JP2005326713A - 反射防止性偏光板、その製造方法、およびそれを用いた画像表示装置 - Google Patents

反射防止性偏光板、その製造方法、およびそれを用いた画像表示装置 Download PDF

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栄一 加藤
Hajime Nakayama
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Abstract

【課題】
表示する環境が変わっても面内の色味が均質でニュートラル性が良好で、耐久性にすぐれ、外光の写り込みのない偏光板、およびそれを用いた画像表示装置の提供。
【解決手段】
ポリビニルアルコール系フィルムから形成された偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが設けられ、かつ一方の側のセルロースアシレートフィルム上に多層構造の反射防止膜が塗設されてなる偏光板であって、該セルロースアシレートフィルムの特定のレターデーション値ReおよびRthが特定の湿度依存性範囲であることを特徴とする反射防止性偏光板。
【選択図】図2

Description

本発明は、偏光板、その製造方法、およびそれを用いた画像表示装置に関し、更に詳しくは、表示画像の反射防止性に優れ、画像鮮明性が良好で視認性に優れた偏光板、その製造方法、並びに画像表示装置に関する。
各種ディスプレイの一つに液晶表示装置があり、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々用途が広がっている。液晶表示装置ではその画像表示の原理上、偏光板の使用が必須であり、偏光板の需要は拡大している。偏光板は一般に、偏光能を有する偏光膜の両面あるいは片面に、接着剤層を介して保護フィルムが貼り合わされている。液晶表示装置などの画像表示装置においては、偏光板表面の、外光の反射によるコントラストの低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する反射防止膜(反射防止フィルム)をディスプレイの最表面に配置することが一般的になっている。
偏光膜の素材としてはポリビニルアルコール(以下、PVA)が主に用いられており、PVAフィルムを一軸延伸してからヨウ素または二色性染料で染色するか、あるいは染色してから延伸し、さらに硬化性化合物で架橋することにより偏光膜が形成される。偏光膜は、通常、連続フィルムの走行方向(長手方向)に沿って延伸(縦延伸)して製造されるため、偏光膜の吸収軸は長手方向にほぼ平行となる。
PVA系偏光膜の保護フィルムは、光学的に透明で複屈折が小さい透明フィルムであり、親水性樹脂であるPVAとの貼合性の観点から、主にセルローストリアセテートが用いられている。しかしセルロースアシレートフィルム自体は親水性のポリマーであり透水性が大きいため、様々な疎水化剤を添加して透水性を抑制する技術が提案されている。しかし光学フィルムとしての光学特性と、フィルムの透水性の抑制および機械的強度等の改良効果がなお不十分であった。
一方、反射防止処理は、屈折率の異なる材料からなる複数の薄膜の多層積層体として作製された反射防止膜を用いて、可視光領域の反射をできるだけ低減できるような設計により行われている。しかし、このような構造を有する反射防止膜では、多層積層体を構成している各層の膜厚が、それぞれの層で一定であるために、原理上、可視光領域全域にわたる完全な反射防止はできない。
このため、通常は視感度の強い550nm付近の反射防止に重点をおき、かつできるだけ広い波長領域で反射防止できるような設計が行われている。このような設計上の理由から、現状では特定波長領域以外の反射防止効果が充分ではなく、可視光の短波長領域の一部および長波長領域の一部の反射率が、可視光領域の他の波長領域の反射率よりも大きい。その結果として反射光が特定の色相を呈し、表示品位を落としてしまうという問題がある。
これに対し、偏光板と反射防止膜を一体とした積層体として、表示画像の高品位化の検討がなされるようになった。具体的には、反射防止膜を設けた偏光板の380〜700nmの範囲での反射率が何れも3.5%以下とするものが開示され(特許文献1)、また屈折率が特定の含フッ素樹脂を含有する低屈折率層と防眩層からなる防眩性反射防止膜を設けた偏光板(特許文献2)等が開示されている。
さらに反射型または半透過反射型の液晶表示装置では、一般に液晶表示装置に使用されるバックライトが440nm、550nm、610nmの3つの波長に輝線ピークを持つため、これらの3波長での透過率を同じにすることが色再現性をよくする重要なポイントとなり、波長440nm、550nmおよび610nmにおける平行透過率および直交透過率を規定した防眩性反射防止膜付き偏光板(特許文献3)や、複数の金属酸化物層を含む多層構成の反射防止膜付き偏光板が提案されている(特許文献4)。
特開2003−270441号公報 国際公開第03/052471号パンフレット 特開2002−22952号公報 特開2003−344656号公報
最近、LCDは、薄型・軽量・低消費電力の特徴を生かして、高度情報・通信時代に必須のフラットパネルディスプレイとして多用され、特に高精細のカラー画像表示が可能なモニターやテレビなどの大型化あるいはモバイル化の伸びが顕著となっている。また使用する環境が大きく変わっても性能が変化しない、更には耐候性等の耐久性の向上が望まれている。
従って、本発明の目的は、表示する環境が変わっても面内の色味が均質でニュートラル性が良好で、耐久性にすぐれ、外光の写り込みのない偏光板を提供することである。
また本発明の他の目的は、斜め延伸方法により得られ、偏光板打ち抜き工程における得率を向上することができる斜め延伸したポリマーフィルムを偏光膜として有し、高性能で安価な偏光板を提供することにある。
さらには、本発明の他の目的は、反射防止膜を塗設した保護フィルムを偏光膜の一方の側に有する偏光板を備えた、耐久性良好な表示品位の高い画像表示装置を提供することである。
本発明者らは、セルロースアシレートフィルムの特定の環境におけるレターデーションを調整することにより、該セルロースアシレートフィルムを保護フィルムとして使用し反射防止膜を積層した偏光板の、反射が抑制され、色味などの光学特性も良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
更には、セルロースアシレートフィルムが、特定の化合物を、特定の量含有することにより、セルロースアシレートの光学異方性の湿度依存性を軽減させることができることを見出した。
すなわち、本発明によれば、下記構成の反射防止膜塗設の偏光板、それの製造方法、およびそれを用いた画像表示装置が提供され、本発明の上記目的が達成される。
(1)ポリビニルアルコール系フィルムから形成された偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが設けられ、且つ一方の側のセルロースアシレートフィルム上に多層構造の反射防止膜が塗設されてなる長尺の偏光板であって、少なくとも反射防止膜が塗設されたセルロースアシレートフィルムの、下記数式(1)および(2)で定義されるReおよびRthが、それぞれ下記数式(3)および(4)を充足することを特徴とする反射防止性偏光板。
数式(1):Re=(nx−ny)×d
数式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
数式(3):Reλ80/Reλ10≧0.65
数式(4):Rthλ80/Rthλ10≧0.65
[式中、Reはフィルムの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthはフィルムの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。さらにReλ10は、波長λにおける25℃、10%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Reλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλ10は波長λにおける25℃、10%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)、Rthλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
(2)セルロースアシレートフィルムが、上記レターデーション値の湿度差による低下を改良する、波長200nm〜400nmの紫外領域にのみ吸収を持つ化合物を、セルロースアシレート固形分100質量部に対して0.01〜30質量部含有する上記(1)に記載の長尺の偏光板。
(3)反射防止膜が、セルロースアシレートフィルムより屈折率の高い高屈折率層少なくとも1層、セルロースアシレートフィルムの屈折率よりも低屈折率の低屈折率層少なくとも1層を順次塗設してなる多層構造の反射防止膜であって、該低屈折率層が、屈折率1.17〜1.37の中空構造の無機微粒子を少なくとも1種含有してなる上記(1)または(2)に記載の長尺の偏光板。
(4)偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもなく、550nmにおける偏光度が99.0%以上、単板透過率が40.0%以上であり、かつ偏光板の長尺方向の単板透過率のばらつきが±0.3%以内である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の長尺の偏光板。
(5)高屈折率層が、コバルト、アルミニウム、およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含む二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する上記(3)に記載の長尺の偏光板。
(6)偏光板の波長450nm〜650nmにおける平均反射率が0.5%以下であり、更に耐候性試験前後の該反射率の変化が0.5%以下である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の長尺の偏光板。
(7)偏光板の耐候性試験前後の反射光の色味変化ΔEがL色度図上で15以下である上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の長尺の偏光板。
(8)反射防止膜の厚さが実質的に均一であり、さらに反射防止膜最表面の算術平均粗さRaが0.02〜1μm、凹凸の平均間隔Smが5〜65μm、且つ算術平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが10以下である凹凸形状を有する上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の偏光板。
(9)高屈折率層が平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子少なくとも1種を透光性樹脂に分散してなる光散乱層であり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなる上記(3)乃至(8)のいずれかに記載の長尺の偏光板。
(10)保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムの延伸軸と、偏光膜の延伸軸との角度が10°以上90°未満である上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の長尺の偏光板。
(11)他方の側に、セルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を有する光学補償フィルムを設けた上記(1)に記載の長尺の偏光板。
(12)連続的に供給される偏光膜用ポリビニルアルコール系フィルムの両端を保持手段により保持し、該保持手段をフィルムの長手方向に進行させつつ張力を付与して延伸することにより偏光膜を製造する上記(1)に記載の偏光板の製造方法において、該ポリビニルアルコール系フィルムの一方端の実質的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L1、およびポリビニルアルコール系フィルムの他方端の実質的な保持開始点から保持解除点までの保持手段の軌跡L2と、両保持手段の実質的な保持解除点の距離Wが下記数式(5)を満たし、かつ両保持手段の長手方向の搬送速度の差が1%未満である延伸方法により製造されることを特徴とする長尺の偏光板の製造方法。
数式(5):|L2−L1|>0.4W
(13)偏光膜用ポリビニルアルコール系フィルムの延伸に際して、該ポリビニルアルコール系フィルムを、その揮発分含有率を5質量%以上に維持したまま延伸したのち、収縮させながら揮発分含有率を低下させる上記(12)に記載の長尺の偏光板の製造方法。
(14)偏光膜の一方の側に、反射防止膜が塗設されたセルロースアシレートフィルムを連続的に貼り合わせることにより偏光板に反射防止膜を設ける請求項(12)または(13)に記載の偏光板の製造方法。
(15)画像表示面に、上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の長尺の偏光板又は上記(12)乃至(14)のいずれかに記載の製造方法により製造された長尺の偏光板から打ち抜かれた偏光板が配置されてなることを特徴とする画像表示装置。
(16)液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板のうち1枚が、上記(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の長尺の偏光板又は上記(12)乃至(14)のいずれかに記載の製造方法により製造された長尺の偏光板から打ち抜かれた偏光板であることを特徴とする画像表示装置。
(17)画像表示装置が、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする上記(15)乃至(16)のいずれかに記載の画像表示装置。
湿度変化に対して光学特性の変化が小さい本発明の反射防止性偏光板は、低反射性で反射光の色味のニュートラル性が良好であり、且つ耐湿性と耐候性に優れており、しかも生産性に優れ低コスト化が可能なものである。
湿度変化による光学異方性の変化が抑制され、且つ透湿性の改良されたセルロースアシレートフィルムを用いた本発明の反射防止性偏光板が配置されてなる本発明の画像表示装置は、環境変化に対しての表示画像の品位が安定で耐久性に優れたものである。
また光学異方性の耐湿度変化が抑制され、波長分散が小さい本発明の反射防止性偏光板の、反射防止膜が設けられていない側の面に、光学補償層塗設セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムを用いた偏光板は、光学補償層そのものの光学特性を引き出すことができる。この偏光板を液晶表示装置に用いることによって、コントラストの良化、色味の改良、更に耐湿性および耐候性の向上を図ることができる。
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素および/または二色性化合物を染色してなる偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが設けられ、且つ一方の側のセルロースアシレートフィルム上に、多層構造の反射防止膜が塗設されてなる長尺の偏光板である。更に本発明の偏光板は、その反射防止膜が塗設された保護フィルムとは反対側の保護フィルム上に、必要に応じて、光学補償フィルム(または位相差フィルム)を設けてなるものである。
これら反射防止膜付きの偏光板の保護フィルムは、少なくとも反射防止膜を塗設する側に本発明で特定のセルロースアシレートフィルムを用いる。これら反射防止膜付きの偏光板の保護フィルムは、両面とも本発明で特定のセルロースアシレートフィルムが設けられることが好ましい。
なお本明細書において、「長尺」とは、具体的には、長さ100〜5000mのものをいう。また、「幅広」とは幅0.7〜2.0mのものをいう。また、「数値A」〜「数値B」という記載は、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「数値A以上数値B以下」の意味を表す。「(メタ)アクリロイル」の記載は、「アクリロイルもしくはメタクリロイル、または両者」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」も同様である。
<セルロースアシレートフィルム>
先ず本発明の偏光板の保護フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムについて説明する。
本発明におけるアシレートフィルムは、その厚さが、好ましくは10〜120μm、より好ましくは20〜120μm、さらに好ましくは30〜100μm、最も好ましくは30〜80μmである。
また、膜厚の変動幅は、好ましくは±3%以内であり、よりに好ましくは±2.5%以内、さらに好ましくは±1.5%以内である。この変動幅内において、保護フィルムとしての厚みが反射防止性に実質上の影響を及ぼさない良好なものとなる。
膜厚変動幅を±3%以内とするには、
(1)セルロースアシレートを低分子量体とする、
(2)流延によるフィルム形成に際して、セルロースアシレートを主成分とする組成物の有機溶媒溶液(ドープ)の濃度および粘度を調節する、
(3)乾燥工程において膜表面の乾燥温度および、乾燥風を用いる場合にはその風量や風向等を調節する、
などが有効である。溶解工程、流延工程および乾燥工程は後述する製造方法の欄で説明する。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、長さ100〜5000m、幅0.7m以上で、さらには0.7〜2m、特には0.7〜1.50mの長尺ロール形態であることが好ましい。このことにより、反射防止性偏光板およびそれを用いた画像表示装置を薄く軽量化し、光透過率を高めてコントラストや表示輝度を改善することができるなどの良好な光学特性が安定して得られ、長尺で幅広な保護フィルムを皺等の問題を生じることなくハンドリング性よく取り扱うことができる。
[カール]
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は、−7/m〜+7/mであることが好ましい。長尺で広幅のセルロースアシレートフィルムに対して、後述する反射防止膜の塗設、表面処理、偏光膜との貼り合せなどを行う際に、透明フィルムの幅方向のカール値が前述の範囲内であると、フィルムのハンドリングが良好になり、フィルムの切断が起きなくなる。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触して発塵したり、フィルム上への異物付着が生じたりしなくなり、光学フィルムとしての点欠陥や塗布スジの頻度を許容値の範囲内とすることができる。またカールを上述の範囲とすることで、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぎ、また光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減することができるので好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
以上のように本発明のセルロースアシレートフィルムは、長さ100〜5000mおよび幅0.7m以上の長尺品であって、フィルムの膜厚が10〜120μmで、その膜厚変動幅が±3%以内であり且つ幅方向のカールが−7/m〜+7/mであるのが好ましい。
〔セルロースアシレート組成物〕
[セルロースアシレート]
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、セルロースエステルを原料としてなるものである。該セルロースエステルの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においては、セルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、上記のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、本発明におけるセルロースは、リンター、ケナフ、パルプを精製して用いられる。
本発明においてセルロースアシレートとは、セルロースの水酸基がアセチル基等のアシル基で置換されてなるカルボン酸エステルのことであり、該アシル基の総炭素数が2〜22であるものをいう。
本発明に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(6)および(7)を満足するものが、溶解性の点で好ましい。
数式(6):2.3≦SA’+SB’≦3.0
数式(7):0≦SA’≦3.0
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.6〜3.0であり、特に好ましくは2.80〜3.00である。また、SAの置換度(SA’)はより好ましくは1.4〜3.0であり、特には2.3〜2.9である。
なお上記の置換度SA’およびSB’は、セルロースの水酸基を置換する酢酸および/または炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得ることができる。測定方法としては、ASTM−D817−91に準じて実施することができる。
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、または芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、シクロヘキサンカルボニル、アダマンタンカルボニル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、より好ましいアシル基は、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサンカルボニル、アダマンタンカルボニル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ナフチルカルボニルなどである。
上記セルロースアシレートは、セルロースの低級脂肪酸エステルであるのがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることも好ましい。
上記のセルロースの水酸基を置換するアシル置換基が、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合には、その全置換度が2.50〜3.00のとき、セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させることができるので、全置換度をこの範囲とすることが好ましい。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、更に好ましくは2.65〜3.00である。
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であるのが好ましく、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が該上限値以下であれば、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎて、流延によるフィルム作製が困難になるなどの不具合が生じることがなく、該下限値以上であれば、作製したフィルムの強度が低下するなどの不都合が生じないので、上述の範囲内とするのが好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、p.105−120、1962年)により測定できる。また特開平9−95538号公報にも詳細に記載されている。
またセルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価することができ、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜3.0であることがさらに好ましく、1.0〜2.0であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁に詳細に記載されている。
上記セルロースアシレートは、その使用に際して、それぞれ単独でまたは、異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
[レターデーション調整剤(RC)]
本発明において、セルロースアシレート組成物に好適に用いられるレターデーション調整剤(RC)は、特定の紫外領域にのみ吸収帯を持ち、セルロースアシレートフィルムのレターデーションの湿度依存性を改善する化合物である。本発明者らは、このようなレターデーション調整剤(RC)の少なくとも1種を、セルロースアシレートの固形分100質量部に対して0.01〜30質量部用いることによって、フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性の湿度依存性を軽減させる、すなわちセルロースアシレートフィルムの25℃、10%RHでの正面レターデーション値(Reλ10)に対する25℃、80%RHでの正面レターデーション値(Reλ80)の比率Re80λ/Re10λ、および25℃、10%RHでの膜厚方向のレターデーション値(Rthλ10)に対する25℃、80%RHでの膜厚方向のレターデーション値(Rthλ80)の比率Rth80λ/Rth10λをそれぞれ0.65以上とすることができることを見出した。この化合物のセルロースアシレートフィルム中での作用効果の詳細については、必ずしもつまびらかではない。
本発明で好適に用いられるレターデーション調整剤(RC)の、紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmであることが好ましく、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置では、より少ない電力で輝度を高めるのに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムのレターデーションの湿度依存性を小さくさせる上記レターデーション調整剤(RC)をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが好ましい。
(添加量)
本発明で好ましく用いられるレターデーション調整剤(RC)の添加量は、前記のとおりセルロースアシレート固形分100質量部に対して0.01ないし30質量部であることが好ましく、0.1ないし20質量部であることがより好ましく、0.2ないし10質量部であることが特に好ましい。
(添加方法)
またこれらレターデーション調整剤(RC)は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれらレターデーション調整剤(RC)を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
(LogP値)
そしてレターデーション調整剤(RC)は、前記のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して、光学異方性の湿度依存性を小さくする化合物であるが、更にオクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。レターデーション調整剤(RC)のlogP値が7以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れており、フィルムの白濁や粉吹きなどを生じることがなく、logP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎてセルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させたり、フィルム表面の鹸化処理(後述)に際して、この化合物の溶出や析出が生じたりすることがないので、上記の範囲内にあることが好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法[J. Chem. Inf. Comput. Sci., 27巻21頁(1987)]、 Viswanadhan’s fragmentation法[J. Chem. Inf. Comput. Sci., 29巻163頁(1989)]、 Broto’s fragmentation法[Eur. J. Med. Chem. − Chim. Theor., 19巻71頁(1984)]などが好ましく用いられるが、中でもCrippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法または計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
[レターデーション調整剤(RC)の物性]
レターデーション調整剤(RC)は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。またレターデーション調整剤(RC)は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。またレターデーション調整剤(RC)は、セルロースアシレートフィルム作製時のドープの流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。レターデーション調整剤(RC)の分子量は150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることがさらに好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造であってもよい。
レターデーション調整剤(RC)は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
セルロースアシレートフィルムの、少なくとも一方の側の表面から、全膜厚の10%までの部分におけるレターデーション調整剤(RC)の平均含有率は、該セルロースアシレートフィルムの厚み方向の、中央部における該調整剤(RC)の平均含有率の80〜99%となるように配合するのが好ましい。該調整剤(RC)の存在量は、例えば特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
以下に本発明で好ましく用いられる、レターデーション調整剤(RC)の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されるものではない。
(イ)オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である、置換されていてもよい炭素数1〜20の脂肪族アルコールのリン酸トリエステル:例えば、メチルジエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、1−アダマンチルジヘキシルホスフェート、2−エチルオキシカルボニルエチルホスフェート。
(ロ)オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である、1価若しくは多価のカルボン酸エステル化合物:
カルボン酸としては、例えば、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、シクロへキセンカルボン酸等の不飽和脂肪酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸等の脂環式環カルボン酸)、炭素数2〜22の直鎖または側鎖を有する多価脂肪族カルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、メバロン酸、クエン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸等、芳香族カルボン酸(例えば、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、べンゼンテトラカルボン酸、トルイル酸、ナフトエ酸等)等があげられる。
エステル残基としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪族基(例えば、アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンチル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル等、アルケニル基としては、例えば、アリル、ブテニル、ヘキセニル、オクテニル、オレイル、シクロペンテニイル、シクロヘキセニル等、アルキニル基としては、例えば、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等)が挙げられる。炭素数6〜14の芳香族基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル、インデニル、ビフェニレニル等が挙げられる。これらの脂肪族基および芳香族基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級窒素原子含有ヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
(ハ)エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基の少なくとも1種で置換された、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含有する5または6員環の複素環化合物:
ヘテロ環構造としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、上記のヘテロ原子を含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、上記のヘテロ原子の隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオキシ、ノニルカルボニルオキシ、ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、ナフタレンカルボニルオキシ、アダマンタンカルボニルオキシ等が例示できる。
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル等が例示できる。
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、プロピルカルボキサミド、ブチルカルボキサミド、ペンチルカルボキサミド、ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、ヘプチルカルボキサミド、オクチルカルボキサミド、アダマンタンカルボキサミド、ノニルカルボキサミド、ドデシルカルボキサミド、ペンタカルボキサミド、ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、ブチルカルバモイル、ペンチルカルバモイル、ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、オクチルカルバモイル、ヘプチルカルバモイル、オクチルカルバモイル、アダマンタンカルバモイル、デシルカルバモイル、ドデシルカルバモイル、テトラデシルカルバモイル、ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。
(ニ)多価アルコールエステル化合物:多エステル化合物は、モノカルボン酸との多エステル化体である。脂肪族ポリオール類としては、その価数は2〜20のものが好ましい。より好ましくは2〜10ものが挙げられる。
脂肪族ポリオールの具体的な化合物として、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、ヒドロキシ基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサントリメタノール、イノシトール等)が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していても異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。いずれの場合もの結合数は3〜10が好ましい。より好ましくは3〜5である。具体的にはジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジ(オキシエチレン−オキシプロピレン)等が挙げられる。
モノカルボン酸としては、前記のカルボン酸エステル化合物に記載のモノカルボン酸と同様の内容のものが挙げられる。
糖類アルコールとして、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章[共立出版(株)、1984年刊]、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」[(株)朝倉書店、1967年刊]等に記載の多価アルコール合物が挙げられる。遊離のアルデヒド基やケトン基を持たない還元性を示さない糖類が好ましい。グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも本発明に好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−ガラクチット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)も好適に用いられる。
(ホ)下記一般式(1)で示される、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である環状リン酸エステル化合物:
Figure 2005326713
上記一般式(1)において、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル等)であることが好ましく、R11、R12およびR13の少なくとも1つ以上が、炭素原子数1〜3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等)であることが特に好ましい。X11は、単結合、−O−、−CO−、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。R14は、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチル)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例え、ベンジル、クレジル、t−ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル等)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。−X11−R14の組み合わせとしては、−X11−R14の総炭素原子数が0〜40であることが好ましく、1〜30であることがさらに好ましく、1〜25であることが最も好ましい。
これら一般式(1)で表される化合物の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
(ヘ)下記の一般式(2)で示される、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7であるスルホンアミド化合物:
Figure 2005326713
上記一般式(2)において、R21はアルキル基またはアリール基を表し、R22およびR23は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R21、R22およびR23の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。 リール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。R22とR23が互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
(ト)下記の一般式(3)で示される、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物:
Figure 2005326713
[式中、X31はホウ素(B)、C−R34(R34は水素原子または置換基を表す。)、窒素(N)、リン(P)またはP=Oを表す。R31、R32およびR33は、それぞれ独立して、アリール基(例えば、フェニル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基)、または複素環基(例えば、4−ピリジル基)を表し、これらのアリール基、シクロアルキル基および複素環基は、それぞれ環上に置換基を有していてもよい。R31とR32が互いに結合して環を形成していてもよい。]
31、R32およびR33が、無置換若しくは置換されたフェニル基であるのが特に好ましい。
以下に一般式(3)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。なお、以下の化学式においてR311〜R315、R321〜R325およびR331〜R335は、それぞれ上述したR31、R32およびR33と同じである。
Figure 2005326713
