JP2005523258A - 殺生物化合物とその調製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、一般式(I)の新規な殺菌化合物に関する(ただしRはHまたはCH3である)。特に興味深いのは2つの異性体であり、それぞれマラヤマイシンA、デスメチルマラヤマイシンAと名づける。これら異性体は、ストレプトミセス・マレーシエンシスからのこれまでに知られていなかった株を制御条件下で増殖させることによって調製でき、NMRと質量分析のデータによってその特徴がわかる。これら異性体は殺菌活性(抗真菌活性、抗ウイルス活性、抗がん活性など)を持っているため、農業、園芸、動物とヒトの健康において特に興味深い。
【化1】

Description

本発明は、新規な殺生物化合物とその調製方法に関する。さらに詳細には、本発明は、ストレプトミセスの培養によって得られる殺生物化合物;その化合物を利用した殺生物剤;その化合物を殺生物に有効な量含む組成物;その化合物を利用して病原体と闘う方法;新規なストレプトミセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)およびその変異体に関する。
本発明の第1の特徴によると、一般式(I)で表わされる新しい殺生物化合物:
Figure 2005523258
が提供される(ただしRは、HまたはCH3である)。
この化合物でRがHになっているものとRがCH3になっているものは、以前に単離されたことのない新規な化合物である。これら化合物の特徴は、この明細書の実施例に示したNMRと質量分析のデータに現われている。これら化合物は、ストレプトミセス・マライシエンシス種からの以前は知られていなかった微生物株を制御された条件下で増殖させることによって調製できる。本発明の化合物は、殺生物活性、中でも抗真菌活性、抗ウイルス活性、抗がん活性を持っており、農業、園芸、動物およびヒトの健康への利用が特に興味深い。これら化合物は、別の活性な化合物を調製する際の中間体としても利用できる。一般式(I)の化合物は、この明細書に記載したように、発酵によって取得し、実質的に純粋な状態で回収することができる。
一般式(I)の化合物は6つの不斉中心を持っているため、1種類以上の異性体が存在する可能性がある。本発明には、異性体として、個別の異性体と、1種類以上の異性体の混合物が、すべて含まれる。本発明の化合物にはいくつかの互変形態が存在する可能性があり、そのすべての形態が本発明に含まれる。
特に興味深いのは、一般式(II)の化合物と一般式(III)の化合物である。この明細書では、それをそれぞれマラヤマイシンA、デスメチルマラヤマイシンAと呼ぶ。
Figure 2005523258
一般式(II)の化合物と一般式(III)の化合物には、別の互変形態が存在するこ可能性がある。本発明にはその互変形態も含まれる。
一般式(I)の化合物は殺生物剤である。この化合物は活性な抗ウイルス剤であり、例えばエイズに付随するヒト免疫不全ウイルスに対する抗ウイルス活性を示す。この化合物は、抗がん特性を有することもわかっている。この化合物は、例えばがん細胞の増殖に対して抑制効果を示す。この明細書では、“殺生物”という用語は病原体に対する活性を意味するときに使用し、抗ウイルス活性、抗真菌活性、抗がん活性がこの用語に含まれる。特に植物の病原性真菌に対し、この化合物を殺真菌剤として使用することが特に興味深い。
一般式(I)の化合物は活性な殺真菌剤であり、以下に示す植物の病原体のうちの1種類以上を制御するのに使用できる:イネとコムギに取り付くいもち病菌(マグナポルテ・グリセア)と、他の宿主に取り付くピリキュラリア種;コムギに取り付くプシニア・トリチシナ(またはレコンディタ)、プシニア・ストリイフォルミスならびに他のさび菌、オオムギに取り付くプシニア・ホルデイ、プシニア・ストリイフォルミスならびに他のさび菌、他の宿主(例えば、芝生、ライムギ、コーヒー、ナシ、リンゴ、ピーナツ、テンサイ、野菜、装飾植物)に取り付くさび菌;ウリ類(例えばメロン)に取り付くエリシフェ・シコラセアルム;オオムギ、コムギ、ライムギ、芝生に取り付くブルメリア(またはエリシフェ)・グラミニス(うどん粉病菌)と、さまざまな宿主に取り付く他のうどん粉病菌(例えば、ホップに取り付くスフェロテカ・マキュラリス、ウリ類(例えばキュウリ)に取り付くスフェロテカ・フュスカ(スフェロテカ・フリギネア)、トマト、ナス、ピーマンに取り付くルベイルラ・タウリカ、リンゴに取り付くポドスフェラ・レウコトリチャ、ブドウの木に取り付くアンシヌラ・ネカトール);穀類(例えばコムギやオオムギなど)、芝生ならびに他の宿主に取り付くコクリオボルス種、ヘルミントスポリウム種、ドレクスレラ種(ピレノフォラ種)、リンコスポリウム種、マイコスファレラ・グラミニコラ(ゼプトリア・トリティシ)、フェオスフェリア・ノドルム(スタゴノスポラ・ノドルムまたはゼプトリア・ノドルム)、シュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス、ガエウマノミセス・グラミニス;ピーナツに取り付くセルコスポラ・アラキディコラとセルコスポリジウム・ペルソナータム、他の宿主(例えばテンサイ、バナナ、ダイズ、イネ)に取り付く他のセルコスポラ種;トマト、イチゴ、野菜、ブドウの木ならびに他の宿主に取り付くボトリチス・シネレア(灰色かび病菌)と、他の宿主に取り付く他のボトリチス種;野菜(例えばニンジン)、アブラナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、穀類(例えばコムギ)ならびに他の宿主に取り付くアルターナリア種;リンゴ、ナシ、核果、木になるナッツならびに他の宿主に取り付くベントゥリア種(ベンチュリア・イネクアリス(赤かび病菌)を含む);穀類(例えばコムギ)とトマトを含む多彩な宿主に取り付くクラドスポリウム種;核果、木になるナッツならびに他の宿主に取り付くモニリニア種;トマト、芝生、コムギ、ウリ類ならびに他の宿主に取り付くジジメラ種;アブラナ、芝生、イネ、ジャガイモ、コムギならびに他の宿主に取り付くフォーマ種;コムギ、挽材ならびに他の宿主に取り付くアスペルギルス種とオーレオバシジウム種;エンドウマメ、コムギ、オオムギならびに他の宿主に取り付くアスコキイタ種;リンゴ、ナシ、タマネギならびに他の宿主に取り付くステムフィリウム種(プレオスポラ種);リンゴとナシに取り付く夏季の病の病原体(例えば炭疸病(グロメレラ・シンギュラタ)、または黒斑病または白星病(ボトリオスフェリア・オブチューサ)、ブルックス果実斑点病(マイコスファレラ・ポミ)、シーダーアップルさび病(ギムノスポランジウム・ジュニペリ-ビルジニアナエ)、すす点病(グレオデス・ポミゲナ)、すす点病(シゾスリウム・ポミ)、白腐れ病(ボトリオスフェリア・ドシデア));ブドウの木に取り付くプラスモパラ・ビチコラ;レタスに取り付くブレミア・ラクトゥカエなどの他のべと病菌と、ダイズ、タバコ、タマネギならびに他の宿主に取り付くペロノスポラ種と、ホップに取り付くシュードペロノスポラ・ヒュームリと、ウリ類に取り付くシュードペロノスポラ・キュベンシス;芝生ならびに他の宿主に取り付くクサレカビ(ピチウム・アルティマムを含む);ジャガイモとトマトに取り付くフィトフトラ・インフェスタンスと、野菜、イチゴ、アボカド、コショウ、装飾植物、タバコ、カカオならびに他の宿主に取り付く他のエキビョウキン;イネと芝生に取り付くサナテフォラス・キュキュメリスと、さまざまな宿主(例えばコムギ、オオムギ、ピーナツ、野菜、ワタ、芝生)に取り付くリゾクトーニア種;芝生、ピーナツ、ジャガイモ、アブラナならびに他の宿主に取り付くスクレロチニア種;芝生、ピーナツならびに他の宿主に取り付くスクレロチウム種;イネに取り付くジベレラ・フジクロイ;多彩な宿主(例えば芝生、コーヒー、野菜)に取り付くコレトトリチュム種;芝生に取り付くレチサリア・フェシフォルミス;バナナ、ピーナツ、柑橘類、ペカン、パパイヤならびに他の宿主に取り付くマイコスフェレラ種;柑橘類、ダイズ、メロン、ナシ、ルピナスならびに他の宿主に取り付くジアポルテ種;柑橘類、ブドウの木、オリーブ、ペカン、バラならびに他の宿主に取り付くエルシネエ種;多彩な宿主(例えばホップ、ジャガイモ、トマト)に取り付くバーチシリウム種;アブラナならびに他の宿主に取り付くピレノペジザ種;カカオに取り付いて導管穂枯れ病を起こすオンコバシジウム・テオブロマエ;多彩な宿主、中でもコムギ、オオムギ、芝生、トウモロコシに取り付くフザリウム種、チフラ種、ミクロドキウム・ニバレ、ウスチラゴ種、ウロシスチス種、ナマグサクロホキン、クラビセプス・プルプレア;テンサイ、オオムギならびに他の宿主に取り付くラムラリア種;特に果実における収穫後の病気の病原体(例えばオレンジに取り付くペニシリウム・ディジターツム、ペニシリウム・イタリキュム、トリコデルマ・ビリデ、バナナに取り付くコレトトリチュム・ムサエ、グレオスポリウム・ムサルム、ブドウに取り付くボトリチス・シネレア);ブドウの木に対する他の病原菌、特にユーチパ・ラタ、ギグナルジア・ビドウェリイ、フェリヌス・イグニアルス、フォモプシス・ビチコラ、シュードペジザ・トラケイフィラ、ステレウム・ヒルストゥム;木に取り付く他の病原菌(例えばロフォデルミウム・セディチオスム)または挽材に取り付く他の病原菌、中でもセファロアスクス・フラグランス、セラトシスチス種、オフィオストマ・ピセアエ、ペニシリウム種、トリコデルマ・シュードコニンギイ、トリコデルマ・ビリデ、トリコデルマ・ハルジアヌム、アスペルギルス・ニジェール、レプトグラフィウム・リンドベルギ、オーレオバシジウム・プルランス;ウイルス病のベクターとなる真菌(例えばオオムギ黄筋モザイクウイルス(BYMV)として穀類に取り付くポリミクサ・グラミニス、テンサイにそう根病のベクターとして取り付くポリミキサ・ベタエ)。
一般式(I)の化合物は、1種類以上の真菌に対して活性になるため、植物組織内で求頂的、求基的、局所的に動くことができる。
したがって本発明により、植物病原性真菌と闘う方法または植物病原性真菌を制御する方法であって、一般式(I)の化合物または一般式(I)の化合物を含む組成物を、真菌を殺すのに有効な量だけ、植物、植物の種子、植物または種子の部位、土壌、他の任意の増殖培地(例えば栄養溶液)のいずれかに適用する操作を含む方法が提供される。
この明細書では、“植物”という用語に、苗、潅木、木が含まれる。さらに、本発明の殺真菌法には、保護処理、治療処理、全身処理、撲滅処理、抗胞子形成処理が含まれる。
一般式(I)の化合物は、組成物の形態で、農業、園芸、芝生を対象として使用することが好ましい。
一般式(I)の化合物を、植物、植物の種子、植物または種子の部位、土、他の任意の増殖培地のいずれかに適用するには、一般式(I)の化合物を一般に組成物にする。この組成物には、一般式(I)の化合物に加え、適切な不活性な希釈剤または基剤と、必要に応じて界面活性剤(SFA)が含まれる。SFAは、界面の張力を低下させることによって界面(例えば液体/固体、液体/空気、液体/液体の界面)の性質を変え、その結果として他の性質(例えば分散性、乳化性、湿潤性)を変化させることのできる化学物質である。どの組成物も(固体製剤と液体製剤の両方とも)、一般式(I)の化合物を0.0001〜95重量%含んでいることが好ましく、1〜85重量%(例えば5〜60重量%)含むことがさらに好ましい。この組成物は、一般に、真菌を制御するため、一般式(I)の化合物が1ヘクタールにつき0.1g〜10kgの割合になるようにして使用される。この割合は、1ヘクタールにつき1g〜6kgであることが好ましく、1ヘクタールにつき1g〜1kgであることがさらに好ましい。
種子の被覆に使用する場合には、一般式(I)の化合物を種子1kgにつき0.0001g〜10g(例えば0.001g又は0.05g)の割合で使用する。この割合は、0.005g〜10gであることが好ましく、0.005g〜4gであることがさらに好ましい。
別の特徴によると、本発明により、殺生物に有効な量の一般式(I)の化合物と、適切な基剤または希釈剤とを含む殺生物組成物が提供される。
この特徴の好ましい一実施態様によると、本発明により、ウイルスを殺すのに有効な量の一般式(I)の化合物と、適切な基剤または希釈剤とを含む抗ウイルス組成物が提供される。
この特徴のさらに別の好ましい一実施態様によると、本発明により、がん細胞の増殖を低下させるのに有効な量の一般式(I)の化合物と、適切な基剤または希釈剤とを含む抗がん組成物が提供される。
この特徴の特に好ましい一実施態様によると、本発明により、真菌を殺すのに有効な量の一般式(I)の化合物と、適切な基剤または希釈剤とを含む抗真菌組成物が提供される。
さらに別の特徴によると、本発明により、ウイルスと闘ってウイルスを制御する方法であって、ウイルスまたはウイルスが存在している部位を、ウイルスを殺すのに有効な量の一般式(I)の化合物を含む組成物で処理する操作を含む方法が提供される。
さらに別の特徴によると、本発明により、がん細胞と闘ってがん細胞を制御する方法であって、がん細胞またはがん細胞が存在している部位を、がん細胞の増殖を低下させるのに有効な量の一般式(I)の化合物を含む組成物で処理する操作を含む方法が提供される。
さらに別の特徴によると、本発明により、真菌と闘って真菌を制御する方法であって、真菌または真菌が存在している部位を、真菌を殺すのに有効な量の一般式(I)の化合物を含む組成物で処理する操作を含む方法が提供される。
この組成物は、いろいろなタイプの製剤の中から選択することができる。例えば、ダスト化可能な粉末(DP)、可溶性粉末(SP)、水溶性粒子(SG)、水に分散可能な粒子(WG)、湿潤化可能な粉末(WP)、(ゆっくりと、または迅速に放出される)粒子(GR)、可溶性濃縮物(SL)、油と混和可能な液体(OL)、超小体積の液体(UL)、乳化可能な濃縮物(EC)、分散可能な濃縮物(DC)、エマルジョン(水中油型(EW)と油中水型(EO)の両方)、マイクロエマルジョン(ME)、懸濁濃縮物(SC)、エーロゾル、噴霧/煙製剤、カプセル懸濁液(CS)、種子処理用製剤などが挙げられる。いずれにせよ、どのタイプの製剤を選択するかは、具体的な目的と、一般式(I)で表わされる化合物の物理的、化学的、生物学的性質によって異なることになろう。
ダスト化可能な粉末(DP)は、一般式(I)の化合物と1種類以上の固体希釈剤(例えば天然の粘土、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、チョーク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、イオウ、石灰、小麦粉、タルク、これら以外の有機および無機の固体基剤)を混合し、その混合物を機械的にすりつぶして微細な粉末にすることによって調製できる。
可溶性粉末(SP)は、一般式(I)の化合物と、1種類以上の水溶性無機塩(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム)または1種類以上の水溶性有機固体(例えば多糖)と、必要に応じて1種類以上の湿潤剤、1種類以上の分散剤、またはこれらの混合物とを混合して水への分散性/溶解性を向上させることによって調製できる。次にこの混合物をすりつぶして微細な粉末にする。同様の組成物を粒子化することによって水溶性粒子(SG)にすることもできる。
湿潤化可能な粉末(WP)は、一般式(I)の化合物と、1種類以上の固体の希釈剤または基剤および1種類以上の湿潤剤と、好ましくは1種類以上の分散剤と、必要に応じて1種類以上の懸濁剤とを混合して液体中への分散を容易にすることによって調製できる。次にこの混合物をすりつぶして微細な粉末にする。同様の組成物を粒子化することによって水に分散可能な粒子(WG)にすることもできる。
粒子(GR)は、一般式(I)の化合物と粉末化した1種類以上の希釈剤または基剤の混合物をすりつぶすことによって形成すること、あるいは一般式(I)の化合物(またはそれを適切な媒体に溶かして溶液にしたもの)を多孔性粒状材料に吸収させるか、一般式(I)の化合物(またはそれを適切な媒体に溶かして溶液にしたもの)を硬いコア材料(例えば砂、ケイ酸塩、無機炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩)の表面に吸着させるかした後、必要に応じて乾燥させるという予備処理をした状態の粒子から形成することができる。吸収または吸着を容易にするのに一般に使用されている材料としては、溶媒(例えば脂肪族石油溶媒、芳香族石油溶媒、アルコール、エーテル、ケトン、エステル)、固着剤(例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖、植物油)などが挙げられる。1種類以上の他の添加物(例えば乳化剤、湿潤剤、分散剤)も粒子中に含まれていてよい。
