JP2005345346A - 熱式流量センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】 吸引時、吸着時、およびリリース時の3つの状態を正確かつ安定して判別することができる熱式流量センサを提供すること。
【解決手段】 熱式流量センサ1において、ボディ41に形成された流路空間44に対し、主流路Mとセンサ流路Sとの間にメッシュ部51Mが配置されるようにメッシュ板51を組み込んだ積層体50を装着して、主流路Mを構成する。そして、測定チップ11に上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、発熱抵抗体Rt、および流体温度検出抵抗体Rtを設け、電気回路70により、発熱抵抗体Rhと流体温度検出抵抗体Rtとが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に応じた出力信号を最終出力とし、逆方向の流れの場合にはその出力信号をゲイン変更回路80にて処理したものを最終出力とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、抵抗体(熱線)を用い、双方向において被測定流体の流量を計測可能な熱式流量センサに関する。さらに詳細には、順方向と逆方向とで流量測定の感度を変化させた熱式流量センサに関するものである。特に、電子部品などの吸着・リリース確認に使用するのに好適なものである。
近年、マウンタ等による小型電子部品の吸着およびリリースの確認を行うために、流量センサが使用されている。このような吸着およびリリースの確認を行うためには、双方向の流量を検出することができる流量センサが必要となる。そして、双方向の流量検知が可能な流量センサとしては、例えば、特開2002−5717号公報に記載されたものがある。
ところが、特開2002−5717号公報に記載された流量センサでは、図19に示すように、出力特性がリニアでないという問題があった。このように出力特性がリニアでないと、ノズルの目詰まり管理などを行うことができなかった。なお、出力特性をリニアにするためには、例えば、特開2001−165734号公報に記載されているように、演算回路を用いればよいが、別途そのための演算回路を設ける必要がありコスト面で不利になる。
また、特開2002−5717号公報に記載された流量センサでは、図20に示すように、乱流の影響により出力が不安定になるという問題もあった。出力が不安定になると、吸着確認の閾値を低めに設定しなければならない。ところが、吸着確認においては微少の流量変化を検知しているため、閾値を低めに設定すると、正常状態で吸着されずに正常吸着時の流量よりも小さくなった場合であっても、正常に吸着されていると判断されてしまう。つまり、吸着確認を精度良く行うことができなかった。なお、このような出力のふらつきは、電気的なフィルタを入れることにより解消することはできるが、応答性が損なわれてしまい好ましくない。
そこで、本出願人は、特願2002−155021にて、双方向の流量検知ができるとともに、出力特性をリニアにすることができ、かつ応答性を損なうことなく安定した出力を得ることができる熱式流量センサを提案した。
特開2002−5717号公報(第5頁、第1図)
しかしながら、本出願人が特願2002−155021にて提案した熱式流量センサを吸着およびリリースの確認に使用した際、外来電気ノイズや配管部のフィルタの目詰まり等で各動作時の出力電圧レベルが変動した場合には次の問題点が生じることが判明した。ここで、部品吸着時は吸着ノズルから部品が脱落するのを防止するため、吸引力を引き出すために真空ポンプの出力を高くして、例えば、吸引時に多量の流体がセンサ部を通過するので、吸着時(流量ゼロ)との出力電圧差は大きくなり、吸引状態と吸着状態との判別がしやすくなる。
ところが、リリース時(センサには吸引方向と逆方向に流体を流す)は、部品を流体の力で吹き飛ばすことなく所定の位置に静かに置く必要があるため、流体圧力を下げて流量を絞る方策が採られている。そうすると、吸着時とリリース時との出力電圧差が小さくなり、吸着状態とリリース状態との判別がしにくくなるのである。
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、吸引時、吸着時、およびリリース時の3つの状態を正確かつ安定して判別することができる熱式流量センサを提供することを課題とする。