さらに具体的な例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
上記の各化合物の他に、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸などのアビエチン酸誘導体等の多環構造のカルボン酸化合物、スルホン化合物(例えば、ジフェニルスルホン、トリルフェニルスルホン、ヘキシルメシチルスルホン等)、分子量が10000以下のビスフェノール誘導体(この範囲であれば単量体でもよいし、オリゴマー、ポリマーでもよい)が挙げられる。ビスフェノール誘導体は、他のポリマーとの共重合体でもよいし、末端に反応性置換基が修飾されていてもよい。
以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。なお、ビスフェノール誘導体の下記具体例中で、R341〜R344は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。e、f、gは繰り返し単位を表し、特に限定はしないが、1〜100の整数が好ましく、1〜20の整数がさらに好ましい。
Figure 2005326713
[波長分散調整剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、さらに波長分散調整剤を含有することが好ましい。200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|および|Rth400−Rth700|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整することが好ましい。ここで、Re400、Re700、Rth400、Rth700における数字は波長(単位:nm)を表し、各波長における前記数式(1)および(2)で定義されるレターデーション値を表す。添加量としては0.1〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整でき、好ましい。
用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(4)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(4):Q41−Q42−OH
(式中、Q41は含窒素芳香族ヘテロ環、Q42は芳香族環を表す。)
一般式(4)において、―OH基は芳香族環Q42に直結し、好ましくは含窒素芳香族ヘテロ環Q41の置換する位置に隣接する位置(オルト置換)に結合する。
41は含窒素芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
41で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Zが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
42で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。特に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
42で表される芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q42は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Zが好ましい。
置換基Zとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる)、置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。さらに可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(4)として好ましくは、下記一般式(4−1)で表される化合物である。
Figure 2005326713
式中、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47およびR48は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基としては前記の置換基Zが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
41およびR43として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、とりわけ好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
42およびR44として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
45およびR48として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
46およびR47として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(4)としてより好ましくは、前記一般式(4−1)においてR42、R44、R45およびR48がそれぞれ水素原子を表す化合物である。
一般式(4)で表される化合物は特開平5−98242号公報、同7−101943号公報等に記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
以上、例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まないようして本発明のセルロースアシレートフィルムを作製すると、該ベンゾトリアゾール系化合物の保留性の点で有利であり好ましい。
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては、一般式(5)で示されるものが好ましく用いられる。
Figure 2005326713
式中、Q51およびQ52はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X51はNR51、酸素原子または硫黄原子を表し、R51は水素原子または置換基を表す。
一般式(5)において、−X51H基は芳香族環Q52に直結し、好ましくは芳香族環Q52に結合するカルボニル基の置換位置のオルト位置に結合する。
51およびQ52で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。好ましい芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜30の単環または2環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。特に好ましくはベンゼン環である。
51およびQ52で表される好ましい芳香族ヘテロ環としては、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のいずれかを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。
芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
51およびQ52であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
51およびQ52は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Zが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
51は、NR51、酸素原子または硫黄原子を表し、X51として好ましくは、NR51またはOであり、特に好ましくは酸素原子である。R51は水素原子または置換基を表し、好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。置換基としては前記一般式(4)中の置換基Zと同様の内容のものが挙げられる。
一般式(5)として好ましくは、下記一般式(5−1)で表される化合物である。
Figure 2005326713
式中、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517、R518、およびR519は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基としては上記の置換基Zが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
511、R513、R514、R515、R516、R518およびR519として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
512として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
517として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
一般式(5)としてより好ましくは前記一般式(5−1)において、R512、R513及びR514のいずれもが水素原子を表す化合物が挙げられる。
一般式(5)で表される化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
また、本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるシアノ基を含む化合物としては、一般式(6)で示されるものが好ましく用いられる。
Figure 2005326713
式中、Q61およびQ62は、それぞれ独立に芳香族環を表す。Y61およびY62は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環を表す。
61およびQ62であらわされる芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環または2環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。特に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
61およびQ62であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。またQ61およびQ62は更に置換基を有してもよく、置換基としては前記一般式(4)における置換基Zと同様のものが挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
61およびY62は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環を表す。Y61およびY62で表される置換基は、前述の置換基Zを適用することができる。また、Y61およびY62はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、Y61およびY62はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
61およびY62として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基で結合する基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基[−C(=O)OR60(R60は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)]である。
一般式(6)として好ましくは下記一般式(6−1)で表される化合物である。
Figure 2005326713
式中、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69およびR70は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前記の置換基Zが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。Y61およびY62は、一般式(6)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
61、R62、R64、R65、R66、R67、R69およびR70として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
63およびR68として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(6)としてより好ましくは、下記一般式(6−2)で表される化合物である。
Figure 2005326713
式中、R63およびR68は、一般式(6−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。Y62は水素原子または置換基を表し、その置換基としては前記の置換基Zが適用でき、また、可能な場合には、更に他の置換基で置換されてもよい。
62として好ましくは、前記一般式(6)におけると同様、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基で結合する基、スルホニル基で結合する基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基で結合する基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基[−C(=O)OR60(R60は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)]である。
一般式(6)として更に好ましくは、一般式(6−3)で表される化合物である。
Figure 2005326713
式中、R63およびR68は一般式(6−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R60は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
60として好ましくは、R63およびR68が両方とも水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
60として好ましくは、R63およびR68の少なくともいずれかが水素以外の場合には、一般式(6−3)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基であることが好ましい。
本発明一般式(6)で表される化合物は、“J. American Chemical Soc.”63巻、3452頁(1941年)記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(6)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は、下記具体例に何ら限定されるものではない。尚、具体例中、Phはフェニル基を表す。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
Figure 2005326713
[他の添加剤]
更に、上記セルロースアシレート組成物には、各調製工程において用途に応じた他の種々の添加剤[例えば、微粒子、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)、光学異方性コントロール剤、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤等]を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。
これらの添加剤の添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。 更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。上記の紫外線吸収剤を含めてこれらの詳細は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)16〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
(溶媒)
次に、本発明においてセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。
用いられる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメータで17〜22の範囲ものが好ましい。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれかの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
[ドープの調整]
本発明におけるセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法、冷却溶解法または高温溶解方法により実施されることができ、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても、その範囲であればこれらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明に用いられるセルロースアシレートのドープ溶液に関しては、通常、溶液濃縮やろ過が実施され、同様に前記の公技番号 2001−1745号25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で行われる。
本発明で用いられるセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が特定の範囲であることが好ましい。試料溶液1mLについて、レオメーター“CLS 500”に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用い、測定条件は、Oscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n(Pa・sec)および5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求める。試料溶液は、予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paであることが好ましい。より好ましくは、40℃での粘度が1〜200Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paである。
[セルロースアシレートフィルムの製造方法]
次に、上記セルロースアシレート溶液を用いた保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムの製造方法について述べる。上記セルロースアシレートフィルムを製造する方法および設備は、セルローストリアセテートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。
流延工程でもちいる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.01μmで、十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.02μmである。更に好ましくは、(Ra)/(Rz)比が0.15以上である。このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、製膜後のフィルムの表面形状を後述する好ましい範囲内に制御できる。
以下、バンド法を例として製膜の工程を説明する。
溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。これらの各製造工程については、前記の公技番号2001−1745号p.25−30に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時およびまたは逐次共流延してもよい。
[セルロースアシレートフィルムの特性]
本発明に供される偏光膜の保護フィルムであり、反射防止膜の支持体となる保護フィルムとしては、以下のような特性を有する。
(フィルム表面の性状)
保護フィルムとして用いるセルロースアシレートフィルムは、特定の表面形状を有するのが好ましい。以下、セルロースアシレートフィルムの表面形状について説明する。
前記セルロースアシレートフィルムの反射防止膜を設ける側の表面は、JIS B−0601−1994に基づくフィルムの表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.3μm、および最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましく、算術平均粗さ(Ra)が0.0001〜0.08μm、十点平均粗さ(Rz)が0.0001〜0.1μm、および最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることがより好ましく、算術平均粗さ(Ra)が0.0002〜0.015μm、十点平均粗さ(Rz)が0.002〜0.05μm、かつ最大高さ(Ry)が0.05μm以下であることがさらに好ましく、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.010μm、十点平均粗さ(Rz)が0.002〜0.025μm、かつ最大高さ(Ry)が0.04μm以下であることが特に好ましい。これらの範囲内において、塗布ムラの無い均一な塗布面状で、かつ保護フィルムと塗布膜の密着性が良好な反射防止膜が設けられ、かつ偏光膜の保護フィルムとして偏光膜と貼り合せた場合に密着性が良好となる。
表面の凹と凸の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により評価することができる。
また、上記セルロースアシレートフィルムにおける視覚的な大きさ100μm以上の光学的欠陥の数は、1m当たり1個以下であるのが、均一で鮮明なフィルムを得率よく生産できる等の点から好ましい。この光学的な欠陥は、偏光顕微鏡を用い、クロスニコル下でフィルムの遅相軸を偏光膜の吸収軸と平行にして観察することができる。輝点として見える欠点を円形に面積近似し、その直径が100μm以上のものを数える。100μm以上の輝点は、肉眼で容易に観測できる。
(フィルムのヘイズ)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%が好ましい。より好ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%である。この範囲において、光学フィルムとして重要なフィルムの透明性が充分に確保できる。ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター[“HGM−2DP”スガ試験機(株)製]でJIS K−6714に従って測定できる。
(フィルムのRe、Rthの湿度依存性)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthがともに湿度による変化が小さいことを特徴とする。すなわち、下記数式(1)および(2)で定義されるReおよびRthが、それぞれ下記数式(3)および(4)を充足することを特長とする。
数式(1):Re=(nx−ny)×d
数式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
数式(3):Reλ80/Reλ10≧0.65(好ましくは0.70〜1)
数式(4):Rthλ80/Rthλ10≧0.65(好ましくは0.70〜1)
式中、Reはフィルムの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthはフィルムの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。さらにReλ10は、波長λにおける25℃、10%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Reλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλ10は波長λにおける25℃、10%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)、Rthλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
上記数式(3)および(4)の比率がそれぞれ0.65以上であると、本発明の偏光板を画像表示装置に用いた場合に、環境の変化により画像表示性能が低下することがなく好ましい。
上記各レターデーション値は、それぞれ以下のようにして測定できる。
・正面レターデーション(Re):
フィルム試料70mm×100mmを、上記の各条件で2時間調湿し、自動複屈折計“KOBRA21DH”[王子計測(株)製]を用いて、632.8nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より算出する。
数式(1):Re=(nx−ny)×d
なお、波長は632.8nm以外の波長を用いる場合がある。
・膜厚方向のレターデーション(Rth):
フィルム試料30mm×40mmを、上記の各条件で2時間調湿し、エリプソメーター“M150”[日本分光(株)製]で、632.8nmにおける垂直方向から測定した値とフィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出する。
数式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(フィルムのレターデーションの波長依存性)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthそれぞれの、波長400nmの測定値と波長700nmの測定値との差が小さいことが好ましい。具体的には下記数式(8)および(9)を満たすことが好ましい。
数式(8):ΔRe=|Re400−Re700|≦10
数式(9):ΔRth=|Rth400−Rth700|≦35
すなわち、上記数式(8)に示されるように、レターデーションReの波長400nmと波長700nmでの各測定値の差の絶対値が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。同時に、レターデーションRthの波長400nmと波長700nmでの各測定値の差の絶対値が35nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましくい。このように、波長によるRthおよびReの変化が抑えられることで、波長分散性がゼロに近づく。これにより光学フィルムとして波長の変化による色味の変化が著しく抑制できる。
(フィルムの力学特性)
(フィルムの機械的特性)
本発明に用いる保護フィルムの幅方向のカール値は、−7/m〜+7/mであることが好ましい。長尺で広幅の保護フィルムに対し行う際に、保護フィルムの幅方向のカール値が前述の範囲内にあると、フィルムのハンドリングの支障や、フィルムの切断が起きることがなく、また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触することからくる発塵や、フィルム上への異物付着が少なくなり、本発明の偏光板の点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがなく好ましい。また、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができて好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
本発明に用いる保護フィルムの残留溶媒量は、1.5質量%以下とすることでカールを抑制できるので好ましい。さらに0.01〜1.0質量%以下であることがより好ましい。これは、前述の溶液流延製膜方法による成膜時の残留溶媒量を少なくすることで自由堆積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
セルロースアシレートフィルムの引き裂き強度は、そのJIS K−7128−2:1998の引裂き試験方法(エルメンドルフ引裂き法)に基づく引裂き強度が、2g以上であるのが、前記の膜厚においても膜の強度が充分に保持できる点で好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更に好ましくは6〜25gである。また60μm換算では、8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
また、引掻き強度は2g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。引掻き強度は、円錐頂角が90゜で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて保護フィルム表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
(フィルムの吸湿膨張係数)
上記セルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数を30×10−5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10−5/%RH以下とすることがより好ましく、10×10−5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10−5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、偏光板保護フィルムの耐久性が良好となり、あるいは光学補償フィルムを積層した偏光板の場合には光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したセルロースアシレートフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げる。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(H0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、24時間放置し、長さ(H1)を測定する。吸湿膨張係数は下記数式(10)により算出する。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用する。
数式(10):吸湿膨張係数(/%RH)={(H1−H0)/H0}/(R1−R0)
作製したセルロースアシレートフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、セルロースアシレートフィルム中の残留溶媒量を少なくして自由体積を小さくすることが挙げられる。具体的には、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶媒量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。
(フィルムの平衡含水率)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護フィルムとして用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、80%RHにおける平衡含水率が、0〜4質量%であることが好ましい。0.1〜3.5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが特に好ましい。平衡含水率がこの範囲内であれば、セルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる際に、フィルムの接着性のよさを維持すると共に、フィルムのレターデーションの湿度依存性が大きくなりすぎることがないので好ましい。
含水率の測定法は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器“CA−03”および試料乾燥装置“VA−05”[共に三菱化学(株)製]を用いてカールフィッシャー法により測定する。含水率は、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
(フィルムの透湿度)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z−0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、得られた値を膜厚80μmに換算したものである。該透湿度は400〜2000g/m・24h、さらには500〜1800g/m・24h、特には600〜1600g/m・24hの範囲であることが好ましい。透湿度が該上限値以下であれば、フィルムのレターデーション値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることが少ないので好ましい。また本発明の反射防止性偏光板のセルロースアシレートフィルムに、光学異方性層を有する光学補償フィルムを積層した場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超えることが少ないので好ましい。さらにこのような光学補償フィルム付き偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合には、色味の変化や視野角の低下などの不具合を引き起こすことがほとんどないので好ましい。一方、該透湿度が該下限値以上であれば、偏光膜に貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられて接着不良を引き起こすなどの不具合が生じにくいので好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、
(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)
として求める。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明のセルロースアシレートフィルム試料70mmφを25℃、90%RHおよび60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置[“KK−709007”東洋精機(株)製]にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m)を算出し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求める。
[表面処理]
セルロースアシレートフィルムは、表面処理により、セルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着の向上を図ることが好ましい。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。
ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは、上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンのようなフロン類、およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
(鹸化処理)
これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
(1)浸漬法
アルカリ液の中にフィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面の、アルカリと反応性を有する全ての部分を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないためコストの観点で好ましい。アルカリ鹸化処理液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1〜3.0モル/Lの範囲にあることが好ましい。更に、アルカリ処理液として、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒(例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール等)、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール類、グリセリン等)を含有することで、鹸化液の保護フィルムに対する濡れ性、鹸化液の経時安定性等が良好となる。好ましいアルカリ液の液温は25〜70℃、特に好ましくは30〜60℃である。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。
偏光膜に用いられる保護フィルムは、通常、水に対する接触角が20゜〜50゜、より好ましくは30゜〜50゜の範囲の親水化された表面を有しており、その親水化表面を偏光膜と接着させて使用するのがよい。親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
(2)アルカリ液塗布法
適切な条件でアルカリ液を、フィルムの片面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥する、アルカリ液塗布法が好ましく用いられる。アルカリ液および処理は、特開2002−82226号公報、国際公開02/46809号パンフレット等に記載の内容が挙げられる。フィルムの他の面に付設された機能層を設けたフィルムの処理方法として極めて有効である。
表面処理後の保護フィルムの水との接触角は、20〜55゜の範囲であることが好ましい。より好ましくは25〜45゜である。
また、保護フィルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、55〜75mN/mであることがさらに好ましい。表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社、1989.12.10発行)に記載されているように、接触角法、湿潤熱法および吸着法などにより求めることができる。これらのうち接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液を保護フィルムに滴下し、液滴の表面と保護フィルム表面との交点において、液滴に引いた接線と保護フィルム表面とのなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算により保護フィルムの表面エネルギーを算出する。
<反射防止膜>
次に、偏光膜の保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルム上に設けられる反射防止膜について説明する。
〔反射防止膜の層構成〕
本発明に係る反射防止膜は、光透過性を有しかつ互いに屈折率の異なる層(光透過層)が少なくとも2層以上積層された多層型反射防止膜により形成される。2層積層からなる反射防止膜は、保護フィルム上に、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成を有する。保護フィルム、高屈折率層および低屈折率層は以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>保護フィルムの屈折率>低屈折率層の屈折率
また、保護フィルムと高屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、高屈折率ハードコート層または防眩性高屈折率層と、低屈折率層からなってもよい。
少なくとも3層積層からなる反射防止膜は、保護フィルム上に、2つの高屈折率層のうち屈折率の低い方の層(中屈折率層)、2つの高屈折率層のうち屈折率の高い方の層(高屈折率層)、低屈折率層(最外層)の順序の層構成を有する。保護フィルム、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護フィルムの屈折率>低屈折率層の屈折率
また、保護フィルムと中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。さらにまた高屈折率層に防眩性を付与して防眩性高屈折率層とすることもでき、このような防眩性高屈折率層を有する反射防止膜を防眩性反射防止膜とも称し後述する。
このような3層構成の反射防止膜は、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層のそれぞれの層の光学膜厚、すなわち屈折率と膜厚の積が設計波長λに対してnλ/4前後、またはその倍数であることが好ましい旨特開昭59−50401号公報に記載されている。
さらには、多層構成における各層は、設計波長λ(400〜680nm)に対して、中屈折率層が下数式(11)を、高屈折率層が下数式(12)を、低屈折率層が下数式(13)をそれぞれ充足することが、より優れた反射防止性能を有する反射防止膜を作製できる点で好ましい。
数式(11):(mλ/4)×0.60<n<(mλ/4)×0.80
数式(12):(mλ/4)×1.00<n<(mλ/4)×1.50
