JP2006002082A - 熱可塑性樹脂組成物および二軸延伸フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および二軸延伸フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】寸法安定性、特に、熱膨張係数などの寸法安定性、耐屈曲性に優れた二軸延伸フィルムに用いる熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液晶性樹脂(A)60〜80重量%と、ポリエステル(B)40〜20重量%からなる樹脂組成物であって、液晶性樹脂(A)の融点(℃)〜(該液晶性樹脂(A)の融点+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスした後急冷したとき、液晶性樹脂(A)からなる相が分散相を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、磁気記録媒体用基材、工程・剥離材料、印刷材料、成型材料、回路、絶縁、建材などの樹脂加工工程が必要な各種工業材料用途に好適に使用できる液晶性樹脂とポリエステルからなる組成物に関する。
さらに詳しくは、寸法安定性、耐屈曲性に優れた二軸延伸フィルムに用いる熱可塑性樹脂組成物と該熱可塑性樹脂組成物を用いた二軸延伸フィルムに関するものである。
熱可塑性樹脂組成物は、強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与が可能であるなどの特長を活かして、工程・離型材料用、電気絶縁用、印刷材料用、成形材料用、建材用、磁気記録媒体用などの各種工業材料用で用いられている。
近年、携帯電話などの電子機器の技術進歩に伴って、フレキシブルプリント回路基板(FPC)の需要が急激に伸びており、さらにこうした機器の小型化、軽量化に対応してFPCの薄膜化が進んでいる。このため、FPC用の銅貼りポリイミドフィルムの薄膜化も同時に進んでいるが、これによってフィルムの剛性自体が低下してFPCを製造する際の加工が困難になってくる。
そこで、加工時の取り扱いを簡便にするため、加工終了時に剥離・除去できる微粘着性の補強フィルムをあらかじめ貼り付けて剛性をもたせる方法が用いられることがある。このような方法によるFPC製造では、補強用のポリエステルフィルムを貼り付けた状態で加熱プレス加工したり、キュアしたり、ICチップを実装したりする工程があるが、銅貼りポリイミドフィルムと比較してポリエステルフィルムは、熱膨張係数が大きく、熱寸法安定性が十分でないため、FPC製造工程中で熱変形を起こして反り返ったり、平面性が悪化したりするなどの問題が生じることがあった。
また、電気、電子部品分野において、機器の小型化や高機能化の観点から、ハンダ耐熱性、熱および湿度に対する高寸法安定性、低吸水性および高周波特性などの諸特性が高次元でバランス化した絶縁基材への要求が増加しているが、その有望素材であるポリフェニレンスルファイドフィルムにおいても上記ポリエステルと同様の問題があった。
すなわち、ポリフェニレンスルファイドは、耐熱性に優れる、吸水による寸法変化が小さい等の利点を有するため、回路用成形基板を製造するための樹脂として検討されているが、熱膨張係数が大きいため、ガラス繊維や粒状の無機充填材を添加して熱膨張係数を抑える必要があった(特許文献1、2)。
しかし、これらの方法は、必ずしも満足のいくものではなく、また、平面性や表面平滑性、さらにはコスト面で問題を抱えており、新規な手法の開発が望まれていた。
液晶性樹脂は、分子が剛直なため溶融状態でも絡み合いを起こさず、結晶状態を有するポリドメインを形成し、剪断場ではこのポリドメインが流れ方向に著しく配向する挙動を示す。機械的特性、耐熱性、耐薬品性および薄肉流動性をバランスよく備えているため、電気・電子部品および自動車部品などに広く用いられている。また、液晶性樹脂は、溶融粘度が低く、流動性に優れること、自己補強効果を有し、分子配向させることで高強度化すること、あるいは寸法安定性やガスバリア性に優れる特性等を利用してフィルム、繊維、熱可塑性樹脂の改質剤等に利用されるようになってきた。
しかし、液晶性樹脂は、異方性が極めて大きく一軸方向に分子配向が起こるためにフィルム製膜時に縦割れを生じ逐次二軸配向が困難であったり、フィルム表面などにフィブリル化(ささくれ立ち)による表面粗れが発生したり、ウエルド強度が低いなどの問題点があった。
この液晶性樹脂の問題点を改良するために、液晶性樹脂とのアロイ化樹脂組成物として、(1)非晶性の芳香族ポリカーボネートを配合し耐熱性と機械的物性、曲げ弾性率や衝撃強度を改良させた樹脂組成物の提案(特許文献3)や、(2)ポリフェニレンスルフィド樹脂を配合して、耐湿熱特性、寸法安定性、摺動特性、制振性に優れるとされる樹脂組成物(特許文献4)が提案されている。
しかし、上記組成物(1)は、二軸延伸フィルムとしたとき、ポリカーボネートが非晶性であるため、寸法安定性が不十分であった。
一方、上記組成物(2)は、ポリフェニレンスルフィド樹脂と液晶性樹脂の相溶性が悪く、液晶性樹脂の分散ドメインも大きくなりすぎるため、二軸延伸フィルムとしたとき、フィルム破れが多発し安定製膜が困難になったり、ポリフェニレンスルフィド樹脂を配合していることによって、多層積層フィルムとしたときの界面剥離(デラミネーション)が顕著となり、特に回路基盤への展開に大きな障害となる。
特開平5−310957号公報 特開平3−221558号公報 特開平7−216198号公報 特開2002−179934号公報
本発明の目的は、樹脂加工工程が必要な各種工業材料用途に好適に使用できる、寸法安定性特に、熱膨張係数などの寸法安定性に優れた二軸延伸フィルムに用いる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明によれば、液晶性樹脂(A)60〜80重量%と、ポリエステル(B)40〜20重量%からなる樹脂組成物であって、液晶性樹脂(A)の融点(℃)〜(該液晶性樹脂の融点(A)+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスした後急冷したとき、液晶性樹脂(A)からなる相が分散相を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、樹脂加工工程が必要な各種工業材料用途に好適に使用することができる、寸法安定性、耐屈曲性に優れた二軸延伸フィルムの製造に用いる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
