JP2005308697A - 糖鎖分離方法、検体分析方法、液体クロマトグラフィー装置、並びに糖鎖分析方法及び糖鎖分析装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 糖鎖を保持し得る耐アルカリ性の充填剤を充填したカラムに糖タンパク質のヒドラジン分解液を通液し、カラムにヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液して、糖タンパク質のヒドラジン分解液から糖鎖を分離する。
【選択図】 なし
Description
しかし抗体は必ずしも目的糖鎖のみを認識するとは限らず、抗体によっては目的以外の糖鎖を認識することもあり、近年は選択性の高い分析化学的手法による糖鎖解析が注目されている。
また、本発明の分析方法または液体クロマトグラフィー装置によれば、糖鎖その他の検体を短時間で効率的に分析することができる。
さらに、本発明の糖鎖分析方法または糖鎖分析装置によれば、糖鎖を短時間で効率的に分析することができる。
まず、糖タンパク質から糖鎖を分離する方法について説明する。
本実施形態では、まず、糖タンパク質のヒドラジン分解液を調製する分解工程を行なって糖タンパク質から糖鎖を切り出し、次に、本発明の糖鎖分離方法によってヒドラジン分解液から糖鎖を分離する。ここで、本発明の糖鎖分離方法は、糖タンパク質のヒドラジン分解液から糖鎖を分離する方法であって、糖鎖を保持し得る充填剤を充填したカラムに、糖タンパク質のヒドラジン分解液を通液する糖鎖保持工程と、前記カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する洗浄工程とを有する。さらに、糖タンパク質の糖鎖が、ヒドラジンによる糖鎖の切り出し前にアセチル基を有している場合には、洗浄工程後、カラムにアセチル化反応剤を通液するアセチル化工程と、カラムにアセチル化反応剤を溶出させる脱塩剤を通液する反応剤洗浄工程とを行なう。
[1]分解工程
分解工程では糖タンパク質をヒドラジンにより分解して、糖タンパク質のヒドラジン分解液を調製する。
ヒドラジン分解液の調製方法に特に制限は無く、公知の任意の方法により調製することができる。ただし、通常は、分析の対象となる試料(臓器、組織、糖タンパク質等)にヒドラジンを加え、加熱することにより調製する。これにより、ヒドラジン分解液中でタンパク質はほぼ完全に分解し、タンパク質に結合していた糖鎖はタンパク質から遊離する。なお、上記の方法によりヒドラジン分解液を調製する場合、加熱する温度は通常60℃以上、好ましくは90℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは110℃以下である。
糖鎖保持工程では、分解工程において調製したヒドラジン分解液をカラム(以下適宜、「糖鎖保持カラム」という)に通液する。
糖鎖保持カラムの充填剤は、糖鎖を保持しうる性能をもつ充填剤であれば他に制限は無く、任意の物質を用いることができる。具体例を挙げると、通常、オクタデシルシラン、オクチルシラン、シクロヘキシルシラン、フェニルシラン、シアノプロピルシラン、シリカゲルなどのシリカ系充填剤;フロリジルなどのケイ酸マグネシウム系充填剤;スチレンジビニルベンゼンなどのポリスチレン系充填剤;アミノ、アミドなどの順相系充填剤;グラファイトカーボンなどのカーボン系充填剤;セルロース、セファデクスなどの高分子糖系充填剤等が挙げられる。ただし、ヒドラジン溶解液はアルカリ性であるので、充填剤の加水分解による劣化、及び残骸流出防止の観点より、耐アルカリ性の物質が好ましく、具体的には、グラファイトカーボン、スチレンジビニルベンゼン等が好ましい。ここで耐アルカリ性とは、pH=7以上の溶液と接した場合、分解または変性しないことをいう。なお、これら充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
さらに、上記充填剤の充填密度は任意であるが、通常0.2g/cm2以上、好ましくは0.3g/cm2以上、また、通常1.0g/cm2以下、好ましくは0.8g/cm2以下である。
ヒドラジン分解液の通液速度は任意であるが、糖タンパク質などの試料の量、及び、使用するカラムの体積などに応じて設定することが好ましい。例えば、通常0.1mL/min以上、好ましくは0.5mL/min以上、また、通常100mL/min以下、好ましくは5mL/min以下が望ましい。
