JP5684689B2 - ポリエステル樹脂およびそれを用いたポリエステルフィルム - Google Patents
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成分Aと成分Bのモル比が70:30〜90:10の範囲で、成分Cと成分Dのモル比が80:20〜95:5の範囲にあること、そして
成分Cと結合している成分B(成分BC)と、成分Dと結合している成分B(成分BD)とのモル比が、40:60〜60:40の範囲にあるポリエステル樹脂およびそれを用いたポリエステルフィルムが提供される。
本発明における成分Aは芳香族ジカルボン酸成分であり、具体的には、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。力学的特性の点からテレフタル酸成分と2,6−ナフタレンジカルボン酸成分とが好ましく、さらに耐熱性もより高度にできることから、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
本発明における成分Bは脂肪族ダイマー酸成分である。耐熱性と湿度変化に対する寸法安定性の点から、成分Bの数平均分子量は200以上であることが好ましい。一方、数平均分子量の上限は特に制限されないが、反応のしやすさなどの点から400以下であることが好ましい。好ましい数平均分子量の下限は220以上、さらに240以上であり、好ましい数平均分子量の上限は350以下、さらに300以下である。
なお、具体的な脂肪族ダイマー酸としては、炭素数5〜20の直鎖状アルキレン基の両末端に水酸基がそれぞれ付加した構造が挙げられ、前記直鎖状アルキレン基の水素の一部が、炭素数1〜4のアルキル基に置換されたものも好ましく挙げられる。
本発明における成分Cはエチレングリコール成分である。
本発明における成分Dは炭素数6〜10のアルキレングリコール成分であり、具体的には、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールが挙げられ、これらの中でも1,6−ヘキサンジオールが本発明の効果の点から好ましい。
本発明のポリエステルは、酸成分が主として前記成分Aと前記成分B、グリコール成分が主として前記成分Cと前記成分Dからなるものである。
本発明において、前記成分Aと成分Bのモル比は70:30〜90:10の範囲である。前記範囲にあることで、耐熱性と耐加水分解性とを高度に発現させることができる。好ましい前記成分Aと成分Bのモル比の下限は77:23、さらに75:25、上限は91:19、さらに85:15である。
つぎに、本発明におけるポリエステルの製造方法について、以下で説明する。
まず、成分A〜Dの原料を用意する。具体的には、成分Aの原料として芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体を、成分Bの原料として脂肪族ダイマー酸もしくはそのエステル形成性誘導体を、成分Cの原料としてエチレングリコールを、成分Dの原料として炭素数6〜10のアルキレングリコールを用意する。そして、これら成分A〜Dの原料を、エステル化反応もしくはエステル交換反応を経由し、重縮合反応させればよい。ただ、これら成分A〜Dの原料を、最初から所望の割合で混合して反応させるだけでは、前述の組成や結合状態にすることは困難であり、以下、成分Aの原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、成分Dとして、1,6−ヘキサンジオールを用いた場合を例にとって説明する。
なお、ポリエステル前躯体EやFを製造する際のエステル化反応やエステル交換反応の条件(温度、圧力、時間、触媒種)は、それ自体公知のものを採用できる。
本発明のポリエステルフィルムは、前述のポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。
本発明のポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現するため、フィルム面方向における少なくとも一方向に延伸された配向ポリエステルフィルムであることが好ましく、さらに製膜方向と幅方向の両方向に延伸された二軸配向ポリエステルフィルムであることがさらに好ましい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
ガラス転移点と融点は、DSC(TAインスツルメンツ(株)製、商品名:DSC2920)によりサンプル重量20mg、昇温速度10℃/minで測定した。
グリコール成分については、試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に1H−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、芳香族ジカルボン酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、13C−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
試料60mgをP−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1の混合溶媒に140℃で溶解した。完全に溶解したことを確認後、13C−NMRを140℃で測定し、各成分のピーク面積比から求めた。
ポリエステルを、押し出し機に供給して300℃(平均滞留時間:20分)でダイから溶融状態で回転中の温度55℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度がTg+25℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、横延伸温度Tg+30℃で横延伸倍率3.5倍、熱固定処理(205℃で10秒間)および冷却を行い、厚さ4.5μmの二軸延伸フィルムを得た。
この際、1000m以上の切断することなく製膜できたものを製膜性○、できなかったものを製膜性×とした。
得られた共重合芳香族ポリエステルを定量し、それをベンジルアルコール中で加熱溶解し、フェノールレッドおよびNaOH水溶液を滴下した。溶液が黄色から赤色に変色する中間点におけるNaOH水溶液量からカルボキシル基濃度を算出した。測定は室温で行い、1トン当りの当量として、eq/Tで示した。また、ポリマーの耐加水分解性を評価するため、得られた共重合芳香族ポリエステルを0.5mm程度の大きさに粉砕した後に、140℃で3時間加熱して結晶化させた。その後、プレッシャークッカーにて140℃、湿度100%RHの条件下で24時間の加速寿命試験を行い、試験後のCOOH量を測定した。そして、加速寿命試験後のCOOH量と加速寿命試験を行う前のCOOH量とから、加速寿命試験によって増加した末端カルボキシル基量を求めた。増加した末端カルボキシル基量が少ないほど、ポリマーの耐加水分解性に優れると判断した。
