JP2005120946A - 内燃機関の蒸発燃料処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 キャニスタに吸着されている燃料の絶対量を精度良く検知することのできる蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】 燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着し、吸着した蒸発燃料を脱離するキャニスタ20と、キャニスタ20の温度を検出するキャニスタ温度センサ34と、キャニスタ20の温度と、以前に求めたキャニスタ20の蒸発燃料吸着量とに基づいて、蒸発燃料を吸着又は脱離させた際のキャニスタ20の蒸発燃料吸着量を推定する吸着量推定手段と、を備える。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着し、吸着した蒸発燃料を脱離するキャニスタ20と、キャニスタ20の温度を検出するキャニスタ温度センサ34と、キャニスタ20の温度と、以前に求めたキャニスタ20の蒸発燃料吸着量とに基づいて、蒸発燃料を吸着又は脱離させた際のキャニスタ20の蒸発燃料吸着量を推定する吸着量推定手段と、を備える。
【選択図】 図1
Description
本発明は、内燃機関の蒸発燃料処理装置に関し、特に、燃料タンク内で生じた蒸発燃料の処理装置に適用して好適である。
従来、例えば特開平6−93932号公報に開示されるように、燃料タンク内で発生する蒸発燃料(燃料ベーパ)をキャニスタに吸着することで、その燃料ベーパが大気に放出されるのを防止する蒸発燃料処理装置が知られている。従来の蒸発燃料処理装置は、内燃機関の運転中に、キャニスタに吸気負圧を導入して、キャニスタに吸着されている燃料を、空気と共に吸気通路にパージさせる機能を有している。また、従来の蒸発燃料処理装置は、キャニスタ内の燃料をパージする際に、そのパージ分が相殺されるように、燃料噴射量を補正する機能を有している。
ところで、キャニスタ内の燃料を吸気通路にパージする際に、精度良く燃料噴射量を補正するためには、パージにより供給される燃料の量を精度良く検知することが必要である。そして、パージにより供給される燃料の量を精度良く検知するためには、キャニスタ内における燃料の吸着状態が精度良く検知できることが望ましい。
上記従来の蒸発燃料処理装置は、このような要求に応えるべく、キャニスタの内部温度を監視して、その温度変化を時間積分することにより、キャニスタの内部における燃料吸着状態を推定することとしている。燃料ベーパがキャニスタに吸着される際には、発熱反応が生ずる。一方、キャニスタに吸着されている燃料が離脱する際には吸熱反応が生ずる。このため、キャニスタの内部温度は、キャニスタ内における燃料の吸着・離脱に応じて上下する。そして、その内部温度の時間積分値は、キャニスタ内における燃料の残留状態に対応する。このように、上記従来の蒸発燃料処理装置は、キャニスタ内における燃料の吸着状態を、ある程度の精度で予測するものである。
しかしながら、キャニスタの内部温度の変化は、キャニスタに吸着されている燃料の増減分に対応する値である。このため、その温度変化を時間積分することによっては、キャニスタ内の吸着燃料の相対的変化は検知できるものの、その絶対量を把握することはできない。
パージにより供給される燃料分を精度良く検知するためには、キャニスタに吸着されている燃料の絶対量を検知することが必要である。この点、上記従来の蒸発燃料処理装置が、キャニスタ内の燃料吸着状態を検知するために用いている手法は、高精度な燃料噴射量補正を可能とするうえで、必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、キャニスタに吸着されている燃料の絶対量を精度良く検知することのできる蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着し、吸着した蒸発燃料を脱離するキャニスタと、前記キャニスタの温度を検出するキャニスタ温度検出手段と、前記キャニスタの温度と、以前に求めた前記キャニスタの蒸発燃料吸着量とに基づいて、蒸発燃料を吸着又は脱離させた際の前記キャニスタの蒸発燃料吸着量を推定する吸着量推定手段と、を備えたことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記吸着量推定手段は、前記キャニスタの温度に基づいて、吸着時に発生する吸着熱を算出する吸着熱算出手段を備え、前記吸着熱、前記キャニスタの温度、及び前記蒸発燃料吸着量の間に成立する関係から前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記吸着熱算出手段は、前記キャニスタの外部への前記吸着熱の熱損失を求める手段を含み、前記熱損失を考慮して前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明において、前記吸着量推定手段は、前記キャニスタの温度と前記蒸発燃料吸着量との関係を規定したマップを含み、前記マップから前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする。
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれかにおいて、推定した前記蒸発燃料吸着量と前記キャニスタが飽和した場合の飽和吸着量との比較の結果に基づいて、前記キャニスタの吸着能力が飽和しているか否かを判定する判定手段と、前記キャニスタの吸着能力が飽和している場合は、前記キャニスタにおける蒸発燃料の吸着を停止させる手段と、を更に備えたことを特徴とする。
第6の発明は、第1〜第5の発明にいずれかにおいて、前記キャニスタ温度検出手段が、前記キャニスタ内の複数の箇所に設けられていることを特徴とする。