数式(13):(mλ/4)×0.85<n<(mλ/4)×1.05
[式中、mは1であり、nは2つの高屈折率層のうち屈折率の低い方の層(中屈折率層)の屈折率であり、そして、dは中屈折率層の層厚(nm)であり;mは2であり、nは2つの高屈折率層のうち屈折率の高い方の層(高屈折率層)の屈折率であり、そして、dは高屈折率層の層厚(nm)であり;mは1であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の層厚(nm)である]
更に、例えばトリアセチルセルロース(屈折率:1.48)からなるような、屈折率が1.45〜1.52の透明支持体に対しては、nは1.60〜1.65、nは1.85〜1.95、nは1.35〜1.45の屈折率であることが好ましく、このような屈折率を有する中屈折率層や高屈折率層の素材が選択できない場合には、設定屈折率よりも高い屈折率を有する層と低い屈折率を有する層を複数層組み合わせた等価膜の原理を用いて、設定屈折率の中屈折率層または高屈折率層と光学的に実質等価な層を形成できることは公知であり、本発明の反射率特性を実現するためにも用いることができる。
なお本発明の「実質的に3層」とは、このような等価膜を用いた4層、5層の反射防止膜も含むものである。これにより、反射防止膜の反射光の色味がニュートラル近似となり、表示装置の表示画像の視認性が優れたものとなる。
本発明の多層構成の反射防止膜は、その厚さが「実質的に均一」になるように塗設して形成されることが好ましい。その反射防止膜の厚さが「実質的に均一」とは、反射防止膜の総厚のバラツキが±6%以内であることを意味する。好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。
例えば、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層が、空気界面側よりこの順序に、各層ともλ/4nの厚みで積層された3層型設計の場合、各層の膜厚の均一性は、それらのバラツキがそれぞれ±3%以内であることが好ましく、このことにより著しい反射防止性能の低下を防ぐことができる。特に±2%以内とすることが最も好ましい。
反射防止膜の厚みは、望まれる場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)およびX−線光電子分光計(ESCA)の様な当分野周知の各種表面分析技術により分析できる。
上記のような層構成とすることで達成される本発明における反射防止膜は、低反射と反射光の色味の低減、さらに入射角によるその色味変化の低減を両立することができるため、このような反射防止膜が塗設された保護フィルムと一体化した偏光板は、例えば液晶表示装置の最表面に適用した場合、これまでにない視認性の高さを有する表示装置が得られる。450nmから650nmまでの波長領域における、入射角5゜の入射光の鏡面反射率の平均値が0.5%以下であれば、表示装置表面での外光の反射による視認性の低下を防止することができ、さらに0.4%以下であれば、外光の反射を十分に防止することができるので、このような鏡面反射率の範囲であることが好ましい。
CIE標準光源D65の、波長380nmから780nmの領域における入射角5゜の入射光に対して、正反射光のCIE1976L色空間のa値、b値が、0≦a≦7、−10≦b≦0の範囲であり、かつ入射角5〜45゜の範囲のあらゆる角度からの入射光に対する正反射光が、該色空間において、a≧0、b≦0を満たすことで、低入射角における反射光の色味を低減し、かつ、反射光の入射角にともなう色味変化を低減することができる。
さらに入射角5〜45゜の範囲のあらゆる角度からの入射光に対する正反射光が、該色空間において、C=[(a+(b1/2≦12の範囲内であることによって、従来の反射防止膜付き偏光板で問題となっていた赤紫色から青紫色の反射光の着色を低減し、かつ反射光の入射角にともなう色味の変化をさらに低減することができる。
さらにC=[(a+(b1/2≦10の範囲内とすることで、反射光の色味、およびその入射角による変化を十分に低減することができる。この反射防止膜付き偏光板を液晶表示装置に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味が、広い入射角にわたってニュートラルで気にならない。
詳しくはa≧0であればシアン味を帯びることがなく、b≦0であれば黄味を帯びることがなく好ましい。またa≧0、b≦0であって、かつC=[(a+(b1/2<12であれば、マゼンタ味が強くなりすぎることがなく好ましい。
鏡面反射率および色味の測定は、分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角α(α=5〜45°、5°間隔)における出射角−αの鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。さらに、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の各入射角の入射光に対する正反射光の色味を表すCIE1976L色空間のL値、a値、b値を算出し、反射光の色味を評価することができる。
さらに、反射防止膜の膜厚を実質的に均一とすることにより、厚みムラに起因する反射光の色味ムラが大幅に低減されるので好ましい。定量的には、TD方向(保護フィルムの長手方向と直交する方向)またはMD方向(保護フィルムの長手方向)の10cm離れた任意の2つの場所で、波長380nmから780nmの領域におけるCIE標準光源D65の入射角5°の入射光に対する正反射光の色味ムラで表すことができ、CIE1976L色空間のΔEab値で2未満であることが好ましい。ΔEabの値が1.5未満であれば完全に人間の目で色ムラを検知できなくなるのでより好ましい。
なおΔEab値は、下記数式(14)により求められる値である。
数式(14):ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔL,Δa,Δbは、それぞれ、TD方向またはMD方向の10cm離れた任意の2つの場所におけるCIE1976L色空間のL値,a値,b値の差を表す。
本発明において、「5〜45°のすべての入射角におけるa値、b値、またはC値が、上記範囲内にある」とは、入射角5〜45°における5°間隔の入射光に対して、そのそれぞれの正反射光スペクトルから算出されたa、b値もしくはCが上記範囲内にあることを意味する。
以上の層構成を有する本発明の反射防止膜においては、以下の低屈折率層、高屈折率層および中屈折率層を用いることが好ましい。
〔高屈折率層〕
本発明における高屈折率層は、少なくとも、高屈折率の無機化合物微粒子(以下、高屈折率粒子ということがある)およびマトリックスバインダーを含有する硬化性組成物を塗設してなる屈折率1.55〜2.50の硬化性膜からなことが好ましい。屈折率は1.65〜2.40であることがより好ましく、1.70〜2.20であることが特に好ましい。
また高屈折率層の表面は、光学的に影響を与えない大きさの微細な表面凹凸形態をなしており、JIS B−0601−1994に基づく該高屈折率層の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.03μm、さらには0.001〜0.015μm、特には0.001〜0.010μmの範囲;十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.06μm、さらには0.002〜0.05μm、特には0.002〜0.025μmの範囲;かつ最大高さ(Ry)が0.09μm以下、さらには0.05μm以下、特には0.04μm以下;であることが好ましい。
さらに、上記の光学的に影響を与えない大きさの微細な表面凹凸形態において、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.15以上で、かつJIS B−0601−1994に基づく該高屈折率層の表面凹凸の平均間隔(Sm)が0.01〜1μmであることが好ましい。ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。さらに好ましくは、(Ra/Rz)比が0.17以上、平均間隔(Sm)が0.01〜0.8μmであるのがよい。これらの範囲内であれば、該高屈折率層の上に塗布される低屈折率層の塗布面状は、ムラやスジ等のみられない良好なものとなり、かつ両層間の密着性を向上させることが可能となる。層表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
高屈折率層を、高屈折率粒子がマトリックスバインダー中に分散されてなる屈折率1.55〜2.50の高屈折率硬化膜とするには、通常、マトリックスバインダーの屈折率は1.4〜1.5であることから、該高屈折率粒子の使用割合は、用いられる該高屈折率粒子の屈折率によって決まるが、硬化膜の全質量中の40〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは45〜75質量%である。
このように、高屈折率粒子の比率を多くして設計する高屈折率層の、それ自身の層強度を高め、かつ該高屈折率層上に設けられる低屈折率層との密着性を強固にするには、後述するように、高屈折率粒子として超微粒子径で、その粒度が揃ったものを用い、かつこれを高屈折率層中に均一に分散させること、およびその層の表面が上記のような凹凸状態を形成することが好ましい。高屈折率層表面全体の表面凹凸の形状と分布を特定の範囲とすることで、長尺フィルムに連続して低屈折率層を設けた時にでも、該低屈折率層の全面がムラなく均一にアンカリング効果を十分に発揮して密着が保たれるので好ましい。また、長期間を保存した後でも両層の密着性が変化無く保持されるので好ましい。
本発明における高屈折率層の硬化膜と、該高屈折率層上に塗設した低屈折率層との密着性は、JIS K−6902に基づくテーバー磨耗試験における磨耗量が、50mg以下、さらには40mg以下となることが好ましい。テーバー磨耗試験は、具体的には荷重1kgで500回転させた後の磨耗量で表される。この範囲内であれば、反射防止膜としての耐擦傷性が十分に保持されるので好ましい。
また、前記の表面形状が形成された高屈折率層を含む反射防止膜においては、視覚的に異物として目立ちやすくなる直径50μm以上の大きさの輝度欠陥の数が、1平方メートル当たり20個以下となることが好ましい。
[高屈折率層形成用組成物]
(高屈折率の無機微粒子)
本発明において高屈折率層に含まれる高屈折率粒子は、屈折率が1.80〜2.80、さらには1.90〜2.80;一次粒子の平均粒径が3〜150nm、さらには3〜100nm、特には5〜80nmであることが好ましい。高屈折率粒子の屈折率が1.80以上であれば、高屈折率層の屈折率を効果的に高めることができ、屈折率が2.80以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。また高屈折率粒子の一次粒子の平均粒径が150nm以下であれば、形成される高屈折率層のヘイズ値が高くなって層の透明性を損なうなどの不都合が生じないので好ましく、平均粒径が3nm以上であれば高い屈折率が保持されるので好ましい。
好ましい高屈折率粒子の具体例は、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,La、W、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物または複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分をさす。本発明でより好ましい高屈折率粒子は、Ti、Zr、Ta、In、Snから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物または複合酸化物を主成分とする粒子である。
本発明で使用される高屈折率粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない(以下このような元素を含有元素ということがある)。含有元素としては、例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては、粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの含有元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを約5〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
本発明で特に好ましい高屈折率粒子は、含有元素としてCo、Zr、Alから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以降、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。特に好ましい含有元素はCoである。含有元素Co、Al、Zrの総含有量は、Tiに対し0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。含有元素Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部または表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。これら金属元素である含有元素は酸化物として存在してもよい。
また他の好ましい高屈折率粒子としては、チタン元素と、その酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称することがある)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、ZrイオンおよびAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、その酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、Ta、Zr、In、Nd、Sb,SnおよびBiが好ましい。特には、Ta、Zr、Sn、Biが好ましい。複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましい。より好ましくは0.05〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
ドープされた金属イオンは、金属イオンとして、または金属原子の何れの形体で存在してもよく、複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することができる。表面と内部との両方に存在することが好ましい。
本発明で用いられる高屈折率粒子は、結晶構造を有することが好ましい。結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶またはアナターゼのいずれかが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、前記特定の酸化物または特定の複酸化物である高屈折率粒子は、屈折率が1.90〜2.80を有することになり好ましい。高屈折率粒子の屈折率は、より好ましくは2.10〜2.80であり、更に好ましくは2.20〜2.80である。またこのことにより、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明における高屈折率層自身および高屈折率層と接する上/下の両層のそれぞれの耐候性を著しく改良することができ、それにより表示装置の長寿命化が可能となるので好ましい。
上記した特定の金属元素または金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、同11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法;イオン注入法[例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」(株)シ−エムシー、1989年刊行、青木 康、「表面科学」18巻(5)、262頁、1998、安保正一等、「表面科学」20巻(2)、60頁、1999等記載]等に従って製造できる。
本発明で用いられる高屈折率粒子は表面処理されていてもよい。表面処理とは、無機化合物および/または有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施するもので、これにより高屈折率粒子表面の濡れ性が調整され有機溶媒中での微粒子化、高屈折率層形成用組成物中での分散性や分散安定性が向上する。粒子表面に物理化学的に吸着させる無機化合物としては、例えば、ケイ素を含有する無機化合物(SiOなど)、アルミニウムを含有する無機化合物[Al,Al(OH)など]、コバルトを含有する無機化合物(CoO,Co,Coなど)、ジルコニウムを含有する無機化合物[ZrO,Zr(OH)など]、鉄を含有する無機化合物(Feなど)などが挙げられる。
表面処理に用いる有機化合物の例には、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
具体的には、高屈折率粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物があげられる。高屈折率粒子表面と親和性を有する極性基としては、カルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等があげられ、分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)、ポリオール化合物[例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等]、ホスホノ基含有化合物[例えばEO(エチレンオキサイド)変性リン酸トリアクリレート等]、アルカノールアミン[エチレンジアミンEO付加体(5モル)等]が挙げられる。
カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報同2001−310423号公報中の段落番号「0011」〜「0015」記載の化合物等が挙げられる。さらに後述の一般式(8)で表される化合物も好ましい。
これらの表面処理に用いる化合物は、2種類以上を併用することもできる。
本発明に用いられる高屈折率粒子は、これをコアとして他の無機化合物からなるシェルを形成したコア/シェル構造の微粒子であることも好ましい。シェルとしては、Al、Si、Zrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
本発明で使用される高屈折率粒子の形状は、特に限定されないが、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状または不定形状が好ましい。前記無機微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
(分散剤)
本発明で使用される高屈折率粒子を、安定した所定の超微粒子として用いるため、分散剤を併用することが好ましい。分散剤としては、該高屈折率粒子表面と親和性を有する極性基を有する低分子化合物、または高分子化合物であることが好ましい。
上記極性基としては、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、−P(=O)(R)(OH)基、−O−P(=O)(R)(OH)基、アミド基(−CONHR、−SONHR)、環状酸無水物含有基、アミノ基、四級アンモニウム基等が挙げられる。
ここで、Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表す(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、クロロエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基等)。Rは、水素原子またはRと同一の内容を表す。
上記極性基において、解離性プロトンを有する基はその塩であってもよい。また、上記アミノ基、四級アンモニウム基は、一級アミノ基、二級アミノ基または三級アミノ基のいずれでもよく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、炭素原子数が1〜12の脂肪族基(上記RまたはRの基と同一の内容のもの等)であることが好ましい。また、三級アミノ基は、窒素原子を含有する環形成のアミノ基(例えば、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環等)であってもよく、更に四級アンモニウム基はこれら環状アミノ基の四級アモニウム基であってもよい。特に炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。
四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオン、PFイオン、SbFイオン、BFイオン、B(R)4イオン(Rは、炭化水素基を表し、例えばブチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ブチルフェニル基等)、スルホン酸イオン等が好ましい。
本発明に係る分散剤の極性基としては、pKaが7以下のアニオン性基またはこれらの解離基の塩が好ましい。特に、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、オキシホスホノ基、またはこれらの解離基の塩が好ましい。
分散剤は、さらに架橋性または重合性官能基を含有することが好ましい。架橋性または重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基[例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基カルボニル基、ビニルオキシ基等]、カチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基、スピロオルトエステル基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基、エポキシ基、または加水分解性シリル基である。
具体的には、例えば特開2001−310423号公報中の段落番号[0013]〜[0015]記載の化合物等が挙げられる。
本発明に用いられる分散剤は、高分子分散剤であることが好ましい。特に、アニオン性基、および架橋性または重合性官能基を含有する高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、GPC法で測定されたポリスチレン換算値として、1×10以上であることが好ましい。より好ましいMwは2×10〜1×10であり、更に好ましくは5×10〜1×10、特に好ましくは8×10〜8×10である。この範囲のものが、高屈折率粒子が分散されやすく、かつ凝集物や沈殿物を生じない安定な分散物が得らるので好ましい。具体例としては、例えば特開平11−153703号公報中の段落番号[0024]〜[0041]記載の内容等が挙げられる。
(分散媒体)
本発明において、高屈折率粒子の湿式分散に供する分散媒体は、水および有機溶媒から適宜選択して用いることができ、沸点が50℃以上の液体であることが好ましく、沸点が60℃〜180℃の範囲の有機溶媒であることがより好ましい。
分散媒体は、高屈折率粒子および分散剤を含む高屈折率層を形成するための全成分が5〜50質量%、さらには10〜30質量%となる割合で用いることが好ましい。この範囲において、分散が容易に進行し、得られる分散物は作業性良好な粘度の範囲となるので好ましい。
分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えばメチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。単独での2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられ、ケトン系溶媒の含有量が高屈折率層形成用組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
(無機微粒子の超微粒子化)
本発明に用いられる硬化性の高屈折率層形成用組成物は、平均粒径100nm以下の高屈折率無機化合物の超微粒子分散物とすることにより、該組成物の液の安定性が向上し、この硬化性組成物から形成される硬化膜である高屈折率層は、高屈折率粒子が硬化膜のマトリックス中で、超微粒子状態で均一に分散されて存在し、光学特性が均一で透明な高屈折率層が形成される。高屈折率層のマトリックス中で存在する超微粒子の大きさは、平均粒径3〜100nmの範囲が好ましく、5〜100nmがより好ましい。特に10〜80nmが最も好ましい。更には、500nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが好ましく、300nm以上の平均粒子径の大粒子が含まれないことが特に好ましい。これにより、硬化膜表面が上記した特定の凹凸形状を形成できるので好ましい。
上記の高屈折率の無機微粒子を上記の範囲の粗大粒子を含まない超微粒子の大きさに分散するには、前記の分散剤と共に、平均粒径0.8mm未満のメディアを用いた湿式分散方法で分散して達成することができる。
湿式分散機としては、サンドグラインダーミル(例えば、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター、コロイドミル等の従来公知のものが挙げられる。特に本発明に用いられる無機微粒子を超微粒子に分散するには、サンドグラインダーミル、ダイノミル、および高速インペラーミルが好ましい。
上記分散機と共に用いるメディアとしては、その平均粒径が0.8mm未満であることが好ましい。平均粒径がこの範囲のメディアを用いることで上記の高屈折率粒子の粒子径が100nm以下となり、かつ粒子径の揃った超微粒子を得ることができる。メディアの平均粒径は、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.05〜0.3mmである。また湿式分散に用いられるメディアとしては、ビーズが好ましい。具体的には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ、スチールビーズ等が挙げられ、分散中におけるビーズの破壊等を生じ難い等の耐久性と超微粒子化の上から0.05〜0.2mmのジルコニアビーズが特に好ましい。
分散工程での分散温度は20〜60℃が好ましく、より好ましくは25〜45℃である。この範囲の温度で超微粒子に分散すると分散粒子の再凝集、沈殿等が生じないため好ましい。これは、無機化合物粒子への分散剤の吸着が適切に行われ、常温下での分散剤の粒子からの脱着等による分散安定不良とならないためと考えられる。このような範囲において分散工程を実施することにより、透明性を損なわない屈折率均一性、膜の強度、隣接層との密着性等に優れた高屈折率膜を形成できる。
また、上記湿式分散の工程の前に、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
更には、分散物中の分散粒子がその平均粒径、および粒子径の単分散性が上記した範囲を満足する上で、分散物中の粗大凝集物を除去するために、ビーズとの分離処理において精密濾過されるように濾材を配置することも好ましい。精密濾過するための濾材は濾過粒子サイズ25μm以下が好ましい。精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、かつ得られる高屈折率層形成用組成物の塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
(高屈折率層のマトリックス)
高屈折率層は、高屈折率粒子とマトリックスを含有してなることが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、高屈折率層のマトリックスは:
(A)有機バインダー、または
(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物、およびこの有機金属化合物の部分縮合物、
の少なくともいずれかを含有する高屈折率層形成用組成物を塗布後に、硬化して形成される。
(A)有機バインダー
有機バインダーとしては、
(イ)従来公知の熱可塑性樹脂、
(ロ)従来公知の反応硬化型樹脂と硬化剤との組み合わせ、または
(ハ)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、
から形成されるバインダーが挙げられる。
上記(イ)、(ロ)または(ハ)の有機バインダーと、高屈折率複合酸化物微粒子と分散剤を含有する分散液から高屈折率層形成用組成物が調製されることが好ましい。この組成物は、保護フィルム上に塗布され、塗膜が形成された後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化されて高屈折率層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱および光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応または重合反応を生起させる方法が挙げられる。中でも、上記(ハ)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応または重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
更に、高屈折率層形成用組成物を塗布と同時または塗布後に、高屈折率粒子を含む該組成物に含有される分散剤を、架橋反応または重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記した分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋または重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋または重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率粒子を含有する硬化膜である高屈折率層中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
前記(イ)の熱可塑性樹脂及び前記(ロ)の反応硬化型樹脂としては、例えば、特開平8−122504号公報段落番号[0034]記載の化合物等が挙げられる。
これらの反応硬化型樹脂に必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である前記(ハ)の組み合わせを用いて、光照射により硬化性化合物を架橋または重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性またはカチオン重合性のいずれでもよい。
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体およびオリゴマー)またはそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
ラジカル重合性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が挙げられる。
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との反応物も好適である。さらに別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物としては、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステルまたはポリエステル)、例として、例えば、特開2001−139663号公報段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
その他の重合性エステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号等記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
さらに脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
さらにまた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号等))、更に、日本接着協会誌20巻(7)、300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマーおよびオリゴマーも使用することができる。これらラジカル重合性の多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
次に、高屈折率層のバインダーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」または「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に、活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは2〜5個である。該化合物の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が該下限値以上であれば、皮膜形成過程での揮発が問題となるなどの不都合が生じることがなく、また該上限値以下であれば、高屈折率層形成用組成物との相溶性が悪くなるなどの問題を生じないので好ましい。
前記エポキシ化合物としては脂肪族エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、または不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
また、芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価または多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ−またはポリ−グリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号[0084]〜[0086]記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号[0044]〜[0046]記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
環状チオエーテル化合物としては、上記のエポキシ環がチオエポキシ環となる化合物が挙げられる。環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等記載の化合物を挙げることができる。
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物[J. Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,32巻,2895頁(1994年)記載等]、アルコキシアレン化合物[“J. Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry”,33巻,2493頁(1995年)記載等]、ビニル化合物[“J. Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry”,34巻,1015頁(1996年)、特開2002−29162号等記載]、イソプロペニル化合物[“J. Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry”,34巻,2051頁(1996年)記載等]等を挙げることができる。
これらは2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、本発明に用いられる多官能性化合物は、前記のラジカル重合性基およびカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を、少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号[0031]〜[0052]記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号[0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらに限定されるものではない。
以上述べたラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
次に、前記(ハ)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
本発明で用いられる重合開始剤は、光および/または熱照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物であることが好ましい。本発明において用いられる光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
まず、ラジカルを発生する化合物について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物は、光および/または熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、有機過酸化化合物(特開2001−139663号公報等記載)、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報等記載)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(米国特許第3,479,185号等記載)、ジスルホン化合物(特開平5−239015号公報、特開昭61−166544号公報等)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機ホウ酸化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、米国特許第3,905,815号明細書、M.P.Hutt“J. Heterocyclic Chemistry”1巻(3),(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62頁[(株)技術情報協会刊、1991年]、特開平8−134404号明細書の段落番号[0015]〜[0016]、同11−217518号明細書の段落番号[0029]〜[0031]に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]、Kunz,Martin“Rad. Tech. ’98 Proceeding April 19〜22頁,1998年,Chicago”等に有機ホウ酸塩として記載されている化合物があげられる。
これらのラジカル発生化合物は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において、高屈折率層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
次に、光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、またはマイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物およびそれらの混合物等が挙げられる。また酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、オニウム化合物等が挙げられ、これらのうち有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物の具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
オニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号明細書の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
前記酸発生剤としては、オニウム塩が特に好適に用いられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号[0035]に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号[0010]〜[0011]に記載のジアリールヨードニウム塩またはトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号[0017]に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載のオニウム塩等が挙げられる。
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号[0059]〜[0062]に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの酸発生剤は、全カチオン重合性モノマーの全質量100質量部に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、高屈折率用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
