JP2005325744A - 燃料処理システムの異常検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃料タンクを含む系内の漏れ検出を短時間で行う。
【解決手段】 燃料タンク10を含む空間に負圧を導入するポンプモジュール30と、負圧を導入した際の燃料タンク10を含む空間における圧力値を検出するタンク内圧センサ14と、検出した圧力値と、物理モデルから求めた理論上の圧力推移における基準圧力とを比較する比較手段と、検出した圧力値が基準圧力よりも大きい場合に、燃料タンク10を含む空間に漏れが生じていると判定する異常判定手段と、を備える。
【選択図】 図8

Description

本発明は、燃料処理システムの異常検出装置に関し、特に、燃料タンクを含む系内の漏れ検出に好適な燃料処理システムの異常検出装置に適用して好適である。
従来、例えば特開2002−138910号公報に開示されているように、蒸発燃料処理システムにパージポンプ(負圧ポンプ)の負圧を導入し、所定時間経過後のタンク内圧の圧力変動を検知して異常を検出するシステムが知られている。
特開2002−138910号公報 特開2002−4959号公報 特開平6−235355号公報
しかしながら、上記公報に記載された方法では、パージポンプで導入した負圧が収束するまでの時間が経過した後でないと、異常検出を行うことはできない。従って、異常検出を実施するまでに一定の時間が必要となり、短時間で異常検出を行うことは困難である。
このため、異常検出の頻度を短くすることができず、異常検出の精度を高めることが難しくなる。また、負圧が収束するまでパージポンプを作動させる必要があり、パージポンプの作動時間が長くなるため、パージポンプの特性が劣化し易くなるという問題が生じる。
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、燃料タンクを含む系内の漏れ検出を短時間で行うことを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料タンクを含む密閉空間に負圧を導入する負圧導入手段と、前記負圧を導入した際の前記密閉空間における圧力値を検出する圧力検出手段と、前記圧力値と、物理モデルから求めた理論上の圧力推移における基準圧力とを比較する比較手段と、前記圧力値が前記基準圧力よりも大きい場合に、前記密閉空間に漏れが生じていると判定する異常判定手段と、を備えたことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記理論上の圧力推移は、所定の漏れ孔が生じている前記密閉空間に前記負圧を導入した場合に、前記密閉空間内で発生する圧力の推移を前記物理モデルから算出したものであることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記比較手段は、前記圧力検出手段で検出した前記圧力値が定常値に達する以前の所定のタイミングで、前記圧力値と前記理論上の圧力推移における前記基準圧力とを比較することを特徴とする。
第4の発明は、第3の発明において、前記比較手段は、所定の時間間隔で前記圧力検出手段で検出した前記圧力値と前記理論上の圧力推移における前記基準圧力との比較を複数回行い、前記異常判定手段は、前記比較手段における複数回の比較の結果、前記圧力値が前記基準圧力よりも大きい場合が所定回数以上である場合に、前記密閉空間に漏れが生じていると判定することを特徴とする。
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれかにおいて、前記物理モデルから前記圧力推移を算出する圧力推移算出手段を備え、前記圧力推移算出手段は、前記燃料タンク内の残留燃料量から求めた前記密閉空間内の容積を用いて前記圧力推移を算出することを特徴とする。
第1の発明によれば、燃料タンクを含む密閉空間内で検出された圧力値と、物理モデルから求めた理論上の圧力推移における基準圧力とを比較するようにしたため、検出された圧力値が定常値に収束する以前に異常判定を行うことが可能となる。従って、短時間で燃料処理システムにおける異常検出を行うことが可能となる。
第2の発明によれば、所定の漏れ孔が生じている密閉空間に負圧を導入した場合に密閉空間内で発生する圧力推移を物理モデルから算出しておくことで、密閉空間内で検出した圧力値が圧力推移における基準圧力よりも大きい場合は、密閉空間に所定の漏れ孔以上の漏れが生じていると判定することができる。
