JP2006045251A - フッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体 - Google Patents

フッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 低誘電率、低吸水性、高耐熱性、耐熱分解性、耐薬品性、および無色透明性な光学特性を兼ね備えたフッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】 フッ化アルキル基を含有する化合物で変性された、フッ素含有脂環式構造重合体、好ましくは厚みが1mmである板状成形体における黄色度YI値が10以下であるフッ素含有脂環式構造重合体および製造方法並びに該重合を含有してなる組成物および成形体の提供。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体に関する。さらに詳細には光学特性、耐熱性、耐熱分解性、電気特性、耐薬品性などに優れたフッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体に関する。
従来、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系透明樹脂は、自動車部品、照明機器、電気部品などの通常の透明性が要求される成形品の材料として用いられていた。最近においては、光学的性質が重視される光学材料としての応用が進みつつあり、高機能化が求められている。そこで、この用途に好適に用いられる透明樹脂として、ノルボルネン系重合体に代表される脂環式構造重合体が用いられるようになってきている。
例えば、特許文献1においては、ノルボルネン誘導体をメタセシス開環重合して得られるノルボルネン系重合体の水素添加物が優れた光学特性、耐熱性、機械的強度を兼ね備えていることが記載されている。しかしながら、これらの樹脂は、耐薬品性、電気特性(低誘電率)などの点で用途に限界がある。
そこで、脂環式構造重合体の耐薬品性等を改良する方法として、フッ素含有脂環式構造重合体が開発されている。例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、フッ素含有ノルボルネン誘導体よりなる単量体をメタセシス開環重合させて得られるフッ素含有ノルボルネン系重合体およびそれらの水素添加物が開示されている。これらの樹脂は、耐薬品性、電気特性などの点で改善されている。しかし、一方でフッ素含有ノルボルネン誘導体よりなる単量体を開環重合させて得られる脂環式構造重合体は、無色透明性が低下する傾向にあり、これは、光学材料に使用するには決定的な欠点となってしまう。
特開平1−240517号公報 特開平2−004722号公報 特開平6−199997号公報 特開平6−206985号公報 特開平6−256477号公報
本発明は、前記従来技術の課題を背景になされたもので、低誘電率、低吸水性、高耐熱性、耐熱分解性、耐薬品性、および光学特性を兼ね備えたフッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体を提供することを目的とする。
本発明は、フッ化アルキル基を含有する化合物で変性された、フッ素含有脂環式構造重合体を提供するものである。
好ましくは厚さが1mmである板状成形体における黄色度YI値が10以下である前記フッ素含有脂環式構造重合体を提供するものである。
また、本発明は、脂環式構造重合体をフッ化アルキル基を含有する化合物で変性処理することを特徴とする前記フッ素含有脂環式構造重合体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記フッ素含有脂環式構造重合体を含有してなることを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、前記フッ素含有脂環式構造重合体と、機能性化合物とを含有してなる樹脂組成物を提供するものである。
さらに本発明は、前記フッ素含有脂環式構造重合体又は前記樹脂組成物を含有してなる成形体を提供するものである。
本発明により、低誘電率、低吸水性、高耐熱性、耐熱分解性に加え耐薬品性、および良好な光学特性を兼ね備えた脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体を提供することができる。
本発明のフッ素含有脂環式構造重合体の製造においては、変性処理前の脂環式構造重合体として、脂環式構造含有重合体を構成する単量体を重合したもの、好ましくはこれを水素化処理したものを用いる。そして、この変性処理前の脂環式構造重合体を、フッ化アルキル基を含有する化合物で変性することにより本発明のフッ素含有脂環式構造重合体を得る。このようにして得られるフッ素含有脂環式構造重合体は、従来のフッ素含有モノマーを重合して得られるフッ素含有脂環式構造重合体と比較して、低誘電率、低吸水性、高耐熱性、耐熱分解性、耐薬品性が優れているだけでなく、無色透明性が高く光学材料として最適な重合体である。黄色度YI値が10以下と小さいフッ素含有脂環式構造重合体は、特に光学材料として最適な重合体である。なお、本発明の脂環式構造重合体に用いられるモノマーはハロゲン原子を含まないモノマーを用いることが好ましい。
(変性前の脂環式構造重合体)
まず、フッ化アルキル基を含有する化合物で変性される前の脂環式構造重合体について説明する。変性前の脂環式構造重合体は、通常の方法により製造された脂環式構造重合体であればよい。脂環式構造重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体である。中でも、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を有するものが好ましい。
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度及び耐熱性などの観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素数は特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。脂環式構造重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が上記範囲にあると、得られる成形体の透明性及び耐熱性が高くなる。
脂環式構造重合体の例としては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの重合体の水素化物などが挙げられる。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能な単量体との開環共重合体、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能な単量体との付加共重合体、および、これらの(共)重合体(単独重合体および共重合体の両者を表す場合(共)重合体と記載することがある。)の水素化物を挙げることができる。
前記ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を一つまたは複数有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体等を挙げることができる。これらは一種単独でまたは二種以上併せて用いることができる。
前記置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルホニル基、フェニル基、ビフェニル基、ホルミル基、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基等を挙げることができ、前記ノルボルネン系単量体は、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
