JP2005129259A - 光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

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岳 藤橋
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裕則 荒川
Kojiro Hara
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Abstract

【課題】高い光電変換効率で高電圧及び高電流の発電を実現する新規な、色素増感型の光電変換素子を提供する。
【解決手段】電極基板21上に複数の酸化物微粒子が集合してなる酸化物半導体層23が設けるとともに、電極基板22上には所定の半導体層25が設ける。酸化物半導体層23の表面には所定の色素体を吸着させる。次いで、電極基板21及び22を、酸化物半導体層23及び半導体層25が対向するようにして組み合わせてセル29を構成する。次いで、セル29内に電解質24を充填して、光電変換素子20を得る。
【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池等に有効に使用できる光電変換素子及びこれを用いた太陽電池に関するものである。
化石燃料に代るエネルギー源として太陽光を利用する太陽電池が注目され、種々の研究が行われてきた。近年、新しいタイプの太陽電池として、特表平5−504023号公報、特許第2664194号公報、国際公開WO94/05025号公報に、金属錯体の光誘起電子移動を応用した光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池が開示されている。また、シリコン系やCdTe/CdSなどの半導体からなる光電変換素子を用いた太陽電池など、多くの研究がされている。
図1は、従来の色素増感型の光電変換素子の例を模式的に示したものである。図1に示す光電変換素子10においては、アノード電極11及びカソード電極12が、数十μm〜数mmの間隔をおいて対向するように配置されてセル19を構成するとともに、その内部に電解質14が充填されている。また、アノード電極11の、カソード電極12と対向する側の主面11A上には複数の酸化物半導体微粒子からなる酸化物半導体層13が設けられている。この酸化物半導体層13には多数の色素体が吸着されている。
図1に示すような光電変換素子10に対して外部から所定の波長域の光が入射すると、前記色素体が前記光を吸収することによって励起され、発生した電子を酸化物半導体層13に授与する。次いで、前記電子はアノード電極11に吸収される。一方、カソード電極12から電解質14を介して電子が励起された色素に戻り、定常状態となる。このサイクルを繰り返すことによって発電が連続して行われるようになる。
しかしながら、上述したような従来の光電変換素子において、発電機能は前記色素体の吸収波長領域でのみ生じ、前記発電機能に対して光エネルギーが有効に利用されていなかった。現在、色素増感型光電変換素子に用いる色素体の開発は盛んに行われているが、長波長領域吸収色素体は、短波長吸収色素よりも量子効率等が悪く、現時点で光の波長領域を広くカバーできる色素は得られていない。このため、従来の色素増感型光電変換素子の光電変換効率は8〜10%程度であり、得られる電圧(起電力)は0.6〜0.8V程度であった。
本発明は、高い光電変換効率で高電圧及び高電流の発電を実現する新規な、色素増感型の光電変換素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明は、
色素体を吸着した第1の半導体層を含む第1の光電変換層と、第2の半導体層を含む第2の光電変換層とを具え、
前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とを電気的に接続したことを特徴とする、光電変換素子に関する。
図1に示すような従来の色素増感型光電変換素子においては、アノード電極側に設けられた色素体のみで発電が行われており、カソード電極側は電解質への電子受け渡し以外、発電に対して何らの寄与もしなかった。すなわち、従来の色素増感型光電変換素子は、前記色素体が吸着した半導体層のみが発電に寄与し、いわゆる単一の光電変換層のみを有するような構成を呈していた。
これに対して、本発明においては、従来のような色素増感型の発電機能を有する第1の光電変換層に加えて、所定の光によって励起されて発電機能を発揮する半導体層を含む第2の光電変換層を設けている。したがって、前記第1の光電変換層での発電機能と前記第2の光電変換層での発電機能とが相乗され、光電変換素子全体として大きな発電機能を発揮するようになる。この結果、大電圧及び大電流の発電を実現することができる。
また、前記色素体と前記半導体層とを、それぞれ異なる波長領域の光で励起されるような材料から構成することによって、前記光電変換素子に照射する光エネルギーを効率的に利用することができ、高い光電変換効率を実現することができる。
本発明の好ましい態様においては、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とは、電解質を介して電気的に接続する。これによって、前記第1の光電変換層及び前記第2の光電変換層の形態などに依存することなく、これら光電変換層同士の直列的な接続を簡易に実現することができる。また、光電変換素子としての形態をセルなどの所定形状に簡易に作製することができる。
