JP2007008994A - 成形体、透明導電性のフィルム又はシート、およびフラットパネルディスプレイ - Google Patents

成形体、透明導電性のフィルム又はシート、およびフラットパネルディスプレイ Download PDF

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Mitsugi Uejima
貢 上島
Toshihide Murakami
俊秀 村上
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Abstract

【課題】
表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性に優れ、フラットパネルディスプレイ素子基板等として有用な有機・無機複合体からなるフィルム等、該フィルム等上に透明導電層が積層された透明導電性フィルム等、及びこの透明導電性のフィルム等を構成要素とするフラットパネルディスプレイを提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機・無機複合体からなる成形体であって、耐溶剤性指数が0.8以上であり、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む樹脂組成物を溶融成形した後、得られたフィルム状成形物に、相対湿度65%以下の環境下にてエネルギー線を照射して得られるフィルム等、このフィルム等に透明導電層を積層した透明導電性のフィルム等、この透明導電性のフィルム等を構成要素とするフラットパネルディスプレイ。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性に優れ、フラットパネルディスプレイ素子基板等として有用な有機・無機複合体からなる成形体、フィルム又はシート、該フィルム又はシート上に有機若しくは無機の薄膜が積層されてなる積層フィルム又はシート、前記フィルム又はシート上に透明導電層が積層されてなる透明導電性のフィルム又はシート、及びこの透明導電性のフィルム又はシートを用いるフラットパネルディスプレイに関する。
従来、熱可塑性樹脂中に無機微粒子をナノスケールで均一分散(ナノ分散)させて有機・無機複合体とすることで、樹脂単体では得られない機械的特性、熱的特性等の物性向上を図ることが行われている。
例えば、特許文献1には、ポリマーを変性させて官能基を導入してなる変性ポリマーを得る工程と、該変性ポリマーと有機化クレイとを混練して両者を複合化する工程とからなる有機・無機複合体の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、特定のガラス転移温度をもつ重合体中に、特定の分解開始温度を有する有機変性層状珪酸塩を含有する有機・無機複合体、及びこの複合体からなるフィルムが開示されている。この有機・無機複合体及びフィルムは、優れた耐熱性とガスバリア性とを兼ね備え、液晶表示素子基板等の画像表示素子基板に好適であるとされている。
しかしながら、実際には、熱可塑性樹脂中に無機微粒子をナノ分散させることで物性向上を図る効果が得られる樹脂は限られており、多くの場合、無機微粒子を単にナノ分散させただけでは顕著な物性向上は期待できない。また、上記文献に記載された技術のように、重合体中に無機微粒子を単にナノ分散させただけでは、得られる複合体及びフィルムは耐熱性やガスバリヤ性に優れるものの、例えば液晶表示素子基板等に求められる高度の低熱膨張性を得るには不十分であった。
一方、樹脂成形体の物性を向上させる手段として、架橋性樹脂を含む樹脂組成物を成形し、得られる樹脂成形物を架橋する方法が知られている。なかでも、樹脂成形物にエネルギー線を照射して架橋する方法は、樹脂の種類によってはゲル分率が90%以上の架橋体を得ることができる方法である。
例えば、特許文献3には、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂100重量部と、特定の層状珪酸塩0.1〜100重量部とを含有する樹脂組成物であって、所定温度範囲内における平均線膨張率が5.0×10−5/℃以下である樹脂組成物が提案されている。この文献の記載によれば、樹脂組成物を成形後、得られる成形体を硬化させて硬化樹脂からなる成形体を得ている。この文献に記載された樹脂組成物及びその成形体によれば、機械的強度や耐熱性をある程度向上させることは可能である。
しかしながら、この文献に記載されているような高レベルで熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂中に層状珪酸塩の分散を行うためには相当大きなシェアをかける必要があり、それによって熱が発生し、ゲルや部分硬化が発生してしまう。そのため、例えば液晶表示素子基板などに求められる高度の低熱膨張性を得るには依然として不十分であった。
また、上記文献に記載されたフィルム状の成形体上に、有機薄膜や無機薄膜を積層して積層フィルムを製造する場合においては、得られる積層フィルムの表面に波シワが発生したり、白濁することがあり、問題となっていた。特にフィルム状の成形体をフラットパネルディスプレイ素子基板として用いる場合に、求められる高度の表面平滑性や耐溶剤性、低熱膨張性、耐熱性を得るには依然として不十分であった。
特開平11−92677号公報 特開2004−107541号公報 特開2004−269853号公報
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性に優れ、フラットパネルディスプレイ素子基板等として有用な有機・無機複合体からなる成形体、フィルム又はシート、該フィルム又はシート上に有機若しくは無機の薄膜が積層されてなる積層フィルム又はシート、前記フィルム又はシート上に透明導電層が積層された透明導電性のフィルム又はシート、及びこの透明導電性のフィルム又はシートを構成要素とするフラットパネルディスプレイを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、無機微粒子を含有する成形体においては、無機化合物は親水性が高いため、湿度が高い環境下でエネルギー線を照射すると、フィルム表面の硬化不良を起こしやすいという知見を得た。そこで、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む樹脂組成物を溶融成形した後、得られた成形物にエネルギー線を照射するときの環境を相対湿度65%以下とすると、表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性に優れる成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明の第1によれば、熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機・無機複合体からなる成形体であって、耐溶剤性指数が0.8以上であり、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む樹脂組成物を溶融成形した後、得られた成形物に、相対湿度65%以下の環境下にてエネルギー線を照射して得られたものであることを特徴とする成形体が提供される。
本発明の成形体においては、ゲル分率が80%以上であることが好ましく、前記エネルギー線が電子線であることが好ましい。
また、本発明の成形体はフィルム又はシートであるのが好ましい。
本発明の第2によれば、本発明のフィルムまたはシート上に、有機若しくは無機の薄膜を積層した積層フィルムまたはシートが提供される。
本発明の第3によれば、本発明のフィルムまたはシートに、透明導電層を積層した透明導電性のフィルムまたはシートが提供される。
本発明の第4によれば、本発明の透明導電性のフィルムまたはシートを構成要素とするフラットパネルディスプレイが提供される。
本発明の成形体は、優れた表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性を有する。特に本発明の成形体は表面硬化性に優れるため、有機若しくは無機の薄膜を積層した場合であっても、表面に波シワが発生したり、白濁することがない。
本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、高温・多湿の環境下に長時間おかれた場合であっても表面抵抗値がほとんど変化しない。従って、本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、フラットパネルディスプレイの素子基板として好適である。
本発明のフラットパネルディスプレイは、本発明の透明導電性のフィルム又はシートを構成要素としているので、耐久性に優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)成形体
本発明の成形体は、熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機・無機複合体からなる成形体であって、耐溶剤性指数が0.8以上であり、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を含む樹脂組成物を溶融成形した後、得られた成形物に、相対湿度65%以下の環境下にてエネルギー線を照射して得られたものであることを特徴とする。
ここで、有機・無機複合体とは、無機材料(無機微粒子)と有機材料(熱可塑性樹脂)とが分子レベル及びナノオーダーで均一に混ざり合った状態を示す。
(1)熱可塑性樹脂
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、無機微粒子を均一に分散させることができるものであれば、特に制限されない。例えば、脂環式構造含有重合体、ポリエチレンやポリプロピレン等の鎖状オレフィン系重合体、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフイン、変性アクリル系ポリマー、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、脂環式構造含有重合体、鎖状オレフィン系重合体または変性アクリル系ポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から、脂環式構造含有重合体が特に好ましい。
脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性等の観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい
この脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造を挙げることができる。これら脂環式構造の中でも、この発明に係る樹脂組成物から得られる成形体の熱安定性を向上させることを目的とするのであれば、シクロアルカン構造が好ましい。
脂環式構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜15である。炭素数がこの範囲にあると、優れた耐熱性と柔軟性を有する成形体を得ることができる。
前記脂環式構造含有重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の含有割合に制限はなく、得られる樹脂組成物の性状、物性等に応じて適宜、選択される。通常は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、上限は100重量%とすることができる。
この繰り返し単位の含有割合があまりに少ないと、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下するおそれがある。
前記脂環式構造含有重合体の具体例としては、(i)ノルボルネン系重合体、(ii)単環の環状オレフィン系重合体、(iii)環状共役ジエン系重合体、(iv)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及びこれらの水素化物等を挙げることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が耐熱性、機械強度の点から好ましい。
前記ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体、及びこれら開環重合体又は開環共重合体の水素化物、並びにノルボルネン系モノマーの付加重合体、及びノルボルネン系モノマーとこれと付加共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体を挙げることができる。
これら重合体及び共重合体の中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素化物が特に好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体等を挙げることができる。
前記置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基、ビニル基、フェニル基、ビフェニル基を挙げることができる。前記ノルボルネン系モノマーは、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
これら置換基を有するノルボルネン系モノマーの具体例としては、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−メチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、等を挙げることができる。
これらのノルボルネン系単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能な他のモノマーとしては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の炭素数5〜20、好ましくは5〜10の単環の環状オレフィン単量体又は環状ジオレフィン単量体を例示することができる。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体は、これらのモノマーを、公知の開環重合触媒の存在下、溶媒中又は無溶媒で、通常、−50℃〜+100℃の重合温度、0.01〜5MPaの重合圧力で重合することにより得ることができる。
重合時間は、使用する単量体の重合転化率に応じて適宜調整すればよい。
重合反応用溶媒としては、生成する重合体を溶解し、かつ重合反応を阻害しない溶媒であれば、限定なく使用されうる。
例えば、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含窒素系炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
これらの中でも、芳香族炭化水素類、脂環族炭化水素類、エーテル類、ケトン類及びエステル類が好ましい。
溶媒の使用量は、重合反応液中の単量体濃度が、1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%になる範囲で適宜調整される。
ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物及びノルボルネン系モノマーと開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体の水素化物は、これらの開環重合体又は開環共重合体の反応溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、通常−10℃〜+250℃、好ましくは0℃〜200℃の反応系に、水素ガスを、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜8MPaの圧力で導入して、通常、0.1〜50時間反応させることにより得られる。
水素化率は、主鎖の炭素−炭素不飽和結合については90%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、炭素数4〜20のモノ環状オレフィン又は環状共役ジエン;炭素数5〜20の非共役ジエン;ビニルシクロアルケン、ビニルシクロアルカン等のビニル脂環式炭化水素化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;等が挙げられる。これらの単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと付加共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体は、これらのモノマーを公知の付加重合触媒の存在下に溶媒中で、−50℃〜+100℃の重合温度、0.01〜5MPaの重合圧力で重合することにより得ることができる。
重合時間は、モノマーの重合転化率に応じて適宜調整すればよい。
重合反応用溶媒としては、上記の開環重合用溶媒と同様の溶媒が使用される。
ノルボルネン系モノマーとこれに対して共重合可能な他のモノマーとを付加共重合するにあたっては、得られる付加共重合体中のノルボルネン系モノマーに由来する構造単位と、付加共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位との割合が、重量比で、好ましくは50:50〜99:1、より好ましくは70:30〜97:3の範囲となるよう、各モノマーの使用量が選択される。
前記単環の環状オレフィン系重合体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体が挙げられる。
前記環状共役ジエン系重合体としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−又は1,4−付加重合体及びその水素化物が挙げられる。
前記ビニル脂環式炭化水素重合体としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体及びその水素化物、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系モノマー又はビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体及びその芳香環の水素化物等が挙げられる。
ブロック共重合体としては、特に制限されず、ジブロック共重合体、トリブロック又はそれ以上のマルチブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体等が挙げられる。
本発明において好適に用いることができる脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、500〜500,000が好ましく、1,000〜200,000がより好ましく、2,000〜100,000が特に好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)がこの範囲であるときに、機械的強度や成形加工性が高度にバランスされ好適である。
前記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
また、脂環式構造含有重合体の分子量分布は、上記条件のGPCにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であるときに、機械的強度が高く好適である。
本発明においては、用いる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常80℃以上、好ましくは130℃〜250℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、重合体は高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることなく、優れた耐久性を発現することができる。
ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
本発明において好適に使用できる脂環式構造含有重合体は極性基を有していてもよい。極性基を有する脂環式構造含有重合体を使用することで、無機微粒子との親和性が向上し、ひいては、成形体の耐熱性及び機械的強度等を向上させることができる。しかしながら、成形体は低吸水性であることが好ましいので、許容できる極性基の熱可塑性樹脂中の含有量は、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは1.5mmol/g以下である。
