JP2005139370A - 樹脂組成物、および成形体 - Google Patents

樹脂組成物、および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】透明性がよく、優れた剛性を有する樹脂組成物、および成形体を提供すること。
【解決手段】脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、有機化処理された層状結晶化合物とを含有して成り、光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%であることを特徴とする樹脂組成物である。
【選択図】 なし

Description

この発明は、樹脂組成物、および成形体に関する。更に詳しくは、この発明は、光学部品等に好適な樹脂組成物及び透明性に優れるとともに剛性も優れた低吸水性の成形体に関する。
液晶ディスプレイ(liquid crystal display、以下、「LCD」と略す場合もある。)を構成する光学部材である、導光板、光拡散板などの材料として、ノルボルネン系樹脂などの脂環式構造含有重合体樹脂が、その透明性、低吸湿性、軽量性などの特長から好適に用いられている。しかしながらLCDの大型化、薄型化に伴い、それらの光学部材についても大型化、薄型化が進み、その自重によるたわみ変形等が問題となっており、光学部材の材料の高剛性化が要求されてきている。
光学部材の剛性を向上させる方法としては、例えば、無機化合物の微粒子を材料中に添加する方法等が挙げられる。しかしながら、一般的にはこのような方法では得られる樹脂組成物は微粒子による光散乱によって透明性が大きく損なわれ、光学材料として用いることができない。
近年、スメクタイトのような層状珪酸化合物を単位結晶層またはそれに近い状態まで劈開させ、粒径数nm〜数百nm程度のサイズの無機ナノシートとして高分子材料中に分散させる、いわゆるナノコンポジットの検討が行われている。この方法によれば、層状珪酸化合物を少量配合するだけで高分子材料の剛性を高められると同時に、分散相の粒径が光の波長程度以下であるため光散乱が生じ難く、得られる組成物の透明性がかなり良好なものにできることが知られている。
しかしこの方法によってもまだ問題が残る。脂環式構造含有重合体樹脂に無機ナノシートを高度に均一分散させるためには、樹脂中にある程度以上の極性基を含有させる必要があり、このため材料の低吸水性という特長が損なわれてしまうことである。
非極性、あるいは低極性の樹脂材料に無機ナノシートを均一に分散させる方法として、以下のような方法が開示されている。それは、「炭素数を6以上有する有機オニウムイオンで有機化された粘土鉱物と、分子長が上記有機オニウムイオンと同じかそれよりも小さく、且つその分子内の極性基が上記粘土鉱物のシリケート基と水素結合して粘土鉱物の層間に留まっている第1ゲスト分子と、分子長が上記有機オニウムイオンよりも大きく、且つその分子内に極性基を有しない第2ゲスト分子とよりなり、上記第1ゲスト分子及び第2ゲスト分子は、少なくともその一部が上記粘土鉱物の層間に介入しており、かつ、上記極性基を有する第1ゲスト分子は、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、アテアリルクロライド、ラウリン酸のいずれかであり、また、上記極性基を有しない第2ゲスト分子は、液状ブチルゴム、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン及びポリスチレンのいずれかであることを特徴とする粘土複合材料」である(特許文献1参照)。
特許3368725号(請求項1)
前述の特許文献1に係る発明においては、極性基の含有割合が低いポリマー中に無機化合物を比較的、良く分散でき、比較的優れた剛性を有することができる。
しかしながら、この方法においても、導光板のように長光路における光透過性が必要な部材については透明性が不十分であり、さらに改良する必要があった。
この発明は、このような従来の問題点を解消し、光学部材等に好適に使用されることができ、しかも優れた剛性を有する樹脂組成物、および低湿度から高湿度の環境下においても吸湿による変形等の歪みを生じることがなく、しかも光学特性に優れるが故に光学部材等に好適に利用可能な成形体を提供することをその課題とする。
前記課題を解決するための手段は、脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、有機化処理された層状結晶化合物とを含有して成り、光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%であることを特徴とする樹脂組成物である。
この発明に係る樹脂組成物の好適な態様においては、極性基および脂環式構造を有し、大きくとも分子量1000の分散剤を含有する。
前記課題を解決するための別の手段は、前記樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。
この発明によれば、光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%であるから透明性がよい。また、脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、有機化処理された層状結晶化合物とを含有して成るから、剛性を向上させる作用をするので、優れた剛性を有する樹脂組成物を提供することができる。
[樹脂組成物]
この発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、有機化処理された層状結晶化合物とを含有して成り、光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%である。
ここで、光線透過率が、80%未満であると、透明性が十分でなく、光学材料として用いる際に実用的でない場合がある。