本発明における高屈折率層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物またはカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%またはカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、またはカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
本発明で用いられる高屈折率層形成用組成物には、紫外線照射により重合反応を行う場合、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。これらの増感剤としては、例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。
近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料および近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料および染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。市販の染料並びに、文献[例えば、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)シーエムシー、「特殊機能色素」[池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行]等に記載されている公知の染料が利用できる。
(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物およびこの有機金属化合物の部分縮合物
本発明に用いられる高屈折率層のマトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いて、ゾルゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。
有機金属化合物としては、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。加水分解可能な官能基な基としては、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基が挙げられ、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。好ましい有機金属化合物は、下記一般式(7)で表される有機ケイ素化合物およびその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(7)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
一般式(7):(R71α−Si(Y714−α
一般式(7)中、R71は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基または炭素数6〜14アリール基を表す。Y71は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR72基、OCOR72基を表す。ここで、R72は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。αは0〜3の整数を表し、好ましくは0、1または2、特に好ましくは1である。但し、αが0の場合は、Y71はOR72基またはOCOR72基を表す。
一般式(7)においてR71の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。R71のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、(メタ)アクリロイル等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が好ましい。
これらの置換基のうちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
前記のようにR72は置換もしくは無置換のアルキルを表すが、アルキル基中の置換基の説明はR71と同じである。
一般式(7)の化合物の含有量は、高屈折率層の全固形分の10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
一般式(7)の化合物の具体例として、例えば特開2001−166104号公報段落番号[0054]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
高屈折率層において、有機バインダーは、シラノール基を有するものであることが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良されるので好ましい。シラノール基は、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋または重合性官能基を有する一般式(7)で表される有機ケイ素化合物を該塗布組成物に配合し、この塗布組成物を保護フィルム上に塗布して、前記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(7)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応または重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
前記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、酸類、塩基類、金属アルコキシド類、β−ジケトン類またはβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
高屈折率層において、マトリックスは特定の極性基を有することも好ましい。特定の極性基としては、アニオン性基、アミノ基、および四級アンモニウム基が挙げられる。アニオン性基、アミノ基および四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
特定の極性基を有する高屈折率層のマトリックスは、例えば、高屈折率層形成用の塗布組成物に、高屈折率無機微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせおよび、特定の極性基を有し、かつ架橋または重合性官能基を有する一般式(7)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、さらに所望により、特定の極性基および、架橋性または重合性の官能基を有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を保護フィルム上に塗布して上記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマーや多官能オリゴマーおよび/または一般式(7)で表される有機ケイ素化合物を架橋または重合反応させることにより得られる。
特定の極性基を有する単官能性モノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能することができ、好ましい。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、または、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における高屈折率粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する単官能性モノマーの分散剤に対する使用量は、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%である。高屈折率層の塗布と同時または塗布後に、架橋または重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前に単官能性モノマーを有効に機能させることができる。
また、本発明における高屈折率層のマトリックスとしては、前記した有機バインダーの(イ)に相当し、従来公知の架橋または重合性官能基を含有する有機ポリマーから硬化・形成されたものが挙げられる。高屈折率層形成後のポリマーが、さらに架橋または重合している構造を有することが好ましい。ポリマーの例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素からなる)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテルおよびポリウレアが好ましく、ポリオレフィンおよびポリエーテルがさらに好ましい。硬化前の有機ポリマーとしての質量平均分子量は1×10〜1×10が好ましく、より好ましくは3×10〜1×10である。
硬化前の有機ポリマーは、前記の内容と同様の、特定の極性基を有する繰り返し単位と、架橋または重合構造を有する繰り返し単位とを有する共重合体であることが好ましい。ポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位中の0.5〜99質量%であることが好ましく3〜95質量%であることがさらに好ましく、6〜90質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上の同じでも異なってもよいアニオン性基を有していてもよい。
シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98モル%であることが好ましく、4〜96モル%であることがさらに好ましく、6〜94モル%であることが最も好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、更には0.5〜30質量%が好ましい。
なお、シラノール基、アミノ基、および四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位または、架橋もしくは重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
ポリマー中の架橋または重合構造を有する繰り返し単位の割合は、1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがさらに好ましく、8〜60質量%であることが最も好ましい。
バインダーが架橋または重合してなるマトリックスは、高屈折率層形成用組成物を保護フィルム上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋または重合反応によって形成することが好ましい。
(高屈折率層の他の添加物)
本発明における高屈折率層は、更に用途・目的によって適宜他の化合物を添加することができる。例えば、高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は保護フィルムの屈折率より高いことが好ましく、高屈折率層に、芳香環、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)、S,N,P等の原子を含有すると有機化合物の屈折率が高くなることから、これらを含有する硬化性化合物などの架橋または重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子等を添加することもできる。
[高屈折率層の形成]
高屈折率層は、保護フィルム上に、直接または他の層を介して、上述の高屈折率層形成用組成物の塗布液を塗布して構築することが好ましい。本発明で用いられる高屈折率層形成用の塗布液は、高屈折率粒子の分散物、マトリックスバインダー用液、必要に応じて用いる添加剤を、塗布用分散媒にそれぞれ所定の濃度に混合・希釈して調製される。
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μm、さらには0.1〜25μmのフィルターが用いられることが好ましい。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は15kgf/cm以下、さらには10kgf/cm以下、特には2kgf/cm以下で濾過することが好ましい。ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
本発明において高屈折率層は、後述する保護フィルム上に、以上述べた高屈折率層形成用組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光および/または熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化が可能であり有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理を併用することも好ましい。
光照射の光源は、紫外線光域または近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。近赤外光光源を用いる場合、紫外線光源と組み合わせて用いる、あるいは高屈折率層塗設側と反対の保護フィルム面側より光照射してもよい。塗膜層内の深さ方向での膜硬化が表面近傍と遅滞なく進行し、均一な硬化状態の硬化膜が得られる。
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気または不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くしたり、または重合率を十分に高めたりするために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cmが好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内および層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
高屈折率層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また高屈折率層の耐擦傷性は、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の高屈折率層を塗設した試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。高屈折率層のヘイズは低いほど好ましい。ヘイズは5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
高屈折率層の膜厚は30〜500nmが好ましく、さらに50〜300nmの範囲内にあることがより好ましい。高屈折率層がハードコート層を兼ねる場合、0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜7μm、特に2〜5μmが好ましい。
〔中屈折率層〕
本発明における反射防止膜は、高屈折率層が屈折率の異なる2層からなる積層構成であることが好ましい。すなわち、保護フィルム上に、2つの高屈折率層のうち屈折率の低い方の層(中屈折率層)、2つの高屈折率層のうち屈折率の高い方の層(高屈折率層)、低屈折率層(最外層)の順序の3層構造からなることが好ましい。中屈折率層は、保護フィルムの屈折率と高屈折率層の屈折率の中間の屈折率を有する。このように各屈折率層の屈折率は相対的なものである。中屈折率層は、高屈折率層と同じ方法で中屈折率層形成用組成物を塗設して形成する。
本発明における中屈折率層を構成する材料は、従来公知の材料の何れでもよいが、前記高屈折率層と同様のものを用いることが好ましい。屈折率は無機微粒子の種類、使用量で容易に調整され、前記高屈折率層に記載の内容と同様にして、膜厚30〜500nmの薄層を形成する。更に好ましくは、50〜300nmの膜厚である。
〔低屈折率層〕
本発明における低屈折率層の屈折率は、反射防止性を付与する目的で、好ましくは1.31〜1.48の範囲であるのがよい。
本発明における低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築されることが好ましい。そして、該低屈折率層は、屈折率1.17〜1.37である中空構造の無機微粒子を少なくとも1種含有してなることが好ましい。該無機微粒子は、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30〜100%であることが好ましい。無機微粒子の平均粒径がこの範囲内であれば、低屈折率層皮膜の強度が十分に発現されるので好ましい。またこのような屈折率の無機微粒子を低屈折率層に用いることにより、層自体の屈折率の上昇を抑えながら、しかも長時間の熱硬化や偏光膜を設けるために行う鹸化処理などの制約を受けることなく、低い屈折率と高い皮膜強度の両立を達成できる。
[低屈折率層の硬化膜形成用素材]
更に上記低屈折率層には、低屈折率を実現し、かつ表面への滑り性の付与が効果的に行え、耐擦傷性を大きく向上させる手段として、従来公知のシリコーンおよび/または含フッ素化合物の導入された硬化膜形成用素材を適宜適用することが好ましい。含フッ素化合物を含有することがより好ましい。特に、本発明における低屈折率層は、熱硬化性および/または光もしくは放射線(例えば電離放射線)硬化型の架橋性の含フッ素化合物を主体として形成され、硬化した含フッ素ポリマーにより構成されることが好ましい。
そのため、本発明において低屈折率層は、上記無機微粒子、酸触媒の存在下で製造されてなる、下記一般式(8)で表されるオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、および硬化性反応基を有する含フッ素ポリマーを、それぞれ少なくとも1種含有する硬化性の低屈折率層形成用組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であることが好ましい。
一般式(8):(R81β−Si(Y814−β
(式中、R81は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Y81は水酸基または加水分解可能な基を表す。βは1〜3の整数を表す。)
また、低屈折率層形成用組成物は、更に、ラジカル重合性基および/またはカチオン重合性基から選ばれる重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能重合性化合物および重合開始剤を含有することが好ましい。
以下、硬化性の低屈折率層形成用組成物について説明する。
[低屈折率層形成用組成物]
(中空構造の無機微粒子)
上記低屈折率層はその屈折率上昇をより一層少なくするために、中空の無機微粒子(以下、中空粒子ということがある)を用いることが好ましい。中空粒子は屈折率が、通常1.17〜1.40、好ましくは1.17〜1.37、さらに好ましくは1.17〜1.35であるのがよい。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空粒子を形成している外殻のみの屈折率を表すものではない。中空粒子の屈折率は、粒子の強度および該中空粒子を含む低屈折率層の耐擦傷性の観点から、1.17以上とすることが好ましい。
なお、これら中空粒子の屈折率はアッベ屈折率計[アタゴ(株)製]にて測定することができる。
なお、中空粒子内の空腔の半径をr、粒子外殻の半径をrとするとき、中空粒子の空隙率w(%)は下記数式(15)に従って計算される。
数式(15):w={(4πr /3)/(4πr /3)}×100
中空粒子の空隙率は、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
中空粒子の平均粒径は、該低屈折率層の厚みの30%以上100%以下、さらには35%以上80%以下、特には40%以上60%以下であることが好ましい。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空粒子の粒径は30nm以上100nm以下、さらには35nm以上80nm以下、特には40nm以上60nm以下の範囲となることが好ましい。該平均粒径が前記の範囲であると、膜の強度が十分に発現されて好ましい。
低屈折率層に用いられる無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の粒子が好ましい。特に好ましくは二酸化珪素(シリカ)粒子である。
無機微粒子の形状は米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、短繊維状、リング状、または不定形状であることが好ましい。
(小サイズ粒径の無機微粒子)
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満である無機微粒子(以下、「小サイズ粒子」と称することがある)の少なくとも1種を、前記のこれより大きい粒径の無機微粒子(以下、「大サイズ粒子」と称すこともある)と併用することが好ましい。この小サイズ粒子は中空構造をもたないものでよい。
小サイズ粒子は、大サイズ粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒子の保持剤として寄与することができるので好ましい。また、原料コストの点でも好ましい。
小サイズ粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。
小サイズ粒子の使用量は、大サイズ粒子(好ましくは中空粒子)100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、より好ましくは10〜80質量部である。
小サイズ粒子を構成する具体的な化合物としては、前記の中空粒子で例示したと同様のものが挙げられる。特に好ましくは、ケイ素の酸化物が挙げられる。
(無機微粒子の分散物)
上記した中空粒子(大サイズ粒子)、および小サイズ粒子のいずれの無機微粒子も、分散液中または硬化性の低屈折率層形成用組成物溶液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング剤による処理が特に好ましく、シランカップリング剤としては前記一般式(8)で表されるものが挙げられる。
上記のカップリング剤は、低屈折率層の無機微粒子の表面処理剤として、硬化性の低屈折率層形成用組成物塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
無機微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
上記無機微粒子の配合割合は、上記低屈折率層形成用組成物100質量部に対して5〜90質量部とするのが、低屈折率層皮膜の透明性、強度等の観点から好ましく、20〜60質量部とするのがさらに好ましい。また、中空粒子と他の粒子を配合する場合は、全粒子中の中空粒子は5〜95質量部が好ましく、より好ましくは10〜90質量部、特に好ましくは30〜80質量部である。
(含フッ素ポリマー)
前述の通り、本発明における低屈折率層は、熱硬化型および/または光または放射線(例えば電離放射線)硬化型の架橋性の含フッ素化合物を主体として形成され硬化した含フッ素ポリマーにより構成されているのが好ましい。
本発明において、「含フッ素化合物を主体とする」とは、低屈折率層中に含まれる含フッ素化合物が低屈折率層の全質量に対し、50質量%以上であることを意味し、60質量%以上含まれることがより好ましい。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含むことが好ましい。
含フッ素化合物には、含フッ素ポリマー、含フッ素界面活性剤、含フッ素エーテル、含フッ素シラン化合物等が挙げられる。具体的には、例えば特開平9−222503号公報 段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報 段落番号[0019]〜[0030]、同2001−40284号公報 段落番号[0027]〜[0028]、同2004−45462号公報 段落番号[0030]〜[0047]等の記載の化合物等が挙げられる。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしては、フッ素原子を含む繰り返し構造単位、架橋性もしくは重合性の官能基を含む繰り返し構造単位、およびそれ以外の置換基からなる繰り返し構造単位からなる共重合体が好ましい。すなわち、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーとの共重合体、すなわち、架橋性もしくは重合性の官能基である硬化性反応基を有する含フッ素ポリマーが好ましく、さらにその他のモノマーが共重合された含フッ素ポリマーを用いてもよい。
架橋性もしくは重合性の官能基としては従来公知の官能基の何れでもよい。
架橋性の官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。これら架橋性官能基を有する化合物は塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
重合性の官能基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基が挙げられる。好ましくは、ラジカル重合性基[例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニルオキシ基等]、カチオン重合性基(例えば、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタニル基等)が挙げられる。
その他の繰り返し構造単位としては、溶媒可溶化のために炭化水素系共重合成分により形成される繰り返し構造単位が好ましく、このような構造単位をポリマー全体中50質量%程度導入したフッ素系ポリマーが好ましい。この際には、シリコーン化合物と組み合わせることが好ましい。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基または重合性官能基を含有して、低屈折率層皮膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、上市品の「サイラプレーン」[チッソ(株)製]等の反応性シリコーン、特開平11−258403号公報に記載のポリシロキサン構造の両末端にシラノール基含有の化合物等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素ポリマーの架橋または重合反応は、最外層である低屈折率層を形成するための硬化性組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。この際、用いることのできる重合開始剤は前記の高屈折率層で記載の内容と同一のものが挙げられる。
紫外線照射により重合反応を行う場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
共重合してもよいその他のモノマーには特に限定はない。例えば特開平10−25388号公報明細書段落番号[0009]〜[0010]記載の化合物等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
また、低屈折率層としては、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化して形成されるゾルゲル硬化膜も好ましく用いられる。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報等記載の化合物)、特開平9−157582号公報記載のパーフルオロアルキル基含有シランカップリング剤、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
併用する触媒としては、従来公知の化合物が挙げられ、上記文献中に記載のものが好ましく挙げられる。
本発明で特に有用な硬化性反応基を有する含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロオレフィン、パーフルオロシクロオレフィン、非共役パーフルオロジエンから選ばれるパーフルオロ化合物類とビニルエーテル類またはビニルエステル類の共重合体が挙げられる。特に単独で架橋反応可能な基[(メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等]を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70モル%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60モル%を占めていることである。
本発明に用いられる共重合体の好ましい態様として下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005326713
一般式(9)中、成分[F]は、以下の成分(pf1)、成分(pf2)または成分(pf3)を表す。
Figure 2005326713
成分(pf1)において、RはF原子または炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表わす。
Figure 2005326713
成分(pf2)において、R91、R92は、それぞれ同じでも異なってもよく、フッ素原子または−C2j+1基を表わし、jは1〜4の整数(好ましくはjは1または2)を表わす。好ましくは、フッ素原子または−CF基、−C基である。aは0または1、bは2〜5の整数を表わす。cは0または1を表わす。aおよび/またはcが0の場合、それぞれ単結合を表す。
Figure 2005326713
成分(pf3)において、R93、R94は、それぞれフッ素原子または−CF基を表わす。aは、上記成分(pf2)と同様0または1を表す。dは0または1、eは0または1〜4の整数、fは0または1、gは0または1〜5の整数を表わす。d、e、fおよび/またはgが0の場合、それぞれ単結合を表す。また(e+f+g)は1〜6の範囲の整数である。
前記の一般式(9)において、X92は炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数2〜4の連結基を表し、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、また環構造を有していてもよい。さらにO、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。連結基X92の好ましい例としては、*−(CH−O−**、*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−(CH−O−**、*−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**(ここで、*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。uは0または1を表わす。
また一般式(9)において、Y91は水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
さらに一般式(9)中、X91は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、成分[F]に相当するモノマーと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、低屈折率層の下の層、例えば高屈折率層への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一または複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
一般式(9)におけるX91の好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。但し、x+y+z=100である。
特に好ましくは、一般式(9)において、[F]成分が(pf1)成分のもが挙げられ、具体的には特開2004−45462号公報段落番号「0043」〜「0047」に記載の化合物等が挙げられる。
(オルガノシラン化合物)
次に、前記一般式(8)で表されるオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物について説明する。
一般式(8):(R81β−Si(Y814−β
上記一般式(8)において、R81は、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基として好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
81は、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、およびR82COO(R82は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、例えばCHCOO、CCOO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
βは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
81またはY81が複数存在するとき、複数のR81またはY81はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
81に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
81が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。
前記一般式(8)で表されるオルガノシラン化合物の中でも、特にメタクロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基等のビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。具体的には、特開2004−42278号公報段落番号[0026]〜[0028]記載のものが挙げられる。
オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物は、一般に前記オルガノシラン化合物を触媒の存在下で処理して製造されるものである。触媒としては、酸類、塩基類、有機金属化合物等であり、具体的には例えば特開2000−275403号公報中の段落番号[0071]から[0083]記載の化合物等が挙げられる。
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾル成分の使用量は、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。使用量が少なすぎると本発明の効果が得にくいが、該上限値以下の使用量とすれば屈折率が増加しすぎたり、低屈折率層の皮膜の形状・面状が悪化したりするなどの不具合が生じることがなく、本発明の優れた効果を発揮することができるので該範囲内で適宜の量使用することが好ましい。
(多官能重合性化合物)
前述したように、前記の低屈折率層形成用の硬化性組成物には、更に多官能重合性化合物を添加することもできる。
多官能重合性化合物としては、ラジカル重合性官能基および/またはカチオン重合性官能基のいずれでも2個以上重合性基を含有してよい。ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応および/または架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。これらのラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物の具体的な内容としては、前記の高屈折率層に記載の多官能モノマーやオリゴマーと同様のものが挙げられる。
上記したラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。またラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを含む前記多官能重合性化合物の配合量は、前記含フッ素ポリマー100質量部に対して、0.1〜20質量部とするのが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明における低屈折率層には、以上述べた成分の他、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系化合物またはフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加されていることが好ましい。これらの添加剤を添加する場合には、低屈折率層形成用の硬化性組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中には、ジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量にも、特に制限はないが、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
好ましいシリコーン系化合物の例としては、例えば特開2004−42278号公報段落番号[0068]記載のもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖[例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等]であっても、分岐構造[例えば−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCFH等]であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CHOCHCFCF、−CHCHOCHH、−CHCHOCHCH17、−CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層の皮膜との結合形成または相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はなく用いられる。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としては、“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”[商品名:以上、ダイキン化学工業(株)製];「メガファックF−171」、「メガファックF−172」、「メガファックF−179A」、「ディフェンサMCF−300」[商品名:以上、大日本インキ(株)製]などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤またはポリオキシアルキレン系化合物のような、防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は、前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には、硬化性組成物全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合である。
低屈折率層はまた、ミクロボイドを内包してもよい。具体的には、例えば特開平9−222502号公報、同9−288201号公報、同11−6902号公報等に記載の内容が挙げられる。
さらに本発明においては、有機微粒子を用いることもでき、該有機微粒子としては、例えば、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の化合物等があげられ、その形状は、上述の無機微粒子と同じである。
低屈折率層の厚さは0.03〜0.2μmが好ましく、0.05〜0.15μmがより好ましい。
[低屈折率層の性状]
本発明における低屈折率層は、その表面エネルギーが26mN/m以下、さらには15〜25.8mN/mの範囲であることが好ましい。表面エネルギーをこの範囲にすることが防汚性の点で好ましい。
また上記低屈折率層は、熱硬化性または、光もしくは放射線(例えば電離放射線)硬化型の架橋性フッ素系化合物を含有する、フッ素系ポリマーによる硬化膜であれば防汚性の効果が発現されるので好ましい。特に、最外層となる低屈折率層中に含まれるフッ素系化合物が、最外層の全質量に対して50質量%以上であれば、低屈折率層皮膜の表面全体がムラ無く安定した特性を示すので好ましい。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液を、偏光板の保護フィルム面上に滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。最外層表面の水に対する接触角は90゜以上、さらには95゜以上、特には100゜以上であることが好ましい。
また低屈折率層表面の動摩擦係数は、0.25以下であることが好ましく、さらには0.05〜0.25、特には0.03〜0.15であることが好ましい。ここで記載した動摩擦係数とは、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で表面を移動させたときの、表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。
低屈折率層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また低屈折率層の耐擦傷性は、JIS K−6902に従うテーバー試験での摩耗量は小さいほど好ましい。
