JP2005536198A - ペニバチルス種から得られる殺虫活性タンパク質およびポリヌクレオチド - Google Patents

ペニバチルス種から得られる殺虫活性タンパク質およびポリヌクレオチド Download PDF

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Abstract

本発明は、害虫駆除の独特な生物学的代替法を提供する。具体的には本発明は、新規の殺虫性タンパク質、殺虫性タンパク質の新規供給源、このような毒素をコードするポリヌクレオチドに関し、またこれらの毒素を昆虫や他の植物病虫害の駆除に用いる方法に関する。本発明は、ペニバチルス種、および同種に由来するタンパク質が鱗翅目に毒性を有するという驚くべき知見に関する。ペニバチルスの種、株、または鱗翅目に対する毒性を有するタンパク質に関する報告はこれまでない。本明細書は、鱗翅目に毒性を有するペニバチルスのCryタンパク質の最初の例でもある。また本明細書は、毒素複合体(TC)様タンパク質を有するペニバチルスの最初の報告である。本明細書に開示したDAS1529単離株は、Cry毒素とTCタンパク質の両方を産生する天然の細菌の最初の例でもある。本発明は、殺虫活性を有する新しいクラスのCryタンパク質およびTCタンパク質にも関する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2002年6月28日に出願された仮出願第60/392,633号、および2003年1月21日に出願された仮出願第60/441,647号の優先権を主張する。
発明の背景
昆虫および他の害虫は農民に対して、収穫高の減少に、また害虫駆除に要する費用に、年間数十億ドルの負担を強いている。農業生産環境において害虫によって生じた損失には、作物収量の減少、作物の質の低下、および収穫にかかる費用の増額などが含まれる。害虫はまた、野菜や果物の生産者、花卉生産者、および家庭の園芸愛好家や家主に負担を強いる。
輪作や窒素肥料の大量使用などの栽培法は、農業病害虫に起因する問題をある程度は解決する。しかし、農地使用に関する経済的要求は輪作の実施を制限している。また、一部の昆虫は冬眠する性質をもつことから、地域によっては輪作は不可能である。
そこで合成化学殺虫剤が、駆除を十分に達成するために大量に必要とされている。しかし、合成化学殺虫剤の使用にはいくつかの欠点がある。例えば一部の化学物質の使用は、多くの有益な昆虫に有害な作用を及ぼす恐れがある。また標的昆虫が、一部の化学殺虫剤に耐性を獲得する場合もある。これは、さまざまな耐性管理戦略をとることで、ある程度緩和できるが、代替的な害虫駆除剤の必要性は高まっている。また、幼虫の数の多さ、雨量の多さ、および殺虫剤散布装置の不適切な較正が、十分な駆除につながらない場合がある。殺虫剤の不適当な使用は、土壌や地上水源および地下水源の汚染といった環境上の問題を引き起こす。処理後の果物、野菜、および他の処理済み植物に薬剤が残る恐れもある。一部の殺虫剤の使用は、薬剤を使用する人間に有害な場合もある。したがって合成化学殺虫剤は、その潜在的な環境毒性上の問題に関して精査されつつある。殺虫剤使用に対する新たな厳格な制限と、一部の有効殺虫剤の市場からの回収は、有害で費用のかかる害虫の駆除に対する、経済的で有効な選択肢を制限してしまう可能性がある。
合成化学殺虫剤の使用に伴う問題があるため、こうした薬剤の使用の制限と、代替的な駆除剤の開発が求められている。合成化学殺虫剤、またはこうした薬剤を組み合わせた使用を、生物由来の殺虫剤で置き換えることができれば、環境中における毒性化学物質濃度の低下につながると考えられる。
現在大きな問題なく使用されている一部の生物学的殺虫剤は、土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)に由来する。土壌微生物バチルス・チューリンギエンシス(B.t.)は、グラム陽性の胞子形成細菌である。B.t.株の大半は殺虫活性を示さない。一部のB.t.株は、副芽胞(parasporal)結晶タンパク質封入体を産生し、また、この産生を特徴とする場合がある。このような封入体は、顕微鏡下で、特徴的な形状をした結晶として観察されることがある。一部のB.t.タンパク質は、昆虫などの害虫に対する毒性が極めて高く、その毒性活性が特異的である。一部の殺虫性B.t.タンパク質は封入体と結合している。このような「δ-エンド毒素」は、宿主域が非特異的なエキソ毒素とは異なる。他の種のバチルスも殺虫性タンパク質を産生する。
一部のバチルス毒素遺伝子は単離されていて配列が決定されており、また組換えDNAベースの産物が作製されており、使用の承認が得られている。また、遺伝子工学的手法を用いることで、このような毒素を、農業環境に使用する多様な方法が改善されつつある。例として、昆虫耐性の毒素遺伝子をもつように遺伝子工学的に作出された植物の使用や、安定化された微生物細胞の毒素輸送体としての使用が挙げられる。したがって、単離されたバチルス毒素遺伝子は商業的価値が高まりつつある。
B.t.殺虫剤の商業的使用は当初、狭い範囲の鱗翅目(毛虫)の害虫を標的とするように制限されていた。バチルス・チューリンギエンシス亜種クルスタキの胞子および結晶の調製物は、鱗翅目の害虫に対する市販の殺虫剤として長く使用されている。例えばバチルス・チューリンギエンシス亜種クルスタキHD-1は、数種の鱗翅目の昆虫の幼虫に毒性を示す結晶δ-エンド毒素を産生する。
最近になってB.t.の新しい亜種が同定され、活性δ-エンド毒素タンパク質に関連する遺伝子が単離されている。HofteおよびWhiteleyは、B.t.結晶タンパク質遺伝子を、CryI(鱗翅目に特異的)、CryII(鱗翅目および双翅目に特異的)、CryIII(鞘翅目に特異的)、ならびにCryIV(双翅目に特異的)の4つの主なクラスに分類した(Hofte, H.、H.R. Whiteley、1989、Microbiological Reviews;52(2):242-255)。他の害虫に特異的に毒性を示す株の知見についての報告がある。例えばCryVおよびCryVIは、線虫に特異的な毒素遺伝子のクラスであると提案されている。
鱗翅目に特異的なCryI結晶タンパク質は、天然の状態で約130〜140 kDaのタンパク質であり、バチルス・チューリンギエンシスの胞子形成時に、両錐体(bipyramidal)結晶封入体中に蓄積する。このタンパク質は、昆虫の中腸のアルカリ性環境中では可溶化した状態のプロ毒素であり、結晶に結合したプロテアーゼ、または幼虫の中腸に存在するプロテアーゼの作用でタンパク質分解され、60〜70 kDaの毒性コア断片に変換される。この活性化は、さまざまなプロテアーゼを用いてインビトロで進めることもできる。毒性ドメインは、プロ毒素のN末端側の半分に局在する。これは、トリプシンで活性化される毒素のN末端側のアミノ酸配列決定によって、CryIA(b)タンパク質およびCryICタンパク質について報告されている(Hofteら、1989)。切断は、「Block 5」と呼ばれる保存領域のC末端側で生じ、切断の結果、コア毒素のC末端側が形成される。短いN末端側のプロ毒素セグメントは切断後に除去される場合もある。N末端側の切断部位は、CryIAタンパク質およびCryIDタンパク質でも高度に保存されており、これらのタンパク質については毒性断片のN末端が同じ位置に局在することを示唆している。しかしCryIBは、この領域が他のCryIタンパク質とは異なる。同タンパク質もN末端側で切断されるか否かは不明である(Hofte ら、1989)。
数種のcryI遺伝子の欠失解析により、プロ毒素の3'側の半分が毒性活性に必要ないことが後に確認されている。極めて短いと報告されている毒性断片の1つは、CryIAbのコドン29と607の間に局在していた。さらに4個のコドンが3'端から、または8個のコドンが5'端から除去されると、遺伝子産物の毒性活性は完全に失われた。同様の結果は、cryIA(a)およびcryIA(c)の遺伝子について認められている(Hofteら、1989)。
cryII遺伝子は、数種の亜種の株で立方形の封入体を形成する65 kDaのタンパク質をコードする。この結晶タンパク質は、同じ株に存在する130 kDaのP1結晶タンパク質に対して、かつて「P2」タンパク質と呼ばれていたものである(Hofte ら、1989)。
cryIIA遺伝子は、バチルス・チューリンギエンシス亜種クルスタキHD-263からクローン化されており、バチルス・メガテリウムで発現される。CryIIAタンパク質を産生する細胞は、鱗翅目の種ヘリオシス・ビレセンス(Heliothis virescens)およびリマントリア・ジスパー(Lymantria dispar)に、また双翅類エデス・エジプティ(Aedes aegypti)の幼虫に毒性を示す。WidnerおよびWhitely(1989、J. Bacteriol. 171:965-974)は、2つの関連遺伝子(cryIIAとcryIIB)を、バチルス・チューリンギエンシス亜種クルスタキMD-1からクローン化した。いずれの遺伝子とも、推定分子量が71 kDaの633アミノ酸のタンパク質をコードする(バチルス・チューリンギエンシスが産生するP2タンパク質について決定された見かけの分子量よりわずかに大きい)。CryIIAタンパク質とCryIIBタンパク質は相同性が高いが(約87%のアミノ酸同一性)、殺虫スペクトルは異なる。CryIIAは、鱗翅目(マンドゥカ・セクスタ(Manduca sexta))と双翅目(エデス・エジプティ)の両種に活性を示すが、cryIIBは、鱗翅目の昆虫にのみ毒性を示す(Hofteら、1989)。CryII毒素は群として、他の群と比較して配列レベルで相対的に大きな保存(80%を上回る同一性)を示す傾向がある。これと対照的に例えば、同一性が60%に満たない数種のCryI毒素が存在する。
HofteおよびWhiteleyによる、結晶タンパク質の1989年の命名法および分類法は、毒素の推定アミノ酸配列と宿主域の両方が元となっていた。この系は、5つの主要クラスに分けられる14種類の異なる型の毒素遺伝子に適用された。多様なスペクトルの殺虫剤の活性をもつタンパク質をコードする遺伝子の知見が相次いだことから、1989年の命名法は役に立たなくなりつつあった。したがって、アミノ酸同一性のみに基づく、改訂された命名法が採用されている(Crickmoreら、1998、Microbiology and Molecular Biology Reviews 62:807-813)。接頭辞「cry」は、別のクラスに属するcytAとcytBを除く全ての毒素遺伝子に残されている。1番目の位置のローマ数字はアラビア数字に代えられ、3番目の位置の括弧は削除された。当初の名称の一部は、いくつかの例外を設けて残されたが、数字は分類し直された。現在、少なくとも37種類の1次クラスのCryタンパク質、および2種類の1次クラスのcyt毒素が存在する。国際公開公報第98/18932号や国際公開公報第97/40162号に記載された他の型の毒素もバチルス・チューリンギエンシスから知見されている。
バチルス(および他の生物学的)殺虫性タンパク質の農業分野における使用を成功させるためには、いくつかの課題がある。一部の昆虫は、バチルス毒素の作用に耐性を示す場合がある。メキシコワタノミゾウムシ(boll weevil)、タマヤナガ(black cutworm)、およびタバコガ(Helicoverpa zea)などの昆虫、ならびに多くの種の成虫は、多くのB.t. δ-エンド毒素に対してそれほど大きな感受性を以前は示さなかった。
別の潜在的な問題は、B.t.毒素に対する耐性をもつ昆虫の出現である。B.t.タンパク質毒素は当初、噴霧可能な昆虫駆除剤として製剤化された。最新のB.t.技術で、こうした毒素の遺伝子をもつ植物が単離され、形質転換が行われている。トランスジェニック植物は毒素を産生するようになるので、昆虫の駆除が可能となる。これについては、Mycogen社による米国特許第5,380,831号、第5,567,600号、および第5,567,862号を参照されたい。トランスジェニックB.t.植物は、かなり有効で、この使用は、一部の作物に対して、また地域によって多くなると推定されている。これは、耐性管理の問題が、従来の噴霧可能な使用と比べて、速やかに現れる可能性があるという、いくつかの懸念の元となっている。B.t.毒素に対して耐性を示す数種の昆虫が実験室で選択されているが、野外で耐性を示すのはコナガ(Plutella xylostella)だけである(Ferre, J.およびVan Rie, J.、Annul Rev. Entomol. 47:501-533、2002)。
B.t.トランスジェニック植物技術による耐性管理戦略は大きな問題となりつつある(例えば、天然の細菌にみられるように、多様な毒素が同じ植物に暴露可能でなので、ある毒素に耐性を示す可能性のある昆虫が生き残る確率を大きく減じて耐性が拡散される)。いくつかの戦略は、バチルス・チューリンギエンシス毒素を効率的に使用する能力を保存することに関して提示されている。このような戦略には、避難措置を伴う高用量の使用、および他の毒素への変更または併用などが含まれる(McGaugheyら、1998、"B.t. Resistance Management"、Nature Biotechnol 16:144-146)。
したがって、さまざまな昆虫を効率的に駆除するために植物で発現可能な別の遺伝子を開発する必要性は依然として大きい。新規B.t.毒素の知見に継続して取組むことに加えて、トランスジェニック植物戦略に使用可能な毒素、またはB.t.と組み合わせて昆虫駆除用のトランスジェニック植物を作出することが可能な毒素を産生する、(B.t.とは異なる)他の細菌源を知見することが極めて望ましいだろう。
フォトラブドゥス(Photorhabdus)/ゼノラブドゥス(Xenorhabdus)群の細菌から殺虫毒素遺伝子をクローン化する最近の取り組みは、バチルス・チューリンギエンシス由来の毒素の代替物を提供する可能性がある。当技術分野では、ゼノラブドゥス属の細菌が、ステイネルネマ(Steinernema)線虫と共生関連にあることがわかっている。しかし残念ながら数報の論文で報告されているように、この細菌は、幼虫に注入した場合にのみ殺虫活性を示し、経口摂取時には生物学的活性を示さなかった。
線虫または線虫の細菌共生者の殺虫特性を効率的に利用することは困難であった。したがって、経口活性を有するタンパク質性物質をゼノラブドゥス細菌から見つけ、こうして産生された産物を噴霧用殺虫剤として調製すること、またはこのようなタンパク質物質をコードする細菌遺伝子を単離して、トランスジェニック植物の作出に使用することが極めて望ましいと言える。国際公開公報第95/00647号は、昆虫を駆除するが、経口活性毒素を認識しないゼノラブドゥス起源のタンパク質毒素の使用に関する。国際公開公報第98/08388号は、ゼノラブドゥス起源の経口投与殺虫剤に関する。米国特許第6,048,838号は、経口活性を有し、ゼノラブドゥスの種および株から得られるタンパク質毒素/毒素複合体に関する。
フォトラブドゥスおよびゼノラブドゥス spp.は、昆虫病因的かつ共生的に土壌線虫と関連するグラム陰性細菌である。これらの細菌は、昆虫の体内に侵入して個体を死に導く昆虫病原性をもつ線虫の腸内に見出される。線虫が昆虫宿主の体内に侵入すると、細菌が昆虫の血体腔(開放循環系)中に放出され、細菌と線虫の両方が複数回の複製を受け、昆虫宿主は通常死ぬ。このような細菌は線虫宿主から培養時に除去することができる。このような細菌の詳細については、ForstおよびNealson、60、Microbiol. Rev. 1、1996、pp.21-43を参照されたい。
ゼノラブドゥス属は分類学的に腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属するが、この科に典型的でない特殊な形質をもつ。例えば、この属の株は通常、硝酸還元陰性でカタラーゼ陰性である。ゼノラブドゥスは最近になってようやく、第2のフォトラブドゥス属への分類が行われた。この属はフォトラブドゥス・ルミネセンス(かつてのゼノラブドゥス・ルミネセンス)の1種からなる(Boemareら、1993、Int. J. Syst. Bacteriol. 43、249-255)。この区別は、当業者であれば容易に同定可能ないくつかの明瞭な特徴に基づく。このような差違には、DNA-DNA特性解析試験、表現型(カタラーゼ活性)の存在(フォトラブドゥス)または不在(ゼノラブドゥス)、生物発光の存在(フォトラブドゥス)または不在(ゼノラブドゥス)、ゼノラブドゥスの線虫宿主の科がステイネルネマチデ(Steinernematidae)であり、フォトラブドゥスがヘテロラブディチデ(Heterorhabditidae)を宿主とすること、ならびに細胞の脂肪酸解析の比較(Janseら、1990、Lett. Appl. Microbiol. 10、131-135;Suzukiら、1990、J. Gen. Appl. Microbiol.、36、393-401)などが含まれる。また、16S rRNA遺伝子の配列に注目した最近の分子生物学的研究(Raineyら、1995、Int. J. Syst. Bacteriol.、45,379-381)、および制限酵素解析(Bruneiら、1997、App. Environ. Micro.、63, 574-580)の結果も、上記の2つの属が別個であることを支持している。
ゼノラブドゥスの推定形質には、グラム染色陰性の桿菌であること、白色〜黄色/茶色のコロニー色を呈すること、封入体が存在すること、カタラーゼ活性がないこと、硝酸塩を還元できないこと、生物発光能がないこと、培地から色素を取り込めること、ゼラチン加水分解が陽性であること、腸内細菌選択培地で成長すること、成長温度が37℃以下であること、嫌気性条件で生存可能なこと、および運動性があることなどがある。
現在、細菌ゼノラブドゥス属は、ゼノラブドゥス・ネマトフィルス、ゼノラブドゥス・ポイナリイ、ゼノラブドゥス・ボビエニイ、およびゼノラブドゥス・ベディンギイの4種を擁することが知られている(Bruneiら、1997、App. Environ. Micro.、63、574-580)。さまざまな関連株が文献に記載されている(例えばAkhurstおよびBoemare、1988、J. Gen. Microbiol.、134、1835-18D,5;Boemareら、1993、Int. J. Syst. Bacteriol. 43、pp.249-255;Putzら、1990、Appl. Environ. Microbiol.、56、181-186、Brunelら、1997、App. Environ. Micro.、63、574-580、Raineyら、1995、Int. J. Syst. Bacteriol.、45、379-381)。
ゼノラブドゥスおよびフォトラブドゥス細菌は、さまざまな物質を培地中に放出する。放出物質にはリパーゼ、プロテアーゼ、抗生物質、およびリポ多糖などが含まれる。さまざまなプロテアーゼ画分の精製により、これらがP.ルミネセンスを含む培地の経口毒性活性に関連しないことが明瞭に示されている(後にTcタンパク質のみが存在することが決定された)。これらの物質の一部については、対昆虫毒性との関連が過去に指摘されているが、最近になるまで殺虫遺伝子はクローン化されていなかった。しかし、プロテアーゼの精製および分離は、例えばセクロピン(cecropin)などの抗菌タンパク質の阻害などにおける、推定的役割の検討も促すだろう。これについては、R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999,12:284-288を参照されたい。またフォトラブドゥスの対昆虫毒性に関与する諸因子についてまとめた総説として、R.H. ffrench-Constantら、66 AEM No. 8、pp.3310-3329(2000年8月)を参照されたい。
フォトラブドゥス・ルミネセンスおよびゼノラブドゥス・ネマトフィルスの殺虫毒素をコードする遺伝子のクローニングに関してはかなりの進展がある。P.ルミネセンスの毒素複合体をコードする遺伝子が最初に検討された(例えば国際公開公報第98/08932号)。「パラレル」な遺伝子群は、X.ネマトフィルスから最近になってクローン化が進んでいる(Morganら、Applied and Environmental Microbiology 2001、67:2062-69)。
4種類の異なる毒素複合体(TC)(Tca、Tcb、Tcc、およびTcd)がフォトラブドゥス spp.で同定されている。これらの各毒素複合体は、通常のアガロースゲル上では単量体または二量体のいずれかとして分離されるが、変性ゲルによる分離では、各複合体が25〜280 kDaの分子種からなることがわかる。フォトラブドゥスのTCをコードするORFを、プロテアーゼ切断部位(縦方向の矢印)とともに図1に示す。これについては、R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、57 Cell. Mol. Life Sci. 828-833、2000も参照されたい。
P.ルミネセンスのゲノムライブラリーが、DNAプローブで、また毒素に対するモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体でスクリーニングされている。そしてtca、tcb、tcc、およびtcdの4種類のtc座位がクローン化されている。tca座位は、同じDNA鎖から転写される、tcaA、tcaB、およびtcaCの3つのオープンリーディングフレーム(ORF)の推定オペロンであり、さらに、逆方向に転写される小さい末端ORF(tcaZ)が存在する。tcc座位も、同じ方向に転写されると推定されるtccA、tccB、およびtccCの3つのORFからなる。tcb座位は1つの大きなORF(tcbA)であり、またtcd座位は、tcdAおよびtcdBの2つのORFからなる。tcbAとtcdA(それぞれ約7.5 kb)は、大きな昆虫毒素をコードしている。TcdBはTcaCとある程度の相同性を有する。これらの遺伝子産物の一部は、プロテアーゼで切断されることが知られている。例えばTcbAとTcdAは3つの断片(i、ii、およびiii)に切断される(例えばTcbAi、TcbAii、およびTcbAiii)。tcaおよびtccのORFの産物も切断される(図1)。これについては、R.H. ffrench-ConstantおよびD.J. Bowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288も参照されたい。
Tca毒素複合体のバイオアッセイ法の結果、経口摂取時に初齢のスズメガの一種(マンドゥカ・セクスタ)に対する毒性が高いことが判明している(LD50は875 ng/cm2人工餌)(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、1999)。摂食行動は、わずか40 ng/cm2のTca用量で抑制された。Tcaの推定分子量がモルベースで大きいことを考慮すれば、P.ルミネセンスの毒素は活性が高く、相対的に少ない分子が毒性作用を示すために必要であると考えられる(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。
4つの座位について、ゲンバンクに登録された、機能が既知の任意の配列に対して全般的な類似性を示すものはない。配列類似性を示す領域は、これらのタンパク質(TcaCおよびTccA)が、昆虫の血球を攻撃することで昆虫の免疫を克服する可能性があるという示唆をいくつか与えている(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。
TcaB、TcbA、およびTcdAはいずれも、その推定プロテアーゼ切断部位付近の周囲を相互比較すると、アミノ酸の保存(約50%の同一性)がみられる。3種類の異なるTCタンパク質間で保存がみられることは、これらがいずれも、同じかまたは類似のプロテアーゼで切断されることを示唆している。TcbAとTcdAも全体として約50%の同一性を有し、またカルボキシ末端側とアミノ末端側の両側における切断に類似の推定パターンがみられる。したがって、これらのタンパク質が相互に相同物である可能性があると推定されている。また、TcbAとTcdAが類似の大きなサイズを示すことと、そして両毒素が、昆虫の腸に作用する可能性があるという事実も、類似の作用様式の存在を示唆していると言える(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。
欠失/ノックアウト研究では、tca座位およびtcd座位の産物が、鱗翅目に対する経口毒性の主体であることが示唆されている。tca遺伝子またはtcd遺伝子のいずれかを欠失させると、マンドゥカ・セクスタに対する経口活性が大きく減じる。すなわち、tca座位およびtcd座位の産物は、それ自体が鱗翅目に対する経口活性をもつ毒素であり、これらが組み合わされた作用が、分泌型経口活性の大半に寄与していた(R.H. ffrench-ConstantおよびD.J. Bowen、57 Cell. Mol. Life. Sci. 831、2000)。興味深いことに、tcb座位またはtcc座位のいずれか単独の欠失も死滅率を低下させる。この結果は、異なる遺伝子産物間に複雑な相互作用が存在する可能性があることを示唆している。したがってtca座位の産物は、tcd産物の毒性を強める可能性がある。あるいはtcd産物は、tca産物、またおそらくは他の複合体の毒性を調節している可能性がある。上述した、1種の昆虫種に対する経口活性との関連に注目すれば、tcb座位またはtcc座位は、他の群の昆虫に対する活性がさらに高い毒素を産生する(または、インビボで細菌から放出時に、昆虫の通常の輸送経路である血体腔への直接注入によって活性を示す)可能性がある(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。
国際公開公報第01/11029号には、TcdAおよびTcbAをコードするヌクレオチド配列と、植物遺伝子に対する類似性を高くするように塩基組成を天然の遺伝子の組成から変化させたことが記載されている。Toxin AおよびToxin Bを発現するトランスジェニック植物についても記載されている。
フォトラブドゥス・ルミネセンス(W-14)から単離される別個の毒素の中で、Toxin AおよびToxin Bと命名された毒素が、対象標的昆虫種(例えばコーンルートワーム)に対する活性の調査対象となっている。Toxin Aは2つの異なるサブユニットからなる。天然の遺伝子tcdAはプロ毒素TcdAをコードする。質量分析の結果から、TcdAは、1種類もしくは複数のプロテアーゼで切断されてToxin Aとなることがわかっている。具体的には、約282.9 kDaのタンパク質(2516アミノ酸)であるTcdAが切断されて、TcdAi(先頭の88アミノ酸)、TcdAii(続く1849アミノ酸、tcdAのヌクレオチド265〜5811にコードされる約208.2 kDaのタンパク質)、およびTcdAiii(tcdAのヌクレオチド5812〜7551にコードされる約63.5 kDa(579 aa)のタンパク質)を生じる。TcdAiiとTcdAiiiは、(おそらくTcdAiの作用で)集合して二量体になると考えられ、この二量体が集合して4つの二量体からなる四量体になる。Toxin Bも、同様にTcbAに由来する。
TCタンパク質どうしの詳細な分子相互作用、およびその作用機構は現時点で解明されていないが、例えばフォトラブドゥスのTca毒素複合体がマンドゥカ・セクスタに毒性をもつことがわかっている。また、一部のTCタンパク質が、「スタンドアローン」の殺虫活性を有することが知られている一方で、他のTCタンパク質は、スタンドアローンの毒素の活性を強めたり高めたりすることが知られている。またTcdAタンパク質がマンドゥカ・セクスタに対して単独で活性を示すものの、TcdBとTccCはともにTcdAの活性を高めるのに使用可能なことが知られている(Waterfield、N.ら、Appl. Environ. Microbiol. 2001、67:5017-5024)。TcbA(唯一のTcbタンパク質)は、フォトラブドゥスに由来するもう1つのスタンドアローンの毒素である。この毒素(TcbA)の活性も、TccC様タンパク質とともにTcdBによって高められる。