第7の発明は、第6の発明において、前記キャニスタ温度検出手段が、前記キャニスタ内において、蒸発燃料が流入するパージポートの近傍と、大気に開放された大気ポートの近傍に設けられていることを特徴とする。
第1の発明によれば、キャニスタの温度と、以前に求めた前記キャニスタの蒸発燃料吸着量とに基づいて、蒸発燃料を吸着又は脱離させた際のキャニスタの蒸発燃料吸着量を推定するため、キャニスタの温度のみから蒸発燃料吸着量を推定する場合に比べて、より高い精度で蒸発燃料吸着量を推定することが可能となる。
第2の発明によれば、吸着熱がキャニスタの温度及び蒸発燃料吸着量の関数であるため、吸着熱、キャニスタの温度、及び蒸発燃料吸着量の間に成立する関係式に基づいて、蒸発燃料吸着量を精度良く推定することができる。
第3の発明によれば、吸着熱の熱損失を考慮することで、蒸発燃料吸着量をより高精度に推定することが可能となる。
第4の発明によれば、キャニスタの温度と蒸発燃料吸着量との関係を規定したマップから蒸発燃料吸着量を推定するため、煩雑な処理を伴うことなく蒸発燃料吸着量を算出することが可能となる。
第5の発明によれば、キャニスタの吸着能力が飽和している場合は、キャニスタにおける蒸発燃料の吸着を停止させるため、キャニスタの外部に蒸発燃料が流出してしまうことを抑止できる。
第6の発明によれば、キャニスタ内の複数の箇所にキャニスタ温度検出手段を設けたため、複数の箇所において蒸発燃料吸着量を推定することができる。従って、キャニスタ内の複数の箇所で蒸発燃料の吸着能力が飽和している場合は、キャニスタへの蒸発燃料の流入を停止させるなどの適切な処理を行うことが可能となる。
第7の発明によれば、蒸発燃料が流入するパージポートの近傍と、大気に開放された大気ポートの近傍にキャニスタ温度検出手段を設けたため、パージポートの近傍と大気ポートの近傍における蒸発燃料吸着量を推定することができる。そして、パージポートの近傍と大気ポートの近傍における蒸発燃料吸着量の双方が飽和吸着量の場合は、キャニスタの蒸発燃料吸着能力が破過していると判断することが可能となる。
以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の蒸発燃料処理装置の概要を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態の装置は、燃料タンク10とキャニスタ20を有して構成されている。燃料タンク10には、給油口12が設けられている。図1に示すように、給油口12は給油を行う場合以外は閉じられている。
図1は、本発明の実施の形態1の蒸発燃料処理装置の概要を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態の装置は、燃料タンク10とキャニスタ20を有して構成されている。燃料タンク10には、給油口12が設けられている。図1に示すように、給油口12は給油を行う場合以外は閉じられている。
燃料タンク10の内部には、燃料の液面高さを検出するための液面センサ14が設けられている。燃料タンク10内の空間容積V、つまり、燃料タンク10の内部において、燃料ベーパ(蒸発燃料)と空気とによって占められている容積Vは、燃料の液面高さに応じた値となる。従って、液面センサ14の出力によれば、その空間容積Vを検知することができる。
燃料タンク10の内部には、更に、タンク温度センサ16が配置されている。タンク温度センサ16によれば、燃料タンク10内のガスの温度、つまり、燃料ベーパの温度を検出することができる。以下、この温度を「タンクベーパ温度Tvap」と称す。
燃料タンク10には、ベーパ通路18を介してキャニスタ20が連通している。ベーパ通路18にはVSVバルブ36が設けられている。
キャニスタ20には、上記のベーパ通路18と接続されるベーパポート22、大気を導入するための大気ポート24、および後述するパージ通路26に連通するパージポート28が設けられている。また、キャニスタ20の内部には、ベーパポート22から流入してくる燃料ベーパを吸着するための活性炭30が充填されている。図1に示すように、ベーパポート22とパージポート28とは、活性炭30に対して同じ側に設けられている。一方、大気ポート24は、活性炭30を挟んで、それらのポート22,28の反対側に設けられている。
パージ通路26は、内燃機関の吸気通路(図示せず)に連通する通路である。パージ通路26の途中には、その導通状態を制御するためのパージVSV32が設けられている。内燃機関の運転中は、内燃機関の吸気負圧がパージ通路26の内部に導かれる。この状態でパージVSV32が開かれると、その吸気負圧がキャニスタ20のパージポート28にまで到達し、その結果、大気ポート24からパージポート28へ向かう空気の流れが生ずる。このような空気の流れが生ずると、活性炭30に吸着されている燃料に脱離が生ずる。このため、本実施形態の装置によれば、内燃機関の運転中にパージVSV32を適当に開くことにより、キャニスタ20に吸着されている燃料を適当に内燃機関にパージさせることができる。
キャニスタ20の内部には、パージポート28の近傍にキャニスタ温度センサ34が配置されている。キャニスタ温度センサ34によれば、パージポート28の近傍において、キャニスタ20の内部温度Tを測定することができる。
図1に示すように、本実施形態の蒸発燃料処理装置は、ECU(Electronic Control Unit)40を備えている。ECU40には、上述した液面センサ14、タンク温度センサ16、およびキャニスタ温度センサ34の出力信号が供給されている。
ECU40の制御によりVSVバルブ36が適切なタイミングで開かれると、燃料タンク10内の燃料ベーパがキャニスタ20へ送られる。キャニスタ20へ送られた燃料ベーパは活性炭30に吸着される。
