など、ギア比可変パワーステアリング装置1を構成する機械部品に必要な機械的強度を、効果的に抑制することができる。それ故、本例のギア比可変パワーステアリング装置全体の小型、軽量化等を実現することができる。
なお、ステップS205のトルク制御ステップを繰り返し実施した後に、転舵輪を元の位置に復帰させる転舵角復帰ステップを実施することも良い。この場合には、運転者の違和感を抑制すると共に、操縦安定性を向上できる。例えば、このような転舵角復帰ステップは、例えば、上記回転位置センサ310と、転舵輪の転舵角を計測する転舵角計測手段とを利用して実施することができる。
すなわち、上記転舵角復帰ステップとしては、まず、上記トルク制御ステップの開始時に回転位置センサ310を用いて計測した第1の回転位置と、上記トルク制御ステップの終了時に回転位置センサ310を用いて計測した第2の回転位置との差分、すなわち、操舵ハンドル31に入力されたハンドル操作量を算出する。そして、このハンドル操作量に対応して上記転舵輪に発生する操作転舵角を計算し、上記トルク制御ステップの開始時に計測された転舵角に、上記操作転舵角を重畳してなる目標転舵角を設定する。そして、トルク制御ステップの終了後に、目標転舵角に従って転舵輪を転舵させる。
以上の転舵角復帰ステップによれば、上記トルク制御ステップの終了後に、転舵輪の転舵角を元に戻すことができる。特に、上記トルク制御ステップを実施している最中に、操舵ハンドル31に入力されたハンドル操作量に応じた上記操作転舵角を重畳して目標転舵角を設定することで、運転者が感じるステアリング操作感を一層、向上することができる。
さらに、本例の制御方法における上記制御開始軸トルク値Ta及び上記最高許容軸トルク値Tbを、図17に示すごとく、車速に応じて小さくなるように変更することも有効である。この場合には、車速が高くなるほど、ステアリングシャフト321、322に発生する軸トルクの大きさを抑制できる。これにより、例えば、高速走行領域では、操舵ハンドル31に作用する回転トルクを抑制して、走行安定性を向上することができる。例えば、高速走行中に、キャッツアイを踏んだ場合などに操舵ハンドル31に急激に作用する回転トルクの大きさを抑制できれば、運転者の誤操作を未然に抑制して安全性を格段に向上することができる。
さらになお、本例では、上記ロック機構8を備えた可変伝達比ユニット7を含む油圧式のギア比可変パワーステアリング装置1の例を示したが、油圧式のものに代えて、電気式パワーステアリング装置に本例の可変伝達比ユニット7を適用することもできる。さらになお、波動歯車機構79を採用した本例の可変伝達比ユニット7に代えて、遊星歯車機構を利用して可変伝達比ユニットを構成することもできる。
(実施例4)
本例は、実施例1〜実施例3のギア比可変パワーステアリング装置において、トルク計測手段の構成を変更した例である。この内容について、図2を用いて説明する。
実施例1〜実施例3のギア比可変パワーステアリング装置では、ステアリングシャフト321、322に作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段としてトルクセンサ320を用いた。そして、このトルクセンサ320を、第2のステアリングシャフト322に配設した。
これに代えて、トルク計測手段としてのラック推力センサをラックシャフトに設け、このラック推力センサを用いて計測したラック推進力と、ピニオンシャフト33のピニオン径とに基づいて上記軸トルクを算出することができる。
さらに、トルクセンサに代えて設けたピニオン角度センサと、既存の回転位置センサとを上記トルク計測手段として利用することもできる。この場合には、ピニオン角度センサで計測したピニオンシャフト33の回転角度と、回転位置センサにより計測された回転位置との差分として算出されるねじれ角度と、ピニオン角度センサの設置箇所から回転位置センサの設置箇所までの回転伝達経路のねじりバネ定数とを利用して、ステアリングシャフト321、322に作用する軸トルクを算出することができる。
さらに、上記のピニオン角度センサに代えて、ラックストロークセンサを利用することも可能である。ラックシャフトのストローク量を計測するラックストロークセンサによれば、計測したストローク量とピニオン径とから、ピニオンシャフト33の回転角度を算出することができる。それ故、上記のピニオン角度センサと回転位置センサとの組み合わせの場合と同様の手順により上記軸トルクを算出することができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1〜実施例3のいずれかの実施例と同様である。
