JP4108458B2 - 光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散板 - Google Patents

光拡散性樹脂組成物及びそれを用いた光拡散板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光拡散性を有する樹脂組成物に関する。より詳しくは、脂環式構造含有重合体樹脂を基体とし、特定の層状珪酸塩及び無機微粒子及び/又は高分子微粒子、好適にはさらにカルボキシル基類を有する重合体を含有してなる樹脂組成物であって、良好な剛性及び寸法安定性を有し、かつ優れた表面平滑性を有する光拡散成形品を提供可能な光拡散性樹脂組成物、並びにかかる樹脂組成物からなる光拡散板に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に代表される脂環式構造含有重合体樹脂は、透明性に優れるため光学分野等において使用されている。さらに、かかる樹脂に無機微粒子や高分子微粒子を配合した光拡散機能を有する成形品も既に知られている(特許文献1〜3参照)。その成形品の代表例の1つとして表示装置用の光拡散板が挙げられる。近年、表示装置の大型化に伴いかかる表示装置用の光拡散板も大型化しているため、光拡散板にはさらに高い剛性や良好な寸法安定性が求められる場合がある。
【0003】
通常、樹脂組成物における剛性及び寸法安定性を向上させるためには、ガラス繊維のような無機充填材の配合が有効な手段の1つであると考えられる。しかしながら、光拡散板のような光拡散機能が必要な成形品の場合、かかる無機充填材の配合は光拡散機能に悪影響を及ぼし、例えば樹脂組成物の全光線透過率が低下するという問題が生じばかりでなく、成形品の表面平滑性が悪いため光拡散板としての実用性に乏しい。このため、光拡散板としての前記要求を十分に満足する樹脂材料はこれまで存在しなかった。
【0004】
一方、剛性を向上させた光拡散性樹脂材料としては、基体となる樹脂として剛性の高い特殊な樹脂を使用することが提案されている(特許文献4参照)。しかし、かかる特殊な樹脂は、製造コストが高く、入手が困難なため、かかる提案は実用性に乏しい。他方で、比較的少量の充填材で高い曲げ弾性率を達成する技術の1つとして、無機充填剤として層状珪酸塩(好ましくはかかる層状珪酸塩の層間イオンを有機オニウムイオンにイオン交換させた層状珪酸塩)を、熱可塑性樹脂中へ微分散させた樹脂組成物が知られている。例えば、ポリオレフィン樹脂についても前記層状珪酸塩を微分散させた樹脂組成物も既に提案されている(特許文献5〜7参照)。また、ポリスチレン樹脂についてはポリスチレンに極性基を導入することにより層状珪酸塩の分散性を改良する方法が知られている(非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−327806号公報
【特許文献2】
特開2001−131419号公報
【特許文献3】
特開2002−182207号公報
【特許文献4】
特開平5−140373号公報
【特許文献5】
特開2001−288293号公報
【特許文献6】
特開2002−146079号公報
【特許文献7】
特開2002−088183号公報
【非特許文献1】
長谷川ほか、「ポリスチレンクレイハイブリッドの合成と物性」、高分子学会予稿集、社団法人高分子学会、平成11年5月12日発行、第48巻、第4号、687頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、良好な剛性、寸法安定性及び表面平滑性を併有する光拡散性成形品となし得る樹脂組成物を提供することにある。さらには、該樹脂組成物からなる、表示装置用に適した光拡散板を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、基体となる脂環式構造含有重合体樹脂に、特定の層状珪酸塩(好ましくはその陽イオン交換基が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩)及び無機微粒子及び/又は高分子微粒子(好ましくは高分子微粒子)、好適にはさらにカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体を添加配合した樹脂組成物が、極めて低い珪酸塩の含有量によって大幅に剛性が向上し、また良好な色相を維持することを見出した。そして、さらに検討を進めた結果、良好な剛性と寸法安定性を兼ね備え、かつ表面平滑性の優れた光拡散性樹脂成形品を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)(A)脂環式構造含有重合体樹脂(A成分)100重量部当り、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜20重量部、及び(D)無機微粒子及び高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤(D成分)0.1〜30重量部を含むことを特徴とする光拡散性樹脂組成物に係るものである。かかる構成(1)によれば、良好な剛性と寸法安定性と表面平滑性を兼備し、かつ優れた光拡散性を有する(以下、これらを“本発明の効果”と総称する場合がある)光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の好適な態様の1つは、(2)前記A成分が、熱可塑性ノルボルネン系樹脂である前記(1)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(2)によれば、本発明の効果を有し、かつ耐熱性や寸法安定性においてより優れた大型の成形品に好適な光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0010】
本発明のより好適な態様の1つは、(3)前記B成分が、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつその陽イオン交換基の少なくとも40%が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩である前記(1)〜(2)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(3)によれば、より良好な本発明の効果を有する光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明のより好適な態様の1つは、(4)前記B成分における有機オニウムイオンを形成している有機基が、炭素数6〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基の少なくとも1つを含有する有機基である前記(3)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(4)によれば、より良好な本発明の効果を有し、かつ熱安定性が一段と優れた光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0012】
本発明のより好適な態様の1つは、(5)前記B成分における有機オニウムイオンを形成している有機基が、炭素数10以下のアルキル基であり、かつその少なくとも1つは炭素数6〜10のアルキル基である前記(4)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(5)によれば、より良好な本発明の効果を有しさらに熱安定性がより優れた光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明のより好適な態様の1つは、(6)前記B成分における有機オニウムイオンが、下記一般式(I)で示す有機オニウムイオンでイオン交換したものである前記(3)の光拡散性樹脂組成物である。
【0014】
【化2】
Figure 0004108458
【0015】
〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子又はリン原子を表わす。また、R1〜R4は互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
本発明のより好適な態様の1つは、(7)前記B成分における有機オニウムイオンが、上記一般式(I)において、R1及びR2がそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、R3が炭素原子数1〜16のアルキル基、R4が炭素原子数1〜4のアルキル基である前記(6)に記載の光拡散性樹脂組成物である。
【0016】
また、本発明の好適な態様の1つは、(8)前記A成分及びB成分に加え、さらに、(C)カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体(C成分)を、A成分100重量部に対し0.1〜50重量部の割合で含む前記(1)〜(7)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(8)によれば、本発明の効果を有しさらに剛性や寸法安定性においてより優れた光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0017】
本発明のさらに好適な態様の1つは、(9)前記C成分は、スチレン−無水マレイン酸共重合体である前記(8)の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(9)によれば、本発明の効果を有し、熱安定性においてさらに優れた光拡散性樹脂組成物が提供される。
【0018】
本発明の他の好適な態様の1つは、(10)前記D成分が、平均粒子径50μm以下の微粒子である前記(1)〜(9)の光拡散性樹脂組成物である。また、本発明のより好適な態様の1つは、(11)前記D成分が、高分子微粒子である前記(1)〜(10)のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物である。かかる構成(10)及び(11)によれば、本発明の効果を有し、より良好な光拡散効果を有する光拡散性樹脂組成物が提供される。高分子微粒子は剛性や寸法安定性を向上させる効果には乏しいが、本発明では他の添加剤によってこれらの特性が十分に向上するため、光拡散効果に優れた高分子微粒子が有効に利用でき、光拡散効果がより発揮される。