ここで、光路長とは、一般的に、屈折率nの媒質中を距離Lだけ光線が通過したときのnLをいう。また、光線透過率は、樹脂組成物を成形して得られた導光板の光路長200mm部分について、分光光度計(日本分光(株)製の製品番号U−30)により、波長400〜700nmの範囲について波長を連続的に変化させて光透過率(%)を測定し、最小の透過率を、その導光板の光透過率とした。
[熱可塑性樹脂]
この発明における熱可塑性樹脂は、分子内に脂環式構造を有する。なお、以下においてこの発明における熱可塑性樹脂を、「脂環式構造含有重合体」と略する場合がある。
この発明において用いる脂環式構造含有重合体は、その重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。この脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等を挙げることができるが、脂環式構造含有重合体組成物またはこの組成物から得られる成形体の熱安定性の観点からすると、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは、5〜20、より好ましくは、5〜15である。炭素数がこの範囲にあることにより、優れた耐熱性と柔軟性を有する脂環式構造含有重合体組成物またはこの脂環式構造含有重合体組成物から得られる成形体となる。この脂環式構造は、重合体の主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよい。
前記脂環式構造含有重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の含有割合に制限はなく、得られる樹脂組成物の性状、物性等に応じて適宜、選択されるが、通常は小さくとも50質量%、好ましくは小さくとも70質量%、より好ましくは小さくとも90質量%である。この繰り返し単位の含有割合が少量に過ぎると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがあるので望ましくない。なお、この発明に用いる脂環式構造含有重合体は、脂環式構造を含有する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
この発明において用いる脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体(A)、単環の環状オレフィン系重合体(B)、環状共役ジエン系重合体(C)、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、(A)〜(D)の水素化物、およびこれらの混合物等を挙げることができる。これら重合体の中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系重合体(A)の水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、およびビニル脂環式炭化水素重合体(D)の水素化物が好ましい。
前記ノルボルネン系重合体(A)としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体、およびこれら開環共重合体の水素化物、ならびにノルボルネン系モノマーの付加重合体、およびノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体等を挙げることができる。これら重合体および共重合体の中でも、得られる脂環式構造含有重合体組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物が特に好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタテトラヒドロフルオレン)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体等を挙げることができる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基等を挙げることができ、前記ノルボルネン系モノマーは、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
これら置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等を挙げることができる。
前記ノルボルネン系重合体(A)を製造するために用いられるこれらノルボルネン系モノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体は、前記モノマーを公知の開環重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
前記ノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーを挙げることができる。
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物は、通常、ノルボルネン系モノマーの重合液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することによって製造することができる。
前記ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体は、前記モノマーを公知の付加重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
ノルボルネン系モノマーに対して付加共重合可能な他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン等を挙げることができる。これらモノマーの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