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、反射防止膜に物理強度を付与するために保護フィルムの表面に設けることができる。特に保護フィルムと前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、多官能モノマーや多官能オリゴマーまたは加水分解性官能基含有の有機金属化合物を含む塗布組成物を保護フィルム上に塗布し、硬化性化合物を架橋反応、または、重合反応させることにより形成することができる。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。具体的には、高屈折率層のマトリックスバインダーと同様の内容のものが挙げられる。更に好ましい態様としては、ラジカル重合性基とカチオン重合性基をそれぞれ少なくとも1種ずつ含有する重合性化合物を少なくとも1種用いることが挙げられる。ラジカル重合性基とカチオン重合性基は同一分子内に含有されてもよいし、または異なる分子に含有されていてもよい。
これらの重合性化合物を主として含有する、硬化性組成物から形成される硬化性膜の層からなる多層反射防止膜は、後述するエンボス加工による表面凹凸の賦形が均一に安定して可能となる。これらは、ハードコート層の熱弾性変形が適切に作用することによると推測される。
好ましい具体的な態様として、下記一般式(10)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーと、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物との両方を含有し、架橋性ポリマー中の開環重合性基とエチレン性不飽和基の両方を重合させることにより硬化することを特徴とする硬化性組成物が挙げられる。
Figure 2005326713
式中、R101,R102は、水素原子、脂肪族基(特に炭素原子数1〜4のアルキル基)、−COOR103、または−CHCOOR103を表す。但し、R103は炭化水素基、特に炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子もしくはメチル基である。Y101は開環重合性基またはエチレン性不飽和基を含む1価の基であり、X101は単結合または2価の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および、*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
101における開環重合性基を含む1価の基とは、カチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する1価の基であり、この中でもヘテロ環状構造を有する基であってカチオン開環重合を行うものが好ましい。この場合好ましいY101としては、ビニルオキシ基、またはエポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環等のイミノエーテル環などを含む1価の基が挙げられ、この中でも、特に好ましくはエポキシ環、オキセタン環、オキサゾリン環を含む1価の基あり、最も好ましくはエポキシ環を含む1価の基である。Y101がエチレン性不飽和基の場合には、Y101は、好ましくはアクリロイル基、メタクロイル基、スチリル基、またはビニルオキシカルボニル基を表す。
本発明の一般式(10)で表される繰り返し単位のうち、より好ましい例としては、エポキシ環を有するメタクリレートまたはアクリレートから誘導される繰り返し単位であり、その中でも特に好ましい例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートの単量体に相当する繰り返し単位が挙げられる。また、本発明の一般式(10)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、複数種の一般式(10)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、その中でも特にグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートいずれかの単量体に相当する繰り返し単位からなるコポリマーとすることでより効果的に硬化収縮を低減できる。
本発明における、一般式(10)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーとしては、例えば特開2002−322430号公報明細書記載の化合物が挙げられる。
本発明に用いられる、前記一般式(10)の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(10)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、30質量%以上100質量%以下、さらには50質量%以上100質量%以下、特には70質量%以上100質量%以下であることが好ましい。一般式(10)以外の繰り返し単位が、架橋反応性基を有さない場合でも、その含量が該上限値以下であれば、硬度が低下するなどの問題を生じることはなく、架橋反応性基を有する場合にあっては、硬度を維持することができると共に、硬化収縮が大きくなったり、脆性が悪化したりするなどの不都合が生じないので好ましい。特にアルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)と一般式(10)で表される繰り返し単位の共重合体を用いる場合などのように架橋反応時に脱水、脱アルコールなどの分子量低下を伴う場合には、硬化収縮が大きくなりやすい。このような、分子量低下を伴って架橋反応が進行する架橋反応性基を有する繰り返し単位を、本発明の一般式(10)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーに導入する場合の、一般式(10)で表される繰り返し単位が含まれる好ましい割合は、70質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
一般式(10)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの、好ましい分子量範囲は、質量平均分子量で1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
次に本発明に用いることのできる、同一分子内に2個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物について説明する。好ましいエチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、特に好ましくはメタクリロイル基またはアクリロイル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。このようなエチレン性不飽和基を含む化合物は、エチレン性不飽和基を分子内に2個以上有していればよいが、より好ましくは3個以上有していることである。そのなかでもアクリロイル基を有する化合物が好ましく、分子内に2〜6個のアクリル酸エステル基を有する、多官能アクリレートモノマーと称される化合物や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される、分子内に数個のアクリル酸エステル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用することができる。具体的には、前記した高屈折率層の多官能性モノマーと同様のものが挙げられる。
これらの重合性化合物は、重合開始剤を併用して重合することが好ましく、具体的には前記の高屈折率層に記載したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が300nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nmである。ここでいう平均粒径は質量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等に記載の内容のもが挙げられる。ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%である。
前記したように、高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。高屈折率層がハードコート層を兼ねる場合、高屈折率層で記載した手法を用いて無機微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
ハードコート層の硬度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またハードコート層の耐擦傷性は、JIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
〔その他の層〕
積層型反射防止膜には、さらに、防湿層、帯電防止層、プライマー層、下塗層や保護層、シールド層、滑り層を設けてもよい。後述する防眩性をエンボス加工により賦与する態様では、プライマー層を設けることも好ましく、例えば特開2004−4404号公報段落番号[0030]〜[0033]に記載のものが挙げられる。
〔反射防止膜の各層の形成〕
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)等の方法を用いて、塗布により形成することができる。ウエット塗布量の最小化により乾燥ムラを少なくできるという観点からマイクログラビア法およびグラビア法が好ましい。塗布に際しては2層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載の方法が挙げられる。
本発明の反射防止膜の製造方法は、保護フィルム上に積層された層の少なくとも一層を、酸素濃度3体積%以下で電離放射線を照射する工程と同時に、または連続して、酸素濃度10体積%以下で加熱する工程によって硬化する。保護フィルム上に複数層を積層する場合、積層される層のうちの少なくとも2層を、1回の保護フィルムの送り出し、各々の層の形成、フィルムの巻取りからなる工程によって形成するのが生産コストの観点で好ましく、3層を1回の工程にて形成するのがより好ましい。このような製造方法は、塗布機の保護フィルムの送り出しから巻取りまでの間に、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットを複数個、好ましくは積層する層の数と同じ数以上、縦列して設けることによって達成される。
図6に、本発明において反射防止膜形成に使用される装置構成の一例を示す。図6はロールフィルムの送り出し(101)から巻取り(112)までの一工程中に、第一の塗布ステーション(102)、第一の乾燥ゾーン(103)、第一のUV照射機(104)、第二の塗布ステーション(105)、第二の乾燥ゾーン(106)、第二のUV照射機(107)、第三の塗布ステーション(108)、第三の乾燥ゾーン(109)、第三のUV照射機(110)、後乾燥ゾーン(111)を含んだ例であり、例えば中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層の3層、ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層の3層など、一工程で3層までの機能層を形成することができる。必要に応じて、塗布ステーションの数を2つに減らした装置構成として、中屈折率層と高屈折率層の2層だけを一工程で形成し、面状、膜厚等をチェックした結果をフィードバックして得率を向上させたり、4つに増やした装置構成として、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を一工程で形成して塗布コストを大幅に低減したりする、といった製造方法とすることも、別の好ましい形態として挙げられる。
〔反射防止膜の防眩性の形成〕
本発明の反射防止膜は、上記に記載の態様の多層構造の反射防止膜が、下記内容の光散乱層(すなわち前記高屈折率層が光散乱層であってもよい)と低屈折率層(低屈折率層の反対側の光散乱層面にハードコート層を設けてもよい)からなる反射防止膜であってもよいし、あるいは光散乱性の特定の凹凸形状を形成した反射防止膜の態様であってもよい。
〔光散乱層〕
本発明における光散乱層は、好適には少なくとも1種の平均粒子径0.5〜7.0μmの透光性粒子を透光性樹脂に分散してなるものであり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2で、該透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなる層からなる。本発明における光散乱層には、表面の凹凸による光散乱効果が実質的にない内部散乱系の光散乱層も含まれる。
(透光性粒子)
本発明における透光性粒子は、平均粒子径0.5〜7.0μm、さらには0.5〜5.0μm、特には1.5〜4.0μmの範囲の単分散性粒子であることが好ましい。透光性粒子は、有機化合物の粒子であっても無機化合物の粒子であってもよい。透光性粒子の平均粒子径が該下限値以上であれば、良好な光散乱効果が発揮されるので好ましく、該下限値以下であれば、膜厚が厚くなってフィルムのカールが大きくなるなどの不具合が生じることがなく、光散乱効果も良好なものとなるので好ましい。粒子径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなりヘイズ価の設計が容易となる。
透光性粒子としては、透明度が高く、透光性樹脂との屈折率差が前記のような数値になるものであれば特に限定されずに使用することができ、有機微粒子としては、例えばポリメチルメタクリレートビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.54)、メラミンホルムアルデヒドビーズ(屈折率1.57)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.57)、架橋ポリスチレンビーズ(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ(屈折率1.68)等が挙げられる。また無機微粒子としては、例えばシリカビーズ(屈折率1.44)、アルミナビーズ(屈折率1.63)等が挙げられ、沈降防止や屈折率低下のために中空無機ビーズも好ましい。
透光性粒子と透光性樹脂との間の屈折率の差は、0.02〜0.20、さらには0.04〜0.10であることが好ましい。その差が該上限値以下であれば、得られる散乱層皮膜が白濁するなどの不具合が生じないので好ましく、該下限値以上であれば、十分な光散乱効果を得ることができるので好ましい。透光性粒子の透光性樹脂に対する添加量も、屈折率の差と同様に重要である。透光性粒子の含有量は、光散乱層全固形分中3〜30質量%、さらには5〜20質量%であることが好ましい。透光性粒子の含有量が該上限値以下であれば、フィルムが白濁するなどの不具合が生じないので好ましく、該下限値以上であれば、十分な光散乱効果を得ることができるので好ましい。
透光性粒子としては、異なる2種以上の透光性粒子を併用してもよい。2種類以上の透光性粒子を用いる場合には、複数種類の粒子の混合により屈折率の制御を効果的にするため、最も屈折率の高い透光性粒子と最も屈折率の低い透光性粒子との間の屈折率の差が0.02以上、0.10以下とすることが好ましく、0.03以上、0.07以下とすることが特に好ましい。
またより大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することも可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止膜塗設保護フィルムを貼り付けた場合、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合が生じないことが要求される。ギラツキは、反射防止膜表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子よりも粒子径が小さく、透光性樹脂の屈折率とは異なる屈折率を有する透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
上記のような透光性粒子を添加する場合には、透光性樹脂中で透光性粒子が沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増すほど、透光性粒子の沈降防止に有効ではあるが、光散乱層の透明性に悪影響を与えことがある。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、透光性樹脂に対して光散乱層の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるのがよい。
(透光性樹脂)
光散乱層を形成する透光性樹脂としては、主として反応硬化型樹脂、即ち、(1)紫外線や電子線によって硬化する電離放射線硬化型樹脂、(2)電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶媒を混合したもの、(3)熱硬化型樹脂の3種類が好適に使用される。具体的には、前記の高屈折率層のマトリックスと同様の内容のものが挙げられる。
また光散乱層の厚さは、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μmがよい。
透光性樹脂の屈折率は、好ましくは1.51〜2.00であり、より好ましくは1.51〜1.90であり、更に好ましくは1.51〜1.85であり、特に好ましくは1.51〜1.80である。なお、透光性樹脂の屈折率は、透光性粒子を含まずに測定した値である。
さらに光散乱層は、界面結合剤として、前記の低屈折率層の項で詳述した、一般式(8)で表される有機シリル化合物および/またはその有機シリル化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を含有することが好ましい。
界面結合剤として具体的には、例えば“KBM−5103”および“KBM−503”[商品名:共に信越化学工業(株)製]等の市販品、および/またはその加水分解物および/またはその部分縮合物が好ましい化合物として挙げられる。
界面結合剤の添加量は、光散乱層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。
更に、光散乱層に界面活性剤を添加すると、本発明における反射防止膜の面状均一性を向上させることができるので好ましい。界面活性剤としては、例えば炭素数6〜12のパーフルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート共重合体、炭素数6〜12のパーフルオロビニルエーテル共重合体等が挙げられる。
界面活性剤の添加量は、光散乱層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
〔防眩性反射防止膜の形状〕
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能(防眩性機能)を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜50%であることが好ましく、5〜40%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
本発明の反射防止膜が防眩性を保持する場合の膜最上層表面は、JIS B 0601−1994に基づく該層の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.02〜1.0μm、さらには0.02〜0.8μm、特には0.04〜0.6μmの範囲;表面凹凸の平均間隔(Sm)が5〜65μm、さらには5〜50μm、特には10〜40μmの範囲;であり、かつ十点平均粗さ(Rz)と算術平均粗さ(Ra)の比(Rz/Ra)が10以下、さらには9以下、特には8以下;であることが好ましい。また表面凹凸の最大高さ(Ry)が2μm以下、さらには0.05〜1.5μm、特には0.1〜1.0μmであり、凹凸プロファイルの傾斜角(正反射面に対する傾斜角度の平均値)が15゜以下、さらには0.25〜15゜、特には0.25〜10゜にあることが好ましい。
これらの範囲内において、表示画像に外光の写りこみやギラツキ感の無い視認性良好なものとなり、好ましい。
ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。
また、凹凸プロファイルの傾斜角は小さい方が好ましい。不規則な凹凸プロファイルの傾斜角は一義でなく分布をもって存在するが、小さい傾斜角の頻度が高くなりすぎなければ良好な防眩性が得られ、大きい傾斜角の頻度が高くなりすぎなければ防眩フィルムが白味をおびてくるなどの不具合を生じないので好ましい。膜表面の凹と凸の形状は、(株)ミツトヨ製2次元粗さ計“SJ−400”型または、(株)RYOKA SYSTEM製の「マイクロマップ」機により評価することができる。
本発明において、傾斜角度は以下の方法で決定される。すなわち、図1に示すように、保護フィルム面上に面積が0.5〜2μmの範囲の三角形ABCを想定し、その3頂点A,B,Cから鉛直上向きに伸ばした3つの垂線が防眩性反射防止膜表面と交わる点をA’,B’,C’とする。この3点によって形成される三角形A’B’C’平面の法線D−D’が、保護フィルム上の三角形ABC平面から鉛直上向きに伸ばした垂線O−O’となす角φを防眩性反射防止膜表面の傾斜角度とする。
そのときの保護フィルム上での測定面積は、0.25mm以上とすることが好ましく、この測定面を支持体上で三角形に分割して、上記方法に従い傾斜角度φを測定し、その全測定値を平均して表面の平均傾斜角度を求め、また全測定三角形について、傾斜角度が10°以上であるものの割合を求める。
測定する装置はいくつかあるが、一例としてマイクロマップ社(米国)製“SXM520−AS150”型を用いた場合について説明する。例えば、対物レンズが10倍の時、傾斜角度の測定単位(測定対象三角形)は0.85μm単位であり、測定範囲は0.48mmである。対物レンズの倍率を大きくすれば、それに合わせて測定単位と測定範囲は小さくなる。測定データは、“MAT−LAB”等のソフトを用いて解析し、傾斜角度分布およびそれらの平均値を算出することができる。これにより傾斜角度が10°以上の割合を容易に求めることができる。本発明において、傾斜角度が10゜以上の割合は2%以下、さらには1%以下であることが好ましい。これにより、防眩性と黒色の明示性とを両立させることができる。
[反射防止膜の表面形状の形成]
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用し、それにより膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜5μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報等)、低屈折率層を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法[例えば、エンボス加工方法(例えば、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等)、剥離紙転写方法(例えば、特登3332534号公報等)、粒子スプレー転写方法(例えば、特開平6−87632号公報等)等が挙げられる。
多層構造の各層の膜厚を揃えること、表面凹凸形状を制御すること、およびその凹凸の耐久性を向上させること等の観点から、防眩性層(もしくは光散乱層)を設ける方法、またはエンボス加工方法が好ましい態様として挙げられる。
(防眩性層)
反射防止膜のいずれかの層に粒子を含有させて防眩層を形成する場合、該防眩層に用いる防眩層用粒子としては、平均粒径が0.2〜10μmの範囲の粒子が好ましい。ここでいう平均粒径は、二次粒子(粒子が凝集していない場合は一次粒子)の質量平均径である。防眩層用粒子としては、無機微粒子と有機粒子が挙げられる。無機微粒子の具体例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂から作製される粒子などが挙げられる。好ましくは、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子であり、特に好ましくはポリメチルメタクリレート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子である。
凹凸を形成するために防眩層に用いる防眩層用粒子としては、樹脂粒子であるほうが好ましい。粒子の平均粒径は、好ましくは0.5〜7.0μm、更に好ましくは1.0〜5.0μm、特に好ましくは1.5〜4.0μmである。粒子の屈折率は1.35〜1.80であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.75、さらに好ましくは1.45〜1.75である。粒子の粒径分布は狭いほど好ましい。粒子の粒径分布を示すS値は下記数式(16)で表され、2以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.7以下である。
数式(16):S=(D0.9−D0.1)/D0.5
0.1:体積換算粒径の積算値の10%相当粒径
0.5:体積換算粒径の積算値の50%相当粒径
0.9:体積換算粒径の積算値の90%相当粒径
また防眩層用粒子の屈折率は特に限定されるものではないが、防眩層の屈折率とほぼ同じである(屈折率差で0.005以内)か、0.02以上異なっていることが好ましい。粒子の屈折率と、防眩層の屈折率をほぼ同じにすることで、反射防止膜付き偏光板を画像表示面に装着したときのコントラストが改良される。さらに粒子の屈折率と防眩層の屈折率の間に屈折率の差を付けることで、反射防止膜付き偏光板を液晶表示面に装着したときの視認性(ギラツキ故障、視野角特性など)が改良される。
粒子の屈折率と防眩層の屈折率の間に屈折率の差を付ける場合、0.02〜0.5であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.3である。
透光性粒子としては、異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。2種類以上の透光性粒子を用いる場合には、複数種類の粒子の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために、最も屈折率の高い透光性粒子と最も屈折率の低い透光性粒子との間の屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止膜付き偏光板を貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、マトリックスバインダーである透光性樹脂の屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
防眩層用粒子の使用量は、防眩性を付与した層の固形分中3〜75質量%となる量とするのが好ましい。
防眩性を付与する粒子は、反射防止膜において構築されたいずれかの層に含有させることができ、好ましくはハードコート層、低屈折率層、高屈折率層であり、特に好ましくはハードコート層、高屈折率層である。複数の層に添加してもよい。
(エンボス加工)
本発明の反射防止膜は、上記に記載の態様のようにして作製した多層構造の反射防止膜をエンボス加工することにより、本発明における特定の表面凹凸形状とした態様であってもよい。これにより、反射防止膜の膜厚が実質的に一定とすることができる。
(エンボス版)
本発明に用いるエンボス版は、ビッカーズ硬度が500以上の炭素とクロムを含む鉄合金であればいずれでもよく、そのエンボス版の形状は、以下の凹凸のパラメータであることが好ましい。凹凸配列の規則性が高いと光干渉が発生するために好ましくない。平均凹凸周期(Sm)は5μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがさらに好ましく、5μm〜30μmが最も好ましい。算術平均粗さ(Ra)は、0.05μm〜20μmが好ましく、0.3〜5μmがさらに好ましく、0.3μm〜1μmが最も好ましい。凹凸プロファイルの傾斜角は0.5゜〜10゜に分布していることが好ましく、0.5゜〜5゜に分布していることがさらに好ましい。
平均凹凸周期(Sm)、算術平均粗さ(Ra)、平均傾斜角は(株)ミツトヨ製2次元粗さ計“SJ−400型”もしくは、(株)RYOKA SYSTEM製の「マイクロマップ」機を用いて測定することができる。
(エンボス加工条件)
本発明におけるエンボス加工は、上記のように作製した反射防止膜塗設の保護フィルムに、片面エンボシングカレンダー機を用いて実施される。次に示すプレス条件は、フィルム表面に掛ける圧力、版の表面温度およびプレス時間である。
プレス圧力は1×10Pa以上が好ましく、1×10〜100×10Paがさらに好ましく、5×10〜50×10Paが最も好ましい。本発明に用いられるロール版ならびにバックアップロールの直径の範囲では、これら圧力範囲に対応する線圧として、1000N/cm以上が好ましく、1000〜50000N/cmがさらに好ましく、5000〜30000N/cmが最も好ましい。
プレス時のプレヒートロール温度は、好ましくは60〜180℃、より好ましくは70〜160℃;エンボスロール表面温度は、80℃〜220℃であることが好ましく、100℃〜200℃であることがさらに好ましい。プレス時間は1秒〜600秒が好ましく、10秒〜600秒がさらに好ましく、10秒〜300秒が最も好ましい。搬送速度は1〜50m/分が好ましく、1〜30m/分がさらに好ましく、5〜30m/分が最も好ましい。
<本発明の偏光板の特徴>
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系フィルムから形成された偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムを有し、かつ一方の側のセルロースアシレートフィルム上に、以上述べた反射防止膜が塗設されてなるものである。
本発明の偏光板の保護フィルムであるセルロースアシレートフィルムは、取り扱い性や耐久性の観点から、膜厚5〜500μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜100μmが特に好ましい。
本発明の偏光板は、少なくとも偏光能を持つ偏光膜を有する長尺の偏光板である。そして該偏光膜の吸収軸が、長手方向に平行でも垂直でもないことが好ましい。より好ましくは該吸収軸と長手方向とのなす角度が20°以上70°以下の範囲、さらに好ましくは40°以上50°以下の範囲にあり、そして偏光板の550nmおける偏光度が99.0%以上、さらには99.5%以上であることが好ましく、またその単板透過率が40.0%以上、さらには41.0%以上であることが好ましく、かつ長尺方向の単板透過率のばらつき範囲が±0.3%以内、さらには±0.2%以内であることが好ましい。このことより本発明の偏光板は、延伸ムラが少なく偏光性能のバラツキが抑制されたものとなるので好ましい。
本発明のさらに好ましい偏光板は、保護フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸との角度が10°以上90°未満、好ましくは20°以上70°以下、より好ましくは40°以上50°以下である偏光板が挙げられる。
偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもないこと、また保護フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸との角度が10°以上90°未満であることにより、長尺の偏光板より単板を、偏光板打ち抜き工程で高得率で得ることができるので好ましい。
以上の特徴を有する本発明の偏光板は、次に述べるように偏光膜を構成するポリマーフィルムの延伸方法等を工夫することにより、作製することができる。
<偏光膜>
本発明で用いられる偏光膜は、ポリビニルアルコール(PVA)と二色性分子から構成することが好ましい。PVAは、ポリ酢酸ビニルをケン化したポリマー素材であるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のような酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、数平均重合度で1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。PVAのシンジオタクティシティーは、特許2978219号明細書に記載されているように耐久性を改良するため55%以上が好ましいが、特許第3317494号に記載されている45〜52.5%も好ましく用いることができる。
PVAはフィルム化した後、二色性分子を導入して偏光膜を構成することが好ましい。 PVAフィルムの製造方法は、PVA系樹脂を水または有機溶媒に溶解した原液を流延して成膜する方法が一般に好ましく用いられる。原液中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、通常5〜20質量%であり、この原液を流延法により製膜することによって、膜厚10〜200μmのPVAフィルムを製造できる。PVAフィルムの製造は、特許第3342516号、特開平09-328593号、特開平13-302817号公報、特開平14-144401号公報を参考にして行うことができる。
PVAフィルムの結晶化度は、特に限定されないが、特許第3251073号に記載されている平均結晶化度(Xc)50〜75質量%や、面内の色相バラツキを低減させるため、特開平14-236214号公報に記載されている結晶化度38%以下のPVAフィルムを用いることができる。
PVAフィルムの複屈折(△n)は小さいことが好ましく、特許第3342516号明細書に記載されている、複屈折が1.0×10−3以下のPVAフィルムを好ましく用いることができる。但し、特開平14−228835号公報に記載されているように、PVAフィルムの延伸時の切断を回避しながら高偏光度を得るため、PVAフィルムの複屈折を0.02以上0.01以下としてもよいし、特開平14−060505号に記載されているように(nx+ny)/2−nzの値を0.0003以上0.01以下としてもよい。なおここで、nxはフィルム長手方向の屈折率、nyはフィルム幅方向の屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率である。
PVAフィルムのレターデーションRe(面内)は0nm以上100nm以下が好ましく、0nm以上50nm以下がさらに好ましい。また、PVAフィルムのRth(膜厚方向)は0nm以上500nm以下が好ましく、0nm以上300nm以下がさらに好ましい。
この他、本発明の偏光板には、特許3021494号明細書に記載されている1,2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPVAフィルム;特開平13−316492号公報に記載されている5μm以上の光学的異物が100cm当たり500個以下であるPVAフィルム;特開平14−030163号公報に記載されているフィルムのTD方向の熱水切断温度斑が1.5℃以下であるPVAフィルム;さらにグリセリンなどの3〜6価の多価アルコールを1〜100質量部混合したり、また特開平06−289225号公報に記載されている可塑剤を15質量%以上混合した溶液から製膜したPVAフィルム;などを好ましく用いることができる。
PVAフィルムの延伸前のフィルム膜厚は特に限定されないが、フィルム保持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。特開平14−236212号公報に記載されているように水中において4倍から6倍の延伸を行った時に発生する応力が10N以下となるような薄いPVAフィルムを使用してもよい。
二色性分子はI やI などの高次のヨウ素イオンまたは二色性染料を好ましく使用することができる。本発明では高次のヨウ素イオンが特に好ましく使用される。高次のヨウ素イオンは、「偏光板の応用」永田良編(CMC出版)や「工業材料」第28巻、第7号、39〜45頁に記載されているように、ヨウ素をヨウ化カリウム水溶液に溶解した液および/またはホウ酸水溶液にPVAを浸漬し、PVAに吸着・配向した状態で生成することができる。
二色性分子として二色性染料の具体例としては、例えば、「偏光フィルムの応用」(CMC刊、昭和61年2月10日発行)、或いは「COLOUR INDEX,ThirdEdition,Volume2」(The Society of Dyers and Colourists,The American Association of Textile Chemists and Colrists刊、1971年発行)中のC.I.Direct染料(直接染料)等をあげることができる。
さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平6−65815号、特開平7−261024号の各公報記載の二色性染料等も好ましく使用することができる。各種の色相を有する二色性分子を製造するため、これらの二色性染料は2種以上を配合してもかまわない。二色性染料を用いる場合、特開平14−082222号公報に記載されているように、吸着厚みが4μm以上であってもよい。
フィルム中の該二色性分子の含有量は、少なすぎると偏光度が低く、また、多すぎても単板透過率が低下することから通常、フィルムのマトリックスを構成するポリビニルアルコール系重合体に対して、0.01質量%から5質量%の範囲に調整される。
偏光膜の好ましい膜厚としては5〜40μm、さらには5〜30μm、特には5〜22μmの範囲である。偏光膜の膜厚が5〜22μmと薄膜化した場合には、該偏光膜がクロスニコル時の700nmの透過率が0.001%以上0.3%以下で410nmの透過率が0.001%以上0.3%以下とする態様が好ましい。クロスニコル時の700nmの透過率の上限は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%であることが好ましい。410nmの透過率の上限は0.3%以下であることが好ましく、0.08%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがさらに好ましい。このことにより、経時変化による偏光膜の収縮によって生じる画像表示装置の周辺部からの光漏れ故障(額縁故障)を改良し、かつ青味が少ないニュートラルグレーの色味を示し、良好な表示画像品位を達成することができる。
クロスニコル時の700nmの透過率および410nmの透過率を下げる手段としては、偏光膜に、ヨウ素などの二色性物質に加えて対応する波長域に吸収をもつ上記の二色性色素を色相調整剤として添加すること、ヨウ素などの二色性物質を添加する際にホウ酸などの硬膜剤を添加すること等が有効であることを見出した。また、これらを組み合わせて行うことも有効である。
上記色相調整剤は2種以上を配合してもよい。添加する色素は、410nmまたは700nmに吸収を有すれば本発明の目的を達成するが、主吸収が380nmから500nmもしくは600nmから720nmに有することが好ましい。また、添加する色素量は、使用する色素の吸光度、二色比などにより任意に決めることができる。いずれもクロスニコル時の700nmの透過率が0.3%以下で410nmの透過率が0.3%以下になれば特に制限されることはない。
また、上記色相調整剤を偏光膜に添加する方法としては、浸漬、塗布、噴霧などのあらゆる方法が用いられるが、その中でも浸漬が好ましい。添加する工程は、延伸前、延伸後のいずれでもかまわないが、偏光性能向上の観点から延伸前が好ましい。単独で添加工程を設けてもよいし、後述する染色工程または硬膜剤添加工程のいずれかもしくは両方において行うこともできる。
偏光膜の厚さと後述する保護フィルムの厚さの比は、特開平14−174727号公報に記載されているように、0.01≦A(偏光膜の膜厚)/B(保護フィルムの膜厚)≦0.16の範囲とすることも好ましい。
保護フィルムは、通常、ロール形態で供給され、長尺の偏光膜に対して、長手方向が一致するようにして連続して貼り合わされることが好ましい。ここで、保護フィルムの配向軸(遅相軸)は何れの方向であってもよく、操作上の簡便性から、保護フィルムの配向軸は、長手方向に平行であることが好ましい。
また、保護フィルムの遅相軸(配向軸)と偏光膜の吸収軸(延伸軸)の角度も特に限定的でなく、偏光板の目的に応じて適宜設定できる。
本発明の長尺の偏光板は、吸収軸が長手方向に平行でないことが好ましく、このようにすることで、配向軸が長手方向に平行である保護フィルムを、本発明で用いられる長尺偏光膜に連続して貼り合わせるとき、偏光膜の吸収軸と保護フィルムの配向軸とが平行でない偏光板を得ることができ、好ましい。偏光膜の吸収軸と保護フィルムの配向軸が平行でない角度で貼り合わされている偏光板は、寸度安定性に優れるという効果がある。この性能は、特に液晶表示装置に用いたときに好ましく発揮される。特に、保護フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸との傾斜角度が10°以上90°未満において、寸度安定効果が効果的に発揮され、好ましく、20°以上70°以下が特に好ましい。
[偏光板用ポリマーフィルムの膨潤調節・二色性物質および硬膜剤の添加方法]
