JP2005307342A - 厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】40mmを超える引張強さが550MPa以上の厚肉高張力鋼板において、Q’プロセスを必要とせずに、板厚方向の特性差が小さく1/4t位置と1/2t位置の双方において低降伏比かつ高強度を達成することができる低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御する。
【選択図】なし

Description

本発明は、橋梁、土木、建築などの分野で使用される、耐震性に優れた引張強さが550MPa以上の低降伏比厚肉高張力鋼板の製造方法に関する。
橋梁、土木、建築分野で使用される鋼材は、耐震性の観点から、高い靱性とともに、低降伏比が要求されている。しかし、一般的に鋼材の強度が高くなると降伏比も高くなる傾向にあり、たとえば590MPa級以上の高強度鋼では、低降伏比を確保するために、特殊な熱処理などを必要としてきた。これは、フェライトとマルテンサイトあるいはフェライトとベイナイトなどの軟質相と硬質相の2相組織とすることにより高強度かつ低降伏比を得ることを目的としたプロセスである。
例えば、非特許文献1に記載されるとおり、圧延後、焼入れ(Q)を行い、その後、2相域に加熱し焼入れ(Q’)を行い焼戻し(T)を行うQ-Q’-Tプロセスが一般的であり、590MPa級の強度と80%以下の低降伏比を両立させている。しかし、この文献に示されている製造プロセスでは、熱処理工程が多く複雑であり、工期や熱処理コストの点でも熱処理工程の省略が望まれていた。
そこで、特許文献1、2に記載されるごとく、Qを省略して、圧延後直接焼入れ(DQ)を行い、その後、Q’、Tを行うDQ-Q’-Tプロセスや圧延後空冷したのちQ’-Tを行うプロセスなどが開発され、低降伏比高張力鋼板の一般的な製造法となっている。しかし、現状、安定して高強度と低降伏比および高靭性を得るには、Q’熱処理が不可欠となっているのが実情である。
Q’を必要としない熱処理方法として、特許文献3、4には、圧延後、空冷を行い、2相域から冷却するプロセスが提案されている。しかし、この技術では、一部フェライト変態させた後焼入れることによりフェライト−ベイナイト(またはマルテンサイト)の2相組織が得られ、高強度かつ低降伏比が達成されるが、圧延を低温域で行う必要があることや圧延後の空冷に時間を要することによる製造性の低下や、空冷の時間管理・温度管理が重要となり、安定して高強度・低降伏比の得られるプロセスとは言えない。このような圧延後直接焼入れまたは加速冷却まま、あるいは冷却後焼戻しを行うプロセスにおいて、上記のように高強度かつ低降伏比が得られるとされているが、Q’−Tプロセスに比べると安定して高強度・低降伏比の得られるプロセスとは言えない。
また、これらの製造プロセスでの冷却では、特に厚肉材の板厚方向の特性差が考慮されておらず、板厚の1/4t位置(鋼板の表面から板厚(t)の1/4の位置)と1/2t位置(鋼板の表面から板厚(t)の1/2の位置、すなわち板厚中央位置)の特性差が大きく、1/4t位置で低降伏比を満足させると、1/2t位置の強度が不足する可能性が高いことや、1/2tの強度を確保すると1/4t位置の降伏比(YR)が80%を超える可能性が高いなど、1/4t位置と1/2t位置の両方の特性を安定して満足させることは非常に困難である。これは、通常、厚肉の鋼板を表面および裏面から水冷やミスト冷却などにより冷却した場合、その冷却速度は板厚表面に近いほど速く、板厚中央(1/2t)位置では遅いことにより、変態組織が変化するためである。Q’熱処理を施さないプロセスにおいては特にその傾向が強く、1/4t位置と1/2t位置の特性差は大きくなる傾向にある。
特開平1−156421号公報 特開平3−207814号公報 特開昭63−223123号公報 特開昭64−55335号公報 日本鋼管技報No.122(1988年)5〜10ページ
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、40mmを超える引張強さが550MPa以上の厚肉高張力鋼板において、Q’プロセスを必要とせずに、板厚方向の特性差が小さく1/4t位置と1/2t位置の双方において低降伏比かつ高強度を達成することができる低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供する。
また、本発明は、スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.5%を含有し、残部が実質的にFeからなる板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.5%を含有し、さらに、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜2%、Cr:0.03〜0.5%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.02〜0.15%、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.02%を1種または2種以上含有し、残部実質的にFeからなる板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供する。