前記ノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
ノルボルネン系モノマーとこれに対して共重合可能な他のモノマーとを付加共重合するに当っては、得られる付加共重合体中のノルボルネン系モノマーに由来する構造単位と、付加共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位との割合が、質量比で、50:50〜99:1、好ましくは70:30〜97:3の範囲となるよう、各モノマーの使用量が選択される。
前記単環の環状オレフィン系重合体(B)としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環を有する環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
前記環状共役ジエン系重合体(C)としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体およびその水素化物を挙げることができる。
また、前記ビニル脂環式炭化水素重合体(D)としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系モノマーまたはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体およびその芳香環の水素化物等を挙げることができる。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロックまたはそれ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
この発明における脂環式構造含有重合体としては、実質的に疎水性であることが望ましい。この発明における脂環式構造含有重合体が実質的に疎水性であるためには、重合体内に極性基を含有していないことが望ましい。もっとも、極性基は、層状結晶化合物との親和性を向上させることができ、したがって、樹脂組成物の耐熱性及び機械的強度等を向上させることができる。したがって、樹脂組成物の耐熱性及び耐機械的強度などを向上させつつ脂環式構造含有重合体が実質的に疎水性であり得るように許容することのできる極性基の、脂環式構造含有重合体中の含有量は、0.8mmol/g以下、好ましくは0.5mmol/g以下、更に好ましくは0.1mmol/g以下である。つまり、極性基が0.8mmol/gを超えると、脂環式構造含有重合体を含有する樹脂組成物の吸水率が増加してしまう。
前記極性基としては、ヘテロ原子またはヘテロ原子を有する原子団等を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。これらヘテロ原子の中でも、無機化合物との分散性および相溶性の観点からすると、酸素原子および窒素原子が好ましい。前記極性基として、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、ハロゲン基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、スルホン基、酸無水物基等を挙げることができる。
極性基を有する脂環式構造含有重合体を得る方法としては特に制限はないが、脂環式構造含有重合体が、ノルボルネン系重合体である場合、例えば、(1)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる未変性重合体に、極性基を有する化合物を反応(変性反応)させる方法、(2)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーと極性基を有するノルボルネン系モノマーとを共重合させる方法、(3)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる重合体と、前記(1)の方法または(2)の方法により得られた極性基を有するノルボルネン系重合体とを混合する方法等を挙げることができる。ノルボルネン系重合体以外の脂環式構造含有重合体についても、ノルボルネン系重合体の場合と同様である。
この発明においては、この発明の目的を阻害しない限り、脂環式構造含有重合体と共に極性基を有する熱可塑性樹脂を併用しても良い。極性基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂の塩素化物、クロロスルホン化物、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物等を挙げることができ、中でも、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物が好ましい。
前記極性基含有不飽和化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、p−スチリルカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸化合物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート等の不飽和エステル化合物;アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等の不飽和アルコール酸化合物;クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート等の不飽和シラン化合物等を挙げることができる。
これら極性基含有不飽和化合物の中でも、層状結晶化合物の分散性の観点からすると、不飽和エポキシ化合物および不飽和カルボン酸化合物が特に好ましい。なお、これら極性基含有不飽和化合物を効率よく共重合させるためには、汎用のラジカル開始剤の存在下に重合反応を実施することが好ましく、この好適なラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等を挙げることができる。
