JP2005350550A - 成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性を維持しつつ、機械的強度を向上させることができる成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】前記課題を解決するための手段は、極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る乾燥工程と、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する混練工程とを経て製造される熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
【選択図】 なし

Description

この発明は、成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関し、特に詳しくは、透明性を維持しつつ、機械的強度を向上させることができる成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
液晶ディスプレイ(liquid crystal display、以下、「LCD」)と略す場合もある。)等の大型化、薄型化に伴い、各種光学部材の大型化、薄型化が進んでいる。この光学部材としては、例えば、導光板、光拡散シート、光学レンズ、位相差板、偏光板等を挙げることができる。この光学部材の大型化、薄型化により、光学部材の自重によるたわみ等が生じ、光学部材の材料の高剛性化(機械的強度の向上)が要求されてきている。
光学部材の剛性を向上させる方法としては、例えば、クレイ等の無機化合物を材料中に添加する方法等を挙げることができる。しかしながら、この無機化合物を材料中に添加する方法においては、材料中の無機化合物の分散性を改良しなければならず、この分散性改良のために、極性基を導入したポリマーを使用することから、材料が吸水しやすくなる。
また、従来の方法としては、例えば、
「下記(A)相及び下記(B)相からなる熱可塑性樹脂組成物。
(A)層間が50Å以上である層状無機化合物と熱可塑性樹脂からなるクラスター相
(B)前記層状無機化合物のない熱可塑性樹脂からなる樹脂相」
が、開示されている(特許文献1参照)。
特開2003−253126号公報(請求項1)
加えてこの前述の特許文献1では、熱可塑性樹脂組成物を、極性基を有する樹脂と、有機化層状無機化合物と、極性基を含有しない樹脂とを混合し、それを溶融混練することにより得ることを開示している。
しかしながら、この製造方法により得られる可塑性樹脂組成物は機械的強度が向上しているが、光学製品に使用できるほどの透明性を有しない場合がある。
この発明は、このような従来の問題点を解消し、透明性を維持しつつ、機械的強度を向上させることができる成形体、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することをその課題とする。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る乾燥工程と、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する混練工程とを経て製造される熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体であり、
請求項2は、極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る乾燥工程と、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する混練工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法であり、
請求項3は、前記中間組成物は、熱重量測定/微分熱重量測定(TG/DTA)により、30℃から550℃まで毎分10℃で昇温したときの、昇温前の前記中間組成物に対して300℃における加熱減量が2質量%以下である請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であり、
請求項4は、熱可塑性樹脂組成物を厚さ1mmの板に成形したときの、ヘイズが5%以下である請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
本発明によると、特定の分散工程、乾燥工程及び混練工程を採用しているので、本発明以外の製造方法により得られる熱可塑性樹脂組成物に比べて、有機化層状無機化合物を含有するにもかかわらず、透明性に優れ、機械的強度が大きく、熱に対する変形の少ない熱可塑性樹脂組成物を製造する方法を提供することができ、本発明に係る方法により製造された熱可塑性樹脂組成物を用いると、光学部材として好適な成形体を提供することができる。
このように有機化層状無機化合物を含有するにもかかわらず、前記した優れた特性を発揮することのできる理由は、以下のようであると推測される。
つまり、層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物は、層間に有機化剤が浸入することにより層間が拡大するとともに層間が有機雰囲気になる。そのような状態の有機化層状無機化合物と極性基含有熱可塑性樹脂とを溶媒に分散させて得られる中間組成物を乾燥した後にその中間組成物と熱可塑性樹脂とを溶融混練すると、極性基含有熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂中にナノオーダ例えば1〜100nmの大きさの超微粒子状となった有機化層状無機化合物が分散した状態が実現される。超微粒子状になった有機化層状無機化合物が極性基含有熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂中に分散しているので、有機化層状無機化合物が分散しているにも拘わらず、熱可塑性樹脂組成物の透明性が阻害されず、むしろ向上することすらある。