さらにまた、本発明は、上記いずれかの製造方法の焼戻し時において、表層の最高到達温度と1/2t位置の最高到達温度の差が30℃以上とすることを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法を提供する。
本発明で最も重要な点は、40mmを超える厚肉鋼板の板厚1/4t位置と1/2t位置の特性差を小さくするために、冷却を制御して、特性を左右する特定の温度域における1/4t位置と1/2t位置の冷却速度を制御する点である。また、それに加えて、圧延・冷却条件等を調整することにより、高強度かつ低降伏比を双方の板厚位置で達成することができ、さらには高靱性を達成することができる。さらに、適切な成分調整を行うことにより所望の強度および降伏比を得ることができ、さらには靱性を高めることができる。
また、本発明における別の重要な点は、焼戻し時において、表層の最高到達温度と1/2t位置の最高到達温度に30℃以上の差をつけ、表層側をより高温に加熱することにより、表層側の硬さを低下させ、板厚方向の均一性を高めることができることである。
本発明によれば、所定条件で熱間圧延、加速冷却および焼戻しを行って厚鋼板を製造するにあたり、圧延・冷却条件の加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御するので、Q’プロセスを用いることなく、板厚方向の特性差が小さく1/4t位置と1/2t位置の双方において低降伏比かつ高強度を達成する板厚40mmを超える引張強さが550MPa以上の厚肉高張力鋼板を得ることができる。
以下、本発明についてより具体的に説明する。
図1に、鋼の成分組成と圧延・冷却開始・停止条件を一定としたときの引張特性に及ぼす冷却速度の影響を示す。ここでは、成分組成を0.08C−0.25Si−1.58Mn−0.28Cu−0.30Ni−0.29Cr−0.04V−0.015Ti−0.0014B(数字は質量%)とし、製造条件を1100℃加熱−800℃圧延仕上げ−加速冷却300℃停止−500℃焼戻しとした。この図に示すように、冷却速度が2℃/sec以下では、強度が目標(本試験での目標は引張強度TS≧550MPa)を満足せず、また、冷却速度が5℃/sec以上では、降伏比YRが80%を超え、強度と降伏比を両立させるには最適な冷却速度範囲(本条件の場合2〜5℃/sec)が存在する。この最適冷却速度範囲は、フェライト+ベイナイトの最適な組織の得られる範囲であり、強度および降伏比は、冷却速度以外にも成分や圧延条件、焼戻し条件などによって変化し、低い冷却速度の条件であっても、成分調整などで、目標性能を満足させることが可能である。
しかし、板厚40mmを超える厚肉鋼板では、通常の冷却条件(例えば、鋼板の表面および裏面から連続して冷却水あるいはミストを吹き付けることにより冷却する方法)では1/4t位置と1/2t位置の冷却速度が異なり、1/4t位置と1/2t位置の特性を両立させることは難しい。
そこで、本発明では、板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、スラブを加熱し、熱間圧延した後、水冷により加速冷却し、その後焼戻しを行う製造プロセスを採用し、所定温度範囲において加速冷却時の1/4t位置と1/2t位置の冷却速度の差が15%以内となるように、鋼板表面からの冷却を制御する。これにより1/4t位置と1/2t位置の特性差を小さくし、板厚1/4t位置と1/2t位置の双方において高強度かつ低降伏比を両立させることに成功した。
このように、1/4t位置と1/2t位置の冷却速度差を小さくすることができる冷却速度の制御としては、鋼板の表面および裏面から水冷またはミスト冷却によって水冷する方法などで、冷却初期段階と冷却後期段階での冷却条件を変え、初期を弱冷却、後期を強冷却とすることが挙げられる。
通常、厚肉鋼板を鋼板の表面および裏面から一定の冷却条件で冷却した場合には、板厚方向に温度勾配持ちながら冷却され、1/4t位置と1/2t位置の冷却速度は1/4t位置の方が速く、さらに1/4t位置の方が早く低温まで冷却される。550MPa級鋼や590MPa級鋼などの高強度鋼材の特性に大きく影響するのは、本鋼種の本製造方法では700〜500℃の温度帯の冷却速度であるが、厚肉材の1/4t位置および1/2t位置が700〜500℃の温度帯を通過する時間は1/4t位置の方が早く、1/2t位置は遅れてこの温度帯を通過する。
そこで、冷却初期段階と冷却後期段階での冷却条件を変え、初期の弱冷却、後期を強冷却とすることにより、700〜500℃における1/4t位置と1/2t位置の冷却速度差を小さくすることが可能となる。冷却の強弱は、冷却水量密度などで調整する方法や、水冷と非水冷(空冷)の繰り返しの時間間隔を調整することなどにより可能である。なお、冷却速度は少なくとも700〜500℃の温度帯での冷却速度であればよく、熱間圧延の終了温度が800℃超えであれば、800〜500℃の温度帯の冷却速度としてもよい。
上述したように、本発明では、高強度かつ低降伏比を満足し、さらに高靱性を達成するために、スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行う製造プロセスを採用する。