なお、前記極性基含量は、前記(1)の方法においては、極性基を有する化合物の反応による極性基の導入率により、前記(2)の方法においては、極性基を有するモノマーの共重合割合により、前記(3)の方法においては、極性基を有しない重合体と極性基を含有する重合体との混合割合により、調節することができる。
また、この発明における脂環式構造含有重合体の分子量に特に制限はないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常は、5,000〜500,000、好ましくは、8,000〜200,000、より好ましくは、10,000〜100,000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物の成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることもできる。この重量平均分子量は、シクロヘキサンまたはトルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定することができる。
さらに、この発明における脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)にも特に制限はないが、通常は、80℃以上、好ましくは、130〜250℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物において、高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることがなく、優れた耐久性を与えることができる。
[層状結晶化合物]
この発明で用いる層状結晶化合物は、その化合物が平面的に配列されたシート構造を有する状態(層状)にあり、その垂直方向にシート構造の繰り返しが見られる、多結晶層構造を有する化合物である。この層状結晶化合物は、結晶層が相互にファンデルワールス力または水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負電荷に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。
このような層状結晶化合物の具体例としては、グラファイト、TiS、NbSe、MoS等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO、V等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)、Cu(OH)等の水酸酸化物;Zr(HPO・nHO、Ti(HPO・nHO、Na(UOPO・nHO等のリン酸塩;NaTi、KTiNbO、RbMnTi2−x等のチタン酸塩;Na、K等のウラン酸塩;KV、K14、CaV16・nHO、Na(UO)・nHO等のバナジン酸塩;KNb、KNb17等のニオブ酸塩;Na13、Ag1013等のタングステン酸塩;MgMo、CsMo16、CsMo22、AgMo1033等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ハロイサイト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、HSiO、HSi1429・5HO等の珪酸塩またはこの珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることができる。
これら層状結晶化合物の中でも、前記樹脂への分散性、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点から、珪酸塩、リン酸塩およびモリブデン酸塩が好ましく、さらには、珪酸塩が特に好ましい。
この発明の樹脂組成物中には、有機化処理された層状結晶化合物(以下において、「有機化層状結晶化合物」と称することがある。)が含有される。この有機化層状結晶化合物は、層状結晶化合物そのものではなくて、有機化処理されることにより微細な、例えばナノオーダーの粒径を有する微細粒子状態となっている。つまり、前述した層構造を有する層状結晶化合物を有機化処理すると各層が分離して微細な板状の粒子が形成され、その微細な板状の粒子が脂環式構造含有重合体を有するマトリックス中に分散することにより、この発明に係る樹脂組成物が形成されるのである。
この有機化処理は、例えば、有機化剤例えば陽イオン性界面活性剤を用いて行うことができる。この陽イオン性界面活性剤としては、R+-で表される第四級アンモニウム塩を挙げることができる。
前記R+-において、R、R、RおよびRは、それぞれ同一であっても、別異であってもよく、炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基を表す。この炭素数1〜30の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基;ラウリル基、オレイル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を挙げることができる。X-としては、Cl-、Br-、NO -、OH-、CHCOO-等の陰イオンを挙げることができる。
層状結晶化合物の有機化処理は、例えば、層状結晶化合物を水に分散させて層状結晶化合物の分散液を調製し、この分散液に前記陽イオン性界面活性剤を添加し、常温または加熱下で撹拌することによって行うことができる。このときの層状結晶化合物分散液における層状結晶化合物の濃度は、0.01〜70質量%に調整することが好ましい。
有機化層状結晶化合物の配合割合は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であり、好ましくは0.5〜15質量部である。有機化層状結晶化合物の配合量が前記上限値を超えると、得られる脂環式構造含有重合体組成物の透明性を低下させることとなる。