分散可能な濃縮物(DC)は、一般式(I)の化合物を水または有機溶媒(例えばケトン、アルコール、グリコールエーテル)に溶かすことによって調製できる。この溶液は、(例えば水で希釈しやすくするために、あるいはスプレー・タンク内で結晶化するのを防止するために)界面活性剤を含んでいてもよい。
乳化可能な濃縮物(EC)または水中油型エマルジョン(EW)は、一般式(I)の化合物を(必要に応じて1種類以上の湿潤剤、1種類以上の乳化剤、あるいはこれらの混合物を含む)有機溶媒に溶かすことによって調製できる。ECで使用するのに適した有機溶媒としては、芳香族炭化水素(例えばアルキルベンゼン、アルキルナフタレン(具体的にはソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200;なおソルベッソは、登録商標である))、ケトン(例えばシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン)、アルコール(例えばベンジルアルコール、フルフリルアルコール、ブタノール)、N-アルキルピロリドン(例えばN-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン)、脂肪酸のジメチルアミド(例えばC8〜C10脂肪酸ジメチルアミド)、塩素化炭化水素などが挙げられる。EC製品は、水を添加すると自発的に乳化して十分な安定性を有するエマルジョンになるため、適切な装置を通じてスプレーすることができる。EWを調製するには、液体になった一般式(I)の化合物(室温では液体でなく、70℃未満の適度な温度で融かすことができる)または(適切な溶媒に溶かすことによって)溶液になった一般式(I)の化合物を取得した後、得られた液体または溶液を、1種類以上のSFAを含む水の中に入れて大きな剪断力のもとで乳化し、エマルジョンを得るという操作が含まれる。EWで使用するのに適した溶媒としては、植物油、塩素化炭化水素(例えばクロロベンゼン)、芳香族溶媒(例えばアルキルベンゼン、アルキルナフタレン)、水に対する溶解度が小さい他の適切な有機溶媒などが挙げられる。
マイクロエマルジョン(ME)は、水を、1種類以上の溶媒を1種類以上のSFAと混合したものと混合し、熱力学的に安定な等方性液体製剤を自発的に生成させることによって調製できる。一般式(I)の化合物は、最初は水または溶媒/SFA混合物の中に存在している。MEで使用するのに適した溶媒としては、ECまたはEWでの使用に関して上に説明したものが挙げられる。MEは、水中油型または油中水型(どちらの型が存在しているかは、導電率の測定によって明らかにすることができる)のどちらでもよく、同じ製剤中で水溶性殺虫剤および油溶性殺虫剤と混合するのに適している。MEは、水で希釈するのに適しており、マイクロエマルジョンに留まるか、あるいは従来の水中油型エマルジョンを形成する。
懸濁濃縮物(SC)は、一般式(I)の化合物を細かく分割した不溶性の固体粒子が分散された水性または非水性の懸濁液を含むことができる。SCは、固体である一般式(I)の化合物を適切な媒体(必要に応じて1種類以上の分散剤を添加する)の中でボールまたはビーズを用いてすりつぶし、この化合物の微粒子懸濁液を生成させることによって調製できる。1種類以上の湿潤剤がこの組成物の中に含まれていてもよく、粒子が形成される速度を低下させるために懸濁剤が含まれていてもよい。別の方法として、一般式(I)の化合物を乾燥状態で粉砕し、上記の分散剤、湿潤剤、懸濁剤を含む水の中に入れて望む最終製品を得ることもできる。
エーロゾル製剤は、一般式(I)の化合物と適切な推進剤(例えばn-ブタン)を含んでいる。一般式(I)の化合物を適切な媒体(例えば水、または水と混和するn-プロパノールなどの液体)に溶かし、あるいは分散させて組成物にし、非加圧の手動式スプレー・ポンプで使用することもできる。
一般式(I)の化合物を乾燥状態で点火混合物と混合することにより、この化合物を含む煙を閉鎖空間で発生させるのに適した組成物を形成することができる。
カプセル懸濁液(CS)は、EW製剤の調製と同様の方法で調製できるが、油滴の水性分散液を得るための重合ステップが追加されている点が異なっている。この水性分散液では、一般式(I)の化合物(と、必要に応じて添加する基剤または希釈剤)を含むそれぞれの油滴が、ポリマーの殻で覆われている。ポリマーの殻は、界面での縮合重合反応によって製造すること、あるいはコアセルベーション法によって製造することができる。この組成物は、一般式(I)の化合物を制御放出させることができるため、種子の処理に使用できる。一般式(I)の化合物を生物分解性ポリマー・マトリックスの中に製剤化することにより、この化合物を制御された状態でゆっくりと放出させることもできる。
組成物は、(例えば表面での湿潤度、保持力、分布を改善し;処理した表面における耐雨性を向上させ;一般式(I)で表わされる化合物の取り込み量または移動性を向上させることによって)生物学的性能を向上させるため、1種類以上の添加物を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、界面活性剤、油をベースとしたスプレー用添加剤(例えば例えばある種の鉱物油、天然の植物油(ダイズ油やナタネ油))、これら化合物と生物活性を向上させる他のアジュバント(一般式(I)で表わされる化合物の作用を促進または変更できる成分)の混合物などが挙げられる。
一般式(I)の化合物は、種子の処理に使用するための製剤にすることもできる。例えば、粉末組成物(乾燥した種子を処理するための粉末(DS)、水溶性粉末(SS)、スラリーを処理するため水に分散させることのできる粉末(WS)など)や、液体組成物(流動可能な濃縮物(FS)、溶液(LS)、カプセル懸濁液(CS)など)にする。DS、SS、WS、FS、LSの形態になった各組成物の調製法は、それぞれ、上記のDP、SP、WP、SC、DCの形態になった各組成物の調製法と非常に似ている。種子を処理するための組成物は、この組成物が種子に付着しやすくする物質(例えば鉱物油、膜形成バリヤ)を含むことができる。
湿潤剤、分散剤、乳化剤は、カチオンSFA、アニオンSFA、両性SFA、非イオンSFAのいずれかにすることができる。
適切なカチオンSFAとしては、第四級アンモニウム化合物(例えばセチルトリメチル臭化アンモニウム)、イミダゾリン、アミン塩などが挙げられる。
適切なアニオンSFAとしては、脂肪酸のアルカリ金属塩、硫酸の脂肪族モノエステルの塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、スルホン化された芳香族化合物の塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、スルホン酸ブチルナフタレン、スルホン酸ジイソプロピルナフタレンとスルホン酸トリイソプロピルナフタレンの混合物)、硫酸エーテル、硫酸アルコールエーテル(例えばラウレス-3-硫酸ナトリウム)、カルボン酸エーテル(例えばラウレス-3-炭酸ナトリウム)、リン酸エステル(1種類以上の脂肪アルコールとリン酸の反応による生成物(主としてモノエステル)またはリン酸エステルと五酸化リンの反応による生成物(主としてジエステル)、例えばラウリルアルコールと四リン酸の反応による生成物;この生成物はさらにエトキシル化することができる)、スルホスクシンアミド酸塩、スルホン酸パラフィン、スルホン酸オレフィン、タウレート、リゴノスルホン酸塩などが挙げられる。
適切な両性SFAとしては、ベタイン、プロピオネート、グリシネートなどが挙げられる。