しかも、超微粒子状に有機化層状無機化合物が分散しているとはいえ、分散した有機化層状無機化合物同士が何らかの相互作用により相互に結合した状態が実現される。後述する実施例に添付された電子顕微鏡写真からも裏付けられるように、有機化層状無機化合物は、極性基含有熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂中に、不均一に分散している。不均一に有機化層状無機化合物が分散しているにも拘わらずに、本発明の方法により得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が向上するのは、分散した有機化層状無機化合物が相互に結合することにより擬似的なウィスカー様になっているからであるとすると、よく理解することができる。
このように有機化層状無機化合物が、超微粒子状になって分散しており、しかも相互に結合してウィスカ−様になっているので、有機化層状無機化合物同士の離れた空間が、光を良好に透過させることになる。したがって、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体は、その透明性を維持することができる。しかも相互作用によりウィスカ−様に結合した有機化層状無機化合物同士は、全体としてみると、あたかも1つのウィスカーのように挙動すると推測されるので、本発明の方法により得られる熱可塑性樹脂組成物は機械的強度が向上すると考えられる。
本発明に係る製造方法においては、前記中間組成物が、熱重量測定/微分熱重量測定(TG/DTA)により、30℃から550℃まで毎分10℃で昇温したときの、昇温前の前記中間組成物に対する300℃における加熱減量を2質量%以下に調整されていると、残留溶剤が殆ど存在せず、したがって残留溶剤による軟化作用により有機化層状化合物が均一に分散するといった不都合が少なくなる。
この発明の一実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、分散工程と、乾燥工程と、混練工程とを有する。
[分散工程]
前記分散工程は、極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る工程である。
本発明における極性基含有熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂に極性基を導入してなる樹脂、極性基を有するモノマーを重合又は共重合して得られる樹脂、前記樹脂と極性基を有していない樹脂とのブレンド物等を挙げることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状オレフィン系樹脂、脂環式構造含有重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも鎖状オレフィン系樹脂及び脂環式構造含有重合体樹脂が好ましく、特に脂環式構造含有重合体樹脂が好ましい。この発明における熱可塑性樹脂としては、その全光線透過率は、85%以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂の全光線透過率が前記値以上であると、この発明に係る熱可塑性樹脂組成物自体の透明性が良好になり、その成形体を光学部材に好ましく適用することができる。
前記鎖状オレフィン系樹脂としては、炭素数2〜20のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセン等の単独重合体、又は共重合体である。これらの具体的な重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、及びポリ−4−メチル−1−ペンテン等の単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・1−デセン共重合体等を挙げることができる。
この発明における熱可塑性樹脂として、これらの鎖状オレフィン系樹脂は単独で用いることもできるし、その2種類以上を併用することもできる。これらの鎖状オレフィン系樹脂のうちではポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ−1−ブテン等の、結晶化度が40%以上であるようなガラス転移点の高い樹脂が、ガスバリアー性が優れるので好ましい。
なかでも、ポリエチレン、及びポリプロピレンが成形性、及び剛性等が優れているので最も好ましい。ポリプロピレンは、単独重合体、エチレンおよび/または1−ブテンとのランダム共重合体、およびブロック共重合体のいずれをも好適に使用することができるが、成形品の強度とガスバリアー性との点から、前記ブロック共重合体が好ましい。この発明で用いるポリオレフィンは、135℃のデカリン中で測定される極限粘度が0.01〜20dl/g、好ましくは、0.1〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。そのような極限粘度を有する鎖状オレフィン系樹脂は、成形性に優れるという利点があるからである。
前記脂環式構造含有重合体樹脂は、その重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する。この脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等を挙げることができる。これら脂環式構造の中でも、この発明に係る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の熱安定性を向上させることを目的とするのであれば、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは、5〜20、より好ましくは、5〜15である。炭素数がこの範囲にあると、この発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐熱性と柔軟性を有する成形体に成形されることができる。この脂環式構造は、重合体の主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよい。
