要約
本発明の一つの様相においては、各プリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程にかかわりなく、イメージを印刷するために用いられる各プリントヘッドサイクルの間に、サーマルプリンタの各プリントヘッドエレメントに同じ量のエネルギーを供給する方法を提供する。一つの実施態様においては、持続時間の一部がアクティブなプリントヘッドエレメント数に依存する期間の間、複数のプリントヘッドエレメントに電力を供給することによって、プリントヘッドサイクルの間にアクティブである複数のプリントヘッドエレメントに、必要なエネルギー量を供給する。その期間はプリントヘッドサイクルの一部分であってよい。たとえば、特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブになるプリントヘッド工程を決め(たとえばプリントヘッドサイクルの開始時または直前に)、アクティブなプリントヘッド工程にもとづいて、プリントヘッドサイクルの間のある時間量の間に、アクティブなプリントヘッドエレメントに電力を供給する。アクティブな各プリントヘッドエレメントによって、各プリントヘッドサイクルの間に出力媒体に供給される全エネルギー量が、任意の特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメント数にかかわりなく、どのプリントヘッドサイクルでも一定になるように、時間量を選ぶ。
特定のプリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントをアクティブにする時間量を選ぶプロセスにおいて補正率を用いる。本発明の一つの様相においては、出力媒体上に出力ターゲットとして表現したソースターゲットを用いて、補正率パラメータ(またはその近似値)を作成する。出力ターゲットを目視検査し、目視検査中の観察結果からパラメータ値を導く。たとえば下記にさらに詳細に説明するように、ソースターゲットは同じ強度(たとえば、グレイレベル)を有する第一および第二の複数のソース区域を含む。第一の複数のソース区域を出力媒体上に第一の複数の出力区域として表現するとき、第一のあらかじめ決められた数の加熱エレメントがアクティブであるように、第一の複数のソース区域のピクセルを配置する。一定のデューティーサイクルを用いて出力媒体上に第一の複数のソース区域を表現する。第二の複数のソース区域を出力媒体上に第二の複数の出力区域として表現するとき、第二のあらかじめ決められた数の加熱エレメントがアクティブであるように、第二の複数のソース区域のピクセルを配置する。複数のデューティーサイクル(たとえば、工程708および728について下記に説明するように)を用いて出力媒体上に第二の複数のソース区域を表現する。したがって、第二の複数の出力区域は変動する黒度をもつ。
出力ターゲットを目視検査して、黒度が第一の複数の出力区域の黒度にもっとも近い第二の複数の出力区域の一つの出力区域を同定する。第二の複数の出力区域を第一の複数の出力区域の近くに配置して、このような同定を容易にする。下記にさらに詳細に説明するように、第二の複数の出力区域から選択した一つの出力区域をもとに補正率パラメータを決定する。
本発明のさらなる様相および実施態様を下記にさらに詳細に説明する。
詳細な説明
本発明のさまざまな実施態様を説明する前に、いくつかの用語を定義する。
パルスまたは加熱パルス。 パルスまたは加熱パルス。サーマルプリントヘッドの加熱エレメントが通電される、またはONである短い期間。ヘッドの電気抵抗エレメント中を電流が流れてエレメントを発熱させる。多くの場合パルスがONである期間を「パルス幅」と呼ぶ。
ピクセル。 ピクセルは「画素(picture element)」の短縮形で、ディジタルイメージの最小空間ユニットである。ディジタルイメージは一般に方形のアレイに整列したピクセルの集まりで構成される。一般的に各ピクセルはx(列)およびy(行)座標で表される位置、およびカラーまたはグレイのセード等の任意のトーンを表すディジタル数値を有する。表現されるときピクセルは重なり合ったり、さまざまに離れて配置されたりすることもあるが、ピクセルは一般にさまざまな出力媒体上で表現されるとき互いに隣接する。ピクセルの位置およびトーンを表すためにさまざまな周知の技法が発達した。
スポット。 本明細書中で用いられる「物理スポット」は出力装置が出力媒体上の特定の点または特定の地域内に表現した方形または円盤形等の小さな形である。物理スポットは出力装置が作成できる出力の最小単位である。たとえば、物理スポットはプリンタによって印刷されるインクのスポットまたはモニタによって表示されるピクセルである。物理スポットは四角、隅を丸めた四角または円など任意の形状である。いろいろな出力装置がいろいろな形状およびサイズの物理スポットを表現し、単一の出力装置がいろいろなサイズの物理スポットを印刷できる。たとえば、熱転写プリンタは一般に加熱エレメントにパルスを送って物理スポットをつくる。加熱エレメントの各パルスは出力媒体上に少量のワックスまたはインクを転写し、小さな物理スポットを作製する。単一の加熱エレメントに多数回継続してパルスを送って多数の物理スポットをつくり、物理スポットが集まってさらに大きな物理スポットをつくることがある。
本明細書中で用いられる「論理スポット」は物理スポットのディジタル表現である。論理スポットはたとえば、ビットマップ中の単一ビットとして表される。論理スポットはたとえば、RAMなどのコンピュータ可読メモリまたはディスク上のファイルに記憶される。本明細書中で用いられる用語「スポット」は、物理スポットおよび論理スポットの両方を指す。
表現する。 本明細書中で用いられる用語「表現すること」は、出力装置を用いて出力媒体上に出力を作製するプロセスを指す。たとえば、「表現すること」は印刷ページ上へのインクまたはトナーの印刷、コンピューターモニター上へのピクセルの表示およびRAMまたは他の記憶装置へのビットマップの記憶を含む。
区域。 本明細書中で用いられるイメージの「区域」はイメージ内の任意の地域を指す。たとえばディジタルソースイメージ内の区域は、ピクセルの二次元のアレイなど、単一のピクセルまたはピクセルの集合を有する地域を含む。
プリントヘッドサイクル(またはサイクル)。 本明細書中で用いられる「プリントヘッドサイクル」は、加熱エレメントの一パルスに割り当てられる時間である。サイクルは通常は加熱パルスの開始とともに始まる。サイクルの長さは少なくとも加熱パルスと同じくらい長くなければならない。通常はプリントヘッドサイクルの方が加熱パルスより長く、この場合、加熱パルスはプリントヘッドサイクルのある割合を占める。
デューティーサイクル。 本明細書中で用いられる「デューティーサイクル」は、プリントヘッドサイクルに占める加熱パルスの割合を指す。用語「デューティーサイクル」は一般に、一定の時間間隔で起こるプリントヘッドサイクルを繰り返す状況で、全ての加熱パルスがそれぞれのプリントヘッドサイクルの同じ割合を占めるときに用いられる。デューティーサイクルは加熱パルス時間のヘッドサイクル時間に対する比として定義される。たとえば、加熱パルスがプリントヘッドサイクルの持続時間の3/4の間発生するなら、デューティーサイクルは0.75または75%として表される。
本発明の一つの様相においては、各プリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメント数にかかわりなく、イメージを印刷するために用いられる各プリントヘッドサイクルの間に、サーマルプリンタの各プリントヘッドエレメントに同じ量のエネルギーを供給する方法を提供する。一つの実施態様においては、持続時間の一部がアクティブなプリントヘッドエレメント数に依存する期間の間、複数のプリントヘッドエレメントに電力を供給することによって、プリントヘッドサイクルの間にアクティブである複数のプリントヘッドエレメントに、必要なエネルギー量を供給する。その時間はプリントヘッドサイクルの一部分であってよい。たとえば、特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブになるプリントヘッド工程を決め(たとえばプリントヘッドサイクルの開始時または直前に)、アクティブなプリントヘッド工程にもとづいて、プリントヘッドサイクルの間のある時間量の間に、アクティブなプリントヘッドエレメントに電力を供給する。アクティブな各プリントヘッドエレメントによって、各プリントヘッドサイクルの間に出力媒体に供給される全エネルギー量が、任意の特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメント数にかかわりなく、どのプリントヘッドサイクルでも一定のままであるように、時間量を選ぶ。