また、本発明の偏光板は、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護膜貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程により作製することができる。上記の染色工程、硬膜工程、延伸工程の順序を任意に変えること、またいくつかの工程を組み合わせて同時に行うことも可能である。特に、上記膨潤工程、染色工程、および乾燥工程を以下のように行うことにより、本発明の偏光板を好適に作製することができる。
(イ)上記膨潤工程で、偏光板用ポリマーフィルムがPVAフィルムの場合、二色性物質であるヨウ素の染色を促進させるために、予め水などに浸漬させるが、このときの温度を30℃以上50℃以下、好ましくは35℃以上45℃以下にする。
(ロ)染色工程で二色性物質であるヨウ素を偏光板用ポリマーフィルムに染色させるが、このときに、硬膜剤であるホウ酸を、ヨウ素に対し質量比で1から30倍添加する。
(ハ)乾燥工程で延伸された偏光膜を乾燥させるが、このときの温度を80℃以下、好ましくは70℃以下にする。
上記各工程の説明は、後述する。
(偏光膜の厚みを薄くする方法)
偏光膜の厚みを薄くする方法は、従来の延伸法において、延伸倍率を高くする、膜厚の薄いPVAフィルムを用いる等の方法により達成できる。通常用いられているPVAフィルムの膜厚は、75μm[例えば(株)クラレ製“VF−P”、“VF−PS”など]であるが、この場合は、長手方向の縦一軸延伸法では8倍程度以上延伸すると、偏光膜の膜厚は20μm以下となる。テンター方式などにより、横一軸延伸法では4倍以上延伸すると、偏光膜の膜厚は20μm以下となる。また、PVAフィルムの膜厚を、50μm以下に薄くして、一軸延伸にて6倍程度以上延伸することにより、偏光膜の膜厚は20μm以下となる。
本発明においては、これらの一軸延伸の他に、偏光膜用ポリマーフィルムを搬送方向に一軸延伸しながらまたは一軸延伸した後、横方向に延伸して製造する延伸方法も用いることができる。この方法は、一般に二軸延伸と呼ばれる方法である。この方法で一般的なものはテンター方式による同時二軸延伸法やチューブラ方式による同時二軸延伸法などが知られている。この方式では、膜厚75μmのPVAフィルムを、縦方向に4倍程度以上、横方向に1.5倍程度以上延伸すると、偏光膜の膜厚は20μm以下となる。
本発明において好ましい延伸方式は、特開2002−86554号公報に記載の斜め延伸方法である。この延伸方法では、PVAフィルムの膜厚が125μm以下のPVAフィルムを4倍以上延伸することにより、偏光膜の膜厚は20μm以下となる。
本発明において、光漏れが発生する故障(額縁故障)、および偏光板部材の軽量化の観点から、偏光膜の厚みは薄いほうが好ましいが、薄すぎると、延伸中に膜が切断したり、染色液・硬膜液などに浸漬させる際のハンドリングに悪影響を及ぼしたり、延伸後の乾燥中に亀裂が入ったりするなどの問題が発生する。従って、本発明において、好ましい偏光膜の厚みは5μm以上22μm以下であり、更に好ましくは8μm以上20μm以下である。
[各工程の説明]
以下、本発明の偏光板を作製する場合の各工程について説明する。
(膨潤工程)
膨潤工程は、水のみで行うことが好ましいが、特開平10−153709号公報に記載されているように、光学性能の安定化および製造ラインでの偏光フィルム基材のシワ発生回避のために、偏光フィルム基材をホウ酸水溶液により膨潤させて、偏光フィルム基材の膨潤度を管理することもできる。
また、膨潤工程の温度および時間は、任意に定めることができるが、10℃〜50℃、5秒以上が好ましく、二色性色素を用いない場合には前述の通り30℃以上50℃以下、好ましくは35℃以上45℃以下の温度で5秒以上600秒以下、好ましくは15秒以上300秒以下とすることが好ましい。
(染色工程)
染色工程は、特開2002−86554号公報に記載の方法を用いることができる。また、染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素もしくは染料溶液の塗布または噴霧等、任意の手段が可能である。染色に用いる二色性物質は特に限定されるものではないが、高コントラストな偏光板を得るためには、ヨウ素を用いることが好ましい。また、染色工程は液相で行うのが好ましい。
ヨウ素を用いる場合には、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にPVAフィルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.05〜20g/L、ヨウ化カリウムは3〜200g/L、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜2000が好ましい。染色時間は10〜1200秒が好ましく、液温度は10〜60℃が好ましい。さらに好ましくは、ヨウ素は0.5〜2g/L、ヨウ化カリウムは30〜120g/L、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は30〜120とし、染色時間は30〜600秒、液温度は20〜50℃とする。
前述の通り、硬膜剤としてホウ酸,ホウ砂等のホウ素系化合物を添加して、染色工程と後述する硬膜工程を同時に行うことも有効である。ホウ酸を用いる場合は、ヨウ素に対し質量比で1から30倍添加することが好ましい。また、この工程で二色性色素を添加することも有効で、その量は0.001〜1g/lが好ましい。また、水溶液中の添加物量を一定にすることは、偏光性能維持のために重要であることから、連続して製造する場合には、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ホウ酸、二色性色素などを補充しつつ製造することが好ましい。補充は、溶液、固形のいずれの状態でもよい。溶液で添加する場合には、高濃度にしておき、必要に応じて少量ずつ添加してもよい。
(硬膜工程)
硬膜工程は、架橋剤溶液に浸漬、または溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。また、特開平11−52130号公報に記載されているように、硬膜工程を数回に分けて行うこともできる。
架橋剤としては米国再発行特許第232897号明細書に記載のものが使用でき、特許第3357109号公報に記載されているように、寸法安定性を向上させるため、架橋剤として多価アルデヒドを使用することもできるが、ホウ酸類が最も好ましく用いられる。
硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加してもよい。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512号公報に記載されているように、塩化亜鉛の変わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
好ましくは、塩化亜鉛を添加したホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液を作製し、PVAフィルムを浸漬させて硬膜を行うのがよい。ホウ酸は1〜100g/L、ヨウ化カリウムは1〜120g/L、塩化亜鉛は0.01〜10g/L、硬膜時間は10〜1200秒が好ましく、液温度は10〜60℃が好ましい。さらに好ましくは、ホウ酸は10〜80g/L、ヨウ化カリウムは5〜100g/L、塩化亜鉛は0.02〜8g/L、硬膜時間は30〜600秒、液温度は20〜50℃である。前述の通り、この工程で二色性色素を添加して染色工程も同時に行うことも有効で、その詳細は既に述べた。
(延伸工程)
延伸は、前述の通り、延伸後に22μm以下の偏光膜になるように調整したうえで、米国特許2,454,515号明細書などに記載されているような、一軸延伸方法を用いることができる。本発明においては、特開2002−86554号公報に記載されているようなテンター方式による斜め延伸法で行うことも好ましい。以下、本発明で用いる斜め延伸方法について説明する。
図2は、ポリマーフィルムを斜め延伸する方法の典型例を、概略平面図として、示したものである。本発明で用いる斜め延伸方法は、(a)で示される原反フィルムを矢印(イ)方向に導入する工程、(b)で示される幅方向延伸工程、および(c)で示される延伸フィルムを次工程、即ち(ロ)方向に送る工程を含む。以下「延伸工程」と称するときは、これらの(a)〜(c)工程を含んで、本発明で用いる斜め延伸方法を行うための工程全体を指す。
フィルムは(イ)の方向から連続的に導入され、上流側から見て左側の保持手段にB1点で初めて保持される。この時点ではまだ一方のフィルム端は保持されておらず、幅方向に張力は発生しない。つまり、B1点は実質的な保持開始点(以下、「実質保持開始点」という)には相当しない。本発明で用いる方法では、実質保持開始点は、フィルム両端が初めて保持される点で定義される。実質保持開始点は、より下流側の保持開始点A1と、A1から導入側フィルムの21に略垂直に引いた直線が、反対側の保持手段の軌跡23と交わる点C1の2点で示される。この点を起点とし、両端の保持手段を実質的に等速度で搬送すると、単位時間ごとにA1はA2,A3・・・・Anと移動し、C1は同様にC2,C3・・・・Cnに移動する。つまり同時点に基準となる保持手段が通過する点AnとCnを結ぶ直線が、その時点での延伸方向となる。
斜め延伸方法では、図2のようにAnはCnに対し次第に遅れてゆくため、延伸方向は、搬送方向垂直から徐々に傾斜していく。実質的な保持解除点(以下、「実質保持解除点」という)は、より上流で保持手段から離脱するCx点と、Cxから次工程へ送られるフィルムの中心線22に略垂直に引いた直線が、反対側の保持手段の軌跡24と交わる点Ayの2点で定義される。最終的なフィルムの延伸方向の角度は、実質的な延伸工程の終点(実質保持解除点)での左右保持手段の行程差Ay−Ax(すなわち|L1−L2|)と、実質保持解除点の距離W(CxとAyの距離)との比率で決まる。従って、延伸方向が次工程への搬送方向に対しなす傾斜角θは下記数式(17)を満たす角度である。
数式(17):tanθ=W/|L1−L2|
図2の上側のフィルム端は、Ay点の後も28まで保持されるが、もう一端が保持されていないため新たな幅方向延伸は発生せず、18および28は実質保持解除点ではない。
以上のように、斜め延伸方法において、フィルムの両端にある実質保持開始点は、左右各々の保持手段への単純な噛み込み点ではない。二つの実質保持開始点は、上記で定義したことをより厳密に記述すれば、左右いずれかの保持点と他の保持点とを結ぶ直線がフィルムを保持する工程に導入されるフィルムの中心線と略直交している点であり、かつこれらの二つの保持点が最も上流に位置するものとして定義される。同様に、本発明において、二つの実質保持解除点は、左右いずれかの保持点と他の保持点とを結ぶ直線が、次工程に送りだされるフィルムの中心線と略直交している点であり、しかもこれら二つの保持点が最も下流に位置するものとして定義される。ここで、略直交とは、フィルムの中心線と左右の実質保持開始点、あるいは実質保持解除点を結ぶ直線が、90±0.5゜であることを意味する。
テンター方式の延伸機を用いて左右の行程差を付けようとする場合、レール長などの機械的制約により、しばしば保持手段への噛み込み点と実質保持開始点に大きなずれが生じたり、保持手段からの離脱点と実質保持解除点に大きなずれが生じたりすることがあるが、上に定義した実質保持開始点と実質保持解除点間の工程が、下記の数式(5)の関係を満たし、かつ両保持手段の長手方向の搬送速度の差が1%未満であれば本発明の目的は達成される。搬送速度の差は、さらに好ましくは0.5%未満であり、最も好ましくは0.05%未満である。ここで述べる速度とは、毎分当たりに左右それぞれの保持手段が進む軌跡の長さのことである。一般的なテンター延伸機等では、チェーンを駆動するスプロケット歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
数式(5):|L2−L1|>0.4W
また、偏光膜用ポリマーフィルムの延伸に際して、該ポリマーフィルムを、その揮発分含有率を5質量%以上に維持したまま延伸したのち、収縮させながら揮発分含有率を低下させることが好ましい。これにより、フィルムのシワやヨリの発生を防止できる。
偏光膜用ポリマーフィルムに揮発分を含有させる方法としては、
(1)フィルムをキャストし溶媒・水を含有させる、
(2)フィルムの延伸前に溶媒・水などに浸漬し、または溶媒・水などを塗布もしくは噴霧する、
(3)フィルムの延伸中に溶媒・水を塗布する、
などの方法が挙げられる。ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーフィルムは、高温高湿雰囲気下では水を含有するので、高湿雰囲気下で調湿後延伸するか、または高湿条件下で延伸することにより揮発分を含有させることができる。これらの方法以外でも、ポリマーフィルムの揮発分を5質量%以上にさせることができれば、いかなる手段を用いてもよい。
好ましい揮発分含有率は、ポリマーフィルムの種類によって異なる。揮発分含有率の最高値は、ポリマーフィルムの支持性が保たれている限り制限されない。ポリビニルアルコールでは揮発分含有率として10〜100質量%が好ましい。セルロースアシレートでは、10〜200質量%が好ましい。
(乾燥工程)
乾燥条件は、特開2002−86554号公報に記載の方法に従うが、前述の通り、温度を80℃以下、好ましくは70℃以下にすることが好ましい。好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。
(保護フィルム貼り合わせ工程)
本発明で製造された偏光膜は、その両面に保護フィルムを貼り付けて偏光板として供される。2枚の保護フィルムは同じでも異なってもよい。偏光膜と保護フィルムの貼り合わせは、貼合直前に接着液を供給し、偏光膜と保護フィルムを重ね合わせるように、一対のロールで貼り合わせることが好ましい。乾燥後の接着剤層の厚みは、0.001〜5μmであることが好ましく、0.005〜3μmであることがより好ましい。
また、特開2001−296426号公報および特開2002−86554号公報に記載されているように、偏光膜の延伸に起因するレコードの溝状の凹凸を抑制するには、貼り合わせ時の偏光膜の含水率を調整することが好ましく、本発明では0.1〜30質量%にすることが好ましい。
偏光膜と保護フィルムとの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等が導入された変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。
(貼り合わせ後の乾燥工程)
貼り合わせ後の乾燥条件は、特開2002−86554号公報に記載の方法に従うが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。
以上の工程により作製された偏光板は、偏光膜中の元素含有量が、ヨウ素0.1〜3.0g/m、ホウ素0.1〜5.0g/m、カリウム0.1〜2.0g/m、亜鉛0.001〜2.0g/mであることが好ましい。特に、単板透過率は40.0%以上にすることが好ましく、このためには、ヨウ素の含有量を低くすることが好ましく、好ましいヨウ素の含有量は0.1〜1.0g/mである。
また、特許第3323255号公報に記載されているように、偏光板の寸法安定性をあげるために、染色工程、延伸工程および硬膜工程のいずれかの工程において有機チタン化合物および/または有機ジルコニウム化合物を添加使用し、有機チタン化合物および有機ジルコニウム化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有することもできる。
(打ち抜き工程)
図5に従来の偏光板打ち抜きの例を、図4に本発明の偏光板打ち抜きする例を示す。
従来の偏光板は、図5に示されるように、偏光板の吸収軸71すなわち延伸軸が長手方向72と一致しているのに対し、本発明の偏光板は、図4に示されるように、偏光の吸収軸81すなわち延伸軸が長手方向82に対して45゜傾斜しており、この角度がLCDにおける液晶セルに貼り合わせる際の偏光板の吸収軸と、液晶セル自身の縦または横方向とのなす角度に一致しているため、打ち抜き工程において斜めの打ち抜きは不要となる。しかも図4からわかるように、本発明の偏光板は切断が長手方向に沿って一直線であるため、打ち抜かず長手方向に沿ってスリットすることによっても製造可能であるため、生産性も格段に優れている。
[偏光板の特性]
(透過率および偏光度)
本発明の偏光板の好ましい単板透過率は40.0%以上49.5%以下であるが、さらに好ましくは41.0%以上49.5%以下である。またヨウ素濃度と単板透過率は、特開平14−258051号公報に記載されている範囲であってもよい。さらに同種の2枚の偏光板を、吸収軸を一致させて重ねた場合の透過率(平行透過率)の好ましい範囲は36%以上42%以下であり、また吸収軸を直交させて重ねた場合の透過率(直交透過率)の好ましい範囲は、0.001%以上0.05%以下である。これらの透過率はJIS Z−8701に基づいて、下記の数式(18)で定義される。
Figure 2005326713
ここで、K、S(λ)、y(λ)、τ(λ)は以下の通りである。
Figure 2005326713
S(λ):色の表示に用いる標準光の分光分布
y(λ):XYZ系における等色関数
τ(λ):分光透過率
λ:測定波長[nm]
また本発明の偏光板における偏光度の好ましい範囲は、下記の数式(19)での定義に基づいて、99.900%以上99.999%以下であり、さらに好ましくは99.940%以上99.995%以下である。
Figure 2005326713
さらに、下記の数式(20)で定義される二色性比の好ましい範囲は48以上1215以下であるが、さらに好ましくは53以上525以下である。
Figure 2005326713
また本発明の偏光板の、波長440〜670nmの範囲における平行透過率において、その平行透過率Tの最大値Tmaxと最小値Tminとの差ΔTは、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下であるのがよい。更には、光透過特性における透過率比RT1(波長490nmの平行透過率/波長550nmの平行透過率)および透過率比RT2(波長610nmの平行透過率/波長550nmの平行透過率)が共に1.00±0.02の範囲内、好ましくは、±0.01の範囲内である。反射型または半透過反射型の液晶表示装置において好ましい態様となる。
偏光板をクロスニコルに配置した場合の光学特性は、吸光度特性における550〜650nmの波長範囲での吸収ピークAp/450〜520nmの波長範囲での吸収ピークApの比1.5以下のものが好ましい。より好ましくは1.4以下、特に好ましくは1.2以下のものが挙げられる。これにより、クロスニコルに配置した場合の漏れ光の低減による黒さの強化、すなわちニュートラルな色相化の点より好ましい。
更には、波長440nmにおける平行透過率Tp440および直交透過率Tc440、波長550nmにおける平行透過率Tp550および直交透過率Tc550、並びに波長610nmにおける平行透過率Tp610および直交透過率Tc610が、下記数式(21)〜(24)を同時に満足することが好ましい。
数式(21):0.85≦Tp440/Tp550≦1.10
数式(22):0.90≦Tp610/Tp550≦1.10
数式(23):1.0≦Tc440/Tc550≦8.0
数式(24):0.08≦Tc610/Tc550≦1.10
これらの範囲内とすることで、反射型または半透過反射型の液晶表示装置において、バックライトの輝線ピーク(波長440nm、550nmおよび610nm)を持つ3つの波長でバラツキおよび直交透過率のバラツキが少なく、鮮明な色再現性に問題のない良好な表示画像が得られる。
また、光の波長が420〜700nmの間での10nm毎の平行透過率の標準偏差が3以下で、かつ、光の波長が420〜700nmの間での10nm毎の(平行透過率/直交透過率)の最小値が300以上とすることが好ましい。これにより、液晶表示装置でコントラストのある表示画像がえられ、白画面表示を行なった時の表示色がニュートラル化に有効となる。
(色相)
本発明の偏光板の色相は、CIE均等知覚空間として推奨されているL表色系における明度指数Lおよび、クロマティクネス指数aとbを用いて好ましく評価される。L、a、bは、前記のX、Y、Zを用いて数式(25)で定義される。
Figure 2005326713
ここでX、Y、Zは照明光源の三刺激値を表し、標準光Cの場合、X=98.072、Y=100、Z=118.225であり、標準光D65の場合、X=95.045、Y=100、Z=108.892である。
偏光板単枚の好ましいaの範囲は−2.5以上、0.2以下であり、さらに好ましくは−2.0以上、0以下である。偏光板単枚の好ましいbの範囲は1.5以上、5以下であり、さらに好ましくは2以上、4.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のaの好ましい範囲は−4.0以上、0以下であり、さらに好ましくは−3.5以上、−0.5以下である。2枚の偏光板の平行透過光のbの好ましい範囲は2.0以上、8以下であり、さらに好ましくは2.5以上、7以下である。2枚の偏光板の直交透過光のaの好ましい範囲は−0.5以上、2以下であり、さらに好ましくは0以上、1.0以下である。2枚の偏光板の直交透過光のbの好ましい範囲は−2.0以上、2以下であり、さらに好ましくは−1.5以上、0.5以下である。
色相は、前述のX、Y、Zから算出される色度座標(x,y)で評価してもよく、例えば、2枚の偏光板の平行透過光の色度(x,y)と直交透過光の色度(x,y)は、特開平14−214436号公報、特開平13−166136号公報、特開平14−169024号公報等に記載されている範囲にしたり、色相と吸光度の関係を特開平13−311827号公報に記載されている範囲内にしたりすることも好ましく行うことができる。
(視野角特性)
偏光板をクロスニコルに配置して波長550nmの光を入射させる場合の、垂直光を入射させた場合と、偏光軸に対して45゜の方位から法線に対し40゜の角度で入射させた場合の、透過率比やxy色度差を特開平13−166135号公報や特開平13−166137号公報に記載された範囲とすることも好ましい。また、特開平10−068817号公報に記載されているように、クロスニコル配置した偏光板積層体の垂直方向の光透過率(T)と、積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T)を10000以下としたり、特開平14−139625号公報に記載されているように、偏光板に法線から仰角80゜までの任意な角度で自然光を入射させた場合に、その透過スペクトルの520〜640nmの波長範囲において波長域20nm以内における透過光の透過率差を6%以下としたり、特開平08−248201号公報に記載されている、フィルム上の任意の1cm離れた場所における透過光の輝度差が30%以内とすることも好ましい。
(配向度)
PVAの配向度は高い程良好な偏光性能が得られるが、偏光ラマン散乱や偏光FT−IR等の手段によって算出されるオーダーパラメーター値として0.2〜1.0が好ましい範囲である。また、特開昭59−133509号公報に記載されているように、偏光膜の全非晶領域の高分子セグメントの配向係数と占領分子の配向係数(0.75以上)との差が少なくとも0.15としたり、特開平04−204907号公報に記載されているように、偏光膜の非晶領域の配向係数が0.65〜0.85としたり、IやIの高次ヨウ素イオンの配向度を、オーダーパラメーター値として0.8〜1.0とすることも好ましく行うことができる。
<反射防止性偏光板>
本発明の偏光板は、前記の偏光膜とその保護フィルムからなる偏光板に、前記した反射防止膜を片側の保護フィルムに塗設してなる反射防止性偏光板である。
この反射防止膜を設けた偏光板は、次の(1)〜(3)の方法で製造される。
(1)反射防止膜が積層された保護フィルムの反射防止膜とは反対側の面と、一方の面に保護フィルムが貼り合された偏光膜の他方の面とを接着剤を用いて貼り合わせる。
(2)反射防止膜が積層された保護フィルムの反射防止膜とは反対側の面を鹸化処理等で表面親水化処理し、このフィルム面に偏光膜を、接着剤を用いて貼り合わせる。
(3)偏光膜に保護フィルムが貼り合されて形成された偏光板の、保護フィルムの面上に反射防止膜を塗設する。
偏光板の薄膜化が可能となることから、(2)乃至は(3)の方法が好ましい態様である。さらに(2)の方法において、反射防止膜が塗設された長尺の保護フィルムを、長尺の偏光膜と連続的に貼り合わせることがさらに好ましい。
〔反射防止性偏光板の特性〕
[光学的特性およびその耐候性]
(反射率)
本発明の反射防止性偏光板は、保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムの一方の側に、多層構造の反射防止膜を設けてなる偏光板であり、その波長450nm〜650nmにおける入射角5゜の入射光に対する鏡面反射率の平均値(すなわち平均反射率)が、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。
上記の入射角5゜の入射光における鏡面反射率とは、偏光板表面の法線方向+5゜から入射した光に対する法線方向−5゜で反射した光の強度の割合であり、背景の鏡面反射による映り込みの尺度になる。防眩性機能をもつ反射防止膜を適用する場合には、防眩性付与のために設けた表面凹凸に起因する散乱光の分だけ、法線方向−5゜で反射した光の強度は弱くなる。従って、鏡面反射率は防眩性と反射防止性の両方の寄与を反映する測定法といえる。
反射防止性偏光板の、上記鏡面反射率の平均値が0.5%以下であれば、表示装置表面での外光の反射による視認性の低下を充分なレベルまで防止することができるので好ましい。
更には、耐候性試験前後の本発明の偏光板の、波長450〜650nmにおける平均反射率の変化が0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましく、0.2%以下であることがさらに好ましい。この範囲においては、良好な視認性を維持できるので実用上の問題とならない。
(色味、およびその面内変化率)
本発明の反射防止性偏光板は、CIE標準光源D65の、波長380nmから780nmの領域における入射角5゜の入射光に対して、正反射光の色味、すなわちCIE1976L色空間のL、a、b値が、それぞれ3≦L≦20、−7≦a≦7、かつ、−10≦b≦10の範囲内であることが好ましい。この範囲とすることで、従来の偏光板で問題となっていた赤紫色から青紫色の反射光の色味が低減され、さらに3≦L≦10、0≦a≦5、かつ、−7≦b≦0の範囲内とすることで大幅に低減され、液晶表示装置に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味がニュートラルで、気にならない。詳しくはa≦7であれば赤味が強くなりすぎることがなく、a≧−7であればシアン味が強くなりすぎることがなく好ましい。またb≧−7であれば青味が強くなりすぎることがなく、b≦0であれば黄味が強くなりすぎることがなく好ましい。
本発明において、上記のL、a、およびbの各値が表示画像の全面において一定であることが好ましく、特に各値の面内における変化率が20%以下であることが好ましい。更に好ましくは8%以下である。この範囲において、色味ムラのない視認性良好な表示画像となる。
鏡面反射率および色味の測定は、分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。さらに、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の入射角5゜の入射光に対する正反射光の色味を表わすCIE1976L色空間のL値、a値、b値を算出し、反射光の色味を評価することができる。
これらは、該保護フィルム自身の色味およびその変動幅が上記の範囲内に抑制されたこと、反射防止膜塗設表面の凹凸形状を均一化されたフィルム表面に膜厚のムラを低減して反射防止膜が形成されること、偏光膜の色味のニュ−トラル性が改善されたこと等の本発明の偏光板を構成する各構成成分を適切に調整することで反射光の色味ムラが大幅に低減される。
更には、反射光の色味均一性は、反射光の380nm〜680nmの反射スペクトルにより求めたL色度図上でのaより、下記の数式(26)に従って色味の変化率として得ることができる。
Figure 2005326713
ここで、a maxおよびa minは、それぞれa値の最大値および最小値;b maxおよびb minは、それぞれb値の最大値および最小値;a avおよびb avは、それぞれa値およびa値の平均値である。色の変化率は、それぞれ30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、8%以下であることが最も好ましい。
また、本発明における偏光板は、耐候性試験前後の色味の変化であるΔEが15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。この範囲において、低反射と反射光の色味の低減を両立することができるため、例えば画像表示装置の最表面に適用した場合、室内の蛍光灯のような、輝度の高い外光が僅かに映り込んだ場合の色味が、ニュートラルで、表示画像の品位が良好となり、好ましい。
上記の色味の変化ΔEは、下記の数式(27)に従って求めることができる。
数式(27):ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ここで、ΔL,Δa,Δbは、耐候性試験前後のL値,a値,b値それぞれの変化量である。
本発明の反射防止性偏光板は、これらの光学特性および膜の機械的特性(引裂き強度、引掻き強度、密着性等が耐候性試験後も実質的に問題とならない範囲の変化に抑制されていることが特徴である。特に耐候性試験後に上記特性の変化が抑制されていることが特徴である。
特に、本発明の反射防止性偏光板のJIS K−6902に基づくテーバー磨耗試験における磨耗量が、50mg以下、さらには40mg以下となることが好ましい。また、耐候試験後のJIS K−6902に基づくテーバー磨耗試験における磨耗量の増加幅は10%以内であることが好ましい。この範囲において、表示装置の保護の観点から耐久性良好な耐擦傷性が十分に保持される。
本発明における耐候性試験とは、JIS K−5600−7−7:1999に基づく耐候性試験であり、サンシャイン・ウェザー・オ・メーター“S−80”[スガ試験機(株)製]、湿度50%RH、処理時間150時間による耐候性試験を意味する。
(光透過率および偏光度の温度および/または湿度の耐久性)
本発明の反射防止性偏光板は、60℃、90%RHの雰囲気に500時間放置した場合の、その前後における光透過率および偏光度の変化率が、それぞれの絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。これらの特性は、二色性物質を0.6質量%以上含有する親水性高分子の延伸フィルムからなる偏光膜、耐湿性良好となる本発明に好ましいセルロースアシレートフィルム等によってはじめて可能となる。
また、特開平07−077608号公報に記載されているように80℃、90%RH、500時間放置後の偏光度が95%以上、単体透過率が38%以上であることも好ましい。更には、80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率および偏光度の変化率も絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
[寸法変化率]
本発明の反射防止性偏光板が、70℃の加熱条件下に120時間置いた場合に、当該偏光板の吸収軸方向の寸法変化率および偏光軸方向の寸法変化率が、共に±0.6%以内であることが好ましい。
偏光板の加熱時の寸法挙動において、偏光板の吸収軸方向の変化と偏光軸方向の変化の異方性が少ないため、偏光板の伸縮によりプラスチックセルの面内にかかる負荷が均等となり、液晶表示装置の組み立て等で問題となっている異形のパネルの反りが解消される。従って、偏光板の吸収軸方向の寸法変化率Dと偏光軸方向の寸法変化率Dとが、以下の関係を満たすことがさらに好ましい。
−0.05<(寸法変化率D−寸法変化率D)<+0.05
[その他の耐久性]
さらに、特開平06-167611号公報に記載されているように80℃で2時間放置した後の収縮率が0.5%以下となること、あるいは80℃、90%RHの雰囲気中で200時間放置処理後のラマン分光法による105cm−1および157cm−1のスペクトル強度比の変化を、特開平08−094834号公報や特開平09−197127号公報に記載された範囲とすることも好ましい。
〔他の機能性層〕
本発明の反射防止性偏光板は、LCDの視野角拡大フィルム、反射型LCDに適用するためのλ/4板等の機能層を、反射防止膜を有する側とは反対側の偏光膜の保護フィルム側に有する複合した偏光板として好ましく使用される。
[光学補償フィルム]
本発明の視認側偏光板は、反射防止膜を設けた偏光板の反対側の保護フィルム上に光学補償フィルムを設けてなることが好ましい。これにより、液晶表示装置の表示画像の広視野角が可能となる。
光学補償フィルムとしては、例えば、高分子フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、支持体上に複屈折を示す液晶性材料からなる光学的異方性層を有する液晶配向フィルムなどがあげられる。光学補償フィルムの厚さは特に制限されないが、5〜100μm程度が一般的である。これら光学補償フィルムのなかでも支持体上に光学的異方性層を有する液晶配向フィルムが好ましい。
前記複屈折性フィルムとなる高分子フィルムの素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、ノルボルネン系樹脂またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
[液晶配向フィルム]
上記光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物分子を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶化合物分子の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶化合物分子の配向状態に関しては、IDW’00、FMC7−2、411〜414頁に記載されている。
(液晶化合物)
光学異方性層に用いられる液晶化合物は、棒状液晶でも、ディスコティック液晶でもよく、またそれらが高分子液晶、もしくは低分子液晶、さらには、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含む。最も好ましいのは、ディスコティック液晶である。
棒状液晶の好ましい例としては、特開2000−304932号公報に記載のものがあげられる。
ディスコティック液晶の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。
上記ディスコティック液晶は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等がその直鎖として放射線状に置換された構造であり、液晶性を示す。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物質が前記化合物である必要はなく、例えば、低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載のものが挙げられる。
上記光学異方性層は、一般にディスコティック化合物および他の化合物(例えば、可塑剤、界面活性剤、ポリマー等)を溶媒に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、上記光学異方性層は、ディスコティック化合物および他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶媒に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、0.7〜5μmであることが最も好ましい。ただし、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、厚く(3〜10μm)する場合がある。
[配向膜]
配向膜は、液晶化合物分子の配向方向を規定する機能を有するために通常用いられるが、液晶化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素として必ずしも必須のものではない。例えば、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを支持体上に転写して光学補償フィルムを作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
配向膜に使用されるポリマーの例としては、例えば特開平8−338913号公報中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。これらの変性ポリビニルアルコール化合物および架橋剤等の配向膜形成用組成物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報、同2002−62426号公報等に記載のもの等が挙げられる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマーを、支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。
配向膜は、支持体上に直接設けるか、または支持体に下塗層を設けてからその下塗層の上に設ける方法が挙げられる。支持体上に直接設ける場合は、前記の表面親水化処理を行うことが好ましい。
また、下塗層を設ける場合には、例えば特開平7−333433号公報記載の下塗層による方法、または疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を1層のみ塗布する単層法、さらには第一層として高分子フィルムによく密着する層(以下、下塗第一層と略す)を設け、その上に第二層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第二層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)などの方法が挙げられる。
配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。次に、配向膜を機能させて、配向膜の上に設けられる光学異方性層の液晶分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
[液晶化合物からなる光学異方性層を塗設する支持体]
光学異方性層を塗設するための支持体は、高光透過率なプラスチックフィルムであれば特に制限はないが、偏光板の保護フィルムであるセルロースアシレートを用いることが好ましい。すなわち、偏光板の保護フィルムの上に直接配向膜(前述のとおり必ずしも必須では無い)と光学異方性層が形成されていることが好ましい。
光学異方性層を塗設する支持体は、それ自身が光学的に重要な役割を果たすため、支持体のReレターデーション値を0〜200nm、そして、Rthレターデーション値が0〜400nmに調節されることが好ましい。
支持体としてセルロースアシレートフィルムを用いる場合は、溶液の紫外線吸収スペクトルの吸収極大を与える波長(λmax)が400nmより短波長にある紫外線を吸収する化合物をレターデーション調整剤として含有することが好ましい。このような化合物の例として、フェニルサリチル酸類、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリフェニルホスフェート等の紫外線吸収化合物を挙げることができる。また、少なくとも2つの芳香族環を有する芳香族化合物(例えば特開2000−111914号公報等)、トリフェニレン化合物(例えば特開2000−275434号公報等)、棒状化合物(例えば特開2002−363343号公報、同2003−35821号公報等)、円盤状化合物(1,3,5−トリアジン骨格、ポルフィリン骨格を分子に含有の化合物等:例えば特開2001−166144号公報等)等が好ましい。これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。これらの化合物類は、可視光領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
なお、支持体フィルムの複屈折率(Δn:nx−ny)は、0〜0.002であることが好ましい。また、フィルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0〜0.04であることが好ましい。
支持体フィルムの正面レターデーション値(Re)および膜厚方向のレターデーション値(Rth)は、本発明における保護フィルムであるセルロースアシレートフィルムの場合と同様、前記の数式(1)および(2)に従って算出される。
数式(1):Re=(nx−ny)×d
数式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり;nyは、フィルムの面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり;nzは、フィルムの厚み方向の屈折率である。dは、単位をnmとするフィルムの厚さである。
光学補償フィルムの支持体にセルロースアシレートフィルムを用いる場合、セルロースアシレートフィルムの厚さは20〜200μmであることが好ましく、30〜120μmであることがより好ましい。
