JP2005349568A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧電アクチュエータの個別電極に接続された配線部の配線スペースを十分に確保することが可能なインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】 圧電アクチュエータ3は、複数の圧力室14に夫々対応する複数の個別電極32、及び、これら複数の個別電極32に対向する共通電極34と、複数の個別電極32と共通電極34との間に挟まれた圧電層33と、複数の個別電極32に夫々接続され、これら複数の個別電極32に夫々駆動電圧を供給する為の複数の配線部35とを有し、圧力室14が配置された平面に直交する方向から見て、複数の配線部35のうちの少なくとも一部が、接続された個別電極32に対応する圧力室14以外の他の圧力室14と重なる領域に配置されており、さらに、配線部35と前記他の圧力室14とが重なる領域の圧電層33は、共通電極34と直接接触していない。
【選択図】 図2

Description

本発明は、記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェットヘッドに関する。
記録媒体にインクを吐出して記録するインクジェットヘッドとして、ノズルに連通した複数の圧力室を備えた流路ユニットと、複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備えたものがある。また、この圧電アクチュエータとしては、複数の圧力室に夫々対応する複数の個別電極と、これら複数の個別電極に対向する共通電極(振動板)と、個別電極と共通電極とに挟まれた圧電層と、複数の個別電極に夫々接続され、個別電極に駆動電圧を供給する為の複数の配線部を有するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。ここで、複数の配線部は、複数の圧力室が形成された平面に直交する方向から見て、接続される個別電極に対応する圧力室以外の他の圧力室に重ならないように、複数の圧力室の間の領域に配置されている。このような圧電アクチュエータにおいて、配線部を介して複数の個別電極に選択的に駆動電圧が供給されたときには、個別電極と共通電極との間の圧電層に電界が作用して圧電層が変形し、この圧電層の変形に伴って、駆動電圧が供給された個別電極に対応する圧力室の容積が変化して圧力室内のインクに圧力が印加される。
特開2003−159798号公報(図3) 特許第3267937号公報(図6)
ところで、近年、印刷画質の向上及びインクジェットヘッドの小型化の両方の要求を満足させるために、複数の圧力室をより高密度に配置する試みがなされている。しかし、前記特許文献1,2に記載されたような、個別電極から延びる配線部が複数の圧力室の間の領域に配置された圧電アクチュエータにおいて、圧力室を高密度に配置しようとすると、必然的に配線部を配置するための配線スペースが少なくなり、配線部のピッチを狭くせざるを得なくなる。そして、このように複数の配線部の配線ピッチが狭くなると、製造コストの上昇、歩留まりの低下、あるいは、個別電極に駆動電圧を供給する為の電気的接続の信頼性の低下等の問題が生じることになる。
本発明の目的は、圧電アクチュエータの個別電極に接続された配線部の配線スペースを十分に確保することが可能なインクジェットヘッドを提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明のインクジェットヘッドは、インクを吐出するノズルに連通する複数の圧力室が平面上に配置された流路ユニットと、複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備え、前記圧電アクチュエータは、前記複数の圧力室に夫々対応する複数の個別電極、及び、これら複数の個別電極に対向する共通電極と、前記複数の個別電極と前記共通電極との間に挟まれた圧電層と、前記複数の個別電極に夫々接続され、これら複数の個別電極に夫々駆動電圧を供給する為の複数の配線部とを有し、前記平面に直交する方向から見て、複数の配線部のうちの少なくとも一部が、接続された個別電極に対応する圧力室以外の他の圧力室と部分的に重なって配置されていることを特徴とするものである。
このインクジェットヘッドにおいて、複数の個別電極に配線部を介して選択的に駆動電圧が供給されると、個別電極と共通電極との間の圧電層に電界が作用して圧電層が変形する。そして、この圧電層の変形に伴って、駆動電圧が供給された個別電極に対応する圧力室の容積が変化して圧力室内のインクに圧力が印加され、圧力室に連通したノズルから記録媒体に対してインクが吐出される。
ここで、複数の配線部が、複数の圧力室が配置された平面に直交する方向から見て、複数の圧力室と重ならない領域に加えて、接続された個別電極に対応する圧力室以外の他の圧力室と重なる領域にも配置されるため、配線部が配置される配線スペースが広くなる。従って、配線部の配線密度を粗くすることが可能になり、製造コストの上昇や、歩留まりの低下を抑制することができ、さらには、個別電極に駆動電圧を供給する為の電気的接続の信頼性を向上させることができる。逆に、配線密度を変えずに圧力室の配置間隔を小さくして圧力室の数を増加させることで、高速且つ高画質の印字を行うことも可能になる。
第2の発明のインクジェットヘッドは、前記第1の発明において、前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室とが重なる領域の前記圧電層は、前記共通電極と直接接触していないことを特徴とするものである。配線部が、接続された個別電極に対応する圧力室以外の他の圧力室に重なる領域に配置されている場合に、その配線部と前記他の圧力室とが重なる領域の圧電層が共通電極にも接触していると、この他の圧力室に重なる位置の圧電層は配線部と共通電極とに挟まれることになる。そして、この配線部を介して個別電極に駆動電圧が供給されて対応する圧力室が駆動される(圧力室内のインクに圧力が印加される)ときには、同時に、配線部と共通電極とに挟まれた他の圧力室に重なる圧電層にもある程度の電界が作用する。そのため、駆動される圧力室以外の前記他の圧力室も同時に駆動される現象(クロストーク)が生じて、印字品質が低下する虞がある。そこで、この第2の発明においては、配線部と前記他の圧力室とが重なる領域の圧電層が、共通電極と直接接触していない状態にすることで、その重なる領域の圧電層が配線部と共通電極とに挟まれないようにして、クロストークを抑制する
第3の発明のインクジェットヘッドは、前記第2の発明において、前記共通電極と前記圧電層とが直接接触する領域の境界部は、前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室に対応する個別電極との間に位置していることを特徴とするものである。そのため、配線部や共通電極のパターンが多少位置ずれした状態で形成された場合でも、配線部と前記他の圧力室とが重なる領域の圧電層が配線部と共通電極に挟まれた状態になるのを防止して、クロストークをより確実に抑制できる。
第4の発明のインクジェットヘッドは、前記第2又は第3の発明において、前記共通電極は、前記複数の個別電極と夫々略対向する複数の対向領域と、これら複数の対向領域を接続する接続領域にのみ形成されていることを特徴とするものである。従って、配線部と共通電極とが対向する領域を極力小さくして、配線部と共通電極との間に不必要な静電容量が発生してしまうのを確実に防止できる。
第5の発明のインクジェットヘッドは、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記平面に直交する方向から見て、少なくとも一部の前記圧力室と重なる領域であって、前記配線部が設けられていない領域には、前記駆動電圧が供給されないダミー電極が設けられていることを特徴とするものである。複数の圧力室の中には、配線部と重ならない圧力室14も存在するため、圧電アクチュエータの剛性が場所によりばらつき、ノズルからのインクの吐出特性の均一化が困難になる。そこで、配線部と重なる度合が小さい、あるいは、配線部と全く重ならない圧力室に対してダミー電極を設けることにより、圧電アクチュエータの剛性のばらつきを小さくすることができ、ノズルごとに吐出特性がばらついてしまうのを極力防止できる。
第6の発明のインクジェットヘッドは、前記第5の発明において、前記複数の配線部は、前記複数の個別電極から夫々所定方向に引き出されており、前記ダミー電極は、対応する前記圧力室が前記所定方向上流側にあるほど、その面積比が大きいことを特徴とするものである。配線部の引き出し方向上流側に位置する圧力室付近の領域には、引き出し方向下流側と比較して、配置される配線部は少なくなる。そこで、圧力室が前記所定方向上流側にあるほど、配置されるダミー電極の面積比(例えば、圧力室の総面積に対するダミー電極の面積の比)を大きくすることにより、圧電アクチュエータの剛性のばらつきを確実に小さくすることができる。