前記脂環式構造含有重合体樹脂における脂環式構造を含有する繰り返し単位の含有割合に制限はなく、得られる樹脂組成物の性状、物性等に応じて適宜、選択されるが、通常は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
この繰り返し単位の含有割合が少量に過ぎると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。なお、この発明に用いる脂環式構造含有重合体樹脂は、脂環式構造を含有する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
前記脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及びこれらの水素添加物等を挙げることができる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体、環状共役ジエン系重合体及びそれらの水素添加物、及びそれらの混合物等が好ましく、ノルボルネン系重合体が耐熱性、機械強度の点からより好ましい。
前記ノルボルネン系重合体(1)としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体、およびこれら開環共重合体の水素化物、ならびにノルボルネン系モノマーの付加重合体、およびノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体等を挙げることができる。
これら重合体および共重合体の中でも、得られる脂環式構造含有重合体樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物が特に好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体等を挙げることができる。
前記置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基等を挙げることができ、前記ノルボルネン系モノマーは、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
これら置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等を挙げることができる。
前記ノルボルネン系重合体(1)を製造するために用いられるこれらノルボルネン系モノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体は、前記モノマーを公知の開環重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
前記ノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーを挙げることができる。
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物は、通常、ノルボルネン系モノマーの重合液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒と水素とを添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することによって製造することができる。
前記ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体は、前記モノマーを公知の付加重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
ノルボルネン系モノマーに対して付加共重合可能な他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン等を挙げることができる。これらモノマーの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ノルボルネン系モノマーとこれに対して共重合可能な他のモノマーとを付加共重合するに当っては、得られる付加共重合体中のノルボルネン系モノマーに由来する構造単位と、付加共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位との割合が、質量比で、50:50〜99:1、好ましくは70:30〜97:3の範囲となるよう、各モノマーの使用量が選択される。
前記単環の環状オレフィン系重合体(2)としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
前記環状共役ジエン系重合体(3)としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体およびその水素化物を挙げることができる。
また、前記ビニル脂環式炭化水素重合体(4)としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系モノマーまたはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体およびその芳香環の水素化物等を挙げることができる。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロックまたはそれ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
