〔実施例1〕
以下、本発明の熱式流量計を具体化した好適な実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。そこで、実施例1の実施の形態に係る熱式流量計の概略構成を図1に示す。図1は、熱式流量計10の分解斜視図である。図1に示すように、実施例1の実施の形態に係る熱式流量計10は、ボディ20と、カバー30と、流路ブロック40と、センサ基板50とを有している。そして、流路ブロック40がボディ20に装着された状態で、センサ基板50がボディ20とカバー30とにより狭持されてボディ20内に固定されている。これにより、熱式流量計10内にセンサ流路Sとセンサ流路Sに対するバイパス流路Bとが形成されている(図10参照)。
ボディ20の片側(図1では左側)に、流路ブロック40を収容する流路空間21が形成されている。この流路空間21は、図中手前側が開口しており、この開口端面にセンサガスケット51を装着するためのガスケット装着溝22が形成されている。また、流路空間21の開口面とは反対側の面(図1では奥側面)21bには、流路ブロック40が面21bに密着しないようにする(隙間21s(図10参照)を形成する)ための突起23と段差24とが設けられている。この突起23及び段差24により、流路ブロック40が面21bとの間に隙間ができた状態で流路空間21内に収容されるようになっている。なお、この隙間は、後述するようにバイパス流路Bの一部をなしている(図10参照)。
そして、流路空間21の下面に流体入口11及び流体出口12が開口している。つまり、流体入口11及び流体出口12は、図2に示すように、ボディ20の底面に設けられている。なお、図2は、ボディの底面を示す下面図である。この流体入口11及び流体出口12は、ボディ20の奥行き方向の中心線Cからずれてボディ20の端部(図1では奥側端部)に形成されている。そして、流体入口11及び流体出口12の周りにガスケット13を装着するガスケット装着溝14が設けられている。なお、ガスケット13は、熱式流量計10を取り付ける配管ブロック90等の接続機器と熱式流量計10との接続部分での流体の漏れを防止するためのものである。
また、ボディ20の底面には、カバー30を組み付けるための係合穴25a,25b,25cが設けられている。これらの係合穴25a,25b,25cは、ボディ20の奥行き方向の中心に対して流体入口11及び流体出口12とは反対側に配置されている。同様に、ボディ20の上面にも、係合穴25dが設けられている。また、ボディ20の流路空間21が形成された上部には、カバー30をネジ止めするためのネジ孔26が形成されている。さらに、ボディ20の両端部には、配管ブロック90などの接続機器へ接続するための接続部27a,27bが設けられている。これらの接続部27a,27bにはそれぞれ、ボルト固定又はピン固定ができるようにボルト挿通孔28とピン挿通孔29が形成されている。なお、本実施の形態では、図1に示す配管ブロック90にピン固定することができるようになっている。
流路ブロック40は、図1に示すように、複数種の薄板を積層して構成したものである。本実施の形態では、5種類の薄板を合計10枚積層して流路ブロック40を構成することにより、熱式流量計10のフルスケール流量を10L/minとし、測定流量レンジを0〜10L/minとしている。具体的には、奥から手前に向かって(センサ基板50に向かって)、図3に示すように、第1メッシュ板41、第1スペーサ42、第1メッシュ板41、第1スペーサ42、第1メッシュ板41、第1スペーサ42、第1メッシュ板41、第2スペーサ43、第2メッシュ板44、及び中央開口板45が順に積層されて接着されたものである。なお、図3は、流路ブロック40を構成する薄板の積層順を説明するための図である。これらの薄板41〜45は、ともに厚さが0.3mm以下であり、エッチングにより各形状の加工(マイクロマシニング加工)がなされたものである。なお、熱式流量計10のフルスケール流量は、流路ブロック40を構成する薄板の形状(組み合わせ)を変更すると、バイパス流路Bの断面積が変化し被測定流体のバイパス比が変わるので、任意に設定することができる。
ここで、個々の薄板について説明する。まず、第1メッシュ板41について、図4及び
図5を用いて説明する。なお、図4は、第1メッシュ板41を示す平面図である。図5は、第1メッシュ板41のメッシュ部41mの拡大図である。第1メッシュ板41は、図4に示すように、略T字形をなしており、上部に位置決め部41aが形成されるとともに、両端部にメッシュ部41mが形成されている。位置決め部41aは、流路空間21内での位置決めを行う部位であり、その外周端が流路空間21の内壁に密着するようになっている。一方、メッシュ部41mは、図5に示すように、メッシュを構成する孔(直径0.2mm)の中心間距離がすべて0.27mmとなるように形成されている。すなわち、各孔の中心が正三角形の各頂点となるように孔が形成されている。このメッシュ部41mは、被測定流体の流れを整える整流機構をなすものである。なお、第1メッシュ板41の厚さは、0.1mmである。