これら置換基を有するノルボルネン系単量体としては、8-メチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、8−シアノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ジエチルアミノテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−N,N’−ジメチルアミノカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、N−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−カルボキシイミド、8−フェニルスルホニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ベンゾイルオキシ−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボキシアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−カルボン酸無水物等を挙げることができる。これらノルボルネン系単量体は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記ノルボルネン系単量体と開環共重合可能な単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の炭素数4〜20、好ましくは4〜10の単環の環状オレフィン単量体または環状ジオレフィン単量体を例示することができる。ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を開環重合触媒の存在下に溶媒中または無溶媒で、通常、-50℃〜100℃の重合温度、0.01〜5MPaの重合圧力で重合することにより得ることができる。
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と硫酸塩またはアセチルアセトン化合物、および還元剤とからなる触媒、あるいはチタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒などが挙げられる。
重合反応用溶媒は生成する重合体を溶解し、かつ重合反応を阻害しない溶媒であれば限定なく使用されうる。例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、などの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素系炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル類、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ケトン類又はエステル類が好ましい。溶媒の量は、重合反応液中の単量体濃度が、1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%になる範囲で適宜調整される。
前記ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、炭素数4〜20のモノ環状オレフィン又は環状共役ジエン、1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン及びそれらの誘導体などの炭素数5〜20の非共役ジエン、ビニルシクロヘキセンなどのビニルシクロアルケン、ビニルシクロヘキサンなどのビニルシクロアルカンなどのビニル脂環式炭化水素化合物、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン及びこれらの誘導体などの炭素数2〜20のエチレンまたはα-オレフィンなどが挙げられる。これら単量体の中でも、α-オレフィン、特にエチレンが好ましい。これらの単量体は1種単独で、又は2種以上を併せて用いることができる。
前記ノルボルネン系単量体の付加重合体およびノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を付加重合触媒の存在下に溶媒中で-50℃〜100℃の重合温度、0.01〜5MPaの重合圧力で重合することにより得ることができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどの金属の化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒などを用いることができる。重合反応用溶媒は、上記の開環重合と同様の溶媒が使用される。
前記単環の環状オレフィン系重合体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を挙げることができる。前記環状共役ジエン系重合体としては、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系単量体の1,2-または1,4-付加重合体およびその水素化物を挙げることができる。また、前記ビニル脂環式炭化水素重合体としては、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体およびその水素化物、スチレン、α-メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系単量体を重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体およびその水素化物、ビニル芳香族炭化水素系単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体の芳香環の水素化物等を挙げることができる。
本発明においては、使用する変性前の脂環式構造重合体として得られる樹脂の機械的強度の観点から、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体の水素化物が好ましく、ノルボルネン系重合体がより好ましい。これらノルボルネン系重合体およびビニル脂環式炭化水素重合体の水素化物を得るには、重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、通常、-10〜+250℃、好ましくは0〜200℃の反応系に水素を、通常、0.01〜10MPa、好ましくは0.05〜8MPaの圧力で導入して、通常、0.1〜50時間反応させて、炭素-炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素化させる。この他にも公知の脂環式構造重合体の水素化方法を用いることが出来る。例えば特開2002−179775号公報の(0036)項〜(0045)項に記載された脂環式構造重合体の水素化工程が利用できる。水素化により、優れた耐熱性及び機械的強度を有する重合体を与えることができる。
本発明においては、変性前の脂環式構造重合体の重量平均分子量(Mw)は500〜500,000、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜100,000の範囲である。脂環式構造重合体の重量平均分子量(Mw)がこの範囲である時に、機械的強度や成形加工性が高度にバランスされ好適である。なお、前記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。また、変性前の脂環式構造重合体の分子量分布は、上記条件のGPCにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である時に、機械的強度が高く好適である。
本発明においては、変性前の脂環式構造重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常80℃以上、好ましくは130〜250℃である。前記Tgがこの範囲にあることにより、重合体は高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることなく、優れた耐久性を発現することができる。前記Tgは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
本発明においては、変性前の脂環式構造重合体はハロゲン原子を含まないことが好ましい。ハロゲン原子を含む脂環式構造重合体を用いた場合、水素化工程においてハロゲンラジカルが発生し、脂環式構造重合体が着色するため好ましくない。
(脂環式構造重合体の変性)
つぎに、脂環式構造重合体の変性について説明する。まず、フッ化アルキル基(Rf基と略記することがある。)について説明する。フッ化アルキル基は、一般にはアルキル基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基であるが、炭素−炭素結合の間にエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含んでいてもよい。フッ化アルキル基の炭素数は2〜20が好ましく、特に4〜16が好ましい。炭素数が前記範囲にあると、変性前の脂環式構造重合体との相溶性が良好に保たれ、目的とする化合物を高収率で得ることができる。またRf基は、直鎖構造でも分岐構造でもよい。またRf基は、フッ素原子以外の他のハロゲン原子を含んでいてもよい。他のハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。さらに、Rf基中の炭素−炭素結合間には、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入されていてもよい。Rf基の末端部分の構造としては、−CFCF、−CF(CF、−CFH、−CFH、−CFCl等が挙げられ、−CFCFが好ましい。また、Rf基としては、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基であるペルフルオロアルキル基(以下RF基と記す。)が好ましい。さらにRF基は、直鎖構造のRF基、すなわちF(CF−(iは2〜20の整数。)で表される基が好ましく、特にiが4〜16の整数である基が好ましい。
