JP2005336007A - 製鋼スラグの粉塵化抑制剤及びそれを用いた粉塵化抑制方法 - Google Patents

製鋼スラグの粉塵化抑制剤及びそれを用いた粉塵化抑制方法 Download PDF

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芳廣 伊藤
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三郎 佐藤
Naotaka Sakamoto
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Abstract

【課題】少ない硼素量で製鋼スラグの粉塵化を抑制することが可能で、かつ冷却された製鋼スラグからの硼素の溶出量を低減できる、製鋼スラグの粉塵化抑制剤及びそれを用いた粉塵化抑制方法を提供すること。
【解決手段】溶融状態の製鋼スラグ中にMgO・mB2O3・nH2O(m>0,n≧0)で示される、例えば、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oを添加することにより、製鋼スラグの冷却過程における粉塵化を抑制すると共に冷却したスラグ中からの硼素の溶出を低減できる。また、硼素を含む廃液中にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を投入し、得られる水酸化マグネシウムと硼素との複合体から得られるマグネシウムと硼素の複合酸化物も、製鋼スラグの粉塵化抑止剤として利用することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、製鋼スラグの冷却時の粉塵化を抑制する粉塵化抑制剤、及びそれを用いた製鋼スラグの粉塵化抑制方法に関する。
電気炉製鋼における還元期スラグやステンレス製鋼スラグ等のように、塩基度(CaO/SiO2重量比)が1.5以上で、ダイカルシウムシリケートを主体としている製鋼スラグでは、冷却過程において粉塵化が発生する。この粉塵化は、冷却過程でダイカルシウムシリケートの高温相であるα’相が低温相のγ相に転移し、密度が3.31g/cm3から2.97 g/cm3に低下するために体積膨張(約11.4%)が生じて、この体積膨張による自己破壊のために生じることが判明している。このため、製鋼スラグの粉塵化を抑制する方法として、製鋼スラグにシリカ源を加えて塩基度を1.5未満に低下させ、ダイカルシウムシリケート主体のスラグ組成からカルシウムシリケート主体のスラグ組成に改質する方法、密度変化の大きなα’相からγ相への転移を抑制して、密度変化の小さなα’相からβ相への転移を促進させる方法等が提案されている。
製鋼スラグの組成をカルシウムシリケート主体のスラグ組成に改質する場合、溶融状態の製鋼スラグに対して約20重量%のシリカ源を添加する必要がある。このためには、シリカ源の投入設備、投入したシリカ源の均一分散を図るための撹拌設備、更に投入設備と撹拌設備に付帯する諸設備の設置が必要となって、設備コストが上昇するという問題が生じる。更に、シリカ源の多量添加に伴って溶融スラグの温度が低下して溶融スラグの粘度が高くなり、作業性に支障をきたすという問題も生じる。このため、冷却過程においてα’相のダイカルシウムシリケートを、密度変化の小さなβ相のダイカルシウムシリケートへ転移させる方法が注目されている。冷却過程でダイカルシウムシリケートをα’相からβ相へ転移させる場合、例えば、硼素源を溶融状態の製鋼スラグ中に添加して冷却する方法が採用されている。これは、硼素源を添加することにより、溶融スラグ中の4価の珪酸アニオンを3価の硼酸アニオンで置換して、冷却過程におけるダイカルシウムシリケートの相転移を制御するものである。しかし、3価の硼酸アニオンで置換される珪酸アニオンの個数が少ないと、相転移の制御を完全に行うことができず、相転移を確実に制御するには、製鋼スラグ中に硼素を0.06〜0.09重量%(B2O3換算で0.38〜0.57重量%)は固溶させることが必要である。
特開2003−212616号公報には、少ない硼素量で製鋼スラグの粉塵化を制御することが可能な、製鋼スラグの粉塵化抑制剤が開示されている。即ち、溶融状態のスラグ中でマグネシアの供給源となるマグネシウム含有化合物と、硼酸、又は溶融状態のスラグ中で硼素の供給源となる硼素含有化合物との混合物で構成し、硼素含有化合物としてはコレマナイト、ウレキサイト、チンカル、カーナイトのいずれか1又はこれらの2以上の組み合わせとすることができ、一方マグネシウム含有化合物はマグネシアの含有量が24重量%以上26重量%以下で、残部がアルミナ及びシリカを主体とするマグネシア系ガラス、ドロマイト、カーナライト、マグネサイトのいずれか1又はこれらの2以上の組み合わせとすることもできる、製鋼スラグの粉塵化抑制剤が開示されている。