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る熱式流量センサは、双方向で被測定流体の流量を測定可能な熱式流量センサにおいて、被測定流体の流量を計測するための抵抗体が架設されたセンサ流路と、前記センサ流路に対するバイパス流路と、抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路と、被測定流体が特定方向に流れた場合に前記電気回路から出力される電気信号のゲインを大きくするゲイン変更手段とを有し、前記バイパス流路は、前記電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、微細加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成され、前記センサ流路は、抵抗体とその抵抗体に接続する抵抗体用電極とが設けられた測定チップを、抵抗体用電極と電気回路用電極とを接着して基板に実装することにより、前記測定チップあるいは前記基板の少なくとも一方に設けられた溝によって形成されており、前記測定チップには、流れ方向上流側に設けられた上流温度検出抵抗体と、流れ方向下流側に設けられた下流温度検出抵抗体と、前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体との間に設けられ、前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体とを加熱する発熱抵抗体と、被測定流体の温度を検出する流体温度検出抵抗体と、が備わり、前記電気回路は、前記発熱抵抗体と前記流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御し、前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体との温度差に応じた電圧を出力して前記スパン変更回路に入力することを特徴とするものである。
なお、本明細書における「側面開口部」とは、ボディの側面(言い換えると、入出力ポートが開口していない面)であって基板が装着される面に開口した開口部を意味する。また、微細加工には、エッチング加工、パンチング加工、プレス加工など薄板に対して微細な加工を施せる加工方法が含まれる。
この熱式流量センサでは、流量センサに流れ込んだ被測定流体は、抵抗体が架設されたセンサ流路と、センサ流路に対するバイパス流路とに分流される。そして、抵抗体を用いた計測原理に基づき、センサ流路を流れる被測定流体の流量、ひいては熱式流量センサの内部を流れる被測定流体の流量が測定される。具体的には、電気回路により、発熱抵抗体と流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御され、上流温度検出抵抗体と下流温度検出抵抗体との温度差に基づき被測定流体の流量が測定される。このため、順方向の流れの場合には出力が増加し、逆方向の流れの場合には出力が減少する。したがって、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
また、バイパス流路は、抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、微細加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成されているため、積層体の構成(各薄板の組み合わせ)を変更してバイパス流路の断面積を変化させることができる。そして、バイパス流路の断面積が変化すると、センサ流路とバイパス流路とに分流する被測定流体の割合(バイパス比)が変化する。したがって、積層体の構成を変更することにより、最適な測定レンジを設定することができるので、別途演算回路を設けなくてもリニアな出力特性を得ることができる。
ここで、電気回路から出力された電気信号はゲイン変更手段に入力される。このとき、被測定量体が特定方向(順方向あるいは逆方向のいずれか一方)に流れた場合には、ゲイン変更手段により、電気信号が増幅されて出力される。言い換えると、被測定流体が特定方向に流れる場合にセンサの感度が高められるのである。これにより、例えば、部品を吸引する際に被測定流体が流れる方向と、部品をリリースする際に被測定流体が流れる方向(吸引時と逆方向)とで出力信号のゲインを変化させることができる。そして、リリース側で出力信号のゲインが大きくなるようにおくことにより、リリース時に流量を絞っても正確にリリース状態を判別することができる。
そして、前記ゲイン変更手段は、前記電気回路からの電気信号を検出する比較回路と、電気信号の出力先を切り換えるスイッチと、電気信号の出力を増幅する増幅回路と、を含んでいればよい。
これにより、ゲイン変更手段を非常に簡単な回路で構成することができるので、大幅なコストアップを伴うことなく、吸引時、吸着時、およびリリース時の3つの状態を正確かつ安定して判別することができる。
また、前記増幅回路は、電気信号の増幅率を外部から調整可能であることが好ましい。
こうすることにより、用途に応じて流量に対する電気信号の出力値を使用者側で簡単に設定することができるからである。