前記極性基としては、ヘテロ原子又はヘテロ原子を有する原子団を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。
これらヘテロ原子の中でも、無機化合物との分散性及び相溶性の観点から、酸素原子及び窒素原子が好ましい。
前記極性基として、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、ハロゲン基、シアノ基、アミド基、イミド基、スルホニル基、カルボニルオキシカルボニル基を挙げることができる。これらの中でも、無機微粒子の分散性等の観点から、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アミド基、イミド基、カルボニルオキシカルボニル基が好ましい。
極性基を有する脂環式構造含有重合体を得る方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、脂環式構造含有重合体がノルボルネン系重合体である場合を例にすると、(a)極性基を有しないノルボルネン系単量体を重合して得られる重合体を極性基を有する化合物を用いてグラフト変性する方法、(b)極性基を有しないノルボルネン系単量体と極性基を有するノルボルネン系単量体とを共重合させる方法、(c)極性基を有しないノルボルネン系単量体を重合して得られる重合体と、前記(a)又は(b)の方法により得られる極性基を有するノルボルネン系重合体とを混合する方法等を挙げることができる。
前記(a)の方法で用いる極性基を有する化合物としては、塩素化物、クロロスルホン化物、極性基含有不飽和化合物等が挙げられ、極性基含有不飽和化合物が好ましい。
前記極性基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレ−ト、p−スチリルカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸化合物の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート等の不飽和エステル化合物;アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等の不飽和アルコ−ル酸化合物等を挙げることができる。
これら極性基含有不飽和化合物の中でも、無機微粒子の分散性の観点からすると、不飽和エポキシ化合物、並びに不飽和カルボン酸化合物及びその無水物が特に好ましい。
前記(a)の方法を実施する場合においては、変性反応を効率よく行うために、ラジカル開始剤の存在下に変性反応を実施することが好ましい。
用いるラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド類;パーオキシジカーボネート類;パーオキシエステル類;パーオキシケタール類;ジアルキルパーオキサイド類;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;等が挙げられる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル及びジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
これらのラジカル開始剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、変性時における変性効率の観点から、ラジカル開始剤として、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類の使用が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類の使用がさらに好ましい。
ラジカル開始剤の使用量は、変性前のノルボルネン系重合体とラジカル開始剤との組み合わせ等により適宜決定することができる。ラジカル開始剤は、変性前のノルボルネン系重合体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜2.5重量部の範囲で用いられる。
変性反応は、反応温度0℃〜400℃、好ましくは60℃〜350℃で、反応時間1分から24時間、好ましくは30分から10時間の範囲で行う。
変性反応に用いる溶媒としては、ノルボルネン系重合体を溶解できるものであれば格別制限はなく、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エーテル類、アミド類、エステル類、ニトリル類、スルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合せて用いることができる。これらの中でも、芳香族炭化水素類や脂環式炭化水素類が特に好ましい。
前記(b)の方法で極性基を有するノルボルネン系重合体を得る場合、極性基を有するノルボルネン系モノマーとしては、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−メトキシカルボニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シアノ−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ジエチルアミノ−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−N,N’−ジメチルアミノ−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−カルボキシイミド、9−フェニルスルホニル−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−カルボン酸無水物等が挙げられる。
本発明で用いる熱可塑性脂脂は、ラジカル反応性の不飽和基(以下、「ラジカル反応性不飽和基」という)を有していることがより好ましい。ラジカル反応性不飽和基を有する熱可塑性樹脂を用いることで、成形体を得た後、エネルギー線を照射することにより、簡便かつ効率よく架橋体を得ることができる。
ラジカル反応性不飽和基は、エネルギー線が照射されることにより、ラジカル反応を引き起こす性質を有する不飽和基である。その具体例としては、α−オレフィン基、ビニル芳香族基、不飽和カルボン酸基等が挙げられ、不飽和カルボン酸基が好ましい。不飽和カルボン酸基を有する熱可塑性樹脂は、エネルギー線照射による架橋反応性に優れる。
ラジカル反応性不飽和基を有する熱可塑性樹脂を得る方法に特に制限はない。例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミノ基、カルボニルオキシカルボニル基等の反応性基を有する熱可塑性樹脂に、ラジカル反応性の不飽和基を有する化合物を反応(変性反応)させる方法が挙げられる。
ラジカル反応性不飽和基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、4−ビニルアニリン、アリルアミン、ジアリルアミン、2−アミノエチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−ビニルオキシラン、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタアクリレート、等が挙げられる。
この変性反応は、反応温度0℃〜400℃、好ましくは60℃〜350℃で、反応時間1分から24時間、好ましくは30分から10時間の範囲で行う。
上記変性反応に用いる溶媒としては、熱可塑性樹脂を溶解できるものであれば格別制限はなく、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エ−テル類、アミド類、エステル類、ニトリル類、スルホキシド類等が挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類が好ましい。
(2)無機微粒子
本発明に用いる無機微粒子は、熱可塑性樹脂中に均一に分散するものであれば特に制限されないが、有機・無機複合体中に分散した状態で、(A)数平均厚みが10nm以下、面内方向における数平均粒子径が300nm以下で、かつ平均アスペクト比が5以上である無機層状化合物、又は(B)数平均粒子径が50nm以下である無機超微粒子を用いるのが好ましい。
このような無機層状化合物又は無機超微粒子を用いることで、透明性、耐熱性、低熱膨張性に優れる有機・無機複合体からなる成形体を得ることができる。
前記(A)の無機層状化合物は、その化合物が平面的に配列された構造を有する状態(層状)にあり、その垂直方向に、繰り返し平面構造を有する多結晶層構造を有する化合物である。この無機層状化合物は、結晶層が相互にファンデルワールス力又は水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負電荷に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。
無機層状化合物の具体例としては、グラファイト;TiS、NbSe、MoS等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO、V等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)、Cu(OH)等の水酸化物;Zr(HPO・nHO、Ti(HPO・nHO、Na(UOPO・nHO等のリン酸塩;NaTi、KTiNbO、RbMnTi2x等のチタン酸塩;Na、K等のウラン酸塩;KV、K14、CaV16・nHO、Na(UO)・nHO等のバナジン酸塩;KNb、KNb17等のニオブ酸塩;Na13、Ag1013等のタングステン酸塩;MgMo・CsMo16、CsMo22、AgMo1033等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、HSi、HSi1429・5HO等の、珪酸塩又はこの珪酸塩により構成される鉱物類等が挙げられる。これらの無機層状化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機層状化合物の中でも、熱可塑性樹脂への分散性に優れ、耐熱性、機械的強度に優れる成形体が得られること等の理由から、珪酸塩、リン酸塩及びモリブデン酸塩が好ましく、珪酸塩が特に好ましい。
