JP2005322445A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 入射光が効率的に利用され、光電変換効率の高い新規な色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】 透明電極21と、この透明電極21に対向するようにして設けられた対向電極22と、透明電極21及び対向電極22間に封入された電解質層14と、電解質層14と接触するようにして透明電極21上に設けられた色素を担持した半導体層23とを具える。半導体層23は、半導体微粒子23Aと、この半導体微粒子23Aより粒子径の大きな散乱粒子23Bとからなり、散乱粒子23Bの配合割合が、その前後における散乱粒子23Bの配合割合より小さい部分を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
化石燃料に代るエネルギー源として太陽光を利用する太陽電池が注目され、種々の研究が行われてきた。近年、新しいタイプの太陽電池として、特表平5−504023号公報、特許第2664194号公報、国際公開WO94/05025号公報に、金属錯体の光誘起電子移動を応用した色素増感型太陽電池が開示されている。また、シリコン系やCdTe/CdSなどの半導体太陽電池など、多くの研究がされている。
図1は、従来の太陽電池の例を模式的に示したものである。この例の色素増感型太陽電池(以下、単に「太陽電池」ということもある)10は、透明電極11と対向電極12とを対向配置してセルを構成し、その内部に側枠部材15を介して電解質14を封入したものである。透明電極11は導電性ガラスからなり、アノード電極を構成する。対向電極12は導電性ガラスからなり、カソード電極を構成する。透明電極11上には、色素が吸着された酸化物半導体電極13が設けられている。酸化物半導体電極13は、例えば酸化物半導体微粒子13Aを溶剤と混合し、それを透明電極11上に塗布、焼成することによって多孔質酸化物半導体膜を形成した後、色素を吸着させたものである。
透明電極11と対向電極12とは、数十μm〜数mmの間隔をおいて、電解質14を介して対向配置されており、透明電極11の、酸化物半導体電極13に吸着されている色素が可視光によって励起され、発生した電子を多孔質酸化物半導体膜(酸化物半導体微粒子13A)に渡すことによって発電が行われる。酸化物半導体微粒子13Aは一般的にアナターゼ型TiOが使用されるが、他の酸化物半導体でも使用可能であり、SnOやZnOなどの可視光線を吸光しない物が使用される。
上述した色素増感型太陽電池では、酸化物半導体微粒子13Aを多孔質膜状にすることによって吸着できる増感色素を増やしたので、多くの電流を発生することに成功している。しかしながら、前記色素増感型太陽電池では、前記増感色素による前記発電は、前記可視光が酸化物半導体電極13を透過する際に行われるのみである。すなわち、前記可視光は、酸化物半導体電極13を1回透過する際に前記増感色素に吸収されて、発電に寄与するのみであり、その使用効率が極めて低い。このため、前記可視光の使用効率の観点から、前記色素増感型太陽電池における発電効率は未だ不十分であった。
このような観点から、特開2003-303629号公報では、酸化物半導体電極を構成する半導体微粒子に散乱粒子を混合させて構成することにより、発電に寄与する可視光を前記酸化物半導体電極内で多重反射させて、前記可視光の使用効率を増大させる試みがなされている。
しかしながら、前記公報に開示された方法では、散乱粒子の実表面積が半導体微粒子に比べ非常に小さく、吸着できる色素数も減少してしまう。また、前記散乱粒子の混合割合を徐々に増やした場合でも、散乱効果が高い高濃度層での色素吸着量は小さくなってしまうために、十分な効果が得られない。また、色素吸着量を増やす為に、酸化物半導体電極自体を厚くすると、前記電極から電解質への逆電子反応が起こる割合も増え、電池特性の一項目である開放電圧Vocが低下するという問題があった。
本発明は、入射光が効率的に利用され、光電変換効率の高い新規な色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明は、
透明電極と、この透明電極に対向するようにして設けられた対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極間に封入された電解質層と、前記電解質層と接触するようにして前記透明電極上に設けられた色素を担持した半導体層とを具え、
前記半導体層は、半導体微粒子と、この半導体微粒子より粒子径の大きな散乱粒子とからなり、前記散乱粒子の配合割合が、その前後における前記散乱粒子の配合割合より小さい部分を有することを特徴とする、色素増感型太陽電池に関する。