特定のプリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントをアクティブにする時間量を選ぶプロセスにおいて補正率を用いる。本発明の一つの様相においては、出力媒体上に出力ターゲットとして表現したソースターゲットを用いて、補正率パラメータ(またはその近似値)を作成する。出力ターゲットを目視検査し、目視検査中の観測結果からパラメータ値を導く。たとえば下記にさらに詳細に説明するように、ソースターゲットは同じ強度(たとえば、グレイレベル)を有する第一および第二の複数のソース区域を含む。第一の複数のソース区域を出力媒体上に第一の複数の出力区域として表現するとき、第一のあらかじめ決められた数の加熱エレメントがアクティブであるように、第一の複数のソース区域のピクセルを配置する。一定のデューティーサイクルを用いて出力媒体上に第一の複数のソース区域を表現する。第二の複数のソース区域を出力媒体上に第二の複数の出力区域として表現するとき、第二のあらかじめ決められた数の加熱エレメントがアクティブであるように、第二の複数のソース区域中のピクセルを配置する。複数のデューティーサイクル(たとえば工程708および728に関して下記に説明するように)を用いて出力媒体上に第二の複数のソース区域を表現する。したがって、第二の複数の出力区域は変動する黒度をもつ。
出力ターゲットを目視検査して、黒度が第一の複数の出力区域の黒度にもっとも近い第二の複数の出力区域の一つの出力区域を同定する。第二の複数の出力区域を第一の複数の出力区域の近くに配置して、この同定を容易にする。下記にさらに詳細に説明するように、第二の複数の出力区域から選択した一つの出力区域をもとに補正率パラメータを決定する。
次に、本発明のさらなる様相および特定の実施態様ならびにそのような実施態様の特長をさらに詳細に説明する。
ディジタルイメージを紙などの物理的出力媒体上に印刷するために、さまざまな種類の従来型のプリンタが存在する。そのようなプリンタは、たとえばドットマトリックスプリンタ、プロッタ(ペンプロッタ、フラットベッドプロッタ、ドラムプロッタ、デスクトッププロッタおよび静電プロッタなど)、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタおよび染料昇華プリンタを含む。
熱転写プリンタは非常に接近して(たとえば、84.7ミクロン)配置された直線状の加熱エレメントのアレイを含み、一般にドナーシートから無地の紙へワックス中の有色顔料を転写する。顔料を転写させるために選択的に加熱された加熱エレメント帯上を、ワックスコーティングされたドナー紙および無地の紙が一緒に移動する。カラー印刷の場合にはドナーロール上のワックスに顔料を配合して、交互にシアン、マジェンタ、黄色および黒のそれぞれ用紙サイズと等しい長さの帯とする。
染料昇華プリンタは、加熱および染料転写プロセスでそれぞれ256段階の強度のシアン、マジェンタおよび黄色を転写し、一般に300ドット/インチ(dpi)の空間分解能で高品質のフルカラーイメージの描画が可能であることを除けば、熱転写式プリンタに似ている。このプロセスはワックス転写より遅いが、得られる出力の品質はより高い。本明細書中においては熱転写プリンタ、染料昇華プリンタ、および熱エネルギーを用いて出力媒体上にインクまたはワックスを堆積させる他のプリンタをサーマルプリンタと呼ぶ。
図1Aを参照して説明する。従来の二値式サーマルプリンタでは、プリントヘッド100は、直線状アレイの加熱エレメント102a−d(本明細書中では「プリントヘッドエレメント」とも呼ぶ)を含む。図1Aでは四つの加熱エレメント102a−dだけを示すが、一般的なサーマルプリントヘッドが、たとえばインチあたり300エレメントに密着配置された非常に多数の小さな加熱エレメントを含むことは明らかである。図1Aのブロック図のプリントヘッド100は単色(黒など)スポットを印刷するところを示すが、サーマルプリンタは、複数のカラーのスポットを印刷することができる多色刷りドナーリボンをもつことがある。さらに、プリントヘッド100の加熱エレメント102a−dは任意の形状およびサイズであってよく、互いに任意の適切な間隔で離れ、任意の構成で配置されてよいことは明らかである。
サーマルプリントヘッド100は一般に出力媒体104(無地の紙など)上に以下のように出力を作製する。説明のため図1Aには出力媒体104の一部分だけを示す。出力媒体104はプリントヘッド100の下を矢印106で示す方向に動く。特定のプリントヘッドエレメントへ電力を供給してプリントヘッドエレメントを加熱する。エレメントの温度がある臨界温度を超えると、エレメントは、加熱エレメントの下を現在通過中の出力媒体104の地域に染料(インクまたはワックス)を転写し始め、本明細書中においてスポットまたはドットと呼ぶものを作製する。プリントヘッドエレメントに電力が供給され、温度が臨界温度より高い限り、プリントヘッドエレメントは出力媒体上に顔料を転写し続ける。したがってプリントヘッドエレメントに長時間にわたって電力を供給するほど、より大きなスポット(またはドット)が印刷される。これらのより大きなスポットを多くの場合「ドット」と呼ぶ。本明細書中においては、電力が供給されるプリントヘッドエレメントを「アクティブな」プリントヘッドエレメントと呼ぶ。プリントヘッドエレメントに電力がまったく供給されなければ、プリントヘッドエレメントは下を通過する出力媒体の地域に顔料を転写しない。本明細書中においては、そのようなプリントヘッドエレメントを「アクティブでない」プリントヘッドエレメントと呼ぶ。
サーマルプリンタ内部のプリンタコントローラ(示されていない)は、任意の特定の時間に任意の組合せのプリントヘッドエレメント102a−dに選択的に電力を供給することができる。従来のサーマルプリンタのプリンタコントローラは時間を等しい間隔の持続時間Tcに分割する。本明細書中においては、各持続時間Tcを「プリントヘッドサイクル」と呼ぶ。いくつかの従来のサーマルプリンタではアクティブなプリントヘッドエレメントがアクティブである時間は、どのプリントヘッドサイクルでも変らない。一般に特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメントは、そのプリントヘッドサイクルのすべてまたは実質的にすべての間アクティブである。
たとえば図1Bを参照して、プリントヘッド100によって出力媒体104上に印刷されたスポット108a−gのパターンの例を示す。図3Aを参照して、スポット108a−gの印刷を生じたプリントヘッドエレメント102a−dのアクティブ化パターンのグラフ302a−dを示す。たとえばグラフ302aはプリントヘッドエレメント102aのアクティブ化の時間パターンに対応し、グラフ302bはプリントヘッドエレメント102bのアクティブ化の時間パターンに対応する、等々である。グラフ302a−dの水平軸は時間を表し、四つの等しいプリントヘッドサイクル304a−d(それぞれ持続時間Tc)に分割される。グラフ302a−dのそれぞれの縦軸は二つの値ONおよびOFFをもち、対応するプリントヘッドエレメントがそれぞれアクティブかアクティブでないかを示す。値ONおよびOFFは例を示すために選ばれた二進値に過ぎず、プリントヘッドエレメント102a−dに供給される電力量を表す意図はない点に注意されたい。
再び図1Bを参照して、図3Aに示す四つのプリントヘッドサイクル304a−dの間にプリントヘッド100が出力を作製した後の出力媒体104を示す。行110a−dのそれぞれは、プリントヘッドサイクル302a−dの一つのプリントヘッドサイクルの間に印刷されたスポットを含む。たとえば、第一のプリントヘッドサイクル304aを考える。図3Aに示すように四つのプリントヘッドエレメント102a−dは、プリントヘッドサイクル304aの間すべてアクティブであった。その結果図1Bに示すように第一行110aではプリントヘッド100によって、プリントヘッドエレメント102a−dのそれぞれによって一スポットずつ、四つのスポット108a−dが出力された。図3Aに示すように四つのプリントヘッドエレメント102a−dは、第二のプリントヘッドサイクル304bの間どれもアクティブではなかった。その結果、図1Bに示すように第二行110bではスポットは一つも出力されなかった。図3Aおよび図1Bを参照すると、同様にグラフ302a−dとスポット108e、108fおよび108gとの間の関連性が直ちに了解される。
したがって、従来のサーマルプリンタがどのようにして、連続するプリントヘッドサイクルの間サーマルプリントヘッドエレメント102a−dを選択的にアクティブにすることにより、出力媒体104上に望ましいスポットのパターンを作製するかは一般に理解されるはずである。より詳しくは、図2を参照して、プリントヘッドエレメント102a−dに選択的に電力を供給するために一般的に用いられるプリントヘッド回路200の回路図を示す。複数のプリントヘッドエレメント102a−d(図1A−1B)のそれぞれは一般的に抵抗器として実装される。たとえば図2を参照すると、それぞれ抵抗Rをもつ抵抗器208a−dが複数のプリントヘッドエレメント102a−dに対応する。
図2に示すように、プリントヘッドエレメント抵抗器208a−dを互いに並列に接続する。電圧V0をもつ電源202が抵抗Riをもつ共通抵抗器204を通してプリントヘッドエレメント抵抗器208a−dに電力を供給する。図2に示すように、共通抵抗器204をプリントヘッドエレメント抵抗器群208a−dと直列に接続する。一般にサーマルプリントヘッドが当業者によく知られている他の回路および構造要素を含むことは明らかである。図2には図示および説明の容易さのため簡略化した回路200を示す。