また、この発明における熱可塑性樹脂の分子量に特に制限はないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常は、5,000〜500,000、好ましくは、8,000〜200,000、より好ましくは、10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることもできる。この重量平均分子量は、シクロヘキサン(または樹脂が溶解しないときはトルエン)溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定することができる。
さらに、この発明における熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)にも特に制限はないが、通常は、80℃以上、好ましくは、130〜250℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物において、高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることがなく、優れた耐久性を与えることができる。
前記極性基含有熱可塑性樹脂における極性基としては、ヘテロ原子またはヘテロ原子を有する原子団等を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。これらヘテロ原子の中でも、無機化合物との分散性および相溶性の観点からすると、酸素原子および窒素原子が好ましい。前記極性基として、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、ハロゲン基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、スルホン基、酸無水物基等を挙げることができる。
極性基含有熱可塑性樹脂を得る方法としては特に制限はないが、極性基含有熱可塑性樹脂が脂環式構造含有重合体樹脂の一種であるノルボルネン系重合体である場合、例えば、(a)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる未変性重合体に、極性基を有する化合物を反応(変性反応)させる方法、(b)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーと極性基を有するノルボルネン系モノマーとを共重合させる方法、(c)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる重合体と、前記(a)の方法または(b)の方法により得られた極性基を有するノルボルネン系重合体とを混合する方法等を挙げることができる。ノルボルネン系重合体以外の脂環式構造含有重合体樹脂についても、ノルボルネン系重合体の場合と同様である。
(a)の方法で得られる極性基含有熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂の塩素化物、クロロスルホン化物、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物等を挙げることができ、中でも、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物が好ましい。
前記極性基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、p−スチリルカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸化合物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート等の不飽和エステル化合物;アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等の不飽和アルコール酸化合物;クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート等の不飽和シラン化合物等を挙げることができる。
これら極性基含有不飽和化合物の中でも、層状無機化合物の分散性の観点からすると、不飽和エポキシ化合物および不飽和カルボン酸化合物が特に好ましい。なお、これら極性基含有不飽和化合物を効率よく共重合させるためには、汎用のラジカル開始剤の存在下に重合反応を実施することが好ましく、この好適なラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等を挙げることができる。
極性基含有熱可塑性樹脂中の極性基の含有量は、0.8mmol/g以下が好ましく、特に0.5mmol/g以下が好ましく、更には0.3mmol/g以下が好ましい。極性基が0.8mmol/gを超えると、本発明の方法により得られる熱可塑性樹脂組成物の吸水率が増加してしまうことがある。
なお、前記極性基含量は、前記(a)の方法においては、極性基を有する化合物の反応による極性基の導入率により、前記(b)の方法においては、極性基を有するモノマーの共重合割合により、前記(c)の方法においては、極性基を有しない重合体と極性基を有する重合体との混合割合により、調節することができる。
この発明で用いる層状無機化合物は、その化合物が平面的に配列されたシート構造を有する状態(層状)にあり、その法線方向にシート構造の繰り返しが見られる、多結晶層構造を有する化合物である。この層状無機化合物は、結晶層が相互にイオン結合または水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負電荷に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。