保護フィルム上に光学異方性層を形成してから偏光膜と張り合わせる場合には、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
視認側偏光板の構成は、「反射防止膜/保護フィルム/偏光膜/保護フィルム」の積層フィルム、更に好適には「反射防止膜/保護フィルム/偏光膜/光学補償フィルム(保護フィルム/(配向膜)/光学異方性層)」の積層フィルムとなり、薄膜化、軽量化並びにコスト低減が一層図られる。偏光板の上側保護フィルムを反射防止膜が、下側保護フィルムを、光学異方性層が塗設された支持体が兼ねることにより、物理強度、耐候性に優れ、反射防止機能を有し、視認性に優れた、薄くて軽い偏光板を得ることができる。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、以上述べた本発明の反射防止性偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする。このように、本発明の反射防止性偏光板は、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイのような画像表示装置に適用することができる。そして、本発明の画像表示装置は、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置に適用するのが好ましい。また、液晶セルの両側に配置される偏光板のうち1枚は、前記の長尺の偏光板から打ち抜かれた偏光板であることが好ましい。以下、さらに説明する。
液晶表示装置としては、従来公知の何れも用いることができる。例えば、内田龍雄監修「反射型カラーLCD総合技術」[(株)シーエムシー、1999年刊]、「フラットパネルディスプレイの新展開」[(株)東レリサーチセンター調査部門、1996年刊]、「液晶関連市場の現状と将来展望(上巻)、(下巻)」[富士キメラ総研(株)、2003年刊]等に記載されているものが挙げられる。
具体的には、例えばツイステッドネマチック(TN)、スーパーツイステッドネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、本発明の光学フィルムは、付設する液晶表示装置表示画像の大きさが17インチ以上であっても、コントラストが良好で広い視野角を有し、かつ色相変化および外光の移りこみ防止を実現でき、好ましい。
[TNモード液晶表示装置]
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献の記載が挙げられる。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
[OCBモード液晶表示装置]
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている装置が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
[VAモード液晶表示装置]
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモード)の液晶セル[SID97、Digest of Tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載]、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル[日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載]および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が挙げられる。
[IPSモード液晶表示装置]
IPSモードの液晶セルでは、液晶分子を基板に対して常に水平面内で回転させるモードで、電界無印加時には電極の長手方向に対して若干の角度を持つように配向されている。電界を印加すると電界方向に液晶分子は向きを変える。液晶セルを挟持する偏光板を所定角度に配置することで光透過率を変えることが可能となる。液晶分子としては、誘電率異方性Δεが正のネマチック液晶を用いる。液晶層の厚み(ギャップ)は、2.8μm超4.5μm未満とする。これは、レターデーションΔn・dは0.25μm超0.32μm未満の時、可視光の範囲内で波長依存性が殆どない透過率特性が得られる。偏光板の組み合わせにより、液晶分子がラビング方向から電界方向に45°回転したとき最大透過率を得ることができる。尚、液晶層の厚み(ギャップ)はポリマビーズで制御している。もちろんガラスビーズヤファイバー、樹脂製の柱状スペーサでも同様のギャップを得ることができる。また液晶分子は、ネマチック液晶であれば、特に限定したものではない。誘電率異方性Δεは、その値が大きいほうが、駆動電圧が低減でき、屈折率異方性Δnは小さいほうが液晶層の厚み(ギャップ)を厚くでき、液晶の封入時間が短縮され、かつギャップばらつきを少なくすることができる。
[その他液晶モード]
STNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で本発明の偏光板を供することができる。ECBモードにも同様に適用することができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面および内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
〔保護フィルムの作製〕
[保護フィルム(CA−1)の作製]
{微粒子分散物(RL−1)の調製}
下記の組成からなる混合物およびビーズ径0.2mmのジルコニアビーズを、ダイノミル分散機に投入して湿式分散し、体積平均粒径55nmになるように分散を行った。得られた分散物を200メッシュのナイロン布で濾過してビーズを分離し、微粒子分散物(RL−1)を調製した。得られた微粒子分散物の粒度分布を測定したところ、粒径300nm以上の粒子は0%であった。
ここで体積平均粒径は、『粒度分布測定装置 LA920(堀場製作所製)』で測定した。
・微粒子分散物(RL−1)の組成
疎水性シリカ 2.00質量部
商品名“AEROSIL R812”
メチル基変性体、一次粒径7nm:日本アエロジル(株)製
セルローストリアセテート 2.00質量部
置換度2.85(6位置換度0.90)
下記の分散剤(DP−1) 0.25質量部
メチレンクロライド 78.70質量部
メタノール 14.20質量部
1−ブタノール 2.86質量部
Figure 2005326713
{セルロースアシレート溶液(A−1)の調製}
下記の組成からなる混合物を攪拌溶解して、セルロースアシレート溶液(A−1)を調製した。
・セルロースアシレート溶液(A−1)組成
セルローストリアセテート 100質量部
置換度2.85(6位置換度0.90)
トリフェニルホスフェート 7.5質量部
下記のレターデーション調整剤(RC−1) 6.0質量部
(logP6.4)
下記のレターデーション調整剤(RC−2) 8.0質量部
(logP2.9)
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 54質量部
1−ブタノール 11質量部
なお、本実施例においては、レターデーション調整剤(RC)のLogP値として「ChemDrawUltra」を用いた計算値を示した。
Figure 2005326713
(ドープの調製)
セルロースアシレート溶液(A−1)474質量部に、微粒子分散物(RL−1)15.3質量部を攪拌しながら添加し、添加終了後充分に攪拌した後、更に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを、50℃で絶対濾過精度0.01mmの濾紙“#63”[東洋濾紙(株)製]により濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙“FH025”(ポール社製)にてフィルター濾過および脱泡を行ってドープを調製した。
(溶液流延方法)
上述のようにして得られたドープを、バンド流延機を用いて流延して、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜した。金属支持体(流延バンド)としては、ステンレススチールからなり、幅2m、長さ56m(面積112m)からなるものを用いた。該金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は0.006μmで、最大高さ(Ry)は0.06μmであり、また十点平均粗さ(Rz)は0.009μmであった。算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)の各測定は、JIS B−0601に規定によった。
流延されたドープは、流延直後の1秒間は風速0.5m/秒以下で乾燥し、それ以降は風速15m/秒で乾燥した。乾燥風の温度は50℃であった。
流延バンドから剥ぎ取った時のフィルムの残留溶媒量は230質量%であり、フィルムの温度は−6℃であった。流延から剥ぎ取りまでの間における平均乾燥速度は745質量%/分であった。また、剥ぎ取り時点でのドープのゲル化温度は約10℃であった。
金属支持体上での膜面温度が40℃となってから、1分間乾燥し、剥ぎ取った後、乾燥風の温度を120℃とした。このときのフィルムの幅方向の温度分布は5℃以下であり、乾燥の平均風速は5m/秒、フィルムの幅方向分布はいずれも5%以内であった。また乾燥ゾーン中におけるピンテンター担持部分は遮風装置により乾燥熱風が直接当らないようにした。
次に、セルロースアシレートフィルムを延伸する工程を行った。すなわち、残留溶媒量が15質量%のフィルムの状態で、130℃の条件で、テンターを用いて25%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外して巻き取りを行った。剥ぎ取りより巻取りまでの間で蒸発した溶媒は初期の溶媒量の97質量%であった。乾燥したフィルムは、さらにローラーで搬送しつつ乾燥させる乾燥工程において、145℃の乾燥風により乾燥した後、湿度、温度を調整して、巻取り時の残留溶媒量0.33質量%、水分量0.8質量%で巻き取り、保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルム(CA−1)(長さ3500m、幅1300mm、厚み80μm)を製造した。膜厚の変動幅は±2.5%であり、幅方向のカール値は−0.3/mであった。
[保護フィルム(CA−2)の作製]
保護フィルムであるセルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製において、セルロースアシレート溶液(A−1)組成中に、さらに下記の波長分散調整剤(U−1)を1.7質量部添加した以外は、セルロースアシレート溶液(A−1)と同様にしてセルロースアシレートフィルム溶液(A−2)を調製し、このセルロースアシレートフィルム溶液(A−2)を用い、セルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製と同様にして、膜厚80μmのセルロースアシレートフィルム(CA−2)を製造した。残留溶媒量、水分量、膜厚の変動幅、幅方向のカール値はセルロースアシレートフィルム(CA−1)と同等であった。
[比較例用保護フィルムの作製]
セルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製において、セルロースアシレート溶液(A−1)および(A−2)の組成中に、レターデーション調整剤を添加しなかった以外は、セルロースアシレート溶液(A−1)および(A−2)と同様にしてセルロースアシレートフィルム溶液(AR−1)および(AR−2)を調製し、これらのセルロースアシレートフィルム溶液(AR−1)および(AR−2)を用い、セルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製と同様にして、膜厚80μmの比較例用保護フィルムであるセルロースアシレートフィルム(CAR−1)および(CAR−2)を得た。残留溶媒量、水分量、膜厚の変動幅、幅方向のカール値はセルロースアシレートフィルム(CA−1)と同等であった。
Figure 2005326713
得られたセルロースアシレートフィルム(CA−1)、(CA−2)、(CAR−1)および(CAR−2)について、下記方法に従ってそれらの性状を測定した。結果を表1および表2に示す。
[保護フィルムの性状]
(フィルム表面の凹凸形状)
得られたセルロースアシレートフィルムCA−1、CA−2、CAR1−1およびCAR1−2の各試料の金属支持体側の面の表面形状を測定した。また以下の光学特性および力学的特性についても評価した。
(フィルムの光学特性)
・ヘイズ
ヘイズはヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。フィルム1サンプルにつき、5点を測定し、その平均値を採用した
・光学的欠陥
フィルムを幅1300mm×長さ5mに切断してサンプルを作製した。2枚の偏光板をクロスニコルに配置して、この間にこのサンプルをおいて目視観察により輝度欠陥を評価した。大きさが100μm以上の輝点の数を計測し、1メートル当たりの換算値として表した。
(力学的特性の評価方法)
・カール
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985、Method−A)に従い測定した。ポリマーフィルムを、幅方向に35mm、長手方向に2mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、湿度65%RHの環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。そして同様に、ポリマーフィルムを、幅方向に2mm、長手方向に35mmの大きさに切り取った後、カール板に設置する。これを温度25℃、相対湿度65%の環境下に1時間調湿後カール値を読みとる。幅方向、長手方向の二方向で測定し、両者のうちの大きい値をカール値とした。カール値は、曲率半径(m)の逆数で表す。
・引き裂き強度
フィルムを幅65mm×長さ50mmに切断してサンプルを作製した。このサンプルを温度30℃、湿度85%RHの室内で2時間以上調湿し、ISO 6383/2−1983の規格に従い、(株)東洋精機製作所製の軽荷重引裂強度試験器を用いて、引き裂きに要する荷重(g)を求めた。
(透湿度)
前記した方法で、温度60℃、湿度95%RHの条件で測定し、フィルム膜厚80μmに換算した。
(レターデーションの湿度依存性)
前記したReおよびRthの測定方法により数値を求めた。測定試料を、25℃、10%RHおよび25℃、80%RHの条件下、測定波長λ=632.8nmで測定を行った。得られた各数値から、ReおよびRthのそれぞれについて、25℃、10%RHにおける測定値(Reλ10)、(Rthλ10)に対する25℃、80%RHにおける測定値(Reλ80)、(Rthλ80)の比率(Reλ80/Reλ10)、(Rthλ80/Rthλ10)を算出した。
(レターデーションの波長依存性)
25℃、60%RHの条件に2時間放置して調湿した後、測定波長400nmと測定波長700nmでそれぞれReとRthを求め、以下のようにして、ΔReおよびΔRthを算出した。
ΔRe(nm)=|Re400−Re700
ΔRth(nm)=|Rth400−Rth700
Figure 2005326713
Figure 2005326713
〔反射防止膜(AF)の作製〕
[ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製]
トリメチロールプロパントリアクリレート[“TMPTA”日本化薬(株)製]750.0質量部に、質量平均分子量3000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部および光重合開始剤「イルガキュア184」[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
{二酸化チタン微粒子(T−1)の作製}
特開平5−330825号公報に基づいて、鉄(Fe)をコバルトに変更した以外は同公報と同様にして、二酸化チタン粒子の中にコバルトをドープしたコバルト含有の二酸化チタン微粒子(T−1)を作製した。コバルトのドープ量は、Ti/Co(質量比)で、98.5/1.5となるようにした。作製した二酸化チタン微粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が44m/gであった。
{二酸化チタン微粒子分散液(TL−1)の調製}
上記二酸化チタン微粒子(T−1)100g、下記構造の高分子分散剤(DP−2)20g、およびシクロヘキサノン360gを添加して、粒径0.1mmのジルコニアビーズと共にダイノミルにより分散した。分散温度は35〜40℃で5時間実施した。300nm以上の粒子径が0%の平均径55nmの二酸化チタン微粒子分散液(TL−1)を調製した。
Figure 2005326713
[中屈折率層用塗布液(MLL−1)の調製]
上記の二酸化チタン微粒子分散液(TL−1)88.9質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”[日本化薬(株)製]58.4質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]3.1質量部、光増感剤「カヤキュアーDETX」[日本化薬(株)製]1.1質量部、メチルエチルケトン482.4質量部、およびシクロヘキサノン1869.8質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液(MLL−1)を調製した。
[高屈折率層用塗布液(HLL−1)の調製]
上記の二酸化チタン分散液(TL−1)586.8質量部に、“DPHA”47.9質量部、「イルガキュア907」4.0質量部、「カヤキュアーDETX」1.3質量部、メチルエチルケトン455.8質量部、およびシクロヘキサノン1427.8質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液(HLL−1)を調製した。
[低屈折率層用塗布液(LLL−1)の調製]
“DPHA”1.4質量部、下記構造のフッ素系ポリマー(PF−1)5.6質量部、中空シリカ(平均粒径40nm、シェル層厚7nm、屈折率1.31、18質量%イソプロパノール分散物)20.0質量部、反応性シリコーン“RMS−033”(Gelest社製)0.7質量部、下記内容のゾル液a 6.2質量部、および「イルガキュア907」0.2質量部をメチルエチルケトン315.9質量部に投入して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LLL−1)を調製した。
Figure 2005326713
[ゾル液aの調製]
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM−5103”[信越化学工業(株)製]100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加えて混合し、さらにイオン交換水30部を加えて60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却してゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。またガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
[反射防止膜(AF−1)の作製]
前記のロール形態の各セルロースアシレートフィルム(CA−1)、(CA−2)、(CAR−1)および(CAR−2)の上に、前記ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、リバースグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層(HC−1)を形成した。得られたハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液(MLL−1)、高屈折率層用塗布液(HLL−1)及び低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、3つの塗布ステーションを有するリバースグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、180W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの照射量とした。硬化後の中屈折率層(ML−1)は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
高屈折率層の乾燥条件はいずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの照射量とした。硬化後の高屈折率層(HL−1)は屈折率1.905、膜厚107nmであった。
低屈折率層の乾燥条件は、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm、照射量900mJ/cmの紫外線を照射した。硬化後の低屈折率層(LL−1)は屈折率1.43、膜厚100nmであった。
以上の様にして、セルローストリアセテートフィルムの一方の表面上に反射防止膜(AF−1)を作製した。
[反射防止膜の特性の評価]
得られた反射防止膜塗設セルローストリアセテートフィルムの試料について、以下の内容の評価を行い、その結果を表3に記載した。
(動摩擦係数)
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は、試料を25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、“HEIDON−14”動摩擦測定機[新東科学(株)製]により、5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/分にて測定した値を用いた。
(密着性の評価)
試料を温度25℃、湿度60%RHの条件で2時間調湿した。各試料の反射防止膜を有する側の表面を、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形の升目を刻み、その升目が刻まれた箇所について、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ“NO.31B”を用いて密着試験を繰り返し3回行った。剥がれの有無を目視で観察し、下記の4段階評価を行った。
◎:100升において剥がれが全く認められなかったもの。
○:100升において剥がれが認められたものが2升以内のもの。
△:100升において剥がれが認められたものが10〜3升のもの。
×:100升において剥がれが認められたものが10升をこえたもの。
(鉛筆硬度評価)
各試料を、温度25℃、湿度60%RHの条件で2時間調湿した後、JIS S−6006が規定する3Hの試験用鉛筆を用い1kgの荷重をかけて、反射防止膜側の表面を5箇所について試験し、下記の基準で目視評価した。
○:全ての箇所において傷が全く認められない。
△:傷が1または2つ。
×:傷が3つ以上。
(鏡面反射率および色味の均一性)
試料を、環境条件I(温度25℃、10%RH)と環境条件II(温度25℃、80%RH)の各環境下に2時間放置後に下記の方法で測定、評価した。
分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、各試料の入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の5゜入射光に対する正反射光の色味を表わすCIE1976L色空間のL値、a値、b値を算出し、この中からa値、b値を用いて反射光の色味を評価した。
試料は長さ方向に1mを試料とし、測定点はロール形態の長さおよび幅方向の中央、並びに両端の各3点を測定した。試料は、塗工ロールの先端部、中央部、および終端部を用いた。各値は上記の測定点の中央値とし、変動幅は最大値と最小値との差を中央値で除した計算値を%表示した。上記の環境条件I並びに環境条件IIで、下記の3段階評価を行った。
○:環境条件I並びに環境条件IIでともに変化率が10%以下
△:環境条件I或は環境条件IIの何れかで変化率が10%を越える乃至20%未満
×:環境条件I或は環境条件IIの何れかで変化率が21%以上
(耐候性の評価)
サンシャインウエザーメーター[“S−80”スガ試験機(株)製]を用い、湿度50%RHで、露光時間200時間の各水準の耐候性試験を行った。
耐候性試験後の各試料について、前記と同様にして鏡面反射率および反射スペクトルを測定し、波長380nm〜780nmの波長領域におけるCIE色度図反射光の色味を計算して、上記耐候性試験前の試料の鏡面反射率および色味と比較することにより、耐候性試験前後の鏡面反射率の変化および色味の変化を求めた。色味の変化については、CIE1976L色空間における耐候性試験前後でのΔL,Δa,Δbを測定し、前記数式(26)に従って、耐候性試験前後でのΔEを求め、下記の4段階評価を行った。
(反射光の色味変化ΔE
◎:ΔEが5以下、
○:ΔEが5〜10、
△:ΔEが10〜15、
×:ΔEが15以上
(表面エネルギー)
表面の耐汚染性(指紋付着性)の指標として、各試料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、前記記載の接触角法により測定した。
(スチールウール耐摩耗性)
各試料を、#0000のスチールウールに500g/cmの荷重をかけ、60往復したときの傷の状態を観察して、以下の3段階で評価した。
A:傷が全く付かない。
B:少し傷が付くが見えにくい。
C:顕著に傷が付く。
Figure 2005326713
本発明に係るセルロースアシレートフィルム(CA)および比較用のセルロースアシレートフィルム(CAR)の上に、本発明に用いる上記の反射防止膜(AF−1)を設けた各試料について、その反射防止膜としの性能は、いずれも低反射率、膜の力学特性、色味の均一性および耐候性ともに優れていた。
[反射防止膜塗設保護膜背面の表面処理]
前記の反射防止膜(AF−1)が塗設されたセルロースアシレートフィルムの、反射防止膜の設けられていない側のフィルム面上に、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度40℃に昇温した後に、下記に示す組成のアルカリ溶液(S−1)を、ロッドコーターを用いて塗布量12ml/mで塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に15秒滞留させた後に、同じくロッドコーターを用いて純水を3ml/m塗布した。この時のフィルム温度は40℃であった。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥した。
アルカリ溶液(S−1)組成
水酸化カリウム 8.55質量部
水 23.235質量部
イソプロパノール 54.20質量部
界面活性剤 1.0質量部
K−1:C1429O(CHCHO)20
プロピレングリコール 13.0質量部
消泡剤 0.015質量部
「サーフィノールDF110D」:日信化学工業(株)製
得られた各フィルムの鹸化処理表面の、水との接触角は34〜35゜、表面エネルギー62〜63mN/mの範囲であった。
実施例1−1
〔反射防止性偏光板(P−1)の作製〕
[本発明の偏光膜(H−1)および偏光板(P−1)]
数平均重合度1700、膜厚75μmのPVAフィルムを、イオン交換水に1分浸漬し、ゴムローラーにて余剰水分を取った後、該PVAフィルムを、ヨウ素1.0g/L、ヨウ化カリウム90.0g/Lの水溶液に、25℃にて50秒間、フィルムが弛まないように浸漬し、ゴムローラーにて余剰水分を取った後、さらにホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの水溶液に、30℃にて90秒間、フィルムが弛まないように浸漬後、ステンレス製のブレードにて余剰水分を除去し、フィルム中の含水率の分布を2質量%以下にした状態で図2の形態のテンター延伸機に導入した。
搬送速度を4m/分として、200m送出し、55℃、95%RH雰囲気下で4.2倍に延伸した後、テンターを延伸方向に対し図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保ち、収縮させながら、45秒で膜面温度が60℃から5℃となるように80℃雰囲気で3分30秒乾燥させた後、テンターから離脱して膜厚18μmの偏光膜(H−1)を得た。
偏光膜作製中の延伸温度湿度の変動は温度が55±0.2℃、湿度が95±1%RHであった。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は32質量%で、乾燥後の含水率は2.5質量%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形および延伸ムラは観察されなかった。
次に、この偏光膜の幅方向から3cm、カッターにて耳きりをした後、PVA[(株)クラレ製“PVA−117H”]3質量%/ヨウ化カリウム4質量%水溶液を接着剤として、該偏光膜の一方の面に、前記反射防止膜(AF−1)塗設フィルムの、反射防止膜の塗設されていない側の鹸化処理されたフィルム面を貼り合わせ、該偏光膜の他方の面に、前記の反射防止膜塗設フィルムの鹸化処理と同様に処理された「フジタックTAC−TD80U」の処理面を各々貼り合わせ、さらに70℃で10分間加熱して有効幅650mm、長さ500mのロール形態の反射防止性偏光板(P−1)を作製した。表面の膜面温度は非接触型温度計“IT−540N”[(株)堀場製作所製]にて測定した。
得られた偏光板(P−1)の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。このロール形態の偏光板(P−1)の550nmにおける透過率および偏光度を10mおきに測定した結果、単板透過率の変動は43.0±0.3%、偏光度は99.92±0.02%であった。単板透過率、偏光度は島津自記分光光度計“UV3100”[(株)島津製作所製]にて測定した。
偏光度は、2枚の偏光板を、吸収軸を一致させて重ねた場合の透過率(%)および吸収軸を直交させて重ねた場合の透過率(%)を求め、前記数式(19)により求めた。単板透過率、偏光度は視感度補正を行った。
さらに図4の如く310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得ることができた。
実施例1−2
[本発明の偏光板(P−2)]
実施例1−1の反射防止性偏光板(P−1)において、保護フィルムであるセルロースアシレートフィルム(CA−1)上に反射防止膜(AF−1)が塗設されたフィルムの代わりに、セルロースアシレートフィルム(CA−2)上に反射防止膜(AF−1)が塗設されたフィルムを用いる以外は実施例1−1と同様にして、本発明の反射防止膜性偏光板(P−2)を作製した。得られた偏光板における保護フィルムと反射防止膜との組み合わせ、並びに得られた偏光板の単板透過率および偏光度を表4に示す。
比較例1−1および1−2
[比較用偏光板(PR−1)および(PR−2)]
実施例1−1の反射防止性偏光板(P−1)において、保護フィルムであるセルロースアシレートフィルム(CA−1)上に反射防止膜(AF−1)が塗設されたフィルムの代わりに、セルロースアシレートフィルム(CAR−1)または(CAR−2)上に反射防止膜(AF−1)が塗設されたフィルムを用いる以外は実施例1と同様にして、比較用偏光板(PR−1)または(PR−2)を作製した。得られた偏光板における保護フィルムと反射防止膜の組み合わせ、並びに得られた偏光板の単板透過率および偏光度を表4に示す。
[反射防止性偏光板の耐久性]
得られた各偏光板2枚ずつを、60℃、95%RHの条件下に500時間放置した後、前記のとおり平行透過率および直交透過率を測定して、数式(19)に従って偏光度を求めた。その結果を表4に示す。
本発明の反射防止性偏光板は熱および湿度に対する偏光度の変化が小さく、耐久性が向上している。
Figure 2005326713
更に、実施例1−1及び1−2の偏光板の耐候性を、前記反射防止膜塗設セルローストリアセテートフィルムの耐候性試験と同様にして調べたところ、いずれも良好な(◎)レベルであった。
実施例11−1
〔液晶表示装置〕
[視認側偏光板(SHB−1)]
光学補償層を有する光学補償フィルム「ワイドビューフィルムA 12B」[富士写真フィルム(株)製]の、光学補償層を有する側とは反対側の表面を前記のアルカリ鹸化処理と同様の条件で鹸化処理した。
前記の反射防止性偏光板(P−1)の、反射防止膜(AF−1)塗設保護フィルムとは反対側の保護フィルム(セルローストリアセテートフィルム)の表面を、同様にしてアルカリ鹸化処理した。接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記光学補償フィルムおよび反射防止性偏光板の各鹸化処理したセルロースアシレートフィルム面同士を貼り合わせた。この様にして、視認側偏光板(SHB−1)を作製した。
[下側偏光板(BHB−1)]
前記の偏光膜(H−1)の両面の保護フィルムとして、前記のセルロースアシレートフィルム(CA−1)を用い、それぞれの片面を前記と同様にアルカリ鹸化処理して、この処理面を偏光膜(H−1)にポリビニル系接着剤を用いて貼り合わせて偏光板を作製した。次にこの偏光板の一方の側のセルローストリアセテートフィルム(CA−1)の表面、および光学補償フィルム「ワイドビューフィルムA 12B」の光学補償層を有する側とは反対側の表面を、同様にアルカリ鹸化処理した。接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、各鹸化処理した面同士を貼り合わせた。この様にして、下側偏光板(BHB−1)を作製した。
[TNモード液晶表示装置]
TNモードで20インチの液晶表示装置“TH−20TA3”型[松下電器(株)製]に設けられている視認側の偏光板の代わりに、本発明の視認側偏光板(SHB−1)の光学異方性層が液晶セル側となるようにアクリル系粘着剤を介して、観察者側に1枚貼り付けた。またバックライト側には、光学異方性層側が液晶セル側となるように粘着剤を介して上記の下側偏光板(BHB−1)を貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
実施例11−2および比較例11−1〜11−2
実施例11−1において、視認側偏光板用の偏光板として反射防止性偏光板(P−1)を用いる代わりに、反射防止性偏光板(P−2)、(PR−1)または(PR−2)を用いる以外は実施例11−1と同様にして視認側偏光板(SHB−2)、(SHB−R1)または(SHB−R2)を作製し、以下、これらの視認側偏光板(SHB−2)、(SHB−R1)および(SHB−R2)のいずれかを用いる以外は実施例11−1と同様にして、TNモード液晶表示装置を作製した。
これらの液晶表示装置に用いられた各偏光板の構成を表5に示す。
Figure 2005326713
[液晶表示装置の描画性能]
上記の各液晶表示装置について、以下の内容の画像描画性を評価した。その結果を表6に示す。
(描画画像のムラ評価)
測定機(“EZ−Contrast 160D”ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の描画ムラを目視で観察した。
○:全く発生しない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)。
△:弱く発生する(10人が評価し、1〜5人が認識するレベル)。
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)。
(外光の写り込み評価)
外光の映り込みの評価を、蛍光灯を用いて行い、目視にて下記4段階評価を行った。
◎:映り込みの変化はあるが全く気にならない。
○:映り込みの変化はあるが殆ど気にならない。
△:映り込みの変化は気になるが、許容できる。
×:映り込みの変化が気になる。
(黒表示の光漏れ)
液晶表示装置正面からの方位方向45゜、極角方向70゜における黒表示の光漏れ率を測定し、下記の基準に従って評価した。
○:光漏れ率が0.1%を越えない。
△:光漏れ率が0.4%以下、0.1以上の範囲。
×:光漏れ率が0.4%を越える。
(黒表示の色味評価)
液晶表示装置について、測定機(“EZ−Contrast 160D”ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)時の色味変化を目視で観察した。
◎:全く認められない(10人が評価し、1人も認識できないレベル)。
○:僅かに認められる(10人が評価し、1〜2人が認識するレベル)。
△:弱く認められる(10人が評価し、3〜5人が認識するレベル)。
×:強く発生する(10人が評価し、6人以上が認識するレベル)。
(コントラスト、および視野角)
液晶表示装置の液晶セルに、白表示電圧2V、黒表示電圧6Vを印加し、測定機(“EZ−Contrast 160D”ELDIM社製)を用いて、コントラスト比および左右方向(セルのラビング方向と直交方向)の視野角(コントラスト比が10以上となる角度範囲の広さ)を調べた。
◎:全く気にならない
○:変化はあるが殆ど気にならない
△:変化は気になるが、許容できる
×:変化が気になる
(色味変化)
(コントラスト、視野角)の評価方法と同様の装置を用いて、15℃、30%RH環境と、25℃、80%RH環境における、視野角が正面から60゜の範囲内における色調の変化の度合いを目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:全く気にならない。
○:変化はあるが殆ど気にならない。
△:変化は気になるが、許容できる。
×:変化が気になる。
Figure 2005326713
本発明の実施例11−1の液晶表示装置は、高輝度の外光の写り込みが無く表示画像の描画性のいずれもが鮮明で良好であり、保護フィルムとしての耐久性も良好であった。実施例11−2の液晶表示装置は、実施例11−1の液晶表示装置よりも光漏れが減少しさらに良好となった。比較例11−1および比較例11−2の液晶表示装置は、光漏れと色味の湿度依存性が劣化した。
以上の様に、本発明の液晶表示装置のみが環境が変わっても明るい鮮明な表示画像を描画できる良好なものであった。
実施例2−1〜2−6
[保護フィルム(CA−3)〜(CA−8)の作製]
実施例1のセルロースアシレートフィルム溶液(A−1)において、レターデーション調整剤(RC−1)および(RC−2)の代わりに、下記表7に記載の化合物を用い、さらに波長分散調整剤として下記表7に記載の化合物を用いる以外は、実施例1と同様にしてセルロースアシレートフィルム溶液(A−3)〜(A−8)を調製し、これらのセルロースアシレートフィルム溶液(A−3)〜(A−8)を用いて、保護フィルムであるセルロースアシレートフィルム(CA−3)〜(CA−8)を作製した。使用したレターデーション調整剤および波長分散調整剤の種類を表7に、得られた保護フィルム(CA−3)〜(CA−8)のレターデーション、および透湿度を表8に示す。
Figure 2005326713
Figure 2005326713
各セルロースアシレートフィルム(CA−3)〜(CA−8)のレターデーションの湿度依存性はいずれも小さく、透湿度も良好であった。
次にこれらの保護フィルムを用いて、実施例1−1および実施例11−1と同様にして、反射防止性偏光板(P−3)〜(P−8)および視認側偏光板(SHB−3)〜(SHB−8)を作製した。これら視認側偏光板の組み合わせおよびを表9に示す。
Figure 2005326713
得られた反射防止性偏光板(P−3)〜(P−8)および視認側偏光板(SHB−3)〜(SHB−8)について、実施例1−1および実施例11−1と同様に性能試験を行ったところ、いずれも反射防止性偏光板(P−1)および視認側偏光板(SHB−1)と同等以上の性能を示し、本発明の適切な範囲内であった。
実施例12−1〜12−6
次にこれらの視認側偏光板(SHB−3)〜(SHB−8)を用い、また下側偏光板には(BHB−1)を用いて、以下実施例11−1と同様にして液晶表示装置に付設した。
得られた偏光板および表示装置の特性を、実施例11−1と同様にして評価した。その結果は、いずれも実施例11−1と同等以上の良好な性能を示した。
実施例3−1〜3−3
実施例1−1において、反射防止性偏光板(P−1)の反射防止膜の低屈折率層(LL−1)の代わりに、下記内容の低屈折率層を用いた他は、実施例1−1と同様にして反射防止性偏光板(P−2)〜(P−3)を作製した。
〔反射防止膜(AF)の作製〕
[ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製]
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[“DPHA”日本化薬(株)製]315.0gに、シリカ微粒子のメチルエチルケトン分散液[“MEK−ST”、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製]450.0g、メチルエチルケトン15.0g、シクロヘキサノン220.0g、光重合開始剤「イルガキュア907」[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]16.0g、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−2)を調製した。