そして、本発明に係る熱式流量センサにおいて、バイパス比を変更する場合には、積層体を、薄板の両端に開口部が形成されるとともに、中央に溝が形成された溝付両端開口板を介してメッシュ板を積層したものにすればよい。さらに、積層体に、薄板の両端に開口部が形成された両端開口板を含めてもよい。これらにより、バイパス流路の断面積を減少させることができ、バイパス比を変更することができる。
また、本発明に係る熱式流量センサにおいては、積層体に、薄板の両端にメッシュが形成されたメッシュ板が含まれていることが好ましい。また、本発明に係る熱式流量センサにおいては、積層体は、薄板の縁部を残してその他の部分を開口させたスペーサを介してメッシュ板を積層したものであることが望ましい。
メッシュが形成されたメッシュ板を含めて積層体を形成することにより、非常に流れが整えられた被測定流体を、センサ流路に流し込むことができるからである。なぜなら、被測定流体は、メッシュを通過することにより、流れの乱れが減少するからである。したがって、積層体には複数枚のメッシュ板を含めるのがよい。そして、この場合には、各メッシュ板を直接重ねるよりも、所定の間隔をとって重ねる方がよい。より大きな整流効果を得ることができるからである。このため、メッシュ板は、スペーサを介して積層するのが望ましいのである。
このようにして、本発明に係る熱式量計では、センサ流路を流れる被測定流体の流れを整えることができるので、非常に安定した出力を得ることができる。また、電気的なフィルタを用いないので、応答性が損なわれることもない。
本発明に係る熱式流量センサによれば、非常に安定したリニアな出力が得られ、しかも特定方向(例えば、リリース時における被測定量体の流れ方向)においては出力信号のゲインが大きく設定することができるので、吸引時、吸着時、およびリリース時の3つの状態を正確かつ安定して判別することができる。
以下、本発明の熱式流量センサを具体化した最も好適な実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。本実施の形態に係る熱式流量センサは、高速応答性、高感度、リニアな出力特性、および双方向検知が要求される流量センサ、例えば半導体チップマウンティング時のハンドリングにおける吸引、吸着、およびリリースの各状態の判別を行うために使用するのに好適なものである。
本実施の形態に係る熱式流量センサの概略構成を図1に示す。図1は、熱式流量センサ1を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る熱式流量センサ1は、ボディ41とセンサ基板21と積層体50とを有するものである。そして、積層体50がボディ41の流路空間44に装着された状態で、センサ基板21がシールパッキン48を介しボディ41にネジ固定で密着されている。これにより、センサ流路S、およびセンサ流路Sに対するバイパス流路である主流路Mが形成されている。
ボディ41は、図2および図3に示すように、直方体形状のものであり、左右対称に構成されている。なお、図2は、ボディ41を示す平面図である。図3は、図2におけるA−A断面図である。このボディ41には、両端面に入口ポート42と出口ポート46とが形成されている。そして、入口ポート42からボディ中央に向かって入口流路43が形成され、同様に出口ポート46からボディ中央に向かって出口流路45が形成されている。なお、入口流路43および出口流路45は、主流路Mの下方に形成されている。つまり、入口流路43および出口流路45は主流路Mに対して、同一直線上には配置されていない。
また、ボディ41の上部には、主流路Mおよびセンサ流路Sを形成するための流路空間44が形成されている。この流路空間44の横断面は、長方形の両短辺を円弧状(半円)にした形状になっており、その中央部に円弧状の凸部44Cが形成されている。凸部44Cは、積層体50(各薄板)の位置決めを行うためのものである。そして、流路空間44の下面の一部が入口流路43および出口流路45に連通している。すなわち、入口流路43と出口流路45とがそれぞれ90度に屈曲したエルボ部43Aと45Aを介して流路空間44に連通されている。さらに、流路空間44の外周に沿うようにボディ41の上面には、シールパッキン48を装着するための溝49が形成されている。
積層体50は、図4に示すように、2種類の薄板を合計11枚積層したものである。なお、図4は、積層体50の構造を示す分解斜視図である。この積層体50は、下から順に、メッシュ板51、スペーサ52,52,52、メッシュ板51、スペーサ52,52、メッシュ板51、スペーサ52,52、およびメッシュ板51が積層されて接着されたものである。これらメッシュ板51およびスペーサ52は、ともに厚さが0.5mm以下であり、エッチングにより各形状の加工(マイクロマシニング加工)がなされたものである。そして、その投影形状は流路空間44の横断面形状と同じになっている。これにより、積層体50が流路空間44に隙間なく装着されるようになっている。
