JP2005343153A - メラミン樹脂化粧板およびその製造方法 - Google Patents

メラミン樹脂化粧板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】通常のメラミン樹脂化粧板としての表面性能を損なうことなく、従来のメラミン樹脂化粧板と比較して、優れた防汚性能を有するメラミン樹脂化粧板とその製造方法を提供する。
【解決手段】メラミン樹脂が含浸された化粧紙21の表面に、シリコーン樹脂を含む表面樹脂層24を設ける。化粧紙21と表面樹脂層24との間には、浸透防止層23を設ける。シリコーン樹脂として、アミノ基含有シリコーン樹脂を用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、メラミン樹脂化粧板とその製造方法に関する。
従来、メラミン樹脂化粧板は、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性といった化粧板に要求される表面性能全般にわたって優れた品質を有することから、長く化粧天板として使用されてきた。しかし、近年においては、ユーザーニーズが多様化し高度の意匠性や高品質な防汚性能が求められる中で、フッ素加工化粧シートや紫外線硬化型塗料樹脂をトップコートした化粧材等が比較的安価に供給されるようになった。これらの競合素材との比較においてメラミン樹脂化粧板の防汚性能の向上が求められる状況となってきた。化粧天板として必要な表面特性は防汚性のみでなく、前記した耐摩耗性、耐薬品性といった特性面と色柄、表面仕上げ等の意匠性、或いはコストも重要な要素であり、これらを総合的にみるとメラミン樹脂化粧板の需要は根強い。しかし、キッチン廻りに代表される生活空間用途ではとりわけ防汚性能の重要性が高まっている。
元々、メラミン樹脂化粧板は耐汚染性が高いこともあり、その防汚性向上を図る開発検討は少なく、また、構成材、製造方法、要求性能の制約から改良手段が限定されていた。強いて行われた方法としては、化粧層のメラミン樹脂含有割合を高くする、プレス条件を高温にする、あるいはメラミン樹脂に撥水剤を添加する等の方法に限られていた。これらの方法では、現在ユーザーが要求している防汚性レベルには十分に至らず、また化粧板反り対策を伴うなどのマイナス要因も発生していた。
特許文献1には、表面の耐汚染性を改善したメラミン樹脂化粧板が開示されている。図6は、同文献記載の化粧板の構成を示す図である。この化粧板は、不燃性基材60の上に樹脂含浸紙61が積層した構成を有しており、樹脂含浸紙61中の表層部分が、シリコーン樹脂を含有する構成となっている。
しかしながら、同文献記載の技術では、充分な耐汚染性を得ることは困難であり、特に、良好な意匠耐久性を維持しつつ耐汚染性を向上させることが困難であった。
特開2003−39622号公報
上記事情に鑑み、本発明は、優れた意匠耐久性および優れた防汚性能を有するメラミン樹脂化粧板を提供することを目的とする。
メラミン樹脂化粧板の耐汚染性水準は、数多い内装材料の中でも比較的防汚性に優れる素材であるが、近年、需要が増えているフッ素加工化粧シートや紫外線硬化型塗料の塗装板或いはホーロー製品、ステンレス製品などの高防汚性素材と比較した場合、汚染物質の種類あるいは放置条件にもよるが、それらより低水準となることが多い。
メラミン樹脂化粧板の場合、メラミン樹脂自体は優れた耐薬品性を有しており、余程の強酸類、劇物でない限り付着した汚染物質によって樹脂自体が損傷することは殆どないが、汚染物質の放置が長時間に及んだ場合、汚染物質が緩やかに化粧層内部へ浸透していき、化粧層の構成基材である基材のパルプ繊維に付着することで拭き取りが困難な汚染残りを示すケースが多い。
これは、加圧成形後でもバインダーであるメラミン樹脂が基材の微細で多孔質のパルプ繊維を完全に覆いきれないことやメラミン樹脂が硬化の際に反応縮合水を放出するために、ガス化した縮合水が化粧表面に抜け出ることで数μm径の微小ホールを生成する。ここに液状汚染物質が付着すると毛管現象によって化粧層内部への浸透を誘引すると考えられる。このことは、汚染残りの強い汚染物質が低粘度でパルプ繊維に吸着し易いもの、あるいは溶剤希釈した汚染液に多いことにも裏付けられる。
従って、防汚性の改善を図るには、汚染物質の浸透を誘引する原因をできるだけ取り除く必要がある。
