JP2005306932A - 生分解性合成紙及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリ乳酸を構成要素としながらも、紙として要求されるフレキシビリティを有し、かつ延伸が容易な生分解性合成紙を提供する。
【解決手段】 本発明は、ポリ乳酸と、生分解性樹脂からなりポリ乳酸より弾性の高い改質剤を50wt%未満(ただし、0を含まず)含有する生分解性合成紙1であり、粒子状充填材としての炭酸カルシウム粒子が分散される基層2と、粒子状充填材としての酸化チタン粒子が分散され、基層2の表裏両側に配設される表層3とを備える形態とすることが好ましい。
【選択図】図1
Description
合成紙は、セルロース繊維を主成分とする通常の紙に比べて軽く、また、強度、耐水性、耐侯性等の面で優れているため、その特徴を生かし、包装紙、包装袋、ポスター、地図等に利用されることが多い。しかし、その反面、これらは自然環境下で容易に分解されないことから、その廃棄にあたっては、焼却等の処理をしない限り、半永久的に環境下に残留するという問題がある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、ポリ乳酸を構成要素としながらも、紙として要求されるフレキシビリティを有し、かつ延伸が容易な生分解性合成紙を提供することを目的とする。
本発明は、上記改質剤の存在により、ポリ乳酸を基材とする合成紙であっても、必要なフレキシビリティ、延伸性を付与することができる。
白色の生分解性合成紙を得る場合には、粒子状充填材としての炭酸カルシウム粒子が分散される基層と、粒子状充填材としての酸化チタン粒子が分散され、基層の表裏両側に配設される表層とを備える形態とすることが好ましい。白色度の高い酸化チタン粒子を生分解性合成紙の表層に分散させる一方、生分解性合成紙の軽量化のためのボイド生成基点としての炭酸カルシウム粒子を基層に分散させるのである。なお、表層には酸化チタン粒子の他に炭酸カルシウム粒子を分散させてもよい。
なお、粒子状充填材を含む本発明の生分解性合成紙はボイドが分散されることにより、比重が軽くなり、生分解性合成紙を軽量化する。また、このボイドは、印刷時の裏写り防止のために生分解性合成紙の不透明度向上に寄与する。
また、本発明において、異なる粒子状充填材を含む複数の層から構成する粒子状充填材を含む生分解性合成紙を得る場合には、原料組成物として、粒子状充填材を含有するマスターバッチを用いることが、粒子状充填材の分散性向上にとって有効である。この原料組成物は、マスターバッチ以外に、ポリ乳酸、改質剤を含む。マスターバッチは、粒子状充填材と、ポリ乳酸及び/又は改質剤の混合物として提供される。
<ポリ乳酸>
本発明は、合成紙の基材として生分解性樹脂であるポリ乳酸樹脂を用いる。ポリ乳酸樹脂としては、D−乳酸、L−乳酸のいずれか、もしくはこれら両成分からなるラクチドを開環縮合してなる重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか、もしくは両成分を直接脱水重縮合して得られる重合体、またはD−乳酸又はL−乳酸のいずれか、もしくは両成分と他のヒドロキシカルボン酸(分子量2万以下)とを直接脱水重縮合して得られる共重合体を用いることができる。
また本発明は、合成紙の基材として、生分解性樹脂からなる改質剤を含む。この改質剤は、ポリ乳酸樹脂よりも弾性が高いことが要求される。ポリ乳酸との混合物として、合成紙に要求されるフレキシビリティを具現するため、及び延伸性を確保するためである。本発明に用いる改質剤としては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びポリブチレンアジペート(PBA)の1種又は2種を用いることが好ましい。
改質剤の含有量は、基材中の50wt%未満(ただし、0を含まず)とするのが好ましい。本発明による生分解性合成紙はポリ乳酸を主成分とする趣旨に基づくものである。
本発明による合成紙は、粒子状充填材を含有することができる。粒子状充填材は、合成紙を着色する、合成紙の軽量化のためのボイド生成の基点とする、あるいは合成紙への筆記性、印字性を向上するといった機能を付与するために含有することができる。
粒子状充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラス トナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填材が挙げられる。また、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品等の有機充填材を用いることができる。これらは、単独でも2種以上の混合物であってもよい。
粒子状充填材の粒径は、平均で0.1〜20μmの範囲とすることが好ましい。0.1μm未満になると粒子が微細となり凝集を起こしやすくなって、合成紙の基材中に分散させることが容易でなくなる。また、20μmを超えると、延伸時に生成されるボイドが巨大化することによる亀裂発生のおそれがある。好ましい粒子状充填材の平均粒径は0.1〜10μm、さらに好ましい粒子状充填材の平均粒径は0.1〜5μmである。なお、好ましい粒径は、粒子状充填材に要求される機能に応じて定める必要もある。
本発明による生分解性合成紙は、単層構造で実施することができるし、2層以上の複層構造として実施することができる。ここで、単層構造とは、生分解性合成紙が厚さ方向に亘って均質であることを言う。均質であるか否かは、基材のみではなく、充填材をも含めて判断する必要がある。複層の具体例を図1に基づいて説明する。