本発明では、透明電極及び対向電極を有し、これらの電極間に電解質が封入されるとともに、前記透明電極上において、前記電解質と接触するようにして設けられ、可視光の吸収によって発電作用を生ぜしめる色素担持の半導体層を具えた色素増感の太陽電池において、前記半導体層を、半導体微粒子と、この半導体微粒子より粒子径の大きな散乱粒子とから構成するようにしている。さらに、前記半導体層は、前記散乱粒子の配合割合が、その前後における前記散乱粒子の配合割合より小さい部分を有する。
したがって、前記色素増感型太陽電池に入射した可視光は、前記半導体層に至ると、前記散乱粒子の配合割合の多い部分で散乱、反射されるようになるとともに、前記散乱粒子の配合割合の小さい部分に閉じ込められるようになる。このため、前記可視光の、前記半導体層における色素に吸収される割合が増大し、発電に寄与する割合が増大するようになる。すなわち、前記色素増感型太陽電池における、前記可視光の使用効率が増大し、光電変換効率を増大させることができる。
なお、前記半導体層において、前記散乱粒子の配合割合が少ない部分は、前記散乱粒子を含まないようにすることもできる。
さらに、前記散乱粒子の配合割合が少ない部分は単一であっても良いが、複数存在することが好ましい。前記散乱粒子の配合割合が少ない部分を複数存在させる場合、前記半導体層を4層以上の多層膜構造体として構成する。この場合、可視光は、色素増感型太陽電池の透明電極を介して前記半導体層に入射するようになるので、前記透明電極側から数えて第2層及び最外層における前記散乱粒子の配合割合を、前記透明電極から数えて第1層における前記散乱粒子の配合割合より大きく、前記第2層及び前記最外層間に位置する少なくとも一層における前記配合割合よりも大きくする。
これによって、前記第1層並びに前記第2層及び前記最外層間に位置する層において、前記第2層及び前記最外層で散乱及び反射された前記可視光が閉じ込められるようになり、これら閉じ込め層中における担持色素に対する吸収度合いが向上する。また、前記閉じ込め層では、前記散乱粒子の割合が小さく、必然的に半導体微粒子の割合が増大するので、前記半導体微粒子に担持させる色素量も増大する。したがって、前記光の閉じ込め効果と多量の色素担持との効果との相乗によって、前記半導体層、すなわち本発明に係わる前記色素増感型太陽電池の光電変換効率を増大させることができるようになる。
なお、本発明の好ましい態様においては、前記半導体微粒子の一次平均粒子径を10−30nmとする。これによって、表面積が増加し、色素を多く吸着することができ電子を多く発生させることができる。また、透明性を得ることができるという効果を奏することができる。この場合、前述した散乱及び反射の効果を増大させるべく、前記散乱粒子の大きさは80−500nmとすることが好ましい。
また、本発明の他の好ましい態様においては、前記散乱粒子を半導体材料から構成し、より好ましくは前記半導体微粒子と同じ半導体材料、例えば酸化チタンから構成する。この場合、前記散乱粒子に前記色素を担持させれば、前記散乱粒子自体も前記可視光による励起を通じて発電に寄与するようになる。また、色素増感型太陽電池においては、半導体層に担持した色素のみならず、酸化チタンなどから構成される半導体層自体も光電変換反応を通じてある程度発電に寄与するようになる。したがって、前記散乱粒子を半導体微粒子と同じ酸化チタンなどの半導体材料から構成することにより、前記散乱粒子も光電変換反応を通じて発電に寄与できるようになる。
さらに、本発明のその他の好ましい態様においては、前記散乱粒子を放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈する酸化チタン粒子から構成する。このような形状のチタン粒子は極めて高い散乱性を有するので、前記酸化チタン粒子から前記散乱粒子を構成することにより、前記半導体層において、その散乱及び反射効果をより増大させることができるようになる。
以上説明したように、本発明は、色素増感型太陽電池において散乱粒子を効果的に利用できる構造を提供するものであり、半導体層に光を閉じ込める効果が大きくなり、入射光の、発電に対する使用効率を増大させることができる。したがって、優れた光電変換効率の新規な色素増感型太陽電池を提供することができる。