適切な非イオンSFAとしては、アルキレンオキシド(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはこれらの混合物)と脂肪アルコール(例えばオレイルアルコール、セチルアルコール)またはアルキルフェノール(例えばオクチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルクレゾール)の縮合生成物;長鎖脂肪酸または無水ヘキシトールに由来する部分エステル;この部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物;(エチレンオキシドとプロピレンオキシドを含む)ブロック・ポリマー;アルカノールアミド;単純なエステル(例えば脂肪酸ポリエチレングリコールエステル);アミンオキシド((例えばラウリルジメチルアミンオキシド);レシチンなどが挙げられる。
適切な懸濁剤としては、親水コロイド(例えば多糖、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、膨潤する粘土(ベントナイト、アタパルジャイト)などが挙げられる。
一般式(I)の化合物は、殺真菌化合物を適用するための公知の任意の方法で適用することができる。この化合物は、製剤化されているかどうかに関係なく、例えば植物の任意の部分(葉、幹、枝、根など)、播く前の種子、植物を成長させたり植えたりするための他の媒体(例えば根を取り囲む土、土壌全般、水田の水、水耕栽培システム)に対して直接適用すること、あるいはスプレーすること、ダストとして適用すること、浸漬によって付着させること、クリーム製剤またはペースト製剤として付着させること、蒸気として付着させること、(例えば粒状組成物として、あるいは水溶性バッグに詰めた組成物として)組成物を土壌または水性環境に分布させるか組み込むことによって適用することができる。
一般式(I)の化合物は、植物の中に注入したり、電気力学的スプレー法または他の小容積法を利用してスプレーしたり、土地灌漑システムまたは空中灌漑システムによって適用することもできる。
水性調製物(水溶液または分散液)として使用される組成物は、一般に、活性成分が大きな割合で含まれた濃縮物の形態で供給されるため、その濃縮物に水を添加してから使用する。DC、SC、EC、EW、ME、SG、SP、WP、WG、CSを含むことのできるこの濃縮物にしばしば要求されるのは、長期にわたって保存可能であり、そのような保管後に水を添加することによって水性調製物が形成され、そのときその水性調製物が十分な時間にわたって均一な状態を維持することで従来のスプレー装置を用いてスプレーできることである。このような水性調製物は、使用目的に応じ、一般式(I)の化合物をいろいろな割合(例えば0.0001〜10重量%)で含むことができる。
一般式(I)の化合物は、肥料(例えば窒素含有肥料、カリウム含有肥料、リン含有肥料)と混合して使用することができる。適切なタイプの製剤としては、肥料粒子が挙げられる。混合物に含まれる一般式(I)の化合物は、25重量%までであることが好ましい。
したがって本発明により、肥料と一般式(I)の化合物を含む肥料組成物も提供される。
本発明の組成物は、生物活性を有する他の化合物(例えば微量栄養素)、あるいは似た殺真菌活性または相補的な殺真菌活性を有する化合物や、植物の成長調節活性、除草活性、殺虫活性、殺線虫活性、ダニ駆除活性を有する化合物を含むことができる。
別の殺真菌剤を含めることにより、得られる組成物は、一般式(I)の化合物単独の場合と比べ、より広い活性スペクトルまたはより大きな固有活性レベルを持つことができる。さらに、その別の殺真菌剤は、一般式(I)で表わされる化合物の殺真菌活性との間で相乗効果を示す可能性もある。
一般式(I)の化合物を組成物中の唯一の活性成分にすることができる。あるいは一般式(I)の化合物を1種類以上の追加活性成分(例えば適切な殺虫剤、殺真菌剤、相乗剤、除草剤、植物成長調節剤)と混合することもできる。追加活性成分により、より広い活性スペクトルを有する組成物、またはある部位における持続性が向上した組成物を提供できる可能性があり;一般式(I)の化合物との間で活性の相乗効果をもたらすこと、あるいは(例えば効果が現われる速度を増大させたり、抵抗に打ち勝ったりすることにより)一般式(I)の化合物の活性を補うことができる可能性があり;個々の成分に対する抵抗を克服または阻止できる可能性がある。具体的な追加活性成分は、組成物の用途が何であるかに応じて異なる。
本発明の組成物に含めることのできる殺真菌化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる:AC 382042(N-(1-シアノ-1,2-ジメチルプロピル)-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)プロピオンアミド)、アシベンゾラル-S-メチル、アラニカルブ、アルジモルフ、アニラジン、アザコナゾール、アザフェニジン、アゾキシストロビン、ベナラキシル、ベノミル、ベンチアバリカルブ、ビロキサゾール、ビテルタノール、ブラストサイジンS、ボスカリド(ニコビフェンの新しい名称)、ブロムコナゾール、ブピリメート、キャプタフォル、キャプタン、カルベンダジム、カルベンダジムクロルヒドレート、カルボキシン、カルプロパミド、カルボーン、CGA 41396、CGA 41397、キノメチオネート、クロロベンズチアゾン、クロロタロニル、クロロゾリネート、クロジラコン、銅含有化合物(例えば銅オキシクロリド、銅オキシキノレート、硫酸銅、銅タレート、ボルドー混合物)、シアミダゾスルファミド、シアゾファミド(IKF-916)、シフルフェナミド、シモキサニル、シプロコナゾール、シプロジニル、デバカルブ、ジ-2-ピリジルジスルフィド 1,1'-ジオキシド、ジクロフルアニド、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジフェノコナゾール、ジフェンゾクワット、ジフルメトリム、O,O-ジ-イソ-プロピル-S-ベンジルチオホスフェート、ジメフルアゾール、ジメトコナゾール、ジメチリモール、ジメトモルフ、ジモキシストロビン、ジニコナゾール、ジノカップ、ジチアノン、ドデシルジメチル塩化アンモニウム、ドデモルフ、ドジン、ドグアジン、エジフェンフォス、エポキシコナゾール、エタボキサム、エチリモール、エチル(Z)-N-ベンジル-N-([メチル(メチル-チオエチリデンアミノオキシカルボニル)アミノ]チオ)-β-アラニネート、エトリジアゾール、ファモキサドン、フェナミドン、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェノキサニル(AC 382042)、フェンピクロニル、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、酢酸フェンチン、水酸化フェンチン、フェルバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルメトーバー、フルモルフ、フルオルイミド、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルトラニル、フルトリアフォル、フォルペット、フォセチル-アルミニウム、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、グアザチン、ヘキサコナゾール、ヒドロキシイソキサゾール、ヒメキサゾール、イマザリル、イミベンコナゾール、イミノクタジン、イミノクタジントリアセテート、イプコナゾール、イプロベンフォス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロパニルブチルカルバメート、イソプロチオラン、カスガマイシン、クレソキシム-メチル、LY186054、LY211795、LY248908、マンコゼブ、マネブ、メフェノキサム、メパニピリム、メプロニル、メタラキシル、メタラキシルM、メトコナゾール、メチラム、メチラム-亜鉛、メトミノストロビン、メトラフェノン、MON65500(N-アリル-4,5-ジメチル-2-トリメチルシリルチオフェン-3-カルボキサミド)、ミクロブタニル、NTN0301、ネオアソジン、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニトロサール-イソプロピル、ヌアリモル、オフレース、有機水銀化合物、オリサストロビン、オキサジキシル、オキサスルフロン、オキソリニック酸、オクスポコナゾール、オキシカルボキシン、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ペンシクロン、フェナジンオキシド、リン酸、フタリド、ピコキシストロビン、ポリオキシンD、ポリラム、プロベナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、プロパモカルブ塩酸塩、プロピコナゾール、プロピネブ、プロピオン酸、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラクロストロビン、ピラゾホス、ピリフェノックス、ピリメサニル、ピロキロン、ピロキシフル、ピロルニトリン、第四級アンモニウム化合物、キノメチオネート、キノキシフェン、キントゼン、シルチオファム(MON65500)、S-イマザリル、シメコナゾール、シプコナゾール、ペンタクロロフェン酸ナトリウム、スピロキサミン、ストレプトマイシン、イオウ、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チフルザミド、2-(チオシアノメチルチオ)-ベンゾチアゾール、チオファネート-メチル、チラム、チアジニル、チミベンコナゾール、トルクロホス-メチル、トリルフルアニド、トリアジメホン、トリアジメノール、トリアズブチル、トリアゾキシド、トリシクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、バリダマイシンA、バパム、ビンクロゾリン、XRD-563、ジネブ、ジラム、ゾキサミド、以下の一般式で表わされる化合物:
Figure 2005523258
一般式(I)の化合物は、土やピートと混合すること、あるいは種子、土壌、葉の真菌が媒介する病気から植物を保護するための他の発根媒体と混合することができる。
混合物によっては、物理的、化学的、生物学的性質が大きく異なるために同じ従来タイプの製剤にはあまり適していない活性成分を含むことができる。そのような場合、他のタイプの製剤を調製することができる。例えば1つの活性成分が水溶性の固体であり、別の活性成分が水に溶けない液体である場合でも、固体活性成分は(SCの調製法と似た調製法を利用して)懸濁液として分散させるが、液体活性成分は(EWの調製法と似た調製法を利用して)エマルジョンとして分散させることにより、それぞれの活性成分を同じ連続した水相に分散させることが可能である。得られる組成物は、懸濁エマルジョン(SE)製剤である。
本発明の化合物を製剤化し、獣医学またはヒトの医学において利用されている一般的な任意の方法で投与できるようにすることが可能である。したがって本発明の範囲には、獣医学またはヒトの医学において利用するのに適した、一般式(I)の化合物を含む医薬組成物が含まれる。このような組成物は、薬理学的、獣医学的に許容可能な1種類以上の適切な基剤または賦形剤を利用して従来法で使用する形態にすることができる。
本発明の組成物には、非経口用、経口用、直腸用、局所用、移植用の製剤の形態になった組成物が含まれる。
農業、園芸、獣医学で使用するためには、全発酵ブイヨンを、一般式(I)で表わされる個々の化合物に分離することなく、本発明による活性化合物の供給源として使用することが望ましかろう。菌糸体を含む乾燥させたブイヨンを用いること、あるいは溶解した菌糸体を用いること(この菌糸体は、固体/液体分離法または蒸発法を利用してブイヨンから分離した、生きた菌糸体または死んだ菌糸体である)、あるいは菌糸体を分離した後に残った発酵ブイヨンを用いることが適切であろう。望むのであれば、ブイヨンまたは菌糸体を、従来の基剤、賦形剤、希釈剤を含む組成物にすることができる。
当業者であれば、一般に本発明の化合物を用いると、感染において重要な生物または感染箇所に一般式(I)の化合物を有効量適用することによって感染と闘えることが理解されよう。
本発明のさらに別の特徴では、本発明により、一般式(I)で表わされる化合物の製造方法であって、一般式(I)の化合物を産生させることのできるストレプトミセス・マレーシエンシス株を培養してこの化合物を産生させ、望むのであればその化合物をこの株から単離するステップを含む方法が提供される。
分類学的研究により、一般式(I)の化合物を産生することのできる特別な1つの微生物がストレプトミセス・マレーシエンシスの新しい株であることがわかった。これを今後はストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434と呼ぶ。この微生物のサンプルは、土壌単離物であり、2001年12月17日にドイツ微生物・細胞培養物コレクション(DSMZ)社(マシェローダー・ヴェーク1b、D-38124、ブラウンシュヴァイク、ドイツ)に寄託され、登録番号DSM 14702が割り当てられた。この株は、ブダペスト条約の条件で寄託され、ヨーロッパ特許条約の第28条(4)の条件に従ってアクセスが制限された状態になっている。ストレプトミセス・マレーシエンシスの新しい株であるこのストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)が、本発明のさらに別の特徴である。本発明には、ストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)と同じ主要な形態学的特徴と培養上の特徴を備えていて一般式(I)の化合物を産生することのできるストレプトミセス・マレーシエンシスのさらに新しい株も含まれる。
ストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)の主要な形態学的特徴と培養上の特徴は以下の通りである:
・ペプチドグリカンの特徴的なアミノ酸は、LL-ジアミノピメリン酸である
・ミコール酸は存在していない
・イソ脂肪酸とアンテイソ脂肪酸が発見されたが、10-メチル分枝脂肪酸は発見されなかった
・16s rDNAの塩基配列:ストレプトミセス種の他の配列と95%を超える相同性
・コロニーの色:灰色から暗い茶色に見える気中菌糸体と、ベージュから濁った黄色に見える基質菌糸体
・メラニンまたは他の特徴的な顔料の形成は見られなかった
・デンプンが加水分解される
・形態:短くて狭いコイル状の胞子
・生理機能:Kaempfer他(J. Gen. Microbiol.、第13巻、1831〜1891ページ、1991年)による:炭素源の利用→100%クラスター18:ストレプトミセス・ビオラスースニガー
・脂肪酸のパターン:ストレプトミセス・ビオラスースニガーと十分な相同性がある(0.675)
・16s rDNAのシークエンシング:部分配列をストレプトミセス・ライブラリと比較したところ、ストレプトミセス・ビオラスースニガーのグループに属するストレプトミセス・マレーシエンシスとの相同性が100%であった
・リボプリントのパターン:ストレプトミセス・ビオラスースニガーのグループと十分に相同である:ストレプトミセス・ヒグロスコピカスとの相同性は0.83であり、ストレプトミセス・マレーシエンシスとの相同性は0.82である。
ストレプトミセス・マレーシエンシス種は、最近になって文献に報告された:Amira Al-TaiらによるInternational Journal of Systematic Bacteriology、1999年、第49巻、1395〜1402ページ。
本発明には、一般式(I)の化合物を産生することのできるストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)の変異株も含まれる。変異株は、天然ものもあれば、従来の突然変異誘発法を利用して親株に突然変異を誘発させることによって作り出すこともできる。突然変異誘発法としては、例えば遺伝子技術(例えば組み換え法、形質転換法、自発的突然変異を選択する方法);イオン化放射線;化学的方法;熱などがある。
ストレプトミセス・マレーシエンシスの適切な株を培養して一般式(I)の化合物を産生させることは、従来法によって可能である。すなわち炭素、窒素、無機塩の同化源の存在下でその微生物を培養するという方法である。