米国特許出願第20020078478号には、フォトラブドゥス・ルミネセンス W-14のtcdゲノム領域に由来する2つの増強性遺伝子であるtcdB2とtccC2のヌクレオチド配列について記載されている。同出願では、tcdBおよびtccC1をtcdAと同時に発現させると、昆虫に対する経口毒性のレベルが、tcdA単独発現時に得られるレベルと比較して上昇することが記載されている。tcdBおよびtccC1と、tcdAまたはtcbAの同時発現は、昆虫に対する経口活性を高める。
以下の表に示すように、TccAは、TcdAのN末端側とある程度の相同性を示し、またTccBは、TcdAのC末端側とある程度の相同性を示す。TccAおよびTccBは、一部の試験昆虫に対してTcdAより活性がかなり低い。フォトラブドゥスW14株に由来するTccAおよびTccBは「Toxin D」と呼ばれる。「Toxin A」(TcdA)、「Toxin B」(TcbA)、および「Toxin C」(TcaAおよびTcaB)についても以下に説明する。またTcaAは、TcdAのN末端側に対する相同性のほかに、TccAとある程度の相同性を示す。さらにTcaBは、TcdAのN末端側に対する相同性に加えて、TccBとある程度の相同性を示す。TccAおよびTcaAは、TccBおよびTcaBと大きさが同等である。TcdBは、TcaCに対して有意に高い類似性(配列および大きさの両方)を示す。
Figure 2005536198
昆虫の中腸上皮は、円柱(構造)細胞と杯状(分泌)細胞の両方を含む。M.セクスタがtca産物を取り込むと、円柱細胞の頂点部の膨張と、大型細胞質小胞の空泡化が起きる。そして最終的には、小胞中の細胞核が腸管内腔中へ突出する。杯状細胞も同様に外見的な影響を受ける。tcaの産物は、経口輸送または注入のいずれかにより、昆虫の中腸に作用する(R.H. ffrench-ConstantおよびD.J. Bowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。精製tca産物は、マンドゥカ・セクスタに対する経口毒性を示すことがわかっている(LD50=875 ng/cm2)(R.H. ffrench-ConstantおよびD.J. Bowen、57 Cell. Mol. Life Sci. 828-833、2000)。
国際公開公報第99/42589号および米国特許第6,281,413号には、フォトラブドゥス・ルミネセンスのTC様ORFが記載されている。国際公開公報第00/30453号および国際公開公報第00/42855号には、ゼノラブドゥスのTC様タンパク質について記載されている。国際公開公報第99/03328号および国際公開公報第99/54472号(ならびに米国特許第6,174,860号および第6,277,823号)は、ゼノラブドゥスおよびフォトラブドゥスに由来する他の毒素に関する。
ゼノラブドゥス・ネマトフィルスを対象とした、比較的最近行われたクローニングでは、P.ルミネセンスのtc座位と相同性を示す新しい殺虫毒素遺伝子が同定されているようでもある。これについては例えば、国際公開公報第98/08388号、およびMorganら、Applied and Environmental Microbiology 2001,67:2062-69を参照されたい。R.H. ffrench-ConstantおよびD.J. Bowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288では、コスミドクローンが、別の鱗翅目であるオオモンシロチョウ(Pieris brassicae)に対する経口毒性に関して直接スクリーニングされた。経口毒性を示す1つのコスミドクローンの配列が決定されている。コスミド中の配列の解析から、フォトラブドゥスのtc遺伝子と類似性のある5種類の異なるORFの存在が示唆されており、orf2とorf5はいずれもtcbAとtcdAの両方に対して、ある程度の配列関連性をもつ一方で、orf1はtccBに類似しており、orf3はtccCに類似しており、またorf4はtcaCに類似している。重要な点は、いくつかの上記推定ORFが、P.ルミネセンスで認められた推定切断部位も有することであり、これは、活性毒素がタンパク質分解も受けて切断されることを示唆している。
ゼノラブドゥスには5種類の典型的なTCタンパク質が存在する(XptA1、XptA2、XptB1、XptC1、およびXptD1)。XptA1は「スタンドアローンの」毒素である。XptA2は、スタンドアローン毒素活性を有するゼノラブドゥスに由来する別のTCタンパク質である。ゼノラブドゥス・ネマトフィルスの配列については、ゲンバンクアクセッション番号AJ308438を参照されたい。XptB1およびXptC1は、XptA毒素のいずれか(または両方)の活性を高めることができる、ゼノラブドゥスの増強因子である。XptD1は、TccBとある程度の相同性を示す。XptC1は、TcaCとある程度の類似性を示す。ゼノラブドゥスのXptA2タンパク質は、TcdAタンパク質とある程度の類似性を示す。XptB1は、TccCとある程度の類似性を示す。
上記2種類の異なる細菌に、ある程度類似した毒素コード座位が見つかったことは、これらの毒性遺伝子の起源の点から興味深い。X.ネマトフィルス由来のコスミドは、トランスポザーセ様配列も含むようである。トランスポザーセ様配列の存在は、こうした遺伝子座位が、異なる細菌株または細菌種の間で水平移動可能なことを示唆すると言える。このような移動の範囲は、2種の異なる細菌のtcオペロンの見かけ上異なるゲノム構成も説明するかもしれない。またX.ネマトフィルスおよびP.ルミネセンスの株の一部のみが、M.セクスタに毒性を示すようである。これは、異なる株がtc遺伝子を欠くことか、または異なるtc遺伝子コンプリメントを有することのいずれかを示唆する。株と毒素の両方の系統学的関係の内外に関する詳細な解析が進めば、これらの細菌種は、毒素遺伝子の起源、および多様な細菌集団における維持機構の特定に役立つと考えられる(R.H. ffrench-ConstantおよびBowen、Current Opinions in Microbiology、1999、12:284-288)。
TCのタンパク質および遺伝子は、昆虫病原体の一種セラチア・エントモフィラなどの他の昆虫関連細菌で最近報告されている(Waterfield ら、TRENDS in Microbiology、Vol.9、No.4、2001年4月)。
要約すると、P.ルミネセンスやX.ネマトフィルスに由来する毒素複合体タンパク質は、過去に同定された細菌毒素に対して、ほとんど相同性がないようであり、バチルス・チューリンギエンシスに由来する毒素の有用な代替物となる可能性がある。これらは、他の経口活性毒素に対して昆虫の中腸に対する類似の毒性作用を有するが、その詳細な作用様式は依然として不明である。研究が進めば作用機構は明らかになるであろう。
一部のゼノラブドゥスのTCタンパク質は、一部のフォトラブドゥスのTCタンパク質に「対応する」(類似の機能およびある程度の配列相同性を有する)ことがわかっているが、任意のフォトラブドゥスのタンパク質は、「対応する」ゼノラブドゥスタンパク質と約40%の配列同一性しか示さない。これを4種類の「スタンドアローンの」毒素に関して説明する。
Figure 2005536198
(さらに詳細な総説として、例えばMorganら、"Sequence Analysis of Insecticidal Genes from ゼノラブドゥス nematophiles PMFI296"、Vol. 67、Applied and Environmental Microbiology、May 2001年5月pp.2062-2069を参照されたい)。
ペニバチルス(Paenibacillus)属の細菌は、その明瞭なrRNAおよび表現型上の特徴によって他の細菌と区別される(C. Ashら、1993、"Molecular identification of rRNA group 3 bacilli (Ash、Farrow、Wallbanks、およびCollins) using a PCR probe test:Proposal for the creation of a new genus Paenibacillus," Antonie Van Leeuwenhoek 64:253-260)。16S rRNAの配列比較解析から、バチルス属が少なくとも5つの系統からなることが証明されている。リボソームRNAグループ3のバチルス(バチルス・ポリミクサおよび近縁種からなるAsh、Farrow、Wallbanks、およびCollins、1991のバチルス)は、新しいペニバチルス属として再分類された枯草菌(属の型の種、および他の好気的な、内生胞子を形成するバチルス)から系統学的に除かれる。
この属のいくつかの種は、ミツバチに対して(ペニバチルス・ラルバ)、またオオタマオシコガネ(scarab beetle grub)に対して(P.ポピリエおよびP.レンチモルバス)に病原性を示すことが知られている。ミツバチと関連することが判明している他の数種のペニバチルス種は非病原性である。P. チアミノリティカスを含む、少なくとも18種の他の種がこの属に含まれることがわかっている。これらは既知の昆虫との関連は知られていない(Shidaら、1997;Petterssonら、1999)。オオタマオシコガネ(鞘翅類)は、北米全体で芝生、苗床、および食用作物に対する深刻な害虫であり、検疫上の問題がある。これについては、米農務省の農業研究サービス(Agricultural Research Service)のウェブサイトを参照されたい。
P.ラルバ、P.ポピリエ、およびPレンチモルバスは、オオタマオシコガネの乳化病に関与する偏性の昆虫病原体であるとみなされている(D.P. Stahlyら、1992、"The genus バチルス:insect pathogens"、p.1697-1745、A. Balowsら編、The Procaryotes、第2版第2巻、Springer-Verlag、New York、NY)。これら3種のペニバチルス種は、成長が緩やかで培養条件の複雑な生物であり、細菌が中腸を超えて血液リンパおよび他の組織内で数多く増殖する侵入過程に起因する病気の原因となることを特徴とする。全3種に関して、昆虫の病原性にタンパク質が関連することについて一般的な指摘がいくつかなされているが、特定のタンパク質の果たす特異的な役割は明らかではない。StahlyらはP.ラルバについて、毒素の関与に関する疑問が未解決であり、また(甲虫の)乳化病における死滅における詳細な因果関係は解明されていないと結論づけている。
甲虫(鞘翅目)の毒素Cry18は、P.ポピリエおよびPレンチモルバスの株で同定されている。Cry18はCry2タンパク質と約40%の同一性を示す(Zhangら、1997;Harrisonら、2000)。Zhangら(1997)は、Cry18が中腸を攻撃して、栄養細胞の血体腔への侵入を促すと推測しているが、Harrisonらは、こうした役割の存在を示す直接的な証拠がないことに注目しており、また「副芽胞小体タンパク質が乳化病に役割を果たすにしても詳細は不明である」とも述べている(J. Zhangら(1997)、"Cloning and Analysis of the First cry Gene from バチルスポピリエ"、J. Bacteriol. 179:4336-4341;H. Harrisonら、2000、「ペニバチルス Associated with Milky Disease in Central and South American Scarabs」、J. Invertebr. Pathol. 76(3):169-175)。
Stahlyら、Zhangら、およびHarrisonらはいずれも、バチルス・チューリンギエンシスの結晶タンパク質が昆虫の中毒に果たす役割を示す証拠(多数現れる昆虫の症状は、特異的な結晶タンパク質の特徴によって説明可能である)が、ペニバチルスと乳化病の場合(特異的な毒素の作用に対して上記のような関連はない)と対照的であることを指摘している。
したがってペニバチルスの一部の種が、一部の鞘翅類に対して病原性を示し、ある種がミツバチと関連する一方で、鱗翅目に毒性を示すことが知られているペニバチルス株はない。同様にTCタンパク質、および鱗翅目に毒性を示すCryタンパク質は、ペニバチルスにおける報告は全くない。
発明の簡単な概要
本明細書は、鱗翅目の害虫に対して活性を有するペニバチルスのタンパク質毒素の初めての報告である。ペニバチルスの一部の種は殺虫性をもつことが知られているが、それは地虫(grub)/甲虫/鞘翅類に対する活性であった。鱗翅目に毒性を有するペニバチルスの種または株に関する報告はない。したがって本発明は一般的には、鱗翅目に対する活性を有するペニバチルス種に関し、またペニバチルス spp.、このタンパク質、およびこのクローンのライブラリーを対象とした、対鱗翅目活性のスクリーニングに関する。
具体的には本発明はそもそも、本明細書でDAS1529と呼ぶ新規株のペニバチルスの知見に基づく。これは、さまざまな理由で驚くべき知見であった。この株は、鱗翅目に毒性を示す独特なCryタンパク質を産生する。この株ならびにDB482は、(ゼノラブドゥス/フォトラブドゥスのTCとある程度の類似性を有する)独特な毒素複合体(TC)様タンパク質を産生する。ペニバチルス単離株DB482と、同菌から得られる毒素が極めて好ましく、またいずれも本発明の範囲に含まれる。
これは、TC様タンパク質を有するペニバチルスの最初の報告である。したがって本発明は、ペニバチルスspp.を対象とした、TC様遺伝子およびタンパク質のスクリーニング法に関する。本発明のペニバチルスのTCタンパク質は、例えば「スタンドアローンの」ゼノラブドゥスの毒素タンパク質の活性の亢進または増強に有用であることを本明細書で示す。本明細書に記載されたTC様遺伝子は、ペニバチルス属に存在することはこれまで知られていなかった。この知見は、TC様遺伝子が見出される生物(細菌)の範囲を拡げることになる。したがって本発明は一般的には、ペニバチルス種から得られるTC様タンパク質に関し、またペニバチルス種を対象とした、同タンパク質のスクリーニング法などに関する。その一例が、TC様タンパク質を産生することもわかっているペニバチルス・アパイリウスである。
本発明のTC様タンパク質は、ゼノラブドゥスおよびフォトラブドゥスのTCタンパク質と、ある程度の配列関連性があり、その共通性の存在を特徴とするが、本発明のTC様タンパク質の配列は従来のTCタンパク質とは大きく異なる。したがって本出願は、ペニバチルス、フォトラブドゥス、ゼノラブドゥスなどの属の細菌から得られる、新しいクラスのTC様タンパク質、および同タンパク質をコードする遺伝子を提供する。
DAS1529株のもう1つの驚くべき特徴は、鱗翅目に毒性を示す独特のB.t.様Cryタンパク質を産生する点である。本発明のCry毒素は圧縮/短縮化されており、野生型の状態で、典型的なプロ毒素部分を欠くようである。したがって本発明は一般的には、ペニバチルス単離株を対象とした、鱗翅目に対する毒性を示すCryタンパク質のスクリーニングに関する。また本発明はペニバチルス spp.およびバチルス・チューリンギエンシスを対象とした、例えば新しいクラスのCry遺伝子およびタンパク質のスクリーニング法にも関する。
DAS1529株は、Cry様毒素とTC様タンパク質の両方を産生する天然細菌の最初の例である。さらに驚くべき点は、これがTCタンパク質遺伝子と(遺伝的な近似性に関して)密接に関連したcry毒素遺伝子の最初の例であることである。以上のような先駆的な観察は大きな意味をもつので、当業者であれば、適切な種の細菌を対象に、固有のオペロンの型、および既知オペロンの他の成分の型をスクリーニングすることが可能となる。このような手法は本発明の範囲に含まれる。
本発明の別の局面は、DAS1529株が、チアミナーゼに極めて類似していることが知られている可溶性の昆虫毒素も産生するという驚くべき知見に基づく。ペニバチルスのチアミナーゼタンパク質に殺虫活性があることがわかったことは驚きであった。この種類のタンパク質の存在は既に知られていたが、同酵素が昆虫/昆虫様害虫に対する毒素様活性を示すことは、当技術分野で全く想定されていなかった。したがって本発明は、ペニバチルスなどを対象とした、殺虫チアミナーゼの遺伝子およびタンパク質のスクリーニング法にも関し、また昆虫および類似の害虫の駆除における、これらの遺伝子およびタンパク質の使用に関する。
本発明の他の目的、利点、および特徴は、本発明の開示によって利益を得る当業者には明らかである。
発明の詳細な説明
本発明は、害虫駆除の独特な生物学的代替物を提供する。具体的には本発明は、昆虫、好ましくは鱗翅目、および他の類似の害虫に対する毒素活性を有するタンパク質の新しい供給源を提供する。また本発明は、このような毒素をコードするために使用可能な新規ポリヌクレオチドの新しい供給源、ならびに昆虫および他の類似の植物病害虫を駆除するための毒素および対応する核酸配列の作製法および使用法にも関する。本発明は、新規の昆虫駆除剤の必要性について述べる。本発明は、ペニバチルスおよび他の細菌から得られる新規殺虫性タンパク質に関する。
本発明はそもそも、ペニバチルスの新規株の知見に基づく。この株は、本明細書でDAS1529と呼ぶ。この知見の広い重要性を示すために、別のペニバチルス株の知見も例示する。これらの株は、Agricultural Research Service Patent Culture Collection(NRRA)(1815 North University Street Peoria、Ill. 61604、U.S.A.)に寄託されている。寄託株、ならびに対応する寄託日および寄託番号は以下の通りである。
Figure 2005536198
以上の培養物は、本特許の出願目的で寄託されており、本特許出願の係争中に培養物の利用が、37 CFR 1.14および35 U.S.C. 122の下で権利を与えられた特許商標審査官(Commissioner of Patents and Trademarks)によって決定された者に可能なことを保証する条件で寄託されている。これらの寄託物は、本発明の対応物またはその派生物が出願されている各国の外国特許法によって必要に応じて利用できる。しかしながら、寄託物の利用は、本発明を実施するためのライセンスを含まないと理解されるべきであり、政府の措置によって与えられた特許権を損なうものではない。
また本発明の培養寄託物は、微生物の寄託に関するブタペスト条約の条項にしたがって作製された。すなわち寄託物は、生存状態を維持して汚染のない状態で、寄託物の試料の提供に関する最近の要求から少なくとも5年の期間、またいかなる場合においても、寄託日から少なくとも30年の期間、または同培養物を開示する可能性のある任意の特許の法的効力がある間は、必要な注意をすべて払った上で保存される。寄託者は、寄託物を移動する義務が、…を負うことを了承する[以下不明](The depositor acknowledges the duty to replace the deposit should the depository be unable to furnish a sample when requested, due to the condition of the deposit)。本発明の培養寄託物の公衆に対する利用可能性に関する全ての制限は、特許開示の供与時に変更不可で除去される。
本発明のDAS1529株の知見は、さまざまな理由で驚くべきことであった。この株は、独特の鱗翅目毒性Cryタンパク質を産生する。この株、ならびにDB482は、(ゼノラブドゥス/フォトラブドゥスのTCとある程度の類似性を有する)独特の毒素複合体(TC)様タンパク質も産生する。これらから得られるペニバチルス単離株DB482および毒素は極めて好ましく、またすべてが本発明の範囲に含まれる。
本明細書は、鱗翅目の害虫に対する活性を有する、ペニバチルス起源のタンパク質毒素の最初の報告である。DAS1529株は、鱗翅目の害虫に対する毒素活性を有することが判明した。これは驚くべき知見であった。ペニバチルスの一部の種は、地虫/甲虫/鞘翅類に対する殺虫活性をもつことが知られていた。鱗翅目に対する毒性を有するペニバチルスの種または株の報告はこれまでなかった。したがって本発明は一般的には、鱗翅目に対する活性を有するペニバチルス種に関し、またペニバチルス培養物、これに由来するタンパク質、およびこれに由来するクローンのライブラリーを対象とした、鱗翅目に対する活性のスクリーニング法、および/または「lep毒素」をコードする遺伝子のスクリーニング法、具体的には、鱗翅目に毒性を示すCryタンパク質のスクリーニング法に関する。
これはTC様タンパク質を有するペニバチルスに関する最初の報告でもある。したがって本発明は、ペニバチルス spp.を対象としたTC様の遺伝子およびタンパク質のスクリーニング法に関する。DAS1529株およびDB482株がTC様オペロンを有し、(ゼノラブドゥスおよびフォトラブドゥスのTCタンパク質とある程度の類似性を有する)TCタンパク質を産生するという知見は非常に驚きであった。本明細書に記載されたTCのタンパク質および遺伝子は、ペニバチルス属に存在することがこれまで知られていなかった。この知見は、TCタンパク質遺伝子が知見される生物(細菌)の範囲を拡げる。したがって本発明は一般的には、ペニバチルス種から得られるTCタンパク質に関し、またペニバチルス種を対象としたこのようなタンパク質のスクリーニング法に関する。本発明の方法で知見されたペニバチルス種の例は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482である。このP.アパイリウス株も、独特のTC様タンパク質を産生する。
本発明のTCタンパク質が、ゼノラブドゥスおよびフォトラブドゥスのTCタンパク質と共通する特徴をいくつか有する一方で、本発明のTCタンパク質は独特であり、また従来のTCタンパク質とは異なる。したがって本出願は、ペニバチルス属、フォトラブドゥス属、ゼノラブドゥス属、セラチア属などの細菌から得られる新しいクラスのTC様タンパク質、およびこれらのタンパク質をコードする遺伝子を提供する。
また本発明は、ペニバチルス種から得られる、鱗翅目に毒性を示すCryタンパク質にも関する。したがって本発明は、ペニバチルス種を対象とした、鱗翅目の害虫に対する毒素活性を有するcry遺伝子およびCryタンパク質のスクリーニング法に関する。
DAS1529のCry毒素は、極めて独特なB.t.様Cryタンパク質毒素である。地虫に対する活性を有する株である、ペニバチルスの他の1つの株は、鞘翅類に毒性を示すCryタンパク質を産生することが知られていた。これは、Cry2タンパク質との関連性の極めて強い(ただし同一性は約40%しかない)Cry18タンパク質であった。本明細書で例示されたCryタンパク質は、従来のCryタンパク質に対して低レベルの配列の同一性および類似性しか示さない。既知のすべてのB.t.のCryタンパク質について認められるように、本発明のCryタンパク質はCry1タンパク質との類似性が最も高い。本発明のCryタンパク質の1つの驚くべき局面は、極めて短いこと、すなわちCry1Faのコア毒素より短い点である。本発明のCryタンパク質は、同定可能なBlock 5領域をC末端またはC末端近傍に有する。野生型状態の同毒素には、Cry1毒素に通常認められるプロ毒素部分がない。本発明のCry毒素は驚くほど圧縮されている。したがって本発明は一般的には、新しいクラスのCryタンパク質に関する。本開示はまた、バチルス・チューリンギエンシス(B.t.)から他のcry遺伝子の探索にも重要である。本開示から利益を得る当業者には明らかなように、B.t.などの他の細菌、および他のバチルス spp.(sphaericusを含む)を対象に、類似の毒素および毒素遺伝子をスクリーニングすることができる。このようなスクリーニング法は、本発明の範囲に含まれる。
DAS1529株は、Cry様毒素とTC様タンパク質の両方を産生する天然の細菌の最初の例である。さらに驚くべき点は、これがTCタンパク質の遺伝子と密接に関連した(遺伝的に近い)cry毒素遺伝子の最初の例であることである。したがって、以上の先駆的な観察によって当業者は、適切な種の細菌を対象に、これらの種の独特のオペロン、およびこれらの種の既知のオペロンの他の成分をスクリーニングすることができる。このような手法は、本発明の範囲に含まれる。DAS1529株は、同じ一般型の複数のTCタンパク質遺伝子を含むTC様オペロンを有する野生型株の興味深い例である(この場合は、2つのtcaA様遺伝子および2つのtcaB様遺伝子)。これは、新たな遺伝子の知見に重要な意味をもつと言える。
本発明の別の局面は、ペニバチルスのチアミナーゼタンパク質が殺虫活性をもつという驚くべき知見に基づく。このタンパク質の存在は既に知られていたが、この酵素が、昆虫/昆虫様の害虫に対して毒素様の活性を示すことは、当技術分野で全く考えられていなかった。
ペニバチルスのTCタンパク質
具体的には、例示的なTCタンパク質に関しては、株DAS1529に由来する、2種類のTcaA様タンパク質(TcaA1およびTcaA2)、2種類のTcaB様タンパク質(TcaB1およびTcaB2)、TcaCタンパク質、ならびにTccC様タンパク質の各TCタンパク質を本明細書で詳しく説明する。TcaA1タンパク質とTcaA2タンパク質は、配列レベルで相互に高度の類似性を示し、またtcaB1タンパク質とtcaB2タンパク質は、配列レベルで相互に高度の類似性を示す。ペニバチルス・アパイリウスから得られるTC様タンパク質についても本明細書で説明する。同タンパク質は本発明の範囲に含まれる。
本発明のTCタンパク質は、他のTCタンパク質と同様に使用することができる。これは、本発明の開示によって利益を得る当業者であれば、当技術分野で周知の事実に鑑みて容易に理解すると思われる。これについては例えば、R.H. ffrench-ConstantおよびBowen(2000)、ならびに米国特許第6,048,838号について論じた背景セクションを参照されたい。例えば、フォトラブドゥスのTca毒素複合体は、マンドゥカ・セクスタに強い毒性を示すことが知られている。
TCタンパク質どうしの詳細な分子相互作用、およびこの(複数の)作用機構は現時点で判明していないが、一部のTCタンパク質は、「スタンドアローン」の殺虫活性を有することがわかっており、また他のTCタンパク質は、同じ任意の生物によって産生されたスタンドアローンの毒素の活性を高めることがわかっている。例えばTcdAタンパク質は、マンドゥカ・セクスタに活性を示すことが知られていた。TcaCとTccCは、ともにTcdAの活性を高めるために使用可能である。TcdBは、TccCを(TcaCの代わりに)増強因子として使用可能である。TcbAは、スタンドアローンの毒素活性をもつ、フォトラブドゥスの別のTCタンパク質である。TcaC(またはTcdB)もTccCとともに用いることで、TcbAの毒素活性を亢進/増強可能である。
フォトラブドゥスのTCタンパク質、およびペニバチルスに由来する、「対応する」TCタンパク質/遺伝子を以下にまとめる。
Figure 2005536198
上述したように、TccAはTcdAのN末端側とある程度の相同性を示し、またTccBはTcdAのC末端側と、ある程度の相同性を示す。またTcdAは約280 kDaで、TccAとTcdBをまとめるとほぼ同じ大きさである。またTcaAは、TcdAのN末端側に対する相同性と同様に、TccAとある程度の相同性を有する。さらにTcaBは、TcdAのN末端側に対するのと同様に、TccBとある程度の相同性を有する。TccAおよびTcaAは、TccBおよびTcaBと大きさが同等である。
ゼノラブドゥスの一部のTCタンパク質は、フォトラブドゥスの一部のTCタンパク質に「対応する」ことがわかっていたが、「対応する」タンパク質は、(概算で)相互に約40%の配列同一性しかない。ペニバチルスに由来する本発明のTCタンパク質は、既存のTCタンパク質と、ほぼ同程度の配列関連性(約40%の同一性)を有する。
