JP2005336426A - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 デスミア工程による物性低下が小さい密着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物と、一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物、及びリン酸アミド化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
Figure 2005336426

【化2】
Figure 2005336426

【選択図】 なし

Description

本発明は、特定のポリエポキシ化合物、特定のフェノール系硬化剤及びリン酸アミド化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物に関し、さらに詳細には、ジシクロペンタジエン及びフェノール類の重付加物構造を有するフェノールノボラック、又はビス(メトキシメチル)ビフェニル及びフェノールを反応させて得られる構造のフェノールノボラックを、ポリエポキシ化合物及びフェノール系硬化剤それぞれの骨格として用いた、デスミア特性及び密着性に優れたエポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂は、積層板、塗料、接着剤、光造形等の材料として広く用いられており、エポキシ樹脂に用いられるエポキシ化合物としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに代表される芳香族エポキシ化合物;2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパンや3,4−エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルや(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等の脂肪族エポキシ化合物等、多くのエポキシ化合物が知られている。
エポキシ樹脂は、得られるエポキシ樹脂硬化物の使用目的に応じて、ガラス転移温度、吸水率、誘電率、耐衝撃強度、引張り強度、引張り伸び率、接着強度等の特性や、硬化時の硬化速度や硬化条件を制御する必要があり、特に積層回路に用いられるエポキシ樹脂には、高いガラス転移温度、優れた誘電特性、及び低い吸水率が必要である。このような特性等の制御のためには、種々のエポキシ化合物から、使用する化合物の構造及び組成を適宜選択することが必要である。
エポキシ化合物の構造による特性の制御に関し、ジシクロペンタジエンとフェノール類の重付加物にエピクロルヒドリンを反応させた構造のエポキシ化合物が、特許文献1や特許文献2に半導体の封止材料として提案されており、これらの封止材料は優れた耐湿性を示している。
また、エポキシ化合物は硬化剤を用いて硬化物とすることができ、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物、フェノール類とビスメトキシメチルベンゼンの縮合物等のフェノールノボラック類は、半導体封止材料用のエポキシ樹脂硬化剤として用いられている。
また、特許文献3や特許文献4には、ビフェニル構造を有するフェノールノボラックがエポキシ樹脂の硬化剤として提案されており、これらの硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性及び耐ハンダリフロー性に優れていることが記載されている。
半導体の製造において、半導体封止材料に用いられるエポキシ樹脂はドリルやレーザーによる穴あけ工程においてスミアと呼ばれる樹脂クズを発生するため、クロム酸、濃硫酸、アルカリ性過マンガン酸塩等の溶液による洗浄処理を行なうデスミア工程が不可欠である。デスミア工程は、基板表面が粗化されて接着性が向上するメリットがあるが、酸化能の高い溶液での洗浄は、必要なエポキシ樹脂まで溶解して物性を低下させる問題がある。特に、微細加工が必要な高集積回路基板では、デスミア工程による樹脂物性の低下が回路の信頼性に大きく影響する。上記の従来公知のエポキシ樹脂組成物では、デスミア工程による樹脂物性の低下を抑制できていなかった。
また、エポキシ樹脂組成物の難燃化には従来ハロゲン系難燃剤が用いられてきたが、ハロゲン系難燃剤は、環境への負荷が懸念されるため、リン系難燃剤へ代替する検討がなされており、特許文献5にはホスファゼン化合物を用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、ホスファゼン化合物を用いたエポキシ樹脂組成物は、密着性が低下するため、プリント配線基板に用いるには満足できる性能ではなかった。
特開昭61−293219号公報(特に特許請求の範囲の記載参照) 特開平7−150013号公報(特に特許請求の範囲の記載参照) 特開平5−117350号公報(特に特許請求の範囲の記載参照) 特開平8−143648号公報(特に特許請求の範囲の記載参照) 特開2004−10654号公報(特に特許請求の範囲の記載参照)
従って、本発明の目的は、デスミア工程による物性低下が小さく且つ密着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂に用いられるエポキシ化合物の一部としてジシクロペンタジエン及びフェノール類の重付加物にエピクロルヒドリンを反応させた構造のエポキシ化合物を用い、硬化剤の一部としてビス(メトキシメチル)ビフェニル及びフェノールを反応させて得られる構造のフェノールノボラックを用いたエポキシ樹脂組成物が、デスミア工程による物性低下が小さいことを知見した。
本発明(請求項1記載の発明)は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物、下記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物、及びリン酸アミド化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
Figure 2005336426
Figure 2005336426
また、本発明(請求項2記載の発明)は、1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルを含有し、且つ該1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルをエポキシ化合物の10〜80質量%含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項3記載の発明)は、上記一般式(I−a)で表されるポリエポキシ化合物及び上記一般式(II−b)で表されるポリフェノール化合物を必須成分とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項4記載の発明)は、上記一般式(II−a)で表されるポリエポキシ化合物及び上記一般式(I−b)で表されるポリフェノール化合物を必須成分とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項5記載の発明)は、上記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物を、エポキシ化合物の30質量%以上用いた請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項6記載の発明)は、ブチラール樹脂を2〜10質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項7記載の発明)は、上記ブチラール樹脂のブチラール化率が60〜90%である請求項6記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項8記載の発明)は、上記リン酸アミド化合物として下記一般式(III)で表されるリン酸アミド化合物を1〜10質量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