防汚性改善のポイントは、化粧面からの汚染物質の浸透を抑える樹脂層の確保とメラミン樹脂化粧板製法上で避け難い微小ホールの軽減が挙げられる。本発明者は、かかる観点から検討を進め、以下の発明に到達した。
本発明によれば、単層または多層からなり、少なくとも一部にメラミン樹脂を含む基材と、該基材の表面上に設けられた表面樹脂層とを備え、前記表面樹脂層は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とするメラミン樹脂化粧板が提供される。
本発明によれば、基材の表面上に設けられた表面樹脂層がシリコーン樹脂を含有する構成となっているため、メラミン樹脂化粧板の防汚性および意匠耐久性を顕著に改善することができる。従来技術の項で述べたように、基材中の表層部分にシリコーン樹脂を含有させる構成はすでに知られているが、これでは、意匠耐久性および耐汚染性の両立を図ることは困難である。これに対して本発明では、基材の表面上に設けた表面樹脂層にシリコーン樹脂を含有させているため、意匠耐久性および耐汚染性に優れる化粧板が得られる。ここで、基材は、単層、多層のいずれでもよく、いずれかの層中の少なくとも一部にメラミン樹脂を含んでいる。
基材の構成としては種々の態様をとることができる。たとえば、コア材と、その上に積層されたメラミン樹脂を含む化粧材とを含む構成とすることができる。
本発明において、表面樹脂層の表面部分に前記シリコーン樹脂が偏析している構成としてもよい。こうすることにより、防汚性が顕著に向上する。
また本発明によれば、原料基材にメラミン樹脂を含浸して化粧材を得る第1の工程と、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂を含む塗布液を前記化粧材に塗布し、前記化粧材の上部に、シリコーン樹脂を含有する表面樹脂層を形成する第2の工程と、を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法が提供される。
本発明によれば、防汚性および意匠耐久性に優れるメラミン樹脂化粧板を安定的に製造することができる。
上記製造方法において、原料基材にメラミン樹脂を含浸して化粧材を得る第1の工程と、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂を含む塗布液を前記化粧材に塗布し、前記化粧材の上部に、シリコーン樹脂を含有する表面樹脂層を形成する第2の工程と、を含む構成としてもよい。
ここで、上記第2の工程は、メラミン樹脂含有液を前記原料基材に含浸した後、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂を含む前記塗布液を前記原料基材に塗布する工程を含むものとすることができる。さらに、この構成において、前記メラミン樹脂含有液は浸透防止材を含み、前記メラミン樹脂含有液を塗布することにより前記化粧材の表面に浸透防止層を形成した後、前記塗布液を前記原料基材に塗布して前記表面樹脂層を形成する工程を含むものとすることができる。ここで、浸透防止材は、エマルジョン樹脂等が用いられる。
上記製造方法において、第2の工程の後、前記化粧材の裏面側に、コア材を積層配置し、表面樹脂層の設けられた前記化粧材と、前記コア材とを熱プレスにより接合する第3の工程をさらに含む構成としてもよい。
本発明において、シリコーン樹脂は、アミノ基含有シリコーン樹脂やカルビノール変成シリコーン樹脂が好ましく用いられる。これらは、たとえばケトン類等の有機溶剤に溶解して基材に塗布することができる。
本発明において、化粧材と表面樹脂層との間に、浸透防止材を含む浸透防止層を備える構成とすることもできる。ここで、浸透防止材は、エマルジョン樹脂等が用いられる。
本発明のメラミン樹脂化粧板は、通常のメラミン樹脂化粧板としての表面性能を損なうことなく、従来のメラミン樹脂化粧板と比較して、優れた防汚性能を有するものである。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係るメラミン樹脂化粧板の一例を示す図である。この化粧板は、複数のフェノール樹脂含浸紙31(コア材)を積層し、その上に化粧層用メラミン樹脂含浸紙30(化粧材)を配置した構成となっている。
フェノール樹脂含浸紙31は、化粧板のコア材であり、紙基材に水溶性フェノール樹脂を含浸させて得られる。