詳しく後述するように、本発明の1つもしくは複数の毒素を相互に、また他の毒素(例えばフォトラブドゥスのTca複合体はマンドゥカ・セクスタに活性を示すことが知られている)と組み合わせて使用することができる。例えばフォトラブドゥスのTCタンパク質のさまざまな「組み合わせ」を用いて、他のスタンドアローンのフォトラブドゥスの毒素の活性を高めることができる(例えばフォトラブドゥスの毒素「と」B.t.毒素の使用が、耐性管理に提案されている)。また本発明のペニバチルスのTCタンパク質は、例えば「スタンドアローン」のゼノラブドゥス毒素タンパク質の活性の促進または増強に有用であることが本明細書に記載されている。「Mixing and Matching TC Proteins for Pest Control」と題する仮出願第60/441,723号(Timothy D. Heyら)は、フォトラブドゥスなどの1つの属の生物に由来するTCタンパク質が、別の属の生物に由来する「対応する」TCタンパク質と互換的に使用可能であるという驚くべき知見に関する。本発明のペニバチルスのTCタンパク質の有用性をさらに説明する、これと類似したさらに驚くべきデータを以下に述べる。これらの結果が驚くべき理由の1つは、「対応する」Xhenorhabdus、フォトラブドゥスのタンパク質と、本発明のペニバチルスのTCタンパク質との間には約40%の配列同一性しかない点である。
タンパク質および毒素
本発明は、投与が容易な機能性タンパク質を提供する。また本発明は、機能的に活性があり、多くの目の昆虫(好ましくは鱗翅目の昆虫)に対して有効な殺虫毒素の投与法も提供する。「機能活性」(または「〜に対して活性を示す」)という表現は本明細書で、タンパク質毒素が、(単独で、または他のタンパク質と組み合わせることで)経口活性のある昆虫駆除剤として機能すること、また対象タンパク質が、(単独で、または他のタンパク質と組み合わされた状態で)毒性作用を有するか、昆虫の成長および/または摂食行動を破壊もしくは阻止可能なこと(昆虫は死に至る場合もあれば至らない場合もある)を意味する。本発明の有効量の「毒素」を、トランスジェニック植物における発現、製剤化されたタンパク質組成物(群)、噴霧可能なタンパク質組成物(群)、ベイトマトリックスもしくは他の輸送系を介して昆虫に接触させると、結果的には、昆虫が取り込む可能性のある毒素を産生する供給源(好ましくはトランスジェニック植物)によって、典型的には、昆虫の死、昆虫の成長および/または増殖の阻害、および/または昆虫の摂食行動の阻止に至る。本発明の機能性タンパク質は、他の毒素タンパク質の活性を高めたり改善させたりすることもできる。したがって本明細書で用いる、「毒性のある」、「毒性」、「毒素活性」、および「殺虫活性のある」といった表現は、本明細書で説明するように、本発明の「毒素」が「機能活性」を有することを意味する。
餌を食べた昆虫を完全に死滅させることが好ましいが、機能活性を発揮することは必要ではない。仮に、昆虫が毒素を避けたり、または摂食行動をやめてしまう場合、こうした忌避行動は、たとえ作用が亜致死性であっても、または死に至るまでの時間が長かったり間接的であったりする場合であっても、一部の応用では有用である。例えば仮に、昆虫耐性トランスジェニック植物が望ましい場合は、昆虫が植物を摂取することをためらう植物は、昆虫に対して致死的な毒性をもつ状態と同様に有用である。というのは究極の目的は、昆虫が植物に引き起こす損害を回避することにあるからである。
昆虫の餌に毒素を取り込ませることが可能な方法は他にもいくつかある。例えば、本明細書で述べるように、餌にタンパク質溶液を吹き付けることで、幼虫の餌に毒性タンパク質を混ぜることが可能である。あるいは、精製されたタンパク質を、他の点では無害な細菌に遺伝的に作り込み、後に培地中でこれを成長させ、餌に混ぜるか、または昆虫を根絶させたい地帯の土壌中に含ませることができる。また対象タンパク質を、昆虫の餌に遺伝的に直接作り込むことができる。例えば、多くの昆虫の幼虫の主な餌は植物物質である。したがって、毒素をコードする遺伝子を植物物質に移すことで、このように処理した植物物質で対象毒素を発現させることができる。
機能活性を植物系または細菌系に移す際には、通常、毒素のアミノ酸配列をコードする核酸配列を、ベクターを維持させる宿主に適切なタンパク質発現ベクターに組み込ませることが必要である。機能活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を得る1つの方法は、本明細書に記載されているように、毒素のアミノ酸配列から推定される情報を用いて、毒素を産生する細菌種から天然の遺伝物質を単離することである。このような天然の配列は例えば、後に詳述する手順で、植物における発現に最適化することができる。最適化されたポリヌクレオチドは、タンパク質配列を元に設計することもできる。
本発明は、有益な殺虫活性を有する、新しいクラスの毒素を提供する。このようなクラスの毒素、および対象毒素をコードするポリヌクレオチドの特徴を明らかにする方法の1つは、指定の範囲の条件で、例示的なヌクレオチド配列(この相補物、および/またはいずれかの鎖に由来するプローブもしくはプローブ)とハイブリダイズする能力を利用して、および/または例示的な配列に由来するプライマーを用いて、PCRで増幅される能力を利用してポリヌクレオチドを決定することである。
本発明の殺虫毒素を得る方法がいくつかある。例えば、本明細書に記載された、また請求された殺虫毒素に対する抗体を用いて、タンパク質混合物から他の毒素を同定および単離することができる。具体的には、抗体は極めて安定しており、また他の毒素とは大きく異なる毒素の一部に対する抗体を作製することができる。次にこのような抗体を用いて、免疫沈殿、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、またはウェスタンブロッティングによって、特徴的な活性を有する同等の毒素を特異的に同定することができる。本明細書に記載された毒素に対する抗体、または同等の毒素、もしくはこのような毒素の断片に対する抗体は、標準的な手順で容易に調製できる。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、特異的抗体、および/または交差反応抗体を、本発明に記載の手順にしたがって作製して使用することができる。このような抗体は、本発明のタンパク質(およびこの抗原性断片)の存在を検出するための試験キットに含まれる場合がある。
当業者であれば、本発明の毒素(および遺伝子)が多様な供給源から得られることを容易に認識する。本発明のDAS1529単離株、および/またはP.アピアリエス単離株「に由来する」毒素、またはこれら「から得られる」毒素とは、対象となる毒素(または類似の毒素)が、このような単離株、または他の細菌株もしくはトランスジェニック植物などの数種の他の供給源から得られることを意味する。例えば当業者であれば、細菌の遺伝子および毒素が開示された場合に、対象毒素を産生する植物を作出することを容易に認識すると思われる。抗体調製物や核酸プローブ(DNAおよびRNA)などは、本明細書に開示されたポリヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を用いて調製することが可能であり、また他の(天然の)供給源に由来する他の毒素遺伝子のスクリーニングおよび回収に使用することができる。本発明の毒素は、さまざまな供給源/微生物源から得られる。
ポリヌクレオチドおよびプローブ
本発明はさらに、本発明の毒素をコードするヌクレオチド配列を提供する。本発明はさらに、殺虫毒素をコードする遺伝子を同定して、その特性を明らかにする方法を提供する。一つの態様では、本発明は、ハイブリダイゼーション用のプローブ、および/またはPCR法用のプライマーとして有用な、固有のヌクレオチド配列を提供する。このようなプライマーを使うことで、特定の毒素遺伝子の同定、特性解析、および/または単離に使用可能な特徴的な遺伝子断片が得られる。本発明のヌクレオチド配列は、過去に報告された毒素とは異なる毒素をコードする。
本発明のポリヌクレオチドは、タンパク質またはペプチドをコードするように完全な「遺伝子」を所望の宿主細胞で形成させるために使用することができる。例えば、当業者であれば容易に認識できるように、本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で容易に理解されるように、対象宿主でプロモーターの制御下に適切に配置することができる。
当業者であればわかるように、DNAは2本鎖の状態で通常存在する。こうした構成では、一方の鎖は、もう一方の鎖と相補的である(逆の関係も成り立つ)。DNAが(例えば)植物で複製されると、DNAの他の相補鎖が作られる。「コード鎖」という表現は、アンチセンス鎖に結合する鎖を意味する用語として当技術分野で用いられることがある。mRNAは、DNAの「アンチセンス」鎖から転写される。「センス」鎖すなわち「コード」鎖は、対象となるタンパク質またはペプチドを形成するオープンリーディングフレーム(ORF)として読まれる一連のコドンを含む(1つのコドンは、特定のアミノ酸を指定する3残基の単位として読まれる3個のヌクレオチドからなる)。タンパク質をインビボで発現させるために、DNAの鎖は通常、タンパク質の鋳型として使用されるmRNAの相補鎖に転写される。したがって本発明は、添付の配列表に示された例示的なポリヌクレオチド、および/または相補鎖を含む同等物の使用を含む。RNA、および例示的なDNAに機能的に同等なPNA(ペプチド核酸)は本発明に含まれる。
本発明の一つの態様では、細菌単離株を、結果的に微生物が高度に増殖する条件で培養することができる。1本鎖のゲノム核酸を得るように微生物を処理した後に、DNAと本発明のプライマーを接触させて、PCRによる増幅を行うことができる。毒素をコードする遺伝子に特徴的な断片をこの手順で増幅することで、毒素をコードする遺伝子(群)の存在を判定する。
本発明の別の局面は、本明細書に記載された方法およびヌクレオチド配列を用いて同定される遺伝子および単離物を含む。このように同定された遺伝子は、害虫に活性を示す毒素をコードする。
本発明の毒素および遺伝子は、例えばオリゴヌクレオチドプローブを用いて同定して入手することができる。このようなプローブは、国際出願番号第93/16094号に記載されているように、適切な標識によって検出可能な、または固有の蛍光を発することを可能とすることで検出可能なヌクレオチド配列である。プローブ(および本発明のポリヌクレオチド)は、DNA、RNA、またはPNAの形状をとりうる。アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U;RNA分子の場合)のほかに、本発明の合成プローブ(およびポリヌクレオチド)は、イノシン(全4種類の塩基と対合可能な中性塩基で、合成プローブ中で全4種類の塩基の混合物の代わりに使用される場合がある)を含む場合もある。したがって、合成された縮重オリゴヌクレオチドについて本明細書で言及する場合、また「n」を総称的に用いる場合は、「n」をG、A、T、C、またはイノシンと読むことができる。本明細書で用いる多義性コード(ambiguity code)は、本出願の出願時点において、標準的なIUPAC命名協約に準拠している(例えばRはAまたはGを意味し、YはCまたはTを意味する)。
当技術分野で周知のように、仮にプローブ分子が核酸試料とハイブリダイズする場合、プローブと試料が実質的な相同性/類似性/同一性を有すると妥当に推定することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを最初に行い、次に例えばKeller、G. H.、M. M. Manak、1987、DNA Probe、Stockton Press、New York、NY、pp.169-170に記載された、当業者で周知の手順で、洗浄を低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、または高ストリンジェンシーの条件で行う。例えば同書に記載されているように、低ストリンジェンシー条件では、最初に2×SSC(標準クエン酸ナトリウム)/0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)で室温で15分間洗浄する。通常、2回の洗浄を行う。高ストリンジェンシー条件では、塩濃度を下げることで、および/または温度を上げる。例えば上記の洗浄に続いて、0.1×SSC/0.1% SDSによる室温で各15分の2回の洗浄と、これに続く0.1×SSC/0.1% SDSによる55℃で30分間の洗浄を行うことができる。これらの温度は、本明細書に記載された他のハイブリダイゼーションおよび洗浄プロトコルで用いることが可能であり、また当業者に周知である(例えばSSCに代えてSSPEを塩として使用することができる)。2×SSC/0.1% SDSは、50 mlの20×SSC、および5 mlの10% SDSを445 mlの水に添加することで調製できる。20×SSCは、NaCl(175.3 g/0.150 M)、クエン酸ナトリウム(88.2 g/0.015 M)、および水を1リットルに混合した後に、10 N NaOHでpHを7.0に調整することで調製できる。10% SDSは、10 gのSDSを50 mlのオートクレーブ処理水に溶解し、100 mlに希釈し、アリコートを得ることで調製できる。
プローブの検出は、既知の手段で、ハイブリダイゼーションが維持されるか否かを判定する手段である。このようなプローブ解析は、本発明の毒素コード遺伝子を同定する迅速な方法となる。本発明の手順でプローブとして使用されるヌクレオチドセグメントは、DNA合成装置を用いて標準的な手順で合成することができる。このようなヌクレオチド配列は、本発明の遺伝子を増幅するためのPCRプライマーとして使用することもできる。
本発明で使用するプローブは、本明細書で言及されたり示唆されたりした任意の遺伝子などの、さまざまな供給源に由来する場合がある。例えば、任意の以下の種類の遺伝子(コード鎖、および/または非コード鎖、またはこの相補鎖)の全体もしくは一部を本明細書にしたがって使用することができる(tcaA、tcaB、tcaC、tcbA、tccA、tccB、tccC、tcdA、tcdB、xptA1、xptD1、xptB1、xptC1、xptA2、sepA、sepB、およびsepC)。特に明記しない限り、例えば「tccC」遺伝子という表現は、この種類の遺伝子のすべての特異的対立遺伝子(tccC1やtccC2など)を含む。同じことは、他のすべての遺伝子(例えば、表17に記載されたtcdB2、tccC3、および対立遺伝子)についても言える。
分子のハイブリダイゼーション特性を、本発明のポリヌクレオチドを定義するために使用することができる。したがって本発明は、本明細書で例示された、または提案されたポリヌクレオチド(またはオリゴヌクレオチドもしくはプライマー)とハイブリダイズするポリヌクレオチド(および/またはこの相補物、好ましくはこの完全な相補物)を含む。
本明細書で用いる、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな」条件とは、本出願者が用いる条件と同じか、またはほぼ同じ程度のハイブリダイゼーションの特異度を達成する条件を意味する。具体的には、サザンブロット上に32P標識遺伝子特異的プローブとともに固定されたDNAのハイブリダイゼーションは標準的な方法で実施された(例えばManiatis、T.、E.F. Fritsch、J. Sambrook、1982、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYを参照)。一般に、ハイブリダイゼーションと、これに続く洗浄は、標的配列の検出を可能とする条件で実施した。2本鎖DNA遺伝子プローブの場合、DNAハイブリッドの溶解温度(Tm)の20〜25℃未満の温度で一晩、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1% SDS、0.1 mg/ml変性DNA中でハイブリダイゼーションを行った。溶解温度は、以下の公式で表される(Beltz、G.A.、K.A. Jacobs、T.H. Eickbush、P.T. Cherbas、およびF.C. Kafatos、1983、Methods of Enzymology、R. Wu、L. GrossmanおよびK. Moldave編、Academic Press、New York 100:266-285):
Tm=81.5℃+16.6 Log[Na+]+0.41(%G+C)-0.61(%ホルムアミド)-600/2本鎖長(単位:bp)。
洗浄は通常、以下の手順で実施する。
(1)室温で15分間、1×SSPE、0.1% SDS中で2回(低ストリンジェンシーの洗浄)。
(2)Tm−20℃で15分間、0.2×SSPE、0.1% SDS中で1回(中ストリンジェンシーの洗浄)。
オリゴヌクレオチドプローブの場合は、ハイブリダイゼーションを一晩、ハイブリッドの溶解温度(Tm)の10〜20℃以下で、6×SSPE、5×デンハルト溶液、0.1% SDS、0.1 mg/ml 変性DNA中で実施した。オリゴヌクレオチドプローブのTmは、以下の公式で決定した。
Tm(℃)=2(T/A塩基対数)+4(G/C塩基対数)
(Suggs, S.V.、T. Miyake, E.H. Kawashime, M.J. Johnson, K. Itakura、およびR.B. Wallace、1981、ICN-UCLA Symp. Dev. Biol. Using Purified Genes、D.D. Brown編、Academic Press、New York、23:683-693)。
洗浄は通常、以下の手順で実施した。
(1)室温で15分間、1×SSPE、0.1% SDS中で2回(低ストリンジェンシーの洗浄)。
(2)ハイブリダイゼーション温度で15分間、1×SSPE、0.1% SDS中で1回(中ストリンジェンシーの洗浄)。
一般に、塩および/または温度を変化させてストリンジェンシーを変える。標識されたDNA断片が70塩基以上の長さである場合、以下の条件を用いることができる。
低ストリンジェンシー: 1×SSPEまたは2×SSPE、室温
低ストリンジェンシー: 1×SSPEまたは2×SSPE、42℃
中ストリンジェンシー: 0.2××SSPEまたは1×SSPE、65℃
高ストリンジェンシー: 0.1×SSPE、65℃
2本鎖の形成および安定性は、ハイブリッドの2本の鎖間の実質的な相補性に依存し、上述したように、ある程度のミスマッチは許容可能である。したがって本発明のプローブの配列は、記載された配列の(1残基および複数の残基の)変異、欠失、挿入、およびこれらの組み合わせを含む(変異、挿入、および欠失は、対象標的ポリヌクレオチドとの安定なハイブリッドの形成を可能とする)。変異、挿入、および欠失は、任意のポリヌクレオチド配列中に多くの方法で作製することが可能であり、これらの方法は当業者には周知である。将来、他の方法が開発される可能性がある。
PCR法
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、酵素で開始される核酸配列の反復的合成である。この手法は当業者に周知であり、広く用いられている(Mullis、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号;Saiki、Randall K.、Stephen Scharf、Fred Faloona、Kary B. Mullis、Glenn T. Horn、Henry A. Erlich、Norman Arnheim、1985、"Enzymatic Amplification of β-Globin Genomic Sequence and Restriction Site Analysis for Diagnosis of Sickle Cell Anemia"、Science 230:1350〜1354を参照)。PCRは、標的分子の反対の鎖にハイブリダイズする2本のオリゴヌクレオチドプライマーに挟まれた対象DNA断片の酵素的増幅に基づく。このようなプライマーは3'端から向かい合わせに位置する。テンプレートの熱変性、プライマーと相補的配列のアニーリング、およびアニーリングしたプライマーのDNAポリメラーゼによる伸長の反復サイクルによって、PCRプライマーの5'端によって決められるセグメントが増幅される。各プライマーの伸長産物は、他のプライマーのテンプレートとなるので、各サイクルが本質的に、前回のサイクルで作られたDNA断片の量を倍加する。この結果、特定の標的断片が数時間以内に数百万倍まで指数関数的に蓄積される。好熱細菌サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)から単離されたTaqポリメラーゼなどの熱に安定なDNAポリメラーゼを用いることで、増幅過程を完全に自動化することができる。使用可能な他の酵素は当業者に周知である。
本発明のDNA配列は、PCR増幅用のプライマーとして使用することができる。PCRによる増幅を行う際は、プライマーとテンプレート間における、ある程度のミスマッチを許容することができる。したがって、例示的なプライマーの変異、欠失、および挿入(特に5'端へのヌクレオチドの付加)は本発明の範囲内に含まれる。変異、挿入、および欠失を、当業者に周知の方法で任意のプライマー中に作ることができる。
遺伝子および毒素の修飾
本発明に有用な遺伝子および毒素は、具体的に例示された完全長の配列だけでなく、このような配列の一部、セグメント、および/または断片(完全長分子までの内部の欠失および/または末端側の欠失を含む)、バリアント、変異体、キメラ、およびこれらの融合体も含む。例えば本発明の毒素は、2種類またはこれ以上の毒素/タンパク質の一部を混合することで作られるキメラ毒素の状態で使用することができる。
本発明のタンパク質は、本明細書で具体的に例示されたタンパク質の特徴的な殺虫剤/機能活性を保持する限りにおいて、置換アミノ酸を有する場合がある。「バリアント」遺伝子は、例示的なタンパク質と同等の殺虫活性を有する同じ毒素または同等の毒素をコードするヌクレオチド配列を有する。「バリアントタンパク質」や「同等の毒素」という表現は、標的害虫に対して同じか、または本質的に同じ生物学的/機能活性を有する毒素、ならびに例示された毒素と同等の配列を意味する。本明細書で用いる「同等な」配列という表現は、殺虫活性を改善するか、または殺虫活性に有害な影響を及ぼさないアミノ酸の置換、欠失、付加、または挿入を有する配列を意味する。殺虫活性を有する断片も、この定義に含まれる。例示的な毒素の対応する断片の同じかまたは類似の機能、または「毒素活性」を保持する断片および他の同等物は本発明の範囲に含まれる。アミノ酸の置換や付加などの変化を、(毒素の機能活性を物質的/実質的に低下させることなく)タンパク質のプロテアーゼの安定性を高める(または低める)といった、さまざまな目的で作ることができる。
同等の毒素、および/または同等の毒素をコードする遺伝子は、野生型もしくは組換え型の細菌から、および/または他の野生型もしくは組換え型の生物から、本明細書に記載された手法で入手/抽出することができる。例えば他のバチルス、ペニバチルス、フォトラブドゥス、およびゼノラブドゥス種を、単離株源として使用することができる。
遺伝子の変異は、例えば点突然変異を作る標準的な手法で容易に構築することができる。また例えば米国特許第5,605,793号では、ランダム断片化後にDNA再集合を用いて追加的な分子多様性を作製する方法が説明されている。バリアント遺伝子を用いてバリアントタンパク質を作製することができる。また組換え体宿主を用いてバリアントタンパク質を作製することができる。このような「遺伝子シャッフリング」法で、本明細書に例示された任意の配列の任意の連続する5残基、10残基、または20残基の連続塩基(アミノ酸またはヌクレオチド)を含む、同等の遺伝子およびタンパク質を構築することができる。当業者であれば理解するように、遺伝子シャッフリング法は例えば、任意の例示的な配列(またはこの相補物(完全な相補物))中で、(同じ大きさの)セグメントに対応する、
Figure 2005536198
の連続残基(アミノ酸またはヌクレオチド)を有する同等物を得るように調節することができる。同様の大きさのセグメント、特に保存領域のセグメントを、プローブおよび/またはプライマーとして使用することもできる。
完全長遺伝子の断片は、市販のエキソヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼを用いて、標準的な手順で作製することができる。例えばBal31などの酵素を用いて、または部位特異的変異導入で、これらの遺伝子の末端からヌクレオチドを系統的に切り出すことができる。また、さまざまな制限酵素を用いて、活性断片をコードする遺伝子を得ることができる。プロテアーゼを使用して、これらの毒素の活性断片を直接得ることができる。
本明細書に記載されているように、毒素が切断型であっても未だ機能活性を保持していれば本発明の範囲に含まれる。「切断型毒素」という表現は、毒素タンパク質の一部分が切断可能であるが、切断後であっても活性を未だ保持することを意味する。切断はプロテアーゼの作用により、昆虫の腸の内部または外部で行える。また、効率的に切断されたタンパク質を、対象毒素をコードするDNA塩基を制限エンドヌクレアーゼによる切断、または当業者が利用できる他の手法で除去する分子生物学的手法で作製することができる。切り詰め後に、対象タンパク質を大腸菌、バキュロウイルス、植物ベースのウイルス系、酵母などの異種系で発現させ、次に活性を決定する目的で本明細書に記載されているように、昆虫アッセイ法の対象とすることができる。切断型毒素が、完全長の配列に満たない長さをもちつつも機能活性を保持するように良好に作製可能なことは当技術分野で周知である。B.t.毒素を切断型(コア毒素)の状態で使用可能なことは当技術分野で周知である。これについては例えば、Adangら、Gene 36:289-300、1985、"Characterized full-length and truncated plasmid clones of the crystal protein of バチルス・チューリンギエンシス subsp kurstaki HD-73 and their toxicity to マンドゥカ・セクスタ"を参照されたい。殺虫活性を保持する切断型タンパク質には、昆虫幼若ホルモンエステラーゼを含む他の例がある(カリフォルニア大学のRegentsによる米国特許第5,674,485号)。本明細書で用いる「毒素」という表現は、機能的に活性のある切断を含むことも意味する。一方で、プロ毒素部分(典型的には典型的なB.t. Cry毒素のC末端側の半分)を加えて、活性型の完全長のタンパク質とすることができる。これについては例えば、米国特許第6,218,188号を参照されたい。
本発明の一部の毒素を本明細書で具体的に例示する。このような毒素は単に本発明の毒素の例であるが、本発明が、例示的な毒素と同じかまたは類似の殺虫活性を有するバリアントまたは同等の毒素(および同等の毒素をコードするヌクレオチド配列)を含むことは容易に明らかになるはずである。同等の毒素は、例示的な毒素とアミノ酸の類似性(および/または相同性)を有する。アミノ酸同一性は典型的には60%を上回り、好ましくは75%を上回り、より好ましくは80%を上回り、さらにより好ましくは90%を上回り、また95%を上回る場合がある。本発明の好ましいポリヌクレオチドおよびタンパク質は、より特定の同一性および/または類似性の範囲に関して定義することができる。例えば同一性および/または類似性は、本明細書に例示された配列と比較して49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の場合がある。特に明記した部分を除いては、本明細書で用いる、2つの核酸のパーセント配列同一性および/または類似性は、KarlinおよびAltschul、1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズム(KarlinおよびAltschul、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5877により一部改変)で決定される。このようなアルゴリズムは、Altschulら、(1990)、J. Mol. Biol. 215:402-410のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み入れられている。BLASTによるヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)で実施される。比較目的でギャップを伴う配列比較を行うためには、Altschulら、1997、Nucl. Acids Res. 25:3389-3402に記載された手順でGapped BLASTを用いる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを用いる際は、個々のプログラム(NBLASTやXBLAST)のデフォルトのパラメータを使用する。これについてはNCBI/NIHのウェブサイトを参照されたい。スコアは、背景セクションで言及したCrickmoreらによる方法およびアルゴリズムで計算することもできる。