また、特開2003−212616号公報には、硼素を0.06〜0.09重量%(B2O3換算で0.38〜0.57重量%)固溶させて得られる個体状態の製鋼スラグを、道路等の土木用骨材として使用した場合、スラグ中に固溶している硼素が雨水や地下水に溶出するという環境問題が発生するが、前記製鋼スラグの粉塵化抑制剤を用いることによって、製鋼スラグ中の硼素固溶量を低減させて粉塵化を抑制できるため、硼素の溶出を低減できことが示唆されている。
特開2003−212616号公報
しかしながら、環境基準法での硼素の土壌環境基準値は1ppm以下、また土壌汚染対策法での溶出基準値も1ppm以下と厳しく規制されており、より少ない硼素添加量で製鋼スラグの粉塵化を抑制し、かつ冷却固化した製鋼スラグからの硼素のさらなる溶出量低減が望まれている。本発明は、係る事情に鑑みなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、少ない硼素量で製鋼スラグの粉塵化を抑制することが可能で、かつ冷却された製鋼スラグからの硼素の溶出量を低減できる、製鋼スラグの粉塵化抑制剤及びそれを用いた粉塵化抑制方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載のように、マグネシウムと硼素との複合酸化物を必須成分として含有する、製鋼スラグの粉塵化抑制剤を構成する。また、本発明は、請求項7に記載のように、溶融状態の製鋼スラグに、マグネシウムと硼素との複合酸化物を添加した後、冷却凝固を行うことを特徴とする製鋼スラグの粉塵化抑制方法を構成する。
本発明は次の着想のもとになされたものである。特許文献1では、溶融状態の製鋼スラグ中でマグネシアの供給源となるマグネシア含有化合物と、溶融状態の製鋼スラグ中で硼酸の供給源となる硼素含有化合物の混合物を、溶融製鋼スラグ中に添加することにより、溶融製鋼スラグの冷却過程における粉塵化を抑制する技術を開示している。即ち、溶融スラグ中の増加したマグネシア含有率を縦軸(y)に、溶融スラグ中の硼酸の添加量を横軸(x)にとり、(x,y)値がある値を超えた領域で製鋼スラグの粉塵化が抑制されることを示している。
これらの粉塵化を抑制できる領域において、硼素含有化合物の添加量が、例えば、0.3重量%と多い領域においては粉塵化防止という観点からは好ましいが、スラグからの硼素溶出量が増すという環境上の問題がある。そこで、硼素含有化合物の添加量を減らすと、マグネシア添加量を多くしなければならず、その結果融点が高くなり、従って同じ温度では流動性が悪くなるというプロセス上の問題があり、且つマグネシア原料のためのコストも高くなる。そこで、マグネシアと硼素含有化合物の両方の添加量を減らして、同様の粉塵化防止効果を達成することが出来ないか鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
本発明は、特許文献1のようなマグネシアと硼素含有化合物を混合して添加するという方法ではなく、マグネシウムと硼素の複合酸化物として添加することにより、粉塵化を抑制させつつ、硼素含有化合物とマグネシウムの添加量を低減させることができ、固化したスラグからの硼素の溶出量も低減させることができることを見出したものである。通常、マグネシアも硼素含有化合物も、溶融スラグ中に添加すれば、イオンに乖離するので、混合添加であろうと、複合酸化物としての添加であろうと、イオンに乖離した状態では変わりがないと推察されるが、予想に反して複合酸化物として添加する方が、混合物として添加するより効果的であることが判ったのである。
本発明の実施により、少ない硼素量で製鋼スラグの粉塵化を抑制することが可能で、かつ冷却された製鋼スラグからの硼素の溶出量を低減できる、製鋼スラグの粉塵化抑制剤及抑制方法を提供することが可能となる。
