JP2005522669A - 卒中および脳損傷の診断マーカーおよびその使用方法 - Google Patents

卒中および脳損傷の診断マーカーおよびその使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は,卒中および一過性虚血性発作を診断および評価する方法に関する。特定の観点においては,患者サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーを含むパネルのマーカーの存在または量について分析する。別の観点においては,サンプルをB型ナトリウム利尿ペプチドについて分析する。そのような診断および評価用のパネルを組み立てるための種々のマーカーが開示される。種々の観点において,本発明は,卒中症状を示す患者の予後を決定し,脳血管痙攣のリスクを有する患者を識別するために,卒中のタイプおよび一過性虚血性発作を初期に検出し区別する方法を提供する。本発明の方法は,有益な卒中治療および療法を受けることができる患者の数を大きく増加させ,不正確な卒中診断に伴うコストを低下させる,迅速な,高感度かつ特異的なアッセイを提供する。

Description

関連出願
本出願は,米国特許仮出願60/313,775(2001年8月20日出願),60/334,964(2001年11月30日出願),および60/346,485(2002年1月2日出願)に基づく優先権を主張する。これらのそれぞれの内容は,その全体を本明細書の一部としてここに引用する。
発明の分野
本発明は,卒中および脳損傷の診断マーカーの同定および使用に関する。種々の観点においては,本発明は,卒中の症状を示したときに,初期検出し,卒中と一過性虚血性発作とを区別し,および遅延型神経症候のリスクを有する個体を識別する方法を提供する。
本発明の背景に関する以下の記述は,単に読者が本発明を理解することを助けるために提供され,本発明に対する先行技術を記載または構成すると認めるものではない。
卒中は,血管創傷が脳に現れたものであり,これは一般に,アテローム性動脈硬化症または高血圧症に派生的なものであって,米国で死亡原因の第3位である(かつ,神経学的障害の第2に多い原因である)。卒中は,“虚血性卒中”と“出血性卒中”の2つの広義のタイプに分類することができる。さらに,患者は,一過性虚血性発作を経験する場合があり,これはより重篤なエピソードが将来発症する高いリスク因子である。
虚血性卒中には,血栓性,塞栓性,腺窩性および低灌流性のタイプの卒中が包含される。血栓は脳内でインシトゥーで形成される動脈の閉塞であり,一方,塞栓は,遠方の起源,例えば心臓および主要血管からしばしば心筋梗塞または心房性細動のために移動した物質により引き起こされる閉塞である。頻度は低いが,血栓は髄膜炎等の疾患による血管炎症から生ずる場合もある。血栓または塞栓は,アテローム性動脈硬化症または他の疾患,例えば,動脈炎の結果として生ずる場合があり,これは脳への動脈血液供給の物理学的閉塞につながる。腺窩性卒中は脳の非皮質性領域内の梗塞を表す。低灌流は,局在化していない脳虚血により引き起こされる広汎性創傷の形で現れ,典型的には心筋梗塞および不整脈により生ずる。
虚血性卒中の発症はしばしば突然であり,24−48時間の間に悪化する神経症候として現れる“発展性卒中”となりうる。発展性卒中においては,症状は一般に一側性神経不全を含み,これは頭痛または発熱なしに進行的に拡大する。発展性卒中はまた,症状が急速に発達して数分間以内に最大となる“完全卒中”となりうる。
出血性卒中は,脳内またはクモ膜下出血,すなわち脳組織中への出血,および続く脳内の血管破裂により引き起こされる。脳内出血およびクモ膜下出血は,頭蓋内出血と称されるより広い分類の出血の部分集合である。脳内出血は,典型的には慢性高血圧症によるものであり,動脈硬化性血管が破裂する。脳内出血の症状は突然であり,頭痛が始まり,そして神経症候が着実に増加する。悪心,嘔吐,せん妄,痙攣および意識の喪失が一般的である。
これに対し,ほとんどのクモ膜下出血は,頭部外傷または動脈瘤破裂に起因しており,高圧の血液放出を伴い,これもまた直接細胞外傷を引き起こす。破裂の前に,動脈瘤が症候性であるかもしれず,あるいは時たま緊張性頭痛または片頭痛を伴うことがある。しかし,頭痛は,典型的には破裂により急性で重篤となり,種々の程度の神経症候,嘔吐,めまい感,および脈拍数および呼吸数の変化を伴う。
一過性脳虚血発作(TIA)は突然始まり,持続時間は短く,典型的には2−30分間である。ほとんどのTIAは,しばしば首の動脈に由来するアテローム斑からの塞栓によるものであり,短い血液流遮断の結果として生ずる。TIAの症状は卒中のものと同一であるが,一過性でしかない。根元的なリスク因子に伴って,TIAを経験した患者は卒中のリスクが非常に高い。
卒中の現在の診断方法には,コストがかかり時間を消費する方法,例えば,非造影剤コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャン,心電図,磁気共鳴画像法(MRI),および血管造影が含まれる。卒中の即時原因の決定および出血性卒中からの虚血性卒中の区別は困難である。CTスキャンは,1cmより大きい実質性出血およびすべてのクモ膜下出血の95%を検出することができる。CTスキャンはしばしば,梗塞の大きさによって,開始から6時間まで虚血性卒中を検出することができない。MRIは,虚血性卒中の初期の検出にはCTスキャンより有効かもしれないが,出血性卒中からの虚血性卒中の区別はあまり正確ではなく,広く利用することはできない。心電図(ECG)は,ある種の状況において,心臓が原因の卒中を同定するために用いることができる。血管造影は,狭窄または大および小頭蓋血管の閉塞を同定する決定的な試験であり,クモ膜下出血の原因の位置を決め,動脈瘤を明確にし,脳血管痙攣を検出することができる。しかし,これは侵襲的方法であり,またコストおよび利用可能性のために制限されている。また,血液凝固研究を用いて,血液凝固疾患(凝固障害)を出血性卒中の原因から除外することができる。
卒中を経験している患者の迅速な診断および治療は重要である。例えば,虚血性卒中において症状開始から3時間以内に組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)を投与することは,選択された急性卒中患者に有益である。あるいは,患者がTPA療法の候補でなければ,抗凝固剤(例えばヘパリン)による利益を受けることができる。これに対し,血栓崩壊剤および抗凝固剤は,出血性卒中においては強い禁忌を示す。すなわち,虚血性事象を出血性事象から初期に区別することは緊急を要する。さらに,卒中診断の確認および卒中のタイプの同定の遅れが,初期の治療介入による利益を受けることができる患者の数を制限している。最後に,現在のところ,TIAを同定することができるか,遅延型神経症候を予測する診断方法はなく,これらはしばしば開始時の後,症状の発症と同時に検出されている。
したがって,当該技術分野においては,迅速で,感度が高くかつ特異的であり,また卒中のタイプを区別することができ,遅延型神経症候のリスクを有する個体を同定することができる,卒中およびTIAの診断アッセイが求められている。そのような診断アッセイは,有益な卒中治療および療法を受けることができる患者の数を大きく増加させ,不適切な卒中診断に伴うコストを低下させるであろう。
本発明は,卒中および脳損傷の診断マーカーの同定および使用に関する。本明細書に記載される方法および組成物は,種々の形の卒中およびTIAの診断および区別において用いるための,迅速な,感度の高い,かつ特異的な診断アッセイに対する当該技術分野における必要性を満たすことができる。さらに,本発明の方法および組成物はまた,卒中患者の治療および追加の診断および/または予後指標の開発を容易にするために用いることができる。
種々の観点においては,本発明は,患者における診断,予後,または卒中および/またはTIAの区別と関連するマーカーを同定するための物質および方法;そのようなマーカーを使用して患者を診断または治療し,および/または治療計画の経過をモニターすること;そのようなマーカーを使用して,卒中および/またはTIAに関連する1またはそれ以上の有害な転帰のリスクを有する被験者を識別すること;およびそのような健康状態を治療または予防するのに有益な化合物および医薬組成物をスクリーニングすることに関する。
第1の観点においては,本発明は,卒中に関連する診断または予後を決定する方法,または卒中および/またはTIAのタイプを区別する方法を開示する。これらの方法は,被験者から得た試験サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上のマーカーの存在または量について分析することを含む。これらの方法は,その存在または量が診断,予後,または卒中および/またはTIAの区別と関連する1またはそれ以上のマーカーを同定することを含むことができる。そのようなマーカーがいったん同定されれば,目的とする被験者から得たサンプル中のそのようなマーカーのレベルを測定することができる。ある態様においては,これらのマーカーを,卒中および/またはTIAの診断,予後,または区別と結びつけられたレベルと比較することができる。被験者のマーカーレベルを診断マーカーレベルと相関させることにより,患者における卒中の存在または非存在,将来の有害な転帰の確率等を迅速かつ正確に判定することができる。
以下の議論の目的に関しては,卒中の診断および予後に適用可能なように記載される方法は,一般にTIAの診断および予後に適用可能であると考えることができる。
ある態様においては,複数のマーカーを組み合わせて,個別のマーカーまたはより小さい群から得られたものと比較して,分析の予測値を高める。好ましくは,脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーを脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーと組み合わせて,記載される方法の予測価値を高めることができる。
本明細書において用いる場合,“マーカー”との用語は,被験者から得た試験サンプルをスクリーニングするための標的として用いるべき蛋白質またはポリペプチドを表す。本発明においてマーカーとして用いられる“蛋白質またはポリペプチド”には,その任意のフラグメント,特に免疫学的に検出可能なフラグメントが含まれることが企図される。当業者は,脳発作の間に傷害を受けた中枢神経系の細胞により放出される蛋白質が,そのようなフラグメントに分解されるか切断される可能性があることを認識するであろう。さらに,ある種のマーカーは,不活性型として合成され,後に蛋白質分解により活性化されることができる。そのようなマーカーの例は以下に記載される。本明細書において用いる場合,“関連するマーカー”との用語は,マーカーそれ自身の代用物として検出されることができる特定のマーカーの1またはそれ以上のフラグメントを表す。
本発明の好ましいマーカーは,虚血性卒中,出血性卒中,およびTIAを区別することができる。特に好ましいものは,血栓性,塞栓性,腺窩性,低灌流性,脳内出血,およびクモ膜下出血型の卒中を区別するマーカーである。
本発明のさらに別の好ましいマーカーは,後に起こる有害な転帰のリスクを有する被験者を識別することができる。例えば,脳内出血またはクモ膜下出血型の卒中を示している被験者のサブセットは,後に脳血管痙攣に起因する血管創傷を受けやすいであろう。別の例においては,有害な転帰のリスクを識別するために臨床的に正常な被験者をスクリーニングすることができる。好ましいマーカーには,カスパーゼ,NCAM,MCP−1,S100b,MMP−9,vWF,BNP,CRP,NT−3,VEGF,CKBB,MCP−1カルビンディン,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,IL−6,IL−8,ミエリン塩基性蛋白質,組織因子,GFAP,およびCNPが含まれる。これらの用語のそれぞれは以下に定義される。特に好ましいマーカーは,クモ膜下出血を示している患者において後に起こる脳血管痙攣を予測しうるもの,例えばフォン・ビルブラント因子,血管内皮増殖因子,マトリクスメタロプロテイン−9,またはこれらのマーカーの組み合わせである。他の特に好ましいマーカーは,出血性卒中から虚血性卒中を区別するものである。
そのようなマーカーは,個々に,またはサンプル中で測定される複数のマーカーを含むマーカー"パネル"のメンバーとして用いることができる。卒中に関連する診断または予後を判定するために,または卒中および/またはTIAのタイプを区別するために用いることができる。そのようなパネルは,当業者によく知られる多くの様式で分析することができる。例えば,パネルの各メンバーを,"正常な"値,または特定の結果を指示する値と比較することができる。特定の診断/予後は,各マーカーについてのこの値との比較に依存するであろう。あるいは,マーカーのあるサブセットのみが正常範囲外であれば,このサブセットは特定の診断/予後を指示するであろう。
診断試験の感度および特異性は,単に試験の"質"にのみ依存するものではなく,何が異常試験を構成するかの定義にも依存する。実用的には,典型的に,"正常"および"疾病"集団における変数の値とその相対的頻度とをプロットすることにより,"ROC(Receiver Operating Characteristic)"曲線を計算する。任意の特定のマーカーについて,疾病を有する被験者および有しない被験者についてのマーカーレベルの分布はおそらく重複するであろう。そのような条件下で,試験は100%の正確性をもって疾病から正常を絶対的に区別するものではなく,重複の領域は試験が疾病から正常を区別できない場所を示す。閾値を選択し,その上(または下,疾病にともなってマーカーがどのように動くかによる)であれば試験は異常であると考えられ,その下であれば試験は正常であると考えられる。ROC曲線の下の面積は,得られた測定値によりある状態の正しい識別が可能となるであろう確率の尺度である。ROC曲線は,試験結果が必ずしもマーカーレベルの正確な数値を与えない場合においても用いることができる。すなわち,結果をランク付けすることができる限り,適切なROC曲線を作成することができる。そのような方法は当該技術分野においてよく知られている。例えば,Hanley et al.,Radiology 143:29−36(1982)を参照。
好ましい態様においては,パネル中の1またはそれ以上のマーカーについての特定の閾値は,被験者から得たマーカーレベルのプロファイルが特定の診断/予後を示すか否かを判定するのには信頼できない。そうではなく,本発明は,パネルについて種々のカットオフにおける,特定のマーカーのパネルの感度と1−(特異性)とについてROC曲線をプロットすることにより,プロファイル全体の評価を利用することができる。これらの方法においては,被験者からのマーカー測定値のプロファイルを一緒に考慮して,個体が卒中を起こしたか,卒中のリスクを有するか,個体が起こしたかまたはそのリスクを有する卒中のタイプ(虚血性または出血性),卒中ではなくTIAを起こしたか,などの包括的確率(数字のスコアとしてまたはリスクのパーセンテージとして表現される)を与える。そのような態様においては,ひとりの患者における特定の診断/予後を示すためにはある種のサブセットのマーカーの増加で充分であり,一方,別の患者における同じまたは異なる診断/予後を示すためには異なるサブセットのマーカーの増加で充分であろう。
1またはそれ以上のマーカーは単独で考慮した場合には予測価値を欠くかもしれないが,パネルの一部として用いれば,そのようなマーカーは特定の診断/予後を決定するために高い価値を有するであろう。例えば,あるマーカーが特定の診断/予後を同定するのに特に高い有用性を有する場合,パネル中の1またはそれ以上のマーカーに重み付け率を適用してもよい。本明細書に記載される例示的パネルは卒中に関連する診断または予後を決定するか,または卒中および/またはTIAのタイプを区別する能力を提供することができるが,これらの例示的パネルで1またはそれ以上のマーカーを置き換えるか,加えるか,差し引くことができ,この場合にも臨床的に有用な結果を与える。
本明細書において用いる場合,“試験サンプル”との用語は,目的とする被験者,例えば患者の診断,予後,または評価を目的として得た体液のサンプルを表す。ある態様においては,そのようなサンプルは現在進行している状態の帰結または治療計画が状態に及ぼす効果を判定する目的で得ることができる。好ましい試験サンプルには,血液,血清,血漿,脳脊髄液,尿および唾液が含まれる。さらに,当業者は,ある種の試験サンプルは,分画または精製した後に,例えば,全血液を血清または血漿成分に分離した後に,より容易に分析することができることを認識するであろう。
本明細書において用いる場合,“脳損傷の特異的マーカー”との用語は,脳組織および神経細胞と関連しており,脳損傷と相関しうるが他のタイプの創傷とは相関しない蛋白質またはポリペプチドを表す。そのような脳損傷特異的マーカーとしては,アデニレートキナーゼ,脳由来神経栄養因子,カルビンジン−D,クレアチンキナーゼ−BB,グリア線維状酸性蛋白質,乳酸デヒドロゲナーゼ,ミエリン塩基性蛋白質,神経細胞接着分子,ニューロン特異的エノラーゼ,ニューロトロフィン−3,プロテオリピド蛋白質,S−100β,トロンボモジュリン,蛋白質キナーゼCガンマ等が挙げられる。これらの特異的マーカーは以下に詳細に説明する。
本明細書において用いる場合,“脳損傷の非特異的マーカー”との用語は,脳損傷の事象において上昇するが,脳事象以外によっても上昇するかもしれない蛋白質またはポリペプチドを表す。そのようなマーカーは,典型的には,血液凝固および止血または急性期反応物質に関連する蛋白質でありうる。血小板の活性化および血液凝固のメカニズムにおける因子には,β−トロンボグロブリン,D−ダイマー,フィブリノペプチドA,プラスミン−α−2−抗プラスミン複合体,血小板第4因子,プロトロンビンフラグメント1+2,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,組織因子,およびフォン・ビルブラント因子が含まれる。他の非特異的マーカーとしては,アドレノメジュリン,心トロポニンI,ヘッドアクチベータ,ヘモグロビンα2鎖,カスパーゼ−3,血管内皮増殖因子(VEGF),1またはそれ以上のエンドセリン(例えば,エンドセリン−1,エンドセリン−2,およびエンドセリン−3),インターロイキン−8,A型ナトリウム利尿ペプチド,B型ナトリウム利尿ペプチド,およびC型ナトリウム利尿ペプチドが挙げられる。これらの非特異的マーカーは以下に詳細に説明する。
本明細書において用いる場合,“急性期反応物質”との用語は,種々の傷害,例えば,感染,創傷,外科手術,外傷,組織壊死等の間に生ずるストレス性または炎症性状態に対する応答においてその濃度が上昇する蛋白質を表す。急性期反応物質の発現および血清濃度の上昇は,傷害の種類に特異的ではなく,傷害に対する恒常性応答の一部として生ずるものである。
すべての急性期反応物質は,傷害に応答して産生される。ある成分は必要でないかもしれないが,これはおそらく広範な傷害を統御するためであろう。伝統的な急性期蛋白質の例には,C−反応性蛋白質,セルロプラスミン,フィブリノーゲン,α1−酸糖蛋白質,α1−アンチトリプシン,およびハプトグロビンが含まれる。種々のサイトカインおよび関連する分子,例えばインスリン様増殖因子−1,インターロイキン−1β,インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト,インターロイキン−6,トランスフォーミング増殖因子β,および腫瘍壊死因子αは,急性期反応にも密接に関連する炎症性応答の成分である。そのようなサイトカインは,傷害の部位から血流中に放出され,他の急性期蛋白質を発現するようそれ自身を誘導することができる。他の急性期反応物質には,E−セレクチン,細胞間接着分子−1,マトリクスメタロプロテアーゼ(例えば,マトリクスメタロプロテアーゼ9(MMP−9)),単球走化性蛋白質−1,血管細胞接着分子等が含まれる。
本明細書において用いる場合,“診断”との語句は,患者が所定の疾病または健康状態を患うか否かを当業者が推定または判定することができる方法を表す。当業者はしばしば,1またはそれ以上の診断指標,すなわち,その存在,非存在または量が病気の存在,重度,または非存在を指示するマーカーに基づいて診断を行う。
同様に,予後はしばしば,1またはそれ以上の“予後指標”を調べることにより決定される。これらは,患者(または患者から得たサンプル)におけるその存在または量が,所定の経過または転帰が生ずるであろう確率を知らせるマーカーである。例えば,そのような患者から得たサンプルにおいて,1またはそれ以上の予後指標が充分に高いレベルに達していれば,そのレベルは,その患者がより低いマーカーレベルを示す同様の患者と比較して,将来卒中を経験する確率が増加していることを示すであろう。予後指標のレベルまたはレベルの変化は,次に病的状態または死亡の確率の増加と関連し,これは“患者における有害な転帰に至る疾病素質の増加と関連する”と称される。好ましい予後マーカーは,卒中後の患者における遅延型神経症候の発症または将来の卒中の確率を予測することができる。
本明細書において用いる場合,診断および予後指標の使用に関して,“相関させる”との用語は,患者における指標の存在または量を,所定の健康状態を患っていることが知られているか,またはそのリスクを有することが知られている人,または所定の健康状態を有しないことが知られている人におけるその存在または量と比較することを表す。上述したように,患者サンプルにおけるマーカーレベルを,特定のタイプの卒中と関連することが知られているレベルと比較することができる。サンプルのマーカーレベルは,診断と相関づけられているといわれる。すなわち,当業者は,マーカーレベルを用いて,患者が特定のタイプの卒中を患っており,それにしたがって応答しているか否かを判定することができる。あるいは,サンプルのマーカーレベルを,良好な転帰(例えば,卒中がないことなど)と関連することが知られているマーカーレベルと比較することができる。好ましい態様においては,ROC曲線を用いてマーカーレベルのプロファイルを包括的確率または特定の転帰と相関させる。
ある態様においては,診断または予後指標を,単にその存在または非存在により健康状態または疾病と相関させる。別の態様においては,診断または予後指標の閾値レベルを確立し,患者サンプルにおける指標のレベルを単に閾値レベルと比較することができる。本発明のマーカーについての好ましい閾値レベルは,約25pg/mL,約50pg/mL,約60pg/mL,約75pg/mL,約100pg/mL,約150pg/mL,約200pg/mL,約300pg/mL,約400pg/mL,約500pg/mL,約600pg/mL,約750pg/mL,約1000pg/mL,および約2500pg/mLである。この文脈において“約”との用語は,±10%を表す。
さらに別の態様においては,1またはそれ以上の診断または予後マーカーの多数の決定を行うことができ,マーカーの時間的変化を用いて診断または予後を決定することができる。例えば,最初の時に診断指標を決定し,第2の時に再び決定することができる。そのような態様においては,最初の時から第2の時へのマーカーの増加は,特定のタイプの卒中,または所定の予後の診断上の特徴を示すかもしれない。同様に,最初の時から第2の時へのマーカーの減少は,特定のタイプの卒中,または所定の予後の診断上の特徴を示すかもしれない。
さらに別の態様においては,1またはそれ以上の診断または予後マーカーの多数の決定を行うことができ,マーカーの時間的変化を用いて,神経保護療法,血栓崩壊療法,または他の適切な療法の有効性をモニターすることができる。そのような態様においては,有効な療法の経過の間にマーカーの減少または増加が見られることが予測される。
ある態様においては,多数の時点において同じ診断マーカーの比較測定を行うが,当業者は,1つの時点で所定のマーカーを測定し,第2の時点で第2のマーカーを測定し,これらのマーカーの比較の結果から診断情報が与えられることを理解するであろう。同様に,当業者は,逐次的測定,およびマーカーの変化またはある時間にわたって組み合わせた結果もまた,診断および/または予後の価値を有することを理解するであろう。