第3の発明によれば、密閉空間内で検出した圧力値が定常値に達する以前の所定のタイミングで、検出した圧力値と物理モデルの圧力推移における基準圧力とを比較するため、短時間で異常判定を行うことができる。
第4の発明によれば、比較手段における複数回の比較の結果に基づいて異常判定を行うため、燃料処理システムにおける異常検出の精度を高めることが可能となる。
第5の発明によれば、燃料タンク内の残留燃料量から求めた密閉空間内の容積を用いて物理モデルにおける圧力推移を算出するため、密閉空間内の容積に応じた圧力推移を算出することができる。
以下、図面に基づいてこの発明の一実施形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための模式図である。本実施形態のシステムは、燃料タンク10を備えている。燃料タンク10の内部には、その中に貯蔵されている燃料の液面に応じた出力を発する燃料計12が設けられている。燃料計12によれば、残留燃料の量、ひいては、燃料タンク10内の空間容積を検知することができる。
燃料タンク10には、また、タンク内圧センサ14、燃料温度センサ16、タンク温度センサ17が設けられている。タンク内圧センサ14は、燃料タンク10内部の圧力、つまり、タンク内圧PTankに応じた出力を発するセンサである。また、燃料温度センサ16は、燃料タンク内の燃料の温度Tを検出するセンサであり、タンク温度センサ17は燃料系システム内の温度Ttankを検出するセンサである。
燃料タンク10には、ベーパ通路18を介してキャニスタ20が連通している。キャニスタ20の内部には、活性炭22が充填されている。キャスタ20は、その活性炭22により、燃料タンク10から流入してくる蒸発燃料(燃料ベーパ)を吸着することができる。
キャニスタ20には、また、パージ通路24およびパージVSV(Vacuum Switching Valve)26を介して内燃機関の吸気通路(不図示)が連通している。内燃機関の運転中にパージVSV26を開くと、キャニスタ20に吸気負圧が導かれ、その内部に吸着されている蒸発燃料を空気とともに脱離させ、キャニスタ20をパージすることができる。
キャニスタ20には、更に、ポンプモジュール30が連通している。ポンプモジュール30は、より具体的には、活性炭22を挟んでベーパ通路18やパージ通路24と反対側においてキャニスタ20に連通している。ポンプモジュール30は、大気通路32を介して大気に開放されている。尚、ポンプモジュール30の構成については、後に図2を参照して詳細に説明する。
本実施形態のシステムは、ECU50(Electronic Control Unit)を備えている。ECU50には、燃料計12、タンク内圧センサ14、燃料温度センサ16など、種々のセンサの出力が供給されている。また、ECU50には、パージVSV26やポンプモジュール30などが電気的に接続されている。ECU50は、それらのセンサ出力に基づき、各種のアクチュエータを駆動することにより、本実施形態のシステムを制御することができる。
図2は、ポンプモジュール30の構成を詳細に説明するための図である。図2に示すように、ポンプモジュール30は、キャニスタ20に通じる切換弁34を備えている。切換弁34には、ポンプ通路36とオリフィス通路38が連通している。ポンプ通路36は、電動ポンプ40を介して大気通路32に連通する通路であり、一方、オリフィス通路38は、オリフィス42を介して大気通路32に連通する通路である。
切換弁34は、キャニスタ20とポンプ通路36とを導通させる負圧導入状態と、オリフィス通路38をポンプ通路36に導通させるリファレンス圧発生状態とを選択的に実現することのできる2位置の電磁弁である。電動ポンプ40は、ポンプ通路36側のガスを大気通路32側へ排出するためのポンプである。また、オリフィス42は、基準径(例えばφ0.5mm)の大きさを有する基準孔である。
ポンプモジュール30によれば、切換弁34をリファレンス圧発生状態として電動ポンプ40を作動させると、オリフィス通路38に負圧を導入することができる。この場合、ポンプ通路36からオリフィス通路38にわたる系内の圧力は、オリフィス42から流入する空気量と、電動ポンプ40により排出される空気量とを均衡させる圧力に収束する。つまり、この場合、ポンプ通路36には、基準孔(φ0.5mm)を有する系から電動ポンプ40により空気を排出した場合に、その系内に収束値として生ずる圧力が発生する。以下、この圧力を「リファレンス圧PREF」と称す。
ポンプモジュール30は、ポンプ通路36の圧力を検出する圧力センサ44を備えている。このため、本実施形態のシステムによれば、切換弁34をリファレンス圧発生状態として電動ポンプ40を作動させることにより、圧力センサ44により、リファレンス圧PREFを検出することができる。