洗浄工程では、糖鎖保持工程でヒドラジン分解液を通液した糖鎖保持カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する。糖鎖保持カラムに洗浄溶媒を通液することにより、糖鎖を糖鎖保持カラムの充填剤に保持したままヒドラジンを完全に除去することができる。
また、充填剤がセルロースなどである順相系カラムに対しては、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトニトリル、アセトン、クロロホルムなどの有機溶媒を用いることが好ましく、中でもブタノール、エタノール、若しくはそれらの混合溶媒を用いることがより好ましい。
なお、上記の洗浄溶液は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
以上のように、糖鎖保持工程及び洗浄工程を行なうことにより、ヒドラジン分解液中の糖鎖を分離し、糖鎖保持カラムの充填剤に保持された糖鎖として得ることができる。
次に、アセチル化工程を行なう。糖鎖が本来糖タンパク質中でアセチル基を有しているものである場合には、洗浄工程の直後では目的とする糖鎖を得ることができない。即ち、このような場合にはヒドラジン分解液中では糖鎖からアセチル基が脱離するため、洗浄工程直後には、目的とする糖鎖からアセチル基が脱離したアセチル基脱離糖鎖が得られる。したがって、アセチル基を有する糖鎖を得るためには、アセチル基脱離糖鎖のアセチル基が脱離した部分をアセチル化することが必要となる。
アセチル化反応剤は、アセチル基脱離糖鎖をアセチル化することができる流体であれば他に制限は無い。ただし、通常は、アセチル化試薬を水またはバッファーに溶解したものを用いる。
また、充填剤がセルロースなどである順相系カラムに対しては、エタノール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、アセトニトリルなどの水溶性溶媒などを挙げることができる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
反応剤洗浄工程では、アセチル化工程でアセチル化反応剤を通液した後の糖鎖保持カラムに、脱塩剤(反応剤洗浄剤)を通液する。糖鎖保持カラムに脱塩剤を通液することにより、糖鎖保持カラム内のアセチル化反応剤を除去し、目的とする糖鎖を得ることができる。
脱塩剤は糖鎖をカラムに保持し、且つアセチル化反応剤(バッファー中に緩衝剤としての塩が存在している場合は、その塩を含む)を溶出させることができるものであれば特に制限は無く、任意のものを用いることができる。具体例としては、上記洗浄工程で用いた洗浄溶液と同様のものを用いることができる。また、脱塩材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、通液する脱塩剤の量は、使用する糖鎖保持カラムの体積に対して、通常1倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、また、通常10倍以下、好ましく8倍以下、より好ましくは6倍以下である。
糖鎖は、充填剤に保持された状態で得ることができる。この糖鎖は、充填剤に保持された状態のまま用いても良いが、通常は、糖鎖保持カラムに溶出溶剤を通液し、充填剤に保持された糖鎖を溶出溶剤中に溶出させる。糖鎖を溶出させる工程を、溶出工程と呼ぶ。
溶出溶媒は充填剤に保持された糖鎖を溶出させることができれば他に制限はないが、通常は、糖鎖保持カラムの充填剤に応じて選択することが望ましい。具体例としては、糖鎖保持カラムの充填剤としてグラファイトカーボン等のカーボン系充填剤やスチレンジビニルベンゼン等のポリスチレン系充填剤などを用いた場合は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、アセトン、アセトニトリル等の水溶性溶媒などが挙げられる。さらに、これらの溶出溶媒は、水または緩衝液との混合液等、他の液体中に溶出溶媒を含む溶液として通液しても良い。また、充填剤としてセルロースを用いた場合は、緩衝液、または緩衝液/エタノール混合液など緩衝液を含む溶液が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