[分散剤]
この発明に係る樹脂組成物の、光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率を、小さくとも80%にし、しかも樹脂組成物の剛性を向上させるには、有機化層状結晶化合物をマトリックスである脂環式構造含有重合体中に均一に分散させるとともに、有機化層状結晶化合物の表面と脂環式構造含有重合体との親和性を向上させることが望ましい。有機化層状結晶化合物は、層状結晶化合物を構成していた結晶化合物の粒子と、その表面に静電引力により配向した有機化剤とを有する。このような有機化層状結晶化合物は脂環式構造含有重合体とある程度の親和性は有するが、得られる組成物に高度の透明性を与えるには不十分であった。層状結晶化合物表面と脂環式構造含有重合体との親和性を向上させるためには、有機化層状結晶化合物と脂環式構造含有重合体との界面に、さらに分散剤を介在させることが望ましい。
好適な分散剤としては、分子中に極性基および脂環式構造を有し、分子量が大きくとも1000である化合物を挙げることができる。
ここでいう脂環式構造とは、非芳香族炭素原子の連結のみから構成される炭化水素環状構造であり、単環、ビシクロ環又はトリシクロ環等の多環等、任意数の環単位から構成される構造を一例として挙げることができる。脂環式構造の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環等の単環構造、並びにアダマンタン環、ノルアダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ジシクロペンタジエン環等の多環構造等が挙げられ、中でも前記炭素数から好ましいものはシクロペンタン環、及びシクロヘキサン環等の単環構造、より好ましいものはノルアダマンタン環、及びノルボルナン環等の多環構造である。また前記脂環式構造は、メチル基やエチル基等のアルキル基が結合していても良く、また分子内において複数の脂環式構造がメチレン鎖等で結合された構造を有していてもよい。
かかる脂環式構造を有することにより、脂環式構造含有重合体樹脂等の疎水性の大きな透明樹脂との親和性を向上させることができる。脂環式構造の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環等の単環構造、並びにアダマンタン環、ノルアダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ジシクロペンタジエン環等の多環構造等が挙げられ、中でも前記炭素数から好ましいものはシクロペンタン環、及びシクロヘキサン環等の単環構造、より好ましいものはノルアダマンタン環、及びノルボルナン環等の多環構造である。脂環式構造を構成する結合として、一部に不飽和結合を有していても良く、また複数の環を有する場合は、一部が芳香族環であってもよい。
また、前記極性基としては、ヘテロ原子またはヘテロ原子を有する原子団等を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。前記極性基として、具体的には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、ハロゲン基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、スルホン基、酸無水物基等を挙げることができ、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、エステル基、ヒドロキシル基などである。極性基は分子中に複数個有していてもよい。
この発明の分散剤は、全体の分子量が大きくとも1,000、好ましくは大きくとも500である。分子量が過度に小さすぎたり大きすぎたりすると、得られる樹脂組成物の剛性が向上しなかったり、透明性が低下する場合がある。
このような分散剤として、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−3−カルボン酸、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3,4−ジカルボン酸またはその酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,4−ジカルボン酸またはその酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オール、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−オール、変性シクロオレフィンオリゴマー、石油樹脂、ロジン酸等が挙げられる。
この分散剤は、層状結晶化合物1質量部に対して、0.01〜100質量部であり、好ましくは、0.01〜10質量部であり、より好ましくは、0.01〜1質量部である。分散剤が、層状結晶化合物1質量部に対して、上記の範囲内であると、より一層透明性を有することができる。
[樹脂組成物の製造]
この発明の脂環式構造含有重合体組成物の製造方法としては、特に制限されることはなく、例えば、(i)脂環式構造含有重合体、層状結晶化合物および分散剤を、ブラベンダー、押出機、ロール等を用いて溶融混合する方法、(ii)脂環式構造含有重合体、層状結晶化合物および分散剤を溶液中でブレンドし溶媒を除去する方法、(iii)脂環式構造含有重合体、層状結晶化合物および分散剤を溶液中でブレンドし溶媒を除去した後、または溶媒を除去しながら押出機等でさらに混練する方法等を挙げることができる。中でも、層状結晶化合物の分散性の向上を図ることのできる前記(iii)の方法が好ましい。より具体的には、例えば次のようにして製造することができる。
層状結晶化合物を有機化剤で有機化処理をすることにより有機化層状結晶化合物を調製する。この有機化層状結晶化合物と、脂環式構造含有重合体と、分散剤とを混合する。混合に際して、前記有機化層状結晶化合物は有機溶媒に分散してなる溶媒分散液にし、脂環式構造含有重合体もこれを有機溶媒に分散してなる溶媒分散液にして、混合するのが好ましい。有機溶媒としては芳香族有機溶媒が好ましい。