Figure 2005336426
また、本発明(請求項9記載の発明)は、シリカ3〜10質量%及びアルミナ3〜10質量%を含有する請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明(請求項10記載の発明)は、請求項1〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いたビルドアップ用エポキシ樹脂積層板を提供するものである。
本発明により、デスミア工程による物性の低下が小さく且つ密着性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
上記一般式(I−a)、(II−a)、(I−b)及び(II−b)において、R1、R2、R3及びR4で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル等が挙げられる。また、上記一般式(I−a)、(II−a)(I−b)及び(II−b)において、n、m、s及びtは、それぞれ、0.1〜10であることが好ましい。
本発明に用いられるリン酸アミド化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジフェニルリン酸クロリドと、m−キシリレンジアミン、エチレンジアミン、フェニレンジアミン等のジアミンとの反応物が挙げられる。特に上記一般式(III)で表されるリン酸アミド化合物は、エポキシ樹脂と反応するので、デスミア工程において洗浄溶剤により抽出されず、ガラス転移点(Tg)等の樹脂物性を低下させずに難燃性を付与できるので好ましい。リン酸アミド化合物の配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中、1〜10質量%、特に2〜8質量%であることが好ましい。
上記一般式(III)においてR5で表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、上記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物は、必要に応じて他のエポキシ化合物と併用することができる。他のエポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を用いることができる。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ナフタレンジオール、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の多価フェノールのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
上記脂環族エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、及びシクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド含有化合物やシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。これらの具体例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルへキシル等が挙げられる。
上記脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。代表的な化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、また、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルや、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
他のエポキシ化合物の中でも、1,6−ナフタレンジオールのジグリシジルを用いると、得られるエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が高く、耐湿性にも優れるので好ましい。
他のエポキシ化合物の種類や使用量は、硬化物の用途により適宜選択され、上記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物を用いる特徴が得られ且つ他のエポキシ化合物を用いた効果も得られる範囲から選択すればよいが、エポキシ化合物全体に占める他のエポキシ化合物の割合は、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。とりわけ、1,6−ナフタレンジオールのジグリシジルを、エポキシ化合物の10〜80質量%、特に20〜60質量%の割合で用いるのが好ましい。
また、エポキシ化合物全体に占める上記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物の割合は、30質量%以上が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、上記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物は、硬化剤として用いられるものであり、必要に応じて他の硬化剤を併用することができる。他の硬化剤としては、潜在性硬化剤、ポリアミン化合物、上記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物以外のポリフェノール化合物及びカチオン系光開始剤等が挙げられる。
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミン等が挙げられる。これら潜在性硬化剤は、一液型の硬化性組成物を与え、取り扱いが容易なので好ましい。
上記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。
上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環族ポリアミン、m−キシレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
上記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物以外のポリフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、テルペンジフェノール、テルペンジカテコール、1,1,3−トリス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。フェノールノボラックは、得られるエポキシ樹脂組成物の電気特性及び機械強度が積層板に適しているので好ましい。
上記カチオン系光開始剤とは、エネルギー線照射によりカチオン重合を開始させる物質を放出させることが可能な化合物であり、特に好ましいものは、照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩又はその誘導体である。かかる化合物の代表的なものとしては、下記の一般式、
[A]m+[B]m-
で表される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
ここで陽イオン[A]m+はオニウムであるのが好ましく、その構造は、例えば、下記の一般式、
[(R1aQ]m+
で表すことができる。