本明細書において用いる場合,“予後を決定する”との句は,当業者が患者における健康状態の経過または転帰を予測することができる方法を表す。“予後”との用語は,病気の経過または転帰を100%の正確性をもって予測する,または所定の経過または転帰がおそらく生じるであろうと予測することができることを表すものではない。そうではなく,当業者は,“予後”との用語は,ある種の経過または転帰が生ずるであろう確率の増加,すなわち,その健康状態を示す患者において,その健康状態を示さない個体と比較したときに,ある経過または転帰がより生じやすいことを表すものであることを理解するであろう。例えば,その健康状態を示さない個体において,所定の転帰の確率は約3%であろう。好ましい態様においては,予後は,所定の転帰の約5%の確率,約7%の確率,約10%の確率,約12%の確率,約15%の確率,約20%の確率,約25%の確率,約30%の確率,約40%の確率,約50%の確率,約60%の確率,約75%の確率,約90%の確率,および約95%の確率である。この文脈において,“約”との用語は,±1%を表す。
当業者は,予後指標を有害な転帰に至る疾病素質と関連づけることは統計学的分析であることを理解するであろう。例えば,統計学的有意性のレベルにより判定して,80pg/mLより高いマーカーレベルは,その患者が80pg/mLと同じかまたはこれより低いレベルを有する患者より有害な転帰となりやすいことを示すであろう。さらに,ベースラインレベルからのマーカー濃度の変化は,患者の予後を反映するかもしれず,マーカーレベルの変化の程度は有害な事象の重度と関連するかもしれない。統計学的有意性は,しばしば,2またはそれ以上の集団を比較し,信頼区間および/またはp値を決定することにより決定することができる。例えば,Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York,1983を参照。本発明の好ましい信頼区間は,90%,95%,97.5%,98%,99%,99.5%,99.9%および99.99%であり,好ましいp値は,0.1,0.05,0.025,0.02,0.01,0.005,0.001,および0.0001である。予後指標を有害な転帰に至る疾病素質と関連づけるための例示的な統計学的検定は以下に記載される。
別の態様においては,予後または診断指標のレベルの変化の閾値の値を確立し,患者サンプルにおける指標のレベルの変化の値を単にレベルの変化の閾値の値と比較することができる。本発明のマーカーのレベルの変化の好ましい閾値は,約5%,約10%,約15%,約20%,約25%,約30%,約50%,約75%,約100%,および約150%である。この文脈において,“約”との用語は,±10%を表す。さらに別の態様においては,予後または診断指標のレベルを所与の転帰に至る関連する素因と直接関連づけることができる“ノモグラム”を確立することができる。当業者は,集団平均ではなく個々のサンプル測定値が参照されるために,この測定の不確定性はマーカー濃度の不確定性と同じであることを理解して,そのようなノモグラムを用いて2つの数値を関連づけることを熟知している。
さらに別の観点においては,本発明は,卒中と診断された患者において用いるための治療計画を決定する方法に関する。この方法は,好ましくは,本明細書に記載されるように1またはそれ以上の診断または予後マーカーのレベルを決定し,そしてマーカーを用いて患者の診断を決定することを含む。例えば,予後には,卒中の発症後の遅延型神経症候の発生または疾病素質も含まれるであろう。次に,診断に伴う有害な転帰の素因の増加を減らすことにより患者の予後を改良する1またはそれ以上の治療計画を用いて患者を治療することができる。そのような方法はまた,上述のように患者の予後を改良することができる試薬について,医薬化合物をスクリーニングするためにも用いることができる。
別の観点においては,本発明は,脳血管痙攣のリスクを有する患者を識別する方法に関する。この方法は,好ましくは,クモ膜下出血と診断された患者からの試験サンプル中の,後に起こる脳血管痙攣を予測するマーカーの量を,前記マーカーの予測レベルと比較することを含み,前記マーカーは,フォン・ビルブラント因子(vWF),血管内皮増殖因子(VEGF),およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)からなる群より選択され,前記患者は,前記マーカーのレベルが前記予測レベルと同等またはそれ以上であれば,脳血管痙攣のリスクを有すると識別される。
さらに別の観点においては,本発明は,そのようなマーカーパネルを用いて虚血性卒中を出血性卒中から区別する方法に関する。
さらに別の観点においては,本発明は,患者の診断または予後を決定するためのキットに関する。これらのキットは,好ましくは,患者サンプル中の1またはそれ以上のマーカーレベルを測定するための装置および試薬,およびアッセイを行うための指針を含む。任意に,キットはマーカーレベルを予後に変換する1またはそれ以上の手段を含んでいてもよい。そのようなキットは,好ましくは,1またはそれ以上のそのような判定を行うのに十分な試薬,および/またはFood and Drug Administration(FDA)に認可されたラベルを含む。
本発明にしたがえば,被験者における診断,予後,または卒中とTIAとの区別に関連するマーカーを同定および使用するための方法および組成物が提供される。そのようなマーカーは,被験者の診断および治療において,および/または,治療計画の経過をモニターするために;特定の疾病の発症またはリスクについて被験者をスクリーニングするために;およびそのような健康状態の治療または予防において有益であるかもしれない化合物および医薬組成物をスクリーニングするために用いることができる。
卒中は,血液を供給し,したがって脳に酸素および影響を供給する血管の閉塞または破裂により引き起こされる,急に発症する病理学的状態である。創傷の直近領域は“コア”と称され,これは虚血または物理学的損傷の結果として死んだ脳細胞を含む。“半影”はコア中の細胞と神経学的にまたは化学的に接続している脳細胞から構成される。半影中の細胞は傷害を受けているが,それでもなお,卒中の間に引き起こされた傷害が除かれた後に完全に回復する能力を有する。しかし,出血からの虚血または放血が続くにつれて,死亡細胞のコアは傷害の部位から拡大し,その結果半影の細胞が同時に拡大する。コアの最初の体積およびコア拡大の速度は卒中の重度と関係しており,ほとんどの場合,神経学的な転帰が生ずる。
脳は2つの主要なタイプの細胞,すなわちニューロンとグリア細胞とを含む。ニューロンは,脳において最も重要な細胞であり,電気的および化学的シグナリングを介する脳内伝達の維持を担う。グリア細胞は,主として脳の構造成分として機能し,ニューロンの約10倍多い。中枢神経系(CNS)のグリア細胞は星状細胞および稀突起である。星状細胞は,脳間隙の主要な細胞であり,ニューロンと絡み合いこれを取り巻く細胞プロセスを広げ,このため他のニューロンから区別される。星状細胞はまた,毛細管を囲むプロセスの終わりに‘軸索終末”を形成する。稀突起はCNSにおいて軸索の周りにミエリン鞘を形成する細胞である。各稀突起は50までの軸索を鞘で覆うことができる。シュワン細胞は,末梢神経系(PNS)のグリア細胞である。シュワン細胞は,周囲で軸索の周りにミエリン鞘を形成し,各シュワン細胞は一つの軸索を被覆でおおう。
卒中の間の細胞死は,CNSの細胞に対する虚血または物理学的傷害の結果として生ずる。虚血性卒中の間に梗塞が生じ,これは梗塞の部位を越えて血液の流れを非常に減少させるか停止させる。梗塞を越えてすぐの領域はまもなく細胞生存に必須の栄養の適当な血液濃度を失う。代謝などの重要な機能の維持に必須の栄養を欠如した細胞はまもまく死ぬ。出血性卒中は,直接外傷,頭蓋内圧の上昇,および傷害性生化学的物質の血液への放出により細胞死を誘導することができる。細胞が死ぬと,これらはサイトゾルの成分を細胞外環境に放出する。
中枢神経系の毛細管内皮細胞の間の堅い接合の関門作用は,“血液−脳関門”と称される。この関門は,通常は蛋白質および他の分子を,大きいものも小さいものも透過させない。他の組織,例えば,骨格,心臓および平滑筋においては,内皮細胞の間の接合は,ほとんどの分子を通過させるが蛋白質を通過させない程度にゆるい。
中枢神経系(CNS)のニューロンおよびグリア細胞(細胞内脳コンパートメント)から分泌される物質は,細胞外環境(細胞外脳コンパートメント)中に自由に入ることができる。同様に,細胞外脳コンパートメントからの物質は細胞内脳コンパートメント中に入ることができる。細胞内脳コンパートメントと細胞外脳コンパートメントとの間の物質の通過は,物質の出入りを制御する正常な細胞メカニズムにより制限されている。細胞外脳コンパートメントに見いだされる物質はまた,自由に脳脊髄液中に入ることができ,その逆も自由である。この動きは拡散により調節されている。
脈管構造とCNSとの間の物質の動きは,血液−脳関門により制限されている。この制限は,種々の物質のなかでも特にCNSの細胞が消費するための栄養(例えば,グルコースおよびアミノ酸)を関門を超えて輸送する,内皮細胞における促進輸送メカニズムにより迂回することができる。さらに,脂溶性物質,例えば,分子状酸素および二酸化炭素,ならびにすべての脂溶性薬剤または麻酔は,血液−脳関門を越えて自由に拡散することができる。
卒中または他のニューロパシーの間に傷害を受けた脳細胞から放出される脳損傷の特異的マーカーは,そのサイズによって,CNS創傷と一緒にまたはその後に血液−脳関門の透過性が増加したときにのみ,末梢血液中に見いだされるであろう。このことは,より大きい分子について特にあてはまる。より小さい分子は,受動的拡散,能動的輸送,または血液−脳関門の透過性の増加の結果として,末梢血液に出現することができる。血液−脳関門の透過性の増加は,腫瘍の侵襲および溢血または血管破裂などの場合における物理学的破壊の結果として,または虚血による内皮細胞死の結果として生じうる。卒中の間,血液−脳関門は内皮細胞死により傷害を受け,局所的な細胞外環境中に存在する死細胞のサイトゾル成分が血流中に入ることができる。
したがって,脳損傷の特異的マーカーはまた,血液または血液成分,例えば,血清および血漿に,ならびに卒中またはTIAを経験した患者のCSFにも見いだされうる。さらに,虚血性卒中における遮断物体のクリアランスにより,再灌流の間の酸化的傷害からの創傷が引き起こされる可能性があり,虚血性卒中を有する患者は,再灌流または血栓崩壊性治療の結果としてしばしば出血性変態を経験しうる。さらに,血管痙攣により創傷が引き起こされる可能性がある。これは出血後の脳の基底の大容量動脈における局所性または散在性の狭窄である。血液−脳関門の透過性の増加は傷害の重度と関連しており,傷害の消散の後にその一体性が再確立される。脳損傷の特異的マーカーは,これらの大分子が関門を越えて拡散することを可能とするのに充分な血液−脳関門の透過性の増加があった場合にのみ末梢血液中に存在する。この点に関して,脳損傷の最も特異的なマーカーは,卒中またはCNSに影響を及ぼす他のニューロパシーの後に脳脊髄液中に見いだすことができる。さらに,卒中における血液凝固またはフィブリン溶解マーカーの多くの研究が脳脊髄液を用いて行われている。
卒中における血液凝固カスケード
血管創傷の後に血液の喪失を停止または防止するためには,本質的に2つのメカニズムが用いられている。第1のメカニズムは,血小板を活性化して血管創傷の部位への付着を促進することを含む。次に活性化された血小板が凝集して血小板栓を形成し,これが血液の喪失を減少させ一時的に停止する。血小板凝集,栓形成および組織修復のプロセスはすべて,活性化された血小板により分泌される多くの因子により加速され増強される。血小板凝集および栓形成は,活性化された血小板の間にフィブリノーゲン架橋が形成されることを介して生ずる。第2のメカニズムである血液凝固カスケードが同時に活性化されることにより,フィブリノーゲンからフィブリンが生成し,血小板栓を強化する不溶性フィブリン凝固が形成される。
血液凝固カスケードは,通常は不活性型でまたはチモーゲン型で存在する多くのセリンプロテアーゼを含む酵素的経路である。脈管構造または血管創傷中に外来表面が存在すると,それぞれ内因性および外因性血液凝固経路が活性化される。次に最終共通経路が続き,その結果セリンプロテアーゼであるトロンビンによりフィブリンが生成し,最終的には架橋されたフィブリン凝固が生ずる。血液凝固カスケードにおいては,最初に1つの活性な酵素が形成され,これが他の酵素を活性化することができ,それらはさらに他の酵素を活性化する。このプロセスは,制御されないままであれば,すべての血液凝固酵素が活性化されるまで続きうる。幸い,フィブリン溶解や,血液凝固経路の活性および凝塊形成を制御することができる内因性プロテアーゼ阻害剤の作用などのメカニズムが存在する。
フィブリン溶解は,蛋白質分解性の凝塊溶解のプロセスである。フィブリン溶解は,血液凝固と類似する様式で,それらのチモーゲン型から活性化されるセリンプロテアーゼにより媒介される。セリンプロテアーゼであるプラスミンは,凝塊から遊離されたフィブリンをより小さい分解産物に分解して,凝塊溶解を生じさせることを担う。フィブリン溶解は,凝塊形成を制御するために,血液凝固の直後に活性化される。内因性セリンプロテアーゼ阻害剤もまたフィブリン溶解のレギュレータとして機能する。
脳脊髄液における血液凝固またはフィブリン溶解マーカーの存在は,用いられるマーカーに依存して,血液凝固またはフィブリン溶解の活性化,およびこれと連動して血液−脳関門の透過性の増加が生じたことを示すであろう。この点に関して,急性卒中に伴う血液凝固またはフィブリン溶解マーカーの存在に関するより明確な結論は,脳脊髄液を用いて得ることができる。
血小板は平均直径2−4μmの円形又は楕円形の板であり,通常は血液中に濃度200,000−300,000/μlで存在する。これは,血管の一体性を維持することにより止血を維持するのに本質的な役割を果たしており,最初に血管創傷の部位において血小板栓を形成することにより出血を止め,フィブリン形成のプロセスに寄与することにより血小板栓を安定化させる。血管創傷が生じたとき,血小板が創傷の部位におよび互いに付着し,付着血小板および創傷内皮細胞から放出された種々の反応物により,凝集するよう刺激される。この後に,血小板がその細胞内粒子の内容物を分泌する放出反応が生じ,血小板栓が形成される。血液凝固カスケードにおけるトロンビンによるフィブリンの形成は,栓を硬化させ,次に,架橋されたフィブリンにより凝塊が収縮し,栓が安定化する。同時に発生する血液凝固カスケードにおいて生成される活性なトロンビンもまた,血小板活性化および凝集を誘導することができる。
血液凝固カスケードは,外因性または内因性経路のいずれかにより活性化されることができる。これらの酵素的経路は1つの最終共通経路を共有する。血液凝固活性化の結果,架橋されたフィブリン凝塊が形成される。フィブリン溶解は,おそらくは凝塊形成の速度および量を制御する目的で,血液凝固活性化の直後に活性化される蛋白質分解性凝塊溶解のプロセスである。ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ(uPA)および組織型プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)は,蛋白質分解的にプラスミノーゲンを切断し,活性なセリンプロテアーゼであるプラスミンを生成する。プラスミンは,架橋したフィブリンを蛋白質分解的に消化し,その結果,凝塊の溶解およびフィブリン分解産物の産生および放出が生ずる。
血液凝固カスケードの共通の経路の第1段階には,Xa因子/Va因子プロトロンビナーゼ複合体によるプロトロンビンの蛋白質分解性切断および活性トロンビンの生成が含まれる。トロンビンは,蛋白質分解的にフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するセリンプロテアーゼであり,これは最終的には凝塊形成の間に架橋ネットワーク中に統合される。
代表的なマーカー
(i)損傷に特異的なマーカー
アデニレートキナーゼ(AK)は広範に分布する22kDaの細胞質ゾル酵素であり,ATPおよびAMPのADPへの相互変換を触媒する。アデニレートキナーゼの4つのアイソフォームが哺乳動物組織で同定されている(Yoneda, T.ら, Brain Res Mol Brain Res 62:187-195, 1998)。AK1アイソフォームは脳,骨格筋,心臓,および大動脈に見られる。AK1の正常な血清中の質量濃度は現在のところ未知であり,これは一般に機能アッセイを使用して総AK濃度を測定するためである。正常な血清AK濃度は<5ユニット/リットルであり,CSFを使用するとAKが上昇することが明らかになっている(Bollensen, E.ら, Acta Neurol Scand 79:53-582, 1989)。血清AK1は,脳損傷のマーカーとして最も特異性の高いAKアイソフォームであると考えられる。AKは脳虚血の脳脊髄液マーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。
ニューロトロフィンは哺乳動物の神経系において発現される成長因子のファミリーである。例として神経成長因子(NGF),脳由来神経栄養因子(BDNF),ニューロトロフィン(NT-3),およびニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)がある。ニューロトロフィンは主に標的由来のパラ分泌または自己分泌神経栄養因子としてその作用を及ぼす。ニューロンの生存,分化,および維持におけるニューロトロフィンの役割は十分知られている。それらは部分的に重複しているが,異なる発現様式および細胞標的を示す。中枢神経系における作用に加え,ニューロトロフィンは末梢求心性および遠心性ニューロンにも作用を及ぼす。
BDNFは神経細胞および/またはグリア細胞の増殖および生存能力を支持する有効な神経栄養因子である。BDNFは32kDaの前駆体"pro-BDNF"分子として発現され,これが切断されて成熟型のBDNFとなる。Mowla ら, J. Biol. Chem. 276: 12660-6 (2001)。最も多く存在する活性型ヒトBDNFは27kDaのホモ2量体であり,2つの同じ119アミノ酸サブユニットから形成され,それらは強い疎水性相互作用によって結合している;しかしながら,pro-BDNFは細胞外にも放出され,生物学的に活性である。BDNFはCNS中にわたって広く分布し,インビトロで広範なニューロン細胞(海馬,小脳,皮質ニューロンを含む)に栄養作用を示す。インビボではBDNFは外傷性および毒性脳損傷から神経細胞を救助することが発見されている。例えば研究で明らかになっているところによれば,一過性中大脳動脈閉塞の後,BDNF mRNAは皮質ニューロンにおいて亢進的に調節される(Schabiltz ら, J. Cereb. Blood Flow Metab. 14:500-506, 1997)。実験的に誘導した局所性片側血栓卒中では,卒中後2時間から18時間までBDNF mRNAが上昇した。それらの結果はBDNFが局所性脳虚血において神経保護の役割を果たしている可能性があることを示唆している。
NT-3も2つの119アミノ酸サブユニットからなる27kDaのホモ2量体である。皮質細胞の初代培養液にNT-3を添加すると,酸素-グルコース欠乏に起因するニューロン死が悪化することが明らかになっており,これは酸素を含まないラジカル機構を介している可能性がある(Bates ら, Neurobiol. Dis. 9:24-37, 2002)。NT-3は不活性なpro-NT-3分子として発現され,これが切断されて生物学的に活性な成熟型となる。
カルビンジン(Calbindin)-Dは28kDaの細胞質ゾルビタミンD依存型Ca2+-結合蛋白質であり,細胞内カルシウムレベルを安定化することによって細胞保護機能を示しうる。カルビンジン-Dは中枢神経系(主にグリア細胞),および遠位尿細管の細胞に見られる(Hasegawa, S. ら, J. Urol. 149:1414-1418, 1993)。正常なカルビンジン-Dの血清濃度は<20pg/ml(0.7pM)である。報告によれば,血清カルビンジン-D濃度は心停止後に上昇し,この上昇は脳虚血によるCNS損傷の結果であると考えられている(Usui, A. ら, J. Neurol. Sci. 123:134-139, 1994)。血清カルビンジン-Dの上昇は,虚血後再潅流の後すぐに上昇し,プラトーになる。最大血清カルビンジン-D濃度は700pg/ml(25pM)という高さにまでなりうる。
クレアチンキナーゼ(CK)は細胞質ゾル酵素であり,ATPおよびクレアチンからADPおよびホスホクレアチンへの可逆的な生成を触媒する。脳特異的CKアイソフォーム(CK-BB)は85kDaの細胞質ゾル蛋白質であり,脳の総CK活性の約95%を占める。これは心臓組織,小腸,前立腺,直腸,胃,平滑筋,甲状腺,子宮,膀胱,および静脈にもかなりの量で存在する(Johnsson, P. J., Cardiothorac. Vasc. Anesth. 10:120-126, 1996)。正常なCK-BBの血清濃度は<10ng/ml(120pM)である。血清CK-BBは低酸素性および虚血性脳損傷後に上昇するが,特定の型の卒中における血清上昇を確認するには更なる調査が必要である(Laskowitz, D.T. ら, J. Stroke Cerebrovasc. Dis. 7:234-241, 1998)。血清中のCK-BBの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,虚血による脳損傷を原因とすると考えることができる。CK-BBの血清濃度と損傷の程度(梗塞量)または神経学的転帰の相関性は立証されていない。CK-BBの血清中の半減期は1-5時間であり,通常,血清中で<10ng/ml(120pM)の濃度で検出される。重度の卒中では,CK-BBの血清濃度は卒中の発症後すぐに上昇してピークに達し(24時間以内),徐々に回復して3-7日後に正常となる(4)。頭部を損傷した個体の血清CK-BB濃度は損傷後すぐにピークとなり,損傷の重度によって,損傷後3.5-12時間の間に正常に戻る(Skogseid, I.M. ら, Acta Neurochir.(Wien.) 115:106-111, 1992)。最大血清CK-BB濃度は250ng/ml(3nM)を超えうる。CK-BBは脳虚血のCSFマーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。CKBBは頭部損傷後のCNS損傷の血清マーカーとしてより好適でありえ,これはそれらの個体において短時間で上昇し,その除去が損傷の重度に依存すると考えられるためである。
グリア繊維状酸性蛋白質(GFAP)は55kDaの細胞質ゾル蛋白質であり,アストログリアフィラメントの主な構造要素で,星状細胞における主な中間径フィラメント蛋白質である。GFAPは星状細胞に特異的であり,CNSに位置する間質細胞で,血液脳関門付近に見られる。GFAPは通常,血清中に検出されない。血清GFAPは虚血性卒中後に上昇する。(Niebroj-Dobosz, I., ら, Folia Neuropathol. 32:129-137, 1994)。現在のところ,卒中に伴う血清GFAPの上昇を調査する報告は非常に限られており,全ての型の卒中のための血清マーカーとしてGFAPを確立するためには,更なる調査が必要である。卒中マーカーとしてGFAPを調査する研究のほとんどは,脳脊髄液を使用して行われてきた。血清中のGFAPの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,虚血による脳損傷を原因とすると考えることができる。GFAPの血清濃度と損傷の程度(梗塞量)または神経学的転帰の相関性は立証されていない。GFAPはCNSを冒す種々の神経障害を有する個体の脳脊髄液で上昇するが,卒中以外の疾病を有する個体の血清へのGFAPの放出について記載している報告は現在のところ得られていない(Albrechtsen, M.およびBock, E. J., Neuroimmunol. 8:301-309, 1985)。GFAPの血清濃度は卒中の発症後すぐに上昇し,連続的に増加し,ある期間(数週間,これは損傷の重度と相関関係がありうる)持続すると考えられる。GFAPは,重度のCNS損傷,特に虚血または物理的損傷に起因する細胞死による星状細胞への損傷の非常に特異的なマーカーであると考えられる。