本発明によるストレプトミセス・マレーシエンシス株は、ストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)であることが好ましい。
炭素、窒素、無機塩の同化源は、単純栄養素または複合栄養素として提供することができる。炭素源としては、一般に、アミノ酸;アルカン;糖蜜;グリセリド;グリセロール;グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、フルクトース、デンプン、デキストリン、カルボン酸、アルコール、植物油などが挙げられる。炭素源は、一般に、発酵培地の0.5〜10重量%を占めることになろう。
窒素源としては、一般に、ダイズ粉、コーン・スティープ・リカー、酵素抽出液、ワタの種子の粉、ペプトン、モルト抽出液、糖蜜、カゼイン、アミノ酸混合物、アンモニア、アンモニウム塩または硝酸塩、尿素、他のアミドなどが挙げられよう。窒素源は、一般に、発酵培地の0.1〜10重量%を占めることになろう。
栄養素として培地に組み込むことのできる無機塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、クロム、カルシウム、銅、モリブデン、ホウ素、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩のイオンを発生させることのできる塩が挙げられる。
培養は、換気と撹拌を行ないながら実施することが望ましかろう。培養は、一般にpHが5〜8の範囲で行なうが、pHは6〜7であることが好ましく、6.5であることが最も好ましい。本発明の微生物は、一般に温度が20〜50℃の範囲で培養されるが、温度は25〜40℃であることが好ましく、28〜35℃であることが特に好ましい。発酵は、2〜14日間(例えば6〜8日間)にわたって行なわせることができる。
本発明の化合物を全発酵ブイヨンから分離したい場合には、従来の単離・分離法を利用して実行することができる。本発明の化合物は、過半が発酵ブイヨンの中に見いだされるが、少量が細胞の菌糸体の中に見いだされる可能性がある。
さらに別の特徴によれば、本発明により、一般式(I)の化合物が、そのような化合物を含む全発酵ブイヨンの形態になったもの;そのような化合物を含む全発酵ブイヨンを固体にした形態になったもの;そのような化合物を含む全発酵ブイヨンから分離した、完全な菌糸体または溶離した菌糸体の形態になったもの;完全な菌糸体または溶離した菌糸体を分離した後にそのような化合物を含む全発酵ブイヨンを固体にした形態になったもの;菌糸体とあらゆる固体を分離した後のそのような化合物を含む全発酵ブイヨンの形態になったものが提供される。
さらに別の特徴によれば、本発明により、本発明の上記の特徴に従った形態になっている可能性のある一般式(I)の化合物を有効量含む組成物が提供される。
本発明の化合物は、さまざまな分画法で単離・分離することができる。例えば吸着-溶離、沈殿、分別晶出、溶媒抽出などの方法がある。これらの方法は、さまざまなやり方で組み合わせてもよい。
遠心分離とクロマトグラフィが、本発明の化合物を単離・分離するのに非常に適した方法であることがわかった。
発酵後、濾過や遠心分離といった従来法を利用して菌糸体を回収することができる。本発明の化合物は主として水性媒体中に見いだされるため、例えば遠心分離によって菌糸体から分離した後、菌糸体の抽出を、水または水と混和する適切な溶媒(低級ケトン(例えばアセトン);低級アルコール(例えばメタノール、エタノール);低級ジオールなど)を用いて行なうとよい。
一般に、抽出を2回以上行なって最適な回収状態を実現することが望ましい。1回目の抽出は、水または水溶性溶媒(好ましくはメタノール)を用いて行なうことが好ましい。次に、溶媒を例えば蒸発によって除去すると、本発明の化合物を粗抽出液として回収することができる。次に濃縮液を再び水性媒体(例えば水)に溶かし、残留する固形物が少しでもあればそれをさらに遠心分離することにより、その濃縮液をさらに精製することが可能である。水または水と混和する溶媒を除去すると、一般式(I)の化合物が得られる。
本発明による化合物の精製は、従来法で行なうことができる。例えば適切な支持体上でのクロマトグラフィなどの方法が利用できるが、高速液体クロマトグラフィを利用することが好ましい。支持体は、ベッドの形態、またはカラムに充填した形態にすることができるが、後者が好ましい。
適切な溶媒に本発明の化合物を溶かした溶液は、一般にシリカ上に注ぐ。望むのであれば、その前に溶媒の体積を減らしておく。カラムは、必要に応じて適切な極性の溶媒で洗浄し、溶離することができる。シリカの場合、アルコール(例えばメタノール)を水と組み合わせて使用することができる。
本発明による化合物の溶離と分離は、従来法でモニターすることができる。例えばクロマトグラフィなどの方法が利用できるが、高速液体クロマトグラフィを利用することが好ましい。
本発明の化合物は結晶化によって精製度を高めることができるため、本発明には、結晶形態になった一般式(I)の化合物も含まれる。
本発明には、ウイルス、真菌、がん細胞を一般式(I)の化合物に曝露することによってそのウイルス、真菌、がん細胞と闘う方法も含まれる。
本発明には、一般式(I)の化合物を真菌および/またはウイルスに対する抵抗力が変化または増大した生物系に対して使用する方法も含まれる。生物系としては、例えば植物や哺乳類系(例えば哺乳類の器官、組織、細胞)が可能である。植物系の場合、増大した抵抗力は、従来の育成法を利用して植物に導入され、増大した抵抗力を示す植物が多世代にわたって選択されている可能性がある。別の方法として、あるいはこの方法に加え、増大した抵抗力は、遺伝子改変組み換えDNA技術によって1つ以上のDNA配列をこの植物に導入することによって生じさせることができ、そのDNA配列が発現することにより、宿主植物の抵抗力が増大する。この方法は、しばしば統合作物管理と呼ばれる。
したがってさらに別の特徴では、本発明により、選抜育種法および/または遺伝子改変法(発現すると真菌に対する植物の抵抗力が増大するような1つ以上のDNA配列を組み換えDNA技術を利用して導入する方法)によって、好ましくは遺伝子改変法によって遺伝子が変化して真菌に対する抵抗力が増大した植物またはその一部への真菌の感染を制御する方法であって、この植物またはその一部を一般式(I)の化合物に曝露する操作を含む方法が提供される。
したがってさらに別の特徴では、本発明により、選抜育種法および/または遺伝子改変法(発現するとウイルスに対する植物の抵抗力が増大するような1つ以上のDNA配列を組み換えDNA技術を利用して導入する方法)によって、好ましくは遺伝子改変法によって遺伝子が変化してウイルスに対する抵抗力が増大するように遺伝子を改変した植物またはその一部へのウイルスの感染を制御する方法であって、この植物またはその一部を一般式(I)の化合物に曝露する操作を含む方法が提供される。
さらに別の特徴では、本発明により一般式(I)の化合物を殺生物剤として利用する方法が提供される。
この特徴の好ましい一実施態様では、一般式(I)の化合物を抗真菌剤として利用する方法が提供される。
この特徴のさらに別の実施態様では、一般式(I)の化合物を抗ウイルス剤として利用する方法が提供される。
この特徴のさらに別の実施態様では、一般式(I)の化合物を抗がんを剤として利用する方法が提供される。
以下の実施例により本発明を説明する。
一般式(I)の化合物を製造する標準的な方法
シェイクフラスコ内のpHを制御したM3培地(MES)
ストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434株を寒天斜面培養基と寒天プレートの上で増殖させた。それをTSM-40とTSM-7/2に移し、株を保存するために増殖させた。TSM-7/2のほうがよく増殖したため、ルーチンの株保存手続きではこちらを使用した。以下のすべての実験で使用する出発材料として、-80℃の低温保管容器に入れたストックを作った。培養物(4〜6日、35℃)の上清を用いたHPLC-MS実験により、一般式(I)の化合物が産生されることがわかる。