本発明に用いる好ましい無機層状化合物は、数平均厚みが10nm以下、面内方向における数平均粒子径が300nm以下でかつ平均アスペクト比が5以上のもの、好ましくは数平均厚みが5nm以下、面内方向における数平均粒子径が200nm以下で、かつ平均アスペクト比が10以上のものである(以下、このような無機層状化合物を「無機層状化合物(a)」という)。なお、前記平均アスペクト比は100以下であることがより好ましく、50以下がさらに好ましい。
数平均厚みが10nmより大きいと、得られた成形体の透明性が劣る場合がある。また、平均アスペクト比が5より小さいと、耐熱性や機械的強度の改善効果が小さくなる場合があり、平均アスペクト比が50より大きいと組成物の透明性が劣ったり、樹脂への分散性が悪くなったりする場合がある。
無機層状化合物(a)の数平均厚み、面内方向の数平均粒子径及び平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察像からコンピュータ処理を行うことにより算出することができる。
ここで、面内方向における数平均粒子径は、面内方向における長径と短径の算術平均値である。面内方向における長径は面内方向における最長の差し渡し径で、面内方向における短径は面内方向における最短の差し渡し径である。また、平均アスペクト比は、面内方向における数平均粒子径と厚みとの比である。
無機層状化合物(a)は有機溶剤中で膨潤可能なものを用いることが好ましい。ここで膨潤とは、無機層状化合物(a)が有機溶剤を吸収してその体積を増大させる現象をいい、その際、無機層状化合物(a)を構成する無機層状結晶の単位層(以下、「ナノシート」という場合がある)の層間が拡大する。
膨潤させた無機層状化合物(a)の層間距離は3nm以上であることが好ましく、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上である。層間距離が過度に小さいと、熱可塑性樹脂中での均一分散が不十分になる。
層間距離は、X線回折法(XRD)を用いて測定することができる。
無機層状化合物(a)を熱可塑性樹脂のマトリックスに分散させるという場合、理想的には前記ナノシートの状態で均一分散していることが好ましいが、数枚のナノシートが重なった状態であってもよく、いずれにしても数平均厚みが10nm以下であればよい。
本発明においては、熱可塑性樹脂に対する分散性をより向上させるために、有機化剤を用いて有機化処理を施した無機層状化合物(a)を用いるのが好ましい。無機層状化合物は元来親水性を有するため、有機化剤を無機層状化合物に吸着又は結合させることにより疎水化(有機化)することができる。なかでも、有機化剤を無機層状化合物(a)の層間の金属イオンとイオン交換することにより、有機化剤を無機層状化合物(a)にイオン結合させることが好ましい。
用いる有機化剤としては、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸等の有機酸もしくは有機酸塩;アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。これらの中でも、Rで表される第四級アンモニウム塩、又はRで表される第四級ホスホニウム塩を用いるのが好ましい。
前記R及びRにおいて、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜30の飽和又は不飽和炭化水素基を表す。ただし、R〜Rがすべて水素原子である場合は除かれる。
上記炭素数1〜30の飽和又は不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基;ラウリル基、オレイル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
前記Rで表される有機アンモニウムイオンとしては、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、又はラウリン酸アンモニウムイオン等が挙げられる。
前記Rで表される有機ホスホニウムイオンとしては、ドデシルトリフェニルホスホニウムイオン、メチルトリフェニルホスホニウムイオン、ラウリルトリメチルホスホニウムイオン、ステアリルトリメチルホスホニウムイオン、トリオクチルメチルホスホニウムイオン、ジステアリルジメチルホスホニウムイオン、ジステアリルジベンジルホスホニウムイオン等を用いることができる。
また、前記Xで表される陰イオンとしては、Cl、Br、NO 、OH、CHCOO等が挙げられる。
有機化剤による無機層状化合物の有機化処理は、例えば、無機層状化合物を水に分散させて結晶化合物の分散液を調製し、この分散液に前記有機化剤を添加し、常温又は加熱下で攪拌することによって行うことができる。このときの結晶化合物の分散液における結晶化合物の濃度は、0.01〜70重量%に調整することが好ましい。
また、有機化処理を行うために用いる前記有機化剤以外に、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素、帯電防止剤等の機能性有機化合物をインターカレーションさせたものを用いることもできる。
機能性有機化合物をインターカレーションさせる方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。
前記(B)の数平均粒子径が50nm以下である無機超微粒子(以下、この無機微粒子を「無機超微粒子(b)」という)は、熱可塑性樹脂中に分散した状態で、数平均粒子径及び平均アスペクト比がこの範囲内にあれば、その材質、形状は特に限定されない。
無機超微粒子(b)の材質としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物や複合金属酸化物、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、亜鉛等の遷移金属単体、半導体、金属の塩等を挙げることができる。
無機超微粒子(b)の形状は特に限定されず、球状、棒状、針状、不定形等、目的に応じて適宜選択すればよい。
無機超微粒子(b)の数平均粒子径は50nm以下、好ましくは30nm以下である。数平均粒子径が50nmを超えると、得られた成形体の透明性が劣る場合がある。
また、無機超微粒子(b)の粒径分布は狭いほど好ましい。
粒径分布が大きい場合、光散乱を生じる大粒径の粒子が含まれるようになるため、成形体の透明性が劣る場合がある。
なお、透明性に優れた成形体を得るためには、粒径が60nm以上の無機超微粒子(b)の割合は、全無機超微粒子(b)の体積に対して通常10体積%以下、好ましくは5体積%以下、更に好ましくは3体積%以下である。
また、本発明に用いる無機超微粒子(b)の粒径分布は、これが小さいほど分散性の均質性が向上し、低ヘイズ化できるので好ましい場合がある。従って、該粒径分布はその標準偏差として通常20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下に制御する。但し、無機超微粒子(b)の高屈折率性や基礎吸収を利用する用途(紫外線吸収用途、反射制御膜、あるいは光導波路等)においては、かかる粒径分布は問題とならない場合もある。
熱可塑性樹脂中に分散した無機超微粒子(b)の数平均粒子径、粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察像から測定することができる。
無機超微粒子(b)には、予め有機溶剤への均一分散を良好に行わせるために、又は熱可塑性樹脂中への均一分散を良好に行わせるために、表面処理を行ったものを用いることが好ましい。
表面処理は、無機化合物又は有機化合物を用いて実施することができる。
表面処理に用いる無機化合物としては、例えば、コバルトを含有する無機化合物(CoO,Co,Co等)、アルミニウムを含有する無機化合物(A1,Al(OH)等)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO,Zr(OH)等)、ケイ素を含有する無機化合物(SiO等)、鉄を含有する無機化合物(Fe等)等が挙げられる。これらの中でも、コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)、Zr(OH)がより好ましい。
表面処理に用いる有機化合物としては、例えば、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸や、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物、及びエポキシ化合物等のカップリング剤等が挙げられ、有機シラン系カップリング剤が好ましい。
有機シラン系カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明に用いる無機微粒子は、混晶やコアシェル構造(内核であるコアとこれを包含する外殻であるシェルの2層構造)等の不均一構造を有していてもよい。
特にコアシェル構造は、例えばコアである半導体結晶の光触媒能が樹脂マトリクスの分解を促進する等コア物質が好ましくない作用を有する場合、かかる好ましくない作用を有さない別物質のシェルを設けてこれを改善する、優れた効果を奏する場合がある。
従って、化学的に比較的不活性な物質がシェルを構成することが望ましく、具体的にはシリカ(酸化珪素)やアルミナ(酸化アルミニウム)等の非遷移金属の酸化物、窒化ホウ素等の窒化物、黒鉛状炭素や非晶性炭素等の炭素単体、あるいは貴金属類(銀、金、白金、銅等)が好ましいシェル物質として例示される。
また、上記無機微粒子は複数種から構成されていてもよく、あるいは同種物質からなる無機微粒子でも、例えば2山分布等その粒径分布を必要に応じて任意に変化させてもよい。
また、本発明においては、無機微粒子として、ラジカル反応性不飽和基を有する化合物で修飾されたものを用いることもできる。ラジカル反応性不飽和基を有する化合物で修飾された無機微粒子を用いることで、エネルギー線照射により無機微粒子間の結合を形成せしめることにより、成形体に、高度の耐熱性と低熱膨張性を付与することができる。
「ラジカル反応性不飽和基」は、エネルギー線が照射されることにより、ラジカル反応を引き起こす性質を有する不飽和基であり、例えば、α−オレフィン基、ビニル芳香族基、不飽和カルボン酸基等が挙げられ、なかでも、不飽和カルボン酸基が好ましい。
無機微粒子の表面を修飾するラジカル反応不飽和基を有する化合物としては、ラジカル反応性の不飽和基を少なくとも1個持つものであればいかなるものでもよい。