本発明は、マグネシウムと硼素との複合酸化物を必須成分として含有する、製鋼スラグの粉塵化抑制剤である。本発明の粉塵化抑制剤は、マグネシウムと硼素との複合酸化物を含有する限り、他に、本発明の目的に反しない範囲で他の化合物あるいは不純物等を含んでいても良い。複合酸化物としては、例えば、MgO・B2O3(マグネシウムメタボレート)、MgO・1.4B2O3、2MgO・B2O3(ジマグネシウムジボレート)、2MgO・3B2O3(ジマグネシウムヘキサボレート)、3MgO・B2O3(マグネシウムオルソボレート)、3MgO・4B2O3(トリマグネシウムオクトボレート)、3MgO・2B2O3、5MgO・4B2O3、7MgO・4B2O3又はこれらの水和物が挙げられる。これらは単独で、又は2つ以上の混合物で用いることができる。特に好ましいのは、MgO・1.4B2O3・3.5H2O及びMgO・1.4B2O3である。
また、本発明においては、請求項4記載のように、マグネシウムと硼素との複合酸化物として、硼素を含む溶液中にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を添加混合し、生成した水酸化マグネシウムと硼素の複合体を分離し、該複合体を焼成して得られる複合酸化物を
用いることもできる。硼素を含む溶液にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を添加混合すると、マグネシウム合金が溶解と同時に加水分解し、Mg(OH)2がマグネシウム合金表面に層状に生成するが、この際に溶液中の硼素が吸着されることにより除去されるものと推察される。生成した水酸化マグネシウムと硼素の複合体を分離し、この複合体を焼成して本発明の複合酸化物を得る。焼成に際しては、複合酸化物の組成を調整するために、マグネシウム含有化合物及び/又は硼素化合物を添加しても良い。分離されたマグネシウム合金は、再使用される。これは後述する硼素を含有する排水処理と、本発明を有効に結びつけるリサイクル技術を提供することにもなる。
マグネシウム合金としては、Al、Ca、Zn、Mnの少なくとも1つとのマグネシウム合金が好ましい。また、マグネシウム塩類としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はそれらの混合物が好ましい。
本発明のマグネシウムと硼素との複合酸化物を用いて、製鋼スラグの粉塵化を抑制する方法としては、複合酸化物を溶融状態の製鋼スラグに添加した後、冷却凝固を行うことによって、製鋼スラグの粉塵化を抑制することができる。複合酸化物の添加量としては、溶融状態の製鋼スラグに対して0.1〜0.35重量%が好ましい。複合酸化物としては、マグネシウムと硼素との複合酸化物を含有する限りどのような形態・状態の物でも良い。硼素を含む溶液中にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を添加混合し、生成した水酸化マグネシウムと硼素の複合体を分離し、該複合体を焼成して得られる複合酸化物を用いるのも好ましい。
マグネシウムと硼素の複合酸化物の一例として、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oを製鋼スラグの粉塵化抑制剤として用いた例を示す。マグネシウムを含む化合物と硼素を含む化合物の混合系、即ち2Mg(OH)2+NaBO、Mg(OH)2+2HBO3、MgO+B2O3、およびB2O3単体を比較例として用いた。MgO・1.4B2O3・3.5H2Oと比較例の化合物は全て市販の一級試薬を用いたが、結晶水や吸着水を取るために予め400℃で2時間加熱し、冷却後粉砕することによって調製し、その後秤量して、実験に使用した。実験に使用したスラグは、実炉のスラグに近い組成を有する合成スラグを1,700℃で溶解調製した。得られた合成スラグの組成は、カルシア42.95重量%、シリカ23.23重量%、アルミナ20.24重量%、マグネシア12.95重量%、酸化マンガン0.07重量%、トータル鉄0.31重量%、その他0.25重量%であり、塩基度は1.85であった。
[実施例1〜4]及び[比較例1〜5]
白金坩堝を用いて、合成スラグ15gに、上記本発明の複合酸化物、混合物、単体化合物を所定量添加し(B2O3換算重量%で表1に表示)、1540℃で1時間加熱して溶融させ、0.012℃/秒の冷却速度で冷却した。ここで、0.012℃/秒の冷却速度は、実炉における冷却速度と同程度の条件である。また、固化時の粉塵化発生の判定は、1540℃から530℃まで0.012℃/秒の冷却速度で冷却し、その後室温まで自然冷却した際の、白金坩堝内の合成スラグの状態を目視観察することによって行った。冷却速度を制御した冷却を530℃で打ち切ったのは、ダイカルシウムシリケートの高温相であるα’相が低温相であるγ相に転移する温度が850℃、β相に転移する温度が675℃であることから、530℃まで冷却すればβ相への転移は完了していると考えたからである。各種添加物の性能、即ち溶融状態の製鋼スラグ中に添加する添加量と冷却後のスラグの状態、冷却スラグ中のγ相のダイカルシウムシリケートの量、冷却スラグからの硼素の溶出量を表1に示した。