そして、このような組み合わせの積層体50を流路空間44に装着することにより、熱式流量センサ1のフルスケール流量が5L/minとなっている。つまり、積層体50を構成する薄板の形状(組み合わせ)を変更することにより、主流路Mの断面積が変化し被測定流体のバイパス比が変わるので、任意の流量レンジを設定することができるのである。なお、フルスケール流量を変更した例(フルスケール流量1L/min)については後述する。
ここで、個々の薄板について説明する。まず、メッシュ板51について、図5、図6を用いて説明する。なお、図5(a)はメッシュ板51を示す平面図であり、図5(b)は図5(a)におけるA−A断面図である。図6は、メッシュ板51のメッシュ部51Mの拡大図である。メッシュ板51は、図5に示すように、その両端にメッシュ部51Mが形成された厚さが0.3mmの薄板である。メッシュ部51Mは、直径4mmの円形状であり、図6に示すように、メッシュを構成する孔(直径0.2mm)の中心間距離がすべて0.27mmとなるように形成されている。すなわち、各孔の中心が正三角形の各頂点となるように孔が形成されている。なお、メッシュ部51Mの厚さは、図5(b)に示すように他の部分よりも薄くなっており、その厚さは、0.05〜0.1mmとなっている。
次に、スペーサ52について、図7を用いて説明する。なお、図7(a)は、スペーサ52を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)におけるA−A断面図である。スペーサ52は、図7に示すように、外周部52Bを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、スペーサ52には、開口部61が形成されている。なお、スペーサ52の厚さは、0.5mmである。
ここで、図1に戻って、上記したメッシュ板51およびスペーサ52を組み合わせて、図4に示すように積層して接着した積層体50を流路空間44に装着することにより、主流路Mが形成されている。より詳細に言うと、スペーサ52の開口部61により主流路Mが形成されている。また、メッシュ板51に設けられたメッシュ部51Mと、スペーサ52に設けられた開口部61とによって、連絡流路5,6が形成されている。連絡流路5は、入口流路43と主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものであり、連絡流路6は、出口流路45と主流路Mおよびセンサ流路Sとを連通させるものである。
そして、主流路Mとセンサ流路Sとの間に、メッシュ部51Mが3層配置されている。各メッシュ部51Mの間隔は、2枚のスペーサ52の厚さ分(1.0mm)になっている。これにより、流れが整えられた被測定流体を、センサ流路Sに流し込むことができるようになっている。被測定流体は、各メッシュ部51Mを通過するたびに、流れの乱れを減少させられるからである。さらに、エルボ部43A,45Aと流路空間44(主流路M)との連通部にもメッシュ部51Mが配置されている。
一方、センサ基板21は、測定流量を電気信号として出力するものである。このためセンサ基板21には、図8に示すように、ベースとなるプリント基板22の表面側(ボディ41への装着面側)において、その中央部に溝23が加工されている。そして、この溝23の両側に、電気回路用電極24,25,26,27,28,29が設けられている。一方、プリント基板22の裏面側には、電気素子31、32、33、34などで構成される電気回路およびゲイン変更回路が設けられている(図1参照)。そして、プリント基板22の中で、電気回路用電極24〜29が電気素子31〜34などで構成される電気回路と接続されている。さらに、プリント基板22の表面側には、後述するようにして、測定チップ11が実装されている。
ここで、測定チップ11について、図9を用いて説明する。なお、図9は、測定チップ11を示す平面図である。測定チップ11は、図9に示すように、シリコンチップ12に対して、半導体マイクロマシニングの加工技術を実施したものであり、このとき、チップ中央に溝13が加工されるとともに、抵抗体(熱線)用電極14,15,16,17、18,19がチップ両端に設けられる。
また、このとき、上流温度検出抵抗体R1が、抵抗体用電極15,17から延設されるとともに溝13の上に架設される。さらに、下流温度検出抵抗体R2が、抵抗体用電極17,19から延設されるとともに溝13の上に架設される。さらにまた、発熱抵抗体Rhが、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との間に、抵抗体用電極16,18から延設されるとともに溝13の上に架設される。また、測定チップ11においては、センサ流路Sの順方向上流側に流体温度検出抵抗体Rtが、抵抗体用電極14,16から延設される。