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は,広範に分布する135kDaの細胞質ゾル酵素である。これはAおよびB鎖の4量体であり,NADHによるピルビン酸の乳酸への還元を触媒する。LDHの5つのアイソフォームが哺乳動物組織で同定されており,組織特異的アイソフォームは異なる組み合わせのAおよびB鎖から生成される。LDHの正常な血清中の質量濃度は現在のところ未知であり,これは一般に機能アッセイを使用して総LDH濃度を測定するためである。正常な血清LDH濃度は<600ユニット/リットルである(Ray, P. ら, Cancer Detect. Prev. 22:293-304, 1998)。卒中に関するLDH上昇の調査の大多数は脳脊髄液を使用して行われており,上昇は損傷の重度と相関する。血清LDH活性の上昇は虚血性および出血性卒中のいずれの後でも報告されているが,この観察を確認し,損傷の重度および神経学的転帰との相互関係を確認するためには,血清においての更なる研究が必要である(Aggarwal, S.P. , J. lndian Med. Assoc. 93:331-332, 1995;Maiuri, F. ら, Neurol. Res. 11:6-8, 1989)。LDHは脳虚血の脳脊髄液マーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。
ミエリン塩基性蛋白質(MBP)は実際には,1つのMBP遺伝子の異なるスプライシングによって生成される14-21kDaの細胞質ゾル蛋白質ファミリーであり,ミエリン形成過程の際の軸索周囲のミエリンの緊密化に関係があると考えられる。MBPはCNSおよび末梢神経系(PNS)のシュワン細胞における乏突起膠細胞に特異的である。これはCNS中の総ミエリン蛋白質の約30%,そしてPNS中の総ミエリン蛋白質の約10%を占める。MBPの正常な血清濃度は<7ng/ml(400pM)である。血清MBPは全ての型の重度の卒中,特に血栓性卒中,塞栓性卒中,脳内出血,およびクモ膜下出血の後に上昇するが,MBP濃度の上昇は軽度から中度の卒中(腺窩性梗塞または一過性虚血発作を含む)を有する個体の血清では報告されていない(Palfreyman, J.W. ら, Clin. Chim. Acta 92:403-409, 1979)。血清におけるMBPの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,梗塞または脳内出血に起因する物理的損傷または虚血による脳損傷を原因とすると考えることができる。MBPの血清濃度は損傷の程度(梗塞量)と相互関係があることが報告されているが,これは神経学的転帰とも相互に関係しうる。卒中に伴う血清MBPの上昇に関する入手可能な情報の量は限られており,これはほとんどの調査が脳脊髄液を使用して行われてきたためである。MBPは通常,血清中に7ng/ml(400pM)の上限で検出され,重度の卒中および脳損傷の後に上昇する。血清MBPは卒中の発症後,数時間内に上昇し,その濃度は発症後2-5日以内に最大レベルまで上昇すると考えられる。血清濃度がその最大値(120ng/ml(6.9nM)を超えうる)に達した後,徐々に低下して正常濃度となるまでに1週間以上かかりうる。損傷の重度はMBPの放出に直接影響を与えるので,血清中でMBPが上昇する時間の長さに影響を与えることによって放出速度論に影響を与える。MBPは損傷の重度が高くなるほど,長時間血清中に存在する。頭部損傷を有する患者の血清中へのMBPの放出は卒中に関して記載されるのと同様の反応速度論に従うと考えられる。ただし,血清MBP濃度は頭部損傷を有する個体の神経学的転帰と相互関係があると報告されている。(Thomas, D.G. ら, Acta Neurochir. Suppl. (Wien) 28:93-95, 1979)。頭蓋内腫瘍を有する患者の血清中へのMBPの放出は持続性があると考えられるが,まだ調査が必要である。最後に,血清MBP濃度は脱髄性疾患を有する個体で上昇することがあるが,決定的な調査はまだ報告されていない。多発性硬化症を有する個体で報告されているように,MBPはしばしば脳脊髄液中で上昇するが,多くの場合,それに匹敵する血清での上昇はない(Jacque, C. ら, Arch. Neurol. 39:557-560, 1982)。これは,脳損傷は血管脳関門の浸透性の増加を伴い,それによって血清MBP濃度の上昇が起きることを示唆している。しかしながら,MBPは頭蓋内腫瘍を有する個体集団においても上昇しうる。これらの個体が卒中のためにこのマーカーを使用してアッセイを行う対象となりうる,より大きな個体集団中に存在することはまれである。それでもなお,これらの個体は,脳神経外科的処置を受けている個体または脱髄疾患を有する個体と合わさって,脳障害に関するMBPの特異性の判定に影響を及ぼす。更に,血清MBPは重度の卒中のマーカーとして有用でありえ,卒中の療法および治療,例えばtPA投与が有益ではない個体を同定できる可能性を有している。
神経細胞接着分子(NCAM)(CD56とも呼ばれる)は170kDaの細胞表面結合型免疫グロブリン様インテグリンリガンドであり,神経系におけるニューロンおよびグリア細胞の相互作用の保持に関与しており,これは星状細胞,乏突起膠細胞,シュワン細胞,ニューロン,および軸索の表面上で発現される。NCAMは発達中の骨格筋管にも局在し,その発現は骨格筋において発達,神経支配除去,および再神経支配の際に亢進的に調節される。正常な血清中のNCAMの質量濃度は報告されていない。NCAMは一般に,機能性酵素免疫アッセイによって測定され,正常な血清濃度は<20ユニット/mlであることが報告されている。卒中に明確に関係する血清NCAM濃度の変化は報告されていない。NCAMは脳虚血のCSFマーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。
エノラーゼは78kDaのホモまたはヘテロ2量体細胞質ゾル蛋白質であり,α,β,およびγサブユニットから生成される。これは解糖系において2-ホスホグリセリン酸およびホスホエノールピルビン酸の相互変換を触媒する。エノラーゼはαα,ββ,αγ,およびγγアイソフォームで存在する。αサブユニットはグリア細胞および他のほとんどの組織で見られ,βサブユニットは筋組織で見られ,γサブユニットは存在するとすれば主にニューロン細胞および神経内分泌細胞で見られる(Quinn, G.B. , Clin. Chem. 40:790-795, 1994)。エノラーゼのγγアイソフォームはニューロンに最も特異的であり,ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)と呼ばれる。NSEは主にニューロンおよび神経内分泌細胞に見られるが,血小板および赤血球にも存在する。正常なNSEの血清濃度は<12.5ng/ml(160pM)である。NSEは2つのサブユニットからなり,従ってNSE濃度を検出するために使用される最も適した免疫学的アッセイは,サブユニットの1つを対象とするものである。この場合,γサブユニットが理想的な選択である。しかしながら,γサブユニット単独ではγγアイソフォームほど脳組織に特異的ではなく,これはγサブユニット単独の測定ではαγおよびγγアイソフォームの両方が検出されるためである。この点で,NSEの最良の免疫アッセイはγγアイソフォームを特異的に検出できる2部位アッセイである。報告によれば,血清NSEはTIAも含む全ての型の卒中後に上昇し,これは,脳内で起こり,個体に後日更に重度の卒中を起こさせると考えられる(Isgro, F. ら, Eur. J. Cardiothorac. Surg. 11:640-644, 1997)。血清中のNSEの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,梗塞または脳内出血に起因する物理的損傷または虚血による脳損傷を原因とすると考えることができ,NSEの血清濃度は損傷の程度(梗塞量)および神経学的転帰と相互関係があることが報告されている。(Martens, P. ら, Stroke 29:2363-2366, 1998)。更に,血清NSE濃度の2次的な上昇は,脳血管攣縮から起こる後発性神経損傷の指標となりうる(Laskowitz, D.T. ら, J. Stroke Cerebrovasc. Dis. 7, 234-241, 1998)。NSEの生物学的半減期は48時間であり,通常12.5ng/ml(160pM)の上限で血清中に検出されるが,これは卒中および脳損傷後に上昇する。血清NSEは卒中の発症から4時間後に上昇し,濃度は発症の1-3日後に最大に達する(Missler, U. ら, Stroke 28:1956-1960, 1997)。血清濃度はその最大(300ng/ml(3.9nM)を超えうる)に達した後,徐々に低下して約1週間で正常濃度になる。損傷の重度はNSEの放出に直接影響を与えるので,血清中でNSEが上昇する時間の長さに影響を与えることによって放出速度論に影響を与える。NSEは損傷の重度が高いほど長い時間血清中に存在する。頭部損傷を有する患者の血清中へのNSEの放出は卒中で見られるのとは異なる反応速度論に従い,血清濃度は損傷後1-6時間以内に最大となり,多くの場合,24時間以内にベースラインまで戻る(Skogseid, I.M. ら, Acta Neurochir. (Wien.) 115:106-111, 1992)。NSEは脳損傷,特に虚血または物理的損傷に起因する細胞死によるニューロン細胞への損傷に特異的なマーカーである。脳におけるニューロンはグリア細胞より約10倍少なく,そのため脳血液関門の透過性の上昇を伴う脳損傷はニューロンの有意な局所的集団を有する領域で起こり,血清NSE濃度が有意に上昇するはずである。更に,血清NSE濃度の上昇はAMIおよび心臓手術後の脳損傷に関係する合併症も示唆しうる。NSEの血清濃度の上昇は損傷の重度および個体の神経学的転帰と関係する。NSEはTIAを含む全ての型の卒中のマーカーとして使用できる。しかしながら,NSEを使用して虚血性卒中と出血性卒中とを識別することはできず,これは神経内分泌性の腫瘍を有する個体群でも上昇する。
プロテオリピド蛋白質(PLP)は30kDaの膜内在性蛋白質であり,CNSミエリンの主要な構造要素である。PLPはCNSの乏突起膠細胞に特異的で,中枢鞘(central sheath)中の総CNSミエリン蛋白質の約50%を占めるが,末梢神経系(PNS)ミエリン中に見られるPLPは非常に低レベルである(<1%)。正常なPLPの血清濃度は<9ng/ml(300pM)である。血清PLPは脳梗塞後に上昇するが,一過性虚血発作後には上昇しない(Trotter, J.L. ら, Ann. Neurol. 14:554-558, 1983)。卒中に伴う血清PLPの上昇を調査した報告は現在のところ非常に限られている。血清中のPLPの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,梗塞または脳内出血に起因する物理的損傷または虚血による脳損傷を原因とすると考えることができる。PLPの血清濃度と損傷の程度(梗塞量)または神経学的転帰の相関性は立証されていない。血清中へのPLPの放出速度論およびその後の除去を試験する研究は報告されていないが,60ng/ml(2nM)に近い最大濃度が脳炎患者で報告されており,これは卒中後に見られる濃度の2倍近い。PLPは重度のCNS損傷,特に乏突起膠細胞の損傷に非常に特異的なマーカーであると考えられる。血清PLPの上昇および卒中に関して得られている情報は,非常に限られている。PLPはCNSを冒す種々の神経障害を有する個体の血清中でも上昇する。卒中のためにこのマーカーを使用してアッセイを行う対象となりうる個体のより大きな集団中に,これらの診断されていない個体が存在することはまれである。
S-100はαおよびβサブユニットから生成される21kDaのホモまたはヘテロ2量体の細胞質ゾルCa2+結合蛋白質である。これはCa2+依存型シグナル変換経路に沿った細胞過程の活性化に関係していると考えられる(Bonfrer, J.M. ら, Br. J. Cancer 77:2210-2214, 1998)。S-100ao(ααアイソフォーム)は横紋筋,心臓,および腎臓に見られ,S-100a(αβアイソフォーム)はグリア細胞に見られるがシュワン細胞には見られず,そしてS-100b(ββアイソフォーム)はグリア細胞およびシュワン細胞中に高濃度で見られ,ここでそれは主要な細胞質ゾル成分である。βサブユニットは正常な生理学的条件下で神経系(主にCNS)に特異的であり,事実,脳に見られる総S-100蛋白質の約96%を占める(Jensen, R. ら, J. Neurochem. 45:700-705, 1985)。更に,S-100βは神経内分泌性腫瘍,例えば神経膠腫,黒色腫,シュワン鞘腫,神経線維腫,そして,神経節芽腫および神経節細胞腫のような高度に分化した神経芽腫にも見られる(Persson, L. ら, Stroke 18:911-918, 1987)。正常なS-100βの血清濃度は<0.2ng/ml(19pM)であり,これは使用される免疫学的検出アッセイの検出限界である。血清S-100βはTIAを含む全ての型の卒中後に上昇する。血清中のS-100βの上昇は,血液脳関門の透過性の上昇を伴う,梗塞または脳内出血に起因する物理的損傷または虚血による脳損傷を原因とすると考えることができ,S-100βの血清濃度は損傷の程度(梗塞量)および神経学的転帰と相互に関係することが明らかになっている(Martens, P. ら, Stroke 29:2363-2366, 1998;Missler, U. ら, Stroke 28:1956-1960, 1997)。S-100βの生物学的半減期は2時間であり,通常は血清中で検出されないが,卒中および脳損傷後には上昇する。血清S-100βは卒中の発症から4時間後に上昇し,その濃度は発症の2-3日後に最大に達する。血清濃度はその最大(約20ng/ml(1.9mM)近くになりうる)に達した後,徐々に低下して約1週間で正常になる。損傷の重度はS-100βの放出に直接影響を与えるので,血清中でS-100βが上昇する時間の長さに影響を与えることによって放出速度論に影響を与える。S-100βは損傷の重度が高いほど長い時間血清中に存在する。頭部損傷を有する患者の血清中へのS-100βの放出は卒中で報告されているのと多少類似した反応速度論に従う。ただし,血清S-100βは発症の2.5時間以内に検出され,発症後約1日で最大血清濃度に達する(Woertgen, C. ら, Acta Neurochir. (Wien) 139:1161-1164, 1997)。S-100βは脳損傷,特に虚血または物理的損傷に起因する細胞死によるグリア細胞への損傷に特異的なマーカーである。脳においてグリア細胞はニューロンより約10倍多く,そのため血液脳関門の透過性の上昇を伴う脳損傷は血清S-100βの上昇を起こすと考えられる。更に,S-100βの血清濃度の上昇はAMIおよび心臓手術後の脳損傷に関係する合併症も示唆しうる。S-100βは正常な個体では実質的に検出されておらず,その血清濃度の上昇は個体の損傷の重度および神経学的転帰と相関する。S-100βはTIAを含む全ての型の卒中のマーカーとして使用できる。しかしながら,S-100βを使用して虚血性および出血性卒中を識別することはできず,これは神経内分泌性の腫瘍(一般に進行期)を有する個体群でも上昇する。
トロンボモジュリン(TM)は血管内皮細胞の表面上に見られる70kDaの1本鎖膜内在性糖蛋白質である。TMは,トロンビンの基質特異性を変化させることによって抗凝血活性を示す。トロンビンおよびTM間の1:1化学量論的複合体の生成により,トロンビンの機能が前凝血剤から抗凝血剤へ変化する。この変化はトロンビンの基質特異性を変化させることによって促進されるが,これによってトロンビンは蛋白質C(Va因子およびVIIIa因子の不活性化剤)を活性化するが,フィブリノーゲンの切断または他の凝固因子の活性化は起こさない(Davie, E.W. ら, Biochem. 30:10363-10370, 1991)。TMの正常な血清濃度は25-60ng/ml(350-850pM)である。これまでに虚血性卒中後の血清TM濃度の変化について記載している報告は,変化がないことを報告しているもの,または有意な上昇を報告しているものが混在している(Seki, Y. ら, Blood Coagul. Fibrinolysis 8:391-396, 1997)。血清中のTM濃度の上昇は内皮細胞の損傷を反映しており,凝血またはフィブリン溶解の活性化を示すものではない。
蛋白質キナーゼCのガンマ・アイソフォーム(PKCg)はCNS組織に特異的であり,一般に循環中には見られない。PKCgは脳虚血に際して活性化され,虚血性半影(ischemic penumbra)には対側組織より2-24倍高いレベルで存在する(Krupinski, J. ら, Acta Neurobiol. Exp. (Warz) 58:13-21, 1998)。更に,動物モデルにより,中大脳動脈閉塞後のラットの末梢循環におけるPKCgレベルの上昇が確認されている(Cornell-Bell, A. ら, 国際特許公開WO 01/16599号)。PKCの更なるアイソフォームであるベータIおよびベータIIは,脳虚血を有する患者由来の脳細胞の梗塞したコアでレベルが上昇していることが発見された(Krupinski, J. ら, Acta Neurobiol. Exp. (Warz) 58:13-21, 1998)。更に,PKCのアルファおよびデルタ・アイソフォーム(それぞれPKCaおよびPKCd)はイヌ出血モデルを使用したクモ膜下出血後の血管痙攣の発生に関係することが確認されている。PKCd発現は血管痙攣の初期段階に脳底動脈で有意に上昇し,PKCaは血管痙攣の進行に従って有意に上昇した(Nishizawa, S. ら, Eur. J. Pharmacol. 398:113-119, 2000)。従って,PKCの種々のアイソフォームを,個別に,または種々の組み合わせで測定することは,クモ膜下出血後の脳損傷,虚血性半影の存在,並びに脳血管痙攣の発生および進行の同定ために有益である。PKCアイソフォーム(例えばPKCgと,PKCbI,PKCbIIのいずれか,または両方)の比率も,虚血性半影が不可逆的に損傷した梗塞組織に変換する,進行性卒中の同定に有益でありうる。この点について,PKCgを使用して虚血性半影の存在および量を同定してもよく,PKCbI,PKCbIIのいずれか,またはその両方を使用して卒中の際の不可逆的に損傷した組織の梗塞したコアの存在および量を同定してもよい。PKCd,PKCa,およびPKCdとPKCaの比率は,クモ膜下出血後の脳血管痙攣の存在および進行の同定に有用でありうる。
(ii)血液凝固に関係する脳損傷の非特異的マーカー
プラスミンは78kDaのセリンプロティナーゼであり,架橋構造を有するフィブリンをタンパク分解し,凝血塊の溶解を起こす。70kDaのセリンプロティナーゼ阻害剤,α2-抗プラスミン(α2AP)は,プラスミンと1:1の化学量論的共有結合複合体を生成することによってプラスミン活性を調節する。得られる-150kDaのプラスミン-α2AP複合体(PAP。プラスミン阻害複合体(PIC)とも呼ばれる)は,α2APがフィブリン溶解の際に活性化されるプラスミンと接触した直後に生成される。PAPの正常な血清濃度は<1μg/ml(6.9nM)である。血清PAP濃度は塞栓性および出血性卒中後に有意に上昇するが血栓性または腺窩性卒中では上昇せず,上昇の程度は損傷の重度および神経学的転帰と相関する(Seki, Y. ら, Am. J. Hematol. 50:155-160, 1995;Yamazaki, M. ら, Blood Coagul. Fibrinolysis 4:707-712, 1993;Uchiyama, S. ら, Semin. Thromb. Hemost. 23:535-541, 1997;Fujii, Y. ら, Neurosurgery 37:226-234, 1995)。一過性脳虚血発作後の血清PAP濃度の上昇を確認した報告はない。PAPの血清濃度の上昇はフィブリン溶解の活性化によると考えることができる。PAPの血清濃度の上昇は凝血塊の存在,またはフィブリン溶解の活性化の原因もしくは結果である症状に関係しうる。これらの症状にはアテローム性動脈硬化症,播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある。PAPはタンパク分解によるプラスミンの活性化の直後に生成される。血清PAPは塞栓性および出血性卒中において上昇する。血清濃度は卒中の発症後直ぐに上昇し,2週間にわたって持続しうる(Fujii, Y. ら, J. Neurosurg. 86:594-602, 1997)。更に,血清PAP濃度は出血性卒中では虚血性卒中より高くなりうる。これは出血に関係する血液凝固の活性化の程度の上昇を反映している。卒中に伴うPAPの血清濃度は6μg/ml(41nM)近くになりうる。PAPはフィブリン溶解の活性化,および最近のまたは断続的な凝血亢進状態の存在の特異的マーカーである。これは卒中または脳損傷に特異的ではなく,他の多くの疾病状態で上昇しうる。しかしながら,PAPを使用して出血性卒中を虚血性卒中と識別することは可能であり,血栓溶解療法のための患者の除外,並びに塞栓性および非塞栓性虚血性卒中の同定に有益である。
β-トロンボグロブリン(βTG)は血小板の活性化の際に放出される36kDaの血小板α顆粒成分である。βTGの正常な血清濃度は<40ng/ml(1.1nM)である。血清βTG濃度は虚血性および出血性卒中後に上昇する(Landi, G. ら, Neurol. 37:1667-1671, 1987)。血清中の上昇と損傷の重度または神経学的転帰との相関は見い出されていない。卒中における血清βTGの上昇に関する研究は非常に限られている。血清中のβTG濃度の上昇は血小板の活性化によるものと考えることができ,これは血管損傷の存在を間接的に示しうる。βTGの血清濃度の上昇は凝血塊の存在または血小板の活性化の原因となる症状と関係しうる。これらの症状にはアテローム性動脈硬化症,播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある。βTGは血小板の活性化および凝集の直後に循環中に放出される。これは血清中で2相の半減期を有し,10分,そしてその後の半減期は1時間という長さである(Switaiska, H.I. ら, J. Lab. Clin. Med. 106:690-700, 1985)。血清βTG濃度は種々の型の卒中で上昇することが報告されているが,これらの研究は完全に信頼できるものではないかもしれない。血液サンプリング過程で血小板の活性化を回避するために,特別な注意を払わなければならない。血小板の活性化は通常の血液サンプリングで一般的なことであり,人工的な血清βTG濃度の上昇を引き起こしうる。更に,血流中に放出されるβTGの量は個体の血小板数に依存し,かなり変化しうる。卒中に伴うβTGの血清濃度は70ng/ml(2nM)近くになりうる。βTGは血小板の活性化の特異的マーカーであるが,卒中または脳損傷に特異的ではなく,多くの他の疾病状態で上昇しうる。
血小板第4因子(PF4)は血小板の活性化の際に放出される40kDaの血小板α顆粒成分である。PF4は血小板活性化のマーカーであり,ヘパリンに結合し,それを中和する能力を有する。正常なPF4の血清濃度は<7ng/ml(175pM)である。血清PF4濃度は脳内梗塞後にわずかに上昇するが,脳内出血を有する個体では上昇しない(Carter, A.M. ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1124-1131, 1998)。更に,血清PF4濃度はクモ膜下出血の5-9日後に上昇し,これは脳血管痙攣の発症と関係しうる(Hirashima, Y. ら, Neurochem. Res. 22:1249-1255, 1997)。卒中における血清PF4の上昇に関する研究は非常に限られている。血清PF4濃度の上昇は血小板の活性化によるものと考えることができ,これは血管損傷の存在を間接的に示しうる。PF4の血清濃度の上昇は凝血塊の存在または血小板の活性化の原因となる症状と関係しうる。これらの症状にはアテローム性動脈硬化症,播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある。PF4は血小板の活性化および凝集の直後に循環中に放出される。これは血清中で2相の半減期を有し,1分,そしてその後の半減期は20分という長さである。血清中でのPF4の半減期はヘパリンの存在によって20-40分に延長されうる(Rucinski, B. ら, Am. J. Physiol. 251:H800-H807, 1986)。血液サンプリング過程で血小板の活性化を回避するために,特別な注意を払わなければならない。卒中に伴うPF4の血清濃度は200ng/ml(5nM)を超えうるが,この数値はサンプリング操作の際の血小板の活性化の影響を受けていると考えられる。更に,血清PF4濃度は血小板数に依存しており,濃度の見積もりに加えて第2の変数を測定することが必要とされる。最後に,アスピリンまたは他の血小板活性化阻害剤を摂取している患者は,血小板活性化のマーカーとしてのPF4の臨床的有用性を考え合わせて処理しなければならない。