次に、第1スペーサ42について、図6を用いて説明する。なお、図6は、第1スペーサ42を示す平面図である。第1スペーサ42は、図6に示すように、位置決め部42a及び外周部42bを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、第1スペーサ42には、開口部42oが形成されている。なお、第1スペーサ42の厚さは、0.3mmである。また、位置決め部42aの投影形状は、第1メッシュ板41の位置決め部41aと同じである。
次に、第2スペーサ43について、図7を用いて説明する。なお、図7は、第2スペーサ43を示す平面図である。第2スペーサ43は、図7に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、外周部43bを残すようにエッチング加工されたものである。これにより、第2スペーサ43には、開口部43oが形成されている。なお、第2スペーサ43の厚さは、0.3mmである。
次に、第2メッシュ板44について、図8を用いて説明する。なお、図8は、第2メッシュ板44を示す平面図である。第2メッシュ板44は、図8に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、両端部にメッシュ部44mが形成されている。この第2メッシュ板44の厚さは、0.1mmである。なお、メッシュ部44mは、第1メッシュ板41のメッシュ部41mと同様の構成であり、被測定流体の流れを整える整流機構をなすものである。
最後に、中央開口板45について、図9を用いて説明する。なお、図9は、中央開口板45を示す平面図である。中央開口板45は、図9に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、中央に開口部45oが形成されている。この中央開口板45の厚さは0.3mmである。
そして、上記した薄板41〜45を図3に示す左側から順番に積層して接着した流路ブロック40を流路空間21に装着することにより、図10に示すように、流路空間21及び流路ブロック40によってバイパス流路Bが形成される。より詳細に言うと、流路空間21の面21bと流路ブロック40との間の隙間21s、第1スペーサ42の開口部42o、第2スペーサ43の開口部43o、及び中央開口板45の開口部45oによりバイパス流路Bが形成されている。なお、図10は、熱式流量計10内の流路構成を示す図である。
また、第1メッシュ板41のメッシュ部41m、第1スペーサ42の開口部42o、第2スペーサ43の開口部43o、第2メッシュ板44のメッシュ部44m、及び中央開口板45の開口部45oにより、連絡流路15,16が形成されている。連絡流路15は、流体入口11とバイパス流路B及びセンサ流路Sとを連通させるものであり、連絡流路16は、流体出口12とバイパス流路B及びセンサ流路Sとを連通させるものである。
そして、連絡流路15,16に、メッシュ部41mが4層とメッシュ部44mが1層とで合計5層のメッシュ部が配置されている。各メッシュ部の間隔は、他の薄板42,43の厚さ分(0.3mm)となっている。これにより、被測定流体がメッシュ部41m,44mを通過するたびに、被測定流体の流れの乱れが減少していく。そのため、流れが整えられた被測定流体を、センサ流路Sに流し込むことができる。
上記した流路ブロック40に対してセンサガスケット51を介して配置されるセンサ基板50は、測定流量を電気信号として出力するものである。このため、センサ基板50には、図11に示すように、ベースとなる2層構造のプリント基板52の表面側(ボディ20への装着面側)において図中右側半分の中央付近に測定チップ60が実装されている。一方、測定チップ60が実装されていない残りの半分には、測定チップ60に電気的に接続される定温度差回路及び出力回路(詳細は後述する)を構成する電子部品群が搭載されている。これらの電子部品群は、図11の領域A1内(非ハッチング領域内)と図12の領域A2内(非ハンチング領域内)に配置されている。また、センサ基板50の裏面側には、図12に示すように、リブ受け面50a,50b,50c,50d,50eが設けられている。これらのリブ受け面50a,50b,50c,50d,50eは、後述するカバー30のリブ33a,33b,33c,33d,33e(図17参照)が当接する部位である。なお、図11は、センサ基板50の表面を示す平面図である。図12は、センサ基板50の裏面を示す平面図である。
そして、プリント基板52の測定チップ60が実装される部分には、図13に示すように、溝53が加工されている。なお、図13は、プリント基板52の表面を示す平面図である。そして、この溝53の両側に、回路用電極54,55,56,57,58,59が設けられている。これらの電極54〜59は、プリント基板52の中に形成されたパターン配線を介して、後述する定温度差回路及び出力回路と電気的に接続されている。なお、図11及び図12に示すハッチング領域には、パターン配線が形成されていない。これにより、図11及び図12に示すハッチング領域は、フラットな形状となっている。