アミノ酸の相同性/類似性/同一性は、生物学的活性の源となる、毒素の重要な領域で最も高くなるか、または究極的には生物学的活性を担う3次元構造の決定に関与する。この点に関して、特定のアミノ酸の置換は可能であり、また許容されると考えられる。例えば、こうした置換は、活性に重要ではないタンパク質の領域内に存在する場合がある。タンパク質の結晶構造を解析すること、およびソフトウェアベースのタンパク質構造のモデル化により、(部位特異的変異導入やシャッフリングなどで)修飾して特性を実際に変化させたり、および/またはタンパク質の機能性を高めたりすることが可能なタンパク質の領域を同定することができる。
タンパク質のさまざまな性質および標的となる3次元的特徴を、対象タンパク質の毒素の活性/機能性に有害な影響を及ぼすことなく変化させることができる。保存的アミノ酸置換は許容可能であり、また分子の3次元構造に有害な作用を及ぼさないと推定される。アミノ酸は、「非極性」、「無電荷極性」、「塩基性」、および「酸性」の4つのクラスに分類することができる。1つのクラスのアミノ酸が、同じ型の別のアミノ酸に置換される保存的置換は、対象となる置換が化合物の生物学的活性に有害な作用を及ぼさない限りにおいて本発明の範囲に含まれる。表1に各クラスのアミノ酸の例を示す。
(表1)
Figure 2005536198
場合によっては、非保存的置換を作ることもできる。重要な点は、こうした置換が、毒素の機能/生物学的活性を大きく減じることがないということである。
本明細書で用いる、「単離された」ポリヌクレオチド、および/または「精製された」毒素という表現は、天然に認められる場合のある他の分子と結合していない分子を意味する。したがって「単離された」、および/または「精製された」という表現は、本明細書で説明するように「人の手」が関与していることを意味する。例えば、発現させる目的で植物に導入された本発明の細菌毒素「遺伝子」は「単離されたポリヌクレオチド」である。同様に、植物によって作られた、本明細書に例示されたペニバチルスのタンパク質は「単離されたタンパク質」である。
遺伝子コードの縮重/冗長性のために、多種多様なDNA配列が、本明細書に記載されたアミノ酸配列をコードする場合がある。同じか、または本質的に同じ毒素をコードする別のDNA配列を作製することは当業者に周知である。このようなバリアントDNA配列は本発明の範囲内に含まれる。
植物における発現のための配列の最適化
植物で異種遺伝子を高レベルで発現させるためには、植物細胞(の細胞質)で効率的に発現されるように遺伝子を作製することが好ましい可能性がある。トウモロコシは、対象植物における異種遺伝子(群)の発現レベルを高めるために、形質転換に先だって異種遺伝子(群)を再設計することが好ましいと考えられる、このような植物の1つである。したがって、細菌毒素をコードする遺伝子の設計の追加的な段階は、最適に発現されることを目指して異種遺伝子を設計し直すことである。
トウモロコシで発現される細菌毒素を再設計する1つの理由は、天然遺伝子のG+C含量が最適ではない点にある。例えば、一部の天然細菌遺伝子(群)にみられる極めて低いG+C含量(また結果として高いA+T含量)は、A+Tを多く含むことが知られている植物遺伝子の制御配列に似た、または重複性の配列を結果的に生じる。植物に導入される遺伝子(群)のDNA中におけるいくつかのA+Tに富む配列(例えば遺伝子プロモーター中に通常存在するTATAボックス領域)の存在は、遺伝子(群)の異常な転写を招く場合がある。一方、転写されるmRNA中に存在する他の調節配列(例えばポリアデニル化シグナル配列(AAUAAA)、またはmRNA前駆体のスプライシングに関与する核内低分子RNAに相補的な配列)の存在はRNAの安定化につながる場合がある。したがって、トウモロコシで発現させる細菌毒素をコードする遺伝子、より好ましくは植物最適化遺伝子(群)を設計する上での1つの目的は、G+C含量の高いDNA配列を作製すること、また好ましくは、代謝酵素をコードするトウモロコシ遺伝子のG+C含量に近づけることである。細菌毒素をコードする植物最適化遺伝子(群)を設計する上でもう1つの目的は、配列の修飾が翻訳を阻害しないDNA配列を作製することである。
下記の表(表2)に、トウモロコシにおけるG+C含量がいかに高いかということを示す。表2のデータについては、遺伝子のコード領域を、ゲンバンク(リリース71)のエントリーから抜き出し、MacVector(商標)プログラム(Accelerys、Burlington、MA)を用いて塩基組成を計算した。イントロン配列は、計算の過程で無視した。
遺伝コードの冗長性/縮重(一部のアミノ酸が複数のコドンで指定されること)による可塑性のため、さまざまな生物における、または生物の分類におけるゲノムの進化は、縮重コドンのさまざまな使用につながる。この「コドンの偏り(codon bias)」は、タンパク質コード領域の平均塩基組成に反映する。例えばG+C含量が相対的に低い生物は、縮重コドンの3番目の位置にAまたはTを有するコドンを用いている。一方で、高G+C含量生物の場合は、GまたはCが3番目の位置に来るコドンを用いている。mRNA中における「マイナー」コドンの存在は、特にマイナーコドンに対応する、アミノ酸を備えたtRNAの相対量が少ない場合に、mRNAの絶対的な翻訳速度を低下させる可能性があると考えられている。この延長として、個々のマイナーコドンの存在による翻訳速度の低下は、複数のマイナーコドンに対して少なくとも付加的に作用する可能性がある。したがって、マイナーコドンの相対量が多いmRNAの翻訳速度は相応に低くなる。翻訳速度は、コードタンパク質の後のレベルの低さの影響を受ける場合がある。
トウモロコシ(または、ワタやダイズなどの他の植物)における発現を目的とした、細菌毒素をコードする遺伝子の再設計に関しては、植物のコドンの偏りが決定されている。トウモロコシにおけるコドンの偏りとは、植物がタンパク質のコード化に使用する統計的なコドン分布である。好ましいコドン使用を表3に示す。偏りの決定後に、対象遺伝子(群)中のコドンのパーセント頻度を決定する。植物が好む第1のコドン、ならびに第2および第3の好ましいコドンの選択を決定すべきである。次に対象細菌毒素のアミノ酸配列を逆翻訳して、結果として得られる核酸配列が、異種的に発現させたい天然の遺伝子とまさに同じタンパク質をコードするようにする。新しいDNA配列を、所望の植物の最も好ましいコドンに対応するように、コドンの偏りに関する情報をふまえて設計する。この新しい配列を次に、修飾によって作り出された可能性のある制限酵素切断部位について解析する。同定された部位を、コドンを第2もしくは第3の選択の好ましいコドンと置換することで、さらに修飾する。対象遺伝子の転写または翻訳に影響を及ぼす可能性のある配列中の他の部位には、エキソン:イントロン境界部(5'または3')、ポリA付加シグナル、またはRNAポリメラーゼ停止シグナルがある。これらの配列をさらに解析し、TAまたはGCのダブレットの頻度を下げるように修飾する。ダブレットのほかに、同じ4残基を上回る数の残基のGまたはCの配列ブロックが配列の転写に影響する場合がある。したがって、このようなブロックも、第1または第2の選択のコドンなどを、次に好ましい選択コドンに置換することで修飾する。
(表2) トウモロコシ遺伝子のタンパク質コード領域のG+C含量のまとめ
Figure 2005536198
a 括弧内はクラス中の遺伝子数。
b 括弧内は標準偏差。
c 平均計算では無視した統合群平均(Combined groups mean)。
細菌毒素をコードする植物最適化遺伝子(群)は、約63%の第1選択コドン、約22%〜約37%の第2選択コドン、および約15%〜約0%の第3選択コドンを含むことが好ましい(計100%)。最も好ましい植物最適化遺伝子(群)は、約63%の第1選択コドン、少なくとも約22%の第2選択コドン、約7.5%の第3選択コドン、および約7.5%の第4選択コドンを含む(計100%)。トウモロコシにおける発現用の遺伝子の作製時の好ましいコドン使用を表3に示す。上記の方法で当業者は、ある植物にとっては異物である遺伝子(群)を、植物で最適に発現させるように修飾することが可能となる。この方法は、国際公開公報第97/13402号に詳述されている。
細菌毒素をコードする植物最適化遺伝子群を設計するためには、表2に示す、特定の植物における遺伝子配列についてまとめられたコドンの偏りを記載した表から決定した非冗長性の遺伝コードを用いて、対象タンパク質のアミノ酸配列をDNA配列に逆翻訳する。コドン使用が完全に均一な、結果として得られるDNA配列をさらに修飾して、高度のコドン多様性を有することとは別に、戦略的に配置された制限酵素認識部位、望ましい塩基組成、および遺伝子の転写または産物mRNAの翻訳に干渉する可能性のある配列も除去したDNA配列を決定する。
(表3) トウモロコシで発現されるタンパク質の好ましいアミノ酸コドン
Figure 2005536198
*トウモロコシにおける、第1および第2に好ましいコドン。
したがって、本発明の毒素/遺伝子と機能的に同等の合成遺伝子を、植物を含む宿主の形質転換に使用することができる。合成遺伝子の作製に関する他の手引きは、例えば米国特許第5,380,831号に記載されている。
場合によっては、特に植物における発現に関しては、切断型タンパク質を発現する切断型遺伝子の使用が有益な場合がある。例えば背景セクションで言及したHofteらの論文(1989)では、B.t.毒素のプロ毒素およびコア毒素のセグメントについて論じられている。好ましい切断型遺伝子は典型的には、完全長の毒素の40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%をコードする。
トランスジェニック宿主
本発明の毒素をコードする遺伝子を、さまざまな微生物または植物の宿主に導入することができる。好ましい態様では、トランスジェニックの植物細胞および植物体を使用する。好ましい植物体(および植物細胞)は、トウモロコシ(corn、maize)、およびワタである。
好ましい態様では、毒素遺伝子の発現は直接または間接的に、細胞内における殺虫性タンパク質の産生(および維持)につながる。植物を、このような方法で昆虫耐性とすることができる。トランスジェニック宿主細胞/組換え宿主細胞/形質転換宿主細胞/トランスフェクション宿主細胞(またはこれらの内容物)が害虫に摂取されると、害虫は毒素を取り込むことになる。これは害虫に毒素を接触させる好ましい方法である。結果的に、害虫は駆除される(死滅するか病的状態になる)。吸着性の幼虫も類似の方法で駆除することができる。あるいは、適切な微生物宿主(例えばP.フルオレセンスなどのシュードモナス)を、標的害虫が存在する場所に散布することができる。また微生物をそのような場所で増殖させ、標的害虫に取り込ませることができる。毒素遺伝子の宿主となる微生物を、毒素活性の寿命を延長させて細胞を安定化させる条件で処理することができる。次に、毒性活性を保持する処理細胞を、標的害虫の生息環境に使用することができる。
適切なベクターを用いて毒素遺伝子を微生物宿主に導入し、この宿主を生きた状態で環境中に散布する場合は、特定の宿主微生物を使用すべきである。微生物宿主は、1種もしくは複数種の対象作物の「植物圏」(葉面(phylloplane)、葉圏、根圏、および/または根面(rhizoplane)を占めることが知られているものを選択する。このような微生物を特定の環境(作物および他の昆虫生息域)で、野生型微生物と良好に競合できるように選択し、ポリペプチド殺虫剤を発現する遺伝子の安定な維持および発現をもたらし、また望ましくは、環境中における分解および不活性化から殺虫剤の防御の改善をもたらす。
さまざまな重要作物の葉面(植物の葉の表面)、および/または根圏(植物の根の周囲の土壌)に生息する多数の微生物が知られている。このような微生物には、細菌、藻類、および真菌などが含まれる。特に重要な生物は、例えば例えばシュードモナス属、エルウィニア属、セラチア属、クレブシエラ属、キサントモナス属、ストレプトマイセス属、リゾビウム属、ロドシュードモナス属、メチロフィルス属、アグロバクテリウム属、アセトバクター属、ラクトバチルス属、アルスロバクター属、アゾトバクター属、リューコノストック属、およびアルカリゲネス属などの細菌、真菌、特に酵母(例えばサッカロマイセス属、クリプトコッカス属、クリュイベロマイセス属、スポロボロズンマイセス属、ロドトルラ属、およびアウレオバシディウム属)などの微生物である。特に重要な微生物は、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレセンス、セラチア・マルセセンス、アセトバクター・キシリナム、アグロバクテリウム・ツメファシエンス、ロドシュードモナス・スフェロイデス、キサントモナス・カンペストリス、リゾビウム・メリオティ、アルカリゲネス・エントロファス、およびアゾトバクター・ビンランディなどの植物圏の細菌種、ならびにロドトルラ・ルブラ、R.グルティニス、R.マリナ、R.アウランティアカ、クリプトコッカス・アルビドゥス、C.ディフルエンス、C.ラウレンティ、サッカロマイセス・ロゼイ、S.プレトリエンシス、S.セレビシエ、スポロボロマイセス・ロゼウス、S.オドルス、クリュイベロマイセス・ベロネ、およびアウレオバシディウム・ポルランスなどの植物圏の酵母種である。色素性微生物(pigmented microorganism)も重要である。
トランスジェニック宿主を形成するための遺伝子の挿入
本発明の1つの局面は、本発明のタンパク質を発現する本発明のポリヌクレオチドによる、植物体、植物細胞、および他の宿主細胞の形質転換/トランスフェクションである。このように形質転換された植物には、標的害虫(群)の攻撃に対する耐性をもたせることができる。
殺虫性タンパク質をコードする遺伝子を、対象遺伝子の安定な維持および発現を可能とする条件下で標的宿主に導入する、さまざまな方法がある。このような方法は当業者に周知であり、また例えば米国特許第5,135,867号に記載されている。
例えば、大腸菌の複製系、および形質転換細胞の選択を可能とするマーカーを含む多数のクローニングベクターを、高等植物への外来遺伝子挿入の調製に利用することができる。こうしたベクターには例えばpBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184などがある。したがって、毒素をコードする配列を、ベクター上の適切な制限酵素切断部位に挿入することができる。結果として得られるプラスミドを大腸菌の形質転換に使用する。大腸菌細胞を適切な栄養培地で培養後に回収して溶解し、プラスミドを回収する。配列解析、制限酵素解析、電気泳動、および他の生化学的-分子生物学的方法を一般的には解析法として行う。各操作後に、使用したDNA配列を切断し、次のDNA配列に連結する。各プラスミドの配列は、同じプラスミドか、または他のプラスミドにクローン化することができる。所望の遺伝子を植物に導入する方法によっては他のDNA配列が必要となる場合がある。例えば仮にTiプラスミドまたはRiプラスミドを植物細胞の形質転換に使用するのであれば、TiプラスミドもしくはRiプラスミドのT-DNAの少なくとも右側の境界(ときには右側の境界と左側の境界)を、挿入対象遺伝子の隣接領域として連結させる必要がある。植物細胞の形質転換におけるT-DNAの使用については詳細に研究が進んでおり、欧州特許第120 516号で説明されている(Hoekema、1985、The Binary Plant Vector System、Offset-durkkerij Kanters B.V.、Alblasserdam、第5章;Fraleyら、Crit. Rev. Plant Sci. 4:1-46;およびAnら、1985、EMBO;J. 4:277-287)。
植物宿主細胞にDNAを導入するさまざまな手法がある。このような手法には、アグロバクテリウム(アグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネス)を形質転換の作用因子として用いるT-DNAによる形質転換、融合、注入、微粒子銃、またはエレクトロポレーション、ならびに他の可能な方法などがある。アグロバクテリウムを形質転換に使用する場合は、挿入対象のDNAを、特定のプラスミド(中間ベクターまたはバイナリーベクターのいずれか)にクローン化する必要がある。中間ベクターは、T-DNA中の配列に相同な配列を利用した相同組換えによってTiプラスミドまたはRiプラスミドに組み入れられる。TiプラスミドまたはRiプラスミドは、T-DNAの輸送に必要なvir領域も含む。中間ベクターはアグロバクテリウム中で自身を複製できない。中間ベクターは、ヘルパープラスミドを用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスに移すことができる(接合)。バイナリベクターは、大腸菌とアグロバクテリウムの両方で自身を複製可能である。バイナリベクターは、選択マーカー遺伝子、およびT-DNA境界領域の右側および左側で読み枠の合ったリンカーまたはポリリンカーを含む。バイナリベクターでアグロバクテリウムを直接形質転換することができる(Holstersら、1978、Mol. Gen. Genet. 163:181-187)。宿主細胞として使用されるアグロバクテリウムは、vir領域を有するプラスミドを含むようにする。vir領域は植物細胞内へのT-DNAの輸送に必要である。別のT-DNAを追加的に含めることもできる。このように形質転換された細菌を植物細胞の形質転換に用いる。植物移植片は、植物細胞にDNAを輸送することを目的にアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネスと有利に培養することができる。次に、感染植物材料(例えば葉、茎の一部、根のほか、プロトプラストまたは懸濁培養細胞)から植物体を、選択用の抗生物質または殺生剤を含めることが可能な適切な培地中で再生させることができる。次に、このようにして得られた植物を対象に、挿入DNAの存在を調べる。注入やエレクトロポレーションの場合にはプラスミドを作る必要は特にない。例えばpUC系などの一般的なプラスミドを用いることができる。
形質転換細胞は、通常の様式で植物体内で成長する。形質転換細胞は生殖細胞を形成して、形質転換された形質(群)を子孫植物に伝える場合がある。このような植物体を通常の手順で成長させ、同様に形質転換された遺伝因子、または他の遺伝因子をもつ植物体と交配させることができる。結果として得られるハイブリッド個体は、対応する表現型の特性を有する。
本発明のいくつかの好ましい態様では、細菌毒素をコードする遺伝子を、植物ゲノムに挿入された状態の転写単位から発現させる。好ましくは、このような転写単位は、植物ゲノムへの安定な組込みが可能で、対象タンパク質をコードするmRNAを発現する形質転換植物系統の選択が可能な組換え体ベクターである。
挿入DNAがゲノムに組み込まれたら、相対的に安定となる(再び切り出されることはない)。挿入DNAは通常、形質転換植物細胞に、殺生剤もしくは抗生物質(特にカナマイシン、G418、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、またはクロラムフェニコールなど)に対する耐性をもたらす選択マーカーを含む。したがって個別に使用されるマーカーは、挿入DNAを含まない細胞ではなく、形質転換細胞の選択を可能とすべきである。対象遺伝子(群)は好ましくは、構成的または誘導的なプロモーターのいずれかによって植物細胞内で発現される。発現後は、mRNAがタンパク質に翻訳されることで、対象アミノ酸がタンパク質に組み込まれる。植物細胞で発現される毒素をコードする遺伝子は、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、または誘導的プロモーターの制御下に置くことができる。
外来組換えベクターを植物細胞内に導入する方法、また導入遺伝子を安定に維持して発現する植物体を得る方法はいくつかある。このような手法には、微粒子表面をコーティングした遺伝物質の細胞への直接導入などがある(Cornellによる米国特許第4,945,050号、およびDowElanco(現Dow AgroSciences、LLC)による第5,141,131号)。また、アグロバクテリウムを用いる方法で植物を形質転換することができる(トレド大学による米国特許第5,177,010号、Texas A&Mによる第5,104,310号;欧州特許出願第0131624B1号、Schilperootによる欧州特許出願第120516号、第159418B1号、および第176,112号;Schilperootによる米国特許第5,149,645,号、第5,469,976号、第5,464,763号、および第4,940,838号および第4,693,976号、Max Planckによる欧州特許出願第116718号、第290799号、第320500号、日本たばこ産業による欧州特許出願第604662号および第627752号、ならびに米国特許第5,591,616号、Ciba Geigy(現Novartis)による欧州特許出願第0267159号および第0292435号、ならびに米国特許第5,231,019号;Calgeneによる米国特許第5,463,174号および第4,762,785号、ならびにAgracetusによる米国特許第5,004,863号および第5,159,135号を参照)。他の形質転換法にはwhiskers法がある。これについてはZenecaによる米国特許第5,302,523号および第5,464,765号を参照されたい。エレクトロポレーション法も植物の形質転換に用いられている。これについては、Boyce Thompson Instituteによる国際公開公報第87/06614号、Dekalbによる米国特許第5,472,869号および第5,384,253号、ならびにPlant Genetic Systemsによる国際公開公報第92/09696号および国際公開公報第93/21335号を参照されたい。また、ウイルスベクターを使用して、対象タンパク質を発現するトランスジェニック植物を作出することもできる。例えば単子葉植物を、Mycogen Plant ScienceおよびCiba-Giegy(現Novartis)による米国特許第5,569,597号、ならびにBiosourceによる米国特許第5,589,367号および第5,316,931号に記載の方法で、ウイルスベクターを用いて形質転換することができる。
前述したように、DNAコンストラクトを植物宿主に導入する方法は本発明には重要ではない。効率的な形質転換を可能とする任意の方法を用いてよい。例えば、多様な植物細胞形質転換法が本明細書に記載されており、またアグロバクテリウムを介する形質転換用にTiプラスミドまたはRiプラスミドなどの使用などがある。多くの場合、形質転換用のコンストラクトの片側または両側(特に右側)がT-DNA境界と接することが望ましい。これは特に、コンストラクトがアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネスを形質転換様式として使用するが、T-DNA境界部を他の形質転換様式に用いる場合に有用である。アグロバクテリウムを植物細胞の形質転換に用いる場合は、宿主に存在するT-DNAまたはTiプラスミドもしくはRiプラスミドとの相同組換え用に宿主に導入可能なベクターを使用することができる。このようなベクターは、エレクトロポレーション、トリパレント(triparental)接合、および当業者に周知の、他のグラム陰性細菌形質転換法で導入することができる。アグロバクテリウム宿主へのベクター形質転換法は本発明には重要ではない。組換え用のT-DNAを含むTiプラスミドまたはRiプラスミドは、えい瘤(gall)を形成する場合もあれば形成しない場合もあり、vir遺伝子群が対象宿主に存在する限りにおいて本発明には重要ではない。
アグロバクテリウムを形質転換に用いるいくつかの場合は、T-DNA境界部の内部に位置する発現コンストラクトを、Dittaらの文献(参照として本明細書に組み入れられるPNAS USA、1980、77:7347-7351および欧州特許第0120515号)に記載された手順で、pRK2またはこの誘導体などの広宿主域ベクターに組み込む。形質転換されたアグロバクテリウムおよび形質転換された植物細胞の選択を可能とする、1つもしくは複数のマーカーも本明細書に記載された発現コンストラクトおよびT-DNAに含まれる。使用する特定のマーカーは本発明には重要ではなく、好ましいマーカーは、使用する宿主および構築法によって変わる。
アグロバクテリウムを用いて植物細胞を形質転換する場合、移植片を、形質転換されたアグロバクテリウムと、この形質転換を可能とする充分な時間、混合およびインキュベートするとよい。形質転換後に、適切な抗生物質でアグロバクテリウムを選択して死滅させ、植物細胞を適切な選択培地で培養する。カルスが形成したら、植物組織の培養および植物体再生に関する、当技術分野で周知の方法にしたがって、適切な植物ホルモンを使用することでシュートの形成を促すことができる。しかし、カルス中間段階は必ずしも必要ではない。シュートの形成後に、対象植物細胞を、根形成を促す培地に移すことで植物体の再生を完了することができる。次にこの植物体を成長させて種子を得て、この種子を用いて将来の世代を得ることができる。どの形質転換法でも、細菌毒素をコードする遺伝子を好ましくは、ベクターに植物のプロモーター調節エレメントならびにNosなどの3'非翻訳転写終結領域をベクターに含めることで対象遺伝子の植物細胞における発現に適合した遺伝子輸送用ベクターに組み入れる。
植物を形質転換する数多くの手法のほかに、外来遺伝子と接触させる組織の種類も多様である。このような組織は、胚組織、I型、II型、およびIII型のカルス組織、胚軸、分裂組織、根組織、師部における発現用の組織などを含む場合があるが、これらに限定されない。ほぼすべての植物組織を、脱分化中に、本明細書に記載された適切な手法で形質転換することができる。
前述したように、望ましいならば、さまざまな選択マーカーを使用することができる。どのマーカーが優れているかということは当業者であれば判断できるが、以下の任意の選択マーカーを、選択マーカーとして機能可能な、本明細書に記載されていない他の任意の遺伝子とともに使用することができる。このような選択マーカーには、抗生物質カナマイシン、ネオマイシン、およびG418に対する耐性をコードする、トランスポゾンTn5のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(Aph II)、ならびにグリフォセート、ハイグロマイシン、メトトレキセート、ホスフィノリシン(ビアラフォス)、イミダゾリノン、スルホニル尿素、およびトリアゾロピリミジン系の除草剤(クロルスルフロン、ブロモキシニル、ダラポンなど)に対する耐性または寛容性をコードする遺伝子などがあるが、これらに限定されない。