Rf基の具体例としては、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1225、−C1429、−C1633、−(CFH、−(CFCl(tは2〜20の整数)、−(CFC(CFF(jは1〜17の整数)、−C(CF)=C(CF(CF等が挙げられる。なお上記の例においては、同一分子式を有する構造の異なる基である構造異性の基を含む。
Rf基が、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子が挿入された基である場合の具体例としては、F(CFOCF(CF)−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CFCF−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−、F[CF(CF)CFO]CFCF−、F(CFCFCFO)CFCF−、F(CFCFO)CFCF−、C17SON(CH)−、C17SON(C)−などが挙げられる。ただし、rは1〜5の整数、zは1〜6の整数、wは1〜9の整数である。
(変性処理の方法)
本発明の脂環式構造重合体の変性処理方法は、通常の脂環式構造重合体の変性方法を用いればよく、特に限定は無い。例えば、ハロゲン原子を含まないノルボルネン誘導体の開環重合体等の脂環式構造重合体を、水素化処理し、その後パーフルオロアルキル基等のフッ化アルキル基を有する化合物を用いて変性する方法がある。なお、以下の脂環式構造重合体の変性処理方法の説明においては、脂環式構造重合体には水素化処理した脂環式構造重合体をも含むものとする。
変性前の脂環式構造重合体をフッ化アルキル基を含有する化合物で変性処理して本発明のフッ素含有脂環式構造重合体を得る方法としては、以下(1)〜(4)の4つを挙げることができる。
(1)フッ化アルキル基含有オレフィン化合物を上述の変性前の脂環式構造重合体にグラフト化することにより、フッ素含有脂環式構造重合体を得る方法
本方法は、2重結合を有するフッ化アルキル等のフッ素含有オレフィン化合物を上述の脂環式構造重合体にグラフト化することにより、フッ化アルキル基を導入する方法である。この方法の態様としては、(a)脂環式構造重合体を加熱溶融し、これにフッ化アルキル基含有モノマー等の変性用モノマーを添加して変性する方法、または(b)脂環式構造重合体を溶媒に溶解させてから変性モノマーを添加して変性する方法が挙げられる。
フッ化アルキル基含有オレフィン化合物としては、フッ素含有ビニル化合物、フッ素含有ビニルエーテル、フッ素含有アリルエーテル、フッ素含有ビニルエステル、フッ素含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。フッ素含有ビニル化合物としては、式1で表される化合物が挙げられる。
CX=CXRf ・・・式1
式1中、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。Rfとしては、前述したRfであり、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、RF基がさらに好ましい。
式1で表される化合物の具体例としては、ヘキサフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,2−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブテン等が挙げられる。
フッ素含有ビニルエーテル化合物としては、式2で表される化合物が挙げられる。
C(X=CX−O−Rf ・・・式2
式2中、X、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。Rfとしては、前述したRfであり、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、前述のRF基がさらに好ましい。
式2で表される化合物の具体例としては、1,1,1−トリフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、2,2−ジフルオロエチルビニルエーテル、テトラフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニルビニルエーテル等が挙げられる。
フッ素含有アリルエーテル化合物としては、式3で表される化合物が挙げられる。
C(X=CX−(C(X−O−Rf) ・・・式3
式3中、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。Rfとしては、前述したRfであり、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、前述のRF基がさらに好ましい。
式3で表される化合物の具体例としては、1,1,1−トリフルオロエチルアリルエーテル、パーフルオロエチルアリルエーテル、2,2−ジフルオロエチルアリルエーテル、テトラフルオロエチルアリルエーテル、パーフルオロエチルアリルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアリルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアリルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロノニルアリルエーテル等が挙げられる。
フッ素含有ビニルエステル化合物としては、式4で表される化合物が挙げられる。
CXCX=CX−(−O−CO−Rf) ・・・式4
式4中、X、X及びXはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子を表す。Rfとしては、前述したRfであり、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、前述のRF基がさらに好ましい。式4で表される化合物の具体例としては、トリフルオロ酢酸ビニル、パーフルオロ酢酸ビニル等が挙げられる。
フッ素含有(メタ)アクリレート化合物としては、式5で表される化合物が挙げられる。
CH=CRCOO−Rf ・・・式5
式5中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rfとしては、前述したRfであり、エーテル性酸素原子またはチオエーテル性硫黄原子を含まないRf基が好ましく、前述のRF基がさらに好ましい。
式5で表される化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、N−プロピル−N−(β−メタクリロキシエチル)パーフルオロオクタンスロホンアミド等が挙げられる。
本方法においては、フッ化アルキル基含有オレフィン化合物を効率よく反応させるためには、ラジカル開始剤の存在下に反応を実施することが好ましい。ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物が挙げられる。有機過酸化物としては、ジイソブチリルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5,トリメチルヘキサノエートなどのパーオキシエステル類;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレエートなどのパーオキシケタール類;ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキサイド類;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヘイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル及びジメチルアゾイソブチレートを挙げることができる。これらの中でも、変性時における変性効率の観点から、ラジカル開始剤として、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類がさらに好ましい。