上記ラジカル反応不飽和基を有する化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ピニルナフタレン、4−ビニルピリジン等のラジカル反応性芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,8−ジカルボン酸(エンディック酸)、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸:アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、マイイン酸クロライド等の前記不飽和カルボン酸のハライド;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド等の、前記不飽和カルボン酸のアミド若しくはイミド誘導体;無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸等の前記不飽和カルボン酸の無水物;
マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸アミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メク)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フエノキシエチル(メタ)アクリレート、へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントソ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等の、前記不飽和カルボン酸のエステル誘導体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシトリエトキシシラン等の、ラジカル反応不飽和基を有するシラン化合物;等が挙げられる。
本発明における「修飾」とは、無機微粒子の表面に、ラジカル反応性不飽和基を有する化合物が静電力等の親和力によって吸着された状態、あるいは無機微粒子とラジカル反応性不飽和基を有する化合物との間に共有結合を形成している状態をいう。
上記のラジカル反応性不飽和基を有する化合物で無機微粒子を修飾する方法としては、例えば溶液中で無機微粒子と上記化合物を接触させる方法等が挙げられる。
(3)樹脂組成物
本発明の成形体は、熱可塑性樹脂中に無機微粒子が均一に分散してなる樹脂組成物を成形して得られる成形物に、相対湿度65%以下の環境下で、エネルギー線を照射することにより得ることができる。
前記樹脂組成物を調製する方法としては特に限定されず、例えば、(α)熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量とを、常温下又は加熱下で、直接配合して混練する直接混練法、(β)熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量とを、常温下又は加熱下で、溶媒中で混合した後、溶媒を除去する方法、(γ)予め熱可塑性樹脂に所定量以上の無機微粒子を配合して混練したマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチ、熱可塑性樹脂の所定量の残部、及び、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量を、常温下又は加熱下で、混練又は溶媒中で混合するマスターバッチ法、(δ)熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量及び沸点が50℃〜200℃の有機化合物を含む混合物を、混練装置を用いて混練する工程を含む方法、等が挙げられる。これらの中でも、(γ)、(δ)の方法が好ましい。
上記(γ)のマスターバッチ法において、熱可塑性樹脂に無機微粒子を配合したマスターバッチと、マスターバッチを希釈して所定の無機微粒子濃度とする際に用いる熱可塑性樹脂を含有するマスターバッチ希釈用樹脂組成物は、同一の組成であっても異なる組成であってもよい。
上記マスターバッチ法における無機微粒子の配合量は特に限定されないが、樹脂100重量部に対する好ましい下限は1重量部、上限は500重量部である。1重量部未満であると、任意の濃度に希釈可能なマスターバッチとしての利便性が薄れる。500重量部を超えると、マスターバッチ自体における分散性や、特にマスターバッチ希釈用樹脂組成物によって所定の配合量に希釈する際の無機微粒子の分散性が悪くなることがある。より好ましい下限は5重量部、上限は300重量部である。
上記(δ)の、熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量及び沸点が50℃〜200℃の有機化合物を含む混合物を、混練装置を用いて混練する工程を含む方法において、有機化合物は、熱可塑性樹脂及び無機微粒子を得るのに用いられた有機化剤の極性部に対して不活性で、かつ常温において液体であり、かつ沸点が50℃〜200℃であればよく、特に限定されるものではない。
有機化合物としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、ニトロベンゼン、スルホラン等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、無機層状化合物(a)の分散性をさらに良くすることができる点で、芳香族炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒の使用が好ましく、前記無機層状化合物(a)を膨潤させる、芳香族炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が特に好ましい。
ここで挙げた膨潤とは、前記無機層状化合物(a)が有機溶剤を吸収して、その体積を増大させる現象をいい、膨潤度が1cc/g以上の無機層状化合物と有機化合物の組み合わせが好ましい。膨潤度は、例えば、沈降容積法(粘土ハンドブック513頁)により測定することができる。また、無機層状化合物(a)と有機化合物の膨潤性が非常に良好な場合には、有機化合物中で無機層状化合物(a)が無限膨潤してしまい、沈降せず測定不能になる。しかしながら、該状態は非常に良く膨潤する最も好ましい組み合わせとなる。
混練装置としては特に制限がなく、例えばスクリュー押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を用いて行うことができるが、操作の簡便さのためスクリュー押出機が好ましく、二軸混練押出機が特に好ましい。二軸混練押出機を用いる場合は、押出機のバレル中で溶液を加熱しつつ、ベントロを減圧状態にして、有機・無機複合体中の有機化合物を除去することができる。
混練温度やベントロの圧力は、用いる有機化合物の沸点に応じて適宜調整することができる。より具体的には、混練温度は、150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃の範囲とすることができる。また、ベントロの圧力は、1.3×10〜9.3×10Pa、好ましくは6.6×10〜2.7×10Paの範囲とすることができる。
前記混練は、混練装置の比エネルギーが0.1〜0.4kW・hr/kg、好ましくは0.15〜0.35kW・hr/kgとなる条件下で行う。混練装置の比エネルギーとは、樹脂を溶融混練する際に、単位重量当り(1kg)の樹脂に混練設備から混練の効果の為に与えられるエネルギーをいい、数値が大きい場合が練りの効果が高いことになる。例えば、押出機の場合、1kgの樹脂を押し出すのに必要なスクリュー駆動用モーターの消費電力で近似的に表される。
例えば、バンバリーミキサー等のロール式混練機の場合は、樹脂1kg処理するのに必要なロールの駆動用モーターの消費電力で近似的に表される。具体的には、押出機のモーターに電流計、電圧計等を取り付け、これからモーターの電力消費量を得、これにモーターの力率(通常0.85程度)を掛け、1kgの熱可塑性樹脂に加えられる混練力(W・hr/kg)を得る。
前記混練後の組成物中に残留する有機化合物の含有量が5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下にまで除去することが好ましい。残留する有機化合物含有量が多すぎると、成形体にシルバーストリークやボイド、及び発泡等の成形不良や着色が生じるため好ましくない。前記有機化合物の含有量は、混練後の組成物を溶剤に分散し、これをガスクロマトグラフィーを用いて内部標準法に供することにより求めることができる。
熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量及び沸点が50〜200℃の有機化合物を含む混合物を、混練装置を用いて混練する具体的手順としては、例えば、下記の二種の手順が挙げられる。
(手順1)(1−A)熱可塑性樹脂と無機微粒子の各所定量と、必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤の各所定量及び沸点が50℃〜200℃の有機化合物を含む混合物(la)を得る工程;及び(1−B)前記混合物(la)を混練装置で混練する工程、を含む手順。
(手順2)(2−A)予め有機化合物と無機層状化合物(a)とを混合して混合物(2a)を得る工程;及び(2−B)前記混合物(2a)と熱可塑性樹脂と必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤とを混合し混練装置で混練する工程、を含む手順。
上記手順1の工程(1−A)における各成分の混合方法は、攪拌槽を用いて各成分を混合する方法:ブレンダーを用いて各成分を混合する方法:ヘンシェルミキサー等の高速ミキサーを用いて各成分を混合する方法:等が挙げられる。その際、超音波を加えたり、溶剤の沸点以下の温度に加温したりしてもよい。
工程(1−B)における混練は、上に述べた通りの混練方法で行うことができる。これにより、有機化合物を除去しながらの混練が達成できる。
工程(2−A)における各成分の混合は、前記工程(1−A)と同様の方法で行うことができる。このように、予め有機化合物と無機層状化合物(a)とを混合することにより、無機層状化合物(a)を膨潤させてから、次の工程に供することができる。