選択マーカーに加えて、レポーター遺伝子を使用することが好ましい。場合によっては、選択マーカーの使用もしくは不使用にかかわらず、レポーター遺伝子を使用することができる。レポーター遺伝子は、レシピエントとなる生物または組織には通常存在しない遺伝子であり、いくつかの表現型上の変化または酵素学的性質をもたらすタンパク質を通常コードする。このような遺伝子の例は、K. Wisingら、Ann. Rev. Genetics、22、421、1988に記載されている。好ましいレポーター遺伝子には、大腸菌のuidA座位のベータ-グルクロニダーゼ(GUS)、大腸菌のTn9のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、生物発光クラゲ(エコレア・ビクトリア(Aequorea Victoria))の緑色蛍光タンパク質、およびホタル(フォティナス・ピラリス(Photinus pyralis))のルシフェラーゼ遺伝子などがある。次に、レポーター遺伝子の発現を検出するアッセイ法を、対象遺伝子をレシピエント細胞に導入後に、適切な時間をおいて行う。このような好ましいアッセイ法には、Jeffersonらの文献(1987、Biochem. Soc. Trans. 15、17-l9)に記載されているように、大腸菌のuidA座位のベータ-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする遺伝子を用いて形質転換細胞を同定する方法が含まれる。
植物プロモーターの調節エレメントに加えて、さまざまな供給源に由来するプロモーター調節エレメントを植物細胞で効率的に使用して外来遺伝子を発現させることができる。例えば、オクトピンシンターゼプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、マンノピンシンターゼプロモーターなどの細菌起源のプロモーター調節エレメント、カリフラワーモザイクウイルス(35Sおよび19S)、35T(米国特許第6,166,302号の特に実施例7Eに記載された、35Sプロモーター由来の人工プロモーター)などのウイルス起源のプロモーターなどを使用することができる。植物のプロモーター調節エレメントには、リブロース-1,6-ビスリン酸(RUBP)カルボキシラーゼ小サブユニット(ssu)、ベータ-コングリシニンプロモーター、ベータ-ファゼオリンプロモーター、ADHプロモーター、熱ショックプロモーター、および組織特異的プロモーターなどがあるが、これらに限定されない。マトリックス結合領域、足場構造結合領域、イントロン、エンハンサー、ポリアデニル化配列などの他のエレメントを存在させることで、転写効率またはDNAの組込みを改善することができる。これらのエレメントは、DNAの機能に必要な場合もあれば必要ない場合もあるが、転写やmRNA安定性などに影響することでDNAの良好な発現または機能性をもたらす場合がある。このようなエレメントは、植物で最適な形質転換効率を得ることが望ましい場合にDNAに含めることができる。典型的なエレメントには、Adh-イントロン1、Adh-イントロン6、アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質のリーダー配列、トウモロコシ条斑病ウイルスのコートタンパク質のリーダー配列、ならびに当業者が入手可能な他のエレメントなどがあるが、これらに限定されない。構成的プロモーター調節エレメント(例えばアクチン、ユビキチン、CaMV 35Sなど)を使用することで、あらゆる細胞種で、またあらゆる時点で連続的な遺伝子発現を誘導することもできる。組織特異的プロモーター調節エレメント(例えばゼイン、オレオシン、ナピン、ACP、グロブリンなど)は、特定の細胞、または葉や種子などの組織における遺伝子発現に関与し、これらを使用することもできる。
プロモーター調節エレメントは、植物の発生の特定の段階で活性を示す場合もあるほか、植物の組織および器官で活性を示す場合もある。このようなエレメントの例には、花粉特異的なプロモーター調節エレメント、胚特異的なプロモーター調節エレメント、トウモロコシの毛に特異的なプロモーター調節エレメント、ワタの繊維に特異的なプロモーター調節エレメント、根に特異的なプロモーター調節エレメント、種子の胚乳に特異的なプロモーター調節エレメントなどがあるが、これらに限定されない。特定の環境下では、物理的刺激(熱ショック遺伝子群)、光(RUBPカルボキシラーゼ)、ホルモン(Em)、代謝物、化合物、およびストレスなどの特定のシグナルに応答した遺伝子発現に関与する誘導的プロモーター調節エレメントを使用することが望ましい場合がある。植物で機能する他の望ましい転写エレメントおよび翻訳エレメントを使用することができる。数多くの植物特異的遺伝子輸送用ベクターが当技術分野で知られている。
標準的な分子生物学的手法で、本明細書に記載された毒素のクローン化および配列決定が可能である。追加情報は、参照として本明細書に組み入れられるSambrook、J.、Fritsch、E. F.、およびManiatis、T.、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Pressに記載されている。
耐性管理
トランスジェニック植物における殺虫性タンパク質の商業利用の拡大に伴う1つの問題が耐性の管理である。すなわちバチルス・チューリンギエンシス毒素を製品に使用する多数の企業が存在し、昆虫がB.t.毒素に耐性を生じることが懸念されている。昆虫耐性管理の1つの戦略は、ゼノラブドゥスやフォトラブドゥスなどが産生するTC毒素を、B.t.、結晶毒素、バチルス株由来の可溶性殺虫性タンパク質(例えば国際公開公報第98/18932号および国際公開公報第99/57282号を参照)などの毒素、または他の昆虫毒素と組み合わせることである。こうした組み合わせは、噴霧可能な製品として製剤化することができるほか、分子の組み合わせとすることができる。植物は、2つもしくはこれ以上の異なる昆虫毒素を産生する細菌遺伝子で形質転換することができる(例えばGould、38 Bioscience、26-33、1988、および米国特許第5,500,365号、欧州特許第0400246A1号および米国特許第5,866,784号、第5,908,970号を参照。第6,172,281号は、2種類のB.t.結晶毒素による植物の形質転換についても記載されている)。複数の昆虫耐性遺伝子を含むトランスジェニック植物を作出する別の方法では、2種類の植物体を最初に作る(各植物体が昆虫耐性遺伝子を含む)。次に、これらの植物体を従来の植物育種法で交配させて、複数の昆虫耐性遺伝子を含む植物を得ることができる。したがって、本明細書で用いる「ポリヌクレオチドを含む」という表現は、特に明記しない限り、少なくとも1種類のポリヌクレオチド(またおそらくは複数の、連続もしくは不連続のポリヌクレオチド)を意味することが明らかになると思われる。
製剤化および他の輸送法
本発明のペニバチルス単離株、または本明細書に記載された単離株から得られる遺伝子を含む組換え型微生物の胞子および/または結晶を含む、製剤化されたベイト顆粒(bait granule)を土壌に散布することができる。製剤化された産物を、作物成長サイクルの後期段階において、種子被覆処理もしくは根処理、または植物体全体を処理する状態で散布することもできる。植物体および土壌の細胞による処理では、無機ミネラル(フィロ珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、または植物材料(トウモロコシの粉末状穂軸、もみ殻、クルミの殻など)などのさまざまな不活性材料と混合することで、可溶性粉末、顆粒、またはダストを使用することができる。このような製剤には、展着性補助剤(spreader-sticker adjuvant)、安定剤、他の殺虫性添加物、または界面活性剤を含めることができる。液体製剤は、水性または非水性とすることが可能であり、また泡状、ゲル状、懸濁状、乳化可能濃縮物状などで用いられる。このような成分には、流体力学的な薬剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、またはポリマーなどがある。
当業者であれば理解するように、特定の剤型の性質、特に製剤が濃縮物の状態か、または直接使用されるかによって殺虫剤濃度は大きく変動する。殺虫剤は少なくとも1%(重量%)の濃度とすることができるほか、100%(重量%)の濃度とすることができる。乾燥状態の製剤は、殺虫剤の約1〜95%(重量%)であり、液体製剤は一般に、液相中に固体が約1〜60%(重量%)含まれる。製剤は一般に約102〜約104細胞/mgである。このような製剤は、1ヘクタールあたり約50 mg〜1 kg(溶液重量または乾燥重量)、またはこれ以上の量で散布される。
製剤を、噴霧、粉づけ(dusting)、スプリンクラーの使用などによって害虫生息環境(例えば土壌や葉)に散布することができる。
別の輸送法では、毒素の遺伝物質をバキュロウイルスベクターに組み入れる。バキュロウイルスは、望ましくは毒素の標的となる特定の昆虫宿主に感染する。毒素の発現コンストラクトを含む感染性バキュロウイルスを、昆虫がはびこる場所に導入することで、感染昆虫に中毒症状を誘導することができる。
昆虫ウイルスまたはバキュロウイルスは、特定の昆虫に感染して有害な作用を及ぼすことが知られている。ウイルスが昆虫に及ぼす効果は緩やに発揮され、ウイルスが昆虫の摂食行動を直ちに止めることはない。したがってウイルスは、最適な昆虫駆除剤とはみなされていない。しかし、毒素遺伝子をバキュロウイルスベクターに組み込むことで、毒素を送り込む効率的な方法になると考えられる。また、さまざまなバキュロウイルスが異なる昆虫に特異的なので、特定の毒素を用いて、特に有害な害虫を選択的に標的とすることが可能となりうる。毒素遺伝子に特に有用なベクターの1つに核多角体病ウイルスがある。同ウイルスを用いる輸送ベクターは文献に記載されており、現在、外来遺伝子を昆虫に輸送するための第1選択のベクターとなっている。ウイルス-毒素遺伝子組換え体は、経口伝達状に構築することができる。バキュロウイルスは通常、昆虫の中腸粘膜を介して感染する。強力なウイルスコートタンパク質のプロモーターの下流に挿入された毒素遺伝子が発現されれば、感染昆虫は速やかに死滅するはずである。
昆虫ウイルスまたはバキュロウイルス、または本発明のタンパク質毒素のトランスジェニック植物輸送系のほかに、対象タンパク質を、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,695,455号、第4,695,462号、第4,861,595号に記載されているが、これらに限定されないバチルス・チューリンギエンシス封入法で包むことができる。本発明のタンパク質毒素の別の輸送系では、タンパク質をベイトマトリックス(bait matrix)中に製剤化して、次に地上および地下の昆虫ベイトステーション(bait station)で使用する。このような手法の例には、参照として本明細書に組み入れられる国際出願第93/23998号などがあるが、これに限定されない。
植物RNAウイルスを基礎とする系も細菌毒素の発現に用いられる。このためには、毒素をコードする遺伝子を、対象宿主植物に感染する適切な植物ウイルスのコートプロモーター領域に挿入するとよい。次に毒素を発現させることで、植物を昆虫による害から保護することができる。植物RNAウイルスをベースとした系は、Mycogen Plant Sciences社による米国特許第5,500,360号、およびBiosource Genetics社による米国特許第5,316,931号および第5,589,367号に記載されている。
形質転換植物の作製のほかに、細菌遺伝子(群)の再作製に望ましい輸送系がある。例えば、餌として昆虫を惹きつける分子と毒素を融合したタンパク質毒素を構築することができる。実験室で精製後に、「ビルトイン」されたベイトを含む毒性薬剤を、標準的な昆虫トラップハウジングの内部にパッケージすることができる。
変異体
本発明のDAS1529およびDB482単離株の変異体は、当技術分野で周知の手順で作製することができる。例えば、無胞子性変異体は、単離株にエチルメタンスルホン酸(EMS)で変異を導入することで得られる。変異体は、紫外光やニトロソグアニンを用いて、当技術分野で周知の手順で作製することができる。
本明細書で言及された、または引用されたすべての特許、特許出願、仮出願、および出版物は、本明細書の明確な記載と矛盾しない範囲で、参照として全体が組み入れられる。
以下に、本発明を実施するための手順を説明するための実施例を挙げる。これらの実施例に制限する意図はない。すべての重量パーセント、およびすべての溶媒混合物の比率は、特に明記しないかぎり容量で示す。
実施例1.ペニバチルス sp.としてのDAS1529の殺虫活性の単離および知見
DAS1529と命名された細菌株は、鱗翅目の昆虫、オオタバコガ(Heliothis zea;CEW)、タバコ・ブドワーム(Heliothis viresces;TBW)、およびタバコ・ホーンワーム(マンドゥカ・セクスタ;THW)の幼虫に成長阻害をもたらす因子を産生することが知られている。
DAS1529を、1.25% NaClを添加した2% プロテアーゼ・ペプトンNo.3(PP3)培地(Disco Laboratories、Detroit、MI)で、または0.2%グルコースを添加したJB培地で培養した。細菌培養物を25℃で約40時間、150 rpmで増殖させた。
この殺虫活性因子は当初、分子量5 kDaのカットオフフィルター上で濃縮された発酵ブロス中に見出された。この因子は熱に不安定であった(85℃で20分間の加熱で不活性化)。これらのデータは、殺虫活性因子がタンパク質性であることを示していた(実施例4の後半も参照)。
細胞ペレット中の活性因子を同定するために、細菌培養物を遠心し(8000 rpm、4℃、15分)、滅菌水で1回洗浄し、33X容のオリジナル培養液(溶媒は滅菌水)に再懸濁し、実施例3に記載された昆虫バイオアッセイ法を行った。DAS1529株に関して得られたバイオアッセイ法のデータを表4にまとめる。このデータから、培養ブロスおよび濃縮DAS1529細菌細胞が、CEW(33Xで死滅率30〜50%)、およびTBW(33Xで死滅率100%)に対する良好な活性を示すことがわかる。DAS1529の、このような毒素因子群は、トウモロコシおよびワタに害を及ぼす鱗翅目の昆虫(例えばCEWやTBW)を標的とする市販のトランスジェニック産物の開発に重要な意味をもつ。
(表4) DAS1529株のバイオアッセイ
Figure 2005536198
*n.d.=測定せず。-(活性なし)、++(中活性)、+++(高活性)。
実施例2.DAS1529の分類
分子系統学的実験を実施し、株DAS1529の分類学的帰属を決定した。DAS1529の16S rDNAのヌクレオチド配列を決定し、類似性および系統学的解析(ABI社のMicroSeqキットを使用)に用いた。得られた配列を配列番号:16とした。BLASTによる検索の結果を以下に示す。
Figure 2005536198
BLASTによる検索で得られた、これらの同じトップスコアの配列も、GCGバージョン10.2のGapルーチン(NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48;443-453、1970)で比較し、以下の結果を得た。
Figure 2005536198
上記のトップスコア配列を含む、いくつかの関連配列も整理し、Shidaら(Int. J. Syst. Bacteriol. 47:289-298、1997)の手順で、配列比較プログラムCLUSTAL W(Thompson, J. D.、D. G. Higgins、およびT. J. Gibson、Nucleic Acids Res. 22:4673-4680、1994)で配列比較を行った。得られた結果は、DAS1529が、Petterssonら(Ins. J. Syst. Bacteriol. 49:531-540、1999)が同定したペニバチルス属のペニバチルスポピリエ/ペニバチルスレンチモルバスのサブクラスターに含まれ、既に報告した解析と矛盾がないことを明瞭に示している。このサブクラスターは、昆虫関連種のP.ポピリエおよびPレンチモルバス、ならびにP.チアミノリティカス、ペニバチルス sp. T-168およびC-168、ならびに昆虫との関連が不明な"バチルス tipchiralis"を含む(Petterssonら、1999)。Wayneら(Ins. J. Syst. Bacteriol. 37:463-464、1987)、およびVandammeら(Microbiol. Rev. 60:407-438)が指摘しているように、同一性が97%を上回るrDNA配列は、細菌株を特定の種に割り当てる際に、追加情報なしには一般的には使用できない。DAS1529の場合、鱗翅目に対する殺虫活性、およびチアミナーゼ活性が存在する証拠は、既知のP.ポピリエおよびPレンチモルバスと一致せず、また昆虫との関連は、既知のP. チアミノリティカス(ならびに他のサブクラスター種)と一致しない。
他のペニバチルス株が、マメコガネの幼虫にみられる乳化病の原因菌であることが知られているように(Popillia jalonica;Harrisonら、2000)、DAS1529を対象に、マメコガネ関連種コフキコガネ(June beetle)に対する活性について検討した。JB培地およびPP3培地で成長させた培養物に関して活性は認められなかった。培養物を顕微鏡で観察したところ、均等に着色されたロッド(even-colored rod)の存在が判明し、胞子形成または副芽胞結晶の存在は確認できなかった。発明者らは、DAS1529が特定の培地および培養条件で、またマンドゥカ・セクスタの血液リンパ中で胞子形成可能であることを示すことができる。マメコガネに活性を示すペニバチルス株は、副芽胞および副芽胞小体と通常関連することが知られている(Harrisonら、2000)。
DAS1529が既存種に属するか、または新種として認めるべきかということを判定するためには、さらに検討が必要である。
実施例3.昆虫バイオアッセイ法
2つの昆虫バイオアッセイ法で以下の結果を得た。96ウェルのフォーマットおよび128ウェルのフォーマットで、鱗翅目昆虫に対する活性をみる一次スクリーニングを行った。24ウェルの餌取り込み(diet incorporation)フォーマットで、毒素の比活性(LC50)を決定した。
96ウェルのフォーマットの場合は、人工餌を96ウェルのマイクロタイタープレートに分注した。各ウェルの寸法は約0.32 cm2で、これに150μlの人工餌を分注した。試料/毒素を、発酵ブロス、細胞ペレット、および精製毒素に対して50μl/ウェルの容量で添加した。適切な用量の陽性対照(Cry1Ac)と、最大用量(top dose)の陰性対照(水、培地ブランク、標的毒素を発現していない細菌宿主株)を含めた。試料から水分を奪うが、餌には水分を保持させるように、試料を約1〜3時間乾燥させた。いずれかの昆虫の卵を、試料で処理した餌の表面に配置するか、または1つのウェルに1個体の昆虫の幼虫を入れた。個体をは育てるプレートを、アイロンで付着可能なマイラーカバー(mylar covering)で密封するか、または小さい穴の開いた粘着性の蓋で覆った。微小な通気孔をマイラーカバーに開けて個体が呼吸できるようにした。このプレートを28℃で5日間インキュベートし、死滅率および発育阻止率をカウントした。この操作を1ウェルごとに実施した。複数の卵が1つのウェルに入り込むことがあるので1ウェルあたりの幼虫数は無視した。次に、各処理に活性スコアを割り当てた(0=活性なし。幼虫が水対照ウェルにおける個体と同程度に健康である。1=幼虫の発育が停止しているか、または一部が死滅し一部の発育が停止している。2=幼虫はすべて死滅)。
24ウェルのNutrendトレイ(Nu-Trend(商標)、Container社、Jacksonville、FL)を用いて、餌取り込みバイオアッセイ法で試料/毒素の比活性(LC50)を決定した。昆虫用の人工餌は使用直前に調製し、55℃の水浴中で液体状態で維持した。27 mlの人工餌と3 mlの試料/毒素を混合して段階希釈(5回以上)を行った。計30 mlの試料と餌の混合物をボルテックスミキサーで30秒間攪拌した後に、各トレイにウェル容積の約50%を満たすように均等に分けた。トレイを少なくとも30分間かけて冷却後に昆虫を成長させた。1匹の試験昆虫を各ウェルで成長させ、透明なマイラーで各トレイの表面を密封して個体を閉じこめた。各ウェル上のマイラーに、通気用の小さな穴を虫ピンで開けた。アッセイ法は通常25℃で6日間行ったが、結果を迅速に得る必要がある場合は30℃で4日間とした。一連の陽性対照および陰性対照を各アッセイ法で使用した。アッセイ法を死滅率に関して等級付けたが、発育阻止率に関するデータも記録した。アッセイ法を行った試料を対象に統計学的方法でLC50を推定し、これをng/ml餌またはμg/ml餌の単位で表した。
実施例4.DAS1529発酵ブロスに由来する殺虫毒素(チアミナーゼ)の生化学的精製および特性解析
DAS1529の発酵ブロスには、タバコ・ブドワーム、オオタバコガ、およびタバコ・ホーンワームなどの鱗翅目の種に対する殺虫活性が認められた。殺虫活性の性質を生化学的精製および特性解析で調べた。殺虫活性を追跡するためには、精製過程でオオタバコガのバイオアッセイ法を用いた(実施例3参照)。
1.25% NaClを添加した2% PP3を用いてDAS1529の発酵ブロスを調製し、実施例1に記載された手順で処理した。4リットルのブロスの濃縮を、Amicon M-12濾過装置に接続したAmicon社(Beverly、MA)のらせん型限外濾過カートリッジS1Y10型(カットオフ分子量10 kDa)を用いて、製造業者の推奨通りに行った。保持液を対象に、20 mMリン酸ナトリウム、pH 7.0(Buffer A)でダイアフィルトレーションを行い、QセファロースXL陰イオン交換カラム(1.6×10 cm)に5 ml/分の速度で添加した。このカラムを5ベッド容量のBuffer Aで洗浄し、未結合状態のタンパク質を除去した。毒素活性を1.0 MのNaCl(溶媒はBuffer A)で溶出した。
殺虫活性を含む画分を20 mlのアリコートとして、Buffer Aで平衡化したゲル濾過カラムMacro-Prep SE 1000/40(2.6×100 cm)に添加した。タンパク質をBuffer Aで溶出した(流速3 ml/分)。オオタバコガに対する活性を示す画分をプールし、20 mM Tris-HCl、pH 7.0(Buffer B)で平衡化したMono Q(1.0×10 cm)カラムに添加した(流速1 ml/分)。カラムに結合した状態のタンパク質を、0〜1 MのNaCl(溶媒はBuffer B)の直線勾配で溶出した(2 ml/分で60分間)。2 mlの画分を回収し、実施例1に記載された手順で活性を決定した。
固体の(NH42SO4を、上記の活性タンパク質画分に終濃度が1.7 Mになるまで添加した。次にタンパク質を、1.7 Mの(NH42SO4(溶媒は50 mM リン酸カリウム緩衝液、pH 7;Buffer C)で平衡化したフェニル-Superose(1.0×l0 cm)カラムに添加した(1 ml/分)。カラムを10 mlのBuffer Cで洗浄後、カラムに結合した状態のタンパク質を、5 mMリン酸カリウム、pH 7.0に至る直線勾配のBuffer Cで溶出した(1 ml/分で120分)。バイオアッセイ法で決定された最も活性の強い画分をプールし、Buffer Aで一晩透析した。
透析後の試料を、Buffer Bで平衡化したMono Q(0.5×5 cm)カラムに添加した(1 ml/分)。カラムに結合した状態のタンパク質を、0〜1 MのNaCl(溶媒はBuffer B)の直線勾配で溶出した(1 ml/分)。活性画分をプールし、(NH42SO4の最終濃度が1.7 Mとなるように調整した。次にタンパク質を、Buffer Cで平衡化したフェニル-Superose(0.5.0×5 cm)カラムに添加した(1 ml/分)。カラムに結合した状態のタンパク質を、5 mM リン酸カリウム、pH 7.0に至るBuffer Cの直線勾配で溶出した(0.5 ml/分で40分)。精製画分をプールし、Buffer Aで一晩透析した。
最終精製後の毒素の分子量を、ゲル濾過カラムSuperdex S-200で調べた。毒素は分子量(約40 kDa)を示した(未変性時)。精製毒素をSDS-PAGEで調べたところ、約40 kDaの主要バンドが認められた。この結果は、天然のDAS1529毒素(この画分中に存在する)が、約40 kDaの単量体であることを示唆していた。
精製後の毒素をSDS-PAGE(4〜20%)で電気泳動し、PVDFメンブレンにトランスブロットした。このブロットを対象にアミノ酸解析を行い、N末端側のアミノ酸配列を決定した(配列番号:17)。この配列を問い合わせ配列としてタンパク質データベース(NCBI-NR)を検索したところ、バチルス・チアミノリティカスの約42 kDaのチアミナーゼIと95%の同一性が認められた(Campobassoら、1998;ゲンバンクアクセッション番号:2 THIA;配列番号:18)。部分配列比較の結果を図3に示す。これはゲンバンクアクセッション番号AAC44156と比較したことと同じである(AAC44156はチアミナーゼI前駆体である。U17168は、発現されて、細菌細胞で産生されて放出されるチアミナーゼとなると考えられるDNAのゲンバンクにおける対応エントリーである)。DAS1529から精製されたチアミナーゼを、オオタバコガ(CEW)を対象に検討した結果を図4に示す。この毒素は、オオタバコガを死滅させなかった(最大濃度8μg/cm2)が、わずか5 ng/cm2の濃度で95%の成長阻害を示した。精製チアミナーゼがプロテイナーゼKで非活性化されないこともわかった。
実施例5.DAS1529が産生する殺虫因子をコードする遺伝子のクローン化
DAS1529が産生する殺虫因子(群)をコードするヌクレオチド配列(群)をクローン化する試みにおいて、DAS1529から単離した全DNAを用いてコスミドライブラリーを構築し、殺虫活性のスクリーニングを行った。オオタバコガおよびタバコ・ブドワームの幼虫に対する殺虫活性を示す6つの組換えコスミドクローンが同定された。このうち3つのコスミドクローンから、最終的に昆虫を死滅させる熱不安定性(85℃で20分間加熱)の因子が得られた。残りの3つのコスミドクローンからは、昆虫の成長阻害をもたらす熱不安定性の因子が得られた。昆虫の死滅をもたらしたコスミド(コスミドSB12)を、ヌクレオチド配列解析用に選択した。
A.DAS1529のコスミドライブラリーの構築
全DNAを、DNA精製キット(Qiagen社、Valencia、CA)を用いてDAS1529から単離した。ベクターおよび挿入DNA断片の調製、連結、およびパッケージングについては、製造業者(Stratagene、La Jolla、CA)の指示書に従った。Sau3AI DNA断片としてのDAS1529のDNAの挿入断片をSuperCos 1コスミドベクターのBamHI部位にクローン化した。連結産物を、Gigapack(登録商標)IIIゴールドパッケージング抽出物でパッケージングし、宿主細胞XL1-Blue MRF'にトランスフェクトした。形質転換体をLB-カナマイシン寒天プレートで選択した。コスミドライブラリーは、昆虫の活性スクリーニングおよび長期保存を目的とした、10枚の96ウェルのマイクロタイタープレート上で200μlのLB-カナマイシン(50μg/ml)中で成長させた960個のランダムに選択されたコロニーとして得られた。
B.DAS1529のコスミドライブラリーを対象とした殺虫活性のスクリーニング
鱗翅目昆虫(CEWおよびTBW)に活性を示すクローンの一次スクリーニングでは、1個のコロニーとして計960個のコスミドクローンを、96ウェルプレート上の2 mlの培地中で成長させた。培養物を軽く遠心し、当初の培地に約10×濃度になるように再懸濁し、バイオアッセイ法を行った。SuperCos 1ベクター(SB1)を陰性対照とした。16個の陽性クローン(SB2〜SB17)が1回目のスクリーニングで単離された。2回目および3回目のスクリーニングを行い、TBWおよびCEWに対する活性を選び出した。一貫して最高の活性を示す1個のコスミドクローン(SB12)を後の解析用に選択した。SB12コスミドの活性スペクトルを表5にまとめる(検討時)(BAW=シロイチモジヨトウ、スポドプテラ・エキシグア、ECB=アワノメイガ、オストリニア・ヌビラリス、SCRW=サザン・コーン・ルートワーム、ディアブロティカ・ウンデシムプカタ・ホワルディ(Diabrotica undecimpucata howardi))。SB12大腸菌培養物ブロスにはいずれについてもCEW活性は認められなかった。したがって、SB12中の活性因子は、DAS1529株の培養ブロス中の活性因子とは異なるものであることがわかった。