ここで、測定チップ60について、図14を用いて説明する。なお、図14は、測定チップ60を示す平面図である。測定チップ60は、図14に示すように、シリコンチップ62に対して、半導体マイクロマシニングの加工技術を実施したものであり、このとき、チップ中央に溝63が加工されるとともに、抵抗体(熱線)用電極64,65,66,67,68,69がチップ両端に設けられる。
また、このとき、上流温度検出抵抗体R1が、抵抗体用電極65,67から延設されるとともに溝63の上に架設される。さらに、下流温度検出抵抗体R2が、抵抗体用電極67,69から延設されるとともに溝63の上に架設される。さらにまた、発熱抵抗体Rhが、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との間に、抵抗体用電極66,68から延設されるとともに溝63の上に架設される。また、測定チップ60においては、センサ流路Sの順方向上流側に流体温度検出抵抗体Rtが、抵抗体用電極64,66から延設される。
そして、測定チップ60の抵抗体用電極64,65,66,67,68,69を、センサ基板50の回路用電極54,55,56,57,58,59(図13参照)のそれぞれと、半田リフローによる接合又は導電性接着剤などによる接合によって、測定チップ60をセンサ基板50に実装している。したがって、測定チップ60がセンサ基板50に実装されると、測定チップ60に設けられた流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhは、測定チップ60の抵抗体用電極64〜69と、センサ基板50の回路用電極54〜59(図13参照)とを介して、センサ基板50の回路配置領域A1,A2に設けられた図15の定温度差回路及び図16の出力回路に電気的に接続される。
ここで、図15に示す定温度差回路は、発熱抵抗体Rhを、流体温度検出抵抗体Rtで検出される流体温度と一定の温度差をもつように制御するための回路である。また、図16に示す出力回路は、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に相当する電圧値を出力するための回路である。この出力回路では、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2とが直列に接続され、定電圧Vcが印加されるようになっている。そして、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが測定信号として出力されるようになっている。
また、測定チップ60がセンサ基板50に実装されると、測定チップ60の溝63は、センサ基板50の溝53と重なり合う。よって、図10に示すように、測定チップ60が実装されたセンサ基板50を、ボディ20に対して、流路ブロック40及びセンサガスケット51を介して密着すると、ボディ20の流路空間21において、センサ基板50と測定チップ60との間に、測定チップ60の溝63やセンサ基板50の溝53などからなる細長い形状のセンサ流路Sが形成される。そのため、センサ流路Sには、流体温度検出抵抗体Rt、上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、および発熱抵抗体Rhが橋を渡すように設けられることになる。
このようにして測定チップ60が実装されたセンサ基板50は、ボディ20内でボディ20とカバー30とにより狭持されて固定されている。つまり、カバー30によってセンサ基板50をボディ20に押さえ付けて、センサ基板50を立てて(鉛直に)配置している。これにより、センサ基板50の大きさに制限されることなく、熱式流量計10の奥行き方向における小型化、つまり薄型化が図られている。具体的には、奥行き寸法が従来の流量計と比べて3割程度小さくなっている。なお、本実施の形態では、奥行き寸法が7mmである。そして、この小型化に伴って熱式流量計10の重量も減るため、軽量化も図られている。
また、センサ基板50をボディ20に対してネジやモールド樹脂などによって固定する必要がなくなる。そのため、センサ基板50を固定するためのスペースを削減することができるので、熱式流量計10の小型化を図ることができる。そして、この小型化に伴って熱式流量計10の重量も減るので、熱式流量計10の軽量化を図ることができる。また、センサ基板50を固定するための部品を削減することができるので、熱式流量計10のさらなる軽量化を図ることができる。
そして、センサ基板50は、ボディ20の奥行き方向の中心線Cに対して、流体入口11及び流体出口12と反対側(手前側)に位置している。これにより、流路ブロック40が、流体入口11及び流体出口12とセンサ基板50との間に配置される。このような配置構成にすることにより、流路ブロック40を限られたスペースに効率的に配置することができる。このことによっても、熱式流量計10の薄型化及び軽量化が図られている。