ところで、ポンプ通路36の圧力は、電動ポンプ40が停止しており、かつ、切換弁34がリファレンス圧発生状態とされている場合、或いは、内燃機関が停止している場合には、大気圧に収束する。このため、このような状況下では、圧力センサ44により大気圧Pを検出することができる。
ポンプモジュール30の切換弁34が負圧導入状態である場合は、電動ポンプ40が作動すると、キャニスタ20に負圧が導入される。この際、パージVSV26を閉じておけば、キャニスタ20に導かれた負圧を燃料タンク10に導くことができる。つまり、本実施形態のシステムによれば、パージVSV26を閉じて、かつ、切換弁34を負圧導入状態として電動ポンプ40を作動させれば、燃料タンク10を含む密閉空間に負圧を導入することができる。この際、密閉空間内の圧力は、タンク内圧センサ14、或いは、ポンプモジュール30内の圧力センサ44により検知することができる。
図3は、ポンプモジュール30により燃料タンク10を含む密閉空間に負圧を導いた場合に、タンク内圧センサ14、或いは、ポンプモジュール30内の圧力センサ44により検知されるタンク内圧PTankの推移を示す特性図である。燃料タンク10に負圧が導入されれば、図3に示すように、タンク内圧PTankは時間の経過とともに低下する。タンク内圧PTankは、最終的には、電動ポンプ40の能力に応じた値(以下、収束値PSATと称す)に収束する。収束値PSATは、燃料タンク10を含む系の密閉度が高いほど低い値となり、その系の密閉度が低いほど高い値となる。つまり、タンク内圧PTankの収束値PSATは、燃料タンク10を含む系に漏れが生じている場合は、漏れが生じていない場合に比して高い値となる。
既述したリファレンス圧PREFは、φ0.5mmの基準孔を有する系を電動ポンプ40で負圧化した場合の収束値である。従って、上述した収束値PSATとリファレンス圧PREFとを比較すれば、燃料タンク10を含む系に基準孔よりも大きな漏れ孔が生じているか否かを判断することができる。より具体的には、タンク内圧PTankの収束値PSATがリファレンス圧PREFより低い値に達していれば、燃料タンク10を含む系に基準孔を超える大きさの漏れは生じていないと判断することができ、一方、その収束値PSATがリファレンス圧PREFまで低下しない場合には、燃料タンク10を含む系に基準孔よりも大きな漏れが生じていると判断することができる。
ところで、タンク内圧PTankが収束値PSATに到達するまでには一定の時間が必要であり、収束値PSATに基づいて燃料タンク10を含む系の漏れ判定を行うと、判定のために長時間を要してしまうことがある。
このため、本実施形態のシステムでは、φ0.5mmの基準孔を有する密閉空間を負圧化した場合に発生するクライテリアの圧力推移Pclcを物理式から予め求めておき、クライテリアの圧力推移Pclcと、タンク内圧センサ14、或いは、ポンプモジュール30内の圧力センサ44により検知されるタンク内圧PTankの圧力推移を比較することにより、タンク内圧PTankが収束値PSATに達する以前に漏れ判定を行うようにしている。
図4は、ポンプモジュール30により燃料タンク10を含む密閉空間に負圧を導いた場合にタンク内圧センサ14、或いは、圧力センサ44により検知されるタンク内圧PTankの推移(図4中に破線a及びbで示す)と、物理式から予め求めたクライテリアの圧力推移Pclc(図4中に実線で示す)を示す特性図である。図4において、破線aで示す特性は燃料タンク10を含む系に基準孔よりも小さいリークが生じている場合を示しており、破線bで示す特性は燃料タンク10を含む系に基準孔よりも大きいリークが生じている場合を示している。
図4に示すように、φ0.5mmの基準孔を有する系を負圧化した場合のクライテリアの圧力推移Pclcを物理式から予め求めておくことで、タンク内圧PTankが収束値PSATに到達する以前に漏れ判定を行うことが可能となる。
より具体的には、タンク内圧PTankが収束値PSATに到達する以前の任意の時刻t1において、タンク内圧PTankが物理式から予め求めたクライテリアの圧力Pclcより低い場合(図4の破線aの場合に該当)は、燃料タンク10を含む系に基準孔を超える大きさの漏れは生じていないと判断することができる。一方、時刻t1において、タンク内圧PTankがクライテリアの圧力Pclcまで低下しない場合(図4の破線bの場合に該当)には、燃料タンク10を含む系に基準孔よりも大きな漏れが生じていると判断することができる。