Figure 2005336007
粉塵化はダイカルシウムシリケートの高温相であるα’相が、冷却過程でγ相に変化することにより生じることが判明していることから、固化した合成スラグのX線回折強度(cps)より、合成スラグ中のγ相のダイカルシウムシリケートの量を求めた。2000cps以上だと粉塵化の可能性を持っているので、表1において、粉塵化抑制剤の評価を2000cps以下を○、2000cps以上を×で示した。表1から、γ相が少ないという観点から好ましいものはMgO・1.4B2O3・3.5H2O(B2O3換算添加量0.15〜0.3重量%)、およびB2O3(B2O3換算添加量0.3重量%)のものである。
硼素溶出量は、冷却後の一定量のスラグに10倍容量の蒸留水を加え、30分間超音波処理(途中3回撹拌)後、フイルターで加圧ろ過し、ICP法にて定量したものである。土壌汚染対策法での溶出基準値1ppm以下をクリヤーするものを○で示した。B2O3(B2O3換算添加量0.3重量%)、Mg(OH)2+2HBO3
(B2O3換算添加量0.2重量%)以外は基準値をクリヤーしている。
表1で、γダイカルシウムシリケート量、硼素溶出量の両方を満足し総合評価で優れているものは、MgO・1.4B2O3・3.5H2O(B2O3換算添加量0.15〜0.3重量%)である。MgO・1.4B2O3・3.5H2Oが優れた粉塵化抑制剤であることを示している。また、硼素の溶出量も、B2O3 換算添加量0.2重量%において0.24ppmと最良の数値を示している。
このように、MgO・1.4B2O3・3.5H2O系において粉塵化抑制剤添加量を低減できるのは、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oは、融点低減効果が大きい硼素を含有するために、融点が低いので、冷却凝固過程において、スラグの粒界に存在し液相のフイルムを形成し、その液相フイルムの表面から相変化により体積変化を起こし、スラグ粉塵化の原因物質であるα-2CaO・SiO2(ダイカルシウムシリケート)を溶解し、それがMgOと反応して、液相内部に常温まで結晶変態しない7CaO・MgO・4SiO2(Bredigiteh)を沈殿(析出)するからであると推定される。7CaO・MgO・4SiO2(Bredigiteh)はCaOとSiO2の組成比が2CaO・SiO2に近いので、7CaO・MgO・4SiO2(Bredigiteh)が生成した分だけ、γ-2CaO・SiO2の生成を抑制することができる。即ち、硼素による融点低減効果とマグネシアによる2CaO・SiO2トラップ効果が結晶粒界で同時に起こることにより、γ-2CaO・SiO2の生成を抑制することができるものと推察される。
本発明の様に複合酸化物として添加する方法が、マグネシアと硼素含有化合物を混合して添加する方法より効果が大きいのは、実際の溶融スラグは完全な均一系ではなく、マグネシアと硼素含有化合物を混合して添加する方法では、微視的にはマグネシウムがリッチな領域と硼素がリッチな領域が分かれて存在するのに対し、複合酸化物としての添加では、イオンに乖離しているとしても、マグネシウムカチオンと硼酸アニオンが静電気的引力により近接して存在することにより、より優れた効果を発現できるものと考えられる。
また、MgO・1.4B2O3・3.5H2O系において、硼素の溶出量が低減できるのは、混合物として添加するより、複合酸化物として添加する方が、スラグ冷却凝固後の硼素の形態がより難溶解性の化合物として存在すること、及び前記のように粉塵化が抑制される分、固形物の表面積が減少し、溶解性が低減するものと推察される。スラグ冷却凝固後の硼素の形態であるが、マグネシアと硼素含有化合物を混合して添加する場合は、溶融状態で微視的に硼素リッチな領域があると、スラグ冷却凝固後、それが水に少々溶解度を有するB2O3系ガラスを形成している可能性も考えられる。
[実施例5]
電気炉製鋼における還元期スラグ(塩基度1.8)6kgを、50kg容量のアーク炉に投入して溶融させた。0.1mm以下の粒度のMgO・1.4B2O3・3.5H2Oを、製鋼スラグ中にB2O3換算含有率0.2重量%になるよう添加し、溶融した製鋼スラグ中への均一分散を図るために10分間保持後、0.012℃/秒の冷却速度で冷却を開始した。なお、0.012℃/秒の冷却速度による冷却は530℃までとし、その後は電源を切って36時間自然冷却して、室温まで温度を下げた。冷却スラグはアーク炉内で粉塵化することなく固化状態を保持していた。
