JP2005521078A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、超小形素子のアドレス指定方法に関し、特に空間的光変調器(SLM)の可動素子のアドレス指定方法に関する。
超小形電気機械システム(MEMS)は、ウエハ基板上に超小形電子処理技術により製造された可動マイクロ・ミラーを含むことができる。マイクロ・ミラーを偏向させるためには、静電駆動が最も一般的に用いられる。力を発生させるためには、一方は、定置され、他方は、アクチュエータ、例えば、可動マイクロ・ミラーに取付けられている2つの電極間に電圧を与える。
例えば、マスク書込みツールまたはチップ製造ツールに用いられるアクチュエータのアレイを有するSLMは、特定のパターンをロードされて、それぞれのアクチュエータは、アドレス指定状態または非アドレス指定状態にされ、その後それぞれのスタンプがプリントされる。このパターンは、マスクまたはチップのそれぞれの上にプリントされるべきパターンの部分集合である。それぞれのアクチュエータ・ミラーは、そのミラーと下にあるアドレス電極との間に電圧を印加することにより、静電的に偏向された後、そのアクチュエータ・ミラーは、その所定の偏向状態に移動し、その後、電磁放射源がトリガされてスタンプがプリントされる。アドレス指定方法は、例えば、米国特許第5382967号明細書によって知られている。
空間的光変調器(SLM)におけるアクチュエータ・ミラーの偏向振幅は、アドレス指定電圧、ミラー・ヒンジ材料のスチフネス、ミラー・ヒンジの厚さ、電極ミラー間距離などのような、いくつかの要因により決定される。他のものの場合は、最適化される諸パラメータにおいて、アドレス指定電圧は、通常、最大所要ミラー偏向振幅を達成するための決定性フリー・パラメータである。これは、ひいては、アドレス指定CMOS回路の電圧スパンに対する要求を設定する。SLMチップ毎のミラー数を増大させたSLM部品を将来作るためには、ミラー面積を縮小しなければならないので、他の諸パラメータが不変である場合は、アドレス指定電圧を劇的に増大させなければならない。CMOS回路におけるピクセル・セルのサイズは、アドレス指定CMOS回路の電圧スパンに依存するが、アドレス指定電圧スパンの増大によりミラー・サイズが小さくなると、CMOS回路が将来のアクチュエータ・サイズの制約要因となる。
従って、本発明の目的は、小形アクチュエータにおける上述のアドレス指定電圧の増大の問題を克服または少なくとも軽減する超小形素子のアドレス指定方法を提供することである。
とりわけ、この目的は、請求項1に記載されたような方法の発明の第1の特徴によって達成される。
本発明は、また、請求項14に記載された発明のようなパターンを形成する装置に関する。
(詳細な説明)
以下の詳細な説明は、図を参照して行われる。本発明を説明するために、実施例が説明されるが、それは特許請求の範囲により定められる本発明の範囲を限定するためのものではない。当業者は、以下の説明に関するさまざまな同等の変形を認識する。
以下の詳細な説明は、図を参照して行われる。本発明を説明するために、実施例が説明されるが、それは特許請求の範囲により定められる本発明の範囲を限定するためのものではない。当業者は、以下の説明に関するさまざまな同等の変形を認識する。
さらに、実施例は、偏向可能な静電駆動マイクロ・ミラーに関連して説明される。当業者にとっては、偏向可能でかつ静電駆動されるマイクロ・ミラー以外のアクチュエータもまた同様に適用可能であることは明らかであり、その例としては、圧電アクチュエータ、電わいアクチュエータ、円形または多角形状のピストン状アクチュエータまたは類似の装置がある。作動材料は、空気、ガス、真空の間隙、粘性、電わい性、粘弾性または弾性材料である。それは、また、任意の上記媒体の組合せであってもよい。アクチュエータ素子の移動は、傾斜性または並進性のものである。