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の色素増感型太陽電池の一例を示す構成図である。図2に示す色素増感型太陽電池20は、透明電極21と、この透明電極21と対向するようにして設けられた対向電極22と、透明電極21及び対向電極22間に側枠部材25を介して封入された電解質24と、この電解質24に接触するようにして、透明電極21上に設けられた半導体層23とを具えている。半導体層23は半導体微粒子23A及びこの半導体微粒子23Aよりも粒子径の大きい散乱粒子23Bからなるとともに、4層の多層膜構造体を呈している。半導体微粒子23Aには図示しない色素が吸着・担持されている。
半導体層23において、透明電極21から数えて第2層232及び第4層(最外層)234における散乱粒子23Bの配合割合は、透明電極21から数えて第1層231及び第3層233の散乱粒子23Bの配合割合よりも大きい。また、第4層234の散乱粒子23Bの配合割合は第2層232の散乱粒子23Bの配合割合よりも大きい。
図2に示す色素増感型太陽電池20においては、発電に寄与する可視光は透明電極21側から入射し、半導体層23に至る。このとき、前記可視光は、その一部が第1層231中の色素及びある程度の割合で半導体微粒子23Aに吸収されて、これらを励起するとともに、大部分が第1層231を透過して第2層232に至る。第2層232においては、前記可視光の相当な割合が散乱され、第1層231へ向けて反射されて、第1層231中に閉じ込められるようになる。したがって、第1層231中では、結果的に前記可視光の、ある割合が多重反射するようになり、前記担持色素及び半導体微粒子23Aに効率的に吸収され、これらを励起するようになる。
次いで、第2層232で反射されずに透過した前記可視光の残部は、第2層232及び第3層233中を透過し、これら層中の前記担持色素及びある程度の割合で半導体微粒子23Aに吸収されて、これらを励起するとともに、大部分が第3層を透過して第4層234に至る。第4層234においては、前記可視光残部の相当な割合が散乱されて、第3層233へ向けて反射され、第3層233中に閉じ込められるようになる。したがって、第3層233中では、結果的に前記可視光残部の、相当程度の割合が多重反射するようになり、前記担持色素及び半導体微粒子23Aに効率的に吸収され、これらを励起するようになる。
このように、半導体層23、すなわち色素増感型太陽電池20全体で見た場合に、前記可視光の、前記担持色素及び半導体微粒子23Aに対する吸収及び励起効率が増大するので、結果的に、前記可視光の、前記発電に寄与する使用効率が増大する。この結果、色素増感型太陽電池20の、光電変換効率が増大する。
上述したように、第1層231及び第3層233は、主として前記可視光を閉じ込め、その多重反射を利用した前記担持色素及び半導体微粒子23Aの励起を促進して、効率的な発電を実現させるものであるので、かかる層中にはより多くの担持色素及び半導体微粒子23Aが存在していることが好ましい。したがって、散乱粒子23Bの配合割合は少ない方が好ましく、散乱粒子23Bを全く含まないようにすることが好ましい。
また、第2層232は、前記可視光をある程度の割合で散乱及び反射させて、第1層231中における前記閉じ込め効果を生ぜしめるとともに、前記可視光をある程度の割合で透過させ、第4層234における散乱及び反射によって、第3層233中における前記閉じ込め効果を生ぜしめるために、前記可視光の散乱及び反射の割合をある程度範囲内でバランスさせる必要がある。このような観点から、第2層232中の散乱粒子23Bの配合割合は1−30重量%にすることが好ましい。この場合、第1層231及び第3層233中における前記可視光の閉じ込め効果をバランスさせることができ、前記可視光の使用効率がより増大して、色素増感型太陽電池20の光電変換効率を増大させることができる。
第4層234は、上述したように、第3層233中を透過してきた前記可視光を散乱させて第3層233へ向けて反射させ、第3層233中での前記閉じ込め効果を生ぜしめるためのものであり、第4層234を透過した光はもはや半導体層23へ向けて帰還することがない。したがって、第4層234はなるべく高い散乱及び反射効果を有することが好ましく、かかる観点より、散乱粒子23Bをより多く含むことが好ましい。具体的には、散乱粒子23Bの配合割合が30−100重量%であることが好ましい。
ここで散乱粒子23Bの配合割合とは、層中における散乱粒子23Bと半導体微粒子23Aの合計重量に対する散乱粒子23Bの重量割合のことである。
半導体微粒子23Aの一次平均粒子径は10−30nmであることが好ましい。これによって、表面積が増加し、色素を多く吸着することができ電子を多く発生させることができる。また、透明性を得ることができるという効果を奏することができる。この場合、前述した散乱及び反射の効果を増大させるべく、散乱粒子23Bの大きさは80−500nmとすることが好ましい。さらには150−300nmが好ましい。