また、ECU40の制御により、パージVSV32が適切なタイミングで開かれると、キャニスタ20内に吸着されている燃料ペーパが内燃機関の吸気通路にパージされる。これにより、燃料ベーパを外部に放出させることなく、キャニスタ20の燃料吸着能力が回復される。
吸気通路にパージされた燃料ベーパは、燃料噴射弁から機関に送られる混合気と混ざり、機関において燃焼する。機関に送られる混合気の空燃比を変動させないためには、燃料ベーパのパージにより供給される燃料分が相殺されるように、燃料噴射量の減量補正を行う必要がある。
空燃比荒れを生じさせることなく多量のパージガスを発生させるためには、そのパージガスにより供給される燃料の量を正確に算出して、その燃料分が相殺されるように燃料噴射量を補正する必要がある。そして、パージガスにより供給される燃料の量を正確に算出するためには、パージガス中の燃料ベーパ濃度を正確に検知することが必要である。従って、多量のパージガスを発生させるためには、その前提として、パージガス中の燃料ベーパ濃度が正確に検知できていることが要求される。
特に、燃料ベーパの大気放出を効果的に防ぐためには、キャニスタ20の燃料吸着能力を可能な限り多量に確保しておくことが望ましい。そして、この要求を満たすためには、燃料のパージが可能な状況下では、キャニスタ20から吸気通路に向かうパージガスを可能な限り多量にすることが望ましい。このような状況下においては、パージガス中の燃料ベーパ濃度をより正確に検出して空燃比の変動を抑える必要がある。
本実施形態において、ECU40は、キャニスタ20に吸着されている燃料ベーパの絶対量に相当する燃料吸着状態を正確に推定する機能を有している。キャニスタ20の燃料吸着状態が正確に推定できると、その後、パージが開始される時点では、その燃料吸着状態に基づいて、パージガス中の燃料ベーパ濃度を予測することができる。そして、そのような予測が可能であれば、パージの開始時点から、多量のパージガスを発生させることができる。このため、本実施形態の蒸発燃料処理装置によれば、高いパージ能力を実現することができる。
以下、本実施形態にかかる蒸発燃料処理装置において、キャニスタ20に吸着されている燃料の絶対量に相当する燃料ベーパ吸着量を算出する方法を説明する。燃料タンク10内では、燃料の蒸発によって燃料ベーパが発生している。VSVバルブ36を開くと、燃料タンク10内の燃料ベーパはキャニスタ20に流れ、キャニスタ20に吸着される。
燃料ベーパがキャニスタ20に吸着されると、キャニスタ20の内部エネルギーが変化する。このときの内部エネルギーの変化量は、燃料ベーパの吸着量に応じて変動する。本実施形態では、VSVバルブ36を開いている間のキャニスタ20の内部エネルギーの変化量を、吸着の際に発生する吸着熱から算出し、これに基づいてキャニスタ20の燃料ベーパ吸着量を算出する。
最初に吸着熱を算出する方法を説明する。図2は、燃料ベーパが活性炭30に吸着される様子を示す模式図である。図2に示すように、活性炭30に吸着される前の燃料ベーパは気相状態にある。気相状態の燃料ベーパが活性炭30の表面に吸着されると、吸着分子が発生する。これにより、燃料ベーパが液化して吸着相の状態となり、吸着熱が発生する。ここで、燃料ベーパの吸着によって発生する熱量(吸着熱)、活性炭30がもらうエネルギー、熱伝導によって失われる熱量、の間には以下の関係が成立する。
(吸着熱)=(活性炭がもらうエネルギー)+(熱伝導によって失われる熱量)
(吸着熱)=(活性炭がもらうエネルギー)+(熱伝導によって失われる熱量)
上記関係は、以下の(1)式(Tianの式)で表すことができる。(1)式において、dqは吸着の際に燃料ベーパの単位質量が発生する吸着熱である。また、ΔTは、吸着時の燃料ベーパ(活性炭30)の温度変化量であって、VSVバルブ36を開いている間のキャニスタ20の内部温度Tの変化量として、キャニスタ温度センサ34から検出することができる。また、σは活性炭30の熱伝導係数、cは活性炭30の有効熱容量である。(1)式によれば、温度変化量ΔTに基づいて、燃料ベーパの単位質量が発生する吸着熱dqを算出することができる。
燃料ベーパの吸着によってキャニスタ20内の内部エネルギーEadsが変化する。この際、熱伝導によって熱がキャニスタ20の外部に逃げなければ、以下の関係が成立する。
(燃料ベーパの単位質量が吸着された際の、キャニスタ内のエネルギー変化量)=(吸着によって燃料ベーパの単位質量が発生する熱量)
すなわち、燃料ベーパ単位質量あたりのエネルギー変化量dEadsと吸着熱dqは釣り合い、以下の(2)式の関係が成立する。
(燃料ベーパの単位質量が吸着された際の、キャニスタ内のエネルギー変化量)=(吸着によって燃料ベーパの単位質量が発生する熱量)
すなわち、燃料ベーパ単位質量あたりのエネルギー変化量dEadsと吸着熱dqは釣り合い、以下の(2)式の関係が成立する。
dEads=dq ・・・(2)
キャニスタ20の内部エネルギーEadsは、活性炭30のエネルギーと吸着相のエネルギーESとの和で表すことができ、以下の関係が成立する。
(キャニスタの内部エネルギー)=(活性炭のエネルギー)+(吸着相のエネルギー)
活性炭30の内部エネルギーは、活性炭30の内部温度Tに比例し、内部温度Tと活性炭の比熱CVCとの積で表すことができる。従って、以下の(3)式の関係が成立する。
(キャニスタの内部エネルギー)=(活性炭のエネルギー)+(吸着相のエネルギー)
活性炭30の内部エネルギーは、活性炭30の内部温度Tに比例し、内部温度Tと活性炭の比熱CVCとの積で表すことができる。従って、以下の(3)式の関係が成立する。
Eads=CVC・T+ES ・・・(3)
(3)式を吸着量、時間で微分すると、VSVバルブ36を開いている間の燃料ベーパ単位質量の吸着による内部エネルギーEadsの変化量dEadsが得られる。そして、(2)式からdEads=dqであるため、以下の(4)式の関係が成立する。
dq=dEads=CVC・dT+dES ・・・(4)
