詳細な説明
本発明は、請求項1の前段に規定されるエレベータバンクのエレベータ制御方法に関するものである。
従来技術は米国特許出願第5183981号(B66B 1/20)に記載されており、この出願は、トラヒック量の多い階へのサービスを最適化することによりアップピーク状態でエレベータ群を向けるシステムを開示し、建物のさまざまな階をセクタにグループ化することを記載する。この明細書に記載される装置では、エレベータ群の特定のエレベータカーは、建物の、ある階を含むセクタに供されるように割り当てられる。この装置では、各入口ロビー階より上の階に到着する乗客数は知られている。
エレベータ技術では、上記の建物のサービスセクタへの分割は、ゾーニングと呼ばれる。同様に、行先呼びは、一般にエレベータ技術では目標階呼びとして知られており、これは、エレベータに呼びを発行するときに、エレベータに乗りたい乗客が、出発ロビーにおいてすでに乗客の目標階を与えることを意味する。
さらに、上記の従来技術のゾーニングは、通常の呼びボタンを使用することに基づいている。エレベータを供すべきゾーンは、エレベータバンクのエレベータのドア開口の上に置かれたディスプレイに表示されなければならない。この表示は、たとえば、特定のエレベータの上方のディスプレイ上の情報が、たとえば、当該エレベータは12〜16階に供されるということを示すようなものであり、この12〜16階は、エレベータ群の、あるエレベータに現在のところ不変に割り当てられたサービスゾーンとみなされる。この場合、同じエレベータが短期間で、さまざまなゾーンに再割り当てされるかもしれないため、表示される情報は、出発ロビーにおいて、よく変わる。
従来技術を実行するときに遭遇する問題は、エレベータの上方のディスプレイに表示する情報が非常にしばしば変わり、そのため、大きなエレベータバンクの場合、この表示される情報を追いかけることが困難であり、または不可能であることさえあり、そのため、エレベータを利用しようとする乗客は、正しいエレベータを捕まえるもしくは見つけることが必ずしもできるわけではなく、乗客のエレベータでのトラヒックが実質的に妨げられ、遅れるということである。
従来技術の解決策における主要な問題は、ゾーニング無しで乗客により与えられる行先階呼びの数が多く、そのため、走行時間が増え、エレベータの輸送能力が低下するということである。
本発明の目的は、エレベータごとの行先呼びおよび停止の数を減らし、上記の従来技術において起こる欠点をなくすことである。
正確に言うと、エレベータバンクのエレベータを制御する本発明の方法は請求項1の特徴部に開示されるものにより特徴付けられる。いくつかの好ましい実施例の特徴は下位の請求項に開示される。
本発明の方法を適用することにより、従来技術と比較して顕著な利点が達成される。
エレベータバンクのエレベータを制御する本発明の方法によると、エレベータを利用する乗客は、建物でゾーニングが行われていることをまったく知らない。なぜならば、乗客は、どのエレベータが彼らに供されているかを直ちに知らされるからである。さらに、現存する公知の従来技術と比較した顕著な利点は、建物のさまざまな階を含むサービスセクタについての情報を示すエレベータごとの高価な別個のディスプレイは、エレベータロビーに必要としないということである。なお、エレベータを利用する乗客が、このようなディスプレイを目で追いかけることは困難である。
本発明によって達成される他の利点は、とくに大きいエレベータ群の使用も可能にするということである。本発明によれば、12〜16台もしくはそれより多いエレベータを含むエレベータ群を使用することが可能になる。エレベータはさまざまなロビーに配置してもよい。
本発明によって達成される重要な利点は、エレベータ群のエレベータに対するゾーン境界が、優勢な輸送需要に従って、動的に変更されるということである。したがって本発明によれば、「入場トラヒックが大きい状況下で」ゾーニングにより輸送能力が明らかに増加する利点がある。
建物のエレベータピクセル群におけるエレベータの従来のゾーニングにおいて、本発明によって達成される別の顕著な利点は、各階からエレベータに乗る乗客の行き先を早い段階で知ることを可能にするということである。したがって、行先階呼びが発行されなかった乗客のいない階またはゾーンにエレベータを割り当てる必要がない。このように、建物のさまざまな階で現在優勢である実際の輸送需要に従って、エレベータ群の輸送能力をより効率的に、ピークトラヒック状況が起こっているおよび/または行先階呼びが発行されているゾーンに割り当てることができる。