工程(2−B)における混練は、フィーダーを用いて、混合物(2a)と熱可塑性樹脂と必要に応じて配合される一種又は二種以上の添加剤とを所望の配合比になるように混練装置内に導入し、上に述べた通りの混練方法で行うことができる。これにより、有機化合物を除去しながらの混練が達成できる。後述する各種添加剤は、必要に応じて、この混練の時点においても添加することができる。
樹脂組成物中における熱可塑性樹脂と無機微粒子の配合割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、無機微粒子が好ましくは1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜20重量部とすることができる。前記配合割合にすることにより、耐熱性や、機械強度に優れる成形体を得ることができる。
前記樹脂組成物には、さらに所望により、フェノール系やリン系等の老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等の各種添加剤を添加してもよい。各種添加剤の量は、通常10〜10,000ppm、好ましくは100〜5,000ppmである。
(4)成形物
次に、上記のようにして得られた樹脂組成物を公知の成形方法により成形して、成形物を得る。
成形方法としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、ブロー成形法、キャスト成形法等の、通常の加熱溶融成形方法が挙げられる。
得られる成形物の形状は、特に限定されず、フィルム状、シート状、球状、棒状、板状、柱状、ファイバー状、筒状等、いかなる形状のものであってもよい。これらの中でも、成形物の形状としては、フィルム状又はシート状が好ましい。
フィルム状成形物は、前記樹脂組成物を、通常の溶融押出法、カレンダー法、溶液流延法等の公知の成形法を用いてフィルム状に成形することにより得ることができる。また、フィルム状成形物は、さらに一軸延伸又は二軸延伸したものであってもよい。
フィルム状成形物の厚みは、用途に応じて適宜決定することができるが、好ましくは10〜500μmの範囲であり、さらに好ましくは10〜200μmの範囲である。10μmより薄くなると強度不足や取扱いが困難になり、500μmより厚くなると、透明性の低下や可撓性が損なわれる傾向がある。
(5)エネルギー線照射
次いで、得られた成形物に、相対湿度65%以下の環境下で、エネルギー線を照射することで、本発明の成形体を得ることができる。
照射するエネルギー線の種類は特に制限されず、例えば、紫外線、電子線、マイクロ波等が挙げられる。これらの中でも、支持体の変形や変性に対する影響を勘案すれば、電子線を特に好ましく用いることができる。
照射強度は30〜500kGyであり、特に好ましくは50〜400kGyである。
照射温度は、室温から成形物の変形温度の間であれば特に制限されないが、好ましくは30℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜130℃である。
照射時間は、通常0.1〜30秒、好ましくは0.1〜10秒である。
本発明においては、相対湿度が65%以下の環境下で、前記成形物にエネルギー線を照射する。相対湿度が65%以下の環境でエネルギー線を照射することにより、得られる成形体表面の硬化不良を防止することができる。また、得られる成形体上に有機薄膜又は無機薄膜を積層しても、表面に波シワが発生したり、白濁することがない。
エネルギー線を照射するときの環境を相対湿度65%以下とする方法としては、相対湿度を65%以下に保持した空間内に成形物を設置し、該成形物にエネルギー線を照射するものであれば、特に限定されない。
例えば、熱可塑性樹脂と無機微粒子を含有する樹脂組成物を溶融成形して、長尺のフィルム状成形物を得たのち、得られた長尺のフィルム状成形物を一定方向に搬送しながら、該フィルム状成形物表面にエネルギー線を照射する場合には、長尺のフィルム状成形物を一定方向に搬送する空間を閉鎖空間として、該空間内の相対湿度を65%以下に調節する方法が挙げられる。
本発明の成形体は、耐溶剤性指数が0.8以上、好ましくは0.9以上のものである。
成形体の耐溶剤性指数は、作製した成形体の水滴接触角をX(度)とし、トルエンを十分染み込ませた綿布を成形体表面に載せて5分間放置した後、表面の溶剤を拭き取った後の表面の水滴接触角をY(度)とし、Y/Xの値として求めることができる。
本発明の成形体においては、該成形体のゲル分率が、好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。ゲル分率が80%以上である成形体は、耐熱性、低熱膨張性及び耐溶剤性に優れる。
ゲル分率は、例えば、作製した成形体(試験サンプル)を、110℃に熱したキシレン中に導入し、8時間経過後に、該試験サンプルを取り出し、残留キシレンを留去・乾燥後、次式に従って算出することができる。
Figure 2007008994
本発明の成形体は、線膨張係数が小さいものである。本発明の成形体の線膨張係数は、通常100ppm以下、好ましくは70ppm以下である。
線膨張係数は、例えば、作製した成形体を幅5mm、長さ15mmに切り出し、公知の熱機械的分析装置を用いて測定することができる。
本発明の成形体の全光線透過率は特に制限されないが、透明導電性のフィルム又はシート用として使用する場合には、全光線透過率が高いもの(透明性に優れるもの)が好ましい。具体的には、厚さ100μmの全光線透過率が、通常80%以上、好ましくは90%以上である。
成形体の全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して、公知の濁度計を使用して測定することができる、
また、本発明の成形体は、ヘイズが小さいものが好ましい。具体的には、厚さ100μmのヘイズが、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
成形体のヘイズは、JIS K7136に準拠して、公知の濁度計を用いて測定することができる。
本発明の成形体は機械的強度に優れるものが好ましい。
成形体の機械的強度は、引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸びとして評価することができる。
本発明の成形体においては、該成形体の引張弾性率は、好ましくは1500MPa以上、より好ましくは2000MPa以上、さらに好ましくは2500MPa以上である。
本発明の成形体においては、該成形体の引張破断強度は、好ましくは45MPa以上、より好ましくは55MPa以上、さらに好ましくは60MPa以上である。
本発明の成形体においては、該成形体の引張破断伸びは、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
成形体の引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸びは、作製した成形体を所定の大きさに切り出し、公知の引張試験機を用いてJIS K7127に準拠し測定することができる。
2)積層フィルム又はシート
本発明の積層フィルム又はシートは、本発明の成形体のフィルム又はシート(本発明のフィルム又はシート)上に、有機若しくは無機の薄膜を積層したものである。
本発明の積層フィルム又はシートは、表面平滑性、耐溶剤性、低熱膨張性及び耐熱性に優れる本発明のフィルム又はシート上に、有機若しくは無機の薄膜を積層するものであるため、表面に波シワが発生したり、白濁することがない。
積層する有機薄膜としては、特に制限されないが、例えば、後述するハードコート層、プライマー層、導電性樹脂層等が挙げられる。
積層する無機薄膜としては、特に制限されないが、例えば、後述する透明導電層等が挙げられる。
これらの有機薄膜及び無機薄膜を積層する方法は特に制限されず、従来公知の有機薄膜及び無機薄膜を積層する方法が採用できる。
なお、本発明の積層フィルム又はシートにおいては、上述した本発明のフィルム及びシートを用いるが、これらのフィルム又はシートは、コロナ処理、グロー処理、UV処理、プラズマ処理等により表面処理されたものであってもよい。
3)透明導電性のフィルム又はシート
本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、本発明のフィルム又はシート上に、透明導電層を積層してなるものである。
透明導電層は、導電性を有する透明な薄膜層である。透明導電層は、例えば、塗布法や真空成膜プロセスを用いる方法等により形成することができる。
塗布法は、導電性微粒子を含む導電性塗料を塗布することにより透明導電層を形成する方法である。
真空成膜プロセスを用いる方法としては、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
塗布法に用いる導電性微粒子及び真空成膜プロセスに用いる材料としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の金属酸化物微粒子;金、銀、動、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、白金、及びこれらの金属の2種以上からなる合金等の金属微粒子;等が挙げられる。
形成する透明導電層の厚みは、特に制限されないが、通常、10〜500nmである。
また、透明導電層は、2層以上が積層されたものであってもよい。例えば、上記した塗布法により形成された第1の導電層と、該第1の導電層上にスパッタリング法により形成された第2の導電層からなるものであってもよい。
透明導電層の表面抵抗値は、1kΩ/□以下、好ましくは500Ω/□以下である。
本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、本発明のフィルム又はシートと透明導電層との間にハードコード層を有していてもよい。ハードコート層を形成することにより、膜としての架橋収縮率を改良し、塗膜の平面性を向上させることができる。
ハードコート層は、透明性を有し、適度な硬度を有する層を形成することが好ましい。その形成材料には特に限定はなく、例えば電離放射線硬化樹脂や紫外線照射硬化樹脂や熱硬化性樹脂を使用できる。特に、紫外線照射硬化型のアクリル系樹脂や有機珪素樹脂、熱硬化型のポリシロキサン樹脂が好適である。これらの樹脂は公知のものを用いることができる。さらに、このハードコート層は透明基材フィルム(本発明のフィルム又はシート)と屈折率が同等もしくは近似していることがより好ましいが、膜厚が3μm以上の場合には特にこの点も必要ない。