(4)式において、吸着相のエネルギーESの変化量dESは、燃料ベーパの吸着量に応じて変動する。従って、変化量dESを吸着量の関数として表すことで、(4)式に基づいて、吸着熱dqから燃料ベーパの吸着量を算出することができる。
吸着相のエネルギーESの変化量dESを吸着量の関数として表す方法を以下に説明する。図3は、単位質量あたりの吸着相のエネルギーESが単位活性炭質量あたりの燃料ベーパの吸着量msに応じて変動する様子を示す特性図である。図3は、燃料ベーパの温度を一定とした場合の特性を示しており、単位質量あたりの吸着相のエネルギーESとともに、燃料ベーパの気相のエネルギー、吸着の際に発生した吸着熱、及び燃料ベーパの蒸発潜熱を、それぞれ燃料ベーパ単位質量あたりの値として示している。図3に示すように、吸着相のエネルギーと吸着熱は吸着量msに応じて変動し、気相のエネルギー、蒸発潜熱は吸着量msによらず一定である。
図3に示すように、活性炭30における燃料ベーパの吸着量が多くなるほど、吸着相のエネルギーは増加し、吸着熱は減少する。そして、燃料ベーパの吸着量が多くなると、吸着相のエネルギーは、気相のエネルギーから蒸発潜熱を差し引いた値に漸近していく。
活性炭30に吸着される前の燃料ベーパの内部エネルギーは、図3に示す気相のエネルギーである。燃料ベーパが活性炭30に吸着されて吸着分子が発生すると、燃料ベーパの内部エネルギーは図3に示す吸着相のエネルギーとなり、吸着熱が発生する。従って、以下の関係が成立する。
(燃料ベーパ単位質量あたりの吸着相のエネルギー)=(燃料ベーパ単位質量あたりの気相のエネルギー)−(燃料ベーパ単位質量あたりの吸着熱)
この関係は、以下の(5)式で表すことができる。
(燃料ベーパ単位質量あたりの吸着相のエネルギー)=(燃料ベーパ単位質量あたりの気相のエネルギー)−(燃料ベーパ単位質量あたりの吸着熱)
この関係は、以下の(5)式で表すことができる。
(5)式において、Cp・Tは燃料ベーパ単位質量あたりの気相のエネルギーを表している。ここで、Cpは燃料蒸気定圧比熱であり、Tは燃料ベーパの温度である。
また、(5)式において、Δhvap(T)+f(ν)は、燃料ベーパ単位質量あたりの吸着熱を表している。ここで、Δhvap(T)は蒸発潜熱であって、燃料ベーパの温度Tの関数である。蒸発潜熱Δhvap(T)は、例えば公知のクラジウス・クラペイロンの式で表すことができる。
また、f(ν)は、燃料ベーパの吸着ポテンシャルを表している。吸着ポテンシャルf(ν)は、燃料ベーパが吸着相となった場合に、分子間力に起因して発生する燃料ベーパのエネルギーである。吸着ポテンシャルf(ν)は吸着体積νの関数であって、νは吸着相の密度ρLに対する吸着量msの割合である。すなわち、ν=ms/ρLの関係が成立する。図4は、吸着ポテンシャルf(ν)とν(=ms/ρL)の関係(吸着特性曲線)を実験的に求めた特性図である。図4に示すように、νが増加すると、燃料ベーパの吸着ポテンシャルf(ν)は減少する。すなわち、ν=ms/ρLであるため、吸着量msが増加すると、吸着ポテンシャルf(ν)は減少する。吸着量msが更に増加すると吸着ポテンシャルf(ν)は0に近づき、図3に示すように吸着熱と蒸発潜熱はほぼ等しくなる。
このように、燃料ベーパ単位質量あたりの吸着熱は、蒸発潜熱Δhvap(T)と吸着ポテンシャルf(ν)の和で表すことができる。
(5)式を吸着量msで積分すると、以下の(6)式が得られる。(6)式によれば、吸着相のエネルギーEsを吸着量msの関数として表すことができる。なお、(6)式では、吸着ポテンシャルf(ν)における変数をν’として示している。
(4)式において、VSVバルブ36を開いている間の、燃料ベーパ単位質量あたりの変化量dESは、(6)式を微分して算出することができる。ここで、吸着相のエネルギーESは燃料ベーパの温度Tと吸着量msの関数であるため、以下の(7)式の関係が成立する。そして、(7)式の右辺を(4)式に代入すると、以下の(8)式が得られる。燃料ベーパの温度Tとキャニスタ20の内部温度Tは等しいと考えることができるため、(8)式によれば、内部エネルギーの変化量dEads(=吸着熱dq)をキャニスタ内部温度T、および吸着量msの関数として表すことができる。従って、吸着熱dq、および内部温度Tから吸着量msを算出することが可能となる。
(7)式の右辺第1項および第2項は(6)式を微分して求めることができ、以下の(9)式、(10)式で表すことができる。(9)式、(10)式では、dTをΔTとし、またdmsをΔmsとして示している。また、(9)式、(10)式において、ΔTは、VSVバルブ36を開いている間、すなわち燃料ベーパが吸着されている間の燃料ベーパ(活性炭30)の温度変化量である。また、TはVSVバルブ36を開いた時点の燃料ベーパ(活性炭30)の温度である。ΔT,Tは、キャニスタ温度センサ34から検出することができる。
(9)式では(6)式を内部温度Tについて微分しているが、この際(6)式のf(ν)が内部温度Tの関数ではないため、f(ν)を微分した項は0となる。また、(9)式において、Δ{Δhvap(T)}は、VSVバルブ36を開いている間の蒸発潜熱Δhvap(T)の変化量である。また、ν=ms/ρLであるため、(10)式においてdν/dms=1/ρLである。
(9)式、(10)式を(8)式へ代入すると、以下の(11)式が得られる。(11)式において、ΔmsはVSVバルブ36を開いている間の吸着量msの変化量を表している。すなわち、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量をms(k−1)、VSVバルブ36を閉じた時点の吸着量をms(k)とすると、Δms=ms(k)−ms(k−1)の関係が成立する。また、(11)式において、msはVSVバルブ36を閉じた時点の吸着量ms(k)を表している。従って、(11)式を変形すると(12)式が得られる。(12)式によれば、吸着熱dqをms(k),ms(k−1),ΔTの関数として表すことができる。