なお、ここで溶出溶媒に無水酢酸を加えるとさらにアセチル化の効果を上げることができる。加える無水酢酸の量は、溶出溶媒に対して、通常0.1体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1.0体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下である。
溶出した液(検体液)は、例えばエバポレータもしくは濃縮遠心器にて溶媒を留去し、糖タンパク質の糖鎖を得ることができる。
また、単一の糖鎖保持カラムを用いて、一連の流れの中でアセチル基脱離糖鎖のアセチル化を行なうため、従来よりも操作を簡単にすることができ、また、アセチル化に要する時間を短縮することができる。さらに、アセチル化反応剤を除去する反応剤洗浄工程も従来よりも短時間で行なうことが可能となる。
次に、本発明の検体分析方法(糖鎖分析方法)を用いた検体の分析について説明する。ここでは、検体として上記分離方法にて取得した糖タンパク質の糖鎖を分析する場合を例として説明するが、検体について制限は無く、任意の単体及び化合物を検体とすることができる。
また、検体は通常、適当な溶媒中に溶解または分散した検体液とされて分析される。ここで、検体を溶解または分散させる溶媒に制限は無く、検体の種類等に応じて任意の溶媒を用いることができるが、検体が糖鎖である場合には、水、緩衝液などが挙げられる。本実施形態では、溶媒として水を用いることとし、したがって、検体液として糖鎖の水溶液を用いることとして説明する。また、検体は使用する検出器12,16等に応じて標識されていてもよい。
図1は、本発明の一実施形態としての検体分析方法に用いる分析装置(液体クロマトグラフィー装置)の要部を示すブロック図である。このクロマトグラフィー装置は、順相液体クロマトグラフィー部(以下適宜、「順相HPLC部」という)1、逆相液体クロマトグラフィー部(以下適宜、「逆相HPLC部」という)2、イオン交換カラム3、再生液供給部4、置換液供給部5、溶出液供給部6、バルブスイッチング(移動相切替部)7、バルブスイッチング8、及び制御部100を備えている。
移動相供給部9は、順相カラム11に向けて移動相を供給する部分であり、複数(ここでは2個)の移動相貯蔵部9Aと、それぞれの移動相貯蔵部9Aに接続されたグラジエントポンプ9Bとを備えている。
なお、グラジエントポンプ9B、及び、後述するグラジエントポンプ13Bは、高圧、低圧いずれのタイプも用いられるが、高圧グラジエントポンプは効果的に溶媒を混合できる面で優れるため好ましい。
また、検出器16の下流側は、図示しない廃液排出口に接続されている。
また、検体として糖鎖を分析する場合、イオン交換樹脂の交換容量は、通常0.1meq/g(即ち、0.1×10-3当量/g)以上のものが好ましい。
また、バルブスイッチング7の流出側はイオン交換カラム3に加え、装置外部へ通じる図示しない廃液排出口に接続されている。したがって、バルブスイッチング7は、制御部100の制御に従って、順相HPLC部1から流入する第1溶出液、並びに、バルブスイッチング8を経て流入する再生液供給部4からの再生液、置換液供給部5からの置換液、及び溶出液供給部6からの吸着検体溶出液を、装置外部とイオン交換カラム3とのいずれかに送出する切り替えを行なうように構成されている。
また、ポンプ4Bは再生液貯蔵部4A内の酢酸水溶液をバルブスイッチング8に送出するように形成されていて、再生液貯蔵部4Aの下流に接続されている。さらに、ポンプ4Bは制御部100と接続され、制御部100により稼動を制御されるようになっている。なお、ポンプ4B、及び、後述するポンプ5B,6Bとしては、ダブルブランジャータイプやシングルブランジャータイプ等が用いられるが、ダブルブランジャータイプは安定した流速を得る面で優れるため好ましい。
また、ポンプ5Bは置換液貯蔵部5A内の水をバルブスイッチング8に送出するものであり、置換液貯蔵部5Aの下流に接続されている。さらに、ポンプ5Bは制御部100と接続され、制御部100により稼動を制御されるようになっている。
また、ポンプ6Bは溶出液貯蔵部6A内の酢酸アンモニウム水溶液をバルブスイッチング8に送出するものであり、溶出液貯蔵部6Aの下流に接続されている。さらに、ポンプ6Bは制御部100と接続され、制御部100により稼動を制御されるようになっている。