以下、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物についての最良の実施形態を説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリマの劣化を防止するために、液晶性樹脂(A)の融点(℃)〜(該液晶性樹脂(A)の融点+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスした後、ポリエステルの結晶化に起因する球晶の発生を抑止する目的で急冷する必要がある。好ましくは、(液晶性樹脂の融点+30)(℃)〜(該液晶性樹脂の融点+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスすることである。本発明の組成物は、液晶性樹脂(A)の含有量が多いにもかかわらず、液晶性樹脂からなる相が分散相を形成することによって、高濃度液晶性樹脂含有組成物のガットの表面性が格段に向上され、ガット切断時のチップの縦割れを起こし難くなるため好ましい。
また、溶融製膜時、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる層を基層部に積層し二軸延伸する場合、海成分を構成しているポリエステル(B)中に高濃度の液晶性樹脂が島成分として多数微細なドメインを形成して分散しているため、主に、ポリエステル(B)が延伸される。その結果、異方性が極めて大きい液晶性樹脂が高濃度に含有された層であっても、二軸延伸が均一にでき、フィルムの積層斑、特に、幅方向の積層斑が少なくなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる液晶性樹脂(A)は、主鎖にメソゲン基を有する溶融成形性で、かつ液晶形成性があるポリエステルまたはポリエステルアミドである。例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる共重合ポリエステルなどである。具体的には、本発明では、“シベラス”(東レ製)、“ベクトラ”(ポリプラスチックス製)、“ゼナイト”(デュポン製)、“スミカスーパー”(住友化学製)、“ザイダー”(ソルベイ製)、“上野LCP”(上野製薬製)、“タイタン”(イーストマン製)など各種市販の液晶性樹脂を適宜選択して使用することができる。液晶性樹脂(A)は、溶融成形性であれば特に限定されない。その流動開始温度が180〜250℃であることが好ましく、さらに好ましくは200〜230℃であることが、ポリエステル(B)と混合させる上で好ましい。
本発明で用いる好ましい液晶性樹脂の例としては、下記(I)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(III)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、(I)、(II)および(IV)の構造単位からなる共重合ポリエステル、または、それらのブレンドポリマーが挙げられる。下記構造単位からなる共重合ポリエステルは、熱可塑性樹脂(B)との相溶性が良好となり、本発明の効果を得ることができるために、特に好ましく例示されるがこれに限定されるものではない。
Figure 2006002082
(ただし、式中のRは、
Figure 2006002082
を示し、R
Figure 2006002082
から選ばれた一種以上の基を示し、Rは、
Figure 2006002082
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)ここで、構造単位[((II)+(III))と構造単位(IV)とは実質的に等モルである。
上記構造単位(I)は、p−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成したポリエステルの構造単位を、構造単位(II)は、4、4´ージヒドロキシビフェニル、3、3´、5、5´−テトラメチル−4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2、6−ジヒドキシナフタレン、2、7−ジヒドキシナフタレン、2、2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4、4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4´−ジフェニルジカルボン酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸、1、2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4、4´−ジカルボン酸および4、4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
また、上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R
Figure 2006002082
であり、R
Figure 2006002082
から選ばれた一種以上であり、R
Figure 2006002082
から選ばれた一種以上であるものが好ましい。なお、式中のXは水素原子または塩素原子を示す。
また、上記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R
Figure 2006002082
であり、R
Figure 2006002082
であるものが特に好ましい。
また、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R
Figure 2006002082
であり、R
Figure 2006002082
であり、R
Figure 2006002082
であるものが特に好ましい。