以下の(13)式は、(12)式の左辺dqを右辺に移項して、関数fを定義した式である。(12)式によれば、吸着熱dq、前回の吸着量ms(k−1)、温度変化量ΔTを用いて現在の吸着量ms(k)を求めることは可能であるが、吸着ポテンシャルf(ν)が吸着量ms(k)の関数であるため、(12)式から直接的に現在の吸着量ms(k)を求めようとすると演算処理が煩雑となる場合がある。そこで、本実施形態では、前回取得した吸着量ms(k−1)とVSVバルブ36を開いている間の温度変化量ΔTを(13)式に代入するとともに、現在の吸着量ms(k)については仮の値を(13)式に代入する。そして、仮の吸着量ms(k)の値を変更しながら、f→0となるように(13)式を反復演算する。そして、関数fの値が最も0に近づいた場合のms(k)の値を最終的な現在の吸着量ms(k)として算出する。このように、(13)式を反復演算することで、吸着熱dq、前回の吸着量ms(k−1)、温度変化量ΔTから現在の吸着量ms(k)を算出することが可能となる。
キャニスタ20における吸着量が多くなり、パージVSV32を開いた場合は、活性炭30に吸着されていた燃料ベーパが脱離して吸気通路側へ流れる。このとき、図2で説明した反応と逆の反応が起こり、パージVSV32を開いている間にキャニスタ温度センサ34で検出される温度は、時間の経過とともに低下する。従って、パージVSV32を開いた場合の温度変化量ΔTは負の値となる。
所定時間パージVSV32を開いて燃料ベーパを脱離させた後の吸着量ms(k)は、VSVバルブ36を開いて燃料ベーパを吸着させた後の吸着量ms(k)と同様に、(13)式から求めることができる。この際、ΔTの値を負の値にして(13)式に代入することで、脱離後の燃料ベーパ吸着量ms(k)を求めることが可能である。
従って、VSVバルブ36またはパージVSV32を開いた時点の吸着量ms(k−1)と、VSVバルブ36またはパージVSV32を開いている間の温度変化量ΔTを(13)式に代入することで、VSVバルブ36またはパージVSV32を閉じた時点の吸着量ms(k)を算出することが可能となる。そして、吸着量ms(k)を記憶しておき、次にVSVバルブ36またはパージVSV32を開いた際に(13)式の演算を行うことで、キャニスタ20における燃料ベーパ吸着量の絶対量を逐次算出することが可能である。
キャニスタ20に吸着されている燃料ベーパは、パージVSV32を所定時間(数十分程度)開くことで完全に脱離する。従って、VSVバルブ36またはパージVSV32を開いた時点の吸着量ms(k−1)が不明の場合は、パージVSV32を所定時間開いてキャニスタ20を空の状態にリセットし、次回の演算の際にms(k−1)=0として(13)式の演算を行うことが好適である。
また、VSVバルブ36、パージVSV32の双方を閉じている場合は、キャニスタ20における燃料ベーパの吸着現象、脱離現象は発生せず、キャニスタ20内で温度変化は生じない。従って、VSVバルブ36またはパージVSV32の一方を開いた時にキャニスタ温度センサ36を起動するようにしてもよい。
次に、図5のフローチャートに基づいて、本実施形態の蒸発燃料処理装置における処理の手順を説明する。ここでは、VSVバルブ36を開いてキャニスタ20に燃料ベーパを吸着させる場合の処理について説明する。
先ず、ステップS1では、燃料タンク10に設けられたタンク内圧バルブを閉じ、燃料タンク10からキャニスタ20へ燃料ベーパを送る準備をする。次のステップS2では、燃料ベーパ吸着量を推定する準備が完了しているか否かを判定する。
次のステップS3では、燃料タンク10の内圧が所定の圧力(大気圧+α)以上であるか否かを判定する。燃料タンク10の内圧が所定の圧力以上である場合は、燃料タンク10内で燃料ベーパが発生しているため、ステップS4へ進み、所定時間の間だけVSVバルブ36を開く。一方、燃料タンク10の内圧が所定の圧力よりも小さい場合は終了する(END)。
ステップS4でVSVバルブ36を開いている間は、燃料タンク10内の燃料ベーパがキャニスタ20へ流れ込む。そして、燃料ベーパは活性炭30に吸着され、吸着熱の発生により活性炭30の温度が上昇する。ステップS5では、VSVバルブ36を開いている間の温度変化量ΔTをキャニスタ温度センサ34から検出する。
次のステップS6では、ステップS5で求めた温度変化量ΔTを用いて、活性炭30における燃料ベーパの現在の吸着量(VSVバルブ36を閉じた時点の吸着量)ms(k)を求める。ステップS6で燃料ベーパの吸着量ms(k)を求めた後は、処理を終了する(END)。
図6のフローチャートは、図5のステップS6において、吸着量ms(k)を算出する処理を詳細に示したものである。先ずステップS11では、図5のステップS5で検出した温度変化量ΔTを用いて、(1)式から吸着熱dqを算出する。次のステップS12では、ECU40のメモリから前回算出した吸着量ms(k−1)を取得する。
次のステップS13では、ΔT、ms(k−1)、および仮に設定したms(k)の値を(13)式に代入して反復計算を行う。そして、(13)式のfが最も0に近づいたときのms(k)の値を最終的な現在の吸着量ms(k)として算出する。ステップS13で現在の吸着量ms(k)を算出した後は、処理を終了する(END)。
なお、ステップS13において、関数fの値が0近傍の値に収束しない場合は、所定時間の経過後、ステップS11または図5の処理に戻り、処理を再度行うようにする。