更にここで、R1は、炭素数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機の基である。aは1〜5なる整数である。a個のR1は各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つは、芳香環を有する上記の如き有機の基であることが好ましい。Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F及びN=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qなる関係が成り立つことが必要である(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
また、陰イオン[B]m-は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、その構造は、例えば、下記一般式、
[LXbm-
で表すことができる。
更にここで、Lは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pなる関係が成り立つことが必要である。
上記一般式[LXbm-で表される陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-、ヘキサフルオロフォスフェート(PF6-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-等が挙げられる。
また、陰イオン[B]m-としては、
[LXb-1 (OH)]m-
で表される構造のものも好ましく用いることができる。L、X及びbは上記と同様である。また、その他用いることができる陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
本発明では、この様なオニウム塩の中でも、下記のイ)〜ハ)の芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。これらの中から、その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩
ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等のジアリールヨードニウム塩
ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4'−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4'−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4'−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4'−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリアリールスルホニウム塩
また、その他に好ましいものとしては、(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6,−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェート等の鉄−アレーン錯体や、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物も挙げられる。
これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体を用いることが好ましい。
これらの光開始剤は、安息香酸系又は第三級アミン系等の公知の光重合促進剤の1種又は2種以上と組み合わせて用いても良い。光開始剤を用いる場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に0.1〜30質量%含有させることが好ましい。0.1質量%未満では添加効果が得られないことがあり、30質量%より多いと硬化物の機械強度が低下することがある。
光開始剤を用いる場合の重合に用いる光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の公知の光源を用いることができ、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等の活性エネルギー線の照射により上記光開始剤からルイス酸を放出させることで、上記エポキシ化合物を硬化させる。光源としては、400nm以下の波長を有する光源が有効である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、従来公知のエポキシ樹脂の硬化方法のいずれも適用することができ、上述したように、上記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物による硬化、該ポリフェノール化合物とアミン系硬化剤や酸無水物系硬化剤等の他の硬化剤との併用による硬化、該ポリフェノール化合物と光開始剤との併用による光硬化が適用できるほか、硬化触媒を用いた自己重合による硬化、硬化促進剤の併用による硬化速度の制御等もできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の使用量は、特に限定されず、通常は、エポキシ化合物の全エポキシモル数と硬化剤の官能基数との比が0.9/1.0〜1.0/0.9となる範囲から選択されるが、好ましくは、エポキシ化合物の使用量が本発明のエポキシ樹脂組成物において5〜60質量%、硬化剤の使用量が本発明のエポキシ樹脂組成物において5〜60質量%となる範囲から、上記の比を満足するように選択する。また、本発明のエポキシ樹脂組成物において、前記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物は、全硬化剤中、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50〜90質量%となるように用いる。
尚、フッ素置換された硬化剤を用いると、本発明に係る吸水率の低いエポキシ化合物の特徴が顕著になるので好ましいが、フッ素置換化合物は一般に高価であり、他の特性値等も含め、用途に応じて適宜選択して用いる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、他の樹脂を配合することができる。他の樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、液晶性ポリエステル、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。得られるエポキシ樹脂組成物の電気特性に影響を与えずに、加工時の流動性を向上させることができるので、ブチラール樹脂、特にポリビニルブチラールを、1〜30質量%、特に2〜10質量%配合することが好ましい。また、使用するブチラール樹脂のブチラール化率は、60〜90%、特に65〜85%であることが好ましい。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ホウ素ウィスカー等の繊維状充填剤や、シリカ、アルミナ等の球状充填剤を用いることができる。繊維状充填剤は長軸方向の長さやアスペクト比を用途に応じて適宜選択することが好ましく、球状充填剤は真球状で粒径が小さいものが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物を積層板に用いる場合は、シリカ及びアルミナを配合することが好ましく、シリカ及びアルミナそれぞれの配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中において、3〜10質量%、特に3〜8質量%が好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃剤として、前記リン酸アマイド化合物と共に、他の難燃剤を併用しても良い。他の難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤;トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、フェノール・クレゾール・リン酸縮合物、フェノール・ビスフェノールA・リン酸縮合物等のリン酸エステル系難燃剤;赤燐、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸ピペラジン等の無機リン系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、ポリオルガノシロキサン等の難燃助剤等が挙げられる。他の難燃剤を使用する場合、その使用量は、全難燃剤中、好ましくは50質量%以下とする。