本発明では、共重合量を、ポリマーを形成し得る繰返し構造単位のモル比から計算し、モル%で表す。上記好ましい共重合ポリエステルの場合には、構造単位(I)、構造単位(II)+(IV)、構造単位(III)+(IV)がポリマーを形成し得る繰返し構造単位であり、これらの共重合モル比から共重合量が計算できる。
上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。また、構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する(III)のモル分率は95〜5モル%が好ましく、70〜10モル%がより好ましく、50〜20モル%が最も好ましい。また、構造単位(I)/(II)のモル比は流動性の点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III)]のトータルモル数と実質的に等しい。
また、上記構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位(I)は[(I)+(III)]の5〜95モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましい。構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルである。
さらに上記構造単位(I)、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、単独ではなく、構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルおよび/または構造単位(I)、(III)および(IV)からなる共重合ポリエステルとのブレンドポリマーとして用いることが好ましい。このブレンドポリマーの場合においても、前記同様に、構造単位[(I)+(II)+(III)]に対する[(I)+(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、30〜90%がより好ましく、50〜80モル%が最も好ましい。
なお、必要に応じて、ポリエステルの末端基のうちのカルボキシル末端基あるいはヒドロキシル末端基のいずれかを多くした場合には構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III)]のトータルモル数と完全に等しくはならないが、このような場合も、上述した説明中の「実質的に」に含まれる。
上記好ましい液晶性共重合ポリエステルを重縮合により製造する際には、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、3、3´−ジフェニルジカルボン酸、2、2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4、4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4、4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2、6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なれわない程度の少割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
上記した液晶性共重合ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
例えば、上記の好ましく用いられる液晶性共重合ポリエステルのうち、上記構造単位(III)を含まない場合は下記(1)および(2)の製造方法が好ましく、また、構造単位(III)を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましい。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4、4´−ジアセトキシビフェニル、4、4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4、4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で、上記(1)または(2)の方法により製造する方法。
これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましい場合もある。
本発明で用いられる液晶性樹脂の融点は、ポリエステル(B)との溶融混練性の点から220〜300℃が好ましく、より好ましくは240〜290℃、さらに好ましくは250〜285℃である。
ここで、融点とは、示差走査熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1 +40℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温までいったん冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、該組成物から液晶性樹脂の融点を求める方法としては、例えば、液晶性樹脂は溶解しないがポリエステルは溶解する溶剤を用いることによって液晶性樹脂のみを採取して融点を求める方法が好ましく挙げられる。
また、本発明の分散相の有無を確認するための溶融プレス温度を決定する場合では、熱可塑性樹脂組成物の融点を液晶性樹脂の融点として、溶融プレス温度を決定することができる。
また、液晶性樹脂(A)の融点(℃)〜(該液晶性樹脂(A)の融点+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスした後急冷したとき、液晶性樹脂(A)の分散相を形成させるために、液晶性樹脂の溶融粘度(σA)は、100Pa・s以上であることが好ましく、より好ましくは150〜700Pa・sであり、最も好ましくは200〜500Pa・sである。なお、ここで、溶融粘度は、液晶性樹脂(A)の融点+10℃、剪断速度200(1/秒)の条件下でノズル径1mm直径、ノズル長10mmのノズルを用い島津フローテスター(CFT−500型)によって測定した値である。