【0019】
さらに、本発明は、(12)前記(1)〜(11)の光拡散性樹脂組成物より形成された面積500〜50,000cm2の光拡散板に係るものである。かかる構成(12)によれば、本発明の効果によって、より改善された寸法安定性と良好な形状保持性とを有する比較的大型の光拡散板が提供される。
【0020】
さらに、本発明の好適な態様の1つは、(13)前記(12)の光拡散板が、表示装置用である光拡散板である。本発明の樹脂組成物は、比較的大型の表示装置用光拡散板に適する特性を有するものであり、従って、かかる構成(13)によれば良好な特性を有する比較的大型の表示装置用光拡散板が提供される。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分、樹脂組成物の調製及び特性、並びにそれを用いた光拡散板等について、順次詳細に説明する。
【0022】
<A成分について>
本発明の樹脂組成物を構成するA成分である脂環式構造含有重合体樹脂は、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する熱可塑性重合体樹脂であり、脂環式構造は重合体の主鎖及び/又は側鎖のいずれに存在してもよいが、樹脂の透明性の観点からは、主鎖に脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造の具体例としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、透明性の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に制限はないが、通常、炭素原子数が4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であると、樹脂の透明性が優れるので好適である。脂環式構造含有重合体中における全繰り返し単位単位に対する脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、樹脂の使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。前記繰り返し単位の割合が過度に少ないと樹脂の透明性が低下するので好ましくない。なお、脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、特に制限はなく、樹脂の使用目的に応じて適宜選択される。
【0023】
かかる脂環式構造を含有する重合体樹脂の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。これらのなかでも、樹脂の透明性の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系重合体又はその水素化物等が好ましく、ノルボルネン系重合体水素添加物がより好ましい。以下、それぞれの重合体について説明する。
【0024】
(1)ノルボルネン系重合体;
本発明において前記A成分として使用されるノルボルネン系重合体は、例えば、特開平3−14882号公報や特開平3−122137号公報等に開示されている公知の重合体であり、具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加型共重合体等が挙げられる。これらのなかでも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
【0025】
かかるノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン(慣用名“ノルボルネン”)、5−メチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5、5−ジメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン−5、6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5、6−ジ(ヒドロキシメチル)−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5、6−ジカルボキシ−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン−5、6−ジカルボン酸イミド、5−シクロペンチル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン等が挙げられる。
【0026】
さらに、5−フェニル−ビシクロ[2,2,1]−ヘプト−2−エン、トリシクロ[4,3,12,5,01,6]−デカ−3,7−ジエン(慣用名“ジシクロペンタジエン”)、トリシクロ[4,3,12,5,01,6]−デカ−3−エン、トリシクロ[4,4,12,5,01,6]−ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4,4,12,5,01,6]−ウンデカ−3,8−ジエン、トリシクロ[4,4,12,5,01,6]−ウンデカ−3−エン、テトラシクロ[7,4,110,13,01,9,02,7]−トリデカ−2,4,6−11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8,4,111,14,01,10,03,8]−テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセンともいう)、8−メチル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−メチル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシ−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−シクロペンチル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−テトラシクロ[4,4,12,5,17,10,0]−ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6,5,11,8,13,6,02,7,09,13]−ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7,4,13,6,110,13,01,9,02,7]−ペンタデカ−4,11−ジエン等も挙げられる。
【0027】
本発明では、これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0028】
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体は、上述のノルボルネン系モノマーを、開環重合体触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、a)ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系、あるいは、b)チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒系が用いられる。重合反応は、溶媒中又は無溶媒で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜4.9MPaの重合圧力で行われる。
【0029】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上述した開環重合体の重合溶液に、水素添加触媒を添加し、水素添加することにより得ることができる。この際使用される水素添加触媒は、特に限定されないが、通常、不均一系触媒や均一系触媒が用いられる。
【0030】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体又はノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体は、例えば、モノマー成分を、溶媒中又は無溶媒で、有機アルミニウム化合物とチタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物とからなる触媒系の存在下で、通常、−50℃〜100℃の重合温度、0〜4.9MPaの重合圧力で(共)重合させる方法により得ることができる。
【0031】
共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が用いられる。これらのなかでも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0032】
これらの共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の結合単位と共重合可能なその他のモノマー由来の結合単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0033】
(2)単環の環状オレフィン系重合体;
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、特開昭64−66216号公報に開示されているシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0034】
(3)環状共役ジエン系重合体;
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、特開平6−136057号公報や特開平7−258318号公報に開示されているシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素添加物等を用いることができる。
【0035】
(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体;
ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、特開昭51−59989号公報に開示されているビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物、特開昭63−43910号公報、特開昭64−1706号公報等に開示されているスチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物等を用いることができる。この場合、ビニル脂環式炭化水素系重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体及びその水素添加物であってもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体等でもよく、特に制限はない。
【0036】
上述した各種の脂環式構造含有重合体樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、本発明では、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、成形品の機械的強度と成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0037】
また、上述の脂環式構造含有重合体樹脂のTgは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常80℃以上、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは120℃〜200℃の範囲である。この範囲において、成形品の耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされるので好適である。
【0038】
<B成分について>
本発明の樹脂組成物を構成するB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量をする層状珪酸塩である。好適には、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上、特に60〜100%、が有機オニウムイオンにてイオン交換された層状珪酸塩である(以下、この層状珪酸塩を“有機化層状珪酸塩”と略称することがある)。
【0039】
B成分である層状珪酸塩は、SiO2連鎖からなるSiO4四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組み合わせからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)又は粘土鉱物(クレー)である。これらの珪酸塩(シリケート)又は粘土鉱物(クレー)は、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト及び膨潤性雲母等に代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が挙げられ、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これら層状珪酸塩は、天然品及び合成品のいずれも使用可能である。合成品は、例えば水熱合成、溶融合成、固体反応によって製造される。
【0040】
層状珪酸塩のなかでも、陽イオン交換容量等の点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度等の点からより好適である。さらに、良好な機械特性の樹脂組成物が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
【0041】
前記B成分である層状珪酸塩の陽イオン交換容量(陽イオン交換能ともいう)は、50〜200ミリ当量/100gであることが必要とされ、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、A成分である脂環式構造含有重合体樹脂への良好な分散性を実現するために、50ミリ当量/100g以上必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると、かかる樹脂組成物の熱安定性や耐熱性が低下して着色が生じやすくなる。
【0042】
この層状珪酸塩は、そのpHの値が7〜10であることが好ましい。pHの値が10より大きくなると、本発明の樹脂組成物の熱安定性や耐熱性が低下して着色しやすくなる傾向が現れてくる。
【0043】
B成分の層状珪酸塩としては、有機オニウムイオンが層状珪酸塩の層間にイオン交換されたもの(すなわち有機化珪酸塩)が好適である。ここで有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられる。オニウムイオンは1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましく、オニウムイオンとしてアンモニウムイオン及びホスホニウムイオンが好適である。
【0044】
該イオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。かかる有機基としては、アルキル基が代表的であるが、芳香族基を有するものでもよく、また、エーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン基等の各種官能基を含有するものでもよい。
【0045】
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムの如き同一のアルキル基を有する4級アンモニウム;トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム及びトリメチルイコサニルアンモニウムの如きトリメチルアルキルアンモニウム;トリメチルオクタデセニルアンモニウムの如きトリメチルアルケニルアンモニウム;トリメチルオクタデカジエニルアンモニウムの如きトリメチルアルカジエニルアンモニウム;トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム及びトリエチルオクタデシルアンモニウムの如きトリエチルアルキルアンモニウム;トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム及びトリブチルオクタデシルアンモニウムの如きトリブチルアルキルアンモニウム;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム及びジメチルジオクタデシルアンモニウムの如きジメチルジアルキルアンモニウム;ジメチルジオクタデセニルアンモニウムの如きジメチルジアルケニルアンモニウム;ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウムの如きジメチルジアルカジエニルアンモニウム;ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム及びジエチルジオクタデシルアンモニウムの如きジエチルジアルキルアンモニウム;ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム及びジブチルジオクタデシルアンモニウムの如きジブチルジアルキルアンモニウム;メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きメチルベンジルジアルキルアンモニウム;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きジベンジルジアルキルアンモニウム;トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム及びトリテトラデシルメチルアンモニウムの如きトリアルキルメチルアンモニウム;トリオクチルエチルアンモニウム及びトリドデシルエチルアンモニウムの如きトリアルキルエチルアンモニウム;トリオクチルブチルアンモニウム及びトリデシルブチルアンモニウムの如きトリアルキルブチルアンモニウム;トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム等が例示される。
【0046】
さらに、トリメチルフェニルアンモニウムの如き芳香族アミン由来の4級アンモニウム;メチルジエチル[PEG]アンモニウム及びメチルジエチル[PPG]の如きトリアルキル[PAG]アンモニウム;メチルジメチルビス[PEG]アンモニウムの如きジアルキルビス[PAG]アンモニウム;エチルトリス[PEG]アンモニウムの如きアルキルトリス[PAG]アンモニウム等が挙げられる。なお、ここで“PEG”はポリエチレングリコールを、“PPG”はポリプロピレングリコールを“PAG”はポリアルキレングリコールを意味する。ポリアルキレングリコールの分子量は100〜1,500が適当である。
【0047】
さらに、本発明では、前記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置換したホスホニウムイオンも好適に使用可能である。
【0048】
これらの有機オニウムイオンは、単独で使用してもよく2種以上組合せて使用してもよい。つまり、B成分の層状珪酸塩としては、これらの有機オニウムイオンの1種又は2種以上でイオン交換されたものが好適に使用される。これらの有機オニウムイオン化合物の分子量は100〜600であることが好ましい。より好ましい分子量は150〜500である。分子量が600より多いと、場合により樹脂組成物の耐熱性を損ない着色しやすくなる傾向が現れる。なお、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。
【0049】
有機オニウムイオンを形成している有機基は、炭素数6〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を少なくとも1個有しているのが好ましい。また、有機オニウムイオンを形成している有機基が、炭素数10以下のアルキル基でありかつそのアルキル基の少なくとも1つ、より好ましくは2つ又は3つが炭素数6〜10のアルキル基であるのが特に好ましい。また、有機オニウムイオン化合物構造中のアルキル基の少なくとも1つが炭素数6〜10であるアルキル基であることは、樹脂組成物の熱安定性や耐熱性が向上するので好ましい。