第7の発明のインクジェットヘッドは、前記第5又は第6の発明において、前記平面に直交する方向から見て、前記他の圧力室に重なる領域に配置された前記配線部と前記ダミー電極の合計面積は、前記複数の圧力室の各々に関して略等しいことを特徴とするものである。従って、複数の圧力室に関して圧電アクチュエータの剛性を略等しくすることができ、複数のノズルからの吐出特性を均一化することができる。
第8の発明のインクジェットヘッドは、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記圧電アクチュエータは、前記流路ユニットの表面に設けられた金属製の振動板と、この振動板の表面に形成された絶縁層とを備え、前記絶縁層の表面に前記複数の個別電極及び前記複数の配線部が形成され、これら複数の個別電極と前記配線部の表面に前記圧電層が形成され、この圧電層の表面に前記共通電極が形成されていることを特徴とするものである。このインクジェットヘッドにおいては、複数の個別電極に配線部を介して選択的に駆動電圧が供給されると、個別電極と共通電極の間に挟まれた圧電層に電界が作用して圧電層が変形し、その変形に伴って振動板を介して圧力室内のインクに圧力が印加される。ここで、振動板が弾性率の高い金属材料で構成されるため、圧電アクチュエータの応答性が高くなる。また、金属材料は一般に高い強度を有するため、アクチュエータが大きな変形を生じるものであったとしても、その変形に耐えることのできる十分な耐久性を有する。また、金属製の振動板の表面に形成された絶縁層により、複数の個別電極が互いに電気的に絶縁される。
第9の発明のインクジェットヘッドは、前記第2又は第3の何れかの発明において、前記流路ユニットの表面に前記共通電極を兼ねる振動板が設けられ、この振動板の表面に前記圧電層が形成され、この圧電層の表面に前記複数の個別電極及び前記複数の配線部が形成され、前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室とが重なる領域において、前記振動板の表面に絶縁層が形成されていることを特徴とするものである。このように、共通電極を兼ねる振動板が流路ユニットの表面に設けられたインクジェットヘッドにおいて、配線部の一部が前記他の圧力室と重なって配置された場合でも、その重なる領域において振動板の表面に形成された絶縁層により、圧電層が振動板に直接接触しなくなるため、クロストークを抑制することが可能になる。
本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、内部にインク流路が形成された流路ユニット2と、この流路ユニット2の上面に積層された圧電アクチュエータ3とを備えている。
まず、流路ユニット2について説明する。図2は、図1のインクジェットヘッド1の右半分の概略平面図、図3は、図1の流路ユニット2の右半分の概略平面図である。また、図4は図2のIV-IV線断面図、図5は図2のV-V線断面図である。図2〜図5に示すように、流路ユニット2はキャビティプレート10、ベースプレート11、マニホールドプレート12、及びノズルプレート13を備えており、これら4枚のプレート10〜13が積層状態で接着されている。このうち、キャビティプレート10、ベースプレート11及びマニホールドプレート12は略矩形のステンレス鋼製の板である。そのため、これら3枚のプレート10〜12に、後述するマニホールド17や圧力室14等のインク流路をエッチングにより容易に形成することができるようになっている。また、ノズルプレート13は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂材料により形成され、マニホールドプレート12の下面に接着される。あるいは、このノズルプレート13も、3枚のプレート10〜12と同様にステンレス鋼等の金属材料で形成されていてもよい。
図2、図3に示すように、キャビティプレート10には、平面に沿って配列された複数の圧力室14が形成されている。これら複数の圧力室14は、流路ユニット2の表面(後述する振動板30が接合されるキャビティプレート10の上面)において開口している。尚、図2及び図3には、複数の圧力室14のうちの一部(12個)が示されている。各圧力室14は、平面視で略楕円形状に形成されており、その長軸方向がキャビティプレート10の長手方向に平行になるように配置されている。