化粧層用メラミン樹脂含浸紙30は、メラミン樹脂を含有する化粧材であり、高い防汚性能と優れた意匠性を兼ね備える。
図2は、化粧層用メラミン樹脂含浸紙30の断面構造を示す。化粧層用メラミン樹脂含浸紙30は、化粧紙21と、その表面に設けられた表面樹脂層24とを備える。化粧紙21と表面樹脂層24との間、および、化粧紙21の裏面(表面樹脂層24の設けられた側の反対側の面)には、浸透防止層23が設けられている。
化粧紙21は、化粧層用メラミン樹脂含浸紙30の基材である。化粧紙21にはメラミン樹脂が含浸され化粧紙21全体にわたって1次含浸樹脂層22が形成されている。
表面樹脂層24は、防汚性、耐摩耗性および耐薬品性に優れるとともに、良好な意匠性を示す。表面樹脂層24は、メラミン樹脂およびシリコーン樹脂を含有する。シリコーン樹脂は表面樹脂層24の表面に偏析しており、これにより、顕著な防汚効果を実現している。
シリコーン樹脂とは、シロキサン結合の繰り返し単位からなる主鎖を有し、アルキル基やアリール基などの側鎖を有する重合体である。シリコーン樹脂として、反応性官能基を導入し変性したものも好適に用いることができる。変性処理としては、たとえば、アミノ変性、カルビノール変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、アルキル変性、エーテル変性等が挙げられ、このうち、アミノ変性、カルビノール変性が好ましい。メラミン樹脂との反応性に富み、優れた防汚性および良好な外観が得られるからである。
浸透防止層23は、化粧板の表面に付着した汚染物質が化粧板内部へ浸透することを防止する役割を果たす。また、化粧板の作製プロセスにおいては、この層の上に塗布された樹脂が基材中へ浸透することを抑制し、これにより、化粧紙21上に基材を含まない表面樹脂層24を安定的に形成する役割を果たす。浸透防止層23は、浸透防止材を含む。浸透防止材としては、たとえば、エマルジョン樹脂、有機ピグメント、無機充填材等が好ましく用いられる。
エマルジョンを構成する樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂等を挙げることができ、これらをカルボン酸等で表面変性したものを用いることもできる。エマルジョン樹脂の粒子径は、基材中に浸透せず、基材表面上にエマルジョン樹脂が残るように設計することが好ましい。その平均粒子径は、たとえば0.05〜3μm程度の範囲のものを用いることができる。
有機ピグメントとしては、たとえば、水性の変性アクリレートラテックスを用いることができる。その平均粒子径は、たとえば0.05〜3μm程度の範囲のものを用いることができる。
無機充填材としては、たとえば、シリカ等を用いることができる。無機充填材の平均粒子径は、たとえば0.05〜3μm程度の範囲のものを用いることができる。
上記メラミン樹脂化粧板によれば、メラミン樹脂化粧板が本来有する耐摩耗性や表面硬さを保持した上で、化粧面に付着する汚染物質が化粧層内部へ浸透するのを抑制することができる。このメラミン樹脂化粧板は、耐汚染性要求が高く、かつ意匠耐久性に優れ、洗浄メンテナンスが日常的に必要とされるキッチン廻り用途等に好適に利用される。
以下、図1および図2に示す化粧板の製造方法について説明する。ここでは、メラミン樹脂を2段階に分けて含浸塗布する2段階塗布方式を用いた例について説明する。なお、1段階のみの含浸方式では、樹脂の含浸ムラ、基材のない樹脂層の形成不足、およびシリコーン樹脂を添加した場合では撥水性によるマイナス効果(層間密着性低下)のため併用が困難である等、2段階塗布方式に比較して防汚性能、耐熱性等にばらつきが生じるので、2段階塗布方式が好ましい。従って、以下この方式を主として説明する。
2段階塗布方式における第1の工程では、原料基材にメラミン樹脂を含浸・乾燥することで、原料基材を構成するパルプ繊維中の空隙部に存在する空気や基材が保有する水分を除去し、樹脂を充填する。加熱乾燥されることで樹脂硬化が進み、第2の工程で塗布するメラミン樹脂の表面樹脂層形成を安定させる効果が得られる。第1の工程に使用するメラミン樹脂中に、基材パルプ繊維間隙より大きい粒子径を持つ有機ピグメント又はエマルジョン化した高分子樹脂、或いは数μm径の無機充填材等の浸透防止材を適度の配合比に混合することが好ましい。浸透防止材を添加すると、第2の工程で塗布されるメラミン樹脂が基材中に浸透することを防止する働きをするため、実質的に紙基材の無い表面樹脂層の形成を促進することができる。本発明においては、浸透防止材として有機ピグメント、エマルジョン樹脂を使用する場合は、特に限定されないが、メラミン樹脂との固形分比率で10〜30重量%(以下、ことわりがないかぎり、「%」は重量%を意味するものとする)が好ましい。10%以上とすることで充分な浸透防止効果が得られる。一方、30%以下とすることで、層間強度を充分なものとし、成形後の化粧板性能すなわち耐熱性や耐水性を良好にすることができる。
また、浸透防止材として無機充填材を使用する場合は、特に限定されないが、メラミン樹脂との固形分比率で8〜20%添加することが好ましい。8%以上とすることで充分な浸透防止効果が得られる。一方、20%以下とすることでメラミン樹脂の粘度を低下させ、作業性を良好にすることができ、また、化粧板の色調の経時変化を抑制することができる。
第2の工程は、第1の工程で得られた化粧材にメラミン樹脂を塗布する工程である。ここでのポイントは、基材表面に基材を含まない樹脂層を確保し、汚染物質の浸透を防止させることである。また、第1の工程で含浸されたメラミン樹脂の硬化を進め、発生する縮合水の乾燥除去を促進させ、後の成形工程で発生する揮発ガスによる微小ホールの形成を軽減させる効果もある。
第2の工程の樹脂塗布においては、メラミン樹脂へシリコーン樹脂を添加する。このシリコーン樹脂を添加することで、化粧板表面に撥水性をもたせ汚染物質の内部浸透を低減し、かつ表面離形性を高めることで汚染物質の拭き取り性を向上させることが可能となる。シリコーン樹脂はジメチルポリシロキサン構造をベースとし、側鎖にあるメチル基の一部に各種有機官能基を導入する(変性する)ことで種々の機能性を付与出来るが、メラミン樹脂との相溶性や反応性を考慮して導入する官能基を選定する必要がある。官能基は種々のタイプがあるが、メラミン樹脂との反応性に優れたアミノ基が好ましい。また、カルビノール変性シリコーン樹脂も好ましく用いることができる。これらは、メラミン樹脂との反応性に富み、良好な外観が得られるとともに、シリコーン樹脂が徐々に分離して防汚性の経時劣化を引き起こすことを効果的に抑制することができる。シリコーン樹脂の配合割合は特に限定されないが、メラミン樹脂固形分に対し、0.2〜5%が好ましく、更に好ましくは0.5〜2%である。0.2%以上とすることで撥水性、撥油性が一層良好となる。5%以下とすることで、耐光性や表面硬度が一層良好となる。
2段階塗布における各段階での樹脂量については、特に限定されないが、以下のようにすることが好ましい。
第1の工程で基材に含浸される樹脂量は、この工程で得られる樹脂含浸基材(含浸紙)に対して35〜55%が好ましく、更に好ましくは40〜50%である。35%以上とすることにより、基材内部の樹脂充填が充分となり、成形後の化粧板特性が良好となる。また第2の工程で樹脂が紙基材へ過剰に浸透することを抑制でき、この結果、防汚性能がさらに向上する。また、良好な化粧板外観が一層安定的に得られる。一方、樹脂量を55%以下とすることにより、第2の工程における樹脂の基材表面への付着量が充分となり、これに含まれるシリコーン樹脂の付着量が充分に確保され、安定した撥水性効果が得られる。また、表面樹脂層24を安定的に形成でき、良好な防汚性を安定的に実現することができる。
第2の工程で基材に塗布される樹脂量は、この工程で得られる樹脂含浸基材(含浸紙)に対して、好ましくは20〜50%、より好ましくは36〜42%とする。また、第1の工程の含浸樹脂と第2の工程の塗布樹脂との合計量は、出来上がりの樹脂含浸基材(含浸紙)に対して、好ましくは40〜70%、より好ましくは54〜62%とする。塗布樹脂の合計量を40%以上とすることにより、第2工程において基材のない樹脂単独層(表面樹脂層24)を安定確実に形成することができ、充分な防汚性を得ることができる。一方、樹脂合計量を70%以下とすることにより、化粧板の反りを抑制することができる。また、メラミン樹脂の収縮を低減でき、耐クラック性を良好にし、製品裁断時の欠けやチッピング不良を防止することができる。さらに、第2工程での塗布速度を向上させることができる。
以下、本発明に係るメラミン樹脂化粧板の製造装置について、図面を参照して説明する。