【0050】
本発明において、B成分として特に好適なものは、下記一般式(I)で示される有機オニウムイオンでイオン交換された層状珪酸塩である。
【0051】
【化3】
Figure 0004108458
【0052】
上記一般式(I)において、Mは窒素原子又はリン原子を示す。また、R1〜R4はそれぞれ有機基を示し、その少なくとも1つの基が炭素原子数6〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基が炭素原子数1〜5のアルキル基である。これらのR1〜R4は、前記の条件を満たす限り、その一部が互いに同一の基であってもよく、全部又は一部が相異なる基であってもよい。
【0053】
本発明のB成分において使用される有機オニウムイオンのさらに好適な態様は、上記一般式(I)において、Mは窒素原子又はリン原子であり、R1及びR2はそれぞれ炭素原子数6〜16のアルキル基、R3は炭素原子数1〜16のアルキル基、R4は炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。なお、R1とR2とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよく、また、R3とR4とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよい。
【0054】
上記一般式(I)で示される有機オニウムイオンのより好適な態様は、(i)前記R3が炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。より好しくは(ii)R3及びR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であって、かつR1及びR2がそれぞれ炭素原子数7〜14のアルキル基の場合である。さらに好ましくは(iii)R3及びR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基で、かつR1及びR2が炭素原子数7〜12、特に好ましくは炭素原子数8〜11、のアルキル基の場合である。なお、これらのうちでも、R3及びR4がともに炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基、さらに好ましくはメチル基である4級アンモニウムイオンが特に好適である。
【0055】
これら(i)〜(iii)のより好適な態様(さらに好ましい態様を含む)によれば、樹脂組成物の耐加水分解性が特に優れたものとなり、本発明の光拡散性樹脂組成物に良好な長期実用特性を与える。
【0056】
なお、上記一般式(I)においてR1〜R3はいずれも直鎖状及び分岐状のいずれも選択でき、さらにR4がブチル基の場合、直鎖状及び分岐状のいずれも選択可能である。
【0057】
かかる好適な有機オニウムイオンの例としては、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、ジブチルジデシルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム等の4級アンモニウムイオン、並びに、これらのアンモニウムイオンの窒素原子をリン原子に置き換えた4級ホスホニウムイオンが例示される。
【0058】
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオン化合物を添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作成することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を、層状珪酸塩のイオン交換容量の1当量に対し1.0〜1.5当量の割合で加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的である。しかし、このイオン交換容量に対する交換割合を一定の範囲に制御することも、樹脂の熱劣化を抑制する上で有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量に対する割合は、好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは40〜80%である。ここで、有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
【0059】
<C成分について>
本発明の樹脂組成物中に含まれることが好ましいC成分は、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基とを有する重合体である。かかるC成分の存在は、本発明の光拡散性樹脂組成物の熱安定性や耐熱性を向上させ(特に着色の点)かつ剛性も向上させる点で好ましい態様である。C成分のベースとなる重合体は、ポリオレフィン、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレート等のビニル系単量体からなる重合体が例示され、特にスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。かかる点からC成分としては、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体が特に好適である。ここでスチレン含有重合体とはスチレン等の芳香族ビニル化合物を重合した繰返し単位を重合体成分として含有する重合体を指す。
【0060】
C成分におけるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基の割合としては、0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することをいい、その値は水酸化カリウム等の逆滴定により算出することが可能である。
【0061】
カルボキシル基の誘導体からなる官能基としては、カルボキシル基の水酸基を(i)金属イオンで置換した金属塩(キレート塩を含む)、(ii)塩素原子で置換した酸塩化物、(iii)−ORで置換したエステル(Rは一価の炭化水素基)、(iv)−O(CO)Rで置換した酸無水物(Rは一価の炭化水素基)、(v)−NR2で置換したアミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)、(vi)2つのカルボキシル基の水酸基を=NRで置換したイミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)等、を挙げることができる。
【0062】
カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基(以下、単に“カルボキシル基類”と称する)を有する重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を取ることができる。例えば、(a)カルボキシル基類を有する単量体とベースポリマーを形成する単量体とを共重合する方法、及び(b)ベースポリマーに対してカルボキシル基類を有する化合物又は単量体を結合又は共重合する方法等を挙げることができる。
【0063】
前記(a)の共重合としては、ランダム共重合体の他に交互共重合体、ブロック共重合体、テーパード共重合体等の各種形態の共重合体が使用できる。また共重合の方法においても、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等のラジカル重合法の他、アニオンリビング重合法やグループトランスファー重合法等の各種重合方法をとることができる。さらに、一旦マクロモノマーを形成した後重合する方法も可能である。
【0064】
前記(b)の方法は、一般的にはベースポリマーに必要に応じて、パーオキサイドや2,3−ジメチル−2,3ジフェニルブタン(通称“ジクミル”)等のラジカル発生剤を加えて、高温化で反応又は共重合する方法を挙げることができる。かかる方法はスチレン含有重合体又は共重合体に熱的に反応活性点を生成し、かかる活性点に反応する化合物又は単量体を反応させるものである。反応に要する活性点を生成するその他の方法として、放射線や電子線の照射やメカノケミカル手法による外力の付与等の方法も挙げられる。さらに、ベースポリマー中に予め反応に要する活性点を生成する単量体を共重合しておく方法も挙げられる。反応のための活性点としては、不飽和結合、パーオキサイド結合、立体障害が高く熱的に安定なニトロオキシドラジカル等を挙げることができる。
【0065】
前記カルボキシル基類を有する化合物又は単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、グルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらのなかでも金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基及びカルボン酸無水物基を有する単量体、特に無水マレイン酸がより好適である。
【0066】
また、本発明の好適なC成分に使用されるスチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。
【0067】
さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
【0068】
本発明においてC成分として好適なものは、カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体である。かかる共重合体においては比較的多くのカルボキシル基類を安定してスチレン含有重合体中に含むことが可能となるためである。より好適な態様としてカルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合してなるスチレン含有共重合体を挙げることができ、殊に好適なものはスチレン−無水マレイン酸共重合体である。このスチレン−無水マレイン酸共重合体は、基体樹脂中に層状珪酸塩(B成分)を特に良好に微分散させる機能を発揮する。さらに、カルボン酸無水物基の作用により層状珪酸塩(殊に有機化層状珪酸塩)を含有する樹脂組成物において良好な熱安定性が実現する。また、かかる共重合体それ自体の熱安定性が良好であるため、脂環式構造含有重合体樹脂組成物の溶融加工に必要な高温条件に対しても高い安定性を示す。
【0069】
C成分として好適なカルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体、特にスチレン−無水マレイン酸共重合体の組成については、カルボキシル基類を有する単量体からの成分を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物成分99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)を含み、共重合可能な他の化合物成分を0〜29重量%を含むものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)の共重合体が特に好ましい。
【0070】
前記カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体、特にスチレン−無水マレイン酸共重合体、の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。なお、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0071】
<D成分について>
本発明のD成分は、無機微粒子及び高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤、すなわち光拡散能を有する微粒子である。また、かかるD成分の平均粒子径としては、好ましくは0.01〜50μmの範囲であり、より好ましくは0.1〜10μmの範囲、さらに好ましくは0.1〜8μmの範囲である。かかる平均粒子径は、レーザー光散乱法で求められる粒度の積算分布の50%(D50)で表されるものである。また、粒径の分布については狭いものが好ましく、平均粒径±2μmである粒子が全体の70重量%以上の範囲である分布を有するものがより好ましい。
【0072】
また、D成分の屈折率は、A成分の屈折率との差の絶対値が0.02〜0.2であることが好ましく、かかる範囲では光拡散性と光線透過率とを高いレベルで両立させることが可能となる。
【0073】
本発明のD成分(光拡散剤)として使用する無機微粒子の屈折率は、約1.4〜1.8の範囲であることが好ましい。かかる範囲は良好な光線透過性能と光拡散性能が両立される。なお、無機微粒子の屈折率は、各種の文献において既に広く知られており、簡便には液浸法等により測定が可能である。
【0074】
かかる無機微粒子からなる光拡散剤としては、ガラス充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト等が好適に例示され、特に好適なものとして炭酸カルシウムが例示される。無機微粒子の形状は特に限定されるものではないが、繊維状よりも粒状(不定形を含む)又は板状が好適である。例えば、ガラス充填材としては、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、極薄ガラスフレーク(ゾル−ゲル法により製造される)、不定形ガラス等が例示される。他の無機微粒子においても同様に各種の形状を取ることができる。さらに、前記無機微粒子は、シランカップリング剤やポリオルガノ水素シロキサン化合物等の各種シリコーン化合物、脂肪酸エステル化合物、オレフィン化合物等で表面処理されたものを使用することができる。かかる表面処理された無機微粒子は熱安定性や耐加水分解性の向上において効果的である。ただし、酸化チタンは、光拡散能が乏しいので本発明での使用には適さない。
【0075】
本発明においてはD成分として高分子微粒子を用いるのがより好適である。かかる高分子微粒子の使用は、光拡散機能においてその拡散効果と全光線透過率との両立がより高いレベルにおいて実現可能である。かかる高分子微粒子は、一般に、無機充填材に比べて樹脂組成物の剛性や寸法安定性を向上させる効果は小さいが、本発明の樹脂組成粗では他の成分との組合せによって、これらの目的が達成されるので、光拡散機能に優れた高分子微粒子が問題なく使用できる。
【0076】
D成分の高分子微粒子は、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。さらに高分子微粒子としては非架橋性モノマーと架橋性モノマーを重合して得られる有機架橋粒子を挙げることができる。非架橋性モノマーとしては、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等の非架橋性ビニル系モノマー及びオレフィン系モノマー等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。さらにかかるモノマー以外の他の共重合可能なモノマーを使用することもできる。他の有機架橋粒子としては、シリコーン系架橋粒子を挙げることができる。
【0077】
一方、ポリエーテルサルホン粒子等の非晶性耐熱ポリマーの粒子もD成分として使用し得る高分子微粒子の具体例として挙げることができる。かかるポリマーの粒子の場合には、A成分と加熱溶融混練した場合であっても微粒子の形態が損なわれることがないため、必ずしも架橋性モノマーを必要としない。さらに、高分子微粒子としては、各種のエポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子等も使用可能である。
【0078】
D成分として使用される高分子微粒子からなる光拡散剤のなかでも、有機架橋粒子が好適に使用できる。かかる有機架橋粒子において、前記非架橋性ビニル系モノマーとして使用されるアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート等を単独で又は混合して使用することが可能である。このなかでも特にメチルメタクリレートが特に好ましい。また、スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、エチルスチレン等のアルキルスチレン、ブロモ化スチレン等のハロゲン化スチレンを使用することができ、特にスチレンが好ましい。アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを使用することができる。また、オレフィン系モノマーとしては、エチレン、各種ノルボルネン型化合物等を使用することができる。さらに、他の共重合可能な他のモノマーとして、グリシジルメタクリレート、N−メチルマレイミド、無水マレイン酸等を例示することができ、結果としてN−メチルグルタルイミド等の単位を有することもできる。
【0079】
一方、かかる非架橋性ビニル系モノマーに対する架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
アクリル系モノマー等からなる有機架橋粒子の製造方法としては、一般的な乳化重合法の他、過硫酸カリウム等の開始剤を使用するソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等を挙げることができる。また、懸濁重合法においても、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法や、同様に連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μmの細径オリフィス又は多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法等も採用可能である。
【0081】
一方、シリコーン系架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものであり、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものと、メチルシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いものがあるが、本発明ではポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。かかるシリコーン系架橋粒子のケイ素原子に置換する有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルカン基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の他、カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、エーテル基等を使用することができる。
【0082】
かかるシリコーン系架橋粒子の製造法としては、3官能性のアルコキシシラン等を水中で加水分解と縮合反応によってシロキサン結合を成長させながら三次元架橋した粒子を形成させる方法が一般的であり、かかる粒子径は、触媒のアルカリ量や攪拌工程等により制御可能である。
【0083】
また、有機架橋粒子以外の高分子微粒子の製造方法としては、スプレードライ法、液中硬化法(凝固法)、相分離法(コアセルベーション法)、溶媒蒸発法、再沈殿法等の他、これらを行う際にノズル振動法等を組合せたものを挙げることができる。
【0084】
D成分の高分子微粒子の形態としては、単相重合体のほか、コア−シェル重合体の形態や、2種以上の成分が相互に絡み合った構造を有するIPN構造をとることも可能である。また、無機微粒子のコアとし有機架橋粒子の成分をシェルとする複合型粒子や有機架橋粒子をコアとしエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をシェルとする複合型粒子等も使用することもできる。
【0085】
これらの高分子微粒子の屈折率は、一般に、1.33〜1.7程度であり、これらは樹脂組成物に配合した状態において十分な光拡散機能を発揮する。
【0086】
<各成分の組成割合について>