(表5) SB12大腸菌クローンのバイオアッセイ
Figure 2005536198
*n.d.=測定せず。-(活性なし)、++(中活性)、+++(高活性)。
C.SB12コスミド挿入断片の配列決定、ならびにtc様ORFおよびCry様ORFの同定
コスミドSB12のヌクレオチド配列決定の結果、約34 kbのゲノム挿入断片の存在が明らかとなった。この配列の解析から驚くべきことに、少なくとも10個の推定オープンリーディングフレーム(ORF)の存在が判明した(図2参照)。同定されたORFのうち6個は、驚くべきことに、フォトラブドゥス・ルミネセンス(Waterfieldら、2001)、ゼノラブドゥス・ネマトフィルス (Morganら、2001)、セラチア・エントモフィラ(HurstおよびGlare、2002;Hurstら、2000)、ならびにYersinia pestis(Croninら、2001)から過去に同定されたtcaA、tcaB、tcaC、およびtccCに対して、ある程度のアミノ酸配列同一性(38〜48%)を示すことがわかった。フォトラブドゥス、ゼノラブドゥス、およびSerratiaに由来する、これらのTCタンパク質をコードする遺伝子は、殺虫因子をコードすることがわかっている。DAS1529の1つのORFが、殺虫因子として過去に同定された別の遺伝子である、バチルス・チューリンギエンシスのCry1Ac(Schnepfら、1998;de Maagdら、2001)に対して40%のアミノ酸配列同一性を示すことも非常に興味深い。これらの知見は、細菌界における毒素遺伝子の分布を理解する上で、また毒素遺伝子の探索および作製のさらなる戦略を立てる上で重要な意味がある。
SB12コスミドのヌクレオチド配列を決定した。部分的に決定した配列を統合して得られた41,456 bp のDNAをさらに解析した。3か所のギャップが存在し、2か所はコスミドベクター中にあり、もう1か所は挿入断片中にあった。約34,000 bpの最長コンティグのヌクレオチド配列の解析の結果、推定開始コドンと、これに続く長いオープンリーディングフレームとして同定された、少なくとも10の推定オープンリーディングフレーム(ORF)の存在が判明した。この方法は、ペニバチルスに関連するゲノムで、翻訳開始部位を19%(枯草菌)、また22%(バチルス・ハロデュランス)を誤同定することが知られている(Besemer、J.、Lomsadze、A.、Borodovsky、M.、Nucleic Acids Res. 29:2607-2618、2001)。したがって、枯草菌の16S rRNAの5'端側に相補的な塩基の質および位置(Rocha、E.P.C.、Danchin、A.、Viari、A.、Nucleic Acids Res 27:3567-3576、1999に記載)、N末端側のアミノ酸の配列決定、および関連遺伝子との配列比較が、天然の翻訳開始部位を同定する段階で検討された。推定ORFおよび注釈を表6にまとめ、以下に詳細に論じる。
(表6) SB12コスミド配列の配列注釈
Figure 2005536198
ORF1は、コスミドSB12中のDAS1529のDNAに関して、クローニング部位の1番目のヌクレオチドから始まるので、その天然の翻訳開始部位は失われている。ORF1にはORF3と有意なDNA配列の相同性が認められ、配列比較解析の結果、ORF1の先頭の18 bpが切断されていること、また最初の6個のコドンが、OFR3中にみられるようにアミノ酸Met-Val-Ser-Thr-Thrをコードすることが示唆される。ORF1の翻訳開始はORF3の配列開始と類似していると推定され、配列番号:1の9505〜9523塩基あたりである。2つの推定アミノ酸配列を、上述の代替的な翻訳開始部位を元に、ORF2、ORF4、およびORF6に関して提示する(配列番号:19および13)。ORF2に関しては、配列番号:5について上述した。別の、また好ましい開始部位はORF1の残基3295である。したがって、この開始部位から得られるタンパク質は、配列番号:5のアミノ酸残基9から開始すると考えられる(適切なRBSからの翻訳)。同様にORF4に関しては、配列番号:9について上述した。別の、また好ましい開始部位は、配列番号:1の残基12,852である。結果として得られるタンパク質は、配列番号:9の先頭の8個のアミノ酸も失われている(したがって、配列番号:8のアミノ酸残基9から始まる(適切なRBSからの翻訳))。
実施例6.「重複型」TCの配列解析
ORF4(tcaB2)と比較時の2つのORF2断片(tcaB1)に関する配列同一性の程度を、ORF3(tcaA2)とORF1(tcaA1)の比較時と同様に決定した。類似の配列関係が両組のORFについて認められた。
ORF2を、2つの断片をつないで構築した。これは、自然に(ほぼ自然に)挿入してORFを破壊した挿入配列様エレメントが存在するためである(図2)。この挿入片の位置は、SB12のDNA配列(配列番号:1)の全体を、配列番号:4の配列と解析/比較することで決定した(後者は、(非コード性の)挿入断片を反映しない)。図7の括弧内に示すように、配列番号:4の残基490に先行する5'側の翻訳産物の配列、および残基491から始まる配列に由来する3'側の翻訳産物は、ORF4(配列番号:8)と良好な配列の一致がみられる。見かけ上の挿入点におけるDNA配列には、挿入因子との隣接部分に一般的に存在する9 bpのダイレクトリピートが認められる(CACCGAGCA、配列番号:1の塩基4734〜4742および6071〜6080)。
実施例7.詳細な配列解析
要約すると、Vector NTI clustalW、GCG、および/またはBlastpによる解析によって、同定された6つのORF(ORF1〜ORF6)は、tcaA、tcaB、tcaC、およびtccC(過去に同定されたフォトラブドゥスのtc遺伝子群)に対して38〜48%のアミノ酸配列の同一性が認められた。ORF7は、殺虫因子として同定済みの別の遺伝子である、バチルス・チューリンギエンシス のCry1Acと約40%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードしていた。ORF7(Cry1529)の配列と、他の多数のCryタンパク質を統合して系統樹を作成した(図8)。この系統樹から、Cry1529と、Cry2に近縁なCry18(Zhangら、1997、Zhangら、1998)などのP.ポピリエの他のCry配列との関連性が低いことがわかる。またCry1529は、対線虫毒素Cry5、Cry12、Cry13、Cry14、およびCry21、ならびにCry2、Cry18を含む群とは異なる群である、一般的な対鱗翅目毒素(Cyr1、Cry9)、対鞘翅目毒素(Cry3、Cry8、Cry7)、およびジフテリア(Cry4)毒素を含むCryタンパク質の群に(遠いが最も近く)含まれる。
ペニバチルスにおけるCryとTCタンパク質の遺伝子(SB12のゲノム挿入断片)の存在が明らかになったことは、驚くべき新知見であった。新しいCryおよびTCタンパク質の遺伝子の同定は、当技術分野におけるフォトラブドゥスとゼノラブドゥス、およびバチルス・チューリンギエンシスに関する理解に重要な意味があり、またCryおよびTCタンパク質の遺伝子が見つかる細菌属の範囲を拡げる。本明細書に記載された完全長のCry1529の大きさはCry1sのコア毒素と一致する。Cry1529は、バチルス・チューリンギエンシスやペニバチルスから別のcry遺伝子を単離する段階とも関連する、新しいクラスのCryタンパク質である。
以上の驚くべき結果が、株の混入の結果ではないということを検証するために(つまりTCおよびCryのORFを有する34 kbの挿入断片が実際にはDAS1529の全DNAに由来することを確認するために)、サザンブロットハイブリダイゼーションおよびPCRで分子解析を行った。PCRによる検証では、ORF6(tccC様)およびORF7(Cry1529)に特異的なプライマー(実施例8、表8)を用いて、ORF6およびORF7をSB12コスミドおよびDAS1529の全DNAから増幅した。ORF6に関しては、PE9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer)を用いて、所定のパラメータ(初期変性を95℃で2分間行った後に、95℃で30秒間の変性、60℃で45秒間のアニーリング、72℃で2分間の伸長を30サイクル行った後に、最終伸長を72℃で10分間)でPCR増幅を行った。ORF7に関しては、増幅パラメータはORF6の場合と同じとした。ただしアニーリング温度は55℃(30秒間)とし、伸長は72℃で4分間行った。予想サイズの1本のバンドとして現れる特異的なPCR産物が、ORF6とORF7の両方に関して増幅された。
最初のサザンブロットハイブリダイゼーションは、SB12の部分DNA配列に基づき、標準的なプロトコル(Sambrockら、1990)で実施した。DNA試料は、2つの独立した調製物に由来するDAS1529の全DNA、SB12コスミドのDNA、およびNC1(フォトラブドゥス)に由来する1つの陰性対照DNA試料とした。DAS1529の両DNA試料とも、ペニバチルス sp.起源であることが確認されている16S rDNAの配列であり、1つは、コスミドライブラリーの構築に当初使用されたものであり、もう1つは新しい調製物であった。DNA試料をEcoRIで切断し、メンブレンにブロットし、SB12から増幅した180 bpのPCR産物(Roche DIG System(Roche)で標識)とハイブリダイズさせた。PCRプライマーは、ベクターおよび切断型ORF1(完全長のORF3に相当)と部分的にアニーリングする
Figure 2005536198
と、切断型ORF1(tcaA様)とアニーリングする
Figure 2005536198
である。PCRプローブとハイブリダイズする計3つのDNA断片(0.85 kb、2.7 kb、および8.0 kb)が検出された(SB12については0.85 kbと8.0 kb、DAS1529のDNAについては2.7 kbと8.0 kb)。陰性対照についてはシグナルは検出されなかった。0.85 kb(ORF1中間断片中の最初のEcoRI部位〜ベクター中の最初のEcoRI部位)、および8.0 kb(ORF3中の最初の5'側のEcoRI部位〜ORF1中の3番目のEcoRI部位)は、SB12に由来する標的DNA断片の計算サイズと一致した。2.7 kbの断片が検出されたことは、DAS1529のDNA のORF1中の最初のEcoRI部位の2.7 kb上流にEcoRI部位が存在することを示唆する。以上の結果から、SB12の挿入断片がDAS1529の全DNAに由来すること、またハイブリダイゼーションおよび制限酵素解析から、ORFの全コピーが説明されることがわかる。
実施例8.SB12コスミドのORFにコードされたタンパク質の殺虫活性の特性解析
ランダムトランスポゾン挿入変異導入(個々のORFまたはオペロン全体を破壊する)、および異種発現(個々のORFまたはオペロン全体を発現する)を行い、殺虫活性をもたらす個々のORF(群)もしくはオペロンをSB12コスミドから単離した。
A.SB12コスミドのランダムトランスポゾン変異導入
Tn変異導入ライブラリーを、GPS-1ゲノムプライミングシステム(GPS-1 Genome Priming System)(New England BioLabs、Beverly、MA)をキット添付の説明書に従って、DAS1529のコスミドSB12から作製した。簡単に説明すると、2μlの10XGPS緩衝液、1μlのpGPS2.1 Donor DNA(0.02μg)、1μlのSB12コスミド(0.1μg)、および18μlの滅菌済みH2Oを、0.5 ml容のチューブに添加した。1μlのTnsABCトランスポザーゼを添加し、同混合物をボルテックスミキサーで攪拌後、軽く遠心して、チューブの底の物質を回収した。この反応混合物を37℃で10分間インキュベートした。1μlの開始溶液を添加し、数回のピペット操作で混合した。同反応物を37℃で1時間インキュベートし、次に75℃で10分間加熱して不活性化した。1μlの反応混合物を、滅菌済みのH2Oで10倍に希釈した。1μlの希釈反応物を、100μlのElectro MAX DH5α-E大腸菌(Gibco BRL、Rockville、MD)にエレクトロポレーションで導入した。SOC培地中で37℃で1時間、成長させた後に、10μlもしくは100μlを、20μg/mlのカナマイシンおよび15μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートに添加し、37℃で一晩インキュベートした。
SB12を対象としたTn変異導入で得られた個々のコロニーを、20μg/mlのカナマイシンおよび15μg/mlのクロラムフェニコールを含む新しいLB寒天プレート上にストリークした。このストリークから、20μg/mlのカナマイシンおよび15μg/mlのクロラムフェニコールを含むLBの50 mlの培養物に植菌し、28℃、200 rpmで48時間成長させた。次に細胞を3500 rpmで20分間遠心して回収した。上清を除去し、20×濃度になるように、ペレットを2.5 mlの培地上清に再懸濁した。次に濃縮細胞ペレットの、対オオタバコガ活性を調べた。40μlの20×濃縮物を128ウェルプレートに、1つの試料につき8ウェルを用いて人工餌の表面に添加した。孵化直後のオオタバコガの幼虫を加え、5日間餌を食べさせた。この間、時間死滅率および重量を記録した。
計184個のクローンを対象に、オオタバコガに対する活性喪失を調べた。得られた結果を表7にまとめる。Tnクローンのバイオアッセイ法の結果、Cry1529遺伝子へのTn挿入が活性の完全な消失を引き起こすことが判明した。最初のバイオアッセイ法の結果、tc遺伝子にTnが挿入されたクローンの活性が多様であることがわかった。バイオアッセイ法に先立ち、培養物をすべて同一の細胞密度に規格化した、これらのクローンの詳細な解析の結果、SB12と比較して活性の喪失は認められなかった。Tn解析で得られた結果から、ORF7(Cry1529)がSB12コスミドの重要な殺虫活性成分であることがわかる。
(表7) SB12、Cry1529、およびtc中にtn挿入のある大腸菌クローンのバイオアッセイ法
Figure 2005536198
*n.d.=測定せず。-(活性なし)、++(中活性)、+++(高活性)。
B.SB12のORF/オペロンの異種発現
Cry1529(ORF7)とtcの5つのORF(表8参照)を、pET101(登録商標)系で発現させた(図5参照)。この発現ベクターは、基礎T7調節型pET発現系の全ての属性をもち(DubendorffおよびStudier、1991;StudierおよびMoffatt、1986)、大腸菌における高レベル調節型発現とタンパク質の簡易精製のために、平滑末端PCR産物をベクター内に一方向的にクローニングすることが可能である。最適なPCR増幅には、極めて熱に安定で、ヌクレオチドの誤った取り込みによるエラーを修正する3'→5'エキソヌクレアーゼ校正活性をもつ高忠実度PfuTurbo(商標) DNAポリメラーゼを使用した(Stratagene、La Jolla、CA)。ThermalAce(商標)ポリメラーゼ(Invitrogen)を用いて点突然変異をtcのORFに導入し、これをPfuTurbo(商標)ベースのQuick-Change(商標)XL部位特異的変異導入キット(Stratagene)によって修正した。大腸菌株BL21 Star(商標)(DE3)を発現宿主として用いた。というのは、mRNAの安定性および組換えタンパク質の収率を一般に高めるrne131変異(Lopezら、1999)を含むからである。
個々のORFを、ORF特異的プライマー(表8)を用いて、所定の条件のPCRでSB12コスミドから増幅した。一方向性クローニングの必要条件として、PCR産物が、pET101.Dベクター中のオーバーハング配列GTGGと確実に対合するために、フォワードPCRプライマーを、5'端に配列CACCを含むように設計した。リバースプライマーがフォワードプライマーと対合すると、各ORFがそれぞれ増幅される。PCR反応は、50 ngのSB12コスミドのDNA、1×Pfu反応緩衝液(Stratagene)、各0.2 mMのdNPT、各0.25 mMのプライマー、および2 UのPfuTurbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む50μlの反応混合物中で行った。PCR増幅は、PE9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer)を用いて、所定のパラメータ(初期変性を95℃で2分間行った後に、(1 kbのORFあたり)95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、72℃で2分間の伸長を35サイクル行った後に、最終伸長を72℃10分間)で行った。
(表8) ORF1〜7のクローニング時のPCRプライマーの概要
Figure 2005536198
各ORFに対するPCR産物を、製造業者(Invitrogen)の指示書に従ってpET101.Dにクローン化した。クローン化されたORFをpET101.DプラスミドDNAとして精製し、配列を検証した。Tn解析では、検討対象の害虫の駆除に関してORF7がSB12の重要な成分であることが示されていたので、生化学解析および昆虫バイオアッセイ法では、異種的に発現されるORF7タンパク質に注目した。ORF7を発現するクローンに関しては、DNA配列解析の結果、100%が元のSB12のDNA配列と一致することがわかった。ORF7の発現は、0.5 mMのIPTGを用いて4時間かけて、キット(Invitrogen)に添付された指示書にしたがって誘導した。
C.ORF7およびtcオペロンの殺虫活性のバイオアッセイ法
バイオアッセイ法用の試料を、大腸菌細胞、細胞溶解物、および精製毒素として調製した。ORF7(Cry1529)のスペクトルおよび比活性を表10にまとめる。Cry1529はタバコ・ホーンワーム(マンドゥカ・セクスタ)に最も活性が強く、タバコ・ブドワーム(Heliothis virescens)に活性が高く(LC50=10μg/ml餌)、両方の昆虫で死滅率は100%であった。高用量では、Cry1529は、オオタバコガ(Heliothis zea)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、ならびにタマヤナガ(Agrotis ipsilon)に対して、ある程度の死滅率(20〜60%)と実質的な成長阻害をもたらした。アワノメイガ(Ostrinia nubilalis)に関しては、Cry1529が、ある程度の成長阻害を高用量時に示した。他の数種の昆虫(ヨトウガ(fall armywarm)、メキシコワタノミゾウムシ(boll weevil)、サザン・ルートワーム(southern rootworm)、蚊)に関しては、活性は認められなかった。Cry1A(Cry1Ac)に耐性を示すコナガ(DBMr)、および感受性を示すコナガ(DBM)のコロニーに関するCry1529のLC50は、それぞれ>50μg/mlと、<1.0μg/mlであり、交差耐性の存在が伺われる。Cry1529は、マメコガネの関連種である地虫に対して検出可能な活性をもたらさなかった。
DAS1529の他の非Cry1529因子の活性を調べるために、1つのCry1529のtnノックアウトSB12コスミドクローン(tn67)について、TBW、CEW、SCRW、ECB、BW、BAW、THW、および地虫(grass grub)に対するアッセイ法を行った。その結果、これらの害虫に対する活性は認められなかった。SB12バックグラウンドにおけるtcのORFに潜在的な非発現または低発現の問題を解決するために、個別に発現させたtcのORFを対象に独立に、またDAS1529に由来する他のTCと組み合わせて検討を行った。その結果、TBW、CEW、および地虫に対する活性は認められなかった。また4つのORFは、大腸菌細胞で1つのオペロンとして極めて高レベルで発現していた。インビトロにおける検討では、細胞全体ではTBW、CEW、および地虫に対する検出可能な活性は認められなかった。地虫に活性が認められなかったことは、やや興味深いが、得られた結果は、ペニバチルスが狭い範囲の地虫宿主に通常感染することが知られているので驚きとは言えない。この件に関しては、殺虫毒素の活性のスペクトルが相対的に狭いことも原因と考えられる。したがって、広範囲の害虫を対象とした長期間のスクリーン(既知の方法を使用)が、感受性のある害虫を同定するためには必要であろう。本明細書に記載された結果から、本発明のTCタンパク質が、ゼノラブドゥスやフォトラブドゥスなどに由来する他のTCタンパク質と同様に有用であるということを無視すべきではない。
可溶性タンパク質を25 mMのリン酸ナトリウム、pH 8.0、100 mMの塩化ナトリウムで抽出し、4〜12%のNuPAGE勾配ゲルで1×MES緩衝液(Invitrogen)を用いて解析した。ORF7タンパク質を標準的な手順で精製し、N末端側の配列決定から推定配列がMNSNEPNLSDVであることがわかった。標的タンパク質を発現する、細胞密度を規格化した大腸菌細胞を対象にバイオアッセイ法を行った(図6参照)。大規模に精製したORF7タンパク質を用いて、インビトロバイオアッセイ法でORF7のLC50を求めた。精製ORF7の熱安定性解析の結果、75℃で5分間の処理で、対TBW活性が充分消失することがわかった(表9参照)。
(表9) 精製Cry1529(ORF7)の熱安定性
Figure 2005536198
-(活性なし)、+++(完全活性)。
tc遺伝子に関しては、ORF3およびORF6の誤りのないクローンを、ORF3(tcaA)、ORF4(tcaB)、ORF5(tcaC)、およびORF6(tccC)を発現するtcオペロンのクローンを作製するための中間クローンとして用いた。tcオペロンをpET101.D中に構築するために、tcaA(部分)、tcaB(全体)、およびtcaC(全体)、tccC(全体)を含むNsiI/SacI断片をSB12コスミドから切り出し、pET101.D-tcaA中のNsiI/SacI挿入断片と置換した。次に、pET101.D-tccCに由来する208 bpのSacI断片を挿入した(図5参照)。全4つのORFを、標準的なIPTG誘導法で高レベルで発現させた。tcオペロン内で発現させたORF6(tccC)に関しては、発現タンパク質の大きさは、最も5'側のATG(配列番号:18)に由来するVector NTIから推定されるORF6と比べてわずかに小さく、独立に発現した。したがって、リボソーム結合部位のコンセンサスの存在を元に注釈付けされたORF6(配列番号:13)は、SB12およびDAS1529が産生する天然のタンパク質である可能性が高い。
D.毒素活性スペクトル
Cry1529(ORF7)の毒素活性スペクトルを表10にまとめる。
(表10) 大腸菌およびシュードモナスで発現されたCry1529のスペクトル活性
Figure 2005536198
注:-(活性なし)、+(低活性)、++(中活性)、+++(高活性)。FCP=凍結細胞ペレット、SE=可溶性抽出物、精製=カラムで精製されたCry1529、IC=P.f. Cry1529の封入体
本発明のTC/tcのORFの活性スペクトルを決定する初期の試みで、限られた範囲の害虫を対象にアッセイ法を行った。ORF3〜ORF6のオペロンを用いて以下のデータを得た。
(表11) TcのORFの活性スペクトル
Figure 2005536198
また、この初回スクリーニングでは、対象害虫に対する対象TCの活性は認められなかったが、当業者であれば、本発明のタンパク質が、フォトラブドゥス/ゼノラブドゥスの対応タンパク質と同様に有用であることに疑いをもたないと考えられる。実施例10も参照されたい。
実施例9.他の細菌の属、種、および株からCry1529相同物を同定するためのPCRプライマーの使用
他の株(ペニバチルスほかの株)に由来する追加的なORF7のCry1529相同物のスクリーニングに関しては、遺伝子特異的プライマーと縮重PCRプライマーを設計して、1 kbの標的ORF7のDNA配列を増幅した。PCRプライマーは、Cryタンパク質で高度に保存された、2つのよく保存されたタンパク質モチーフ(フォワードプライマーのブロック1のコア、QAANLHL(ドメインI)、リバースプライマーのブロック3、GPGFTGGD(ドメインIII))から推定した。これらのプライマーを表12に挙げ、またDAS1529に関して検証を行った。PCR増幅を、PE9600サーマルサイクラー(Perkin Elmer)を用いて、所定のパラメータ(初期変性を95℃で2分間行った後に、95℃で30秒間の変性、47℃で45秒間のアニーリング、72℃で2分間の伸長を35サイクル行った後に、最終伸長を72℃で10分間)で行った。これらのプライマー対を用いて、細菌(非バチルス・チューリンギエンシス)培養物コレクションのスクリーニングをPCRで行った。192株中の5株(3株のペニバチルス、1株のバチルス、および1株は未同定)で、推定サイズのPCR産物が得られた。これらの株は、CEW活性をもつことも一次バイオアッセイ法のスクリーニングで判明した。しかし、これらの株の1つから得られたアンプリコンの配列解析を異なるプライマーを用いて行った結果、アンプリコンがcry遺伝子に由来しないことがわかった。
これにもかかわらず、また実施したスクリーニングが網羅的ではなかったため、本発明はペニバチルス spp.、バチルス spp.(バチルス・チューリンギエンシスおよびsphaericusを含む)などを対象とした、Cry1529様タンパク質および遺伝子のスクリーニング法を含む。鱗翅目に毒性を示すCryタンパク質がペニバチルスに知見されたことの重要性を考えれば、本発明はペニバチルス spp.のスクリーニング法、一般的には、鱗翅目に毒性を示すCryタンパク質および遺伝子のスクリーニング法も含む。PCR法(前述)、プローブ、および摂食アッセイ法(細胞全体を標的害虫に摂食させる)を含む、さまざまなスクリーニング法が当技術分野で周知である。当業者であれば容易に認識するように、本発明のスクリーニング法は、このようなスクリーンにおけるクローンライブラリー(コスミドライブラリーなど)の調製および使用を含む。
(表12) ORF7相同物のスクリーニング用のPCRプライマー
Figure 2005536198
1529=遺伝子特異的。PP=P.ポピリエのコドンの偏り。PT=P.チアミノリティカスのコドンの偏り
実施例10.ゼノラブドゥスのXptA2 TCタンパク質毒素のDAS1529のTCタンパク質による相補
この実施例では、1つのオペロン(ORF3〜6;tcaA、tcaB、TcaC、およびtccC。実施例8のセクションC参照)として発現させたDAS1529のTCタンパク質が、ゼノラブドゥス・ネマトフィルス XwiのXptA2毒素(配列番号:49参照)を相補する能力をもつことの実験的証拠を提供する。2回の独立した実験を行い、DAS1529のTCオペロンおよびXptA2を独立に発現させるか、またはXptA2遺伝子とTCのオペロンを同じ大腸菌細胞で共発現させた。異なる毒素/毒素の組み合わせを発現する細胞全体を対象に、鱗翅目の昆虫(オオタバコガ(Heliothis zea;CEW)およびタバコ・ブドワーム(Heliothis virescens;TBW))に対する活性を調べた。両実験で得られたデータから、DAS1529のTCタンパク質が、ゼノラブドゥスのTCタンパク質XptA2の活性を、検討した両昆虫種で促進可能なことがわかった。
A.DAS1529のTCとゼノラブドゥスのXptA2の共発現
TCオペロンの発現を、ColE1複製起点およびアンピシリン耐性選択マーカーを有するpET101.D発現ベクター(Invitrogen)中のT7プロモーター/lacオペレーターによって調節した。tcオペロンのクローニングおよび発現に関する全体的な記述は、実施例8のセクションCにある。XptA2遺伝子を、クロラムフェニコール耐性選択マーカーと、ColE1と互換性のある複製起点を有するpCot-3発現ベクターにクローン化した。pCot-3ベクター発現系も、T7プロモーター/lacオペレーターの調節を受ける。したがって、互換性のある複製起点、および異なる選択マーカーが、同じ大腸菌細胞におけるTCオペロンとXptA2の共発現の基礎となる。TCオペロンおよびXptA2を有するプラスミドDNAで、大腸菌BL21 Star(商標)(DE3)を、独立または組み合わせて形質転換した。形質転換体は、50μg/mlのカルベニシリン(pET101.D-TCオペロン用)、50μg/mlのクロラムフェニコール(pCot-3-XptA2用)、および両抗生物質(pET101.D-TCオペロン/pCot-3-XptA2用)を含むLB寒天プレートで選択した。基礎毒素発現を抑制するために、終濃度50 mMのグルコースを寒天培地と液体LB培地の両方に添加した。