フィブリノペプチドA(FPA)はトロンビンの作用によってフィブリノーゲンのアミノ末端から遊離される16個のアミノ酸,1.5kDaのペプチドである。フィブリノーゲンは肝臓で合成および分泌される。正常なFPAの血清濃度は<4ng/ml(2.7nM)である。血清FPAは一過性脳虚血発作(TIA)を含む全ての型の卒中後に上昇する(Fon, E.A. ら, Stroke 25:282-286, 1994;Tohgi, H.ら, Stroke 21:1663-1667, 1990;Landi, G. ら, Neurol. 37:1667-1671, 1987)。血清中のFPAの上昇は凝血の活性化によるものと考えることができ,FPAの血清濃度は神経学的転帰と相互に関係することが報告されているが,損傷の重度または程度(梗塞量)との関係は報告されていない(Feinberg, W.M. ら, Stroke 27:1296-1300, 1996)。FPAの血清濃度の上昇は凝血活性化の原因または結果である症状と関係する。これらの症状にはAMI,手術,癌,播種性血管内凝固,ネフローゼ,血栓性血小板減少性紫斑病,および不安定狭心症がある。FPAは凝血塊の生成の際に速やかに血流中に放出され,1ヶ月以上の間上昇したままでありうる。卒中後の最大血清FPA濃度は50ng/ml(34nM)を超えうる。
プロトロンビンフラグメント1+2はトロンビン活性化の際にトロンビンのアミノ末端から遊離される32kDaのポリペプチドである。F1+2の正常な血清濃度は<32ng/ml(1nM)である。血清F1+2濃度は腺窩性卒中および出血性卒中後に有意に上昇する(Kario, K. ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 16:734-741, 1996;Fujii, Y. ら, J. Neurosurg. 86:594-602, 1997)。他の型の虚血性卒中または一過性脳虚血発作に関係する血清F1+2濃度の上昇に関しては情報は得られていない。血清F1+2濃度の上昇は凝血活性化状態,特にトロンビンの生成を反映する。F1+2の血清濃度の上昇は凝血の原因または結果である症状と関係する。これらの症状には播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある。F1+2はトロンビン活性化の直後に血流中に放出される。血清F1+2濃度は腺窩性および出血性卒中で上昇するが,血流中への放出およびその後の除去の速度論についての情報は得られていない。F1+2は凝血の活性化および一般的な凝血亢進状態の存在の特異的マーカーである。これは卒中または脳損傷に特異的ではなく,多くの疾病状態で上昇しうるものであり,血液サンプリング操作でも人工的に上昇しうる。しかしながら,F1+2を使用して出血性卒中を虚血性卒中と識別することが可能でありえ,それは出血性卒中がより高い凝血の活性化を起こしうるためである。更に,血管損傷を有する患者は血清F1+2濃度が非常に上昇しうるが,塞栓性卒中後の最初の数時間に一般的に使用される血栓溶解療法から除外すべきである。血栓溶解療法の際の組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の輸液によってフィブリン溶解が活性化され,患者は凝血塊を保持できない。血管損傷を有する個体にtPAを投与すると,最終的に出血を起こしうる。
トロンビンは37kDaの血清プロティナーゼであり,フィブリノーゲンをタンパク分解によって切断してフィブリンを生成し,これは最終的に凝血塊生成の際,架橋網に組み込まれる。抗トロンビンIII(ATIII)は65kDaの血清プロティナーゼ阻害剤であり,トロンビン,XI因子,XIIa因子,およびIXa因子のタンパク分解活性の生理学的調節剤である。ATIIIの阻害活性はヘパリンの結合に依存する。ヘパリンはATIIIの阻害活性を2〜3オーダー増加させ,ATIIIによって阻害されるプロティナーゼをほとんど瞬時に不活性化する。ATIIIは共有結合した1:1化学量論的複合体の生成によって,その標的プロティナーゼを阻害する。約100kDaのトロンビン-ATIII複合体(TAT)の正常な血清濃度は<5ng/ml(50pM)である。血清TAT濃度は塞栓性および出血性卒中後に有意に上昇するが,血栓性または腺窩性卒中では上昇せず,上昇の程度は損傷の重度および神経学的転帰と相互に関係する(Takano, K. ら, Stroke 23:194-198, 1992;Fujii, Y. ら, J. Neurosurg. 86:594-602, 1997)。血清TAT濃度はTIAの後にも上昇しうる(Fon, E.A. ら, Stroke 25:282-286, 1994)。血清TAT濃度の上昇は凝血活性化状態,特にトロンビンの生成を反映している。TATの血清濃度の上昇は凝血活性化の原因または結果である症状と関係がある。これらの症状には播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある。TATは,この相互作用における制限因子であるヘパリンの存在下で,トロンビン活性化の直後に生成される。血清TATの半減期は5分であるが,これは種々の型の卒中で上昇する。出血性卒中では,血清濃度は発症後2時間以内にピークに達し,その後徐々に低下して,発症の2-3日後にベースラインとなる(Fujii, Y. J., Neurosurg. 88:614-615, 1998)。更に,血清TAT濃度は多くの場合,虚血性卒中より出血性卒中の方が高い。これは出血に伴う凝血活性化の程度の高さを反映している。卒中に関係する血清TAT濃度は250ng/ml(2.5nM)を超えうる(Fujii, Y. ら, Neurosurgery 37:226-234, 1995)。TATは凝血の活性化および一般的な凝血亢進状態の存在の特異的マーカーである。これは卒中または脳損傷に特異的ではなく,多くの疾病状態で上昇し,血液サンプリング操作でも人工的に上昇しうる。しかしながら,TATを使用して発症の12時間以内に出血性卒中を虚血性卒中と識別し,塞栓性および非塞栓性虚血性卒中を同定することが可能でありうる。更に,血管損傷を有する患者は血清TAT濃度が非常に高くなりうるが,一般に塞栓性卒中後の初めの数時間に使用される血栓溶解療法から除外すべきである。最後に,一定の放出パターンが同定されれば,TATの測定を使用して卒中の発症からの経過時間を概算できる。
D-ダイマーは分子量が約200kDaの架橋したフィブリンの分解産物である。D-ダイマーの正常な血清濃度は<150ng/ml(750pM)である。血清D-ダイマー濃度は塞栓性および出血性卒中後に有意に上昇するが,血栓性または腺窩性卒中では上昇せず,上昇の程度は損傷の重度および神経学的転帰と相互に関係する(Feinberg, W.M. ら, Stroke 27:1296-1300, 1996;Takano, K. ら, Stroke 23:194-198, 1992;Fujii, Y. ら, J. Neurosurg. 86:594-602, 1997)。更に,血清D-ダイマー濃度は一過性脳虚血発作(TIA)後に上昇する(Fon, E.A. ら, Stroke 25:282-286, 1994)。血管痙攣のある個体における出血性卒中の発症3日後に血清D-ダイマー濃度の顕著な上昇がある(Fujii, Y. ら, 上記)。血清D-ダイマー濃度の上昇はフィブリン溶解活性化状態,特に凝血塊の溶解を反映している。D-ダイマーの血清濃度の上昇は凝血塊の存在またはフィブリン溶解の活性化の原因もしくは結果である症状に関係する。これらの症状にはアテローム性動脈硬化症,播種性血管内凝固,AMI,手術,外傷,不安定狭心症,および血栓性血小板減少性紫斑病がある(Heinrich, J. ら, Thromb. Haemost. 73:374-379, 1995;Wada, H. ら, Am. J. Hematol. 58:189-194, 1998)。血清濃度は卒中の発症後まもなく上昇し,3日以内にピークに達した後,徐々に減少して発症の>1ヶ月後にベースラインとなる。更に,血清濃度は出血性卒中の方が虚血性卒中より高くなりうる。これは出血に関係する凝血活性化の程度が高いことを反映している。卒中に関係するD-ダイマーの血清濃度は3μg/ml(15nM)近くになりうる。D-ダイマーはフィブリン溶解活性化の特異的マーカーであり,最近の,または断続的な凝血亢進状態の存在を示しうるため,卒中または脳損傷に特異的ではなく,多くの他の疾病状態においても上昇しうる。しかしながら,D-ダイマーを使用して出血性卒中を虚血性卒中と識別することが可能でありえ,これは患者を血栓溶解療法から除外し,塞栓性および非塞栓性虚血性卒中を同定するのに有益である。更に,D-ダイマーを使用して,虚血性卒中の出血性転換および出血性卒中後の脳血管痙攣のような遷延型神経症候を検出しうる。
フォン・ビルブラント因子(vWF)は血小板,巨核球,および内皮細胞で生成される血漿蛋白質であり,220kDaのモノマーが結合して一連の高分子量マルチマーを形成したものからなる。これらのマルチマーの分子量は通常,600-20,000kDaの範囲である。vWFは循環中の凝固因子VIIIを安定化し,暴露された内皮下層並びに他の血小板への血小板の接着に介在することによって凝血過程に関与している。vWFのA1ドメインは血小板糖蛋白質lb-IX-V複合体および非線維性コラーゲンVI型に結合し,A3ドメインは線維性コラーゲンIおよびIII型に結合する(Emsley, J. ら, J. Biol. Chem. 273:10396-10401, 1998)。vWF分子に存在する他のドメインにはインテグリン結合ドメイン(血小板-血小板相互作用に介在する),プロテアーゼ切断ドメイン(11A型フォン・ビルブラント病の病因論に関係する)がある。vWFと血小板の相互作用は,正常な生理学的条件におけるvWFおよび血小板間の相互作用を阻害するように強く制御されている。vWFは通常,球状で存在し,非常に強いストレス条件下ではコンフォメーション変化を受けて伸長された鎖構造となり,一般にこれは血管損傷部位で見られる。このコンフォメーション変化によって分子の分子内ドメインが暴露され,vWFが血小板と相互作用できるようになる。更に,強いストレスによって内皮細胞からのvWF放出が起こり,より多くのvWF分子が血小板と相互作用できるようになる。vWFのコンフォメーション変化はリストセチンおよびボトロセチンのような非生理学的モジュレーターを添加することによってインビトロで誘導できる(Miyata, S. ら, J. Biol. Chem. 271:9046-9053, 1996)。血管損傷部位では,vWFが内皮下マトリクス中のコラーゲンと迅速に結合し,血小板と実質的に不可逆的に結合し,損傷部位で血小板および血管内皮下層間の架橋構造を効率的に形成する。vWFのコンフォメーション変化は内皮下マトリクスとの相互作用に必要とされないことも証拠によって示されている(Sixma, J.J.およびde Groot, P.G., Mayo Clin. Proc. 66:628-633, 1991)。これはvWFが血管損傷部位の暴露された内皮下マトリクスに結合し,局在化された非常に強いストレスによってコンフォメーション変化を受け,そして循環中の血小板に迅速に結合し,それが新たに形成された血栓に組み込まれることを示唆している。vWFの総量を測定することによって,当業者は卒中または心血管疾患に関係する総vWF濃度の変化を確認することができる。この測定は種々の形態のvWF分子の測定によって行いうる。A1ドメインの測定により循環中の活性vWFの測定が可能となり,これはA1ドメインが血小板結合に利用されることが可能なので前凝血状態が存在することを示す。この点に関して,暴露されたA1ドメインおよびインテグリン結合ドメインまたはA3ドメインのいずれかの両方を有するvWF分子を特異的に測定するアッセイによって,それぞれ血小板-血小板相互作用への介在または血小板の血管内皮下細胞への架橋への介在が可能である活性vWFの同定が可能となる。プロテアーゼ切断ドメインに特異的な抗体を利用するアッセイに使用する場合,これらのvWF型のいずれかの測定によって,フォン・ビルブラント症の有無に関わらず,いずれの個体でも種々のvWF型の循環中濃度を測定するのにアッセイを使用できるようになる。正常なvWFの血漿濃度は5-10μg/ml,または60-110%活性である(血小板凝集で測定)。特定の型のvWFの測定が卒中および心血管疾患を含むいずれかの型の血管疾患で重要でありうる。vWF濃度は卒中およびクモ膜下出血患者で上昇することが明らかになっているが,卒中後の死亡リスクの評価にも有用であると考えられる(Blann, A. ら, Blood Coagul. Fibrinolysis 10:277-284, 1999;Hirashima, Y. ら, Neurochem. Res. 22:1249-1255, 1997;Catto, A.J. ら, Thromb. Hemost. 77:1104-1108, 1997)。血漿vWF濃度はAMIおよび不安定狭心症を有する個体で上昇するが,安定狭心症では上昇しないことが報告されている(Goto, S. ら, Circulation 99:608-613, 1999;Tousoulis, D.ら, Int. J. Cardiol. 56:259-262, 1996;Yazdani, S. ら, J. Am. Coll. Cardiol. 30:1284-1287, 1997;Montalescot, G. ら, Circulation 98:294-299)。更に,血漿vWF濃度の上昇は不安定狭心症患者における有害な臨床的転帰を予測しうる(Montalescot, G. ら;上記)。vWFの血漿濃度は内皮細胞損傷または血小板活性化に関係する事象と関連して上昇しうる。vWFは血流中に高濃度で存在し,活性化の際に血小板および内皮細胞から放出される。vWFは血小板活性化,または,特に血小板の活性化および血管損傷部位への接着の傾向がある症状のマーカーとして最も有益であると考えられる。vWFのコンフォメーションは,部分的に狭窄した血管に伴うような強いストレスによって変化を受けることも知られている。血液が狭窄した血管を流れて通過する時,疾病にかかっていない個体の循環で遭遇するよりかなり強いストレスにさらされる。本発明の別の観点は,強いストレスから生じるvWFの型,および型と卒中の存在との相関関係を測定する。
組織因子は45kDaの細胞表面蛋白質であり,脳,腎臓,および心臓,そして転写的に制御された様式で血管周囲細胞および単球で発現される。TFはCa2+イオンの存在下でVIIa因子と複合体を形成し,これは膜に結合している時,生理学的に活性である。この複合体はX因子をタンパク分解して切断し,Xa因子を生成する。これは通常,血流から隔離されている。組織因子は血流中で,可溶な形態で,VIIa因子に結合した形態で,またはVIIa因子および組織因子経路阻害剤(Xa因子を含んでもよい)との複合体で,検出できる。正常なTFの血清濃度は<0.2ng/ml(4.5pM)である(Albrecht, S. ら, Thromb. Haemost. 75:772-777, 1996)。卒中後の血清TF濃度変化はこれまで記載されていない。しかしながら,TFはクモ膜下出血後のCSFで観察されている(Hirashima, Y. ら, Stroke 28:1666-1670, 1997)。血清中のTFの上昇は外因性凝血経路の活性化によるものであると考えることができ,血管損傷を示唆しうる。TFの血清濃度の上昇は外因性経路による凝血活性化の原因または結果である症状と関係する。これらの症状には播種性血管内凝固,虚血性心疾患,腎不全,脈管炎,および鎌状赤血球病がある(Takahashi, H. ら, Am. J. Hematol. 46:333-337, 1994;Koyama, T. ら, Br. J. Haematol. 87:343-347, 1994)。TFは血管損傷が血管外細胞損傷と合わさると直ぐに放出される。卒中に関係するTFの血清への放出速度論およびその後の除去を確認するには更なる調査が必要である。
(iii)脳損傷のための他の非特異的マーカー
卒中に関係する細胞損傷の非特異的血清マーカーは,外見上は急性心筋梗塞(AMI)後に見られるのと同様の様式に従う。クレアチンキナーゼMBイソエンザイム(CK-MB)は心組織中に高濃度で見られる細胞質ゾル酵素であり,死滅した筋肉細胞から血流中への放出後,AMIに関係する虚血に由来する心組織損傷の血清マーカーとして使用される。心トロポニンIおよびTは心組織筋原線維の細胞骨格蛋白質であり,不安定狭心症およびAMIの症例に関係する損傷した心筋からも放出される。更に,卒中および重度の頭部外傷は生命に関わる不整脈および肺浮腫を起こす可能性があるが,これも心トロポニンの血清レベルを上昇させる。最後に,ミオグロビンは筋細胞中に見られるヘム蛋白質であるが,これは心組織に特異的ではなく,AMIの初期段階でも上昇する。
ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)は2量体蛋白質であり,報告されているその活性には内皮細胞増殖,血管新生,および毛細管透過性の刺激がある。VEGFは種々の血管化組織で分泌される。酸素欠乏環境では,血管内皮細胞は損傷を受け,最終的には生存できない。しかしながら,それらの内皮細胞損傷は血管平滑筋細胞によるVEGFの生成を刺激する。血管内皮細胞はVEGFの存在下で高い生存率を示し,これはBcl-2の発現が介在すると考えられる作用である。VEGFはVEGF(189),VEGF(165),VEGF(164),VEGF(155),VEGF(148),VEGF(145),およびVEGF(121)で知られる種々のスプライシング異型で存在しうる。
インスリン様増殖因子-1(IGF-1)は広範に分布する7.5kDaの分泌蛋白質であり,発生の際に増殖ホルモンのタンパク同化および体形成作用に介在する(1,2)。循環中で,IGF-1は通常,IGF活性を制御するIGF結合蛋白質に結合する。正常なIGF-1の血清濃度は約160ng/ml(21.3nM)である。血清IGF-1濃度は虚血性卒中を有する個体で有意に低下することが報告されており,低下の程度は損傷の重度と相互に関係すると考えられる(Schwab, S. ら, Stroke 28:1744-1748, 1997)。外傷および免疫系の高度な活性化を有する個体では血清IGF-1濃度が低下することが報告されている。その広範な発現のため,血清IGF-1濃度は脳虚血ではない症例でも低下しうる。興味深いことに,IGF-1の血清濃度は,その細胞発現が梗塞領域で亢進的に調節されるにも関わらず,虚血性卒中後に低下する(Lee, W.H.およびBondy, C., Ann. N. Y. Acad. Sci. 679:418-422, 1993)。血清濃度の低下は増殖因子の要求の増加または代謝によるクリアランス速度の上昇を反映する。血清レベルは卒中の発症から24時間後に有意に低下し,10日間にわたって低下したままであった(Schwab, S. ら, Stroke 28:1744-1748, 1997)。血清IGF-1は感度の高い脳損傷の指標となりうる。しかしながら,IGF-1の広範な発現様式は,全ての組織が血清IGF-1濃度に影響を与える可能性があることを示唆しており,これによって,卒中のマーカーとしてIGF-1を使用するアッセイの特異性は低くなる。この点でIGF-1は脳虚血の脳脊髄液マーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。
インターロイキン-1β(IL-1β)は急性期反応に関係する17kDaの分泌前炎症サイトカインであり,多くの疾病の病原性メディエーターである。IL-1βは通常,マクロファージおよび上皮細胞で生成される。IL-1βはアポトーシスを起こしている細胞からも放出される。正常なIL-1βの血清濃度は<30pg/ml(1.8pM)である。血清IL-1β濃度は出血性卒中後に一時的にのみ上昇することが見いだされており,いくつかの報告で,IL-1βの血清濃度は虚血性卒中後には上昇しないことが示されている(Hirashima, Y. ら, Neurochem. Res. 22:1249-1255, 1997;Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996;Fassbender, K. ら, J. Neurol. Sci. 122:135-139, 1994;McKeating, E.G. ら, Br. J. Anaesth. 78:520-523, 1997)。IL-1βは卒中後にCSFで上昇する。血清IL-1β濃度の上昇は免疫系および細胞死の活性化を示す。血清IL-1βの上昇は不特定の前炎症状態,例えば外傷,感染,または他の急性期疾患に関係する。血清IL-1βは2相の半減期を有し,5分,そしてその後の半減期はそれより長い4時間である(Kudo, S. ら, Cancer Res. 50:5751-5755, 1990)。IL-1β蛋白質発現は虚血の1時間以内にニューロンおよびグリア細胞で上昇し,数日にわたって高いままである(Kim, J.S., 上記)。IL-1βは卒中後短時間の間のみ上昇する可能性があり,発症からこの時間内の血清サンプルは得られなかった。IL-1βは卒中発症後の初期段階における脳損傷の結果である細胞死の有用なマーカーであることがわかるかもしれない。
インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)は17kDaのIL−1ファミリーのメンバーであり,主に肝細胞,上皮細胞,単球,マクロファージ,および好中球で発現される。IL-1raは細胞内型および細胞外型の両方を有し,それらは異なるスプライシングによって生成される。IL-1raはIL-1の生理学的活性の制御に関与していると考えられる。IL-1raはIL-1のような生理学的活性を有さず,IL-1βと同様の親和性でT細胞および線維芽細胞上のIL-1受容体と結合し,IL-1αおよびIL-1βの結合を阻害し,そしてその生体活性を阻害することができる(Stockman, B.J. ら, Biochemistry 31:5237-5245, 1992;Eisenberg, S.P. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:5232-5236, 1991;Carter, D.B. ら, Nature 344:633-638, 1990)。IL-1raは通常,血漿中にIL-1より高濃度で存在し,これはIL-1よりIL-1raレベルの方が疾病の重度と深い相関関係を有することを示唆している(Biasucci, L.M. ら, Circulation 99:2079-2084, 1999)。更に,IL-1raが急性期蛋白質であるという証拠がある(Gabay, C. ら, J. Clin. Invest. 99:2930-2940, 1997)。正常なIL-1raの血漿濃度は<200pg/ml(12pM)である(Biasucci, L.M. ら, 上記)。動物モデルを使用した初期の研究で,IL-1ra濃度が脳虚血後に上昇することが証明されており,また,クモ膜下出血患者の脳脊髄液中でIL-1raが上昇している証拠がある(Legos, J.J. ら, Neurosci. Lett. 282:189-192, 2000;Mathiesen, T. ら, J. Neurosurg. 87:215-220, 1997)。更に,IL-1raが脳虚血後の神経保護において役割を果たしている証拠がある(Yang, G.Y. ら, Brain Res. 751:181-188, 1997;Stroemer, R.P. および Rothwell, N.J., J. Cereb. Blood Flow Metab. 17:597-604, 1997)。IL-1raの血漿濃度はAMI,およびAMI,死亡,または抗療性狭心症に進行した不安定狭心症患者でも上昇する(Biasucci, L.M. ら, 上記;Latini, R. ら, J. Cardiovasc. Pharmacol. 23:1-6, 1994)。更に,IL-1raは悪化していないAMIに比較して重度のAMIでは有意に上昇した(Latini, R. ら, 上記)。IL-1raの血漿濃度の上昇は炎症の活性化または急性期反応に関係する症状と関連し,それらには感染,外傷,および関節炎がある。IL-1raは前炎症状態で血流中に放出され,急性期反応に関係するものとしても放出されうる。血流からのIL-1raのクリアランスの主なソースは腎臓および肝臓であると考えられる(Kim, D.C. ら, J. Pharm. Sci. 84:575-580, 1995)。更にこれは前炎症状態でIL-1の放出と共に,またはその直後に放出されると考えられ,IL-1より高濃度で見られる。これはIL-1raがIL-6の生成を誘引するIL-1活性の有用な間接的マーカーとなりうることを示している。従ってIL-1raは卒中の診断マーカーとして有用なだけでなく,IL-6濃度が有意に上昇する前の,急性期反応の初期段階の同定にも有用でありうる。