次に、本発明の樹脂組成物における上述した各成分の組成割合について説明する。B成分の層状珪酸塩の組成割合は、A成分100重量部当り、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.5〜15重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部であり、特に好ましくは1〜8重量部である。樹脂組成物中におけるB成分の組成割合が前記下限より少ないときには、層状珪酸塩の配合効果が不十分となりやすく、従って成形品の高剛性を実現する上で不十分となる。B成分の組成割合が前記上限より多いときには、樹脂組成物の光拡散機能が低下する場合があり、また耐熱性や熱安定性の低下により色相が悪化して好ましくない場合がある。
【0087】
C成分のカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体の組成割合は、A成分100重量部当り、好ましくは0.1〜50重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部であり、さらに好ましくは1〜12重量部である。前記範囲においては層状珪酸塩(特に有機化層状珪酸塩)の良好な微分散及び熱安定性の向上が達成されるので、高剛性でかつ熱安定性においてより優れた光拡散性樹脂組成物が提供される。かかる熱安定性の向上は光拡散板の色相も良好にするという利点も発揮する。
【0088】
D成分の無機微粒子及び高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤の組成割合は、A成分100重量部当り、0.1〜30重量部であり、好ましくは0.3〜20重量部であり、さらに好ましくは0.5〜15重量部であり、特に好ましくは1〜10重量部である。かかるD成分の組成割合が前記範囲にある場合に好ましい光拡散機能が得られる。
【0089】
<必要により配合し得る付加的成分について>
本発明の樹脂組成物は、少なくとも、A成分である前記脂環式構造含有重合体樹脂、B成分である前記層状珪酸塩及びD成分である前記光拡散剤にて構成され、好ましくは、前記各成分にさらに前記C成分を加えた4成分で構成されるが、所望により、付加的成分として前記4成分以外の重合体やその他の添加剤を加えても差し支えない。
【0090】
かかる付加的成分となり得る他の添加剤としては、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物、イオウ系酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、染料、帯電防止剤、流動改質剤、無機又は有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤及び蛍光増白剤等が例示される。
【0091】
前記染料類としては、好ましい染料として、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等が例示される。さらにアンスラキノン系染料、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、チオキサントン系染料等に代表される各種の蛍光染料が例示される。また、蛍光増白剤としては、ビスベンゾオキサゾリル−スチルベン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−ナフタレン誘導体、ビスベンゾオキサゾリル−チオフェン誘導体及びクマリン誘導体等の蛍光増白剤が例示される。
【0092】
本発明の光拡散性樹脂組成物は、リン含有熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン含有熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル、並びにテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル等が例示される。かかるリン含有熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことがさらに好ましい。かかるリン含有熱安定剤の配合によりさらに熱安定性が向上し良好な成形加工特性を得ることができる。
【0093】
<樹脂組成物の調製について>
本発明の光拡散性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、前記各成分並びに任意に添加される付加的成分を予備混合し、その後、溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等を挙げることができる。予備混合においては、場合により押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、ペレタイザー等でペレット化する。溶融混練機としては、他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器等を使用することができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることによって強力なせん断力で層状珪酸塩が基体樹脂中に微分散させられる。
【0094】
さらに、本発明の光拡散性樹脂組成物の溶融混練機による溶融混練において、次の態様がより好適である。すなわち、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換能を有する層状珪酸塩(B成分)と、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体(C成分)とを予め溶融混練しておく。その後該溶融混練物をA成分の脂環式構造含有重合体樹脂並びにD成分の無機微粒子及び/又は高分子微粒子からなる光拡散剤と溶融混合する。D成分は必要に応じてサイドフィーダー等を用いて多軸押出機の途中から溶融した樹脂中に供給することもできる。かかる溶融混練方法は層状珪酸塩の微分散を達成し、さらに光拡散性樹脂組成物の剛性の向上が有利に実現されるため好ましい。
【0095】
もちろん他の混合方法によっても本発明の目的は達成される。例えば、A成分とD成分との樹脂組成物のペレットとB成分とC成分とを予め溶融混練したペレットとを成形加工機(例えば射出成形機)に同時に供給して成形加工機中において混合する製造方法も採用し得る。
【0096】
かくして、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体(C成分)100重量部に対し、50〜200ミリ当量/gの陽イオン交換容量を有しかつその陽イオン交換容量の少なくとも40%が有機オニウムイオンでイオン交換されている層状珪酸塩(B成分)1〜100重量部を配合してなる、光拡散剤を含有する脂環式構造含有重合体樹脂の物性強化のための樹脂添加剤が製造される。この樹脂添加剤において、C成分はスチレン−無水マレイン酸共重合体であることが好ましい。
【0097】
この樹脂添加剤は、脂環式構造含有重合体樹脂100重量部当り、無機微粒子及び高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤0.1〜30重量部を含有する樹脂組成物に配合するために有利に利用される。
【0098】
本発明に係る光拡散性樹脂組成物の有利な製造法として、より具体的には、例えば、(i)B成分とC成分とをベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法や、(ii)B成分とC成分とをベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部又は全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法等が挙げられる。これらのB成分とC成分とを予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。さらに前記(i)及び(ii)のいずれの場合においても、無機微粒子及び/又は高分子微粒子からなる光拡散剤は押出機のスクリュー根元部分から樹脂原料等と供給されることもでき、また押出機の途中の位置から供給されることもできる。
【0099】
また、本発明の光拡散性樹脂組成物は、通常、高度な光学的特性を要求される分野に使用されることが多いことから、かかる光学特性を阻害する異物の存在を極力少なくすることが好ましい。かかる好ましい樹脂組成物を得るためには、原料として異物量の少ないものを使用するとともに、押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すると共に、冷却バス用の冷却水についても異物量の少ないものを使用し、さらに原料の供給ホッパー、供給流路や、得られたペレットの貯蔵タンク等についてもより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることができる。
【0100】
<樹脂組成物及び成形品の特性について>
本発明に係る光拡散性樹脂組成物は、極めて特異な溶融粘度特性を有し、そのため該樹脂組成物は押出成形、ブロー成形及び薄肉成形品のための射出成形に極めて好適である。光拡散機能を有する成形品は、シート形状で使用される場合が多いことから、かかる本発明の樹脂組成物の有する特性は極めて好ましく、この樹脂組成物を用いることで良好な表面平滑性を有する光拡散性シート状成形品が提供される。かかる成形性の点においても本発明の樹脂組成物は、通常の無機充填材を使用した従来の光拡散性樹脂組成物に対して有利である。
【0101】
本発明の光拡散性樹脂組成物から形成された成形品は、良好な光拡散性を有するだけでなく、向上した剛性及び優れた表面外観(表面平滑性)を有し、さらに良好な熱安定性を有する。この樹脂組成物からの光拡散性成形品は、実用上問題のない幅広い成形加工条件の下で製造され、かつ良好な剛性及び良好な表面外観を有する。
【0102】
より具体的には、本発明によれば、その表面のJIS B0601に準拠して測定された算術平均粗さRaの値が0.1μm以下、かつASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率の値が本発明の樹脂組成物を構成するA成分のみより形成された成形品の値の少なくとも1.2倍以上に向上した表面平滑性の良好な成形品を提供することができる。
【0103】