そして、測定チップ11の熱線用電極14,15,16,17,18,19を、センサ基板21の電気回路用電極24,25,26,27,28,29(図8参照)のそれぞれと、半田リフロー又は導電性接着剤などで接合することによって、測定チップ11をセンサ基板21に実装している。したがって、測定チップ11がセンサ基板21に実装されると、測定チップ11に設けられた流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhは、測定チップ11の抵抗体用電極14〜19と、センサ基板21の電気回路用電極24〜29(図8参照)とを介して、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路70に接続されることになる。そして、電気回路70は、図10に示す定温度差回路71と、図11に示す出力回路72とを備えている。また、この電気回路70には、図12に示すように、ゲイン変更回路80が接続されている。
ここで、図10に示す定温度差回路71は、発熱抵抗体Rhを、流体温度検出抵抗体Rtで検出される流体温度と一定の温度差をもつように制御するための回路である。また、図11に示す出力回路72は、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に相当する電圧値を出力するための回路である。この出力回路72では、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2とが直列に接続され、定電圧Vcが印可されるようになっている。そして、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが出力されるようになっている。そして、中点電位Voutは電圧増幅回路73により増幅されたものが流量出力電圧Vout1として出力される。
なお、本実施の形態では、出力回路72において、流量ゼロ時にVout1=3V、順方向に最大流量が流れた時にVout1=5V、逆方向に最大流量が流れた時にVout1=1Vとなるように設定されている。
そして、ゲイン変更回路80は、図12に示すように、スイッチ81,82,83,84と、電圧増幅回路85と、電圧比較回路86と、インバータIC87とを備えた回路である。ここで、電圧比較回路86は、コンパレータICと抵抗器等で構成され、入力電圧値(Vout1)が基準電圧値より低い場合に出力が「H」レベルとなり、基準電圧値よりも高い場合に出力が「L」レベルとなるように設定されている。なお、本実施の形態では、基準電圧値は3Vに設定されている。各スイッチ81〜84は、P端子に「H」レベルの信号が入力されるとONし、P端子に「L」レベルの信号が入力されるとOFFするようになっている。
また、電圧増幅回路85は、オペアンプICと抵抗器等で構成された非反転増幅式の増幅回路であり、入力電圧値(Vout1)を予め定められた増幅率で増幅させたものを出力するようになっている。例えば、増幅率が10倍に設定されている場合には、入力電圧値が0.1V変化したとき、出力電圧値が1Vとなる。ここで、電圧増幅回路85における増幅率は、外部から調整することができるようになっている。これにより、用途に応じて流量に対する出力値(Vout2)を使用者側で簡単に設定することができる。なお、本実施の形態では、電圧増幅回路85における増幅率は10倍に設定されている。
また、インバータIC87は、出力を反転させるものであり、例えば、「L」レベルの信号が入力された場合には、「H」レベルの信号を出力するようになっている。
このようなゲイン変更回路80では、出力回路72からの出力が3〜5V(順方向の流れ)の場合、電圧比較回路86から「L」レベルの信号が出力される。このため、スイッチ81,82はOFFとなり、スイッチ83,84はONとなる。その結果、ゲイン変更回路80からの出力Vout2は、出力回路71からの出力がそのまま出力される(Vout2=Vout1)。
一方、出力回路72からの出力が1〜3V(逆方向の流れ)の場合、電圧比較回路86から「H」レベルの信号が出力される。このため、スイッチ81,82はONとなり、スイッチ83,84はOFFとなる。その結果、ゲイン変更回路80からの出力Vout2は、出力回路71からの出力(Vout1)が電圧増幅回路85により予め定められた増幅率で増幅されたものが出力される。
そして、測定チップ11がセンサ基板21に実装されると、測定チップ11の溝13は、センサ基板21の溝23と重なり合う。よって、図1に示すように、測定チップ11が実装されたセンサ基板21を、ボディ41に対して、積層体50およびシールパッキン48を介して密着すると、ボディ41の流路空間44において、センサ基板21と測定チップ11との間に、測定チップ11の溝13やセンサ基板21の溝23などからなる細長い形状のセンサ流路Sが形成される。そのため、センサ流路Sには、流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhが橋を渡すように設けられることになる。