また、図5のステップS3では、(燃料タンク10の内圧)≦(大気圧−α)の場合、VSVバルブ36を開くとキャニスタ20に吸着されている燃料ベーパが脱離し、キャニスタ20から燃料タンク10へ燃料ベーパが流れる。この場合、VSVバルブ36を開いている間の温度変化量ΔTは負の値となる。従って、(燃料タンク10の内圧)≦(大気圧−α)の場合においても、パージVSV32を開いた場合と同様に、燃料ベーパを脱離させた後、VSVバルブ36を閉じた時点の吸着量ms(k)を算出することができる。(燃料タンク10の内圧)≦(大気圧−α)の場合にVSVバルブ36を開くことで、蒸発燃料経路が急冷された場合などに燃料タンク10に過度な圧力がかかることを回避できる。
本実施形態の装置によれば、現時点のキャニスタ20燃料ベーパ吸着量ms(k)を逐次算出することができるため、吸気通路へ燃料ベーパをパージする場合は、パージVSV32を開いてパージが開始される時点での活性炭30の燃料吸着状態を極めて精度良く把握しておくことができる。従って、本実施形態の装置によれば、パージの開始直後にパージされるパージガス中の燃料ベーパ濃度を高精度に予測し、その開始の時点から、多量のパージガスを発生させることができる。このため、本実施形態の蒸発燃料処理装置によれば、優れた燃料パージ能力を確保することができる。
以上説明したように実施の形態1によれば、VSVバルブ36を開いている間のキャニスタ内部温度の変化量ΔTから吸着熱dqを算出することができる。そして、吸着熱dq(=内部エネルギーEadsの変化量dEads)をキャニスタ20の内部温度Tと吸着量msとの関数で表すことができるため、吸着熱dq、内部温度Tおよび吸着量msの関係式から吸着量msを算出することが可能となる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では燃料ベーパの吸着量msを(13)式を反復演算して算出したが、実施の形態2はマップから燃料ベーパの吸着量msを算出するものである。
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では燃料ベーパの吸着量msを(13)式を反復演算して算出したが、実施の形態2はマップから燃料ベーパの吸着量msを算出するものである。
図7は、図3と同様に、単位質量あたりの吸着相のエネルギーESが単位活性炭質量あたりの燃料ベーパの吸着量msに応じて変動する様子を示す特性図である。図7に基づいて、VSVバルブ36が開いている間の温度変化量ΔTが同じ場合に、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)の相違が、VSVバルブ36が開いている間の吸着量の変化量Δmsに与える影響について説明する。
VSVバルブ36を開いている間の温度変化量ΔTが等しい場合、燃料ベーパのエネルギー変化量も等しいと考えることができる。図7に示すように、吸着量ms(k−1)が異なる2つの場合において、VSVバルブ36を開いている間の吸着による燃料ベーパのエネルギー変化量は、単位質量あたりの吸着相のエネルギーを表す曲線50と、気相のエネルギーを表す直線52で囲まれた面積A1,A2で表すことができる。ここで、面積A1と面積A2で表される2つの場合において、吸着開始時の内部温度Tが等しく、吸着の際の温度変化量ΔTが等しい場合を想定すると、双方の燃料ベーパのエネルギー変化量が等しくなるため、面積A1と面積A2は等しくなる。
ここで、横軸方向の面積A1,面積A2の幅は、VSVバルブ36を開いている間の吸着量の変化量Δmsと考えることができる。図7に示すように、温度変化量ΔTが等しい場合の横軸方向の面積A1,面積A2の幅は、吸着量ms(k−1)に応じて変動し、面積A1に比べて面積A2の横軸方向の幅は広くなる。従って、図7に示すように、温度変化量ΔTが等しい場合、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)が大きい程、吸着量の変化量Δmsは増加する。
一方、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)が等しい場合、温度変化量ΔTが大きいほど活性炭30における燃料ベーパの吸着反応が多く行われる。従って、吸着量ms(k−1)が等しい場合は、温度変化量ΔTが大きくなるほど、吸着量の変化量Δmsは大きくなる。このことは、例えば図4の吸着特性曲線からも説明することができる。図4に示すように、吸着量の変化量Δmsが異なる2つの場合(Δms1,Δms2)において、Δmsが大きくなる程、f(ν)の変化量Δ{f(ν)}は大きくなる。そして、f(ν)が大きいほど吸着相のエネルギーEsの変化量が大きくなり、結果として温度変化量ΔTも大きくなる。従って、吸着量ms(k−1)が等しい場合は、温度変化量ΔTが大きくなるほど、吸着量の変化量Δmsは大きくなる。
以上の観点から、実施の形態2では、温度変化量ΔT、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)、およびVSVバルブ36を開いている間の吸着量の変化量Δmsの関係をマップで規定し、マップからVSVバルブ36を開いている間の吸着量の変化量Δmsを求める。
図8は、温度変化量ΔT、吸着量ms(k−1)、および吸着量の変化量Δmsの関係を規定したマップを示す模式図である。図8のマップには、温度変化量ΔTが等しい場合、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)が大きいほど、吸着量の変化量Δmsが大きくなる関係が規定されている。また、吸着量ms(k−1)が等しい場合は、温度変化量ΔTが大きいほど、変化量Δmsが大きくなる関係が規定されている。従って、温度変化量ΔT、吸着量ms(k−1)を図8のマップに当てはめることで、吸着量の変化量Δmsを求めることができる。そして、Δmsを求めた後は、ms(k)=ms(k−1)+Δmsの演算を行うことで、現在の吸着量ms(k)を求めることが可能となる。なお、図8のマップは、温度変化量ΔT、吸着量ms(k−1)、および吸着量の変化量Δmsの関係を実験で求めることで作成することができる。