液晶性樹脂の含有量は、二軸延伸フィルムとした時の寸法安定性と耐屈曲性の点から、60〜80重量%含有することが好ましい。より好ましくは60〜70重量%である。液晶性樹脂の含有量が60重量%よりも少ないと、二軸延伸フィルムとしたときの耐屈曲性が不十分となるため好ましくない。また、逆に液晶性樹脂の含有量が80重量%よりも多くなりすぎると、液晶性樹脂からなる相が分散相を形成することが困難となったり、できあがったブレンドチップの表面がざらつき、ガットの切断時に縦割れが生じやすくなり、チップ化が困難になる場合がある。さらに、液晶性樹脂からなる分散ドメインが大きくなりすぎるため、フィルム製膜時に、二軸延伸が困難になったり、フィルム破れが生じ、安定した製膜ができない場合があるので好ましくない。
また、ポリエステルとの相溶性および良好な二軸延伸性を得るために、本発明に用いられる液晶性樹脂(A)は、構造単位(I)+(II)+(III)+(IV)からなる液晶性樹脂を5〜40重量%の範囲内で含有したブレンド液晶性樹脂であると、液晶性樹脂からなる分散相ドメイン径が微細化しやすく、ドメイン径を本願の範囲内にコントロールしやすくなる傾向にあるので好ましい。
本発明で用いられるポリエステル(B)は、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分から構成されるものである。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、中でも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
また、ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
本発明の場合、ポリエステルとして特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびその共重合体または変性体よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の使用が好ましい。本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、酸成分として、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸を少なくとも80モル%以上含有するポリマーである。酸成分については、少量の他のジカルボン酸成分を共重合してもよく、またエチレングリコールを主たるジオール成分とするが、他のジオール成分を共重合成分として加えてもかまわない。
本発明で使用するポリエチレンテレフタレートは、通常、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のポリエチレンテレフタレートまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。ここで、エステル化は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応においては、通常、マンガン、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、チタン等の化合物を触媒に用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、該反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加する場合もある。前記エステル化あるいはエステル交換反応は、130〜260℃の温度条件下で行い、重縮合反応は高真空下、温度220〜300℃で行うのが通常である。リン化合物の種類としては、亜リン酸、リン酸、リン酸トリエステル、ホスホン酸、ホスホネート等があるが、特に限定されず、また、これらのリン化合物を二種以上併用してもよい。また、エステル化あるいはエステル交換から重縮合の任意の段階で必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、核生成剤、表面突起形成用無機および有機粒子を添加することも可能である。
本発明で用いるポリエステル(B)の固有粘度は、0.45〜0.60(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.50〜0.58(dl/g)である。ポリエステルの固有粘度が、上記範囲内であるとポリエステル(B)がドメインを形成できなくなるため、液晶性樹脂の含有量が多いにも係わらず、液晶性樹脂が分散相を形成することができる。
本発明において、ポリエステル(B)の含有量は、二軸延伸性、フィルムの寸法安定性、耐屈曲性の点から40〜20重量%である。好ましくは、40〜30重量%である。ポリエステル(B)の含有量が上記範囲より多くなりすぎると二軸延伸フィルムとしたときの寸法安定性、耐屈曲性が得られない場合がある。また、ポリエステル(B)の含有量が上記範囲より少ないときはガットの表面性や切断性が悪化したり、二軸延伸が困難になる場合があるので好ましくない。
本発明において、液晶性樹脂(A)からなる分散相のドメイン径(長径)は3〜50μmの範囲である。分散相のドメイン径(長径)を上記範囲内とすることによって、高濃度の液晶性樹脂を含有した樹脂組成物の二軸延伸が可能となり、二軸延伸フィルムとしたときの寸法安定性、耐屈曲性が向上するため好ましい。
本発明に用いられる液晶性樹脂(A)の溶融粘度(σA)とポリエステル(B)の溶融粘度(σB)の比(σA)/(σB)は、3〜30が好ましく。さらに好ましくは5〜15であり、より好ましくは5〜10である。溶融粘度比が本発明の範囲外であると高濃度に含有された液晶性樹脂(A)が分散相を形成できない場合があり、ポリエステル(B)が分散相を形成してしまうため、二軸延伸性が著しく悪化する場合があるので好ましくない。
ここで、溶融粘度比(σA)/(σB)は、押出温度290℃、せん断速度200(1/秒)の条件下でノズル径1mm直径、ノズル長10mmのノズルを用い島津フローテスター(CFT−500型)によって測定した値である。
本発明の樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができるが、高濃度の液晶性樹脂(A)を少量のポリエステル(B)中に均一分散させるためには、溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60、好ましくは20〜40の範囲が混練性の点から好適に選ばれる。