実施例1における、可変伝達比ユニットの断面構造を示す断面図。 実施例1〜3における、ギア比可変パワーステアリング装置のシステム構成を示すシステム図。 実施例1における、可変伝達比ユニットの断面構造を示す断面図(図1におけるA−A線矢視断面図。ボールクラッチ機構が作動していない状態。)。 実施例1における、ボールクラッチ機構の動作を説明する作動図((A)は相対回転が許容された状態。(B)は相対回転が規制された状態。)。 実施例1における、可変伝達比ユニットの断面構造を示す断面図(図1におけるA−A線矢視断面図。ボールクラッチ機構が作動した状態。)。 実施例1及び2における、ギア比可変パワーステアリング装置の制御システムを示すシステムブロック図。 実施例1における、ボールクラッチ機構を制御する手順を示すフローチャート図。 実施例1における、その他の可変伝達比ユニットの断面構造を示す断面図。 実施例1及び2における、その他の可変伝達比ユニットのモータロック機構を示す断面図(図8におけるB−B線矢視断面図。図13におけるC−C線矢視断面図。)。 実施例2における、可変伝達比ユニットを示す断面図。 実施例2における、ボールクラッチ機構の動作を説明する作動図((A)は相対回転を許容する状態。(B)は相対回転を規制する状態。)。 実施例2における、一対のボールガイドを組み合わせた状態を示す斜視図。 実施例3における、可変伝達比ユニットの断面構造を示す断面図。 実施例3における、波動歯車減速機の構造を示す断面図(図13におけるD−D線矢視断面図。)。 実施例3における、可変伝達比ユニットを制御する手順を示すフローチャート図。 実施例3における、可変伝達比ユニットのモータを制御する制御量と、軸トルクの大きさとの関係を示す制御マップ。 実施例3における、車速と、制御開始軸トルク値及び最高許容軸トルク値との関係を示す制御マップ。
符号の説明
1 ギア比可変パワーステアリング装置
10 油圧ポンプ
20 パワーシリンダ
31 操舵ハンドル
320 トルクセンサ
321 第1の回転シャフト(第1のステアリングシャフト)
322 第2の回転シャフト(第2のステアリングシャフト)
60 伝達比制御コントローラ
7 可変伝達比ユニット
70 モータ
765 ハウジング
79 減速機(波動歯車減速機)
791a 第1回転体(第1のサーキュラスプライン)
791b 第2回転体(第2のサーキュラスプライン)
8 ロック機構(ボールクラッチ機構)
81 ソレノイド
811 ロッド
82a、82b ボールガイド
84 ボール溝
840 ボール保持部
85 クラッチボール

Claims (11)

  1. 第1の回転シャフトと一体回転する第1の回転要素及び第2の回転シャフトと一体回転する第2の回転要素を含む減速機と、モータ出力シャフトを上記減速機に連結したモータとを有してなり、上記第1の回転シャフトと上記第2の回転シャフトとの間の回転伝達比を変更可能に構成した可変伝達比ユニットにおいて、
    上記第1の回転シャフトから上記第1の回転要素までの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第1回転体と、上記第2の回転シャフトから上記第2の回転要素までの回転伝達経路を構成する回転部品のうちのいずれかである第2回転体との間には、その相対回転を許容又は規制可能なように構成されたロック機構を介設してあることを特徴とする可変伝達比ユニット。
  2. 請求項1において、上記減速機は、上記モータ出力シャフトに連結されたウェーブジェネレータと、該ウェーブジェネレータに外挿されたフレクスプラインと、上記各回転要素として、該フレクスプラインの外周側に回転軸方向に隣り合って配置された一対のサーキュラスプラインとを含む波動歯車減速機よりなり、
    上記第1回転体は、上記第1の回転要素である第1のサーキュラスプラインであり、上記第2回転体は、上記第2の回転要素である第2のサーキュラスプラインであることを特徴とする可変伝達比ユニット。
  3. 請求項1において、上記減速機は、上記モータ出力シャフトが連結されたウェーブジェネレータと、該ウェーブジェネレータに外挿されたフレクスプラインと、上記各回転要素として、該フレクスプラインの外周側に回転軸方向に隣り合って配置された一対のサーキュラスプラインとを含む波動歯車減速機よりなり、
    上記第1の回転シャフトと上記第1の回転要素とは、上記波動歯車減速機を収容するハウジングを介して連結されており、
    上記第1回転体は、上記ハウジングであり、上記第2回転体は、上記第2の回転要素として、上記ハウジングの内周側に収容された一方の上記サーキュラスプラインであることを特徴とする可変伝達比ユニット。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記ロック機構は、ボールクラッチ機構であることを特徴とする可変伝達比ユニット。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、上記モータ出力シャフトの回転を許容又は規制可能なように構成されたモータロック機構を有することを特徴とする可変伝達比ユニット。