インターロイキン-6(IL-6)は20kDaの分泌蛋白質で,ヘマトポイエチンファミリーの前炎症サイトカインである。IL-6は急性期の反応物質であり,接着分子を含む種々の蛋白質の合成を刺激する。その主な機能は急性期の肝蛋白質生成に介在することである。IL-6は通常,マクロファージおよびTリンパ球で生成される。正常なIL-6の血清濃度は<10pg/ml(0.5pM)である。血清IL-6濃度は虚血性および出血性卒中のいずれの後にも上昇する(Fassbender, K. ら, J. Neurol. Sci. 122:135-139, 1994;Hirashima, Y. ら, Neurochem. Res. 22:1249-1255, 1997;Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996)。IL-6濃度がTIA後に上昇するかどうかは知られていない。興味深いことに,IL-6は卒中後のCSFでより有意に上昇し,これは脳組織におけるIL-6の生成を反映しうるもので,そこで神経保護の役割を果たしているのかもしれない(Kim, J.S. J., 上記)。血清IL-6の上昇は急性期反応の免疫系の活性化を示しており,損傷の重度および神経学的転帰と相互に関係することが報告されている。血清IL-6の上昇は外傷,感染,または他の急性期疾患のような不特定の前炎症状態と関係がある。血清IL-6の半減期は約2時間であり,卒中後に上昇する。血清IL-6濃度は卒中発症後1時間以内に有意に上昇し,10時間後にプラトーとなる。このプラトー状態は2.5日間継続し,その後4-5日にわたって徐々にベースのレベルまでもどる(Fassbender, K. ら, 上記)。血清IL-6濃度は出血性卒中を有する個体でより長時間にわたって上昇しうる。IL-6の最大血清濃度は300pg/ml(15pM)を超えうる。血清IL-6は感度の高い脳損傷のマーカーであると考えられる。更に血清IL-6の上昇の持続期間は虚血性卒中を出血性卒中と識別するための手段となる。
インターロイキン-8(IL-8)は単球,内皮細胞,肺胞マクロファージ,および線維芽細胞で生成される6.5kDaのケモカインである。IL-8は好中球およびT細胞の走化性および活性化を誘導する。
トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)は25kDaの分泌ホモまたはヘテロ3量体蛋白質であり,TNFαアンタゴニストおよび抗炎症メディエーターである。これは細胞増殖および分化に対して刺激作用および阻害作用の両方を有する。TGFβは通常,中枢神経系のグリア細胞およびニューロン,軟骨細胞,単球,マクロファージ,および血小板で生成される。正常なTGFβの血清濃度は約120ng/ml(4.8nM)である。血清TGFβ濃度は虚血性および出血性卒中を有する個体で低下することが報告されており,その程度は損傷の重度または神経学的転帰と有意な関係を有さなかった(Kim, J.S. ら, Stroke 27:1553-1557, 1996)。TGFβの血清濃度の低下は外傷または感染のような不特定の前炎症状態から起こり,その結果としてTNFαアンタゴニストおよび抗炎症剤としてTGFβが消費される。TGFβの血清濃度は卒中後に低下する。血清濃度の低下は,前炎症状態におけるTGFβおよび他の抗炎症メディエーターの要求の増加を反映している。血清レベルは卒中発症の24時間および3日後に有意に低下し,発症の7日後にコントロール値近くになった。卒中に関して血清TGFβ濃度の変化を調査するためには更なる研究が必要である。血清TGFβは感度の高い脳損傷のマーカーでありうる。しかしながら,不特定の前炎症状態の存在がTGFβの血清濃度に影響を与えうる。この点で,TGFβは脳虚血のCSFマーカーとして最も好適でありえ,その主なソースは神経組織である。更に,血清TGFβ濃度は卒中患者で一時的にのみ低下すると考えられ,個体間で変化する多くの因子(血小板数を含む)が血清TGFβ濃度に影響しうる。
腫瘍壊死因子α(TNFα)は17kDaの分泌前炎症サイトカインであり,急性期反応に関係し,多くの疾病の病原性メディエーターである。TNFαは通常,マクロファージおよびナチュラルキラー細胞で生成される。正常なTNFαの血清濃度は<40pg/ml(2pM)である。卒中後の血清TNFα濃度の変化の調査から得られた結果は様々なものが混在している(Carlstedt, F. ら, J. lntern. Med. 242:361-365, 1997;Fassbender, K. ら, J. Neurol. Sci. 122:135-139, 1994;Hirashinia, Y. ら, Neurochem. Res. 22:1249-1255, 1997;Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996;McKeating, E.G. ら, Br. J. Anaesth. 78:520-523, 1997)。TNFα蛋白質の発現は虚血の1時間以内にニューロンおよびグリア細胞で上昇し,数日間上昇したままである。TNFαは卒中後,短時間しか上昇しない可能性があり,血清サンプルは発症からこの時間以内に得られなかった。血清中のTNFαの上昇は外傷,感染,または他の急性期疾患のような不特定の前炎症状態と関係する。血清TNFαの半減期は約1時間であり,最大血清濃度は7.5ng/ml(375pM)を超えうる。TNFαの血清濃度の上昇は免疫系の急性期反応の活性化を示すと考えられる。
C反応性蛋白質(CRP)は21kDaのサブユニットを有するホモ5量体Ca2+結合型急性期蛋白質であり,ホストの防御に関係する。CRPは微生物膜の共通要素であるホスホリルコリンに選択的に結合する。ホスホリルコリンは哺乳動物細胞膜にも見られるが,CRPと反応できる形態では存在しない。CRPとホスホリルコリンの相互作用により,細菌の凝集作用およびオプソニン作用,並びに補体カスケードの活性化が促進されるが,これらは全て細菌のクリアランスに関係する。更に,CRPはDNAおよびヒストンと相互作用でき,CRPは損傷した細胞から循環中に放出される核物質のスカベンジャーであることが示唆されている(Robey, F.A. ら, J. Biol. Chem. 259:7311-7316, 1984)。CRP合成はIL-6,および間接的にIL-1によって誘導されるが,これはIL-1が肝シヌソイドにおいてクッパー細胞によるIL-6の合成の引き金となるためである。正常なCRPの血漿濃度は,健康な集団の90%で<3μg/ml(30nM),健康な個体の99%で<10μg/ml(100nM)である。結晶CRP濃度は比濁分析またはELISAで測定できる。CRPの血漿濃度はAMIおよび不安定狭心症患者で有意に上昇するが,安定狭心症では上昇しない(Biasucci, L.M. ら, Circulation 94:874-877, 1996;Biasucci, L.M. ら, Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996;Benamer, H. ら, Am. J. Cardiol. 82:845-850, 1998;Caligiuri, G. ら, J. Am. Coll. Cardiol. 32:1295-1304, 1998;Curzen, N.P. ら, Heart 80:23-27, 1998;Dangas, G. ら, Am. J. Cardiol. 83:583-5, A7, 1999)。CRPは異型狭心症または解決可能な(resolving)不安定狭心症を有する個体の血漿でも上昇しうるが,雑多な結果が報告されている(Benamer, H. ら, 上記;Caligiuri, G. ら, J. Am. Coll. Cardiol. 32:1295-1304, 1998)。CRPはAMIまたは不安定狭心症患者の転帰を予測するのには有用でない(Curzen, N.P. ら, Heart 80:23-27, 1998;Rebuzzi, A.G. ら, Am. J. Cardiol. 82:715-719, 1998;Oltrona, L. ら, Am. J. Cardiol. 80:1002-1006, 1997)。CRP濃度は急性期反応を誘引しうる症状,例えば感染,手術,外傷,および卒中を有する個体由来の血漿で上昇する。CRPは合成直後に血流中に放出される分泌蛋白質である。CRP合成はIL-6によって亢進的に調節され,血漿CRP濃度は刺激の6時間以内に有意に上昇する(Biasucci, L.M. ら, 上記)。血漿CRP濃度は刺激後約50時間でピークとなり,低下し始め,血流中での半減期は約19時間である(Biasucci, L.M. ら, Am. J. Cardiol., 上記)。他の調査により,不安定狭心症を有する個体における血漿CRP濃度が確認されている(Biasucci, L.M. ら, 上記)。CRPの血漿濃度はACSを有する個体で100μg/ml(1μM)近くになりうる(Biasucci, L.M. ら, 上記;Liuzzo, G. ら, Circulation 94:2373-2380, 1996)。CRPは急性期反応の特異的マーカーである。CRPの上昇はAMIおよび不安定狭心症を有する個体の血漿で確認されており,これはアテローム斑破裂または心組織損傷に関係する急性期反応の活性化の結果である可能性が最も高い。CRPはACSの非常に非特異的なマーカーであり,血漿中のCRP濃度の上昇は免疫系の活性化に伴う無関係の症状からも起こりうる。ACSに対するその高度な非特異性にも関わらず,CRPは,心組織損傷に特異的な他のマーカーと共に使用する場合,不安定狭心症およびAMIの同定に有用でありうる。血漿は高濃度のCRPを含有し,報告されている健康な個体の血液中のCRP濃度にはかなりの変動がある。外見上健康な個体の血漿CRP濃度の上限を測定するには,一連の血漿サンプルについての均一のアッセイ(競合免疫アッセイが最も適当と思われる)を使用した更なる調査が必要である。
接着分子は炎症反応に関係しており,損傷の結果として発現レベルが変化するので,急性期反応物質とみなすことができる。それらの接着分子の例としてE-セレクチン,細胞間接着分子-1,血管細胞接着分子などがある。
E-セレクチンはELAM-1およびCD62Eとも呼ばれ,IL-1およびTNFαに応答して内皮細胞で発現される140kDaの細胞表面C型レクチンであり,好中球のリクルートの際に好中球と内皮細胞との"ローリング"相互作用に介在する。正常なE-セレクチンの血清濃度は約50ng/ml(2.9nM)である。卒中後の血清E-セレクチン濃度の変化に関する調査は,異なる結果が混在して報告されている。虚血性卒中後の血清E-セレクチン濃度の上昇を報告している研究もあれば,変化が見いだされなかったものもある(Bitsch, A. ら, Stroke 29:2129-2135, 1998;Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996;Shyu, K.G. ら, J. Neurol. 244:90-93, 1997)。E-セレクチン濃度はクモ膜下出血を有する個体のCSFで上昇し,血管痙攣を予測しうる(Polin, R.S. ら, J. Neurosurg. 89:559-567, 1998)。血清E-セレクチン濃度の上昇は免疫系の活性化を示す。血清E-セレクチン濃度はアテローム性動脈硬化症,種々の型の癌,子癇前症,糖尿病,嚢胞性線維症,AMI,および他の不特定の炎症状態を有する個体で上昇する(Hwang, S.J. ら, Circulation 96:4219-4225, 1997;Banks, R.E. ら, Br. J. Cancer 68:122-124, 1993;Austgulen, R. ら, Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 71:53-58, 1997;Steiner, M. ら, Thromb. Haemost. 72:979-984, 1994;De Rose, V. ら, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:1234-1239, 1998)。E-セレクチンの血清濃度は虚血性卒中後に上昇しうるが,これらの変化が一過性のものであるか,または未だ確認されていない機構によって制御されているのかは明らかでない。血清E-セレクチンは内皮細胞損傷の特異的マーカーである。しかしながらこれは,炎症状態の発生の原因となる種々の症状を有する個体の血清で上昇するため,卒中または脳損傷の特異的マーカーではない。更に,血清E-セレクチン濃度の上昇は卒中に関係するリスク因子のいくつかと関係する。
細胞間接着分子(ICAM-1)(CD54とも呼ばれる)は85-110kDaの細胞表面結合型免疫グロブリン様インテグリンリガンドであり,白血球のリクルートおよび移動の際に抗原提示細胞および内皮細胞への白血球の結合を促進する。ICAM-1は通常,血管内皮,造血幹細胞,および非造血幹細胞で生成され,腸および表皮に見られる。正常なICAM-1の血清濃度は約250ng/ml(2.9nM)である。卒中後の血清ICAM-1濃度の変化に関する調査は,異なる結果が混在して報告されている(Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996;Laskowitz, D.T. ら, J. Stroke Cerebrovasc. Dis. 7:234-241, 1998)。ほとんどの報告は,血清ICAM-1濃度が虚血性卒中後には上昇するが一過性脳虚血発作後には上昇しないことを示しており,血清濃度と損傷または神経学的転帰間の相互関係はないことが立証されている(Bitsch, A. ら, Stroke 29:2129-2135, 1998;Shyu, K.G. ら, J. Neurol. 244:90-93, 1997)。ICAM-1濃度はクモ膜下出血患者のCSFでも上昇する(Polin, R.S. ら, J. Neurosurg. 89:559-567, 1998)。ICAM-1の血清濃度の上昇は免疫系の活性化を示している。血清ICAM-1濃度は頭部外傷,アテローム性動脈硬化症,種々の型の癌,子癇前症,多発性硬化症,嚢胞性線維症,AMI,および不特定の他の炎症状態を有する個体でも上昇する(McKeating, E.G. ら, Acta Neurochir. Suppl. (Wien) 71:200-202, 1998;Hwang, S.J. ら. Circulation 96:4219-4225, 1997;Banks, R.E. ら, Br. J. Cancer 68:122-124, 1993;Austgulen, R. ら, Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 71:53-58, 1997;De Rose, V. ら, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 157:1234-1239, 1998)。ICAM-1の血清濃度は虚血性卒中後に上昇する。血清濃度は発症の24時間以内にピークとなり,徐々に回復して5日以内に正常値に戻る(Bitsch, A. ら, 上記)。血清ICAM-1濃度は卒中を有する個体で400ng/ml(4.6nM)を超えうる(Polin, R.S. ら, 上記)。卒中に関して血清ICAM-1濃度の変化を調査するためには更なる研究が必要である。血清ICAM-1は脳損傷の非常に非特異的なマーカであり,これは炎症状態の発生の原因となる種々の症状を有する個体の血清中で上昇するからである。更に,血清ICAM-1濃度の上昇は卒中に関係するリスク因子のいくつかにも関係する。
血管細胞接着因子(VCAM)(CD106とも呼ばれる)は100-110kDaの細胞表面結合型免疫グロブリン様インテグリンリガンドであり,リンパ球リクルートの際にBリンパ球および発達中のTリンパ球の抗原提示細胞への結合を促進する。VCAMは通常,血管および脈管,心臓,および他の体腔の表面を覆う内皮細胞で生成される。正常なVCAMの血清濃度は約650ng/ml(6.5nM)である。血清VCAM濃度は虚血性卒中後の個体で上昇するが,TIAでは上昇しないことが報告されており,血清濃度と損傷の重度または神経学的転帰の間の相互関係は確認されていない(Bitsch, A. ら, Stroke 29:2129-2135, 1998)。VCAM濃度はクモ膜下出血患者の脳脊髄液中でも上昇する(Polin, R.S. ら, J. Neurosurg. 89:559-567, 1998)。血清VCAM濃度の上昇は免疫系の活性化および炎症反応の存在を示していると考えられる。血清VCAM濃度はアテローム性動脈硬化症,種々の型の癌,糖尿病,子癇前症,血管損傷,および他の不特定な炎症状態を有する個体で上昇する(Otsuki, M. ら, Diabetes 46:2096-2101, 1997;Banks, R.E. ら, Br. J. Cancer 68:122-124, 1993;Steiner, M. ら, Thromb. Haemost. 72:979-984, 1994;Austgulen, R. ら, Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 71:53-58, 1997)。VCAMの血清濃度は虚血性卒中後に上昇する。血清濃度は発症の5日後に上昇し,発症の14日後に正常値に戻る。血清VCAM濃度は卒中患者で900ng/ml(9nM)近くになりうる。卒中に関して血清VCAM濃度の変化を調査するには更なる研究が必要である。血清VCAM濃度は内皮細胞損傷の程度と関係があると考えられる。血清VCAMは内皮細胞損傷の感度の高いマーカーでありうる。しかしながら,血清VCAMの上昇は卒中または脳損傷に特異的ではない。更に,現在の情報では,VCAMの血清濃度は卒中の5日後までは有意に上昇しないことが示されている。この時点は治療の時間枠を十分超えており,VCAMが卒中の好適なマーカーではないことを示している。
単球走化性蛋白質-1(MCP-1)(単球遊走誘引蛋白質-1(monocyte chemoattractant protein-1)とも呼ばれる)は10kDaの走化性因子であり,単球および好塩基球を誘引するが,好中球または好酸球は誘引しない。MCP-1は通常,単量体およびホモ2量体間の平衡状態で見られ,通常,単球および血管内皮細胞で生成,分泌される(Yoshimura, T. ら, FEBS Lett. 244:487-493, 1989;Li, Y.S. ら, Mol. Cell. Biochem. 126:61-68, 1993)。MCP-1は単球浸潤を伴う種々の疾病(乾癬,リウマチ性関節炎,およびアテローム性動脈硬化症を含む)の病因と関係があるとされている。正常な血漿中のMCP-1濃度は<0.1ng/mlである。動物モデルを使用した調査により,MCP-1のmRNAおよび蛋白質はいずれも,虚血性脳組織での発現量が増加することが証明されている(Wang, X. ら, Stroke 26:661-665, 1995;Yamagami, S. ら, J. Leukoc. Biol. 65:744-749, 1999)。MCP-1の血清濃度の上昇は炎症に関係する種々の症状,例えばアルコール性肝疾患,間質性肺疾患,敗血症,全身性エリテマトーデス,および急性冠状動脈症候群(acute coronary syndromes)に関係する(Fisher, N.C. ら, Gut 45:416-420, 1999;Suga, M. ら, Eur. Respir. J. 14:376-382, 1999;Bossnik, A.W. ら, Blood 86:3841-3847, 1995;Kaneko, H. ら, J. Rheumatol. 26:568-573, 1999;Nishiyama, K. ら, Jpn. Circ. J. 62:710-712, 1998;Matsumori, A. ら, J. Mol. Cell. Cardiol. 29:419-423, 1997)。MCP-1は単球および内皮細胞の活性化の際,血流中に放出される。卒中に関するMCP-1血流への放出および血流からのクリアランスの速度論は現在のところまだ知られていない。
発現が損傷の結果として,急性期蛋白質によって直接的に,または急性期蛋白質と同時に,特異的に変更される蛋白質は,急性期反応物質であるとみなすことができる。卒中に関しては,細胞死の直接的な結果としてその血清濃度が上昇するような蛋白質は急性期反応物質であるとはみなされないが,遺伝子発現とそれによって生じる分泌および血清濃度が脳損傷または虚血に応答して変化するような蛋白質は急性期反応物質とみなされる。それらの蛋白質の例にはマトリクス・メタロプロティナーゼ-3およびマトリクス・メタロプロティナーゼ-9がある。
マトリクス・メタロプロティナーゼ-3(MMP-3)(ストロメリシン-1とも呼ばれる)は45kDaの亜鉛およびカルシウム結合型プロティナーゼであり,不活性な60kDaの前駆体として合成される。成熟MMP-3はプロテオグリカン,フィブリネクチン,ラミニン,およびIV型コラーゲンを切断するが,I型コラーゲンは切断しない。MMP-3は種々の細胞で合成されるが,それらには平滑筋細胞,マスト細胞,マクロファージ誘導型泡沫細胞,Tリンパ球,および内皮細胞がある(Johnson, J.L., ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。MMP-3は他のMMPのように細胞外マトリクスのリモデリングに関係し,これは損傷後または細胞の脈管間移動の際に起こりうる。MMP-3は通常,血漿中に<125ng/mlの濃度でみられる(Zucker, S. ら, J. Rheumatol. 26:78-80, 1999)。血清MMP-3濃度は年齢と共に上昇することが明らかになっており,男性の濃度は女性より約2倍高い(Manicourt, D.H. ら, Arthritis Rheum. 37:1774-1783, 1994)。MMP-3はアテローム斑のショルダー域(最も破裂しやすい領域である)で見られ,アテローム斑の不安定化に関係しうる(Johnson, J.L. ら, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。従って,循環MMP-3濃度はアテローム斑の破裂の結果として上昇しうる。血清MMP-3はマスト細胞の脱顆粒を誘導する炎症状態で上昇しうる。血清MMP-3濃度は関節炎および全身性エリテマトーデス患者で上昇する(Zucker, S. ら, J. Rheumatol. 26:78-80, 1999;Keyszer, G. ら, J. Rheumatol. 57:392-398, 1998;Keyszer, G. ら, J. Rheumatol. 26:251-258, 1999)。血清MMP-3は前立腺癌,尿路上皮癌,および腎炎患者でも上昇する(Lein, M. ら, Urologe A 37:377-381, 1998;Gohji, K. ら, Cancer 78:2379-2387, 1996;Akiyama, K. ら, Res. Commun. Mol. Pathol. Pharmacol. 95:115-128, 1997)。MMP-3の血清濃度は他の型の癌患者でも上昇しうる。血清MMP-3はヘモクロマトーシス患者で低下する(George, D.K. ら, Gut 42:715-720, 1998)。MMP-3はマスト細胞の脱顆粒の際に放出され,おそらくはアテローム斑破裂の際に放出される。この点で,MMP-3は斑破裂に関係する卒中のマーカーとして有用でありうる。