溶融混練に際して溶融温度は、液晶性樹脂(A)の融点+5℃〜融点+50℃の範囲に設定することが好ましい。さらに、押出機の口金部の温度を溶融温度よりも1〜10℃、好ましくは3〜8℃低くし、風乾しながらガット状に引きチップ化する方法が好ましい。押出機の口金部の温度を溶融温度よりも低くすることによって、高濃度に添加されているにも関わらず液晶性樹脂(A)が分散相を形成し易くなる。
また、溶融混練に際してのスクリュー回転数は、100〜500(回転/分)の範囲が所望の溶融状態の形成の上で好ましく、さらには、200〜400(回転/分)の範囲である。スクリュー回転数が上記範囲よりも高くなりすぎると、ポリエステル(B)が微分散しすぎるため液晶性樹脂(A)の分散相を形成することが困難となったり、また、せん断発熱による熱履歴でガットの表面性が悪化する場合がある。また、回転数が上記範囲よりも低くなりすぎると液晶性樹脂(A)の分散相のドメイン径を本願の範囲内にすることが困難になったり、各成分の相溶性が不十分となりガットの切断性が悪化し、チップが脆くなり好ましくない。
溶融混練時間は、10分以内、好ましくは2〜8分以内が好適に選ばれる。溶融混練時間が長くなりすぎるとポリエステル(B)が劣化する場合がある。
また、溶融混練に際して、一軸または二軸の押出機に最初にポリエステル(B)を単独で投入し、シリンダー内のポリマー流路および押出が安定した後に、所望の含有量となるよう配合した混合樹脂を投入することが好ましい。
本発明の樹脂組成物においては、所望により無機充填剤が用いられる。このような無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、カーボン粉末、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、遷移金属酸化物、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウム繊維等が例示される。
本発明の樹脂組成物に、必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができるが、高濃度の液晶性樹脂(A)を少量のポリエステル(B)中に均一分散させるためには、あらかじめ上記添加剤をポリエステル(B)中に均一分散させておくことが望ましい。
さらに、必要に応じて、相溶化剤を配合すると両樹脂の相溶性の向上に有効であるので好ましく用いることができる。この相溶化剤の例として、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコシキシランなどの有機シラン化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロレン酸などのα、β−不飽和カルボン酸、これらのエステル、無水物、ハロゲン化物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛などとの塩などの誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物とのランダム、ブロック、グラフト共重合体などの変性ポリオレフィン類、α−オレフィンおよびα、β−不飽和酸のグリシジルエステルを主構成成分とするオレフィン系共重合体などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これら2種以上を同時に使用することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる二軸延伸フィルムの積層構成は、少なくとも3層以上の積層構成とすることが二軸延伸性、寸法安定性、耐屈曲性の点から好ましく、特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を基層部を構成する樹脂とすることが本発明の特性を得る上で好ましい。フィルムの積層構成は、3層以上であれば、4層でも、5層でも構わないが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、最表層を構成する層以外に用いることが耐屈曲性の点から特に好ましい。
本発明の二軸延伸フィルムの密度は、0.6〜1.3g/cm、好ましくは0.7〜1.1g/cmである。フィルム密度を上記範囲内とすることによって、寸法安定性が良好となり好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる二軸延伸フィルムの製膜方法自体としては、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
まず、液晶性樹脂ペレットとPETペレットとを、一定の割合で混合して、280〜300℃に加熱されたベント式の二軸混練押出機に供給し、溶融混練してブレンドチップを得る。このときの二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いるのが好ましく、さらに、分散不良物を低減させる観点から、二軸3条タイプのスクリューを装備したものが好ましい。滞留時間は1〜10分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することで、高いせん断応力が付加されやすく、液晶性樹脂Bの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率が20〜60の範囲である。(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)が好ましい範囲である二軸押出機を用いることは、十分に混合するための滞留時間を制御しやすく、液晶性樹脂Aの分散相の分散径を本発明の範囲に制御することができるので好ましいが、特に限定されない。
液晶性樹脂ペレットとPETペレットを混合する上で、PETと液晶性樹脂の混合組成物あるいは相溶化剤が添加されると、分散不良物が低減できて相溶性が高まることがあるので、好ましい方法として例示される。