図3および図4は、2段階塗布方式による製造装置の概略構成を示す図である。図3は第1の工程で行う含浸塗布・加熱乾燥工程を実施する装置構成を示す。第1の工程の塗布では、通常ディップ含浸方式が適用される。図3において、化粧紙巻出し部1から供給された紙基材は、ダンサーロール2を経てメラミン樹脂含浸部3に導かれ、ここで浸透防止材を含むメラミン樹脂溶液に浸漬され、基材中にメラミン樹脂が含浸される。次いで加熱乾燥部4で加熱乾燥工程を経て、蛇行防止装置5を経由して1次含浸紙巻取り部6に導かれる。
図4は、第2の工程で行う表面塗布・加熱乾燥工程を実施する装置構成を示す。図4において、1次含浸紙巻出し部11から供給された1次含浸紙は、ダンサーロール12を経てメラミン樹脂塗布部13に導かれ、ここでシリコーン樹脂を含むメラミン樹脂溶液が塗布される。塗布方法としては、通常フローコート、ロールコート、シャワーコート等の方法を選択することができる。次いで加熱乾燥部14で加熱乾燥工程を経て、蛇行防止装置15を経由してカッティング部16に導かれ、カッティングが行われる。こうして得られた化粧板は、含浸紙積載部17に積載される。
第2の工程は化粧面側のみの片面塗布であるため、ここでは、2種類の塗布工程をそれぞれの工程に分けて行う方法を示したが、第1の工程と第2の工程の塗布を連続して行う方法を適用してもかまわない。その場合は、第1の工程で得られた含浸紙の巻き取りが不要であり、生産効率の面で望ましい。
図2に示した構成において、第1の工程では化粧紙21の1次含浸樹脂層22にメラミン樹脂を含浸させるが、樹脂中に配合される浸透防止材(有機ピグメント、エマルジョン樹脂、無機充填材等)は、化粧紙21の内部へ浸透することなく、化粧紙21の両表面に残る。化粧紙21を構成するパルプ繊維間隙よりも大きい粒子径とすることにより、この効果はより大きくなる。この状態下で第2の工程のメラミン樹脂塗布を行うと、メラミン樹脂の化粧紙21内部への浸透が制限される(目止め効果)ため、化粧紙21表面に樹脂のみの層を形成し易い。また、メラミン樹脂中にシリコーン樹脂を配合すると、シリコーン樹脂がその特性から樹脂層最表面にブリードし、通常のメラミン樹脂化粧板にはない優れた撥水性を発現する。これにより、汚染物質の紙基材内部への浸透を妨げると共に表面密着性をも低下させる効果が得られる。また、汚れ拭き取り性が顕著に向上する。
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。ここで、「%」は「重量%」を示す。
実施例1
本実施例では、図1および図2に示す構造の化粧板を作製し、評価を行った。以下、この化粧板を構成する化粧層用メラミン樹脂含浸紙30およびフェノール樹脂含浸紙31の作製方法について説明する。
(化粧層用メラミン樹脂含浸紙)
化粧紙21として、晒しクラフト紙に柄模様が印刷されたものを用いた(米坪80g/m )。また、メラミンに対するホルムアルデヒドのモル比1.7、粘度37cps/20℃の水溶性メラミン樹脂を水/メタノール混合溶剤により粘度23cps/30℃に調整し、触媒、内部離型剤を添加し、更に浸透防止層23の構成材料として、水性の変性アクリレートラテックス(平均粒子径(D50)が0.2μm、ガラス転移温度Tgが室温付近である熱可塑性樹脂エマルジョン)をメラミン樹脂固形分比で25%の混合率で混合し1次含浸用メラミン樹脂ワニスを得た。ここで、1次含浸用メラミン樹脂ワニスの原材料として、以下のものを用いた。
触媒:商品名セパール328、中京油脂株式会社製
内部離型剤:脂肪族系界面活性剤、商品名キャタニット、MRCユニテック株式会社製
水溶性アクリルラテックス:商品名LX−851E、日本ゼオン株式会社製
このメラミン樹脂ワニスを、前記化粧紙21に、ディップ方式にて含浸し、加熱乾燥して、樹脂量49%、揮発分6%の化粧材(1次含浸紙)を得、これを連続的に巻き取った。
次に、連続含浸紙を前記と同様の粘度調整した水溶性メラミン樹脂に触媒、内部離形剤および増粘用無機フィラーを添加し2次含浸用ワニスを調製した。各成分の添加量は以下のとおりである(メラミン樹脂仕込み量を全体として、重量%)。
触媒:0.4%
内部離形剤:0.6%
増粘用無機フィラー:3%
この含浸用ワニスに、予めメチルエチルケトンにて20%に希釈したカルビノール変性シリコーン樹脂溶液を固形分比で2%添加し、2次含浸用メラミン樹脂ワニスを作製した。