実施例1および2において用いたMgO・1.4B2O3・3.5H2Oに代えて、マグネシウムメタボレート(MgO・B2O3)、ジマグネシウムジボレート(2MgO・B2O3)、ジマグネシウムヘキサボレート(2MgO・3B2O3)、マグネシウムオルソボレート(3MgO・B2O3)、トリマグネシウムオクトボレート(3MgO・4B2O3)、3MgO・2B2O3、5MgO・4B2O3、7MgO・4B2O3のいずれか1又はこれらの2以上の混合物を用いてもほぼ同じ様な結果が得られた。
[実施例6]
硼素は表面処理、ガラス製造、写真現像・定着、半導体製造などにも幅広く使用されているが、適切な廃水処理法がないため処理方法の開発が望まれている。一方、PCや携帯電話機等のハウジングにマグネシウム合金が使用されるようになってきたが、マグネシウム合金のリサイクルが課題となっている。本実施例では、廃水中の硼素の除去に、上記問題となっているマグネシウム合金を吸着材として有効利用し、かつ硼素を吸着した水酸化マグネシウムを用いて製鋼スラグの粉塵化抑制剤を製造する例を示す。吸着材として実験に用いたマグネシウム合金の化学成分は表2の通りである。
Figure 2005336007
実験にはマグネシウム合金を2.5×0.7×0.3mm程度の大きさに削った切削屑を使用した。擬似廃液としてH3BO3を蒸留水に溶解し、B:100mg/lの母液を1リットル作製した。これから各々100ml分取し、NaOHとH2SO4溶液を用いて、初期pHを調整した。初期pHは2〜12と種々変化させた。これにMgSO4(Mg:5〜10g/l
)、MgCl2(Mg:5〜10g/l )を所定量添加し、さらにマグネシウム合金を1g添加して、溶液温度40℃で30分撹拌した。また、その他の条件として溶液温度:20〜80℃、撹拌時間:30〜120分と種々変化しそれらの影響を調べた。15時間放置後1μmメンブランフィルターで吸引ろ過した。ろ液は、ICP分析を行い、硼素濃度を求め、母液濃度との比から除去率を計算した。沈殿物は、X線回折、EPMAなどを用いて観察した。廃水は色々な処理や利用の後に発生するものでpH値も種々の値のものが多い。そこで、溶液温度40℃、撹拌時間30分と一定にし、溶液の初期pHの影響について検討した。硼素除去率と初期pHの関係を図1に示した。
これからマグネシウム合金単味の場合は、初期pH=9〜12の範囲で全く除去されない。それに対して、MgSO4やMgCl2の塩を単味の場合、およびそれらを混合した場合ではほとんど差はなく、初期pH=9〜11の範囲で10%程度の除去率である。初期pH=12とpHが高くなると15%程度と若干上昇する。さらに、MgSO4やMgCl2
の塩にMg合金を添加すると除去率は25〜50%と急激に増加する。そして、初期pHが高いほど除去率は増大し、Mg合金を添加することにより相乗効果が認められる。
図2に沈殿量と初期pHの関係を示す。これから、全く除去されなかったマグネシウム合金単味の場合は、ほとんど沈殿が発生しない。それに対して、MgSO4やMgCl2塩単味の場合、およびそれらを混合した場合はpH=9〜12で極わずかの白い沈殿が認められる。しかし、これら塩類にマグネシウム合金を添加した場合は、除去率に応じて沈殿量が増大する。MgCl2塩にマグネシウム合金を添加した場合が最も沈殿量が多く、PH=12では2g程度の沈殿が生成する。
また、pH=2〜5と酸性側での除去率と初期pHの関係を図3に示す。MgCl2塩にマグネシウム合金を組み合わせたところ除去率30〜40%程度を示し、アルカリ側とほぼ同じ値である。しかし酸性側でMgCl2塩単味の場合は全く沈殿が生成せず、硼素も全く除去されない。
除去率向上のため溶液温度の影響を調べてみた。硼素除去率と溶液温度の関係を図4に示す。初期pH=9,12いずれの場合も、MgSO塩とマグネシウム合金の組み合わせよりも、MgCl2塩とマグネシウム合金との組み合わせの方が除去率が高く、温度は低いほど除去率が高い。以上より、硼素の除去にマグネシウム合金が利用できることがわかる。硼素の除去機構は、マグネシウム合金が溶解と同時に加水分解し、Mg(OH)2がマグネシウム合金表面に層状に生成するがこの際に溶液中の硼素が吸着されることにより除去されたものと推察される。