混合を行う装置に特に制限はないものの、高速回転ミキサーを用いることが好ましい。
好ましく用いられる前記高速回転ミキサーは、撹拌部の先端速度が小さくとも15m/sec、好ましくは小さくとも20m/sec、より好ましくは小さくとも30m/secの速度で稼動されることが望ましい。先端速度の上限は、通常、90m/sec程度である。このような高速回転による撹拌によって、せん断力を強力にして、無機化合物の分散を均一にすることができる。
混合および分散処理に要する時間は、通常は2〜1800秒、好ましくは5〜1200秒、より好ましくは5〜900秒である。また、混合および分散処理の温度は、通常は20〜80℃、好ましくは30〜70℃である。
前記高速回転ミキサーは、容器と撹拌ホイールとを備えており、撹拌ホイールは、高速回転が可能でその端部が容器内側近傍に達する直径を有していることが好ましい。このような撹拌ホイールを高速回転させると、遠心力によって、撹拌液が容器内側面に回転しながら、薄膜状に押し付けられ、その薄膜に撹拌ホイールの先端部が接触して、効率的な撹拌を実現できることができる。
前記高速回転ミキサーとしては、薄膜旋回型高速ミキサー、薄膜旋回型高速回転分散混合機等を挙げることができ、市販品としては、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:T.K.フィルミックス)、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速粉体溶解装置(商品名:T.K.パウダーフィルミックス)等を挙げることができる。
図1に、薄膜旋回型高速ミキサーの一例を示す。この薄膜旋回型高速ミキサーは、円筒状の容器1と撹拌ホイール5とを装備している。撹拌ホイール5は容器1の中心に設けられた回転軸6によって駆動装置7に連結されており、この駆動装置7によって回転駆動される。2は流入口、3は流出口、4はジャケット、8は堰である。
このようにして、混合物を調製した後に溶媒を除去する場合には、円筒型濃縮乾燥機が好ましく用いられる。この円筒型濃縮乾燥機を用いるときの条件は、通常、乾燥温度が100〜350℃、圧力が大きくとも10kPaである。
溶媒を除去した樹脂組成物は二軸押出機等を用いてさらに溶融混練を行うことが好ましく、その場合、円筒型濃縮乾燥機から吐出された溶融状態の樹脂組成物をそのまま二軸押出機の混練ゾーンに供給して連続的に溶融混練を行うことも可能である。
[樹脂組成物の作用および効果]
上記した樹脂組成物の作用を以下に説明する。
まず、層状結晶化合物は、平面的に配列された珪酸結晶層と、その層間の金属カチオンとからなる交互積層構造を有する化合物である。
従来では、層状結晶化合物を機械的に破砕することにより数十ミクロン程度の粒径に調整してなる層状結晶化合物を、充填材あるいは強化材として熱可塑性樹脂に配合してなる樹脂組成物は良く知られている。従来のこの種の樹脂組成物においては、層状結晶化合物の粒径が大きいので樹脂組成物自体が不透明であり、また層状結晶化合物が均一に熱可塑性樹脂中に分散していない。
この発明においては、機械的粉砕では到底到達することのできないナノオーダーの粒径に調整された結晶性化合物を脂環式構造含有重合体中に均一に分散させることを、企図する。そこで、層状結晶化合物に、有機化処理が施される。層状結晶化合物が有機化処理されると、アルキルアンモニウムイオンで層状結晶化合物間のカチオンが交換され、層状結晶化合物の層間距離が増大し、またアルキルアンモニウムの疎水性基である有機基の存在によりポリマー分子の侵入も容易になり、従って、層状結晶化合物が微小片に独立分離して、有機化層状結晶化合物となり、樹脂中に分散することが可能になる。
しかし、この有機化処理によって、アルキルアンモニウムの疎水性基である有機基で被覆できる層状結晶化合物の表面は、全体に及ぶわけではなく、親水性を有する表面が未だかなり残存しているものと推測される。
このように、層状結晶化合物表面は、有機化処理を経てもなお親水性を有しているため、疎水性を有する脂環式構造含有重合体は、層状結晶化合物の層間に入りにくい(インターカレートしにくい)ので、分散が非常に悪いものと推測されていた。
そこで、従来は、例えば、疎水性ポリマーの一種である脂環式構造含有重合体に、極性基を導入した。この極性基を導入することにより、脂環式構造含有重合体を層状結晶化合物の層間にインターカレートできるようになったが、層状結晶化合物の表面と親和性があるのは、極性基の部分だけで、脂環式構造像重合体の他の部分は、有機化処理に用いる、アルキルアンモニウムのアルキル鎖とわずかに親和性を持つだけであると推測され、層状結晶化合物による脂環式構造含有重合体に対する拘束力は小さく、剛性や耐熱性等の特性への影響は小さかった。
また、層状結晶化合物の層間を広げる、インターカレートの推進力も小さく、分散も高度なものにならなかったと推測される。
そこで有機化層状結晶化合物表面の疎水性基による被覆面積を増加させることにより、熱可塑性樹脂との親和性を向上させることができるものと、本発明者は、推測した。
この際、分散剤は、例えば、脂環式構造カルボン酸を例示すると、脂環式構造カルボン酸におけるカルボキシル基(−COOH)が、有機化層状結晶化合物の表面に吸着し、脂環式構造部分が、脂環式構造含有重合体と親和すると推測される。したがって、上記のような作用により、有機化層状結晶化合物の表面に脂環式構造含有重合体が拘束され、しかもマトリックスである脂環式構造含有重合体中にナノオーダーの粒径を有する有機化層状結晶化合物が均一に分散されることになり、長光路における高い透明性を有することができると考えられる。
[成形体]