このような層状無機化合物としては、グラファイト、TiS、NbSe、MoS等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO、V等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)、Cu(OH)等の水酸化物;Zr(HPO・nHO、Ti(HPO・nHO、Na(UOPO・nHO等のリン酸塩;NaTi、KTiNbO、RbMnTi2−x等のチタン酸塩;Na、K等のウラン酸塩;KV、K14、CaV16・nHO、Na(UO)・nHO等のバナジン酸塩;KNb、KNb17等のニオブ酸塩;Na13、Ag1013等のタングステン酸塩;MgMo、CsMo16、CsMo22、AgMo1033等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘度鉱物、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ハロイサイト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、HSiO、HSi1429・5HO等の珪酸塩またはこの珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることができる。
これら層状無機化合物の中でも、前記樹脂への分散性、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点から、珪酸塩、リン酸塩およびモリブデン酸塩が好ましく、さらには、珪酸塩が特に好ましい。
前記層状無機化合物は、その長径の平均値が通常0.01〜30μm、好ましくは0.02〜10μm、より好ましくは0.03〜5μmである。前記層状無機化合物における長径の平均値が前記範囲であると、樹脂組成物及び成形体の耐熱性、及び機械強度等が特に優れる。
前記層状無機化合物は、有機化剤により有機化処理をすることにより、有機化層状無機化合物となる。いいかえれば、有機化処理を行うことにより、層状無機化合物における層間距離が拡大して各層が分離し、微細な板状の粒子となった有機化層状無機化合物が生成する。
層状無機化合物の有機化処理は、例えば、層状無機化合物を溶剤、例えば水に分散させて層状無機化合物の分散液を調製し、この分散液に前記陽イオン性界面活性剤を添加し、常温または加熱下で撹拌することによって行うことができる。このときの分散液における層状無機化合物の濃度は、0.01〜70質量%に調整することが好ましい。
有機化層状無機化合物の配合割合は、分散工程時に用いる極性基含有熱可塑性樹脂100質量部に対して20〜200質量部であり、好ましく40〜180質量部である。層状無機化合物の配合量が前記上限値を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の透明性を低下させることとなる。
前記有機化剤として、陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。陽イオン性界面活性剤の具体例として、R+-で表される第四級アンモニウム塩を挙げることができる。
前記R+-において、有機オニウムイオンR+中のR、R、RおよびRは、それぞれ同一であっても、別異であってもよく、炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基を表す。この炭素数1〜30の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基;ラウリル基、オレイル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を挙げることができる。X-としては、Cl-、Br-、NO -、OH-、CHCOO-等の陰イオンを挙げることができる。
有機オニウムイオンR+としては、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、又はラウリン酸アンモニウムイオン等を用いることができる。
有機化剤の層状無機化合物に対する配合割合は、層状無機化合物の陽イオン交換量の1.0倍〜1.5倍に相当する量、具体的には層状無機化合物100質量部に対して、20〜200質量部、好ましくは30〜150質量部である。
溶剤の種類としては、特に制限されないが、通常は、水である。
有機化層状無機化合物を溶剤に分散させる分散方法としては、特に制限されない。例えば、分散させる装置としては、公知の分散装置と用いればよく、具体的には、攪拌槽、ブレンダー、ヘンシェルミキサー、振とう機などが挙げられる。その際、超音波を加えたり、溶剤の沸点以下の温度に加温したりしてもよい。
また、極性基含有熱可塑性樹脂と、層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させると、極性基含有熱可塑性樹脂が層状無機化合物における層間にさらに浸入して層間をさらに拡大させ、有機化層状無機化合物の超微粒子状分散状態が形成される。
[乾燥工程]
乾燥工程は、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る工程である。乾燥には、真空乾燥機、薄膜乾燥機などを使用することができる。この中でも、真空乾燥機が好ましい。
乾燥温度としては、通常60〜250℃、好ましくは80〜200℃である。また、圧力としては、好ましくは20kPa以下、さらに好ましくは10kPa以下である。
なお、前記中間組成物は、熱重量測定/微分熱重量測定(TG/DTA)により、30℃から550℃まで毎分10℃で昇温したときの、昇温前の前記中間組成物に対して300℃における加熱減量が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
300℃における加熱減量が2質量%を超えると、残留溶剤の軟化作用により、有機化層状化合物が均一に分散してしまう可能性がある。
[混練工程]
混練工程は、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する工程である。
この混練工程で用いられる前記熱可塑性樹脂としては、前記[分散工程]にて説明した熱可塑性樹脂及び極性基含有熱可塑性樹脂を挙げることができる。