図1は、技術の現状におけるアクチュエータ構造100の側面図を概略的に示す。アクチュエータ100は、非アドレス指定状態において示されている。そのようなアクチュエータ構造100は、例えば、空間的光変調器(SLM)におけるマイクロ・ミラー構造でありうる。図1に示されているアクチュエータ構造は、基板113、第1の電極112、第2の電極114、支持構造111および可動素子110を含む。基板は、半導体材料から作られ、1つまたは複数のCMOS回路を含むことができる。第1および第2の電極は、金、銅、銀のような導電性材料または導電性材料および/または他の導電性材料の合金から作られる。電極は、上述のCMOS回路のようなステアリング回路に接続可能である。
支持構造111は、好ましくは、単結晶シリコンのような比較的に堅い材料から製造されたものとするが、もちろん顕著に高い剛度をもたない材料から作ってもよい。可動素子110は、好ましくは、アルミニウムのような良好な光学的性質を有する材料から製造される。しかし、所望の特性をもたない材料が選択されたならば、その材料をより好ましい特性を有する他の材料の1つまたは複数の層でコーティングすることによりサンドイッチ構造を作る。
静電気力は、可動素子110を偏向させる。可動素子110と第1の電極112および第2の電極113の一方とに異なる電位を印加すると、静電気力が発生する。第1および第2の電位が異なるものとして、第2の電位を第1および第2の電極上に印加した場合は、第1の電位を可動素子110上に静電気力は、発生するが、可動素子を偏向させることはない。この理由は、第1の電極とミラーとの間の引力が第2の電位と同じミラーとの間の引力に等しくなるからであり、この力は、電位差の極性によらず常に引力である。それら2つの等しい力は、可動素子の可能な曲げ以外においては、互いに平等であり、その曲げは、通常、極めて小さいので無視することができる。
図1には、アクチュエータ構造が第1の電極112および第2の電極113の2つの電極を含むように示されている。しかし、可動素子の偏向のためには、第1の電極112または第2の電極113の一方の電極が必要とされるのみである。1つより多くの電極を用いるのには、いくつかの理由がある。その1つの理由は、ミラーを2つの異なる方向に偏向させるためには、互いに間隔をあけて配置された2つの電極が必要であるからである。他の理由は、本発明の方法の異なる実施例を説明する以下の記述において明らかとなる。
図2は、アドレス指定状態におけるアクチュエータ構造100を示す。このアクチュエータ構造100は、デジタル、すなわち、オン・オフのもの、または多値、すなわち、2より大な複数の状態を有するものである。
本発明の第1の実施例においては、一定の偏向を得るための可動素子110と電極112、114との間の必要な電位差を減少させるために、第1および第2の電極の一方を常に接地電位にセットし、他方の電極を可変DC電位にセットし、可動素子をAC電位にセットする。あるいは単一電極を用い、その単一電極をDC電位にセットし可動素子をAC電位にセットする。
AC電位の周波数は、可動素子の偏向作用の機械的応答における共振周波数と一致するように選択される。空間的光変調器におけるマイクロ・ミラー構造の共振周波数は、特に、ミラー用の支持素子111およびヒンジのために選択された材料により決定される。それは、また、支持構造およびヒンジの断面積および可動素子の重量によっても決定される。ここでは、可動素子の機械的応答における共振周波数について説明しているのであり、マイクロ・ミラーのような可動素子の表面を平坦でないようにする、可動素子の曲率の共振のような可動素子内における望ましくない共振について説明しているのではない。機械的共振周波数は、一般に500kHzと1MHzとの間にあり、すなわち、16μmの辺を有する長方形状のSLMにおける一次共振周波数である。AC電位の振幅は、所望の電圧スパンに設定できるが、一般に±5Vとされる。