この発明の一実施形態に係る成形体は、前記樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体である。この成形体としては、LCDのバックライトやフロントライト用の導光板、導光体などの特に長光路の光透過性が求められるものが挙げられるが、その他にもLCDのバックライト用光拡散板(この発明の樹脂組成物にさらに光拡散剤を配合する)、光学フィルム、光学レンズ等が挙げられる。光学レンズとしては、レーザービームプリンター用のFθレンズ、カメラまたはカメラ付き携帯電話等の撮像用レンズ、光学式情報記録装置用のピックアップレンズ、眼鏡等が挙げられる。
この成形体の成形方法としては、各種成形体に応じて、公知の成形方法を採用することができる。
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%であるから高透明性である。また、脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、有機化層状結晶化合物とを含有し、しかも有機化層状結晶化合物の表面に前記脂環式構造を有する熱可塑性樹脂が強固に拘束され、しかも有機化層状結晶化合物が均一に分散しているので、機械的特性例えば剛性が向上した透明な樹脂組成物が提供されることができる。
(2)高透明性であり、機械的特性例えば剛性に優れ、しかも吸水性の低い樹脂組成物を用いて製造された成形体は、例えば光学部材例えば導光板、光拡散板、光学フィルム、光学レンズ等に好適に使用されることができる。
以下、実施例および比較例を挙げて、この発明をより具体的に説明する。なお、この発明は実施例の内容に限定されるものではない。また、部及び%は特に断りのない限り質量基準である。
<製造例1>
(脂環式構造含有重合体の製造例)
窒素雰囲気下に、脱水したシクロヘキサン500部、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「MTCD」と略記する。)100部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)40部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
次いで、得られた開環重合体を含有する重合反応溶液100部に、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、MTCD開環重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、MTCD開環重合体水素化物を100部に対して0.1部になるように、ろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、MTCD開環重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。
このようにして製造されたところの、極性基を有しない脂環式構造含有重合体の一例であるMTCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は40,000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は148℃であった。
<製造例2>
(極性基を有する脂環式構造含有重合体Aの製造例)
製造例1で得られたMTCD開環重合体水素化物100部に、無水マレイン酸10部、ジクミルパーオキシド3部およびtert−ブチルベンゼン230部を混合し、オートクレーブ中で135℃、6時間、反応させた後、多量のイソプロピルアルコール中に加えることによって析出させ、ろ過して、樹脂を得た。
この樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間、乾燥して、極性基を有する脂環式構造含有重合体の一例である無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物(極性基を有する脂環式構造含有重合体A)を得た。この無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は65,000、ガラス転移点は146℃、H-NMRで測定した無水マレイン酸変性量は0.45mmol/gであった。
<製造例3>
(極性基を有する脂環式構造含有重合体Bの製造例)
製造例1で得られたMTCD開環重合体水素化物100部に、無水マレイン酸30部、ジクミルパーオキシド10部およびtert−ブチルベンゼン300部を混合し、オートクレーブ中で135℃、6時間、反応させた後、多量のイソプロピルアルコール中に加えることによって析出させ、ろ過して、樹脂を得た。
この樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間、乾燥して、極性基を有する脂環式構造含有重合体の一例である無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物(極性基を有する脂環式構造含有重合体B)を得た。この無水マレイン酸変性MTCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は65,500、ガラス転移点は143℃、H-NMRで測定した無水マレイン酸変性量は1.0mmol/gであった。
<製造例4>
(有機化処理サポナイトの製造例)
合成サポナイト(クニミネ工業社製、品名スメクトンSA、平均長径0.05μm)100部を60℃の蒸留水1000部に均一に分散させ、モンモリロナイト分散液を調製した。次いで、このサポナイト分散液を撹拌しながら、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド20部を蒸留水300部に溶解させた溶液を緩やかに添加し、60℃で3時間、撹拌を続けた後、ろ過して固形物を分取した。この固形物を60℃の蒸留水500部に加えて再度、分散させた後、再度、ろ過して固形物を分取した。この分散とろ過とを3回繰り返した後、凍結乾燥法により水分を除去して、有機化処理サポナイトを製造した。