次に、上述した分析装置を用いた分析方法を説明する。なお、次に説明する前処理工程以外の各工程は、制御部100の制御によって自動的に行なわれる。さらに、以下の説明においては各工程は順次行なうように説明するが、各工程は適宜、連続的に行なうようにしてもよい。
まず、必要に応じて検体液中の検体を標識する。本実施形態では糖タンパク質の糖鎖を検体としており、また、検出器12,16として蛍光検出器を用いているので、蛍光用の標識試薬で標識を行なう。用いる試薬に特に制限は無いが、例えば、2−アミノピリジン、2−アミノベンズアミド、3−アミノキノン、4−アミノ安息香酸ブチル、4−トリメチルアンモニウムアニリン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン等の誘導体化試薬を蛍光用の標識試薬として用いることができる。
続いて、イオン交換カラム3の再生を行なう。
まず、制御部100はバルブスイッチング7,8を切り替え、再生液供給部4とイオン交換カラム3とを連通させるとともに、再生液供給部4内のポンプ4Bを稼動させる。これにより、再生液供給部4Aから各イオン交換カラム3に酢酸水溶液が送られる。イオン交換カラム3に酢酸水溶液が通液すると、イオン交換カラム3は水素型に変換される。
また、制御部100はバルブスイッチング14を切り替え、イオン交換カラム3と排出口とを連通させる。これにより、イオン交換カラム3から流出した酢酸水溶液は、バルブスイッチング14を経て排出口から排出される。
これにより、置換液供給部5Aから各イオン交換カラム3に水が送られる。イオン交換カラム3に水が通液すると、イオン交換カラム3内は水によって置換され、イオン交換カラム3に残留していた酢酸水溶液はイオン交換カラム3から除去される。また、イオン交換カラム3から流出した酢酸水溶液及び水は、バルブスイッチング14を経て排出口から排出される。
再生が完了したら、制御部100はポンプ5Bを停止させる。
次に、第1分離工程において、以下のようにして検体液を順相カラム1に通液させ、順相HPLCにより糖鎖の分離を行ない、糖鎖の分析をする。
まず、制御部100はバルブスイッチング7を切り替えて、順相HPLC部1と廃液排出口とを連通させる。次いで、オートインジェクタ10を制御して、オートインジェクタ10から検体液を注入する。注入された検体液は順相カラム11に流入し、検体液内の糖鎖は順相カラム11の入り口に留まる。検出液の溶媒である水は、バルブスイッチング7を経て排出口から排出される。
これにより、順相カラム11の入り口に留まっていた糖鎖は、順相溶離液とともに順相カラム11内を通る。この際、制御部100はグラジエントポンプ9Bそれぞれの送液量を調整して、順相溶離液の極性を所定の勾配で変化させながら、送液を行なう。
第1溶出液が検出器12を通液する際、検出器12は糖鎖を蛍光によって検出し、これにより、順相HPLCによる分析が行なわれる。また、検出器12による測定値は、例えば、検出器16による測定値と合わせて2次元分析を行ない、予め構造を決定している標品糖鎖の液体クロマトグラフィー保持時間(LC保持時間)と比較して糖鎖を特定するのに用いられる。
検出器12を通液後、第1溶出液はバルブスイッチング7を経てイオン交換カラム3に流入することになる。
続いて、検体吸着工程を行なうが、通常、この検体吸着工程は上記第1分離工程と連続して行なわれる。
第1分離工程で分離された糖鎖を含む第1溶出液は、上述したように、イオン交換カラム3に流入する。一般に検体は、正に帯電している場合にはカチオン交換カラムに吸着し、負に帯電している場合にはアニオン交換カラムに吸着する。本実施形態のように糖鎖を2−アミノピリジンで標識した場合は糖鎖が正に帯電しているため、イオン交換カラム3に第1溶出液が流入すると、第1溶出液中の糖鎖はカチオン交換カラムであるイオン交換カラム3に吸着する。また、イオン交換カラム3に流入した第1溶出液の順相溶離液は、バルブスイッチング14を経て排出口から排出される。
次に、制御部100はバルブスイッチング7,8を切り替え、置換液供給部5とイオン交換カラム3とを連通させるとともに、ポンプ5Bを稼動させる。また、バルブスイッチング7の切り替えに伴い、制御部100はグラジエントポンプ9Bを停止させる。
これにより、置換液供給部5Aから各イオン交換カラム3に水が送られる。イオン交換カラム3に水が通液すると、イオン交換カラム3内は水によって置換され、イオン交換カラム3に残留していた順相溶離液はイオン交換カラム3から除去される。一方、糖鎖は、イオン交換カラム3に吸着した状態を維持する。