第1層231から第3層233の各々の厚さは、例えば1−10μmとすることができる。第4層234は、例えば0.1−5μmとすることができる。また、半導体層23全体の厚さは、例えば20−30μmとすることができる。
半導体微粒子23Aは、例えば、酸化物半導体、硫化物半導体、セレン化物半導体、テルル化物半導体、砒素化物半導体、リン化物半導体、シリコン系半導体などの公知の半導体から選択し、1種または2種以上を混合して用いることができるが、特には酸化物半導体を用いることが好ましい。
前記酸化物半導体としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。特に、従来の色素増感型太陽電池において実績のある、酸化チタンを用いることが好ましい。
半導体層に担持させる色素としては、例えば、金属錯体系色素、有機色素等を用いることができる。金属錯体色素としては、金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン等やルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛を1以上含有する錯体等の金属錯塩が挙げられる。なかでも、ルテニウム金属錯体を好ましく用いることができ、その中でもルテニウムビピリジン錯体、ルテニウムターピリジン錯体が好ましい。
一方、有機色素としては、クマリン誘導体系色素、ポリエン系色素、メロシアニン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、スチリル系色素、キサンテン系色素等などが挙げられる。なかでも、クマリン誘導体系色素を好ましく用いることができる。
半導体23は、半導体粒子23Aと散乱粒子23Bとからなるため多孔質層となり、色素を多く吸着することができる。
また、半導体微粒子23Aは多孔質であることが好ましい。これによって、実質的な表面積が増大し、担持できる前記色素の絶対量を増大させることができ、色素増感型太陽電池20の光電変換効率をより増大させることができるようになる。
散乱粒子23Bは、上述した散乱及び反射の効果を奏すれば、如何なる種類の材料から構成しても良いが、好ましくは半導体材料、より好ましくは半導体微粒子23Aと同じ半導体材料、例えば酸化チタンから構成する。この場合、散乱粒子23Bに前記色素を担持させれば、散乱粒子23B自体も前記可視光による励起を通じて発電に寄与するようになる。また、色素増感型太陽電池においては、半導体層に担持した色素のみならず、酸化チタンなどから構成される半導体層自体も光電変換反応を通じてある程度発電に寄与するようになる。したがって、散乱粒子23Bを半導体微粒子23Aと同じ酸化チタンなどの半導体材料から構成することにより、散乱粒子23Bも光電変換反応を通じて発電に寄与できるようになる。
また、散乱粒子23Bの形状は、特に限定されず、球状、棒状、板状、及び不定形状等を用いることができる。しかしながら、放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星型を呈する酸化チタン粒子(以下、「星形TiO粒子」又はと略す場合がある)を用いることが好ましい。この酸化チタン粒子は、多数の反射面を有するため、光の散乱反射効果に非常に優れる。また、前記酸化チタン粒子において、複数の延在部が6つの延在部からなり、これら6つの延在部は互いに略等間隔で放射状に伸びている酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
前記酸化チタン粒子は、例えば、以下のように製造することができる。
最初に、チタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物及び有機アルカリ類を所定の溶媒中で混合し、反応溶液を作製する。前記チタンアルコキシドとしては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンを例示することができる。加水分解速度の制御性および入手容易性の観点からテトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンが好適に使用でき、テトライソプロポキシチタンが特に好適である。また、前記チタン金属塩としては、四塩化チタン及び硫酸チタンを例示することができる。