従って、本実施形態のシステムによれば、タンク内圧PTankが収束値PSATに到達するまで燃料タンク10を含む密閉空間に負圧を導く必要がなく、短時間で漏れ判定を行うことが可能となる。また、電動ポンプ40の作動時間を短縮することができるため、作動による電動ポンプ40の特性劣化を最小限に抑えることが可能となる。これにより電動ポンプ40の長寿命化を図ることができる。
次に、クライテリアの圧力推移Pclcを物理式から求める方法について説明する。図5は、燃料タンク10を含む系の流出入のバランスを説明するための模式図である。図5は、燃料タンク10に基準孔(φ0.5mm)に相当するリーク孔45が生じている場合に、電動ポンプ40により燃料タンク10を含む系に負圧を導入した場合を示している。
図6は、図5のモデルにおいて、燃料タンク10を含む系に負圧を導入した場合のクライテリアの圧力推移Pclcを物理式から求める方法を示すフローチャートである。以下、図6に基づいて、物理式から圧力推移Pclcを求める方法を説明する。本フローチャートにおいて、tは時刻を表す係数であり、時間間隔Δt毎にステップS1〜S11の処理が行われる。
先ず、ステップS1では、電動ポンプ40の特性に基づいて、電動ポンプ40から排出される空気の体積流量Qair(t)を算出する。ここで、電動ポンプ40の特性は、以下の(1)式で表すことができる。
Figure 2005325744
(1)式において、Qair(t)は電動ポンプ40からの空気の排出流量[m/s]、PTank(t)はタンク内圧[Pa]、Pは大気圧[Pa]、を示している。最初のルーチン(t=0)では、PTank(0)=Pとして演算を行い、以降のルーチンでは、ステップS10で求めたPTankの値により演算を行う。
電動ポンプ40を作動して燃料タンク10を含む系に負圧を導入した場合、燃料タンク10内の燃料ベーパはキャニスタ20に吸着されるため、電動ポンプ40からは空気のみが排出される。従って、(1)式のポンプ特性からは、電動ポンプ40から排出される空気の体積流量Qair(t)が求められる。
(1)式において、fは所定の関数を示している。より具体的には、ポンプ特性はB,Cを係数として以下の(1)’式で表すことができる。
air(t)=B・(PTank(t)−P)+C・・・・(1)’
ポンプ特性は電動ポンプ40の経年使用等により変化する場合があるため、より正確にクライテリアの圧力推移を求めるためには、漏れ判定の際にポンプ特性を逐次求めることが望ましい。図7は、ポンプ特性70(P−Q特性)を示す特性図である。図7に示すポンプ特性70の傾きは、電動ポンプ40の諸元から決定され既知の値である。一方、ポンプ特性70は、作動電圧の変化等によって、特性70a、特性70bのように変動する場合がある。このため、漏れ判定の際に実際のポンプ特性を求めるためには、ポンプモジュール30の切換弁34をリファレンス圧発生状態に設定してリファレンス圧PREFを求め、このときオリフィス42を通過する流量QREFを求める。これにより、図7に示すように、(PREF,QREF)の点を通る特性としてポンプ特性70を決定することができる。なお、オリフィス42を通過する流量QREFは、以下の(2)式から求めることができる。
Figure 2005325744
(2)式はオリフィス42の両側の圧力比(PREF/P)、オリフィス42の断面積Aと、オリフィスの流量QREFとの関係を関数Φを用いて表した一般的なオリフィスの式である。(2)式において、Tはオリフィス48の上流側の空気温度であって、大気温度を測定することで求まる。また、Rは気体定数、Maは空気の分子量であって、それぞれ既知の値である。また、Pは大気圧である。このように、好適には漏れ判定の際にポンプ特性を逐次求めることが望ましい。
なお、本実施形態では、物理式から求めたクライテリアの圧力Pclcと、タンク内圧センサ14、或いは、圧力センサ44から検出されたタンク内圧PTankを比較するため、リファレンス圧PREFとタンク内圧PTankを比較して漏れ検出を行うことはない。従って、例えばポンプ特性に変動がないものと仮定し、漏れ判定の際にポンプ特性を逐次求める必要がない場合は、リファレンス圧PREFを検出しなくても良い。この場合、ポンプモジュール30に切換弁34、オリフィス通路38、およびオリフィス42を設ける必要がなくなり、ポンプモジュール30を簡素に構成することが可能となる。
図6に戻って、次のステップS2では、ステップS1で求めた体積流量を質量流量換算するため、以下の(3)式により燃料系システム内(燃料タンク10内)の空気の密度を算出する。
Figure 2005325744