ここで、センサ基板50をボディ20とカバー30とにより狭持して固定するため、ボディ20の流路空間21の開口端面に形成されたガスケット装着溝22に装着されたセンサガスケット51とセンサ基板50とが密着していないと、被測定流体の外部漏れが発生して流量を正確に計測することができない。
そこで、カバー30の内面には、図17に示すように、5つのリブ33a,33b,33c,33d,33eが設けられている。なお、図17は、カバーの概略構成を示す斜視図である。これらのリブ33a,33b,33c,33d,33eは、カバー30をボディ20に装着したときに、センサ基板50の裏面側に形成されたリブ受け面50a,50b,50c,50d,50eにそれぞれ接触する。そして、これらのリブ受け面50a,50b,50c,50d,50eは、センサ基板50において、センサガスケット51が当接する部分の裏側、及び測定チップ60が実装された領域の裏側に位置している。これ
により、センサ基板50のうち被測定流体が流れる領域付近をボディ20に押しつけることができる。その結果、センサ基板50とボディ20に装着されたセンサガスケット51との密着性を高めることができる。また、センサ基板50のうちセンサガスケット51が接触する部分はパターン配線が設けられていないためフラットになっているので、センサ基板50とセンサガスケット51との密着性をより高めることができる。その結果として、被測定流体の外部漏れを効果的に防止することができる。
また、カバー30の底面(図17では左側)には、3つの係合突起31a,31b,31cが形成され、カバー30の上面(図17では右側)には、係合突起31dが形成されている。こららの係合突起31a,31b,31c,31dは、カバー30をボディ20に取り付けたときに、それぞれボディ20に形成された係合穴25a,25b,25c,25dに係合するようになっている。より具体的には、係合突起31a,31b,31cを係合穴25a,25b,25cに係合させた状態で、カバー30上部をボディ20上部に近接(接触)させると、係合突起31dが係合穴25dにスナップフィット結合するようになっている。
ここで、係合突起31a,31b,31cのボディ取付面側には、先細形状となるテーパ部32a,32b,32cが形成されている。このテーパ部32a,32b,32cにより、係合穴25a,25b,25cに係合突起31a,31b,31cを係合させると、カバー30がボディ20に対して係合部分(底部)で接し係合部分から離れるしたがって(上方に向かって)カバー30とボディ20との間が徐々に離れるように、カバー30が斜めに配置される。
このため、カバー30をボディ20に取り付ける際、カバー30を斜め上方から取り付けることができるので、センサ基板50に設けられた電子部品群にカバー30内側のリブ33a〜33eが当たらない。これにより、センサ基板50に設ける回路の設計自由度が大きくなるため、センサ基板50をボディ20内に効率良く収容することができる。このことは、熱式流量計10の小型化に寄与する。また、カバー30の組付け性も向上するため、熱式流量計10の生産効率も向上する。
そして、カバー30は、上部が強制的にボディ20に接触させられて、係合突起31dが係合穴25dにスナップフィット結合させられるとともに、ネジ挿通孔34に挿通されたネジ35がボディ20のネジ孔26に螺合させられる。このため、カバー30とボディ20とによるセンサ基板50の狭持力を高めることができる。また、カバー30のボディ20への取り付けにおいて、ネジ止めする箇所が1箇所しかない。このように、熱式流量計10では、従来の熱式流量計に比べ、カバー30をボディ20に取り付けるためのネジ数が低減されている。このことによっても、熱式流量計10は軽量化が図られている。
さらに、ネジ止めされる部分が流路ブロック40の配置位置近傍であるため、センサ基板50とセンサガスケット51との密着性を一層高めることができる。これにより、被測定流体の外部漏れを確実に防止することができる。
続いて、上記した構成を有する熱式流量計10の作用について説明する。熱式流量計10においては、順方向の流れの場合には、配管ブロック90から流体入口11を介して流路空間21内に流れ込んだ被測定流体は、流路空間21に装着された流路ブロック40により、センサ流路Sへ流れ込むものと、バイパス流路Bへ流れ込むものとに分流される。そして、センサ流路S及びバイパス流路Bから流れ出した被測定流体は、合流して、流体出口12を介して配管ブロック90に流れ出す。
一方、逆方向の流れの場合には、配管ブロック90から流体出口12を介して流路空間21内に流れ込んだ被測定流体は、流路空間21に装着された流路ブロック40により、
センサ流路Sへ流れ込むものと、バイパス流路Bへ流れ込むものとに分流される。そして、センサ流路S及びバイパス流路Bから流れ出した被測定流体は、合流して、流体入口11を介して配管ブロック90に流れ出す。