ハードコート層は、ハードコート層形成用材料を本発明のフィルム又はシート表面に塗工し、得られた塗膜を乾燥し、所望により硬化させることにより形成することができる。ハードコート層形成用材料を塗布する方法に制限はないが、表面を平滑に且つ均一に形成することが好ましい。
ハードコート層の厚みは特に制限されないが、通常、1〜100μm、好ましくは3〜50μmである。
本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、本発明のフィルム又はシート上に、直接又はその他の層を介して、透明導電層が形成されたものであるので、高温・多湿の環境下に長時間置かれた場合であっても、表面抵抗値はほとんど変化しない。従って、本発明の透明導電性のフィルム又はシートは、後述する本発明のフラットパネルディスプレイの素子基板として有用である。
4)フラットパネルディスプレイ
本発明のフラットパネルディスプレイは、本発明の透明導電性のフィルム又はシートを構成要素とするものである。
すなわち、本発明の透明導電性のフィルム又はシート上に、電極、誘電体層、保護層、隔壁、蛍光体等を形成してフラットパネルディスプレイ用部材を得、さらにこれを用いて、フラットパネルディスプレイを得ることができる。
フラットパネルディスプレイ(FPD)とは、筐体が板状で平面になっているディスプレイ機器一般をいう。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネセントパネル、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等が挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(1)耐溶剤性指数
作製した厚さ100μmのフィルムの水滴接触角をX(度)とし、トルエンを十分染み込ませた綿布をフィルム表面に載せて5分間放置した後、表面の溶剤を拭き取った後の表面の水滴接触角をY(度)とし、溶剤耐久指数=Y/Xを求めた。
なお、本発明では3回の平均値をフィルムの耐溶剤性指数とした。
(2)ゲル分率
作製した厚さ100μmの成形体(フィルム)2gを、110℃に熱したキシレン中に8時間浸漬後、試験サンプルを取り出し、残留キシレンを留去・乾燥後、次式に従って、ゲル分率を算出した。
Figure 2007008994
(3)透明性、ヘイズ
全光線透過率(透明性)はJIS K7361−1に、またヘイズはJIS K7136に準拠し、作製した厚さ100μmのフィルムの全光線透過率、ヘイズを濁度計(NDH2000、日本電色工業社製)を用いて測定した。
(4)線膨張係数
作製した厚さ100μmの成形体(フィルム)を幅5mm、長さ15mmに切り出し、熱機械的分析装置(商品名:TMA/SDTA840、メトラートレド社製)を用いて線膨張係数を測定した。本発明では、窒素気流下、昇温速度10℃/分にて、30℃から300℃までの温度範囲で測定した後、50〜300℃の範囲内の平均値を線膨張係数とした。
(5)引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸び
作製した厚さ100μmの成形体(フィルム)を幅20mm、長さ200mmに切り出し、引張試験機(オートグラフAG−25TE型、島津製作所社製)を用いてJIS K7127に準拠し測定した。
なお、本発明では引張速度50mm/minの速度で3回測定し、3回の測定値の平均値を引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸びとした。
(6)積層体外観
(i)ハードコート層
作製した成形体(フィルム)にハードコート層を積層した積層体の外観を目視にて観察した。また、ハードコート層を積層する前の成形体およびハードコート層を積層した後の積層体の表面粗さ(Ra)を、触針式表面粗さ計(SURFCOM2800E、針の直径2μm、荷重0.75mN、東京精密社(株)製)を用いて測定した。本実施例では、基準長を0.25mmとして8点測定し、最小値、最大値を除いた6点の表面粗さ(Ra)の平均値を積層体のRaとした。
(ii)ITO層
作製した成形体(フィルム)上にITO層を積層した積層体の外観を目視にて観察した。さらに、得られた積層体について、表面抵抗を測定する。その後、これを相対湿度90RH%下、−30℃、30分→25℃、5分→80℃、30分→25℃、5分を1サイクルとし、該サイクルを200サイクル行った(耐湿熱試験)後の表面抵抗を測定し、試験前後の抵抗値の変化を比較した。
なお、表面抵抗は、2重リングプローブ法により、抵抗率計(ハイレスタUPMCP−HT450型、三菱化学社製)を用いて測定した。
(製造例1)不飽和基含有脂環式構造含有重合体の製造
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、9−エチリデン−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]−ドデカ−4−エン(以下、「ETCD」と略記する)100部と、六塩化タングステン0.7重量%トルエン溶液40部とを、2時間かけて連続的に添加し、重合した。
次いで、重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部及ぴイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させることにより、ETCD開環共重合体を含有する反応溶液を得た。
さらに得られた反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧した後、攪拌しながら温度200℃まで加温し、4時間反応させることにより、ETCD開環重合体水素化物を20重量%含有する反応液を得た。ろ過により水素化触媒を除去した後、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて温度270℃、圧力1kPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン、及び他の揮発成分を除去しつつ、水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してETCD開環共重合体水素化物ペレットを回収した。得られたETCD開環共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は35,000、水素化率は99.9%であった。
次いで、先に得たETCD開環共重合体水素化物100部に対して、無水マレイン酸10部、ジクミルパーオキシド2部及びtert−ブチルベンゼン250部を混合し、オートクレーブ中にて135℃、6時間反応を行った後、多量のアセトン中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を100℃、1×10Pa以下で48時間乾燥させ、無水マレイン酸変性脂環式構造含有重合体121部を得た。得られた無水マレイン酸変性脂環式構造含有重合体の重量平均分子量は39,000であった。また、H−NMRで測定したところ、無水マレイン酸変性量は19.5mol%であった。
次いで、先に得た無水マレイン酸変性脂環式構造含有重合体100部に対して、アリルアミン5.5部、トルエン200部及びテトラヒドロフラン200部を混合し、IRスペクトル測定にて酸無水物由来のピークが消失するまで反応を行った。
その後、多量のアセトン中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を100℃、1×10Pa以下で48時間乾燥させて、不飽和基含有脂環式構造含有重合体99部を得た。得られた不飽和基含有脂環式構造含有重合体の重量平均分子量は39,000であった。また、H−NMRで測定したところ、アミド基導入量は19.5mol%であった。
(製造例2)不飽和基含有アクリル樹脂の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに、初期仕込み溶剤としてキシレンを200.0部仕込み、攪拌下で加熱し、100℃を保った。
一方、グリシジルアクリレート65.5部、イソボルニルアクリレート373部、ラウリルアクリレー卜61.5部、アゾビスイソブチロニトリル10部、及び酢酸n−ブチルエステル200部に混合溶解し、滴下成分とした。
次いで、−100℃に保った上記4つ口フラスコ内に、前記滴下成分を2時間かけて滴下漏斗より等速滴下した。滴下終了後、反応液の温度を100℃に1時間保持し、アゾビスイソブチロニトリル1.0部を酢酸n−ブチルエステル15.0部に溶解した追加触媒成分を添加し、更に100℃の温度で2時間放置した。
得られた樹脂溶液を円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて、温度250℃、圧力1kPa以下で、溶媒であるキシレン、酢酸n−ブチルエステル及び他の揮発成分を除去しつつ、アクリル樹脂を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してアクリル樹脂ペレットを回収した。
得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は25,000であった。H−NMRで測定したところ、エポキシ量は19.8mol%であった。
次いで、得られたアクリル樹脂100部に対して、アリルアミン5.5部、キシレン200部及びテトラヒドロフラン200部を混合し、IRスペクトル測定にて、エポキシ基由来のピークが焼失するまで反応を行った。その後、多量のアセトン/メタノール混合溶液中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を80℃、1×10Pa以下で48時間乾燥させ、不飽和基含有アクリル樹脂100部を得た。
得られた不飽和基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は25,000であった。また、H−NMRで測定したところ、不飽和基導入量は19.8mol%であった。
(実施例1)