また、本発明の他の好ましい態様においては、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とを電気的に直列に接続する。これによって、より高い起電力を生ぜしめることができ、光電変換効率を増大させることができる。
また、本発明の他の好ましい態様においては、前記第1の光電変換層の前記第1の半導体層は多孔質状に形成する。これによって、半導体粒子表面での電解質の酸化還元反応を促進することが可能となる。
さらに、本発明のその他の好ましい態様においては、前記第2の光電変換層の前記第2の半導体層は多孔質状に形成する。これによって半導体粒子表面での電解質の酸化還元反応を促進することが可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、高い光電変換効率で高電圧及び高電流の発電を実現する新規な、色素増感型の光電変換素子を提供することができる。
発明の実施の形態
図2は、本発明の光電変換素子の一例を示す構成図である。図2に示す光電変換素子20においては、電極基板21上に複数の酸化物微粒子が集合してなる酸化物半導体層23が設けられており、電極基板22上には所定の半導体層25が設けられてセル29を構成している。セル29内は所定の電解質が充填されている。また、酸化物半導体層23の表面には図示しない色素体が吸着されている。電極基板21及び色素体を含む酸化物半導体層23は第1の光電変換層26を構成し、電極基板22及び半導体層25は第2の光電変換層27を構成している。
第1の光電変換素子26をアノード側に設定し、第2の光電変換素子27をカソード側に設定して発電を行う場合を考える。光電変換素子20に対して外部より光エネルギーが照射されると、第1の光電変換層26の、酸化物半導体層23に吸着した前記色素体は所定波長域の光エネルギーを吸収して励起される。一方、第2の光電変換層27の半導体層25も所定波長域の光エネルギーを吸収することによって励起される。したがって、第1の光電変換層26及び第2の光電変換層27それぞれにおいて発電が行われるようになる。
一方、第1の光電変換層26及び第2の光電変換層27は、電解質24を介して直列的に接続されているので、光電変換素子20全体としては、各光電変換層での発電の合計として得られる。したがって、色素増感による発電のみを利用した従来の色素増感型の光電変換素子に対して大電圧及び大電流の発電を行うことができる。
また、前記色素体の吸収波長領域と、半導体層25の吸収波長領域とをそれぞれ異なるようにしておけば、光電変換素子20全体としての光エネルギーの吸収効率が増大し、光電変換効率を増大させることができる。例えば、前記色素体の吸収波長領域を短波長領域に設定し、半導体層25の吸収波長領域を長波長領域に設定することができる。また、前記色素体の吸収波長領域を長波長領域に設定し、半導体層25の吸収波長領域を短波長領域に設定することができる。
上述した発電過程において、酸化物半導体層23に吸着した前記色素体は、上述した色素増感による励起作用によって電子が放出され、この放出電子は酸化物半導体層23に授与されるとともに電極基板21に吸収されるようになる。このとき、前記色素体は電子が不足した状態となっているが、半導体層25も上述した光励起によって電子を放出するようになるので、この放出電子が電解質24を通じて前記色素体に供給されるようになる。
したがって、第2の光電変換層27の、半導体層25おける伝導帯のエネルギー準位が、第1の光電変換層26の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位と、最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位との間にあることが好ましい。また、電解質24の酸化還元電位が、第1の光電変換層26の、前記色素体の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位と、第2の光電変換層27の、半導体層25における伝導帯のエネルギー準位との間にあることが好ましい。
これによって、半導体層25から電解質24への電子の授受をスムーズに行うことができるようになるとともに、電解質24から前記色素体への電子授与をスムーズに行うことができる。
なお、上記要件を満足するときの、エネルギー準位の状態を図3に示す。
また、電解質24の酸化還元電位と、第2の光電変換層27の半導体層25の伝導帯のエネルギー準位との差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。さらに、電解質24の酸化還元電位と、第1の光電変換層26中における前記色素体の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位との差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。また、第1の光電変換層26の酸化物半導体層23の伝導帯のエネルギー準位は、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位以下であることが好ましく、このエネルギーレベルの差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。