ここで、被測定流体が順方向あるいは逆方向のいずれの方向に流れても、センサ流路Sへ流れ込む被測定流体は、流路ブロック40内におけるメッシュ部41m(図4参照),44m(図8参照)を通過した後に、センサ流路Sに流れ込む。したがって、非常に流れが整えられた状態の被測定流体が、センサ流路Sを流れる。そして、センサ流路Sを流れる被測定流体は、センサ流路Sに橋設された発熱抵抗体Rhから熱を奪う。
そうすると、センサ基板50に設けられた図15に示す定温度差回路により、流体温度検出抵抗体Rtと発熱抵抗体Rhとが一定の温度差になるように制御される。また、センサ基板50に設けられた図16に示す出力回路により、直列に接続され定電圧Vcが印加された上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との中点電位Voutが測定信号として出力される。このとき、被測定流体が順方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が低下し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が増加するため、中点電位Voutが増加する。一方、被測定流体が逆方向の流れの場合には、上流温度検出抵抗体R1の温度(抵抗値)が増加し、下流温度検出抵抗体R2の温度(抵抗値)が低下するため、中点電位Voutは低下する。このため、被測定流体の流れ方向を検知することができる。
そして、バイパス流路Bを流路空間21に装着した流路ブロック40により形成しているため、流路ブロック40を構成する薄板の組み合わせを変更することにより、各測定レンジに最適なバイパス比を設定することができる。
例えば、中流量レンジ(1〜5L/min)であれば、図18に示す流路ブロック40aを用いればよい。なお、図18は、流路ブロック40aを構成する薄板の積層順を説明するための図である。流路ブロック40aは、奥から手前に向かって(センサ基板に向かって)、図18に示すように、第1メッシュ板41、第1流量調整板46、第1メッシュ板41、第2流量調整板47、第1メッシュ板41、第2流量調整板47、第1メッシュ板41、第3流量調整板48、第2メッシュ板44、及び中央開口板45が順に積層されて接着されたものである。
ここで、第1流量調整板46は、図19に示すように、位置決め部46a、外周部46b及び流量調整部46cを残すようにエッチング加工されたものである。なお、図19は、第1流量調整板46を示す平面図である。これにより、第1流量調整板46には、略H形状の開口部46oが形成されている。なお、第1流量調整板46の厚さは、0.3mmである。また、位置決め部46aの投影形状は、第1メッシュ板41の位置決め部41aと同じである。
また、第2流量調整板47は、図20に示すように、位置決め部47a、外周部47b及び流量調整部47cを残すようにエッチング加工されたものである。なお、図20は、第2流量調整板47を示す平面図である。これにより、第2流量調整板47には、メッシュ部41mや44mと同一形状の開口部47oが形成されている。なお、第2流量調整板47の厚さは、0.3mmである。また、位置決め部47aの投影形状は、第1メッシュ板41の位置決め部41aと同じである。
また、第3流量調整板48は、図21に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、外周部48b及び流量調整部48cを残すようにエッチング加工されたものである。なお、図21は、第3流量調整板48を示す平面図である。これにより、第
3流量調整板48には、メッシュ部41mや44mと同一形状の開口部48oが形成されている。なお、第3流量調整板48の厚さは、0.3mmである。
このように、第1スペーサ42及び第2スペーサ43に替えて、第1流量調整板46、第2流量調整板47、及び第3流量調整板48を組み入れた流路ブロック40aを用いることにより、バイパス流路Bの流路面積が小さくなる。そして、上記した流路ブロック40aを用いることにより、熱式流量計10のフルスケール流量を5L/minとし、測定流量レンジを0〜5L/minとすることができる。
また、例えば、小流量レンジ(1L/min以下)であれば、図22に示す流路ブロック40bを用いればよい。なお、図22は、流路ブロック40bを構成する薄板の積層順を説明するための図である。流路ブロック40bは、奥から手前に向かって(センサ基板50に向かって)、図22に示すように、第4流量調整板49、第1メッシュ板41、第2流量調整板47、第1メッシュ板41、第2流量調整板47、第1メッシュ板41、第2流量調整板47、第1メッシュ板41、第3流量調整板48、第2メッシュ板44、及び中央開口板45が順に積層されて接着されたものである。