次に、上記した構成を有する熱式流量センサ1の作用について説明する。熱式流量センサ1においては、順方向の流れの場合(吸引時)には、入口ポート42を介して入口流路43へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間44にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、出口流路45を介して出口ポート46からボディ41の外部に流れ出す。
一方、逆方向の流れの場合(リリース時)には、出口ポート46を介して出口流路45へ流れ込んだ被測定流体は、流路空間44にて、主流路Mへ流れ込むものと、センサ流路Sへ流れ込むものとに分流される。そして、主流路Mおよびセンサ流路Sから流れ出した被測定流体は、合流して、入口流路43を介して入口ポート42からボディ41の外部に流れ出す。
ここで、被測定流体が順方向あるいは逆方向のいずれの方向に流れても、センサ流路Sへ流れ込む被測定流体は、積層体50内における3層のメッシュ部51Mを通過した後に、センサ流路Sに流れ込む。したがって、非常に流れが整えられた状態の被測定流体が、センサ流路Sを流れる。
そして、センサ流路Sを流れる被測定流体は、センサ流路Sに橋設された発熱抵抗体Rhから熱を奪う。そうすると、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路70(定温度差回路71)により、流体温度検出抵抗体Rtと発熱抵抗体Rhとが一定の温度差になるように制御される。
また、センサ基板21の裏面側に設けられた電気回路70(出力回路72)により、直列に接続され定電圧Vcが印可された上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが算出される。このとき、被測定流体が順方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が低下し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が増加するため、中点電位Voutが増加する。一方、被測定流体が逆方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が増加し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が低下するため、中点電位Voutは低下する。このため、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
そして、ゲイン変更回路80からの出力Vout2が流量センサ1の測定信号として出力される。ここで、被測定流体が順方向の流れの場合、つまり吸引時には、出力回路72からの出力Vout1が測定信号として出力される。一方、被測定流体が逆方向の流れの場合、つまりリリース時には、ゲイン変更回路80により出力回路72からの出力Vout1が予め定められた増幅率(本実施の形態では10倍)で増幅されたものが測定信号として出力される。
このときの出力の一例を、図13に示す。図13は、流量と出力電圧との関係を示したものである。図13から明らかなように、被測定流体が順方向に流れた場合(吸引時)には、流量が大きくなるにつれて出力が大きくなる。逆に、被測定流体が逆方向に流れた場合(リリース時)には、流量が大きくなるにつれて出力が小さくなる。そして、被測定流体が逆方向に流れた場合(リリース時)のセンサ感度が高められている。これにより、リリース時に流量を絞ったとしても、確実にリリースの状態を判別することができる。また、熱式流量センサ1では、リニアな出力特性を得ることができる。これらのことから、熱式流量センサ1を使用することにより、吸引時、吸着時、およびリリース時の状態判別を安定して行うことができる。
続いて、フルスケール流量を1L/minとした場合について説明する。そこで、フルスケール流量が1L/minの熱式流量センサの概略構成を図14に示す。図14は、熱式流量センサ1Aを示す断面図である。図14に示すように、熱式流量センサ1Aは、熱式流量センサ1とほぼ同様の構成を有するものであるが、流路空間44に積層体50の代わりに積層体50Aが装着されている点が異なる。すなわち、熱式流量センサ1Aには、主流路Mの断面積を小さくするための積層体50Aが流路空間44に装着されている。このため、熱式流量センサ1と異なる点を中心に説明し、熱式流量センサ1と同様の構成のものについては、同じ符号を付してその説明を省略する。
そこで、積層体50Aについて、図15を用いて説明する。なお、図15は、積層体50Aの構造を示す分解斜視図である。積層体50Aは、図15に示すように、3種類の薄板を合計11枚積層したものである。すなわち、下から順に、メッシュ板51、両端開口板53、溝付両端開口板56、メッシュ板51、溝付両端開口板56,56、メッシュ板51、溝付両端開口板56,56,56、およびメッシュ板51が積層されて接着されたものである。すなわち、積層体50Aは、積層体50におけるスペーサ52の代わりに、両端開口板53と溝付両端開口板56を用いたものである。