次に、3層構造を有する生分解性合成紙1を例にして、本発明の生分解性合成紙の製造方法を説明する。
図2は、生分解性合成紙1を製造する二軸延伸装置10の構成を示す図である。
図2に示すように、二軸延伸装置10は、押出し機11、T−ダイ12、冷却成形装置13、縦延伸装置14、横延伸装置15、巻取装置16を備えている。
押出し機11は、3つの押出し機11a、11b及び11cを備えている。押出し機11aは基層2の押出しを担い、押出し機11b及び11cは表層3の押出しを担う。押出し機11a、11b及び11cとしては、スリーブベント機構を備えるツインスクリュ押出し機、ホッパ式ベント機構を備えるシングルスクリュ押出し機等の公知の押出し機を用いることができる。
基層2を構成する原料組成物aは押出し機11aにて混錬された後にT−ダイ12の中流路(図示せず)に送り込まれる。また、表層3を構成する原料組成物bは押出し機11b及び11cにて混錬された後にT−ダイ12の上流路、下流路(図示せず)に送り込まれる。ここで、原料組成物aのT−ダイ12の中流路への送り込み、原料組成物bのT−ダイ12の上流路、下流路への送り込みを同時に行うことにより、共押出し成形による3層の樹脂組成物がT−ダイ12の出口流路(図示せず)から押出される。
縦延伸された3層積層フィルムは、次いで、横延伸装置15にて横方向(3層積層フィルムの走行方向に直行する方向)に延伸される。横延伸装置15は、3層積層フィルムの両縁部をクリップで把持しながら延伸対象と同期して走行可能なクリップにより横方向に張力を付与する。横延伸の前には、縦延伸のときと同様に3層積層フィルムは加熱される。縦方向に延伸した3層積層フィルムをさらに横延伸すると、通常は5〜13倍の延伸倍率で横方向に延伸されて生分解性合成紙1が得られる。
横延伸装置15を通過した生分解性合成紙1は、巻取装置16にてロール状に巻き取られる。
ポリ乳酸(商品名「LACEA」,三井化学(株)製)60wt%、ポリブチレンアジペート(PBA、商品名「エコフレックス」,BASF社製)40wt%を秤量し、それに炭酸カルシウムと酸化チタンからなる無機フィラーを全体の12.6wt%となるように含有させ、ペレタイジングした後、射出成形機を用いて樹脂温度220℃で金型内に射出充填して試験片を作製した。試験片のサイズは約35mm×約70mm×2mmである。なお、PBAを含まない試験片、すなわちポリ乳酸単体に炭酸カルシウムと酸化チタンからなる無機フィラーを全体の12.6wt%含有する試験片も同様に作製した。
以上に対して、図4(b)に示すように、改質剤としてのPBAを含まない試料は、60℃おける引張り試験で破断してしまった。また、80℃における引張りでは破断は生じないものの、引張り方向の形状が対称でなく、ネッキングが生じていることがわかる。さらに、100℃における引張れ試験では、ネッキングが発生するとともに、試料が破断してしまった。
Claims (10)
- ポリ乳酸と、生分解性樹脂からなり前記ポリ乳酸より弾性の高い改質剤を50wt%未満(ただし、0を含まず)含有することを特徴とする生分解性合成紙。
- 前記改質剤は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びポリブチレンアジペート(PBA)の1種又は2種からなることを特徴とする請求項1に記載の生分解性合成紙。
- 粒子状充填材を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
- 前記粒子状充填材が異なる複数の層から構成されることを特徴とする請求項3に記載の生分解性合成紙。
- 前記粒子状充填材としての炭酸カルシウム粒子が分散される基層と、
前記粒子状充填材としての酸化チタン粒子が分散され、前記基層の表裏両側に配設される表層とを備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の生分解性合成紙。 - 前記粒子状充填材を基点とするボイドが分散されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の生分解性合成紙。
- ポリ乳酸と、生分解性樹脂からなり前記ポリ乳酸より弾性の高い改質剤を含む原料組成物からなる押出し成形物を作製する押出し工程と、
前記押出し成形物を冷却してフィルム状組成物を作製する工程と、
前記フィルム状組成物を延伸する工程と、
を備えることを特徴とする生分解性合成紙の製造方法。 - 前記押出し工程において、共押出しにより複数層から構成される前記押出し成形物を作製することを特徴とする請求項7に記載の生分解性合成紙の製造方法。
- 前記原料組成物は、粒子状充填材を含有するマスターバッチを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の生分解性合成紙の製造方法。
- 前記改質剤は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)及びポリブチレンアジペート(PBA)の1種又は2種からなることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の生分解性合成紙の製造方法。
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