もっとも、混和可能な熱可塑性樹脂としては、極性基含有熱可塑性樹脂を構成する繰り返し単位と同じ繰り返し単位を50質量%以上有するものが好ましい。
けだし、混練工程で用いる熱可塑性樹脂と前記中間組成物中の極性基含有熱可塑性樹脂との相溶性が上がるからである。
前記中間組成物と前記熱可塑性樹脂との配合割合としては、熱可塑性樹脂組成物中の樹脂成分が98〜80質量%、有機化層状無機化合物が2〜20質量%となるようにする。さらに樹脂成分の極性基含有熱可塑性樹脂の割合が10〜100質量%となるようにすることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に制限はなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機、これらを連結した押出機などが挙げられる。
乾燥機として薄膜乾燥機を用いた場合、薄膜乾燥機から吐出された溶融状態の中間組成物をそのまま二軸押出機の混練ゾーンに供給して連続的に溶融混練を行うことも可能である。
溶融混練を行うために、押出機を使用する際に、押出機内の平均滞留時間は1〜20分、好ましくは2〜15分である。
使用する押出機のスクリュー部分の長さLと押出機のスクリュー直径Dとの比L/Dは、通常20〜80、好ましくは30〜65であることが好ましい。
溶融混練の際の回転数としては、100〜900rpmが好ましく、250〜750rpmがさらに好ましい。このようにすれば、単層剥離した有機化層状無機化合物が凝集して分散状態に疎の部分と密の部分を有するようにすることができる。
また、溶融混練の際の温度としては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とすると、Tg+40℃〜Tg+200℃が好ましく、Tg+50℃〜Tg+150℃がさらに好ましい。上記範囲で溶融混練することにより、単層剥離した有機化層状無機化合物が凝集して分散状態に疎の部分と密の部分を有するようにすることができる。
ここで、溶剤に分散させ、乾燥して得られる中間組成物に、前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂を添加し、溶融混練することにより、連続に結合した有機化層状無機化合物にせん断力が加わると推測される。このせん断力により、有機化層状無機化合物の面方向に対して、略垂直な方向に結合していたものが、斜め方向に結合している状態になると推測される。
[熱可塑性樹脂組成物]
かくして得られた樹脂組成物においては、層状無機化合物は、有機化剤で有機化されている。
つまり、この層状無機化合物の層間に、有機化剤が挿入し(インターカレートし)、層間に存在していた例えばNaイオンを置換して、層間距離が広がった状態となった有機化層状無機化合物が中間組成物中に分散している。なお、この有機化剤は、分散した有機化層状無機化合物の表面と、カチオンを交換することで結合していると推測される。
そして、分散工程、乾燥工程、および混練工程を経ているので、この発明に係る熱可塑性樹脂組成物中で、有機化層状無機化合物同士が、斜め方向に結合した状態になり、有機化層状無機化合物同士の垂直方向の距離は、変わらないものの、実質的な距離は、大きくなると推測される。したがって、有機化層状無機化合物同士の離れた空間が、光を透過させると推測されるため、当該樹脂組成物を成形した場合でも、その成形体の透明性を維持することができる。
なお、結合した有機化層状無機化合物同士は、全体としてみると、熱可塑性樹脂組成物中であたかも1つのウィスカーのように挙動すると推測される。したがって、上記したようなウィスカー状の挙動をすると思われるので、熱可塑性樹脂組成物を成形した後の機械的強度を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、厚み1mmの板に成形した場合に、ヘイズが、5%以下であることにより、好適に、例えば、透明性が要求される光学部品等に使用することができる。
[成形体]
この発明に係る熱可塑性樹脂組成物を成形して、各種成形体が製造される。この成形体としては、LCDのバックライトやフロントライト用の導光板、導光体等の特に長光路の光透過性が求められるものを挙げることができる。
その他にも、LCDのバックライト用光拡散板(本発明の熱可塑性樹脂組成物にさらに光拡散剤を配合する)、光学フィルム、光学レンズ等を挙げることができる。光学レンズとしては、レーザービームプリンター用のFθレンズ、カメラまたはカメラ付き携帯電話等の撮像用レンズ、光学式情報記録装置用のピックアップレンズ、眼鏡等を挙げることができる。
この成形体を成形する成形方法としては、各種成形体に応じて、公知の成形方法を採用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて、この発明をより具体的に説明する。なお、この発明は実施例の内容に限定されるものではない。
(製造例1)
(脂環式構造含有重合体樹脂Aの製造例)
窒素雰囲気下に、脱水したシクロヘキサン500質量部、1−ヘキセン0.82質量部、ジブチルエーテル0.15質量部およびトリイソブチルアルミニウム0.30質量部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(以下、「MTCD」と略記する。)100質量部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)40質量部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。
得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06質量部およびイソプロピルアルコール0.52質量部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