これらのラジカル開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ラジカル開始剤の使用量は、変性前の脂環式構造重合体とラジカル開始剤との組み合わせ等により適宜選ばれる。ラジカル開始剤は、変性前の脂環式構造重合体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜2.5重量部の範囲で用いられる。変性反応は反応温度0〜400℃、好ましくは60〜350℃で、反応時間1分〜24時間、好ましくは30分〜10時間の範囲で行う。
変性反応に用いる溶媒としては脂環式構造重合体を溶解できるものであれば格別制限はなく、例えば、トルエン、キシレン、t−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、などのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソールなどのエーテル類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、などのエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、などのニトリル化合物;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素類や脂環式炭化水素類が特に好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合せて用いることができる。
(2)脂環式構造重合体を不飽和基と官能基とを有する化合物を用いて変性し、その後該官能基とフッ素含有化合物とを反応させることによりフッ素含有脂環式構造重合体を得る方法
本方法は、不飽和エポキシ、不飽和カルボン酸などのような官能基(A)を有するオレフィン系化合物を用いて脂環式構造重合体を上記(1)の反応と同様に変性し、その後変性した脂環式構造重合体に導入された官能基(A)と反応しやすい官能基(B)を有するフッ化アルキル基含有化合物とを反応させることによりフッ素含有脂環式構造重合体を得る方法である。
脂環式構造重合体に導入可能な官能基としては、WO01/83576記載の官能基を挙げることができる。これら官能基(A)を有する不飽和化合物を用いて脂環式構造重合体を変性した後、官能基(A)と化学反応可能な官能基(B)及びフッ化アルキル基を有するフッ化アルキル基含有化合物を用いて官能基(A)、官能基(B)の化学反応を利用することにより、フッ素含有脂環式構造重合体を得ることができる。その際、官能基(A)及び官能基(B)の構造は官能基(A)及び官能基(B)が化学反応する系であれば特に限定は無い。官能基(A)としては変性のし易さの点で、エポキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、カルボキシル基またはカルボニルオキシカルボニル基が好ましく、エポキシ基、カルボキシル基またはカルボニルオキシカルボニル基が特に好ましい。
官能基(A)としてエポキシ基を有する不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和グリシジルエステル類;アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、o−アリルフェノールのグリシジルエーテル、m−アリルフェノールのグリシジルエーテル、p−アリルフェノールのグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル類;2−(o−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)プロピレンオキシド、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、アリル−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、不飽和グリシジルエステル類、不飽和グリシジルエーテル類が好ましく、アリルグリシジルエーテル類が特に好ましい。
官能基(A)としてエポキシ基を用いる場合、官能基(B)は官能基(A)のエポキシ基と化学反応可能な官能基であれば特に限定はないが、中でも反応性の観点からカルボキシル基またはアミノ基であることが好ましい。カルボキシル基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、CHFCFCOOH、H(CFCOOH、CF(CFCOOH、CF(CFCOOH、CF(CFCHCOOH、CF(CFCHCOOH、CF(CF16COOH、CF(CF(CHO(CHCOOH、CF(CF(CHO(CHCOOH、CF(CFSON(CH)(CHO(CHCOOH、CFO(CFCFO)CFCOOH、CF(CFO(CFOCFCOOH、CFC(CFCFCF(CF)CFCOOH、(CFCF(CFCF(CF)CFCOOH、CCOOH、CCOOH、((CFCF)C=C(CF)OCCOOH等が挙げられる。アミノ基を有するフッ化アルキル基含有化合物化合物としては、1級アミン、2級アミンが好ましく、これらの具体的な例としては、CFCHNH、CF(CHNH、CHFCHNH、CFCFCHNH、(CFCFNH、CFHNH、CNH、CCHNH、CFCHNH、((CFCF)C=C(CF)OCNH、(CFC=C(C)OCNH等が挙げられる。
官能基(A)としてカルボキシル基またはカルボニルオキシカルボニル基を有する不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体を使用することができる。前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)を挙げることができる。前記不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド及び不飽和カルボン酸のエステル化合物などを挙げることができる。このような誘導体の具体的な例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどを挙げることができる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、さらに、マレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が特に好ましい。
官能基(A)としてカルボキシル基を用いる場合、官能基(B)は、官能基(A)のカルボキシル基と化学反応可能な官能基であれば特に限定はないが、中でも。官能基(B)としてエポキシ基、ビニルエーテル基、アミノ基またはヒドロキシル基であることことが好ましい。
エポキシ基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、例えば、下記式6〜9で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006045251
ビニルエーテル基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、CFCHOCH=CH、CHCFOCH=CH、CFCFOCH=CH、CFCFOCF=CF、CH(CFCH=CH、CF(CFOCF=CF、CH(CFOCH=CH等が挙げられる。
アミノ基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、先に例示した化合物を挙げることができる。
ヒドロキシル基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、CF(CFCHOH、CF(CFCHOH、CF(CF(CHOH、CF(CF(CHOH、CF(CF(CHOH、CF(CF(CHOH、CF(CF11(CHOH、H(CF(CHOH、H(CF(CHOH、H(CF(CHOH、H(CF10(CHOH、H(CF12(CHOH、(CFCF(CF(CHOH、(CFCF(CF(CHOH、(CFCF(CF)(CHOH、(CFCOH、CFO(CFOCFCHOH、CF(CFO(CFO(CFOCFCHOH、CCHOH、CHCHOH、CCHOH、C(CHOH、CF(CFSON(C)CHCH2OH、((CFCF)C=C(CF)OC(CHOH等が挙げられる。
官能基(A)としてカルボニルオキシカルボキシル基を用いる場合、官能基(B)は官能基(A)のカルボニルオキシカルボキシル基と化学反応可能な官能基であれば特に限定はない。官能基(B)としてアミノ基またはヒドロキシル基を用いることが好ましい。アミノ基、ヒドロキシル基を有するフッ化アルキル基含有化合物としては、先に例示したフッ化アルキル基含有化合物を挙げることができる。