さらに本発明を有利に、エレベータの輸送能力を増加させるために使うことができ、従来のゾーニングや行先呼びを使う単なるエレベータ群と比較してエレベータを使用する乗客の乗車時間を顕著に減少させる。反面、乗客の待ち時間は、本発明の実施例の方が長くなる。
本発明は、複数の階を含むゾーンに分割された建物のエレベータバンクのエレベータを制御する方法に関し、この制御は、出発ロビーの行先階呼び入力装置によって行先階呼びをエレベータに発行し、この呼びを、エレベータ群管理システムによって建物のさまざまなゾーン間で内部的に分配する工程による。本発明の最も有利な実施例によると、供すべきエレベータおよび階は、前記エレベータ群管理システム内で、動的に前記ゾーンに分割され、トラヒック予測および輸送需要に従って、エレベータおよびゾーン境界の数を変える。
本発明の第2の実施例によると、前記エレベータ群管理システムにおいて、ゾーンのゾーン境界を動的に、優勢なトラヒックに従って、標準階に分割する。このように、エレベータ群のエレベータを含むゾーンのゾーン境界を、輸送需要によらず、変更しない。ゾーンの最大数は、群内のエレベータ数に等しい。
別の実施例によると、前記エレベータ群管理システムにおいてエレベータは動的に、さまざまなゾーン間で割り当てられる。
別の実施例によると、ロビーに到着するエレベータは、最も長い間サービスを受けていないおよび/またはゾーンで待っている乗客数が最大であるゾーンに供される。各ゾーンで待っている乗客数についての情報は行先制御から得られる。
さらに、本発明によると、前記エレベータ群の1台以上のエレベータは、輸送需要に従って、前記建物の2つ以上のゾーンに供するために使用されることが好ましい。
さらに本発明によると、入口ロビー階を含むゾーン以外のゾーンに割り当てられた前記エレベータ群の1台以上のエレベータは、輸送需要およびトラヒック予測に従って、それ自身のゾーンに加えて入口ロビー階に供される。
さらに、本発明の別の実施例によると、スカイロビー階を含むゾーン以外のゾーンに割り当てられた前記エレベータ群の1台以上のエレベータが、輸送需要およびトラヒック予測に従って、それ自身のゾーンに加えてスカイロビー階に供される。
さらに実施例によると、前記エレベータ群において、行先階呼び入力装置を用いて、群エレベータ管理システムは、エレベータ群のエレベータのどれが乗客に割り当てられたかについての情報を直接提供する。
また、実施例によると、前記エレベータ群のエレベータは、各ゾーンに割り当てられる当該エレベータ群のエレベータ数が各ゾーンの輸送需要に従って変わるように、さまざまなゾーンに割り当てられる。
さらに、本発明の実施例によると、ゾーン境界数は、前記エレベータ群の輸送需要および輸送能力に従って動的に変わる。
また実施例によると、エレベータ群管理システムにおいて、エレベータ群内のトラヒック量が、ピークトラヒック状況を示す特定の限界値を超えたとき、動的ゾーニングを作動させる。
さらに、本発明の実施例によると、特定のゾーンには、当該1つのゾーンまたはいくつかの他のゾーンに実際に割り当てられたエレベータ群のエレベータのみが供される。
さらに、本発明の実施例によると、エレベータ群のさまざまなエレベータを、建物内の1つまたは2つ以上のゾーンのいずれか、もしくはすべてのゾーンに割り当てることが可能である。同様に、本発明によると、実施例として、エレベータ群のどれか1台以上のエレベータをすべてのゾーンに供するように割り当てることが可能である。
以下に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、さまざまなタイプの技術を利用したエレベータ群管理方法を用いたときのエレベータ群の乗客待ち時間および輸送能力についてのさまざまなゾーニング方法の効果の比較を示す。この図で考慮している群管理方法は、標準行先階呼び入力に基づいたエレベータ群管理、デュアルゾーンエレベータ群管理、および動的ゾーニングに基づいたエレベータ群管理であり、動的ゾーニングに基づいたエレベータ群管理は本発明に適用される。前記の図は、エレベータバンクのエレベータを制御する前記3つの群管理方法について、平均待ち時間をエレベータ群のトラヒック量の関数として示す。曲線の横に示す数は、エレベータの満員の程度を示す割合である。