パージVSV32を開いた場合も同様に、温度変化量ΔT(<0)、吸着量ms(k−1)を図8のマップに当てはめることで、吸着量の変化量(脱離量)Δmsを求めることができる。
以上説明したように実施の形態2によれば、VSVバルブ36を開いた時点の吸着量ms(k−1)と、VSVバルブ36を開いている間の温度変化量ΔTとから、現在の吸着量ms(k)をマップ算出することが可能となる。従って、簡素な方法で、キャニスタ20の燃料ベーパ吸着量を正確に求めることが可能となる。
なお、図8のマップでは、温度変化量ΔT、吸着量ms(k−1)、および吸着量の変化量Δmsの関係を規定したが、ms(k)=ms(k−1)+Δmsであるため、温度変化量ΔT、吸着量ms(k−1)、および吸着量ms(k)の関係を規定しても良い。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、キャニスタに装着する温度センサの数を増やして、より正確に吸着量を算出するものである。図9は、実施の形態3にかかるキャニスタ20を示す模式図である。図9に示すように、実施の形態3では、図1に示したキャニスタ温度センサ34に加えて、大気ポート24の近傍にキャニスタ温度センサ35を配置している。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3は、キャニスタに装着する温度センサの数を増やして、より正確に吸着量を算出するものである。図9は、実施の形態3にかかるキャニスタ20を示す模式図である。図9に示すように、実施の形態3では、図1に示したキャニスタ温度センサ34に加えて、大気ポート24の近傍にキャニスタ温度センサ35を配置している。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
キャニスタ20に吸着された燃料ベーパが吸気通路側にパージされ、キャニスタ20の燃料ベーパ吸着能力が回復している場合に、燃料タンク10からキャニスタ20へ燃料ベーパを送ると、先ずベーパポート22側の活性炭30に燃料ベーパが吸着される。そして、活性炭30における燃料ベーパの吸着範囲は次第に大気ポート24側へ拡大していく。
ベーパポート22側の活性炭30の吸着能力が飽和し、大気ポート24側の活性炭30の吸着能力も飽和すると、キャニスタ20が破過した状態となり、これ以上燃料ベーパを吸着することができない。この場合、燃料タンク10から送られた燃料ベーパは、キャニスタ20に吸着されることなく大気ポート24から外部に流出することになる。
燃料ベーパが外気に放出されることを避けるためには、キャニスタ20が破過した状態か否かを正確に検出する必要がある。図1に示すように、ベーパポート22側にキャニスタ温度センサ34を設けることで、ベーパポート22側の活性炭30の吸着能力が飽和しているか否かを判定することが可能であるが、大気ポート24側の活性炭30の吸着能力を把握するためには、大気ポート24側にも温度センサを設けることが望ましい。
図9に示す構成によれば、実施の形態1,2と同様の方法により、キャニスタ温度センサ34の検出値からベーパポート22側の活性炭30における燃料ベーパ吸着量を求めることができ、また、キャニスタ温度センサ35の検出値から大気ポート24側の活性炭30における燃料ベーパの吸着量を求めることができる。
また、活性炭30の燃料吸着能力が飽和した場合の単位活性炭質量あたりの吸着量ms飽和を実験等により予め求めておく。そして、算出した吸着量msと吸着量ms飽和を比較することで、活性炭30の吸着能力が飽和しているか否かを判定することができる。これにより、ベーパポート22側と大気ポート24側の双方で活性炭30の吸着能力が飽和しているか否かを判別することができる。なお、大気ポート24から燃料ベーパが大気に放出されることを確実に抑止するためには、安全率を見込んだ上で、算出した吸着量msと吸着量ms飽和を比較することが望ましい。
上述したように、燃料ベーパはベーパポート22側から大気ポート側24に向かって順次吸着されていくため、ベーパポート22側の活性炭30が飽和している場合であっても、大気ポート24側の活性炭30が飽和していない場合は、引き続きVSVバルブ36を開いてキャニスタ20へ燃料ベーパを吸着させることができる。一方、大気ポート24側の活性炭30が飽和している場合は、既にペーパポート22側の活性炭30も飽和していると考えられるため、大気ポート24を経由して燃料ベーパが外気に放出されてしまうことを防ぐためには、VSVバルブ36を閉じてキャニスタ20への燃料ベーパの流入を停止させることが望ましい。
以上説明したように実施の形態2によれば、ベーパポート22側のキャニスタ温度センサ34に加えて、大気ポート24の近傍にキャニスタ温度センサ35を配置したため、キャニスタ20の燃料ベーパの吸着能力が飽和しているか否かをより正確に判定することが可能となる。そして、燃料ベーパの吸着能力が飽和している場合は、VSVバルブ36を閉じることで、燃料ベーパが大気ポート24から外気に放出されることを抑止できる。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1の方法で吸着熱dqを算出する際に、伝熱によりキャニスタ20の外部へ逃げる熱量を考慮して、より正確に吸着熱dqを算出するものである。
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1の方法で吸着熱dqを算出する際に、伝熱によりキャニスタ20の外部へ逃げる熱量を考慮して、より正確に吸着熱dqを算出するものである。
図10は、実施の形態4にかかるキャニスタ20を示す模式図である。図10に示すように、実施の形態4では、ベーパポート22側のキャニスタ20の外周に、熱流束センサ38を設けている。実施の形態3のその他の構成は、実施の形態1と同様である。