図4aは、図4bに示されている信号450を印加した時の可動素子の振動曲線400を概略的に示しており、図4bに示されている信号450の周波数は、可動素子の機械的共振周波数と一致している、すなわち、可動素子の表面を平坦でないようにする、可動素子内の曲率の共振周波数とは一致していないと仮定されている。時刻0において信号は、印加され、可動素子110は、振動を開始する。この場合は、3周期であるいくつかの周期の後、振動の最大振幅430に達する。最大振幅に達した後に印加信号は、解除され、この場合、それは、可動素子が最小偏向点435に達した時に解除される。最大偏向は、理論的または実際的に決定できる。これは、また、最小偏向および最大と最小との間の全ての偏向状態に対しても適用できる。従って、電磁放射のパルスは、可動素子上に最大と最小との間の任意の状態または最大または最小の状態において入射するように同期させることができる。好ましくは、電磁放射のパルスは、可動素子上に任意の局部的最大または最小状態において、または最小または最大状態において入射するように同期される。その理由は、ナノ秒程度の一定の時間間隔内での偏向の変化は、偏向対時間曲線上のどこか他の点と比較したとき、最大または最小点において、より小さいからである。最大または最小点において同期させると、精度を増すことができる。
図4bには、印加信号が正弦波状であるように示されているが、可動素子に機械的共振を生ずることができるどのような信号も同様に適用可能である。
電極112、114と可動素子110との間の引力は、電極と素子との間の電位差の二乗に比例する。可動素子110上の電位が正弦波状に最大振幅と最小振幅との間で交番し、第1および第2の電極112、114または単一電極が接地電位に保たれる時は、可動素子110は、偏向されない。その理由は、以下に詳述されるように、引力の周波数が機械的共振周波数と一致しないからである。この力は、上述のように、fをAC電位の周波数とし、ωを2πfとするとき、sin2ωである。周波数fは、アクチュエータ構造の機械的共振周波数fR と一致するように設定される。
単一電極または第1および第2の電極112、114の一方の電位が接地電位から正または負の電位に変化されると、可動素子110は、偏向する。sin2ωは、1/2−1/2*(cos2ω)に等しいので、可動素子110と電極との間の力は純粋な余弦波形をなさないこと、およびその力の周波数は、電極が接地電位にある場合の共振周波数ωの2倍であることが直ちにわかる。電極の電位が接地電位と異なる場合の引力は、(x+sinω)2=x2+2*x*sinω+sin2ω=1/2+x2+2*x*sinω−1/2*(cos2ω)となり、ただし、xは電極のDC電位からの寄与であり、sinωは、可動素子のAC電位からの寄与である。xを0とおけば、上記引力の式は、電極が接地電位を有する場合の前述の式に変形される。
2*x*sinωの項内には、機械的共振周波数ωからの寄与が存在するので、力が増幅されることを示している。接地電位と異なる電極の電位の絶対値が増加すると、増幅は、増加する。電極が接地電位を有する場合と、電極が接地電位と異なる電位を有する場合とにおける式を比較すると、機械的エネルギの共振周波数への移動があることがわかり、これが偏向の増幅をもたらす。偏向が可動素子と電極との間の電位差のみにより与えられる技術の現状における可動素子の静電引力と比較すると、電極電位を接地電位と異なるものとしてミラー電位を共振周波数ωにセットした時は、さらに機械的連係の項が生じる。この機械的連係は、アクチュエータ構造のQ値により決定される。
アクチュエータがアレイをなして配列されたマイクロ・ミラーである場合のSLM内のアクチュエータをアドレス指定する本発明の方法は、工作物にパターン形成するためにSLMを利用するパターン発生器において十分に用いることができる。アレイは、数百万のマイクロ・ミラー構造を含むことができる。リソグラフィを用いて工作物にパターン形成する技術の現状におけるパターン発生器は、SLM上のパターンを工作物上に結像させるためのパルス式レーザ源を利用する。工作物上のSLMのスタンプは、結像されるべき完全なパターンの一部でしかない。レーザ・フラッシュとレーザ・フラッシュとの間において、新しいパターン記述がSLM内にロードされ、すなわち、個々のマイクロ・ミラーは、ミラー素子と下にある電極との間に電位差の異なる集合を印加することにより新しい偏向状態にセットされる。