これによって、上述したような電解質24を介した前記色素体及び半導体層25間の電子の授受を効率的に行うことができる。このため、より広範囲な励起波長領域(吸収波長領域)に対応でき、比較的大きな電圧を得ることができるようになる。
なお、図3には、酸化物半導体層23の伝導帯のエネルギー準位も併せて示している。
第1の光電変換素子26をカソード側に設定し、第2の光電変換素子27をアノード側に設定して発電を行う場合も、基本的には上記同様にして発電が行われる。
但し、この場合においては、第2の光電変換素子27の、半導体層25からの放出電子は電極基板22に吸収され、不足電子は電解質24を介して前記色素体から放出された電子によって補填されるようになる。
したがって、第1の光電変換層26の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位が、第2の光電変換層27の、半導体層25における伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との間にあることが好ましい。さらに、電解質24の酸化還元電位が、第2の光電変換層27の、半導体層25における価電子帯のエネルギー準位と、第1の光電変換層26の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位との間にあることが好ましい。
これによって、上述したような電子の授受をスムーズに行うことができ、第1の光電変換層26及び第2の光電変換層27の相乗効果に大電流及び大電圧の発電を簡易に行うことができるようになる。なお、このときのエネルギー準位の状態を図4に示す。
また、電解質24の酸化還元電位と、第1の光電変換層1中における前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位との差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。さらに、電解質24の酸化還元電位と、第2の光電変換層27の半導体層25の価電子帯のエネルギー準位との差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。また、第1の光電変換層26の酸化物半導体23の価電子帯のエネルギー準位は、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位以下であることが好ましく、このエネルギーレベルの差は0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。
これによって、上述したような電解質24を介した前記色素体及び半導体層25間の電子の授受を効率的に行うことができ、このため、より広範囲な励起波長領域(吸収波長領域)に対応でき、比較的大きな電圧を得ることができるようになる。
なお、図4には、酸化物半導体層23の伝導帯のエネルギー準位も併せて示している。
また、酸化物半導体層23は多孔質状に形成することができる。この場合、前記色素体を多量に吸着することができ、大電流かつ大電圧の発電を簡易に行うことができる。
さらに、半導体層24も多孔質状に形成することができる。この場合、実質的な表面積が増大し、光エネルギーの実質的な吸収面積が増大するので、大電流かつ大電圧の発電を簡易に行うことができる。
酸化物半導体層23は、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。図2に示す具体例においては、酸化物半導体層23を構成する酸化物微粒子を上述した化合物から構成する。
半導体層25は、硫化物半導体、セレン化物半導体、テルル化物半導体、砒素化物半導体、リン化物半導体、酸化物半導体、シリコン系半導体の群から選ばれる少なくとも1種から構成することができる。硫化物半導体としては、硫化亜鉛、硫化モリブデン等が例示できる。
上述した例においては、第1の光電変換層を酸化物半導体から構成したがそれ以外の半導体材料を用いることもできる。また、アノード側の光電変換層に使用する半導体はn型半導体が好ましく、カソード側の光電変換層に使用する半導体はp型半導体が好ましい。
電解質24は、特に限定はされず、固体状及び液体状のものを使用することができる。具体的には、ヨウ素系電解質、臭素系電解質、セレン系電解質、硫黄系電解質等各種の電解質をもちいることが可能であり、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカボネート等の有機溶剤に溶かした溶液等が好適に用いられる。
なお、上述したような半導体は、水と接しながら光を照射すると溶解性を示すことがある。したがって、電解質として溶液等の液状のものを用いる場合には、非水系溶媒を用いることが好ましい。
また、上述した色素体としては、ルテニウムビピリジン系の錯体を好ましく用いることができるが、その他の有機色素を用いることもできる。
電極基板21及び22は、フッ素含有酸化錫等の導電性ガラス、あるいはガラス基板上にPt電極層、C電極層、及びITO等の光透過性電極層を設けたものが好適に用いられる。
また、第2の光電変換層27における半導体層25の表面には酸化還元触媒を担持させることができる。これによって、半導体層25から電解質24への電子の授受をより良好に行うことができるようになる。前記酸化還元触媒としては、Pt、Ag、Au、Pd、Rh、Ru、パラジウム酸化物、パラジウム塩化物、ルテニウム酸化物、ルテニウム塩化物、白金酸化物、及び白金塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