次に、このように硼素を吸着した水酸化マグネシウムを分取し、硼酸、B2O3等と加熱反応させて、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oに近い組成物を合成した。得られたマグネシウムと硼素の複合酸化物を用いて、実施例1に示したMgO・1.4B2O3・3.5H2Oと同様の実験を行い、表1とほぼ同様の結果を得た。
本発明のマグネシウムと硼素との複合酸化物を含有する粉塵化抑制剤は、少ない硼素量で製鋼スラグの粉塵化を抑制することが可能で、かつ冷却された製鋼スラグからの硼素の溶出量を低減できるので、製鋼スラグの粉塵化を抑制するために非常に効果的に利用することができる。また、廃水中の硼素の除去に、マグネシウム合金をリサイクル可能な吸着材として有効利用し、得られた硼素を吸着した水酸化マグネシウムから製造される複合酸化物も、本発明の目的のために有効に利用できる。
マグネシウム合金による、廃液中の硼素の除去における硼素除去率とPH(アルカリ性側)、溶液組成との関係を示す図である。 マグネシウム合金による、廃液中の硼素の除去における沈殿量とPH、溶組成との関係を示す図である。 マグネシウム合金による、廃液中の硼素の除去における硼素除去率とPH(酸性側)、溶液組成との関係を示す図である。 マグネシウム合金による、廃液中の硼素の除去における硼素除去率と温度との関係を示す図である。

Claims (11)

  1. マグネシウムと硼素との複合酸化物を含有する製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  2. 複合酸化物が、MgO・B2O3、MgO・1.4B2O3、2MgO・B2O3、2MgO・3B2O3、3MgO・B2O3、3MgO・4B2O3、3MgO・2B2O3、5MgO・4B2O3、7MgO・4B2O3又はこれらの水和物の中から選ばれるいずれか1つ、又は2つ以上の混合物である請求項1記載の製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  3. 複合酸化物が、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oである請求項1記載の製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  4. 複合酸化物が、硼素を含む溶液中にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を添加混合し、生成した水酸化マグネシウムと硼素の複合体を分離し、該複合体を焼成して得られる複合酸化物である請求項1記載の製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  5. マグネシウム合金が、Al、Ca、Zn、Mnの少なくとも1つとの合金である請求項4記載の製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  6. マグネシウム塩類が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はそれらの混合物である請求項4記載の製鋼スラグの粉塵化抑制剤。
  7. 溶融状態の製鋼スラグに、マグネシウムと硼素との複合酸化物を添加した後、冷却凝固を行うことを特徴とする製鋼スラグの粉塵化抑制方法。
  8. 複合酸化物の添加量が、溶融状態の製鋼スラグに対して0.1〜0.35重量%である請求項7記載の製鋼スラグの粉塵化抑制方法。
  9. 複合酸化物が、MgO・B2O3、MgO・1.4B2O3、2MgO・B2O3、2MgO・3B2O3、3MgO・B2O3、3MgO・4B2O3、3MgO・2B2O3、5MgO・4B2O3、7MgO・4B2O3又はこれらの水和物の中から選ばれるいずれか1つ、又は2つ以上の混合物である請求項7又は8記載の製鋼スラグの粉塵化抑制方法。
  10. 複合酸化物が、MgO・1.4B2O3・3.5H2Oである請求項7又は8記載の製鋼スラグの粉塵化抑制方法。
  11. 複合酸化物が、硼素を含む溶液中にマグネシウム合金とマグネシウム塩類を添加混合し、生成した水酸化マグネシウムと硼素の複合体を分離し、該複合体を焼成して得られる複合酸化物である請求項7又は8記載の製鋼スラグの粉塵化抑制方法。
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