エステル交換反応容器に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、エチレングリコール、酢酸マンガン(2,6−ナフタレンジカルボン酸のモル数を基準として30mmol%)を仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらリン化合物としてフェニルホスホン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸のモル数を基準として50mmol%)を添加し、エステル交換反応(以下、EI反応と略す)を終了させた。続いて5分後に、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加し(2,6−ナフタレンジカルボン酸のモル数を基準として20mmol%)、240℃まで加熱して一部のエチレングリコールを留出させて、ポリエステル前躯体E1を作成した。
一方、脂肪族ダイマー酸として、下記式(A)で示される分子量258のダイマー酸を用意し、1,6−ヘキサンジオールと酢酸マンガンを仕込み、反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成する水を反応容器外へ留出させた。
HO(O)C-CH2CH2CH2CH(CH2CH3)CH(CH2CH3)CH2CH2CH2-C(O)OH (A)
水の留出が終了したらリン化合物としてフェニルホスホン酸を添加し、エステル化反応を終了させた。続いて5分後に、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加し(ダイマー酸のモル数を基準として20mmol%)、240℃まで加熱して一部の1,6−ヘキサンジオールを留出させて、ポリエステル前躯体F1を作成した。
このようにして得られたポリエステル前躯体E1とF1とを、内部に撹拌翼を有する重縮合装置に移行した。この際、両者の重量比を70:30となるように仕込んだ。その後、10分間溶解攪拌させた後に、徐々に真空度を高めながら35分間を要して、反応温度を290℃に到達せしめた。この温度を保持して真空度を40Paに保ち、重縮合反応(PN反応と略す)を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体E1とF1との仕込みを、重量比55:45となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体E1とF1との仕込みを、重量比80:20となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
実施例1において、1,6−ヘキサンジオールの代わりに、1,8−オクタンジオールを用いたほかは、同様な操作を繰り返した。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
実施例1において、ポリエステル前躯体E1の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルの代わりに、テレフタル酸ジメチルを用いたほかは、同様な操作を繰り返した。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体F1の添加のタイミングを、実施例1におけるポリエステル前躯体E1のEI反応の始めに変更し、その際の添加量を30重量%から33重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体E1とF1との仕込みを、重量比45:55となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体E1とF1との仕込みを、重量比90:10となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
ポリエステル前躯体E1とF1との仕込みを、重量比100:0となるように変更する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
実施例1において、1,6−ヘキサンジオールの代わりに、1,4−ブタンジオールを用いたほかは、同様な操作を繰り返した。得られたポリエステルの固有粘度は0.62dl/gであった。得られたポリエステルのポリマー物性およびフィルムに製膜したときの製膜性と耐加水分解性とを表1に示す。
Claims (6)
- 酸成分が芳香族ジカルボン酸成分(成分A)と脂肪族ダイマー酸成分(成分B)とからなり、グリコール成分がエチレングリコール成分(成分C)と炭素数6〜10のアルキレングリコール成分(成分D)とからなるポリエステルであって、
成分Aと成分Bのモル比が70:30〜90:10の範囲で、成分Cと成分Dのモル比が80:20〜95:5の範囲にあること、そして
成分Cと結合している成分B(成分BC)と、成分Dと結合している成分B(成分BD)とのモル比が、40:60〜60:40の範囲にあることを特徴とするポリエステル樹脂。 - 成分Aとのみ結合している成分C(成分CA)の割合が、成分Cのモル数を基準として90モル%以上である請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 成分Aと結合している成分D(成分DA)と、成分Bと結合している成分D(成分DB)とのモル比が、40:60〜60:40の範囲にある請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 成分Aがテレフタル酸成分または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分のいずれかである請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 成分Bが分子量200以上の脂肪族ダイマー酸成分である請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなるポリエステルフィルム。
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