マトリクス・メタロプロティナーゼ9(MMP-9)は好中球および種々の組織で生成される92kDaの分泌型セリンプロティナーゼであり,その基質には細胞外マトリクスの成分が含まれる。MMPは不活性なチモーゲンとして合成され,タンパク分解によって切断して活性MMPを生成する。それらは2価のカチオン(最も一般的にはZn2+)と結合する能力を有し,この結合はプロティナーゼ活性に必須である。癌細胞は浸潤および転移の際にMMPを生成して細胞外マトリクスの分解を促進する場合がある。MMPは通常,脳に見られ,その発現は種々のサイトカインで誘導される(Mun-Bryce, S. および Rosenberg, GA., J. Cereb. Blood Flow Metab. 18:1163-1172, 1998)。正常なMMP-9の血清濃度は<35ng/ml(380pM)である。ラットモデルでは脳虚血後に血清MMP-9濃度がわずかに上昇するが,ヒトに関する研究は報告されていない(Romanic, A.M. ら, Stroke 29:1020-1030, 1998)。MMP-9の遺伝子発現はラットにおいて脳出血または前炎症性サイトカインの脳内注射の16-24時間後に最大まで上昇する(Rosenberg, G.A., J. Neurotrauma 12:833-842, 1995)。更に,MMP-9は遷延型神経症候,特に虚血性卒中の出血性への転換および出血性卒中後の血管痙攣の発生に部分的に関与しうる。この点で,血清MMP-9濃度の上昇は遷延型神経症候の発生の可能性を示しうる。MMP-9の血清濃度の上昇は種々の癌腫および巨細胞性動脈炎と関係しうる(Blankaert, D. ら, J. Acquir. Immune Defic. Syndr. Hum. Retrovirol. 18:203-209, 1998;Endo, K. ら, Anticancer Res. 17:2253-2258, 1997;Hayasaka, A. ら, Hepatology 24:1058-1062, 1996;Moore, D.H. ら, Gynecol. Oncol. 65:78-82, 1997;Sorbi, D. ら, Arthritis Rheum. 39:1747-1753, 1996)。MMP-9は種々の型の卒中後に生成され,循環中に放出されるが,これらの研究はヒト由来サンプルを使用しては行われていない。MMP-9の血清濃度はヒトで600ng/ml(6.5nM)を超えることが証明されている。MMP-9は細胞外マトリクス分解の特異的マーカーであるが,卒中または脳損傷に特異的ではなく,癌のような他の疾病状態でも上昇しうる。しかしながら,血清MMP-9濃度の上昇が測定されれば,それは個体が虚血性卒中後の出血性への転換,または出血性卒中後の血管痙攣の発生リスクが高いことを示しうる。この決定は,MMP-9がこれらの遷延型神経症候の病原性メディエーターであるという仮説に基づいている。
脳損傷の他の非特異マーカーにはカスパーゼ-3,B型ナトリウム利尿ペプチド,心筋トロポニンI,ヘッドアクチベータ,およびヘモグロビンα2鎖がある。更に,本発明は卒中およびTIAの診断のための新規のマーカーを同定する方法を提供する。
カスパーゼ-3(CPP-32,YAMA,およびアポパインとも呼ばれる)はインターロイキン-1β変換酵素(ICE)様細胞内システインプロティナーゼであり,細胞アポトーシスの際に活性化される。カスパーゼ-3は32kDaの不活性な前駆体として存在し,アポトーシス誘導の際にタンパク分解によって活性化され,20kDaおよび11kDaのサブユニットのヘテロ2量体となる(Fernandes-Alnemri, T. ら, J. Biol. Chem. 269:30761-30764, 1994)。その細胞基質にはポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)およびステロール調節要素結合蛋白質(SREBP)がある(Liu, X. ら, J. Biol. Chem. 271:13371-13376, 1996)。正常なカスパーゼ-3の血漿濃度は知られていない。動物モデルでの研究により,カスパーゼ-3の発現は脳虚血後に上昇することが証明されている(Phanithi, P.B. ら, Neuropathol. 20:273-282, 2000;Kim, G.W. ら, J. Cereb. Blood Flow Metab. 20:1690-1701, 2000)。また,永続性および一過性脳虚血患者では,脳虚血によってカスパーゼ-3の活性化が起こる(Love, S. ら, Neuroreport 11:2495-2499, 2000)。更に,虚血および低酸素に伴う心筋細胞におけるアポトーシス誘導の仮説を支持する証拠は増えている(Saraste, A., Herz. 24:189-195, 1999;Ohtsuka, T. ら, Coron. Artery Dis. 10:221-225, 1999;James, T.N., Coron. Artery Dis. 9:291-307, 1998;Bialik, S. ら, J. Clin. Invest. 100:1363-1372, 1997;Long, X. ら, J. Clin. Invest. 99:2635-2643, 1997)。血漿カスパーゼ-3濃度の上昇はアポトーシスに関与する生理学的事象に関係しうる。カスパーゼ-3の血流への放出および血流からの除去の反応速度論は現在のところ未知である。興味深いことに,虚血誘導型アポトーシスは他の型のアポトーシスと区別される特徴を有しうるが,カスパーゼ-3の誘導は全てのアポトーシス経路に共通である。
トロポニンI(TnI)は25kDaの,トロポニンTIC複合体の阻害要素であり,全ての横紋筋組織に見られる。TnIはCa2+の非存在下でアクチンに結合し,アクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害する。心組織に見られるTnIアイソフォーム(cTnI)は骨格筋TnIとは40%相違しており,これによって両アイソフォームの免疫学的識別が可能となる。正常なcTnIの血漿濃度は<0.1ng/ml(4pM)である。血漿cTnI濃度はAMIを含む急性冠状動脈症候群患者で上昇する。その心臓特異性のため,cTnIは卒中に同様に関係する種々のマーカーの上昇の心臓的要因を除外するのに有用でありうる。この点で,心筋トロポニンTIC複合体,並びにその総cTnIとの比率の測定は,卒中を診断するのに使用されるマーカーの上昇の心臓的要因を同定するのに重要でありうる。
ヘッドアクチベータ(HA)は11アミノ酸の,1.1kDaの神経ペプチドであり,視床下部および腸に見られる。これは元来,淡水腔腸動物ヒドラに見られ,頭部特異的成長および分化因子として作用する。ヒトでは,脳の発達の際の成長調節物質であると考えられる。正常な血清HA濃度は<0.1ng/ml(100pM)である。血清HA濃度は神経または神経内分泌起源の腫瘍を有する患者で持続的に上昇する(Schaller, H.C. ら, J Neurooncol. 6:251-258, 1988;Winnikes, M. ら, Eur. J. Cancer 28:421-424, 1992)。卒中に関係する血清HAの上昇に関する研究は報告されていない。HAは神経または神経内分泌起源の腫瘍で継続的に分泌されると推定されており,血清濃度は腫瘍の除去後に正常に戻る。血清HA濃度は神経内分泌誘導型腫瘍を有する個体で6.8ng/ml(6.8nM)を超えうる。卒中パネル(panel)の一部としてのHAの有用性は神経または神経内分泌起源の腫瘍を有する個体を同定することである。これらの個体は癌の結果としての脳損傷に伴って血清中のマーカーの上昇が起こりうるが,卒中に関連する脳損傷では上昇しない。これらの個体は脳損傷の迅速な診断による利益を被る個体群の小さな亜集団かもしれないが,マーカーとしてのHAの使用はその同定の助けとなる。最後に,アンギオテンシン変換酵素(血清酵素)はHAを分解する能力を有し,血液サンプルはこの活性を阻害するために抗凝固物質としてEDTAを使用して採取しなければならない。
ヘモグロビン(Hb)は酸素運搬鉄含有球状蛋白質で,赤血球中に見られる。これは2つのグロブリンサブユニットのヘテロ2量体である。α2γ2は胎児Hb,α2β2は成人HbA,そしてα2δ2は成人HbA2と呼ばれる。ヘモグロビンの90-95%はHbAであり,α2グロブリン鎖は全てのHb型に(鎌状赤血球ヘモグロビンでも)見られる。Hbは全身の細胞への酸素の運搬に関与する。Hbα2は通常,血清中では検出されない。卒中パネルに関してのHbα2の有用性は,溶血の程度,およびその結果としての測定された血清濃度への赤血球起源蛋白質の寄与を測定することである。赤血球中に存在する血清マーカーの測定のために,溶血の許容レベルを確立しなければならない。ある場合には,卒中または他の脳損傷によって血圧の局所的変化が起こり,これらの血圧変化に関係するマーカーから被験体の病状に関する重要な診断および/または予後兆候の情報が得られうる。例えば虚血性卒中では,閉塞によって関係する動脈での血圧上昇が起こり,出血性卒中では,出血によって関係する動脈での血圧低下が起こる。更に,出血性卒中後にしばしば起こるような血管痙攣の際,血圧の上昇が関係する痙攣動脈で観察されうる。
局所的または全身的に血圧に影響を与えうるペプチドは種々の機構によって,例えば動脈の直径の変化(血管収縮または血管拡張)によって,または血液総量を増加もしくは減少させる,腎臓の流出量の増加もしくは減少によって作用する。特に興味深いのは,損傷部位で,またはその近辺で,更に全身に作用が広がることなく,血管収縮または血管拡張を起こす調節物質である。血圧の調節物質は卒中の型によって,また,調節物質が血圧を上昇させるか,もしくは低下させるかによって,上昇または抑制される。結果として種々の血圧関連マーカーのレベル変化によって虚血性および出血性卒中間の識別が可能となりうる。
例えば,虚血性卒中の際,1つ以上の血管拡張物質のレベルが上昇し,そして/または1つ以上の血管収縮物質が低下するか,もしくは変化しないままでありうる;反対に,出血性卒中ではこの逆が起こりうる。更に,被験体が出血性卒中であると診断されると,種々の血圧調節物質の変化を観察することによって,被験体の血管痙攣の傾向またはその発生をモニタリングすることができる。最後に,これらの局所的血圧変化を相殺する1つ以上の物質によって,局所的な血圧の緩解することのない上昇または低下作用に対する重要な防御を提供できる。
卒中のマーカーとして有用でありうる血圧調節物質にはパラクリン作用を持つもの,すなわち,損傷部位で,またはその近辺で分泌され,作用するものがある。ナトリウム利尿ペプチドANP,BNP,およびCNPは血管拡張作用を有することが知られている。CNPはパラクリン作用を有することが広く信じられており,脳の血管内皮に見られ,その受容体も脳の血管内皮に見られ,そして単離したラット脳動脈の用量依存的血管拡張を起こすことが知られているので,特に興味深い(Mori, Y., ら, Eur J Pharmacol 320:183, 1997)。
A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)(心房型ナトリウム利尿ペプチドとも呼ばれる)は28アミノ酸ペプチドであり,心房性拡張,アンギオテンシンI刺激,エンドセリン,および交感神経刺激(β-アドレナリン作動性受容体介在型)に応答して心筋細胞で合成,貯蔵,および放出される。ANPは前駆体分子(プロ-ANP)として合成され,タンパク分解による切断によって活性型に変換する。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP99-126)そのものに加え,そのN-末端プロホルモンセグメントからの直線ペプチドフラグメントも生物学的活性を有することが報告されている。
ANPレベルの上昇は血液量過多およびうっ血性心不全の際に見られる。ANPはナトリウム/水バランス,血液量,および動脈圧の長期的制御に関与している。このホルモンは副腎皮質ホルモンによるアルドステロンの放出を低下させ,糸球体濾過率(GFR)を上昇させ,ナトリウム排泄増加および利尿(カリウムの節約)を起こし,レニン放出を低下させ,従ってアンギオテンシンIIを低下させる。これらの作用は血液量の低下,およびそれによって中心静脈圧(CVP),心送血量,および動脈圧の低下に寄与する。ANPのいくつかのアイソフォームが同定されており,それらと卒中発生率の関係が研究されてきた。例えばRubatu ら, Circulation 100:1722-6, 1999;Estrada ら, Am. J. Hypertens. 7:1085-9, 1994を参照されたい。
ANPの慢性的上昇は,主に全身の血管抵抗の低下によって,動脈圧を低下させると考えられる。全身性血管拡張の機構は,ANP受容体が介在する血管平滑筋cGMPの上昇ならびに交感神経性血管緊張の弱力化によるものでありうる。この後者の機構は中枢神経系内の部位へのANPの作用ならびに交感神経末端によるノルエピネフリン放出の阻害によるものでありうる。ANPはレニン-アンギオテンシン系の逆調節系であると見なしてもよい。中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤である新しい種類の薬剤は心不全に有効であることが証明されている。これらの薬剤はANPの分解の原因である酵素,中性エンドペプチダーゼを阻害し,それによってANPの血漿レベルを上昇させる。NEP阻害は,薬剤がNEPおよびACE阻害性の両方を併せ持つ場合,心不全に特に有効である。
B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)(脳型ナトリウム利尿ペプチドとも呼ばれる)は32アミノ酸,4kDaのペプチドであり,ナトリウム利尿系に関係し,血圧および体液バランスを調節する(Bonow, R.O., Circulation 93:1946-1950, 1996)。BNPの前駆体は108アミノ酸分子として合成され("前プロBNP"と呼ばれる),タンパク分解されて76アミノ酸のN-末端ペプチド(アミノ酸1-76)("NTプロBNP"と呼ばれる)および32アミノ酸の成熟ホルモン(BNPまたはBNP32と呼ばれる)(アミノ酸77-108)となる。これらの種-NTプロBNP,BNP32,および前プロBNP-はそれぞれヒト血漿中で循環されることが示唆されている(Tateyama ら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 185:760-7, 1992;Hunt ら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 214:1175-83, 1995)。2つの型,前プロBNPおよびNTプロBNP,そしてBNP,前プロBNP,およびNTプロBNPから誘導され,BNP,NTプロBNP,および前プロBNPのタンパク分解の結果として血液中に含有されるペプチドを,BNPに関係する,またはそれに伴うマーカーとして集合的に記述する。BNPおよびBNPに関連するペプチドのタンパク分解は文献にも記載されており,これらのタンパク分解フラグメントも"BNP関連ペプチド"という用語に含まれる。BNPおよびBNP関連ペプチドは主に心室の分泌顆粒中に見られ,心室容積の拡大および圧負荷の両方に応答して心臓から放出される(Wilkins, M. ら, Lancet 349:1307-1310, 1997)。
BNPはクモ膜下出血患者の血漿で上昇することが証明されている(Sviri, G.E., ら, Stroke 31:118-122, 2000;Tomida, M. ら, Stroke 29:1584-1587, 1998;Berendes, E. ら, Lancet 349:245-249, 1997;Wijdicks, E.F., ら, J. Neurosurg. 87:275-280, 1997)。更に,うっ血性心不全および腎不全に伴うBNP濃度の上昇についての多数の報告がなされている。BNPおよびBNP関連ペプチドは卒中に特異的でないと考えられるが,それらは卒中に伴うナトリウム利尿系の混乱を示しうるので,感度の高い卒中のマーカーとなりうる。ここで使用する"BNP"という用語は32アミノ酸の成熟BNP分子そのものをさす。しかしながら当業者に認識されるように,BNPに関連する他のマーカーも卒中患者の診断または予後の指示に役立ちうる。例えばBNPは108アミノ酸の前プロBNP分子として合成され,タンパク分解によって76アミノ酸の"NTプロBNP"および32アミノ酸のBNP分子となる。そのBNPとの関係のため,NTプロBNP分子の濃度から,患者における診断または予後兆候の情報を得ることができる。
"BNPに関連するマーカーまたはBNP関連ペプチド"というフレーズは,32アミノ酸BNP分子そのもの以外の,前プロBNP分子由来のポリペプチドをさす。従って,BNPに関係する,またはそれに伴うマーカーにはNTプロBNP分子,プロドメイン,完全な32アミノ酸配列より小さいBNPのフラグメント,BNP以外の前プロBNPのフラグメント,およびプロドメインのフラグメントがある。また当業者に認識されるように,循環はBNPおよびBNP関連分子をタンパク分解できるプロテアーゼを含有し,これらのタンパク分解された分子(ペプチド)は"BNPに関連する"と見なされ,本発明の更なる対象である。
C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は22アミノ酸ペプチドで,ヒト脳における主要な活性ナトリウム利尿ペプチドである;CNPも内皮誘導型弛緩因子であると見なされ,酸化窒素(NO)と同様に作用する(Davidson ら, Circulation 93:1155-9, 1996)。CNPはA型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)およびB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と構造的に関係している;しかしながら,ANPおよびBNPは主に心筋で合成されるのに対し,CNPは血管内皮で前駆体(プロ-CNP)として合成される(Prickett ら, Biochem. Biophys. Res. Commun. 286:513-7, 2001)。CNPは動脈および静脈の両方に対する血管拡張作用を有すると考えられ,血管平滑筋細胞における細胞内cGMP濃度を増加させることによって,主に静脈で作用することが報告されている。
脳で作用する内皮由来の他のペプチドにはアドレノメジュリン(adrenomedullin)(ADM),他の有効な血管拡張剤(Jougasaki, M. および Burnett, J.C. Jr., Life Sci 66:855, 2000),およびエンドセリン(Guimaraes ら, Hypertension 19, 2 Suppl. II79-86, 1992;Ortega Mateo, A. および de Artinano, A.A., Pharmacol Res 36:339, 1997)がある。エンドセリンは,血管内皮で生成され,別々の遺伝子にコードされる3つの関連ペプチド(エンドセリン-1,エンドセリン-2,およびエンドセリン-3)であり,そのそれぞれは有効な血管収縮作用を示す。
アドレノメジュリン(AM)は多くの組織(副腎皮質,肺,腎臓,および心臓を含む)で生成される52アミノ酸ペプチドである(Yoshitomi ら, Clin. Sci. (Colch) 94:135-9, 1998)。実験動物において,AMの静脈内投与によって,長期にわたる降圧作用が心送血量の増加と共に起こる。AMは右心房からのANPの伸張誘導型放出を促進するが,心室BNP発現には影響しないことが報告されている。AMは前駆体分子(プロ-AM)として合成される。AM前駆体から加工されたN-末端ペプチドも降圧ペプチドとして作用することが報告されている(Kuwasako ら, Ann. Clin. Biochem. 36:622-8, 1999)。
エンドセリン-1(ET-1)は21アミノ酸残基ペプチドであり,212残基の前駆体(前プロET-1)として合成されるが,これは17残基のシグナル配列を含有し,それが除去されてbig ET-1として知られるペプチドを提供する。この分子は更にエンドセリン変換酵素によるtrp21およびval22間の加水分解によってプロセシングされる。big ET-1およびET-1はいずれも生物学的活性を示す;しかしながら成熟ET-1型はより高い血管収縮活性を示す(Brooks および Ergul, J. Mol. Endocrinol. 21:307-15, 1998)。同様に,エンドセリン-2およびエンドセリン-3は21アミノ酸残基長であり,それぞれbig エンドセリン-2およびbig エンドセリン-3の加水分解によって生成される(Yap ら, Br. J. Pharmacol. 129:170-6, 2000;Lee ら, Blood 94:1440-50, 1999)。
アッセイ測定の戦略
本発明のマーカーの検出および分析のための多くの方法および装置は当業者に十分知られている。患者の試験サンプル中のポリペプチドまたは蛋白質に関しては,免疫アッセイ装置および方法が多くの場合使用される。例えば米国特許第6,143,576号;6,113,855号;6,019,944号;5,985,579号;5,947,124号;5,939,272号;5,922,615号;5,885,527号;5,851,776号;5,824,799号;5,679,526号;5,525,524号;および5,480,792号を参照されたい。これらはそれぞれ,全ての表,図,および請求の範囲を含めて,その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの装置および方法は種々のサンドイッチ,競合,または非競合アッセイフォーマットで標識された分子を使用して,対象分析物の存在または量に関係するシグナルを生成する。更に,ある種の方法および装置,例えばバイオセンサーおよび光学免疫アッセイを使用して,標識分子を必要とせずに,分析物の存在または量を測定してもよい。例えば米国特許第5,631,171号および第5,955,377号を参照されたい。そのそれぞれは全ての表,図,および請求の範囲を含めて,その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくはマーカーは免疫アッセイを使用して分析するが,他の方法は当業者に周知である(例えばマーカーのRNAレベルの測定)。マーカーの存在または量は一般に各マーカーに特異的な抗体を使用し,特異的結合を検出して測定する。好適な免疫アッセイ,例えば酵素結合免疫アッセイ(ELISA),ラジオイムノアッセイ(RIA),競合結合アッセイなどを利用してもよい。マーカーへの抗体の特異的免疫学的結合は直接的または間接的に検出できる。直接標識には抗体に結合させた蛍光または発光タグ,金属,色素,放射性核種などがある。間接標識には当該分野で周知の種々の酵素,例えばアルカリホスファターゼ,ホースラディッシュペルオキシダーゼなどがある。
マーカーに特異的な固定化された抗体の使用も本発明で企図される。抗体は種々の固相支持体,例えば磁気またはクロマトグラフ用マトリクス粒子,アッセイ箇所の表面(例えばマイクロタイターウェル),固体基質物質片(例えばプラスチック,ナイロン,紙)などに固定化できる。アッセイ片は固相支持体上に抗体または複数の抗体をアレイ状にコーティングすることによって調製できる。次いでこの断片を試験サンプルに浸漬した後,素早く洗浄および検出段階を行って測定可能なシグナル(例えば着色したスポット)を得る。
マーカーの分析は同様に種々の物理的フォーマットでも実施できる。例えば,マイクロタイタープレートまたは自動操作を使用して大量の試験サンプルの処理を容易にすることができる。あるいはまた,単独のサンプルフォーマットを開発して,例えば救急輸送または救急処置室のような状況で,即時治療および診断をタイムリーに行うことが容易にすることができる。