次に、図2に示す光電変換素子20の製造方法について説明する。
最初に電極基板21を準備し、この金属電極21上に酸化物半導体層23を形成する。酸化物半導体層23は以下のようにして形成する。最初に、酸化物半導体微粒子、分散剤、及び溶剤を混合し、サンドミル等の分散装置を用いて分散させ、酸化物半導体微粒子分散液を調製した後、この分散液をバインダーと混合撹拌することによって、酸化物ペーストを得る。次いで、この酸化物ペーストを電極基板21上に例えば5〜15μm程度、好ましくは10μm程度の厚さに塗布する。次いで、必要に応じて乾燥させた後、例えば空気中550℃以下の温度で焼成することによって形成する。
前記溶剤は高沸点であることが望ましく、例えば水とアセチルアセトンの混合物、1−p−メンテン−8−オールとアセチルアセトンの混合物を好ましく用いることができる。また、分散剤としては例えばポリエステル系分散剤を好ましく用いることができる。
前記バインダーは、酸化物ペーストの粘度増加と、酸化物半導体層23のクラック防止効果とを有し、550℃以下で蒸発または燃焼するものが用いられる。例えばセルロース系バインダーや、ポリエチレングリコール等を好適に用いることができる。バインダーの添加量は酸化物ペースト中の酸化物半導体微粒子に対して10〜60重量%が好ましい。
また、酸化物ペーストを塗布する方法としてはスクリーン印刷が好ましく、その他にフレキソ印刷、グラビア印刷、ドクターブレード、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ディップコーター等を用いて行うこともできる。
その後、形成された酸化物半導体層23及び電極基板21からなる多層膜構造体を、所定の色素体が溶解されてなる色素溶液中に浸漬させる、又は前記色素溶液中で還流させることにより、酸化物半導体層23に対して前記色素体を吸着させる。
次に、電極基板22を準備し、この基板上に、スパッタ法、化学気相法、蒸着法、メッキ法、気相置換法、スプレー法、電析法、熱分解法、スクリーン印刷法など種々の方法で半導体層25を形成する。
次いで、酸化物半導体層23を含む電極基板21及び半導体層25を含む電極基板22を、例えば1〜1000μm程度、特には10〜50μm程度離隔させて対向するようにして配置し、セル29を構成する。次いで、内部に電解質24を注入することによって目的とする光電変換素子20を得る。
なお、セル30の側壁は、絶縁性及び光透過性を有する材料からなり、例えばエポキシ樹脂、フッ素含有樹脂等を用いて構成される。
図5は、本発明の光電変換素子の他の一例を示す構成図である。図5に示す光電変換素子30においては、第1の光電変換層26と第2の光電変換層27の間に、電極31が設けられている。これにより、第1の光電変換層26と第2の光電変換層27とを両方ともアノード電極とする、あるいは両方ともカソード電極とすることにより、第1の光電変換層26と電極31との間および第2の光電変換層27と電極31との間に起電力が発生する。つまり、電解質を経由し光電変換層26と27が並列の関係になっている。
ここで、電極31は、第1の光電変換層26と第2の光電変換層27の両方に光をあてることが必要なために、光を透過する電極であることが好ましい。例えば、メッシュ状もしくはスプライト状の電極構造を有しているとメッシュ、スプライトの間から光が透過するため好ましい。材質は、電解質に対し、化学的に安定なものが望ましく、例えばカーボン、透明性導電酸化物などが好ましい。また、電解質の酸化還元反応を促進するため、電極31には、上述した酸化還元触媒を担持させることが好ましい。
化学ポテンシャルについては、第1の光電変換層26側では、色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位と、最両被占軌道(HOMO)のエネルギー順位との間に電解質24の酸化還元電位があり、第2の光電変換層27側では、第2の半導体層における伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との間に電解質24の酸化還元電位があることが好ましい。また、第1の光電変換層26と第2の光電変換層27をアノード電極として動作させる場合には、第1の光電変換層の色素体の最高被占軌道(HOMO)および第2の光電変換層の第2の半導体層における価電子帯の準位と電解質24の酸化還元電位とのエネルギー差はそれぞれ0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。
なお、図6には、酸化物半導体層23の伝導帯のエネルギー準位も併せて示している。
また、図5に示す光電変換素子は図2に示す光電変換素子と同様にして作製することができる。
さらに、第1の光電変換層26と第2の光電変換層27とをカソード電極として動作させる場合には、第1の光電変換層の色素体の最低空軌道(LUMO)及び第2の光電変換層の第2の半導体層における伝導帯の準位と電解質24の酸化還元電位とのエネルギー差はそれぞれ0.1V以上が好ましく、さらには0.2〜0.7Vが好ましい。このときのエネルギー準位の関係を図7に示す。
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実施例1)
(第1の光電変換層1の形成)