毒素の産生に関しては、抗生物質および50 mMグルコースを含む5 mlおよび50 mlのLB培地に、LB寒天プレート上で一晩培養した培養物を植菌した。この培養物を30℃で振盪器(300 rpm)を用いて成長させた。培養物密度が600 nmのO.D.値として0.4に到達した段階で、終濃度が75μMのIPTGを培地に添加して遺伝子発現を誘導した。24時間後に、大腸菌細胞をNuPAGEシステム(Invitrogen)で回収し、タンパク質ゲル解析用に用いた。0.5 mlの1×培養ブロスに由来する細胞ペレットを、100μlの1×NuPAGE LDS試料緩衝液中に再懸濁した。短時間の超音波処理と5分間の煮沸後に、5μlの試料を4〜12%のNuPAGEビス-トリス勾配ゲルにロードして、全タンパク質プロファイル解析を行った。XptA2の発現は、独立に発現時に、またはTCオペロンの存在時に検出可能なレベルで認められた。Personal Densitometer SI(Molecular Dynamics)によるゲルスキャン解析に基づいて、XptA2は、単独で、TCオペロンと共発現させたときと比較して、ほぼ8倍高く発現された。5 mlの誘導実験では、XptA2のほぼ等しい発現が認められた。
B.殺虫活性のバイオアッセイ法
実施例8に記載されているように、DAS1529のtcのORFを独立に発現させたとき、またはオペロンとして発現させたときに、TBWおよびCEWに対する活性は認められなかった。続くバイオアッセイ実験では、ペニバチルス(DAS1529)のTCタンパク質(ORF3〜6;TcaA様タンパク質、TcaB様タンパク質、TcaC様タンパク質、およびTccC様タンパク質)が、ゼノラブドゥスのTCタンパク質毒素活性(XptA2を代表とする)を相補可能か否かの判定に注目した。バイオアッセイ法の試料を、4×細胞濃縮物(5 mlの誘導実験用)中の大腸菌細胞として調製し、XptA2とXptA2/TCオペロン細胞の両方が極めて低量であるがほぼ同量のXptA2毒素を含むようにした。表13のデータは、検討した4×細胞濃度では、TCタンパク質+ゼノラブドゥスのXptA2がCEWに活性を示すことを示している。これはペニバチルス DAS1529のTCタンパク質が、ゼノラブドゥスのXptA2に対して相補性を示すことの最初の証拠となる。
(表13) 対H.ゼア(H.zea)活性に関してDAS1529のTCがゼノラブドゥスXptA2に対して示す相補性のバイオアッセイ
Figure 2005536198
*-(活性なし)、++(中活性)、+++(高活性)。
第2のバイオアッセイ法の実験では、XptA2細胞およびXptA2+TCオペロン細胞中のXptA2タンパク質の量を、濃度測定ゲルスキャン解析を元に規格化した。表14に示すように、XptA2は単独で、40×でTBW(H.ビレセンス)に中程度の活性を示したが、この活性は、20×未満では検出不可能なレベルに低下した。しかしながらTCと共発現させると、10×および5×のXptA2の存在下で高レベルの活性が明瞭に認められ、また1.25×のXptA2では低活性が認められた。これらの結果は、1529のTCタンパク質がゼノラブドゥス XptA2に対して相当の対H.ビレセンス増強作用をもつことを意味する。検討した最高用量では、陰性対照もtcオペロン単独のどちらでも、対害虫活性は認められなかった。
(表14) 対H.ビレセンスに関するIDAS1529のTCによるXptA2に対する相補性のバイオアッセイ法
Figure 2005536198
*n.d.=測定せず。-(活性なし)、+(低活性)、++(中活性)、+++(高活性)。
実施例11.トリプシン消化に対するCry1529タンパク質の安定化
この実施例では、新しくコードされたタンパク質が、トリプシンによるタンパク質分解性の消化に対して、天然のタンパク質と比較して強い耐性を示すような、Cry1529タンパク質(配列番号:15に記載)をコードする配列番号:14に記載されたDNA配列の修飾について説明する。昆虫の腸内におけるタンパク質の消化は、タンパク質毒素に対する昆虫の暴露時間を制限する。したがって、タンパク質毒素のプロテアーゼ消化に対する感受性を低下させる方法で、タンパク質の効力を高めることができる。
この試験では、トリプシン酵素(例えばSigma Chemical #T1426)、およびトリプシン阻害剤(例えばSigma Chemical #T9008)をストック溶液(4 mg/mLまたは10 mg/mL。溶媒は50 mM Tris HCl緩衝液、pH 8.0)として調製した。さまざまな濃度のトリプシンおよびCry1529タンパク質による試験インキュベーションを37℃で1時間行い、等濃度の等容積のトリプシン阻害剤を添加して終了した(例えば、35μLの4 mg/mLトリプシン溶液による消化を、35μlの4 mg/mLトリプシン阻害剤を添加して終了させた)。典型的な実験では、Cry1529タンパク質を、適切に調製した大腸菌細胞に作らせ、サイズ排除カラムを通して他のタンパク質を分離する段階を含む、文献記載の段階で精製した。消化後に、プロテアーゼ反応産物を、標準的なアクリルアミドゲル電気泳動と、これに続く、Cry1529タンパク質に対して調製された抗体を用いる免疫ブロット解析で解析した。実験の結果を図9に示す。
トリプシン消化の結果、2つの主要なタンパク質産物が生じる。小さい方の分子は約50 kDaである。この消化パターンが、配列番号:15の天然のCry1529タンパク質のアミノ酸配列と、アミノ酸
Figure 2005536198
がカルボキシ末端側に追加されている点を除いて同一なCry1529-His6タンパク質のトリプシン消化で得られたパターンと同じであることは重要である。Cry1529-His6のコード領域は、天然のCry1529タンパク質のコード領域をpET101/D-TOPO(登録商標)vector(Invitrogen(商標)、Carlsbad、CA)に連結することで産生させた。この組換えクローンは、エピトープがアミノ酸配列GKPIPNPLLGLDSTRTG(上記下線部)で表される市販のV5抗体への結合によって、または6個のヒスチジン残基(二重下線部)を利用する精製法によって、組換えCry1529タンパク質の精製が容易になるように作製した。操作手順は、pET101/D-TOPO(登録商標)ベクターに伴う推奨事項に準拠した。
Cry1529-His6タンパク質がトリプシンで消化されると、その活性が失われることが、鱗翅目の昆虫を対象とした昆虫バイオアッセイ法で判明した。MALDI-TOF解析で、50 kDaのペプチドのN末端を含むアミノ酸の配列を決定し、また配列番号:15のアミノ酸残基の122番目(R=アルギニン)および126番目(K=リシン)に対応する、2か所のプロテアーゼ切断部位を決定した。
コードされたタンパク質中で1番目のトリプシン切断部位を除去するような修飾を、QuickChange(登録商標)変異導入法(Stratagene、La Jolla、CA)で、天然のDNA配列(配列番号:14)中に作製した。3つの異なる種類の変異を、配列番号:15の120〜123の領域中のアミノ酸に作製した(RARA→HANA、RARA→RARS、およびRARA→QANA)。これらの変異に対応するDNAオリゴヌクレオチドプライマー(各鎖について5'→3'方向に表示)を表15に記載した。天然のDNA配列と異なる塩基に下線を付した。
(表15)
Figure 2005536198
野生型のコード領域と、上記プライマーによって誘導された変異型のコード領域の比較した結果を以下の表に示す。該当するアミノ酸残基を太字で示した。
(表16)
Figure 2005536198
別の変異型コード領域をそれぞれpET101/D-TOPO(登録商標)ベクターにクローン化し、Cry1529バリアントタンパク質の誘導的産生を可能とした。このコンストラクトを含む大腸菌細胞を成長させ、Cry1529バリアント遺伝子の発現を業者の推奨する方法で誘導した。回収した細胞を対象に、次にトリプシン消化アッセイ法で検討し、上述の手法で解析を行った。典型的な結果を図10に示す。この実験では、10 mgの細胞全体のペレットを50 mM Tris HCl、pH 8.0に懸濁し、1 mLの最終容量中で100μLの10 mg/mLトリプシンで37℃で3時間かけて消化した。反応物は、インキュベーション中にときおり混合した。100μLの10 mg/mLのトリプシン阻害剤を添加して消化を終了し、チューブを氷中で保存した。
以上の結果は、天然のCry1529(RARA)タンパク質とCry1529-His6(RARA)タンパク質の両方が、トリプシンで消化されて、約50 kDaの主要産物を生じることを示している。トリプシン切断部位に対応するRARA配列をHANAまたはQANAに変えたところ、トリプシン消化に対する実質的な耐性が得られた。50 kDaのペプチドは産生されず、また容易に検出可能な量の、一見して完全長のCry1529-His6タンパク質が存在した。RARA部位をRARSへ変異させても、50 kDaのペプチドの産生は失われなかったが、プロテアーゼによる切断の速度は実質的に低下した。したがって、Cry1529タンパク質中のプロテアーゼ切断部位の変異が、プロテアーゼ消化に対する感受性を実質的に低下させることは明らかである。これは、対象タンパク質が、摂取された後に昆虫腸内で長時間存在し、結果として、感受性のある昆虫を死滅させる効力が増すことを可能とする。
実施例12.他のペニバチルス株におけるIDAS1529のtcのORFの相同体検出用PCRプライマーの設計
上述したように、ペニバチルス株IDAS1529は、さまざまな鱗翅目昆虫に毒性を示す細胞外タンパク質を産生する。同株の16Sリボソーム遺伝子の分子系統的関係から、これがP.チアミノリティカス-P.レンチモルバス-P.ポピリエクラスターの細菌に極めて近縁であることがわかる。また、ペニバチルス株IDAS1529が、毒素複合体遺伝子群(本明細書ではtc遺伝子群と呼称)と、新規の殺虫性結晶封入体タンパク質遺伝子(cry1529)の両方を含むこともわかっている。tc相同体がペニバチルス属の他の細菌に存在するか否かを見極める試みの途上で、ペニバチルス株のコレクションを対象に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション解析でスクリーニングを行った。PCR解析では、ペニバチルス株から単離した全DNAをテンプレートとして使用し、ペニバチルス株IDAS1529、フォトラブドゥス種、およびゼノラブドゥス種に存在するtc遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングを行った。tcプライマーセットで得られた増幅産物をクローン化し、そのヌクレオチド配列を決定し、ペニバチルス株IDAS1529から得られたtc配列と比較を行った。以下の実施例は、tc特異的オリゴヌクレオチドプライマーの設計法と、ペニバチルス単離株の全DNAを対象とした、PCRによるペニバチルス株IDAS1529、フォトラブドゥス種、およびゼノラブドゥス種で同定されたtc遺伝子に相同なDNA配列の探索法を示している。PCR解析(上述)を行うことで、ペニバチルス株IDAS1529、およびP.チアミノリティカス-Pレンチモルバス-P.ポピリエクラスターとは異なるペニバチルスの種における相同物の同定が可能となった(または可能となっている)。
12A.ペニバチルス株からの全DNAの抽出
ペニバチルス株を、栄養寒天プレート(8 g/lの栄養ブロス、15 g/lのBacto寒天;Difco Laboratories、Detroit、MI)上で、30℃で3〜5日間かけて成長させた。1個のコロニーを選択し、100 mlの滅菌済み栄養ブロス(8 g/lの栄養ブロス、Disco Laboratories、Detroit、MI)を含む500 ml容のバッフル付き三角(tribaffled)フラスコに接種した。回転振盪器(150 rpm)を用いた30℃における24〜72時間のインキュベーション後に、滅菌済みの500 mlのポリエチレン製ボトルに培養物を移し、6,500×gで4℃で1時間遠心した。遠心後、上清液をデカントして細菌細胞ペレットを得た。この細胞ペレットから、QIAGEN Genomic-tip System 100/Gと、これに付属するゲノミックDNAバッファー・セット(QIAGEN社、Valencia、CA、USA)を用いて、製造業者による"The Sample Preparation and Lysis Protocol for Bactera"に厳密にしたがって全DNAを抽出した。抽出後の全DNAは、0.5 mlのTE緩衝液(10 mM Tris-HCl、pH 8.0;1 mM EDTA、pH 8.0)に可溶化した。
12.B.PCR用のtc特異的オリゴヌクレオチドプライマーの選択
ペニバチルス株IDAS1529から過去に同定されたtc遺伝子群に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを選択するために、ペニバチルス株IDAS1529、フォトラブドゥスW14株、およびゼノラブドゥスXwi株から得たtcaA、tcaB、tcdB、およびtccCのヌクレオチド配列を、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Informax社、Frederick、MD)に含まれるAlignプログラムを用いて比較した。解析に使用したヌクレオチド配列を表17に示す。
(表17) tc特異的プライマー選択に使用したヌクレオチド配列
Figure 2005536198
12.B.i.tcaA特異的プライマーの選択
tcaA1-1529、tcaA2-1529、およびtcaA-W14のヌクレオチド配列比較で、縮重が最小のPCRプライマーの選択に十分な長さのヌクレオチド配列同一性を示す2つの領域が同定された(図10のボックス領域)。この2つの領域を、tcaA特異的プライマーの合成用に選択し、SB105およびSB106と命名した(表18および19)。
12.B.ii.tcaB特異的プライマーの選択
tcaB1-1529、tcaB2-1529、およびtcaB-W14のヌクレオチド配列比較で、縮重が最小のPCRプライマーの選択に十分な長さのヌクレオチド配列同一性を示す4つの領域が同定された(図11)。この4つの領域を、tcaB特異的プライマーの合成用に選択し、SB101、SB102、SB103、およびSB104と命名した(表18および19)。
12.B.iii.tcaC特異的プライマーの選択
tcdB1-W14、tcdB2-W14、xptC1-Xwi、およびtcaC-1529のヌクレオチド配列比較で、縮重が最小のPCRプライマーの選択に十分な長さのヌクレオチド配列同一性を示す2つの領域が同定された(図12)。この2つの領域を、tcaC特異的プライマーの合成用に選択し、SB215およびSB217と命名した(表18および19)。
12.B.iv.tccC特異的プライマーの選択
tccC1-W14、tccC2-W14、tccC3-W14、tccC4-W14、tccC5-W14、xptB1-Xwi、およびtccC-1529のヌクレオチド配列比較で、縮重が最小のPCRプライマーの選択に十分な長さのヌクレオチド配列同一性を示す2つの領域が同定された(図13)。この2つの領域を、tccC特異的プライマーの合成用に選択し、SB212およびSB213と命名した(表18および19)。
(表18) tc特異的プライマー
Figure 2005536198
* K=GまたはT; S=GまたはC; W=AまたはT; Y=CまたはT; R=GまたはA; M=AまたはC; V=G、C、またはA; B=G、T、またはC; H=A、C、またはT; I=イノシン
(表19) tcプライマーの組み合わせ
Figure 2005536198
実施例13.ペニバチルスのDNAのPCRによる増幅
tcaA特異的プライマーセットおよびtcaB特異的プライマーセットを用いるPCR増幅では、ペニバチルスの各株から得た3〜5μlの全DNAを50 pmoleの各プライマー、および1×Eppendorf MasterMix(Eppendorf AG;Hamburg、Germany)と20μlの反応容量中で混合した。増幅条件は、94℃で3分間の変性後に、94℃で1分間の変性、52℃で1.5分間のアニーリング、および72℃で1.5分間の伸長を30サイクル行った後に、72℃で5分間の最終伸長とした。
tcaC特異的プライマーセットおよびtccC特異的プライマーセットを用いるPCR増幅では、ペニバチルスの各株から得た約375 ngの全DNAを50 pmoleの各プライマー、および12.5μlのEpicentre(登録商標) FailSafe(商標) Buffer Dと、2.5 UのEpicentre(登録商標)FailSafe(商標)ポリメラーゼ(Epicentre;Madison、WI)を25μlの反応容量中で混合した。増幅条件は、96℃で4分間の変性後に、94℃で30秒間の変性、64℃で30秒間のアニーリング、および70℃で30秒間の伸長を40サイクルとした。各サイクルでアニーリング温度を0.5℃ずつ低下させ、伸長時間を5秒ずつ延長した。
13.A.PCR増幅産物のゲル電気泳動、クローニング、およびヌクレオチド配列の決定
0.8〜1%のSeakem LEアガロース(BioWhittaker Molecular Applications、Rockland、ME)(溶媒は1×TAE緩衝液)を用いたゲル電気泳動でPCR増幅反応物を調べた。増幅産物をTOPO TA(登録商標)クローニングキット(Invitrogen(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CA)を用いて、製造業者の指示書に厳密にしたがってベクターpCR2.1-TOPO(登録商標)にクローン化した。クローン化した増幅産物のヌクレオチド配列を、M13フォワード、M13リバース、およびtc配列特異的配列決定用プライマーを用いて決定した。また必要に応じて、クローン化された各増幅産物の2本鎖配列を得た。CEQダイ・ターミネーター・サイクル・シークエンス・クイック・スタート・キット(CEQ Dye Terminator Cycle Sequence Quick Start Kit)(Beckman Coulter、Fullerton、CA、USA)、およびCEQ 2000 XL DNA解析システム(Beckman Coulter)を用いて、製造業者の指示書に厳密にしたがってヌクレオチド配列決定を行った。シーケンチャー(Sequencher)(v.4.1.4)ソフトウェアパッケージ(Gene Codes、Ann Arbor、MI)を用いて配列決定データからコンティグを構築し、各増幅産物のコンセンサス配列を決定した。
13.B.PCR増幅産物のヌクレオチド配列解析
13.B.i.tcaA
ペニバチルス株のコレクションから得た全DNAを対象に、tcaA特異的プライマーの組み合わせ(SB105とSB106)によるPCRを行ったところ、ペニバチルスアピアリエス株(NRRL NRS 1438、本明細書ではDB482と呼称)の全DNAから、推定サイズの増幅産物が得られることがわかった。この増幅産物をクローン化して配列を決定した。
SB105プライマーとSB106プライマーの組み合わせを用いて得られた増幅産物をtcaA2-DB482と命名した。tcaA2-DB482(配列番号:32)の配列を、ペニバチルス株IDAS1529およびフォトラブドゥスW14株から得たtcaAの配列と比較したところ、tcaA2-DB482がtcaA2-1529に対して極めて高いヌクレオチド配列同一性(1,239ヌクレオチドに対して90.5%)を有することがわかった(表20)。tcaA2-DB482にコードされる推定アミノ酸配列(TcaA2-DB482、配列番号:33)は、tcaA2-1529の対応する推定アミノ酸配列(TcaA2-1529、配列番号:7)と89.1%の同一性を示した。
(表20) tcaA1-1529、tcaA2-1529、およびtcaA-W14の対応領域に対するtcaA2-DB482のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列の同一性
Figure 2005536198
13.B.ii.tcaB
SB101プライマーとSB102プライマーの組み合わせ、ならびにSB103プライマーとSB104プライマーの組み合わせを用いて得られた増幅産物を、それぞれtcaB2a-DB482およびtcaB2b-DB482と命名した。tcaB2a-DB482(配列番号:34)、およびtcaB2b-DB482(配列番号:35)の配列を、ペニバチルス株IDAS1529およびフォトラブドゥスW14株から得たtcaBの配列と比較したところ、いずれの配列についてもtcaB1-1529とtcaB2-1529に対して極めて高いヌクレオチド配列同一性を有することがわかった(表21)。tcaB2a-DB482とtcaB2b-DB482のtcaB2-1529に対するヌクレオチド配列同一性は、それぞれ92.6%と89.8%であった。tcaB2a-DB482にコードされる推定アミノ酸配列(TcaB2a-DB482;配列番号:36)と、tcaB2b-DB482にコードされる推定アミノ酸配列(TcaB2b-DB482;配列番号:37)は、tcaB2-1529の対応する推定アミノ酸配列(TcaB2-1529;配列番号:9)と、それぞれ91.2%と91.1%の同一性を示した。
(表21) tcaB1-1529、tcaB2-1529、およびtcaB-W14の対応領域に対するtcaB2a-DB482およびtcaB2b-DB482のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列の同一性
Figure 2005536198
13.B.iii.tcdB
DB482から得た全DNAを対象に、tcaC特異的プライマーの組み合わせ(SB215とSB217)を用いたPCRを行ったところ、推定サイズの増幅産物が得られた。この増幅産物をクローン化して配列を決定した。
SB215プライマーとSB217プライマーの組み合わせを用いて得られた増幅産物をtcaC-DB482と命名した。tcaC-DB482(配列番号:38)の配列を、ペニバチルス株IDAS1529、ゼノラブドゥスXwi株、およびフォトラブドゥスW14株から得たtcaCの配列と比較したところ、tcaC-DB482がtcaC-1529に対して極めて高いヌクレオチド配列同一性(2,091ヌクレオチドに対して93.5%)を有することがわかった(表22)。tcaC-DB482にコードされる推定アミノ酸配列(TcaC-DB482;配列番号:39)は、tcaC-1529の対応する推定アミノ酸配列(TcaC-1529;配列番号:11)と91.1%の同一性を示した。
(表22) xptC1-Xwi、tcdB1-W14、およびtcdB2-W14、およびtcaC-1529の対応領域に対するtcaC-DB482のヌクレオチド配列および推定アミノ酸の配列同一性
Figure 2005536198
13.B.iv.tccC
ペニバチルス株のコレクションから得た全DNAを対象に、tccC特異的プライマーの組み合わせ(SB212およびSB212)によるPCRを行ったところ、DB482の全DNAから、推定サイズの増幅産物が得られることがわかった。この増幅産物をクローン化して配列を決定した。
SB212プライマーとSB213プライマーの組み合わせを用いて得られた増幅産物をtccC-DB482と命名した。tccC-DB482(配列番号:40)の配列を、ペニバチルス株IDAS1529、ゼノラブドゥスXwi株、およびフォトラブドゥスW14株から得たtccCの配列と比較したところ、tccC-DB482がtccC-1329に対して極めて高いヌクレオチド配列同一性(858ヌクレオチドに対して93.7%)を有することがわかった(表23)。tccC-DB482にコードされる推定アミノ酸配列(TccC-DB482;配列番号:41)は、tccC-1529の対応する推定アミノ酸配列(TccC-1529;配列番号:13)と95.5%の同一性を示した。
(表23) フォトラブドゥスW14株に由来するxptB1-Xwi、tc-W14、tccC-1529、およびtccの各遺伝子の対応領域に対するtccC-DB482のヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列の同一性
Figure 2005536198
13.C.PCR解析の要約
この実施例(および本発明の他の実施例)では、3つの属の細菌のtc遺伝子群に基づくオリゴヌクレオチドプライマーの設計法、およびこれらのプライマーをPCRによるペニバチルス株のスクリーニングに使用することで、これらの株に存在するtc相同物を同定することを示す。ミツバチの幼虫から単離されたペニバチルス・アピアリエス(NRRL B-30670として寄託)の単離株DB482は、tcaA、tcaB、tcaC、およびtccCの相同物を含むことがわかっていた。これらのtc相同物の知見から、ペニバチルス株IDAS1529が、tc遺伝子群の保持に関して、ペニバチルス属内で独特の存在ではないということが確認される。したがって当業者は現在、これらの方法および他の方法で、P.コンドロイティナス、P.アルギノリティカス、P.ラルバ、P.バリダス、P.ゴルドネ、P.アルベイ、Pレンチモルバス、P.ポピリエ、P.チアミノリティカス、P.カルドラノリティカス、P.コベンシス、P.グルカノリティカス、P.ラウトゥス、P.チベンシス、P.マカリエンシス、P.アゾトフィキサンス、P.ペオリエ、P.ポリミクサ、P.イリノイセンシス、P.アミロリティカス、P.パブリ、およびP.マセランスなどの他の種のペニバチルスで他のtc相同物を同定することができる。
実施例14.他のペニバチルス株におけるIDAS1529のtcORFの相同物のサザンハイブリダイゼーションによる検出
この実施例では、放射性標識されたDNA断片の、ペニバチルス単離株のゲノムDNAを対象とした、(好ましくは、当初IDAS1529で検出された既知のtcORFに対してある程度の相同性を有する)DNA配列探索用のプローブとしての使用法を説明する。この結果から、2つのtcORFに相同な配列が、ペニバチルス・アパイリウス単離株DB482から検出されることがわかる。
さまざまなペニバチルス株(または、陰性対照としての大腸菌)のゲノムDNAを、実施例12に記載された手順で調製し、制限酵素で切断して複数の断片を得た。典型的な切断では、8μgのDNAを総容量400μLの反応緩衝液中に、EcoRI酵素の製造業者(New England Biolabs、Beverly、MA)の指示通りに用いた。200ユニットの酵素を含む反応物を37℃で一晩インキュベートした後に氷上に静置した。切断後のDNAをさらに精製し、30μLの3 M酢酸ナトリウム(pH 5.2)、および750μLの氷冷100%エタノールを添加し、遠心して濃縮した。得られたDNAペレットを70%エタノールで2回洗浄し、真空乾燥し、50μlのTE緩衝液(10 mM Tris HCl、pH 8.0、1 mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA))中に再懸濁した。次にアリコートをアガロースゲル電気泳動で解析し、切断限界を視覚的に確認した。同様の手順で、IDAS1529のコスミドSB12のDNAをEcoRIで切断し、これをハイブリダイゼーション実験の陽性対照として使用した。