その後、上記ペレタイズ作業により得られた、液晶性樹脂とPETからなるブレンドチップ1、PET、および必要に応じて製膜後の回収原料を一定の割合で適宜混合して樹脂Aとし、180℃で3時間以上真空乾燥した後、270〜300℃の温度に加熱された押出機1に投入する。一方、押出機2には、PETおよび必要に応じて適宜粒子を混合した原料(樹脂B)を乾燥した上で投入する。その後、押出機1,2を経た溶融ポリマーをフィルター内を通過させた後、その溶融体を口金内のマルチマニホールドを用いて合流させて3層積層(B/A/B)し、その後、Tダイを用いてシート状に吐出し、このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法または同時二軸延伸法を用いることができるが、未延伸フィルムを一旦ガラス転移温度以上の温度に上げ、次いでガラス転移温度以下に下げ、長手方向、幅方向の延伸を行なうのが特に有効である。長手方向の延伸は二本のロールの周速差を利用し2段階以上に分けて、延伸温度80〜180℃で行うことが好ましく、なかでも、通常、その1段目の延伸温度を60〜130℃とし、2段目以降の延伸温度はそれより高くすることが好ましい。総縦延伸倍率は2.0〜6.0倍、縦延伸速度は5,000〜50,000%/分の範囲で行なうのが好ましい。幅方向の延伸はテンタ−を用いる延伸方法が好ましく、その延伸温度は80〜180℃が好ましく、その延伸倍率は2.0〜6.0倍の範囲で、また、その延伸速度は1,000〜20,000%/分の範囲で行なうのが好ましい。次にこの二軸延伸フィルムを熱処理する。この場合の熱処理温度は180〜250℃、特に200〜240℃が、また、熱処理時間は0.5〜60秒の範囲が好適である。
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)溶融粘度
フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用いて、口金長さを10mm、口金径を1.0mmとして、予熱時間を5分に設定して測定した。
(2)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式により計算される値を用いた
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。
また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
(3)液晶性樹脂の分散ドメイン径
熱可塑性樹脂組成物を0.3mg程度トリミングし、(液晶性樹脂の融点)℃〜(該液晶性樹脂の融点+50)℃に加熱されたホットプレート上のカバーグラスにおき1分間溶融させる。さらに、その上にカバーグラスを置き1分間静置した後、カバーグラスを破損しないよう注意しながらサンプルの中心部を溶融樹脂が直径4〜6mmの円状になるようにピンセットを用いてプレスし、その後に、表面温度26℃の鉄板上で2秒間急冷する。でき上がったプレパラートを光学顕微鏡の透過法明視野にて形態観察する。プレス条件としては、光学顕微鏡の透過法明視野にて形態観察したときに、液晶性樹脂の分散ドメインの界面が確認できる程度に薄くかつ気泡が混入しないようにプレスされていることが必要である。プレスが不十分であると、サンプルの厚みが薄くならず観察時に光が散乱し液晶性樹脂の分散ドメインの界面の確認がむずかしい場合がある。また、プレスが強すぎるとサンプルに気泡が多数混入するため、液晶性樹脂による分散ドメインの界面の確認がむずかしいので、再度、溶融プレパラートを気泡が混入しないように作成し直す必要がある。上記のようにして、溶融プレパラートを10枚作成する。
観察倍率は、分散相の状態により適宜選択することとするが、200倍〜1000倍程度が例示でき、溶融プレパラートを変え、写真を10枚撮影し、各写真中の分散ドメイン径の最も大きい分散ドメイン径を計測し、その平均を液晶性樹脂の分散ドメイン径と定義した。あらかじめ液晶性樹脂(A)およびポリエステル(B)を単独で上記の方法にてプレパラートを作成しておき、透過法明視野での濃淡を観察しておくと分散ドメイン径の計測に有効である。一般に、液晶性樹脂(A)は濃色、ポリエステル(B)は透明を呈するので、本発明で得られた組成物のプレパラートの分離相の濃淡で容易に分散ドメイン径は計測できる。
(4)ガットの表面性および切断性
所望の液晶性樹脂(A)およびポリエステル(B)を二軸混練押出機を用いて混練し、風乾しながらガット状に引きチップ化する。得られた、ガットの表面状態、切断性を下記に基づき判断した
表面性:
優 :光沢があり、ざらつきや凸凹が全くない。
良好:光沢はあるもののざらつきおよび凸凹がわずかに確認できる。
不良:光沢が全くなく、全面が縄のように凹凸だらけ。
切断性:
優 :チップの縦割れがなく、切断面がそろっている。
良好:切断面の端面の一部がハイエッジを起こしている。
不良:縦割れを起こし、チップが脆い。
(5)熱膨張係数
熱機械測定装置TMA/SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mm、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷した。室温から175℃(設定185℃)まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持した。その後、40℃まで10℃/分で降温させ、20分間保持した。このときの降温部分160℃から60℃までの寸法変化量から、下記式により熱膨張係数を求めた。熱膨張係数が30ppm/℃以下のものを良好とした。特に、回路基盤用フィルムとして好適に用いるには、熱膨張係数が7〜20ppm/℃以下であり、これを判定:優とする。
温度膨張係数α(1/℃)={(L160−L60)/L0}/△T
L0:23℃におけるフィルム長さ
L160:降温時の160℃におけるフィルム長さ
L60:降温時の60℃におけるフィルム長さ
△T:温度変化量(160−60=100)
(6)耐屈曲性
フィルムのMD方向、TD方向に幅10mm、長さ150mmにフィルムを切り出し、それぞれについて東洋精機(株)製MIT屈曲試験機を使用し、JIS−P−8115に基づいて荷重2.5Kgf/mm、折り曲げ角左右それぞれ135度、折り曲げ面曲率半径1mm、折り曲げ速度175回/minで屈曲試験を行った。耐屈曲性の判断は、屈曲試験の回数がMD、TD方向ともに10万回以上を優、いずれかの方向が3万〜10万回未満を良、何れかの方向が3万回未満を不良とした。
