JP2006001138A - 樹脂成形品の成形方法および成形装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱可塑性樹脂製のシート状ベース層に意匠面をなす印刷層を積層してなるシート状の表皮材を一対の成形金型の間にセットし、金型隙間が第1所定値となる初期型締め位置S1に可動型を位置設定させ、熱可塑性樹脂材料でなる成形品基材樹脂を表皮材の背面側から成形空間内に向かって供給した後、金型隙間が上記第1所定値よりも小さい第2所定値となる最終型締め位置まで可動型を所定の型締め速度で移動させた上で保圧し、その後、型開きすることを特徴とし、上記第1所定値が1〜50mmに設定され、上記所定の型締め速度が0.1〜50mm/秒に設定されている、ことを特徴とする。
【選択図】図5
Description
この特許文献1には、雄型と雌型の型締めを開始し、この型締め動作を一時停止させるか又は型締め速度を低く制限し、雄型と雌型のキャビティクリアランスを所定値とした状態で、表皮材と雄型との間に成形品基材樹脂を供給することにより、風合の優れた多層成形品を安定して製造できることが記載されている。
また、以上の場合において、上記最終型締め工程での型締め速度は1.5〜40mm/秒に設定されていることがより好ましい。
更に、以上の場合において、上記成形金型の温度は40〜130℃に維持されていることが更に好ましい。
本発明において、上記第1所定値の下限値を1mmとしたのは、この値未満では、表皮材が成形金型間に拘束され、溶融樹脂の射出時に金型キャビティに沿うように自由に移動できなくなり、表皮材に皺が生じたり、部分的に引き伸ばされて良好な成形が困難となるからである。特に、上記第1所定値を10mm以上に設定することで、より確実に、皺発生を防止し成形性を確保することができる。
一方、第1所定値の上限値を50mmとしたのは、この値を越えると、過延伸によるフィルム皺や印刷層の剥離が発生し易くなるからである。特に、上記第1所定値を40mm以下に設定することで、過延伸によるフィルム皺や印刷層の剥離の発生を、より確実に防止できる。
本発明において、上記型締め速度の下限値を0.1mm/秒としたのは、この値未満では、過延伸により表皮材にフィルム皺や印刷層の剥離が発生し易くなり、また、充填樹脂の温度低下が大きくなって樹脂賦形性の低下を招くからである。特に、この下限値を1.5mm/秒に設定することで、これらの不具合発生をより確実に防止することができる。
一方、上記型締め速度の上限値を50mm/秒としたのは、この値を越えると、表皮材の延伸程度が小さく、その形状賦形性が低くなり、表皮材が破損する惧れがあるからである。特に、特に、この上限値を40mm/秒に設定することで、これらの不具合発生をより確実に防止することができる。
本発明において、上記金型温度の下限値を40℃としたのは、この値未満では、十分な樹脂賦形性やフィルム形状賦形性が得られないからである。一方、金型温度の上限値を130℃としたのは、この値を越えると、表皮材の過延伸により印刷層の剥離が生じたり、基材樹脂の固化不足により成形品の形状不良(反り等の変形)が生じる惧れがあり、また、成形サイクルが過度に長くなるからである。
更に、より好ましくは、初期型締め位置を上記第1所定値が10〜40mmとなる位置に設定することで、より確実に上記の不具合発生を防止することができる。
更に、より好ましくは、最終型締め工程での型締め速度を1.5〜40mm/秒に設定することで、より確実に上記の不具合発生を防止することができる。
まず、本実施形態に係る成形方法を実施するための射出成形装置について説明する。かかる射出成形装置としては、例えば特許文献1に開示されたものを好適に用いることができる。
図1は、本実施形態に係る成形方法を実施するための射出成形装置の全体構成を概略的に示す説明図である。この図に示すように、上記射出成形装置100は、例えば横型締めタイプとされた射出機30、型締装置20、金型装置10、制御装置60とで構成されている。金型装置10は、固定盤1に取り付けられた固定金型3と可動盤2に取り付けられた可動金型4とからなり、可動盤2および可動金型4は型締装置20の型締シリンダ22で前後進できるように構成されている。型締装置20は、金型装置10の金型の型開、型閉を作動する型締シリンダ22を備えており、可動金型4が固定金型3に対して図示しないタイバーに案内されて前後進する。
上記型締制御部62は、具体的には図示しなかったが、可動金型4の型締め位置を必要に応じて多段階に設定し得る型締め位置設定部と、可動金型4の型締め速度(型締めプレス速度)を必要により型締め位置に応じて可変させるように設定し得る型締め速度設定部とを備えており、これら2つの設定部の設定値に基づいて、金型開閉期間中(つまり、型締開始から最終型締を経て型開き完了に至るまでの期間中)の型締め位置および型締め速度が制御されるようになっている。上記型締め速度設定部は、型締め速度を型締め位置に応じて多段階に変化するように設定することができ、また、連続的に変化するように設定することもできる。