サザン解析用にブロットする、EcoRIで切断されたゲノムDNA断片を、0.7%または1.2%のアガロースゲル(溶媒TEA緩衝液;40 mM Tris acetate、2 mM EDTA、pH 8.0)による電気泳動で分離した(1μg DNA/ウェル)。各ゲル上で、1 kbのDNA分子量ラダー(Invitrogen(商標)、Carlsbad、CA)を含むレーンを分子量サイズの標準として用いた。このラダー中、500 bpより大きい15種類の断片サイズは、12.2 kb、11.2 kb、10.1 kb、9.2 kb、8.1 kb、7.1 kb、6.1 kb、5.1 kb、4.1 kb、3.1 kb、2.0 kb、1.6 kb、1.0 kb、0.52 kb、および0.50 kbである。ゲル中のDNAを50μg/mLの臭化エチジウムで染色し、ゲルの写真を撮影後に、ゲル中のDNAを脱プリン処理し(0.2 M HCl中で5分間)、変性処理を行い(0.5 M NaOH、1.5 M NaCl中で15分間)、中和し(0.2 M HCl中で5分)、2XSSC(20×SSCは、3 M NaCl、0.3 M クエン酸ナトリウム、pH 7.0を含む)に浸したMAGNA 0.45ミクロンのナイロントランスファーメンブレン(Osmonics、Westborough、MA)にトランスファーした。このDNAを、紫外光でメンブレン上に架橋し(Stratalinker(登録商標);Stratagene、La Jolla、CA)、「最小ハイブリダイゼーション(Minimal Hybridization)」溶液(10% w/vポリエチレングリコール(分子量、約8000)、7% w/vドデシル硫酸ナトリウム;0.6×SSC、5 mM EDTA、100μg/ml変性サケ精子DNA、および10 mMリン酸ナトリウム緩衝液(95 g/L NaH2PO4・1 H2Oおよび84.5 g/L Na2HPO4・7 H2Oを含む1 Mストックから調製))中で60℃または65℃で1〜3時間インキュベートすることでハイブリダイゼーション用に調製した。
ハイブリダイゼーション用のプローブとして使用するtcORFのDNA断片を最初に、SB12コスミドDNAをテンプレートとして用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で調製した(上記実施例を参照)。この増幅に用いるフォワードプライマーおよびリバースプライマーを表24に示す(各DNA鎖を5'→3'の方向で示す)。大文字は、タンパク質コード領域に対応する。プライマーセット1は、配列番号:10に記載されていて、またフォトラブドゥスのtcaC遺伝子(表6)とある程度の類似性を有するtcORF5全体を含むDNA断片をSB12コスミドをDNAから増幅するように設計されている。プライマーセット2は、配列番号:19に記載されたタンパク質をコードするDNA断片をコスミドSB12から増幅するように設計されている。このDNA断片およびコードタンパク質は、配列番号:12に記載されたtcORF6のDNA配列、および配列番号:13に記載されたコードタンパク質と比べてやや長い。配列番号:13および配列番号:19に記載されたタンパク質はいずれも、フォトラブドゥスのtccC遺伝子にコードされたタンパク質に対して、ある程度の類似性を有する(表6)。増幅PCR産物を、pCR(登録商標)2.1-TOPO(登録商標)クローニングベクター(Invitrogen(商標)、Carlsbad、CA)にクローン化し、tcORFを含む断片を、結果として得られたクローンから、制限酵素による切断で切り出し(表参照)、次にGenElute(商標) Agarose Spinカラム(Sigma Chemical社、St Louis、MO)を用いてアガロースゲルから精製した。回収断片を、Quick-Precip(商標) Plus Solutionを製造業者の指示書(Edge BioSystems、Gaithersburg、MD)にしたがって用いて沈殿させて濃縮した。
(表24)
Figure 2005536198
*この表では、プライマーの5'端側で小文字で表した塩基は、コスミドSB12のDNA配列に相補的でない。これらは、後のクローニング操作を円滑化するために増幅産物の末端側に制限酵素認識配列を提供する目的で使用した。
**小文字の太字で表した塩基は、対象クローンの後の機能解析に干渉する恐れのある潜在的ヘアピン構造を除くために、天然の配列から変えた。
ハイ・プライム放射性標識キット(High Prime Radioactive Labeling Kit)(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)を用いて、製造業者の指示書通りに放射性標識DNA断片を調製した。取り込まれなかったヌクレオチドは、QIAquick(登録商標) PCR精製カラム(Qiagen社、Valencia、CA)を製造業者の指示書通りに使用して除去した。こうした方法による約100 ngのDNA断片の標識化の結果、約0.1μCi/ngの比活性が得られた。標識DNA断片を5分間煮沸して変性させた後に、最小ハイブリダイゼーション(Minimal Hybridization)溶液に浸したハイブリダイゼーションブロットに添加し、60℃または65℃で一晩インキュベートした。緩い放射能を、室温で2XSSCで洗浄してブロットから除去した後に、強く結合した放射能を、0.3×SSC+0.1%ドデシル硫酸ナトリウムでブロットを60℃または65℃で少なくとも1時間洗浄して除去した。同様の洗浄を少なくとも2回行った。このブロットをX線フィルム上に2枚の増感スクリーンとともに重ね、-80℃で保存し、感光したフィルムを1〜3日間の感光後に現像した。ブロットを0.3×SSC+0.1% SDSで10分間煮沸して、ハイブリダイズしたDNA断片を剥がし、後のハイブリダイゼーションに1回または2回再使用した。
プライマーセット1およびプライマーセット2に由来するプローブとハイブリダイズする明瞭な断片が、ペニバチルス・アパイリウス株DB482から得たゲノムDNA中に認められた。IDAS1529のtcORF5に相同な配列を検出するプライマーセット1に由来するプローブ(プライマーSB126およびプライマーSB127)は、推定サイズが20 kb、10.2 kb、および8.4 kbの断片とハイブリダイズした。この範囲内の分子の大きさでは、DNA断片の移動度が、真の分子の大きさの唯一の判断材料となる。20 kbおよび8.4 kbと推定される断片のシグナル強度は、10.2 kbと推定される断片のシグナル強度と比べてかなり強かった。各断片は、プローブ断片(約4.4 kb)の少なくとも2倍の大きさなので、得られた結果の1つの説明は、IDAS1529のtcORF5に由来するプローブに類似した、したがってペニバチルス・アパイリウス株DB482のゲノムに存在するフォトラブドゥスのtcaC遺伝子に類似した複数のコピーの遺伝子が存在するというものである。しかし、得られた結果については他の説明も可能である。
IDAS1529のtcORF6に相同な配列、およびこれに隣接する5'端の配列を検出するプライマーセット2のプローブ(プライマーSB128およびプライマーSB129)は、推定サイズが7.8 kbおよび4.5 kbの断片とハイブリダイズした。7.8 kbと推定される断片のシグナル強度は、4.5 kbと推定される断片のシグナル強度と比べて極めて強かった。この結果の1つの説明は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482が、IDAS1529のtcORF6およびこの5'隣接配列に類似した、したがってフォトラブドゥスのtccC遺伝子に類似した1つの遺伝子を有し、またEcoRIが遺伝子を、対象遺伝子を含むDNA配列の等しくない部分のある2つの断片に切断するというものである。しかし、得られた結果については、プローブに対する絶対的な相同性の量が異なる多数の遺伝子の存在を始めとする他の説明が可能である。
(PCR増幅とこれに続くDNA配列解析によって検出される)以上の結果から、ペニバチルス・アパイリウス株DB482中に、フォトラブドゥスのtcaC遺伝子およびtccC遺伝子の相同物が存在することが確認される。
実施例15.DB482の殺虫活性
ペニバチルス株DAS1529は、鱗翅目の昆虫に毒性を示す細胞外タンパク質を産生することが知られており、またcry1529と呼ばれるcry遺伝子を含むことも知られている。この株は、細胞外殺虫活性タンパク質および細胞内殺虫活性タンパク質を産生するので、本発明はペニバチルスの他の株を対象とした、細胞外(培養上清液中に放出される)殺虫活性物質、および/または細胞内(細胞と結合した状態の)殺虫活性物質のスクリーニングを含む。この実施例では、ペニバチルス株の発酵ブロスの作製法、このようなブロスの処理法、およびブロスに由来する試料を対象とした殺虫活性の試験法について説明する。
15.A.ペニバチルスの発酵ブロスの作製および処理
ペニバチルス株を、栄養寒天プレート(8 g/l 栄養ブロス、15 g/l Bacto寒天;Difco Laboratories、Detroit、MI)上で、30℃で3〜5日間かけて成長させた。1個のコロニーを選択し、100 mlの滅菌済みの改変トリプシン処理ダイズブロス(トリプトン10 g/l、ペプトン7 g/l、ソイトン3 g/l、KCl 5 g/l、K2PO4 2.5 g/l;Disco Laboratories、Detroit、MI)を含む500 ml容のバッフル付き三角フラスコに接種した。回転振盪器(150 rpm)を用いた28℃における72時間のインキュベーション後に、滅菌済みの500 mlのポリエチレン製ボトルに培養物を移し、4,000xgで4℃で45分間遠心した。遠心後、上清液をデカントして、0.22μmのメンブレンフィルター(Millipore社、Bedford、MA)で濾過した。次に培養液の濾液を、カットオフ分子量が5,000のメンブレンをセットしたCentricon Plus-20遠心フィルター装置を用いて4,000×gで遠心して20倍に濃縮した。得られた細菌細胞ペレットを、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 8)に再懸濁した。次にこの試料を対象に、処理済みの上清試料および細胞ペレット試料に含まれる殺虫活性を、昆虫バイオアッセイ法で検討した。
15.B.処理済みの上清および細胞ペレットを対象とした昆虫バイオアッセイ法
このアッセイ法では、ディアブロティカ・ウンデシムパンクタータ・ホワルディ(サザン・コーンルートワーム、SCR)、ヘリコヴェルパ・ゼア(オオタバコガ、CEW)、およびヘリオシス・ビレセンス(タバコ・ブドワーム、TBW)の昆虫種を対象とした。SCRの成長用およびバイオアッセイ法用の人工餌については文献に記載されている(Rose、R.L.およびMcCabe、J.M. 1973. J. Econ. Entomol. 66、398-400)。鱗翅目の標準的人工餌(Stoneville Yellow餌)を用いて、ECB、CEW、およびTBWを成長させ、バイオアッセイ法を行った。40μlのアリコートの濃縮済みの上清試料または細胞ペレット試料を、人工餌を入れたウェルの表面(1.5 cm2)に直接添加した。処理後の餌を含むウェルを、滅菌済みのフローフード中で風乾し、各ウェルで1種の幼虫を、表面を滅菌処理した卵から孵化させて成長させた。次に、アッセイ法に使用するトレイを密封し、加湿した成長チャンバー内に入れ、28℃で3〜5日間維持した。死亡率および幼虫の重量を決定し評点化した。1回の処理に8匹の個体を使用した。
15.C.DB482の殺虫活性
株DB482に由来する濃縮済みの上清および細胞ペレットには、対照処理と比較して、SCR、TBW、およびCEWに対する殺虫活性が認められた(表25)。DB482に由来する濃縮上清および細胞ペレットに関連する殺虫活性は、2種類の異なる殺虫因子(1種類は細胞結合状態の因子(Cry様)で、もう1種類は細胞から放出される因子(TC様))に起因する可能性がある。しかしながら、DB482に由来する濃縮済みの上清と細胞ペレットの両方の殺虫活性が、同じ殺虫因子が両細胞画分に存在する結果であることも考えられる。
(表25) DB482の殺虫活性
Figure 2005536198
*-(活性なし)、++(中活性)、+++(高活性)。
15.D.殺虫活性スクリーニングの要約
この実施例では、鞘翅類および鱗翅目の昆虫に対する殺虫活性を有する株を同定するための、ペニバチルス株に由来する濃縮済みの培地上清および細胞ペレットのスクリーニング法を説明する。ペニバチルスアピアリエス単離株DB482は、本明細書で、tcaA、tcaB、tcaC、およびtccCの相同物を含むことがわかった。DB482に殺虫活性があるという知見からは、ペニバチルス株DAS1529が、鱗翅目の昆虫に対する殺虫活性の産生に関して、ペニバチルス属の中で独特の存在ではないことが確認される。したがって本発明は、P.コンドロイティナス、P.アルギノリティカス、P.ラルバ、P.バリダス、P.ゴルドネ、P.アルベイ、Pレンチモルバス、P.ポピリエ、P.チアミノリティカス、P.カルドラノリティカス、P.コベンシス、P.グルカノリティカス、P.ラウトゥス、P.チベンシス、P.マカリエンシス、P.アゾトフィキサンス、P.ペオリエ、P.ポリミクサ、P.イリノイセンシス、P.アミロリティカス、P.パブリ、P.マセランスなどの他の種のペニバチルスに、鱗翅目の昆虫に対する殺虫活性を有するペニバチルスの他の株を同定するための方法を含む。
フォトラブドゥスのTCオペロン。 殺虫活性を示す「SB12」クローン中に挿入されたDAS1529のDNAの略図。オープンリーディングフレームを、ブロックと矢印で示す。 配列番号:17と、バチルス・チアミノリティカスのチアミナーゼI(Campobassoら、1998)すなわちAAC44156の部分的配列比較。 DAS1529から精製したチアミナーゼの対CEW試験結果 pEt101D中ORF3〜ORF6。 タバコ・ブドワーム(TBW)に対するCry1529(ORF7)。 配列番号:9〜配列番号:5(tcaB2〜tcaB1)の比較(括弧はORF2の境界を示す)。 他のCryタンパク質と比較時のDAS1529のORF7(Cry1529)の系統樹。 野生型および修飾型のCry1529タンパク質のトリプシン消化の結果。 野生型および修飾型のCry1529タンパク質のトリプシン消化の結果。 tcaAプライマー設計目的の配列比較。 tcaBプライマー設計目的の配列比較。 tcaCプライマー設計目的の配列比較。 tccCプライマー設計目的の配列比較。
配列の簡単な説明
配列番号:1は、SB12の挿入部分全体の核酸配列である。
配列番号:2は、tcaA様タンパク質をコードするORF1の核酸配列である(遺伝子tcaA1、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tcaA1-1529)。
配列番号:3は、ORF1にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:4は、tcaB様タンパク質をコードする、IS因子を除去したORF2の核酸配列である(遺伝子tcaB1、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tcaB1-1529)。
配列番号:5は、ORF2にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:6は、tcaA様タンパク質をコードするORF3の核酸配列である(遺伝子tcaA2、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tcaA2-1529)。
配列番号:7は、ORF3にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:8は、tcaB様タンパク質をコードするORF4の核酸配列である(遺伝子tcaB2、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tcaB2-1529)。
配列番号:9は、ORF4にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:10は、tcaC様タンパク質をコードするORF5の核酸配列である(遺伝子tcaC、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tcaC-1529)。
配列番号:11は、ORF5にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:12は、tccC様タンパク質をコードするORF6の核酸配列である。
配列番号:13は、ORF6にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:14は、Cry様タンパク質をコードするORF7の核酸配列である。
配列番号:15は、ORF7にコードされたアミノ酸配列である。
配列番号:16は、分類学上の位置決定に使用したDAS1529の16S rDNAの部分核酸配列である。
配列番号:17は、DAS1529のブロス画分から精製された毒素のN末端側のアミノ酸配列である。
配列番号:18は、バチルス・チアミノリティカスのチアミナーゼIのアミノ酸配列である(Campobassoら、J. Biochem. 37(45):15981-15989、1998)。
配列番号:19は、ORF6タンパク質にコードされた別のアミノ酸配列である(遺伝子tccC、生物源ペニバチルス株IDAS1529、遺伝子名tccC-1529)。
配列番号:20は、遺伝子xptC1、生物源ゼノラブドゥスXwi株、遺伝子名xptC1-Xwiである。
配列番号:21は、遺伝子xptB1、生物源ゼノラブドゥスXwi株、遺伝子名xptB1-Xwiである。
配列番号:22は、プライマーSB101である。
配列番号:23は、プライマーSB102である。
配列番号:24は、プライマーSB103である。
配列番号:25は、プライマーSB104である。
配列番号:26は、プライマーSB105である。
配列番号:27は、プライマーSB106である。
配列番号:28は、プライマーSB212である。
配列番号:29は、プライマーSB213である。
配列番号:30は、プライマーSB215である。
配列番号:31は、プライマーSB217である。
配列番号:32は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のtcaA様遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号:33は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のTcaA様タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:34は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のtcaB様遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号:35は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のtcaB様遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号:36は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のTcaB様タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:37は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のTcaB様タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:38は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のtcaC様遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号:39は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のTcaC様タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:40は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のtccC様遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号:41は、ペニバチルス・アパイリウス株DB482のTccC様タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号:42は、遺伝子tcdB1、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tcdB1-W14である。
配列番号:43は、遺伝子tcdB2、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tcdB2-W14である。
配列番号:44は、遺伝子tccC1、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tccC1-W14である。
配列番号:45は、遺伝子tccC2、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tccC2-W14である。
配列番号:46は、遺伝子tccC3、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tccC3-W14である。
配列番号:47は、遺伝子tccC4、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tccC4-W14である。
配列番号:48は、遺伝子tccC5、生物源フォトラブドゥスW14株、遺伝子名tccC5-W14である。
配列番号:49は、ゼノラブドゥス・ネマトフィルス XwiのXptA2 TCタンパク質のアミノ酸配列である。

Claims (24)

  1. 以下の段階の少なくとも1つを含む、鱗翅目害虫に毒性であるCryタンパク質および毒素複合体タンパク質からなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子について、ペニバチルス単離株の培養物をスクリーニングする方法:
    (a)培養物からDNAを得て、該遺伝子の有無について該DNAをアッセイする段階、および
    (b)該培養物により産生されるタンパク質を得て、該タンパク質の有無について、該単離株中の該遺伝子の有無を示すタンパク質の存在をアッセイする段階。
  2. 以下の段階の少なくとも1つを含む、鱗翅目害虫に対する毒素活性を有するタンパク質についてペニバチルス単離株の培養物をスクリーニングする方法:
    (a)培養物により産生される培養ブロスを得て、鱗翅目害虫に対する毒素活性について該ブロスをアッセイする段階;および
    (b)複数の単離株を鱗翅目害虫に餌として与え、害虫に対する毒素の作用を観察する段階。
  3. ペニバチルス単離株のコレクションをタンパク質についてスクリーニングする段階を含み、該単離株が該コレクション中に存在する、請求項1記載の方法。
  4. タンパク質が毒素複合体タンパク質である、請求項1記載の方法。
  5. タンパク質が、毒素複合体毒素タンパク質の活性を高める、請求項4記載の方法。
  6. タンパク質が、鱗翅目害虫に毒性であるCryタンパク質である、請求項1記載の方法。
  7. 培養物からDNAを得る段階が、該DNAに由来するクローンのライブラリーを作製する段階、および該遺伝子の存在に関して、少なくとも1つのクローンをアッセイする段階を含む、請求項1記載の方法。
  8. ポリヌクレオチドの有無についてクローンをアッセイする段階が、該クローンを鱗翅目毒素活性についてアッセイし、それにより該ポリヌクレオチドの存在を示す段階を含む、請求項7記載の方法。
  9. DNAをアッセイする段階が、遺伝子の存在を示すように設計された少なくとも1つのプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行う段階を含む、請求項1記載の方法。
  10. タンパク質をアッセイする段階が、抗体と該タンパク質とを免疫反応させる段階を含み、該抗体は、該タンパク質の存在を示すように設計される、請求項1記載の方法。
  11. DNAをアッセイする段階が、核酸プローブをDNAにハイブリダイズさせる段階を含み、該プローブは、該遺伝子の存在を示すように設計される、請求項1記載の方法。
  12. タンパク質が、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、32、34、35、38、および40からなる群より選択される配列の相補物とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列にコードされる、害虫に対する毒素活性を有する単離されたタンパク質。
  13. タンパク質がCryタンパク質であり、プローブが配列番号:14の相補物である、請求項12記載のタンパク質。
  14. タンパク質が毒素複合体タンパク質であり、プローブが配列番号:2、4、6、8、10、12、32、34、35、38、および40からなる群より選択される配列の相補物である、請求項12記載のタンパク質。
  15. 請求項12記載のタンパク質の免疫反応断片。
  16. 請求項12記載のタンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
  17. 請求項16記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
  18. 植物細胞および微生物細胞からなる群より選択される、請求項17記載の細胞。
  19. 配列番号:3、5、7、9、11、13、15、18、19、33、36、37、39、および41からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質を害虫に接触させる段階を含む、害虫を制御する方法。
  20. ペニバチルスの単離株が、P.アピアリエス、P.コンドロイティナス、P.アルギノリティカス、P.ラルバ、P.バリダス、P.ゴルドネ、P.アルベイ、P.レンチモルバス、P.ポピリエ、P.チアミノリティカス、P.カルドラノリティカス、P.コベンシス、P.グルカノリティカス、P.ラウトゥス、P.チベンシス、P.マカリエンシス、P.アゾトフィキサンス、P.ペオリエ、P.ポリミクサ、P.イリノイセンシス、P.アミロリティカス、P.パブリ、およびP.マセランスからなる群より選択される種である、請求項1記載の方法。
  21. プローブが、tcaA、tcaB、tcaC、tcbA、tccA、tccB、tccC、tcdA、tcdB、xptA1、xptD1、xptB1、xptC1、xptA2、sepA、sepB、およびsepCからなる群より選択される遺伝子に由来する、請求項11記載の方法。
  22. プライマーが、tcaA、tcaB、tcaC、tcbA、tccA、tccB、tccC、tcdA、tcdB、xptA1、xptD1、xptB1、xptC1、xptA2、sepA、sepB、およびsepCからなる群より選択される遺伝子に由来する、請求項9記載の方法。
  23. プライマーが、配列番号:22、23、24、25、26、27、28、29、30、および31からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
  24. DAS1529(NRRL B-30599として入手可能)、およびDB482(NRRL B-30670として入手可能)からなる群より選択されるペニバチルス株の生物学的に純粋な培養物。
JP2004517835A 2002-06-28 2003-06-27 ペニバチルス種から得られる殺虫活性タンパク質およびポリヌクレオチド Pending JP2005536198A (ja)

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