再び図2を参照して説明すると、上記で説明した技法による個々のプリントヘッドエレメントへの電力の選択的な供給を可能にするために回路200を用いる。とくに、それぞれ抵抗器208a−dと直列に接続したスイッチ206a−dによって、各プリントヘッドサイクルの間に任意の組合せの抵抗器208a−dに電力を選択的に供給することができる。たとえばスイッチ206aを閉じると、電源202から抵抗器208aを通って接地まで回路が完成し、その結果スイッチ206aが閉じられている限り、電源202から抵抗器208aに電力を供給できる。望ましい組合せのプリントヘッドエレメントを選択的にアクティブにするために、プリントヘッドコントローラはスイッチ206a−dの対応するスイッチを開閉する。その結果、スイッチ206a−dの閉じたスイッチによって接続された抵抗器208a−dだけに電力が供給される。
たとえば、図3Aに図示する三番目のプリントヘッドサイクル304cをもう一度考える。プリントヘッドエレメント102bおよび102dは、プリントヘッドサイクル304cの間スイッチ206bおよび206dを閉じることによって、プリントヘッドサイクル304cの間アクティブにされ、一方プリントヘッドエレメント102aおよび102cは、プリントヘッドサイクル304cの間スイッチ206aおよび102cを開くことによって、プリントヘッドサイクル304cの間アクティブでなくされる。
従来のサーマルプリンタが一般にどのように出力媒体上にスポットを作製するか説明したが、次に従来のサーマルプリンタがディジタルイメージを表現する方法をさらに詳しく説明する。ディジタルイメージはr行およびc列をもつピクセルの二次元アレイである。各ピクセルのディジタル数値は必要な強度または黒度などのピクセルの出力特性を指定する。たとえばグレイスケールディジタルイメージ中の各ピクセルは、8ビットのディジタル数値(ゼロから255までの範囲)をもち、ゼロは黒を表し、255は白を表し、中間の数値はグレイの中間セードを表す。
ディジタルイメージの特定の列中の各ピクセルは、一般にサーマルプリントヘッド100の加熱エレメント102a−dの単一の加熱エレメントによって印刷される。各ピクセルのディジタル数値を用いて、ピクセルを印刷するとき対応するプリントヘッドエレメントは出力媒体104にどれくらいのエネルギーを供給するかを決定する。ディジタル数値が大きいほど、ピクセルを印刷するために出力媒体104に供給されるエネルギーは大きくなる。プリントヘッドエレメントによって出力媒体104に転写される顔料の量は、プリントヘッドエレメントによって供給されるエネルギーに比例する。その結果、特定の時間間隔の間により多くのエネルギーをプリントヘッドエレメントに供給すると、転写される顔料の密度が増え、同じ時間間隔の間により少ないエネルギーで印刷された地域より暗く見える地域を生じる。これはより暗いスポットまたはより大きいドットのどちらかを生じる結果となる。
特定の行の異なるピクセルは異なるディジタル数値をもつので、ディジタルイメージの同じ行のピクセルを印刷するとき一つのプリントヘッドエレメントによって供給されるエネルギー量は、別のプリントヘッドエレメントによって供給されるエネルギー量と異なる。これは本明細書中ではTpと称する一定の時間間隔を割り当て、その時間の間に一行のピクセルを印刷することによって一般に達成される。行内の各ピクセルは異なる印刷エネルギー量を要求するので、各プリントヘッドエレメントは時間間隔Tpの異なる割合の間アクティブにされる。これを実現するために、一般に時間間隔Tpをさらに持続時間Tcの部分区間に分割する。これらの部分区間が上記で説明した「プリントヘッドサイクル」である。たとえば行あたり300プリントヘッドサイクルがあり、その場合TcはTp/300に等しい。
上記で説明したように一般に任意のプリントヘッドサイクルの間、任意の組合せのプリントヘッドエレメントをアクティブにすることもアクティブでなくすることもできる。そこで理想的にはディジタルイメージ中の各ピクセルは、そのピクセルを印刷する役割を負うプリントヘッドエレメントに、ピクセルのディジタル数値の単調関数となる数のプリントヘッドサイクルの間、電力を供給することによって正しい黒度で印刷される。
ピクセルのディジタル数値に対応する数のプリントヘッドサイクルの間、対応する加熱エレメントをアクティブにすることによって、特定のディジタル量をもつピクセルを印刷する今説明した技法は、アクティブなプリントヘッドエレメントに供給される電力量Pがアクティブなプリントヘッドエレメント間またはどのプリントヘッドサイクルでも変らないと仮定している。言い換えると、任意のプリントヘッドサイクル内でアクティブな任意のプリントヘッドエレメントに一定の電力Pが供給されるなら、正しいピクセル黒度が作製され、その結果各プリントヘッドサイクルの間アクティブな加熱エレメントごとに一定のエネルギー量Eが出力媒体上に供給される。
次にディジタルイメージをサーマルプリンタに印刷する従来の技法をいくつかさらに詳しく説明する。特定のプリントヘッドサイクルの間のアクティブおよびアクティブでないプリントヘッドエレメントのパターンはビットの一次元アレイとして表される。たとえば1はアクティブなプリントヘッドエレメントを表し、0はアクティブでないプリントヘッドエレメントを表す。本明細書において用いられる二進法の0は論理値「偽」と等価であり、二進法の1は論理値「真」と等価である。このような方式を用いて、特定のプリントヘッドサイクルに対応するビットのアレイは、プリントヘッドサイクルの開始前にデータラインを通して、シリアル方式でサーマルプリントヘッドの第一のデータバッファにロードされる。
たとえば図3Bを参照して、従来のサーマルプリンタを用いてディジタルイメージを印刷するプロセスで用いられるさまざまな信号のグラフ322a−eを示す。グラフ322a−eの横軸は時間(持続時間Tcの等しい間隔に分割される)を表し、縦軸は電圧を表す。グラフ322aはプリントヘッドエレメント102dのデータがロードされる第一データバッファのグラフである。図1Bおよび3Aを参照すると、プリントヘッドエレメント102dは、プリントヘッドサイクル324a(図3Aのプリントヘッドサイクル304aに対応する)の間アクティブになる(したがって、スポットを印刷する)。したがってグラフ322aに示すように、プリントヘッドサイクル324aの間にデータは第一データバッファにロードされる。
グラフ322bは、第一データバッファから第二データバッファにデータをラッチするために用いられる周期的なラッチ信号を表す。ラッチ信号がハイのとき、第一データバッファから第二データバッファへデータが転送される。グラフ322bに示すように、ラッチシグナルはプリントヘッドサイクル324b−eのそれぞれのほぼ始めでピークに達する。グラフ322bに示される特定のラッチシグナルは例を示すために示されるに過ぎず、適当なラッチシグナルは他の波形をもつことがあり、プリントヘッドサイクルの開始前または後にピークに達することもあることに注意されたい。
グラフ322cはプリントヘッドエレメント102dに対応する第二データバッファのグラフである。図3Bに示すように第二データバッファはローで始まり、ラッチ信号がハイになり、第一データバッファのデータを第二データバッファに転送させると、状態を変える。第二データバッファは、ラッチ信号が新しい値をロードすることによって第二データバッファを変化させるまで、その値を保持する。
グラフ322dはプリントヘッドエレメント102d(および他のプリントヘッドエレメント102aおよび102c−d)を制御するために用いられるストローブ信号のグラフである。ストローブ信号は「真」(ハイ)または「偽」(ロー)のどちらか一つの値をもつ。ストローブ信号の周期はプリントヘッドサイクルの持続時間と大体等しい。ストローブ信号および第二データバッファ中の各数値に対して連続して論理和をとる。ストローブ信号および第二データバッファ中の対応するプリントヘッドエレメントのデータ数値の論理和の結果が「真」である限り、各プリントヘッドエレメントはアクティブにされる。
たとえばグラフ322eはプリントヘッドエレメント102dの電圧降下のグラフである。第二データバッファ(グラフ322c)およびストローブ信号(グラフ322d)がハイであるプリントヘッドサイクル324bの部分で、プリントヘッドエレメント102dがアクティブになることが分かる。同様に、第二データバッファはプリントヘッドサイクル324cを通じて値「偽」をもち、プリントヘッドサイクル324cの持続時間の間に上記で説明した論理和の結果を「偽」とするので、プリントヘッドサイクル324cの持続時間の間プリントヘッドエレメント102dはアクティブでないことが分る。
さらに一般的には、今説明した技法を用いて、対応する第二バッファに1(真)が記憶されたプリントヘッドエレメントはストローブ信号が「真」である間は電流を流し、(1)ストローブ信号が「偽」になるか、または(2)第二データバッファに記憶された値が0(偽)に変化するまでその状態を続ける。
図3Bに示すように、従来のサーマルプリンタで用いられるストローブ信号は一定の周期をもつ信号である。その結果アクティブなプリントヘッドエレメントは常にプリントヘッドサイクルの間の同じ時間量の間アクティブである。たとえばグラフ322eに示すように、プリントヘッドエレメント102dはプリントヘッドサイクル324bでも324dでもアクティブであり、これらのプリントヘッドサイクルのそれぞれの間、同じ時間量の間アクティブである。さらにグラフ322dに示すように、一般にストローブ信号は実質的にプリントヘッドサイクルの全期間ハイである。ストローブ信号は一般に、第一データバッファから第二データバッファにデータをラッチするために必要な短い時間の間だけロー(偽)である。その結果一般に従来のサーマルプリンタ中のアクティブなプリントヘッドエレメントは、実質的にアクティブであるプリントヘッドサイクルの全期間アクティブである。