  6. ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットとを備えたギア比可変パワーステアリング装置において、
    上記可変伝達比ユニットは、請求項1〜5のいずれか1項に記載されたものであり、
    請求項1〜5のいずれか1項における第1の回転シャフト及び第2の回転シャフトが、それぞれ、上記第1のステアリングシャフト、上記第2のステアリングシャフトであることを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置。
  7. ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットと、上記各ステアリングシャフトに作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段とを備えたギア比可変パワーステアリング装置の制御方法において、
    上記ギア比可変パワーステアリング装置は、請求項6記載のものであり、
    上記トルク計測手段を用いて計測した上記軸トルクと、予め設定されたしきい値との比較により、過大な上記軸トルクが入力されたことを検知する過大入力検知ステップと、
    ロック機構を用いて、上記第1のステアリングシャフトと上記第2のステアリングシャフトとの相対回転を規制するトルク遮断ステップとを実施することを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法。
  8. ピニオンシャフトとラックシャフトとが係合したステアリングボックスと、操舵ハンドルに連結された第1のステアリングシャフトと上記ピニオンシャフトに連結された第2のステアリングシャフトとの間の回転伝達比を可変にする可変伝達比ユニットと、上記各ステアリングシャフトに作用する軸トルクを計測するためのトルク計測手段とを備えたギア比可変パワーステアリング装置の制御方法において、
    上記可変伝達比ユニットは、第1のステアリングシャフトと一体回転する第1の回転要素及び第2のステアリングシャフトと一体回転する第2の回転要素を含む減速機と、モータ出力シャフトが上記減速機に連結されたモータとを有してなり、
    上記トルク計測手段を用いて計測した上記軸トルクと、予め設定されたしきい値である制御開始軸トルク値Taとの比較により、過大な上記軸トルクが入力されたことを検知する過大入力検知ステップと、
    該過大入力検知ステップで検知された上記軸トルクの作用方向に対して逆回転方向に、上記第2のステアリングシャフトを回転させるよう、上記モータを回転制御することにより、上記軸トルクの大きさを抑制するトルク制御ステップとを実施することを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法。
  9. 請求項8おいて、上記ギア比可変パワーステアリング装置は、上記第1のステアリングシャフトの回転位置を計測する回転位置センサと、転舵輪の転舵角を計測する転舵角計測手段とを有してなり、
    上記ギア比可変パワーステアリング装置の制御方法においては、上記トルク制御ステップの後に、転舵輪を転舵する転舵角復帰ステップを行い、
    該転舵角復帰ステップでは、上記トルク制御ステップの開始時に上記回転位置センサを用いて計測した第1の回転位置と、上記トルク制御ステップの終了時に上記回転位置センサを用いて計測した第2の回転位置との差分であるハンドル操作量に対応する操作転舵角を算出し、上記トルク制御ステップの開始時に上記転舵角計測手段を用いて計測した転舵角に、上記操作転舵角を加算した目標転舵角を設定し、該目標転舵角に従って上記転舵輪を転舵させることを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法。
  10. 請求項8又は9において、上記トルク制御ステップでは、可変伝達比ユニットについて許容される最高許容軸トルク値Tbよりも上記制御開始軸トルク値Taを低く設定してあり、上記軸トルクの大きさが該制御開始軸トルク値Ta以上となったとき、上記軸トルクの大きさが上記最高許容軸トルク値Tbを超えないように上記モータを回転制御することを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法。
  11. 請求項10において、上記最高許容軸トルク値Tb及び上記制御開始軸トルク値Taは、車速に応じて設定してあることを特徴とするギア比可変パワーステアリング装置の制御方法。
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