有機化処理サポナイト(商品名:ルーセンタイトSAN、コープケミカル社製)15部、及び製造例1で得た不飽和基含有脂環式構造含有重合体185部加えた混合物を2軸混練機(TEM−35B、東芝機械社製、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィールドレート10kg/時間)を用い、混合物をストランド状に押出し、水冷してペレタイザーで切断しペレット化した。
次いで、孔径10μmのポリマーフィルター、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出機を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイの幅350mmの条件で押出成形することにより、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムを相対湿度50%の条件下、加速電圧3MeVの電子線を200kGy照射することで、架橋フィルム1を得た。
得られた架橋フィルム1の耐溶剤性指数、ゲル分率を第1表に示す。
架橋フィルム1はフィルム表層近傍の硬化性に優れており、緻密な架橋体を形成していることが分かる。
次に、ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:NKオリゴ U−15HA、無黄変タイプ、新中村科学社製)70部、トリメチロールプロパントリアクリレート30部、光重合開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン5部、及び希釈溶剤としてメチルエチルケトン100部をホモジナイザーで混合して紫外線硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤を調製した。
先に得た架橋フィルム1上に前記ハードコート剤を硬化後のハードコート層の膜厚が5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm)を行い、ハードコート剤を硬化させることにより積層体1を得た。得られた積層体1の外親、架橋フィルム1及び積層体1の表面粗さを測定した結果を第1表に示す。
積層体1は面伏欠陥が全く見られず、またハードコート層を積層する前後で表面粗さの変化が無く、平滑性に優れていた。
次に、酸化インジウム90重量%及び酸化第二錫10重量%からなる酸化物をターゲットにし、アルゴン及び酸素の混合ガス(アルゴンと酸素との容積比;99:1)雰囲気下に、スパッタ装置にて、ITOからなる厚み100nmの透明導電性薄膜を先に得た架橋フィルム1の表面に形成することにより積層体2を得た。
得られた積層体2の外観、耐湿熱試験前後における表面抵抗の変化を第1表に示す。
積層体2は面状欠陥が全く見られず、また耐湿熱試験前後で表面抵抗がほとんど変化せず、優れた耐久性を示した。
(実施例2)
粒径が20nmであるシリカ超微粒子のトルエンスラリー(固形分濃度:20重量%)50部、製造例1で得た不飽和基含有脂環式構造含有重合体190部及びトルエン1000部からなる混合物を均一になるまで攪拌することにより組成物溶液を得た。
さらに、該組成物溶液を円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて温度270℃、圧力1kPa以下で、溶媒を除去しつつ溶融状態で樹脂組成物をストランド状に押出し、水冷してペレタイザーで切断しペレット化した。
次いで、孔径10μmのポリマーフィルター、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出機を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイの幅350mmの条件で押出成形することにより、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムを相対湿度64%の条件下、加速電圧3MeVの電子線を300kGy照射することで架橋フィルム2を得た。
得られた架橋フィルム2の耐溶剤性指数、ゲル分率を第1表に示す。
架橋フィルム2はフィルム表層近傍の硬化性にも優れており、緻密な架橋体を形成していることが分かる。
次に、実施例1と同様の操作により積層体3を作製した。得られた積層体3の外観、架橋フィルム2及び積層体3の表面粗さを測定した結果を第1表に示す。
積層体3においても面状欠陥が全く見られず、また、ハードコート層を積層する前後で表面粗さの変化が無く、平滑性に優れていた。
次に、実施例1と同様の操作により積層体4を作製した。得られた積層体4の外観、耐湿熱試験における表面抵抗の変化を第1表に示すが、積層体4においても面状欠陥が全く見られず、また耐湿熱試験前後で表面抵抗がほとんど変化せず、優れた耐久性を示した。
(実施例3)
実施例1における不飽和基含有脂環式構造含有重合体を製造例2で得た不飽和基含有アクリル樹脂に変えた以外は実施例1と同様の操作により、架橋フィルム3を得た。得られた架橋フィルム3の耐溶剤性指数、ゲル分率を第1表に示す。
架橋フィルム3においてもフィルム表層近傍の硬化性にも優れており、緻密な架橋体を形成していることが分かる。
次に、実施例1と同様の操作により積層体5を作製した。得られた積層体5の外観、架橋フィルム3及び積層体5の表面粗さを測定した結果を第1表に示す。
積層体5においても面状欠陥が全く見られず、またハードコート層を積層する前後で表面粗さの変化が無く、平滑性に優れていた。
次に、実施例1と同様の操作により積層体6を作製した。得られた積層体6の外観、耐湿熱試験前後における表面抵抗の変化を第1表に示す。
積層体6においても面状欠陥が全く見られず、また耐湿熱試験前後で表面抵抗がほとんど変化せず、優れた耐久性を示した。
(比較例1)
実施例1で得たフィルムを相対湿度70%の条件下、加速電圧3MeVの電子線を200kGy照射することで比較例1の架橋フィルム4を得た。
得られた架橋フィルム4の耐溶剤性指数、ゲル分率を第1表に示す。
架橋フィルム4では、フィルム全体は架橋しているものの、耐溶剤性指数の結果から、フィルム表層近傍の硬化不良が見られることが分かる。
次に、実施例1と同様の操作により比較例1の積層体7を作製した。得られた積層体7の外観、架橋フィルム4及び積層体7の表面粗さを測定した結果を第1表に示す。
積層体7では積層体表面で波状のシワが見られ、また、ハードコート層を積層する前後で表面粗さの変化が大きく、平滑性が大きく低下していた。
次に、実施例1と同様の操作により比較例1の積層体8を作製した。得られた積層体8の外観、耐湿熱試験における表面抵抗の変化を第1表に示す。
積層体8では積層体が白濁し、また耐湿熱試験前後で表面抵抗が大きく低下していた。
(比較例2)
実施例2で得たフィルムを相対湿度75%の条件下、加速電圧3Mevの電子線を300kGy照射することで、比較例2の架橋フィルム5を得た。得られた架橋フィルム5の耐溶剤性指数、ゲル分率を第1表に示す。
比較例1と同様にフィルム全体は架橋しているものの、耐溶剤性指数の結果から、フィルム表層近傍の硬化不良が見られることが分かる。
次に、実施例1と同様の操作により比較例2の積層体9を作製した。得られた積層体9の外観、架橋フィルム5及び積層体9の表面粗さを測定した結果を第1表に示す。
積層体9では比較例1と同様に積層体表面で波状のシワが見られ、またハードコート層を積層する前後で表面粗さの変化が大きく、平滑性が大きく低下していた。
次に、実施例1と同様の操作により比較例2の積層体10を作製した。得られた積層体10の外観、耐湿熱試験における表面抵抗の変化を第1表に示す。
積層体10では、比較例1と同様に積層体が白濁し、また耐湿熱試験前後で表面抵抗が大きく低下した。
第1表中、
樹脂1:製造例1で得た不飽和基含有脂環式構造含有重合体
樹脂2:製造例2で得た不飽和基含有アクリル樹脂
無機微粒子A:有機化処理サポナイト
無機微粒子B:シリカ超微粒子
Figure 2007008994
第1表より、相対湿度が64%以下の環境下で電子線を照射して得られた実施例1〜3では、耐溶剤性指数が0.91以上であり、ゲル分率が98%以上のフィルムが得られた。また、得られたフィルム上に、ハードコート層を積層した場合であっても、表面粗さ(Ra)はほとんど変化のない平坦な積層フィルムが得られた。さらに、該ハードコート層上に透明導電層(ITO薄膜)を積層して得られる積層体は、高温・多湿の環境に長時間置かれた場合であっても、表面抵抗値がほとんど変化せず、耐久性に優れていた。従って、実施例1〜3で得られた透明導電性のフィルムは、液晶表示素子基板などのフラットパネル素子基板材料として有用であることが示された。
一方、相対湿度が70%以上の環境下で電子線を照射して得られた比較例1,2のフィルムは、耐溶剤性指数が0.75以下と低く、ゲル分率も95%以下と低いものであった。また、得られたフィルム上にハードコート層を積層した場合には、表面粗さ(Ra)が大きくなり、外観上も波シワが見られ、部分的に白濁していた。さらに、該ハードコート層上に透明導電層(ITO薄膜)を積層して得られた積層体は、高温・多湿の環境に長時間置かれた後には、表面抵抗値が大きくなっており、耐久性に劣るものであった。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂中に無機微粒子が分散した有機・無機複合体からなる成形体であって、耐溶剤性指数が0.8以上であり、熱可塑性樹脂および無機微粒子を含む樹脂組成物を溶融成形した後、得られた成形物に、相対湿度65%以下の環境下にてエネルギー線を照射して得られたものであることを特徴とする成形体。
  2. ゲル分率が80%以上である請求項1に記載の成形体。
  3. 前記エネルギー線が電子線である請求項1または2に記載の成形体。
  4. フィルムまたはシートである請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
  5. 請求項4に記載のフィルムまたはシート上に、有機若しくは無機の薄膜を積層した積層フィルムまたはシート。
  6. 請求項4に記載のフィルムまたはシート上に、透明導電層を積層した透明導電性のフィルムまたはシート。
  7. 請求項6に記載の透明導電性のフィルムまたはシートを構成要素とするフラットパネルディスプレイ。


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* Cited by examiner, † Cited by third party
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