図3、図4に示すように、ベースプレート11の平面視で圧力室14の長軸方向両端部に重なる位置には、夫々連通孔15,16が形成されている。また、マニホールドプレート12には、マニホールドプレート12の短手方向(図3の上下方向)に3列に延び、平面視で圧力室14の図3における右半分と重なるマニホールド17が形成されている。このマニホールド17には、キャビティプレート10に形成されたインク供給口18を介してインクタンク(図示省略)からインクが供給される。また、平面視で圧力室14の図3における左端部と重なる位置には、連通孔19も形成されている。さらに、ノズルプレート13には、平面視で複数の圧力室14の左端部に重なる位置に、複数のノズル20が夫々形成されている。ノズル20は、例えば、ポリイミド等の高分子合成樹脂の基板にエキシマレーザー加工を施すことにより形成される。
そして、図4に示すように、マニホールド17は連通孔15を介して圧力室14に連通し、さらに、圧力室14は、連通孔16,19を介してノズル20に連通している。このように、流路ユニット2内には、マニホールド17から圧力室14を経てノズル20に至る個別インク流路が形成されている。
次に、圧電アクチュエータ3について説明する。図1〜図6に示すように、圧電アクチュエータ3は、流路ユニット2の表面に配置された振動板30と、この振動板30の表面に形成された絶縁層31と、複数の圧力室14に夫々対応して絶縁層31の表面に形成された複数の個別電極32と、これら複数の個別電極32に跨ってそれらの表面に形成された圧電層33と、この圧電層33の表面に形成され、複数の個別電極32に亙って共通に設けられた共通電極34とを備えている。
振動板30は、平面視で略矩形状のステンレス鋼製の板であり、複数の圧力室14の開口を塞ぐ状態でキャビティプレート10の上面に積層された状態で接合されている。ここで、振動板30が比較的弾性率の高いステンレス鋼で形成されているため、振動板30の剛性が高くなり、後述するようにインクの吐出動作の際に圧電層33が変形したときの、圧電アクチュエータ3の応答性が高くなる。また、ステンレス鋼のような金属材料は比較的高い強度を有するため、圧電アクチュエータ3が大きな変形を生じるものであったとしても、その変形に耐えられるだけの耐久性を有している。また、この振動板30は、同じくステンレス鋼で形成されたキャビティプレート10の表面に接合される。そのため、振動板30とキャビティプレート10の熱膨張係数が等しくなり、両者の接合強度が向上する。さらに、流路ユニット2内のインクは、インクに対する耐食性に優れるステンレス鋼で形成された振動板30と流路ユニット2に接触する。そのため、どのようなインクを選択しても流路ユニット2内あるいは振動板30に局部電池が形成される虞がなく、インクの選択が腐食面で制約されることがないため、インク選択の自由度が大きくなる。
この振動板30の表面には、アルミナ、ジルコニア、あるいは、窒化ケイ素等の、弾性率が高いセラミックス材料よりなり、その表面が平面である絶縁層31が形成されている。このように、絶縁層31が弾性率の高いセラミックス材料で形成されているため、圧電アクチュエータ3の剛性が上がり応答性がより高くなる。この絶縁層31は、例えば、超微粒子材料を高速で衝突させて堆積させるエアロゾルデポジション法により形成することができる。あるいは、ゾルゲル法、スパッタ法、あるいは、CVD(化学蒸着)法などにより絶縁層31を形成することもできる。
さらに、この絶縁層31の表面には、圧力室14よりも一回り小さい楕円形の平面形状を有する複数の個別電極32が形成されている。個別電極32は、平面視で、対応する圧力室14の中央部に重なる位置に形成されている。個別電極32は金などの導電性材料からなる。尚、隣接する個別電極32は絶縁層31により互いに電気的に絶縁されている。
絶縁層31の表面において、複数の個別電極32の一端部(図3における右端部)からは、夫々、個別電極32の長軸方向に平行に複数の配線部35が延びており、これら複数の配線部35は、複数の個別電極32に対して選択的に駆動電圧を供給するドライバIC37(図1参照)と接続される。尚、複数の個別電極32及び複数の配線部35は、絶縁層31の表面に導電性ペーストをスクリーン印刷することにより一度に形成することができる。あるいは、メッキ法、スパッタ法又は蒸着法などにより、絶縁層31の全面に導電層を形成してから、レーザーやマスク、レジスト法等によりこの導電層を部分的に除去して、複数の個別電極32及び複数の配線部35を形成してもよい。