ここで、第4流量調整板49は、図23に示すように、位置決め部49a及び流量調整部49cを残すようにエッチング加工され、略T形状をなすものである。なお、図23は、第4流量調整板49を示す平面図である。そして、流量調整部49cには、嵌合孔49hが形成されている。この嵌合孔49hは、第4流量調整板49を流路空間21内に装着したときに、流路空間21の面21b上に形成された突起23に嵌合するようになっている。なお、第4流量調整板49の厚さは、0.3mmである。
このように、第4流量調整板49を追加するとともに、第1スペーサ42及び第2スペーサ43に替えて、第2流量調整板47、及び第3流量調整板48を組み入れた流路ブロック40bを用いることにより、バイパス流路Bの流路面積がさらに小さくなる。そして、上記した流路ブロック40bを用いることにより、熱式流量計10のフルスケール流量を0.5L/minとし、測定流量レンジを0〜0.5L/minとすることができる。
このようにして、熱式流量計10では、流路ブロックの構成を変更することにより、各測定レンジに最適なバイパス比を設定することができるため、双方向においてリニアな出力特性を得ることができるので、被測定流体の流量を双方向において正確に計測することができる。また、センサ流路Sには非常に安定した流れの被測定流体が流れるため、出力の振幅幅が小さく非常に安定した出力を得ることができる。そして、電気的フィルタを用いていないので、応答性を損なうこともない。
このため、例えば、熱式流量計10を半導体チップマウンティング時のハンドリングにおける真空吸着の吸着およびリリースの確認に用いた場合、吸着およびリリースを正確に判断することができる。なぜなら、吸着時と非吸着時におけるオリフィス内の流量を瞬時に正確かつ安定して計測することができるからである。したがって、吸着およびリリースの確認に熱式流量計10を利用することにより、実際には吸着しているにも関わらず、吸着していないと誤判断されることがなくなり吸着確認を正確に行うことができるとともに、リリースの確認も行うことができる。そして、熱式流量計10は、薄型化、小型化、及び軽量化が図られているため、チップマウンタの可動ヘッドに並べて設置した場合、従来のものに比べて可動ヘッドの慣性力を小さくすることができるので、マシンタクトを向上させることができる。また、流体入口11及び流体出口12が同一面に設けられているため、可動ヘッドへの取り付け性も非常に良い。
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る熱式流量計10によれば、ボディ20
とカバー30とで形成される空間内にセンサ基板50が鉛直に配置されている。また、被測定流体の出入口11,12が、ボディ20の同一面にボディ20の奥行き方向の中心線Cからずらされて配置されている。そして、センサ基板50に実装された測定チップ60が、測定流体の出入口11,12とは中心線Cに対して反対側に配置されるように、センサ基板50がボディ20とカバー30とに狭持されて固定されている。これらのことにより、流路ブロック40を限られたスペースに効率的に配置することができるとともに、センサ基板50の大きさに制限されることなく、熱式流量計10の奥行き方向における小型化、つまり薄型化を図ることができる。また、この小型化及びセンサ基板50の固定部品が不要となることから、熱式流量計10の軽量化も図ることができる。
そして、熱式流量計10では、ボディ20に形成された流路空間21に流路ブロック40を装着して、バイパス流路Bを構成することにより、被測定流体の最適なバイパス比を設定することができるため、リニアな出力特性を得ることができる。また、流路ブロック40には、バイパス路Bとセンサ流路Sとの間に配置される多層のメッシュ部41m,44mが備わっている。これにより、センサ流路Sに流れ込む被測定流体の流れが整えられる。従って、非常に安定した出力を得ることができる。さらに、測定チップ60に上流温度検出抵抗体R1、下流温度検出抵抗体R2、発熱抵抗体Rh、および流体温度検出抵抗体Rtを設け、電気回路により、発熱抵抗体Rhと流体温度検出抵抗体Rtとが一定の温度差になるように制御し、上流温度検出抵抗体R1と下流温度検出抵抗体R2との温度差に基づき被測定流体の流量を計測する。これにより、双方向の流量検知ができる。
〔実施例2〕
次に、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70の概略構成を図24に示す。図24は、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70の分解斜視図である。図24に示すように、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70は、ボディ72と、カバー74と、流路ブロック76と、センサ基板78とを有している。そして、流路ブロック76がボディ72に装着され、センサ基板78がボディ72に収容された状態でボディ72に固定されている。そして、カバー74をボディ72に取り付けている。これにより、実施例1と同様に、熱式流量計70内にセンサ流路Sとセンサ流路Sに対するバイパス流路Bとが形成されている。以下の説明では、実施例1と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