アクチュエータ構造の共振周波数とレーザ源のパルス繰返し数とを同期させることにより、SLMの予測パターンを工作物上に結像させることができる。レーザは、振動するミラーが図4aに430により示されている最大偏向状態に達した時にフラッシュを発するようにされ、そのためには、主としてアクチュエータ構造のQ値に依存する数の振動周期を必要とする。しかし、Q係数は、与えられたアクチュエータ構造に対して決定できるので、レーザのフラッシュは、最大振幅と最小振幅との間の任意の振幅値、例えば、局部的最大点410、420または局部的最小点415に対し同期させることができる。また、レーザのフラッシュは、機械的応答曲線400の減衰領域内の局部的最大点445または局部的最小点と同期させることもできる。好ましくは、SLMにおける全ての可動素子は、同じ最大および最小の振幅値を有する同じAC周波数にセットされる。しかし、個々の可動素子を個々の最大および最小の振幅値および/または個々のAC周波数にセットすることもまた可能である。
可動素子が静止に至るまでに要する時間、すなわち、周期の数は、特に機械的損失、マイクロ・ミラーである可動素子の反射率の動態を改善する空気、不活性ガスまたは任意のタイプのガスを含むが、これらに限られるわけではない任意の種類のガスのような周囲物質、例えば、磁界または電界などの周囲界により決定される。しかし、共振周波数の積極的抑制により、時間は、多少急激に減少させることができる。可動素子の移動を増幅するために用いられるAC電圧に対して位相外れである逆AC電圧をマイクロ・ミラーまたは少なくとも1つの電極に印加すると、積極的な抑制すなわち減衰を行うことができる。可動素子付近に磁界を印加しても、減衰を行うことができる。
抑制は、その抑制のために用いられる振幅の必要な機能を積極的に校正することにより増強することができる。共振周波数は、積極的に調整することができる。図1に示されているアクチュエータ構造は、2つの結合された振動回路と見ることができ、その1つは、機械的なものであり、1つは、電気的なものである。電気的振動回路は、アクチュエータ素子と電極との間の第1の容量性回路と、電極のためのステアリング電子装置内の固有容量性回路とにより定められる。固有容量性回路は、積極的に調整することにより得られる共振周波数が調節される。これは、SLMにおけるマイクロ・ミラー構造のようなアクチュエータ素子のアレイ内において、それぞれの個々のアクチュエータ素子に対し別々に互いに無関係に適用される。
Q値は、個々のアクチュエータ素子における増幅領域の幅を決定する。高いQ値は、比較的に高い増幅率を有する狭い周波数ウィンドウを与え、低いQ値は、比較的に低い増幅率を有する広い周波数ウィンドウを与える。周波数ウィンドウは、それぞれのアクチュエータ構造のための重なり合う部分を含む。すなわち、全てのアクチュエータ素子が一定の周波数における増幅を有すると、アクチュエータ素子の適切な設計を選択することにより、増幅率を最適化することができる。高過ぎる増幅が選択されれば、周波数ウィンドウの幅は、狭過ぎるようになり、異なるアクチュエータ素子に対し重なり合わない増幅領域が生じる。
力によって移動を起こさせ、超小形素子の共振周波数の範囲内の周波数で振動させると、移動の振幅は、共振増幅のQ(発振回路の品質)により増幅される。従って、移動の所望の振幅を得るための駆動電圧は、減少させることができる。Q値は、A*m*(d2x/dt2)−B*(dx/dt)+C*xに比例し、ただしA、B、Cは、定数であり、mは、可動素子の質量であり、(d2x/dt2)は、可動素子の加速度であり、(dx/dt)は、可動素子の速度であり、xは、可動素子に取付けられた、または取付け可能なヒンジおよび支持構造のばね定数である。周囲物質の圧力、粘性および温度などは、主として上記の式のマイナス符号により示されている抑制項を決定する。
一時的アドレス指定においても、短時間のみ、例えば、超小形素子の共振振動の周期の1/4より短い時間のみ作用する力により移動を誘起することによる「スナップ・イン」の危険なしに間隙を顕著に減少させることができる。
間隙は、また、共振性アドレス指定においても減少させることができる。その理由は、スナップ・イン状態に近づいた時には、可動素子の加速度は方向を変えているからである。
間隙は、また、共振性アドレス指定においても減少させることができる。その理由は、スナップ・イン状態に近づいた時には、可動素子の加速度は方向を変えているからである。