(7)比重
フィルムの比重測定は、ミラージュ貿易(株)製SD−120Lを用い、23℃測定比重を25℃比重に換算した値を用いた。フィルムサンプルは4cm×5cmとした。
(8)成形加工性(二軸延伸性)
本発明の熱可塑性樹脂組成物を中間層に用いてA/B/A(未延伸時の積層比=1:1:1)の3層積層構成となるように溶融押出して逐次二軸延伸を実施した。面積倍率4倍以上で延伸破れなく二軸延伸できるものを良好、面積倍率12倍以上延伸できるものを優、1軸しか延伸できないものを不良と判断する。
実施例1
ポリエステル(B)として、酸成分としてテレフタル酸ジメチル160重量部とイソフタル酸ジメチル34重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングした。その後、得られたポリエステルを減圧下において固相重合する。固相重合の条件としては、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、230℃で1mmHg程度の減圧下で15時間固相重合させて、固有粘度0.65を有したポリエステルを得る。このようにしてイソフタル酸を17.5モル共重合させたPETチップ(PET1、溶融粘度20Pa・s)を作成した。上記PET1チップ30重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”5000高融点グレード、溶融粘度250Pa・s)(LCP1)70重量部を配合したブレンドペレットを180℃で3時間真空乾燥した。290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)にまず、PET1ペレットを投入し、滞留時間3分、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出した。その後、口金部を285℃に設定し安定した後、上記ブレンドペレットを投入し溶融押出してストランド状に吐出し、風乾冷却した後、直ちにカッティングした。また、テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングした。その後、得られたポリエステルを減圧下において固相重合する。固相重合の条件としては、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、230℃で1mmHg程度の減圧下、13時間固相重合させて、固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。
次いで、上記の無粒子のPETチップに、平均径0.6μmの球形シリカ粒子の含有割合が0.2重量%になるように、粒子マスターを配合して樹脂Aとし、180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Iに供給した。また、一方、上記のPET1/LCP1(30/70重量%)のブレンドチップを樹脂Cとし、180℃で3時間真空乾燥した後、290℃に加熱された押出機IIに供給した。次いで、これらの2台の押出機で溶融したポリマーをそれぞれフィルターで濾過した後、3層用のマルチマニホールド(口金積層)を使用して、A/C/Aの3層積層とした。マルチマニホールドを通過させるポリマー流量は、それぞれのラインに設置されたギヤポンプの回転数を調節し、押出量を制御することによって合わせた。このように溶融ポリマーを3層積層状態にして溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着させて冷却固化し、ドラフト比(口金スリット間隙/未延伸フィルム厚さの比)8で引き取って未延伸積層フィルムを作製した。
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に、温度90℃で1.2倍、温度93℃で2.5倍、続いて温度95℃で1.3倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度100℃で3.3倍延伸した。続いて、定長下で温度230℃で10秒間熱処理した後、幅方向に1%の弛緩処理を施し、総厚み厚さ50μm、基層部積層厚み28μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとした。
得られた二軸配向フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1,2に示したとおりであり、このフィルムは低熱膨張性、耐屈曲性、二軸延伸性に優れたものであった。
実施例2
液晶性樹脂(A)として、下記組成の液晶性ポリエステルと実施例1で使用したLCP1を1:9の割合で配合したものを用いた(溶融粘度200Pa・s:LCP2)。ポリエステル(B)は、実施例1の無粒子PETの固相重合時間を調節して固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレートを用いた。これ以外は、実施例1と同様にして、LCP含有率80重量%のブレンドチップ(PET2/LCP2)を得た。このブレンドチップを樹脂Cに用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向フィルムを得た。評価結果は、表1,2に示したとおりであり、このフィルムは低熱膨張性、耐屈曲性、二軸配向性に優れたものであった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 56.8モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 5.9モル%
エチレングリコール 15.7モル%
テレフタル酸 21.6モル%
実施例3
液晶性樹脂(A)として、下記組成の液晶性ポリエステルおよび東レ(株)製の液晶性樹脂(“シベラス”)を4:6の割合で配合したものを用いた(溶融粘度600Pa・s)(LCP3)。これ以外は実施例2と同様にして、LCP含有率60重量%のブレンドチップ(PET2/LCP3)を得た。このブレンドチップを樹脂Cに用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向フィルムを得た。評価結果は、表1、2に示したとおりであり、このフィルムは低熱膨張性、二軸配向性に優れたものであった。