今説明した技法を用いると、図3Aに示したアクティブ化パターンに対応して、図1Bにしたような出力が作製されることは明らかである。
ここまでの説明では、各プリントヘッドサイクルの間にアクティブな各プリントヘッドエレメントには一定の電力Pが供給されると仮定した。しかし従来のサーマルプリンタでは、特定のプリントヘッドサイクルの間に特定のアクティブなプリントヘッドエレメントに供給される実際の電力量は、そのプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程によって変る。さらに詳しくは、従来のサーマルプリンタでは個々のプリントヘッドエレメントに供給される電力量(したがって、個々のプリンタヘッドエレメントによって放出されるエネルギー量)は、同時にアクティブなプリントヘッドエレメント102a−dの全数が増加すると減少する。下記にさらに詳細に説明するようにこれはプリントヘッドエレメント102a−dに電力を供給するために使用される回路200が原因である。
プリントヘッドエレメント102a−dの特定のエレメントに供給される電力が減ると、エレメントが出力媒体上に転写する着色剤が減り、その結果印刷される出力イメージの区域の密度の意図とは異なる好ましくない低下を生じる。人間の目で巨視的なレベルで見ると、密度の低下は暗度の低下として感じられる。同時にアクティブなプリントヘッド工程は、ディジタルイメージの印刷中に一般に変動するので、生成される印刷イメージは、印刷されるソースイメージ中のデジタルピクセル値の変化を正確に反映しない好ましくない反射率の変動を示す。
さらに詳しくは、共通抵抗器204(抵抗Riをもつ)および並列なプリントヘッドエレメントの抵抗器208a−d(それぞれ抵抗Rをもつ)の全抵抗をR′とする。特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程をnとする。言い換えるとnは特定のプリントヘッドサイクルの間に閉じられているスイッチ206a−dの数である。抵抗器208a−dは並列に配線されているので、すべてのアクティブなプリントヘッドエレメント抵抗器の合成抵抗はR/nである。共通抵抗器204はプリントヘッドエレメント抵抗器208a−dと直列に配線されているので、全抵抗R′は式1で表される。
共通抵抗器Ri中を流れる電流Iは式2で表される。
プリントヘッドエレメント抵抗器208a−dから見た(点210における)全電圧V′は式3で表される。
V’=V0−Ri
式 3
V0を因数分解し、式1を用いてRiを置換し、結果を整理して式4を得る。
式4から、アクティブなプリントヘッド工程nが増えると、プリントヘッドエレメント抵抗器208a−dから見た点210における電源電圧V′は低下し、上記で説明した好ましくない結果が生じることがわかる。
図4を参照して、本発明のさまざまな実施態様が用いられる一つの状況を説明するデータフロー図400を示す。ソースイメージ402は、出力媒体上に出力することを望まれる任意のイメージである。ソースイメージ402はたとえば写真、ディジタル写真または他のディジタルイメージである。さらに一般的に、ソースイメージ402は連続的な階調イメージまたは離散的な階調イメージのどちらでもよく、紙、フィルム、またはコンピュータメモリーまたはファイルシステム等のコンピュータ可読媒体のような任意の媒体上に記憶される。ソースイメージ402はラスタライザ404に提供され、ラスタライザ404はソースイメージ402に対応するソースイメージビットマップ406を作成する。ソースイメージビットマップ406はプリンタ(示されていない)のプリントエンジン408による表現化に適する形式のディジタルイメージである。たとえば一つの実施態様においては、ソースイメージビットマップ406は、プリンタによって表現されるピクセルと1対1の対応関係をもつピクセルのアレイである。ラスタライザ404は、ソースイメージ402のアナログからディジタル形への変換に加えて、必要に応じてさまざまな中間工程を実施する。ラスタライザ404およびプリントエンジン408によって実施される機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ASIC、またはそれらの任意の組合せなどの任意の形式中で具体化される。さらに、ラスタライザおよびプリントエンジン408によって実行される機能は、コンピュータ、プリンタ、他の装置またはそれらの任意の組合せによって実行される。
プリントエンジン408はプリンタを制御して、ソースイメージビットマップ406を出力媒体上に表現イメージ410として表現する。とくにプリントヘッドエンジン408はプリントヘッドエレメント102a−dを制御して、ソースイメージビットマップ406中のピクセルを含むスポットを出力する。下記にさらに詳細に説明するように、本発明のさまざまな様相においては、プリントヘッドエレメント102a−dがアクティブにされる時間量をプリントエンジン408が制御して、印刷される各スポットに対してアクティブにされるプリントヘッドエレメントに一定のエネルギー量を供給する。
上記で説明したように、本発明の一つの様相においては、特定の時間間隔(プリントヘッドサイクルなど)の範囲内でアクティブである複数のサーマルプリントヘッドエレメントのそれぞれに、その時間間隔の間にアクティブであるプリントヘッド工程にかかわりなく、望まれるエネルギー量を供給する方法を提供する。図5を参照して、本発明の一つ実施態様において、特定のプリントヘッドサイクルの間に複数のアクティブなプリントヘッドエレメントのそれぞれに、望まれるエネルギー量を供給するために用いられるプロセス500のフローチャートを示す。プロセス500はたとえば、表現されるイメージ410(図4)の品質を改善するためにプリントエンジン408によって実行される。
表現イメージ410を出力媒体上に表現するために必要なあらかじめ決められた数のプリントヘッドサイクルがあると仮定する。必要なプリントヘッドサイクル数は、たとえばソースイメージビットマップ406中の行数またはその整数倍に等しい。図5を参照して、プロセス500は、表現イメージ410(工程502)を表現するために必要なそれぞれのプリントヘッドサイクルCごとにループに入る。
プロセス500は、現在のプリントヘッドサイクルCの間にアクティブにするプリントヘッド工程nを決定する(工程504)。数nはさまざまな方法のどれによって決定してもよい。たとえば上記で説明したように、従来のサーマルプリンタでは、一般にビットのアレイ(本明細書中では「プリントヘッドエレメントデータ」と呼ぶ)を用いて、特定のプリントヘッドサイクルの間にどのプリントヘッドエレメントをアクティブにして、どのプリントヘッドエレメントをアクティブにしないかを指定する。図3Bについて上記で示し説明したように、プリントヘッドエレメントデータを第一データバッファにロードし、次いでプリントヘッドサイクルの開始前にラッチ信号を用いて第二データバッファにラッチする。プリントヘッドサイクルの間アクティブにするプリントヘッド工程nは、プリントヘッドエレメントデータを第一データバッファにロードするとき、単に中のビット(1はアクティブなプリントヘッドエレメントに対応し、0はアクティブでないプリントヘッドエレメントに対応する)を合計することによって決められる。
図5に示すプロセス500が特定のプリントヘッドエレメントデータとの使用にも、特定の方法を用いて発生させたプリントヘッドエレメントデータとの使用にも限定されないことは明らかである。むしろ、プロセス500は任意の方法で発生させられ、または選ばれた任意のプリントヘッドエレメントデータ(すなわち、プリントヘッドサイクルCのそれぞれの間のアクティブなおよびアクティブでないプリントヘッドエレメントの任意の組合せ)とともに用いられる。
数nにもとづいてn個のアクティブなプリントヘッドエレメントに電力を供給するために、プロセス500は時間量tnを選ぶ(工程506)。tnを選ぶさまざまな技法をさらに詳しく下記に説明する。プロセス500は時間量tnの間にn個のアクティブなプリントヘッドエレメントに電力量Pnを提供する(工程508)。工程508はさまざまな方法の任意の一つの方法によって実行できる。たとえばプリントヘッドサイクルCの開始またはその近くで「真」になり、時間tnの間「真」にとどまり、それから「偽」になるストローブ信号を提供する。ストローブ信号および上記で説明した第二データバッファ中のそれぞれの値に対して、連続的に論理和を実行する。各プリントヘッドエレメントに対する論理和の結果を用いて、スイッチ206a−dの対応するスイッチを開き、または閉める。ここで結果「真」はスイッチが閉じられることを示し、結果「偽」はスイッチが開けられることを示す。その結果時間tnの間、アクティブなプリントヘッドエレメントのそれぞれに電力が供給される。
表現イメージ410の他の部分は、残るプリントヘッドサイクルCの間に工程502−506を繰り返すことによって表現される(工程510)。