一時的アドレス指定の1つの例においては、アドレス指定電圧は、一方の電極に印加され、他方の電極および可動素子は、等しい電位にある。アドレス指定電圧を短いパルスとして印加すると、その電圧パルスの後も、移動は、固有の慣性により継続する。この移動が最大振幅になった時、すなわち、電極に最も近づいた時に、電極と可動素子との間の電位差は除去され、従って電界、加速力も除去される。その結果、多分「スナップ・イン」は起こりえない。従って、間隙は、移動の最大振幅よりもほんのわずかだけ大きくすることができ、従って特定のアドレス指定電圧としての印加電圧は、かなり減少させることができる。
本発明の1つの実施例においては、AC電位は、絶えずアクチュエータ素子に印加されている。本発明のもう1つの実施例においては、AC電位のほんの一部、すなわち、所定のパルス長を有するパルス形AC電位が用いられる。複数の信号スパイクを用いることも可能である。その理由は、スパイクは、さまざまな周波数、特に共振周波数を含み、スパイク周波数およびスパイク振幅を適切に選択すると、アクチュエータ素子を所定の制御された共振状態にするからである。最も一般的には、アクチュエータ構造により画定される機械的/電気的システムの共振周波数を励起する信号が印加される。
本発明によるもう1つの実施例においては、可動素子は、正または負の電位によりアドレス指定される。増幅信号が可動素子に属する電極に印加され、それは機械的/電気的システムの共振周波数を励起する。電極に印加される信号は、任意の波動信号、例えば、正弦状波形またはのこぎり波形のものである。
本発明によるさらにもう1つの実施例においては、第1の波動信号が第1の電極112に印加され、第2の波動信号が第2の電極114に印加され、この場合、第1および第2の電極112、114は、同じ可動素子110に属している。可動素子110は、正または負の電位によりアドレス指定される。第1および第2の波動信号は、互いに協働するように構成されている。正弦状波形を第1および第2の電極112、114に印加する例においては、第1の波形は、第2の波形に対し移相される。好ましくは、第1および第2の波形は、より大きい効果を達成するために、互いに180度だけ位相外れであるようにされる。最大の効果を達成するために、異なる種類の波形を第1および第2の電極に印加することもでき、また第1および第2の波動信号の間に180度とは異なる位相差を適用することもできる。同じ可動素子に属する2つの電極に、互いに協働する波動信号を印加すると、単一電極に波動信号を印加するのみの場合と比較して、2倍の大きさの引力が効果的に得られる。この理由は、引力が、第1および第2の電極の間で協働するように交番し、引力が可動素子に応答を生じさせる時間を2倍にするからである。第1および第2の電極112、114は、図1に示されているように、本質的に互いに反対側に配置されており、これは、第1の電極が可動素子を1つの方向、すなわち、反時計回りの方向に偏向させるように引きつけ、第2の電極114が同じ可動素子110を別の方向、すなわち、時計回りの方向に偏向させるように引きつけることを意味する。
本発明の1つの例は、2つの電極112、114を有するマイクロ・ミラー110であり、この場合、振動電圧がそれぞれの電極に印加され、アドレス指定電圧が可動素子に印加される。2つの電極の電圧は、互いにπラジアンだけ位相外れになっている。このとき、それぞれの電極により誘起される力は、次のようになる。
素子が非アドレス指定状態にある時、すなわち、Vm=0である時は、合力は、存在せず、ミラーは、平衡状態にある。しかし、アドレス指定電圧が可動素子に印加されると、周波数ωを有する合力を生じて、可動素子は、振動を開始し、その振幅は、共振増幅により次第に大きくなる。電磁放射源は、その振動と同期され、例えば、少数の振動の後、移動の振幅が最大になった時に、それは、トリガされる。この方法によれば、移動の振幅は、特定のアドレス指定電圧においてQ係数により増幅されることができる。
放射源のトリガ後は、振動中に電極のキャパシタンスが変動するために、振動が停止するまでは、新しいアドレス指定データをロードすることはできない。従って、振動を減衰させるために、アドレス指定電圧の極性を変化させ、または振動電圧の位相をスイッチして、振動を減衰させる逆向きに作用する力を発生させればよい。