ここで、図2、図6に示すように、複数の配線部35の一部は、平面視で(圧力室14が形成されている平面に直交する方向から見て)、接続された個別電極32に対応する圧力室14以外の他の圧力室14と部分的に重なって配置されている(図6においてハッチングされた領域A)。そのため、従来のインクジェットヘッド用の圧電アクチュエータ(前述の特許文献1,2参照)のように、圧力室14と重ならない、圧力室14の間の領域にのみ配線部35が配置される場合に比べて、配線部35が配置される配線スペースが広くなっている。従って、配線部35の配線密度を粗くすることが可能になるし、逆に、配線密度を変えずに圧力室14の数を増加させることもできる。
複数の個別電極32の表面には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電層33が形成されている。この圧電層33は、複数の個別電極32の表面全域を覆うように、複数の個別電極32の全てに亙る連続した1つの層として形成されている。この圧電層33は、エアロゾルデポジション法、ゾルゲル法、スパッタ等、あるいは、CVD法などにより絶縁層31上に直接形成することができる。あるいは、焼成されたPZTからなる圧電シートを絶縁層31上に貼り付けることにより、圧電層33を絶縁層31の表面に形成することもできる。但し、この場合には、予め、圧電シートの表面にスクリーン印刷などにより次述の共通電極34を形成しておき、この圧電シートの裏面を個別電極32の表面に接合することになる。また、低温焼成が可能なPZTのグリーンシートを個別電極32の表面にスクリーン印刷などにより形成してもよい。この場合は、850〜900度で焼成する後工程が必要となる。
圧電層33の表面には、複数の個別電極32に共通の共通電極34が、圧電層33の全面に亙って個別電極32に対向して形成されており、圧電層33が個別電極32と共通電極34に挟まれた状態になっている。共通電極34は1本の配線部(図示省略)によりドライバICと接続されており、共通電極34はドライバIC37を介して接地されて、グランド電位に保持されている。この共通電極34も金などの導電性材料からなる。また、この共通電極34は、個別電極32と同様に、スクリーン印刷、蒸着法、あるいは、スパッタ法等により形成することができる。
ところで、この圧電アクチュエータ3により、あるノズル20からインクを吐出させる場合には、後述するように、そのノズル20に連通した圧力室14に対応する個別電極32に対して配線部35を介してドライバIC37から駆動電圧が供給され、この駆動電圧が供給された個別電極32と共通電極34との間の圧電層33に電界が作用して圧電層33が変形することにより、振動板30を介して圧力室14に圧力が印加される。
ここで、前述のように、複数の配線部35の一部が、対応する圧力室14以外の他の圧力室14と部分的に重なって配置されているが、この領域Aの圧電層33が共通電極34と直接接触していると、領域Aの圧電層33が配線部35と共通電極34との間に挟まれた状態となる。そして、配線部35を介して個別電極32に駆動電圧が供給されて対応する圧力室14が駆動される(圧力室14内のインクに圧力が印加される)ときには、同時に、領域Aの配線部35と共通電極34に挟まれた圧電層33にもある程度の電界が作用するため、この領域Aの圧電層33が変形して、駆動される圧力室14以外の他の圧力室14にも同時に圧力が印加されて、他の圧力室14からインクが漏れ出す現象(クロストーク)が生じ、印字品質が低下する虞がある。
そこで、本実施形態の圧電アクチュエータ3においては、図2、図6に示すように、配線部35とこの配線部35に対応する圧力室14以外の他の圧力室14とが重なる領域Aを含む平面視矩形状の領域Bには共通電極34が形成されておらず、この領域Bにおいて圧電層33が共通電極34に接触していない。従って、配線部35に駆動電圧が印加された場合でも、配線部35と前記他の圧力室14が重なる領域の圧電層33には電界が作用せず、この圧電層33が変形しなくなるため、クロストークを確実に抑制することができる。ここで、領域Bにおいて圧電層33に共通電極34が接触しないようにするには、圧電層33の全面にメッキ法、スパッタ法又は蒸着法などにより導電層を形成してから、領域Bの導電層をレーザー、マスク、あるいは、レジスト法により部分的に除去すればよい。あるいは、領域Bにのみ共通電極34が形成されないような、共通電極34のパターンをスクリーン印刷により圧電層33の表面に一度に形成するようにしてもよい。