ここで、ρair(t)は電動ポンプ40の上流側における空気の密度[kg/m]、Maは空気の分子量[kg/mol]、Rは一般気体定数[J/kg・K]、TTankは燃料系システム内の温度[K]をそれぞれ示している。
次のステップS3では、ステップS1で求めた空気の体積流量Qair(t)と、ステップS2で求めた空気の密度ρair(t)とに基づいて、以下の(4)式から電動ポンプ40から排出される空気のモル流量mair(t)[mol/s]を算出する。
Figure 2005325744
燃料系システム内において燃料ベーパは常に飽和しているものと考えられることから、燃料系システム内における燃料蒸気分圧は燃料の飽和蒸気圧と等しいと仮定できる。従って、次のステップS4では、以下の(5)式から燃料蒸気分圧Pg[Pa]を算出する。
Figure 2005325744
(5)式において、RVPはリード蒸気圧[Pa]、Tは燃料温度[K]、をそれぞれ示している。燃料タンク10内では常に燃料が蒸発し、燃料の蒸気圧は飽和蒸気圧(=燃料蒸気分圧Pg)に達していることから、電動ポンプ40によって燃料系システム内に負圧を導入している間、燃料蒸気分圧Pgの値は一定である。
次のステップS5では、ステップS3で求めた空気のモル流量mair(t)と、ステップS4で算出した燃料蒸気分圧Pgと、タンク内圧PTank(t)とに基づいて、以下の(6)式、(7)式により燃料タンク10を含む系から排出される燃料蒸気量mvap(t)[mol/s]を算出する。上述したように、最初のルーチン(t=0)では、PTank(0)=Pとして演算を行い、以降のルーチンでは、ステップS10で求めたPTankの値により演算を行う。
Figure 2005325744
(6)式、(7)式において、Pa(t)は燃料系システム内における空気の分圧[Pa]を示している。また、(7)式において、Mgは燃料蒸気の分子量[kg/mol]、を示している。
次のステップS6では、以下の(8)式(ノズルの式)を用いて、リーク孔45から流入する空気量mleak(t)[mol/s]を算出する。
Figure 2005325744
(8)式において、Cdは流量係数、Aはリーク孔45の面積[m]、Tは大気温度[K]、κは空気の比熱比、をそれぞれ示している。
次のステップS7では、以下の(9)式を用いて、燃料系システム内における所定時間Δt毎の空気のモル数変化量ΔN(t)[mol]を算出する。
Figure 2005325744
次のステップS8では、ステップS7で求めたモル数変化量ΔN(t)を用いて、以下の(10)式により、時刻t+Δtにおける燃料系システム内の空気のモル数N(t+Δt)[mol]を算出する。
Figure 2005325744
(10)式において、N(t)は、時刻tにおける燃料系システム内の空気のモル数を示している。N(t)の初期値N(0)は、気体の状態方程式から算出することができる。すなわち、気体の状態方程式p・V=N(0)・R・Tにおいて、pを燃料系システム内の空気の分圧、Vを燃料系システムの空間容積、Rを気体定数、Tを燃料系システム内の温度、とすることで初期値N(0)を求めることができる。
次のステップS9では、以下の(11)式で示される状態方程式を用いて、時刻t+Δtにおける燃料系システム内の空気分圧P(t+Δt)[Pa]を算出する。
Figure 2005325744
(11)式において、Vは燃料系システム内の空間容積[m]を示している。
次のステップS10では、以下の(12)式により、ステップS9で求めた空気分圧P(t+Δt)と、燃料蒸気分圧Pgとに基づいて、時刻t+Δtにおける燃料系システム内の圧力(タンク内圧)PTank(t+Δt)を算出する。
Figure 2005325744
次のステップS11では、今回算出したタンク内圧PTank(t+Δt)と前回算出したPTank(t)との差分が所定のしきい値以下であるか否かを判定する。PTank(t)とPTank(t+Δt)との差分が所定のしきい値以下の場合は、タンク内圧PTankが定常状態に達したものと判断し、処理を終了する。一方、PTank(t)とPTank(t+Δt)との差分が所定のしきい値より大きい場合は、ステップS12に進み、t=t+Δtに設定した後、ステップS1以降の処理を引き続き行う。
図6の処理によれば、時間間隔Δt毎にタンク内圧PTankを算出することができる。従って、算出したPTankをプロットすることで、図4に実線で示すようなクライテリアの圧力推移Pclcを求めることができる。求めた圧力推移Pclcは、ECU50に記憶される。