提示したアドレス指定スキームによれば、超小形電極間隙を減少させることができる。その理由は、慣性のような固有のシステム減衰による作用する力と、生じる移動との間の位相の遅れが存在するからである。移動が最大になり、電極に接近した時は、加速力の方向は、すでに逆転し、可動素子を電極から遠ざかる向きに移動させようとしている。従って、「スナップ・イン」の危険は、低減されるので、間隙を減少させることができる。スナップ・インとは、例えば、可動素子110が引力のために、ある点を越えて偏向した状態のことで、それは、可動素子の外縁を、可能ならば基板に衝突させ、かつ/または、可動素子110および支持構造に取付けられたヒンジを多分一時的または永久に損傷する。
本発明のもう1つの実施例においては、1つの電極が正または負の電位によりアドレス指定され、一時的パルスが可動素子に印加される。一時的パルスは、短く、すなわち、パルスは、最大偏向よりも前に、または本質的に最大偏向時にスイッチ・オフされ、それにより可動素子が最大偏向状態においてスナップ・インすることを回避する。図3は、時刻0において2.5ボルトのパルスを印加した時の可動素子の偏向対時間の関係を示す。パルスは、7μs後にスイッチ・オフされ、それは、この特定のアクチュエータ構造におけるスナップ・インなしの最大偏向の時であるものと仮定されている。この曲線は、機械的衝撃応答を画定しているということができる。電極は、0−(−5)Vの間の電位によりアドレス指定される。構造は、可動マイクロ・ミラーであり、可動素子(反射ミラー)は、16μmの辺と、1.2μmの厚さと、2.7g/cm3の密度と、460kHzの共振周波数とを有する長方形状のものである。このマイクロ・ミラーは、5μmの長さと、0.6μmの幅と、0.18μmの厚さとを有するアルミニウムのばねにより支持構造111に取付けられている。一時的パルスがスイッチ・オフされた後、可動素子110は、5μs以内に静止する。積極的減衰を行うと、可動素子が静止するまでに要する時間は短縮される。例えば、一時的パルスが電極112に印加されると、別の減衰用パルスを電極114に印加し、または複数のパルスを両電極112、114に直列および/または並列に印加する。
短いパルスを可動素子に印加する代わりに、一時的パルスを少なくとも1つの電極に印加し、ミラーを正または負の電位によりアドレス指定し、それにより、図3に関連して上述した現象と本質的に同じ現象を生じさせることができる。好ましくは、短い一時的パルスを印加する場合には、アクチュエータ構造100の共振周波数を100kHzより低くし、所望の偏向状態に達するためのいくらかの時間と、所望の偏向時に可動素子に入射しようとする電磁放射のパルスを同期させるためのいくらかの時間とを許容するようにする。
図5は、変調器の可動超小形素子110、第1の電極112、第2の電極114を含むアクチュエータ構造100に接続された、従来技術の配線の側面図を示す。第1の導体117は、変調器の可動超小形素子110に接続され、第2の導体115は、第1の電極112に接続され、第3の導体116は、第2の電極114に接続されている。SLMにおいては、ことごとくの可動超小形構造は、互いに接続され、または互いに分離されており、第1および第2の電極112、114に対しても同じことがいえる。また、諸可動超小形構造の小部分のみを互いにグループ化し、変調器の可動超小形素子の残余のものは互いに分離状態にしておく可能性もあり、第1および第2の電極112、114に対しても同じことがいえる。
図6は、電極を配線に接続する本発明の実施例を示す。第1の抵抗162は、第1の電極112に接続され、第2の抵抗164は、第2の電極114に接続されている。ミラーと電極との間のバイアスにより、どのような移動も抵抗162および164を通して電流を流れさせる。消費エネルギは、例えば、ミラーが振動している時のミラーの運動エネルギから取られる。増幅信号を除去した時、可動素子は、抵抗性減衰のために従来技術の配線図と比較して、より速やかに静止する。