以下、これらの限定理由について説明する。
圧延加熱温度:1000〜1300℃
圧延加熱温度は、強度確保の観点から1000℃以上とするが、加熱温度が高くなりすぎると靱性が劣化するため、上限を1300℃とする。好ましくは1050〜1200℃である。
冷却停止温度:500℃以下
冷却停止温度を500℃より高くすると、1/2t位置の冷却速度が遅くなり1/2tの強度が低下する。そのため500℃以下とする。好ましくは400℃以下である。
焼戻し温度:Ac変態点以下
焼戻しは、通常通り、Ac変態点以下で行い、その温度はこの範囲内で必要な強度レベルに応じて選択する。焼戻し温度が高温になると、強度が低下し、YRが上昇する傾向にあるため、高強度かつ低降伏比を得るには500℃以下が好ましい。
さらに、板厚方向の硬さの均一性を高めるためには、上記焼戻し時において、表層の最高到達温度と1/2t位置の最高到達温度の差を30℃以上とすることが好ましい。上記プロセスにより、1/4tおよび1/2tの特性を満足することはできるものの、表層近くは、冷却速度が速いために硬くなりやすく、板厚方向の硬さ分布は図2に示すような分布となる。そこで、さらに、焼戻しにおいて、表層の最高到達温度と1/2t位置の最高到達温度に30℃以上の差をつけることにより、表層側をより高温に加熱し、表層側の硬さを低下させ、板厚方向の硬さの均一性を高めることができる。焼戻し時にこのような温度分布をつける方法としては、誘導加熱装置を用いて表面温度が高くなるような加熱方法を採用することや、高温の熱処理炉に挿入し、表面から温度が上昇し、板厚中心温度が炉温に到達しない段階で炉から抽出することなどを挙げることができる。
圧延温度、圧延仕上げ温度は特に規定しないが、適度な結晶粒径とし靱性を確保するため、圧延仕上げ温度は1000℃から750℃とすることが好ましい。また、加速冷却の冷却速度や冷却方法についても特に規定しないが、冷却速度は、板厚と冷却方法によってその上限が制約される範囲の中で、成分組成や圧延条件により、最適な冷却条件を選択することが好ましい。溶接性などを考慮すると、冷却速度は設定できる最速値に設定し、成分や圧延条件を調整して、目標とする強度を確保することが望ましい。冷却方法につては、鋼板の表裏面からの水冷またはミストによる冷却が考えられるが、鋼板の冷却後の歪みや板内の均一性の確保の観点から、高い水量密度で鋼板表面が核沸騰状態のみとでの冷却が望ましく、冷却能の制御は、水量によって調整することも可能であるが、強水冷と非水冷(空冷)の繰り返しにより冷却を制御する方法が望ましい。
以上の製造条件を満足すれば、鋼板の成分組成は通常のものでよいが、高強度かつ低降伏比、さらには高靱性を得るためには、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.5%を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなるものであることが好ましい。さらに、種々の特性を向上させる観点から、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜2%、Cr:0.03〜0.5%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.02〜0.15%、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.02%を1種または2種以上を含有させることが好ましい。
以下、各添加元素の含有量の限定理由を説明する。
C:0.01〜0.18%
Cは鋼の常温強度、高温強度を安定して確保するための有効な元素であるが、C含有量が高くなると靱性や溶接性を劣化させる。このため、C含有量を0.01〜0.18%とした。
Si:0.01〜0.5%
Siは脱酸元素として有効な元素であり、そのために少なくとも0.01%以上の添加が必要である。また、Siは固溶強化に対しても有効な元素であるが、0.5%を超えると延靭性が低下することや、常温強度を必要以上に上げてしまう。このため、Si含有量を0.01〜0.5%とした。
Mn:0.3〜2.5%
Mnは強度確保の上で有効な元素であり、そのために0.3%以上の添加が必要である。また、2.5%を超えると溶接性が劣化するとともに常温強度を必要以上に高める。このため、Mn含有量を0.3〜2.5%とした。
Cu:0.03〜1%
Cuは固溶強化に対し有効な元素であるから、必要に応じて添加することができる。しかし、0.03%未満ではこのような効果が小さく、1%を超えるとコスト上昇に加えて、鋼板の表面疵の問題があるため、添加する場合は0.03〜1%の範囲であることが好ましい。
Ni:0.03〜2%
Niは低温靭性の向上や焼入性の向上を通して強度の向上に有効な元素であるから必要に応じて添加することができる。しかし、0.03%未満ではこのような効果が小さく、またNiは高価な元素であり、2%を超えるとコストが上昇するため、添加する場合は0.03〜2%の範囲であることが好ましい。
Cr:0.03〜0.5%
Crは固溶強化により強度を上昇させるのに有効な元素であるから必要に応じて添加することができる。しかし、0.03%未満ではこのような効果が小さく、また、0.5%を超えて添加すると溶接性を劣化させるので、添加する場合は0.03〜0.5%の範囲であることが好ましい。