次に、図8のフローチャートに基づいて、物理式から求めたクライテリアの圧力推移Pclcを用いて燃料タンク10を含む系の漏れ判定を行う処理について説明する。先ず、ステップS21では、エンジン停止後、電動ポンプ40を作動し、燃料タンク10を含む系に負圧を導入して、タンク内圧センサ14によるタンク内圧PTankのモニタを開始する。
次のステップS22では、燃料計12から検出される残留燃料量に基づいて、燃料タンク10内の空間容積Vを算出する。次のステップS23では、図6の処理で算出され、ECU50に記憶されているクライテリアの圧力推移Pclcを取得する。
次のステップS24では、任意の時刻t1において、タンク内圧センサ14から検出されたタンク内圧PTankと、クライテリアの圧力推移における圧力Pclcを比較し、PTank≧Pclcであるか否かを判定する。
ステップS24でPTank≧Pclcの場合は、ステップS25へ進み、燃料タンク10を含む系に基準孔以上(φ0.5mm以上)の大きさのリーク孔が生じているものと判定する。一方、ステップS24でPTank<Pclcの場合は、ステップS26へ進み、基準孔以上の大きさのリーク孔は生じていないものと判定する。
以上説明したように実施の形態1によれば、物理式を用いて、燃料タンク10を含む系に負圧を導入した場合のクライテリアの圧力推移Pclcを予め求めておき、漏れ判定の際にはクライテリアの圧力推移Pclcとタンク内圧センサ14で検出されたタンク内圧PTankとを比較するようにしたため、タンク内圧PTankが収束して定常状態に達する以前に漏れ判定を行うことが可能となる。
従って、短時間で燃料タンク10を含む系の漏れ判定を行うことが可能となり、漏れ検出の頻度を高めることが可能となる。また、電動ポンプ40の作動時間を短縮することができるため、電動ポンプ40の劣化を最小限に抑えることができ、電動ポンプ40の長寿命化を図ることができる。更に、短時間で漏れ判定を行うことができるため、漏れ判定の際にキャニスタ20に吸着されてしまう燃料ベーパの量を最小限に抑えることが可能となる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2の基本的な処理は実施の形態1と同様である。実施の形態2では、判定を複数回行うことで、判定精度を向上させたものである。
図9は、実施の形態2における漏れ判定の方法を示す模式図である。図8に示すように、実施の形態2では、例えばΔtの時間間隔で設定された任意の時刻t1〜t4のそれぞれにおいて、クライテリアの圧力推移Pclcとタンク内圧センサ14で検出したタンク内圧PTankとを比較し、この結果に基づいて漏れ判定を行う。これにより、例えば外乱等の要因でタンク内圧PTankの検出値に誤差が含まれた場合であっても、最終的な漏れ判定を正確に行うことができる。
図10は、実施の形態2における処理の手順を示すフローチャートである。先ず、ステップS21では、エンジン停止後、電動ポンプ40を作動し、燃料タンク10を含む系に負圧を導入して、タンク内圧センサ14によってタンク内圧PTankのモニタを開始する。
次のステップS22では、燃料計12から検出される残留燃料量に基づいて、燃料タンク10内の空間容積Vを算出する。次のステップS23では、図6の処理で算出され、ECU50に記憶されているクライテリアの圧力推移Pclcを取得する。
次のステップ24では、総判定回数Ntotalに1を加算する(Ntotal=Ntotal+1)。なお、Ntotalの初期値は0である。
次のステップS25では、任意の時刻t1において、タンク内圧センサ14から検出されたタンク内圧PTankと、クライテリアの圧力推移における圧力Pclcを比較し、PTank≧Pclcであるか否かを判定する。
ステップS25でPTank≧Pclcの場合は、ステップS26へ進み、燃料タンク10を含む系に基準孔以上(φ0.5mm以上)の大きさのリーク孔が生じているものと判定し、リーク有りのカウント数Nleakに1を加算する(Nleak=Nleak+1)。なお、Nleakの初期値は0である。
一方、ステップS25でPTank<Pclcの場合は、ステップS27へ進む。この場合、φ0.5mm以上の大きさのリーク孔は生じていないものと想定されるため、リーク有りのカウントは行わない。
ステップS26、ステップS27の後はステップS28へ進む。ステップS28では、リーク有りのカウント数Nleakが規定回数N1に到達したか否かを判定する。すなわち、ここでは、Nleak≧N1であるか否かを判定する。