抵抗は、電極のいずれにも、または図7に示されている別個の電極にも、接続することができる。ここで、2つの特別電極154、156は、減衰用電極として機能する。電極は、抵抗160を経て導体118に接続できる。図7に示されているこの実施例においては、減衰用電極は、電極112、114よりも支持構造111に近く配置されているが、もちろん逆にしてもよく、あるいは、減衰用電極を一方の側においては、112または114よりも支持構造に近く、他方の側においては、電極114または112よりも遠くに配置してもよい。
また、図6に示されている実施例と図7に示されている実施例、すなわち、電極112、114の少なくとも1つに接続可能な少なくとも1つの抵抗と少なくとも1つの抵抗160に接続可能な少なくとも1つのさらなる電極154、156とを組合わせることも可能である。
また、図6に示されている実施例と図7に示されている実施例、すなわち、電極112、114の少なくとも1つに接続可能な少なくとも1つの抵抗と少なくとも1つの抵抗160に接続可能な少なくとも1つのさらなる電極154、156とを組合わせることも可能である。
可動素子をその共振周波数に共振させる印加信号は、約16μmの辺を有する大きさの長方形状のマイクロ・ミラーである可動素子に対しては、好ましくは、1MHzより低い信号とする。可動素子を共振状態にセットし、可動素子の所望偏向時に電磁放射のフラッシュを発生させ、共振を起こさせた信号をスイッチ・オフして可動素子を静止状態に整定するのに要する時間は、電磁放射のフラッシュ周波数が8kHzの場合、好ましくは20ないし30μsである。
本発明によるもう1つの実施例においては、増幅信号およびアドレス信号は、同じ電極112または114に印加される。アドレス信号および増幅信号は、別個の信号または同じ波形に属する信号である。
例えば、SLM内の超小形素子のアレイであるアクチュエータ構造に対し、本発明のアドレス指定方法を用いる時、超小形素子の共振周波数を励起する信号は、パターン発生器において、電磁放射のビームがSLM上に入射する前の所定時間の間スイッチ・オンされる。所定時間は、超小形素子が決定可能な振幅で振動できるようにする。例えば、248nm、197nm、156nmのような任意の出力周波数を有するレーザ源である電磁放射源のパルス周波数を振動周波数と同期させることにより、SLM上の所定の画像は、物体上に結像される。
SLM構造においては、変調素子の数は、時には数百万の程度となる。本発明の1つの実施例においては、アドレス信号は、それぞれの変調素子に対し独特のものであるが、増幅信号(短いパルスまたは波動信号)は、全ての素子に対して等しい。
本発明のもう1つの実施例においては、二次または更に高次の共振周波数が、一次共振周波数に重ね合わされる。一次共振周波数は、上述のように、可動素子の偏向作用における機械的応答の共振周波数と一致している。二次または更に高次の共振周波数は、可動素子内に偏向作用を生じさせる機械的応答と一致する。二次または更に高次の共振周波数は、書込みレーザからのフラッシュの正確な時刻においてミラーを平らにするために用いられる。例えば、製造工程を原因とする又は書込みレーザからの放射により生じる時間の経過に伴う機械的応力変化を原因とする理由により、ミラーが平らでなければ、二次または更に高次の共振周波数を用いて平らでないミラーを平らにすることができる。1.8μmの長さ、0.8μmの幅および480nmの厚さを有するヒンジを備えた、16μmの辺および480nmの厚さを有する正方形状のマイクロ・ミラーの場合は、一次共振周波数は1.4MHz、二次共振周波数は、4.0MHz、三次共振周波数は、5.5MHz、四次共振周波数は、5.7MHz、五次共振周波数は、11.8MHz、六次共振周波数は、13.5MHzとなる。望ましくない可動素子のどのような変形も、一次共振周波数に二次または更に高次の共振周波数の1つまたは複数のものを重ね合わせることにより解消される。共振周波数は、当業者にとって公知の方法により、デジタルまたはアナログ方式で重ね合わされるので、更に深く説明する必要はない。
特定のSLM内の異なる可動素子は、異なる形状とすることができ、従って、可動素子の特性を最適化するために、1つの特定の可動素子の一次共振周波数には二次共振周波数を重ね合わせ、別の可動素子の一次共振周波数には三次共振周波数を重ね合わせることもある。図8aから図8dは、特定の形状のマイクロ・ミラー素子における一次、二次、三次および四次共振周波数をそれぞれ示す。図8aにおいては、可動素子全体がヒンジの回りに傾斜する。図8bにおいては、可動素子は、蝶のようにたわむ。図8cにおいては、可動素子は、可動素子の平面内にありかつヒンジに対し垂直な軸の回りにねじれる。図8dにおいては、可動素子は、図8cにおいて同じ可動素子がねじれた時と同じ軸の回りの蝶状のたわみと回転との組合せを行う。