Mo:0.03〜0.5%
Moは焼入性の向上、析出強化等により鋼の強度を上昇させる有効な元素であるから必要に応じて添加することができる。しかし、0.03%未満ではこのような効果が小さく、また、0.5%を超えて添加すると、コスト高になる上に溶接性も劣化させ、さらにYRが高くなる傾向にあるため、添加する場合は0.03〜0.5%の範囲であることが好ましい。
V:0.02〜0.15%
Vは焼入性および析出強化により強度を上昇させるのに有効であるから必要に応じて添加することができる。しかし、0.02%未満ではこのような効果が小さく、また、0.15%を超えて添加すると溶接性が劣化するため、添加する場合は0.02〜0.15%の範囲であることが好ましい。
Ti:0.005〜0.1%
Tiは結晶粒の微細化に有効であり靱性を向上させ、また、NをTiNとして固定する効果を有するため、必要に応じて添加することができる。そして、このような効果は、Mo,Nb(および/またはV)と複合添加することによりさらに大きくなる。しかし、0.005%未満ではこのような効果が小さく、0.1%を超えると溶接性が劣化するため、添加する場合は0.005〜0.1%の範囲であることが好ましい。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは結晶粒の微細化に有効であり靱性を向上させ、また、焼入性の向上、析出強化により強度を上昇させるのに有効であるから必要に応じて添加することができる。しかし、0.005%未満ではこのような効果が小さく、また、0.05%を超えて添加すると溶接性を劣化させるとともにYRを高めるため、添加する場合は0.005〜0.05%の範囲であることが好ましい。
B:0.0003〜0.002%
Bは、焼入性の向上に有効な元素であり、強度を向上させるため、必要に応じて添加することができる。しかし、0.0003%未満ではその効果が小さく、また、0.002%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、添加する場合は0.0003〜0.002%の範囲であることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.005%
Mg:0.0005〜0.005%
REM:0.0005〜0.02%
Ca、Mg、REMは介在物の形態制御やS等の不純物元素の固定を通して靭性の向上などに有効であるから必要に応じて添加することができる。そして、これらを添加する場合は、このような特性を有効に発揮することができる観点から、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.02%の範囲であることが好ましい。
残部は実質的にFeであり、不可避的に混入する不純物元素や、他の微量添加元素は許容される。例えば、P、Sは不純物元素であり、延靭性の低下、加工性、溶接性の低下等の問題の原因となる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。しかしながら、著しく低減するのはコストの上昇を招くため、大きな材質劣化を及ぼさない範囲として、通常0.03%以下としている。また、Alは脱酸元素であり、sol.AlはAlNとして鋼中に析出し、結晶粒の微細化に有効であるが、過剰に添加すると介在物が多くなり延靭性が劣化するため、通常0.07%以下としている。さらに、NはAlNとして析出し結晶粒の微細化に有効であるが、大量添加では溶接部の靭性が劣化するため、通常0.0010〜0.020%としている。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に実施例の供試鋼の成分組成を示す。鋼1は合金元素としてSi、Mn以外を添加しない成分系であり、鋼2〜7は合金元素としてSi、Mnの他、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Ti、B、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を添加した成分系である。
これら供試鋼について表2に示す製造条件で種々の板厚の鋼板を製造した。その際の機械的性質を合わせて表2に示す。また、表3に、各板厚で冷却条件を変えたときの板厚1/4t位置と1/2t位置の冷却速度の関係を示す。表3の符号A、C、E、Gは通常の冷却パターンであり、符号B、D、F、Hが1/4t位置と1/2t位置の冷却速度の差が小さくなるように制御した本発明のプロセスである。表3に示すように、冷却パターンA、C、E、Gでは、1/4tと1/2tの冷却速度比が1.15以上(差が15%以上)であるのに対し、本発明の冷却パターンであるB、D、F、Hでは冷却速度比が1.15以下(差が15%以下)となっている。表2の冷却パターンの符号がこの表3のA〜Hに対応し、表2には鋼1〜7にA〜Hの冷却パターンを適用した場合の機械的性質を示している。なお、表2の鋼板符号は、1G〜1L以外は鋼番の末尾に表3の冷却パターンの符号A〜Fをつけたものである。