また、イオン交換カラム3から流出した酢酸水溶液及び水は、バルブスイッチング14を経て排出口から排出される。
次に、第2分離工程において、以下のようにしてイオン交換カラム3から糖鎖を溶出させ、得られた第2溶出液を逆相カラム15に通液させ、逆相HPLCにより糖鎖の分離を行ない、糖鎖の分析をする。
これにより、逆相カラム15の入り口に留まっていた糖鎖は、逆相溶離液とともに逆相カラム15内を通る。この際、制御部100はグラジエントポンプ13Bそれぞれの送液量を調整して、逆相溶離液の極性を所定の勾配で変化させながら、送液を行なう。
第3溶出液が検出器16を通液する際、検出器16は糖鎖を蛍光によって検出し、これにより、逆相HPLCによる分析が行なわれる。また、検出器16による測定値は、第1分離工程で説明したように、検出器12による測定値と合わせて2次元分析を行ない、予め構造を決定している標品糖鎖の液体クロマトグラフィー保持時間(LC保持時間)と比較して糖鎖を特定するのに用いられる。
なお、検出器16を通液した第3溶出液は、廃液排出口から排出される。
以上、本発明の一実施形態としての糖鎖分離方法並びに検体分析方法、糖鎖分析方法、及び液体クロマトグラフィー装置を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、任意に変形して実施することができる。
例えば、上記順相HPLC部1と逆相HPLC部2との順を逆にしてもよい。即ち、検体が、逆相HPLC部2、イオン交換カラム3、順相HPLC部1という順に流れるように構成してもよい。即ち、まず検体液を逆相HPLC部2に通液して逆相HPLCで検体を分離後、逆相HPLC部2で分離された検体を含む第1溶出液をイオン交換カラム3に通液させて吸着させ、イオン交換カラム3から検体を溶出させ、得られた検体を含む第2溶出液を順相HPLC部1に通液して順相HPLCで分離させるようにしてもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では分析対象である糖鎖を、本発明の糖鎖分離方法により取得したものを用いるとして説明したが、酵素処理法など、別の方法で糖鎖を取得するようにしてもよい。ただし、安全性、省力、高速等の観点より、本発明の糖鎖分離方法を用いて糖鎖を得るようにすることが好ましい。
また、標識部21は検体液中の検体の標識を行なう部分である。ここでは、蛍光用の標識試薬を検体液と混合する部分である。
さらに、糖鎖保持カラム20の上流に、糖鎖保持工程においてヒドラジン分解液を糖鎖保持カラム20に導入するヒドラジン分解液導入部、洗浄工程において洗浄溶媒を糖鎖保持カラム20に導入する洗浄溶媒導入部、アセチル化工程においてアセチル化反応剤を糖鎖保持カラム20に導入するアセチル化反応剤導入部、反応剤洗浄工程において脱塩剤を糖鎖保持カラム20に導入する脱塩剤導入部、糖鎖保持カラム20から溶出させる溶出溶媒を導入する溶出溶液導入部、アセチル化溶出工程において糖鎖を溶出させうるアセチル化反応剤を糖鎖保持カラム20に導入するアセチル化溶出液導入部などを設け、「I.糖たんぱく質の糖鎖の分離」で説明した各工程をそれぞれ自動化してもよい。
[実施例1]
分解工程として、試料であるマウスの腎臓アセトン沈殿物2mgに、ヒドラジン200μLを加え、95℃、10時間加熱し、糖タンパク質のヒドラジン分解液とした。
その後、糖鎖保持工程として、洗浄溶媒として50mM酢酸アンモニウム水溶液(以下α液)を2mL添加してよく混合し、α液と混合したヒドラジン分解液をグラファイトカーボンカラム(GLサイエンス製 300mg)に通液した。
さらに洗浄工程として、洗浄溶媒であるα液10mLをカラムに通液して、ヒドラジンをカラムから完全に溶出させた。
その後、反応剤洗浄工程として、さらに洗浄溶媒であるα液5mLをカラムに通液し、反応残液を溶出させた。
実施例1と同様にして、分離工程及び洗浄工程を行なった。
続いて、アセチル化溶出工程として、アセトニトリル:β液(重量比6:4)混合液に2重量%の無水酢酸を加えた溶出溶液5mLをカラムに通液し、糖鎖を完全にアセチル化するとともに糖鎖をカラムから溶出させた。ここでβ液とは、50mMの酢酸トリエチルアミン塩水溶液をいう。
10検体を同時に実施したところヒドラジン分解後から糖鎖のアセチル化(溶出工程終了)までに要した時間は20分だった。また本法による糖鎖のアセチル化率を表3に示す。