図25は、実施例2のセンサ基板78の表面を示す平面図である。図26は、実施例2のセンサ基板78の裏面を示す平面図である。図27は、実施例2のセンサ基板78を構成するプリント基板82の表面を示す平面図である。図26と図27に示すように、実施例1と異なる点として、センサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59にスルーホール84が設けられている。このスルーホール84は、センサ基板78の表面と裏面とを貫通する貫通孔である。なお、センサ基板78において、図25と図27に示すハッチング領域はセンサガスケット86が接触する部分であり、フラットな形状となっている。
ここで、測定チップ60をセンサ基板78に実装するときには、実施例1と同様に、測定チップ60の抵抗体用電極64,65,66,67,68,69(図14参照)と、センサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59のそれぞれとを、半田や導電性接着剤などの接合材料で接合する。そして、測定チップ60の抵抗体用電極64,65,66,67,68,69とセンサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59との間に供給した接合材料のうち、余分な接合材料はスルーホール84を介してセンサ基板78の裏面に流れる。そのため、測定チップ60の抵抗体用電極64,65,66,67,68,69とセンサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59との電極間における接合材料の充填量を均一に調整することができる。これにより、測定チップ60の実装高さの精度、すなわち、測定チップ60とセンサ基板78との間の距離の精度を向上させることができる。そのため、センサ流路Sにおいて、測定チップ60を所望の位置に正確に配置することができる。また、センサ流路Sにおいて、測定チップ60を被測定流体の流れ方向に沿って正確に配置することができる。したがって、熱式流量計70によれば、被測定流体の流量の計測精度が向上する。
また、図24に示すように、センサ基板78にネジ挿通孔88を設けており、このネジ挿通孔88にネジ89を通して、このネジ89をボディ72におけるネジ孔(不図示)に締結することにより、センサ基板78をボディ72に固定している。このように、センサ基板78を直接的にボディ72に固定しているので、センサ基板78が配置される位置を所望の位置に維持することができ、センサ流路Sにおいて測定チップ60が配置される位置を所望の位置に維持することができる。そのため、測定チップ60により被測定流体の正確な流量を安定して計測できる。したがって、熱式流量計70によれば、被測定流体の流量の計測精度が向上する。なお、本実施例では、2箇所でネジ89を締結しているが、ネジ89を締結する箇所の数は限定されず、1箇所であっても3箇所以上であってもよい。
なお、図24に示すように、ボディ72には、実施例1のボディ20と異なる点として、上面に係合穴25eが設けられている。また、図24や図28に示すようにカバー74には、実施例1のカバー30と異なる点として、上面(図28では右側)に係合突起31eが形成されている。そして、係合突起31a,31b,31c,31dを係合穴25a,25b,25c,25dに係合させるとともに、係合突起31eを係合穴25eに係合させて、カバー74をボディ72に固定する。図28は、カバー74の概略構成を示す斜視図である。
また、図29〜図31に示すように、実施例2のセンサガスケット86は、実施例1のセンサガスケット51と異なり、センサガスケット86の内周面91からさらに内側に突出して形成された突出部92に凸部94が設けられている。詳しくは、図29に示すように、凸部94は、突出部92において、突出部92の突出方向に対する鉛直方向の両端に形成されており、突出部92の突出方向に沿って形成されている。また、凸部94は、環状に形成されたセンサガスケット86の中心軸方向に盛り上がるように形成されている。そして、熱式流量計70を組み立てたときに、凸部94は、流路ブロック76とセンサ基板78の表面とに接触して弾性変形する。これにより、センサガスケット86が流路ブロック76やセンサ基板78に与える力を低減させることができ、流路ブロック76やセンサ基板78を保護しながら、被測定流体の外部漏れを防止して流量を正確に計測することができる。