この二段階変性に用いることができる他の変性手法を、式10、式11に示す反応式により例示する。なお、下式中Rはアルキル基を、Rfは前述のフッ化アルキル基を表す。
(a)エステル基変性脂環式構造重合体のフッ化アルキル化
Figure 2006045251
該手法は脂環式構造重合体にエステル基を有する化合物を用いて変性し、エステル基変性脂環式構造重合体を得る。次いで、該重合体をヒドロキシル基を有するフッ化アルキル基含有化合物を用いてアルコール交換反応を行うことによりフッ素含有脂環式構造重合体を得る手法である。
(b)水酸基変性脂環式構造重合体のフッ化アルキル化
Figure 2006045251
該手法は脂環式構造重合体にヒドロキシル基を有する化合物を用いて変性し、ヒドロキシル基変性脂環式構造重合体を得る。次いで、該重合体をビニルエーテル基を有するフッ化アルキル基含有化合物を用いて付加反応を行うことによりフッ素含有脂環式構造重合体を得る手法である。
以上の二段階反応の、前段部分のオレフィン系化合物による脂環式構造重合体の変性については、前記(1)の変性方法と同様の反応条件で行えばよい。後段部分の変性反応は、一般的な有機反応を利用するため、反応温度は特に限定はなく、常法に従って行うことができる。反応温度は通常−10〜400℃、好ましくは10〜200℃で、反応時間は通常1分〜48時間、好ましくは30分〜24時間の範囲である。
また、溶媒としては前段部分で使用した溶媒と同じ溶媒を用いることができる。
(3)官能基(A)を有する脂環式構造重合体原料モノマーを重合し、得られた脂環式構造重合体中の官能基(A)と官能基(B)を有するフッ化アルキル基含有化合物とを反応させることによりフッ素含有脂環式構造重合体を作成する方法
この方法では上記(2)で述べた二段階反応と同様の各種反応形式を利用することができる。すなわち、上記(2)で述べたと同様の官能基(A)を有する脂環式構造重合体原料の単量体、例えばエポキシ基含有ノルボルネン系単量体を重合体の繰り返し単位中に少なくとも1分子導入された脂環式構造重合体と、エポキシ基と反応可能な官能基(B)及びフッ化アルキル基を有するフッ化アルキル基含有化合物とを反応させることにより、フッ素含有脂環式構造重合体を得ることができる。その際、官能基(A)及び官能基(B)の構造は官能基(A)及び官能基(B)が化学反応する系であれば特に限定は無い。脂環式構造重合体の変性のし易さからは、官能基(A)はエポキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、カルボキシル基またはカルボニルオキシカルボニル基が好ましく、エポキシ基、カルボキシル基またはカルボニルオキシカルボニル基が特に好ましい。官能基(B)についても、上記(2)で述べた二段反応と同様の官能基を官能基(A)に対応して用いればよい。
この場合の変性反応は、上記(2)の後段の反応と同様一般的な有機反応を利用するため、反応温度は特に限定はなく、常法に従って行うことができる。反応温度は通常−10〜400℃、好ましくは10〜200℃で、反応時間は通常1分〜48時間、好ましくは30分〜24時間の範囲である。また、溶媒も上記(2)の後段の反応と同様の溶媒を用いることができる。
(4)芳香環含有脂環式構造重合体をフッ化アルキル基含有過酸化物を用いて芳香環部にフッ化アルキル基を導入することによりフッ素含有脂環式構造重合体を得る方法
本方法は、式12に示すような変性反応によりフッ素含有脂環式構造重合体を作成するものである。例えば、芳香環含有ノルボルネン系樹脂をパーフルオロアルキル基含有過酸化物(過酸化フルオロアルカロイル)を用いて芳香環部にパーフルオロアルキル基を導入することが出来る。なお、式中[ ][ ]はそれぞれのモノマーの共重合体であることを表している。モノマーの比率、繰り返しの規則性については特に限定はない。芳香環含有脂環式構造モノマーのみの重合体でもよい。Rfは前述のRfと同じフッ化アルキル基である。
Figure 2006045251
芳香環含有脂環式構造重合体の製造法は、特に限定はなく例えば特開平10−152523号公報に記載の製造法を用いればよい。
過酸化フルオロアルカロイルとしては、式13で表される化合物が挙げられる。
Rf−CO−O−O−CO−Rf ・・・式13
式13におけるRf及びRfは炭素数1〜25のフルオロアルキル基またはフルオロアルコキシアルキル基(オキシフルオロアルキレン基およびフルオロアルキル基を含有する基)である。Rf及びRfは直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは−(CFF (m=1〜15の整数)で示されるパーフルオロアルキル基、またはCF(CF)O(CFCF(CF)O) (n=0〜6の整数)で示されるパーフルオロアルコキシアルキル基を挙げることができる。Rfの具体例としては、−CF、−C、−C、−C13および−C15等−C2q+1(q=1〜10)で表されるフルオロアルキル基、−CF(CF)OC、−CF(CF)(OCFCF(CF))OC、および−CF(CF)(OCFCF(CF))OC等で表されるフルオロアルコキシアルキル基等が挙げられる。
式13で表される過酸化フルオロアルカノイルの具体例としては、過酸化ジペルフルオロブチリル、過酸化ジペルフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキサノイル、過酸化ジペルフルオロ−2,5−ジメチル−3,6−ジオキサヘキサノイル等が挙げられる。
過酸化フルオロアルカノイルと芳香環含有脂環式構造重合体とを反応させる際の反応温度は−20〜+150℃、好ましくは0〜100℃の範囲であり、反応時間は30分〜20時間、好ましくは1〜10時間の範囲である。該変性では過酸化フルオロアルカノイルの取扱い及び反応をより円滑に行うために溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、芳香環含有脂環式構造重合体を溶解できるものであれば格別制限は無く、先に例示した炭化水素系の溶媒及びハロゲン化脂肪族溶媒を用いることができる。ハロゲン化脂肪族溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、2−クロロ−1,2−ジブロモ−1,1,2−トリフルオロエタン、1,2−ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2−ジブロモテトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロテトラクロロエタン、1,2−ジフルオロテトラクロロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ−2,3,3−トリクロロブタン、1,1,1,3−テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1−トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,3−ジクロロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパン等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組合せて用いることができる。
本発明においては、変性によってフッ素含有脂環式構造重合体を生成した後、反応溶媒を除去することによりフッ素含有脂環式構造重合体を回収することができる。重合体の反応後の溶液中から溶媒などの揮発性成分を除去して重合体を回収する方法としては、該溶液をスチームと接触させて溶媒を蒸発除去させた後に乾燥するスチーム凝固法、該反応溶液を多量の貧溶媒中に注いで重合体を析出させた後、重合体中に残留する溶媒を乾燥除去する再沈法、反応溶液を加熱、減圧などして溶媒を徐々に除去していく直接乾燥法などの手法を用いることができる。
(フッ素含有脂環式構造重合体の変性率等の測定)
このようにして作成したフッ素含有脂環式構造重合体の変性率とその測定法につき説明する。本発明のフッ素含有脂環式構造重合体の変性率X(Xが1であれば100mol%変性を意味する。)は、13C−NMR測定に基づき式14より算出される。
X=(A×D)/(B×C) ・・・式14
ここで、Aは、13C−NMRチャートにおける変性部分由来の炭素ピーク面積の総和、Bはフッ素含有脂環式構造重合体の脂環式構造重合体由来の炭素ピーク面積の総和である。Cは、変性部分1原子団が持っている炭素の数で、例えば、アクリル酸トリフルオロエチルでは5である。Dは、脂環式構造重合体の構成単量体1単位が持っている炭素の数で、例えば、エチルテトラシクロドデセンを開環重合して水素化した重合体の場合は14である。共重合体の場合は、各構成単量体につき加重平均として算出する。変性率は特に制限は無く、使用目的に応じて適宜調整できる。通常、変性率は重合体中の総モノマー単位数を基準として1〜100mol%であり、好ましくは10〜100mol%である。変性率が過度に低いとフッ素含有脂環式構造重合体は耐熱性等の物性の改善効果が小さくなる。