実施例1の分解工程と同様にして、ヒドラジン分解液を調製した。
次いで、ヒドラジン分解液から真空ポンプでヒドラジンを留去し、さらに共沸効果の高いトルエンを加えてヒドラジンを完全に留去させた。
次に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を200μL、無水酢酸8μLを加えて氷上5分間反応し、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200μL、無水酢酸8μLを加えて氷上で30分間反応させた。
10検体につき、ヒドラジン分解後からアセチル化糖鎖を得るまでに要した時間は10時間だった。
本実施例で用いた分析装置の概要を、図3に示す。図3に示す分析装置では、イオン交換カラム3を5本ずつのグループ2つを用い、合計10個のイオン交換カラムを用いた。また、イオン交換カラム3の上記5本ずつのグループそれぞれに対応して、上流側にバルブスイッチング17を接続し、下流側にバルブスイッチング18を接続した。バルブスイッチング17,18はそれぞれ制御部100により制御されている。以上の構成のほかは、図3に示す分析装置は図1を用いて上述した分析装置と同様の構成となっている。なお、図3において図1と同様の符号を用いて示す部分は、同様のものを表わす。
その後、バルブスイッチング8を切り替えて、ポンプ5Bにより、置換液貯蔵部5A中の水を5mL(1mL/分×5分)通液してカラム内の酢酸溶液を水に置換した。
次に、第2分離工程として、バルブスイッチング8,18,14の切替えにより、1番目のイオン交換カラム3と逆相カラム15とを接続した。また同時に、溶出液供給部6から0.5M酢酸アンモニウム水溶液を1番目のイオン交換カラム3に5分間通液した。イオン交換カラム3に吸着していた糖鎖は、この段階で酢酸アンモニウム水溶液によって溶出され、第2溶出液として逆相カラム15に導かれた。続いてバルブスイッチング14の切り替えにより逆相用グラジエントポンプ13と逆相カラム15を接続し、逆相用溶離液を逆相カラム15に送液して、検体を分離した。
同様にして、2番目〜10番目のイオン交換カラムについても、それぞれ逆相HPLCによる分離を行なった。
また、ピーク面積(回収率)は99%であった。
以上から、本発明の検体分析方法を用いれば、順相及び逆相HPLCを用いて検体の分析を確実に行なえることが確認された。
2 逆相HPLC部
3 イオン交換カラム
4 再生液供給部
4A 再生液貯蔵部
4B,5B,6B ポンプ
5 置換液供給部
5A 置換液貯蔵部
6 溶出液供給部
6A 溶出液貯蔵部
7 バルブスイッチング(流体切替部)
8,14,17,18 バルブスイッチング
9,13 移動相供給部
9A,13A 移動相貯蔵部
9B,13B グラジエントポンプ
10 オートインジェクタ
11 順相カラム
12,16 検出器
15 逆相カラム
20 糖鎖保持カラム
21 標識部
100 制御部
Claims (11)
- 糖タンパク質のヒドラジン分解液から糖鎖を分離する方法であって、
糖鎖を保持し得る耐アルカリ性の充填剤を充填したカラムに、糖タンパク質のヒドラジン分解液を通液する糖鎖保持工程と、
前記カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する洗浄工程とを備えた
ことを特徴とする、糖鎖分離方法。 - 糖タンパク質のヒドラジン分解液から糖鎖を分離する方法であって、
糖鎖を保持し得る充填剤を充填したカラムに、糖タンパク質のヒドラジン分解液を通液する糖鎖保持工程と、
前記カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する洗浄工程と、
前記カラムに、アセチル化反応剤を通液するアセチル化工程と、
前記カラムに、アセチル化反応剤を溶出させる脱塩剤を通液する反応剤洗浄工程とを備えた
ことを特徴とする、糖鎖分離方法。 - 糖タンパク質のヒドラジン分解液から糖鎖を分離する方法であって、
糖鎖を保持し得る充填剤を充填したカラムに、糖タンパク質のヒドラジン分解液を通液する糖鎖保持工程と、
前記カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する洗浄工程と、
前記カラムに、糖鎖を溶出させうるアセチル化反応剤を通液するアセチル化溶出工程とを備えた