酸化物微粒子としてTiO超微粒子(粒径10nm〜20nm)を用い、前記TiO微粒子を30重量%含む分散液を調製した。溶剤は1−p−メンテン−8−オール、分散剤はポリエステル系分散剤を用い、0.1mmビーズを用いたサンドミルで分散させた。次いで、前記分散液にバインダーとしてエチルセルロースを5重量%添加し、酸化物ペーストを得た。この酸化物ペーストを表面抵抗が10Ω/□のSnO導電性ガラスからなる電極基板上にスクリーン印刷機を用いて塗布した。そして、大気中、500℃で30分間焼成を行い、多孔質状のTiO酸化物半導体層を得た。
次いで、増感色素(シス−ジ(チオシアネート)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II))のエタノール溶液に浸漬し、1時間還流を行って前記色素体を吸着させた。
なお、TiOの伝導帯のエネルギー準位が−0.5V/NHEであり、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位が−1.0V/NHEであり、前記色素体の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位が+0.8V/NHEであった。
(第2の光電変換層の形成)
MoS超微粒子(粒径10〜50nm)を50重量%含む分散液を調製した。なお、溶剤はエチレングリコールを用い、0.1mmビーズを用いたサンドミルで分散させて化合物半導体ペーストを得た。次いで、SUS板からなる電極基板を準備し、この電極基板上に前記化合物半導体ペーストをスクリーン印刷機を用いて塗布した。そして、窒素中、500℃で30分間焼成を行い、MoS多孔質半導体層を得た。得られたMoS多孔質半導体層に対し、Pt塩溶液を塗布した後、乾燥及び焼成することによって白金担持半導体層を作製した。
なお、MoSの伝導帯のエネルギー準位は−0.2V/NHEであり、価電子帯のエネルギー準位は+1.0V/NHEであった。
(光電変換素子の形成)
上述のようにして得たTiO酸化物半導体層を有する電極基板と、MoS半導体層を有する電極基板とを対向して配置してセルを構成するとともに、I、LiI、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド等をアセトニトリルに溶かした電解質溶液を封入して光電変換素子を得た。なお、電解質であるヨウ素の酸化還元電位は、+0.4V/NHEであった。
(実施例2)
実施例1と同様にして第1の光電変換層を形成した後、MoS超微粒子に代えてCu(In,Ga)Se超微粒子(粒径10〜100mm)を用い、実施例1と同様にして第2の光電変換層を形成した。次いで、前記第1の光電子変換層及び前記第2の光電変換層の間に白金超微粒子を担持させた、カーボンメッシュ電極を配置し、実施例1同様にして光電変換素子を形成した。このとき、前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換曹をアノードとし、前記カーボンメッシュ電極をカソードとしたCu(In,Ga)Seの伝導帯のエネルギー準位は−0.6V/NHEであり、価電子帯のエネルギー準位は+0.6V/NHEであった。
(比較例)
上記実施例1において、第2の光電変換層を作製することなく、第1の光電変換層のみからなる色素増感型の光電変換素子を作製した。なお、電極基板としては、透明導電性ガラスにPtをスパッタしたものを用いた。
上記実施例及び比較例で得た光電変換素子に対して、JIS C8935に基づきエネルギー変換効率を測定した。比較例の光電変換素子における開放電圧Vocは0.7Vであり、エネルギー変換効率は10.0%であった。実施例1の光電変換素子における開放電圧Vocは1.3Vであり、エネルギー変換効率は15.0%であった。また、実施例2の光電変換素子における開放電圧Vocは0.65Vであり、エネルギー変換効率は13.7%であった。
これらの結果より、実施例1に関する直列接続の光電変換素子は、従来の色素増感型の光電変換素子と比較して、開放電圧Vocは約2倍に向上し、エネルギー変換効率が5.0%も向上していることが認められた。また、実施例2に関する並列接続の光電変換素子は、従来の色素増感型の光電変換素子と比較して、開放電圧Vocはほぼ同一であるが、エネルギー変換効率は約4%向上していることが認められた。
以上、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、光電変換層を電解質を介することなく接続することもできる。
従来の色素増感型の光電変換素子の一例を示す概略構成図である。 本発明の光電変換素子の一例を示す概略構成図である。 図2に示す光電変換素子における、各構成要素のエネルギー準位の一例を示す模式図である。 同じく、図2に示す光電変換素子における、各構成要素のエネルギー準位の一例を示す模式図である。 本発明の光電変換素子の他の例を示す概略構成図である。 図5に示す光電変換素子における、各構成要素のエネルギー準位の一例を示す模式図である。 図5に示す光電変換素子における、各構成要素のエネルギー準位の他の例を示す模式図である。
符号の説明
10、20、30 光電変換素子
11 アノード電極
12 カソード電極
13、23 酸化物半導体層
14、24 電解質
19、29 セル
21、22 電極基板
25 半導体層
26 第1の光電変換層
27 第2の光電変換層
31 電極

Claims (19)

  1. 色素体を吸着した第1の半導体層を含む第1の光電変換層と、第2の半導体層を含む第2の光電変換層とを具え、