尚、図6に示すように、共通電極34と圧電層33とが直接接触する領域の境界部(領域Bの縁部b)は、配線部35の側端直近の位置、あるいは、他の圧力室14に対応する個別電極32の外周直近の位置ではなく、配線部35と他の圧力室14に対応する個別電極32との間に位置していることが好ましい。この場合、配線部35や共通電極34が除去された領域Bが、図6の上下方向に多少位置ずれした状態で形成された場合でも、領域Aの圧電層33が配線部35と共通電極34に挟まれることがないため、クロストークをより確実に抑制できる。
また、配線部35と他の圧力室14とが重なる領域Aの面積が比較的小さい等の理由により、領域Aの圧電層33が変形しても上述したクロストーク現象が起こりえない場合には、領域Bにも跨るように共通電極34を形成してもよい。この場合、共通電極34は、複数の個別電極32と配線部35に隙間なく跨る1つの層として形成することができるため、共通電極34の形成工程が容易なものとなる。
次に、インク吐出時における圧電アクチュエータ3の作用について説明する。
ドライバIC37に複数の配線部35を介して夫々接続された複数の個別電極32に対して、ドライバIC37から選択的に駆動電圧が供給されると、駆動電圧が供給された圧電層33下側の個別電極32とグランド電位に保持されている圧電層33上側の共通電極34の電位が異なった状態となり、両電極32,34の間に挟まれた圧電層33に上下方向の電界が生じる。すると、圧電層33のうち、駆動電圧が印加された個別電極32の直上の部分が、分極方向である上下方向と直交する水平方向に収縮する。ここで、圧電層33の下側の絶縁層31及び振動板30はキャビティプレート10に対して固定されているため、両電極32,34の間に挟まれた圧電層33の部分が圧力室14側に凸となるように変形し、この圧電層33の部分的な変形に伴い、振動板30の圧力室14を覆う部分も圧力室14側に凸となるように変形する。すると、圧力室14内の容積が減少するためにインク圧力が上昇し、圧力室14に連通するノズル20からインクが吐出される。
以上説明したインクジェットヘッド1によれば、次のような効果が得られる。
1)複数の配線部35の一部は、平面視で、接続された個別電極32に対応する圧力室14以外の他の圧力室14と部分的に重なって配置されている。そのため、配線部35が配置される配線スペースが広くなり、配線部35の配線密度を粗くすることができるため、製造コストの上昇や、歩留まりの低下を抑制することができ、さらには、個別電極32に駆動電圧を供給する為の電気的接続の信頼性を向上させることができる。逆に、配線密度を変えずに圧力室14の数を増加させることで、高速且つ高画質の印字を行うことも可能になる。
2)配線部35とこの配線部35に対応する圧力室14以外の他の圧力室14と重なる領域Aにおいて、圧電層33が共通電極34に接触していない。従って、配線部35に駆動電圧が印加された場合に、この領域Aの圧電層33に電界が生じず、この圧電層33が変形しないため、クロストークを確実に抑制することができる。
3)共通電極34は圧電層33の表面に形成されるため、配線部35とこの配線部35に対応する圧力室14以外の他の圧力室14と重なる領域Aを含む領域Bにおいて、共通電極34をレーザー等により部分的に除去して、領域Aの圧電層33が共通電極34に接触しないようにすることが容易になる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態においては、配線部35と他の圧力室14とが重なる領域Aの周辺においてのみ共通電極34が除去されているが、逆に、図7に示す圧電アクチュエータ40のように、複数の個別電極32に夫々略対向する対向領域44aとこれら対向領域44aを互いに接続する接続領域44bにのみ共通電極44が形成されていてもよい。この場合には、前記実施形態と同様に、配線部35と他の圧力室14が重なる領域Aにおいて圧電層33が共通電極34に接触せず、さらに、それ以外の領域においても、配線部35と共通電極34とが対向する面積が小さくなるため、配線部35と共通電極34との間に不必要な静電容量が発生してしまうのを極力防止できる。尚、この場合には、圧電層33の表面に共通電極34の配線パターンを形成する必要があるが、この配線パターンは、スクリーン印刷等の方法により容易に形成できる。