ここで、両端開口板53について、図16を用いて説明する。なお、図16(a)は両端開口板53を示す平面図であり、図16(b)は図16(a)におけるA−A断面図である。両端開口板53は、図16に示すように、外周部53Bと中央部53Dとを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、両端開口板53には、その両端に開口部63が形成されている。なお、両端開口板53の厚さは、0.5mmである。
また、溝付両端開口板56について、図17を用いて説明する。なお、図17(a)は溝付両端開口板56を示す平面図であり、図17(b)は図17(a)におけるA−A断面図であり、図17(c)は図17(a)におけるB−B断面図である。溝付両端開口板56は、図17に示すように、外周部56Bと中央部56Dとを残し、中央部56Dに溝56Eが形成されるようにエッチング加工されたものである。すなわち、溝付両端開口板56は、両端開口板53の中央部53D(図16参照)に溝56Eを設けたものである。そして、中央部56Dには、片面に3本の溝56Eが形成されている。この溝56Eの深さは0.35mmであり、溝55Eの幅は1.1mmである。そして、隣り合う溝の間隔は0.2mmとなっている。なお、溝付両端開口板56の厚さは、0.5mmである。
これらメッシュ板51、両端開口板53、および溝付両端開口板56を、図15に示すように積層して接着した積層体50Aをボディ41に形成された流路空間44に装着することにより、図14に示すように、両端開口板53の中央部53D、および溝付両端開口板56の中央部56Dによって、主流路Mの断面積が減少している。これにより、被測定流体のバイパス比が変化しフルスケール流量が1L/minとなるようにされている。このように、積層体の構成を変更することにより、任意の流量レンジを設定することができるようになっているのである。
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る熱式流量センサ1によれば、ボディ41に形成された流路空間44に積層体50を装着して、主流路Mを構成することにより、被測定流体の最適なバイパス比を設定することができるため、リニアな出力特性を得ることができる。また、積層体50には、主流路Mとセンサ流路Sとの間に配置される3層のメッシュ部51Mが備わっている。これにより、センサ流路Sに流れ込む被測定流体の流れが整えられる。したがって、非常に安定した出力を得ることができる。
さらに、測定チップ11に上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、発熱抵抗体Rt、および流体温度検出抵抗体Rtを設け、電気回路70により、発熱抵抗体Rhと流体温度検出抵抗体Rtとが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に基づき被測定流体の流量を測定する。そして、出力回路72からの出力Vout1をゲイン変更回路80にて処理したものを最終的な出力とする。これにより、被測定流体が逆方向に流れた場合(リリース時)のセンサ感度が高められるので、リリース時に流量を絞ったとしても、確実にリリースの状態を判別することができる。したがって、熱式流量センサ1を使用することにより、吸引時、吸着時、およびリリース時の状態判別を正確かつ安定して行うことができる。
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態においては、ゲイン変更手段を回路で構成しているが、図18に示すように、マイクロコンピュータ90を出力回路72に接続して、マイクロコンピュータ90にてプログラムソフトによる処理を行うようにしてもよい。また、ゲイン変更手段は、電気回路70内に予め組み組んでおくこともできるし、後から別付けすることもできる。
さらに、上記した実施の形態では、積層体として2種類のものを例示したが、これだけに限られず、各薄板51,52,53,56を任意に組み合わせて積層体を構成することができる。これにより、フルスケール流量を任意に変更することができる。
さらに、上記した実施の形態では、各薄板の形状を得るためにエッチング加工を用いてるが、エッチング加工の他、パンチング加工やプレス加工など各薄板の形状を得られるものであれば加工方法は問わない。