この成形品の算術表面粗さRaの値は、より好ましくは0.08μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以下である。Raの下限は成形を行う金型によるところが大きいが、約0.001μm程度が適切である。また、曲げ弾性率の値は、好ましい態様では樹脂組成物を構成するA成分のみより形成された成形品の曲げ弾性率の値に比べて1.3以上、さらに好ましい態様では1.4〜2.8倍に向上する。かくして本発明の光拡散性樹脂組成物からの成形品の曲げ弾性率の値は、好ましい態様では2,800MPa以上となり、より好ましい態様では3,000MPa以上となる。
【0104】
本発明の光拡散性樹脂組成物から形成された成形品は、良好な光拡散性を有するだけでなく、向上した剛性及び優れた表面外観(表面平滑性)を有し、さらに良好な熱安定性を有する。この樹脂組成物からの光拡散性成形品は、実用上問題のない幅広い成形加工条件の下で製造され、かつ良好な剛性及び良好な表面外観を有する。
【0105】
本発明に係る光拡散性樹脂組成物は、通常、前記の如く製造されたペレットを射出成形することにより、光拡散機能が求められる各種の製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。成形はコールドランナー方式及びホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0106】
また、本発明の光拡散性樹脂組成物は、押出成形により光拡散機能を有する各種異形押出成形品、シート、フィルム等の形で使用することもできる。シート、フィルム等の成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明の光拡散性樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により中空成形品とすることも可能である。
【0107】
<光拡散板について>
本発明に係る樹脂組成物は面積の大きな光拡散板用に適しており、好適な用途として表面積500〜50,000cm2である光拡散板が挙げられる。光拡散版の好ましい表面積は1,000〜25,000cm2であり、好ましい厚みは0.3〜3mmである。
【0108】
本発明によれば、前記の光拡散性樹脂組成物からなり、かかる面積を有し、寸法安定性が高く、また薄肉であっても十分な形状保持性を有し、その結果として軽量な光拡散板が提供される。
【0109】
本発明によれば、さらに好適な態様として、前記光拡散性樹脂組成物からなり、面積500〜50,000cm2(より好適には1,000〜25,000cm2)の表示装置用光拡散板が提供される。表示装置用光拡散板としては、液晶表示装置等バックライトモジュールに使用される光拡散板及びプロジェクターテレビ等投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板が例示される。バックライトモジュールは各種の光源が使用でき冷陰極管やLEDが使用される。
【0110】
上述の本発明の光拡散性樹脂組成物からなる光拡散板は、その表面がフレネルレンズ形状やシリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有するものであってもよく、またかかる形状を別途他の材料によって積層した積層板とすることも可能である。本発明の樹脂組成物は、直接フレネルレンズ形状やシリンドリカルレンズ形状を付与する場合、射出成形、圧縮成形、押出成形等の成形方法により所望の形状に成形することができる。具体的に、射出成形、圧縮成形、押出成形により表面にフレネルレンズのための凹凸を形成する方法としては、(1)金型キャビティ表面や転写ロール表面にかかるフレネルレンズ形状等に対応する凹凸が設けられ、かかる凹凸が樹脂成形品表面に転写される方法、(2)フレネルレンズ形状等に対応する凹凸が設けられた別材料が金型キャビティ内にインサートされるか又は押出時に積層され、樹脂成形品と一体化された後、かかる別材料が除去されて樹脂成形品表面に凹凸が設けられる方法、等が例示される。
【0111】
また、場合によっては、かかるスクリーンは光輝性顔料を含む層を積層することにより、その表面凹凸によるレンズを省略することも可能である。さらに、本発明に係る表示装置用光拡散板は、その光源側(観察者とは反対の面)に光源からの光の反射を防止するため各種の光反射防止膜を形成することができる。
【0112】
<他の用途について>
さらに、本発明に係る光拡散性樹脂組成物は、上述した光拡散板のほかにも、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器及び雑貨等の各種用途に有用である。表示装置用の光拡散板以外の用途としては、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住宅用屋根材及び太陽電池カバー等が例示される。
【0113】
本発明の光拡散性樹脂組成物からなる成形品は、表面改質を施すことによりさらに他の機能を付与することが可能である。ここでいう「表面改質」とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等の手段で樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させることを言い、通常の樹脂成形品に用いられる表面改質方法が適用できる。成形品の表面に金属層又は金属酸化物層を積層する方法としては、例えば、物理蒸着法、化学蒸着法、溶射法及びメッキ法が挙げられる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング及びイオンプレーティングが例示され、化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法及び光CVD法等が例示される。また、溶射法としては、大気圧プラズマ溶射法及び減圧プラズマ溶射法等が例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキ及び電気メッキ法等が挙げられ、電気メッキ法においてはレーザーメッキ法を用いることができる。
【0114】
前記方法のなかでも蒸着法及びメッキ法が本発明の樹脂組成物からなる成形品の金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。蒸着法及びメッキ法はこれらを組合せて使用することも可能であり、例えば、蒸着法で形成された金属層を利用し電気メッキを行う方法等も採用することができる。
【0115】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、樹脂組成物及び成形品の評価は下記(1)〜(6)の方法により行った。また、例中において単に“部”とあるは、特に断らない限り、重量部を意味する。
(1)曲げ弾性率
長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mmの試験片を成形し、温度23℃及び相対湿度50%RHの雰囲気下においてASTM−D790に準拠の方法により曲げ弾性率(MPa)を測定した。
(2)線膨張係数及び線膨張異方性
板状成形品(成形品寸法:長さ150mm×幅150mm×厚み3mm)を110℃で3時間アニール処理した後、かかる成形品のほぼ中央部から線膨張係数測定用試験片(試験片寸法:長さ5mm×幅5mm×厚み3mm)を切り出した。かかる試験片を用いた以外はJIS K 7197に準拠して線膨張係数を測定した。測定は30℃〜110℃まで行い、そのうち40℃と80℃との間の寸法変化率を線膨張係数とした。なお、測定は「TAインスツルメント2940型」熱機械分析装置(TAインスツルメント製)を使用し、ゲートに対して流れ方向と直角方向の2方向の測定を実施した。この値が小さいほど寸法安定性が良好であると言える。
【0116】
上述のように測定した線膨張係数より次式に基づき線膨張係数の異方性(線膨張異方性)を算出し評価した。かかる値が0に近いほど異方性の低い材料であると言える。
(線膨張異方性)=(直角方向の線膨張係数)−(流れ方向の線膨張係数)
(3)分散度
光拡散評価用板状試験片(成形品寸法:長さ150mm×幅150mm×厚み1.5mm)を用い、日本電色工業(株)製の分散度測定計を使用して、その分散度を測定した。ここで「分散度」とは光線を試験片の上方から垂直に(試験片の法線と平行に)試験片面に当てた際、かかる入射光線方向(法線方向:角度γ=0°)の透過光量を100としたとき、透過光量が50になるときの該透過光の方向と法線とのなす角度をいう。かかる角度が大きいほど光が幅広い角度に散乱し光拡散機能が優れることを示す。
(4)全光線透過率
上記(3)と同じ板状試験片を用いて、村上色彩技術研究所(株)製のヘーズメーターHR−100を使用して、その厚み方向の透過率をASTM−D1003に従い測定した。
(5)拡散光の均一性
上記光拡散評価用板状試験片の下側に冷陰極管から構成されたバックライトユニットを置き、上側から観察される光の均一性について観察した。均一性が良好であるものを○、均一性の低いものを×として評価した。
(6)成形品の算術平均粗さ(Ra)
上記光拡散評価用板状試験片の算術平均粗さ(Ra)を、JIS B0601-1994に準拠して、表面粗さ形状測定機((株)東京精密製:サーフコム1400A)を用いて測定した。この値が小さいほど成形品の表面平滑性が優れていることを示す。
【0117】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
脂環構造を有する樹脂(A成分)として日本ゼオン(株)製「ゼオネックスE48R」(表1中では“CPO”と表示)を用い、B成分として下記の方法で製造したジメチルジ−n−デシルアンモニウムクロライドでほぼ完全にイオン交換された有機化合成フッ素雲母(合成フッ素雲母の陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)(表1中では“B−1”と表示)を用いた。
【0118】
(B成分“B−1”の製法)