ここで、2次含浸用メラミン樹脂ワニスの原材料として、以下のものを用いた。触媒および内部離型剤は、上記したものと同様である。
増粘用無機フィラー:SiO、商品名トクシールU、平均粒子径が2〜6μmの範囲にあるものを用いた。
カルビノール変性シリコーン樹脂:反応型変性シリコーン、商品名X−22−4015、信越化学工業株式会社製
この調合ワニスを前記1次含浸紙の化粧面側にシャワーコート方式にて片面塗工し、加熱乾燥して総樹脂量58%、揮発分6.5%の化粧層用メラミン樹脂含浸紙30を得た。第2の工程の片面コーティングにおいては、表面樹脂付着量を確保し易くするため、ワニス粘度を40〜60cps/20℃と高粘度側に調整した。
(フェノール樹脂含浸紙)
コア材として通常の高圧メラミン樹脂化粧板に使用される米坪190g/m の未晒しクラフト紙基材を用い、これに水溶性フェノール樹脂を含浸し、加熱乾燥して、樹脂量30%、揮発分7%のフェノール樹脂含浸紙31を作製した。
(化粧板)
図1に示すように、2段階塗布による化粧層用メラミン樹脂含浸紙30を表面側に置き、フェノール樹脂含浸紙31を5プライ順次重ね合わせた後に、通常の高圧メラミン樹脂化粧板の加圧成形と同様にして、ステンレス鏡面板(高光沢板)とフェノール樹脂含浸紙31が接触する様に、かつ、鏡面板間に、離形紙を挟んで当該化粧板構成素材セットを背中合わせに2組ずつ組み込み、熱プレスによりこれらを接合した。プレスは、圧力80kg/cm に保持したままで加熱・冷却した。熱盤温度を157℃とし、製品最高温度が138℃〜143℃の範囲に入る様に加熱した後、40℃まで冷却し、厚みが1.02mmのメラミン樹脂化粧板20(図5)を得た。
実施例2
実施例1において、シリコーン樹脂の種類を変更して2次含浸用メラミン樹脂ワニスを作成したこと以外は実施例1と同様にして化粧層用メラミン樹脂含浸紙を得た。これを用い、実施例1と同様にして化粧板を作製した。
本実施例では、以下のシリコーン樹脂を用いた。
エポキシ変性シリコーン樹脂:反応型変性シリコーン、商品名KF−101、信越化学工業株式会社製
実施例3
実施例1において、シリコーン樹脂の種類を変更して2次含浸用メラミン樹脂ワニスを作成したこと以外は実施例1と同様にして化粧層用メラミン樹脂含浸紙を得た。これを用い、実施例1と同様にして化粧板を作製した。
本実施例では、以下のシリコーン樹脂を用いた。
アミノ変性シリコーン樹脂:反応型変性シリコーン、商品名KF−393、信越化学工業株式会社製
実施例4
実施例1において、シリコーン樹脂の種類を変更して2次含浸用メラミン樹脂ワニスを作成したこと以外は実施例1と同様にして化粧層用メラミン樹脂含浸紙を得た。これを用い、実施例1と同様にして化粧板を作製した。
本実施例では、以下のシリコーン樹脂を用いた。
アミノ変性シリコーン樹脂:反応型変性シリコーン、商品名KF−859、信越化学工業株式会社製
実施例5
実施例1において、1次含浸用メラミン樹脂ワニスに含まれる浸透防止材を変更したこと以外は実施例1と同様にして化粧板を作製した。本例では、変性アクリレートラテックスに代え、3元アクリル重合にて合成された固形分35%の有機ピグメント(アクリル系エマルジョン樹脂、中央理化工業株式会社製、平均粒子径が1μm〜6μmの範囲内にあるものを用いた。)を用いた。1次含浸用メラミン樹脂ワニスは、有機ピグメントをメラミン樹脂固形分に対し25%添加し、調合ワニス粘度を18cps/25℃に調整して得た。このワニスを用い、基材にディップ含浸し、加熱乾燥して、樹脂量45%、揮発分6%の1次含浸紙を得た。以下、実施例1と同様の手順で化粧層用メラミン樹脂含浸紙30を得、フェノール樹脂含浸紙31を重ね合わせた後、加熱加圧し、厚みが1.01mmのメラミン樹脂化粧板20を得た。
参照例
上記実施例では、1次含浸用メラミン樹脂ワニスに浸透防止材を添加したが、本例では、これを添加せず、メラミン樹脂のみを用いて粘度16cps/25℃に調整されたワニスを調製した。このこと以外は実施例1と同様にしてメラミン樹脂化粧板20を得た。
1次含浸用メラミン樹脂ワニスを調製した後、ディップ含浸し、加熱乾燥して、樹脂量50%、揮発分7%の1次含浸紙を得た。次いで実施例1と同様の手順で2次含浸を行い、樹脂量60%、揮発分7%の化粧層用メラミン樹脂含浸紙30(化粧材)を得、フェノール樹脂含浸紙31を重ね合わせた後、加熱加圧し、厚みが1.02mmのメラミン樹脂化粧板20を得た。