本発明のフッ素含有脂環式構造重合体中のフッ素含有量は公知の方法で測定することができる。例えば、炭酸カリウムカプセル分解法、ピロヒドリシス燃焼法、酸素燃焼フラスコ法を用いてフッ素含有脂環式構造重合体を処理し、その後、イオンクロマト法によりフッ素含有量を測定する方法などで求めることができる。また、フッ素含有脂環式構造重合体中のフッ化アルキル基はIR測定において、1240cm−1付近の吸収の有無でフッ化アルキル基を同定することができる。フッ素含有脂環式構造重合体のフッ素含有量は5重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。フッ素含有脂環式構造重合体のフッ素含有量が上記範囲にある時に、機械的強度や耐熱性が高度にバランスされ好適である。
本発明のフッ素含有脂環式構造重合体のガラス転移温度(Tg)は、通常80℃以上、好ましくは130〜250℃である。前記Tgがこの範囲にあることにより、重合体は高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることなく、優れた耐久性を発現することができる。前記Tgは、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
本発明のフッ素含有脂環式構造重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で500〜500,000、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜100,000の範囲である。フッ素含有脂環式構造重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲である時に、機械的強度や成形加工性が高度にバランスされ好適である。また、フッ素含有脂環式構造重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常4以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である時に、機械的強度が高く好適である。前記分子量および分子量分布はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本発明のフッ素含有脂環式構造重合体においては、黄色度YI値は小さいことが好ましい。具体的には、本発明のフッ素含有脂環式構造重合体を厚さが1mmの板状成形体に成形したときの黄色度YI値は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。前記黄色度YI値が上記範囲を外れた場合、成形体が着色し、光学材料として好適に使用することが限定される。前記黄色度YI値は、JIS Z8722に準拠して、分光式色差計を用いて測定することができる。
(フッ素含有脂環式構造重合体を含む樹脂組成物)
フッ素含有脂環式構造重合体は、他の樹脂やその他の配合剤と混合して樹脂組成物を製造することが出来る。フッ素含有脂環式構造重合体の配合割合は特に制限はない。このような樹脂組成物とすることにより、フッ素含有脂環式構造重合体にはない、他の樹脂等の持つ新しい機能を付与できる。他の樹脂と混合する場合、相溶性の観点から他の樹脂としては脂環式構造重合体が好ましい。
その他の配合剤としては、格別限定はないが、機能性化合物が好ましい。機能性化合物としては無機化合物の微粒子、有機金属化合物、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。機能性化合物はフッ素含有脂環式構造重合体にそれぞれの機能性化合物の目的とする機能を付与することができる。
無機化合物の微粒子としては、金属酸化物からなる無機微粒子及び層状結晶化合物が挙げられる。金属酸化物からなる無機微粒子として具体的には、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Pd、Ag、Sn、Pt及びAuよりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属の酸化物からなる無機微粒子を好適例として挙げることができる。さらに好ましい金属酸化物からなる無機微粒子としては、Al、TiO、SnO、ZnO等からなる無機微粒子を挙げることができる。
層状結晶化合物は、原子または原子団が平面的に配列したシート構造を、その垂直方向に繰り返す構造の結晶構造を有する化合物である。層状結晶化合物は、結晶層が相互にファンデルワールス力または水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。層状結晶化合物の具体例としては、グラファイト;TiS、NbSe、MoS等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO、V等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等の金属オキシハロゲン化物;Zn(OH)、Cu(OH)等の金属水酸化物;Zr(HPO・nHO、Ti(HPO・nHO、Na(UOPO・nHO等のリン酸塩;NaTi、KTiNbO、RbxMnXTi-XO等のチタン酸塩;Na、K等のウラン酸塩;KV、K14、CaV16・nHO、Na(UO)・nHO等のバナジン酸塩;KNb、KNb17等のニオブ酸塩;Na13、Ag1013等のタングステン酸塩;MgMo、CsMo16、CsMo22、AgMo1033等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ハロイサイト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、HSiO、HSi1429O等の珪酸塩または該珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることができる。これらの中でも、成形体の耐熱性、機械的強度の観点から、珪酸塩、リン酸塩およびモリブデン酸塩が好ましく、珪酸塩がより好ましい。
本発明における無機化合物の微粒子の大きさとしては、1nm〜100μm、好ましくは1nm〜10μm、さらに好ましくは1nm〜1μmである。無機化合物の微粒子の大きさが上記範囲にあることにより、熱変形、応力集中等を生じることなく、優れた耐久性を発現する組成物を得ることができる。
また、これら無機化合物の微粒子は分散性を高めるために分散剤を含んでも良い。分散剤としては、特に限定されないが、脂肪酸界面活性剤、カップリング剤および極性基含有脂環構造化合物などが挙げられる。脂肪酸の例としては、ステアリン酸などの炭素数4〜30の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの炭素数4〜30の不飽和脂肪酸が挙げられる。界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;N-ラウリルエタノールアミン、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル等のノニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル、イミダゾリンスルホン酸等の両性界面活性剤;フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;(メタ)アクリル酸系界面活性剤;等が挙げられる。
カップリング剤の例としては、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシラン系カップリング剤;トリイソステアロイルイソプロピルチタネート、ジ(ジオクチルホスフェート)ジイソプロピルチタネート等のチタネート系カップリング剤;モノイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレートモノオレイルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート等のアルミナート系カップリング剤;等が挙げられる。
前記有機金属化合物としては、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Pd、Ag、Sn、Pt及びAuよりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属のアルコキシド、前記金属のアセチルアセトナート等を挙げることができる。前記有機金属化合物の中でも、前記金属のアルコキシドが好ましく、特にチタンアルコキシドが好ましく、例えばチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドが好ましい。