ここでは、550MPa級鋼(YS≧385MPa、TS≧550MPa)および590MPa級鋼(YS≧440MPa、TS≧590MPa)を対象としており、表2では、550MPa級鋼または590MPa級鋼の目標性能(強度下限値は550MPa級鋼、強度上限値は590MPa級鋼)で性能の評価を行っている。
表2に示すように、鋼板1Aおよび1Cは、鋼1を用いて通常の冷却条件で冷却した場合であり、1/2tの性能は目標を満足しているが、1/4tではYRが高くなっており、1/4tと1/2tの性能の両立ができていない。一方、鋼板1Bおよび1Dは、1/4t位置と1/2t位置の冷却速度差を小さくする冷却制御を行っており、1/4t、1/2tのいずれにおいても目標性能を満足している。
鋼板1G〜1Iは、冷却パターンがDまたはBであり、冷却速度の制御を行っているが、鋼板1Gでは加熱温度が低いために強度が低く、1/2tの強度が目標を満足しておらず、鋼板1Hでは、加熱温度が高く、引張特性は目標を満足するものの靭性が低く、特に1/2t位置の靭性が目標を満足しない結果となっており、鋼板1Iは、加速冷却の停止温度が高く、強度が低めとなっており、1/2t位置の強度が目標を満足していない。
鋼板5Cおよび5Eは、鋼5を用いて通常の冷却条件で冷却した場合であり、1/2tの性能は目標を満足しているが、1/4tではYSおよびYRが高くなっており、1/4tと1/2tの性能の両立ができていない。一方、鋼板5Dおよび5Fは、1/4t位置と1/2t位置の冷却速度差を小さくする冷却制御を行っており、1/4t、1/2tいずれにおいても目標性能を満足している。
鋼板2D、3D、4D、6D、7Dについては、それぞれ鋼2、3、4、6、7において、いずれも符号Dで示す1/4t位置と1/2t位置の冷却速度差を小さくする冷却制御を行った場合であり、1/4t、1/2tいずれにおいても目標性能を満足している。
鋼板1Jは、通常の冷却条件で冷却し、かつ通常の焼戻しを実施した場合であり、1/4t、1/2tいずれも成分に対して冷却速度が高いために、強度、YRが高く、また、図2に示す硬さ分布においても表層および1/4tの硬さは1/2tに比べて高い傾向を示す。一方、鋼板1Kは、冷却速度の制御と通常の焼戻しを行ったものであり、表2中の特性は全て満足している。しかし、板厚方向の硬さ分布では、表層近傍に硬化域が認められる。鋼板1Lは、冷却速度の制御に加え、表層と1/2tの温度差が40℃となるような条件で焼戻しを行ったものであり、表中の特性は全て満足するとともに、板厚方向の硬さ分布も均一化している。
Figure 2005307342
Figure 2005307342
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本発明によれば、板厚方向の特性差が小さく1/4t位置と1/2t位置の双方において低降伏比かつ高強度を達成することができる板厚40mm以上の低降伏比高張力鋼板が得られるので、橋梁用、土木用、建築用の鋼材として有効であり、工業的に利用価値が高い。
冷却速度を変化させた場合の、鋼板の降伏比YR、引張強度TS、降伏強度YSを示す図。 冷却条件による、鋼板厚さ方向の硬度分布を示す図。

Claims (4)

  1. スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法。
  2. スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.5%を含有し、残部が実質的にFeからなる板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法。
  3. スラブを1000〜1300℃に加熱し、熱間圧延した後、500℃以下の温度まで水冷により加速冷却し、その後Ac変態点以下の温度で焼戻しを行って、質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.3〜2.5%を含有し、さらに、Cu:0.03〜1%、Ni:0.03〜2%、Cr:0.03〜0.5%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.02〜0.15%、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.002%、Ca:0.0005〜0.005%、Mg:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.02%を1種または2種以上含有し、残部実質的にFeからなる板厚40mm以上の厚肉高張力鋼板を製造するにあたり、加速冷却時の板厚方向1/4t位置と板厚方向1/2t位置の少なくとも700〜500℃の温度帯の冷却速度の差が15%以内となるように鋼板の表面からの冷却を制御することを特徴とする厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法。
  4. 前記焼戻し時において、表層の最高到達温度と1/2t位置の最高到達温度の差を30℃以上とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の厚肉低降伏比高張力鋼板の製造方法。
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