次いで、得られた開環重合体を含有する重合反応溶液100質量部に、シクロヘキサン270質量部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5質量部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、MTCD開環重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。
得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、MTCD開環重合体水素化物を100質量部に対して0.1質量部になるように、ろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。
続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、MTCD開環重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。
このようにして製造されたところの、極性基を有しない脂環式構造含有重合体樹脂の一例であるMTCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は40,000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は148℃であった。
(製造例2)
(極性基を有する脂環式構造含有重合体樹脂Bの製造例)
製造例1で得られたMTCD開環重合体水素化物100質量部に、無水マレイン酸10質量部、ジクミルパーオキシド3質量部およびtert−ブチルベンゼン230質量部を混合し、オートクレーブ中で135℃、6時間、反応させた後、多量のイソプロピルアルコール中に加えることによって析出させ、ろ過して、樹脂を得た。
この樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間、乾燥して、極性基を有する脂環式構造含有重合体樹脂の一例である無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物(極性基含有脂環式構造含有重合体樹脂B)を得た。この無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は65,000、ガラス転移点は146℃、H-NMRで測定した無水マレイン酸変性量は0.45mmol/gであった。
(製造例3)
(有機化サポナイトの製造)
合成サポナイト(クニミネ工業社製、品名スメクトンSA、平均長径0.05μm)100質量部を60℃の蒸留水1000質量部に均一に分散させ、サポナイト分散液を調製した。次いで、このサポナイト分散液を撹拌しながら、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド100質量部を蒸留水7000質量部に溶解させた溶液を緩やかに添加し、60℃で3時間、撹拌を続けた後、ろ過して固形物を分取した。この固形物を60℃の蒸留水で2回洗浄した。凍結乾燥法により水分を除去して、有機化処理サポナイトを製造した。
(実施例1)
製造例2により製造された極性基含有脂環式構造含有重合体樹脂B 10質量部と製造例3によって製造された有機化サポナイト(以下、oSAPと称する。)10質量部とをトルエン180質量部にラボシェーカーで振とうすることにより溶解し、次いで、超音波分散機で2分間分散させた。その溶液をイソプロピルアルコールに滴下して沈殿してきた組成物をろ過し、次いで、真空乾燥機に100℃、一晩かけて乾燥させて中間組成物1を得た。なお、熱重量測定/微分熱重量測定(TG/DTA)(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて、30℃から550℃まで毎分10℃で昇温したときの中間組成物1の300℃における加熱減量を測定した。実施例1における加熱減量は、0.2質量%であった。
中間組成物1 20質量部と、製造例1により製造された脂環式構造含有重合体樹脂A80質量部とを二軸押出機にて混練温度210℃、回転数700rpmの条件で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物をプレス成形にて、厚さ1mmの平板サンプルを作成しヘイズ、全光線透過率を測定した。同様に厚さ3mmの平板サンプルを作成し線膨張係数、曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示した。
また、前記厚さ1mmの平板サンプルをLEICAウルトラミクロトーム(日立ハイテクノロジーズ社製、ULTRACUT−UCT)用いて超薄切片を作成し、これを透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、H−7500)を用いて熱可塑性樹脂組成物の分散状態を観察した。この電子顕微鏡写真を図1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様に、中間組成物1を作製したあと、脂環式構造含有重合体樹脂Aの代わりに脂環式構造含有重合体樹脂Bを中間組成物1と混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
この熱可塑性樹脂組成物をプレス成形にて、厚さ1mmの平板サンプルを作成しヘイズ、全光線透過率を測定した。同様に厚さ3mmの平板サンプルを作成し線膨張係数、曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示した。
(比較例1)
製造例1により製造された脂環式構造含有重合体樹脂A 80質量部と、製造例2により製造された脂環式構造含有重合体樹脂B 10質量部と、製造例3により製造されたoSAP 10質量部とを二軸押出し機にて混練し、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物をプレス成形にて、厚さ1mmの平板サンプルを作成しヘイズ、全光線透過率を測定した。同様に厚さ3mmの平板サンプルを作成し線膨張係数、曲げ弾性率を測定した。結果を表1に示した。また、実施例1と同様に樹脂組成物の分散状態を観察した。その電子顕微鏡写真を図2に示す。