これら機能性化合物の添加量は特に限定は無く、使用目的に応じて適宜調整することができるが、1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。機能性化合物の添加量がこの範囲にあることにより、機械的強度や成型加工性が高度にバランスされ好適である。
本発明のフッ素含有脂環式構造含有重合体を含有してなる樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されることはなく、例えば、(i)フッ素含有脂環式構造含有重合体及び機能性化合物を、ブラベンダー、押出機、ロール等を用いて溶融混合する方法、(ii)フッ素含有脂環式構造含有重合体及び機能性化合物を溶液中でブレンドし溶媒を除去する方法、(iii)フッ素含有脂環式構造含有重合体及び機能性化合物を溶液中でブレンドし溶媒を除去した後、または溶媒を除去しながら押出機等でさらに混練する方法等を挙げることができる。中でも、機能性化合物の分散性の向上を図ることのできる前記(iii)の方法が好ましい。
(成形体)
上述の方法により得られたフッ素含有脂環式構造重合体および樹脂組成物からは成形体が製造できる。成形体の成形方法としては、特に制限はなく、例えば溶液流延法、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等が挙げられる。本発明で得られた成形体は種々の用途に使用できる。例えば、(1)防風ガラスおよび窓ガラス等の日用品、(2)自動車ランプ、眼鏡およびゴーグル等に使用されるレンズ、(3)カメラ部品、各種計器・機器等のハウジングおよび容器等の工業部品、(4)カメラ、VTR、複写機、OHP、プロジェクションおよびプリンター等に使用される撮像系または投影系のレンズもしくはミラーレンズ等、(5)光磁気ディスク、色素系ディスク、音楽用コンパクトディスク、画像音楽同時録再型ディスクおよびメモリディスク等の情報ディスク材料、(6)反射防止フィルム、液晶表示素子基板、拡散板、導光板および前方散乱板等の情報記録・情報表示分野、ならびに光ファイバー、光導波フィルムおよびコネクター等の情報転送部品、(7)受光素子用カバーおよびプリズム等をはじめとする種々の光学部品などを挙げることができる。
以下に製造例、実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下において、部及び%は、特に断わりのない限り重量基準である。なお、試験法は下記による。
(1)重量平均分子量
テトラヒドロフランを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して、ポリスチレン換算で求める。
(2)フッ素含有脂環式構造重合体中のフッ素含有量
酸素燃焼フラスコ法を用いてフッ素含有脂環式構造重合体を処理し、その後、イオンクロマト法によりフッ素含有量を測定する。
(3)フッ素含有脂環式構造重合体の変性率
13C−NMRを用いて変性部分由来の炭素ピークの総和とフッ素含有脂環式構造重合体の脂環式構造重合体由来の炭素ピークの総和を測定し、下式を用いて変性率Xを算出する。
X=(A×D)/(B×C)
ここで、Aは、13C−NMRチャートにおける変性部分由来の炭素ピーク面積の総和、Bはフッ素含有脂環式構造重合体の脂環式構造重合体由来の炭素ピーク面積の総和である。Cは、変性部分1原子団が持っている炭素の数で、例えば、アクリル酸トリフルオロエチルでは5である。Dは、脂環式構造重合体の構成単量体1単位が持っている炭素の数で、例えば、エチルテトラシクロドデセンを開環重合して水素化した重合体の場合は14である。共重合体の場合は、各構成単量体につき加重平均として算出する。変性率Xが1であれば、100mol%変性を意味する。
(4)ヘーズ値
フッ素含有脂環式構造重合体又はフッ素含有脂環式構造重合体を含む組成物を220℃で熱プレスを行うことにより、厚さ1mmの板状成形体を作成し、この成形体のヘーズ値を、JIS K7136に準拠して、濁度計(日本電色工業社製、「NDH2000」)を用いて測定する。
(5)黄色度YI値
フッ素含有脂環式構造重合体又はフッ素含有脂環式構造重合体を含む組成物を220℃で熱プレスを行うことにより、厚さ1mmの板状成形体を作成し、この成形体の黄色度YI値を、JIS Z8722に準拠して、分光式色差計(日本電色工業社製、「SE2000」)を用いて測定する。
(6)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、1分間に10℃の割合で昇温して測定する。
(製造例)(有機化処理サポナイトの製造)
層状結晶化合物であるサポナイト(長平均値:0.05μm)100部を60℃の蒸留水1000部に均一に分散させ、サポナイト分散液を得た。次いで、前記サポナイト分散液を攪拌しながら、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド20部を蒸留水300部に溶解させた溶液をゆっくり添加し、60℃で3時間攪拌を続けた後、ろ過により固形物を取り出した。得られた固形物を60℃の蒸留水500部に加えて再分散させた後、再度ろ過により固形物を取り出した。再分散及びろ過の操作を3回繰り返した後、凍結乾燥法により水分を除去して、有機化処理サポナイトを得た。
(実施例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(以下「ETCD」と略記する)100部と、六塩化タングステン0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部及びイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させることにより開環重合体を含有する反応溶液を得た。さらに得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧した後、攪拌しながら温度200℃まで加温し、4時間反応させることにより、ETCD開環共重合体水素化物を20wt%含有する反応溶液を得た。ろ過により水素化触媒を除去した後、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて温度270℃、圧力1kPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン、及び他の揮発成分を除去しつつ水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してETCD開環共重合体水素化物ペレットを回収した。得られたETCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は40,000、水素化率は99.9%、ガラス転移温度は138℃であった。
次いで、先に得たETCD開環重合体水素化物100部に対して、無水マレイン酸20部、ジクミルパーオキシド3部及びtert−ブチルベンゼン230部を混合し、オートクレーブ中にて135℃、6時間反応を行った後、多量のアセトン中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を100℃、1Torr以下で48時間乾燥させ、無水マレイン酸変性重合体109部を得た。得られた無水マレイン酸変性脂環式構造重合体の重量平均分子量は65,000、ガラス転移温度は135℃、13C−NMRで測定したところ無水マレイン酸変性量は16mol%であった。
次に、脱水したテトラヒドロフラン500部に、先に得た無水マレイン酸変性脂環式構造重合体100部、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール40部及びトリエチルアミン2部を室温で反応器に入れ、3日間攪拌した。IRにより1780cm−1付近に観察される樹脂中の無水マレイン酸基由来のピークが完全に消失したことを確認した後、多量のアセトン中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間乾燥させ、フッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(1)128部を得た。得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(1)の重量平均分子量は80,000、フッ素含有量は16.0%であった。また、IR測定において、フッ化アルキル基含有脂環式構造重合体1は1240cm−1付近にパーフルオロアルキル基由来のピークが観察された。