これらの加水分解生成物はメタチタン酸やオルトチタンと呼ばれる含水酸化チタンのケーキ状物質であるが、そのケーキ内部には加水分解の過程で生成されたアルコール類や塩酸、硫酸が含有されている。これらの物質は結晶成長の際に阻害物質となるため、純水を用いデカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法などの方法を用い洗浄することが好ましい。
また、前記有機アルカリ類としては、アミン類、高分子アミンおよびその塩、並びにアンモニアを例示することができる。前記アミン類としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。また前記高分子アミン及びその塩としては、前記アミン類からなる高分子アミンおよびその塩を例示することができる。なお、前記有機アルカリ類は、前記反応溶液に対してpH調整剤として働く。
さらに、前記溶媒は、特に限定されないが、水が好ましい。
前記反応溶液中のpHは9〜11であることが好ましく、さらにはpH9.5〜10.5であることが好ましい。これによって、本発明の酸化チタン粒子の好ましい態様である6つの延在部が互いに略等間隔で放射状に伸びた酸化チタン粒子を簡易に得ることができる。また、その一次粒径を100nm〜1000nmの範囲にすることができ、その外観形状と粒径範囲とに依存して、可視光から近赤外の範囲において高い光散乱能を有する酸化チタン粒子を得ることができるようになる。なお、前記反応溶液中のpHは前記有機アルカリ類の濃度を制御することによって調節する。
また、前記反応溶液中のチタン原子濃度は0.05mol/L〜10mol/Lの範囲であることが好ましく、特には0.1mol/L〜2.5mol/Lの範囲であることが好ましい。チタン原子濃度は、形成される酸化チタン粒子の粒径に直接影響を及ぼすので、所望する酸化チタン粒子の粒径に応じて適宜設定する必要があるが、上述したチタン原子濃度に設定することによって、100nm〜1000nmの範囲の一次粒径を有する酸化チタン粒子を簡易に作製することができるようになる。なお、前記チタン原子濃度は、反応溶液中のチタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物の濃度を適宜調節することによって制御することができる。
また、前記反応溶液のpH及びチタン原子濃度を上述したような好ましい範囲に設定することにより、前記反応溶液は一般的にスラリー状となる。
次いで、本発明においては、前記反応溶液をステンレスなどの密閉容器中で加熱する。
この場合、前記反応溶液中のチタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物は、高温及び加圧下で分解するとともに、得られたチタン源の結晶成長が進行し、目的とする星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。
なお、前記加熱処理は120℃〜350℃の温度範囲、さらには200℃〜350℃さらには230℃〜350℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、前記加熱処理時間は、2時間以上であることが好ましく、さらには12時間〜36時間であることが好ましい。また、かかる加熱処理において、室温から上記温度範囲までの加熱速度は特に限定しないが、100℃/時間以下であることが好ましい。さらに、前記加熱処理においては、結晶化度の均質化の観点より、前記反応溶液をスターラー又は撹拌羽などを用いて、強制的に撹拌することが好ましい。
また、前記加熱処理の前に、予備加熱処理を行うこともできる。上述した加熱処理のみでは、本発明の星形形状の酸化チタン粒子に加えて、粒状の酸化チタン粒子が形成される場合があり、目的とする前記星形形状の酸化チタン粒子の作製歩留まりが低下する場合がある。これに対して、前記加熱処理に加えて前記予備加熱処理を施すことにより、前記粒状酸化チタン粒子の形成割合が減少し、前記星形形状の酸化チタン粒子の作製歩留まりを向上させることができるようになる。
なお、前記予備加熱処理は、70℃〜150℃の温度範囲、さらには80℃〜120℃さらには100℃〜120℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、予備加熱時間は1時間以上であることが好ましく、さらには2時間〜4時間の範囲であることが好ましい。さらにこの場合においても、結晶化度の均質化の観点より、前記反応溶液をスターラー又は撹拌羽などを用いて、強制的に撹拌することが好ましい。
以上のような作製工程を経ることにより、本発明の星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。また、上述した作製工程において、反応溶液のpHなどにおいてそれぞれ好ましい態様を採ることにより、本発明の好ましい態様である、6つの延在部が放射状に伸びた星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。