ことを特徴とする、糖鎖分離方法。 - 前記充填剤が、耐アルカリ性である
ことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の糖鎖分離方法。 - 検体を順相液体クロマトグラフィー及び逆相液体クロマトグラフィーのうちの一方により分離する第1分離工程と、
該第1分離工程において分離された検体を含む第1溶出液をイオン交換カラムに通液させて検体を吸着させる検体吸着工程と、
前記イオン交換カラムから検体を溶出させ、得られた検体を含む第2溶出液を順相液体クロマトグラフィー及び逆相液体クロマトグラフィーのうちの他方により分離する第2分離工程とを備えた
ことを特徴とする、検体分析方法。 - 前記イオン交換カラムがカチオン交換カラムである
ことを特徴とする、請求項5記載の検体分析方法。 - 前記検体が、糖タンパク質の糖鎖である
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の検体分析方法。 - 順相液体クロマトグラフィーによる分離を行なう順相液体クロマトグラフィー部と、
逆相液体クロマトグラフィーによる分離を行なう逆相液体クロマトグラフィー部と、
イオン交換カラムとを備え、
該イオン交換カラムは、該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部のうちの一方から流出した第1溶出液が該イオン交換カラムに流入し、該イオン交換カラムから流出した第2溶出液が該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部のうちの他方に流入するよう、該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部の間に接続される
ことを特徴とする、液体クロマトグラフィー装置。 - 該イオン交換カラムの移動相を、該イオン交換カラムに吸着した検体を溶出させる移動相と溶出させない移動相との間で切り替える移動相切替部を備える
ことを特徴とする、請求項8記載の液体クロマトグラフィー装置。 - 糖タンパク質をヒドラジンにより分解して糖タンパク質のヒドラジン分解液を調製する分解工程と、
該分解工程で調製した前記ヒドラジン分解液を、糖鎖を保持し得る充填剤を充填したカラムに通液する糖鎖保持工程と、
前記カラムに、ヒドラジンを溶出させる洗浄溶媒を通液する洗浄工程と、
前記カラムに、アセチル化反応剤を通液するアセチル化工程と、
前記カラムに、前記アセチル化反応剤を溶出させる脱塩剤を通液する反応剤洗浄工程と、
前記カラムから糖鎖を溶出させ、得られた糖鎖を含む検体液を順相液体クロマトグラフィー及び逆相液体クロマトグラフィーのうちの一方により分離する第1分離工程と、
該第1分離工程において分離された糖鎖を含む第1溶出液をイオン交換カラムに通液させて糖鎖を吸着させる糖鎖吸着工程と、
前記イオン交換カラムから糖鎖を溶出させ、得られた糖鎖を含む第2溶出液を順相液体クロマトグラフィー及び逆相液体クロマトグラフィーのうちの他方により分離する第2分離工程とを備えた
ことを特徴とする、糖鎖分析方法。 - 請求項10記載の糖鎖分析方法に用いる糖鎖分析装置であって、
糖鎖を保持し得る充填剤を充填したカラムと、
順相液体クロマトグラフィーにより糖鎖の分離を行なう順相液体クロマトグラフィー部と、
逆相液体クロマトグラフィーにより糖鎖の分離を行なう逆相液体クロマトグラフィー部と、
イオン交換カラムとを備え、
該カラムは、該カラムから流出した検出液が該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部の一方に流入するように接続されるとともに、
該イオン交換カラムは、該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部のうちの一方から流出した第1溶出液が該イオン交換カラムに流入し、該イオン交換カラムから流出した第2溶出液が該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部のうちの他方に流入するよう、該順相液体クロマトグラフィー部及び該逆相液体クロマトグラフィー部の間に接続される
ことを特徴とする、糖鎖分析装置。
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