液晶性ポリエステルの共重合組成
p−ヒドロキシ安息香酸 31.2モル%
4,4’−ジヒドロキシビフェニル 4.9モル%
エチレングリコール 29.5モル%
テレフタル酸 34.4モル%
比較例1
テレフタル酸ジメチル194重量部とエチレングリコール124重量部に、酢酸マグネシウム4水塩0.1重量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチル0.05重量部のエチレングリコール溶液、および三酸化アンチモン0.05重量部を加えて5分間撹拌した後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。3時間重合反応させ所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングした。その後、得られたポリエステルを減圧下において固相重合する。固相重合の条件としては、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、230℃で1mmHg程度の減圧下、15時間固相重合させて、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレート(PET3)のペレットを得た。該ポリエチレンテレフタレートのペレットのガラス転移温度は78℃であり、融点は255℃であった。なお、温度290℃、せん断速度200(1/sec)における溶融粘度は200Pa・sであった。
次いで、得られたPET2チップ30重量部と実施例1で用いた液晶性樹脂(LCP1)70重量部を配合したブレンドペレットをそれぞれ180℃で3時間真空乾燥した。290℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)にまずPET2ペレットを投入し、実施例1と同様にして溶融押出してストランド状に吐出し、風乾冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET3/LCP1)を得た。
比較例2
実施例1で得られたPET1チップ30重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”5000低融点グレード、溶融粘度60Pa・s)(LCP4)70重量部配合したブレンドペレットを180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)にPET1ペレットを投入し、滞留時間10分、スクリュー回転数30回転/分で溶融押出してストランド状に吐出した。その後、シリンダー計量部および口金部を295℃に設定し安定した後、上記ブレンドペレットを投入してストランド状に吐出し、風乾冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET1/LCP4)を得た。このブレンドチップを樹脂Cに用いる以外は実施例1と同様にして延伸した。評価結果は、表1、2に示したとおりであった。
比較例3
実施例1で用いたPET1チップ15重量部と上野製薬(株)製の液晶性樹脂(“上野LCP”8000、溶融粘度25Pa・s)(LCP5)85重量部配合したブレンドペレットを180℃で3時間真空乾燥した後、このブレンドペレットを270℃に加熱された同方向ベント式二軸混練押出機(スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=30)に投入し、滞留時間3分、スクリュー回転数200回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、風乾冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(PET1/LCP5)を得た。このブレンドチップを樹脂Cに用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向フィルムを得た。評価結果は、表1、2に示したとおりであった。
比較例4
実施例1で用いたLCP1チップ10重量%およびPET1チップ90重量%に配合量を変更する以外はすべて実施例1と同様にしてブレンドチップ(PET1/LCP1)を作成し、このブレンドチップ樹脂Cに用いて二軸配向フィルムを得た。評価結果は、表1、2に示したとおりであった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、磁気記録媒体用基材、工程・剥離材料、印刷材料、成型材料、建材などの樹脂加工工程が必要な各種工業材料用途に好適に使用できる。
Figure 2006002082
Figure 2006002082

Claims (5)

  1. 液晶性樹脂(A)60〜80重量%と、ポリエステル(B)40〜20重量%からなる樹脂組成物であって、液晶性樹脂(A)の融点(℃)〜(該液晶性樹脂(A)の融点+50)(℃)の溶融温度条件下で溶融プレスした後急冷したとき、液晶性樹脂(A)からなる相が分散相を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 液晶性樹脂(A)からなる分散相のドメイン径(長径)が3〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 溶融温度290℃、せん断速度200sec−1時での液晶性樹脂(A)の溶融粘度(σA)とポリエステル(B)の溶融粘度(σB)の比(σA)/(σB)が、3〜30であることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリエステル(B)の固有粘度が、0.45〜0.60(dl/g)以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を基層部に積層した少なくとも3層以上の積層構成を有するフィルムであり、その密度が0.6〜1.3g/cmである二軸延伸フィルム。
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