複数のマーカーの分析を個別に,または1つの試験サンプルで同時に行ってもよい。いくつかのマーカーを併せて1つの試験とし,多数のサンプルの効率的な処理を行ってもよい。更に当業者に認識されるように,同じ個体から複数のサンプル(例えば連続的な時点での)を試験することも有益である。そのような連続的なサンプルの試験によって,一定期間にわたるマーカーレベルの変化を同定することが可能となる。マーカーレベルの上昇または低下,並びにマーカーレベルの変化が見られないということから,疾病状態に関する有用な情報が得られ,それには,限定されるわけではないが,事象の発生からのおおよその時間の同定,救出可能な組織の存在および量,神経保護物質または血栓溶解剤療法の好適性,再潅流または症状の解決によって示されるような種々の卒中療法の有効性,虚血性卒中と出血性卒中との識別,一過性虚血発作の同定,事象の重度の同定,疾病の重度の同定,および患者の転帰の同定(将来的な事象のリスクを含む)がある。
上記のマーカーからなるパネルを構築して,卒中の診断および卒中患者の管理に関係する関連情報を得てもよい。それらのパネルは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,または20個の個別マーカーを使用して構築してもよい。当業者は1個のマーカー,またはより大きなマーカー集団を含むマーカーのサブセットの分析を行って,種々の臨床状況で臨床的な感度または特異性を最適化することができる。これらには,限定されるわけではないが,救急,緊急治療,臨床治療,集中治療,モニタリングユニット,入院患者,外来患者,医院,診療所,および健康診断の背景がある。更に,当業者は1つのマーカーまたはより大きなマーカー集団を含むマーカーのサブセットを,上記の背景のそれぞれにおける診断閾値の調節と併せて使用し,臨床における感度および特異性を最適化することができる。アッセイの臨床的感度は,アッセイが正確に予測する,疾病を有する患者のパーセンテージと定義され,アッセイの特異性はアッセイが正確に予測する,疾病を有さない患者のパーセンテージと定義される(Tietz Textbook of Clinical Chemistry, 第2版, Carl Burtis および Edward Ashwood e編, W.B. Saunders and Company, p. 496)。
好ましい態様では,脳損傷の1つ以上の特異的マーカーを脳損傷の1つ以上の非特異的マーカーと組み合わせて卒中またはTIAの診断パネルを生成する。更に,本発明はそれらの複数のマーカーの要素を決定する方法を提供する。そのようなパネルが構築されると,種々のマーカーのそれぞれの存在またはレベルを1つ以上の患者サンプルで測定し,必要により各マーカーの診断レベルまたは正常レベルと比較する。
いくつかのマーカーから得られた個々の結果を種々に組み合わせて,個体の診断および/または予後に関する更なる情報を得てもよい。例えば,ROC曲線を使用して一連のマーカーのそれぞれの閾値を測定し,サンプルからの値をこれらの閾値と比較してもよい。
好ましい別法では,種々のパネルの結果を合わせたものを,個体が卒中を有する確率(数値によるスコアまたはパーセンテージのいずれかで表す),更に特定のパネル選択に基づいてそれが虚血性卒中である確率,および特定のパネル選択に基づいてそれが出血性卒中である確率として解釈することができる。ROC曲線は,パネルについて,種々のカットオフで,特定のパネルのマーカーの感度と1−(特異性)とのROC曲線をプロットすることによって得られる。結果から,決定の閾値効果の経験的説明ができる。"ROC面積"はROC曲線より下の面積をいう。ROC曲線より下の面積は,認められた測定によって症状の正確な同定ができる確率の尺度である。曲線より下の面積(AUC)が大きいほど,識別能力が大きい。識別能力が無い試験のAUCは0.5である。完全な識別能力がある試験のAUCは1.0である。そのようにして,組み合わせた情報を使用して個々のマーカーアッセイの価値を向上させることができる。
多数のマーカーから得られたデータを迅速に処理するために,上記のROC曲線を計算し,患者の確率スコアを分析するためにコンピューター演算法を使用することが好適でありうる。それらのプログラムを使用して,あらかじめ設定したマーカー群およびその組み合わせに基づいて同時に実施したマーカーアッセイのいくつかのサブセットを,係数を求め,重み付けすることができる。
別の態様では,本発明はマーカーの分析キットを提供する。それらのキットは好ましくは少なくとも1つの試験サンプルの分析のための装置および試薬,そしてアッセイの実施に関する説明書を含む。必要により,キットはマーカーレベルを患者の診断に変換するための1つ以上の方法,例えば確率を計算するためのノモグラム,標準値表,またはコンピュータープログラムを含んでもよい。
以下の実施例により本発明を例示する。これらの実施例は,いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
実施例1. 血液サンプリング
血液標本は,熟練研究者により抗凝固剤としてEDTAを用いて採取し,10分間以上遠心分離した。血漿成分を滅菌低温バイアルに移し,−20℃またはそれ以下で凍結した。患者および正常健康ドナーの以下の集団からの標本を収集した(表1)。アッセイデータの統計学的分析を助けるために,それぞれの患者について病歴が入手可能であった。
Figure 2005522669
実施例2. 生化学的分析
マーカーは,標準的なイムノアッセイ手法を用いて測定した。これらの手法は,蛋白質標的に特異的に結合する抗体を使用する。選択されたマーカーに対するモノクローナル抗体は,N−ヒドロキシスクシンイミドビオチン(NHS−ビオチン)を抗体あたり約5NHS−ビオチン成分の比率で用いてビオチン化した。次に,抗体−ビオチンコンジュゲートを標準的なアビジン384ウエルマイクロタイタープレートのウエルに加え,プレートに結合しなかった抗体コンジュゲートを除去した。これにより,マイクロタイタープレート中に“抗マーカー”が形成された。同じマーカーに対する別のモノクローナル抗体を,スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)およびN−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート(SPDP)(Pierce,Rockford,IL)を用いてアルカリホスファターゼとコンジュゲート化させた。
BNPのアッセイは,Scios Incorporated(Sunnyvale,CA)から得たネズミ抗BNPモノクローナル抗体106.3を用いて行った。FOX−NY細胞と,BSAにコンジュゲート化したヒトBNP1−32で免疫したBalb/cマウスからの脾臓細胞とを融合させて,mAb106.3を分泌するハイブリドーマ細胞株を作製した。第2のネズミ抗BNP抗体は,Biosite Incorporated(San Diego,CA)により,先に記載されているように(米国特許6,057,098),KLHにコンジュゲート化したヒトBNP抗原(Scios Incorporated,Sunnyvale,CA;米国特許5,114,923)を用いて,抗体ファージディスプレイにより標準的な手法によって製造した。アッセイの標準化のためにヒトBNP抗原も用いた。
IL−6のアッセイは,市販のネズミ抗ヒトIL−6モノクローナル抗体(クローン#6708.111)およびヤギ抗ヒトIL−6ポリクローナル抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)を用いて行った。アッセイの標準化に用いたヒトIL−6は,Biosite Incorporatedで発現させ精製した。IL−6cDNAはヒト脾臓cDNAライブラリからPCRにより調製し,細菌発現ベクターpBRncoH3にサブクローニングした。組換えIL−6の発現および精製は,米国特許6,057,098に先に記載されている方法を用いて行った。
MMP−9のアッセイは,Biosite Incorporatedで先に記載されているように(米国特許6,057,098),ファージディスプレイおよび組換え蛋白質発現を用いて生成したネズミ抗MMP−9抗体を用いて行った。アッセイの標準化には市販のMMP−9抗原を用いた(Calbiochem−Novabiochem Corporation,San Diego,CA)。抗体生成に用いた免疫原は,Biosite Incorporatedで調製した。PCRプライマーは,ヒトMMP−9の5’末端の配列およびヒトMMP−9の3’末端のコーディング配列に対応するように作製し(Genbank受託番号J05070),金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによる組換え蛋白質の精製を容易にするように,コーディング配列の最後と停止コドンとの間に挿入された6個のヒスチジンコドンを含めた。プライマーA(5’(AGGTGTCGTAAGCTTGAATTCAGACACCTCTGCCGCCACCATGAG)配列番号1)およびB(5’(GGGCTGGCTTACCTGCGGCCTTAGTGATGGTGATGGTGATGGTCCTCAGGGCACTGCAGGATG)配列番号2)。5’プライマーはまた,EcoRI部位およびそのすぐ上流の配列に対応する21塩基対のpEAK12ベクター配列(Edge BioSystems,Gaithersburg,MD)をその5’末端に含む。3’プライマーは,その5’末端に,ベクター配列の6塩基のNotI部位およびそのすぐ下流の配列の追加の20塩基対を含む。これらのプライマーの5’末端のベクター配列は,T4DNAポリメラーゼで処理すると,pEAK12ベクターの配列と特異的かつ相補的な一本鎖オーバーハングを形成する。MMP−9遺伝子挿入物のPCR増幅は,100pmolの5’プライマー(A),100pmolの3’プライマー(B),2.5ユニットのExpandポリメラーゼ,10μlの2mMdNTPs,10μlの10xExpand反応緩衝液,テンプレートとして1μlのClontech Quick−クローンヒト脾臓cDNA(Clontech Laboratories,Palo Alto,CA),および100μlまでの残量の水を含む2x100μlの反応スケールで行った。反応は,実施例18(米国特許6,057,098)に記載されるように,Perkin−Elmer熱サイクラーで行った。PCR生成物を沈殿させ,アガロースゲル電気泳動により分離し,全長生成物をゲルから切り出し,精製し,水に再懸濁した(実施例17,米国特許6,057,098)。pEAK12ベクターをNotIおよびEcoRI(New England BioLabs,Beverly,MA)で消化することにより,挿入物を入れられるように用意した。1.0μlの10xBufferAを1.0μgのDNAに加え,水で最終容量を9μlにすることにより,挿入物およびEcoRI/NotI消化pEAK12ベクターを,T4エキソヌクレアーゼ消化用に調製した。サンプルを1μl(1U/μl)のT4DNAポリメラーゼで30℃で4分間消化した。70℃で10分間インキュベートすることによりT4DNAポリメラーゼを熱不活性化させた。サンプルを冷却し,軽く遠心分離し,新たなミクロ遠心管で45ngの消化挿入物を100ngの消化pEAK12ベクターに加えた。1.0μlの10xアニーリング緩衝液を加えた後,水で容量を10μlにした。混合物を70℃で2分間加熱し,20分間かけて室温に冷却して,挿入物とベクターとをアニーリングさせた。アニーリングしたDNAを蒸留水で4倍に希釈し,30μlのエレクトロコンピテントE.coli株DH10B(Invitrogen,Carlsbad,CA)中にエレクトロポレーションした(実施例8,米国特許6,057,098)。トランスフォームした細胞を2xYT培地で1.0mlに希釈し,10μl,100μl,300μlをアンピシリン(75μg/ml)を補充したLB寒天プレートに播種し,37℃で一晩成長させた。コロニーを採取し,2xYT(75μg/mlアンピリシン)で37℃で一晩成長させた。翌日,−80℃での長期保存用にグリセロール凍結保存物を作製した。これらのクローン(MMP9peak12)の配列を,MacConnell Research(San Diego,CA)において,Sequathermシークエンシングキット(Epicenter Technologies,Madison,WI),pEAK12ベクターの挿入物のそれぞれ5’側および3’側に結合するオリゴヌクレオチドプライマーC5’(TTCTCAAGCCTCAGACAGTG)配列番号3)およびD(5’(CCTGGATGCAGGCTACTCTAG)配列番号4),およびLI−COR4000L自動化シークエンサー(LI−COR,Lincoln,NE)を用いて,ジデオキシ鎖終止法により確認した。EndoFree Plasmid Mega Kitを製造元(Qiagen,Valencia,CA)の推奨にしたがって使用して,クローンMMP9peak12.2から,ヒトMMP−9のトランスフェクションおよび続く発現および精製に適したプラスミドを製造した。HEK293(“ピーク”)細胞は,1ml凍結バイアル保存物(5x106細胞/ml)から,T−75フラスコ中の,5%ウシ胎児血清(FBS)(JRH Biosciences,Lenexa,KS),20ユニット/mlのヘパリン,0.1%プルロニックF−68(JRH Biosciences,Lenexa,KS),および50μg/mlのゲンタマイシン(Sigma,St.Louis,MO)を含むIS293培地(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)中で増殖させた。37℃,85%湿度,および5%CO2で2−3日間インキュベートした後,細胞をT−175フラスコ中で培地中のFBSを2%に減少して拡張させた。次に細胞を2−3週間の間1:2で連続的に拡張させて,一様の単層の付着細胞を確立した。上述の方法で成長させたピーク細胞を1000rpmで6分間遠心分離し,上清を廃棄した。細胞を計数して密度を求め,標準的な染色試験により少なくとも90%の生存率を確認した後,細胞を5x105細胞/mlで2%FBSおよび50μg/mlのゲンタマイシンを含む400mlのIS293に再懸濁し,1Lスピナーフラスコに加えた。次に,円錐管に400mlスピナーフラスコあたり5mlのIS293および320μgのMMP−9DNAを加えた。これを混合し,室温で2分間インキュベートした。スピナーフラスコあたり400μlのX−tremeGENERO−1539トランスフェクション試薬(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を管に加え,次にこれを混合し,室温で20分間インキュベートした。混合物をスピナーフラスコに加え,37℃で,85%湿度,および5%CO2で100rpmで4日間インキュベートした。上述のスピナーフラスコからの細胞培養液を3500rpmで20分間遠心分離し,上清をMMP−9の精製用に保存した。20mlのChelating Fast Flow樹脂(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)を含みNiCl2を加えたカラムをBBSで平衡化した。次にスピナーフラスコからの上清をカラムに負荷し,BBS+10mMイミダゾールで洗浄し,200mMイミダゾールで溶出した。溶出液にCaCl2を加えて10mMとした後,これを次の精製工程において負荷した。5mlゼラチンセファロース4B樹脂(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)を入れたカラムをBBS+10mMCaCl2で平衡化した。抗原を負荷した後,カラムを平衡緩衝液で洗浄し,平衡緩衝液+2%ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いてMMP−9を溶出した。ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ−35)(0.005%)およびEDTA(10mM)を溶出液に加え,次にこれを最終緩衝液(50mMTris,400mMNaCl,10mMCaCl2,0.01%NaN3,pH7.5,0.005%BRIJ−35,10mMEDTA)で透析した。最後に,蛋白質を約0.25mg/mlに濃縮して,4℃で保存した。Zymogramゲルを用いてMMP−9の製造および精製を確認した。またウエスタンブロットを用いて蛋白質の活性を確認した。MMP−9(Oncogene Research Products,Cambridge,MA)を用いて,ピーク細胞システムを用いて作製した精製抗原と既知標準とを比較した。
TAT複合体のアッセイは,市販のネズミ抗ヒトTAT複合体特異的モノクローナル抗体,クローンEST1(American Diagnostica Inc.,Greenwich,CT),およびネズミ抗ヒトTAT複合体抗体(Biosite Incorporatedにより,先に記載されたように(米国特許6,057,098)ファージディスプレイおよび組換え蛋白質発現を用いて製造)を用いて行った。免疫およびアッセイの標準化に用いたヒトTAT複合体は,ホウ酸緩衝化食塩水中でヒト抗トロンビンIIIをヒトトロンビン(Haematologic Technologies Inc.,Essex Junction,VT)とともに室温で15分間インキュベートすることにより製造した。TAT複合体は,ホウ酸緩衝化食塩水で平衡化した1.5cm(100cmのSUPERDEX75(Pharmacia,Piscataway,NJ)カラムを用いて,流速1ml/分間でゲル濾過により精製した。
S−100βのアッセイは,市販のネズミ抗ヒトS−100βモノクローナル抗体(Fitzgerald Industries International,Inc.,Concord,MA)を用いて行った。市販のヒトS−100β抗原をアッセイの標準化に用いた(Advanced Immunochemical Inc.,Long Beach,CA)。
vWFA1−インテグリンのアッセイは,vWFA1(クローンRG46−1−1)およびインテグリン(クローン152B)ドメインに特異的なネズミモノクローナル抗体を用いて行い,vWF抗原を用いて標準化した。これらはすべてDr.Zaverio Ruggeri(Scripps Research Institute,La Jolla,CA)から入手した。
VEGFのアッセイは,先に記載されるように(米国特許6,057,098),ファージディスプレイおよび組換え蛋白質発現を用いて製造した2つのネズミ抗ヒトVEGF抗体を用いて行った。組換えヒトVEGFを免疫およびアッセイの標準化に用いた。組換えヒトVEGF(165)はResearch Diagnostics,Inc.(Cat#RDI−1020),Panvera(Cat#P2654),およびBiosource International(Cat#PHG0145)から入手可能である。
イムノアッセイは,TECAN Genesis RSP200/8ワークステーションで行った。アビジンで予めコーティングしたマイクロタイタープレートのウエルにビオチン化抗体をピペットで加え,60分間インキュベートした。未結合抗体を含む溶液を除去し,細胞を150mMNaCl,0.1%アジ化ナトリウム,および0.02%Tween−20を含む20mMホウ酸(pH7.42)からなる洗浄緩衝液で洗浄した。血漿サンプル(10μL)をマイクロタイタープレートにピペットで加え,60分間インキュベートした。次にサンプルを除去し,ウエルを洗浄緩衝液で洗浄した。次に,抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートをウエルに加え,さらに60分間インキュベートし,その後,抗体コンジュゲートを除去し,ウエルを洗浄緩衝液で洗浄した。基質(AttoPhos(登録商標),Promega,Madison,WI)をウエルに加え,蛍光生成物の形成速度を患者サンプル中のマーカーの濃度と関連づけた。
実施例3.統計学的分析
上述のマーカーの任意の組み合わせを含むパネルを構築して,卒中の診断および卒中およびTIAを有する患者の管理に関する適切な情報を提供することができる。さらに,この疾病のより大きいパネルからのマーカーのサブセットを用いて,卒中および種々の観点の疾病についての感度および特異性を最適化することができる。ここに記載される例は,6−マーカーパネルとして用いたBNP,IL−6,S−100β,MMP−9,TAT複合体,およびvWFのA1およびインテグリンドメイン(vWFA1−インテグリン)に特異的なイムノアッセイから得たデータの統計学的分析を示す。これらのアッセイにおいて用いた閾値は,BNPについて55pg/ml,IL−6について27pg/ml,S−100βについて12pg/ml,MMP−9について200ng/ml,TAT複合体について63ng/ml,およびvWFA1−インテグリンについて1200ng/mlである。マーカーパネルが,虚血性卒中,クモ膜下出血,脳内出血,すべての出血性卒中(頭蓋内出血),すべての卒中のタイプ,およびTIAを有する患者を識別する有効性を判定するために,これらの閾値を用いて臨床的感度および特異性の統計学的分析を行った。さらに,臨床的感度および特異性の分析により,マーカーパネルの有効性を現在の診断方法であるコンピュータ断層撮影(CT)スキャンと比較した。
コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは,卒中の診断においてしばしば用いられている。脳についてイメージングを行うため,CTスキャンは卒中について高度に特異的である。CTスキャンの感度は,開始後初期の出血性卒中を有する患者においては非常に高い。これに対し,虚血性卒中後の早い時間のCTスキャンの感度は低く,約3分の1の患者の来院時におけるCTスキャンはネガティブである。さらに,開始後最初の24時間以内には50%の患者のCTスキャンはネガティブでありうる。ここに記載されるデータは,24名の患者の来院時のCTスキャンの感度が,虚血性卒中を有する患者の3分の1しかCTスキャンがポジティブではないという予測と一致していることを示す。6−マーカーパネルを用いて,少なくとも2つのマーカーが上昇していれば患者が卒中を有するものとポジティブに識別することにより,高い特異性(92%)をもってCTスキャンよりほぼ2.5倍高い79%の感度が得られる。実験集団におけるCTスキャンの特異性は100%に近いと仮定する。この仮定の1つの限界は,正常集団を含む個体からはCTスキャンを得なかったことである。したがって,この分析におけるCTスキャンの特異性は,ポジティブのCTスキャンを生ずるかもしれない他の疾病または病気を考慮に入れて計算する。CTスキャンは,卒中以外の病気,例えば,頭蓋内腫瘍,動静脈奇形,多発性硬化症,または脳炎を有する個体でポジティブであろう。これらの卒中以外の病気のそれぞれは,全米人口の1%の発症率であると見積もられている。多発性硬化症および脳炎の特徴を示すポジティブCTスキャンは一般に卒中から区別することができ,卒中の診断についてのCTスキャンの特異性は98%より高いと考えられる。表2に示されるデータは,マーカーのパネルを使用することにより,CTスキャンより高い特異性および高い感度で,虚血性卒中を経験した患者を初期に同定することが可能となることを示す。
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6−マーカーパネルの感度および特異性を,虚血性卒中,クモ膜下出血,脳内出血,すべての出血性卒中(頭蓋内出血),およびすべての卒中のタイプに関して,開始からの種々の時間と組み合わせて評価した。6−マーカーパネルの特異性は92%に設定し,患者は2つのマーカーが上昇している場合に疾病を有すると分類した。さらに,BNP,S−100β,MMP−9およびvWFA1−インテグリンからなる4−マーカーパネルを,6−マーカーパネルと同じ状況で,特異性を97%に設定し,同じ閾値レベルを用いて評価した。先に記載したように,疾病に対する感度または特異性を改良するために,より大きいマーカーのパネルからマーカーのサブセットを選択するためのモデルとして4−マーカーパネルを用いる。表3−7に示されるデータは,いずれのパネルもすべての卒中のタイプ,特に開始から初期のものの診断に有用であることを示す。4−マーカーパネルの使用は,6−マーカーパネルより高い特異性を与え,開始から最初の48時間以内の出血性卒中に対する感度は同等である。6−マーカーパネルは,すべての時点において4−マーカーパネルより虚血性卒中に対して高い感度を示し,このことは,6−マーカー法は高い感度(すなわちより少ない偽陰性)を得るのに有用であり,4−マーカーパネルは高い特異性(すなわち,より少ない擬陽性)を得るのに有用であることを示す。