(比較例2)
製造例1で製造した脂環式構造含有重合体樹脂Aの物性を示した。
(実施例3)
アクリル樹脂(三菱レーヨン製:アクリペットVH5)10質量部と製造例3によって製造された有機化サポナイト(以下oSAPと称する。)10質量部をトルエン180質量部にラボシェーカーで振とうすることにより溶解し、次いで、超音波分散機で2分間分散させた。
その溶液をイソプロピルアルコールに滴下して沈殿してきた組成物をろ過し、次いで、真空乾燥機に100℃、一晩かけて乾燥させて中間組成物2を得た。中間組成物2の300℃における加熱減量を測定したところ、0.3質量%以下であった。
中間組成物2 20質量部とアクリル樹脂(三菱レーヨン製:アクリペットVH5)80質量部とを二軸押出機にて、混練温度200℃、回転数700rpmで混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
(比較例3)
アクリル樹脂(三菱レーヨン製:アクリペットVH5)90質量部と、製造例3により製造されたoSAP 10質量部とを二軸押出し機にて混練し、樹脂組成物を得た。
(比較例4)
アクリル樹脂(三菱レーヨン製:アクリペットVH5)のみの物性を表1に示した。
Figure 2005350550
<へイズの測定>
JIS K7105の方法に従って、濁度計(NDH−300A、日本電色工業社製)を用いて測定した。
<全光線透過率の測定>
JIS K7105の方法に従って、濁度計(NDH−300A、日本電色工業社製)を用いて測定した。
<線膨張係数の測定>
JIS K7197の方法に従って、TMA(TMA300、セイコーインスツルメンツ)を用いて測定した。
<曲げ弾性率の測定>
ASTM D−790に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
この表1によれば、実施例1、2、3においては、有機化層状無機化合物を配合する前のもの(実施例1、2においては比較例2、実施例3においては比較例3)と比較しても、ヘイズおよび全光線透過率について、劣ることはなかった。したがって、実施例に係る熱可塑性樹脂組成物を成形した場合でも、その成形体の透明性を維持することができることがわかった。
また、この表1によれば、実施例1、2、3は、比較例1、2、3、4のいずれと比較しても、線膨張係数が小さくなった。したがって、実施例に係る熱可塑性樹脂組成物の成形体は、熱による変形を小さくすることができることがわかった。
さらに、この表1によれば、実施例1、2、3は、比較例1、2、3、4のいずれと比較しても、曲げ弾性率が大きくなった。したがって、実施例に係る熱可塑性樹脂組成物の成形体は、機械的強度が向上していることが分かった。
また、図1として示される電子顕微鏡写真によると、実施例1に係る熱可塑性樹脂組成物において、有機化層状無機化合物が密の状態で分散していることが観察される。有機化層状無機化合物が密になっているところは、ウィスカ−状になっているものと推測される。
このように有機化層状無機化合物同士が、ウィスカ−状態を形成し、しかも超微粒子状態で分散していると考えると、得られる熱可塑性樹脂組成物が大きな機械的強度を有することをよく理解することができる。また、密になった部分はミクロにみると超微粒子状態で有機化層状無機化合物が分散しているから、透明性が維持乃至向上している。
これに対して、図2で示される電子顕微鏡写真によると、比較例1に係る樹脂組成物において、熱可塑性樹脂中に、分散した有機化層状無機化合物同士が、実施例1に係る樹脂組成物の場合よりも、間隔が広がっていない。このことから、実施例1に係る樹脂組成物(図1参照)と、比較例1に係る樹脂組成物(図2参照)との物性に差異が生じたものと推測される。
図1は、本発明の実施例1に係る樹脂組成物の分散状態を観察した電子顕微鏡写真である。 図2は、比較例1に係る樹脂組成物の分散状態を観察した電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る乾燥工程と、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する混練工程とを経て製造される熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
  2. 極性基含有熱可塑性樹脂と層状無機化合物を有機化剤で処理してなる有機化層状無機化合物とを溶剤に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液を乾燥して中間組成物を得る乾燥工程と、前記中間組成物と前記極性基含有熱可塑性樹脂に混和可能な熱可塑性樹脂とを溶融混練する混練工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記中間組成物は、熱重量測定/微分熱重量測定(TG/DTA)により、30℃から550℃まで毎分10℃で昇温したときの、昇温前の前記中間組成物に対して300℃における加熱減量が2質量%以下である請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  4. 熱可塑性樹脂組成物を厚さ1mmの板に成形したときの、ヘイズが5%以下である請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

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JP2017043691A (ja) * 2015-08-26 2017-03-02 Dic株式会社 ガス又は水蒸気バリア性樹脂組成物、およびバリア材

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