本発明の成形方法は、下記の工程を備えている。
(イ)熱可塑性樹脂製のシート状ベース層に意匠面をなす印刷層を積層してなるシート状の表皮材を準備する表皮材準備工程。
(ロ)固定金型3と可動金型4とでなる一対の成形型の間に上記表皮材をセットする表皮材セット工程。
(ハ)上記表皮材セット工程後に、上記両成形型間の隙間が第1所定値となる初期型締め位置に、上記可動金型4を位置設定する初期型締め工程。
(ニ)上記初期型締め工程後に、熱可塑性樹脂材料でなる成形品基材樹脂を、上記表皮材の背面側から成形空間内へ向かって供給する基材樹脂供給工程。
(ホ)上記基材樹脂供給工程後に、上記両成形型間の隙間が上記第1所定値よりも小さい第2所定値となる最終型締め位置まで、上記可動型を所定の型締め速度で移動させる最終型締め工程。
(ヘ)上記最終型締め状態で所定時間保持する保圧工程。
(ト)上記保圧工程後に、上記可動型を移動させて型開きする型開き工程
(チ)上記型開き工程後に、成形品を取り出す成形品取り出し工程。
(リ)上記成形品取り出し工程後に、成形品をトリミングするトリミング工程。
図2は本発明の成形方法の概略を模式的に示す説明図、図3は本発明の成形方法で得られた成形品の断面構造を模式的に示す断面説明図、図4は本発明の成形方法の一部の工程を模式的に示す断面説明図である。また、図5は型締め動作を説明するための線図であり、横軸が時間を表わし、縦軸は可動金型の表皮材との接触ポイントを基準とした位置を示している。
熱可塑性樹脂製のベース層としては、例えば2軸延伸PETフィルム(厚さ:約100μm)の硬質透明のフィルム材を用い、これに例えば塩化ビニル樹脂製(厚さ:約25μm)の印刷層を積層した表皮材を用意し、これを適当なサイズに設定して準備した。上記印刷層には、例えば特許文献2に開示されたような特定の配合条件により調合した光反射性アルミニウム微粉末を含有した光輝インクを用いてスクリーン印刷したものを用いた。
前述のように、「金型隙間」とは最終製品寸法まで両金型を型締めした状態(つまり、全閉状態)を金型隙間が0(ゼロ)とし、この状態より型開き方向へ可動金型4が移動した距離(間隔)を言い、上記第1所定値は、1〜50mmに設定するのが好ましく、10〜40mmが更に好ましい。
上記第1所定値の下限値を1mmとしたのは、この値未満では、表皮材5が固定金型3と可動金型4に拘束され、成形品基材樹脂6の射出時に金型キャビティに沿うように自由に移動できなくなり、表皮材5に皺が生じたり、部分的に引き伸ばされて良好な成形が困難となるからである。特に、上記第1所定値を10mm以上に設定することで、より確実に、皺発生を防止し成形性を確保することができる。
一方、第1所定値の上限値を50mmとしたのは、この値を越えると、過延伸によるフィルム皺や印刷層の剥離が発生し易くなるからである。特に、上記第1所定値を40mm以下に設定することで、過延伸によるフィルム皺や印刷層の剥離の発生を、より確実に防止できる。
尚、初期型締め位置は、この基材樹脂供給中において必ずしも固定しておく必要はない。特に、初期型締め工程における第1所定値が比較的大きい場合には、射出充填された成形品基材樹脂6のドローダウンが生じ易くなるので、必要に応じて初期型締め位置を前述の範囲内で調節するようにしても良い。
本実施形態において、金型温度の下限値を40℃としたのは、この値未満では、十分な樹脂賦形性やフィルム形状賦形性が得られないからである。一方、金型温度の上限値を130℃としたのは、この値を越えると、表皮材の過延伸により印刷層の剥離が生じたり、基材樹脂の固化不足により成形品の形状不良(反り等の変形)が生じる惧れがあり、また、成形サイクルが過度に長くなるからである。特に、金型温度を熱可塑性樹脂製のシート状ベース層のガラス転移温度以上に維持するのが、上記効果をより確実に得る上で好ましい。
初期型締め状態において金型隙間が適正に維持されていれば、成形品基材樹脂6の射出初期に形成する所謂ブリッジ効果により、成形品基材樹脂6の垂下がり(ドローダウン)が防止される。このブリッジ効果とは以下のようなものである。即ち、固定金型3側から射出された成形品基材樹脂6が表皮材5に到達して、射出圧力で表皮材5を可動金型4側に押し当てることにより、突っ張り作用によって成形品基材樹脂6のドローダウンを防止するものである。
この最終型締め工程では、金型隙間が上記第1所定値よりも小さい第2所定値(つまり、実質的に0)となる最終型締め位置S3(図5参照)まで、可動金型4が所定の型締め速度で移動させられる。この型締め速度(プレス速度)としては、0.1〜50mm/秒が好ましく、1.5〜40mm/秒がより好ましい。
本実施形態において、上記型締め速度の下限値を0.1mm/秒としたのは、この値未満では、過延伸により表皮材にフィルム皺や印刷層の剥離が発生し易くなり、また、充填樹脂の温度低下が大きくなって樹脂賦形性の低下を招くからである。特に、この下限値を1.5mm/秒に設定することで、これらの不具合発生をより確実に防止することができる。