比較例
実施例に使用した基材に、参照例と同様のワニス(浸透防止材を含まないメラミン樹脂のみのワニス)を、通常行う1段塗布方式にて含浸し、樹脂量56%、揮発分6.8%の化粧層用メラミン樹脂含浸紙30(化粧材)を得、実施例1と同一のフェノール樹脂含浸紙31と組み合わせ、通常のプレス成形方法により厚さ1.01mmの表面樹脂層の無いメラミン樹脂化粧板20を得た。
実施例1〜5で得られたメラミン樹脂化粧板20の表面樹脂層24表面には、シリコーン樹脂が偏析していることが確認された。
実施例および比較例にて得られた各メラミン樹脂化粧板について特性を測定した。その結果を表1に示す。表中、NO.1〜4は、実施例1〜4にそれぞれ対応する。NO.5は実施例5に対応し、NO.6は比較例にそれぞれ対応する。参照例の結果は表に示していない。
Figure 2005343153
表中に示した評価の方法を以下に示す。
(a)加圧後外観評価
プレス時に使用した当板への樹脂の付着程度を評価した。また、プレス後の化粧板の外観を目視で評価した。
(b)防汚性比較
1.油性マジック拭き取り性
化粧板表面に油性マジックインク(寺西化学工業株式会社製、NO.500、黒色細書き用)で直径10mm程度の円を描き、ティッシュペーパーで拭き取り、汚れ拭き取り性の難易度を比較した。
2.表面撥水性
化粧板表面に滴下した水滴の濡れ性を相対比較した。通常の高圧メラミン樹脂化粧板に比較して水滴の濡れ角の大小、傾斜した際の水滴の流水状態を観察し、判定した。
3.セロハンテープ密着性
塗膜表面にセロハンテープを貼った後、これを剥離する、という操作を繰り返し、塗膜の一部が剥がれてセロハンテープ側に移行する程度を評価した。
4.耐汚染性:JIS K 6902の耐汚染性試験に準拠した。
塗膜表面へ薬品を滴下し、24時間放置後、拭き取り性を評価した。薬品として、青インキおよび1%沃素アルコール溶液を用いた。
24時間放置後、流水で洗浄し、次いで塗膜表面をメタノールで拭き取った。拭き取れなかった場合は、つづいて研磨剤液を用いて拭き取った。
汚染をメタノールで拭き取ることができた場合、○
汚染をメタノールで拭き取ることができなかったが、研磨剤液を用いて拭き取ることができた場合、△、
研磨剤液を用いても拭き取ることができなかった場合、×
とした。
上記のように2種類の薬品を用いたところ、同じ評価結果が得られたので、表1では、「耐汚染性」として結果をまとめた。
耐汚染性を除く上記評価項目について、以下の4段階で評価した。
◎:非常に良好
○:良好
△:普通
×:劣る
表に示された結果より、シリコーン樹脂を含む表面樹脂層を形成することにより、防汚性および外観が良好になることが明らかになった。また、表には示さなかったが、参照例で得た化粧板は、実施例1に比べ、外観および防汚性が低下することが確認された。
本発明のメラミン樹脂化粧板は、メラミン樹脂化粧板としての表面性能を損なうことなく、従来のメラミン樹脂化粧板と比較して、優れた防汚性能を有するものとして好適に適用される。本発明のメラミン樹脂化粧板は、耐汚染性要求が高く洗浄メンテナンスが日常的に必要とされるキッチン廻り用途等に好適に用いられる。
実施の形態に係るメラミン樹脂化粧板の構成を示す図である。 実施の形態に係るメラミン樹脂含浸紙の構成を示す図である。 実施の形態に係る製造装置の概略構成を示す図である。 実施の形態に係る製造装置の概略構成を示す図である。 実施の形態に係るメラミン樹脂化粧板の構成を示す図である。 従来のメラミン樹脂化粧板の構成を示す図である。
符号の説明
1 化粧紙巻出し部
2 ダンサーロール
3 メラミン樹脂含浸部
4 加熱乾燥部
5 蛇行防止装置
6 1次含浸紙巻取り部
11 1次含浸紙巻出し部
12 ダンサーロール
13 メラミン樹脂塗布部
14 加熱乾燥部
15 蛇行防止装置
16 カッティング部
17 含浸紙積載部
20 メラミン樹脂化粧板
21 化粧紙
22 1次含浸樹脂層
23 浸透防止層
24 表面樹脂層
25 シリコーン樹脂
30 化粧層用メラミン樹脂含浸紙
31 フェノール樹脂含浸紙

Claims (14)

  1. 単層または多層からなり少なくとも一部にメラミン樹脂を含む基材と、該基材の表面上に設けられた表面樹脂層とを備え、