TSM-40
1リットルにつき
グルコース(メルク社)4g
モルト抽出液(ディフコ社) 10g
酵母抽出液 4g
殺菌の前にpHを7に調節する
TSM-7/2
1リットルにつき
マンニット 20g
ソイトーン 10g
ダイズ油 2.5g
K2HPO4 0.35g
CaCO3 0.5g
殺菌の前にpHを7に調節する
シェイクフラスコ内の産生ステップ
接種材料:出発材料としてよく増殖した1×ISP-2寒天プレートを使用し、約5日間にわたって35℃にてインキュベートした。
種の培養
VK1:1×SC-02培地(1回バッフルしたEMK500ml中の100ml)を寒天プレートからのバイオマスに接種し、回転シェイカー上で120rpm、35℃にて3日間にわたってインキュベートした。
主要培養物:150×M3培地(1回バッフル付EMK500ml中の60ml)を5容積%のSC-01に接種し、回転シェイカー上で35℃、120rpmにてインキュベートした。培地を100mMのMES緩衝液(Good緩衝液)を用いて緩衝してpHを6.5に調節した(NaOH)後、オートクレーブに入れた。(MES緩衝液は、2-N-モルホリノエタンスルホン酸水和物であり、最低99.5%の力価、C6H13NO4S、1モル=195.2g、25℃におけるpKa=6.1、pHの範囲は5.5〜6.7である。製造者、シグマ社、商品番号M8250)
サンプルと分析:サンプルを4日目、5日目、6日目に調べた。増殖を記録し、サンプル1mlを遠心分離した(バイオフュージA、ヘレウス・セパテック社、10分間、10,000rpm、室温)。上清を分離し、バイオマスを廃棄した。上清をすべて濾過した。透明な上清をHPLC用の容器に移し、ウォーターズ社のLC/MSシステム(HPLC:フォトダイオード・アレイ検出器が付いたアライアンス2790、MS:マイクロマスZQ)で測定した。
回収と分析:6日後、すべてのフラスコを回収し、遠心分離した。上清とバイオマスを-20℃で保管した。
培地:
SC-02
培地1リットルにつき
グルコース(メルク社)10g
可溶性デンプン(メルク社) 10g
ペプトン(シグマ社) 10g
酵母抽出液(ディフコ社) 2g
MgSO4×7H2O(メルク社)1g
pH6.5
M3:
培地1リットルにつき
グルコース 20g
可溶性デンプン 10g
ダイズ粉 25g
酵母抽出液 4g
ブイヨン 1g
成分A 10ml
成分A:
NaCl 0.5g
CaCO3 0.5g
MgSO4×7H2O 0.5g
KH2PO4 50mg
FeCl3×6H2O 16.7mg
ZnSO4×7H2O 21.2mg
CaCl2×2H2O 6.5mg
CuSO4×5H2O 5mg
MnCl2×4H2O 5mg
一般に、100倍に濃縮した貯蔵溶液を1リットル用意する。貯蔵溶液から10ml/lを使用する。貯蔵溶液は、4℃で保管すべきである。
一般式(I)で表わされる化合物の単離と物理的/化学的特性決定
実施例1に記載したようにして調製したストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434の発酵ブイヨン1リットルに対応する凍結乾燥物(23g)を水に溶かし、G-25カラム(セファデックス、70mm×780mm、1ml/分)に移した。水で溶離した後、一般式(I)の化合物を含む分画を凍結乾燥させた。残留物(0.678g)をシリカゲル(シリカ32−63、60オングストローム、55mm×500mm、22ml/分)上の中圧クロマトグラフィ(アセトニトリル:水からなる勾配)で精製し、蒸発させたところ、濃縮された材料が0.143gが得られた。RPシリカゲル(クロマシル100、C18、10μm、20mm×250mm、10ml/分)上の高圧クロマトグラフィ(アセトニトリル:水からなる勾配)によってさらに分離したところ、RがHである一般式(I)の化合物からなる第1の分画0.058gと、RがCH3である一般式(I)の化合物からなる第2の分画0.034gが得られた。第1の分画0.014gを、溶離液として純水を用いて逆相シリカゲル(デヴェロシルPRAQUEOUS、5μm、20×250mm、流速10ml/分、検出波長220nm、4回実施)上でさらに精製した。30分後に溶離したピークは、RがHである一般式(I)の化合物を含んでいた。この分画を凍結乾燥させたところ、RがHである一般式(I)の純粋な化合物が0.004g得られた。
RがCH3である一般式(I)の化合物の構造データ決定
Figure 2005523258
NMRデータ
1Hスペクトルは、δ4.63の位置にある残留HODのピークを基準にしてD2O中の2%w/v溶液で取得した。{}内のデータは、δ2.49の位置にあるHD5-DMSOを基準にしてD6-DMSO中の0.5%w/v溶液で取得した。スペクトルは、JEOL社のGX400 NMRスペクトロメータを399.6Hzで作動させて取得した。
Figure 2005523258
s=シングレット
d=ダブレット
dd=二重のダブレット
ddd=二重になった二重のダブレット
t=トリプレット
m=マルチプレット
13Cのスペクトルは、JEOL社のGX400 NMRスペクトロメータを100.4Hzで作動させ、δ29.8の位置にあるD6-アセトン{(CD3)2CO}を基準にしてD2O中の2%w/v溶液で取得した。
Figure 2005523258
s=シングレット
d=ダブレット
t=トリプレット
q=カルテット
上記の用語は、信号の共鳴をはずれた多重度に関するものであり、DEPT(135)スペクトルによって決定した。
上記のNMRデータに基づくと、立体化学は以下のようになっていると考えられる。
Figure 2005523258
この化合物(II)をこの明細書ではマラヤマイシンAと名づける。
質量分析
グリセロールと水の中で速い原子を衝突させてイオン化することにより、m/zとして343[M+H]+と365[M+Na] +が得られる。これは分子量が342であることと整合している。質量を正確に測定することにより、分子量が342.1197質量単位であることがわかった。これは、分子式がC13H18N4O7であることと矛盾しない。
RがHである一般式(I)の化合物の構造データ決定
Figure 2005523258
NMRデータ
1Hスペクトルは、δ4.63の位置にある残留HODのピークを基準にしてD2O中の2%w/v溶液で取得した。{}内のデータは、δ2.49の位置にあるHD5-DMSOを基準にしてD6-DMSO中の0.5%w/v溶液で取得した。スペクトルは、バリアン・ユニティ社のINOVA 500 NMRスペクトロメータを499.9Hzで作動させて取得した。
Figure 2005523258
結合定数は、RがCH3である一般式(I)の化合物の場合とほぼ同じである。これは、RがCH3である化合物(I)の立体配置とRがHである化合物(I)の立体配置も同じであることを示している。
s=シングレット
d=ダブレット
dd=二重のダブレット
ddd=二重になった二重のダブレット
t=トリプレット
b=幅が広い
13Cのスペクトルは、バリアン・ユニティ社のINOVA 500 NMRスペクトロメータを25℃にて125.7Hzで作動させ、δ67.4ppmの位置にあるジオキサンを基準にしてD2O中の2%w/v溶液で取得した。
Figure 2005523258
HSQCスペクトルとHMBCスペクトルの間に相関が観察された。
上記のNMRデータに基づくと、立体化学は以下のようになると考えられる。
Figure 2005523258
この化合物(III)をこの明細書ではデスマラヤマイシンAと名づける。
質量分析
エレクトロスプレーイオン化を利用したイオン化により、m/zとして329[M+H]+と351[M+Na] +が得られる。これは分子量が328であることと矛盾しない。
質量を正確に測定することにより、分子量が329.1101質量単位であることがわかった。これは、分子式がC12H16N4O7であることと矛盾しない。
この実施例は、一般式(I)で表わされる化合物の殺真菌特性を示している。この化合物を、真菌によって起こる植物の葉のさまざまな病気についてテストした。その方法は以下のようなものであった。