次いで、得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(1)を220℃で熱プレスすることにより厚さ1mmの板状成形体を作製した。得られた板状成形体のヘーズ値及び黄色度YI値を測定したところ、ヘーズ値が2.6%、黄色度YI値は2.9であり、良好な光学特性を示すことが確認された。また、得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(1)のガラス転移温度を測定したところ165℃であり、フッ化アルキル基を導入することによりガラス転移温度が向上することが確認された。
(実施例2)
実施例1で得たETCD開環重合体水素化物100部に対して、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート15部、ジクミルパーオキシド3部及びtert−ブチルベンゼン1000部を混合し、オートクレーブ中にて135℃、6時間反応を行った後、多量のアセトン中に加えることにより樹脂を析出させ、ろ過することにより樹脂を回収した。回収した樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間乾燥させることによりフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)105部を得た。得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)の重量平均分子量は60,000、フッ素含有量は8.0%であった。また、IR測定において、フッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)は1240cm−1付近にパーフルオロアルキル基由来のピークが観察された。
次いで、得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)を220℃で熱プレスすることにより厚さ1mmの板状成形体を作製した。得られた板状成形体のヘーズ値及び黄色度YI値を測定したところ、ヘーズ値は2.3%、黄色度YI値は3.0でであり、良好な光学特性を示すことが確認された。また、得られたフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)のガラス転移温度を測定したところ155℃であり、フッ化アルキル基を導入することによりガラス転移温度が向上することが確認された。
(実施例3)
実施例1で得たETCD開環重合体水素化物50部及び実施例2で得たフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(2)50部を2軸混練機(東芝機械製、TEM−35B、スクリュー経37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィールドレート10kg/時間)を用いて混合し、樹脂組成物をストランド状に押出し、水冷してペレタイザーで切断しペレット化することにより、フッ化アルキル基含有脂環式構造重合体を含む組成物(1)を得た。得られた組成物(1)のフッ素含有量を測定したところ、フッ素含有量は3.6%であった。
次いで、得られた組成物(1)を220℃で熱プレスすることにより厚さ1mmの板状成形体を作製した。得られた板状成形体のヘーズ値及び黄色度YI値を測定したところ、ヘーズ値は2、黄色度YI値は2.2であり、良好な光学特性を示すことが確認された。また、得られた組成物(1)のガラス転移温度を測定したところ148℃であり、フッ化アルキル基含有脂環式構造重合体を含む組成物は組成物中のフッ素含有量が少ないにも関わらず、ガラス転移温度が向上することが確認された。
(実施例4)
製造例で得た有機化処理サポナイト5部をトルエン400部に分散させた溶液に、実施例1で得たフッ化アルキル基含有脂環式構造重合体(1)15部及び実施例1で得たETCD開環重合体水素化物80部を完全に溶解し、この混合溶液を高速旋回分散機(特殊機化工業社製:フィルミックスFM80−50型)を用いて先端速度20m/secの速度で分散処理した。
次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて温度270℃、圧力1kPa以下で、溶媒であるトルエンを除去しつつ水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを回収することにより、無機粒子を有する組成物(2)を得た。得られた組成物(2)のフッ素含有量を測定したところ、フッ素含有量は2.9wt%であった。
次いで、得られた組成物2を220℃で熱プレスすることにより厚さ1mmの板状成形体を作製した。得られた板状成形体のヘーズ値及び黄色度YI値を測定したところ、ヘーズ値は2.1、黄色度YI値は2.4であり、無機化合物を含む組成物であっても良好な光学特性を示すことが確認された。
(比較例1)
攪拌機、温度計を備えたオートクレーブに、ヘキサフルオロプロペン20部、ジシクロペンタジエン17部を加え、180℃で6時間反応させた。反応終了後、オートクレーブ内を冷却した後に開放し、得られた反応混合物を水200部中に注いで、有機層と水層とを分離させた。その後、この有機層を分液し、エバポレータにて低沸点成分を除去した後、精密減圧蒸留を行うことにより、純度99.9%の8,9,9−トリフルオロ−8−トリフルオロメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「FMTCD」と略記する)14部を得た。H−NMRを用いてFMTCDの構造を確認した。
窒素雰囲気下、脱水したテトラヒドロフラン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、80℃に保持しながら、先に得たFMTCD300部、および六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部を、10時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、FMTCD開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。得られたFMTCD重合体のフッ素含有量を測定したところ、フッ素含有量は40.0%であった。
次いで、得られたFMTCD重合体を220℃で熱プレスすることにより厚さ1mmの板状成形体を作製した。得られた板状成形体のヘーズ値及び黄色度YI値を測定したところ、ヘーズ値は2.1と透明性に優れていたが、黄色度YI値は29.5であり、成形体の黄変が顕著に見られ、光学材料としては好適に用いることができないことが確認された。
本発明で得られたフッ素含有脂環式構造重合体は、対応する脂環式構造重合体を変性反応を用いてフッ化アルキル基を導入するため、無色透明性に優れる成形体を得ることができる。それに対して、比較例ではフッ化アルキル基を有するモノマーを用いてフッ素含有脂環式構造重合体を得るため、製造工程においてフッ素ラジカルが発生し、成形体の黄変が顕著に見られる。
本発明により、低誘電率、低吸水性、高耐熱性、耐熱分解性、耐薬品性、および無色透明性な光学特性を兼ね備えたフッ素含有脂環式構造重合体およびその製造方法、並びに該重合体を含有してなる組成物および成形体を提供することができ、光学材料としての脂環式構造重合体の用途を拡大する事が出来る。

Claims (6)

  1. フッ化アルキル基を含有する化合物で変性された、フッ素含有脂環式構造重合体。
  2. 厚さが1mmである板状成形体における黄色度YI値が10以下である請求項1に記載のフッ素含有脂環式構造重合体。
  3. 脂環式構造重合体を、フッ化アルキル基を含有する化合物で変性処理することを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素含有脂環式構造重合体の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載のフッ素含有脂環式構造重合体を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
  5. 請求項1あるいは2に記載のフッ素含有脂環式構造重合体と、機能性化合物とを含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
  6. 請求項1あるいは2に記載のフッ素含有脂環式構造重合体、又は請求項4あるいは5に記載の樹脂組成物を含有してなることを特徴とする成形体。
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