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップ用等の積層板に用いる場合は、基板に塗布して加熱硬化させる方法、樹脂付き銅箔として基板にプレス接着する方法、ドライフィルムとしたのち貼り付ける方法等、いずれの方法により用いてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、デスミア工程による物性低下が小さいので、デスミア工程の必要な積層板用途に適している。デスミア工程に用いられる溶剤は、特に制限されるものではなく、クロム酸水溶液、濃硫酸、アルカリ性過マンガン酸塩水溶液等を用いることができる。デスミア工程は、必要に応じて水溶性有機溶剤で樹脂を膨潤させてから行ってもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、ケトン類、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコール類のエーテル誘導体、多価アルコールのエーテル・エステル誘導体、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、積層板以外に、塗料、接着剤、光造形等の用途に用いることもできる。
実施例及び比較例により本発明をより具体的に示す。ただし、本発明は以下の実施例等により何等制限されるものではない。
〔実施例1〜2及び比較例1〜4〕
表1記載の配合(質量部)に従って調製した配合物をガラス基板に塗布し、180℃で1時間、200℃で1時間、更に220℃で1時間保持することで硬化物を得た。得られた硬化物を、デスミア工程として、室温でメチルエチルケトンに30分間浸漬し、更に70℃の5質量%過マンガン酸ナトリウム水溶液及び5質量%水酸化ナトリウム水溶液の50/50(体積比)混合液に10分間浸漬した。デスミア工程後の硬化物をイオン交換水で洗浄し、40℃で12時間減圧乾燥した。なお、難燃剤は、最終的なエポキシ樹脂組成物のリン含有量が1質量%になるように配合した。
減圧乾燥後の硬化物について、ガラス転移温度及びピール強度の測定を行なった。また、硬化物についてデスミア耐性の評価を行なった。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、動的粘弾性法により行なった。また、ピール強度の測定は、JIS C6481に準拠して行なった。また、デスミア耐性の評価においては、デスミア工程前後の質量比較から質量減少(mg/cm2)を求めると共に、デスミア工程後の硬化物の断面を顕微鏡により観察し、表面にクラックの発生がないものを○、クラックの発生が認められるものを×とした。
これらの結果を表1に示す。
尚、表1における*1〜14は、以下の通りである。
*1:ジシクロペンタジエンとフェノールの縮合物のグリシジルエーテル
〔大日本インキ化学工業(株)製、HP−7200、一般式(I−a)におけるnは0.2〕
*2:ビス(メトキシメチル)ビフェニルとフェノールの縮合物のグリシジルエーテル
〔明和化成(株)製 MEH−7851のグリシジルエーテル、一般式(II−a)におけるmは1.0〕
*3:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
*4:1,6−ナフタレンジグリシジルエーテル
〔大日本インキ化学工業(株)製、HP−4032〕
*5:ビス(メトキシメチル)ビフェニルとフェノールの縮合物
〔明和化成(株)製、MEH−7851、一般式(II−b)におけるtは1.0〕
*6:ジシクロペンタジエンとフェノールの縮合物
〔一般式(I−b)におけるsは0.2〕
*7:住友ベークライト(株)製、PR−50731
*8:電気化学工業(株)製、ポリビニルブチラール 5000A
〔ブチラール化率83%〕
*9:(株)アドマテックス製、SO−E5
*10:住友化学工業(株)製、CL−303
*11:〔化4〕に示すリン酸アミド化合物
*12:〔化4〕に示すホスファゼン化合物
*13:メチルエチルケトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶媒
〔混合比;前者/後者=1/1(体積基準)〕
*14:2−フェニル−4,5−ビスヒドロキシメチルイミダゾール
Figure 2005336426
Figure 2005336426

Claims (10)

  1. 下記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物、下記一般式(I−b)又は(II−b)で表されるポリフェノール化合物、及びリン酸アミド化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2005336426
    Figure 2005336426
  2. 1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルを含有し、且つ該1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルをエポキシ化合物の10〜80質量%含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 上記一般式(I−a)で表されるポリエポキシ化合物及び上記一般式(II−b)で表されるポリフェノール化合物を必須成分とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 上記一般式(II−a)で表されるポリエポキシ化合物及び上記一般式(I−b)で表されるポリフェノール化合物を必須成分とする請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 上記一般式(I−a)又は(II−a)で表されるポリエポキシ化合物を、エポキシ化合物の30質量%以上用いた請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. ブチラール樹脂を2〜10質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 上記ブチラール樹脂のブチラール化率が60〜90%である請求項6記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 上記リン酸アミド化合物として下記一般式(III)で表されるリン酸アミド化合物を1〜10質量%含有する請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2005336426
  9. シリカ3〜10質量%及びアルミナ3〜10質量%を含有する請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いたビルドアップ用エポキシ樹脂積層板。
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