合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製「ソマシフ ME−100」)約100部を精秤してこれを室温の水(イオン交換水)10,000部に撹拌分散し、ここに有機オニウムイオンのクロライド(ジメチルジ−n−デシルアンモニウムクロライド)を合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して1.2倍当量を添加して6時間撹拌した。生成した沈降性の固体を濾別し、次いで30,000部のイオン交換水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を各3回行った。得られた固体は5日の風乾後乳鉢で粉砕し、さらに50℃の温風乾燥を10時間行い、再度乳鉢で最大粒径が100μm程度となるまで粉砕した。かかる温風乾燥により窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が3重量%とし、B−1を得た。
【0119】
一方、C成分としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:「DYLARK 332−80」、無水マレイン酸量約15重量%)(表1中では“C−1”と表示)を使用した。また、D成分としては、下記のD−1、D−2、D−3、D−4のいずれかの微粒子を使用した。
【0120】
・D−1:ビーズ状架橋アクリル粒子(積水化成品工業(株)製:「MBX−5」、平均粒径:5μm)
・D−2:ビーズ状架橋シリコーン粒子(東芝シリコーン(株)製:「トスパール120」、平均粒径:2μm)
・D−3:ビーズ状ガラス中空粒子(東芝バロティーニ(株)製:「HSC−110」、平均粒径:10μm)
・D−4:炭酸カルシウム粒子(シプロ化成(株)製「シプロンA」、平均粒子径10μm)
さらに、一部の例で付加的に添加した成分は、下記のとおりである。
・PSR:クマリン系蛍光増白剤(ハッコールケミカル(株)製:「ハッコールPSR−B」)
・GF:(日本電気硝子(株)製:「ECS−03T−511」、繊維径13μm、カット長3mm)
一部の例においては、これらの各成分を、表1記載の配合割合でポリエチレン袋中に量り入れ、この袋を上下方向及び左右方向に十分に回転させることにより、各成分を均一にドライブレンドした。前記のドライブレンドされた混合物から押出機を用いて溶融混練しペレットを製造した。押出機としてスクリュー直径30mのベント付2軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30XSST」;完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を用いた。排出量は20,000g/hrに設定した。押出温度は全ての区間を250℃とし、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaで押出しを行った。この方法を表1中で“方法1”と表示する。
【0121】
一方、他の例においては、B成分とC成分とを前記と同様の装置を用いて一旦ペレット化(シリンダー温度200℃)した後に、このペレットとA成分等の他の成分とを混合する方法によって、同様の条件によりペレットを製造した。この方法を表1中で“方法2”と表示する。
【0122】
それぞれ、得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)「SG−150U」)を用いて、所定の試験片を作成した。成形条件はシリンダ温度260℃、金型温度80℃、射速30mm/秒、及び保圧50MPa前後とした。これらについての評価結果を表1に示す。
【0123】
なお、表1中の組成物中における各層状珪酸塩の無機分の割合は、B成分中に占める無機分の割合と、B成分の配合量から換算して、表1に記載した。
【0124】
【表1】
Figure 0004108458
【0125】
表1から明らかなように、本発明の脂環式構造含有重合体樹脂組成物(実施例1〜4)はいずれも、剛性、寸法安定性、光拡散性能、表面平滑性のすべてにおいて満足できるが、本発明で特定したB成分又はD成分を欠く脂環式構造含有重合体樹脂組成物(比較例1〜3)は、光拡散性能、剛性、表面平滑性のうち少なくとも1つの特性に劣り、光拡散性成形品としての実用的がないことが確認された。
【0126】
〔実施例5〕
さらに、前記実施例1の樹脂組成物を用いて、光拡散板として成形品寸法:長さ450mm×幅450mm×厚み1.5mmの板状成形品を作成した。このときの成形は次のように行った。すなわち、成形機として型締め力12700kNの日本製鋼所製「J1300E−C5−I5A」射出成形機(型圧縮可能なように油圧回路及び制御システムを変更した仕様)を使用した。ゲートは長さ(幅)が同一(450mm)かつ厚みが同一(よって最終厚みは1.5mm)であり、また、流動方向の長さが50mmのファンゲートであり、そのゲート中央部の端にホットランナー口を有するものであった。この成形機により前記の板状成形品を射出プレス成形法により成形した。このときのホットランナー部分の温度はシリンダー温度に対して20℃高い温度とした。
【0127】
成形は型圧縮法で行い、樹脂の射出容量はキャビティ容量拡大がない場合とほぼ同じとした。すなわち、拡大されたキャビティに溶融樹脂が完全に充填されない状態で型圧縮法による射出ブレス成形を行った。成形条件は、シリンダ温度:260℃、金型温度は100℃、射出速度:50mm/sec、プレスストローク(キャビティ容量拡大のための金型後退幅):4mm、プレス速度(キャビティ容量減少のための金型前進速度):5mm/sec、オーバーラップ時間(キャビティ容量減少(圧縮)開始から射出工程が終了するまでの時間):0.6sec、冷却時間:30secとした。また、ランナーはモールドマスターズ社製のホットランナー(直径3mmφ)を用い、充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて型圧縮により溶融樹脂がゲートからシリンダーへ逆流しない条件とした。成形サイクルは約60秒であった。なお、成形品の両側面に対応する金型キャビティには、電気ヒーターを配して、金型表面の温度を一時的に150℃以上とする制御を行って成形した。
【0128】
該光拡散板を所定の大きさに切り出し、21インチ型のバックライト型表示装置の光拡散板(面積約1,300cm2)としての特性を確認し、その有効性が確認された。
【0129】
【発明の効果】
本発明に係る光拡散性樹脂組成物は、従来にない高剛性、寸法安定性及び表面平滑性に優れ、かつ良好な光拡散性を有する樹脂組成物であり、特に大型で高い寸法安定性の要求される光拡散板用途において好適である。かかる特性は、表示装置用の光拡散板以外の用途としても、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住宅用屋根材、太陽電池カバー等の各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器並びに雑貨等の幅広い分野において有用であり、本発明の産業的価値は極めて高いということができる。

Claims (10)

  1. (A)脂環式構造含有重合体樹脂(A成分)100重量部当り、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつその陽イオン交換基の少なくとも40%が有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩(B成分)0.1〜20重量部、(C)スチレン−無水マレイン酸共重合体(C成分)0.1〜50重量部並びに(D)無機微粒子及び高分子微粒子から選択される少なくとも1種の光拡散剤(D成分)0.1〜30重量部を含むことを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
  2. 前記A成分は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂である請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
  3. 前記B成分における有機オニウムイオンを形成している有機基は、炭素数6〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基の少なくとも1つを含有する有機基であることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散性樹脂組成物。
  4. 前記B成分における有機オニウムイオンを形成している有機基は、炭素数10以下のアルキル基であり、かつその少なくとも1つは炭素数6〜10のアルキル基であることを特徴とする請求項に記載の光拡散性樹脂組成物。
  5. 前記B成分における有機オニウムイオンは下記一般式(I)で示す有機オニウムイオンでイオン交換したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の光拡散性樹脂組成物。
    Figure 0004108458
    〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子又はリン原子を表わす。また、R〜Rは互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
  6. 前記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、R及びRがそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項に記載の光拡散性樹脂組成物。
  7. 前記D成分は、平均粒子径50μm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物。
  8. 前記D成分は、高分子微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物。
  9. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光拡散性樹脂組成物より形成された面積500〜50,000cmの板状成形品であることを特徴とする光拡散板。
  10. 前記光拡散板は、表示装置用であることを特徴とする請求項に記載の光拡散板。
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