実施の形態に係る熱式流量センサ(フルスケール流量5L/min)の概略構成図である。 ボディの平面図である。 図2のA−A断面図である。 図1に示す積層体の分解斜視図である。 メッシュ板を示す図であり、(a)が平面図、(b)がA−A断面図である。 図5のメッシュ部の拡大図である。 スペーサを示す図であり、(a)が平面図、(b)がA−A断面図である。 センサ基板の斜視図である。 測定チップの平面図である。 定温度差回路の回路図である。 出力回路の回路図である。 ゲイン変更回路の構成を示すブロック図である。 実施の形態に係る熱式流量センサの出力特性を示す図である。 別の形態に係る熱式流量センサ(フルスケール流量1L/min)の概略構成図である。 図14に示す積層体の分解斜視図である。 両端開口板を示す図であり、(a)が平面図、(b)がA−A断面図である。 溝付両端開口板を示す図であり、(a)が平面図であり、(b)がA−A断面図であり、(c)がB−B断面図である。 ゲイン変更手段の別構成を示す図である。 双方向検知ができる従来の熱式流量センサの出力特性を示す図である。 双方向検知ができる従来の熱式流量センサの時間に対する出力特性を示す図である。
符号の説明
1 熱式流量センサ
11 測定チップ
13 測定チップの溝
14,15,16,17,18,19 抵抗体用電極
21 センサ基板
23 センサ基板の溝
24,25,26,27,28,29 電気回路用電極
31,32,33,34 電気素子
41 ボディ
44 流路空間
50 積層体
51 メッシュ板
51M メッシュ部
52 スペーサ
53 両端開口板
56 溝付両端開口板
56E 溝
70 電気回路
80 ゲイン変更回路
M 主流路(バイパス流路)
R1 上流温度検知抵抗体
R2 下流温度検知抵抗体
Rh 発熱抵抗体
Rt 流体温度検知抵抗体
S センサ流路

Claims (7)

  1. 双方向で被測定流体の流量を測定可能な熱式流量センサにおいて、
    被測定流体の流量を計測するための抵抗体が架設されたセンサ流路と、
    前記センサ流路に対するバイパス流路と、
    抵抗体を用いた計測原理を行うための電気回路と、
    被測定流体が特定方向に流れた場合に前記電気回路から出力される電気信号のゲインを大きくするゲイン変更手段とを有し、
    前記バイパス流路は、前記電気回路に接続する電気回路用電極が表面に設けられた基板を、側面開口部を備える流体流路が形成されたボディに対し、微細加工した薄板を複数枚積層した積層体を介して、側面開口部を塞ぐようにして密着させることにより形成され、
    前記センサ流路は、抵抗体とその抵抗体に接続する抵抗体用電極とが設けられた測定チップを、抵抗体用電極と電気回路用電極とを接着して基板に実装することにより、前記測定チップあるいは前記基板の少なくとも一方に設けられた溝によって形成されており、
    前記測定チップには、
    流れ方向上流側に設けられた上流温度検出抵抗体と、
    流れ方向下流側に設けられた下流温度検出抵抗体と、
    前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体との間に設けられ、前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体とを加熱する発熱抵抗体と、
    被測定流体の温度を検出する流体温度検出抵抗体と、
    が備わり、
    前記電気回路は、前記発熱抵抗体と前記流体温度検出抵抗体とが一定の温度差になるように制御し、前記上流温度検出抵抗体と前記下流温度検出抵抗体との温度差に応じた電気信号を出力して前記ゲイン変更手段に入力することを特徴とする熱式流量センサ。
  2. 請求項1に記載する熱式流量センサにおいて、
    前記ゲイン変更手段は、
    前記電気回路からの電気信号を検出する電圧比較回路と、
    電気信号の出力先を切り換えるスイッチと、
    電気信号の出力を増幅する増幅回路と、
    を含むことを特徴とする熱式流量センサ。
  3. 請求項2に記載する熱式流量センサにおいて、
    前記増幅回路は、電気信号の増幅率を外部から調整可能であることを特徴とする熱式流量センサ。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する熱式流量センサにおいて、
    前記積層体に、前記薄板の両端にメッシュが形成されたメッシュ板が含まれていることを特徴とする熱式流量センサ。
  5. 請求項4に記載する熱式流量センサにおいて、
    前記積層体は、前記薄板の縁部を残してその他の部分を開口させたスペーサを介して前記メッシュ板を積層したものであることを特徴とする熱式流量センサ。
  6. 請求項4に記載する熱式流量センサにおいて、
    前記積層体は、前記薄板の両端に開口部が形成されるとともに、中央に溝が形成された溝付両端開口板を介して前記メッシュ板を積層したものであることを特徴とする熱式流量センサ。
  7. 請求項6に記載する熱式流量センサにおいて、
    前記積層体は、前記薄板の両端に開口部が形成された両端開口板を含んでいることを特徴とする熱式流量センサ。
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