植物をセルロースをベースとした人工的な増殖培地で増殖させた。使用する直前にテスト化合物を逆浸透水の中で個別に希釈し、水中の最終濃度を100ppmにした(すなわち10mlの最終体積中に化合物が1mg)。トゥイーン20(最終濃度が0.05容積%)を水とともに添加し、スプレー堆積物の保持力が向上するようにした。なおトゥイーンは、登録商標である。
スプレーにより、化合物をテストする植物の葉に付着させた。そのとき液滴が葉に最大限保持されるようにした。
テストは、コムギにおいてスタゴノスポラ・ノドルム(LEPTNO)、ブルメリア・グラミニス f.sp. トリチシ(ERYSGT)、プシニア・トリチシナ(PUCCRT)に対して実施した。3本の苗を含むレプリカを2つ使用し、それぞれの処理を行なった。化合物を付着させてから6時間後または1日後に、較正した真菌胞子懸濁液、または乾燥胞子を含む“ダスト”を苗に接種した。
化合物の付着と接種を行なった後、植物を高湿度条件でインキュベートした(ただしブルメリア・グラミニス s.sp. トリチキを接種した植物は除く)後、適切な環境に入れ、病気の評価が可能な状態になるまで感染を進行させる。化合物を付着させてから評価までの時間は、病気と環境によって異なり、6〜9日であった。しかし個々の病気は、すべての化合物について、同じ時間が経過した後に評価した。
評価は、各レプリカのすべての苗に対して行なって平均し、1つのレプリカごとに1つの結果を出した。
存在する疾患レベル(葉の面積のうちで活発に胞子を形成する病気によって覆われている部分の割合)は目で評価した。それぞれの処理において、すべてのレプリカにおいて評価した値を平均し、平均疾患値を求めた。未処理の対照植物も同じようにして評価した。次にデータを処理し、PRCO値(対照と比べて病気が減った割合)を計算した。
帯域化評価法とPRCO値の計算
平均疾患値は、以下に示すように帯域化される。疾患レベル値が正確に2点の間に入る場合には、結果はその2点のうちの大きいほうになる。
0=存在している疾患が0% 10=存在している疾患が5.1〜10%
1=存在している疾患が0.1〜1% 20=存在している疾患が10.1〜20%
3=存在している疾患が1.1〜3% 30=存在している疾患が20.1〜30%
5=存在している疾患が3.1〜5% 60=存在している疾患が30.1〜60%
90=存在している疾患が60.1〜100%
典型的な帯域化計算の一例は以下のようなものである。
治療Aの平均疾患レベル=25%
したがって治療Aの帯域化平均疾患レベル=30
未治療の対照における平均疾患レベル=85%
したがって未治療の対照に関する帯域化平均疾患レベル=90
PRCO = 100 - {治療Aの帯域化平均疾患レベル}×100/{未治療の対照に関する帯域化平均疾患レベル}
= 100 - (30×100)/90 = 66.7
次にPRCO値を最も近い整数値に丸める。したがって上記の例ではPRCO値が67になる。
PRCO値は負の値になることもできる。
PRCO値に関する結果を以下に示す。
Figure 2005523258
表Iの略語
ERYSGT=ブルメリア・グラミニス・トリチシ PUCCRT=プシニア・トリチシナ
LEPTNO=スタゴノスポラ・ノドルム

Claims (20)

  1. 一般式(I):
    Figure 2005523258
    を有する化合物(ただしRは、HまたはCH3である)。
  2. 一般式(II):
    Figure 2005523258
    を有する、請求項1に記載の化合物。
  3. 一般式(III):
    Figure 2005523258
    を有する、請求項1に記載の化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物が、そのような化合物を含む全発酵ブイヨンの形態になったもの;あるいはそのような化合物を含む全発酵ブイヨンを固体にした形態になったもの;あるいはそのような化合物を含む全発酵ブイヨンから分離した、完全な菌糸体または溶離した菌糸体の形態になったもの;あるいは完全な菌糸体または溶離した菌糸体を分離した後にそのような化合物を含む全発酵ブイヨンを固体にした形態になったもの;あるいは菌糸体とあらゆる固体を分離した後の、そのような化合物を含む全発酵ブイヨンの形態になったもの。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を殺生物に有効な量含む殺生物組成物。
  6. 真菌を殺すのに有効な量の一般式(I)で表わされる化合物と、適切な基剤または希釈剤とを含む殺真菌組成物である、請求項5に記載の組成物。
  7. 真菌と闘って真菌を制御する方法であって、真菌または真菌が存在している部位を請求項6に記載の組成物で処理する操作を含む方法。
  8. 真菌を殺すのに有効な量の一般式(I)で表わされる化合物、または一般式(I)の化合物を含む組成物を、植物、植物の種子、植物または種子が存在している場所、土または他の任意の植物成長媒体(例えば栄養溶液)に適用する操作を含む、植物病原性真菌と闘うための、あるいは植物病原性真菌を制御するための請求項7に記載の方法。
  9. 一般式(I)の化合物を製造する方法であって、一般式(I)の化合物を産生させることのできるストレプトミセス・マレーシエンシス(Streptomyces malaysiensis)株を培養することによってこの化合物を産生させ、望むのであればこの化合物をストレプトミセス・マレーシエンシスから単離する操作を含む方法。
  10. 上記株がストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)またはその変異体である、請求項9に記載の方法。
  11. 一般式(I)の化合物を発酵ブイヨンから分離する、請求項9または10に記載の方法。
  12. ストレプトミセス・マレーシエンシスJHCC 553434(DSM 14702)とその変異体。
  13. 真菌、ウイルス、がん細胞と闘う方法であって、ウイルス、真菌、がん細胞を請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物に曝露する操作を含む方法。
  14. 請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物を、真菌および/またはウイルスに対する抵抗力が変化または増大した生物系に対して使用する方法。
  15. 選抜育種法および/または発現すると真菌に対する植物の抵抗力が増大するような1つ以上のDNA配列を組み換えDNA技術を利用して導入する方法たる遺伝子改変法によって、好ましくは遺伝子改変法によって遺伝子が変化して真菌に対する抵抗力が増大した植物またはその一部への真菌の感染を制御する方法であって、この植物またはその一部を、請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物に曝露する操作を含む方法。
  16. 選抜育種法および/または発現するとウイルスに対する植物の抵抗力が増大するような1つ以上のDNA配列を組み換えDNA技術を利用して導入する方法たる遺伝子改変法によって、好ましくは遺伝子改変法によって遺伝子が変化してウイルスに対する抵抗力が増大した植物またはその一部へのウイルスの感染を制御する方法であって、この植物またはその一部を、請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物に曝露する操作を含む方法。
  17. 請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物を利用した殺生物剤。
  18. 請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物を利用した抗真菌剤。
  19. 請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物を利用した抗ウイルス剤。
  20. 請求項1に記載の一般式(I)で表わされる化合物を利用した抗がん剤。
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