たとえば図3Cを参照して、プロセス500の使用から生じた信号のグラフ342a−dを示す。図3Bについて上記で説明したように、グラフ342a−dの横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。グラフ342aおよび342bは、四つのプリントヘッドサイクル344a−dの間のプリントヘッドエレメント102aおよび102bのそれぞれの電圧降下のグラフである。例を示す目的で、プリントヘッドエレメント102aはプリントヘッドサイクル344a−bの間アクティブであり、プリントヘッドサイクル344c−dの間アクティブでないと仮定する。さらに例を目的として、プリントヘッドエレメント102bはプリントヘッドサイクル344a−dのそれぞれの間アクティブであると仮定する。グラフ342dは図3Bについて上記で説明したラッチ信号322bと同一である周期的なラッチ信号を表す。
グラフ342cは、プリントヘッドサイクル344a−dのそれぞれの間に、適切な時間量tnの間プリントヘッドエレメント102a−bに電力を供給するために、プロセス500とともに用いられるストローブ信号を表す。たとえばプリントヘッドエレメント102a−bが両方ともアクティブであるプリントヘッドサイクル344aを考慮する。ストローブ信号は持続時間tnの間「真」のままであり、n=2である。プリントヘッドサイクル344aの間、プリントヘッドエレメント102a−bはともにアクティブなので、対応するグラフ342a−bはストローブ信号が「真」である間はプリントヘッドエレメント102a−bの両方に電力が供給されることを示す。プリントヘッドサイクル344bの場合にも同じことが成立する。
プリントヘッドサイクル344cおよび344dに着目すると、プリントヘッドエレメント102b(グラフ342b)だけがアクティブである。その結果、プリントヘッドエレメント102bの電圧降下は、プリントヘッドサイクル344aおよび344bの電圧降下より高い。これらのプリントヘッドサイクルのそれぞれの間、ストローブ信号は持続時間tnの間「真」のままであり、n=1である。グラフ342cにも示すが、102bの電圧降下がより高いため、n=1のときのtnの値はn=2のときのtnの値より少ない。したがってプリントヘッドサイクル344c−dのそれぞれの間、ストローブ信号はプリントヘッドサイクル344a−bの間より短い期間の間「真」の状態にとどまる。したがってグラフ342bに示すように、プリントヘッドサイクル344c−dのそれぞれの間、プリントヘッドエレメント102bは、プリントヘッドサイクル344a−bの間より短い期間の間アクティブである。したがって、各プリントヘッドエレメントがアクティブであるプリントヘッドサイクル344a−dのそれぞれの間、プリントヘッドエレメント102a−bのそれぞれに一定のエネルギー量E0が提供されることが理解されるはずである。
図3A−3Cに図示される波形は正確な形状ではなく、例を示すために提供されるに過ぎないことは明らかである。たとえば、図3Cのグラフ342cに示されるストローブ信号の各パルスの持続時間は対応するtnの値に必ずしも比例しない。むしろ、グラフ342cに示すストローブ信号は、nの値が減少するとストローブ信号パルスの持続時間が減少することを示すために提供されるに過ぎない。
次に持続時間tn(図5、工程506)を選ぶさまざまな技法の例をさらに詳しく説明する。上記で述べたように、持続時間tnは特定の時間間隔(プリントヘッドサイクル等)の間に、その時間間隔の間アクティブであるプリントヘッド工程nにかかわることなく、アクティブな各プリントヘッドエレメントに同じエネルギー量を供給するように選ばれる。
望みの密度をもつスポットを作製するために、プリントヘッドサイクルの間にアクティブな各プリントヘッドエレメントが出力することを望まれる全エネルギー量をE0とする。Riがゼロであるときに各アクティブなプリントヘッドエレメントに供給される電力をP0、エネルギーE0を発生するためにプリントヘッドエレメントに電力P0を供給しなければならない時間量をt0とすれば、エネルギーE0は、式5で示される。
E0=P0t0
式 5
RiがゼロのときP0はV0 2/Rと等しいので、式5は式6に書き直せる。
n個のプリントヘッドエレメントが同時にアクティブなとき、単一のアクティブなプリントヘッドエレメントに供給される電力量をPnとする。したがって、Pnは式7で与えられる。
式7から分るように、同時にアクティブなプリントヘッド工程nが増えるとPnは減る。プリントヘッドサイクルの間にn個の同時にアクティブなプリントヘッドエレメントに電力が供給される時間量をtnとすれば、プリントヘッドサイクルの間にn個のプリントヘッドエレメントのそれぞれが発生する全エネルギー量Enは、式8で示される。
En=Pntn
式 8
本発明の一つの実施態様においては、各プリントヘッドサイクルの間、プリントヘッドサイクルの間にn個のアクティブなプリントヘッドエレメントのそれぞれが発生する全エネルギー量Enが、式9に示すように望まれるエネルギー量E0に等しくなるように、時間tnを選ぶ。
En=PnE0
式 9
言い換えると、プリントヘッドサイクルによるnの値(アクティブなプリントヘッド工程)の変化に関わらず、Enがどのプリントサイクルでも変わらないように時間tnを選ぶ。したがって式9を満たすように時間tnを選べば、各プリントヘッドサイクルの間に同時にアクティブなプリントヘッド工程nにかかわりなく、時間tnの間に各プリントヘッドエレメントに電力を供給することによって、アクティブな各プリントヘッドエレメントによって望まれるエネルギー量E0が発生される。
式9のEnおよびE0の値を置換して式10を得る。
tnについて解いて式11を得る。
図5について上記で説明したように、本発明の一つの実施態様においては、tnの値を選び(工程506)、時間tnの間ストローブ信号を「真」にする(工程508)ことによって、時間tnの間にn個のアクティブなプリントヘッドエレメントのそれぞれに電力Pnを供給し、その結果特定のプリントヘッドサイクルの間に、n個のアクティブなプリントヘッドエレメントのそれぞれに望ましいエネルギー量E0を供給する。たとえば工程506で式11を用いてtnの値を計算してもよいことは明らかである。この計算では入力としてn、t0、RiおよびRの値を用いる。この計算ではRiおよびRの個別の値ではなく、たとえばRi/Rの比を入力として用いてもよい。
上記の式11の使用等によって、稼動中(すなわち、プロセス500が実行されている間)に持続時間tnを計算して工程506(図5)を実行してもよいが、これは本発明の制限ではない。むしろ持続時間tnはさまざまな方法のどれによって計算され、発生され、選ばれてもよい。たとえばtnをもっと速く計算したければ、式11への近似を用いる。たとえばNが単一のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメントの最大数であり、比NRi/Rが非常に小さければ(たとえば、0.1未満)、式11の展開中の項(nRi/R)2は無視でき、その場合式11は式12で近似される。
たとえば本発明の一つの実施態様においては、比Ri/Rは近似的に10−5に等しく、その場合には式12を用いた方がtnの近似値を計算しやすい。
あるいは数nで索引付けしたtnの値を含む早見表をあらかじめ作成する。nの値を決め(図5、工程504)、早見表で照合することによって対応するtnの値を求める(工程506)。tnの可能なすべての値より少ない数値を含む早見表を用いたり、補間法を用いて早見表にないtnの値を評価したり、または数nを比例倍またはビットシフトして早見表の範囲に入るようにすることもある。今説明した技法のさまざまな組合せを用いてもよい。
上記で説明したさまざまな実施態様は以下の特徴を利用している。持続時間が一定のプリントヘッドサイクル、各プリントヘッドサイクルのほぼ初めに立ち上がる周期的なラッチ信号(グラフ342dに示されるラッチ信号など)、各プリントヘッドサイクルのほぼ初めに立ち上がり、時間tnの間ハイにとどまるストローブ信号。しかしこれらの特定の特徴は例を示すことを目的として提供されるに過ぎず、本発明の制限を構成しない。たとえば、今説明した特徴によると、ストローブ信号パルスの間の「不動作時間」が生じる(グラフ342cのストローブ信号のパルスの間のギャップで示されるように)。
本発明の一つの実施態様においては、ストローブ信号パルスを折りたたみ、先行するストローブ信号パルスが終了した直後にストローブ信号の各パルスが開始するようにして、この「不動作時間」を取り除く。これによって事実上一つの連続ストローブ信号を作り出す。さらに、各ラッチ信号パルスのピークが対応するストローブ信号パルスの起動と実質的に一致するようタイミングを調整した非周期性ラッチ信号を用いる。ストローブ信号パルスの間およびプリントヘッドエレメント「ON」時間の間の「不動作時間」はしたがって実質的にまたは完全に除かれる。この実施態様においては、各プリントヘッドエレメントの「ON時間」の持続時間(tn)は、それでも同時にアクティブなプリントヘッド工程の関数であり、各プリントヘッドエレメントに対するtnの値は上記で説明したと同様に計算される。本明細書中の他の箇所で説明した技法を用いてこの実施態様をどのように実行するか、当業者にとっては明らかであろう。
式11について上記で説明したようにtnは時間t0の関数である。t0の値はさまざまな方法のどれによって選んでもよい。本発明の一つの実施態様においては、プリントヘッドサイクルの一部分の間に、アクティブな各プリントヘッドエレメントに電力を供給する。この実施態様においては、したがってnのどのような値に対してもtnがプリントヘッドサイクルの持続時間Tcを超えないことが望ましい。単一のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッドエレメントの最大数をNとすると、tNとTcとの間の望ましい関係式を式13で示す。