ステップS28でNleak≧N1の場合はステップS29へ進み、燃料タンク10を含む系に基準孔以上(φ0.5mm以上)の大きさのリーク孔が生じている旨の最終的な判定を行う。一方、ステップS28でNleak<N1の場合は、ステップS30へ進む。
ステップS30では、総判定回数Ntotalが規定回数N2に到達しているか否かを判定する。すなわち、ここではNtotal<N2であるか否かを判定する。Ntotal<N2の場合は、総判定回数Ntotalが規定回数Nに到達していないため、ステップS31で時刻t1=t1+Δtとして、ステップS25以降の処理を繰り返す。
一方、ステップS30でNtotal≧N2の場合は、ステップS32へ進み、燃料タンク10を含む系に基準孔以上の大きさのリーク孔が生じていない旨の最終的な判定を行う。
図8の処理によれば、リーク有りのカウント数Nleakが規定回数N1に到達した場合に、基準孔以上の大きさのリーク孔が生じている旨の最終的な判定を行うため、外乱等の要因でタンク内圧PTankの値に一時的に誤差が含まれた場合であっても正確な判定を行うことが可能となる。
以上説明したように実施の形態2によれば、物理式から求めたクライテリアの圧力推移Pclcと、タンク内圧センサ12から求めたタンク内圧PTankとに基づく判定を複数回行うようにしたため、外乱等による誤差要因を排除することができ、漏れ判定の精度を高めることが可能となる。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための模式図である。 ポンプモジュールの構成を詳細に説明するための図である。 ポンプモジュールにより燃料タンクを含む密閉空間に負圧を導いた場合に検知されるタンク内圧PTankの推移を示す特性図である。 ポンプモジュールにより燃料タンクを含む密閉空間に負圧を導いた場合に検知されるタンク内圧PTankの推移と、物理式から予め求めたクライテリアの圧力推移Pclcを示す特性図である。 燃料タンクを含む系の流出入のバランスを説明するための模式図である。 燃料タンクを含む系に負圧を導入した場合のクライテリアの圧力推移Pclcを物理式から求める方法を示すフローチャートである。 ポンプ特性(P−Q特性)を示す特性図である。 実施の形態1における漏れ判定の処理の手順を示すフローチャートである。 実施の形態2における漏れ判定の方法を示す模式図である。 実施の形態2における漏れ判定の処理の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
10 燃料タンク
12 燃料計
14 タンク内圧センサ
30 ポンプモジュール
40 ECU

Claims (5)

  1. 燃料タンクを含む密閉空間に負圧を導入する負圧導入手段と、
    前記負圧を導入した際の前記密閉空間における圧力値を検出する圧力検出手段と、
    前記圧力値と、物理モデルから求めた理論上の圧力推移における基準圧力とを比較する比較手段と、
    前記圧力値が前記基準圧力よりも大きい場合に、前記密閉空間に漏れが生じていると判定する異常判定手段と、
    を備えたことを特徴とする燃料処理システムの異常検出装置。
  2. 前記理論上の圧力推移は、所定の漏れ孔が生じている前記密閉空間に前記負圧を導入した場合に、前記密閉空間内で発生する圧力の推移を前記物理モデルから算出したものであることを特徴とする請求項1記載の燃料処理システムの異常検出装置。
  3. 前記比較手段は、前記圧力検出手段で検出した前記圧力値が定常値に達する以前の所定のタイミングで、前記圧力値と前記理論上の圧力推移における前記基準圧力とを比較することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料処理システムの異常検出装置。
  4. 前記比較手段は、所定の時間間隔で前記圧力検出手段で検出した前記圧力値と前記理論上の圧力推移における前記基準圧力との比較を複数回行い、
    前記異常判定手段は、前記比較手段における複数回の比較の結果、前記圧力値が前記基準圧力よりも大きい場合が所定回数以上である場合に、前記密閉空間に漏れが生じていると判定することを特徴とする請求項3記載の燃料処理システムの異常検出装置。
  5. 前記物理モデルから前記圧力推移を算出する圧力推移算出手段を備え、
    前記圧力推移算出手段は、前記燃料タンク内の残留燃料量から求めた前記密閉空間内の容積を用いて前記圧力推移を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料処理システムの異常検出装置。
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