一方、上記型締め速度の上限値を50mm/秒としたのは、この値を越えると、表皮材の延伸程度が小さく、その形状賦形性が低くなり、表皮材が破損する惧れがあるからである。特に、特に、この上限値を40mm/秒に設定することで、これらの不具合発生をより確実に防止することができる。
以上により、1成形サイクルが完了する。
(1)表皮材
・ベース層:PET樹脂製の硬質透明フィルム(厚さ:約100μm)
・印刷層:塩化ビニル樹脂製(厚さ:約25μm)で、特定の配合条件により調合した光反射性アルミニウム微粉末を含有した光輝インクを使用。
(2)成形品基材樹脂:PP樹脂
(3)金型温度:40〜130℃
(4)樹脂温度:180〜220℃
(5)射出充填時間:0.5〜4秒
(6)初期型締め位置(第1所定値):1〜50mm
(7)最終型締め工程での型締め速度(プレス速度):0.1〜50mm/秒
図6は上記実施形態の第1変形例に係る成形方法での型締め動作を説明するための線図であるが、この図に示すように、例えば、最終型締め工程における型締め速度について、最終型締め開始(時間T2:型締め位置S1)から所定の型締め位置S3’に至る(時間T3’)までの型締め速度と、この型締め位置S3’で所定時間保持した後(時間T3”)、最終型締め位置S3に至る(時間T3)までの型締め速度とを、異ならせても良い。
図7は、上記実施形態の第2変形例に係る成形方法での型締め動作を説明するための線図である。この図に示すように、この第2変形例では、工程(ロ)の表皮材セット工程では、可動金型4は、図7における初期位置S10に位置しており、この位置S10から工程(ハ)の初期型締め工程が開始されるが、この初期型締めは、第1型締め位置S13と第2型締め位置S12の2段に分けて行われる。
尚、初期型締めにおける第1型締め位置S13は、好ましくは、表皮材5に可動金型4が接触する位置S2よりも若干型開き方向の位置に設定されている。
この場合の型締め速度(プレス速度)としては、0.1〜50mm/秒が好ましく、5〜40mm/秒がより好ましい。
4 可動金型
5 表皮材
6 成形品基材樹脂
20 型締装置
30 射出機
60 制御装置
61 射出制御部
62 型締制御部
66 タイマ
100 射出成形装置
W 成形品
Claims (5)
- 意匠面をなす印刷層を備えたシート状の表皮材を、インモールド成形法により成形品基材表面に貼り付け一体化してなる樹脂成形品の成形方法であって、
熱可塑性樹脂製のシート状ベース層に意匠面をなす印刷層を積層してなるシート状の表皮材を準備する表皮材準備工程と、
固定型と可動型とでなる一対の成形金型の間に上記表皮材をセットする表皮材セット工程と、
上記表皮材セット工程後に、上記両成形金型間の金型隙間が第1所定値となる初期型締め位置に、上記可動型を位置設定する初期型締め工程と、
上記初期型締め工程後に、熱可塑性樹脂材料でなる成形品基材樹脂を、上記表皮材の背面側から成形空間内に向かって供給する基材樹脂供給工程と、
上記基材樹脂供給工程後に、上記両成形型間の隙間が上記第1所定値よりも小さい第2所定値となる最終型締め位置まで、上記可動型を所定の型締め速度で移動させる最終型締め工程と、
上記最終型締め状態で所定時間保持する保圧工程と、
上記保圧工程後に、上記可動型を移動させて型開きする型開き工程と、を備え、
上記初期型締め位置は上記第1所定値が1〜50mmとなる位置に設定され、上記最終型締め工程での型締め速度は0.1〜50mm/秒に設定されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。 - 上記初期締め位置は、上記第1所定値が10〜40mmとなる位置に設定されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品の成形方法。
- 上記最終型締め工程での型締め速度は1.5〜40mm/秒に設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
- 上記成形金型の温度は40〜130℃に維持されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂成形品の成形方法。
- 意匠面をなす印刷層を備えたシート状の表皮材を、インモールド成形法により成形品基材表面に貼り付け一体化してなる樹脂成形品を成形する成形装置であって、
固定型と可動型とでなる一対の成形金型と、
熱可塑性樹脂材料でなる成形品基材樹脂を上記表皮材の背面側から成形空間内に向かって供給する基材樹脂供給機構と、
上記可動型を上記固定型に対して開閉駆動する型締め機構と、を備え、
該型締め機構には、上記可動型の型締め位置を多段階に設定し得る型締め位置設定部と、上記可動型の型締め速度を上記型締め位置に応じて可変設定し得る型締め速度設定部とを有し、これら2つの設定部の設定値に基づいて、金型開閉期間中の型締め位置および型締め速度を制御する型締め制御部が設けられている、
ことを特徴とする成形装置。
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