前記星形形状の酸化チタン粒子は、各延在部がアナターゼ単相からなり、その結果全体として双晶を呈するようになる。このようにして、一次粒径が80〜300nm、条件によっては、300〜1000nmの酸化チタン粒子が得られる。また、条件の調整により各延在部はそれぞれが単結晶となる。
電解質24は、固体状及び液体状のものを使用することができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質等各種の電解質をもちいることが可能であり、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカボネート等の有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
透明電極21は、例えば、ガラス基板などの透明基板と、その上に形成される、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ITO、ATO、酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、あるいはこれらの表面に酸化スズ又はフッ素ドープ酸化スズの皮膜を設けた光透過性の透明導電層から構成される。また、表面にフッ素ドープ酸化スズなどの導電層を設けた導電性ガラスを透明電極として用いることもできる。
対向電極22は、例えば、Al、SUS等の金属やガラス及びプラスチックなどから構成される基板と、その上に形成されるPt、C、Ni、Cr、ステンレス、フッ素ドープ酸化スズ及びITOなどの導電層から構成される。なお、対向電極は、表面にフッ素ドープ酸化スズなどの導電層を設けた導電性ガラスから構成することもできる。
次に、図2に示す色素増感型太陽電池20の作製方法について説明する。最初に、透明電極21を準備し、一方で、半導体微粒子23A(一次粒子径10〜30nm)から、半導体微粒子ペーストを調整する。調整方法としては、例えば、半導体微粒子、分散剤、および溶剤を混合し、サンドミル等の分散装置を用いて分散させ、半導体微粒子分散液を得る。前記溶剤は、特に限定されないが、高沸点であることが望ましく、例えば水とアセチルアセトンの混合物、1−p−メンテン−8−オールとアセチルアセトンの混合物を好ましく用いることができる。また、前記分散剤としては、例えばポリエステル系分散剤を好ましく用いることができる。
次いで、得られた半導体微粒子分散液とバインダーとを攪拌、混合することによって半導体微粒子ペーストを得る。前記バインダーは、半導体微粒子ペーストの粘度増加と、半導体層23として形成した場合のクラック防止効果を有し、550℃以下で蒸発または燃焼するものが好ましい。例えばセルロース系バインダーや、ポリエチレングリコール等を好適に用いることができる。バインダーの添加量は半導体微粒子ペースト中の半導体微粒子の10〜60重量%が好ましい。
次いで、前記半導体微粒子ペーストに対して、適宜散乱粒子23Bを添加することによって、最終的な半導体微粒子ペーストを調整する。なお、添加すべき前記散乱粒子23Bの量は、半導体層23を構成する第1層231から第4層234中の散乱粒子23Bの配合割合に応じて適宜調節する。
次いで、透明基板21上に、上述のようにして調整した半導体微粒子ペーストを順次塗布し、必要に応じて乾燥させた後、空気中550℃以下の温度で焼成することにより、第1層231から第4層234までを形成し、半導体層23を形成する。前記塗布法としては、スクリーン印刷が好ましく、その他にフレキソ印刷、グラビア印刷、ドクターブレード、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ディップコーター等を用いることもできる。
次いで、半導体層23を適宜の溶剤に溶解させた色素溶液中に浸漬させ、または還流を行うことにより、半導体層23中の半導体微粒子23Aに前記色素を吸着及び担持させる。なお、前記色素の吸着及び担持は、半導体層23全体について行うこともできるが、各層231から234が形成される度に行うことが好ましい。この場合、各層中への吸着及び担持させるべき色素の絶対量を増大させることができる。
次いで、透明電極21に対向させて対向電極22を形成するとともに側枠部材15を設けてセルを形成し、このセル内部に電解質24を封入することによって、目的とする色素増感型太陽電池20を作製する。なお、側枠部材15は、絶縁性および光透過性を有する材料からなり、例えばエポキシ樹脂、フッ素含有樹脂等を用いて構成される。また、透明電極11及び対向電極12との間隔は、1〜1000μm程度で、特には10〜50μm程度が好ましい。