tN≦Tc
式 13
式11からわかるように、tn=f(n)t0 であり、ここでf(n)の値は式14で示される。
式11にn=Nを代入することによりtNの値が得られ次の式となる。
t0について解いて式16を得る。
t0=ktN
式 16
ここでk=1/f(N)であり、式17のように展開される。
本明細書中においては値kを「補正率」と呼ぶ。式13を用いて式16を式18のように書き直すことができる。
t0≦kTc
式 18
したがって本発明の一つの実施態様においては、t0が式18を満足するようにt0の値を選ぶ。これは、(1)既知のNおよびRi/Rの値にもとづいてkの値を計算し、評価し、または他の方法で選ぶ、(2)kおよびTcの既知の値にもとづいてkTcを選ぶ、および(3)kTcより小さいか等しいt0の値を選び、その結果式18を満足することにより達成される。
一つの実施態様においては、式18のNRi/R項の値は近似的に0.1に等しい。これからkの値は近似的に0.826に等しくなる。Tcが1秒の1/300(近似的に0.00333)に等しければ、kTcは近似的に0.00275秒に等しい。したがって式13を満たすように0.00275秒未満のt0の任意の値を選び、それによって、プリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程nにかかわりなく、プリントヘッドサイクルの持続時間より長い時間、任意のプリントヘッドエレメントに電力が供給されないことを確実にする。
今説明したばかりのt0の値を選ぶ技法は例を示すために提供されるに過ぎず、本発明の制限を構成しないことは明らかである。むしろ本願の請求項の範囲に属する他の方法でt0の値を選んでもよい。
上記で説明したように式11を用いてn、t0、RiおよびRの値からtnを計算する。nおよびt0の値を得る技法の例を上記で説明した。tnを計算するという目的について、残るはRiおよびRの値を得ること、または本明細書中ではrと呼ばれる比Ri/Rの値を得ることだけである。次にRi、R、および比rの値を得る技法の例をさらに詳しく説明する。
本発明の一つの実施態様においては、標準的な技法を用いて回路200中でRiおよびRの値を測定する、または回路200についての知識をもとにあらかじめ知ることができる。比rはRiをRで割ることによって容易に知られる。
しかし比Ri/Rが既知なら、式11を用いるtnの計算では個々のRiおよびRの値を知る必要はない。rが比Ri/Rであることを思い出せば式11は式19として書き直せる。
tn=(1+nr)2t0
式 19
本発明の一つの実施態様においては、出力媒体上に表現したターゲットを用いてrの値またはその近似値を得る。出力ターゲットを目視検査し、目視検査中の観察結果からrの値を導く。
より詳しくは、図6Aを参照して、本発明の一つの実施態様によるソースターゲット600を示す。ソースターゲット600は、たとえばランダムアクセスメモリ(RAM)等のコンピュータ可読メモリ中、またはハードディスクドライブ上のファイル中に記憶されるディジタルイメージである。ソースターゲット600は、したがってピクセルの二次元のアレイを含む。本発明の一つの実施態様においては、ターゲット600はグレイスケールイメージである。この場合ターゲット600中の各ピクセルのディジタル数値はグレイのレベルを指定する。たとえばターゲット600が8ビットグレイスケールイメージなら、各ピクセルは0から255の範囲のグレイスケールの値をもつ。
図6A中のターゲット600を示すために用いたクロスハッチパターンは、255中128のグレイスケール値等、グレイの特定のレベルを表す。図6Aで示すように、ソースターゲット600の縞模様のバーの全てのピクセルは同じディジタル数値をもち、グレイの単一のセードを指定する。しかし、下記にさらに詳細に説明するように、ソースターゲット600がサーマルプリンタによって出力媒体上に出力ターゲットとして表現されるとき、ターゲット600のすべてのピクセルがグレイの同じセードであるように見えないことがある。むしろ、あるピクセルは他より暗くまたは明るく見えることがある。しかし、図6Aに示すソースターゲット600は、ソースターゲット600が全てのピクセルが同じディジタル数値をもつディジタルイメージであることを示すために、グレイの単一セードを用いて示す。
ソースターゲット600は中央に長細い一本の縦のバー602、および垂直バー602の横に並ぶ一連の水平バー604a−mを含む。垂直バー602および水平バー604a−mのそれぞれはピクセルの二次元アレイである。バー602および604a−mの幅および高さは任意であるが、出力媒体上に表現されたときに人間の眼に明瞭に見えるほど十分に大きくなければならない。さらに、図8について以下に記す方法で好適に用いられるソースターゲット600の表現された姿は、水平バー604a−mが垂直バーより実質的に広ければ(したがって、各行中にはるかに多いピクセルを含めば)、さらに分かりやすい。
上記で説明したようにターゲットソース600はディジタルイメージである。本発明の一つの実施態様においては、図7Aに示すプロセス700を用いて、サーマルプリンタによってソースターゲット600を出力媒体上に出力ターゲットとして表現する。例を目的として、図6Aはその縦軸をサーマルプリンタの遅い走査方向と平行にして配置されている。その結果ソースターゲット600の水平に隣接するピクセルは、異なるプリントヘッドエレメントによって表現される。プロセス700は、DutyCycleという名前の変数の値を100(工程702)に設定することによって始まる。
図6Aに示すように、ターゲット600は一連の水平セグメント610a−fを含む。水平セグメント610a−fは、第一の区分606a−fおよび第二の区分608a−fを含む。たとえば水平セグメント610aは、(1)二つの水平バー604a−b、および二つの水平バー604a−bの間に位置する垂直バー602の部分602aを含む第一区分606a、および(2)二つの水平バー604a−bの間に位置しない垂直バー602の部分602bを含む第二区分608aを含む。残る水平セグメント610b−fは、同様な第一および第二区分(図の容易さのために図6Aでは別個のラベルをつけていない)を含む。
プロセス700はソースターゲット600の各水平セグメントHに対してループに入る。100%(工程706)等のあらかじめ決めたデューティーサイクルを用いて水平セグメントHの第一区分を印刷する。本明細書中で用いられる用語「デューティーサイクル」は、一プリントヘッドサイクルの時間に対するスポットを印刷するために加熱エレメントをアクティブにする時間量を意味する。これは、
として表される。
デューティーサイクルはたとえばプリントヘッドサイクルの百分率として表してもよい。たとえば100%のデューティーサイクルは、プリントヘッドサイクルの全持続時間を指す。したがって工程706で水平セグメントHの第一区分を印刷するとき、アクティブなプリントヘッドエレメントは各プリントヘッドサイクルの100%の間アクティブにされる。
水平セグメントHの第二区分(すなわち、水平バーを含まない区分)は、変数DutyCycleと等しいデューティーサイクルを用いて印刷される(工程708)。DutyCycleの値を5%またはあらかじめ決めた他の値の分だけ減らす(工程710)。その結果、ソースターゲット600の第二区分608a−fはターゲット600の下に行くにつれて減少するデューティーサイクルを用いて印刷される。ソースターゲット600の残りの水平セグメントについて工程706−710を繰り返す(工程712)。図6Bを参照して、サーマルプリンタによってプロセス700を用いて出力媒体上に表現したときに表れる出力ターゲット620を示す。
しばらく図6Aに戻ると、第二水平区分608a−fの各行には第一水平区分606a−fの各行よりも多くのグレイピクセルがあることが分る。その結果第一区分606a−fが印刷されるときには、第二区分608a−fが印刷されるときより多くのプリントヘッドエレメントが同時にアクティブになる。したがって上記の議論にもとづいて、印刷されるとき第一区分606a−fのそれぞれは、同じデューティーサイクルを用いて印刷される第二区分608a−fの対応するものよりより低い顔料密度をもち、したがってより明るく見えると予測される。
出力媒体上に表現されると、垂直バー602(図6A)は交互に表れる第一の正方形632a−fおよび第二の正方形634a−fからなる垂直バー622(図6B)に見える。第二正方形634a−fは、出力ターゲット620の上から下へ行くにつれて連続的に次第に明るくなって見える。たとえば第二正方形634cは第二正方形634bより明るく、第二正方形634bは今度は634a第二正方形より明るい。次第に明るくなるセードを、図6Bではさまざまなクロスハッチパターンで表す。第二正方形634a−fの明るさが増大したのは、プロセス700で第二区分を続けてそれぞれ印刷するために、減少してゆくデューティーサイクルを用いた結果である。