実施の形態1で説明したように、熱伝導によって熱がキャニスタ20の外部に逃げなければ、キャニスタ20の内部エネルギーEadsの変化量dEadsと吸着熱dqは等しくなり、(2)式の関係が成立する。しかし、発生した吸着熱dqの一部はキャニスタ20の外部に逃げるため、より好適には、伝熱による熱損失分を考慮して吸着熱dqを算出することが望ましい。実施の形態4では、熱流速センサ38によって外部への熱損失分を求め、熱損失分を考慮して吸着熱dqを算出することで、燃料ベーパ吸着量の算出精度をより向上させるものである。
熱流束センサ38では、単位面積あたりの熱流束h[W/m2]が計測される。従って、キャニスタ20の表面における熱流束センサ38の面積S[m2]を熱流束hに乗算することで、単位時間あたりの外部への熱損失エネルギー[W]を求めることができる。更に、熱流束hを計測した時間Δtを単位時間あたりの熱損失エネルギー[W]乗算することで、キャニスタ20から外部に逃げた熱損失エネルギーQloss[J]を算出することができる。すなわち、熱損失エネルギーをQlossは、以下の(14)式から算出することができる。
Qloss=h・S・Δt ・・・(14)
ここでは、VSVバルブ36を開いている間の熱損失エネルギーQlossを求めるため、(14)式のΔtは、VSVバルブ36を開いている時間としておく。
(14)式から熱損失エネルギーQlossを求めた後は、Qlossを(2)式の右辺に加算する。これにより、(1)式から算出した吸着熱dqに熱損失エネルギーQlossが加算され、熱損失を考慮した上でキャニスタ20の内部エネルギーの変化量dEadsを正確に算出することが可能となる。そして、燃料ベーパ吸着量を算出する際には、(11)式、(12)式、(13)式のdqにQlossを加算することで、吸着量msをより正確に算出することが可能となる。
以上説明したように実施の形態3によれば、熱流束センサ38の検出値に基づいて、吸着の際にキャニスタ20の外部に逃げた熱損失エネルギーQlossを求めることができる。従って、吸着熱dqに熱損失エネルギーQlossを加算することで、吸着の際に発生した熱量をより正確に算出することが可能となり、キャニスタ20における燃料ベーパの吸着量をより高い精度で算出することが可能となる。
20 キャニスタ
34,35 キャニスタ温度センサ
36 VSVバルブ
38 熱流束センサ
40 ECU
34,35 キャニスタ温度センサ
36 VSVバルブ
38 熱流束センサ
40 ECU
Claims (7)
- 燃料タンク内で発生する蒸発燃料を吸着し、吸着した蒸発燃料を脱離するキャニスタと、
前記キャニスタの温度を検出するキャニスタ温度検出手段と、
前記キャニスタの温度と、以前に求めた前記キャニスタの蒸発燃料吸着量とに基づいて、蒸発燃料を吸着又は脱離させた際の前記キャニスタの蒸発燃料吸着量を推定する吸着量推定手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の蒸発燃料処理装置。 - 前記吸着量推定手段は、
前記キャニスタの温度に基づいて、蒸発燃料の吸着時に発生する吸着熱を算出する吸着熱算出手段を備え、
前記吸着熱、前記キャニスタの温度、及び前記蒸発燃料吸着量の間に成立する関係から前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。 - 前記吸着熱算出手段は、前記キャニスタの外部への前記吸着熱の熱損失を求める手段を含み、前記熱損失を考慮して前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
- 前記吸着量推定手段は、前記キャニスタの温度と前記蒸発燃料吸着量との関係を規定したマップを含み、
前記マップから前記蒸発燃料吸着量を推定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。 - 推定した前記蒸発燃料吸着量と前記キャニスタが飽和した場合の飽和吸着量との比較の結果に基づいて、前記キャニスタの吸着能力が飽和しているか否かを判定する判定手段と、
前記キャニスタの吸着能力が飽和している場合は、前記キャニスタにおける蒸発燃料の吸着を停止させる手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。 - 前記キャニスタ温度検出手段が、前記キャニスタ内の複数の箇所に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
- 前記キャニスタ温度検出手段が、前記キャニスタ内において、蒸発燃料が流入するパージポートの近傍と、大気に開放された大気ポートの近傍に設けられていることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010106664A (ja) * | 2008-10-28 | 2010-05-13 | Mahle Filter Systems Japan Corp | パージガス濃度推定装置 |
JP2014101830A (ja) * | 2012-11-21 | 2014-06-05 | Mazda Motor Corp | 蒸発燃料処理装置 |
JP2017067006A (ja) * | 2015-09-30 | 2017-04-06 | マツダ株式会社 | 蒸発燃料処理装置 |
JP2021050717A (ja) * | 2019-09-26 | 2021-04-01 | 株式会社Subaru | 車両の燃料装置 |
-
2003
- 2003-10-17 JP JP2003357901A patent/JP2005120946A/ja active Pending
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