    前記表面樹脂層は、シリコーン樹脂を含有することを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  2. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記基材は、コア材と、その上に積層されたメラミン樹脂を含む化粧材とを含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  3. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記表面樹脂層は、メラミン樹脂を含有するものであることを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  4. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記表面樹脂層の表面部分に前記シリコーン樹脂が偏析していることを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  5. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記シリコーン樹脂は、アミノ基含有シリコーン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  6. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記シリコーン樹脂は、カルビノール変成シリコーン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  7. 請求項1に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記化粧材と前記表面樹脂層との間に、浸透防止材を含む浸透防止層を備えることを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  8. 請求項7に記載のメラミン樹脂化粧板において、
    前記浸透防止材は、エマルジョン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板。
  9. 原料基材にメラミン樹脂を含浸して化粧材を得る第1の工程と、
    メラミン樹脂およびシリコーン樹脂を含む塗布液を前記化粧材に塗布し、前記化粧材の上部に、シリコーン樹脂を含有する表面樹脂層を形成する第2の工程と、
    を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
  10. 請求項9に記載のメラミン樹脂化粧板の製造方法において、
    前記メラミン樹脂含有液は浸透防止材を含み、前記メラミン樹脂含有液を塗布することにより前記化粧材の表面に浸透防止層を形成した後、前記塗布液を前記原料基材に塗布して前記表面樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
  11. 請求項10に記載のメラミン樹脂化粧板の製造方法において、
    前記浸透防止材は、エマルジョン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
  12. 請求項9に記載のメラミン樹脂化粧板の製造方法において、
    第2の工程の後、前記化粧材の裏面側に、コア材を積層配置し、表面樹脂層の設けられた前記化粧材と、前記コア材とを熱プレスにより接合する第3の工程をさらに含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
  13. 請求項9に記載のメラミン樹脂化粧板の製造方法において、
    前記シリコーン樹脂は、アミノ基含有シリコーン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
  14. 請求項9に記載のメラミン樹脂化粧板の製造方法において、
    前記シリコーン樹脂は、カルビノール変成シリコーン樹脂を含むことを特徴とするメラミン樹脂化粧板の製造方法。
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