次に、水平セグメント610a−f(図6A)の第一区分606a−fを表現した結果である水平セグメント630a−f(図6B)の第一区分626a−fに着目する。第一区分606a−f(図6A)は100%デューティーサイクルを用いて表現されたが、対応する第一区分626a−f(図6B)は、共通電圧効果がなかったら表現されたであろうトーンより明るく見える。プリントヘッドエレメントのエネルギー出力は式11によって対応して減少し、密度のより低い(すなわち、より明るい)出力を生じた。
水平セグメント610a−fの第一区分606a−f(図6A)の役割を、第二区分608a−fと交換してもよいことは明らかであろう。さらに詳しくは、全ての第二区分を100%より少ない(たとえば80%)一定のデューティーサイクルを用いて印刷し、デューティーサイクルを第二区分608a−fのデューティーサイクル値から始めて、一定の増分であらかじめ決めたサイクル中を100%に向けて増大させながら第一区分606a−fを印刷する。
rの値を見つけるため、下記に説明するプロセスを用いて中央バー602を目視検査し、正方形634a−f(変化するセード)のどれが正方形632a−f(一定のセード)にマッチするか見つける。隣接する正方形の間でセードの差が知覚できないとき、十分に良好なマッチが見つかる。マッチが見つからなければ、プロセス700のDutyCycleの新しい開始値および工程710中でDutyCycleを変えるもっと良い増分の大きさを見積もる。
隣接する正方形の間で視覚マッチが見つかれば、隣接する正方形がパルスあたり同じエネルギーで印刷されたことを示す。式7および式8を用いてこの同等関係を
と書ける。ここで、nは第二正方形634a−f中で同時にアクティブな工程、Nは第一正方形632a−f中で同時にアクティブな工程、fは小数で表したマッチする正方形のパーセントデューティーサイクルである。式20をrについて解いて次の式を得る。
上記で説明したように正方形632a−fおよび634a−fの役割を交換すると、当業者には明白である方法によって式21を変形する必要があることは明らかであろう。
ソースターゲット600を表現する別の技法を下記に説明する。本発明の別の実施態様においては、図7Bに示すプロセス720を用いたサーマルプリンタによって、ソースターゲット600を出力媒体上に出力ターゲットとして表現する。プロセス720はデューティーサイクルの直接変更ではなく、rの値の変更によって水平セグメント630a−fを印刷するために用いるデューティーサイクルを変えることを除けばプロセス700に似ている。
より詳しくは、プロセス720はrの値を最大値MAX(工程722)に設定することによって始まる。値MAXは任意の方法で選んでよいが、回路200についての任意の既存の知識にもとづき、rに対して予測される最大値より大きいように選ぶ方がよい。rのこの最大値を用いて、これにプリントヘッド工程N、プリントヘッドサイクルの時間Tcおよび式17および18についての知識を加え、プロセス用のt0の値を計算する。プロセス720はソースターゲット600の各水平セグメントHに対してループに入る。既知のnおよびt0の値およびrの現在値にもとづくデューティーサイクルを用いて、水平セグメントHの両方の部分を印刷する(工程726および728)。上記で説明したように、たとえば式11を用いてデューティーサイクルの持続時間tnを計算する。任意の方法で選ばれるあらかじめ決められた値INCだけrの値を減らす(工程730)。値INCはたとえば、水平セグメント630a−fを印刷するために用いられるrの値が、rの最適値を含む可能性の高いrの値の範囲に入るように選ぶ。ソースターゲット600の残る水平セグメントに対して工程726−730を繰り返す(工程732)。プロセス700および720によって表現した630a−fの第一および第二区分の両方の比暗度(グレイレベル)は同じでないことがあるが、プロセス720によって発生した出力ターゲットは、大体において図6Bに示す出力ターゲット620に類似したものとなる。
図8を参照して、本発明の一つの実施態様においては、出力ターゲット620の特性はプロセス800を用いて比r(式11によって用いられる)を評価するために用いられる。プロセス700(図7A)などによって、または上記(工程802)で説明したプロセス720(図7B)によって出力ターゲット620を表現する。トーン(例えば黒度)が第一正方形632a−fのトーンにもっともよくマッチする出力ターゲット620の第二正方形を同定する(工程804)。この同定はたとえば出力ターゲット620を目視検査して、トーンが第一正方形632a−fのトーンにもっともよくマッチするように見える第二正方形を同定することによって実行される。
出力ターゲット620の第一正方形632a−fおよび第二正方形634a−fの配置を用いて、目視検査によるこの認識を容易にしてもよい。たとえば、出力ターゲット620の最上部では、第一正方形632aが対応する第二正方形634aより明るく、第二正方形634aは非常に暗いことに注意されたい。出力ターゲット620の最下部に着目すると状況は逆になり、第一正方形632fは第二正方形634fより暗い。第二正方形634a−fは出力ターゲット620の最上部から最下部まで連続的に明るくなるので、他のどの第二正方形よりも第一正方形の黒度によくマッチする黒度をもつ第二正方形があるはずである。第一正方形632a−fおよび第二正方形634a−fの配置がこの第二正方形の目視認識を容易にする。目視検査者は、たとえば出力ターゲット620の最上部で第二正方形634aの暗さを検査して、その直ぐ上下の第一正方形632aおよび632bの黒度と比較することによって始めてもよい。目視検査者は、第一正方形632a−fの黒度にもっともよくマッチする黒度をもつ第二正方形を同定するまで、出力ターゲット620の下方に移動し、第二正方形634a−fのそれぞれの黒度をその上下の第一正方形の黒度と比較することによって続行できる。第一正方形632a−fの均一な黒度(第二正方形634a−fの黒度を比較する基準点として役立つ)、第二正方形634a−fの低下して行く黒度、および第一正方形632a−fへの第二正方形634a−fの物理的な近さによって、黒度が第一正方形632a−fの黒度にもっとも近くマッチする第二正方形を選ぶプロセスは容易になる。
一旦第二正方形を同定すれば(たとえば今説明した技法を用いることにより)、同定した第二正方形をもとにrの値を選ぶ(工程806)。たとえば、出力ターゲット620がプロセス720(図7B)によって表現されたなら、同定された第二正方形を印刷するために用いられたrの値は既知の値(工程728を見よ)である。したがって、工程806はプロセス720の工程728中で第二正方形を印刷するために用いられたrの値を同定することによって実行される。たとえば、第二正方形634a−fはゼロで始まり順番に番号付けられていると仮定する(たとえば、第二正方形634aは正方形ゼロ、第二正方形634bは正方形一など)。工程804でm番目の正方形を選び出したとすれば工程806で選ばれる対応するrの値はMAX−(m×INC)に等しい(ここでMAXおよびINCはプロセス720によって用いられる値である)。
図6Aおよび6Bはそれぞれ、ソースターゲット600および出力ターゲット620の特定の例を示す。しかし、これらのターゲット600および620は例を目的として示されるに過ぎず、本発明の限定を構成しないことは明らかであろう。むしろ、rの値を選ぶために用いられるさまざまな他のターゲットが本願の請求項の範囲内にある。
さらに一般的に本発明のさまざまな実施態様において用いられるソースおよび出力ターゲットは次の特徴を有する。一般に、ソースターゲット(たとえばソースターゲット600)は、出力媒体上に出力ターゲット(たとえば出力ターゲット620)として表現されるディジタルイメージである。ソースターゲットは、あらかじめ決められたディジタル数値をもつ第一の複数のソース区域(たとえば第一区分606a−f)を含む。第一の複数のソース区域を出力媒体上に第一の複数の出力区域(たとえば第一区分626a−f)として表現するとき、第一のあらかじめ決められた加熱工程がアクティブであるように第一の複数のソース区域のピクセルを配置する。一定のデューティーサイクルを用いて第一の複数のソース区域を出力媒体上に表現する(たとえば、上記の工程706および726について説明したように)。第一の複数のソース区域のピクセルはあらかじめ決められた同じディジタル数値をもち、同じ数のアクティブな加熱エレメントを用いて表現され、同じデューティーサイクルを用いて表現されるので、複数の出力区域は一定の黒度をもち、視覚的な基準点として役立つ。
ソースターゲットはまた、やはりあらかじめ決められたディジタル量をもつ第二の複数のソース区域(たとえば第二区分608a−f)を含む。第二の複数のソース区域を出力媒体上に第二の複数の出力区域として表現するとき、加熱エレメントの第二のあらかじめ決められた数がアクティブであるように第二の複数のソース区域のピクセルを配置する。複数のデューティーサイクルを用いて第二の複数のソース区域を出力媒体上に表現する(たとえば工程708および728について上記に説明したように)。第二の複数のソース区域はあらかじめ決められた同じディジタル数値をもち、アクティブな加熱エレメントの同じ数を用いて表現されるが、複数のデューティーサイクルを用いて表現されるので、第二の複数の出力区域は変動する黒度をもつことになる。
加熱エレメントの第一および第二のあらかじめ決められた数は等しくないように選ばれる。たとえば、本発明の一つの実施態様においては、加熱エレメントの第一のあらかじめ決められた数(すなわち、第一の複数のソース区域を表現するときアクティブである加熱工程)は加熱エレメントの第二のあらかじめ決められた数(すなわち、第二の複数のソース区域を表現するときアクティブである加熱工程)より実質的に大きいように選ばれる。