また、流路ブロック76は、実施例1の流路ブロック40と異なる点として、4種類の薄板を合計10枚積層して構成されている。また、流路ブロック76の形状は、実施例1の流路ブロック40の形状と異なっている。流路ブロック76は、具体的には、奥から手前に向かって(センサ基板78に向かって)、図32に示すように、第1メッシュ板96、スペーサ98、第1メッシュ板96、スペーサ98、第1メッシュ板96、スペーサ98、第1メッシュ板96、スペーサ98、第2メッシュ板100、及び中央開口板102が順に積層されて接着されたものである。なお、図32は、流路ブロック76を構成する薄板の積層順を説明するための図である。
また、図33は第1メッシュ板96の平面図を示し、図34はスペーサ98の平面図を示し、図35は第2メッシュ板100の平面図を示し、図36は中央開口板102の平面図を示す。第1メッシュ板96は、図33に示すように、略T字形をなしており、上部に位置決め部96aが形成されるとともに、両側にメッシュ部96mが形成されている。スペーサ98は、図34に示すように、位置決め部98a及び外周部98bを残すようにエッチング加工されたものであり、開口部98oが形成されている。第2メッシュ板100は、図35に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、両側にメッシュ部100mが形成されている。中央開口板102は、図36に示すように、流路空間21の断面形状と同じ形状をなしており、中央に開口部102oが形成されている。
そして、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70は、第1メッシュ板96のメッシュ部96m、スペーサ98の開口部98o、第2メッシュ板100のメッシュ部100m、及び中央開口板102の開口部102oにより、連絡流路15,16を形成している。
以上、詳細に説明したように実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70によれば、センサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59にスルーホール84が設けられている。これにより、測定チップ60の抵抗体用電極64,65,66,67,68,69と、センサ基板78の回路用電極54,55,56,57,58,59のそれぞれとを接合材料で接合するときに、余分な接合材料はスルーホール84を介してセンサ基板78の裏面に流れる。そのため、測定チップ60の実装高さの精度、すなわち、測定チップ60とセンサ基板78との間の距離の精度を向上させることができる。したがって、センサ流路Sにおいて、測定チップ60を所望の位置に正確に配置することができ、また、測定チップ60を被測定流体の流れ方向に沿って正確に配置することができるので、被測定流体の流量の計測精度が向上する。
また、センサ基板78は、ネジ89によりボディ72に直接的に固定されているので、センサ流路Sにおいて測定チップ60が配置される位置を所望の位置に維持することができる。そのため、測定チップ60により被測定流体の正確な流量を安定して計測できるので、被測定流体の流量の計測精度が向上する。
このため、例えば、熱式流量計70を半導体チップマウンティング時のハンドリングにおける真空吸着の吸着およびリリースの確認に用いた場合、吸着およびリリースを正確に判断することができる。なぜなら、吸着時と非吸着時におけるオリフィス内の流量を瞬時に正確かつ安定して計測することができるからである。したがって、吸着およびリリースの確認に熱式流量計70を利用することにより、実際には吸着しているにも関わらず、吸着していないと誤判断されることがなくなり吸着確認を正確に行うことができるとともに、リリースの確認も行うことができる。
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態においては、流路ブロックとして3種類のものを例示したが、これだけに限られず、各薄板41〜49を任意に組み合わせて流路ブロックを構成することができる。
また、上記した実施の形態では、流体入口11及び流体出口12をボディ20,72の底面に設けているが、図1や図24においてボディ20,72の左側側面底部あるいは背面底部に設けることもできる。なお、この場合には、接続部27a,27bの形成位置も変更する必要がある。これにより、任意の流体機器に対して多様な配置で取り付けることができる。
また、実施例2のセンサ基板78と同様に、実施例1のセンサ基板50の回路用電極54,55,56,57,58,59にスルーホール84を設けることもできる。これにより、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70と同様に、実施例1の実施の形態に係る熱式流量計10の被測定流体の流量の計測精度が向上する。
また、実施例2のセンサ基板78と同様に、実施例1のセンサ基板50をネジ89によりボディ20に直接的に固定することもできる。これにより、実施例2の実施の形態に係る熱式流量計70と同様に、実施例1の実施の形態に係る熱式流量計10の被測定流体の流量の計測精度が向上する。