{二酸化チタン微粒子(T−2)の作製}
特開平5−330825号公報に基づいて、鉄(Fe)をジルコニウムに変更した以外は同公報と同様にして、二酸化チタン粒子の中にジルコニウムをドープしたジルコニウム含有の二酸化チタン微粒子(T−2)を作製した。ジルコニウムのドープ量は、Ti/Zr(質量比)で、97.5/2.5となるようにした。作製した二酸化チタン微粒子は、ルチル型の結晶構造が認められ、1次粒子の平均粒子サイズが40nm、比表面積が39m/gであった。
{二酸化チタン微粒子分散液(TL−2)の調製}
上記二酸化チタン微粒子(T−2)100g、下記の分散剤(DP−3)18g、およびシクロヘキサノン303gを添加して、粒径0.1mmのジルコニアビーズ用いてダイノミルにより分散した。分散温度は40〜45℃で6時間分散して二酸化チタン微粒子分散液(TL−2)を調製した。得られた分散液の分散粒子の平均径は55nmで、300nm以上の粒子は0%であった。
Figure 2005326713
{複合酸化物微粒子分散液(TL−3)の調製}
コバルトイオンドープ(ドープ量4質量%)のTiおよびTaからなる複合酸化物[Ti/(Ti+Ta)=0.8モル比]微粒子(T−3)92g、下記構造のシリル化合物31g、およびシクロヘキサノ337gの混合物を、サンドミル(1/4Gのサンドミル)にて6時間微細分散した。分散メディアとして、粒径0.2mmのジルコニアビーズを1400g用いた。ここに1モル/L塩酸0.1gを添加して窒素雰囲気下で80℃に昇温し、更に4時間攪拌した。得られた分散液の表面処理したドープ複合酸化物微粒子の粒径は60nm、300nm以上の粒子は0%であった。
Figure 2005326713
{複合酸化物微粒子分散液(TL−4)の調製}
チタン、ビスマスおよびジルコニウムからなる複合酸化物[Bi/(Bi+Ti+Zr)=0.08モル比、Zr/(Bi+Ti+Zr)=0.05モル比]微粒子(T−4)100gに、下記分散剤(DP−4)25g、およびシクロヘキサノン375gを添加して、粒径0.1mmのジルコニアビーズを用いてダイノミルにより分散した。分散温度は40〜45℃で6時間分散して複合酸化物微粒子分散液を調製した。得られた分散液の分散粒子の平均径は75nmで、300nm以上の粒子は0%であった。
Figure 2005326713
[中屈折率層用塗布液(MLL−2)〜(MLL−4)および高屈折率層用塗布液(HLL−2)〜(HLL−4)の調整]
実施例1において、中屈折率層用塗布液(MLL−1)および高屈折率層用塗布液(HLL−1)中に二酸化チタン微粒子分散物(TL−1)を用いる代わりに、上記の二酸化チタン微粒子分散液(TL−2)および複合酸化物微粒子分散液(TL−3)〜(TL−4)のいずれかを用いた以外は実施例1と同様にして、それぞれの塗布液を調製した。
[低屈折率層用塗布液(LLL−2)の調製]
屈折率1.42の熱架橋性フッ素系ポリマー[“JTA113”、固形分濃度6%、JSR(株)製]130質量部、シリカゾル[シリカ、“MEK−ST”、平均粒径15nm、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製]5質量部、中空シリカ[“CS60−IPA”、平均粒径60nm、シェル層厚10nm、屈折率1.31、イソプロパノール20質量%分散液、触媒化成(株)製]15質量部、前記のゾル液a6質量部、メチルエチルケトン50質量部、およびシクロヘキサノン60質量部を添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LLL−2)を調製した。
[低屈折率層用塗布液(LLL−3)の調製]
屈折率1.42の熱架橋性フッ素系ポリマー[“JTA113”、固形分濃度6%、JSR(株)製]150質量部、“DPHA”3.5質量部、シリカゾル“MEK−ST”5質量部、中空シリカ“CS60−IPA”15質量部、上記のゾル液a6質量部、反応性シリコーン“X22−164C”3質量部、メチルエチルケトン50質量部、およびシクロヘキサノン60質量部を添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(LLL−3)を調製した。
[反射防止膜(AF−2)〜(AF−4)の作製]
保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルム(CA−2)を用い、その上に、実施例1−1と同様にして、前記のハードコート層塗布液、中屈折率層塗布液、高屈折率層用塗布液、および低屈折率層塗布液を順次塗設して、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層から構成される反射防止膜(AF−2)〜(AF−4)を作製した。得られた反射防止膜における各層の組み合わせを、前記実施例1における反射防止膜(AF−1)の各層の組み合わせと共に、表10に示す。
Figure 2005326713
〔反射防止性偏光板(P−9)の作製〕
[本発明の偏光膜(H−2)の作製]
数平均重合度2400、膜厚75μmのPVAフィルムを、40℃のイオン交換水にて1分間浸漬し、ゴムローラーにて余剰水分を取ったのち、ヨウ素1.0g/L、ヨウ化カリウム80.0g/Lの水溶液に25℃にて55秒、フィルムが弛まないように浸漬し、さらにホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの水溶液に30℃にて90秒、フィルムが弛まないように浸漬後、ステンレス製ブレードにて余剰水分を除去し、フィルム中の含水率の分布を2質量%以下にした状態で、図3の形態のテンター延伸機に導入した。
搬送速度を15m/分として、500m送出し、60℃、95%RH雰囲気下で4.5倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し図3の如く屈曲させ、以降幅を一定に保ち、収縮させながら、30秒で膜面温度が60℃から65℃となるように80℃雰囲気で3分30秒乾燥させた後、テンターから離脱して偏光膜(H−2)を作製した。
偏光膜作成中の延伸温度湿度の変動は温度が60±0.1℃、湿度が95%±0.5%であった。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は33質量%で、乾燥後の含水率は2.2質量%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、47゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形および延伸ムラは観察されなかった。
[反射防止性偏光板(P−9)の作製]
得られた偏光膜(H−2)と反射防止膜(AF−2)を用いて、同様にして反射防止性偏光板(P−9)を作製した。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。このロール形態の偏光板の550nmにおける透過率および偏光度を10mおきに測定した結果、単板透過率の変動は43.2±0.1%、偏光度は99.97±0.01%であった。また反射防止膜の表面エネルギーは21mN/m、動摩擦係数は0.12であった。
さらに得られた偏光板を、図4の如く310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得ることができた。
[反射防止性偏光板(P−10)および(P−11)の作製]
上記反射防止性偏光板(P−9)の作製において、反射防止膜(AF−2)を用いる代わりに、反射防止膜(AF−3)または(AF−4)を用いる以外は同様にして、反射防止性偏光板(P−10)および(P−11)を作製した。得られた偏光板の偏光膜と反射防止膜の組み合わせ、並びに表面エネルギー、動摩擦係数、単板透過率および偏光度の値を表11に示す。
Figure 2005326713
実施例13−1〜13−3
〔液晶表示装置〕
[視認側偏光板(SHB−9)〜(SHB−11)]
実施例11−1の視認側偏光板(SHB−1)における反射防止性偏光板(P−1)の代わりに、上記の各反射防止性偏光板(P−9)〜(P−11)を用いた以外は、実施例11−1と同様にして視認側偏光板(SHB−9)〜(SHB−11)を作製した。
[OCBモード液晶表示装置]
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた2枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップに、Δnが0.1396の液晶性化合物(“ZLI1132”メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。作製したベンド配向セルを挟むように、視認側偏光板(SHB−9)〜(SHB−11)のいずれかを、光学補償フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、セルの視認側に貼り付けた。またバックライト側には、光学異方性層側が液晶セル側となるように粘着剤を介して下側偏光板(BHB−1)を貼り付けた。視認側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。液晶表示装置に用いた各種偏光板の組み合わせを表12に示す。
Figure 2005326713
実施例13−1〜13−3の液晶表示装置について、実施例11−1の液晶表示装置と同様にして各性能を調べた。これらの液晶表示装置はいずれも、実施例11−1の液晶表示装置と同等の良好な性能を示した。
実施例4
〔保護フィルム(CA−9)の作製〕
[微粒子分散物(RL−2)の調製]
下記の組成からなる混合物およびビーズ径0.2mmのジルコニアビーズを、ダイノミル分散機で投入し湿式分散して体積平均粒径55nmになるよう分散を行った。得られた分散物を200メッシュのナイロン布でビーズを分離して、微粒子分散物(RL−2)を調製した。得られた分散物の分散粒子径は、走査型電子顕微鏡で測定し、またレーザー解析・散乱粒子径分布測定装置“LA−920”[(株)堀場製作所製]を用いて分散物の粒度分布を測定したところ、粒径300nm以上の粒子は0%であった。
微粒子分散物(RL−2)の組成
疎水性シリカ 2.2質量部
商品名“AEROSIL (R)972”
メチル基変性体、一次粒径16nm:日本アエロジル(株)
セルローストリアセテート 2.0質量部
置換度2.78(6位置換度0.90)
下記構造の分散剤(DP−1) 0.22質量部
酢酸メチル 71.0質量部
メタノール 6.2質量部
アセトン 6.1質量部
1−ブタノール 6.1質量部
Figure 2005326713
[セルロースアシレート溶液(A−9)の調製]
下記の組成からなる混合物を攪拌溶解して、セルロースアシレート溶液(A−9)を調製した。
セルロースアシレート溶液(A−9)組成
セルロースアセテートプロピオネート 100質量部
置換度2.70(アセテート/プロピオネート比1/0.4)
下記のレターデーション調整剤RC−12 10.0質量部
(logP1.9)
下記のレターデーション調整剤RC−13 6.0質量部
(logP6.21)
波長分散調整剤U−1 0.6質量部
波長分散調整剤U−2 0.6質量部
酢酸メチル 290質量部
メタノール 25質量部
アセトン 25質量部
エタノール 25質量部
1−ブタノール 25質量部
Figure 2005326713
Figure 2005326713
(ドープの調製)
セルロースアシレート溶液(A−9)474質量部に、微粒子分散物(RL−2)15.3質量部を添加して充分に攪拌した後、更に室温(25℃)にて3時間放置し、得られた不均一なゲル状溶液を、−70℃にて6時間冷却した後、50℃に加温・攪拌して完全に溶解したドープを得た。
次に得られたドープを、50℃で絶対濾過精度0.01mmの濾紙“#63”[東洋濾紙(株)製]により濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙“FH025”(ポール社製)にてフィルター濾過および脱泡を行ってドープを調製した。
(溶液流延方法)
上記のようにして得られたドープを、ドラム上に流延して、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜した。ドラムはハードクロム鍍金を施し、その表面が、中心線平均粗さ(Ra)が0.010μm、最大高さ(Ry)が0.60μmであり、また十点平均粗さ(Rz)は0.016μmとした、直径200mm、幅2500mmのものを用いた。
流延方法は、実施例1記載のバンド流延と同様の条件で行った。ドラム面上での膜面温度が40℃となってから1分間乾燥し、残留溶媒量が50質量%のフィルムを剥ぎ取った後、140℃の乾燥風で、残留溶媒量が40質量%のフィルムを、テンターを用いて幅方向に17%延伸し、延伸後の幅のまま130℃で30秒間保持した。この後、130℃の乾燥風で20分間乾燥し、残留溶媒量が0.25質量%のセルロースアシレートフィルム(保護フィルム)(CA−9)を、厚さ60μm、長さ1000m、幅1.34mの巻きロール形態で製造した。膜厚の変動幅は±2.4%であった。幅方向のカール値は−0.2/m、ヘイズ0.28%であった。
保護フィルム(CA−9)のその他の特性を表13に示す。
Figure 2005326713
表13に示されるごとく、得られたセルロースアシレートフィルム(CA−9)のレターデーションの湿度依存性および波長分散性は小さく、且つ透湿度も適切な範囲であり良好なものであった。
〔反射防止膜(AF−5)の作製〕
上記のセルロースアシレートフィルム(CA−9)上に、“ペルノックスC−4456−S7”[ATOを分散したハードコート剤(固形分45質量%):日本ペルノックス(株)製]を塗布、乾燥後、紫外線を照射して硬化し、厚み1μmの導電性層(ECL)を形成した。このフィルムの表面抵抗は10Ω/□オーダーの導電性であった。
なお表面抵抗率は、試料を(25℃/65%RH)の条件下に1時間放置した後、同条件下で三菱化学(株)製 抵抗率計“MCP−HT260”を用いて測定した。
このフィルム上に下記のようにしての反射防止膜(AF−5)を作製した。
{防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−3)}
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“PETA”[日本火薬(株)製]50質量部、硬化開始剤「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2質量部、第1の透光性微粒子としてアクリル−スチレンビーズ[綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.55]5質量部、第2の透光性微粒子としてスチレンビーズ[綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60]5.2質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”[信越化学工業(株)製]10質量部、および下記のフッ素系ポリマー(PF−2)0.03質量部をトルエン50質量部と混合して塗布液として調製し、これをロール形態から巻き出された上記の導電層(ECL)付きセルロースアシレートフィルムの上に、乾燥膜厚6.0μmになるように塗布し、溶媒乾燥後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ防眩性ハードコート層(屈折率1.52)(HC−3)を作製した。
Figure 2005326713
{低屈折率層(LL−1)の形成}
上記の防眩性層上に、前記低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、マイクログラビアコーターを用いて塗布した。80℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射し、低屈折率層(LL−1)(屈折率1.43、膜厚86nm)を形成した。このようにして、本発明の反射防止膜(AF−5)を作製した。
得られた反射防止膜の平均反射率は2.1%、ヘイズは43%であった。
また機械的特性、耐久性に関わる実施例1記載の性能について、実施例1と同様にして評価した。鮮明性および反射光の色味の均一性は、実施例1の反射防止膜と同等の良好なものであった。
(表面処理)
2.0モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を温度55℃に加温し、この浴中に上記の反射防止膜(AF−5)が塗設されたフィルムを2分間浸漬した後に、充分に水洗して乾燥し、反射防止膜の設けられていない側のセルロースアシレートフィルム面を親水化処理した。
〔光学補償フィルム〕
前記のセルロースアシレートフィルム(CA−9)の片面上に、1.0モル/Lの水酸化カリウム水溶液を#3バーにて塗布し、膜面温度60℃にて10秒間処理した後に水洗、乾燥した。得られたフィルム表面の水との接触角は35゜、表面エネルギー66mN/mであった。
[配向膜の形成]
この表面処理したフィルム上に、下記の組成の配向膜塗布液をロッドコーターで28mL/mの塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
配向膜塗布液
下記変性ポリビニルアルコール 20質量部
クエン酸 0.05質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
Figure 2005326713
(配向膜面のラビング処理)
次に、環境条件(25℃、45%RH)のもとに、フィルムの長手方向に配向膜面に、市販のラビング布を貼り付けたラビングロールで搬送方向に対し平行にラビング処理を実施した。
[光学異方性層の形成]
配向膜上に、下記構造のディスコティック液晶性化合物(DA)41.01質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート“V#360”[大阪有機化学(株)製]4.06質量部、セルロースアセテートブチレート“CAB551−0.2”(イーストマンケミカル社製)0.90質量部、セルロースアセテートブチレート“CAB531−1”(イーストマンケミカル社製)0.23質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」(チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤「カヤキュアーDETX」[日本化薬(株)製]0.45質量部、下記構造のフッ素系界面活性剤0.40質量部を、102質量部のメチルエチルケトンに溶解した溶液を塗布液とし、これを、#3.4のワイヤーバーで塗布した。これを130℃の恒温ゾーンで2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、60℃の雰囲気下で120W/cmの高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、膜厚2.0μmの光学異方性層を形成し、光学補償フィルム(WV−1)を作製した。
Figure 2005326713
フッ素系界面活性剤
17CHCHO(CHCHO)10−H
(表面処理)
得られた光学補償フィルム(WV−1)の、光学異方層が設けられていない側のフィルム表面を、上記反射防止膜塗設フィルムの片面鹸化処理と同様にして鹸化処理した。
〔偏光膜(H−3)および視認側偏光板(SHB−12)〕
数平均重合度が2400、膜厚75μmのPVAフィルムを、40℃のイオン交換水にて60秒間予備膨潤し、ステンレス製のブレードにて表面水分を掻き取ったのち、ヨウ素0.7g/L、ヨウ化カリウム60.0g/L、ホウ酸1g/Lの水溶液に、濃度が一定になるように濃度補正しつつ40℃で55秒浸漬し、さらにホウ酸42.5g/L、ヨウ化カリウム30g/L、C.I.Direct Yellow 44(λmax410nm)0.1g/L、C.I. Direct Blue 1(λmax650nm)0.1g/Lの水溶液に、濃度が一定になるように濃度補正しつつ、PVAフィルムを40℃で90秒浸漬後、フィルムの両面をステンレス製ブレードにて余剰水分を掻き取り、テンター延伸機を用いて、横一軸延伸した。搬送速度を4m/分として、100m送出し、60℃、95%RH雰囲気下で4.12倍まで延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら65℃雰囲気で乾燥させた後、テンターから離脱し偏光膜(H−3)を得た。偏光膜の厚みは17.5μm、含水率は3質量%であった。
このロール形態の偏光膜の550nmにおける透過率および偏光度を10mおきに測定した結果、単板透過率の変動は43.2±0.1%、偏光度は99.97±0.01%であった。
次に、幅方向から3cm、カッターにて耳きりをした後、PVA“PVA−124H”[(株)クラレ製]3質量%水溶液を接着剤として、上記の鹸化処理した反射防止膜(AF−5)塗設セルロースアシレートフィルムの鹸化処理面、および上記の鹸化処理した光学補償フィルム(WV−1)の鹸化処理面とを、それぞれ貼り合わせ、さらに70℃で10分間加熱して有効幅650mm、長さ100mのロール形態の視認側偏光板(SHB−12)を作製した。
以下に、本発明の視認側偏光板(SHB−12)の構成についてまとめる。
Figure 2005326713
実施例14
[下側偏光板(BHB−2)]
前記の偏光膜(H−3)の両面の保護フィルムとして、前記のセルロースアシレートフィルム(CA−9)を用い、それぞれの片面を前記と同様にアルカリ鹸化処理して、この処理面を偏光膜(H−3)にポリビニル系接着剤を用いて貼り合わせて偏光板を作製した。次にこの偏光板の一方の側のセルローストリアセテートフィルム(CA−9)の表面、および上記光学補償フィルム(WV−1)の光学補償層を有しない側の表面を、同様にアルカリ鹸化処理した。接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、各鹸化処理した面同士を貼り合わせた。この様にして、下側偏光板(BHB−2)を作製した。
[液晶表示装置]
IPSモードで20インチの液晶表示装置“W20−lc3000”型[日立製作所(株)製]に設けられている光学フィルムの代わりに、本発明の偏光板(SHB−12)の光学異方性層が液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を介して視認側に1枚貼り付けた。また液晶セルの下側には、本発明の偏光板(BHB−2)を保護フィルムが液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を介して1枚貼り付けた。
以下に、本発明の液晶表示装置に用いられた偏光板の構成についてまとめる。
Figure 2005326713
[液晶表示装置の描画性能]
実施例14の表示装置について、実施例11−1と同様にして描画画像の画像品位を評価した。その結果は、外光の写り込みのない均一性良好な画像で、黒表示での色味、コントラスト、視野角、色味のニュートラル性のいずれも良好な性能を示した。
実施例5
実施例1で作製した反射防止膜(AF−1)付き保護フィルムを、以下の内容でエンボス加工を行い表面に凹凸形状を賦形した。
[表面凹凸形状の形成]
エンボシングカレンダー機[由利ロール(株)製]に、下記内容のエンボス版を装着し、線圧4900N/cm、プレ加熱温度90℃、およびエンボスロール温度160℃の条件にて、前記の反射防止膜(AF−1)付き保護フィルムの片面にプレス操作を行い、防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムを作製した。なおバックアップロールは常温、搬送速度1m/分の条件で行った。
(エンボス版)
熱硬化処理した直径20cm、幅12cmのS45C材芯金ロールを、ケロシン加工液(液中に平均粒径1.5μmのグラファイト粒子を3g/L添加したもの)で、三菱電機(株)製型彫放電加工機“EA8”型を用いて、厚み0.5mmの銅電極にてマイナスのコンデンサー放電加工し、算術平均粗さ(Ra)0.3μm、平均凹凸周期(Sm)25μmのエンボス版を得た。
[表面形状の評価]
得られた防眩性反射防止膜(AF−6)付き保護フィルム表面の形状は、JIS B−0601−1994に基づいて、表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)、最大高さ(Ry)、および表面凹凸の平均間隔(Sm)を、(株)ミツトヨ製二次元粗さ計“SJ−400”型により評価した。但し、Ra、RzおよびRyは、測定長4μm、Smの測定長は20μmとした。表面凹凸の均一性は、(Ra/Rz)の比により算出した。凹凸プロファイルの傾斜角度分布は、“Surface Explore SX−520”システム[菱化システム(株)製、干渉顕微鏡:ニコン(株)製「MM−40/60シリーズ」対物レンズ:二光束干渉対物レンズ、ハロゲンランプ使用、CCDカメラ:640×480]のマイクロマップソフトを用いて測定した値である。測定結果を表16に示す。また得られたフィルムの膜厚の変動幅は±2.4%であった。
Figure 2005326713
得られた防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムについて、以下の内容の性能結果を得た。
[反射防止膜の性能評価]
得られた防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムについて、以下の内容の性能評価を行った。得られた結果を表17に示す。また、耐候試験を行った後の試料は、試験前の性能と変化の無い極めて良好なものであった。
(防眩性)
作製した防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムに、ルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない。
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる。
△:蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる。
×:蛍光灯がほとんどぼけない。
(ギラツキ)
作製した防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムを、133ppi(133pixels/inch)に模したセル上、距離1mmの位置に載せ、ギラツキ(防眩性賦与の反射防止膜の表面凹凸が起因の輝度バラツキ)の程度を、以下の基準で目視評価した。
◎:全く乃至ほとんどギラツキが見られない。
○:わずかにギラツキがある。
△:少しギラツキがある。
×:ギラツキがはっきり認識できる。
(質感)
10cm四方のガラス板の両面に、偏光膜をクロスニコル配置で貼り合せ、さらに片側の偏光膜上に、エンボス面を上にして防眩性賦与の反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムを貼り付けた。100Wの白色電球から2m離した位置でエンボス面を観察し、質感について以下の1〜5のランク付けを行った。
5:反射光の強度が視覚的に均一で、しっとりした質感である。
1:反射光の強度が視覚的にばらついており、ざらざらした質感である。
予めランク5とランク1の両極端を定め、この間のランクは相対評価した。
Figure 2005326713
〔反射防止性偏光板の作製〕
実施例1−1の反射防止膜(AF−1)付き保護フィルムの代わりに、上記の防眩性反射防止膜(AF−6)付き保護フィルムを用いた以外は実施例1−1と同様にして、偏光板(P−13)を作製した。次に視認側偏光板(SHB−13)を実施例11−1と同様にして作製した。
実施例15
〔液晶表示装置〕
実施例11−1において、視認側偏光板(SHB−1)の代わりに視認側偏光板(SHB−13)を用いた以外は、実施例11−1と同様にして液晶表示装置に付設した。以下に、本発明の液晶表示装置に用いられた偏光板の構成についてまとめる。
Figure 2005326713
得られた液晶表示装置について、実施例1と同様にして性能を評価した。その結果は、ギラツキ感のない均一性良好な画像で、黒表示での色味、コントラスト、視野角、色味のニュートラル性、色味の湿度依存性のいずれも良好な性能を示した。
実施例6
実施例4において、導電性層(ECL)が形成されたセルロースアシレートフィルム(CA−9)上に、防眩性ハードコート層(HC−3)を設ける代わりに、下記内容の光散乱層(HC−4)を設ける以外は、実施例4と同様にして視認側偏光板(SHB−14)を作製した。
〔光散乱層(HC−4)の作製〕
光散乱層を構成する透光性樹脂としては、紫外線硬化型樹脂“KAYARAD PET−30”[日本化薬(株)製、屈折率1.51]50質量部を用い、これに硬化開始剤「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2質量部、第1の透光性微粒子としてアクリル−スチレンビーズ[綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.55]5質量部、第2の透光性微粒子としてスチレンビーズ[綜研化学(株)製、粒径3.5μm、屈折率1.60]5.2質量部、シランカップリング剤“KBM−5103”[信越化学工業(株)製]10質量部、および下記のフッ素系ポリマー(PF−3)0.03質量部を加えたものをトルエン50質量部と混合して塗布液として調製し、これをロール形態から巻き出された導電層付きセルロースアシレートフィルム(CA−9)の上に、乾燥膜厚6.0μmになるように塗布し、溶媒乾燥後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ[アイグラフィックス(株)製]を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ光散乱層(HC−4)を作製した。
{低屈折率層(LL−1)の形成}
次いで上記の光散乱層(HC−4)上に、実施例4と同様にして、低屈折率層(LL−1)を形成して、本発明の光散乱性反射防止膜(AF−7)を作製した。
Figure 2005326713
実施例16
実施例14において、視認側偏光板(SHB−12)の代わりに、視認側偏光板(SHB−14)を用いた以外は、実施例14と同様にして、液晶表示装置に付設した。以下に、本発明の液晶表示装置に用いられた偏光板の構成についてまとめる。
Figure 2005326713
得られた液晶表示装置について、実施例11−1と同様にして表示画像の性能を評価した。その実施例と同様にして表示画像の性能を評価した。その結果は、実施例14と同等で良好であった。
実施例17
実施例11−1で作製した片面反射防止膜付き偏光板(P−1)の、反射防止膜が塗設されていない側の保護フィルムにλ/4板を張り合わせ、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、色味がニュートラル性良好な極めて視認性の高い表示が得られた。
本発明における傾斜角度の測定を示す模式図である。 ポリマーフィルムを斜め延伸する、本発明の方法の一例を示す概略平面図である。 ポリマーフィルムを斜め延伸する、本発明の方法の別の一例を示す概略平面図である。 本発明の偏光板を打ち抜く様子を示す概略平面図である。 従来の偏光板を打ち抜く様子を示す概略平面図である。 反射防止膜の製造方法における装置構成の一例を示す模式図である。
符号の説明
A,B,C:基材面に仮定した面積が0.5〜2μmである三角形の頂点。
A’,B’,C’:3点A,B,Cから鉛直上向きに垂線を伸ばし、その3点が防眩性反射防止膜の表面と交わった点。
D−D’:三角形A’B’C’面の法線。
O−O’:基材から鉛直上向きに伸ばした垂線。
φ:法線D’が、垂線O’となす角度。傾斜角度。
(イ)フィルム導入方向
(ロ)次工程へのフィルム搬送方向
(a)フィルムを導入する工程
(b)フィルムを延伸する工程
(c)延伸フィルムを次工程へ送る工程
A1 フィルムの保持手段への噛み込み位置とフィルム延伸の起点位置(実質保持開始点:右)
B1 フィルムの保持手段への噛み込み位置(左)
C1 フィルム延伸の起点位置(実質保持開始点:左)
Cx フィルム離脱位置とフィルム延伸の終点基準位置(実質保持解除点:左)
Ay フィルム延伸の終点基準位置(実質保持解除点:右)
|L1−L2| 左右のフィルム保持手段の行程差
W フィルムの延伸工程終端における実質幅
θ 延伸方向とフィルム進行方向のなす角
11 導入側フィルムの中央線
12 次工程に送られるフィルムの中央線
13 フィルム保持手段の軌跡(左)
14 フィルム保持手段の軌跡(右)
15 導入側フィルム
16 次工程に送られるフィルム
17、17’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点
18、18’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点
21 導入側フィルムの中央線
22 次工程に送られるフィルムの中央線
23 フィルム保持手段の軌跡(左)
24 フィルム保持手段の軌跡(右)
25 導入側フィルム
26 次工程に送られるフィルム
27、27’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点
28、28’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点
71 吸収軸(延伸軸)
72 長手方向
81 吸収軸(延伸軸)
82 長手方向
101 ロールフィルムの送り出し
102 第一の塗布ステーション
103 第一の乾燥ゾーン
104 第一のUV照射機
105 第二の塗布ステーション
106 第二の乾燥ゾーン
107 第二のUV照射機
108 第三の塗布ステーション
109 第三の乾燥ゾーン
110 第三のUV照射機
111 後乾燥ゾーン
112 巻取り

Claims (17)

  1. ポリビニルアルコール系フィルムから形成された偏光膜の両側に、保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが設けられ、且つ一方の側のセルロースアシレートフィルム上に多層構造の反射防止膜が塗設されてなる長尺の偏光板であって、少なくとも反射防止膜が塗設されたセルロースアシレートフィルムの、下記数式(1)および(2)で定義されるReおよびRthが、それぞれ下記数式(3)および(4)を充足することを特徴とする反射防止性偏光板。
    数式(1):Re=(nx−ny)×d
    数式(2):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
    数式(3):Reλ80/Reλ10≧0.65
    数式(4):Rthλ80/Rthλ10≧0.65
    [式中、Reはフィルムの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthはフィルムの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。またnxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。さらにReλ10は、波長λにおける25℃、10%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Reλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλ10は波長λにおける25℃、10%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)、Rthλ80は波長λにおける25℃、80%RHでの膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
  2. セルロースアシレートフィルムが、レターデーション調整剤を、セルロースアシレート固形分100質量部に対して0.01〜30質量部含有する請求項1に記載の長尺の偏光板。
  3. 反射防止膜が、セルロースアシレートフィルムより屈折率の高い高屈折率層少なくとも1層、セルロースアシレートフィルムの屈折率よりも低屈折率の低屈折率層少なくとも1層を順次塗設してなる多層構造の反射防止膜であって、該低屈折率層が、屈折率1.17〜1.37の中空構造の無機微粒子を少なくとも1種含有してなる請求項1または2に記載の長尺の偏光板。
  4. 偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもなく、550nmにおける偏光度が99.0%以上、単板透過率が40.0%以上であり、かつ偏光板の長尺方向の単板透過率のバラツキが±0.3%以内である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  5. 高屈折率層が、コバルト、アルミニウム、およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含む二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する請求項3に記載の長尺の偏光板。
  6. 偏光板の波長450nm〜650nmにおける平均反射率が0.5%以下であり、更に耐候性試験前後の該反射率の変化が0.5%以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  7. 偏光板の耐候性試験前後の反射光の色味変化ΔEが、L色度図上で15以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  8. 反射防止膜の厚さが実質的に均一であり、さらに反射防止膜最表面の算術平均粗さRaが0.02〜1μm、凹凸の平均間隔Smが5〜65μm、且つ算術平均粗さRaに対する十点平均粗さRzの比Rz/Raが10以下である凹凸形状を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の偏光板。
  9. 高屈折率層が平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子少なくとも1種を透光性樹脂に分散してなる光散乱層であり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなる請求項3乃至8のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  10. 保護フィルムとしてのセルロースアシレートフィルムの延伸軸と、偏光膜の延伸軸との角度が10°以上90°未満である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  11. 他方の側のセルロースアシレートフィルム上に光学異方性層を有する光学補償フィルムを設けた請求項1乃至10のいずれか1項に記載の長尺の偏光板。
  12. 連続的に供給される偏光膜用ポリビニルアルコール系フィルムの両端を保持手段により保持し、該保持手段をフィルムの長手方向に進行させつつ張力を付与して延伸することにより偏光膜を製造する請求項1に記載の偏光板の製造方法において、該ポリビニルアルコール系フィルムの一方端の実質的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L1、およびポリビニルアルコール系フィルムの他方端の実質的な保持開始点から保持解除点までの保持手段の軌跡L2と、両保持手段の実質的な保持解除点の距離Wが下記数式(5)を満たし、かつ両保持手段の長手方向の搬送速度の差が1%未満である延伸方法により製造されることを特徴とする長尺の偏光板の製造方法。
    数式(5):|L2−L1|>0.4W
  13. 偏光膜用ポリビニルアルコール系フィルムの延伸に際して、該ポリビニルアルコール系フィルムを、その揮発分含有率を5質量%以上に維持したまま延伸したのち、収縮させながら揮発分含有率を低下させる請求項12に記載の長尺の偏光板の製造方法。
  14. 偏光膜の一方の側に、反射防止膜が塗設されたセルロースアシレートフィルムを連続的に貼り合わせることにより偏光板に反射防止膜を設ける請求項12または13に記載の偏光板の製造方法。
  15. 画像表示面に、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の長尺の偏光板又は請求項12乃至14のいずれか1項に記載の製造方法により製造された長尺の偏光板から打ち抜かれた偏光板が配置されてなることを特徴とする画像表示装置。
  16. 液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板のうち1枚が、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の長尺の偏光板又は請求項12乃至14のいずれか1項に記載の製造方法により製造された長尺の偏光板から打ち抜かれた偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
  17. 画像表示装置が、TN、STN、IPS、VAおよびOCBのいずれかのモードの透過型、反射型または半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする請求項15乃至16のいずれか1項に記載の画像表示装置。
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