さらに、区域604a−mのあらかじめ決められた加熱工程を必ずしも同じにする必要はない。加熱エレメントの異なる数を使用すると、たとえば早見表手法によってプロセス700または720の使用が容易になる。
黒度が第一の複数の出力区域の黒度にもっともよくマッチする第二の複数の出力区域の一つを同定するために、出力ターゲットを目視点検する(たとえば、工程804について上記に説明したように)ことがある。そのような同定を容易にするために第二の複数の出力区域を第一の複数の出力区域の近くに配置することがある。説明した特定の実施態様について上記により詳細に説明したように、選んだ第二の複数の出力区域の一つをもとに比rを決定する。
上記で説明した例では一定のデューティーサイクルを用いて第一区分606a−fを表現し、変動するデューティーサイクルを用いて第二区分608a−fを表現したが、状況は逆でもよい。言い換えると、変動するデューティーサイクルを用いて第一区分606a−fを表現し、一定のデューティーサイクルを用いて第二区分608a−fを表現してもよい。
さらに、上記の例ではグレイスケールソースおよび出力ターゲットについて説明したが、これは本発明の限定ではない。むしろソースおよび出力ターゲットはカラーイメージであってよく、その場合には上のソースおよび出力ターゲットの説明中の「黒度」を用語「トーン」で置き換える。
上記で説明し下記でさらに詳しく説明する本発明の実施態様のさまざまな特長が多くの長所を提供することは明らかである。
各プリントヘッドサイクルの間、アクティブな各プリントヘッドエレメントによって出力媒体上に供給されるエネルギー量を一定にすることによって、本発明のさまざまな実施態様を用いて、表現されるソースイメージ中のトーンをより正確に表すトーン(たとえばグレイレベル)を有する出力を表現する。特定のプリントヘッドサイクルの間のアクティブなプリントヘッドエレメントによるエネルギー出力は、プリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程に依存しないので、本発明のさまざまな実施態様は、同時にアクティブなプリントヘッド工程にもとづく望ましくない出力変動を回避する。
上記で説明したソースおよび出力ターゲットのさまざまな実施態様を好適に用いて、簡単な目視検査プロセスによって比rを選ぶ。上記で説明したように出力ターゲットを目視検査して、トーンがもっともよくマッチするターゲット中の二つの区域についての検査係の視覚の認識にもとづいてrの値を得る。この技法はサーマルプリンタのハードウェアに対して機械的または電気的なテストを行う必要なしに迅速に適用され、それでも正確な結果を得てプロセスをより単純化する。
先に述べたように、従来のシステムは、多くのプリントヘッドエレメントがアクティブなときに減少するエネルギー出力を、多くのプリントヘッドエレメントが同時にアクティブなときに印刷されるピクセルのグレイレベルを上げることによって補償しようとする。一般に各ピクセルに対してより多くのスポットを印刷することによって、すなわち、対応するプリントヘッドをより多くのプリントヘッドサイクル数の間アクティブにすることによって、ピクセルのグレイレベルを上げる。しかし、この技法はサーマルプリンタによって用いられる他の技法と干渉したり、適合しなかったりすることがある。ある種のサーマルプリンタでは特定のプリントヘッドサイクルの間にアクティブであるプリントヘッド工程に限界がある。その結果、サーマルプリンタによってディジタルイメージを印刷するために「ピクセル交替法」と呼ばれる技法が用いられることがある。この技法を用いると、連続したプリントヘッドサイクルのそれぞれの間に、プリントヘッドエレメントのばらばらのサブセットを総当り方式でアクティブにする。各サブセットは許されるプリントヘッドエレメントの最大数より決して多くないプリントヘッドエレメントを含み、その結果上記の要件を満たす。
各ピクセルに対してスポットを追加して印刷することによってピクセルのグレイレベルを上げる上記の技法は、特定のプリントヘッドサイクルの間に、プリントヘッドエレメントがそのプリントヘッドサイクルの間にプリントヘッドエレメントの指定のサブセット中にないにもかかわらず、プリントヘッドエレメントがアクティブであることを要求するので、ピクセル交替法を妨げる場合がある。
対照的に、本発明のさまざまな実施態様は特定のプリントヘッドサイクルの間に、または複数のプリントヘッドサイクルにわたって、アクティブなプリントヘッドエレメントの任意の組合せとともに用いられる。このような実施態様は、したがって、ピクセル交替法とともに、任意の変化形のハーフトーンパターンとの組合せ、およびさらに一般的にピクセルの任意のパターンと組み合せて機能する。このような実施態様は、したがって、サーマルプリンタ中で便利に用いられる非常に多様なその他の技法と干渉することなく、プリント出力品質を改善するために好適に用いられる。
上記でさまざまな実施態様について本発明を説明した。以下を含み、しかし以下には限定されないさまざまなその他の実施態様もまた本発明の請求項の範囲内にある。
上記でプリントヘッドエレメント抵抗器208a−dを示して同じ抵抗Rをもつとして説明したが、これが本発明の限定を構成しないことは明らかである。むしろ、プリントヘッドエレメント抵抗器208a−dは異なる抵抗を有してよく、その場合には上記で説明した計算は、当業者には明らかなように、適切に変更される。
本明細書中において二値式サーマルプリンタに関する実施態様を説明したが、これが本発明の限定とはならないことは明らかである。むしろ、上記で説明した技法はサーマルプリンタ以外のプリンタ、および二値式プリンタ以外のプリンタにも適用される。
本明細書中においては、プリントヘッド回路200についてさまざまな実施態様を説明したが、これは純粋に例を示すためであり、本発明の限定を構成するものではない。むしろ、構造が図2に示される回路200に類似する回路を含むサーマルプリンタ以外の装置に、本明細書中で説明する技法を適用してもよい。
上記で説明したさまざまな例は、特定のプリントヘッドサイクルの間に同時にアクティブであるプリントヘッドエレメントを参照する。しかし、任意の時間間隔の間に特定の数のプリントヘッドエレメントまたは他の回路構成部分に望まれる電力量を供給するために、本明細書中で説明した技法を用いてもよいことは明らかである。本明細書中の説明のさまざまな部分では、単一のプリントヘッドサイクルをそのような時間間隔の一例として用いたが、これは本発明の限定でない。むしろ、時間間隔はプリントヘッドサイクルより長くても短くてもよい。
一般に、上記で説明した技法はたとえば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組合せによって実装される。上記で説明した技法は、プロセッサ、プロセッサによって可読な記憶媒体(たとえば揮発メモリおよび不揮発メモリおよび/または記憶装置を含む)、少なくとも一つの入力装置、および少なくとも一つの出力装置を含むプログラム可能なコンピュータおよび/またはプリンタ上で実行される一つ以上のコンピュータプログラム中に実装される。入力装置を用いて入力されたデータに、プログラムコードを適用して本明細書中で説明した機能を実行し、出力情報を発生させる。出力情報は一つ以上の出力装置に出力される。
本発明のさまざまな実施態様に用いるために適当なプリンタは、一般にプリントエンジンおよびプリンタコントローラを含む。プリンタコントローラはホストコンピューターからプリントデータを受け取り、プリントデータにもとづいて印刷される論理的ハーフトーンなどのページ情報を発生する。プリンタコントローラは印刷するためにページ情報をプリントエンジンに送る。プリントエンジンはページ情報によって指定されるイメージの出力媒体上への物理的印刷を実行する。
本明細書中で説明した要素および構成部分をさらに追加的な構成部分に分割し、または同じ機能を実行するために結合して、より少数の構成部分を形成してもよい。
下記の請求項の範囲内の各コンピュータプログラムは、アセンブリ言語、機械語、高レベル手続きプログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語等、任意のプログラミング言語に実装される。プログラミング言語は、コンパイラ型プログラミング言語でもよく、あるいはインタープリタ型プログラミング言語でもよい。
コンピュータプロセッサによって実行するために、機械可読記憶装置中に明示的に具体化されたコンピュータプログラム製品中に、各コンピュータプログラムを実装してもよい。コンピュータ可読媒体上に明示的に具体化され、入力によって動作し、出力を発生することによって本発明の機能を実行するプログラムを実行するコンピュータプロセッサによって、本発明の方法の工程を実行してもよい。
特定の実施態様について上記に本発明を説明したが、前述の実施態様は説明のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定することも定義することもないことが理解されよう。下記の請求項の範囲によって定義される本発明の範囲内にはその他の実施態様もまた含まれる。以下の請求項の範囲内に属するその他の実施態様は以下を含むが、以下に限定されない。