図1から、動的ゾーニングをエレベータ群管理方法として用いると、エレベータ群のトラヒック量が十分多くなったときに、たとえば標準行先階呼び入力に基づいたエレベータ群管理方法と比較して、利点が得られる。他方、デュアルゾーンエレベータ群管理方法を用いると、トラヒック量がこの管理方法の輸送能力の限界に達して、カーの満員の程度が80パーセントを超えると、平均待ち時間が増加する。能力の限界に、標準行先階呼び入力または動的ゾーニングに基づいたエレベータ群管理方法よりも著しく早い段階で達する。
図2aは、本発明による動的ゾーニングを示し、これは、建物のさまざまな階をゾーンに分割するときに、エレベータ群の群管理において実行される。この図に示す状況では、エレベータ群のエレベータは最大数のゾーンに分割されている。エレベータ群の輸送能力は、すべてのゾーンへのトラヒックがあるとするならば、この場合、最大である。
図2bは、入口ロビー階を含むゾーン以外のゾーンに割り当てられた前記エレベータ群の1台以上のエレベータが、それ自身のゾーンに加えて入口ロビー階に供するために使用される本発明の実施例を示す。輸送能力は、この場合、図2aのときよりもいくらか低いが、待ち時間は、たとえば人々が職場に到着する朝や、人々が仕事から帰る夕方は、より短い。
図2cは、スカイロビー階を含むゾーン以外のゾーンに割り当てられた前記エレベータ群の1台以上のエレベータを、輸送需要に応じてそれ自身のゾーンに加えてスカイロビー階に供するために使用する本発明の実施例を示す。
図2dは、エレベータ群の2つ以上のゾーンにあるすべてのエレベータを、トラヒック予測により非常に大きな輸送需要が予測される建物の特定の1つのゾーンに供する本発明の実施例を示す。エレベータは輸送需要に従って、さまざまなゾーンに割り当てられ、最大数のエレベータが、最も混雑したゾーンCHrushに供するように割り当てられる。また本発明によれば、前記の現時点で最も混雑したゾーンCHrushは、さまざまな状況下で建物のさまざまな数の階を含むように、最も混雑したゾーンCHrushのゾーン境界rは輸送需要に従って動的に変わる。さらに、ゾーン数は、あるときは増加し、あるときは減少するように、ゾーン境界数rは、輸送需要に従って動的に変わってもよい。さらに、本発明によると、エレベータ群を含む建物は、2つ以上の最も混雑したゾーンCHrushを有することが可能である。本図に示すオーバラップゾーニング方法を用いることにより、さまざまなゾーンにおける大きなピークトラヒック状況を管理することさえ可能である。
図2eは、ゾーンに割り当てられたエレベータに加えて、他のゾーンに割り当てられたエレベータによっても供されるゾーンを含む本発明の実施例を示す。この実施例によると、この前記ゾーンに、他のゾーンに主として割り当てられたエレベータが供され、またこのゾーンに排他的に割り当てられたエレベータ群のエレベータも供される。すなわち、このゾーンに、当該ゾーンに排他的に割り当てられたエレベータ群のエレベータが供されるとともに、トラヒック予測および輸送需要に従って他のゾーンに実際に割り当てられたエレベータも供される。このタイプのゾーニングは、単一事務所の建物における階間トラヒックにたとえば使用することができる。
図2fは、図2eの拡張を示し、ここでは、建物の特定のゾーンに、建物の1つ以上の他のゾーンに実際に割り当てられたエレベータ群のいくつかのエレベータが供される。この場合、ゾーンでの現在の輸送需要により、このような2つ以上のゾーンに供される1つのエレベータが各状況において割り当てられるゾーンを決定し、複数のエレベータが割り当てられて供されるゾーン数を決定する。
以上、本発明を添付の図面を参照して例により説明したが、特許請求の範囲に規定される発明の概念の範囲内で、本発明のさまざまな実施例が可能である。
図1は、エレベータ群の乗客待ち時間および輸送能力についてのさまざまなゾーニング方法の効果の比較を示す。
図2aは、エレベータ群管理システムにおける最も好ましい動的ゾーニングを示す。
図2bは、ゾーンに2台以上のエレベータが供されるときに、入口ロビー階に供する本発明の実施例を示す。
図2cは、ゾーンに2台以上のエレベータが供されるときに、スカイ入口ロビー階に供する本発明の実施例を示す。
図2dは、エレベータ群の2個以上のゾーンのすべてのエレベータが排他的に特定の1つの混雑したゾーンに供される本発明の実施例を示す。
図2eは、ゾーンに、1つ以上の他のゾーンに割り当てられたエレベータが供される本発明の実施例を示す。
図2fは、1つのゾーンを含む本発明の実施例を示し、このゾーンには、このゾーンに割り当てられたエレベータに加えて、他のゾーンに割り当てられたエレベータも供される。