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実施例1)
半導体微粒子としてTiO超微粒子(一次粒子径10nm〜20nm)を用い、TiOを30重量%含む分散液を調製した。溶剤は1−p−メンテン−8−オール、分散剤はポリエステル系分散剤を用い、0.1mmビーズを用いたサンドミルで分散させた。この分散液にバインダーとしてエチルセルロースを5重量%添加して第1層および第3層形成用半導体微粒子ペーストを得た。また、同様にして、直方体形状のTiO粒子(一次粒子径200〜300nm)と前記TiO超微粒子とを用い、直方体形状TiOの配合割合を直方体形状TiO粒子とTiO超粒子の合計に対して10重量%及び70重量%とした第2層形成用ペースト及び第4層形成用ペーストをそれぞれ作製した。
透明電極として表面抵抗が10Ω/□のフッ素ドープSnO導電性ガラスを用い、この透明電極上に前記各ペーストをスクリーン印刷機を用いて順次塗布し、大気中、500℃で30分間焼成を繰り返し行い、前記透明電極上に4層からなる多孔質半導体層を形成した。この4層を合計した総膜厚は20μmであった。第1層から第4層までの各層の厚みはそれぞれ5μmであった。
次いで、前記多孔質半導体層を増感型色素(シス−ジ(チオシアネート)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II))のエタノール溶液に浸漬し、1時間還流を行って色素を吸着及び担持させた。また、フッ素ドープSnO基板上にPtをスパッタ成膜し、対向電極を作製した。その後、前記透明電極及び前記対向電極を間隔25μmで対向させて配置し、エポキシ樹脂で側枠部材を形成してセルを構成した。次いで、両電極の間隔は25μmとした。セル内に電解質としてI、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリルに溶かした溶液を封入し、太陽電池を得た。
(実施例2)
前記散乱粒子を、前記直方体形状のTiO粒子から星形のTiO2粒子(一次粒子径200〜300nm)に変えた以外は、実施例1と同様にして太陽電池を得た。
(比較例1)
上記実施例1において、第1層形成用半導体微粒子ペーストのみを使用して総膜厚20μmの多孔質半導体層を形成した以外は、同様な太陽電池を構成した。つまり実施例1における第1層のみで総膜厚20μmの多孔質半導体層を形成した。
(比較例2)
上記実施例1において、第1層形成用半導体微粒子ペーストおよび第4層形成用ペーストを使用して総膜厚20μmの多孔質半導体層を形成した以外は、同様な太陽電池を構成した。つまり実施例1における第1層と第4層のみで構成され、各層の厚みは、15μm、5μmであった。
(比較例3)
上記実施例1において、第1層形成用半導体微粒子ペーストおよび第2層形成用ペーストを使用して総膜厚20μmの多孔質半導体層を形成した以外は、同様な太陽電池を構成した。つまり実施例1における第1層と第2層のみで構成され、各層の厚みは、それぞれ10μmであった。
(比較例4)
上記実施例1において、第1層形成用半導体微粒子ペースト、第2層形成用ペースト、TiO超微粒子(一次粒子径10nm〜20nm)に対する直方体形状TiO散乱粒子(一次粒子径200〜300nm)の割合が50%である第2(B)の層形成用ペースト、および第4層形成用ペーストを使用して総膜厚20μmの多孔質半導体層を形成した以外は、同様な太陽電池を構成した。つまり実施例1における第1層、第2層及び前記第2(B)の層と実施例1における第4層とで構成され、散乱粒子の混合割合が徐々に増えていく方向で多孔質膜を構成した。なお、各層の厚みは、それぞれ5μmであった。
(比較例5)
比較例4において、膜構造は同一で総膜厚を40μmとした以外は同様な太陽電池を構成した。各層の厚みは、それぞれ10μmであった。
上記実施例1および比較例1、比較例2、比較例3、比較例4で得られた太陽電池について、それぞれエネルギー変換効率を測定した。比較例1の太陽電池におけるエネルギー変換効率は7%、比較例2は8%、比較例3は8.5%、比較例4は9%、実施例1の太陽電池におけるエネルギー変換効率は10.0%、実施例2の太陽電池におけるエネルギー変換効率は11.0%であり、どの比較例に比べてもエネルギー変換効率が向上していることが認められた。そのうちわけでは、光電変換特性のうち、光短絡電流の増加が著しく、光閉じ込め効果が高いことが認められた。