(実施例1)
(脂環式構造含有重合体組成物1の製造例)
製造例1により製造された脂環式構造含有重合体100部をトルエン300部に溶解させた溶液と、製造例4により製造された有機化処理サポナイト5部をトルエン150部に分散させた分散液と、3−カルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン(分散剤1、分子 140)0.5部とを混合し、この混合液を高速旋回分散機(特殊機化工業社製、フィルミックスFM80−50型)を用い、その高速旋回分散機における撹拌部の先端速度が20m/secとなるようにして分散処理した。次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、トルエンを除去した。次いで、円筒型濃縮乾燥機から吐出された溶融物を二軸混練押出機(東芝機械製)の混練ゾーンに金属配管を経由して供給して混練し、ストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して、脂環式構造含有重合体組成物(1)を製造した。
この脂環式構造含有重合体組成物(1)を射出成形機(東芝機械社製、IS450)を用い、金型温度110℃、シリンダー温度290℃、ノズル温度260℃、射出圧100MPa、保圧80MPa、型締め圧120MPa、射出速度40cm/sec、スクリュー背圧0.7MPa、スクリュー回転数30rpmの条件で射出成形して、厚さ2mmの平板サンプルを作製し、ヘイズ、吸水率及び曲げ弾性率の測定を行い、その結果を表1に示した。
また、脂環式構造含有重合体組成物(1)のペレットを、射出成形機(東芝機械社製、IS450)を用い、金型温度110℃、シリンダー温度290℃、ノズル温度260℃、射出圧100MPa、保圧80MPa、型締め圧120MPa、射出速度40cm/sec、スクリュー背圧0.7MPa、スクリュー回転数30rpmの条件で、1辺の長さ200mm、厚さ1mmの平板状導光板を作製した。この導光板について光透過率を測定し、その結果を表1に示した。
<へイズの測定>
JIS K7105の方法に従って、濁度計(NDH−300A、日本電色工業社製)を用いて測定した。ヘイズが小さい方がよい。
<吸水率>
ASTM D570に準拠して測定した。
<曲げ弾性率>
ASTM D−790に準拠して、曲げ弾性率を測定した。
<光透過率の測定>
得られた導光板の光路長200mm部分について、分光光度計(日本分光社製の製品番号U−30)により、波長400〜700nmの範囲について波長を連続的に変化させて光透過率(%)を測定し、最小の透過率を、その導光板の光透過率とした。
(実施例2〜3)
表1に示すとおりに脂環式構造を有する重合体を製造例2で製造した重合体Aに変える事と、3−カルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンをシクロヘキサンカルボン酸(分散剤2、分子量 128)に変える以外は、実施例1と同様に作製し各種評価を行った結果を表1に示したが、いずれも優れた結果を示した。
(実施例4)
表1に示すとおりに製造例3で製造した重合体に変える以外は、実施例1と同様な手順で作製し評価を行った。透明性は得られたが、吸水率が若干高い。
(比較例1)
3−カルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンをステアリン酸(分散剤4、分子量 285)に変える以外は、実施例1と同様に作製した。透明性が低く、曲げ弾性率も低かった。
(比較例2)
3−カルボキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンをジカルボン酸無水物基を有する脂環式構造含有オリゴマー(Mw=2000)(以下、式(1))に変える以外は、実施例1と同様に作製した。透明性・曲げ弾性率ともに低かった。
Figure 2005139370
m:n=9:1 式(1)
(比較例3)
製造例1で作製した脂環式構造含有重合体を200℃で熱プレスしサンプルを得た。透明性・吸水性は良好であったが、曲げ弾性率が低かった。
Figure 2005139370
図1は、この発明の樹脂組成物を製造するための一例としての高速ミキサーの概略図を示している。
符号の説明
1 容器
2 流入口
3 流出口
4 ジャケット
5 撹拌ホイール
6 回転軸
7 駆動装置
8 堰

Claims (3)

  1. 脂環式構造を有する熱可塑性樹脂と、
    有機化処理された層状結晶化合物とを含有して成り、
    光路長200mmの成形体に成形した際の光線透過率が、小さくとも80%であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 極性基および脂環式構造を有し、大きくとも分子量1000の分散剤を含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記請求項1又は2に記載の樹脂組成物を成形してなる
    ことを特徴とする成形体。


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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006206426A (ja) * 2004-12-27 2006-08-10 Kao Corp 層状チタン酸ナノシート有機溶媒分散液
JP2007140011A (ja) * 2005-11-17 2007-06-07 Tosoh Corp 光学フィルムの製造方法
JP2012188504A (ja) * 2011-03-09 2012-10-04 Sumitomo Chemical Co Ltd 導光板用樹脂組成物および導光板

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