    前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とを電気的に接続したことを特徴とする、光電変換素子。
  2. 前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とは、電解質を介して電気的に接続されたことを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とは電気的に直列に接続したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  4. 前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層とは電気的に並列に接続したことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
  5. 前記第1の半導体層は多孔質層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の光電変換素子。
  6. 前記第1の半導体層は酸化物からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の光電変換素子。
  7. 前記第1の半導体層は複数の酸化物微粒子を含むことを特徴とする、請求項6に記載の光電変換素子。
  8. 前記第2の半導体層は多孔質層であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の光電変換素子。
  9. 前記第1の光電変換層をアノード側に配置し、前記第2の光電変換素子をカソード側に配置し、前記第2の光電変換層の、前記第2の半導体層における伝導帯のエネルギー準位が、前記第1の光電変換層の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位と、最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位との間にあることを特徴とする、請求項1〜3及び5〜7のいずれか一に記載の光電変換素子。
  10. 前記電解質の酸化還元電位が、前記第1の光電変換層の、前記色素体の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位と、前記第2の光電変換層の、前記第2の半導体層における伝導帯のエネルギー準位との間にあることを特徴とする、請求項9に記載の光電変換素子。
  11. 前記第1の光電変換層をカソード側に配置し、前記第2の光電変換素子をアノード側に配置し、前記第1の光電変換層の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位が、前記第2の光電変換層の、前記第2の半導体層における伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との間にあることを特徴とする、請求項1〜3及び5〜7のいずれか一に記載の光電変換素子。
  12. 前記電解質の酸化還元電位が、前記第2の光電変換層の、前記第2の半導体層における価電子帯のエネルギー準位と、前記第1の光電変換層の、前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位との間にあることを特徴とする、請求項11に記載の光電変換素子。
  13. 前記第2の光電変換層は、酸化還元触媒を含むことを特徴とする、請求項1〜3及び5〜12のいずれか一に記載の光電変換素子。
  14. 前記第1の光電変換層と前記第2の光電変換層との間に、光を透過する電極を配置し、前記電解質の酸化還元電位が、前記第1の光電変換層の前記色素体の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位と、最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位との間にあり、前記第2の光電変換層の前記第2の半導体における伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との間にあることを特徴とする、請求項4に記載の光電変換素子。
  15. 前記光を透過する電極は、酸化還元触媒を担持していることを特徴とする、請求項14に記載の光電変換素子。
  16. 前記酸化還元触媒は、Pt、Ag、Au、Pd、Rh、Ru、パラジウム酸化物、パラジウム塩化物、ルテニウム酸化物、ルテニウム塩化物、白金酸化物、及び白金塩化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項13又は15に記載の光電変換素子。
  17. 前記第1の光電変換層の前記半導体層は、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項6〜16のいずれか一に記載の光電変換素子。
  18. 前記第2の光電変換層の前記半導体層は、硫化物半導体、セレン化物半導体、テルル化物半導体、砒素化物半導体、リン化物半導体、酸化物半導体、シリコン系半導体の群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一に記載の光電変換素子。
  19. 請求項1〜18のいずれか一に記載の光電変換素子を含むことを特徴とする、太陽電池。
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