また、比較例5の結果では、総膜厚を増加した結果、色素吸着量を実施例よりも増やすことが可能になったが、光電変換特性は実施例よりも低い8%であった。これは、評価項目の光短絡電流Jscが同程度であったが、開放電圧Vocが90%ほど低くなり、総合的に電池特性が劣化してしまったことに起因する。
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
従来の色素増感型太陽電池の一例を示す概略構成図である。 本発明の色素増感型太陽電池の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
10、20 色素増感型太陽電池
11、21 透明電極
12、22 対向電極
13、23 半導体層
13A、23A 半導体微粒子
23B 散乱粒子
14、24 電解質
15、25 側枠部材

Claims (14)

  1. 透明電極と、この透明電極に対向するようにして設けられた対向電極と、前記透明電極及び前記対向電極間に封入された電解質層と、前記電解質層と接触するようにして前記透明電極上に設けられた色素を担持した半導体層とを具え、
    前記半導体層は、半導体微粒子と、この半導体微粒子より粒子径の大きな散乱粒子とからなり、前記散乱粒子の配合割合が、その前後における前記散乱粒子の配合割合より小さい部分を有することを特徴とする、色素増感型太陽電池。
  2. 前記半導体層は4層以上の多層膜構造体を呈し、前記透明電極側から数えて第2層及び最外層における前記散乱粒子の配合割合が、前記透明電極側から数えて第1層における前記散乱粒子の配合割合より大きく、前記第2層及び前記最外層の間に位置する少なくとも一層における前記散乱粒子の配合割合よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記多層膜構造体は4層からなり、前記第2層における前記散乱粒子の前記配合割合が、前記第1層及び前記透明電極から数えて第3層における前記散乱粒子の配合割合よりも大きく、前記透明電極から数えて第4層における前記散乱粒子の配合割合以下であることを特徴とする、請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記第1層及び前記第3層は、前記散乱粒子を含まないことを特徴とする、請求項3に記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記第2層における前記散乱粒子の前記配合割合が、1−30重量%であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記第4層における前記散乱粒子の前記配合割合が、30−100重量%であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一に記載の色素増感型太陽電池。
  7. 前記半導体微粒子の一次粒子径が、10−30nmであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載の色素増感型太陽電池。
  8. 前記散乱粒子の一次粒子径が、80−500nmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の色素増感型太陽電池。
  9. 前記散乱粒子は半導体材料からなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一に記載の色素増感型太陽電池。
  10. 前記半導体微粒子と前記散乱粒子とは同じ半導体材料からなることを特徴とする、請求項9に記載の色素増感型太陽電池。
  11. 前記半導体材料は酸化チタンであることを特徴とする、請求項10に記載の色素増感型太陽電池。
  12. 前記半導体微粒子は多孔質であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載の色素増感型太陽電池。
  13. 前記散乱粒子は、放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈する酸化チタン粒子であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の色素増感型太陽電池。
  14. 前記酸化チタン粒子において、前記複数の延在部は6つの延在部からなり、これら6つの延在部は互いに略等間隔で放射状に伸びていることを特徴とする、請求項13に記載の色素増感型太陽電池。
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