2]前記実施形態の図2に示すように、複数の圧力室14の中には、配線部35と重ならない圧力室14も存在し、さらに、配線部35と重なる圧力室14でも配線部35と重なる領域の面積は圧力室14ごとに異なる。そのため、圧力室14の上方を覆う圧電アクチュエータ3の剛性が圧力室14ごとにばらついてしまい、圧力室14に連通するノズル20からの吐出特性が不均一になって、印字品質が低下する虞がある。そこで、図8に示すように、圧電アクチュエータ50の剛性のばらつきが小さくなるように、平面視で一部の圧力室14と重なる領域であって、配線部35が設けられていない領域に、駆動電圧が供給されないダミー電極51が設けられていてもよい。
ここで、図8に示すように、複数の配線部35が複数の個別電極32から図8の右方に引き出されている場合には、その引き出し方向上流側である左方に位置する圧力室14付近の領域では、引き出し方向下流側に比べて配置される配線部35が少ない。そこで、この圧電アクチュエータ50においては、左方に位置する圧力室14ほど、ダミー電極51の面積比(圧力室14の総面積に対するダミー電極51の面積の比)が大きくなっている。さらに、圧力室14と重なる領域に配置された配線部35とダミー電極51の合計面積は、複数の圧力室14に関して略等しいことが好ましい。この場合には、圧電アクチュエータ3の、複数の圧力室14に夫々対応する部分の剛性を略等しくすることができ、複数のノズル20からの吐出特性を均一化することができる。
3]前記実施形態では、配線部35が個別電極32からその長軸方向に引き出されているが、引き出し方向はその方向に限定されるわけではなく、例えば、図9に示す圧電アクチュエータ60のように、配線部35が個別電極32の短軸方向に引き出されていてもよい。また、2以上の複数の方向に引き出すようにしてもよい。
4]前記実施形態のように、複数の個別電極32が圧電層33の下側に配置され、一方、共通電極34が圧電層33の上側に配置されている必要は必ずしもなく、以下の圧電アクチュエータ60のように、個別電極と共通電極が上下逆に配置されていてもよい。図10〜図12に示すように、圧電アクチュエータ60は、流路ユニット2の表面に接合された、共通電極を兼ねる金属製(例えば、ステンレス鋼製)の振動板61と、この振動板61の表面に形成された圧電層63と、この圧電層63の表面に形成された複数の個別電極62及び複数の配線部65とを有する。図10に示すように、複数の配線部65の一部は、平面視で、対応する圧力室14以外の他の圧力室14と部分的に重なっている(領域C)。
ここで、共通電極を兼ねる振動板61は、上方へ開口した圧力室14を直接覆っていることから、前記実施形態のように、配線部65と前記他の圧力室14とが重なる領域Cにおいて振動板61を部分的に除去して、その重なる領域Cにおける圧電層63が振動板61(共通電極)と接触しないように構成することは不可能である。そこで、この圧電アクチュエータ60においては、配線部65と前記他の圧力室14とが重なる領域Cを含む平面視矩形状の領域において、振動板61の表面に絶縁層66が形成されている。従って、配線部65と圧力室14とが重なる領域Cにおいて、圧電層63の下面が絶縁層66と接触して電気的に絶縁され、この領域の圧電層63が共通電極としての振動板61に直接接触しない状態となるため、前記実施形態と同様に、配線部65に駆動電圧が作用したときに他の圧力室14が駆動されてしまう現象(クロストーク)を抑制する効果が得られる。尚、振動板61の表面に絶縁層66が形成された状態では、振動板61の表面が凹凸状になっているため、圧電層63は、エアロゾルデポジション法、ゾルゲル法、スパッタ等、あるいは、CVD法などの、PZTの粒子が凹凸状の振動板61の表面に密着しやすい方法により形成することが好ましい。
本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。 図1におけるインクジェットヘッドの右半部の平面図である。 図1における流路ユニットの右半部の平面図である。 図2のIV-IV線断面図である。 図2のV-V線断面図である。 図2の一部拡大図である。 変更形態の図2相当図である。 別の変更形態の図2相当図である。 さらに別の変更形態の図2相当図である。 さらに別の変更形態の図6相当図である。 図10のXI-XI線断面図である。 図10のXII-XII線断面図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド
2 流路ユニット
3 圧電アクチュエータ
14 圧力室
20 ノズル
30 振動板
31 絶縁層
32 個別電極
33 圧電層
34 共通電極
35 配線部
40 圧電アクチュエータ
44 共通電極
44a 対向領域
44b 接続領域
50 圧電アクチュエータ
51 ダミー電極
60 圧電アクチュエータ
61 振動板
62 個別電極
63 圧電層
65 配線部
66 絶縁層

Claims (9)

  1. インクを吐出するノズルに連通する複数の圧力室が平面上に配置された流路ユニットと、複数の圧力室の容積を選択的に変化させる圧電アクチュエータとを備え、
    前記圧電アクチュエータは、
    前記複数の圧力室に夫々対応する複数の個別電極、及び、これら複数の個別電極に対向する共通電極と、
    前記複数の個別電極と前記共通電極との間に挟まれた圧電層と、
    前記複数の個別電極に夫々接続され、これら複数の個別電極に夫々駆動電圧を供給する為の複数の配線部とを有し、
    前記平面に直交する方向から見て、複数の配線部のうちの少なくとも一部が、接続された個別電極に対応する圧力室以外の他の圧力室と部分的に重なって配置されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室とが重なる領域の前記圧電層は、前記共通電極と直接接触していないことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記共通電極と前記圧電層とが直接接触する領域の境界部は、前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室に対応する個別電極との間に位置していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記共通電極は、前記複数の個別電極と夫々略対向する複数の対向領域と、これら複数の対向領域を接続する接続領域にのみ形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記平面に直交する方向から見て、少なくとも一部の前記圧力室と重なる領域であって、前記配線部が設けられていない領域には、前記駆動電圧が供給されないダミー電極が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記複数の配線部は、前記複数の個別電極から夫々所定方向に引き出されており、
    前記ダミー電極は、対応する前記圧力室が前記所定方向上流側にあるほど、その面積比が大きいことを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記平面に直交する方向から見て、前記他の圧力室に重なる領域に配置された前記配線部と前記ダミー電極の合計面積は、前記複数の圧力室に関して略等しいことを特徴とする請求項5又は6に記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記圧電アクチュエータは、前記流路ユニットの表面に設けられた金属製の振動板と、この振動板の表面に形成された絶縁層とを備え、
    前記絶縁層の表面に前記複数の個別電極及び前記複数の配線部が形成され、
    これら複数の個別電極と前記配線部の表面に前記圧電層が形成され、
    この圧電層の表面に前記共通電極が形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  9. 前記流路ユニットの表面に前記共通電極を兼ねる振動板が設けられ、
    この振動板の表面に前記圧電層が形成され、
    この圧電層の表面に前記複数の個別電極及び前記複数の配線部が形成され、
    前記平面に直交する方向から見て、前記配線部と前記他の圧力室とが重なる領域において、前記振動板の表面に絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェットヘッド。
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