Figure 2005522669
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6−マーカーパネルおよび4−マーカーパネルはまた,一過性虚血性発作(TIA)を有する患者を同定する能力についても評価した。本質的には,TIAは永久の神経損傷を引き起こさない短期間の虚血性事象である。TIAは,マーカーが血流中に局所的に放出され,これがその事象の消散によって中断されることにより特徴づけることができる。したがって,マーカーのパネルの感度は時間とともに低下するであろうことが予測される。6−マーカーパネル(特異性を92%に設定)および4−マーカーパネル(特異性を97%に設定)のいずれも,事象の最初の24時間以内に感度の有意な減少を示し,これは表8に示される。このような減少は表3−7に記載される卒中の集団のいずれでも認められなかった。データは,患者からのデータを連続する時点で収集することにより,TIAを有する患者を他のタイプの卒中を有する患者から区別することが可能であることを示す。TIAを有する患者の識別は有益である。これは,これらの患者においては,将来の卒中のリスクが増加しているためである。
Figure 2005522669
実施例4. クモ膜下出血を示す患者における脳血管痙攣のマーカー
45名の患者,すなわち,動脈瘤性クモ膜下出血(SAH)で来院した38名,および選択的動脈瘤クリッピングで来院した7名の対照患者をこの研究に含めた。SAHを有するすべての患者において,来院時およびその後12日間または血管痙攣の開始まで毎日連続して,静脈穿刺により静脈血液サンプルを採取した。脳血管痙攣の発現は,SAHの4−12日後の局所性神経欠損の開始または>190cm/sの経頭蓋ドップラー(TCD)速度として定義した。選択的動脈瘤クリッピングを受ける患者においては,手術後中央値で13日間の経過中,患者1名あたり3±1回の静脈血液サンプルを採取した。採取した血液は遠心分離し(10,000g),得られた上清は直ちに,分析が完了するまで−70℃で凍結した。vWF,VEGF,およびMMP−9の測定は,免疫測定酵素イムノアッセイを用いて行った。
前血管痙攣コホートにおいて血漿vWF,VEGF,およびMMP−9の変化が観察された場合,これが症状発現前の虚血の結果であるか,または脳血管痙攣の発現に特異的であるかを判定するために,これらのマーカーを塞栓性または血栓性の局所性脳虚血の設定でも測定した。症候性局所性虚血の開始から24時間以内に来院した一連の59名の患者から,来院時に1回静脈穿刺により静脈血液サンプルを採取した。症候性局所性虚血と認められた42名の患者は,後にMRIの証拠により脳梗塞が示された。脳梗塞の放射線医学的証拠を示さなかった17名の患者は,症候の消散を経験し,これは一過性虚血性発作として分類し,したがって分析には含めなかった。
統計学的分析
3つのコホートを,非血管痙攣(SAHを有すると認められたが脳血管痙攣を発現しなかった患者),前血管痙攣(SAHを有すると認められ,後に脳血管痙攣を発現した患者),および局所性虚血(症候性局所性虚血と認められ,後にMRIで脳梗塞であると規定された患者)として分類した。コホート間で平均ピーク血漿vWF,VEGF,およびMMP−9のレベルを2元配置ANOVAにより比較した。アルファ誤差は0.05に設定した。分布が尖度,有意な非対称性を有する場合,または分散が有意に異なる場合には,群間比較のためのノンパラメトリック・マン・ホィットニー・U統計学を用いた。フィッシャー等級と血漿マーカーとの間の相関はスパーマン・ランク相関係数により評価した。患者の年齢,性別,人種,ハント・ヘス(Hunt and Hess),およびフィッシャー等級について調節したロジスティック回帰分析を用いて,血漿マーカーの閾値あたりの血管痙攣の発現のオッズ比を計算した。
結果
28名の患者が来院し,SAH後の1±1日に第1回の血液サンプルを採取した。これらのうち,22名(57%)はSAH後中央値7日間(範囲,4−11日間)で脳血管痙攣を発現した。18名(47%)は局所性神経欠損を発現し,4名(10%)は血管痙攣のみのTCDの証拠を示した。SAH,非血管痙攣コホートの3名の患者はフィッシャー等級1であり,コホート間の血漿マーカー比較には含めなかった。非血管痙攣および前血管痙攣コホートについての患者の人口統計学,臨床的特徴,およびフィッシャー等級は表9に示される。
Figure 2005522669
非血管痙攣コホートにおいては,平均ピーク血漿vWF(p=0.974),VEGF(p=0.357),およびMMP−9(p=0.763)は対照と比較して変化がなかった(表10)。血漿vWF,VEGF,およびMMP−9は,前血管痙攣において非血管痙攣コホートより増加していた(表10).フィッシャー等級の増加は,より高いピーク血漿vWF(p<0.05),VEGF(p<0.01)およびMMP−9(p<0.05)と相関していた。
さらに,20名の男性および22名の女性(年齢:59±15歳)は,24時間以内の症候性局所性虚血を示し,平均NIH卒中スケールスコアは6.7±6.6であった。局所性虚血コホートにおいては,平均ピーク血漿vWF(p=0.864),VEGF(p=0.469),およびMMP−9(p=0.623)は対照に対して変化がなかった(表10)。血漿vWF,VEGF,およびMMP−9は,局所性虚血コホートに対して前血管痙攣において顕著に増加していた(表10)。
Figure 2005522669
SAHの後,上昇した血漿vWF,VEGF,およびMMP−9は,独立して,後に起こる血管痙攣のオッズを17から25倍増加させ,ポジティブ予測値は75%−92%の範囲であった(表11)。
Figure 2005522669
実施例5. 卒中を診断するための例示的パネル
以下の表は,卒中を診断するための本発明の方法の使用を示す。“被検物質パネル”は,卒中患者からおよび卒中以外のドナーから得た試験サンプルを分析するために用いられるマーカーの組み合わせを表す(NHDは正常健康ドナーを示す;NSDは非特異的疾病ドナーを示す)。時間(示されている場合)は,症状の開始とサンプル採取の間の間隔を表す。種々のカットオフ値で,マーカーの特定のパネルの感度対パネルの1−(特異性)についてROC曲線を計算し,曲線の下の面積を決定した。92.5%の特異性(Spec)で診断の感度(Sens)を決定し,また,92.5%の感度で診断の特異性を決定した。
Figure 2005522669
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実施例6. 虚血性卒中と出血性卒中とを区別するための例示的パネル
以下の表は,異なるタイプの卒中,この例では虚血性卒中と出血性卒中とを区別するための本発明の方法の使用を示す。“被検物質パネル”とは,虚血性卒中患者および出血性卒中患者から得た試験サンプルを分析するために用いられたマーカーの組み合わせを表す。診断の感度(Sens)は92.5%の特異性(Spec)で決定し,また92.5%の感度で診断の特異性を決定した。
Figure 2005522669
当業者が本発明を製造および使用することができるように本発明を詳細に記載し例示してきたが,発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更,改変および改良をしうることが明らかであろう。
当業者は,本発明が,その目的を実施し,記載される結果および利点,ならびに本明細書に固有のものを得るためによく適合していることを容易に理解するであろう。本明細書に記載される方法および組成物は,現在のところ好ましい態様の代表的なものであり,例示的なものであって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は,特許請求の範囲において定義される本発明の精神の中に包含される変更および他の用途をなすであろう。
当業者は,本発明の範囲および精神から逸脱することなく,本明細書に開示される本発明に対して種々の置換および改変をなすことが可能であることを容易に理解するであろう。
本明細書において言及されるすべての特許および刊行物は,本発明の属する技術分野の技術者のレベルを示す。すべての特許および刊行物は,個々の刊行物が特定的にかつ個別に本明細書の一部としてここに引用すると示されているのと同じ程度に,本明細書の一部としてここに引用される。
本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,本明細書における各例において,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,他の2つのいずれかと置き換えることができる。本明細書において用いられる用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではない。そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に記載される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
他の態様は特許請求の範囲の範囲内である。

Claims (44)

  1. 被験者において卒中の診断を決定する方法であって,
    被験者から得た試験サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量について分析し;そして
    脳損傷についての前記1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷についての前記1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量を,前記被験者が卒中を経験した確率と相関させる,
    ことを含む方法。
  2. 前記脳損傷の特異的マーカーが,アデニレートキナーゼ,脳由来神経栄養因子,カルビンジン−D,クレアチンキナーゼ−BB,グリア線維状酸性蛋白質,乳酸デヒドロゲナーゼ,ミエリン塩基性蛋白質,神経細胞接着分子,ニューロン特異的エノラーゼ,ニューロトロフィン−3,蛋白質キナーゼCの1またはそれ以上のアイソフォーム,プロテオリピド蛋白質,S−100β,脳由来神経栄養因子,およびトロンボモジュリンからなる群より選択される,請求項1記載の方法。
  3. 前記脳損傷の非特異的マーカーが,急性期反応物質,A型ナトリウム利尿ペプチド,B型ナトリウム利尿ペプチド,C型ナトリウム利尿ペプチド,アドレノメジュリン,エンドセリン−1,エンドセリン−2,エンドセリン−3,β−トロンボグロブリン,心トロポニンI,カスパーゼ−3,クレアチンキナーゼ−MB,D−ダイマー,フィブリノペプチドA,ヘッドアクチベータ,ヘモグロビンα2鎖,インターロイキン−8,ミオグロビン,プラスミン−α−2−抗プラスミン複合体,血小板第4因子,プロトロンビンフラグメント1+2,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,組織因子,血管内皮増殖因子および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子からなる群より選択される,請求項1記載の方法。
  4. 前記急性期反応物質が,C−反応性蛋白質,E−セレクチン,インスリン様増殖因子−1,細胞間接着分子−1,インターロイキン−1β,インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト,インターロイキン−6,マトリクスメタロプロテアーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,トランスフォーミング増殖因子β,腫瘍壊死因子α,および血管細胞接着分子からなる群より選択される,請求項3記載の方法。
  5. 前記特異的および非特異的マーカーが,カスパーゼ−3,グリア線維状酸性蛋白質およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9を含む,請求項1記載の方法。
  6. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,インターロイキン−6,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子を含む,請求項1記載の方法。
  7. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,インターロイキン−6,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子のサブセットを含む,請求項1記載の方法。
  8. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,インターロイキン−6,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,およびフォン・ビルブラント因子のA1およびインテグリンドメインを含む,請求項1記載の方法。
  9. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,インターロイキン−6,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,およびフォン・ビルブラント因子のA1およびインテグリンドメインのサブセットを含む,請求項1記載の方法。
  10. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子を含む,請求項1記載の方法。
  11. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のA1およびインテグリンドメインを含む,請求項1記載の方法。
  12. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,神経細胞接着分子,血管内皮増殖因子およびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  13. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,神経細胞接着分子,S−100βおよびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  14. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,神経細胞接着分子,およびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  15. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,神経細胞接着分子,血管内皮増殖因子,およびフォン・ビルブラント因子のインテグリンドメインを含む,請求項1記載の方法。
  16. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,グリア線維状酸性蛋白質,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のインテグリンドメインを含む,請求項1記載の方法。
  17. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,グリア線維状酸性蛋白質,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  18. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,グリア線維状酸性蛋白質,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,神経細胞接着分子,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  19. 前記特異的および非特異的マーカーが,脳由来神経栄養因子,カスパーゼ−3,グリア線維状酸性蛋白質,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,神経細胞接着分子,およびS−100βを含む,請求項1記載の方法。
  20. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,カスパーゼ−3,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,神経細胞接着分子,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のインテグリンドメインを含む,請求項1記載の方法。
  21. 前記特異的および非特異的マーカーが,B型ナトリウム利尿ペプチド,カスパーゼ−3,グリア線維状酸性蛋白質,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,神経細胞接着分子,S−100β,およびフォン・ビルブラント因子のA1ドメインを含む,請求項1記載の方法。
  22. 前記特異的および非特異的マーカーのレベルを,正常な個体における前記特異的および非特異的マーカーのレベルと比較することをさらに含み,患者から得た前記試験サンプルにおける正常な個体と比較した前記レベルの変化が,卒中の兆候を経験した患者を示す,請求項1記載の方法。
  23. 患者から得た試験サンプルにおける,正常な個体と比較した前記特異的および非特異的マーカーの少なくとも2つのレベルの上昇が,卒中の兆候を経験した患者を示す,請求項21記載の方法。
  24. 被験者が卒中のリスクを有するか否かを識別する方法であって,
    被験者から得た試験サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカー,および脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量について分析し;そして
    脳損傷の前記1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の前記1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量を,前記被験者が卒中のリスクを有する確率と相関させる,
    ことを含む方法。
  25. 前記試験サンプルが,血液,血清,血漿,脳脊髄液,尿および唾液からなる群より選択される,請求項1記載の方法。
  26. 前記試験サンプルが分析の前に分画される,請求項1記載の方法。
  27. 前記試験サンプルが,イムノアッセイを用いて分析される,請求項1記載の方法。
  28. クモ膜下出血および脳内出血を含む出血性卒中を区別することをさらに含む,請求項1記載の方法。
  29. 出血性卒中を診断する方法である,請求項1記載の方法。
  30. クモ膜下出血を診断する方法である,請求項1記載の方法。
  31. 脳内出血を診断する方法である,請求項1記載の方法。
  32. 被験者において一過性虚血性発作の診断を決定する方法であって,
    被験者から得た試験サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量について分析し;そして
    脳損傷の前記1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の前記1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量を,前記被験者が一過性虚血性発作を経験した確率と相関させる,
    ことを含む方法。
  33. 患者が脳血管痙攣のリスクを有するか否かを識別する方法であって,クモ膜下出血と診断された患者からの試験サンプル中の,後に起こる脳血管痙攣を予測するマーカーの量を,前記マーカーの予測レベルと比較し,前記マーカーは,フォン・ビルブラント因子(vWF),血管内皮増殖因子(VEGF),およびマトリクスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)からなる群より選択され,ここで,前記患者は前記予測レベルと等しいかまたは大きいレベルの前記マーカーにより脳血管痙攣のリスクを有すると識別されることを特徴とする方法。
  34. 前記マーカーがvWFであり,前記予測レベルが5200ng/mLより高い,請求項33記載の方法。
  35. 前記マーカーがVEGFであり,前記予測レベルが0.06ng/mLより高い,請求項33記載の方法。
  36. 前記マーカーがMMP−9であり,前記予測レベルが500ng/mLより高い,請求項33記載の方法。
  37. 後に起こる脳血管痙攣を予測する2つのマーカーの量を前記マーカーのそれぞれの予測レベルと比較し,ここで,前記患者は各前記マーカーの前記予測レベルと等しいかまたは大きいレベルの各前記マーカーにより脳血管痙攣のリスクを有すると識別される,請求項33記載の方法。
  38. 後に起こる脳血管痙攣を予測する3つのマーカーの量を前記マーカーのそれぞれの予測レベルと比較し,ここで,前記患者は,各前記マーカーの前記予測レベルと等しいかまたは大きいレベルの各前記マーカーにより脳血管痙攣のリスクを有すると識別される,請求項33記載の方法。
  39. 被験者における虚血性卒中を出血性卒中から区別する方法であって,
    被験者から得た試験サンプルを,脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量について分析し;そして
    脳損傷の前記1またはそれ以上の特異的マーカーおよび脳損傷の前記1またはそれ以上の非特異的マーカーの存在または量を,前記被験者が出血性卒中ではなく虚血性卒中を有する確率と相関させる,
    ことを含む方法。
  40. 前記特異的および非特異的マーカーが,c−反応性蛋白質,クレアチンキナーゼ−BB,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,ニューロトロフィン−3,血管内皮増殖因子,および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子を含む,請求項39記載の方法。
  41. 前記特異的および非特異的マーカーが,c−反応性蛋白質,クレアチンキナーゼ−BB,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,神経細胞接着分子,および血管内皮増殖因子を含む,請求項39記載の方法。
  42. 前記特異的および非特異的マーカーが,c−反応性蛋白質,クレアチンキナーゼ−BB,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,ニューロトロフィン−3,および血管内皮増殖因子を含む,請求項39記載の方法。
  43. 前記特異的および非特異的マーカーが,c−反応性蛋白質,カルビンジン−D,クレアチンキナーゼ−BB,C型ナトリウム利尿ペプチド,グリア線維状酸性蛋白質,インターロイキン−6,インターロイキン−8,マトリクスメタロプロテアーゼ−9,単球走化性蛋白質−1,ミエリン塩基性蛋白質,プロテオリピド蛋白質,S−100β,トロンビン−抗トロンビンIII複合体,組織因子,血管内皮増殖因子,および1またはそれ以上の型のフォン・ビルブラント因子を含む,請求項39記載の方法。
  44. 卒中を診断または予防するためのキットであって,
    脳損傷の1またはそれ以上の特異的マーカーの存在または量を決定するための1またはそれ以上の試薬;
    脳損傷の1またはそれ以上の非特異的マーカーを決定するための1またはそれ以上の試薬;および
    アッセイを実施して前記決定を行うための指針,
    を含むキット。
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