前述の諸例は、方法に関するものであるが、この方法を用いた装置およびシステムは、容易に理解される。特許請求の範囲に記載されている方法を実行できるプログラムを含有する磁気メモリは、1つのそのような装置である。特許請求の範囲に記載されている方法を実行するプログラムをロードされたメモリを有するコンピュータ・システムは、もう1つのそのような装置である。
本発明を、以上に詳述した実施例および例に関連して開示したが、これらの例は、限定的な意味のものではなく説明的な意味のものであることを意図している。
Claims (14)
- 空間的光変調器により電磁放射の少なくとも1つのパルスを変調する方法において、前記方法は、
複数の機械的可動変調器素子を備えるステップと、
少なくとも1つの印加電圧に応答して静電気力を発生することによって機械的可動変調器素子を移動することができる作動素子を備えるステップとを含み、
機械的可動変調器素子は、静電気力に対して共振性機械的応答をして偏向し、
さらに、少なくとも1つの機械的可動変調器素子において、電磁放射パルスが変調素子に入射する時の変調素子の偏向が、静電気力が静的に印加される場合の一瞬の力による偏向より著しく大きくなるように、静電気力に対する前記共振性機械的応答を励起するための印加電圧の時間依存性を適応させるステップを含む前記方法。 - 静電気力は、機械的可動変調器素子を加速し、前記偏向が最大値に達する前に著しく小さくなる請求項1記載の方法。
- 静電気力は、機械的可動変調器素子を加速する力のパルスから成り、前記力のパルスは、前記偏向が最大値に達する前に著しく小さくなる請求項1記載の方法。
- 前記力のパルスは、変調素子の共振周波数の周期の1/4より短い請求項3記載の方法。
- 電磁放射パルスが変調素子に入射する時の偏向は、静的な力によるスナップ・イン・ポイントに対応する偏向より大きい請求項1記載の方法。
- 静電気力は、変調素子の共振周波数近傍の周波数の発振成分を含む請求項1記載の方法。
- 静電気力は、機械的可動変調器素子の共振性発振応答を励起する周波数で周期的である請求項6記載の方法。
- 前記偏向は、共振によって増幅され、静電気力の最大値に対応する静的偏向よりも著しく大きい最大値を有する請求項7記載の方法。
- 静電気力は、印加電圧に応答する可動部分と少なくとも一つの電極との間の静電引力によって発生する請求項1記載の方法。
- 静電気力は、可動部分と一つの電極との間、および可動部分と別の電極との間の静電引力のバランスによって発生する請求項1記載の方法。
- 前記空間的光変調器は、複数の変調素子を有し、変調素子のための静電気力は、可動部分と電極の平均電位との間のアドレス指定電圧によって発生し、前記アドレス指定電圧は、変調素子の少なくともいくつかで異なり、前記二つの電極間の増幅電圧は、前記複数の変調素子で同じである請求項8記載の方法。
- 前記増幅電圧は、変調素子の共振周波数近傍の周波数の交流電圧である請求項9記載の方法。
- 電磁放射は、248nmと同じかそれより短い波長を有する請求項1記載の方法。
- 物体平面に配置された少なくとも1つの空間的光変調器(SLM)を用いることによりパターンを形成する装置において、前記SLMは、複数の可動変調器超小形素子(110)を含み、前記装置は、
少なくとも1つの印加電圧に応答して静電気力を発生することによって機械的可動変調器素子を移動することができる作動素子(112、114)と、
少なくとも1つの機械的可動変調器素子において、電磁放射パルスが変調素子に入射する時の変調素子の偏向が、静電気力が静的に印加される場合の一瞬の力による偏向より著しく大きくなるように、静電気力に対する共振性機械的応答を励起するための印加電圧の時間依存性を適応させる手段とを含む前記装置。
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